(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-506247(P2016-506247A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(54)【発明の名称】無菌速溶フィルム及びその腫瘍感受性試験への使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20160205BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20160205BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20160205BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-551112(P2015-551112)
(86)(22)【出願日】2014年1月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月30日
(86)【国際出願番号】CN2014000001
(87)【国際公開番号】WO2014108042
(87)【国際公開日】20140717
(31)【優先権主張番号】201310006751.X
(32)【優先日】2013年1月9日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515179576
【氏名又は名称】蘇州麦克威爾生物医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王守立
(72)【発明者】
【氏名】戚文栄
(72)【発明者】
【氏名】宋任波
(72)【発明者】
【氏名】陶征宇
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼鋼
(72)【発明者】
【氏名】邱瑞宝
(72)【発明者】
【氏名】呉明輝
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA40
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(57)【要約】
本発明は、無菌速溶フィルム、該フィルムを用いた抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法、及び該無菌速溶フィルムの抗腫瘍感受性試験への使用を提供する。本発明の抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法は、抗悪性腫瘍薬を、腫瘍細胞を含有する細胞培養液に溶解して、抗悪性腫瘍薬を腫瘍細胞と十分接触させる工程を含む、抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法において、前記抗悪性腫瘍薬は、無菌速溶フィルムとして前記細胞培養液に溶解されることを特徴とする方法である。本発明は、抗悪性腫瘍薬を無菌速溶フィルムとして抗悪性腫瘍薬感受性試験に用いることによって、抗悪性腫瘍薬感受性試験の作業効率、柔軟性、正確さ及び経済性を向上させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗悪性腫瘍薬を、腫瘍細胞を含有する細胞培養液に溶解して、抗悪性腫瘍薬を腫瘍細胞と十分接触させる工程を含む、抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法において、前記抗悪性腫瘍薬は、無菌速溶フィルムとして前記細胞培養液に溶解されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記無菌速溶フィルムの厚さが0.01mm〜1mmであり、面積が0.2cm2〜25cm2であり、1cm2のフィルムが細胞培養液1mlにおいて5分間、好ましくは3分間、より好ましくは100秒以内で完全に溶解することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無菌速溶フィルムは、重量%で、0.0001%〜30%の抗悪性腫瘍薬、50%〜98%の成膜材料、及び1%〜20%の可塑剤を含むことを特徴とする請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗悪性腫瘍薬は、フルオロウラシル、テガフール、テガジフール、ドキシフルリジン、カルモフール、メトトレキサート、ブスルファン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ブレオマイシンA5、マイトマイシン、ミトラマイシン、オリボマイシン、ストレプトゾトシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、シタラビン、フロクスウリジン、アンシタビン(Ancitabine)、塩酸アンシタビン(Ancitabine hydrochloride)、フルダラビン、ゲムシタビン、ドセタキセル、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、ヘプタプラチン、リツキシマブ、イブリツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、インターロイキン2、酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、アナストロゾール、レトロゾール、アミノグルテチミド、フォルメスタン、エキセメスタン、テノポシド、エトポシド、ペントスタチン、イリノテカン、ソラフェニブ、カペシタビン、デシタビン、ペメトレキセド二ナトリウム、プロカルバジン、ハリングトニン、サリドマイド、ダカルバジン、タモキシフェン、テモゾロマイド、トポテカン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、亜ヒ酸、インジルビンなどから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
重量%で、0.0001%〜30%の抗悪性腫瘍薬、50%〜98%の成膜材料、及び1%〜20%の可塑剤を含む抗悪性腫瘍薬感受性試験用の無菌速溶フィルムにおいて、前記成膜材料は、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどから選択されるものであり、前記可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、クエン酸トリエチルなどから選択されるものであることを特徴とする無菌速溶フィルム。
【請求項6】
フィルムの厚さが0.01mm〜1mmであり、面積が0.2cm2〜25cm2であり、1cm2のフィルムが細胞培養液1mlにおいて5分間、好ましくは3分間、より好ましくは100秒以内で完全に溶解することを特徴とする請求項5に記載の無菌速溶フィルム。
【請求項7】
前記抗悪性腫瘍薬は、フルオロウラシル、テガフール、テガジフール、ドキシフルリジン、カルモフール、メトトレキサート、ブスルファン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ブレオマイシンA5、マイトマイシン、ミトラマイシン、オリボマイシン、ストレプトゾトシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、シタラビン、フロクスウリジン、アンシタビン、塩酸アンシタビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ドセタキセル、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、ヘプタプラチン、リツキシマブ、イブリツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、インターロイキン2、酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、アナストロゾール、レトロゾール、アミノグルテチミド、フォルメスタン、エキセメスタン、テノポシド、エトポシド、ペントスタチン、イリノテカン、ソラフェニブ、カペシタビン、デシタビン、ペメトレキセド二ナトリウム、プロカルバジン、ハリングトニン、サリドマイド、ダカルバジン、タモキシフェン、テモゾロマイド、トポテカン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、エキセメスタン、亜ヒ酸、インジルビンなどから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5〜6に記載の無菌速溶フィルム。
【請求項8】
(1)成膜材料を水に入れて、攪拌溶解又は加熱溶解する工程と、
(2)可塑剤及び抗悪性腫瘍薬を加えて、均一に溶解するまで攪拌し、加熱、静置又は超音波などの方法で脱気する工程と、
(3)上記溶液を成膜装置に塗布し、熱風又は冷風などの方法で乾燥する工程と、
(4)脱膜し、含有量を測定し、測定結果に基づき分割量で分割する工程と、
(5)分割されたフィルムに対して、放射線照射滅菌又はエチレンオキシド滅菌、好ましくは放射線照射滅菌を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項5〜7に記載の無菌速溶フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項5〜7に記載の無菌速溶フィルムの、抗悪性腫瘍薬感受性試験への使用。
【請求項10】
フィルムを腫瘍細胞感受性試験に直接用いる、或いは、必要に応じてフィルムを溶解した後に薬物代謝酵素を加えて活性化してから腫瘍細胞感受性試験を行う請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌速溶フィルム、該フィルムを用いた抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法を提供し、更に、該無菌速溶フィルムの抗腫瘍感受性試験への使用を提供し、医薬技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、人類の命と健康を酷く脅かす通常疾患と多発性疾患であり、人体障害と若死をもたらす主要疾患の1つである。35〜59歳の年齢層において、悪性腫瘍は死因の第1位となっている。資料によると、中国の悪性腫瘍の年間症例数は約200万件で、死亡数は約150万件でありながら、3%の速度で増加し、且つ発症年齢も若年化し、様々な疾患において死亡率が最も高いものとなっている。
【0003】
現在、世界中の悪性腫瘍に対する主な治療手段には、手術、放射線療法、化学療法、内分泌療法、及び生物免疫療法などがある。悪性腫瘍を治療する数多の手段において、化学療法は、1種の全身性治療法として、他の方法と比べて患者体内の腫瘍細胞を最大限に殺滅する可能性があるため、化学療法は悪性腫瘍の治療において非常に重要な地位にある。医学の進歩に連れて、化学療法は単なる姑息性治療の手段ではなくなり、姑息から根治へ移行している。
【0004】
1998年、世界保健機関は、適切な化学療法の使用は、一部の腫瘍(絨毛性腫瘍、急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、精巣癌、急性好中球性白血病、胎児性横紋筋肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、及び卵巣癌など)にとって腫瘍を治癒する根治的治療手段となっていることを示した。補助的な化学療法を受けた後に治癒可能な腫瘍には、乳癌、骨肉腫、大腸癌、骨肉腫、網膜芽細胞腫、軟部肉腫、及び腎芽腫などがある。
【0005】
化学療法は悪性腫瘍の治療において非常に重要な地位にあるが、臨床実践において、結果が期待を裏切ることが多い。なかでも、腫瘍細胞が化学療法薬に対して薬剤耐性を生じることは、腫瘍化学療法を失敗させるよくある要因であり、腫瘍治療を当惑させる重要課題でもある。薬剤耐性の課題は、極めて普遍的な臨床課題であり、米国癌協会の推算では、程度の差があるが、腫瘍で死亡した患者の90%以上は薬剤耐性の影響を受けていた。
【0006】
腫瘍細胞薬剤耐性は、自然耐性と獲得耐性の2種類に大別される。現在、臨床での通常のやり方は、国際腫瘍臨床試験のエビデンス・ベース研究の結果から、異なる化学療法薬の異なる腫瘍に対する治療感受性が違うこと、即ち、1種の腫瘍には、対応する有効な化学療法薬感受性プロフィールがあることを把握することによって、治療効果が最も顕著な化学療法単剤又は複数の薬物の組み合わせを選択して治療を行う。しかし、臨床上、エビデンス・ベース研究を経てある種の腫瘍には有効であると認められている治療案は、一部の患者に対して全く効果を上げないことが度々ある。例えば、ドキソルビシンは浸潤性乳癌にとって画期的な治療薬ではあるが、それでも50%の浸潤性乳癌患者はこのような薬物に非感受性である。また、例えば、ジェムザールは非小細胞肺癌に顕著な治療効果があると認められているが、それでも60%以上の患者の治療効果はそれほどではなかった。
【0007】
腫瘍は各化学療法薬に対して明らかな個体差がある。つまり、腫瘍の種類が異なる又は同じである患者は、引いては同じ患者でも異なる進行段階において、化学療法への感受性が異なり、治療効果の差も大きい。従来より、1種の化学療法薬又は複数の化学療法薬の併用が、1種の腫瘍に100%有効であることはない。臨床上、同じ化学療法薬又は同じ化学療法案で異なる腫瘍患者を治療するでは、明らかに盲目的である。したがって、化学療法を施す前に、各患者に対して抗腫瘍薬感受性試験を行って有効な化学療法薬を選択してから化学療法を行う必要性が高い。そのためには、細菌感受性試験と同様に、比較的信頼性の高い感受性試験方法によって、各患者に対して感受性の高い化学療法薬を抽出し、その分量を特定する方法を見出して、本当の意味での臨床の個別化医療を実現する。
【0008】
現在、抗腫瘍薬感受性試験の作業に必要な薬物は、主に使用直前に調合され、抗腫瘍薬感受性試験では、複数の抗悪性腫瘍薬を測定する必要があり、薬液の調合・希釈が煩雑であり、また、抗腫瘍薬感受性試験に必要な抗悪性腫瘍薬の分量が小さく、サンプリングが不便である。一部の薬物は溶液状態での保存時間が短く、残りを廃棄するしかないため、薬物、特に高価な薬物を浪費することになる。
【0009】
従来技術に開示された腫瘍感受性試験方法では、主にキットを用いる。例えば、CN93111551.5には、腫瘍化学療法薬感受性予備測定剤の調合方法及びキットが開示され、該特許は、8種の汎用の抗悪性腫瘍薬を予め設定分量で標本瓶に入れる。しかし、この方法では、化学療法薬併用案の測定が不便であり、案の分量調整も不便である。
【0010】
特許CN03102260.Xは、予備製造薬剤感受性測定プレートを用いる方法で、抗悪性腫瘍薬を計算分量で測定プレートに入れて、凍結乾燥し、梱包して、抗腫瘍薬感受性試験に用いる。この方法も同様に、化学療法薬併用案の測定が不便であり、案の分量調整も不便であり、また、用いられる方法では、無菌問題を徹底的に解決できず、細胞培養の無菌要求を満たさない。培養プレートに入れた薬物の量が少なく、凍結乾燥において各薬物の粉塵が互いを汚すため、実際の診断結果は疑わしきものである。
【0011】
臨床では、現在、抗悪性腫瘍薬の臨時調合の方法で抗悪性腫瘍薬感受性試験を行うケースが少しあるが、この方法では、調合薬物の正確な濃度を知らないため、調合薬液の正確さが疑われる問題、調合に用いられる薬物は臨床で使用する製剤であることが多いため、製剤中の補助原料は最終結果への判断に影響を与えてしまう問題、臨床経口投与の抗悪性腫瘍薬の抗悪性腫瘍薬感受性試験ができない問題、個人の作業誤差が大きい問題といった多くの問題を抱えている。
【発明の概要】
【0012】
従来技術の抗悪性腫瘍薬感受性試験に存在する問題点を解決するために、本発明は、抗悪性腫瘍薬感受性試験の作業効率、柔軟性、正確さ及び経済性を向上させる方法を提供する。本発明の形態は、下記のとおりである。
【0013】
本発明は、抗悪性腫瘍薬を、腫瘍細胞を含有する細胞培養液に溶解して、抗悪性腫瘍薬を腫瘍細胞と十分接触させる工程を含む、抗悪性腫瘍薬感受性試験の方法において、前記抗悪性腫瘍薬は、無菌速溶フィルムとして前記細胞培養液に溶解されることを特徴とする方法を提供する。細胞培養液は特に制限されず、慣用の細胞培養液、例えば、RPMIl640、DMEM、199、MEM、F12、L−15などの細胞培養液であっても良い。
【0014】
本発明の前記方法において、抗悪性腫瘍薬を無菌速溶フィルムに成膜し、フィルムは細胞培養液に溶解しやすい。膜の厚さ和面積を適切な範囲に制御して、溶解速度と機械的強度を確保する。本発明の前記方法において、前記無菌速溶フィルムの厚さが0.01mm〜1mm、好ましくは0.04mm〜0.15mmであり、面積が0.2cm
2〜25cm
2、好ましくは0.5cm
2〜16cm
2であり、1cm
2のフィルムが細胞培養液1mlにおいて5分間、好ましくは3分間、より好ましくは100秒以内で完全に溶解する。フィルムの形状は、円形、正方形、又は長方形であっても良く、様々な規格の細胞培養プレートに適する。
【0015】
本発明の前記方法において、前記無菌速溶フィルムは、重量%で、0.0001%〜30%の抗悪性腫瘍薬、50%〜98%の成膜材料、及び1%〜20%の可塑剤を含む。
【0016】
前記成膜材料は、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどから選択されるものであり、好ましくはポリビニルアルコール、特にポリビニルアルコール04−88、又はポリビニルアルコール05−88である。
【0017】
前記成膜材料は、水に溶解しやすいものであり、製造工程の難しさ及び成膜性能を考慮すると、より好ましくはポリビニルアルコール、ヒプロメロース、ポリビニピロリドンである。フィルムの溶解性能、機械的性能などに鑑み、より好ましくはポリビニルアルコール、特にポリビニルアルコール04−88、ポリビニルアルコール05−88である。
【0018】
ポリビニルアルコールは、重合度が高くなるに連れて、水への溶解性が低くなり、成膜後の強度が高くなる。ポリビニルアルコール04−88、及びポリビニルアルコール05−88は、水への溶解性に優れる上、十分な成膜強度を有する。フィルムにおける含有量が低く、フィルム強度への影響が小さい薬物の場合、ポリビニルアルコール04−88は、要求を十分満足でき、フィルムにおける含有量が高く、フィルム強度への影響が大きい薬物の場合、ポリビニルアルコール05−88でポリビニルアルコール04−88の一部又は全部を代替して、フィルム強度を強化する。
【0019】
前記可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、クエン酸トリエチルなどから選択されるものであり、最も好ましくはグリセリンである。
【0020】
本発明の前記方法において、前記抗悪性腫瘍薬は特に制限されず、様々な抗悪性腫瘍薬、例えば、フルオロウラシル、テガフール、テガジフール、ドキシフルリジン、カルモフール、メトトレキサート、ブスルファン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ブレオマイシンA5、マイトマイシン、ミトラマイシン、オリボマイシン、ストレプトゾトシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、シタラビン、フロクスウリジン、アンシタビン、塩酸アンシタビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ドセタキセル、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、ヘプタプラチン、リツキシマブ、イブリツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、インターロイキン2、酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、アナストロゾール、レトロゾール、アミノグルテチミド、フォルメスタン、エキセメスタン、テノポシド、エトポシド、ペントスタチン、イリノテカン、ソラフェニブ、カペシタビン、デシタビン、ペメトレキセド二ナトリウム、プロカルバジン、ハリングトニン、サリドマイド、ダカルバジン、タモキシフェン、テモゾロマイド、トポテカン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、エキセメスタン、亜ヒ酸、インジルビンなどから選択される1種又は2種以上であっても良い。
【0021】
感受性試験における細胞培養液は、腫瘍細胞を培養するもの液体培地であり、細胞培養液の主成分は、アミノ酸、グルコース、無機塩、ビタミン、及び微量元素などである。安定したpHを維持するために、培養液には、通常、pH緩衝系を設けると共に、pH指示薬として少量のフェノールレッドを入れることが多い。また、培養液には、通常、一定量の血清又は特殊な細胞増殖促進因子を入れる必要がある。適切な腫瘍細胞培養液は、例えば、RPMI 1640(10%〜20%のウシ胎児血清添加及び/又は0.03%のグルタミン添加)、DMEM、199、MEM、F12、L−15などであっても良く、最も汎用されているのは、RPMI 1640に10%〜20%のウシ胎児血清を添加したものである。腫瘍細胞の特殊性のため、培養において、細胞培養液には、通常、細胞増殖促進因子を適宜添加する必要がある。表1を参照する。
【0023】
例えば、ヒト小細胞肺癌の培養に適するHITES選択培地は、1種の改良されたRPMI 1640培地であって、ヒドロコルチゾン、インシュリン、トランスフェリン、エストロゲン、セレンなどの成分を含むものである。
【0024】
前記腫瘍細胞は、例えば、臨床外科手術で切除したインビトロ腫瘍組織、又は血液系若しくは体液を体外で分離などして得られた非実体腫瘍細胞を用いることができる。ここで、サンプルの新鮮さ、無菌、適時さ、正確さの問題を注意すべきであり、採取後に癌組織を速やかに培養し、通常、4時間以内の細胞の生存状態が最も良い。サンプルを、4℃で貯蔵するが、24時間を超えると好ましくない。採取部位を注意すべきであり、体積の大きい腫瘍組織には変性部分又は壊死部分があるため、採取の際にできるだけ避けるべきであり、生きのいい部位を選択すべきである。また、実体腫瘍組織は、採取の際に汚染される可能性があるため、洗浄と無菌処理に注意すべきである。新鮮な腫瘍組織を単なる機械的方法、例えば、通気及び濾過で分離するでは、通常、癌細胞へのダメージが小さく、例えば、ヒト卵巣癌、一部の神経膠腫などの腫瘍に使用できる。癌組織が硬い実体であることが多く、腫瘍細胞は大量の繊維質に埋もれて、機械的分離が難しいため、酵素消化法で癌細胞を分散することが一般的である。消化後に製造される癌細胞は、培養時に十分な細胞密度にすべきであり、通常、接種細胞濃度が5×10
5/ml又は1×10
6/mlであり、37℃で培養する。
【0025】
本発明の別の目的として、更に、重量%で、0.0001%〜30%の抗悪性腫瘍薬、50%〜98%の成膜材料、及び1%〜20%の可塑剤を含む抗悪性腫瘍薬感受性試験用の無菌速溶フィルムにおいて、前記成膜材料は、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどから選択されるものであり、前記可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、クエン酸トリエチルなどから選択されるものであることを特徴とする無菌速溶フィルムを提供する。
【0026】
前記成膜材料は、水に溶解しやすいものであり、製造工程の難しさ及び成膜性能を考慮すると、より好ましくはポリビニルアルコール、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドンである。
【0027】
フィルムの溶解性能、機械的性能などに鑑み、より好ましくはポリビニルアルコール、特にポリビニルアルコール04−88、ポリビニルアルコール05−88である。
【0028】
前記可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、クエン酸トリエチルなどから選択されるものであり、最も好ましくはグリセリンである。
【0029】
前記フィルムは、重量%で、0.0001%〜10%の抗悪性腫瘍薬、80%〜98%の成膜材料、及び1%〜10%の可塑剤を含むことが好ましい。
【0030】
本発明は、更に、
(1)成膜材料を水に入れて、攪拌溶解又は加熱溶解する工程と、
(2)可塑剤及び抗悪性腫瘍薬を加えて、均一に溶解するまで攪拌し、加熱、静置又は超音波などの方法で脱気する工程と、
(3)上記溶液を成膜装置に塗布し、熱風又は冷風などの方法で乾燥する工程と、
(4)脱膜し、含有量を測定し、測定結果に基づき分割量で分割する工程と、
(5)分割されたフィルムに対して、放射線照射滅菌又はエチレンオキシド滅菌、好ましくは放射線照射滅菌を行う工程と、
を含む前記無菌速溶フィルムの製造方法を提供する。
【0031】
本発明の前記無菌速溶フィルムは、抗悪性腫瘍薬感受性試験への使用に適する。フィルムを腫瘍細胞感受性試験に直接用いる、或いは、必要に応じてフィルムを溶解した後に薬物代謝酵素を加えて活性化してから腫瘍細胞感受性試験を行う。
【0032】
腫瘍感受性試験では、薬物が細胞と十分接触できるように、抗悪性腫瘍薬を細胞培養液に溶解する必要がある。作業の信頼性と簡便さを確保するために、薬物は速やかに細胞培養液に分散し溶解しなければならない。本発明は、抗悪性腫瘍薬を無菌速溶フィルムとして抗腫瘍薬の感受性試験に用いることによって、抗腫瘍薬の感受性試験の作業簡便化とコスト削減を実現し、また、抗悪性腫瘍薬を、分量が正確で、安定性に優れ、腫瘍細胞培養液において速やかに溶解できる無菌フィルムに製造し、フィルムを使用分量で正確に分割できることによって、抗腫瘍薬の感受性試験に簡便に使用できる。
【0033】
[溶解速度測定]
大きさ1cm
2のブランクフィルムを10枚/組として、それぞれ24穴プレートに入れた。各穴に冷RPMI 1640細胞培養液(20%のFBS含有)を1ml入れ、ブランクフィルムを1枚入れて、軽く振盪して完全に溶解させた。時間を記録し、平均値とした。表2に示した。
【0035】
[引張性能測定]
フィルム剤を10枚/組として、万能試験機で引張性能を測定し、引張強度と破断伸びを読み取り、平均値とした。表3、表4に示した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施例1:
ビンクリスチン 0.04g
ポリビニルアルコール04−88 97.96g
グリセリン 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール04−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、グリセリン、及びビンクリスチンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0040】
実施例2:
エトポシド 1.25g
ポリビニルアルコール05−88 96.75g
グリセリン 2g
精製水 400ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール05−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、グリセリン、及びエトポシドを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間保温して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0041】
実施例3:
メトトレキサート 0.4g
ポリビニルアルコール04−88 97.6g
ポリエチレングリコール 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール04−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、ポリエチレングリコール、及びメトトレキサートを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0042】
実施例4:
シタラビン 0.5g
ヒプロメロース 97.5g
グリセリン 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ヒプロメロースを加えて、攪拌分散し、25℃に降温し、攪拌溶解した。グリセリン、及びシタラビンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0043】
実施例5:
ヒドロキシカンプトテシン 0.01g
カルボキシメチルセルロースナトリウム 97.99g
グリセリン 2g
精製水 400ml
精製水を80℃に加熱し、カルボキシメチルセルロースナトリウムを加えて、攪拌溶解した。70℃に降温し、グリセリン、及びヒドロキシカンプトテシンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、1時間保温して、気泡を除いた。フィルムを塗布して70℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0044】
実施例6:
ホモハリングトニン 0.0012g
ポリビニルアルコール05−88 97.999g
エチレングリコール 2g
精製水 400ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール05−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、エチレングリコール、及びホモハリングトニンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間保温して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0045】
実施例7:
ダウノルビシン 0.008g
ポリビニルピロリドン 97.992g
グリセリン 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルピロリドンを加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、グリセリン、及びダウノルビシンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0046】
実施例8:
ミトキサントロン 0.005g
ポリビニルアルコール04−88 97.995g
クエン酸トリエチル 2g
精製水 400ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール04−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、クエン酸トリエチル、及びミトキサントロンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間保温して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0047】
実施例9:
ドキソルビシン 0.2g
ポリビニルアルコール05−88 97.8g
プロピレングリコール 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール05−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、プロピレングリコール、及びドキソルビシンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0048】
実施例10:
イダルビシン 0.05g
ポリビニルアルコール04−88 97.95g
グリセリン 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール04−88を加えて、攪拌溶解した。25℃に降温し、グリセリン、及びイダルビシンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、4時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して30℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0049】
実施例11:
ポリビニルアルコール04−88 98g
グリセリン 2g
精製水 200ml
精製水を80℃に加熱し、ポリビニルアルコール04−88を加えて、攪拌溶解した。70℃に降温し、グリセリンを加えて、0.5時間攪拌した。攪拌を停止し、1時間静置して、気泡を除いた。フィルムを塗布して70℃で乾燥した。脱膜し、切断し梱包した。滅菌した。
【0050】
実施例12:
抗腫瘍感受性試験
急性骨髄性白血病の治療ガイドラインに準じて化学療法薬を選択し、薬物の性質に応じて各薬物をフィルムに成膜した。各薬物の人体でのピーク血漿濃度を参考して、それぞれ化学療法薬フィルムに成膜すると共に、ブランクフィルムを製造した。実施例1〜実施例11を参照する。フィルム含有量の測定結果に基づき、1mlのピーク血漿濃度の化学療法薬を含有するように、各フィルムを分割し、ブランクフィルムの分割面積を1cm
2とした。
【0051】
化学療法を施す前に、無菌技術で20例の急性骨髄性白血病患者の骨髄を10ml採取し(パリンで抗凝固処理)、クリーンルームにおいてFicoll液で白血病細胞を分離し、培養液で洗浄した後、RPMI l640培養系に入れて1×10
6/mlの細胞懸濁液を調製した。
【0052】
細胞懸濁液を24穴培養プレートに接種し(1ml/穴)、細胞対照群(腫瘍細胞懸濁液)、ブランクフィルム対照群(腫瘍細胞懸濁液+ブランクフィルム)、実験群(腫瘍細胞懸濁液+化学療法薬フィルム)を設けた。実験群は各薬物を3つの穴に入れ、対照群は各穴に化学療法薬を入れなかった。実験群には単剤群と併用投与群があり(表6)、化学療法薬を併用投与する場合、化学療法案に準じて、対応する単剤フィルムを組み合わせて、同じ穴に入れた。設計案に準じて、培養プレートの各穴に対応するフィルムを加えると共に、各穴に細胞懸濁液を1ml/穴注入し、軽く振盪し、フィルムを溶解させた。37℃、5%二酸化炭素、飽和湿度で24時間培養した。微量遠心機を用いて回転数2000RPM、遠心時間5minで遠心して、懸濁細胞を収集し、培地を捨てた。細胞を冷PBSで2回洗浄した(2000RPM、遠心時間5minで細胞を収集)。400μlの1X Binding Bufferで細胞を懸濁さえて、濃度が約1×10
6/mlであった。細胞懸濁液に5μlのAnnexin V−FITC加えて、軽く混合し均一にした後に2〜8℃の遮光条件下で15分間培養した。10μlのPIを加えた後に軽く混合し均一にして、2〜8℃の遮光条件下で5分間培養した。1時間以内で、フローサイトメトリーを用いて、対照群と投与群の細胞の死亡と壊死の数を測定して、薬物の抑制率を算出し、薬物の感度を評価した。
【0054】
(抑制率=〔(ブランクフィルム対照群生細胞−実験群生細胞)/ブランクフィルム対照群生細胞〕×100%;抑制率>50%を高感度とする)
実施例13:
小細胞肺癌の治療ガイドラインに準じて化学療法薬を選択し、薬物の性質に応じて各薬物をフィルムに成膜した。各薬物の人体でのピーク血漿濃度を参考して、それぞれ化学療法薬フィルムに成膜すると共に、ブランクフィルムを製造した。実施例1〜実施例11を参照する。フィルム含有量の測定結果に基づき、1mlのピーク血漿濃度の化学療法薬を含有するように、各フィルムを分割し、ブランクフィルムの分割面積を1cm
2とした。
【0055】
化学療法を施す前に、1例の患者の小細胞肺癌の新鮮な組織塊(0.5cm
3〜1cm
3)を採取し、無菌生理食塩水(ペニシリン20万単位/ml、ストレプトマイシン25万単位/ml含有)に入れて、スーパークリーンベンチ上で、脂肪や繊維などの正常組織、及び壊死や血で汚れた組織を切除し、抗生物質を含有する生理食塩水で組織をキレイに洗浄し、組織消化酵素(膵酵素、コラゲナーゼ)で2〜3h消化し、組織塊を単細胞にして、銅網で濾過し、遠心して上清を捨て、RPMI 1640培養液を加えて、通気して細胞懸濁液として、カウントし細胞濃度を1×10
6/mlに調製した。
【0056】
細胞懸濁液を24穴培養プレートに接種し(1ml/穴)、細胞対照群(腫瘍細胞懸濁液)、ブランクフィルム対照群(腫瘍細胞懸濁液+ブランクフィルム)、実験群(腫瘍細胞懸濁液+化学療法薬フィルム)を設けた。実験群は各薬物を3つの穴に入れ、対照群は各穴に化学療法薬を入れなかった。実験群には単剤群と併用投与群があり(表6)、化学療法薬を併用投与する場合、化学療法案に準じて、対応する単剤フィルムを組み合わせて、同じ穴に入れた。設計案に準じて、培養プレートの各穴に対応するフィルムを加えると共に、各穴に細胞懸濁液を1ml/穴注入し、軽く振盪し、フィルムを溶解させた。37℃、5%二酸化炭素、飽和湿度で24時間培養した。微量遠心機を用いて回転数2000RPM、遠心時間5minで遠心して、懸濁細胞を収集し、培地を捨てた。細胞を冷PBSで2回洗浄した(2000RPM、遠心時間5minで細胞を収集)。400μlの1X Binding Bufferで細胞を懸濁さえて、濃度が約1×10
6/mlであった。細胞懸濁液に5μlのAnnexin V−FITC加えて、軽く混合し均一にした後に2〜8℃の遮光条件下で15分間培養した。10μlのPIを加えた後に軽く混合し均一にして、2〜8℃の遮光条件下で5分間培養した。1時間以内で、フローサイトメトリーを用いて、対照群と投与群の細胞の死亡と壊死の数を測定して、薬物の抑制率を算出した。
【0058】
(抑制率=〔(ブランクフィルム対照群生細胞−実験群生細胞)/ブランクフィルム対照群生細胞〕×100%;シクロホスファミドは肝ミクロソーム酵素で活性化する必要がある)
実施例14:
乳癌の治療ガイドラインに準じて化学療法薬を選択し、薬物の性質に応じて各薬物をフィルムに成膜した。各薬物の人体でのピーク血漿濃度を参考して、それぞれ化学療法薬フィルムに成膜すると共に、ブランクフィルムを製造した。実施例1〜実施例11を参照する。フィルム含有量の測定結果に基づき、1mlのピーク血漿濃度の化学療法薬を含有するように、各フィルムを分割し、ブランクフィルムの分割面積を1cm
2とした。
【0059】
1例の手術で切除した乳癌組織を無菌Hanks液に浸漬して、無壊死癌組織を少し採取し、1%のペニシリン−ストレプトマイシン溶液を含有するRPMI1640培地に入れて繰り返してリンスし、1〜2mm3の小片に裁断し、10倍量の0.25%トリプシン溶液及び0.02%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えて、37℃で、5minごとに1回振盪し、40min消化し、消化液を無血清1640培地に入れてリンスした後、少量の培養液を加えて、スポイトで繰り返して通気して、単細胞にして40メッシュの網で濾過して、RPMI l640培養系で1×10
6/mlの細胞懸濁液を調製した。
【0060】
細胞懸濁液を24穴培養プレートに接種し(1ml/穴)、細胞対照群(腫瘍細胞懸濁液)、ブランクフィルム対照群(腫瘍細胞懸濁液+ブランクフィルム)、実験群(腫瘍細胞懸濁液+化学療法薬フィルム)を設けた。実験群は各薬物を3つの穴に入れ、対照群は各穴に化学療法薬を入れなかった。化学療法薬を併用投与する場合、化学療法案に準じて、対応する単剤フィルムを組み合わせて、同じ穴に入れた。設計案に準じて、培養プレートの各穴に対応するフィルムと活性化酵素を加えると共に、各穴に細胞懸濁液を1ml/穴注入し、軽く振盪し、フィルムを溶解させた。培養プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターに配置して48h培養した後、各穴にMTT試薬20μlを加えて、軽く混合し均一にして、引き続き6〜12h培養した後、測定プレートを取り出して1000r/minで15min遠心し、各穴にDMSO 100μlを加えて、穴内の紫色結晶が全部溶解するまで十分浸透し、ELISAアナライザーを用いて570nmで各穴の吸光度(A)を読み取った。
【0061】
下記の式により、各化学療法薬の乳癌細胞に対する増殖抑制率を算出した。
乳癌細胞の増殖抑制率=(1−投与群細胞A値/ブランクフィルム対照群細胞A値)×100%
【0063】
(抑制率=〔(ブランクフィルム対照群生細胞−実験群生細胞)/ブランクフィルム対照群生細胞〕×100%)
【国際調査報告】