特表2016-502429(P2016-502429A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-502429(P2016-502429A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(54)【発明の名称】薬物送達の実施およびモニタリング
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20151228BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20151228BHJP
【FI】
   A61F9/007 200C
   A61F9/007 170
   A61J1/00 313B
   A61F9/007 130D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-541872(P2015-541872)
(86)(22)【出願日】2013年11月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月16日
(86)【国際出願番号】US2013068654
(87)【国際公開番号】WO2014081570
(87)【国際公開日】20140530
(31)【優先権主張番号】61/723,376
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/806,471
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/808,425
(32)【優先日】2013年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/835,291
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】515121368
【氏名又は名称】アイ ドロップ イメージング テクノロジー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】イートン アレキサンダー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ガオ コワンジュン
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047CC24
(57)【要約】
眼に投与するための流体を含有する容器または例えばインスリン注射を行うためのシリンジ等の容器を用いる操作のための光学機械システムを開示する。当該システムのマウントは、眼の近傍における領域によって反射された(可視または赤外)光に由来する光学データを受信するように構成された、光学システムおよび処理/記録手段を備え、当該データは、容器から眼への流体の液滴の投与プロセスの時間的および空間的特徴を表す。記録された画像の分析には、画像分析ソフトウェアまたはヒトによる観察が使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、患者が行う携帯容器から該患者の身体に関する関心領域(ROI)への薬物の送達をモニタリングするための方法:
該容器の先端から該薬物の液滴を押し出して該先端から該液滴を放出するように、薬物送達システムに手動での入力を施す工程であって、
該薬物送達システムが、該薬物を含有する該容器と、その中にその軸に沿って該容器を収容する構造を有する第1のフレーム要素および該第1のフレーム要素から延びる第2のフレーム要素を有する容器保持システムとを含み、
該第2のフレーム要素が、光学視野(FOV)を有する画像化カメラ、光学検出器を搭載しており、かつ、該FOV内のシーンの画像を記録することができ、
該FOVが、該先端、該ROI、および該先端と該ROIとを隔てる空間をカバーする、工程;
一連の画像フレームを記録する工程であって、各フレームが該空間における該液滴の対応位置を表す、工程;ならびに
該液滴が該ROIの中に落下したか、部分的に該ROIの中に落下したか、または該ROIの外に落下したかを表すレポートを作成する工程。
【請求項2】
前記携帯容器が、押し潰すことができるボトルを含み、かつ前記ROIが患者の眼を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作成する工程が、少なくとも、前記先端の画像を含む画像フレームおよびテンプレートを参照して計算された相関性能指数に基づいて、レポートを作成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作成する工程が、前記一連の画像フレームの全ての画像フレームに共通する前記先端の位置を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記作成する工程が、前記一連の画像フレームからターゲット画像フレームを決定する工程を含み、該ターゲット画像フレームが前記空間を通じた前記液滴の進みのみを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ターゲット画像フレームにおけるROIの閉境界を、該ターゲット画像フレームに含まれる画像の色区分に基づいて特定する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ROIに対する前記液滴の位置を、少なくとも前記FOVおよび前記光学検出器のピクセルのサイズに基づいて決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容器の先端から前記薬物の液滴を押し出して該先端から該液滴を放出するように前記薬物送達システムに手動での入力を施す工程において、前記第2のフレーム要素が前記シーンの方に向けられた照射源を含み、かつ前記方法が、各画像フレームの記録のために該照射源で該液滴を照射する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記照射源が可視光源を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記記録する工程が、IR光の下で一連のフレームを記録する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作成する工程が、少なくとも
にしたがって計算される相関性能指数に基づいて、前記液滴が前記ROIの中に落下したか、部分的に該ROIの中に落下したか、または該ROIの外に落下したかを表す識別子を生成する工程を含み、式中、T(i,j)はテンプレートのピクセルに対応する照度値であり、F(i,j)は画像フレームのピクセル照度値であり、
は、該テンプレート全体で計算されたピクセル照度値の平均であり、そして
は、前記画像フレームの局所画像領域のピクセル照度値の平均である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
先端を有する選択された携帯容器を固定するように寸法づけられているマウントを備える製造物品であって、
該マウントが第1および第2のフレーム要素を有し、
該第1のフレーム要素が第1および第2の端部を備え、
該第2のフレーム要素が該第1のフレーム要素に対してある角度で接続されており、
該第2のフレーム要素が、(i)流体容器が該マウントに固定されると該先端の近傍をカバーする視野(FOV)を有するレンズおよび(ii)光学検出器を搭載しており、かつ
該光学検出器が、該先端の該近傍における領域から受信した光に対応する照度分布をレンズから受信するように配置される、
製造物品。
【請求項13】
前記第1のフレーム要素が、前記流体容器に沿って調整可能な長さを有する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記先端の前記近傍における領域を照射するように前記第2のフレーム要素上に配置された光源をさらに備える、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
前記角度が、前記第1および第2のフレーム要素を機能的に接続するヒンジによって、約0度〜270度の間で調整可能である、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
前記角度が固定されている、請求項12に記載の物品。
【請求項17】
前記マウントが、前記流体容器が該流体容器の首に関連する部分で固定されるようにする構造を有するリング様アダプターを含有する、請求項12に記載の物品。
【請求項18】
前記リング様アダプターが、前記流体容器を取り外し可能に固定する構造を有する、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記アダプターが、様々なサイズおよび形状の流体容器を収容するように調整可能である、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記光学検出器と機能的に連絡している映像記録手段をさらに備える、請求項12に記載の物品。
【請求項21】
前記携帯容器が、患者の眼に送達されるべき薬物で満たされた、押し潰すことができるボトルを含み、かつ該ボトルが、前記先端に該薬物の液滴を形成させて当該送達を達成するように患者によって押し潰される場合、
前記近傍における前記領域が、該先端、該患者の眼、および該先端と該眼とを隔てる空間を含み、かつ前記物品が
前記光学検出器と機能的に連絡している電子データ処理回路であって、該先端の該近傍における該領域の時間的および空間的特徴を決定するために受信した光学データを記録および処理するようにプログラムされている、回路;ならびに
その中にプログラムコードが保存されている有形の非一時的記憶媒体であって、プログラムコードが該電子データ処理回路によって実行される場合、該回路に、
各フレームが前記空間内の該液滴の対応位置を表す一連の画像フレームを記録させ、かつ
少なくとも、該先端の画像を含む画像フレームおよびテンプレートを参照して計算された相関性能指数に基づいて、該空間的および時間的特徴の識別子を生成する、媒体
をさらに備える、請求項12に記載の物品。
【請求項22】
前記空間的および時間的特徴が、(i)患者の眼への薬物の送達の成功の成績、(ii)携帯容器から分配された薬物の量に関連する第1の値、(iii)薬物の送達時間を表す第2の値;および(iv)患者の眼に送達された第1の値の比率を表す第3の値、のうちの1つまたは複数を表す、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記携帯容器に機能的に接続された、該容器から患者の眼への流体の送達のために前記物品を操作する該患者の手の震えを補償するための安定化デバイスをさらに備える、請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年11月7日に出願され「System and Method for Performing and Monitoring an Eye-Drop Procedure」という表題が付けられた米国仮特許出願第61/723,376号;2013年3月29日に出願され「System for Monitoring of Drug Management」という表題が付けられた同第61/806,471号;2013年4月4日に出願され「System for Monitoring of Drug Management」という表題が付けられた同第61,808,425号;および2013年6月14日に出願され「Eye-Drop Delivery Oversight Device」という表題が付けられた同第61/835,291号からの優先権を主張する。上記の特許出願の各々の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、薬物の滴下および注射の適用に関し、特に、治療計画のコンプライアンスおよび組織に送達される医薬の量を決定するために、そのような医薬の組織への送達中に、デバイス内に収容されている医薬充填容器の使用の記録を達成するデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
指示された治療計画に対する患者のコンプライアンスは、疾病および臨床結果の全体管理に対して直接的な影響を有し得、したがって、治療計画のコンプライアンスの改善は、患者の健康を改善し、費用を抑え、経済的および身体的の両面で治療プロセスに関与するであろう。米国保健福祉省により提供されたデータによると、米国だけでも2千5百万人超が糖尿病にかかっており(National diabetes fact sheet: national estimates and general information on diabetes and prediabetes in the United States, 2011. Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, 2011(非特許文献1))、8千万人が前糖尿病の兆候を示していると見積もられている。食事、運動および薬物治療計画の厳守を通じて、糖尿病罹患者はこの疾患に関連する症状を無期限に管理することができる。インスリン治療計画に対するコンプライアンスの欠如は、患者にとっておよび医療専門家にとっても同様に大きな問題であり、それは糖尿病の進行を早め、望ましくない結果、例えば乏しい代謝制御、糖尿病性ケトアシドーシスのための入院、手足の切断、高浸透圧性昏睡またはより有害な結果さえもたらす。
【0004】
治療計画のコンプライアンスは患者の問題でありかつ疾患の進行または発現に対して大きな影響を有することが示されたため、長年にわたり、なぜ患者が治療計画に対するアドヒアランスの問題を起こすのかおよびどのようにしてアドヒアランスが改善されるのかを理解するために多大な努力がなされている。さらに、調査研究計画に対するコンプライアンスの欠如は、100%に対して50%の平均コンプライアンスがサンプル研究検出力を維持するためにサンプルサイズの5倍増加を必要とすることから、臨床研究の検出力および有効性を大きく低下させる。したがって、患者の治療計画のコンプライアンスを正確に理解することは、薬物または治療計画が不適当なアドヒアランスに起因して有効でないのかどうかまたは医師によって代替の治療計画が実施される必要があるかどうかを決定する助けとなり得る。残念ながら、患者は自身のアドヒアランスを過大評価(不正確に概算)することが多く、かつ患者のコンプライアンスは信頼できないという臨床医の評価が複数の研究によって示されていることから、患者の治療計画のコンプライアンスの理解は困難である。
【0005】
治療計画のコンプライアンスを改善するアイデアは、医師・患者間の関係を改善することから患者の監督を改善することから患者の健康に関する信念を改善することおよび彼らの疾患に関して患者に教育を提供することまで様々ある。これらの各々の介入が研究されているが、糖尿病患者の95%超が彼ら独自のケアを行っていることから、監督が大きな関心を集めており、治療計画の監督はアドヒアランスを大きく改善することが示されている。したがって、薬物投与を実行する計画にしたがい流体充填容器(例えば、シリンジ)から送達された医薬がどの程度実際に送達部位(例えば、患者の組織)に届いているのかを正確に記録するシステムが求められている。
【0006】
処方箋および店頭販売(OTC)の両方の点眼薬は、眼の合併症を処置する治療の中心である。点眼薬は、一般に、経口または静脈内薬物投与と比較して効果的であり、実質的に非侵襲性であり、全身吸収および副作用が限定的であることおよび理論上使用が容易であることから、好ましい処置方法である。しかし、眼科医の間では点眼薬の使用に関して懸念されていることがある。具体的に、最近の研究から、点眼治療計画に対するコンプライアンスが予想よりもずっと低いことが分かった。これは治療レベルを最適以下にし、処置効果を減少させ得る。点眼薬が医師の病院内で投与される場合、訓練を受けた技術者がその手順を正確に行うが;点眼薬が患者によって投与される場合(いわゆる自己処置投与)、それらは常に正確に投与されるとは限らない。患者による点眼薬の自己投与は、常に点眼薬投与の標準的手順および/または適切な点眼薬投与のタイミングにしたがうとは限らず(例えば、1日2回治療計画の場合、点眼薬が午前8時および午後8時に投与されない)、そのため不正確な投薬となる。医師が患者を指導するおよび/もしくは点眼治療計画に関する直接的な質問を患者にする例でさえも、またはその手順の電子的モニタリングが採用される場合でさえも、現在は、眼に対して意図されている液滴が実際に患者の眼に届けられるかどうかまたはそれらが患者のまぶたで終わってしまうかどうかまたは1回超の液滴が眼に届けられるかどうかを知ることはできない。コンプライアンス欠如のいくつかの理由は避けがたいものであるが、原因のいくつか(例えば、物忘れ、見た目が似ている点眼薬容器との混同または点眼薬の使用に関する単なる明白な誤りおよび点眼薬投与手順に正確にしたがわないこと)は修正可能である。
【0007】
患者が点眼薬投与計画を順守するのを助けるためのデバイスがいくつか開発されている。Travalert(Alcon, Inc., Ft. Worth, TX製)と呼ばれるシステムは、例えば、滴下時間および点眼回数の偏りのない信頼性のある測定値の電子的記録を利用するものである。他のシステムは、患者に点眼薬を適用する時間であることを思い出させるタイマーおよび警報または医薬が容器から出たことを確認する重量測定デバイスを利用する。その手順へのコンプライアンスをモニタリングするこれらの技術はいずれも、液滴が患者の眼に実際に送達されたかどうかおよび/またはどのくらい送達されたかを直接的に決定することを意味しない。そうではなく、そのようなシステムによって行われる測定は、患者が点眼薬を投与することを試みるかどうかの測定である。
【0008】
点眼薬の適用の映像モニタリングを使用した研究は、(点眼薬を送達したときに)眼に入れ損なわなかったと申告した対象のうちのほぼ3分の1が実際に入れ損なっていたこと、および、点眼薬を使用した全対象のうちのおよそ3分の1が液滴を眼に全く投与することができなかったことを見出した。別の研究は、患者の約9%しか点眼薬を正確に自己投与することができないことを見出した。したがって、患者に彼らの点眼薬を使用することを思い出させたとしても、および、彼らが点眼薬の分配を測定する尺度を有しているとしても、それでもなお彼らが液滴を眼の中に入れるのかまたは患者のまぶた、頬もしくは眼の外の他の領域に落とすだけなのかは分からない。適当な量の医薬が彼らの眼の中に誘導されるかどうかも分からない。一部の患者は、その医薬を彼らの眼の中に入れようとして多量の点眼薬を浪費し、および彼らの眼に多すぎるまたは少なすぎる量を使用する。したがって、流体充填ボトル(例えば点眼ボトル)から送達された医薬が実際にはどの程度送達されるべき部位(点眼薬の場合は患者の眼)に届けられているかを正確に記録するシステムが求められている。彼らの眼への液滴/医薬の適当な送達を達成するためにどのような変更を行う必要があるかに関して彼らを教育することができるように、患者が液滴を適用する方法を理解するのを助けるシステムも求められている。そのようなシステムは、眼病の管理を改善するはずであり、かつ浪費される液滴の量を減らすことによって医療費を抑制するのを助けるはずである。実施時、例えば、そのようなシステムは、どの程度の薬物が眼に送達されたのかの評価を提供し、そして患者が薬物から受ける副作用(刺激(例えば送達された薬物の容積の関数として発生する刺激)など)とそれらの適用および適用プロセスとのより良い相関関係を定義することができる出力を提供する。そのシステムは、(眼の代わりに)まぶたに落ちた液滴の数の関数として眼のまぶたに対して生じた効果を相関付けることで、副作用をもたらす要因をより特定し、そのような副作用の軽減のための戦略を構築するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】National diabetes fact sheet: national estimates and general information on diabetes and prediabetes in the United States, 2011. Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, 2011
【発明の概要】
【0010】
要旨
本発明の態様は、患者が行う携帯容器から患者の身体に関する関心領域(ROI)への薬物の送達をモニタリングするための方法を提供する。そのような方法は、(i)容器の先端から薬物の液滴を押し出して該先端から該液滴を放出するように薬物送達システムに手動での入力を施す工程であって、該薬物送達システムが(a)該薬物を含有する該容器と、(b)その中にその軸に沿って該容器を(任意で取り出し可能に)収容する構造を有する第1の(任意でサイズ調整可能な)フレーム要素および該第1のフレーム要素に対して横方向に延びる第2のフレーム要素を含む容器保持システムとを含み、該第2のフレーム要素が光学視野(FOV)、光学検出器を有する画像化カメラを搭載しており、FOV内のシーンの画像を記録することができ;FOVが、該先端、ROI、および該先端とROIとを隔てる空間をカバーする、工程、を含む。この方法はさらに、(ii)一連の画像フレームを記録する工程であって、各フレームが該空間における液滴の対応位置を表す、工程;および(iii)液滴がROIに落下したかどうかを表す識別子を作成する工程、を含む。そのような識別子は、一連の画像フレームの観察に基づく結論として作成または形成され得る。代わりにまたは加えて、そのような識別子は、少なくとも、該先端の画像を含む画像フレームおよびテンプレートを参照して計算された相関性能指数に基づいて(例えば自動化された様式で)生成され得る。携帯容器は、押し潰すことができるボトルを含み得、ROIは、患者の眼を含み得る。識別子の作成は、一連の画像フレームの全ての画像フレームに共通する該先端の位置の特定を含み得る。生成工程は、一連の画像フレームからのターゲット画像フレームの決定を含み得、ターゲット画像フレームは、該空間を通じた液滴の進みのみを表す。特定の実施態様において、識別子の作成は、少なくとも
(式中、T(i,j)はテンプレートのピクセルに対応する照度値であり、F(i,j)は画像フレームのピクセル照度値であり、
は、テンプレート全体で計算されたピクセル照度値の平均であり、かつ
は、画像フレームの局所画像領域のピクセル照度値の平均である)にしたがって計算される相関性能指数に基づいて、液滴がROIに落下したかどうかを表す識別子の生成を含む。
【0011】
この方法は、任意で、ターゲット画像フレームにおけるROIの閉境界(closed boundary)を該ターゲット画像フレームに含まれる画像の色区分に基づいて特定する工程、および加えてまたは代わりに、少なくともFOVおよび光学検出器のピクセルのサイズに基づいてROIに対する液滴の位置を決定する工程を含み得る。適用工程は、容器の先端から薬物の液滴を押し出して該先端から該液滴を放出するように薬物送達システムに手動での入力を施す工程であって、第2のフレーム要素が該シーンの方に向けられた光源(可視または赤外のいずれでも)を含む工程を含み得、この方法は、加えて、各画像フレームの記録のために光源で液滴を照射する工程を含み得る。特定の態様においては、一連の画像フレームの記録は、スペクトルのIR部分でかつ第2のフレーム要素の光源の非存在下で達成され得る。
【0012】
本発明の態様はまた、先端を有する選択された携帯容器を(任意で、取り外し可能に)固定するように寸法づけられているマウントを含む製造物品であって、該マウントが第1および第2のフレーム要素を有し、該第1のフレーム要素が流体容器に沿って第1および第2の端部ならびに(任意で、伸縮自在に調整可能である)長さを有し、該第2のフレーム要素が該第1のフレーム要素に対してある角度で接続されており、該第2のフレーム要素が(i)流体容器が該マウントに固定されると該先端の近傍をカバーする視野(FOV)を有するレンズおよび(ii)光学検出器を搭載している製造物品を提供する。当該光学検出器は、可視光および/またはIR光を検出するように動作可能である。そのようなマウントはさらに、例えば前記近傍における領域を照射するために第2のフレーム要素上に配置された(可視および/またはIR)光源;ならびに、光学検出器と機能的に連絡している電子データ処理回路であって、照射された領域の時間的および空間的特徴を決定するために受信した光学データを記録および処理するようにプログラムされた回路を含む。当該光学検出器は、光源により照射されて当該領域によって反射された光に対応する照度分布をレンズから受信するように、光源と空間的に調和させて配置される。前記角度は、第1および第2のフレーム要素を機能的に接続しているヒンジによって、約0度〜270度の間で調整可能であり得る。関連する態様においては、前記角度は固定され得る。
【0013】
マウントはさらに、流体容器が該流体容器の首にあたる位置で取り外し可能に固定されるようにする構造を有するリング様アダプターを含み得;該アダプターは、様々なサイズの流体容器を収容するように調整可能であり得る。ある態様はさらに、光学検出器と機能的に連絡している映像記録手段を含み得る。
【0014】
特定の例において、携帯容器は、患者の眼に送達されるべき薬物で満たされた、押し潰すことができるボトルを含み、該ボトルは、実施時、先端に薬物の液滴を形成させて該液滴の送達を達成するように患者によって押し潰される場合、(i)当該近傍における領域は、先端、患者の眼、および該先端と該眼とを隔てる空間を含み、かつ(ii)該物品は、その中にプログラムコードが保存されている有形の非一時的記憶媒体をさらに含む。そのようなコードは、電子データ処理回路によって実行される場合、各フレームが空間内の液滴の対応位置を表す一連の画像フレームを回路に記録させ;そして少なくとも、該先端の画像を含む画像フレームおよびテンプレートを参照して計算された相関性能指数に基づいて、空間的および時間的特徴の識別子を生成する。光源で照射された領域の空間的および時間的特徴は、(i)患者の眼への薬物の送達の成功の成績、(ii)携帯容器から分配された薬物の量に関する第1の値、(iii)薬物の送達時間を表す第2の値;および(iv)患者の眼に送達された第1の値の比率を表す第3の値、のうちの1つまたは複数を表す。1つの態様において、当該物品は赤外線熱検出光学システムをさらに備えてもよく、該システムは、画像化における医薬と組織との間の差を増大させ、それによって可視光システムと比較した場合に一部の患者において点眼薬を検出しその経路を追跡するシステムの能力を改善することができる。
【0015】
1つの態様において、画像はその後、いつ薬物の投与が行われたのか、薬物の投与が正確かつ的確に適用されたかどうかならびにどこにおよびどのくらいの薬物が分配されたのかを、半自動または全自動で検出することができる画像分析ソフトウェアによって分析される。このソフトウェアは、画像取得および画像記憶デバイスとは別個のコンピュータ機器上に存在し得る。ソフトウェアはまた、液滴送達が成功した際に患者に迅速なフィードバックを与えるよう、画像取得および記憶デバイス付近にまたはその一部としてのプロセッサに組み込まれ得る。物品の1つの態様において、治療計画に対するコンプライアンスの分析は、当該物品によって記録されたデータをコンパイルし得る固定された読み取りセンターにおいて個人によって行われ得る。
1つの態様において、物品は、内蔵バッテリーによって動作し得る。別の態様において、物品は、コード接続を通じて外部動力源によって動作し得る。
1つの態様において、物品は、キャプチャされたデータを、無線でまたは有線接続を通じて転送し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、ほとんどの場合、正確な縮尺ではない図面と共に以下の図面の簡単な説明を参照することによってより十分に理解される。
【0017】
図1A図1Aは、フレーム要素がヒンジを介して相互に再配置可能に取り付けられている本発明の態様の図を提供する。
図1B図1Bは、フレーム要素がヒンジを介して相互に再配置可能に取り付けられている本発明の態様の図を提供する。
図2図2は、フレーム要素がヒンジを介して相互に再配置可能に取り付けられている本発明の態様の図を提供する。
図3図3は、フレーム要素がヒンジを介して相互に再配置可能に取り付けられている本発明の態様の図を提供する。
図4図4A、4Bは、フレーム要素が恒久的な空間配置で相互に固定されている本発明の態様を示している。図4Aは、この態様の分解図を示している。
図5図5Aは、フレーム要素がヒンジを介して相互に再配置可能に取り付けられている本発明の態様の図を提供する。図5Bは、フレーム要素が恒久的な空間配置で相互に固定されている本発明の態様を示している。図5Bは、この態様に機能的に配線された外部デバイスを示している。
図6図6A、6B、6C、6Dは、点眼送達手順の間に本発明の態様によって取得された映像フレームを表す画像である。
図7図7は、注射ユニットを含みかつこれを支持する本発明の代替態様の使用を示す図である。
図8図8は、注射ユニットを含みかつこれを支持する本発明の代替態様の使用を示す図である。
図9A図9Aは、図7および8の代替態様を示す図である。
図9B図9Bは、図7および8の代替態様を示す図である。
図10図10A、10B、10C、10Dは、図7および8の態様の様々な要素を図示している。
図11図11は、図1A、1B、2、3、4A、4B、5A、5B、7および8の態様の任意の空間的に拡張可能な要素を示す図である。
図12図12A、12Bは、図7、8の態様のさらなる図である。
図13図13は、本発明のアルゴリズムのフローチャートである。
図14図14は、本発明の態様によって点眼送達手順の間に取得されたグレー画像であり、この態様のカメラの視野に対して、この態様で固定されている液滴容器のノズルの位置を示している。
図15図15は、画像/映像フレーム番号の関数としての点眼位置の変化を示すプロットである。
図16図16A、16Bは、それぞれ、画像フレームの色区分の工程および眼の領域が本発明の態様にしたがい特定されている得られた画像を示す画像である。
図17図17は、薬物容器のノズルから眼への点眼薬の軌道を示す重畳されたマーカーを有するいくつかの映像フレームのコンピレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の態様は、慢性的健康状態(例えば緑内障および糖尿病)のための服用アドヒアランス介入デバイスを提供する。このデバイスは、医師が患者の薬物治療計画へのアドヒアランスを直接的かつ偏りなく理解でき、そのため個別の介入により疾患の進行を予防するように薬物の送達および/またはコンプライアンスを改善することができるようにする構成を有する。各々の薬物適用の例は、携帯型画像化デバイスによって記録される。画像は、その後、患者、彼らの医師、読み取りセンターおよび/または画像化ソフトウェアによってレビューされ得る。その後、患者および/または彼の医師、医師のスタッフもしくは患者のケアに参加もしくはそれを支援し得るその他の医療団体もしくは人々が必要な場合に組織もしくは眼への治療計画に基づく送達および/またはコンプライアンスを改善し、それによって患者の健康および疾患の管理を改善することができるようにするレポートが生成され得る。このデバイスの1つの態様は、糖尿病の管理をモニタリングするために注射手順との干渉なしに標準的なインスリンシリンジに適合するまたは緑内障薬の投与のモニタリングのために標準的な点眼ボトルに適合するように設計されている。したがって、このデバイスは、実際の治療計画のコンプライアンスを示していないかもしれない間接的なモニタリング法によらない薬物投与の直接的な可視化を可能にする点で、現在のモニタリング法(例えばMEMSキャップ、医薬詰め替え記録、および錠剤数)よりも優れている。
【0019】
本発明の態様は、流体充填シリンジまたは点眼ボトルで送達される医薬が実際に送達されることが意図されている部位に到達するかどうかを知りたいという要望に取り組み、そして薬物送達の評価を自動化する能力を与える。本発明のアイデアにしたがい、および間接的なコンプライアンスの測定(例えば、薬物容器の秤量および/またはタイマー/アラーム)に頼ることに代えて、本発明のシステムの態様は、レビューまたは定量され得る組織への流体の実際の投与を記録するために流体充填容器と並置される映像モニタリング手段を採用する。加えて、記録された画像は、正確な投与時刻の記録を提供するようにタイムスタンプを押され得る。本発明のデバイスによって取得されかつ任意で記録されるデータはさらに、例えばその手順に伴うコンプライアンスの映像表示ならびに/または可視的および電子的評価のために、有形のコンピュータ読み取り可能な媒体に転送および/または保存され得る。そのようなデータは、その後、遠隔サーバまたは読み取りセンターに転送され得、そこで手動でまたは自動でレビューされ得、組織への実際の薬物送達および送達のタイミングを詳述する書面のレポートが医師および/または患者に提供され得る。加えて、これらのデータはさらに分析され得、そして指示された投薬時間からの変動の平均および/または中央値ならびに組織に送達された薬物の量の変動の平均および/または中央値を含む概要レポートが提供され得る。統計データ、例えば標準偏差および有用性が見出され得るその他の統計分析もまた提供され得る。この評価は全て、読み取りセンターによっておよび/またはデバイスに含まれる画像分析ソフトウェアによって行われ得る。
【0020】
図面を参照すると、図1A、1B、2、3、4A、4B、5A、5Bは、点眼薬投与のモニタリングシステムの要素の異なる視点の図および組み立てられた形態のモニタリングシステムを示す図を提供する。態様100、500は、点眼薬適用モニター(Eye-Drop Application Monitor; EDAM)と称され、点眼薬で満たされている容器110(使用中でないときはキャップ110bで覆われるノズル110aを有する)と共に示されている。態様100は、後述されるように、容器110を収容するように構成された第1のフレーム要素またはアーム101および第1のフレーム要素101に取り付けられた第2のフレーム要素102を含む。1つの実施態様100において、第2のフレーム要素102は、ヒンジ103によって、第1の要素101に対して調整可能かつ/または再配置可能に接続されている。第2のフレーム要素102は、第1のフレーム要素101に対して概ね角度αで配置される。この角度αは、約60〜約200度、好ましくは約90〜約170度、さらにより好ましくは約120〜約150度の範囲であり得る。特定の実施態様においては、角度αは、以下で詳述されているように、この態様のカメラによる点眼手順の最適な見通しを確保する約135°である。(あるいは、第2のフレーム要素102は、図4A、4Bに示されているように、第1のフレーム要素101に対して、約60〜約200度、好ましくは約90〜約170度、さらにより好ましくは約120〜約150度の範囲である角度βで固定接続される。特定の実施態様においては、角度βは、以下で詳述されているように、この態様のカメラによる点眼手順の最適な見通しを確保する約135°である。)映像カメラおよびレンズの位置は、概ね、点眼ボトルの先端がビデオ画像の視野に入る位置であり、より好ましくは50%以下が画像に入る位置であり、最も好ましくは約25%までが映像フレームに入る位置である。
【0021】
図1A、1B、2、3、4A、4B、5A、5Bをさらに参照すると、第1のフレーム要素101は、足部分109およびクラスプ112として構成される第1および第2の端部を有する部分111を含む。第1のフレーム要素101は、任意で、長さまたは高さが異なる流体含有ボトルの挿入が可能なように、部分111の内側から変化し得る調整可能な長さを有する(例えば、伸縮自在におよび任意で負荷(例えば、ばねの負荷)の下で、部分111のあるサブ部分111Aを別のサブ部分111Bの内側に再配置することによって)。足部分109は、ベース部分109の一方の側で、例えば第1のフレーム要素101内の容器を足109とクラスプ112の間で(任意で、伸縮自在部分111内のバネの負荷の下で張力がかかった状態で)空間的に安定させるために流体充填容器110の底との接触を提供する形状を有する。図4Bに示されているように、サブ部分111A、111Bのうち一方は、任意で、第1のフレーム要素101Aの部分111が完全に縮んだ状態にあるときにサブ部分111Aを支える寸法を有するマウンティングアームブレース430を備え得る。
【0022】
このデバイスの態様はさらに、任意で、この態様100の動作に必要な、動力ユニット(例えば、任意で交換可能かつ/または再充電可能なバッテリー)用のホルダーとして構成されるベースユニット104ならびに/または補助ハードウェア(例えば、電子回路および/もしくはプログラム可能なプロセッサおよび/もしくは有形の記憶媒体)を備えてもよい。しかし、関連する態様(例えば、図5、500の態様)においては、ベースユニット104は存在しない場合があり、動力ユニットおよび補助ハードウェア要素の少なくとも一方がフレーム要素またはアーム101の内部にまたはそれと並んで配置され得る。任意で、ベースユニット104は、USBポートまたは例えば電気プラグのものと同様の様式でのコンピュータまたは別の外部電子デバイス(図示せず)との動作可能な接続に適したポート105を備える。ポート105は、外部デバイスとベースユニット104との間のデータおよび/または動力の転送のために(例えば、ベースユニット104内のバッテリーを再充電するためまたはシステム100によって収集されたデータを外部電子デバイスに転送するために)適切に構成されている。関連する実施態様においては、ポート105は、外部電子プラットフォーム(図示せず)でのシステム100の空間的ドッキングを容易にするように適合される。そのようなドッキングプラットフォームは、充電およびデータ転送、計量、または有益であると見いだされる他の機能を実現し得る。任意でベースユニット104を欠く態様において、図5Bに示されているように、カメラ106と外部バッテリーおよび/またはデータ記憶媒体および/またはデータ処理回路550の間の機能的なデータおよびエネルギー転送可能な接続は、(Bluetooth、イントラネットまたはインターネットベースのコミュニケーション手段を用いた)直接的な有線接続560を介するかまたは無線かのいずれかで構成され得る。これにより、このデバイスの使用中にテーブルの上または使用者の膝に置くことができる別個のユニットにバッテリーおよび画像/映像記録ソフトウェアを収容することができるであろう。
【0023】
図1A、1B、2、3、4A、4B、5A、5Bをさらに参照すると、第2のフレーム要素102(任意でヒンジ103を中心に角運動可能なハンドルとして示されている)は、クラスプ112の方を向いたその表面に、レンズを含むマイクロ光学システムを任意で備えるカメラ106を搭載している。フレーム要素102はさらに、少なくとも1つの光源107を搭載しており、そこからの光が、必要とされるシーンの照射を、カメラ106がキャプチャすることができる画像に提供する。フレーム要素102へのカメラ106の取り付けは、適当な接着剤または(例えば、要素102の本体に形成されたネジ式くぼみまたは穴を用いる)当技術分野で公知の代替のマウンティング手段を使用して確立され得る。光源107は、LED、ハロゲンバルブ、または適当な寸法を有する別の光源を含み得る。光源107は、可視光である380nm〜700nmの光を使用し得、典型的な照度はおよそ250ミリカンデラ(mcd)であるが、これは光源に動力を供給するために使用されるワット数に依存して異なり得る。全ての例において、光により誘導される網膜毒性を引き起こし得るレベルより下にする必要がある。現行の技術に基づくと、可視光を発する光源107は、電子回路410によって提供されるおよそ120mWの動力を必要とする。図3は、このデバイスの態様が2つの光源107を含む例を示している。数個の光源107が第2のフレーム要素102に配置される場合、そのような光源107は、既定の幾何学的様式(例えば、光源107の数に依存して円形、多角形)でカメラ106のまわりに空間的に分配され得る。カメラ106および光源107の空間的配置および/または向きは、動作時に、点眼薬容器がクラスプ112と足109の間に固定されたときに、ノズル110aから射出された点眼薬の光源107による照射が、点眼薬が滴下先端を離れた時から眼に入った時または眼に入り損なった時までの点眼薬の情報に富む画像を取得するのに十分となるものである。1つの態様において、点眼ボトルの先端は、点眼薬がボトルを離れた時から組織と接触する時までの点眼薬の方向を記録できるように、画像の縁部に見られる。要素414、418は、カメラユニット106を支えて収容するために使用される構造要素を示している。
【0024】
カメラ106および/または光源107は、導電性部材108を通じてベースユニット104と電気的に接続される。1つの態様において、そのような部材108は、スライド調整可能な部分111の空洞または内部空間を通る電線またはバスを含む。別の態様(図示せず)においては、導電性部材108は、部分111の外側にまたは実質的に隣に配置されてもよいし、またはさらには部分111の本体/壁の中に埋め込まれてもよい。
【0025】
カメラ106の光学レンズは、好ましくは、約60度〜(完全に直線の角度によって定義される)約180度の視野を有する。1つの態様において、例えば、約120〜約180度の視野または好ましくは約150度〜約180度の視野を有する広角レンズが使用され得る。眼とレンズの間の約5mm〜約50mmの距離での画像化に適した任意のレンズが許容されるが、概して広角レンズが好ましい。関連する態様において、実施時のカメラ106と眼の間の動作距離は、約5mm〜約100mmの間、より好ましくは10mm〜50mmの間、最も好ましくは15mm〜35mmである。したがって、カメラ106の光学レンズは、約0.2mm〜4mmまたはより好ましくは約0.5mm〜約2.54mm、そして最も好ましくは約0.75mm〜約1.5mmの焦点距離を有する。実施する際、レンズのF値は、約1〜約5、またはより好ましくは約1.5〜約3の範囲であり得る。カメラ106に付属する画像検出器(図示していない、例えば要素102においてカメラ106の後方にある)は、ノズル110aの近傍(例えば、ノズル110aによって射出された点眼薬およびこれらの点眼薬が向かう患者の眼)を含むシーンを表す光学データを取得するように構成される。概して、より高性能の検出器として、約1/5''〜1/2''のサイズ範囲および400*400〜2048*2048の範囲またはそれ以上のピクセル数を有するCMOSベースの検出器が利用可能となっており、好ましくは1/3''、約1024*1024のピクセル数またはそれ以上が使用される。加えて、このモニタリングシステムの態様は、次の点眼薬を投与する時間であることを患者に思い出させるために、時間測定および/もしくは音もしくは光発生メカニズムならびに/またはデータを外部の患者が読み取り可能なものに転送する無線トランスミッターを含むユーザーインターフェースを含み得る。この態様を作動させるおよび別の液滴を投与するかまたはユーザーインターフェースの関連するトリガーを押し下げる動作は、(例えば、いくつか例を挙げると、光による警報、患者の電話への電子メールもしくはテキスト、または音による警報として構成され得る)通知リマインダーを停止またはリセットし得る。
【0026】
現在のデザインは複数の異なるサイズの流体充填容器で使用できるものであるが、ユニットが単一の流体充填容器に適合するように固定されておりいくつかの可動部分を有するかまたはそれを有さない他のデザインも使用され得ることが理解される。流体充填容器は、点眼薬、点耳薬、点鼻薬、経口滴、皮膚滴下薬、シリンジ(以下でさらに述べられる)、ならびに任意の他のそのような流体充填容器(ヒトおよび/または動物における薬物の送達に関して想定され得または使用され得る)を含むことが理解される。液滴が流体充填容器に挿入された流体充填チューブから送達される場合、カメラは流体充填チューブに取り付けられてもよい。
【0027】
以下の実験研究例は、患者の点眼薬治療計画の評価における点眼薬適用用映像モニタリングデバイス(例えば、図1A、1B、2、3、4A、4B、5Bの態様100および図5Aの態様500において使用されるもの)の使用を例証している。これは特に、点眼薬の形態で送達される新薬の臨床研究において、点眼薬治療計画に対する患者の不応答が、その薬物が役に立たなかったからなのか、または患者が指示された時にその薬物を使用しなかったからなのか、またはその薬物が彼らの眼に入らなかったからなのかを研究者が決定するために重要である。本発明の態様はまた、副作用が起きた場合に、そのような副作用が、点眼薬の過剰使用に起因するのか、またはそれらが正確に送達された場合には起こり得ない送達に関する他の問題に起因するのかの決定を容易にする。最後に、緑内障等の状態に関して患者を処置する眼科医にとって、患者の応答の欠如の理由が、薬物が役に立たなかったからなのか、または不正確な投薬もしくは必要回数の点眼薬が眼に送達されない投薬によるものなのかを知るために重要であり、そのような知見は医師が将来の治療計画を決定する様式に影響するであろう。副作用があった場合、それらが不適当な送達、過剰な送達、または単に薬物自体の結果かどうかを決定することが可能であろう。この情報から、患者の薬物治療計画に対してより的確な調整がなされ得る。必要な調整は、眼への点眼薬の適当な送達に関して患者を訓練することまたは別の薬物の選択のような単純なものであり得る。薬物の適当な送達が達成されないことが関節炎、震え、適当な訓練の実施不能または他の病気に起因する場合、代替緑内障治療、例えばレーザー手術(例えば、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)、アルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)、マイクロパルスレーザー線維柱帯形成術(MLT)およびレーザー毛様体光凝固術)、切開手術(線維柱帯切開術、弁、カナロストミー(Canalostomy)、シートン術)、経口剤、またはそれらのいくつかの組み合わせが指示および/または実施され得る。
【0028】
したがって、1つの実験において、態様100の容器110に入れられた対象あたり10滴の点眼薬を、眼、眼の外側、およびまぶたの縁部に対応する移行領域、および/または眼の角に複数回投薬した。投薬手順の映像記録を取り、それに加えて個々のアイケア提供者/観察者もまた、彼の観察にしたがい、眼に送達された点眼薬の数を、眼に入れ損なった点眼薬の数との比較で記録した。データ処理回路(例えば、コンピュータプロセッサ)による映像記録の処理は、与えられた液滴が眼に送達されたかどうかを、100%のビデオ画像において確実に決定できることを実証した。この結果と個々の観察との比較が表1に示されている。映像に記録されているものと専門アイケア提供者が観察したものとの間には実際の結果にばらつきが存在する。液滴が眼に入る速度および/または割合によっては、送達された薬物量を吸収する眼の能力をしばしば超過し、結果として、患者または観察者による眼への液滴の指示通りの送達の視覚的決定の精度が損なわれる。これは、ドライアイのために使用されるまたは防腐されていない、染み込んだときに痛みおよび刺激を引き起こさない点眼薬の場合に、それらが眼に入ったかどうかを伝達することが困難であるため、特に当てはまる。しかし、映像記録を用いることで、液滴が眼に入ったかどうかを100%の確かさで伝達することが可能である。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2
赤外線カメラ(例えば、態様100のカメラ106、およびこの特定の実験ではAtom 1024IRカメラ)を使用して、ターゲット(眼)への点眼薬送達の画像化および記録の質を評価した。そのような記録手段を使用することにより、白色の背景である患者の皮膚に対して黒色に見える液滴をはっきりと確認することができた。ここで、図6A、6B、6Cおよび6Dを参照すると、本発明の態様は、50ミリケルビン(mK)未満の温度差を検出する能力を有しており、ピクセル解像度が1024x768(17ミクロンピクセル)であり、フレームレートが30Hz XGAまたは60Hz VGAであり、かつ熱時定数が10ms未満であった。この実験は、78°Fに空調された建物の中で行い、点眼薬は室温であった。液滴が眼に入ったときに、その後数秒内に室温に戻りそのIRシグネチャーを回復する温度フラッシュ(temperature flush)も観察することができた。この実験の代替版において、点眼薬を冷凍し、そして同様の眼への点眼薬の送達およびそれに伴う記録/モニタリングにより同様の結果を得た。
【0031】
図1〜6を参照して上記されているモニタリングデバイス構造の使用に加えてまたはそれに代えて、本発明のアイデアは、インスリンまたはいくつかの薬物の注射を可視化するために使用され得る。
【0032】
この目的で、および図面をさらに参照して、図7、8および9Aは、(旋回点706を中心に相互に再配置可能に取り付けられた2つのフレーム要素704A、704Bを含むよう示されている)ブレース要素またはブレーサー704を含むモニタリングシステムの態様700を概略的に示す異なる透視図を示している。1つの実施態様において(および図示されているように)、ブレーサー704の2つのフレーム要素704A、704Bは、実質的に類似の構造を有し、したがってブレーサー704の半分であるとみなされ得る。しかし、概して、ブレーサーフレーム要素704A、704Bは、構造的に異なり得るが、その間に配置された薬物容器をきつくしっかりと収容するように構成され得る。ブレーサー704は、好ましくは、要素704A、704Bが旋回点706を中心に相互に対して回転した後の、それらの間の固定的連携を容易にする、ブレースフレーム要素704A、704Bの相互に面する端部に配置された締め付け手段710を備える。図7および8では、態様700が、針716およびプランジャー718を有しかつ液体(流体)薬で満たされているシリンジ714と並んで示されており、図9Aは、ブレーサーフレーム要素704A、704Bが旋回点706を通る軸を中心にヒンジ開放されている態様700自体の図である。本発明の特定の実施態様においては、フレーム要素704A、704Bの間の連携は、任意で、完全に着脱可能であり、この場合、旋回点706を中心とするヒンジに代えて第2の締め付け手段(図示せず)が使用され得る。
【0033】
図9Aおよび9Bをさらに参照して、第2のフレーム要素704Bがヒンジ708によって第1のフレーム要素704Aに調整可能かつ/または再配置可能に接続されている態様が述べられている。そのように接続されたフレーム部分704A、704Bは、シリンジを把持するための複合レバーとして構成される、ペンチのような、シリンジ714への取り付けのためのツールを形成する。第1のフレーム要素704Aは、二面角Aを画定する構造を有するマウンティングアーム部分720と強固に一体化されている。この角度Aは、約60〜約200度、好ましくは約90〜約170度、さらにより好ましくは約120〜約150度の範囲であり得る。特定の実施態様においては、角度Aは、以下で詳述されているように、この態様のカメラによるシリンジ714のターゲット部分の最適な見通しを確保する約135°である。
【0034】
マウンティングアーム720は、ブレースフレーム要素704Aに(角度Aで)面している表面722上にカメラ726を搭載している。カメラ726は、任意で、レンズを含むマイクロ光学システムを備える。マウンティングアーム720は、さらに、表面722上に少なくとも1つの光源(図示せず)を搭載していてもよく、そこからの光が、必要とされるシーンの照射を、カメラ726がキャプチャすることができる画像に提供する。1つの態様において、マウンティングアーム720へのカメラ726の取り付けは、適当な接着剤または(例えば、アーム720の本体に形成されたネジ式くぼみまたは穴を用いる)当技術分野で公知の代替のマウンティング手段を使用して達成され得る。光源は、LED、ハロゲンバルブ、または適当な寸法を有する別の光源を含み得る。数個の光源がアーム720の表面722に並置されて用いられる場合、そのような光源は、既定の幾何学的様式(例えば、光源の数に依存して円形、多角形)でカメラ726のまわりに空間的に分配され得る。カメラ726および付属する任意の光源の空間的配置および/または向きは、動作時に、シリンジ714がフレーム要素704A、804Bの間で固定されたときに、針716の周りの領域および薬物を含むシリンジ814の本体の一部の両方がカメラ726の視野(FOV)に収まるようにするものである。そのような構造および寸法とされることで、薬物投与セッションで針が挿入される組織の領域およびシリンジ714の容器内の薬物のレベルを観察および映像記録することができ、それによって治療計画へのコンプライアンスまたはその欠如を表すデータを提供することができる。カメラと共に光源が使用される場合、光源によってカメラ726のFOV内の空間に提供される照度レベルは、周囲照明の条件下で情報に富む画像を取得するのに十分なものとされる。
【0035】
図9Bを参照すると、カメラ726の任意のレンズは、好ましくは、約60度〜(完全に直線の角度によって定義される)約180度の視野を有する。1つの態様において、例えば、約120〜約180度の視野または好ましくは約150度〜約180度の視野を有する広角レンズが使用され得る。針〜注射領域、および、シリンジから注射される薬物の量を決定するために使用される目盛り表示を有するシリンジチューブの一部の両方をカバーする視野を画定するために、概して広角レンズが好ましい。関連する態様において、作動中のカメラ726と針範囲の間の動作距離は、約40mm〜約75mmの間である。したがって、カメラ726の光学レンズの焦点距離は、約0.2mm〜4mm、またはより好ましくは約0.5mm〜約2.54mm、そして最も好ましくは約0.75mm〜約1.5mmである。レンズのF値は、約1〜約5、またはより好ましくは約1.5〜約3の範囲であり得る。カメラ726に付属する画像検出器(図示していないが、例えばアーム720のカメラ支持部分910においてカメラ726の後方に配置される)は、針716の近傍を含むシーンを表す光学データを取得するように構成される。(マウンティングアーム720のカメラ支持部分910は、図9Bに示されているようにマウンティングアームの非可動部分としての構造を有してもよいし、あるいは図11を参照して後述されるように、マウンティングアーム520の残りの部分に対して可動かつ/または再配置可能である部分としての構造を有してもよい。)概して、約1/5''〜1/2''の範囲内のサイズ範囲および400*400〜2048*2048の範囲またはそれ以上のピクセル数を有するCMOSベースの検出器が利用可能となっており、好ましくは1/3''、約1024*1024のピクセル数が使用されるが、関連する実施態様では他の検出器も利用され得る。加えて、このモニタリングシステムの態様は、次の注射を行う時間であることを患者に思い出させるために、時間測定メカニズムおよび/または音もしくは光発生メカニズムを有するユーザーインターフェース、ならびに/あるいは外部の患者読み取り可能なデバイスにデータを転送する無線トランスミッターを含有してもよい。この態様を起動して注射を行うかまたはユーザーインターフェースの関連するトリガーを押し下げる動作は、(例えば、いくつか例を挙げると、光による警報、患者の電話への電子メールもしくはテキスト、または音による警報として構成され得る)通知リマインダーを停止またはリセットし得る。
【0036】
図7および8を参照すると、カメラ726(および/または表面722上のカメラに付属する任意の光源)は、ベースユニット734と機能的に(少なくとも電気的に)接続される。ベースユニット734は、態様700の動作に必要とされる動力源(例えば、任意で交換可能および/もしくは再充電可能なバッテリー)ならびに/または補助ハードウェア(例えば、電子回路および/もしくはプログラム可能なプロセッサおよび/もしくは有形の記憶媒体)のためのホルダーとして構成される。示されているように、態様700とベースユニット734の間の機能的連絡は、フレキシブルケーブル736を通じて確立され得る。ベースユニット734は、(フレーム要素に対して内部か外部かによらず)フレーム要素704A、704Bを通る電気的接続を通じてカメラ726と連携し得、あるいはフレキシブルケーブル736が要素704Aに直接取り付けられ得る。さらに別の実施態様において、カメラ726とベースユニット734の間の連絡は、無線として構築され得る。
【0037】
しかし、関連する実施態様(図示せず)においては、ベースユニット734は存在しない場合があり、動力ユニットおよび補助ハードウェア要素の少なくとも一方がフレーム要素704A、704Bまたはアーム720内にまたはそれと並んで配置され得る。ベースユニット734を欠く態様(図示せず)において、カメラ726と外部バッテリーおよび/またはデータ記憶媒体の間の機能的なデータおよびエネルギー転送可能な接続は、(Bluetooth、イントラネットまたはインターネットベースのコミュニケーション手段を用いた)直接的な有線接続を通じてまたは無線のいずれかで構成される。
【0038】
任意で、ベースユニット734は、USBポートまたは例えば電気プラグのものと同様の様式でのコンピュータまたは別の外部電子デバイス(図示せず)との動作可能な接続に適したポート(図示せず)を備える。この任意のポートは、外部デバイスとベースユニット734の間のデータおよび/または動力の転送のために(例えば、ベースユニット734内のバッテリーを再充電するためまたはシステム700によって収集されたデータを外部電子デバイスに転送するために)構成される。関連する実施態様において、ベースユニット734のポートは、外部電子プラットフォームでのシステム700の空間的ドッキングを容易にするように適合され得る。そのようなドッキングプラットフォームは、充電およびデータ転送、計量、または有益であることが見いだされるその他の機能を実現し得る。
【0039】
ここで図10A、10B、10Cおよび10Dを参照すると、そしてさらに図7を参照すると、ブレーサーフレーム要素704Bの構造の例が示されている。実施時にブレーサーフレーム要素704A、704Bの間に典型的なシリンジ714を収容するため、一つのブレーサーフレーム要素704Bは、締め付け手段710を閉じたときに、フレーム要素704A、704Bの間に配置されたシリンジ714のリムまたはカラー(フランジ)を固定して収容する寸法の内部空間1012を画定する壁を有する実質的に中実のシェル1010を含む。したがって、壁1010は、相対するフレーム要素704Aに面しているフレーム要素704Bの面に沿って、壁1010の縁部分の半円形の湾曲した部分1020、1022を画定する形状を有し得る。フレーム要素704A、704Bがブレーサー704の半分の寸法を有する特定の例において、要素704Aは、実質的に同様の様式の構造を有する。ここで、要素704A、704Bの各々の半円形部分1020、1022の各々は、実質的に円筒形状の物体を収容する寸法を有する対応する半円形のクレードルを画定し、ブレーサーフレーム要素704A、704Bがひとつにまとめられて締め付け手段710によって締め付けられたときに(例えば、図7を参照のこと)、これらのクレードルは合体して、フレーム部分704A、704Bによって画定される共通平面に対して実質的に垂直に配置されたシリンジ(または別の準円筒形物体)を把持し固定するように寸法づけられている円形ブレーサーを画定する。
【0040】
例示されている実施態様に対する改変またはその派生物は、本明細書に開示される本発明のコンセプトから逸脱することなくなされ得る。例えば、マウンティングアーム720は、相互に対して可動性がある2つのサブ部分を含み得る。例えば、カメラ726を含むマウンティングアーム720の一部分(部分910として示されている)は、例えばカメラ726をフレーム要素704Aから隔てている距離の変更を可能にするように、マウンティングアームの残りの部分に対して制御可能にスライドすることができる構造を有し得る。この目的で、図11に示されているように、アーム720は、その中に(アーム720の可動サブ部分の)ピストン1110を収容するのに適した寸法を有する中空を含む。マウンティングアーム720の伸長または短縮を容易にするため、ピストン1110が、アーム720の中空部から段階的かつ/もしくは連続的な様式で外に出され(延び)るかまたは中空部に押し入れられる(例えば、伸縮自在様式で引っ込められる)。関連するおよび/または代替の実施態様においては、図12A、12Bにおいて1200として示されているように、マウンティングアーム1220は、回転固定手段(この態様の特定の例においては、ヒンジ1230として示されている)を使用してフレーム要素1204Aに取り付けられ得る。(マウンティングアーム1220がヒンジを中心にブレーサー704に向かって回転する、図12Bの)折りたたみ構成においては、この態様の全直線範囲は縮小され、本発明のデバイスの保存および取り扱いが容易になる。折りたたまれていない位置においてマウンティングアーム1220を支えるため、(図12Bにおいて、ブレーサー704に対して画定される延長部または突起部として示されている)1つまたは複数の固定具1232Aが、フレーム要素704Aの表面上に実装され得、この固定具はマウンティングアーム1220の本体で画定される1つまたは複数の対応するポケット1232Bと機能的に連携する。固定具1232Aおよびポケット1232Bは、任意の断面プロフィール、例えば示されているような四角形または円筒形を有し得る。そのような代替の構成は、ブレーサーフレーム要素上でアーム1220を折り返し、ブレーサー704に対するマウンティングアーム1220の制御可能な再配置を可能にする。
【0041】
図13は、本発明のデバイス(例えば、態様100)を用いて眼への薬物の送達の決定を行うために本発明からの画像の読み取りの完全または部分的な自動化を実現するアルゴリズムのフローチャートを図示している。そのような決定は、読み取りセンターにおいて、1つのソフトウェアプログラムによりおよび/またはこれら2つの組み合わせにより行われ得る。この決定は、この態様のカメラを用いて行われた(薬物送達プロセスの)記録の画像フレーム(映像フレーム)の分析に基づく。図1、5、13および14を参照すると、容器110が容器ホルダー500に入れられ、第1および第2のフレーム要素101、102の間の角度偏差αが選択された後、カメラ106に対するノズル110aの相対位置が固定され、したがってカメラ106の視野(FOV)におけるノズル110aの位置が全ての画像/映像フレームで実質的に一定の状態で維持される。したがって、液滴の画像1410がFOVの全領域よりも小さい領域の中にかつノズル110aの軸に関連する線1420上に存在することになるので、工程1310のフレームのFOVにおけるノズル位置の特定は、与えられたフレームのFOVにおける薬物の液滴の画像の検索を単純化する(図14を参照のこと)。したがって、画像フレームから得られたノズル110aのテンプレートまたは画像は、画像内で、最大相関値に対応する位置(その画像位置は滴下ノズルの画像位置にも対応する)を発見するためにフレームのグレー画像の赤色、緑色および/または青色(R、GまたはB)成分と相関させるために使用され得る。
【0042】
与えられた画像フレームとノズルの画像またはテンプレートとの間で定義されかつノズルテンプレートと画像フレームとの間の類似度を示す相関性能指数は、式(1)によって与えられる:
式中、T(i,j)はノズルテンプレートのピクセル値に対応する照度値であり、F(i,j)は与えられた画像フレームに対応するグレー画像のピクセル値であり、
は、ピクセル照度値のノズルテンプレート全体の平均であり、かつ
は、位置(x,y)の関数である局所画像領域のピクセル照度値の平均である。Cor(x,y)は、位置(x,y)における相関係数である。ノズルの画像が存在する全体画像領域は通常分かっているので、相関係数の計算は、与えられた画像フレームにおけるノズルの画像の正確、的確な位置の画定を容易にし、それによって計算時間を短縮する。
【0043】
画像フレームにおけるノズルの位置を特定した後、液滴送達に関連する画像の領域が決定され、そして液滴送達のターゲットに指定された患者の身体のROI(例えば、患者の眼)と比較され得る。以降で「液滴送達の画像領域」と称される液滴送達に関連する画像の領域は、ノズルの位置から中心線1420に沿って延び、画像化レンズの視野の関数として決定される幾何学的境界および画像化カメラの検出器のピクセルサイズによって制限される画像の領域と定義される。例えば、FOVが約170度でありかつピクセルサイズが約10ミクロンである場合、液滴送達の画像領域は、約50ピクセル幅、120ピクセル長である。後述されるアルゴリズムの工程は、この画像の領域内のみの液滴の検索を参照している。
【0044】
与えられた画像フレームにおける液滴の検出は、ノズル110aを通じて射出された液滴によって反射され液滴送達の画像領域内の与えられた画像において捕捉されたこの態様の少なくとも1つの光源107からの光の強度の最も高い値の検出に基づく。これらの極大強度の位置を決定することによって、工程1330において、工程1320で取得された画像フレームの各々で画像内の液滴の位置を特定することができる。1つの例において、液滴の位置は、より良い概算を行うために、複数の極大位置を平均することによって決定され得る。さらに、いくつかの連続して取得された画像フレームにおいて液滴位置を分析することによって、液滴の移動方向および経路も推測することができる。フレーム数に対するノズル110aから射出された与えられた薬物の液滴の位置の全体依存性が見出され得る(図15の曲線1510の例で示されるように)。液滴位置の値が不明瞭である場合(1510a)、それは液滴のサイズが大きくなっていることを意味するが;その位置が急激に変化する場合、それは液滴がノズル110aから離れ、眼に向かって落下していることを意味する。工程1340で、曲線、例えば曲線1510から、我々の関心対象である(図15において1520として円で囲まれているフレームに対応する)ターゲットフレームが決定される。ターゲット画像フレームは、液滴がノズルから離れる瞬間と液滴が眼の中にまたは眼の近くに落下する瞬間の間の時間内に記録されたフレームに対応する。
【0045】
この記録の画像/映像フレームのシーケンスにしたがって、画像シーケンスに含まれる(例えば、眼球の色と顔の皮膚の色の間の違いに基づく)色情報を用いることにより、眼の領域が画定され得る。眼の領域、眼(x,y)の特定は、例えば、式(2)および与えられた画像フレームの色区分の検討に基づいて行われ得る:
【0046】
1つの実施態様において、色区分(および、特に、各画像フレームにおける眼球領域の特定)は、眼球領域の色域が白色に近く、画像の残りの部分が実質的にそれより暗いという認識に基づく。したがって、そのような検討に基づいてR、GおよびBチャンネルについて適当なしきい値を設定することにより、各画像フレームにおいて支障なく眼球が特定され得る。
【0047】
加えて、本発明のモニタリングデバイスの態様は典型的には広角レンズ(全FOVが約170度)を用いるので、実際の例の大部分において、眼の領域は、画像フレームの視野の中心部分に位置する。この検討はまた、画像識別プロセスを容易にし単純化する。それは、我々がその中心部分のみで眼の領域を調査することができ、これにより計算を減らすこともできることを意味する。図16Aおよび16Bは、アルゴリズム1300の工程1350、すなわち(閉境界によって制約される)眼の領域の決定が行われることを示している(および任意で、色区分および眼の領域1620の縁部1610を決定するというサブ工程を含む)。
【0048】
ノズル110aから射出された液滴が眼の領域に到達した(すなわち、「ターゲット上に」ある)かどうかの決定は、図13の工程1360において、(ターゲットフレームからの)液滴の経路および眼の領域の縁部1610を表す画像データに基づいて行われる。図17は、ターゲットフレームの近くに由来する5つのフレームの合成画像(画像の重層)を示しており、この合成画像は、眼の領域1620に向かう液滴(十字1710を付されている)の軌道を明確に示している。この決定の結果として、患者が行った薬物送達プロセスの成功および治療計画に対するコンプライアンスを将来的に評価するために、識別子(例えばソフトウェアのフラグ「イエス」もしくは「ノー」または他の記録もしくはマーク)がシステムによって生成および保存され得る。液滴の位置1710の少なくとも一部が映像記録から決定されることを知れば、使用者は、液滴が眼の中にまたは眼の外側に落下する前でさえも液滴の経路を推測することができる。
【0049】
開示されている本発明の局面またはこれらの局面の一部分は、上で列挙されていない様式で組み合わされ得る。例えば、記録手段は、.mpeg、.flv、.mov、.movie、.rm、.wmvおよび開発される他の類似のまたは新しいフォーマットを含む複数のフォーマットで映像を保存し、それらを処理のために転送するために記憶媒体に機能的に接続され得る。1つの態様において、このデバイスは、シリンジによる注射、耳への滴下、鼻への滴下ならびにまたは皮膚および/もしくは他の組織へのその他の滴下の画像を送達するために使用され得る。これは、個人が点眼薬を正確に投与するのを補助し得る。1つの態様において、このシステムはさらに、薬物送達適用手順の間に取得された全ての画像フレームを個別に評価し、適用時間およびどのくらいの薬物が実際に所望の組織に送達されたのかを決定すること(送達部位に適用された薬物の量の正確な評価)ができる画像分析ソフトウェアを備える。別の態様において、点眼投与中の眼および眼の付近の空間のリアルタイム映像を表示するために外部モニターが利用される。モニターは、正確にはどのくらいの薬物が分配されたのかおよびどのくらいの薬物がターゲット組織に到達したかのより詳細な可視化を提供するために、赤外線熱検出システムを備え得る。いくつかの態様において、このデバイスは、光学安定化デバイスに取り付け可能であるべきである。この安定化デバイスは、患者の頭周りのバンド、ブレースまたは映像記録デバイスを安定化させる任意のデバイス、例えばジャイロスコープシステムであり得る。いくつかの態様において、安定化デバイスは、患者が点眼薬を投与するために彼らの両手を開放することができるようにする。一部の患者は手が震えるおよび/または一部の患者は点眼薬を放出させるのに必要な圧力に起因して点眼薬投与中に点眼デバイスを不意に動かすため、安定化デバイスはまた記録を明瞭にする。いくつかの態様において、このデバイスは、液滴の制御送達のために薬物容器を押し潰すことを要さずにそれを押しつぶすための、自動化機構または他の手段を含み得る。本発明のいくつかの態様において、このデバイスは、映像および液滴が取られた正確な時間のタイムスタンプを押すための時計を含むであろう。いくつかの態様において、時計はまた、次の薬物の投薬を行う時間になったときに、音、光、振動、電子メールおよび/または任意の他の機構によって患者に通知し得る。
【0050】
したがって、本発明は、開示されている態様に限定されるとみなされるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】