特表2016-501971(P2016-501971A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-501971(P2016-501971A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(54)【発明の名称】表面開口部のある硬化性プリプレグ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20151218BHJP
【FI】
   C08J5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-549762(P2015-549762)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月19日
(86)【国際出願番号】US2013076819
(87)【国際公開番号】WO2014100543
(87)【国際公開日】20140626
(31)【優先権主張番号】61/740,560
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】314015262
【氏名又は名称】サイテク・エンジニアド・マテリアルズ・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,ステイーブン・ジエイ
(72)【発明者】
【氏名】ボイド,ジヤツク・デイ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,スコツト
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB28
4F072AD23
4F072AG03
4F072AG12
4F072AH49
4F072AK05
(57)【要約】
圧密および硬化の前および/または間に、プリプレグ内およびプリプレグ積層内のプリプレグ層間から気体を除去するための強化した能力を保有する硬化性プリプレグ。それぞれの硬化性プリプレグは、少なくとも1つの主要表面に開口部列を作るために処理を受けた樹脂含浸織布である。開口部の位置は、布の織目に固有のものである。さらに、これらのプリプレグが積層され、複合物部品を形成するためのかさを減らす処理を受けるとき、同様の表面開口部のないプリプレグの使用と比べ、より短いかさを減らす時間を達成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性複合材料であって、
2つの相反する面と、第1の織方向にある1つ以上のトウが第2の織方向にある1つ以上のトウの上を乗り越え、次いで前記第2の織方向にある1つ以上のトウの下を通る織目とを有する、織布であって、
前記第1の織方向にある第1のトウが前記第2の織方向にある第2のトウの上、次いで前記第2の織方向にある隣接する第3のトウの下を通るとき、または前記第1のトウが前記第2の織方向にある第2のトウの下、次いで前記第2の織方向にある隣接する第3のトウの上を通るときに、ポケットが前記布表面に画定され、前記ポケットの場所は、前記隣接する第2のトウと第3のトウとの間を上に進んでいる、または下に進んでいる前記第1のトウの前記部分によって画定される、織布と、
前記布の一方または双方の面を覆い、前記布の厚さを通して部分的に浸透し、前記厚さ方向において、前記布の内側部分を実質的に前記樹脂フィルムのない状態にしておく、硬化性ホットメルト樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの少なくとも1つにある開口部列であって、それぞれの開口部は、前記布表面にある前記ポケットの少なくとも一部を露出しており、前記布の前記内側部分から前記複合材料の少なくとも1つの外表面へ、または前記複合材料の少なくとも1つの外表面から前記内側部分へ、または前記複合材料の1つの外表面から反対側の外表面へ、またはそれらの組み合わせの流体流動通路を作るように構成される開口部列と、を備える、硬化性複合材料。
【請求項2】
硬化性複合材料であって、
2つの相反する面と、第1の織方向にあるトウが第2の織方向にある別のトウの上を通り、次いで、前記第2の織方向にある隣接するトウの下を通り、隣接するトウ間に隙間が画定される織目とを有する、織布と、
前記布の一方または双方の面を覆う硬化性ホットメルト樹脂フィルムであって、前記布の厚さを通して部分的に浸透し、前記厚さ方向において、前記布の内側部分を実質的に前記樹脂フィルムのない状態にしておく、硬化性ホットメルト樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの少なくとも1つにある開口部列であって、それぞれの開口部が、前記布にある隙間を露出し、前記布の前記内側部分から前記複合材料の少なくとも1つの外表面へ、または前記プリプレグの少なくとも1つの外表面から前記内側部分へ、または前記複合材料の1つの外表面から反対側の外表面へ、またはそれらの組み合わせの流体流動通路を作るように構成される開口部列と、を備える、硬化性複合材料。
【請求項3】
前記織布の前記織目が繻子織または斜文織である、請求項1に記載の硬化性複合材料。
【請求項4】
前記織布の前記織目が平織である、請求項2に記載の硬化性複合材料。
【請求項5】
前記開口部が前記プリプレグの相反する外表面を通って形成される、請求項4に記載の硬化性複合材料。
【請求項6】
前記織目が繻子織であり、前記開口部が前記プリプレグの一方または双方の表面を通って形成される、請求項1に記載の硬化性複合材料。
【請求項7】
前記ホットメルト樹脂フィルムが20℃〜25℃の範囲内の温度で実質的に固体であり、前記樹脂フィルムの硬化開始温度より低い高温で流動可能になる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性複合材料。
【請求項8】
前記ホットメルト樹脂フィルムが主要成分として1つ以上の熱硬化性樹脂を含み、実質
的にいかなる有機溶剤も含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性複合材料。
【請求項9】
前記ホットメルト樹脂フィルムが1つ以上のエポキシ樹脂、硬化剤、および少なくとも1つの熱可塑性または弾性合成物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性複合材料。
【請求項10】
それぞれのトウが、ガラス、炭素、アラミド、ポリエチレン(PE)、ホウ素、石英、玄武岩、セラミック、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、およびそれらの組み合わせから選択される材料を含む、複数の繊維フィラメントを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性複合材料。
【請求項11】
表面開口部列を有する硬化性複合材料を製造するための方法であって、
(a)連続する樹脂フィルムが織布のそれぞれの面を覆い、前記布の厚さを通して部分的に浸透し、前記厚さ方向において、前記布の内側部分を実質的に前記樹脂のない状態にしておくように、硬化性ホットメルト樹脂を前記織布に部分的に含浸させることであって、
前記織布は2つの相反する面と、第1の織方向にある1つ以上のトウが第2の織方向にある1つ以上のトウの上を通り、次いで前記第2の織方向にある1つ以上のトウの下を通る織目とを有し、
前記第1の織方向にある第1のトウが前記第2の織方向にある第2のトウを、次いで前記第2の織方向にある隣接する第3のトウの下を通るとき、または前記第1のトウが前記第2の織方向にある第2のトウの下を、次いで隣接する第3のトウの上を通るとき、ポケットが前記布の面に画定され、
前記部分的に含浸した布は複数の包囲された空気ポケットを含み、それぞれの空気ポケットは前記布表面にあるポケットと一致する、部分的に含浸させることと、
(b)前記布の少なくとも1つの面上の前記樹脂フィルムが流動可能になり、かつその後、前記空気ポケットを覆う前記樹脂フィルム部分が壊れて開き、それによって前記拡張空気ポケットの場所に対応する開口部を前記樹脂フィルム内に作るように、前記部分的に含浸した布を加熱することであって、
前記開口部が、前記布の前記内側部分から前記複合材料の少なくとも1つの外表面へ、または前記複合材料の少なくとも1つの外表面から前記内側部分へ、または前記複合材料の1つの外表面から反対表面へ、またはそれらの組み合わせの流体流動通路を提供するように構成される、加熱することと、を含む方法。
【請求項12】
表面開口部列を有する硬化性複合材料を製造するための方法であって、
(a)連続する樹脂フィルムが織布のそれぞれの面を覆い、前記布の厚さを通して部分的に浸透し、前記厚さ方向において、前記布の内側部分を実質的に前記樹脂のない状態にしておくように、硬化性ホットメルト樹脂を前記織布に部分的に含浸させることであって、
前記織布が2つの相反する表面と、第1の織方向にあるトウが第2の織方向にある別のトウの上を通り、次いで前記第2の織方向にある隣接するトウの下を通り、隣接するトウ間に隙間が画定される織目とを有する、部分的に含浸させることと、
(b)前記布の少なくとも1つの面上の前記樹脂フィルムが流動可能になり、かつその後、前記隙間を覆う前記樹脂フィルム部分が壊れて開き、それによって前記隙間の場所に対応する開口部を前記樹脂フィルム内に作るよう、前記部分的に含浸した布を加熱することであって、
前記開口部は、前記布の前記内側部分から前記複合材料の少なくとも1つの外表面へ、または前記複合材料の少なくとも1つの外表面から前記内側部分へ、または前記複合材料の1つの外表面から反対表面へ、またはそれらの組み合わせの流体流動通路を提供するよ
うに構成される、加熱することと、を含む方法。
【請求項13】
前記樹脂フィルムの前記外表面が、加熱中、剥離紙またはポリエステルフィルムで覆われる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法によって生成される、表面開口部列を有する硬化性複合材料。
【請求項15】
硬化性複合物部品を製造する方法であって、
プリプレグ積層を形成するために複数のプリプレグ層を敷くことであって、前記プリプレグ層の少なくとも一部が、表面開口部のある多孔質プリプレグ層であり、それぞれの多孔質プリプレグ層は請求項11〜13に記載のいずれか1項に従った方法によって生成される前記複合材料である、敷くことを含む、方法。
【請求項16】
硬化性複合物部品を製造する方法であって、
請求項11〜13に記載のいずれか1項の方法に従って幅広い複合材料を形成することと、
前記幅広い複合材料を既定のサイズのプリプレグ層に切断することと、
プリプレグ積層を形成するために前記プリプレグ層を敷くことと、を含み、
前記加熱ステップは、前記材料が切断される前に前記材料内に開口部を形成するために実施される、方法。
【請求項17】
硬化前のかさを減らす時間の減少の結果として全体の硬化時間が減らされる、複合物部品を製造する方法であって、
複合物積層を形成するために請求項1〜10および14のいずれか1項に従って複数の硬化性複合材料を積層することと、
(a)前記複合物積層を覆う真空バッグを塞ぐことと、(b)前記真空バッグ内から真空に引くこと、(c)前記真空バッグの外部に圧力をかけることと、(c)既定の時間間隔の間、真空に引き続ける、かつ圧力をかけ続けることと、によって前記複合物積層から空気および揮発性物質を取り除くように、前記複合物積層のかさを減らすことと、
かさを減らした後に前記複合物積層を硬化することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
繊維強化ポリマー複合物は、樹脂マトリックスおよび強化繊維から成る高性能の構造材料である。これらの繊維強化ポリマー複合物は、高強度および/または低重量、および侵食性環境に対する耐性を必要とする構造部品を製造するために使用されてきた。そのような構造部品の例は、航空機用部材(例えば、尾部、翼、機体、プロペラ)を含む。繊維は複合物によって支えられる荷重の大部分を担うマトリックス樹脂を強化し、一方で樹脂マトリックスはこの複合物によって支えられる荷重のごく一部を担い、また荷重を破断繊維から無傷の繊維へ伝達する。このようにして、これらのポリマー複合物は、マトリックス樹脂または繊維のどちらかが単独で支えるよりも大きな荷重を支える場合がある。さらに、強化用繊維を特定の幾何学的形状または配向に調整することによって、複合物は、重量および体積を最小限にするよう効果的に設計することができる。
【0002】
従来、繊維強化ポリマー複合物は、プリプレグとしても知られる、樹脂含浸繊維のシートから作製される。プリプレグから複合物部品を形成するため、複数のプリプレグ層が型内に積層される場合があり、マトリックス樹脂が流れるように熱が加えられる場合があり、プリプレグ層の圧密を可能にする。加えられる熱は、付加的に、マトリックス成分を硬化または重合する場合がある。
【0003】
しかしながら、このようにして複合物を形成するためのプリプレグの圧密には、問題がある。空気および他の揮発性物質などの気体が、個々のプリプレグの内部および積層中のプリプレグ層の間に閉じ込められる場合がある。さらに、揮発性物質が、プリプレグの加熱および/または硬化中に放出する場合がある。マトリックスは、気体の動きを実質的に抑制するため、これらの気体を積層から取り除くのは困難であり、結果として、最終的な硬化複合物に空隙をもたらす場合がある。空隙とは、硬化した複合材料内の空洞を指す。この空隙が、最終的な硬化複合物の機械的特性にさらに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
複合物製造中に封じ込められた気体の除去を向上させるために技法が開発されてきたが、問題は残っている。例えば、プリプレグ層の側面から気体を抜くため、エッジブリーザが、プリプレグのエッジに真空を適用するために用いられる場合がある。しかしながら、このような方法での閉じ込められた気体のプリプレグからの除去は、遅く、全ての閉じ込められた気体を実質的に除去できない場合がある。
【0005】
これらのプリプレグからの複合物部品の製造は、部品を製造し任意の構造体において最終用途に必要な構造特性を開発するためには、かさを減らすことおよびある特定の硬化サイクルを必要とする。潜在的に、および製造方法によっては、硬化前にかさを減らすサイクルは、時間がかかり、追加費用がかかる可能性がある。適用できる場合、硬化前にかさを減らす時間を減らす助けとなる手法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示されるのは、圧密および硬化の前および/または最中にプリプレグ内およびプリプレグ積層内のプリプレグ層間から気体を除去するための強化した能力を保有する硬化性プリプレグである。それぞれの硬化性プリプレグは、少なくとも1つの主要表面に開口部列を作るために処理された樹脂含浸織布である。開口部の位置は、布の織目に固有のものである。さらに、これらのプリプレグが積層され、複合物部品を形成するためにかさを減らす処理を受けるとき、表面開口部のない同様のプリプレグの使用と比べ、より短いかさを減らす時間を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】1つの織方向にある繊維トウが、その横方向にあるトウの上、次いでその下を通る織布部分を図式的に示す図である。
図2】本開示の実施形態に従って部分的に含浸した布を図示的に示す図である。
図3】本開示の実施形態に従ってプリプレグの1つの表面に作られる開口部を図示的に示す図である。
図4】本開示の実施形態に従ってプリプレグの反対の表面に作られる開口部を図示的に示す図である。
図5】実施形態に従って部分的に含浸したプリプレグを図示的に示す図である。
図6】熱処理後の図5のプリプレグを示す図である。
図7】繻子織布の部分を図示的に示す図である。
図8図7の繻子織布上に形成される表面開口部のある樹脂表面を図示的に示す図である。
図9】別の実施形態に従って表面開口部を作るために熱処理を受けた部分的に含浸したプリプレグを図示的に示す図である。
図10】平織布の部分を図示的に示す図である。
図11】平織布上に形成される表面開口部のある樹脂表面を図示的に示す図である。
図12】プリプレグ布を製造する能力を有する例示的なプリプレグ化システムを示す図である。
図13】実施例に従ってハニカムコアサンドイッチ構造体を組み立てるための構成を図示的に示す図である。
図14図13に示される組立から生成されるハニカムコアサンドイッチ構造を図示的に示す図である。
図15-17】それぞれ、1分、4分、および7.5分間、熱処理されたプリプレグ表面の上面画像を示す顕微鏡写真であり、プリプレグは一実施例に従って繻子織布を使用して生成されたものの図である。
図18】熱処理されたプリプレグ表面の上面画像を示す顕微鏡写真であり、プリプレグは別の実施例に従って平織布を使用して生成されたものの図である。
図19】表面下に形成される気泡のある硬化プリプレグ表面の上面画像を示す顕微鏡写真である。
図20】未処理プリプレグ材料から成る硬化複合物パネルの断面図である。
図21】熱処理されたプリプレグ材料から成る硬化複合物パネルの断面図である。
図22】硬化前に真空下での16時間の保持を使用して未処理の5320−1/8HSプリプレグ材料から作製される複合物における標準的なかさを減らす処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図23】硬化前に真空下での16時間の保持を使用して熱処理した5320−1/8HSプリプレグ材料から作製される複合物における強化したかさを減らす処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図24】硬化前に真空下での0.5時間の保持を使用して未処理の5320−1/8HSプリプレグ材料から作製される複合物における標準処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図25】硬化前に真空下での0.5時間の保持を使用して熱処理した5320−1/8HSプリプレグ材料から作製される複合物における強化した処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図26】硬化前に真空下での16時間の保持を使用して未処理の5320−1/PWプリプレグ材料から作製される複合物における標準処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図27】硬化前に真空下での16時間の保持を使用して熱処理した5320−1/PWプリプレグ材料から作製される複合物における強化した処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図28】硬化前に真空下での0.5時間の保持を処理された未処理の5320−1/PWプリプレグ材料から作製される複合物における標準処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
図29】硬化前に真空下での0.5時間の保持を使用して処理された熱処理した5320−1/PWプリプレグ材料から作製される複合物における強化した処理の効果および結果として生じる空隙率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示される硬化性プリプレグは、樹脂含浸織布から成る。織布は、2つの相反する面と、第1の織方向にある1つ以上のトウが第2の織方向にある1つ以上のトウの上を乗り越え、次いで第2の織方向にある1つ以上のトウの下を通る織目とを有し、布の面上の上下交差位置は、第1の織方向にある第1のトウが第2の織方向にある第2のトウの上を交差し、次いで第2の織方向にある隣接する第3のトウの下を通るとき、または第1のトウが第2の織方向にある第2のトウの下を通り、次いで第2の織方向にある隣接する第3のトウの上を交差するときに作られる。この文脈では上下交差位置は、隣接する第2および第3のトウの間を上がったり下がったりする第1のトウの部分を指す。
【0009】
プリプレグを生成するための織布は、繊維トウから作製される。トウは、第1の織方向にある1つ以上のトウが第2の織方向にある1つ以上のトウの上を乗り越え、次いで同じ第2の織方向にある1つ以上のトウの下を通る織目で織り合わされる。織構成に起因して、布の2つの主要面は、それらの中にポケットを含み、そのため、それらは全体にわたって滑らかでも平らでもない。
【0010】
図1は、織布の織構成に起因して、別の横断トウの上を交差するまたは下を通るトウ部分、すなわち、上下交差位置があるときはいつも、布表面内に作られるポケットPがあることを図式的に示す。依然図1に関して、左から右に見て、第1の織方向にあるトウ11が第2の/横断織方向にある別のトウ12の上を交差し、次いで同じ第2の/横断織方向にある隣接するトウ13の下を通るとき、「下方」トウ部T1が作られ、トウ11がトウ13の下を通り、次いで第2の/横断織方向にある隣接するトウ14の上を通るとき、「上方」トウ部T2が作られる。これらの「上方」および「下方」トウ部が、ポケットPをもたらす。換言すると、布が水平な平面に置かれている場合、平面に対してトウの高度に変化があるときにはいつも、ポケットPが作られる。図1は布織の一実施例のみを示すこと、および三軸織りなどのより複雑な布織が本明細書で想定されることが理解されるべきである。
【0011】
硬化性プリプレグは、布の各面を覆い、布の厚さを通して部分的に浸透し、厚さ方向において、布の中央部分が実質的に樹脂フィルムのない状態にしておく、硬化性ホットメルト樹脂フィルムをさらに有する。開口部列は、一方または双方の樹脂フィルム内に形成され、一実施形態に従って、それぞれの開口部は、布織目内の上下交差位置で形成されるポケット(図1内のP)を露出する。いくつかの実施形態において、樹脂フィルムは、開口部が位置する場所を除き至る所で連続的である。別の実施形態に従って、樹脂内の開口部列は、布織内の隙間と整列する。この実施形態は、平織布などの特定の織布に関連する。
【0012】
開口部は、空気などの気体が布の中央部分からプリプレグの少なくとも1つの外表面へ、またはプリプレグの少なくとも1つの外表面から中央部分へ、またはプリプレグの1つの外表面から反対表面へ、またはそれらの組み合わせで、流れることを可能にするように構成される。開口部は、気体輸送、ならびに、樹脂を真空性に富んだ領域に含浸させる原動力を提供する真空の確立も可能にする。
【0013】
本明細書に開示される開口部は、全体的な孔パターンまたはランダムな孔パターンを形成するために使用される従来の機械技法によって形成される表面開口部のあるプリプレグとは違い、布織に固有のものである。
【0014】
本明細書においては、「硬化性」という用語は、完全に硬化してはいないことを意味し、未硬化状態を含む。
【0015】
それぞれのトウは、繊維フィラメントの束である。それぞれの束中のフィラメントの数は、1000の倍数、例えば、1000〜75,000である場合がある。一束につき15,000未満のフィラメントを有するトウは、本明細書に開示される本来の目的のために想定される。「フィラメント」という用語は、幅に対する長さの高い比率を有する比較的柔軟で連続した構造体を指す。
【0016】
繊維トウのための繊維材料としては、ガラス(電気またはEガラスを含む)、炭素(黒鉛を含む)、アラミド(例えば、ケブラー)、高弾性ポリエチレン(PE)、ホウ素、石英、玄武岩、セラミック、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。高性能な複合材料、例えば、航空宇宙用途のための材料を生成するため、3500MPaを超える引張強度を有する繊維が望ましい。
【0017】
布の織構成は、限定されず、平織、繻子織、斜文織、等を含んでもよい。一巻の布において、縦のトウは縦糸方向にあり、横のトウは横糸方向にある。平織において、縦糸のトウおよび横糸のトウは、単純な十字模様を形成する。それぞれの横糸のトウは、縦糸のトウの上を通り、次いで次の縦糸のトウの下を通り、というように、縦糸のトウと交差する。繻子織は、1つの縦糸のトウの上を通過する2つ以上の横糸のトウ、またはその逆に、1つの横糸のトウの上を乗り越える2つ以上の縦糸のトウを特徴とする。斜文織は、特徴的な斜め模様を作るために列の間にずれを用い、横糸のトウが1つ以上の縦糸のトウの上を、次いで1つ以上の縦糸のトウの下を、というように通ることを特徴とする。
【0018】
図2は、本開示の実施形態に従って部分的に含浸した布(すなわち、プリプレグ層またはプリプレグ布)を図式的に示す。繊維トウ20のある布は、双方の主要面を上方樹脂フィルム21および下方樹脂フィルム22で覆われる。それぞれの樹脂フィルムは、布の厚さ(Tf)を部分的に通って浸透し、布の中央部分は実質的に樹脂のない状態にしておく。部分的含浸後、複数の包囲された空気ポケット23が、図2に示されるように、樹脂フィルムと布との間に形成される。包囲された空気ポケットは、布織内の上下交差位置で形成されるポケットと一致する。
【0019】
硬化性多孔質プリプレグにおける布とマトリックス樹脂の重量比率は、本出願によって決定されるように、様々であってもよい。一実施形態において、布の重量分率は、プリプレグの総重量基準で、20重量%〜80重量%の範囲にわたる場合がある。別の実施形態において、多孔質プリプレグが複合基板またはプリプレグ積層上の表面フィルムとして使用されるとき、多孔質プリプレグにおける布の重量分率は、20重量%未満である。マトリックス樹脂が占めるプリプレグの割合もまた所望されるように様々である場合がある。特定の実施形態において、マトリックス樹脂は、プリプレグの重量基準で、プリプレグの約20重量%〜80重量%の間を占める場合がある。
【0020】
プリプレグ化方法
一実施形態に従って、上記に開示される硬化性プリプレグを作製するための方法は、織布に硬化性マトリックス樹脂を部分的に含浸させ、その後に表面開口部列を作るための熱処理が続くことを含む。織布にマトリックス樹脂を部分的に含浸させるための方法は、限
定されないが、「ホットメルト」プリプレグ化法が好適である。一般に、このプリプレグ化法は、部分的に含浸したプリプレグを産出するため、布層にホットメルト樹脂組成物を、溶解形態で、含浸させることを特徴とする。含浸は、布層を2つの樹脂フィルムの間に挟み、その得られた積層体を高温板、加熱ローラによって、またはその積層体を高温の金属ベルトの間で圧迫する方法によって、圧迫することによって、なされてもよい。あるいは、布は、1つの側面のみに樹脂フィルムが積層され、反対側は実質的に樹脂のない状態のままにされる。
【0021】
例として、硬化性ホットメルト樹脂組成物は、薄い樹脂フィルムの形態で剥離紙の上に塗布されてもよく、結果として生じるそこから剥離される樹脂フィルムは、布層上に積層され、形成される。樹脂フィルムの粘度を下げるために熱が加えられるため、それは溶解形態にあり、好適には中央の乾燥部分を残すために、好ましくは部分的にだけ布を通って、所望される程度まで布に浸透することができる。含浸中に適用される高温は、ホットメルト樹脂の硬化開始温度よりも低いことが理解されるべきである。樹脂フィルムが布層の厚さを通して部分的に浸透するように、積層中に十分な圧力も加えられ、それによって樹脂組成物が厚さ方向に部分的に含浸している布層がもたらされる。マトリックス樹脂は、含浸の直後は、未硬化のままである。いくつかの実施形態では、布の各面に適用される樹脂フィルムは、10〜200gsm(g/cm2)のフィルム重量を有する場合があり、布は、100〜600gsmの布面積重量(FAW)を有する場合がある。部分的含浸後、連続的な樹脂フィルムは、布の一方または双方の主要面を覆い、布の厚さを通して部分的に浸透し、布の中央部分は実質的に樹脂フィルムのない状態にしておく。
【0022】
熱処理中、剥離紙または裏紙は、プリプレグ樹脂フィルムの露出面に残され、樹脂フィルムが流動性を有するようになるまで熱が加えられる。特定の実施形態において、熱処理中の樹脂粘度は、90℃で500ポアズ未満である。加熱は、空気ポケットを覆う樹脂フィルム部分が壊れて開き、空気ポケットの場所に対応する樹脂フィルム内に開口部を作るまで、実施される。樹脂がポケットの隣接領域へ側方に移動し、剥離フィルム表面から濡れがなくなることによって、樹脂フィルムが破壊される。場合によっては、樹脂フィルムは、剥離紙がプリプレグから剥がれるときに除去される樹脂を微量に残して、気泡の縁部で破壊し、側方に内向き移動する。開口部は、図3に示されるように(開口部30)、プリプレグの1つの表面、または図4に示されるように(開口部40)対向する表面双方に作製される場合がある。熱処理の結果として、開口部は、空気または他の気体をプリプレグの外表面(複数可)から布の中央部分に送るための流路を作る。
【0023】
プリプレグ内に開口部を作るための熱処理は、標準プリプレグ化過程によって、布に樹脂フィルムが部分的に含浸した後の後処理として実施される場合がある。あるいは、熱処理は、プリプレグ化過程中、その状態で行われる場合がある。熱処理に適用される高温は、マトリックス樹脂の硬化開始温度よりも低く、包囲された空気ポケットを開くために、樹脂の流れを開始するために使用されることが理解されるべきである。この樹脂流動は、より低いかさ係数をもたらす場合がある。かさ係数は、未硬化プリプレグ材料の厚さのそれらが完全に硬化したときの厚さに対する比率として定義される。
【0024】
一実施形態において、樹脂含浸繻子織布は、開口部列を作るために後処理を受ける。図5を参照すると、繻子織布50は、上方樹脂フィルム51と下方樹脂フィルム52との間に挟まれる。上方樹脂フィルム51は、剥離紙53上に形成され、下方樹脂フィルム52は、剥離紙(または裏紙)54上に形成される。剥離紙は、シリコーンフィルムでコーティングされていてもよい。結果として生じる積層は、部分的に含浸したプリプレグを形成するために、例えば、プリプレグ化機械の中で、加熱プレスを受ける。樹脂含浸後、空気ポケット55が、樹脂フィルムの下に作られる。次に、図6を参照すると、下方樹脂フィルム52に取り付けられた剥離紙54は、ポリエステルフィルム56に置き換えられる。ポリエステルフィルムが一方の剥離紙の除去後に片面に位置付けられ、最終的なプリプレグの巻き上げを容易にする。依然図6を参照すると、剥離紙およびポリエステルフィルムがその上についている、部分的に含浸したプリプレグは、次いで、加熱サイクルで加熱され、そうすることによって、空気ポケットの上にある上方樹脂フィルム52の樹脂部分が破壊して開き、空気ポケットから移動して/流れて出る。結果として、開口部57が樹脂フィルム51内に作られる。熱処理は、プリプレグを、所定の温度に設定された熱源に、選択される期間露出することによって実施される場合がある。プリプレグは、熱暴露中、静止していてもよく、または連続過程を介して加熱帯を通して移動していてもよい。あるいは、高温板、レーザー、加熱ドラム、超音波、熱風噴射などの、別の熱源が用いられてもよい。熱処理の温度と期間は、流れを可能にする最小樹脂粘度および流れが発生するための十分な時間によって様々である場合がある。樹脂フィルムは薄ければ薄いほど速く流れるため、フィルム重量がより高いとより多くの時間を要する。例として、後処理は、標準連続プリプレグ製造法を介して形成された連続シートの形態で、一巻のプリプレグ材料に適用される場合がある。そのような後処理において、連続プリプレグは、巻きがほどかれ、張力を受けながら、プリプレグが熱に露出される場所である水平加熱オーブンを通って連続して運ばれ、次いで巻き取りロールに巻き上げられる。オーブンの長さに依存して、所望される開口部を作るために、熱暴露時間に対する運搬速度を制御することができる。一実施形態において、含浸樹脂は、室温(20℃〜25℃)では粘弾性固体であり、250°F〜350°F(121℃〜177℃)の温度範囲内では硬化性であるホットメルトエポキシ系マトリックスであり、加熱サイクルは、120°F〜250°F(49℃〜121℃)の範囲内で0.25〜20分間実施される場合がある。
【0025】
図7は、典型的な繻子織構成、より具体的には8枚繻子織、および上記に説明したように繻子織布に樹脂フィルムを部分的に含浸したときに空気ポケットが作られる場合がある場所70を示す。現実には、図7に示される交差トウは、実際にお互いにもっと近く、もっときつく織られることが理解されるべきである。図8は、図5および図6を参照して上記に説明されるように樹脂含浸および熱処理後の熱処理されたプリプレグ表面、および布織内の上下交差位置に対する樹脂フィルム内の開口部の場所を図示的に示す。
【0026】
図9は、上方および下方樹脂フィルム96、97を通して形成される、開口部100を作るために熱処理を受けた、部分的に含浸した平織布95を図示的に示す。樹脂フィルム96、97は、剥離紙/裏紙98、99によって、それぞれ支えられる。
【0027】
図10は、典型的な平織布およびその中に形成される隙間101を示す。現実には、図7に示される交差トウは、実際にお互いにもっと近く、もっときつく織られることが理解されるべきである。図11は、図9を参照して上記に説明されるように樹脂含浸および熱処理後の熱処理されたプリプレグ表面、および布織内の隙間101に対する樹脂フィルム内の開口部の場所を図示的に示す。開口部が隙間11と整列することに留意されたい。
【0028】
図12は、プリプレグ布を製造し、かつその状態で熱処理を提供する能力を有する典型的なプリプレグ化システムを図示的に示す。図12を参照すると、連続的な布ウェブ80は、一組の加熱加圧ローラ81、82によって形成される第1の加圧ニップへ運ばれる。布ウェブ80は、供給ローラ85、86から巻きがほどかれる2つの樹脂フィルム83と84との間に挟まれる。樹脂フィルム83、84はそれぞれ、連続的な剥離紙上に形成されている。樹脂フィルム83、84は、加圧ローラ81、82の助けを借りて、布ウェブ80の上面および下面にそれぞれ押し付けられる。加圧ローラ81、82からの加圧および加熱によって、樹脂フィルム83、84を布ウェブ80に部分的に含浸させ、それによって部分的に含浸したプリプレグを形成する。部分的に含浸したプリプレグは、次いで加熱プレート87を通過する。この時点で、プリプレグ内に開口部を作るために、加熱が実施される。熱処理後、結果として生じる多孔質プリプレグは、冷却プレート88へと運ば
れ、そこで多孔質プリプレグは冷却され、樹脂が固化する。冷却されたプリプレグは、次いで引きローラ89、90によって運ばれ、かつ付加的なガイドローラによって巻きロール91へと導かれ、そこで巻き上げられる。この種類の過程は、平織布、特に、布の厚さおよび含浸フィルム(複数可)に起因して熱処理が迅速である低GSM布、の使用を基にしたプリプレグ内に開口部を作るのに特に適している。
【0029】
熱処理されたプリプレグ内に形成される開口部は、形が不揃いで、サイズが均一ではない。開口部の形およびサイズは、織目および熱処理時間に依存する。開口部のサイズは、樹脂流動が時間と共に進むにつれて増大する。例として、開口部は、0.1〜3mmの範囲内の直径を持つ実質的な円形断面、または0.1mm〜3mmの範囲内の幅および長さを持つほぼ長方形断面であってもよい。さらに、特定の処理時間後、例として、1〜8分間の処理時間は、開口部を作るのに十分であり得る。また、特定の処理期間の後、一部の開口部は、開口部のお互いの最初の近接性によっては、お互いにつながる場合がある。場合によっては、一部の包囲された空気ポケットは、不完全な処理条件、例えば、剥離紙が熱処理中に樹脂フィルムに接着しないとき、に起因して、開口しない場合がある。
【0030】
マトリックス樹脂
本明細書に記載される硬化性プリプレグを生成するためのマトリックス樹脂は、硬化性ホットメルト組成物に基づき、最初はほぼ室温(20℃〜25℃)で固体または半固体であり、材料に適用される高温で溶融され、冷却時に固まり、硬化によって硬化可能であることを特徴とする。さらに、マトリックス樹脂は、形成空気ポケット、およびそれに続く、熱処理による空気ポケットの上方の開口部の形成を可能にするために、十分な粘度および濡れ特性を有するべきである。一実施形態において、ホットメルト樹脂組成物は、主要成分として1つ以上の熱硬化性樹脂を含む硬化性熱硬化性樹脂組成物であり、いかなる有機溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキソラン、アルコール、も実質的に含まない。最終硬化物を生成するために使用されるとき、これらの熱硬化性樹脂は、触媒あるいは硬化剤、熱、または2つの組み合わせの使用によって硬化される。
【0031】
適切な熱硬化性樹脂は、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビスマレイミド、およびそれらの組み合わせを含む場合があるが、これに限定されるものではない。これらの熱硬化性樹脂を、熱、または硬化剤、またはそれらの組み合わせの使用によって、完全に硬化することができる。硬化反応を加速させるために触媒が使用される場合がある。熱硬化性樹脂が完全に硬化されるとき、それらは固くなり、元の形態に戻すことはできない。
【0032】
一実施形態において、マトリックス樹脂は、主要ポリマー成分として1つ以上の多機能エポキシ樹脂を含むエポキシ系熱硬化性組成物である。適切なエポキシ樹脂としては、芳香族ジアミンのポリグリシジル誘導体、芳香族モノ一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸類が挙げられる。適切なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールKなどのビスフェノールのポリグリシジルエーテル、および、クレゾールおよびフェノール系ノボラックのポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0033】
適切なビスマレイミド樹脂としては、1,2エタンジアミンのN,N’ビスマレイミド、1,6−ヘキサンジアミン、トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,4−ベンゼン−ジアミン、4,4’−メチレンビスベンゼンアミン、2−メチル−l,4−ベンゼンジアミン、3,3’−メチレンビスベンゼンアミン、3,3’スルホニルビスベンゼンアミン、4,4’−スルホニル−ビスベンゼンアミン、3,3’オキシビスベンゼンアミン、4,4’オキシビスベンゼンアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、1,3−ベンゼンジメタンアミン、1,4−ベンゼン−ジメタンアミン、および4,4’−シクロヘキサンビスベンゼンアミン、およびそれらの混合物が挙げられる場合がある。
【0034】
マトリックス樹脂は、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン(例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等)、それらの組み合わせ、およびそれらの先駆物質などの熱可塑性材料を、少量、さらに含んでもよい。プリプレグの靭性、粘着性、およびドレープ性を増大させるために、1つ以上の熱可塑性材料がマトリックス樹脂に添加される。
【0035】
マトリックス樹脂は、本明細書内で述べられるように、マトリックスの機械的、流動学的、電気的、光学的、化学的、および/または熱的特性の1つ以上に影響を与えるために、添加剤を、少量、さらに含んでもよい。そのような添加剤は、マトリックスと化学反応する、マトリックスと相互作用する、またはマトリックスと反応しない材料をさらに含んでもよい。添加剤の例は、損傷許容性、靭性、耐摩耗性の1つ以上を強化するため、強化粒子、難燃剤、紫外線(UV)安定剤、酸化防止剤、着色剤、および充填材(例えば、ヒュームドシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク)を含む場合があるが、これに限定されるものではない。
【0036】
表面開口部を持つプリプレグ(すなわち、多孔質プリプレグ)は、本明細書に記載されるように、開口部の寸法安定性を可能にするように構成される。開口部は、ひとたび形成されると、選択される期間、寸法的な安定性を維持する場合がある。特定の実施形態において、開口部は、多孔質プリプレグの貯蔵中、寸法的な安定性を維持する場合がある。寸法安定性は、マトリックス樹脂の粘度を調整することによって提供される場合がある。マトリックス樹脂は、ほぼ室温で寸法的に安定した開口部を形成するように構築されるが、樹脂は、圧密または硬化中に高温で流動して開口部を埋める能力を有する。
【0037】
「完全含浸」とは、本明細書内で述べられる場合、実質的に全ての布繊維をマトリックス樹脂内に埋め込むことを指す。「部分的な含浸」とは、本明細書内で述べられる場合、完全に至らない含浸であり、それによってマトリックス樹脂内に埋め込まれない乾燥繊維の領域がある含浸を指す。好適な実施形態において、マトリックス樹脂は、布層の両面に塗布されるが、樹脂は布の厚さを部分的にのみ通して浸透し、厚さ方向において、布の中央部分が実質的に樹脂のない状態にしておく。
【0038】
「寸法的な安定性」という用語は、本明細書において使用される場合、選択される期間にわたり選択される範囲内に寸法を維持する構造体の能力を指す。特定の実施形態において、選択される範囲は、選択される圧力下で、選択される割合で気体の通過を許可することなど、意図される機能を果たすための構造体の能力によって決定される場合がある。
【0039】
「室温」という用語は、本明細書において使用される場合、20℃〜25℃の範囲内の気温を指す。
【0040】
プリプレグ積層および複合物部品
複合物部品を形成するため、本明細書に記載される複数の硬化性プリプレグは、プリプレグ積層に積層される場合があり、次いで、その積層は圧密され、硬化される。圧密および硬化は、単一の段階として実施されてもよく、別々に実施されてもよい。
【0041】
表面開口部のあるプリプレグ(すなわち、多孔質プリプレグ)は、圧密前および/または圧密中に個々のプリプレグおよび1つ以上の多孔質プリプレグを含むプリプレグ積層からの、その中の気体の除去を容易にし、それによって、これから形成される複合物内の空隙の量を、多孔質プリプレグなしで形成される複合物と比べて、減らすことが発見されている。例えば、開口部は、多孔質プリプレグ内からの気体の逃げ道を提供し、未処理プリプレグと比べて、非常に容易にかつより多くの量の気体をプリプレグから除去することを可能にする。気体は、マトリックス樹脂または部分的に含浸したプリプレグの樹脂なし部分から生じる気体、またはプリプレグ層間の中間層域から生じる気体を含む場合がある。特に、多孔質プリプレグは、圧密中に樹脂組成物から発生する場合がある気体の除去を可能にする。
【0042】
「プリプレグ積層」という用語は、本明細書において使用される場合、積み重ねる配設でお互いに隣接して置かれる複数のプリプレグを指す。特定の実施形態では、積層内のプリプレグは、互いに対して選択された配向で位置付けられる場合がある。さらなる実施形態において、プリプレグは、選択された配向からのそれらが相対移動するのを抑制するために、任意選択で、縫うための材料で綴じ合わされる場合がある。付加的な実施形態において、「積層」は、本明細書内で述べられる、完全に含浸したプリプレグ、部分的に含浸したプリプレグ、および多孔質プリプレグの任意の組み合わせを含む場合がある。積層は、ハンドレイアップ、自動テープ積層(ATL)、自動ファイバー積層(AFP)およびフィラメントワインディングを含んでもよいが、これに限定されない技法によって製造される場合がある。
【0043】
圧密またはかさ減らしは、加熱、真空化、加圧の1つ以上の行為の下で行われ、そうすることで空間を押し退けるようにマトリックス樹脂が流れる過程を指す。例えば、圧密は、プリプレグ内の繊維間の空間、プリプレグ間の空間等への樹脂の流動をもたらす場合があるが、これに限定されるものではない。
【0044】
「硬化(cure)」および「硬化(curing)」という用語は、本明細書内で使用される場合、重合および/または架橋過程を含む場合がある。硬化は、加熱、紫外線光への露出、および放射線への露出を含むが、これに限定されない過程によって実施される場合がある。さらなる実施形態では、多孔質プリプレグ内のマトリックス樹脂は、選択される付着性または粘着性を示すように、調合または部分的に硬化される場合がある。
【0045】
表面開口部のある複数の硬化性プリプレグは、プリプレグ積層で使用され、積層は、プリプレグ内およびプリプレグ層の間に閉じ込められた気体(例えば、空気)除去に対する強化された能力を保有する。プリプレグ積層の圧密する/かさを減らす間、開口部およびプリプレグ内の樹脂のない領域は、プリプレグ内およびプリプレグ間の気体が逃げるための様々な経路を提供し、それによって、結果として生じる圧密した複合物内の空隙率を減らす。結果として、硬化時に、硬化複合物は向上した機械的特性を示す。例えば、複合物の総体積基準で、1体積%未満の残余空隙を有する硬化複合物は、この手法で達成される場合がある。
【0046】
開口部が硬化性プリプレグの双方の主要表面に形成されるとき、気体が、一方の表面から入って、プリプレグを通過して反対の表面を通って出る場合がある。開口部は、プリプレグの積層体の積み重なりに真空を完全に浸透できるようにもする。さらに、開口部は、2つの隣接するプリプレグ層の境界面に沿って空気の通り道を作るように、隣接する上下交差位置を用いた流路を作る。様々な流動通路が、表面開口部、中間層領域、およびプリプレグの非含浸(樹脂なし)部分の任意の組み合わせによって作られる場合がある。例えば、隣接するプリプレグ間の中間層領域からの気体は、プリプレグの1つの側面上の開口部を通って入り、次いで、外へ逃げるために同じプリプレグの樹脂なしの中央部を通る。あるいは、気体は、1つの中間層領域から、それぞれのプリプレグの反対側にある開口部を介して次の中間層領域へと流れ、最終的にプリプレグ積層から流れ出る。熱処理された材料では、開口部の数に起因して空気移動が強化される一方で、樹脂フィルムが処理されないままである標準的な製品においては、層の間から、および層の中核に空気を移動させるのはより難しいため、これは、熱処理をしない標準的な製品と比べて改善である。これらの様々な流動通路は、閉じ込められた気体がプリプレグ積層から逃れる能力を大いに強化し、隣接する上方/下方領域との流路も作って2つの隣接する層の境界面にそってガス抜きを作る。
【0047】
マトリックス樹脂の粘度は、圧密している間、プリプレグ内およびプリプレグ間の空間を流れ、かつ満たすように制御される場合がある。例えば、一実施形態において、マトリックス樹脂の粘度は、熱の適用時に、外部圧力をかけなくても、空間を流れ、かつ満たすように樹脂の調合によって制御される場合がある。別の実施形態において、マトリックス樹脂の粘度は、熱および外部圧力の適用時、および任意選択で真空下で、空間を流れ、かつ満たすように樹脂の調合によって制御される場合がある。有利にも、圧密している間、開口部および他の空間を満たすことができるようにすることによって、結果として生じる複合物の空隙は、大幅に減らされる、または除去される。
【0048】
プリプレグ積層のかさ減らしを、真空バッグ構成を使用することによって実施する場合がある。この構成において、硬化性プリプレグ積層は、ツールと接して置かれる場合があり、次いで不浸透性膜で囲まれる場合がある。ツールは、比較的平面、曲面、または他の3次元構成を有する場合がある。一実施形態において、含浸していない繊維ガラスシートなどの通気層を、表面通気のために、積層の水平表面のうちの少なくとも1つに隣接して位置付ける場合がある。シーラントテープが、必要に応じて、ツールと膜との間にほぼ真空に耐える密封を作るため、さらに使用される場合がある。積層外への樹脂の流動を抑制するため、または気体流動を改善するため、1つ以上のダムを積層のエッジに隣接して位置付ける場合もある。構成からの圧密した複合物の除去を容易にするために、穿孔した剥離フィルム(例えば、穿孔したポリエステルフィルム)を、通気層とプリプレグ積層との間に挿入する場合があり、かつ穿孔していない離型フィルム(例えば、ポリエステルフィルム)を、プリプレグ積層とツールとの間に挿入する場合がある。囲まれた容積は排出され、積層はゆっくりと加熱されて圧密を引き起こす。加熱は、オーブンまたはオートクレーブ内に真空バッグ構成を置くことによって適用される場合がある。さらに、樹脂が流れるようにするために、マトリックスの粘度を下げ、かつ圧力差を誘発するために、加熱が、圧力を用いて(例えば、オートクレーブ中で)、または圧力を用いずに(例えば、オーブン内で)実施される場合がある。樹脂流動は、かさ減らしを促進するために、マトリックスの粘度が十分に低いとき、プリプレグ積層内の空間を埋めて、積層から気体を押し退ける場合がある。結果として、積層は、同じオートクレーブまたはオーブン内で、より高温で硬化され、最終的な複合物部品を生成する。
【0049】
硬化前に真空下にある時間数、または別の方法でかさを減らすサイクルを指す時間数は、熱処理プリプレグが上記に記載される真空バッグ構成内で処理されるとき、大幅に減らすことができるということが分かっている。これは、強化プリプレグが、前に記載されるように空気および気体を取り除く能力の結果である。
【0050】
複合物サンドイッチ構造体は、本明細書に開示される多孔質プリプレグを使用して生成される場合がある。一実施形態において、木、発泡体、ハニカムまたは他の構造材料から成るセンターコア130が、図13に示されるように、2つのプリプレグ積層131、132の間に挟まれ、積層内の一部または全てのプリプレグ層は表面開口部を含む。結果として生じる複合物サンドイッチ構造体は、図14に示される。任意選択で、二重層が、細長い補領域強を作るために多孔質プリプレグ層の間に位置付けられる場合がある。さらに、繊維ガラス、炭素、熱可塑プラスチック、または、織られたあるいは織られていない他の材料などの含浸していない、または部分的に含浸した軽量スクリムが、気体除去を促進するため、または損傷耐性のような機械的特性を増大するために、選択される地域において積層内に導入される場合がある。
【0051】
プリプレグ積層がコア構造体を組み込むとき、プリプレグ積層の硬化前にコアをプリプレグ材料に接着させるために接着剤材料も用いられる場合がある。ハニカム構造体などのオープンセンターコア構造体は、相当な量の気体を含む場合があるため、粘着層も、気体除去を容易にするために穿孔される場合がある。
【0052】
本明細書内に開示される熱処理は、部品ビルダーでの複合物部品製造過程に、積層の前または積層の間のどちらかで、組み込まれてもよい。任意のプリプレグ層の熱処理は、プリプレグ材料または層に、それが敷かれる前、敷かれるとき、またはプリプレグ層が敷かれた後でかつ後続の次の層の配置の前に、熱を加えることによって、プリプレグ積層過程の間にその状態で実施することができる。例えば、この過程は以下を含む場合がある。すなわち、剥離紙またはポリエステルフィルムで1つの表面が覆われるプリプレグ層を置くこと、表面開口部を形成するために加熱ローラ、熱風棒、高温アイロンなどを使用した熱処理、剥離紙/ポリエステルフィルムを取り除くこと、次のプリプレグ層を敷くこと、および、所望される厚さのプリプレグ積層が形成されるまで必要に応じて繰り返すこと、を含む場合がある。

実施例
【0053】
以下の実施例は、開示される硬化性プリプレグの実施形態の利益を実証するために提供される。これらの実施例は、例示を目的として記載されるものであり、開示される実施形態の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0054】
実施例1
プリプレグ布は、強化エポキシ系樹脂、Cycom5320(Cytec Industries Inc.から入手可能)から形成される2つの樹脂フィルムを、8枚繻子織、炭素繊維布の上面および底面に押し付け、それによって、布を2つの樹脂フィルムに挟む、プリプレグ化機械を使用したホットメルト過程によって調製した。それぞれの樹脂フィルムは、シリコーンコーティングされた剥離紙上に形成され、フィルムごとに106gsmの単位面積重量を有する。炭素−繊維布は、(370)gsmのFAWおよび0.0146インチの厚さを有する。熱および圧力を、積層体に加え、樹脂フィルムを溶かし、部分的に布の厚さを通って浸透させた。剥離紙の1枚を、ロールへの巻上げを容易にするためにプリプレグ化後に滑らかなポリエステルフィルムと置き換えた。上部に剥離紙、下にポリエステルフィルムを有する、事前含浸したプリプレグを、200°F(93℃)で2〜5分間オーブン内で加熱した。この加熱サイクル時間は、プリプレグの機械的または物理的特性に影響を与えずに包囲された空気ポケットを開放するのに十分であることが分かっている。図15〜17は、それぞれ1分、4分、7.5分の加熱時間の、剥離紙を取り除いたプリプレグ表面の上面画像を示す。開口部は、繻子織布内の上下交差位置(すなわち、上方/下方トウ部分)と重なり合った。図15〜17から分かるように、開口部のサイズは経時的に大きくなった。7.5分後、同じ列および隣接するトウの上下交差位置に隣接する行に並んだ一部の開口部は、図13の画像から分かるように、お互いに接触していた。これらの開口部は、繻子織布内の上方/下方トウ部分に対応する(図7の参照番号70に示されるように)。開口部は、熱処理されたプリプレグの剥離紙側にのみ形成されたことが留意された。
【0055】
実施例2
プリプレグ布を、図12に表されるプリプレグ化システムを使用することによって作成した。使用された布は、平織炭素繊維布で、布の相反する面に適用された樹脂フィルムを、Cycom5320エポキシ系樹脂から形成した。それぞれの樹脂フィルムは、シリコーンコーティングされた剥離紙上に形成され、55gsmの単位面積重量を有した。炭素
繊維布は、190gsmのFAWおよび0.0083インチの厚さを有する。部分含浸については、20psiを第1のニップで適用し、加熱プレートでの温度は220°F(104℃)であり、圧縮力を制限するために0.5インチ(12.7mm)未満のギャップを第2のニップで提供した。図18は、剥離紙が取り除かれた、熱処理されたプリプレグ表面の上面画像を示す。プリプレグ表面内の開口部は、平織布内の隙間と一致する。さらに、開口部は熱処理されたプリプレグの双方の主要表面に形成されることが留意された。
【0056】
実施例3
比較のために、図1で説明されるように、表面開口部を作成するための熱後処理を用いずに、対照プリプレグを調製した。図19は、結果として生じる、連続的な樹脂フィルムの下に形成される、閉じ込められた気泡のあるプリプレグ表面を示す。これらの気泡は、繻子織布内の上方/下方トウ部分に対応する。このため、硬化前の熱処理がない場合、空気ポケットから閉じ込められた空気、および逃げることのできない積み重なりの間にある空気が、連続的な樹脂フィルムがプリプレグからの空気の除去を制限することに起因して、結果として生じる硬化したプリプレグ内に留まることが見られた。
【0057】
実施例4
実施例1に記載されるように、5320/8HSプリプレグ材料の15の層から成る12インチ×12インチのモノリシックパネルを構築し、硬化した。比較のために、未処理5320/8HSプリプレグ材料を使用して同じパネルを構築し、同じ条件下で硬化した。結果として生じる空隙率は、処理なしの1.31%から熱処理ありで0.04%まで減少した。図20は、熱処理なしの材料から成るパネルの断面を示し、図21は、熱処理された材料から成るパネルの断面を示す。
【0058】
実施例5
ハニカムコアサンドイッチ構造を図13に示される構成に基づいて組み立て、10の多孔質プリプレグ層(201)がハニカムコア(202)の上に置かれ、14の多孔質プリプレグ層(203)がハニカムコアの下に置かれた。多孔質プリプレグ層を、繻子織炭素繊維布をCycom5320樹脂で部分的に含浸し、その後実施例1に記載されるように、表面開口部を作るために熱処理することによって生成した。組み立てられたサンドイッチ構造体を、真空バッグに入れ、室温で圧密し、オーブン内で(オートクレーブではない)で硬化した。
【0059】
比較のために、プリプレグ層が表面開口部作るための熱処理がされなかったこと以外は同じ様式で、標準ハニカムコアサンドイッチ構造を組み立て、圧密し、硬化した。
【0060】
空隙率を、フランジ、傾斜領域、中央コアを含む硬化生産物の異なる領域で測定し、平均空隙率を計算した。空隙率は、磨かれたパネル断面の視覚的な顕微鏡検査によって測定した。
【0061】
多孔質プリプレグを使用してもたらされる硬化した製品は、硬化した標準製品の2.0%の空隙と比較して、平均約0.05%の空隙を含むことが分かった。
【0062】
実施例6
ハニカムコアサンドイッチ構造を、多孔質プリプレグ層を使用して組み立てた。これは、図13の構成を基にした。この構造体に使用される多孔質プリプレグ層は、平織炭素繊維布およびCycom5320樹脂から成り、プリプレグ層内の開口部は、実施例2に記載されるようにプリプレグ化過程中にその状態での加熱によって生成された。その後、組み立てられたサンドイッチ構造体を、真空バッグに入れ、室温で圧密し、オーブン内で(オートクレーブではない)硬化した。比較のために、プリプレグ層が表面開口部作るための熱処理がされなかった以外は同じ様式で、標準ハニカムコアサンドイッチ構造を組み立て、圧密し、硬化した。
【0063】
多孔質プリプレグを使用してもたらされる硬化した製品は、硬化した標準製品の1.74%の空隙と比較して、平均約0.18%の空隙率を含むことが分かった。
【0064】
実施例7
硬化前の真空下にある時間数、あるいはかさ減らしサイクルと称される時間数を減少し、それによって全体の硬化時間が少なくすることができるかどうかを判定するために、複合物パネルを5320−1/8HSプリプレグから製造した。硬化前の真空下にある時間は、熱処理プリプレグおよび未処理プリプレグ(対照として)を使用して、0.5時間〜16時間の範囲に及んだ。
【0065】
実施例1に記載されるように、5320−1/8HS熱処理プリプレグ材料の15の層から成る12インチ×12インチのモノリシックパネルを、構築し、2つの異なる硬化サイクルを使用して硬化した。比較のために、未処理5320/8HSプリプレグ材料を使用して同じパネルを構築し、同一の2つの硬化サイクルの下で硬化した。第1の硬化サイクルは、硬化前の16時間の真空保持で構成される。第2の硬化サイクルは、硬化前の0.5時間の真空保持で構成される。
【0066】
硬化したパネルに空隙がないかどうかを判定するために、c−スキャンを使用した。c−スキャンは、超音波エネルギーの短パルスがサンプルに入射される、複合物のための非破壊検査技法である。送信パルスの測定は、入射パルスのサンプルの減衰を示す。パルスの減衰は、空洞、層間剥離、樹脂硬化の状態、繊維体積分率、繊維/マトリックス境界面の条件、および存在する任意の異質含有物によって影響を受ける。そのため、パネルまたは完成した部品内に存在する空隙の量を判定するためのc−スキャンの能力は、産業界で認定された品質管理の手法である。c−スキャンの感度は、2%未満の空洞などの非常にパーセンテージまで空隙を検知することができる。これらのパネルを、検査を受けているサンプル内に存在する空隙の量を判定するために、周知の空隙率の対照パネルと比較する。パネルは、0.00%〜2.00%の範囲でc−スキャンによって正確に測定される分化を示す能力を表した。切断し、研磨した面を使用してc−スキャンと比較する空隙の%を判定するため、パネルを破壊的に検査および切断もした。検査された複合物パネルの断面画像を、図22〜25に示す。
【0067】
16時間の真空保持から結果として生じる空隙率は、処理なしの1.46%から熱処理ありで0.02%にまで空隙率を減少させた。図22は、熱処理のないプリプレグ材料から成るパネルの横断面を示し、図23は、熱処理材料から成るパネルの断面を示す。0.5時間の真空保持から結果として生じる空隙率は、処理なしの2.53%から熱処理ありで1.06%にまで空隙率を減少させた。図24は、処理なしの材料から成るパネルの断面を示し、図25は熱処理材料から成るパネルの断面を示す。
【0068】
結果は、硬化前の真空下にある時間数を、熱処理プリプレグの使用によって実質的に減らすことができることを示す。これは、熱処理プリプレグが、前に記載されるように空気および気体を取り除く能力の結果である。
【0069】
実施例8
硬化前の真空下にあるかさを減らす時間数を減少し、それによって全体の硬化時間が少なくすることができるどうかを判定するために、複合物パネルを5320−1/PWプリプレグから製造した。硬化前の真空下にある時間は、熱処理プリプレグおよび未処理プリプレグ(対照として)の双方を使用して、0.5時間〜16時間の範囲に及んだ。
【0070】
実施例1に記載されるように、熱処理された5320−1/PWプリプレグ材料の15の層から成る12インチ×12インチモノリシックパネルを、構築し、2つの異なる硬化サイクルを使用して硬化した。比較のために、未処理の5320−1/PWプリプレグ材料を使用して同じパネルを構築し、同一の2つの硬化サイクルの下で硬化した。第1の硬化サイクルは、硬化前の16時間の真空保持で構成される。第2の硬化サイクルは、硬化前の0.5時間の真空保持で構成される。生成された複合物パネルを、実施例7に記載されるように検査し、検査される複合物パネルの断面画像を図26〜29に示す。
【0071】
16時間の真空保持から結果として生じる空隙率は、処理なしの0.83%から熱処理ありで0.23%にまで空隙率を減少させた。図26は、熱処理のないプリプレグ材料から成るパネルの断面を示し、図27は、熱処理した材料から成るパネルの断面を示す。0.5時間の真空保持から結果として生じる空隙率は、硬化前の0.5時間の真空状態は、検査されたPW系材料の空気を取り除くのに不十分な時間であることを示し、空隙率を減少させることを示さなかった。図28は、熱処理のないプリプレグ材料から成るパネルの断面を示し、図29は、熱処理材料から成るパネルの断面を示す。
【0072】
先述の記載が本教示の基本的な新規な特徴を示してきた、記載してきた、および指摘してきたが、例示されるような装置の詳細の形態、ならびにそれらの使用において様々な省略、代用、および変更が、本教示の範囲から離れることなく、当業者によって行われる場合があることが理解されるであろう。結果として、本教示の範囲は、先述の記載に制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきである。
【0073】
「ほぼ」、「約」、および「実質的に」という用語は、本明細書において使用される場合、所望される機能を果たす、または所望される結果を達成する、述べられる量に近い量を示す。例えば、「ほぼ」「約」、および「実質的に」は、述べられる量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、および0.01%未満以内の量を指す場合がある。
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【国際調査報告】