特表2016-503507(P2016-503507A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-503507(P2016-503507A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(54)【発明の名称】流体システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20160108BHJP
【FI】
   G01N15/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-545435(P2015-545435)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月10日
(86)【国際出願番号】US2013072225
(87)【国際公開番号】WO2014085585
(87)【国際公開日】20140605
(31)【優先権主張番号】61/731,190
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/814,959
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513301447
【氏名又は名称】サイトフロー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】CytoFlow, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】ベァ、ナサニエル・シー
(57)【要約】
流体システム(10)および方法が、流体ポンプ速度を介して流体の流速を独立して制御することにより、無限変数の流速および試料流体のコアサイズを伴って、フローサイトメーター(12)を通る流体の流れを正確に制御するために提供される。一実施形態では、システムは、2つの循環容積式ポンプ(36、38)および3つの弁(40、42、44)を使用し、弁(40、42、44)の調整された作動ならびにポンプ(36、38)の正確な制御を介して作動する。別の実施形態では、システムは、循環ポンプに関連した弁を必要とせずに、一定流量の容積式ポンプを使用する。流体の流速およびコアサイズは、ポンプ作動パラメータを流体の流速に相関させることによって決定されるか、または選択されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメーターを通る流体の流れを制御する方法であって、前記方法は、
導電性流体ポンプにより導電性流体源からフローセルの試験チャンバに導電性流体をポンプ供給することと、
前記導電性流体ポンプにおいて、前記試験チャンバの中に入る前記導電性流体の流速を測定することと、
前記導電性流体源から前記試験チャンバに前記導電性流体を前記ポンプ供給することと同時に、廃液ポンプにより前記試験チャンバを通る前記導電性流体および試料流体を引き込むことであって、それによって前記導電性流体は、前記試料流体の流体コアを囲むシース液を形成する、引き込むことと、
前記廃液ポンプにおいて、前記試験チャンバを通る前記導電性流体および前記試料流体の組み合わされた流速を測定することと、
前記廃液の前記組み合わされた流速から前記導電性流体の前記流速を減算することにより、試料流体の流速を計算することと、
前記試験チャンバ内の前記試料流体内に含まれた粒子を光検出することと;および、
(i)前記試料流体のコア径を低減するまたは増加させるために、増加されたまたは低減された流速で前記導電性流体ポンプを作動すること;ならびに
(ii)第1のスケールファクタ乗数(scaling factor multiplier)により標準の導電性流体の流速と異なる、変更された導電性流体の流速で前記導電性流体ポンプを作動し、それと同時に前記第1のスケールファクタ乗数と実質的に同じ第2のスケールファクタ乗数により標準の試料流体の流速と異なる、変更された試料流体の流速を生成するために前記廃液ポンプを作動することによって、前記試料流体の前記コア径は固定されたまま前記試料流体の前記流速を変更するために前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプを作動すること
から選択される少なくとも1つと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記廃液ポンプで前記測定することおよび前記導電性流体ポンプで前記測定することは、回転位置エンコーダを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性流体源から前記フローセルの前記試験チャンバに前記導電性流体を前記ポンプ供給することは、
前記導電性流体ポンプが前記導電性流体源と流体連通するように、供給制御弁を駆動することと、
前記供給制御弁により前記導電性流体源から前記導電性流体ポンプの中にまたは前記導電性流体ポンプに向かって前記導電性流体を引き込むために前記導電性流体ポンプを作動することと、
前記導電性流体ポンプが前記フローセルの前記試験チャンバと流体連通するように、かつ前記導電性流体ポンプが前記導電性流体源と流体連通しないように、前記供給制御弁を駆動することと、
前記供給制御弁により前記導電性流体ポンプから前記フローセルに前記導電性流体を駆り立てるために前記導電性流体ポンプを作動することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験チャンバを通る前記導電性流体および前記試料流体を前記引き込むことは、
前記廃液ポンプが前記フローセルの前記試験チャンバと、および試料流体源と、流体連通するように廃液制御弁を駆動することと、
前記廃液制御弁によって、前記フローセルの前記試験チャンバを通る前記導電性流体および前記試料流体を引き込むために前記廃液ポンプを作動することと、
前記廃液ポンプが廃液タンクまたは排水管と流体連通するように、かつ前記廃液ポンプが前記フローセルの前記試験チャンバと流体連通しないように、前記廃液制御弁を駆動することと、
前記廃液制御弁によって、前記廃液ポンプから前記廃液タンクまたは排水管の中に前記導電性流体および前記試料流体を駆り立てるために前記廃液ポンプを作動することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試験チャンバを通る少なくとも2つの流体を移動させるための流体システムであって、前記流体システムは、
試験チャンバを含むフローセルであって、前記フローセルは、前記試験チャンバ内に(i)第1の流体源から第1の流体を受領し、かつ(ii)第2の流体源から第2の流体を受領するように構成される、フローセルと、
前記第1の流体を前記第1の流体源から前記フローセルの前記試験チャンバに向けるように構成された第1の流体ポンプと、
前記試験チャンバを通して前記第1の流体および前記第2の流体を引き込むように構成された第2の流体ポンプであって、それによって前記第2の流体は、前記試験チャンバ内の前記第1の流体によって形成されたシース液に実質的に囲まれた流体コアを形成して、前記試験チャンバ内の前記第2の流体の分析を促進する、第2の流体ポンプと、
を備え、
前記第1および第2の流体ポンプは、組み合わされた流体の流速の変化が、前記第1の流体の流速の変化と実質的に同じ容積となるように、前記第1の流体ポンプを変更された第1の流体の流速で作動することにより、ならびに前記第2の流体ポンプを変更された組み合わされた流体の流速で作動することにより、前記第2の流体の流速を実質的に固定したまま、前記第2の流体のコア径を変更するために共に作動可能であり、それによって前記試験チャンバを通る前記第1の流体の流速のみを変更し、
前記第1の流体および第2の流体ポンプは、第1のスケールファクタによって変更される、第1の流体の流速で前記第1の流体ポンプを作動することにより、ならびに前記第1のスケールファクタと実質的に等しい第2のスケールファクタによって変更される、第2の流体の流速をもたらす、組み合わされた流体の流速で前記第2の流体ポンプを同時に作動することにより、前記第2の流体の同じコア径を維持したまま前記第2の流体の前記流速を変更するようにさらに作動可能である、
流体システム。
【請求項6】
前記第1および第2の流体ポンプは容積式ポンプを備える、請求項5に記載の流体システム。
【請求項7】
前記フローセルの前記試験チャンバに向けられた光源を備え、および前記試験チャンバを通過する光を受領し分析するように作動可能な光検出器をさらに備える、フローサイトメーターとさらに組み合わされる、請求項6に記載の流体システム。
【請求項8】
試験チャンバを通る少なくとも2つの流体を移動させるための流体システムであって、前記流体システムは、
試験チャンバを含むフローセルであって、前記フローセルは、前記試験チャンバ内に(i)導電性流体源から導電性流体を受領し、かつ(ii)試料流体源から試料流体を受領するように構成される、フローセルと、
前記導電性流体を前記導電性流体源から前記フローセルの前記試験チャンバに向けるように作動可能な導電性流体ポンプと、
前記試験チャンバを一緒に通る前記導電性流体および前記試料流体を引き込むように作動可能な廃液ポンプであって、それによって前記試料流体は、前記試験チャンバ内の前記導電性流体によって形成されたシース液により実質的に囲まれた流体コアを形成して、前記試験チャンバ内の前記試料流体内に含まれた粒子の光検出を促進する、廃液ポンプと、
を備え、
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプは、増加された導電性流体の流速で前記導電性流体ポンプを作動し、それによって前記導電性流体ポンプから出て前記試験チャンバの中に入る導電性流体の流速を増加させることにより、ならびに組み合わされた流体の流速の増加が、前記導電性流体の流速の前記増加と実質的に同じ容積であるように、増加された組み合わされた流体の流速で前記廃液ポンプを作動することにより、前記試料流体の流速を実質的に固定したまま前記試料流体のコア径を低減するように作動可能であり、
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプは、低減された導電性流体の流速で前記導電性流体ポンプを作動し、それによって前記導電性流体ポンプから出て前記試験チャンバの中に入る前記導電性流体の流速を低減することにより、ならびに組み合わされた流体の流速の低減が、前記導電性流体の流速の前記低減と実質的に同じ容積であるように、低減された組み合わされた流体の流速で前記廃液ポンプを作動することにより、前記試料流体の前記流速を実質的に固定したまま前記試料流体の前記コア径を増加するようにさらに作動可能である、
流体システム。
【請求項9】
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプは、それによって、前記廃液ポンプの作動により前記試料流体源から出て前記試験チャンバの中に入る試験流体の流速が調節される、試料流体の流速スケールファクタと実質的に同じ、導電性流体の流速スケールファクタにより、前記導電性流体ポンプから出て前記試験チャンバの中に入る前記導電性流体の流速を調節することにより、前記試料流体の前記コア径を実質的に固定したまま前記試料流体の前記流速を調節するように作動可能である、請求項8に記載の流体システム。
【請求項10】
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプはそれぞれ、シリンジポンプを備える、請求項8に記載の流体システム。
【請求項11】
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプはそれぞれ、前記流体ポンプを正確に制御できるように構成された回転位置エンコーダを備える、請求項8に記載の流体システム。
【請求項12】
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプと連通する電子制御システムをさらに備える、請求項8に記載の流体システム。
【請求項13】
前記導電性流体ポンプおよび前記フローセルと選択的に流体連通する供給制御弁と、
前記フローセルおよび前記廃液ポンプと選択的に流体連通する廃液制御弁と、
をさらに備える、請求項12に記載の流体システム。
【請求項14】
前記供給制御弁および前記廃液制御弁は、前記電子制御システムとの電子通信を介して制御可能である、請求項13に記載の流体システム。
【請求項15】
前記供給制御弁は、前記導電性流体源とさらに選択的に流体連通する三方弁を備え、前記供給制御弁は、前記導電性流体源から前記導電性流体ポンプへの、および前記導電性流体ポンプから前記フローセルの前記試験チャンバへの前記導電性流体の流れを制御するように作動可能である、請求項13に記載の流体システム。
【請求項16】
前記廃液制御弁は、廃液タンクまたは排水管とさらに選択的に流体連通する三方弁を備え、前記廃液制御弁は、前記フローセルの前記試験チャンバから前記廃液ポンプへの、および前記廃液ポンプから前記廃液タンクまたは前記排水管への前記導電性流体および前記試料流体の流れを制御するように作動可能である、請求項13に記載の流体システム。
【請求項17】
廃液ラインおよび流体パージラインを介して前記フローセルと選択的に流体連通する、廃液またはパージ切替弁をさらに備え、前記廃液またはパージ切替弁は、前記フローセルの前記試験チャンバ内に一時的な流体圧力パルスを生じるように作動可能である、請求項13に記載の流体システム。
【請求項18】
前記試料流体源と、ならびに前記フローセルの前記試験チャンバと流体連通する試料注入プローブをさらに備える、請求項8に記載の流体システム。
【請求項19】
フローサイトメーターとさらに組み合わせられる、請求項8に記載の流体システム。
【請求項20】
フローサイトメーターを通る流体を移動させるための流体システムであって、前記流体システムは、
導電性流体を含むように構成された導電性流体源と、
前記導電性流体および試料流体を試験チャンバ内に受領するように構成されたフローセルと、
前記導電性流体を前記導電性流体源から前記フローセルの前記試験チャンバに向けるように構成された導電性流体ポンプであって、
前記導電性流体ポンプは標準の導電性流体の流速で作動可能であり、前記導電性流体ポンプは、増加されたまたは低減された導電性流体の流速でさらに作動可能であり、それによって前記導電性流体の流速は、前記標準の導電性流体の流速に比例する第1のスケールファクタによって調節可能である、導電性流体ポンプと、
前記試料流体を含むように構成された試料流体源と、
前記試料流体源および前記フローセルの前記試験チャンバと流体連通する試料注入プローブと、
前記試験チャンバを通る前記導電性流体および前記試料流体を引き込むように構成された廃液ポンプであって、前記試料流体は、前記試料流体内に含まれた粒子の光検出を促進するために、前記試験チャンバ内の前記導電性流体によって形成されたシース液により実質的に囲まれた流体コアを形成する、廃液ポンプと、
を備え、
前記廃液ポンプは、前記標準の導電性流体の流速より大きい標準の廃液の流速で作動可能であり、それによって標準の試料流体の流速を生成し、前記廃液ポンプは、増加されたまたは低減された試料流体の流速を生成するために、増加されたまたは低減された流速でさらに作動可能であり、それによって前記試料流体の流速は、前記標準の試料流体の流速に比例する第2のスケールファクタによって調節可能であり、
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプは、増加されたまたは低減された導電性流体の流速で前記導電性流体ポンプを作動することにより、ならびに組み合わされた流体の流速の増加が、前記導電性流体の流速の増加と同じ容積であり、それによって前記導電性流体ポンプから出て前記試験チャンバの中に入る前記導電性流体の流速を増加または低減するように、増加されたまたは低減された組み合わされた流体の流速で前記廃液ポンプを同時に作動することにより、前記試料流体の流速を一定に維持したまま前記試料流体のコア径を低減するまたは増加するように作動可能であり、
前記導電性流体ポンプおよび前記廃液ポンプは、前記導電性流体ポンプから出て前記試験チャンバの中に入る前記導電性流体の流速を前記第1のスケールファクタで設定することにより、ならびに前記第1のスケールファクタと実質的に等しい前記第2のスケールファクタで、前記試験チャンバを通る前記試料流体の流速を生成するために、前記廃液ポンプを同時に作動することにより、前記試料流体の前記コア径を固定したまま前記試料流体の前記流速を調節するように作動可能である、
流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、流体の分析または試験の目的などのために、単一の流体導管内で同時に流れる2つ以上の異なる流体を正確に制御することが望ましい、流体処理または流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2つ以上の異なる実質的に混合されていない流体が、分析または試験目的などのために、導管を通って一緒に流れる、流体処理または流体システムは、流体の流速を正確に制御する必要がある場合がある。例えば、フローサイトメーターは、導電性流体または「シース」液によって囲まれた「コア」を形成する試料流体内に含まれた微細粒子の光検出のために使用される装置であり、2つの流体がフローセルの試験チャンバを通じて同時に流れる。試料流体内のある特定の粒子を検出する能力は、導電性流体内の試料流体の流速および/またはコア径を変えることによって変更されることがある。流体力学的集束を用いて、試料流体は、試料注入プローブを介して導電性流体(すなわち「シース液」)の流れの中心内に注入される、または引き込まれる。組み合わされた流体がフローセルから出るときは、「廃液」と呼ばれる。シース液内の試料流体の断面直径は「コアサイズ」と呼ばれる。試料流体が引き込まれる速度は「流速」と呼ばれる。公知のフローサイトメーターは、例えば、米国特許第8,303,894号、第8,283,177号、第8,262,990号、および第8,187,888号に説明されており、これらの開示は、公知のフローサイトメーター構造の一般的な背景情報の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
従来のサイトメトリーシステムは、試料流体のバイアル内の空気圧を使用して試料注入プローブを通る試料流体の流速を制御する。これはサイトメーターの封止および圧力機構を収納するために、操作者に特定の形状の特定のバイアルのみの使用を強いる。通常のサイトメーターは、操作者が選択するための、限定された数のコアサイズおよび流速を提供するだけである。通常の水上の空気のサイメトリーシステム(air−over−water cytometry systems)は、基本操作を制御するために5つ以上の弁を有することがあり、通常、制御フィードバック(control feedback)のために圧力センサを使用する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、フローサイトメーターシステム内の流体を制御するための方法および装置を提供し、2つの容積式流体ポンプまたはポンプモジュールのみによって、流速および試料コアサイズの実質的に無限の組合せを提供する。本発明は、シリンジポンプ上の回転位置エンコーダの使用、または歯車ポンプもしくは流体の流速が正確に制御可能であるための別のタイプのポンプ(通常、容積式ポンプ)の使用などを通して、また好ましくはポンプモジュール自体から分離した制御フィードバックループを使用することなく(すなわち個別の圧力もしくは流速センサまたは流速センサに基づいて)、流体ポンプの正確な流速制御によって作動する。このような正確な流速制御は、制御フィードバックのための従来の圧力センサの必要性を除去してもよいことが想定されるが、圧力センサは依然としてある特定の実施形態では使用されてもよいことが想定される。このことは、潜在的な故障モードまたは故障点として圧力センサを取り除くことにより、システムの信頼性および堅牢性を増大させる。また本発明のシステムは、ほんの3つの弁で作動可能であるが、より少ないまたはより多い数の弁を使用して異なるレベルの機能性を達成してもよいことが想定される。システムは、ポンプの速度差のみにより試料流体の流れを引き起こすかまたは誘発し、したがって広範囲の試料のバイアルを収納することができる。
【0005】
本発明の一形態によれば、流体システムは、試験チャンバを通る少なくとも2つの流体を移動させるために提供される。流体システムは、試験チャンバを有するフローセルならびに第1および第2の流体ポンプを含む。試験チャンバは、第1の流体源から第1の流体を受領し、第2の流体源から第2の流体を受領するように構成される。第1の流体ポンプは、第1の流体を第1の流体源からフローセルの試験チャンバに向けるように作動可能であり、第2の流体ポンプは、試験チャンバを通る第1の流体および第2の流体の両方を引き込むように構成される。試験チャンバ内で、第2の流体は、第1の流体によって形成されたシース液により実質的に囲まれた流体コアを形成し、これは第2の流体が試験チャンバを通って移動する際に第2の流体の分析を促進する。第1の流体ポンプは、第1の流体ポンプから出て試験チャンバの中に入る第1の流体の流れを増加させる、増加された流速で第1の流体ポンプを作動することにより、第2の流体の流速を実質的に固定したまま第2の流体のコア径を低減することができるように作動可能である。また第1の流体ポンプは、第1の流体ポンプを低減された流速で作動し、それによって第1の流体ポンプから出て試験チャンバの中に入る第1の流体の流速を低減することにより、第2の流体の流速を実質的に固定したまま第2の流体のコア径を増加させるように作動可能である。
【0006】
本発明の別の形態によれば、流体システムは、流体をフローセルの試験チャンバを通して移動させるために提供される。流体システムは、試験チャンバを備えたフローセルに加えて、導電性流体ポンプおよび廃液ポンプを含む。試験チャンバは、導電性流体源から導電性流体を受領し、試料流体源から試料流体を受領するように構成される。導電性流体ポンプは、導電性流体を導電性流体源からフローセルの試験チャンバに向けるように構成される。廃液ポンプは、試料流体が、試験チャンバ内の導電性流体によって形成されたシース液により実質的に囲まれた流体コアを形成するように、試験チャンバを通る導電性流体および試料流体を引き込むように構成される。これは、試験チャンバ内の試料流体内に含まれた粒子の光検出を促進する。導電性流体ポンプは、試料流体の流速を実質的に固定したまま試料流体のコア径を低減するように作動可能である。これは増加された流速で導電性流体ポンプを作動し、それによって導電性流体ポンプから出て試験チャンバの中に入る導電性流体の流速を増加させることによって達成される。さらに導電性流体ポンプは、低減された流速で導電性流体ポンプを作動し、それによって導電性流体ポンプから出て試験チャンバの中に入る導電性流体の流速を低減することにより、試料流体の流速を実質的に固定したまま試料流体のコア径を増加するように作動可能である、であり、これは。
【0007】
一態様では、導電性流体ポンプは、廃液ポンプの作動によって試料流体源から出て試験チャンバの中に入る試料流体の流速がそれによって調節される、試料流体の流速のスケールファクタと実質的に同じである導電性流体の流速のスケールファクタにより、導電性流体ポンプから出て試験チャンバの中に入る導電性流体の流速を調節することにより、試料流体のコア径を実質的に固定したまま試料流体の流速を調節するようにさらに作動可能である。
【0008】
別の態様では、導電性流体ポンプおよび廃液ポンプは、それぞれシリンジポンプを含む。任意選択で、導電性流体ポンプおよび廃液ポンプはそれぞれ、流体ポンプの正確な制御ができるように構成された回転位置エンコーダを含む。
【0009】
任意選択で、流体システムは、それに関連した回転位置エンコーダなどを有する、導電性流体ポンプおよび廃液ポンプと連通する電子制御システムをさらに含む。
【0010】
さらに別の態様では、流体システムは、導電性流体ポンプおよびフローセルと選択的に流体連通する供給制御弁、ならびにフローセルおよび廃液ポンプと選択的に流体連通する廃液制御弁をさらに含む。任意選択で、供給制御弁および廃液制御弁は、電子制御システムとの電子通信を介して制御可能である。供給制御弁は、さらに導電性流体源と選択的に流体連通する三方弁を含んでもよく、その結果、供給制御弁は、導電性流体源から導電性流体ポンプへの、および導電性流体ポンプからフローセルの試験チャンバへの導電性流体の流れを制御するように作動可能である。任意選択で、廃液制御弁は、廃液タンクまたは排水管と選択的に流体連通する三方弁であり、その結果、廃液制御弁は、フローセルの試験チャンバから廃液ポンプへの、および廃液ポンプから廃液タンクまたは排水管への導電性流体および試料流体の流れを制御するように作動可能である。
【0011】
さらに別の態様では、流体システムは、廃液ラインおよび流体パージラインを介してフローセルと選択的に流体連通する廃液またはパージ切替弁を含み、廃液またはパージ切替弁は、フローセルの試験チャンバ内に一時的な流体圧力パルスを生じるように作動可能である。
【0012】
一層さらなる態様では、流体システムは、試料流体源と、フローセルの試験チャンバと流体連通する試料注入プローブをさらに含む。
【0013】
別の態様では、流体システムは、フローサイトメーターと組み合わせて提供される。
【0014】
本発明の別の形態によれば、フローサイトメーターを通る流体の流れを制御するための方法が提供される。方法は、(i)導電性流体ポンプによって導電性流体源からフローセルの試験チャンバに導電性流体をポンプ供給することと、(ii)導電性流体ポンプにおいて、試験チャンバの中に入る導電性流体の流速を測定することと、(iii)廃液ポンプによって試験チャンバを通る導電性流体および試料流体を同時に引き込むことであって、それによって導電性流体は、試料流体の流体コアを囲むシース液を形成する、引き込むことと、(iv)廃液ポンプにおいて、試験チャンバを通る導電性流体および試料流体の組み合わされた流速を測定することと、(v)廃液の流速から導電性流体の流速を減算することにより、試料流体の流速を計算することと、(vi)試験チャンバ内の試料流体内に含まれた粒子を光検出することと、および、(a)試料流体の流速を実質的に固定したまま、試料流体のコア径を低減するために増加された流速で導電性流体ポンプを作動すること、(b)試料流体の流速を実質的に固定したまま試料流体のコア径を増加するために、低減された流速で導電性流体ポンプを作動すること、ならびに(c)第1のスケールファクタに従って標準の導電性流体の流速に比例する増加されたまたは低減された導電性流体の流速で導電性流体ポンプを作動するともに、第2のスケールファクタに従って標準の試料流体の流速比例する増加されたまたは低減された試料流体の流速を生成するために、廃液ポンプを同時に作動することにより、試料流体のコア径を実質的に固定したまま試料流体の流速を増加するまたは低減すること(但し第1のスケールファクタと第2のスケールファクタは実質的に同じである)のうちの少なくとも1つと、を含む。
【0015】
したがって、本発明の流体システムおよび方法により、フローサイトメーターがより少ない構成要素で、したがってより高い信頼性ならびに低コストで、構築できると同時に、また、操作者が実質的にあらゆる所望の試料バイアルを使用でき、実質的にあらゆる所望の流体の流速および試料のコア径を選択できる。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の対象、利点、目的および特徴は、図面と関連して以下の説明を検討すると明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による流体システムの線図である。
図2】導電性流体内の試料流体の側面立面図である。
図3図2のIII−III線に沿って切断された試料および導電性流体の断面図である。
図4】本発明による流体システムを組み込むフローサイトメーターのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の流体システムは、フローサイトメーター内の試料流体のコア径および流速が、それぞれの最小値と最大値との間で実質的に無限に調節可能である装置および方法を提供する。コア径および流速は、例えば試料流体の特性または実験の性質に従って調節されてもよい。流体システムは、米国特許第8,303,894号、第8,283,177号、第8,262,990号、および第8,187,888号に説明されたフローサイトメーターなどの、多くの様々な公知のフローサイトメーターとともに使用するために互換性がある、または適応可能であることが想定されるが、本発明の流体システムは、他のフローサイトメーター構造、ならびにサイトメトリに関連しない他の流体または流体システムと合わせて使用されてもよく、上に言及された特許の流体システムに決して限定されないことが理解されよう。
【0019】
次に、ここに示された図面および例示的実施形態を参照すると、流体システム10(図1および4)は、流体システム10のフローセル16を通って移動する試料流体14内に含まれた微細粒子の光検出のために、正確に制御された方法でフローサイトメーター12(図4)を通して流体を移動させる。流体システム10に加えて、フローサイトメーター12は通常、集光20をフローセル16に向ける照明光源18を含み、検出光学系22および関連した電子機器24をさらに含む。またフローサイトメーター12は、図4などに示されるように、操作者によって作動される独立したコンピュータ28(ラボワークステーションなど)によって受領されたコマンドに応答して、流体システム10、照明光源18、ならびに検出光学系22および電子機器24を制御するように作動可能な電子制御システム26も含む。
【0020】
流体システム10において、試料流体14は、通常フローセル16の外側に配置される試料バイアルなどの、流体源または保存容器30(図1および4)に由来する。試料流体14は、試料注入プローブ32によって、導電性または「シース」液34(図2および3)の流れの中心内に注入されるか、または引き込まれる。シース液34内の試料流体14の断面直径は、「コアサイズ」(図3では寸法Eを指す)と呼ばれ、試料流体14が試料注入プローブ32を通じて引き込まれる速度は、「流速」と呼ばれる。組み合わされた流体がフローセル16から出るとき、組み合わされた流体14、34は廃液とみなされる。
【0021】
流体システム10は、供給ポンプモジュール36および廃液ポンプモジュール38(図1)を含む、2つの電子制御可能な容積式ポンプを含む。図1の例示された実施形態では、供給ポンプモジュール36および廃液ポンプモジュール38はそれぞれ、シリンジ部36a、38aおよび電動駆動部36b、38bをそれぞれ有するシリンジポンプである。電動駆動部36b、38bは、ポンプ構成要素(例えば、それぞれのシリンジ部36aまたは38aのプランジャー36d、38dを駆動する、その上にネジ付き線形変位ナットが装着される螺合回転可能な駆動軸)の回転位置を検出し送信することにより、流体ポンプモジュール36、38の正確な流速制御が可能になる、回転位置エンコーダ36c、38cをそれぞれ含んでもよい。任意選択で、流体システム10は、正確に制御可能な歯車ポンプもしくは他の「回転」ポンプの形の供給ポンプおよび/または廃液ポンプ、あるいは個別のシステム圧力センサなどの使用の有無に関わらず、正確に制御された流速で独立して作動できる実質的にあらゆる他の流体ポンプを備えてもよいことが想定される。
【0022】
加えて、流体システム10は、供給制御弁40、廃液またはパージ切替弁42、および廃液制御弁44を含む、3つの電子制御可能な三方弁を含む。流体システム10は、フローセル16および試料注入プローブ32、ならびに以下に説明される複数の流体ライン(48、50、52、54、56、58、60、62、64)をさらに含む。流体システム10は、電子制御システム26(図4)によって作動され、電子制御システム26は、順序立ててポンプおよび弁を作動または制御し、かつ弁40、42、44、およびポンプ36、38の電動駆動部36b、38bと、またはそれに関連した流体制御回路66と、電子通信してもよい。
【0023】
流体システム10はまず、供給制御弁40(図1)の中に供給する第1の流体供給ライン48を介して、供給タンク46から供給シリンジポンプモジュール36のシリンジ部36aの中に導電性流体34を引き込むことによって作動する。導電性流体34は、第2の流体ライン50を介して供給シリンジポンプモジュール36のシリンジ部36aに入り、第2の流体ライン50は、供給シリンジポンプモジュール36のシリンジ部36aを供給制御弁40に連結する。次いで供給シリンジポンプ36は、供給制御弁40(供給制御弁40は導電性流体34を適宜経路指定するように駆動されている)および供給制御弁40からフローセル16に導く第3の流体ライン52を介して、導電性流体34をフローセル16の中に押圧する。供給シリンジポンプモジュール36によるこの作用と同時に、廃液シリンジポンプモジュール38は、流体(導電性流体34のみ、または試料流体14と組み合わされた導電性流体34のいずれか)を、フローセル16からフローセル16を廃液またはパージ切替弁42に連結する廃液ライン54を介して、かつ切替廃液弁連結ライン56、廃液制御弁44、および切替廃液弁連結ライン56を廃液シリンジポンプ38に連結する流体ライン58を介して引き込む。廃液シリンジポンプ38が満たされると、ポンプ36、38の両方は一時停止してもよく、次いで廃液シリンジポンプ38は流体ライン58、および廃液ライン60を通して廃液を廃液タンクまたは排水管62の中に向けるように駆動されている廃液制御弁44、を通って、廃液を逆方向に押圧する。
【0024】
しかし上に簡単に記載されたように、流体システムは、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、正確に制御可能な流体の流速を有する他の形もしくはタイプのポンプまたはポンプモジュールを組み込んでもよいことが理解されよう。例えば、歯車ポンプは、入口を通って引き込まれ個別の出口を通って排出される流体の連続流れを、実質的に連続したまたは無限の変数である一定流速で生成するように実質的に連続して作動可能である。循環作動するシリンジポンプを定位置で使用されるこのような連続流れポンプは、示された実施形態に関連して上に説明されたように、シリンジポンプの循環作動中に流体が所望の導管内を所望の方向に流れることを確実にする、弁の必要性を実質的に取り除くはずであることが想定される。
【0025】
流体システムに使用されるポンプのタイプに関わらず、2つのポンプ36、38の流速の任意の違いにより、試料注入プローブ32を介してフローセル16に入る、またはフローセル16から出る試料流体14の流れを誘導することとなる。正常作動において、廃液シリンジポンプ38は、供給シリンジポンプ36より速い流速で流れ、その結果、試料流体14は、試料注入プローブ32を介してフローセル16の中に引き込まれ、試料流体の流速は、供給シリンジポンプ36から出る(またフローセル16の中に入る)導電性流体34の流速と、フローセル16から出て流れる組み合わされた流体14、34の流速との差が等しくなる。したがって、試料注入プローブ32を介してフローセル16の中に送出される試料流体14の量は、以下の方程式によって表されることが可能である。
A−B=C
【0026】
上式で「A」は廃液シリンジポンプ38の流速であり、「B」は供給シリンジポンプ36の流速であり、「C」は試料注入プローブ32を通る試料流体14の得られる流速である。Cが負であるときは、試料流体14は、洗浄中またはパージ作動中などに、フローセル16から離れて試料流体14の保存容器30の中に流れている。しかし正常な試験作動に対してCは正であり、その結果、試料流体14の流れ方向は、保存容器30から出てフローセル16の中に入る。
【0027】
試料流体のコアサイズは、図2および3に示されたように、導電性流体34の流れの中にシースされた試料流体14の流れの直径「E」である。コアサイズEは、概して導電性流体34の流速Bの、試料流体14の流速Cに対する比、および以下の単純化された公式に従ってフローセル16内の流体試験チャネル(流体試験チャネルは、例えば石英流体チャネルまたは毛細管であってもよい)の内径「D」に関する。
E=D*C/B
【0028】
上の関係は、試料流体のコアサイズが、試料流体コアの直径ならびにシース(導電性)液の内径および外径に関する手法の一般的な理解を得るために極端に単純化されていることが理解されよう。例えば上の関係は、試料および導電性流体の異なる流体粘度および/または比重、流体摩擦など(これらは必要に応じて計算の要素に入れることができる)の影響を考慮していない。
【0029】
電子制御システム26は、試料流体14のコアサイズEまたは流速Cのいずれかを独立して調節できる一方で、流速CまたはコアサイズEの他方は実質的に固定したままに保つ。コアサイズEを維持したまま試料流体14の流速Cを調節するために、2つのポンプ36、38のそれぞれの流速B、Cは、実質的に同じスケールファクタXにより試料流体14の流速Cで拡大または縮小されることが可能である。したがって、以下の方程式または関係で表される。
A*X−B*X=C*X
【0030】
次いでコアサイズEは実質的に以下のように保たれるという結果になる。
E=D*(C*X)/(B*X)
E=D*C/B
【0031】
したがって、供給流体ポンプ36が実質的に一定の標準導電性流体の流速Bで作動する一方で、廃液ポンプ38が実質的に一定の標準廃液(組み合わされた)流体の流速Aで作動されて標準試料流体の流速Cを生成する場合は、コアサイズEは、実質的に一定で容易に決定できる寸法になる。次いで供給流体ポンプ36がBより25%大きい新しい導電性流体の流速(すなわち1.25*B)で作動され、廃液ポンプ38がCより25%大きい新しい試料流体の流速(すなわち1.25*C)を生成する新しい流体の流速で作動される場合は、新しい導電性流体の流速1.25*Bは、新しい試料流体の流速1.25*Cとほぼ同じ比によって拡大され、コアサイズEは、供給流体ポンプ36および廃液ポンプ38が、標準導電性流体の流速Bおよび標準供給流体の流速Cを生成していたときと実質的に同じになる。導電性流体の流速Bおよび標準供給流体の流速Cを(例えば、0.75*Bおよび0.75*Cに)低減するために、供給流体ポンプ36および廃液ポンプ38の流速を低減することにより、コアサイズEは、変わらないはずであることが容易に理解されよう。したがって、導電性流体の流速および供給流体の流速を同じスケールファクタまたは比によって変更すると、フローセル16内のコアサイズは実質的に同じだが流体の流速が増加または低減される。
【0032】
試料注入プローブ32は、試料流体14内に含まれる粒子で詰まる可能性があり、流体システム10の不都合な性能をもたらす、または性能が全くなくなることが想定される。この場合、流体システム10は、導電性流体34を試料注入プローブ32の下に押し下げる(すなわち保存容器30の方向に)ことにより、このような詰まりを除去することができる。これを達成するために、廃液シリンジポンプ38は係脱され(例えば、第3の流体ライン52を供給制御弁40で閉じることにより)、廃液制御弁44は切替廃液弁連結ライン56に対して閉じられ、試料バイアルまたは保存容器30は取り除かれ(または少なくとも汚染される可能性のある試料流体を含まず)、供給シリンジポンプ36は、供給制御弁40を通ってフローセル16の中に導電性流体34を押し入れるように作動され、それによって導電性流体34は試料注入プローブ32の下に押し下げられる(「バックフラッシュされる」)。バックフラッシュされた導電性流体34は、空の保存容器30またはその目的のためにプローブ32に位置付けられた別の容器内に収集されてもよい。一旦バックフラッシュが完了すると、試料流体14を含む保存容器30は、フローサイトメーター12の正常作動を再開するために試料注入プローブ32で置換されてもよい。
【0033】
試料流体14の流れは、フローセル16の流体力学的集束領域内に混入した屑または気泡(「妨害物」)により場合によって中断され得ることがさらに想定される。通常のフローセルは、妨害物を除去するための経路を提供するために、この領域にパージポートを有する。しかし通常の流体システムは、このような妨害物を除去するのが困難であり、偶然にバックフラッシュにより試料流体を汚染することがあり、正常作動を再開できる前に、回復するための時間を長く必要とすることがある。
【0034】
しかし流体システム10は、流体力学的集束帯から、および/またはフローセル16の試験チャンバから以下の手法でこのような望ましくない影響なしにこのような妨害物を除去できる、すなわち1)ポンプ36、38はどちらも同じ流速で作動されて、試料流体14を汚染する可能性がある試料注入プローブ32を通って流れる流体がないことを確実にする、2)流速は、供給流体34のより高い速度を使用して妨害物を除去するために必要な範囲に増加されることが可能である、3)廃液またはパージ切替弁42は、フローセル16の試験チャンバと、また廃液またはパージ切替弁42と流体連通する、流体パージライン64を通って一時的な圧力パルスを生じるために急速に振動されることが可能であり、これは妨害物を除去する役に立つ場合がある、4)システムは、単に流速を低減することにより正常作動に速やかに戻ることができる。
【0035】
したがって、本発明は、フローサイトメーターシステム内の流体を正確に制御するための方法および装置を提供し、フローサイトメーターシステムは、ポンプ速度を正確に制御することにより、流速と試料流体のコアサイズの無限の組合せを提供する。システムは、2つの容積式ポンプおよび3つの弁を使用し、容積式ポンプの正確な制御を介して、通常はフィードバックを制御するための従来の圧力センサを必要としない、従来の回転位置エンコーダを通って作動する。得られるシステムは、異なる配置において追加のポンプ、弁、およびセンサを利用するシステムに比べて、信頼性および堅牢性が増すことを示す。
【0036】
本発明の原理から逸脱することなく、具体的に説明された実施形態に変更および修正を実行してもよく、本発明は、均等論を含む特許法の原理に従って解釈されるように、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】