(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-504405(P2016-504405A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(54)【発明の名称】ガレヌス製剤の有効成分の投与剤形
(51)【国際特許分類】
A61K 9/08 20060101AFI20160115BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20160115BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20160115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20160115BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20160115BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20160115BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K47/10
A61P25/20
A61P25/00
A61K31/437
A61K31/4985
A61K31/519
A61K31/5517
A61K31/551
A61K31/5513
A61K31/4402
A61K31/4418
A61K31/4045
A61K31/343
A61K31/165
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-552133(P2015-552133)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月14日
(86)【国際出願番号】FR2014050070
(87)【国際公開番号】WO2014108657
(87)【国際公開日】20140717
(31)【優先権主張番号】1350308
(32)【優先日】2013年1月14日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515191350
【氏名又は名称】ロッセロ ラファエル
(71)【出願人】
【識別番号】511148455
【氏名又は名称】ペロヴィッチ フィリップ
(71)【出願人】
【識別番号】515191361
【氏名又は名称】オゼリゥ ジャック
(74)【代理人】
【識別番号】100133950
【弁理士】
【氏名又は名称】向井 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100125438
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 公知
(72)【発明者】
【氏名】ペロヴィッチ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オゼリゥ ジャック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
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4C206NA11
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4C206ZA05
4C206ZA06
(57)【要約】
入眠促進および/または睡眠障害の治療および/または中枢神経系障害の治療のための有効成分を粘膜経由で経口投与するための投与剤形であって、 前記有効成分は、疎水性もしくは両親媒性を有しており、前記投与剤形中において、35〜70重量%のエタノールと30〜65重量%の水を含む水性アルコール溶液中に安定かつ完全な状態で溶解し、血液脳関門を通過可能なように、当該水性アルコール溶液中でナノ構造を構成し、塩基の又は塩の形態であり、疎水性又は両親媒性で、分子量が1000ダルトン未満の睡眠導入剤又は睡眠調節剤に属し、ゾルピデムを含むイミダゾピリジン系、エスゾピクロンを含むシクロピロロン系、ザレプロンを含むピラゾロピリミジン系、ミダゾラムやブロチゾラムを含むベンゾジアゼピン系、ドキシラミンやシプロヘプタジンを含む第1世代抗ヒスタミン薬系、メラトニン、ラメルテオンやアゴメラチンを含むメラトニンおよびメラトニン受容体作動薬系の何れかに属する有効成分から選択され、前記水性アルコール溶液の1回分の投与容量が2ml以下であり、 前記有効成分の1回分の投与量が8mg以下であり、 前記有効成分はその全量が口腔底の粘膜、特に歯肉/頬、歯肉領域、頬、舌下の粘膜経由で経粘膜吸収される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入眠促進および/または睡眠障害の治療および/または中枢神経系障害の治療のための有効成分を粘膜経由で経口投与するための投与剤形であって、
前記有効成分は、
疎水性もしくは両親媒性を有しており、
前記投与剤形中において、35〜70重量%のエタノールと30〜65重量%の水を含む水性アルコール溶液中に安定かつ完全な状態で溶解し、
血液脳関門を通過可能なように、当該水性アルコール溶液中でナノ構造を構成し、
塩基の又は塩の形態であり、疎水性又は両親媒性で、分子量が1000ダルトン未満の睡眠導入剤又は睡眠調節剤に属し、
ゾルピデムを含むイミダゾピリジン系、エスゾピクロンを含むシクロピロロン系、ザレプロンを含むピラゾロピリミジン系、ミダゾラムやブロチゾラムを含むベンゾジアゼピン系、ドキシラミンやシプロヘプタジンを含む第1世代抗ヒスタミン薬系、メラトニン、ラメルテオンやアゴメラチンを含むメラトニンおよびメラトニン受容体作動薬系の何れかに属する有効成分から選択され、
前記水性アルコール溶液の1回分の投与容量が2ml以下であり、
前記有効成分の1回分の投与量が8mg以下であり、 前記有効成分はその全量が口腔底の粘膜、特に歯肉/頬、歯肉領域、頬、舌下の粘膜経由で経粘膜吸収される
ことを特徴とする投与剤形。
【請求項2】
前記水性アルコール溶液は40〜65重量%のエタノールと、35〜60重量%の水を含む
ことを特徴とする請求項1記載の投与剤形。
【請求項3】
前記水性アルコール溶液はpH調節剤を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の投与剤形。
【請求項4】
前記有効成分はカルボキシル基を含み、前記水性アルコール溶液はpH調節剤および封鎖剤の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項3記載の投与剤形。
【請求項5】
前記水性アルコール溶液はエタノール、水、および前記有効成分のみから構成される
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の投与剤形。
【請求項6】
前記有効成分はその全量が10秒未満、より有利には6秒未満で経粘膜吸収される
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の投与剤形。
【請求項7】
前記有効成分の分子量は600ダルトン未満である
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の投与剤形。
【請求項8】
前記有効成分の1回分の投与量は5mg未満である
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の投与剤形。
【請求項9】
前記水性アルコール溶液の1回分の投与容量は1ml以下である
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の投与剤形。
【請求項10】
前記有効成分は前記水性アルコール溶液中において溶解、可溶化、安定化のためのいかなる添加物も必要としない
ことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の投与剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入眠促進および/または睡眠障害治療および/または癲癇性発作などの中枢神経系障害の即座の緊急治療のための有効成分の投与剤形に関し、特に、上記有効成分の口腔粘膜経由での即座の全身投与を保証する投与剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
上記有効成分としては、中枢神経系レセプタに迅速に作用して精神運動を鎮静化し、または迅速な入眠促進および/または覚醒相と睡眠相の間のバランスの乱れを元に戻す作用を有するものが使用される。
第1の制約条件として、上記有効成分は、短時間(例えば当該有効成分の投与後2、3分)で効果を発揮することが求められる。本発明も非常に少量の有効成分の投与量で迅速な薬理学的効果を得ることができる非常に特殊な剤形組成およびその使用態様に関するものである。
【0003】
第1に考慮されるべき点は、以下に示す点である。睡眠障害の原因が、患者の生理学的変化によるものなのか、心理学的変化によるものかにかかわらず、睡眠障害の患者数が世界人口に占める割合は増加傾向を示している。不眠症とは、寝つけないこと、或いは、良好な健康状態を維持するために充分と考えられている時間(具体的には、一晩に6〜8時間)、睡眠を継続することができないことと定義されている。ほとんどの西側諸国では催眠剤の消費量が増加している。しかしこの現象について、真に説得力を有する説明を提案する研究は未だに存在しない。数少ない利用可能な研究によると、一般診療を受ける患者の半数が不眠症を患っていることが示されている。そして、不眠症患者全体の15〜17%が軽度の不眠症を患っており、12〜17%が中度の不眠症を患っており、19〜23%が重度の不眠症を患っていると言われている。
【0004】
一方で、多くの不眠症患者は医師に対して不眠症状について相談することない。不眠症は合併症を引き起こす可能性があること以外に昼間の身体的、精神的、社会的な機能を乱れさせ、それにより、不眠症患者の生活の質が低下する。これは慢性疾患の場合と非常に類似している。
疫学的に、睡眠障害と精神障害(うつ病、不安症、情動障害、および違法物質・アルコールの乱用)との間には統計学的に正の相関関係がある。また特に、睡眠障害の治療に用いられる催眠剤分子の残効性により交通事故や業務中の事故のリスクが上昇することも疫学的に示されている。米国では少なくとも4000万人が慢性的な睡眠障害に罹患していると推定されている。
【0005】
同様に、欧州およびオーストラリアにおける研究によると、人口の30%が睡眠障害を経験していることが示されている。また、フランス人では6人に1人(すなわち、およそ1000万人)が睡眠に関する症状を訴えており、全人口における重度の不眠症の罹患率は10〜20%である。なお、睡眠障害は加齢とともに悪化・慢性化する傾向があり、催眠剤の消費者の60〜70%が40才を超えている点にも留意する必要がある。
【0006】
また、近年行われた研究では、米国での成人における不眠症の罹患率は3人に1人であり、不眠症関連の年間総医療費は925〜1075億ドルに及ぶことが示されている。加えて、不眠症は業務効率の低下につながる。一方で、良好な睡眠をとれている人は仕事、勉強、人とのコミュニケーションに不眠症患者の2倍の時間を費やすことができると考えられている。
【0007】
睡眠障害については充分な医学的研究がなされており、またその定義も充分確立されている。保健当局は睡眠障害を概ね以下のように定義している:軽度の不眠症は、不眠状態になるのが、週に1晩以下であり、昼間活動への影響がもっとも少ない不眠症である。;中度の不眠症は、不眠状態になるのが週に2晩か、3晩であり、昼間活動への影響として疲労、不機嫌、緊張、怒りっぽくなるといった症状がでる不眠症である。;重度の不眠症は、不眠状態になるのが週に4晩以上であり、昼間活動への影響として疲労、不機嫌、緊張、怒りっぽくなる、拡散過敏症(diffuse hypersensitivity)、集中力の欠如、精神運動の低下といった症状がでる不眠症である。
【0008】
さらに、昼夜感覚のずれは概日リズム障害を引き起こす。概日リズム障害は長距離移動中に時差のある地域間を何度も高速で移動する航空旅客が最も高い頻度で経験する。上記移動がもたらす影響は一般的に「時差ボケ」として知られており、これにより睡眠が著しく妨げられる。この睡眠の妨げは非対称現象(asymmetry phenomenon)として知られており、その改善には時間がかかる。また、概日リズム障害は夜間労働が続くことによっても起こりうる。
【0009】
現在、容易な入眠を促進したり、概日リズムを調節したりするために使用される自己投与型の医薬有効成分は数多く存在している。そのような有効成分、すなわち中枢神経系の神経レセプタや機構(mechanism)に作用する有効成分は自己投与されると、一般的に消化器から吸収される。しかしながら、これらの有効成分は疎水性を有しているので、他の全ての疎水性有効成分と同様、消化管や胃に入ると消化器初回通過効果を受け、有効成分が胃内容物(the medium in the stomach)や腸の様々な生理作用(variations in intestinal physiologies)により劣化し、損失する。次いで、有効成分は肝臓初回通過効果を受ける。肝臓初回通過効果の結果、有効成分は代謝されたり、分解されたりする。この分解の程度は、有効成分により大小の差がある。有効成分のこのような代謝は、数多くの代謝物を生じる。これら代謝物の多くは不活性である一方、有毒な代謝物も生じる。
【0010】
結果的に、経口投与された有効成分の内、実際に生物学的に利用できる量、すなわち入眠促進に作用する有効成分量は極めて少ない。以下に例示されるように、期待される薬理学的効果の発現に利用可能な状態で残る有効成分量は、経口投与された有効成分量の極めて一部でしかない。
さらに、経口投与された有効成分により患者に対する治療効果が現れるのは、有効成分が入眠促進のためのものであるか覚醒/睡眠バランスの調節のためのものであるかに関わらず、経口摂取後平均して30〜45分後である。この30〜45分の期間は、有効成分が消化器官で吸収、代謝された後、血管内を拡散して作用部位である、中枢神経系のエフェクターセンター(effector centers)に到達するのに要する時間に相当する。
【0011】
結果として、経口投与の場合には以下の2つの重要な問題が生じる可能性がある。 第1の問題は患者に投与される有効成分の量に係る問題である。経口投与時の有効成分量は以下の点を考慮した上で充分量でなければならない:(イ)投与された有効成分の内の一部が消化器官でゆっくり且つ断片的に吸収される点;(ロ)投与された有効成分の内の一部が肝臓で代謝されて失われる点;(ハ)有効成分が生体の生体液、血漿、血液細胞、そして間質液や細胞内液によって希釈される点。経口投与された有効成分が生体内に拡散すると、有効成分が入眠促進のためのものであるか覚醒/睡眠バランスの調節のためのものであるかに関わらず、実際に迅速にかつ薬力学的効果を発現させるのに充分な量で中枢神経系の特定レセプタに到達することができる有効成分の割合をその分減少させることになる。
【0012】
従って、有効成分の投与経路、そしてなによりも、有効成分の投与方法および投与される有効成分の吸収量、生物学的利用能は、必要量の有効成分をできるだけ短時間で血流に迅速に循環させ、遅滞なく中枢神経系のエフェクターに作用させるための決定的因子である。
当業者にとって、有効成分の作用を迅速かつ確実に発現させる投与形態として注射等による非経口の投与形態が適していることは公知の事実である。特に入眠を促進したり、不眠症を緩和したりする場合には、経静脈投与することにより、即座に効果が発現されることは麻酔科医にとって公知である。しかしながら、経静脈投与は経血管投与であるため、高度の専門知識を有する医療資格者により行われることが必要であるとともに、当該医療資格者による適切な監視が必要とされる。
【0013】
従って、このような経静脈投与を、迅速な入眠を願う数百万人もの患者やこれらの患者と同様にそのような手順を行うにふさわしい状況にない概日リズム障害を患う患者が行うことは推奨できないことは明らかである。加えて、第三者が静脈注射経路で薬剤を投与して緊急治療(例えば特に子供の癲癇性発作の緊急治療)を行うことは考えにくい。
上述の経口経路や静注経路に加えて、口腔粘膜を通る投与経路が公知である。経口腔粘膜経路の場合、薬剤は投与されると受動拡散により口腔粘膜を受動的に通過する。そして薬剤分子は、口腔粘膜で十分に吸収されると、舌下静脈・頬の内部静脈に入る。そして薬剤分子は心臓右部、次いで肺動脈に入り、心臓左部に達する。さらに、薬剤分子は心臓左部から大動脈経由で総頸動脈に分配される。このような経路を通ることで、経口腔粘膜投与された薬剤は、経口投与された薬剤が受ける、消化器官や肝臓代謝を避けることができる。
【0014】
しかしながら、経口腔粘膜投与される従来の剤形は決して満足なものではなく、睡眠異常の治療にはほとんど用いられていない。これは特に、有効成分を構成する分子が、その元来の性質上、唾液などの生体液に溶解しにくい、もしくは溶解しない性質を有しているためである。これら疎水性分子は唾液と接触しても溶解せず、通常唾液との接触後も結晶体および/または凝集体形態(aggregate form)のままである。そして、そのような状態の疎水性分子を粘膜経由で吸収することは不可能であり、従ってそれら分子が全身の血流に移行することも不可能である。その結果、それら疎水性分子は主に嚥下されることになり、そのため薬剤の経口投与に関連した上述の効果を受ける。
【0015】
従来、催眠作用を有する疎水性有効成分を経口腔粘膜投与する試みがなされてきた。特許文献1〜7はそれらの試みのいくつかを開示するものである。しかしながら、これらの特許文献はスプレー剤での投与を開示している点で特に本発明と異なっている。スプレー剤での投与には特定の成分の使用が必要になる。スプレー剤の問題点は他にも存在する。特に、口腔内へのスプレー投与が正確に行われないと、薬剤が空気中へ拡散し、その結果、必然的に投与された薬剤の内、一定量が即座に唾液と混合されて嚥下され、失われてしまうことになる。それに加え、これら文献は、高いエタノール含有量(少なくとも重量%で35%)を用いることについては開示していない点において、本発明と異なっている。従って、これらの文献に基づいて、この高いエタノール含有量によって実現される本発明の有利な技術的効果を実現することができない。なお、本発明とこれら文献の差異は上記のもの以外にも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2008/141264号
【特許文献2】国際公開第 2006/089082号
【特許文献3】米国公開公報第 2007/0248548号
【特許文献4】国際公開第 2007/123955号
【特許文献5】米国公開公報第 2008/013929号
【特許文献6】カナダ公開公報第 2582007号
【特許文献7】米国公開公報第 2004/265239号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一つの目的は上述の問題が生じることがない投与剤形を提供することである。 本発明の別の目的は、脳の動脈の血流速度が生体内において最も速い(1分あたり2リットル)ことを考慮して、単純で、かつ迅速に動脈血流に移行して迅速に生物学的に利用可能になることが可能な投与剤形を提供することである。又、本発明は、その投与剤形の溶液を歯肉と頬の間の溝に完全に保持されるように投与するという特定の投与方法を提供することも目的とする。この投与方法は一般消費者が利用でき、有効成分を正確な量投与することを可能にする。上記投与方法により投与された有効成分は血流中で直ちに生物学的に利用可能になるので、迅速かつ効果的に特定の症状(睡眠困難、睡眠不安定性障害、概日リズム障害や癲癇性発作)を治療することができる。そして、上記投与方法により投与された有効成分は、直ちに血流中に移行して直ちに中枢神経系のレセプターに作用し、有効な薬理学的効果を発揮するのに必要な有効成分の投与量を少なくすることができる。この方法は経静脈投与の場合に得られる効果と同様であるが、本発明の方法を用いる場合、経静脈投与の場合のように、投与するのに専門的技術を必要とせず、感染症が生じるリスクもなく、また専用の器具を備えたり、それを使用するための専門的訓練を受けた医療従事者に支払うコストも不要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る投与剤形は、入眠促進および/または睡眠障害の治療および/または中枢神経系障害の治療のための有効成分を粘膜経由で経口投与するための投与剤形であって、 前記有効成分は、疎水性もしくは両親媒性を有しており、前記投与剤形中において、35〜70重量%のエタノールと30〜65重量%の水を含む水性アルコール溶液中に安定かつ完全な状態で溶解し、血液脳関門を通過可能なように、当該水性アルコール溶液中でナノ構造(nanostructures)を構成し、塩基の形態又は塩の形態であり、疎水性又は両親媒性で、分子量が1000ダルトン未満の睡眠導入剤又は睡眠調節剤に属し、ゾルピデムを含むイミダゾピリジン系、エスゾピクロンを含むシクロピロロン系、ザレプロンを含むピラゾロピリミジン系、ミダゾラムやブロチゾラムを含むベンゾジアゼピン系、ドキシラミンやシプロヘプタジンを含む第1世代抗ヒスタミン薬系、メラトニン、ラメルテオンやアゴメラチンを含むメラトニンおよびメラトニン受容体作動薬系の何れかに属する有効成分から選択され、前記水性アルコール溶液の1回分の投与容量が2ml以下であり、 前記有効成分の1回分の投与量が8mg以下であり、 前記有効成分はその全量が口腔底の粘膜、特に歯肉/頬、歯肉領域、頬、舌下の粘膜経由で経粘膜吸収される。
【0019】
有利な構成として、前記水性アルコール溶液は40〜65重量%のエタノールと、35〜60重量%の水を含むこととすることができる。又、有利な構成として、前記水性アルコール溶液はpH調節剤を含むこととすることができる。又、有利な構成として、前記有効成分はカルボキシル基を含み、前記水性アルコール溶液はpH調節剤および封鎖剤の少なくともいずれかを含むこととすることができる。又、好ましい構成として、前記水性アルコール溶液はエタノール、水、および前記有効成分のみから構成されることとすることができる。
【0020】
具体的には、水性アルコール溶液に有効成分を溶解させることで、有効成分のナノ構造(平均およそ1ナノメートルの大きさを有する)を形成することが可能である。当該ナノ構造は、アルコール度数が35度以上のエタノールの場合に生じる水との溶解平衡において、特に高い濃度で存在する。なお、本発明の水性アルコール溶液においては、アルコール度数を、45〜65度の範囲内の高いアルコール度数にした場合に、当該ナノ構造の濃度を最適濃度にすることができる。なお、有効成分の中には、そのナノ構造が特異的親和性及び、同じ有効成分が静注溶液に含有される場合と比較して10倍程度高い血液脳関門を通過する能力を示すことが確認されている。
【0021】
又、有利な構成として、前記有効成分はその全量が10秒未満、より有利には6秒未満で経粘膜吸収されることとすることができる。又、有利な構成として、前記有効成分の分子量は600ダルトン未満であることとすることができる。又、有利な構成として、前記有効成分の1回分の投与量は5mg未満であることとすることができる。又、有利な構成として、前記水性アルコール溶液の1回分の投与容量は1ml以下であるとすることができる。又、有利な構成として、前記有効成分は前記水性アルコール溶液中において溶解、可溶化、安定化のためのいかなる添加物も必要としないこととすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
具体的には、有効成分が本発明の水性アルコール溶液中で不安定な場合は、本発明の水性アルコール溶液を投与の直前にその場で、例えば公知の装置を用いて溶解させても良い。これにより有効成分を即座に適切に溶解させ、投与することができる。そのような装置の例として、例えばフランス出願公開公報第2939321号やフランス出願公開公第2930140号に記載の装置がある。
【0023】
「経粘膜」/「粘膜を介して」/「粘膜経由で」とは、疎水性もしくは両親媒性分子が溶解した状態で受動拡散により受動的に粘膜を通過することを意味する。上記分子は疎水性を有し、上記分子が通過する粘膜も疎水性であるため、上記粘膜を通して(特に頬、歯肉、歯肉領域、舌下の粘膜経由で)瞬間的に吸収される。なお、頬、歯肉、歯肉領域、および舌下の各粘膜はいずれも、物理的支持体および一種の容器として機能する口腔底を構成する。更に、これらの特定の粘膜は、本発明の投与剤形が最大限の効果を実現するのに特に適した好適な吸収表面上に配置された液体が希釈されないようにすることを可能にする。
【0024】
「有効成分の安定かつ完全な溶解状態」とは、有効成分が溶媒中で分子状に分散して溶解した状態のことをいう。当該溶解状態は、水とアルコール度数が高いエタノールの混合溶液中で実現される。又、当該溶解状態により、有効成分を平均約1ナノメートルの大きさを有するナノ構造の状態にして、有効成分が好適に血液脳関門を通過して吸収されるようにすることができる。又、当該溶解状態により、分子が再結晶化されるという不都合が生じないようにすることができる。
【0025】
「アルコール度数がX度の水性アルコール溶液」とは、水性アルコール溶液の総容量に対する純粋アルコール(アルコール度数が100度のアルコール)の容量の百分率比に対応するアルコール度数X度のアルコールのことをいう。水性アルコール溶液のアルコール度数は、まず第1に溶液を作るのに使用されるアルコールの度数、そして第2に溶液中の水/アルコールの比率に応じて変化する。例えば、溶液を作るのに使用される元のアルコールのアルコール度数が100度であり、水/アルコール比率が50/50である場合、水性アルコール溶液のアルコール度数は50度である。
【0026】
本発明において、「中枢神経系に作用し、入眠促進および/または覚醒/睡眠機能を調節する作用を有する有効成分」とは以下の要件を満たす有効成分を意味する:疎水性もしくは両親媒性を有し、動脈経由で直接中枢神経系の各機構、特に中枢神経系の精神運動の平衡状態を再構築する機構および/または入眠を促進する機構および/または覚醒/睡眠同期のバランスを整える機構に対して作用すること。有効成分が遅滞なく全身血流に移行し、また通常経口投与される1回分の投与量よりも少ない投与量で、経口投与の場合よりも有効な効果を実現できること。具体的には、二本の頸動脈によって脳へと運ばれる血流は生体内で最も血流速度が速く、その血流速度は1分あたり約2リットルである。そのため、この大脳動脈経路は、睡眠や精神運動の平衡状態に係るパラメータに作用する有効成分の分子を直接的に作用部位まで輸送するのに好適な経路である。
【0027】
中枢神経系に作用しおよび/または入眠促進作用を有しおよび/または覚醒/睡眠機能の調節作用を有する有効成分は、塩基の形態および/または塩の形態で存在する。有効成分の塩の形態の例としては、コハク酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、硫酸メチルやホウ酸塩、およびあらゆる薬学的に許容される塩が挙げられる。
本発明の有効成分は次の全ての条件を満たす有効成分から選択可能である:(イ)疎水性又は両親媒性を有する。;(ロ)低分子量(典型的には1000 ダルトン以下)である。;(ハ)入眠促進作用もしくは中枢神経系の機能のバランスを整える作用および/または睡眠バランスを整える作用を有し、覚醒後に望ましくない副作用が生じない。
【0028】
本発明に適用される有効成分の分子の例として、以下に特定の有効成分分子の例を挙げるが、本発明に適用できる有効成分分子は、これらの分子に限定されないことはもちろんのことである。:(イ)ベンゾジアゼピン系催眠剤に属する分子―これらの分子は抗不安作用及び催眠作用を有する分子であり、中枢神経系に作用することで人の精神および行動に影響を与える向精神薬に分類される。;(ロ)イミダゾピリジン、シクロピロロン又はピラゾロピリミジン等のベンゾジアゼピン系類似薬剤分子;(ハ)ドキシラミン等の鎮静作用を有する第1世代抗ヒスタミン剤分子;(ニ)入眠促進作用と概日リズム調節作用の両方を有する、例えばメラトニンやメラトニン類似薬剤分子。
【0029】
ベンゾジアゼピン系薬剤は、中枢神経系におけるγ‐アミノ酪酸(GABA)の抑制作用を増強する作用機序を有する。なお、いずれの種類のベンゾジアゼピン系薬剤も、その名称が一般的に英文表記において"azopam"、"azolam"、"azepam"の接尾辞のいずれかを有する。以下にベンゾジアゼピン系薬剤の例を示すが、ベンゾジアゼピン系薬剤はこれらの例に限定されない:フルニトラゼパム(商品名:Rohypnol(登録商標));ロルメタゼパム(Noctamide(登録商標));ロラゼパム(Temesta(登録商標));ブロマゼパム(Lexomil(登録商標));クロチアゼパム(Veratran(登録商標));オキサゼパム(Seresta(登録商標));テマゼパム(Normison(登録商標));ロプラゾラム(Havlane(登録商標))。又、ベンゾジアゼピン系薬剤には「類似」した分子も含まれる。そのような類似分子として、例えば:エスゾピクロンを含むシクロピロロン系;ゾルピデム(Stilnox(登録商標))を含むイミダゾピリジン系が挙げられる。なお、これらの物質は少量(例えば0.5〜5mg)が経口投与されるため、薬学的活性が高力価である。
【0030】
本発明に係る投与剤形に配合されるのに適した有効成分は、本発明に特有の濃度の水生アルコール溶液に溶解するように疎水性又は両親媒性を有する有効成分であって、いずれも中枢神経系障害に作用するものおよび/または入眠促進作用を有するものもしくは覚醒/睡眠バランス調節作用を有するものである。有効成分は疎水性又は両親媒性であり、低分子量(典型的には1000ダルトン未満)であることが好ましい。
【0031】
本発明の投与剤形は水性アルコール溶液の形態を有し、重量%でアルコールを35〜70%、水を30〜65%含む。水性アルコール溶液は重量%でアルコールを40〜65%、水を35〜60%含むことがより効果的である。有効成分は、好適にはアルコール度数が35〜70度、より好適には40〜65度の範囲内であれば、水性アルコール溶液に溶解した状態で全身血流へ移行することが可能である。そして、水性アルコール溶液中の、有効成分の溶解に関与する要素である、水と高いアルコール度数のエタノール間の溶解平衡によって、有効成分の特定のナノ構造が形成される。これにより、本発明は投与剤形に配合された有効成分の血液脳関門通過性を予期できない程度に、かつ、科学的に立証可能なように向上させる。
【0032】
上記投与剤形において上記ナノ構造を形成するには、水性アルコール溶液のアルコール度数を少なくとも35度以上に高くすることが必要である。又同時に、溶解又は安定化のための添加成分が上記投与剤形に含まれていないこと、そして上記投与剤形の組成物の官能特性に影響しうる添加成分が含まれていないことが必要である。本発明において用いられるアルコールとしては、エタノールを用いることが好ましい。
【0033】
本発明の有利な特徴として、アルコールは水と共に溶媒、及びナノ構造を形成する構成要素として作用するだけでなく、粘膜を介した有効成分の迅速な吸収を促進する作用も有する。そしてこの吸収速度はアルコール度数が高いほど速くなる。具体的には、アルコール度数が高い場合には、微細なエタノール分子により脂質構造の口腔粘膜の表層が溶解される。これにより、溶解した有効成分の疎水性分子は、それ自体疎水性を有する口腔粘膜の上皮外膜に侵入しやすくなる。加えて、エタノールは低分子量(46ダルトン)であるため、溶液中の有効成分の分子の粘膜経由での迅速な吸収を促進する強い浸透力を有する。
【0034】
本発明の好適な実施の形態として、水性アルコール溶液は水とエタノールを基剤とする。水性アルコール溶液は水、エタノール、および有効成分のみから構成されることがより有利である。
添加物の添加は、配合されている有効成分のナノ構造の形成力を抑制することがあるだけでなく、水性アルコール溶液の安定性を経時的に低下させることもある。又、添加物を添加すると、有効成分の吸収率が大幅に低下すると共に、粘膜経由での上記有効成分の吸収速度も同時に低下させることがある。なお、一部の有効成分は非常に不快は味を呈することが知られているが、本発明のように有効成分を含有する水性アルコール溶液を安定かつ完全に頬、歯肉、歯肉領域、又は舌下経由で投与した場合、それら有効成分の味に患者が気づくことはない。具体的には、これらの特定の粘膜、特に歯肉/頬の粘膜には味覚受容器が存在せず、少量単位で投与される本発明の水性アルコール溶液は、その高いアルコール度数のため、数秒のうちにこれらの粘膜に吸収される。従って、有効成分の分子が口内の、舌上面の乳頭突起や口の奥側上部の固有口腔に存在する味覚受容器に到達することはない。このように、本発明では本発明の投与剤形の組成物を、生理学的に味覚受容器が存在しない特定の粘膜に対して選択的に接触投与することにより、薬剤投与時に多く発生する薬剤の味に起因する不具合の発生を解消することができる。
【0035】
一方、実施の形態によっては、特に投与される有効成分にカルボキシル基が含まれる場合、本発明の投与剤形中にpH調節剤および/またはかルボキシル基封鎖剤を含むこととしても良い。具体的には、カルボキシル基を含む有効成分は、第1級アルコールおよび第2級アルコールと反応してエステルを形成する場合がある。この反応により、有効成分量が減少したり、不純物が生じたりして調製された薬剤に悪影響を及ぼす。この場合、pH調整剤を添加することで、有効成分分子における親水基と疎水基の割合を調節することができる。これにより、有効成分の粘膜経由での薬剤投与における有効成分の生物学的利用能を最適化し、投与された有効成分を最速でかつ完全に吸収させることができる。pH調整剤としては、好適には炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、1ナトリウムリン酸塩又は2ナトリウムリン酸塩、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム(NaOH)そして水酸化カリウム(KOH)から選択することが好ましい。又、カルボキシル基の封鎖剤は、好適にはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(E385)、グルコノデルタラクトン(E575)、グルコン酸ナトリウム(E576)、グルコン酸カリウム(E577)、トリポリリン酸ナトリウム、もしくは塩酸、酒石酸、乳酸、クエン酸等の酸性pH調整剤、又はこれら物質の薬学的に許容される塩から選択することが好ましい。
【0036】
上記水性アルコール溶液は、安定した状態で保存可能なように事前に調製しても良いし、使用の直前にその場で作成しても良い。使用の直前に作成する場合には、上記水性アルコール溶液の準備、投与に適した装置を用いる。そのような装置の例として、フランス出願公開公報第2939321号やフランス出願公開公報第 2930140号に記載の装置がある。
本発明の投与剤形を用いると、有効成分を疎水性の口腔粘膜、主に頬、歯肉、歯肉領域、舌下経由で受動拡散により受動的に通過させることができる。このとき、有効成分は、上記水性アルコール溶液を上記口腔粘膜に接触した状態で口腔内に保持されるように接触投与されてから10秒以内に口腔粘膜を受動拡散により受動的に通過する。有効成分が口腔粘膜に非常に短時間で迅速に吸収されるので、上記水性アルコール溶液および有効成分が口腔内に停滞しないようにすることができ、上記アルコール溶液および有効成分が唾液と混合されて以下に示す望ましくない効果が生じないようにすることができる。唾液との混合により、有効成分それ自体が劣化し、完全かつ安定したアルコールと水との間の溶解平衡が失われて有効成分が継続的に安定して溶媒に溶解されなくなり、有効成分のナノ構造の形成に好ましくない影響が出る。又、有効成分が口腔粘膜に短時間で吸収されることにより、投与された上記水性アルコール溶液およびそれに含まれる有効成分が反射的に嚥下されないようにすることができる。
【0037】
なお、口腔粘膜の上皮外膜は、疎水性/両親媒性分子を受動的に、かつ選択的親和性(elective affinity)によって吸収するリン脂質構造により構成される。本発明の溶解状態にある有効成分の粘膜経由の受動通過は、当該粘膜のもう一方の側への浸透力に基づくものであり、この浸透力は、溶解した有効成分の濃度、およびアルコール溶液の濃度の両者に左右される。具体的には、浸透力は、溶解状態の疎水性分子の分子量が小さく、また吸収促進作用を有するアルコールのアルコール度数が高くなる程、強くなり、潜在的エネルギーが高くなる。
【0038】
疎水性口腔粘膜(主に頬、歯肉、歯肉領域、及び舌下の疎水性口腔粘膜)は密度が非常に高く、ほとんど海綿状の微小血管網を有している。これにより、アルコール溶媒分子と溶解した有効成分の両方の分子は、上皮膜の疎水性孔を通過して即座に血液の微小循環に取り込まれ、舌下静脈に集められる。この現象は、アルコールの存在下で血管拡張と粘膜の局所的微小血管流の増大とを生じさせる。このようにアルコールによって局所的に血流量が増大するため、膜の両側で平衡が生じることはない。具体的には、上記両分子が吸収されつくすまで口内に投与された両分子の濃度は希釈されず、濃い状態に維持される。
【0039】
従って、有効に実施された薬物臨床試験の結果では、有効成分をアルコール度数が50度のエタノールに溶解して作成した容量1mlの投与剤形において、平均4〜10秒でアルコール全量、および溶解した有効成分全量が粘膜を通過したことが示されている。
本発明の投与剤形を用いて、1回分の有効成分を患者が予め選択した粘膜と接触するように投与すると、有効成分が直ちに吸収され、瞬時に中央血管系を介して生体内の動脈領域(arterial zone)に到達することができる。これにより、有効成分は経口投与の場合のように消化器および肝臓を通過することにより大きな影響を受けることなく、薬理学的作用を発揮することができる。
【0040】
上記水性アルコール溶液は重量%で35%以上のアルコールを含む。このことにより、水性アルコール溶液は、有効成分が有する溶解性が低い場合であっても、有効成分を溶解させることできるという効果を有する。さらに、重量%で35%以上のアルコールを含む上記水性アルコール溶液は、健康安全上懸念があるとされているパラオキシ安息香酸エステル系抗菌保存剤を添加することなく、微生物汚染されないようにすることができるという効果を有する。
【0041】
以下に特定の例を挙げて説明するように、本発明の投与形態を用いることにより、中枢神経系障害の治療および/または迅速な入眠促進および/または覚醒/睡眠に係る生理学的機能の調節のために、薬理学的活性を有する有効成分を少量の有効な投与量で、体系的に、かつ、迅速に投与することができる。
本発明の投与形態は、特に睡眠障害を治療および/または防止するための薬物治療に適用可能であり、経口投与形態や注射投与形態と比較して数々の利点を有する。すなわち、本発明の投与形態は非常に単純であり、少量の有効な投与量をほぼ即座に中枢神経系に分配させることができる。これにより、本発明の投与形態を用いると、生体内の他の部分で有効成分を損失させることなく、有効成分に所望の薬理学的効果を遅滞なく発揮させることができる。具体的には、脳への動脈血流は生体内で最も血流速度が速いため、本発明の投与形態で投与された有効成分はまず動脈経由で直接的に薬理学的標的に到達し、その後生体内の様々な部分に分配され拡散する。本発明の投与形態を用いると、有効成分の投与量を経口投与の場合に要する投与量に比べて大きく減少させることができると同時に、静脈投与する場合に比べ、患者にとってより利用しやすい時間に薬力学的効果を発現させることができる。
【0042】
本発明は実施が非常に簡単であり、かつ以下に示すように非常に優れた剤形安定性を提供できる利点がある。本発明によると、水とアルコール間の溶解平衡を調整することにより、各々の分子について、2ml以下、好適には1ml以下の少量の水性アルコール溶液に有効成分を溶解することができる。さらに、本発明では、経口投与剤形の形態、および従来の舌下投与剤形の形態やスプレー投与剤形の形態では不可欠の添加剤のほとんどを不要とすることができる。このように、本発明の投与剤形を用いることにより、は製造コストを下げると同時に、不耐性(intolerance)のリスクや有効成分と添加剤との間で生じ得る相互作用が起こるリスクを低減することが可能である。
【0043】
さらに、有効成分は生体内で特段の障害を受けることなく吸収され即座に分配されるため、有効成分の基本投与量(basic dose)を非常に少なくできる。このため、有効成分の基本投与量は、従来に比べて、所望の薬理学的活性を得るのに必要な最小量により近いものになる。有効成分の基本投与量は、好ましくは8mg以下であり、より効果的には5mg未満である。
【0044】
本願について特筆すべきこととして、有効成分が作用を発現するまでの時間が非常に短いことが挙げられる。薬剤が消化器経由で吸収される速度の遅さと比べるとこれは特に顕著に短い。このように有効成分がほぼ即座に薬理学的作用を発現するため、患者は薬剤を投与することで、血流への静脈注射投与の場合に匹敵する薬理学的効果を得ることができる。
【0045】
加えて、疎水性口内粘膜(主に頬、歯肉、歯肉領域、および舌下の粘膜)は、上皮組織がもともと皺を有しているため、総吸収表面積が大きい。従って、本発明の投与剤形を投与した場合に、嚥下されてしまったり、本来と異なる経路を通過するリスクがない。具体的には、本発明の投与剤形を用いると、投与された有効成分が極めて迅速に粘膜を通過することができるので、有効成分が唾液によって希釈されたり、嚥下されたりする事態の発生を防止することができる。さらに、既存の剤形の多くで生じる、例えば界面活性剤による粘膜の不安定化を引き起こさないという利点もある。
【0046】
加えて、アルコールの影響は問題にならない。例えば、50度の水性アルコール溶液1mlを経口摂取した場合、全身血流中に循環するエタノールの量は最高で血液1リットルあたり0.00785グラムに過ぎず、これはフランスの法定許容量(血液1リットルあたり0.5グラム)の60分の1に過ぎない。事実、本発明の経粘膜投与という環境下では、有効成分の輸送媒体としての機能を果たし終えたエタノールは、大部分が呼吸により揮発状態で排出される。このエタノールの排出は、本発明の投与剤形を投与後数秒以内に右心室、肺動脈を経由して肺胞を通過する際に起こる。このアルコールは経口摂取されたものではないので、一度肺を通過して呼吸により排出された後には実質的には生体内に循環されるエタノールは一切存在しない。この点も、本発明の特筆すべき利点である。具体的には、アルコールは有効成分が少量の有効量で投与され、全身血流へ循環された後は生体内に留まらない輸送媒体として知られている。このように、本発明は有効成分を投与可能にすると共に迅速に薬力学的作用を発現させることを可能にする一方で、多量の有効成分および/または有効成分の添加剤や安定剤を使用することによる不寛容現象の発生を顕著に低減させることができる。生体にいかなる作用も及ぼす前に呼吸ルートを介して速やかに排出されるエタノールを輸送媒体として用い、且つ添加剤を不要とすることで、本発明は経口投与される剤形や経粘膜投与される複雑な剤形に比べて低リスク・低コストを実現する。経粘膜投与される複雑な剤形の例として、すでに上述した米国出願公開公報第 2007/0248548号、国際出願公開公報第2007/123955号、米国出願公開公報第2008/013929号、カナダ出願公開公報第2582007号、および米国出願公開公報第 2004/265239号に記載の剤形が挙げられる。
【0047】
本発明の投与剤形は、有効成分が空気と接触して劣化することを防ぐために、特定の工業包装物と一体化されることが好ましい。一例として、本発明の特定の実施の形態では、不透明且つ可撓性を有する一体型包装であって、最長数センチの投与用カニューレを有するものが用いられる。このカニューレを用いることで、水性アルコール溶液全量を、決められた粘膜領域と接触するように正確にスポット投与することができる。
【0048】
又、この一体型包装には、投与剤形中の組成物が、安定性が良好な状態で保護されるように、窒素ガスが充填されていてもよい。又、一体型包装は、酸素/光透過性を有さない包装であっても良い。このような包装を用いることで、本発明の水性アルコール溶液中に溶解した有効成分を経時的に安定な状態に保つことができる。又、患者が快適に使用できるようにおよび/または容易に持ち運びできるように、スティック形状("stick" type)の包装で、特に耐漏洩性を有するバイアル形式の包装を用いることが好ましい。
【0049】
さらに好適には、本発明の投与剤形の薬剤は、1回分の有効成分を含む溶液が、容量が0.1〜2mlの単位でスティック形状の包装容器に分包包装される。このような包装は、持ち運びを容易にするばかりでなく、本発明の投与剤形の使用を簡単、慎重、かつ迅速なものにするという利点がある。又、このようなスティック形状の包装が有する特定の特徴として、例えば、その場で即座に有効成分と水性アルコール溶液を混合することで投与用薬剤を調製することを可能にし、その混合物を即座に、かつ正確に投与することを可能にすることができる。このような即座の、かつ正確な投与を行うことは、例えば国際出願公開公報第2010/063978号や国際出願公開公報第2009/016309号に記載のカニューレを適切に用いることで可能である。又、本発明の上述のもの以外の特徴や利点については、以下の実施例で明らかにする。
【0050】
本発明の以下の全ての実施例の有効成分には、有効成分が疎水性もしくは両親媒性を有し、アルコールと水の混合溶液に対して溶解可能であるという共通の制約条件がある。上記有効成分は、低分子量(典型的には1000ダルトン未満、好ましくは600ダルトン未満)であり、塩基の形態および/またはその塩の形態のいずれであっても良い。ただし、特に問題がない限りは塩基が好ましい。最善の治療効果を得るためには、有効成分の作用期間は最大でも数時間に制限されるべきである。これは有効成分の副作用の発生、特に有効成分を投与された不眠症患者が覚醒後に引き続き残余の眠気が解消されない結果、覚醒後の生活活動に支障が出るのを防ぐ必要があるためである。
【0051】
本発明の有効成分分子に共通の特徴として、経口投与された場合には肝臓で代謝され、多かれ少なかれ薬理学的活性が劣化する点が挙げられる。具体的には、本発明では、投与される有効成分の有効量が、直ちに神経中枢で生物学的に利用可能な状態になる。その結果、本発明では有効量を神経中枢に提供するのに要する有効成分の投与量を顕著に削減することができる。これにより、作用時間、投与量、同じ有効成分を経口摂取した場合に肝臓の活動によって必然的に生成される代謝物に主に起因する副作用の3つを削減できる。従って、入眠促進のために、その生体内における「半減期」が推奨睡眠時間(7〜9時間)より充分に長い有効成分は、たとえ本発明の投与剤形に使用可能であっても、本発明の好適な適用対象とは言えない。
【0052】
(実施例)
1.入眠促進および/または中枢神経系障害の治療のための催眠性/誘導性分子
(1)イミダゾピリジン系
市場に出回っている主要な催眠剤の一つにゾルピデムがある。この分子はイミダゾピリジン系であり、低分子量(307.4ダルトン)であり、高い疎水性を有している。したがって、ゾルピデム分子の92%が血流中において血漿タンパク質に結合する。又、ゾルピデム分子はエタノールに対して比較的高い溶解性を示すゾルピデム塩基の形態を有しており、従って好ましい。多くの疎水性物質同様、ゾルピデム分子が経口投与された場合の生物学的利用能は、投与量の70%以下である。ゾルピデムは通常、1回分として5又は10mg単位のゾルピデムを含有する錠剤で服用される。ゾルピデムの生体内における半減期は2〜3時間と短い。従って、ゾルピデムは本発明への適用基準を充たしている。従って、本発明では、口腔粘膜経由で投与される有効成分の投与量が8mgを超えないことを考慮して有効成分が処方されている。これは、本発明では、経口投与やスプレー投与と比べて有効成分が速く血液中に循環されるためである。結果として、本発明ではゾルピデム有効成分が経口腔粘膜投与により、高速で全身の血管中に移行されることによる「急速注入(bolus)」効果を考慮して少量投与処方の使用を可能とする。
【0053】
本発明の処方において、ゾルピデムの投与量は0.025〜7mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.2〜6mgの範囲内とし、より好ましくは0.5〜5mgの範囲内とするのが有利である。
なお、経口投与の場合に通常用いられるゾルピデムは、特に米国出願公開公報第2004/265239号に記載されているように、ゾルピデム塩(具体的にはゾルピデム酒石酸塩)の形態である。米国出願公開公報第2004/265239号には、NovaDel's Zolpimist (登録商標)(ゾルピデム酒石酸塩)5mgおよび10mgが経口スプレー投与される不眠症治療薬について記載されている。当該文献に記載のゾルピデム酒石酸塩は、ゾルピデム塩基に比べて水およびエタノールに対する溶解度が低い。ゾルピデム塩基はエタノール1mlに50mg溶解し、このことは本発明への適用をより容易にしている。しかしながら、本発明の処方でゾルピデム酒石酸塩を用いることも同様に可能である。下記にゾルピデムの処方例を示す。
処方A1:ゾルピデム塩基5mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.45mL
- エタノール 0.55mL
- ゾルピデム塩基 5mg
処方B1:ゾルピデム塩基3mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.3375mL
- エタノール 0.4125mL
- ゾルピデム塩基 3mg
処方C1:ゾルピデム塩基2mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- ゾルピデム塩基 2mg
処方D1:ゾルピデム塩基1.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.155mL
- エタノール 0.145mL
- ゾルピデム酒石酸塩 1.5mg
- NaOH:適量;6〜8のpH
処方E1:ゾルピデム塩基1mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.152mL
- エタノール 0.148mL
- ゾルピデム塩基 1mg
処方F1:ゾルピデム塩基0.5mg含有0.25ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.1245mL
- エタノール 0.1255mL
- ゾルピデム塩基 0.5mg
ゾルピデム有効成分を投与部位に正確に配置し、ゾルピデム有効成分の粘膜経由での吸収を迅速且つ完全にするために、ゾルピデム有効成分の投与は実際には、歯肉と頬の間の溝(anatomical groove)に対してなされるのが好ましい。上記溝の外側は頬の粘膜で構成され、内側は歯肉の細長い粘膜で構成される。この疑似容器(歯肉と頬の間の溝)により、その中に配置された上記処方の水性アルコール溶液が唾液と混合されることおよび/もしくは上記処方の水性アルコール溶液が嚥下されることが防止され、溶液量が1ml以下の場合、上記処方の水性アルコール溶液が4〜6秒以内に血管系に完全に吸収されるようにすることができる。
【0054】
本発明の上記処方を上記投与条件下で投与した場合、脳内においてゾルピデムの鎮静効果が、投与後ほんの2〜3分以内に認められる。これは脳内の動脈血流速度が生体内で最大であることによる。一方、経口投与された場合、ゾルピデムの作用が知覚されるのは投与後少なくとも15分後の、5mgもしくは10mgの量のゾルピデムが吸収された後である。
(2)シクロピロロン系
シクロピロロン系に属するエスゾピクロンの平均半減期は6時間である。エスゾピクロンはゾピクロンの右旋性異性体である。ゾピクロンは水およびアルコールに対する溶解度がそれほど高くない分子である。エスゾピクロンは疎水性分子であり、低分子量(388ダルトン)である。エスゾピクロン分子の60%が血流中において血漿タンパク質に結合する。エスゾピクロンは通常、1回分の経口投与量が1mg、2mg、3mgである。
【0055】
本発明の処方において、エスゾピクロンの投与量は0.025〜2mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.2〜2.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.15〜1mgの範囲内とするのが有利である。下記に エスゾピクロンの処方例を示す。
処方A2:エスゾピクロン塩基1mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.45mL
- エタノール 0.55mL
- エスゾピクロン塩基 1mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方B2:エスゾピクロン塩基0.8mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- エスゾピクロン塩基 0.8mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方C2:エスゾピクロン塩基0.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- エスゾピクロン塩基 0.5mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方D2:エスゾピクロン塩基0.25mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- エスゾピクロン塩基 0.25mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方E2:エスゾピクロン塩基0.15mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- エスゾピクロン塩基 0.15mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
(3)ピラゾロピリミジン系
ザレプロンはピラゾロピリミジン系に属し、低分子量(305.34ダルトン)であり、疎水性を有する分子であり、その経口投与時の生物学的利用能は投与量の30%である。ザレプロン分子の生体内における半減期は1時間と短い。このため、ザレプロンは本発明の投与剤形に適用するのに特に適している。すなわち、ザレプロンは少ない投与量でも口腔粘膜経由で吸収後即座に分配され、迅速に睡眠作用を発現する。経口投与の場合、ザレプロンは通常1回分の投与量が5mg又は10mgである。ザレプロンの低い生物学的利用能を考慮すると、本発明を適用することで通常経口投与される量と比較して少ない投与量で素早い作用を実現できる。
【0056】
本発明の処方において、ザレプロンの投与量は0.025〜5mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.2〜4mgの範囲内とし、より好ましくは0.5〜3mgの範囲内とするのが有利である。下記にザレプロンの処方例を示す。
処方A3: ザレプロン塩基3mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.50mL
- エタノール 0.50mL
- ザレプロン塩基 3mg
処方B3: ザレプロン塩基1.5mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.355mL
- エタノール 0.395mL
- ザレプロン塩基 1.5mg
処方C3: ザレプロン塩基1mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.235mL
- エタノール 0.265mL
- ザレプロン塩基 1mg
処方D3: ザレプロン塩基0.5mg含有0.3ml
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ザレプロン塩基 0.5mg
(4)ベンゾジアゼピン系
(A)ミダゾラム
ミダゾラムはベンゾジアゼピン系に属する分子であり、通常7.5もしくは15mgが経口投与される。また、内服液剤の形態の場合には、1mlあたり2mgが投与され、注射液剤の形態の場合には1mlあたり1mgもしくは5mgが投与される。ミダゾラムはその塩酸塩の形態を用いることで水に対して溶解可能になる。ミダゾラムの経口投与時の生態学的利用能は低く、投与量の36%に過ぎない。また、ミダゾラムは血漿タンパク質と強く結合する。具体的には、ミダゾラムは水に対して難溶の(溶解度は0.024 mg/mLに過ぎない)疎水性分子であって、低分子量(321ダルトン)である。一方でミダゾラムはエタノールに対する溶解性が高く、従って本発明への適用に適している。
【0057】
本発明の処方において、ミダゾラムの投与量は0.15〜5mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.3〜4mgの範囲内とし、より好ましくは0.5〜3mgの範囲内とするのが有利である。下記にミダゾラムの処方例を示す。
処方A4a: ミダゾラム塩基3mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.50mL
- エタノール 0.50mL
- ミダゾラム塩基 3mg
処方B4a: ミダゾラム塩基2mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.375mL
- エタノール 0.375mL
- ミダゾラム塩基 2mg
処方C4a: ミダゾラム塩基1.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- ミダゾラム塩基 1.5mg
処方D4a: ミダゾラム塩酸塩1mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- ミダゾラム塩酸塩 1mg
- pH緩衝液(pH6〜8) 適量
処方E4a: ミダゾラム塩基0.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ミダゾラム塩基 0.5mg
本発明において、ミダゾラムの特定の使用例として、ミダゾラムを用いた緊急治療、特に子供の癲癇性発作の即座の治療がある。この場合、本発明の上記処方を使用し、患者の頬を外側に動かし、高濃度のエタノールを含む水性アルコール溶液を少量歯肉と頬に接
触させるようにして投与することで、有効成分を脳血流にものの2〜3秒で移行させ、発作を鎮静することができる。
【0058】
上記治療のためには、本発明に特有の特徴を備えることが特に重要である。これら特徴を備えることにより、歯肉と頬経由でミダゾラムを投与することができる。上記投与では、投与量を少量にすることができるため、通常ルート以外でのルートを経由して投与されるのを防ぎ、アルコール度数が高いエタノールを配合することにより、従来利用可能な治療法に比べて格段に迅速なミダゾラムの粘膜通過を達成することができる。
【0059】
癲癇性発作の治療に特に適した処方例を以下に示す。ただし、これらの処方は、投与対象者の体重や年齢に応じて自由に変更可能であり、本発明はこれらの処方例に限定されるものではない。
処方F4a: ミダゾラム塩基5mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.30mL
- エタノール 0.45mL
- ミダゾラム塩基 5mg
処方F4b: ミダゾラム塩基3.5mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.16mL
- エタノール 0.24mL
- ミダゾラム塩基 3.5mg
処方F4c: ミダゾラム塩基2mg含有0.25ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.09mL
- エタノール 0.16mL
- ミダゾラム塩基 2mg
(B)ブロチゾラム
ブロチゾラムは低分子量(393.7 ダルトン)の疎水性分子であり、経口投与された場合の生物学的利用能には差異があるものの投与量の50%程度である。ブロチゾラムの利点としては、平均4.4時間と半減期が短いこと、および少ない投与量で効果が得られる点が挙げられる。具体的に、催眠系入眠促進剤としてのブロチゾラムの経口投与量は非常に少なく、具体的には0.125〜0.250mgの範囲内である。又、ブロチゾラムのエタノールに対する溶解度は、本発明に適用可能なものである。このように、入眠促進効果を得るのに必要なブロチゾラムの投与量を本発明によって削減することが可能であり、本発明により、ブロチゾラムを直ちに血管中に循環させることができる。
【0060】
本発明の処方において、ブロチゾラムの投与量は0.015〜0.3mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.02〜0.180mgの範囲内とし、より好ましくは0.025〜0.1mgの範囲内とするのが有利である。下記にブロチゾラムの処方例を示す。
処方A4b: ブロチゾラム塩基0.1mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.45mL
- エタノール 0.55mL
- ブロチゾラム塩基 0.1mg
処方B4b: ブロチゾラム塩基0.075mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.35mL
- エタノール 0.40mL
- ブロチゾラム塩基 0.075mg
処方C4b: ブロチゾラム塩基0.05mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.225mL
- エタノール 0.275mL
- ブロチゾラム塩基 0.05mg
処方D4b: ブロチゾラム塩基0.025mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.135mL
- エタノール 0.165mL
- ブロチゾラム塩基 0.025mg
なお、入眠促進のための治療は反復性(iterative)なものと考えられていることに留意する必要がある。すなわち、保健当局はこれらの治療は数日に限定して用いられるべきであるとしており、これらの治療は通常短期的な不眠治療に用いられる。
2.他の入眠促進剤、第1世代抗ヒスタミン鎮静剤
第1世代(H1)抗アレルギー抗ヒスタミン剤はアレルギー患者の症状を改善するための医薬品である。第1世代(H1)抗アレルギー抗ヒスタミン剤の中には、経口投与された場合、入眠促進・鎮静効果も併せ持つものもある。本発明により、この鎮静効果を活性化させて5〜10分の短時間で、且つ少ない投与量でこの鎮静作用が生じるようにすることができる。以下に本発明への適用例として、ドキシラミン、および鎮静剤として作用する別の抗ヒスタミン剤であるシプロヘプタジンの適用例を挙げる。
【0061】
(5)ドキシラミン
第1世代抗ヒスタミン剤であるドキシラミンは低分子量の両親媒性分子(ドキシラミン塩基の分子量270.37ダルトン、ドキシラミンコハク酸塩の分子量388.5ダルトン)であり、その経口投与時の生物学的利用能は経口投与量の24.7%に過ぎない。ドキシラミンの入眠促進剤としての1回分の経口投与量は15mgである。ドキシラミンの血漿内レベルがピークに達するのは経口投与後1〜2時間後と遅く、又ドキシラミンの半減期は3.5時間程度である。ドキシラミンの推奨される一日あたりの経口投与量(一日一回就寝前に経口投与)は7.5〜15mgとされている。このように、ドキシラミンは、生物学的利用能が低く、且つ生物学的に利用可能になるまで時間がかかることを考慮すると、一見するとドキシラミン分子は睡眠に問題を抱える患者の迅速な入眠促進のための投与には適していないように思える。また、治療の効率性という点から考えても、1〜2時間という作用発現までの待ち時間は満足のいくものではない。
【0062】
しかしながら、ドキシラミン塩基やその塩(例えばコハク酸塩)はエタノールに容易に溶解する。従って、本発明を適用することで、ドキシラミンは経口腔粘膜投与後2〜3分以内に眠気を生じさせ、迅速に容易に入眠させることができる。このことにより、多くが神経質な性格を有する患者が経口摂取した場合のように摂取後、充分な生体利用能が得られる段階に達するまで、そして有効成分の作用が発現するまで待つ必要がなくなる。本発明を用いることで、ドキシラミンの投与が患者に適合している場合に、ドキシラミンが口腔粘膜経由で吸収されるや否や血流中においてほぼ即座に生物学的利用能が得られる結果、ドキシラミンを投与された患者はものの2〜3分で入眠する。
【0063】
これにより、患者は、従前のようにドキシラミンを多量に経口摂取した後、有効成分の作用が発現されるまで辛抱強く待つ必要はなくなる。これまで長い間知られてきたドキシラミンの利点として、薬物モニタリングの必要がないこと、また何よりも、その比較的短い半減期が平均的に一晩の睡眠時間(6〜9時間)を超えないことが挙げられる。このことにより、患者が目を覚ましたときに、ドキシラミン分子が引き続き活性を維持して患者に眠気を引き起こすことがないようにすることができる。
【0064】
本発明に従って口腔粘膜経由で投与された場合、入眠効果を迅速に得るのに必要なドキシラミンの投与量は数mg以下(平均的には1〜3mg)である。しかしながら、当該投与量は、当然、患者の体重や患者のドキシラミンの効果に対する感受性により異なる。
本発明の口腔粘膜経由による投与では、ドキシラミンはいかなる全身的/器質的な循環/拡散が起こる前に脳内のH1レセプタに到達し(経口投与の場合についてはこの限りではない)、またその過程で損失することもない。
【0065】
従って、本発明の場合、薬理学的効果を得るのに必要なドキシラミン投与量は経口投与の場合の当該投与量(7.5〜15mg)より大幅に少なく、又なによりも、本発明に従って投与された場合、ドキシラミンが薬理学的効果を発現するまでの時間は2〜3分に短縮される。
加えて、投与されたドキシラミンを動脈経由で直接中枢神経系に移行させる、本発明の経口腔粘膜投与により実現される、血管中における高い生物学的利用能に関わる「フラッシュ(Flash)又はボーラス(Bolus)特性を考慮してドキシラミンの投与量は、以下に示す処方から対応する処方を慎重に選択する必要がある。
【0066】
本発明の処方において、ドキシラミンの投与量は0.025〜7mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.075〜5mgの範囲内とし、より好ましくは0.5〜4mgの範囲内とするのが有利である。下記にドキシラミンの処方例を示す。
処方A5: ドキシラミンコハク酸塩4mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.50mL
- エタノール 0.50mL
- ドキシラミンコハク酸塩 4mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
処方B5:ドキシラミンコハク酸塩3mg含有0.75ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.375mL
- エタノール 0.375mL
- ドキシラミンコハク酸塩 3mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
処方C5:ドキシラミンコハク酸塩2.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- ドキシラミンコハク酸塩 2.5mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
処方D5:ドキシラミン塩基1.5mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.20mL
- エタノール 0.20mL
- ドキシラミン塩基 1.5mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
処方E5: ドキシラミン塩基0.75mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ドキシラミン塩基 0.75mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
処方F5: ドキシラミンコハク酸塩0.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ドキシラミンコハク酸塩 0.5mg
- pH調整剤(pH6〜8) 適量
(6)シプロヘプタジン
シプロヘプタジン(分子量287ダルトン)もまた疎水性分子であり、中枢鎮静作用を有する第1世代抗ヒスタミン剤である。シプロヘプタジンは通常1回分の経口投与量が4mgであるが、その半減期はドキシラミンの半減期よりも長い。
【0067】
経口投与された場合、シプロヘプタジンの血漿レベルがピークに達するのは経口投与後2〜3時間後と遅い。したがって、迅速な入眠促進を可能にするために本発明をシプロヘプタジンに適用することは効果的である。
又、経口投与時のシプロヘプタジン分子の生物学的利用能は経口投与量の25%程度に過ぎないので、シプロヘプタジンに対して処方例を非限定的に示すように、本発明の迅速な入眠促進のための処方を定義することは、有用である。
【0068】
本発明の処方において、シプロヘプタジンの投与量は0.025〜3mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.075〜2.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.5〜1mgの範囲内とするのが有利である。下記にシプロヘプタジンの処方例を示す。
処方A6: シプロヘプタジン塩基1mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- シプロヘプタジン塩基 1mg
処方B6: シプロヘプタジン塩基0.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- シプロヘプタジン塩基 0.5mg
3.入眠促進および/もしくは概日リズムの調節
(7)メラトニン
メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)は時間生物学的リズムを調節するための脳ホルモンであり、また実質的に人間のホルモン分泌のほとんどを調節する脳ホルモンである。この神経ホルモンはセロトニンという神経伝達物質から合成される。セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンに由来する。メラトニンは松果体が暗闇に反応することで脳内分泌される。微生物や様々な藻類、および植物もメラトニン(植物の場合は植物メラトニン(Phytomelatonin))を生成する。生体は自らメラトニンを分泌することに加えて、メラトニンをこれらの植物のいくつか(コメ、バナナ、パイナップル等)から抽出することもできる。メラトニンは睡眠サイクルおよびその他の概日リズムを調節する。通常、睡眠ホルモンであるメラトニンは夜間にのみ分泌され(人間におけるメラトニンの分泌量のピークは午前5時であり、これはメラトニンの生成が光によって抑制されることに起因する)、概日リズムの管理を(ある程度)担っている。覚醒/睡眠バランスに係る障害は主に飛行機による長距離移動の結果生じる、これはそのような長距離移動により、複数の時差のある地域を通過することに関連している。また、覚醒/睡眠バランスに係る障害は長期間夜間労働に従事した人にも起こりうる。
【0069】
国際出願公開公報第00/72843号、欧州出願公開公報第0 518 468号、国際出願公開公報第2007/099172号、および欧州出願公開公報第0 835 652号は医療・美容治療におけるメラトニンの使用について記載している。これらの目的で使用される場合、メラトニンは好適には消化器を介して投与可能な形態、もしくは化粧品組成物であり、いずれの場合にもエタノールは用いられない。
【0070】
メラトニンは、臨床的に裏付けられた入眠促進剤として、入眠までの時間を短縮する薬剤(reducer)として、そして覚醒/睡眠バランスの調節のために、主に錠剤やカプセルの形態で経口投与される。しかしながら、経口投与時のメラトニンの生物学的利用能は経口投与量の15%程度と低く、またその半減期も50分をわずかに超える程度と短い。またメラトニンは、低分子量(232ダルトン)の疎水性分子であり、エタノールに対する溶解性が非常に高い。したがって、メラトニンは本発明の処方における使用に特に適しており、これはメラトニンのアルコール溶液中での安定度がアルコール度数が35度より高くなればなるほど高くなるためである。口腔粘膜経由で投与されることで、本発明の処方は一回分の投与量のメラトニンを完全にそして直接的に血管系に対して投与することができる。投与されたメラトニンは、その全量がメラトニンに特異的な脳内レセプタに2〜3秒で到達し、概日リズムの変化を解消するもしくは入眠を促進・容易化するという作用を遅滞なく発揮する。そして、これらの効果は少量のメラトニンの投与量で実現される。
【0071】
なお、多量のメラトニンを経口投与した場合に、かえって本来の効果と逆効果を生じる可能性もあることが証明されている。マサチューセッツ工科大学(MIT)により行われた研究では、一般向けに販売されているメラトニンの栄養補助食品には、睡眠作用を発現するのに必要な経口投与量の3〜10倍もの量のメラトニンが含まれていることが示された。上記研究によると、就寝時に通常経口投与されるメラトニン量に0.3〜5mgの範囲内で差異が認められた。メラトニンの多量摂取は、メラトニンの本来の作用に対応する効果と反対の効果が出現する、好ましくない逆説的反応(paradoxical action)を引き起こす可能性がある。
【0072】
別の研究によると、メラトニン0.5mgの経口摂取は効果が見られた一方、その40倍にあたるメラトニン20mgの経口摂取は効果が見られなかった。しかしながら、半減期が短いメラトニンの生物学的利用のメカニズムは個人個人によって大きく異なる。又、消化器官経由で投与された場合、メラトニンは劣化してしまうことから、そのような投与形態はメラトニンの効果を最大限引き出すために最適とは言えない。これは、迅速な入眠効果を実現するためには、メラトニンを患者に適した量、夜間九時以降に即座にかつ完全に作用部位に送達するのに特に適した形態で投与されるべきであることを示唆している。本発明はまさにそのような投与形態を実現するものである。さらに、催眠系の薬剤と異なり、メラトニンは入眠作用を発揮したのちには副作用を引き起こさず、又依存症も引き起こさないことから、メラトニンは本発明に基づく投与により適合している。
【0073】
例示されている本発明の処方例において配合されるエタノールは、45〜50度の高いアルコール度数のものであることが好ましい。そのような高いアルコール度数を用いるのは、メラトニンを水性アルコール溶液に溶解した薬剤溶液の好ましい投与部位として選択された粘膜領域(例えば歯肉/頬)に接触するように上記薬剤溶液を投与するや否や、投与された溶液全量が迅速にそして即座に吸収されることを可能にするためである。結果的に、本発明の投与形態を用いることで、投与されたメラトニンを希釈することなく、少量の循環血液中に送達することができる。
【0074】
これにより、非常に少量のメラトニン投与量で薬理学的効果の増大を可能にする「ボーラス(bolus effect)が得られる。これは、投与されたメラトニンが動脈血流中で過剰に拡散されることなく、動脈血流によって運搬されて脳レセプタに到達するためである。又、メラトニンは疎水性構造を有し、分子量が小さいので、その全量が、メラトニンが投与される粘膜表面によって好適且つ迅速に吸収される。しかし、より重要なことは、メラトニン分子が生体内に、特に細胞内膜内に容易に拡散して本発明の有効成分のナノ構造を形成することにより、メラトニン分子は素早く血液脳関門を通過して特にニューロン(シナプス)に到達できることである。
【0075】
これにより、中枢神経系に対して少量でも迅速で有効な薬理学的効果を発現させることができる。なお、「ボーラス」効果は有効成分を「フラッシュ」(flash)静注することで得られる効果に相当する。このように、本発明の経口腔粘膜投与形態は他の経口腔粘膜投与形態であってこの「ボーラス」効果を有さないものと非常に異なっている。ここで他の経口腔粘膜投与形態とは特にジェル投与形態、咀嚼錠投与形態、崩壊錠投与形態、粘膜粘着投与形態、およびスプレー投与形態を指す。特に粘膜粘着投与形態の場合有効成分はゆっくりと放出され、又、スプレー投与形態の場合、スプレー投与された薬剤は広く拡散して口腔粘膜の不特定表面に接触する。このような他の経口腔粘膜投与形態のどれを用いても、投与量のかなりの部分が必然的に反射的に嚥下され、大きなロスを生じる。
【0076】
本発明の処方において、メラトニンの投与量は0.015〜10mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.025〜7.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.05〜5mgの範囲内とするのが有利である。下記にメラトニンの処方例を示す。
処方A7: メラトニン塩基5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- メラトニン塩基 0.5mg
処方B7: メラトニン塩基3mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- メラトニン塩基 3mg
処方C7: メラトニン塩基2mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.23mL
- エタノール 0.27mL
- メラトニン塩基 2mg
処方D7: メラトニン塩基1mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.255mL
- エタノール 0.245mL
- メラトニン塩基 1mg
処方F7: メラトニン塩基0.8mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.8mg
処方F7: メラトニン塩基0.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.5mg
処方G7: メラトニン塩基0.3グラム含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.3mg
処方H7: メラトニン塩基0.1mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.1mg
処方I7: メラトニン塩基0.05mg含有0.25ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.13mL
- エタノール 0.12mL
- メラトニン塩基 0.05mg
本発明の投与形態はメラトニンの薬学的類似体、例えばラメルテオンやアゴメラチンにも同様に適用可能であるという点で有利である。
【0077】
(8)ラメルテオン
メラトニンは必ずしも医療当局によって広く推奨されているとは言えないが、Rozeremの商品名で武田薬品工業が販売しているラメルテオン((S)-N-(2-(1,6,7,8-tetrahydro-2H-indeno-(5,4)furan-8-yl)ethyl)propionamide)は米国において不眠症治療薬として承認されている。ラメルテオンはメラトニンMT1/MT2レセプタを活性化する。
【0078】
本発明の投与形態がラメルテオンに適用された場合、とりわけ好都合である。具体的には、ラメルテオン分子は経口投与され、疎水性を有する有効成分である。ラメルテオン分子はその82%が血漿タンパク質と結合し、低分子量(259.34ダルトン)であり、半減期がたった1〜2.6時間と短い。そしてなによりも、経口投与時のラメルテオン分子の生物学的利用能は投与量のたった1.8%と極めて低い。なお、販売されているラメルテオンの1回分の投与量は8もしくは16mgである。
【0079】
従って、経口投与時にはラメルテオン分子はその98.2%が破壊されてしまう。従って、ラメルテオン分子は本発明のような経口腔粘膜投与、すなわち非常に少量の投与量で即座に血管系において生物学的に利用可能になるようにする投与方法、の大きな恩恵を受けることが出来る可能性があると考えられる。さらにより重要な点として、ラメルテオン分子が薬物依存性を生じず、またベンゾジアゼピン系その他の有効成分が有する乱用につながる中毒作用を有していないことが挙げられる。最後に、ラメルテオンはエタノールに対して容易に溶解する疎水性の分子量が小さな分子であることから、本発明の処方に完全に適している。
【0080】
本発明の処方において、ラメルテオンの投与量は0.015〜10mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.025〜1.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.15〜2.5mgの範囲内とするのが有利である。下記にラメルテオンの処方例を示す。
処方A8: ラメルテオン塩基0.15mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ラメルテオン塩基 0.15mg
処方B8: ラメルテオン塩基0.3mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ラメルテオン塩基 0.3mg
処方C8: ラメルテオン塩基0.4mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.12mL
- エタノール 0.18mL
- ラメルテオン塩基 0.4mg
処方D8: ラメルテオン塩基0.5mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.20mL
- エタノール 0.20mL
- ラメルテオン塩基 0.5mg
処方E8: ラメルテオン塩基1mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.20mL
- エタノール 0.20mL
- ラメルテオン塩基 1mg
処方F8: ラメルテオン塩基1.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- ラメルテオン塩基 1.5mg
処方G8: ラメルテオン塩基2.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- ラメルテオン塩基 2.5mg
(9)アゴメラチン
アゴメラチンは低分子量(243ダルトン)の小さい疎水性分子であり、その半減期は2時間未満である。又、経口投与時のアゴメラチンの生物学的利用能は投与量の5%未満に過ぎず、これは通常の経口投与量である25mg、50mgの内、それぞれ1.25mg、2.5mgが生物学的利用能を有することになる。従って、本発明は、一キロ当たりの原料価格が3000米ドルを超えるアゴメラチンの投与量/作用効果比に対して大きな効果を有する。具体的には、本発明は、経口投与時にはその有効成分の95%が失われてしまうアゴメラチンの投与量およびコストの両方を大きく削減する。
【0081】
本発明の処方において、アゴメラチンの投与量は0.015〜5mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.025〜35mgの範囲内とし、より好ましくは0.8〜2.5mgの範囲内とするのが有利である。下記にアゴメラチンの処方例を示す。
処方A9: アゴメラチン塩基2.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- アゴメラチン塩基 2.5mg
処方B9: アゴメラチン塩1.25mgの基に対して0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- アゴメラチン塩基 1.25mg
処方C9: アゴメラチン塩基0.8mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- アゴメラチン塩基 0.8mg
結論にかえて、以下に本発明について追加的ではあるが非常に重要な効果を説明することは有益である。多くの自殺志願者が催眠性有効成分を自殺を試みる際に使用することが知られている。この目的で使用される分子は多量に摂取された場合に毒性を有するものであるが、最も一般的に用いられるものの例として次のようなものが挙げられる:ベンゾジアゼピン系に属する主に催眠剤、もしくはそれに関連するシクロピロロン系、イミダゾピリジン系、ピラゾロピリミジン系等の分子。
【0082】
本発明の投与形態を用いると、非常に少量の有効成分の投与により、迅速に入眠を促進することができるため、本発明に基づき少量で非常に迅速に作用する有効成分を口腔粘膜経由で投与した人が、この有効成分の投与を連続的に、自殺に要する量の有効成分を投与するのに充分な回数繰り返すことは困難であると考えられる。これは、本発明の投与形態を用いると、投与された人は初回の投与からものの2〜3分で急速に、完全にかつ一切の毒性なしに入眠してしまうためである。
【0083】
なお、上記の状況は多量の錠剤を入手可能なだけ集め、一度にすべて、瞬間的に嚥下してしまう自殺志願者には当てはまらない。このように、本発明の投与形態が提供する少ない投与量と素早い入眠の快適性は、使用者自身にとってもコミュニティー全体にとっても、毒物学的により大きな安全に結びついている。
なお、これまでいくつかの実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、本発明の範囲は添付の請求項によって定義されるものである。
【誤訳訂正書】
【提出日】2015年9月29日
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0055
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0055】
本発明の処方において、エスゾピクロンの投与量は0.025〜2mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.2〜2.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.15〜1mgの範囲内とするのが有利である。下記に エスゾピクロンの処方例を示す。
処方A2:エスゾピクロン塩基1mg含有1ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.45mL
- エタノール 0.55mL
- エスゾピクロン塩基 1mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方B2:エスゾピクロン塩基0.8mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- エスゾピクロン塩基 0.8mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方C2:エスゾピクロン塩基0.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- エスゾピクロン塩基 0.5mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
処方D2:エスゾピクロン塩基0.25mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- エスゾピクロン塩基 0.25mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH
6〜8) 適量
処方E2:エスゾピクロン塩基0.15mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- エスゾピクロン塩基 0.15mg
- リン酸水素(Na +リン酸)pH調整剤(pH4〜6) 適量
(3)ピラゾロピリミジン系
ザレプロンはピラゾロピリミジン系に属し、低分子量(305.34ダルトン)であり、疎水性を有する分子であり、その経口投与時の生物学的利用能は投与量の30%である。ザレプロン分子の生体内における半減期は1時間と短い。このため、ザレプロンは本発明の投与剤形に適用するのに特に適している。すなわち、ザレプロンは少ない投与量でも口腔粘膜経由で吸収後即座に分配され、迅速に睡眠作用を発現する。経口投与の場合、ザレプロンは通常1回分の投与量が5mg又は10mgである。ザレプロンの低い生物学的利用能を考慮すると、本発明を適用することで通常経口投与される量と比較して少ない投与量で素早い作用を実現できる。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0076
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0076】
本発明の処方において、メラトニンの投与量は0.015〜10mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.025〜7.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.05〜5mgの範囲内とするのが有利である。下記にメラトニンの処方例を示す。
処方A7: メラトニン塩基5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- メラトニン塩基
5mg
処方B7: メラトニン塩基3mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.25mL
- エタノール 0.25mL
- メラトニン塩基 3mg
処方C7: メラトニン塩基2mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.23mL
- エタノール 0.27mL
- メラトニン塩基 2mg
処方D7: メラトニン塩基1mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.255mL
- エタノール 0.245mL
- メラトニン塩基 1mg
処方
E7: メラトニン塩基0.8mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.8mg
処方F7: メラトニン塩基0.5mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.5mg
処方G7: メラトニン塩基0.3グラム含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.3mg
処方H7: メラトニン塩基0.1mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- メラトニン塩基 0.1mg
処方I7: メラトニン塩基0.05mg含有0.25ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.13mL
- エタノール 0.12mL
- メラトニン塩基 0.05mg
本発明の投与形態はメラトニンの薬学的類似体、例えばラメルテオンやアゴメラチンにも同様に適用可能であるという点で有利である。
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0080
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0080】
本発明の処方において、ラメルテオンの投与量は0.015〜10mgの範囲内とするのが有利であり、好ましくは0.025〜
7.5mgの範囲内とし、より好ましくは0.15〜2.5mgの範囲内とするのが有利である。下記にラメルテオンの処方例を示す。
処方A8: ラメルテオン塩基0.15mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ラメルテオン塩基 0.15mg
処方B8: ラメルテオン塩基0.3mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.15mL
- エタノール 0.15mL
- ラメルテオン塩基 0.3mg
処方C8: ラメルテオン塩基0.4mg含有0.3ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.12mL
- エタノール 0.18mL
- ラメルテオン塩基 0.4mg
処方D8: ラメルテオン塩基0.5mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.20mL
- エタノール 0.20mL
- ラメルテオン塩基 0.5mg
処方E8: ラメルテオン塩基1mg含有0.4ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.20mL
- エタノール 0.20mL
- ラメルテオン塩基 1mg
処方F8: ラメルテオン塩基1.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- ラメルテオン塩基 1.5mg
処方G8: ラメルテオン塩基2.5mg含有0.5ml水性アルコール溶液
(成分名) (配合量)
- 蒸留水 0.24mL
- エタノール 0.26mL
- ラメルテオン塩基 2.5mg
(9)アゴメラチン
アゴメラチンは低分子量(243ダルトン)の小さい疎水性分子であり、その半減期は2時間未満である。又、経口投与時のアゴメラチンの生物学的利用能は投与量の5%未満に過ぎず、これは通常の経口投与量である25mg、50mgの内、それぞれ1.25mg、2.5mgが生物学的利用能を有することになる。従って、本発明は、一キロ当たりの原料価格が3000米ドルを超えるアゴメラチンの投与量/作用効果比に対して大きな効果を有する。具体的には、本発明は、経口投与時にはその有効成分の95%が失われてしまうアゴメラチンの投与量およびコストの両方を大きく削減する。
【国際調査報告】