(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-504413(P2016-504413A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(54)【発明の名称】安定な組成物を含有するフィンゴリモド
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20160115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20160115BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20160115BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20160115BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20160115BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/00
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-552200(P2015-552200)
(86)(22)【出願日】2014年1月15日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月14日
(86)【国際出願番号】IN2014000030
(87)【国際公開番号】WO2014111955
(87)【国際公開日】20140724
(31)【優先権主張番号】127/MUM/2013
(32)【優先日】2013年1月15日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515192597
【氏名又は名称】サン・ファーマシューティカルズ・インダストリーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジャイスワル,スニル
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ダーマディカリ,ニティン・バラチャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ,シリシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD41
4C076EE11
4C076EE16
4C076EE45
4C076EE49
4C076FF36
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA10
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA03
4C206ZA02
(57)【要約】
本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記弱酸カチオン交換樹脂が、式Iによって描写される通りのメタクリル酸およびジビニルベンゼンのコポリマー:
【化1】
[式中、Xは、水素または無機一価カチオンである]
である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
フィンゴリモド対前記弱酸カチオン交換樹脂の重量比が、重量で約1:3から約1:10までの範囲である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
Xが水素であり、前記弱酸カチオン交換樹脂が、乾燥ベースで10.0meq/g以上のイオン交換能を有し、ここで、前記樹脂粒子の平均粒径は、150ミクロンから45ミクロンの範囲内にあり、前記樹脂の粒径分布は、前記粒子の70%以下が50ミクロンより大きい粒径を有し、前記粒子の15%から30%が75ミクロンより大きい粒径を有し、前記粒子の1%以下が150ミクロンより大きい粒径を有するようなものである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
Xがカリウムイオンであり、前記弱酸カチオン交換樹脂が、前記カチオン交換樹脂の平均粒径が150ミクロンから45ミクロンの範囲内にあるようなものであり、前記樹脂の粒径分布が、前記粒子の30%以下が75ミクロンから150ミクロンの範囲内の粒径を有し、前記粒子の1%以下が150ミクロンより大きい粒径を有するようなものである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
フィンゴリモド対前記弱酸カチオン交換樹脂の重量比が、重量で1:6である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、フィンゴリモドを全組成の約0.1から約2重量%の範囲の量で、前記弱酸カチオン交換樹脂を全組成の約0.1から約10重量%の範囲の量で、および薬学的に許容される添加剤を全組成の約0.1から約90重量%の範囲の量で含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、フィンゴリモドを全組成の約0.1から約2重量%の範囲の量で、前記弱酸カチオン交換樹脂を全組成の約0.1から約10重量%の範囲の量で、および薬学的に許容される添加剤を全組成の約0.1から約90重量%の範囲の量で含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される添加剤が、クロスポビドンであり、全組成の40から60重量%の範囲の量で存在し、コロイド状二酸化ケイ素であり、全組成の0.1から2.0重量%の範囲の量で存在し、ステアリン酸マグネシウムであり、全組成の0.1から2.0重量%の範囲の量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容される添加剤が、クロスポビドンであり、全組成の40から60重量%の範囲の量で存在し、コロイド状二酸化ケイ素であり、全組成の0.1から2.0重量%の範囲の量で存在し、ステアリン酸マグネシウムであり、全組成の0.1から2.0重量%の範囲の量で存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物に関する。医薬組成物は、満足な化学安定性、十分な含量均一性および活性成分の望ましい溶解速度を提供する。
【背景技術】
【0002】
式(I)のフィンゴリモド化合物、化学的には2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールは、S1P受容体アゴニストである。2010年に米国(商品名ジレニア(商標))およびロシアで、ならびに2011年に欧州、カナダおよびオーストラリアで、多発性硬化症の治療用に承認されている。
【化1】
【0003】
ジレニア(商標)の推奨用量は、1日1回経口で500マイクログラムである。0.5mgよりも高いフィンゴリモド用量は、付加的な利益のない有害反応の、より大きい発生率と関連している。フィンゴリモドは非常に強力な薬物であり、したがって、カプセル剤または錠剤等の剤形の個々の単位は、所望用量の500マイクログラムを含有していなくてはならない。低分量のフィンゴリモドが、医薬添加剤に均一に分布し、次いで、カプセル剤に充填されるか、または錠剤に圧縮されることが必須である。その上、組成物中のフィンゴリモドは、化学的に安定でなくてはならず、組成物から望ましい溶解速度で迅速に放出されるべきである。ジレニア(商標)は、1%(w/v)のツイン80を加えた0.1N塩酸中、75rpmで回転するUSP II型装置を使用して試験した場合、45分で80%を超える望ましい溶解を提供する。
【0004】
米国特許第8,324,283号明細書は、フィンゴリモドおよび糖アルコール等のS1P受容体アゴニストを含む経口投与のための固体医薬組成物を特許請求するものであった。本発明の組成物は、良好な取り扱い物理化学的および保管特性を保有するためのものであり、特に、該組成物は、S1P受容体アゴニストの分布の高レベルな均一性を提供する。
【0005】
国際公開第2011131368号パンフレットは、(a)フィンゴリモドと、(b)1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む中間体を調製する方法であって、(i)(a) フィンゴリモドおよび(b)添加剤または複数の添加剤を混合していてもよいステップと、(ii)(a) フィンゴリモドおよび(b)1つ以上の添加剤を一緒に粉末化して、得られた中間体粒子すべての90体積パーセントが、250μms未満かつ0.6μmsより大きい粒径を有するような中間体粒子とするステップとを含む方法を提供するものであった。このPCT特許公報は、上記で明記した粒径範囲の中間体が、さらなる使用またはさらなる処理に特に有利であり、結果として、とりわけ該中間体に基づく経口剤形における、均一含量の活性剤を実現できる発明を説明している。該出願によって教示されているプロセスは、当分野において周知であり、幾何学的混合(geometric mixing)と称される。本発明者らは、該方法が高度の均一性を与えないことを見出した。別の先行技術国際公開第2011131370号パンフレットは、中間体を調製する方法であって、(i)フィンゴリモドまたは薬学的に許容されるその塩を、(ii)マトリックスフォーマーで溶融処理するステップを含む方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,324,283号明細書
【特許文献2】国際公開第2011131368号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2011131370号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、フィンゴリモドまたはその薬学的に許容される塩とカチオン交換樹脂等のイオン交換樹脂とのイオン交換複合体が、医薬組成物に製剤化された場合に、十分な含量均一性、化学安定性および活性成分の望ましい溶解速度を提供することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、フィンゴリモドへの言及は、その遊離塩基形態の、またはその薬学的に許容される塩のいずれか1つとしての、フィンゴリモドを包含する。本発明において使用されるフィンゴリモドまたはその薬学的に許容される塩は、化学的には2−アミノ−2−(2−[4−オクチルフェニル]エチル)−1,3−プロパンジオールとして公知である。一般的にFTY720とも称される。本明細書において使用されるその薬学的に許容される塩は、塩酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、乳酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、シュウ酸塩およびコハク酸塩を包含するがこれらに限定されない。本発明の例証的な例において、フィンゴリモドの塩酸塩が使用される。本発明に従う単一の単位剤形において使用されるフィンゴリモドまたはその薬学的に許容される塩の量は、単位剤形当たり、約0.10mgから約2.5mg、好ましくは約0.125mgから約1.25mg、約0.25mgから約1.0mg、約0.25mgから約0.75mg、約0.25mgから約0.50mg、約0.1mgから約0.5mg、約0.125mgから約0.5mgの範囲、好ましくは約0.125mg、最も好ましくは約0.5mgである。
【0010】
用語「イオン交換複合体」は、本明細書において使用される場合、用語「イオン交換樹脂酸塩」または「薬物樹脂酸塩」または「薬物−イオン交換樹脂酸塩」または「薬物−イオン交換樹脂複合体」または「薬物−樹脂複合体」または「イオン交換樹脂複合体」と交換可能に使用され得る。イオン交換複合体は、酸性または塩基性いずれかの官能基を含有し、該複合体周囲の水溶液内の対イオンを交換する能力を有する不溶性ポリマーである物質を指す。樹脂の交換性イオンのカチオンまたはアニオンとしての性質に基づき、該樹脂はそれぞれカチオン性またはアニオン性交換樹脂に分類される。該樹脂は、炭化水素ネットワークに付着しているイオン化可能な基が異なっている。樹脂の化学的挙動を決定するのがこの官能基である。カチオン交換樹脂は、カルボン酸およびスルホン酸等の適切に置換された酸性基を含有するポリマーであり、アニオン交換樹脂は、第一級、第二級もしくは第三級アミンまたは第四級アンモニウム基等の塩基性基を含有するポリマーである。樹脂は、強もしくは弱酸カチオン交換樹脂、または強もしくは弱塩基アニオン交換樹脂にさらに分類され得る。強酸カチオン交換樹脂は、該樹脂の化学的挙動が強酸の化学的挙動と同様であることから、そのように命名されている。これらの樹脂は、高度にイオン化されている。弱酸カチオン交換樹脂において、イオン化可能な基は、カルボン酸(COOH)等の弱酸性の基である。これらの樹脂は、弱く解離している弱有機酸と同様に挙動する。イオン交換樹脂は、種々の製造業者によって入手可能であり、アンバーライトまたはデュオライト(ローム・アンド・ハース・カンパニー製)、ダウエックス(ダウ・ケミカル・カンパニー製)、インディオン(イオン・エクスチェンジ・インディア・リミテッド製)、トゥルション(Tulsion)(サーマックス・ケミカルズ・リミテッド(Thermax Chemicals ltd.)製、インド)、ピュロライト(ピュロライトUSA製)、ドーション(Doshion)(ドーションリミテッド製、インド)等の商品名で公知である。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「含量均一性」または含量の均一性は、交換可能に使用され得る。含量均一性は、米国薬局方(USP)34において定められている手順によって決定され得る。USPによれば、10の個々に試験された単位の合格判定値は、L1以下となるべきであり、ここで、L1は15である。L1の値が低くなるにつれて、薬物含量の均一性は良好になる。剤形がこの基準に適合しなければ、追加で20の投薬量単位が個々に試験されてL2が決定され、その値は25以下となるべきである。
【0012】
用語「安定な」は、本明細書において使用される場合、医薬組成物が、薬物のアッセイならびに公知および未知の不純物または分解生成物の限界の観点から、ICHガイドラインにおいて定義されている保管条件下で、化学的に安定であることを意味する。ICHガイドラインは、薬物製品の保存期間にわたって、個々の公知の不純物が0.1%を下回り、かつ総不純物が1.0%を下回る場合に、組成物は安定であると言われると定めている。本発明によれば、0.1%未満となるべきフィンゴリモドの個々の公知の不純物は、不純物A、不純物Bおよび不純物Cと称され、それらの化学名を以下に記す:不純物A:N−[1,1−ビス−ヒドロキシメチル−3−(4−オクチル−フェニル)−プロピル]−アセトアミド、不純物B:2−アセチルアミノ−2−[2−(4−オクチル−フェニル)−2−オキソ−エチル]−マロン酸ジエチルエステル、不純物C:N−[1−ヒドロキシメチル−3−(4−オクチル−フェニル)−プロピル]−アセトアミド。公知および未知の不純物の同定および定量化は、HPLC等の標準的な方法によって為される。
【0013】
本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式Iによって描写される通りのメタクリル酸およびジビニルベンゼンのコポリマー:
【化2】
【0015】
[式中、Xは、水素または無機一価カチオンである]
である、医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明に従って使用される弱酸カチオン交換樹脂の例は、式Iのメタクリル酸およびジビニルベンゼンの架橋ポリマーを包含するがこれらに限定されない。式Iの弱酸カチオン交換樹脂は、国民医薬品集、USP23/NF18に収載されている。該樹脂は、多くの企業によって商業的に製造されている。例えば、アンバーライトIRP88(登録商標)の商品名で市販されている。該樹脂はまた、商品名インディオン(登録商標)294でも市販されている。その一方で、式Iの弱酸カチオン交換樹脂[式中、Xは水素イオンである]は、商品名アンバーライト(登録商標)IRP64(登録商標)またはインディオン(登録商標)264で市販されている。
【0017】
一実施形態において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式I[式中、XはH
+(水素イオン)である]において描写されている通りである医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式I[式中、Xは、K
+、Na
+等の無機一価カチオンである]において描写されている通りである医薬組成物を提供する。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式Iにおいて描写されている通りであり、フィンゴリモド対該弱酸カチオン交換樹脂の重量比が、重量で約1:1から約1:10まで、好ましくは重量で約1:3から約1:10までの範囲である、医薬組成物を提供する。特に、フィンゴリモド対該弱酸カチオン交換樹脂の重量比は、約1:3から約1:10の範囲内の任意の比であってよく、例えば、1:3または1:4または1:5または1:6または1:7または1:8または1:9または1:10であってよい。該比は、具体的には、フィンゴリモド塩酸塩としてのフィンゴリモドを参照して決定されるが、用語「約」は、フィンゴリモド塩酸塩に対して異なるフィンゴリモドの塩が使用される場合に観察される比の変動を包括するために使用されることに留意されたい。故に、1:3の比は、1gのフィンゴリモド塩酸塩について、3gの弱カチオン交換樹脂があることを意味するが、塩基を参照して計算すると、比は1:3.36である。樹脂の割合が増大するにつれて、組成物の含量均一性および化学安定性は改善することが分かった。故に、約1:3より大きい薬物:樹脂重量比、より好ましくは約1:6より大きい比が好ましい。
【0019】
1つの特に好ましい実施形態において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式I[式中、Xはカリウムである]において描写されている通りであり、フィンゴリモド対弱酸カチオン交換樹脂の重量比が、重量で約1:6である、医薬組成物を提供する。一実施形態において、式I[式中、Xは水素イオンである]において描写されている通りの弱酸カチオン交換樹脂について、薬物の100%錯体形成は、約1:10のフィンゴリモド対樹脂の重量比で起こることが分かった。
【0020】
一実施形態において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式I[式中、Xは水素である]において描写されている通りであり、該弱酸カチオン交換樹脂が、乾燥ベースで10.0meq/g以上のイオン交換能を有し、ここで、該樹脂粒子の平均粒径は、約150ミクロンから約45ミクロンの範囲内にあり、該樹脂の粒径分布は、粒子の70%以下が約50ミクロンより大きい粒径を有し、粒子の15%から30%が約75ミクロンより大きい粒径を有し、粒子の1%以下が約150ミクロンより大きい粒径を有するようなものである、医薬組成物を提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、イオン交換複合体の形態のフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂を含む医薬組成物であって、該弱酸カチオン交換樹脂が、式I[式中、Xはカリウムイオンである]において描写されている通りであり、該弱酸カチオン交換樹脂が、該カチオン交換樹脂の平均粒径が約150ミクロンから約45ミクロンの範囲内にあるようなものであり、該樹脂の粒径分布が、粒子の30%以下が約75ミクロンから約150ミクロンの範囲内の粒径を有し、粒子の1%以下が約150ミクロンより大きい粒径を有するようなものである、医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明の医薬組成物は、最初に、フィンゴリモドと弱酸カチオン交換樹脂とのイオン交換複合体を調製し、次いで、該イオン交換複合体を薬学的に許容される添加剤と混合することによって調製され得る。組成物を、好適な剤形に変換してよい。イオン交換複合体を、その懸濁液の形態の他の添加剤と混合してよく、または代替として、最初に乾燥させ、次いで他の添加剤と混合してよい。より詳細には、プロセスは下記のステップを含む:
(a)フィンゴリモドをその塩の形態で水に溶解する。
【0023】
(b)弱酸カチオン交換樹脂を添加して、懸濁液を取得する。
【0024】
(c)(b)で取得された懸濁液を薬学的に許容される添加剤に添加して、顆粒を形成する。
【0025】
(d)顆粒を乾燥させ、従来の手段によって好適な剤形に変換する。
【0026】
好ましくは、本発明の医薬組成物を調製するためのプロセスは、以下のステップを含む。
【0027】
(a)フィンゴリモドをその塩の形態で水に溶解する。
【0028】
(b)弱酸カチオン交換樹脂を添加して、懸濁液を取得する。
【0029】
(c)ステップ(b)の懸濁液を乾燥させて、乾燥イオン交換複合体を取得する。
【0030】
(d)ステップ(c)のイオン交換複合体を薬学的に許容される添加剤と混合し、好適な剤形に変換する。
【0031】
好ましくは、乾燥ステップ(c)は、真空および約60℃の高温を適用することによって行われ得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、医薬組成物は、フィンゴリモドを全組成の約0.1から約2重量%の範囲の量で、弱酸カチオン交換樹脂を約0.1から約10重量%の範囲の量で、および薬学的に許容される添加剤を全組成の約0.1から約90重量%の範囲の量で含む。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、フィンゴリモドを全組成の約0.1から約1.0重量%の範囲の量で、カチオン交換樹脂を全組成の約1から約8重量%の範囲の量で、および薬学的に許容される添加剤を全組成の約1.0から約90重量%の範囲の量で含む。
【0034】
本発明の医薬組成物は、錠剤;カプセル剤;顆粒剤、口腔内崩壊錠、二層錠、インレー錠剤;カプセル剤に充填もしくは錠剤に圧縮された粉末;カプセル剤に充填もしくは錠剤に圧縮された顆粒;または任意の他の好適な固体経口剤形等、経口固体剤形等の形態で提供される。剤形は、製剤化される剤形に応じて、他の薬学的に許容される添加剤の1つ以上をさらに含み得る。薬学的に許容される添加剤は、限定されないが、賦形剤、結合剤、滑沢剤/流動促進剤、崩壊剤、緩衝系、甘味剤、香味剤、着色剤、溶媒/共溶媒等を包含し得る。
【0035】
使用され得る好適な賦形剤は、微結晶性セルロース、クロスポビドン、ケイ化微結晶性セルロース、超微粒セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、マンニトール、ソルビトール、デキストレート、デキストリン、マルトデキストリン、デキストロース、リン酸水素カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および当業者に周知である他の従来の賦形剤を包含するがこれらに限定されない。
【0036】
使用され得る好適な結合剤は、アカシア、グァーガム、アルギン酸、カルボマー、デキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリメタクリレート、クロスポビドン、ポビドン、コポビドン、ゼラチン、デンプンおよび当業者に周知である他の従来の結合剤を包含するがこれらに限定されない。
【0037】
使用され得る好適な滑沢剤/流動促進剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素、グリセリルパルミトステアレート、植物油、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、タルク、安息香酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンモノステアレート、ココアバター、水素化植物油、鉱油、多糖および当業者に周知である他の従来の滑沢剤/流動促進剤を包含するがこれらに限定されない。
【0038】
本発明において使用され得る好適な崩壊剤および/または超崩壊剤は、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等を包含するがこれらに限定されない。使用され得る他の好適な崩壊剤は、マンニトール、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、デンプンおよび当業者に周知である他の同様の作用物質を包含する。
【0039】
好適な緩衝系は、水酸化ナトリウム、酢酸、ホウ酸、カルボン酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルタル酸およびグルタミン酸ならびにそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、ならびに当業者に周知である他の従来の緩衝系を包含するがこれらに限定されない。
【0040】
使用され得る好適な矯味剤は、香味剤および甘味剤を包含する。香味剤は、天然および合成香味液から選ばれてよく、揮発性油、合成香味油、香味芳香族化合物、油、液体、オレオレジン、または、植物、葉、花、果実、茎およびそれらの組み合わせに由来する抽出物を包含するがこれらに限定されない。甘味剤は、下記の非限定的な一覧:スクロース、デキストロース、転化糖、フルクトースおよびそれらの混合物、サッカリン、アスパルテーム、アセサルフェーム、スクラロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコールから選ばれてよい。
【0041】
好適な着色剤は、二酸化チタン顔料、レーキカラー、酸化鉄顔料等を包含するがこれらに限定されない。
【0042】
数種の目的のために使用され得る好適な溶媒および/または共溶媒は、水、エタノール、有機極性および非極性溶媒、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ならびにそれらの好適な混合物を包含するがこれらに限定されない。
【0043】
本発明の1つの特に好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、フィンゴリモド塩酸塩と弱酸カチオン交換樹脂とのイオン交換樹脂複合体および薬学的に許容される添加剤が充填された、硬ゼラチンカプセル剤の形態である。1つの具体的な実施形態において、医薬組成物は、クロスポビドンNF/欧州薬局方(ポリプラスドンXLとも呼ばれる)等の賦形剤およびコロイド状二酸化ケイ素NF(またはコロイド状無水シリカ欧州薬局方)またはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を含む。この実施形態に従う医薬組成物は、フィンゴリモド塩酸塩を約0.62重量%の量で、弱酸カチオン交換樹脂アンバーライトIRP64を約1.87重量%の量で、およびクロスポビドンを約50重量%の量で、ならびに、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を、それぞれ全組成の0.55重量%の量で含む。
【0044】
別の具体的な実施形態によれば、本発明は、カプセル剤の形態の医薬組成物であって、フィンゴリモド塩酸塩を全組成の約0.62重量%の量で、カチオン交換樹脂アンバーライトIRP88を約4.98重量%の量で、およびクロスポビドンを全組成の約50重量%の量で含む医薬組成物を提供する。
【0045】
好適な方法は、薬物と樹脂との錯体形成の程度の評価に用いられ得る。特に、遊離薬物含量、複合化薬物含量および全薬物含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる分析方法によって推定することができる。本発明の一実施形態によれば、遊離薬物パーセンテージ;複合化薬物パーセンテージおよび全薬物含量は、本明細書において後述される方法によって、決定し分析することができる:
指定された量のイオン交換樹脂複合体を、正確に秤量し、200mlの容量フラスコに移した。約150mlの水を顆粒に添加し、混合物を断続的に振とうしながら約20分間音波処理し、容量を基準まで水で埋めた。混和物をよく混合し、200mlの溶液全部を何も無駄にすることなく4000rpmで15分間遠心分離した。そのようにして取得された透明上清は、遊離薬物(複合化されていない非樹脂酸塩部分)を含有している。上清の試料を、好適なHPLC方法によって分析して、遊離薬物含量を取得した。残留物部分は複合化薬物を含有している。複合化薬物を分析するために、試料を以下の通りにさらに処理した:
複合化フィンゴリモド含量の推定方法:
上記で取得した通りの試料をさらに処理して、複合化薬物含量を決定した。透明上清を慎重に廃棄した。遊離薬物含量全体の除去を確実にするために、約10mlの水を残留物に再度添加し、遠心分離を4000rpmで15分間行った。透明上清を慎重に廃棄した。残りの残留物は、複合化薬物を含有するイオン交換複合体である。複合化薬物を分析するために、37℃に維持した水浴中、30分間ボルテックスおよび加熱しながら、0.1N塩酸を残留物に添加した。次いで、液体部分を別個の200mlの容量フラスコ中に収集した。残留物容器を希釈剤
*で少なくとも2回洗浄し、洗液を同じ200mlの容量フラスコ中に収集した。断続的に振とうしながら、溶液を約20分間音波処理した。溶液を室温に冷却させ、容量を希釈剤
*で埋め、続いて、適正に混合および4000rpmで15分間遠心分離して、透明上清を得た。この透明上清は複合化薬物を含有している。上清の試料を好適なHPLC方法により分析して、複合化薬物含量を取得した。
【0046】
全フィンゴリモド含量の推定方法:
イオン交換樹脂複合体を正確に秤量し、200mlの容量フラスコに移した。測定体積の0.1N塩酸をこれに添加した。フラスコを、37℃に維持した水浴中、断続的に振とうしながら約30分間加熱した。次いで、溶液を冷却し、30:70の比での緩衝液(オルトリン酸二水素カリウム/オルトリン酸緩衝液)およびアセトニトリルの混合物を添加し、続いて、断続的に振とうしながら約20分間音波処理した。容量を基準まで上記の緩衝液混合物で埋め、よく混合し、4000RPMで15分間遠心分離した。透明上清は全薬物を含有している。上清の試料を、好適なHPLC方法により分析して、全薬物含量を取得した(L.C.の%として)。
【0047】
本発明の医薬組成物は、薬物のアッセイならびに公知および未知の不純物/分解生成物の限界の観点から、標準的な保管条件下で、「安定」である。安定性特徴は、例えば、不純物または分解生成物を、HPLC分析または任意の他の好適な方法によって、特定の時間にわたる保管後に、特定の温度および湿度条件、例えば、25℃/60%相対湿度(RH)、30℃/65%RHまたは40℃/75%RH(安定性加速研究とも呼ばれる)で、規制当局によって指定されている通り、またはICHガイドラインのように測定することによって決定され得る。
【0048】
フィンゴリモド塩酸塩について同定された、公知である個々の不純物は、
不純物A:N−[1,1−ビス−ヒドロキシメチル−3−(4−オクチル−フェニル)−プロピル]−アセトアミド
不純物B:2−アセチルアミノ−2−[2−(4−オクチル−フェニル)−2−オキソ−エチル]−マロン酸ジエチルエステル
不純物C:N−[1−ヒドロキシメチル−3−(4−オクチル−フェニル)−プロピル]−アセトアミド
である。
【0049】
本発明の医薬組成物を、安定性加速試験に供し、個々の公知の不純物(A、B、C);最も高い未知の不純物および総不純物パーセントレベルは、許容される限界内に留まることを見出した。特に、40℃/75%相対湿度で安定性加速研究に供した場合の個々の不純物A、BおよびCのレベルは、研究から6か月後も0.1%を下回ったままであった。さらに、総不純物%のレベルは、研究の3か月後、1.0%を下回ったままであった。これは、本発明の医薬組成物が、優れた安定性特徴を保有し、製品の保存期間にわたって安定なままとなることを示すものであった。その一方で、弱酸カチオン交換樹脂のない組成物について、不純物レベルが非常に高いことが見出された。例えば、比較例2は、保存期間の終わりに、3.2%の高さの総不純物を示した。
【0050】
以後、例を参照して本発明をより具体的に記述する。例は、本発明の範囲を限定することを意図されておらず、例証として使用されているにすぎない。ある特定の修正形態および均等物は当業者には明らかであろうし、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0052】
フィンゴリモド塩酸塩を、添加剤と幾何学的に混合し、カプセルに充填した。これは、先行技術、国際公開第2011131368号パンフレットにおいて記述されている方法と同様であった。
【0053】
カプセル剤の含量均一性を、米国薬局方34において定められている手順によって決定した。USPによれば、10の個々に試験された単位の合格判定値は、L1以下となるべきであり、ここで、L1は15である。L1の値が低くなるにつれて、薬物含量の均一性は良好になる。剤形がこの基準に適合しなければ、追加で20の投薬量単位が個々に試験されてL2が決定され、その値は25以下となるべきである。
【0054】
比較例において提供される組成について、含量均一性の結果を表2(a)に示す。
【表2】
【0055】
表2(a)は、後者の値が限界内ではあるが15付近の高い側にあることから、合格判定値によって示される通りの薬物含量の乏しい均一性を示している。比較例1のカプセル剤を安定性加速試験に供し、結果を表2bにおいて提供する。
【表3】
【0057】
フィンゴリモド塩酸塩を、添加剤と幾何学的に混合し、カプセルに充填した。これは、先行技術、国際公開第2011131368号パンフレットにおいて記述されている方法と同様であった。
【0058】
比較例2のカプセル剤をアルミニウム/アルミニウムブリスターに詰め、安定性加速研究に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH)で供した。研究を3か月続けて、製剤の長期安定性を確認した。試料を、薬物のアッセイ、単一の最も高い不純物パーセントおよび総不純物パーセントについて分析した。安定性研究の結果を、以下の表4に記す。
【表5】
【0059】
上記の安定性データから、例2の比較組成物は不安定であり、薬物は保管時に劣化を受け、ここで、40℃/75%相対湿度(RH)に保った場合、3か月後には3.2%の高い総不純物パーセントが観察されることが観察された。
【0060】
[実施例]
[実施例1]
例は、式1のイオン交換樹脂[式中、Xは水素である]を含む本発明の組成物を例証するものであり、フィンゴリモド塩基対樹脂の比は1:3.36であるか、またはフィンゴリモド塩酸塩対樹脂の比は1:3である。
【表6】
【0061】
フィンゴリモド塩酸塩を水に溶解した。弱酸カチオン交換樹脂を薬物溶液に添加し、分散液を3時間撹拌した。分散液を使用して、好適なせん断造粒機内で賦形剤としてクロスポビドンを造粒した。顆粒を好適な乾燥機内で乾燥させた。乾燥した顆粒を、好適なブレンダ内でコロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムとブレンドした。潤滑化ブレンドを硬ゼラチンカプセル内に封入した(0.5mgの活性強度のためにはカプセル当たり充填重量50mg)。得られた組成物を含量均一性について確認した。結果を以下の表6に記す。
【表7】
【0062】
表6は、比較例1の組成物と比較して低い合格判定値によって反映される通り、改善された含量均一性を示すものである。
【0063】
実施例1の医薬組成物(カプセル剤)をAlu−Aluブリスターに詰め、安定性加速研究に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH;25℃/60%RH)で供した。研究を6か月間続けて、製剤の長期安定性を確認した。試料を、薬物のアッセイ、不純物レベルおよび総不純物について分析した。安定性研究の結果を以下の表7に記す:
【表8】
【0064】
実施例1ならびに比較例1および2の不純物レベルを比較すると、40℃/75%相対湿度に保った場合、6か月後に観察された総不純物%は、比較例1について1.39%、40℃/75%相対湿度に保った場合、3か月後に観察された総不純物%は、比較例2について3.2%であることが観察された。対照的に、実施例1の総不純物は、著しく低い、すなわち約1%であった。その上、カプセル剤を6か月間保管した場合、総不純物%が1.0%から1.223%に名目上増大するのが観察された(表7を参照)。故に、アンバーライトIRP64のような弱酸カチオン交換樹脂を使用する実施例1の医薬組成物では、弱酸カチオン交換樹脂のない組成物に対して有意な不純物が形成されなかったことがデータから非常に明白であった。
【0065】
[実施例2]
例は、式1のイオン交換樹脂[式中、Xはカリウムである]を含む本発明の組成物を例証するものであり、フィンゴリモド塩基対樹脂の比は1:8.96であるか、またはフィンゴリモド塩酸塩対樹脂の比は1:8である。
【表9】
【0066】
フィンゴリモド塩酸塩を水に溶解した。弱カチオン交換樹脂を薬物溶液に、約1:8.96のフィンゴリモド塩基対樹脂の重量比で添加し、分散液を3時間撹拌した。分散液を使用して、好適なせん断造粒機内で賦形剤としてクロスポビドンを造粒した。顆粒を好適な乾燥機内で乾燥させた。顆粒を硬ゼラチンカプセル内に封入した(0.5mgの活性強度のためにはカプセル当たり充填重量50mg)。
【0067】
含量均一性:得られた組成物を含量均一性について確認した。結果を以下の表9に記す:
【表10】
【0068】
表9は、比較例1の組成物と比較して低い合格判定値によって反映される通り、実施例2の組成物を用いて改善された含量均一性を示すものである。
【0069】
安定性研究:実施例2の医薬組成物(カプセル剤)をAluAluブリスターに詰め、安定性加速研究に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH;25℃/60%RH)で供した。試料を、薬物のアッセイおよび不純物レベルについて3か月および6か月で分析した。安定性研究の結果を以下の表10に記す:
【表11】
【0070】
カプセル剤を40℃/75%相対湿度で保管した場合、6か月後に観察された総不純物%は、比較例1および比較例2についてそれぞれ1.39%および3.2%であることが観察された。対照的に、実施例7について3か月の終わりの総不純物は、有意に低い約0.5%であった。その上、カプセル剤を6か月間保管した場合、総不純物%が0.5%から0.72%に名目上増大するのが観察された(上記表10を参照)。故に、実施例2の医薬組成物は、弱酸カチオン交換樹脂のない組成物よりもはるかに安定であると結論付けることができる。
【0071】
[実施例3]
例は、式1のイオン交換樹脂[式中、Xは水素である]を含む本発明の組成物を例証するものであり、フィンゴリモド塩基対樹脂の比は1:11.2であるか、またはフィンゴリモド塩酸塩対樹脂の比は1:10である。
【表12】
【0072】
手順−フィンゴリモド塩酸塩を水に溶解した。弱カチオン交換樹脂を薬物溶液(1:11.2のフィンゴリモド塩基対樹脂比)に添加した。分散液を3時間撹拌した。分散液を使用して、好適なせん断造粒機内で賦形剤としてクロスポビドンを造粒した。次いで、顆粒を好適な乾燥機内で乾燥させた。顆粒を硬ゼラチンカプセル内に封入した(0.5mgの活性強度のためにはカプセル当たり充填重量50mg)。
【0073】
含量均一性:組成物を含量均一性について確認した。結果を以下の表12に記す。
【表13】
【0074】
安定性研究:実施例3のカプセル剤をAluAluブリスターに詰め、安定性加速研究に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH;25℃/60%RH)で供した。試料を、アッセイおよび不純物レベルについて、1か月、3か月および6か月で分析した。安定性研究の結果を以下の表13に記す:
【表14】
【0075】
カプセル剤を40℃/75%相対湿度で保管した場合、6か月後に観察された総不純物%は、比較例1および比較例2についてそれぞれ1.39%および3.2%であることが観察された。対照的に、実施例3について3か月の終わりの総不純物は、有意に低い約0.315%であった。故に、実施例3の医薬組成物は、弱酸カチオン交換樹脂のない組成物よりもはるかに安定であると結論付けることができる。
【0076】
また、実施例3と比較した、実施例1において形成された総不純物%の検査、樹脂(式1のイオン交換樹脂[式中、Xは水素である])の割合が増大すると、安定性増大が見られることが分かる。
【0077】
[実施例4]
本発明の医薬組成物中に存在するフィンゴリモドおよび弱酸カチオン交換樹脂のイオン交換複合体を、以下の表14に記す:
【表15】
【0078】
フィンゴリモド塩酸塩を水に溶解した。弱カチオン交換樹脂を薬物溶液に、1:10のフィンゴリモド塩酸塩対樹脂比で添加した。分散液を3時間撹拌した。薬物−樹脂複合体が形成され、これを沈殿させた。沈殿物を数時間別にしておいた。
【0079】
次いで、遊離薬物および複合化薬物の分析を行った。上記の方法によって取得された上清を濾過し、遊離薬物含量について分析した。上記で取得された沈殿物を乾燥させ、薬物−樹脂複合体を、錯体形成の程度について、分析方法に準拠することによって分析した。指定された量の薬物複合体に、0.1N HClを添加し、37℃で中間(intermediate)振とうしながら加温することにより、その中に複合化薬物を抽出した。次いで、アセトニタイル(acetonitile)およびメタノールの溶媒系を添加し、混合物を断続的に振とうしながら約20分間音波処理した。容量を適切にし、濾過した。濾液を使用して、高速液体クロマトグラフィーによりフィンゴリモド塩酸塩をさらに分析した。
【0080】
複合化された薬物のパーセントは、99.46%であることが分かった。故に、カチオン交換樹脂、アンバーライトIRP64は、1:10のフィンゴリモド塩酸塩対樹脂比で使用した場合、実質的に完全にフィンゴリモド塩酸塩とイオン交換複合体を形成できると結論付けることができる。
【0081】
[実施例5(A〜E)]
種々の比でのフィンゴリモド塩酸塩およびアンバーライトIRP64のイオン交換樹脂複合体を、以下に記す表15のように調製した:
【表16】
【0082】
上記の例において言及した通りの指定された量のフィンゴリモド塩酸塩を、十分な水に溶解した。指定された量のアンバーライトIRP64を添加した。各事例において得られた分散液を、周囲条件で2時間よく撹拌した。得られた混和物を、ローターベーパー内で真空を適用することにより、温度およそ60℃で乾燥させた。そのように調製された混和物を、錯体形成の程度について分析し、ここで、複合化薬物パーセンテージ;遊離薬物および全薬物は、以下に記す方法によって推定した。錯体形成データの結果は、表16において記されている。
【表17】
【0083】
遊離フィンゴリモドの推定方法:指定された量のイオン交換樹脂を、200mlの容量フラスコに移した。約150mlの水を添加し、混合物を断続的に振とうしながら約20分間音波処理し、容量を基準まで水で埋めた。混和物をよく混合し、200mlの溶液全部を何も無駄にすることなく4000rpmで15分間遠心分離した。透明上清は遊離薬物(複合化されていない非樹脂酸塩部分)を含有している。上清の試料を、好適なHPLC方法によって分析して、遊離薬物含量を取得した。残留物部分は複合化薬物を含有している。複合化薬物を分析するために、試料を以下の通りにさらに処理した:
複合化フィンゴリモドの推定方法:
上記で取得した通りの遠心管を、以下の通りに処理して、複合化薬物含量を決定した。透明上清を慎重に廃棄した。遊離薬物含量全体の除去を確実にするために、約10mlの水を残留物に再度添加し、遠心分離を4000rpmで15分間行った。透明上清を慎重に廃棄した。残りの残留物は、複合化薬物を含有するイオン交換複合体である。複合化薬物を分析するために、管中に存在する残留物に0.1N塩酸を添加し、管を、37℃に維持した水浴中、30分間ボルテックスおよび加熱した。管の液体部分を200mlの容量フラスコ中に収集した。管を、30:70の比での緩衝液(オルトリン酸二水素カリウム/オルトリン酸緩衝液)およびアセトニトリルの希釈剤混合物で少なくとも2回洗浄し、洗液を同じ200mlの容量フラスコに収集した。断続的に振とうしながら、溶液を約20分間音波処理した。溶液を室温に冷却させ、容量を上記で使用した通りの希釈剤で埋め、続いて、適正に混合および4000rpmで15分間遠心分離して、透明上清を得た。この透明上清は複合化薬物を含有している。上清の試料を好適なHPLC方法により分析して、複合化薬物含量を取得した。
【0084】
全フィンゴリモド含量の推定方法:
指定された量のイオン交換を正確に秤量し、200mlの容量フラスコに移した。測定体積の0.1N塩酸をこれに添加した。フラスコを、37℃に維持した水浴中、断続的に振とうしながら約30分間加熱した。次いで、溶液を冷却し、測定体積の、30:70の比での緩衝液(オルトリン酸二水素カリウム/オルトリン酸緩衝液)およびアセトニトリルの希釈剤混合物を添加し、続いて、断続的に振とうしながら約20分間音波処理した。容量を基準まで上記の通りの希釈剤で埋め、よく混合し、4000RPMで15分間遠心分離した。透明上清は全薬物を含有している。上清の試料を、好適なHPLC方法により分析して、全薬物含量を取得した(L.C.の%として)。
【0085】
[実施例6(A〜D)]
種々の比でのフィンゴリモド塩酸塩およびアンバーライトIRP88のイオン交換樹脂複合体を、以下に記す表17のように調製した:
【表18】
【0086】
上記の例において言及した通りの指定された量のフィンゴリモド塩酸塩を、十分な水に溶解した。指定された量のアンバーライトIRP88を添加した。各事例において得られた分散液を、周囲条件で2時間よく撹拌した。得られた混和物を、真空を適用することにより、温度およそ60℃で乾燥させた。そのように調製された混和物を、錯体形成の程度について分析し、ここで、複合化薬物パーセンテージ;遊離薬物および全薬物は、実施例5において記述されている方法に準拠することによって推定した。
【表19】
【0087】
フィンゴリモド対アンバーライトIRP88の比が1:6.72である実施例6(B)の薬物樹脂複合体を、安定性加速研究に供した:
薬物−樹脂複合体を、安定性加速研究に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH;25℃/60%RH)で供した。試料を、アッセイ、不純物レベルについて、1か月、2か月および3か月で分析した。実施例6(B)の薬物−樹脂複合体の安定性データを、以下の表19に提示する:
【表20】
【0088】
[実施例7]
例は、式1のイオン交換樹脂[式中、Xはカリウムである]を含む本発明の組成物を例証するものであり、フィンゴリモド塩基対樹脂の比は1:6.72であるか、またはフィンゴリモド塩酸塩対樹脂の比は1:6である。
【表21】
【0089】
指定された量のフィンゴリモド塩酸塩を十分な水に溶解した。3.36mgの弱カチオン交換樹脂−アンバーライトIRP88を添加した。得られた分散液を、周囲条件で2時間よく撹拌した。得られた混和物を、温度およそ60℃で真空を適用することにより、乾燥させた。等量の乾燥した混和物を採取し、クロスポビドンおよびコリオダル(colliodal)二酸化ケイ素と混合し、45分間ブレンドした。そのように取得されたブレンドを、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。潤滑化ブレンドを、硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0090】
実施例7のカプセル剤の含量均一性を、USP方法のように確認した。結果を以下の表21に記す。
【表22】
【0091】
実施例7のカプセル剤をアルミニウム/アルミニウムブリスターパックに詰めた。これを、安定性加速試験に種々の試験条件(40℃/75%RH、30℃/65%RH;25℃/60%RH)で供した。安定性研究の結果を、以下の表22に記す:
【表23】
【0092】
カプセル剤を40℃/75%相対湿度で保管した場合、6か月後に観察された総不純物%は、比較例1および比較例2についてそれぞれ1.39%および3.2%であることが観察された。対照的に、実施例7について3か月の終わりの総不純物は、有意に低い約0.248%であった。故に、実施例7の医薬組成物は、弱酸カチオン交換樹脂のない組成物よりもはるかに安定であると結論付けることができる。
【0093】
また、実施例7と比較した、実施例2において形成された総不純物%の検査、樹脂(式1のイオン交換樹脂[式中、Xはカリウムである])の割合が増大すると、安定性増大が見られることが分かる。
【国際調査報告】