(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-507207(P2016-507207A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(54)【発明の名称】ロータ、リラクタンス電動機、およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20160208BHJP
H02K 1/24 20060101ALI20160208BHJP
H02K 19/14 20060101ALI20160208BHJP
【FI】
H02K19/10 A
H02K1/24 Z
H02K19/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-555718(P2015-555718)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2014051901
(87)【国際公開番号】WO2014118321
(87)【国際公開日】20140807
(31)【優先権主張番号】102013201694.8
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KSB AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン,マイケ
(72)【発明者】
【氏名】カノフスキー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ムンツ,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H619
【Fターム(参考)】
5H601AA24
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5H619PP02
5H619PP04
(57)【要約】
本発明は、円筒状の軟磁性要素を備えるリラクタンス電動機用ロータであって、該軟磁性要素が磁束バリアを形成するための切欠きを有するものにおいて、磁束バリアの全てまたはいくつかは、1つまたは複数のウエブによって分割されており、個々のウエブの輪郭は、ロータを半径方向において内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割する閉鎖線を形成しているロータに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の軟磁性要素を備えるリラクタンス電動機用ロータであって、前記軟磁性要素が磁束バリアを形成するための切欠きを有するものにおいて、
前記磁束バリアの全てまたはいくつかは、1つまたは複数のウエブによって分割されており、個々のウエブの経路は、前記ロータを半径方向において内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割する閉鎖線を形成していることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記ウエブの前記経路および前記外側ロータ領域における前記磁束バリアは、前記外側部分が始動かごの一部として機能するように形成されていることを特徴とする請求項に1記載のロータ。
【請求項3】
連続的な磁束バリアセグメントは、横断領域ではないことを特徴とする請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ウエブは、半径方向に完全にまたは部分的にしか配向されていないことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のロータ。
【請求項5】
前記ウエブの前記経路は、前記ロータを環状の内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割するか、または矩形状または四角形状の内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記内側領域は、前記ロータ周辺に部分的に隣接していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のロータ。
【請求項7】
前記ロータは、偶数の極を有していることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のロータ。
【請求項8】
1つまたは複数の磁束バリアは、少なくとも部分的に常磁性または反磁性の充填材料によって充填されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のロータ。
【請求項9】
前記充填材料は、金属酸化物および/またはアルムニウムおよび/またはアルミニウム合金および/または銅および/または銅合金および/またはプラスチックおよび/またはセラミックおよび/または織物および/または木材および/またはこれらの物質の混合物を含んでいることを特徴とする請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
前記充填材料は、鋳込みによってまたは固形材料として前記磁束バリア内に導入されていることを特徴とする請求項8または9に記載のロータ。
【請求項11】
前記内側領域および外側領域の前記磁束バリアは、互いに異なる充填材料によって充填されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載のロータ。
【請求項12】
前記外側ロータ領域の前記磁束バリアは、少なくとも部分的にアルミニウムまたはアルミニウム合金によって充填されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のロータ。
【請求項13】
1つまたは複数の短絡リングが、前記ロータの端面に配置されており、好ましくは、前記外側ロータ領域の前記磁束バリアの少なくとも2つを短絡するようになっていることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載のロータ。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の少なくとも1つのロータを備えるリラクタンス電動機、特に、同期リラクタンスモータであって、前記電動機は、好ましくは、周波数変換器を備えていないことを特徴とするリラクタンス電動機。
【請求項15】
請求項1〜13の何れか一項に記載のロータを製造するための方法であって、前記磁束バリアの少なくともいくつは、鋳込みによって、常磁性媒体または反磁性媒体が少なくとも部分的に充填され、充填されない前記ロータ領域には、軸方向力が付加されることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記軸方向力は、クランプ工具によって付加され、前記クランプ工具の支持面は、充填されない前記ロータ領域の幾何学的寸法に対応していることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状軟磁性要素を備えるリラクタンス電動機用ロータであって、該軟磁性要素が磁束バリアを形成するための切欠きを有している、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
同期リラクタンス電動機用ロータは、通常、ロータ軸と同軸に配置された円筒状軟磁性要素を備えている。少なくとも1つの極対または間隙対を形成するために、軟磁性要素は、透磁率が互いに異なる磁束伝導部および磁束遮断部を備えている。周知のように、高導磁率の部分は、ロータのd軸として特徴付けられており、比較的低導磁率の部分は、ロータのq軸として特徴付けられている。リラクタンスモータの最適な効率、従って、最適なトルク歩留まりは、d軸が最大限の導磁率を有し、q軸が最低限の導磁率を有するときにもたらされることになる。
【0003】
この前提条件は、多くの場合、空気によって充填される複数の切欠きをq軸に沿って軟磁性要素に形成し、これによって、q軸の方向における磁束を抑止し、その結果、透磁率を減少させることによって、満たされる。このように構成された軟磁性要素は、次いで、ロータシャフトに取り付けられ、軸方向および接線方向において固定されることになる。
【0004】
安定性の理由から、1つまたは複数の磁束バリアは、半径方向に配向された内側ウエブによって、2分割されるようになっている、このウエブ配置は、積層コアの強度を高め、特に、作動中のロータ安定性を最適化する。ウエブの幅は、透磁率への影響を可能な限り低くするために、狭くなっている。
【0005】
同期リラクタンスモータは、通常、周波数変換器に介して給電され、これによって、回転速度を0から作動速度まで上げることができ、作動中に調整することもできるようになっている。特に、モータを始動させるための回転速度を段階的に上げることができる。もし同期リラクタンスモータが対照的に固定グリッドで作動されるなら、非同期作動を可能にするために、始動かごを用いる必要がある。ロータの回転速度が同期回転速度に達した時点で、リラクタンストルクが支配的になり、回転磁界と同期して回転することになる。
【0006】
用いられる始動かごの構造は、標準的な非同期式電動機の場合の実施態様に対応するものである。かごは、端面において短絡する個々の導体バーからなっている。始動かごは、ロータの積層コア内の追加的な切欠きを介して、ロータに固定されている。しかし、この種のロータの構造および製造は、比較的複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の欠点が解消されるようにリラクタンス電動機用ロータをさらに発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴によるリラクタンス電動機用ロータによって達成されることになる。このロータのさらに有利な実施形態は、従属請求項において規定されている。
【0009】
請求項1によれば、円筒状軟磁性要素を備えるリラクタンス電動機用ロータであって、該軟磁性要素が磁束バリアを形成するための1つまたは複数の切欠きを有している、ロータが提案されている。
【0010】
本発明によるロータの好ましい実施形態では、軟磁性要素は、積層コアとして実施されている。積層コアは、先行技術から知られているように、ロータの軸方向において互いに上下に積層され、かつ互いに絶縁された複数の薄板から構成されている。この設計によって、軟磁性要素内の渦電流の生成が防がれることになる。
【0011】
本発明によれば、磁束バリアの全てまたはいくつかは、1つまたは複数のウエブ(橋絡部)によって分割されている。ウエブの配置は、一方では、特に半径方向における追加的な安定性をロータにもたらす目的を有している、他方では、ロータは、本発明によって、内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割されている。個々のウエブの経路は、閉鎖線をなし、半径方向において、ロータを内側ロータ領域と外側ロータ領域とに分割している。
【0012】
配置された磁束バリアは、理想的には、横断領域路を有しないようになっている。すなわち、理想的には、磁束バリアのいずれも、内側ロータ領域と外側ロータ領域との間の境界線を横断しないようになっている。横断領域路が禁止されているには、一体的な磁束バリアセグメントを確保することに基づいている。それに反して、ウエブによって分割された磁束バリアは、横断領域をもたらすように配置されることになる。
【0013】
内側領域と外側領域へのロータの分離は、ロータの始動挙動に影響をもたらし、かつ該始動挙動を最適化する。リラクタンス電動機にこのロータを用いるとき、周波数変換器の使用を省くことができる。すなわち、本発明によるロータ構成は、一定周波数の3相電流が印加されたとき、非同期ロータ始動を可能にする。
【0014】
特に、外側ロータ領域の実施形態は、一種の始動かごをもたらすために用いられる。この始動かごの効果は、標準的な非同期式電動機用始動かごの効果に実質的に対応する。始動かごをもたらすためにこの種のロータにこれまで必要とされていた追加的な対策は、不要である。
【0015】
本発明によるロータの製作、加工、および作動は、著しく簡素化される。特に、始動かごの少なくとも1つの導体バーが、外側ロータ領域によって複製されることになる。本発明によれば、外側ロータ領域に位置する磁束バリアの一部が、始動かごの一部を形成する。本発明によれば、このように複製された始動かごの各部分は、短絡リングを除けば、ロータ能動部の一部ではない磁束バリアの一部である。
【0016】
従って、本発明によるロータ薄板区域を利用すれば、同一のロータ薄板を用いることによって、用途に応じて、固定グリッドで始動する始動かごを備える同期リラクタンス電動機、および始動かごを備えておらず周波数変換器によって作動される同期リラクタンス電動機の両方を製造することが可能になる。
【0017】
有利な実施形態では、ウエブは、全くまたは部分的にしか半径方向に配向されていない。ロータ領域は、ウエブの適切な配向によって任意に分割可能である。
【0018】
特に、ウエブ導路の形態または特定の経路は、変更可能である。円経路のウエブ導路は、好都合であり、この場合、環状内側領域および/または外側領域が生じることになる。
【0019】
矩形または四角形の内側ロータ領域が生じる代替的なウエブ導路も考えられる。外側ロータ領域は、外側ロータ面によって形成される。加えて、内側領域がロータの外周に部分的に接近または隣接するようにすることもできる。内側ロータ領域は、理想的には、実質的に円状の形状を有しており、特にq軸の領域において、ロータの外周に部分的に隣接するようになっている。
【0020】
ロータは、有利には、偶数の極、特に、2つ、4つ、6つ、または8つの極を有している。個々の磁束バリアの配置は、米国特許第5,818,140号明細書の技術的示唆に実質的に対応している。この文献は、この点に関して明示的に参照されたい。米国特許第5,818,140号のロータは、本発明のロータと同様、磁束バリアを単に電磁気的に有効な要素として有している。しかし、これらの磁束バリアは、全体的または部分的に永久磁石によって充填されてもよい。いずれにしても、このようなロータは、どのような追加的な電磁気的に有効な要素も有しない純粋な磁束バリア区域を有している。これらの磁束バリアは、各々、実質的に円弧状に延在しており、ロータの極セグメントのq軸に対して対称になっている。しかし、米国特許第5,818,140号に開示されている技術的示唆と比較して、本発明による主題は、本発明によるウエブ導路がロータを外側ロータ領域と内側ロータ領域とに分割する点において異なっている。
【0021】
1つまたは複数の磁束バリアは、少なくとも部分的に常磁性または反磁性の充填材料によって充填されてもよい。個々の磁束バリアへの空気の充填は、従来から行なわれている。しかし、1つまたは複数の磁束バリアが、空気と比較して良好な常時性または反磁性の特性を有する適切な材料によって充填されたとき、改良されたロータ特性が得られることになる。
【0022】
適切な材料の例として、例えば、金属酸化物および/またはアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金および/または銅および/または銅合金および/またはプラスチックおよび/またはセラミックおよび/または織物および/または木材が挙げられる。これらの明記された成分の2種以上の混合物も考えられる。
【0023】
両方のロータ領域、すなわち、両方のロータ領域の磁束バリアは、理想的には、適切な充填材料によって充填されている。しかし、これは、本発明によるロータの使用において必ずしも必要な条件ではないことに留意されたい。内側領域のみまたは外側領域のみが対応する充填材料によって充填されることも考えられる。
【0024】
2つのロータ領域は、必ずしも同一の充填物質によって充填される必要がない。外側ロータ領域の1つまたは複数の磁束バリアは、特に好ましくは、アルミニウムまたは充填材料含有アルミニウム合金によって充填されるようになっている。外側磁束バリアのこの種の充填は、始動かごの従来の導電バーが複製されるのに十分な導電率を有している。
【0025】
特に、外側ロータ領域の1つまたは複数の磁束バリアは、ここでは、導電性および非導磁性の充填材料、特に、アルミニウムまたは充填材料含有アルミニウム合金によって充填されており、内側ロータ領域の少なくとも1つの磁束バリア、好ましくは、複数の磁束バリア、理想的には、全ての磁束バリアは、この充填材料によって充填されないようになっている。ここでは、内側ロータ領域の1つまたは複数の磁束バリアは、まったく充填されなくてもよく、すなわち、空気を含んでいてもよく、または他の充填材料、具体的には、非導電性および非導磁性の充填材料、例えば、プラスチック、セラミック、織物、または木材およびこれらの任意の混合物によって充填されてもよい。
【0026】
さらなる実施形態によれば、内側ロータ領域の1つまたは複数の磁束バリアは、全体的または部分的に常磁性材料によって充填されている。これによって、電動機の効率および力率が改良されることになる。
【0027】
充填材料は、ロータ積層コア内の対応する切欠き内に挿入される固形材料として導入されてもよい。代替的に、1つまたは複数の磁束バリアは、鋳込み法、特に、押出鋳込み法によって充填されてもよい。
【0028】
また、本発明は、本発明による少なくとも1つのロータまたは本発明による有利な実施形態を有するリラクタンス電動機、特に、同期リラクタンス電動機にさらに関する。本発明によるリラクタンス電動機の利点および特性は、本発明によるロータの利点および特性または本発明によるロータの有利な実施形態の1つの利点および特性に明瞭に対応している。この理由から、重複する説明は、省略することにする。
【0029】
本発明によって用いられるロータの特性は、リラクタンス電動機が、周波数変換器を用いることなく、固定された3相回路網によって作動可能であることを意味している。外側ロータ領域の実施形態は、始動かごの構成に役立ち、これによって、ロータを周波数変換器を用いることなく始動させ、次いで、同期回転運動を開始させることができる。一例を挙げると、1つまたは複数の導体ロッドは、本発明による外側ロータ領域を介して、複製されることになる。具体的には、外側ロータ領域は、ロータの端面に配置された短絡リングと組み合わされ、始動かごを形成することになる。
【0030】
また、本発明は、本発明によるロータまたは本発明の有利な実施形態を製造するための方法にさらに関する。本発明によれば、ロータコア内の磁束バリアの少なくともいくつかは、鋳込みによって、常時性媒体および/または反磁性媒体によって少なくとも部分的に充填されるようになっている。製造されるロータは、内側ロータ領域および外側ロータ領域を有している。
【0031】
さらに、本発明によれば、充填されるべきではないロータ領域に軸方向力が付加されるようになっている。その結果、充填されるべきロータ領域の磁束バリアの充填による充填されるべきではないロータ領域の磁束バリア内への充填媒体の浸透が、阻止されることになる。一例を挙げれば、外側ロータ領域の磁束バリアは、常時性媒体または反磁性媒体によって充填されるようになっている。この場合、軸方向力、すなわち、ロータの回転軸の方向における力が、内側ロータ領域に付加され、これによって、鋳込まれた材料は、内側ロータ領域の磁束バリア内に侵入することができないことになる。
【0032】
代替的に、互いに異なる材料による磁束バリアの充填を可能にするために、軸方向力が内側ロータ領域および外側ロータ領域に付加されてもよい。
【0033】
円筒状ロータ設計の端面に片側または両側から軸方向力を付加しかつ作用させるために、好ましくは、適切なクランプ工具が用いられるようになっている。クランプ工具の支持面は、理想的には、充填されるべきではないロータ領域の幾何学的寸法に概略的または正確に対応するようになっている。
【0034】
もし互いに異なる充填材料が内側および外側ロータ領域の磁束バリア内に導入されるのであれば、好ましくは、互いに異なるクランプ工具が用いられるとよい。この場合、これらのクランプ工具は、各々、内側ロータ領域に軸方向力を付加し、次いで、外側ロータ領域に軸方向力を付加することができる。クランプ工具の支持面は、理想的には、内側および外側ロータ領域の幾何学的寸法に対応しているとよい。
【0035】
以下、図面に示されている例示的な実施形態に基づき、本発明のさらなる利点および特性についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるロータのロータ薄板を示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるロータのロータ薄板を示す図である。
【
図3】本発明のさらなる実施形態によるロータのロータ薄板を示す図である。
【
図4.5】永久磁石を含む本発明のさらなる実施形態によるロータのロータ薄板を示す図である。
【
図6】本発明のさらなる実施形態によるロータのロータ薄板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1〜3は、種々のロータ薄板1の平面図を示している。これらの薄板1は、本発明によるロータを構成するために、軸方向、すなわち、回転軸6に沿って互いに上下に積層されている。説明を簡単にするために、ステータは、示されていない。ロータ薄板1は、複数の切欠き3,4,5を有している。切欠き3,4,5は、磁束バリアの機能を果たし、これらの切欠きの配置によって、4極ロータが形成されており、この4極モータの磁束は、磁束バリア3,4、5を有する領域において抑止されている。高導磁率の領域は、一般的に、d軸として特徴付けられており、低導磁率の領域は、一般的に、q軸として特徴付けられている。
【0038】
組み立てられた積層コアは、ロータシャフト(図示せず)に取り付けられることになる。
【0039】
個々の磁束バリア3,4,5の配置は、米国特許第5,818,140号明細書の技術的示唆に実質的に対応している。この点に関して、この文献を明示的に参照されたい。しかし、本発明によるロータ構成は、個々のウエブ(橋絡部)10の配置において、この技術的示唆と異なっている。個々のウエブ10によって、個々の磁束バリア3,4,5が、互いに異なる部分に分割されている。すなわち、円の一部である各扇形内の2つの内側磁束バリア3,4のいずれもが、2つのウエブ10によって分割されていることが特徴になっている。しかし、内側磁束バリアの数は、2つに制限されるものではない。本発明は、内側領域に2つよりも多いかまたは少ない数の磁束バリアを有する実施形態も含んでいる。2つの外側磁束バリア5は、ウエブを有していない。
【0040】
個々のウエブ10の配置は、ロータ作動中のコア安定性を確実に改良するのみならず、ロータ薄板1を内側部分領域20と外側部分領域30とに分割している。この領域分割を説明するために、内側および外側ロータ領域20,30間の境界路を表す破線円40が示されている。従って、内側ロータリング20および外側ロータリング30は、個々のウエブ10の円路によって生じることになる。
【0041】
内側ウエブ10を含む外側磁束バリア5の幾何学的形状は、端面に配置可能な2つの短絡リング(図示せず)と共に始動かごを形成するようになっている。これらの短絡リングは、例えば、非同期電動機の始動かごの短絡リングと変わらない形態にあるものとすることができる。
【0042】
始動かごの追加的な対策、例えば、挿入されることが多い金属バーは、ここでは、省略することができる。
【0043】
このように配置されたウエブ10によって生じた薄板1の2つの別々の領域20,30は、各々、充填材料によって充填可能になっている。両領域20,30の磁束バリアに対して、必ずしも同様の充填物質が用いられる必要がない。むしろ、互いに異なる充填材料を用いることによって、ロータの運転特性を選択的に最適化することができる。
【0044】
金属酸化物、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、プラスチック、セラミック、織物、木材、およびこれらの任意の混合物が、適切な材料として明示することができる。しかし、あらゆる種類の常磁性または反磁性物質が、原理的に適合している。
【0045】
アルミニウムまたはアルミニウム合金が外側領域30の磁束バリア5内に導入されると最も有利である。この場合、良好な導電率に起因して、始動かごを形成するための個々の導体バーが、複製されることになる。導体バーを形成する外側領域30のこれらの磁束バリア5は、ロータの端面に配置された短絡リングによって短絡されるようになっている。
【0046】
これらの充填材料は、種々の方法によって、磁束バリア3,4,5内に導入されることが可能である。1つの可能性として、鋳込みによる導入が挙げられる。勿論、充填材料は、切欠き3,4,5内に固形材料として挿入されてもよい。
【0047】
充填材料を鋳込みによって充填した後、軸方向力がロータ薄板1に付加され、これによって、充填されるべきではないロータ領域が圧縮されるようになっている。従って、充填されるべきロータ領域の磁束バリア内に鋳込まれた充填材料は、充填されるべきではないロータ領域の磁束バリアに浸透することができないことになる。
【0048】
ロータ薄板1の外側領域30に対する適切な充填材料の選択によって、同期リラクタンスモータの始動挙動が最適化される。モータは、理想的には、周波数変換器を用いることなく作動することができる。何故なら、外側領域30が一種の始動かごとして機能し、この始動かごの作用モードは、3相非同期電動機用の周知の始動かごの機能に匹敵するからである。
【0049】
軸方向力をロータコアに付加するために、クランプ工具が用いられる。クランプ工具は、ウエブ導路に適合する幾何学的形状、例えば、ロータ端面に接触する円形または正方形プレートを有している。幾何学的な適合によって、所望の軸方向力を充填されるべきではないロータ面に導入するためのクランプ工具の最適な係合面が確実に得られることになる。理想的には、クランプ工具は、ピーク応力およびその結果として生じる変形を避けるために、準備された薄板1の仕上げ領域を利用するべきである。
【0050】
ロータ薄板1の代替的な実施形態が、
図2,3から推察されるだろう。
図2は、正方形のウエブ導路を示しており、このウエブ導路によって、正方形の内側ロータ領域20が形成されている。外側ロータ領域30は、正方形のロータ領域20のコーナを介して相互接続された個々の小円セグメント31,32,33,34によって形成されている。破線40は、ロータ領域20,30間の境界路を特徴付けている。
【0051】
図3は、さらなる代替例を示している。この代替例では、ウエブ導路は、実質的に円形の内側ロータ領域20を形成している。ただし、内側ロータ領域20は、個々の円部分においてロータの外周に至るまで可能な限り遠くに突出している。ここでも、破線40は、ロータ領域20,30間の境界路を特徴付けている。
図3から分かるように、点50,51,52,53におけるウエブ導路は、通常の円形状から逸脱し、ロータ薄板1の外周に至るまで可能な限り遠くに延在している。
【0052】
加えて、
図2,3の例示的な実施形態における全ての磁束バリアが、2つのウエブによって、3つの磁束バリアセグメントに分割されている。
【0053】
図4は、内側磁束バリアのいくつが永久磁石または永久磁気充填材料60によって充填されている、ロータ薄板1を示している。
【0054】
図5は、内側磁束バリアのいくつかが、追加ウエブ61によって分割され、永久磁石または永久磁気充填材料60によって部分的に充填されている、ロータ薄板1を示している。
【0055】
図6は、
図3と同様のロータ薄板1を示しているが、このロータ薄板1では、ロータ周辺に配置された磁束バリアは、各々、2つに分割されている。
図6では、ウエブ導路は、点50,51,52,53において、通常の円形状から逸脱しており、ロータ薄板1の外周に至るまで可能な限り遠くに延在している。
【国際調査報告】