特表2016-510138(P2016-510138A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイションの特許一覧

特表2016-510138手術シミュレーションシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-510138(P2016-510138A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(54)【発明の名称】手術シミュレーションシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20160307BHJP
   A61B 90/00 20160101ALI20160307BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20160307BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20160307BHJP
【FI】
   G09B23/30
   A61B19/00 502
   A61B17/39
   G09B19/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-560391(P2015-560391)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(85)【翻訳文提出日】2015年8月21日
(86)【国際出願番号】US2014019840
(87)【国際公開番号】WO2014134597
(87)【国際公開日】20140904
(31)【優先権主張番号】61/771,316
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
(72)【発明者】
【氏名】ボラーニョス エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】チェハイェブ サム
【テーマコード(参考)】
2C032
4C160
【Fターム(参考)】
2C032CA03
4C160KK01
4C160KK70
(57)【要約】
手術シミュレーションシステムを提供する。システムは、臓器トレイのベース上に置かれた少なくとも1つの模擬身体臓器と、模擬身体臓器の上に置かれた少なくとも1つのカバー層とを含む。模擬身体臓器及びカバー層の少なくとも一方は、訓練環境内で電気手術を模擬するために電流印加の下で作動可能に切断可能な導電性ゲルを含む。訓練環境は、練習生による直接観察から部分的に遮蔽される内部空洞を定めるためにベースに接続されてそこから離間した上部カバーを含む。トレイ、模擬身体臓器、及びカバー層は、腹腔鏡外科手順の練習に向けて内部空洞の内側に置かれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術シミュレーションシステムであって、
周囲と少なくとも1つの直立壁によって形成された1つ又はそれよりも多くの解剖学的レセプタクル部分とが、実質的に協動し、かつ該1つ又はそれよりも多くのレセプタクル部分内に位置付けられた1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器とサイズ及び形状において適合するように構成されたベースを有するトレイと、
前記1つ又はそれよりも多くのレセプタクル部分内で前記ベース上の置かれた1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器と、
前記1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上に置かれ、少なくとも1つの位置で該1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器に取り付けられている少なくとも1つのカバー層と、を有し、
前記1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器及びカバー層のうちの少なくとも一方が、訓練環境内で電気手術を模擬するために電流の印加の下で作動可能に切断可能な導電性ゲルを備えている、手術シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記カバー層は、前記トレイに取り付けられる請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項3】
システムが、2つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器を含み、前記カバー層は、前記トレイ上に位置付けられた該模擬身体臓器の全ての上に置かれる請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記導電性ゲルは、2つの非導電性区域の間に位置付けられる請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記導電性ゲルは、電気手術動作を練習するために現実の手術において遭遇する経路を模擬するように構成されている予め決められた経路を非導電性領域間に定める請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記導電性ゲルは、隣接する非導電性区域に接触している請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項7】
前記導電性ゲルは、前記カバー層内の層であり、該導電性ゲル層は、エラストマー材料の2つの外側層の間に挟まれており、該2つの外側層は、電気手術を模擬するための電流の印加の下で作動可能に切断可能ではない請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項8】
非導電性エラストマー材料の前記2つの層は、それらの間に位置付けられた前記導電性ゲル層に水分を保持するように構成される請求項7に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項9】
前記トレイ上の前記模擬身体臓器は、模擬された腎臓、尿管、大動脈、大静脈、及び肝血管を含み、該トレイの前記周囲の少なくとも一部分に取り付けられている前記カバー層は、該模擬身体臓器の全てを覆うことを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項10】
前記トレイ上の前記模擬身体臓器は、模擬された横断結腸、胃、下行結腸の一部分、上行結腸の一部分、及び胆嚢を含み、前記カバー層は、該模擬身体臓器の全てを覆っている請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項11】
前記カバー層は、下行結腸にかつ肝臓に取り付けられる請求項10に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項12】
前記カバー層は、約0.010から0.05インチの厚みである請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項13】
前記カバー層は、透明又は半透明である請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項14】
前記カバー層は、エラストマー材料で作られる請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの模擬身体臓器は、エラストマー材料で作られる請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項16】
前記訓練の環境は、手術訓練デバイスであり、この手術訓練デバイスは、
ベースと、
練習生による直接観察から少なくとも部分的に遮蔽される内部空洞を上部カバーと前記ベースの間に定めるために該ベースに接続されてそこから離間した上部カバーと、を有し、
前記トレイ、模擬身体臓器、及びカバー層が、前記内部空洞の内側に置かれている請求項1に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項17】
電気手術動作の練習のための手術シミュレーションシステムであって、
外側層に隣接してそれと接触している内側層であって、該内側層が、発泡体材料を含み、該外側層が、弾性ヒドロゲルを含み、該内側層が、内部空洞を定め、該内側層及び該外側層の両方が、子宮の少なくとも一部分の形状を定める前記内側層、
を含む模擬組織構造と、
前記内側層に隣接して位置付けられるか又はそこに埋め込まれ、前記模擬組織構造から取外し可能である模擬病変部と、を有し、
前記弾性ヒドロゲルは、それが訓練環境内で電気手術を模擬するための電流の印加の下で作動可能に切断可能であるように導電性である手術シミュレーションシステム。
【請求項18】
第1の端部と第2の端部を有し、前記外側層から外向きに延びて卵管の形状を定めるように構成され、電気手術を模擬するために電流の印加の下で作動可能に切断可能な導電性ヒドロゲル材料を含む少なくとも1つのチューブを更に含む請求項17に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項19】
前記模擬病変部は、シリコーン及び未処理ヒュームド二酸化珪素で作られる請求項17に記載の手術シミュレーションシステム。
【請求項20】
1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器を備えたベースを有する臓器トレイを与える段階であって、カバー層が、該1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上に置かれ、該カバー層が、非導電材料の第1の平面層と導電性ゲルの第2の平面層とを含み、該カバー層が、該第2の層が該1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器に隣接するように該1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上に置かれる前記与える段階と、
前記臓器トレイを該臓器トレイが練習生による直接の視覚的観察から少なくとも部分的に遮蔽されるように手術訓練デバイスの内部空洞内に置く段階であって、該手術訓練デバイスが、前記ベースから離間した上部カバーを有し、該内部空洞が、該上部カバー及びベース間に定められ、該手術訓練デバイスが、該上部カバーに開口又は貫通可能模擬組織領域を含む前記置く段階と、
前記内部空洞のビデオを取り込むように構成されたスコープを前記開口又は貫通可能模擬組織領域を通して前記訓練デバイスの該内部空洞内に挿入する段階と、
少なくとも1つの器具を前記開口又は貫通可能模擬組織領域を通して前記訓練デバイスの前記内部空洞内に挿入する段階と、
前記少なくとも1つの器具を用いて前記第1の層を前記第2の層から分離する段階と、
を有する方法。
【請求項21】
少なくとも1つの器具を挿入する前記段階は、該器具の遠位端で電流を送出するように構成された少なくとも1つの器具を挿入する段階を有し、
方法が、更に、電気手術動作を模擬するために前記器具からの電流の印加を用いて前記第2の層を切断する段階を有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記カバー層は、前記第2の層が前記第1及び第3の層の間に位置付けられるように該第2の層に接続したシリコーン材料の第3の層を更に含む請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる2013年3月1日出願の「高度手術シミュレーション構成及び方法(Advanced surgical simulation constructions and methods)」という名称の米国特許仮出願第61/771,316号に対する優先権及びその利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、一般的に手術訓練ツールに関し、特に、様々な外科技術及び手順を教育かつ練習するための臓器又は組織を模擬する解剖学的モデルに関する。
【背景技術】
【0003】
新しい外科技術を学ぶ医学生のみならず、経験豊富な医者であっても、人間の患者に対して手術を実施する資格が与えられる前には、広範囲にわたる訓練を受けなければならない。訓練は、様々な組織タイプを切断、貫通、圧着、握持、ステープル吻合、及び縫合するための様々な医療デバイスを用いて適正な技術を教育しなければならない。訓練生が遭遇する場合がある可能性の範囲は広大である。例えば、異なる臓器、患者の解剖学的構造、及び疾患が提示される。様々な組織層の厚み及び整合性は、身体の1つの部分から次の部分へ、更に1人の患者から別の患者に変化することにもなる。従って、必要とされる技術及び器具の技能も変化することになる。更に、訓練生は、容易にアクセス可能な観血手術の位置及び腹腔鏡を用いてアクセスする位置で技術を練習しなければならない。
【0004】
多くの教育補助器、訓練指導者、シミュレータ、及びモデル臓器が、手術訓練の1つ又はそれよりも多くの態様に対して利用可能である。しかし、腫瘍又は他の組織構造の除去を含む内視鏡、腹腔鏡、経肛門、低侵襲性、又は他の外科手順において遭遇する可能性が高いモデル臓器又は模擬組織要素に対する必要性が存在する。例えば、腫瘍又は他の望ましくない組織を除去し、更に同じ外科手順の一部として縫合又はステープル吻合によってターゲット区域の閉鎖が続く反復可能な練習のための現実的なモデル臓器に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第13/248,449号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を踏まえて、本発明の目的は、手術中に遭遇するそのような特定の状況を現実的に模擬する手術訓練デバイスを提供することである。本発明の医療訓練及びシミュレーションシステム及びデバイスは、生の外科手順において実在する状況をエミュレートする視覚的、触覚的、及び技術的な特質をユーザに提供する。エミュレーションは、手術シミュレーションにおいて実際の手術の条件又は効果と等しくしようとするか又はそれを凌ごうとする手法である。
【0007】
訓練を簡素化し、手術訓練及び練習における解剖のための死体の使用を最少にするために、本発明は、手術条件下で手術器具の動作に応じて人間又は動物の組織の特質、反応、及び特性をエミュレートするように配合、構成、かつ組み合わされた合成材料の使用を企図する。そのような条件及び動作は、切開、貫通、解剖、閉塞、吻合、接近、及び切除などを含むことができる。
【0008】
多くの外科手順は、電気手術メス、電気手術プローブ、電気手術剪刀、電気手術把持器、及び電気手術解剖器などのようなエネルギベースの手術器具の使用を伴っている。電気手術は、一般的に、切断又は破壊の目的での組織に高電圧高周波電気エネルギの印加であると考えられる。電気焼灼は、電流が、組織を切断又は破壊するのに組織に印加するほど十分に高い抵抗加熱を器具内に発生させるタイプの電気手術である。更に、多くの手順が、高周波音に基づくエネルギデバイスを利用する。これらの器具は、ほぼ労力を要さない切断及び解剖、並びにほぼ瞬時の熱止血の利便性を外科医に提供する。そのような器具は、外科学会においては標準になっており、普通に使用されている。
【0009】
あらゆる模造臓器、臓器シミュレーションモジュール、又は訓練モジュールは、エネルギベースの外科器具の使用下で訓練を行う機能を含まなければならないことは容易に明らかである。既存の訓練モジュール又はシミュレーションモジュールのうちの多くは、採取された動物組織、食塩水溶液で湿潤又は浸潤しなければならない合成材料、又は導電性を有し、エネルギベースの外科技術訓練に適するように埋め込み金属粒子を有する材料の使用を必要とする。シリコーンゴム、ラテックス、ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンなどのような最も好ましい合成材料は、エネルギベースの手術器具及び手術デバイスに対してこれらの器具を実際の外科手順に対して使用するようにユーザを訓練するという要求を満たすようには応えていない。従って、本発明の一態様は、一部が誘電特性を有し、一部が導電性を有するが、それにも関わらず自然な組織の物理的特質と、エネルギベースの手術器具及び手術デバイスの作用とを模倣する合成材料の組合せを提供することである。これに加えて、本発明は、様々な身体の部位、導管、臓器、嚢腫、及び腫瘍などを構成するための本物類似の合成サンプルを与える方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様により、手術シミュレーションシステムを提供する。手術シミュレーションシステムは、ベースを有するトレイを含み、周囲と少なくとも1つの直立壁によって形成された1つ又はそれよりも多くの解剖学的レセプタクル部分とが、実質的に協動し、かつ1つ又はそれよりも多くのレセプタクル部分内に位置付けられた1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器とサイズ及び形状において適合するように構成される。システムは、1つ又はそれよりも多くのレセプタクル部分内のベース上に置かれた1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器を含む。1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上には、少なくとも1つのカバー層が置かれる。カバー層は、1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器に少なくとも1つの位置で取り付けられる。訓練環境において電気手術を模擬するために、1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器及びカバー層のうちの少なくとも1つは、電流印加の下で作動可能に切断可能な導電性ゲルを含む。
【0011】
本発明の別の態様により、電気手術動作の練習のための手術シミュレーションシステムを提供する。手術シミュレーションシステムは、外側層に隣接してそれと接触状態にある内側層を含む模擬組織構造を含む。内側層は、発泡体材料を含み、外側層は、弾性ヒドロゲルを含む。内側層は、内部空洞を定め、内側層と外側層の両方は、子宮の少なくとも一部分の形状を定める。手術シミュレーションシステムはまた、内側層に隣接して位置付けられるか又はそこに埋め込まれる模擬病変部を含む。模擬病変部は、模擬組織構造から取外し可能である。弾性ヒドロゲルは、それが、訓練環境において電気手術を模擬するために電流印加の下で作動可能に切断可能であるように導電性である。
【0012】
本発明の別の態様により、手術シミュレーションのための方法を提供する。本方法は、1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器が上に置かれたベースを有する臓器トレイを与える段階を含む。1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上にカバー層が置かれる。カバー層は、非導電材料の第1の平面層と導電性ゲルの第2の平面層とを含む。カバー層は、第2の層が1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器に隣接するように1つ又はそれよりも多くの模擬身体臓器の上に置かれる。臓器トレイは、臓器トレイが練習生による直接の視覚的観察から少なくとも部分的に遮蔽されるように手術訓練デバイスの内部空洞内に置かれる。手術訓練デバイスは、ベースから離間した上部カバーを含む。内部空洞は、上部カバーとベースの間に定められる。手術訓練デバイスは、上部カバー内に開口又は貫通可能模擬組織領域を含む。本方法は、開口又は貫通可能模擬組織領域を通して訓練デバイスの内部空洞内に内部空洞のビデオを取り込むように構成されたスコープを挿入する段階を更に含む。開口又は貫通可能模擬組織領域を通して訓練デバイスの内部空洞内に少なくとも1つの器具が挿入される。本方法は、少なくとも1つの器具を用いて第1の層を第2の層から分離する段階を含む。
【0013】
本発明の一態様により、模擬腫瘍を作る方法を提供する。腫瘍は、未硬化シリコーンゴムを未処理ヒュームド二酸化珪素と混合することによって作られる。混合物は、次に、成形され、硬化されて模擬腫瘍を形成する。
【0014】
本発明の一態様により、手術訓練のための模擬組織構造を提供する。構造は、臓器トレイと、トレイ上に置かれた模擬臓器と、カバー層とを含む。カバー層は、シリコーンゴムの半透明シートを含む。
【0015】
本発明の一態様により、手術訓練のための模擬組織構造を提供する。構造は、臓器トレイと、トレイ上に置かれた模擬臓器と、カバー層とを含む。カバー層は、シリコーンゴムの半透明シートと、ヒドロゲル材料の半透明シートとを含む。
【0016】
本発明の一態様により、模擬組織を含有するトレイのためのカバー層を形成する方法は、プラチナ又は錫のような導電材料を液体シリコーン中に混合する段階を含む。混合物は、ポリエチレン発泡体の第1の層上に延展される。シリコーン層の上にポリエチレン発泡体の第2の層が置かれる。発泡体の発泡体層間のシリコーン材料をカレンダー製作するために、発泡体の第2の層の面の上でテクスチャ付きローラ又は箔押デバイスが移動される。シリコーン層は、発泡体層の間から除去される。
【0017】
本発明の別の態様により、子宮の模擬臓器モデルを提供する。モデルは、軟質シリコーンの外側シェルと発泡体の内側層とを含み、外側シェルと内側層の間に模擬腫瘍が位置付けられる。
【0018】
本発明の別の態様により、子宮の模擬臓器モデルを提供する。モデルは、軟質シリコーンの外側シェルと発泡体の内側層とを含み、内側発泡体層の内側に模擬腫瘍が位置付けられる。
【0019】
本発明の別の態様により、子宮の模擬臓器モデルを提供する。モデルは、導電材料を含有するシリコーンの卵管を含む。卵管は、第1の端部と第2の端部の間を延びる内腔と、第2の端部の近くに第2の端部で漏斗形状に遷移し、漏斗部分内に複数の軸線方向切断部を有する球根状部分とを含む。内腔の少なくとも一部分は、軟質繊維性材料を含む。
【0020】
本発明の別の態様により、子宮の模擬臓器モデルを提供する。モデルは、導電材料を含有するシリコーンの卵管を含む。卵管は、第1の端部と第2の端部の間で延びる内腔と、第2の端部の近くに第2の端部で漏斗形状に遷移し、漏斗部分内に複数の軸線方向切断部を有する球根状部分とを含む。内腔の少なくとも一部分は、軟質繊維性材料を含み、球根状部分の内側には模擬子宮外妊娠部が置かれる。模擬子宮外妊娠部は、シリコーンゴムと未処理ヒュームド二酸化珪素とで作られる。
【0021】
本発明の別の態様により、胃の模擬臓器モデルを提供する。モデルは、近位開口部と遠位開口部を有する中空胃形状嚢を含む。モデルは、予め決められた経路に沿って胃の少なくとも一部分の切除を練習するための予め決められた経路を含む。予め決められた経路は、互いに接合する胃モデルの2つの対向する内面の部分によって定められる。
【0022】
本発明の別の態様により、モデル臓器を受け入れるためのトレイを提供する。トレイは、底面と、少なくとも1つの臓器を受け入れるための少なくとも1つのレセプタクル部分とを含む。少なくとも1つのレセプタクル部分は、レセプタクル部分の中に置かれることになる臓器の高さ、形状、及びサイズに実質的に適合する高さ及び形状を有する直立壁によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるモデル臓器を有する手術訓練デバイスの側面図である。
図2A】本発明による模擬組織構造の側面断面図である。
図2B】本発明による腫瘍が切除された模擬組織構造の側面断面図である。
図2C】本発明による開いた縫合糸を有する模擬組織構造の側面断面図である。
図2D】本発明による閉じた縫合糸を有する模擬組織構造の側面断面図である。
図3A】本発明による円形欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図3B】本発明による細長欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図3C】本発明による無定形欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図3D】本発明による2部分欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図3E】本発明による多部分欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図3F】本発明による複数の欠陥を有する欠陥層の上面図である。
図4】本発明による模擬組織構造の上面図である。
図5】本発明による模擬組織構造の側面断面図である。
図6A】本発明によるモジュラー組織構造及び支持体の斜視図である。
図6B】本発明によるモジュラー組織構造及び支持体の斜視図である。
図7】本発明による人間の子宮を模倣するように構成された模擬組織構造の断面図である。
図8】本発明によるモジュラー組織構造の上面図である。
図9】本発明によるモジュラー組織構造の側面図である。
図10A】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図10B】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図11A】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図11B】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図12】本発明による縫合針及び模擬組織構造の斜視図である。
図13】本発明により腫瘍配置を有する女性の子宮の解剖学的構造のモデルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
腹部のような患者の本体を模倣するように構成された手術訓練デバイス10を図1に示している。手術訓練デバイス10は、モデル臓器、模擬組織、又は生組織20を受け入れるためのユーザからは実質的に掩蔽された模擬体腔18を提供する。体腔18は、その中に置かれることを見ることができる組織又は臓器20に対する外科技術を練習するためにデバイスを用いてユーザが貫通を行う組織模擬領域19を通してアクセスされる。体腔18を組織模擬領域19を通してアクセス可能であるように示すが、これに代えて、2011年9月29日に出願され、全体が引用によって本明細書に組み込まれている「携帯腹腔鏡訓練機(Portable Laparoscopic Trainer)」という名称の米国特許出願第13/248,449号明細書に記載されているように、体腔18にアクセスするための手補助アクセスデバイス又は単一サイトポートデバイスを使用することができる。手術訓練デバイス10は、腹腔鏡外科手順又は他の低侵襲性外科手順を練習するのに特に良く適している。
【0025】
手術訓練デバイス10は、ベース12と、ベース12に接続され、そこから離間した上部カバー14とを含み、上部カバー14とベース12の間に内部体腔18を定める。少なくとも1つの脚16が、上部カバー14とベース12とを相互接続し、離間させる。モデル臓器又は模擬組織20は、体腔18内に置かれる。図1に示すモデル臓器20は、上部カバー14からテザー22によって懸架され、少なくとも1つの脚24に接続されるように示す部分的な結腸又は腸である。少なくとも1つの脚24は、内部体腔18に向く開口(図示せず)を有する。モデル結腸20は、近位端と遠位端を有するチューブ26を含む。チューブ26の近位端は、脚24の開口がチューブ26の内腔へのアクセスポートを与えるように、この開口と相互接続される。図1では、アクセスポート及び開口は、チューブ26の密封遠位端との組合せで、吸入ポート30を通して送出可能な流体を用いた吸入に適合されたモデル臓器20を供給するアクセスデバイス28を用いて塞がれているように示している。シリコーンのような軟質材料で作られた任意的なインサート32が、アクセスポートに対する現実的なインタフェースを生成する。チューブ26の遠位端は、体腔18内に延び、体腔18内で懸架される。模擬臓器20のチューブ26の内部は、脚24のアクセスポートを通して、又は組織模擬領域19又は器具の挿入ポート34を通してアクセス可能である。アクセスポートを通して体腔18又は臓器20内に挿入される内視鏡カメラは、図1に閉扉位置に示す折り畳みビデオスクリーン36上への表示に向けて生映像を発生させる。内視鏡は、中空構造を観察するのに使用される可視化デバイスである。図1の模擬臓器20は、経肛門低侵襲性手術に関する実施手順に対して理想的であるが、あらゆる模擬臓器又は模擬組織部分を使用することができる。臓器20の1つの特定の態様は、少なくとも1つの腫瘍又は欠陥38が臓器に付与されて接続されることである。図1に示すように、腫瘍38は、臓器チューブ26の壁に接続される。
【0026】
ここで図2Aに移ると、腫瘍38を含む模擬臓器20の一部分の部分側面断面図が示されている。模擬臓器又は模擬組織20は、ベース層又は臓器壁40を含む。臓器壁40は、現実の生組織を模倣するように構成されたシリコーン又は他のポリマーのような材料から作られ、適切に染色される。壁40の全体を構成するのに、様々な厚み及び配色の1つ又はそれよりも多くのベース層40を使用することができる。一変形では、臓器壁40は剛性を有し、ポリマー材料で作られる。ベース層40の上方には、第2の層又は欠陥層42が存在する。欠陥層42は、ベース層40と同じサイズのもの又はそれよりも小さいサイズのものであり、腫瘍38に対する隆起したプラットフォームを形成する。欠陥層42は、単一ユニットとしてベース層40と一体的に形成されることを含み、接着剤又は当業者に公知の他の手段によってベース層40に接続される。欠陥層42は、ベース層40の背景の中に溶け込むようにシリコーンで作られ、一変形ではベース層40と同じ色のもので作られる。欠陥層42は、少なくとも1つの欠陥又は間隙44を含む。一変形では、欠陥44は、断裂、切断、除去、又は他の外科手順からもたらされ、欠陥を閉鎖するのに縫合及びステープル吻合などを用いた手術的な配慮を必要とする現実の組織内の切開部、間隙、又は他の空隙を模倣する欠陥層42内に事前製作された裂開部である。そのような状況は、予防的に腫瘍全体が切除されることを確実にするために腫瘍38と共に周囲の組織も除去されて組織内に残存欠陥が残る腫瘍38の除去において最も多くの場合に生じる。欠陥44は、間に間隙を定める2つの対向する側部又は面を含む。隣接する側部又は面をベース層40に対して垂直であるように示すが、本発明は、これに限定されることはなく、並置される面又は側部は、あらゆる形状を有することができ、例えば、湾曲させることができる。欠陥44は、図3A図3Fに関して以下に解説するようないずれかの形状とすることができる。
【0027】
ここで図3Aに移ると、円形欠陥44を有する欠陥層42の上面図が示されている。図3Bには、細長形、長円形、又は楕円形の欠陥44を有する欠陥層42が示されている。図3Cに示すように、欠陥44は、無定形又はあらゆる形状とすることができる。欠陥層42は、図3Dに示すように多部分とすることができ、並置されて間に少なくとも1つの欠陥44を生成する2つ又はそれよりも多くの隣接欠陥層部分42a、42bを含む。図3Eには、複数の隣接欠陥層部分42a、42b、及び42cが、これらの間に1つ又はそれよりも多くの欠陥44を形成する別の多部分欠陥層42が示されている。当然ながら、欠陥層42は、図3Fに示すように、複数の欠陥44a、44b、及び44cを含むことができる。欠陥44は、全てを同じものとするか又は図3Fに示すように異なる形状を有することができる。欠陥の形状、厚み、及びサイズは、外科医訓練生が、変化する難度を有する欠陥の両側を縫合する練習を行うことを可能にする。一変形では、欠陥層42は、同一の厚みのものではない。同一の厚みの代わりに、欠陥層42の厚みは、欠陥44の位置で変化して欠陥を縫合又は閉鎖する難度を高める。
【0028】
再度図2Aを参照すると、腫瘍38は、欠陥層42の上に置かれる。好ましくは、訓練生によって容易に識別可能であるように、腫瘍38は、ベース層40又は欠陥層42又はこれらの両方と異なる色のものである。好ましくは、腫瘍38は、シリコーン又は他のポリマー材料で作られ、色が赤色、黒色、又は暗褐色である。一般的に、腫瘍38は、スコープを通して見た時にベース層40又は欠陥層42よりも濃い色のもの又はそうでなければ対照的な色のものである。一変形では、腫瘍38は、接着剤又は当業者に公知の他の手段によって欠陥層42に接続される。別の変形では、腫瘍38は、欠陥層42に接続又は取り付けられず、その上に取外し可能に位置付けられる。
【0029】
尚も図2Aを参照すると、模擬組織構成20は、腫瘍38の上に置かれたカバー層46を含む。一変形では、カバー層46は、腫瘍38、欠陥層42、及びベース層40の上に重なる。好ましくは、カバー層46は、色が透明又は半透明であり、シリコーンのようなポリマー材料で作られる。別の変形では、カバー層46は、ベース層40又は欠陥層42と同じ色のものである。カバー層46は、ベース層40又は欠陥層42と少なくとも同程度の厚みのものであり、一変形では、欠陥層42よりも薄肉であり、別の変形では、ベース層40よりも薄肉である。カバー層46は、腫瘍38及び欠陥層42の全域を覆うようにサイズが決定され、一変形では、ベース層40に接触するように十分に大きい。別の変形では、カバー層46は、腫瘍38の全域を覆い、欠陥層42に接触するようにサイズが決定される。カバー層46は、ベース層40、欠陥層42、腫瘍38、又はこれら3つの層のうちの1つよりも多いものに接着剤又は当業者に公知の他の手段を用いて接続される。別の変形では、カバー層46は小さめであり、欠陥層42だけに接続される。更に別の変形では、カバー層46は、欠陥層42とベース層40の両方に接着剤又は当業者に公知の他の手段を用いて接続される。カバー層46は、あらゆる形状又はサイズとすることができ、外科医に対して、人工腫瘍の位置に対する層状の面の代わりに滑らかな面を与えるように構成することができる。一変形では、カバー層46、腫瘍38、欠陥層42、又はベース層40は面テクスチャを含む。更に、カバー層46は、腫瘍38及び欠陥層42をカバー層46とベース層40の間に挟まれた状態に保つのを助け、これは、腫瘍38が欠陥層42に接着されない変形に対して有利である。図4には、ベース層40、欠陥層42、カバー層46、及び腫瘍38の上部平面図が示されている。一変形では、ベース層40、欠陥層42、及びカバー層46のうちのいずれか1つ又はそれよりも多くは、シリコーンの層が一体化メッシュ構造支持体又は他のタイプの補強体を有するように、ナイロン又は寒冷紗のような紡織材料、繊維材料、又はメッシュ材料の上にモールド成形されたシリコーンで形成される。これらの層38、40、42、46のうちのいずれか1つ又はそれよりも多くは、シリコーンのような弾性ポリマーと組み合わされた繊維又はメッシュの補強体を含むことができる。メッシュ支持体は、間隙44を閉鎖するように縫合糸が引っ張られる時に、縫合糸、ステープル、又は縫合針が、層のうちの少なくとも1つ、特に欠陥層42を断裂させるのを防ぐのを助ける。
【0030】
図2Bでは、ベース層40から切除される腫瘍38とカバー層46の一部分とが示されている。この切除は、訓練生により、腫瘍38を除去するためのメス又は他の医療器具を用いて実施される。訓練生は、図2Bに示すように、腫瘍38の周りのカバー層46を切開し、腫瘍38を単離し、この部位から離れるように腫瘍38を持ち上げて除去して下層の欠陥44を露出させることになる。ここで図2Cに示すように、訓練生は、手術縫合糸を用いて欠陥44を縫合し、図2Dに示すように欠陥層42の唇部又は縁部を接合し、それによって腫瘍38の手術除去によって生成された間隙又は創傷の閉鎖を練習する。少なくとも1つの層を切断して開口部を生成し、人工腫瘍を除去して間隙を縫合する段階は、模擬組織構造が、ユーザの視界から少なくとも部分的に掩蔽されるように手術訓練デバイスの模擬体腔18の内側に置かれている間に実施される。
【0031】
ここで図5に移ると、第2の層又は欠陥層42内に事前形成された間隙又は欠陥が存在しない別の変形が示されている。事前形成された間隙又は欠陥が存在しない代わりに、腫瘍38を切除するときに、カバー層46、欠陥層42、ベース層40、及びユーザによって除去されなかったいずれかの残留腫瘍部分のうちの1つ又はそれよりも多くの中にユーザによって欠陥が生成される。次いで、ユーザは、これらの層38、40、42、46のうちのいずれかの中に生成された欠陥を縫合する練習を行うことになる。1つのそのような変形では、欠陥層42又はベース層40の一方は、構成から割愛される。別の変形では、欠陥層42が腫瘍38の上に存在するように、腫瘍38はベース層40上に置かれ、欠陥層42は腫瘍38の上に置かれる。そのような変形では、カバー層46は含まれても含まれなくてもよい。カバー層46が含まれる場合に、それを欠陥層と共に別個の単層として一体的に形成することができる。図2図5に関して上述した構成のうちのいずれにおいても、現実の組織の模擬効果を与えるために、必要に応じて層の厚み及び色を相応に調節した状態で、構成を逆さに反転させる、層を逆順で配置する、又は他に構成をユーザが上方向又は下方向のいずれからも接近可能にすることができる。
【0032】
ここで図6A及び図6Bに移ると、本明細書における変形のうちのいずれにおいても、模擬組織構成は、全体の模擬臓器20と一体的に形成されず、その代わりに取外し可能で交換可能なモジュール50として構成されるようにモジュラーとすることができる。1つ又はそれよりも多くのモジュール50は、モジュール支持体52内に支持されるか又は含まれる。モジュール支持体52は、第1の面51と、第2の面53と、支持体52内に形成された1つ又はそれよりも多くの腫瘍モジュール受け入れ部分54、56、58とを含む。腫瘍支持体52は、剛性又は柔軟性を有することができ、ポリマー材料で作ることができる。腫瘍支持体52は、エラストマー材料シートを含むことができる。モジュール受け入れ部分54、56、58の各々は、相応にサイズ決定され、かつそのように構成されたモジュール50を受け入れるようにサイズ決定され、かつそのように構成される。図6では、モジュール50とモジュール受け入れ部分54、56、58とを円形であるように示すが、腫瘍モジュール50は、相補的な形の受け入れ部分がモジュール支持体52内に形成された状態であらゆる形状とすることができる。支持体52の厚みは、異なるとすることができ、様々な深さの腫瘍モジュール50の位置を有する構成が与えられる。モジュール受け入れ部分54、56、58は、腫瘍モジュール50が載ることができる底壁を含むことができる。これに代えて、腫瘍受け入れ部分54、56、58は、第1の面51内の開口部と第2の面53の開口部の間で延び、腫瘍38は、いかなる面51、53にもある開口部の間に接続されるか、又はこれらの開口部の一方に接続されるか、又は腫瘍受け入れ部分内に懸架される。一変形では、単一腫瘍モジュール50は、1つ又はそれよりも多くの腫瘍38を含む。モジュール支持体52には、1つ又はそれよりも多くの腫瘍モジュール50が装荷され、模擬組織構成20は、手術訓練デバイス10の体腔18、フレーム、又は他の本体モデル内に挿入される。模擬組織構成20は、訓練デバイス10のベース12上に配置するか又は訓練デバイス10の体腔18内に懸架することができる。模擬組織構成20及び/又は訓練デバイスは、訓練デバイス10への模擬組織構成20の配置、懸架、又は接続のためにクリップ、ファスナ、ワイヤ、フックアンドループ式ファスナなどのような取り付け機構が具備される。
【0033】
特に図6Bを参照すると、1つよりも多い層を含むモジュール支持体52が示されている。図6Bのモジュール支持体52は、第2の層55に接続した第1の層57を含む。一変形では、第1の層57は、エラストマー材料シートで作られ、第2の層55は、低密度弾性発泡体のようなあらゆる適切なポリマー材料で作られる。第2の層55は、第1の層57に対する支持体として機能する。第2の層55はまた、モジュール支持体52に深さも有利に与え、モジュール50内の腫瘍38を第1の面51に対してモジュール支持体52内に深く配置することを可能にする。モジュール受け入れ部分54、56、58は、第1の層57及び第2の層55のうちの1つ又は1つよりも多いものに形成される。第2の層55内に形成されるモジュール受け入れ部分54、56、58は、同じモジュール受け入れ部分54、56、58が第1の層57内に有する形状とは異なる形状を有することができる。一変形では、腫瘍モジュール50は、第2の層55の内側に組み込まれた又は埋め込まれた少なくとも模擬腫瘍38だけを含み、第1の層57又は第2の層55のうちの少なくとも一方は、ユーザが閉鎖を練習することができる欠陥層を構成する。代替として、第1の層57は、モジュール受け入れ部分を含まず、これに代えて、ユーザが、第2の層55内に形成された腫瘍受け入れ部分に位置付けられた腫瘍38にアクセスするために切開を練習するカバー層として機能する。そのような変形では、第1の層57は、シリコーンのようなエラストマー材料シートとすることができ、第2の層55は、低密度弾性発泡体の層である。モジュール支持体52は、図6A及び図6Bに示すように平面であり、又はこれに代えて、人間の解剖学的構造、組織、又は臓器の一部分を模倣するように成形される。
【0034】
例えば、図7は、人間の子宮を模倣するように成形された支持体52を示している。支持体52は、第2の層55に接続した第1の層57を含む。一変形では、第1の層57は、エラストマー材料シートのようなあらゆる適切なポリマー材料で作られ、第2の層55は、低密度弾性発泡体のようないずれかの適切ポリマー材料で作られる。第2の層55は、第1の層57に対する支持体として機能し、モジュール50内にある腫瘍38又は独立して存在する腫瘍38を支持体52に有利に接続され、現実に即して支持体52内に深く延び込ませ、図7に示すように第1の層57内に埋め込むことを含み、支持体52を通して様々な位置及び向きに分散させることを可能にする。腫瘍又はモジュールの受け入れ部分61は、第1の層57及び第2の層55のうちの少なくとも一方の中に形成される。腫瘍受け入れ部分61は、第2の層55内に事前形成されたポケットとすることができ、又はユーザが、第2の層55内にスリットを切り込むことによって形成することができる。一変形では、腫瘍38は、人間の子宮内に一般的に見つかる類線維腫を模倣するように構成される。支持体に置かれた腫瘍38によって模擬される類線維腫の例は、有茎粘膜下筋腫、漿膜下筋腫、粘膜下筋腫、有茎漿膜下筋腫、及び壁内筋腫というタイプの筋腫のうちの1つ又はそれよりも多くを含むが、これらに限定されない。ユーザは、模擬腫瘍38を切除するために、第1の面51又は第2の面53からアクセスチャネル又は開口部63を通して支持体52に接近することができる。一変形では、開口部63は、中空部分59への唯一の開口部として機能し、又はこれに代えて支持体52は、ユーザに平面C字形構造の上又は下から利用可能なアクセスを有する実質的にC字形の平面構成を有することができる。
【0035】
一変形では、変形のうちのいかなるものにおけるモジュール支持体52も平面ではなく、曲面又は他の構造、山及び谷、並びに様々なテクスチャを含む輪郭が与えられる。異なる輪郭は、腫瘍位置を掩蔽する可能性がある人工物及び特徴部を避けて進むことをユーザに要求しながら、各腫瘍位置に接近するのに様々な難易度をユーザに与える。腫瘍支持体52内のこれらの構造的人工物は、腫瘍支持体52と一体的に形成することができ、又は解剖学的構造の輪郭モジュールを取外し可能かつ交換可能にするように、腫瘍モジュール50と類似の構造においてモジュラーとすることができる。腫瘍モジュール50は、例えば、モジュール支持体52の上面及び下面51、53のうちの1つ又はそれよりも多くから外向き又は内向きに延びるシリコーン又は他の材料で作られた特徴部及び人工物又はテクスチャを含む非腫瘍モジュールと交換可能である。そのような非腫瘍モジュール内の特徴部は、隣接臓器の構造又は組織を含む解剖学的構造を模倣するための様々な形状を有することができる。例えば、非腫瘍モジュールは、腸を模倣するためのシリコーンの管状形態を含むことができる。非腫瘍モジュール及び腫瘍モジュール50は、当業者に公知のいずれかの手段によってモジュール支持体52に取外し可能に接続され、ユーザが、使用後にモジュールを廃棄し、次いで、廃棄したモジュールを交換し、モジュール支持体52内の隣接モジュール50に移動するか又は腫瘍モジュール50を異なる特徴部又は難易度を有する別の腫瘍モジュール50に入れ替えることによって練習を続けることを可能にする。
【0036】
図8及び図9には、腫瘍モジュールの変形50を示している。この腫瘍モジュール50は、支持体62に接続した模擬組織部分60を含む。図示の変形では、支持体62は、底枠66に接続した上枠64を含む。上枠64及び底枠66のうちの少なくとも一方は窓を含む。図8には、窓68を有する上枠64を示している。底枠66は、窓を含んでも含まなくてもよい。窓が上枠64と底枠66の両方内に設けられる場合に、これらの窓は、少なくとも部分的に位置合わせされる。支持体62は、上枠64と底枠66の間に模擬組織部分60を受け入れるようにサイズ決定され、かつそのように構成される。上枠64は、単一模擬組織部分60又は複数の層から形成され、一変形では切断可能な模擬組織部分60を捕捉するように底枠66に接続可能である。一変形では、枠64、66は、スペーサ70を用いて互いに離間する。更に、上枠64及び底枠66のうちの少なくとも一方は、腫瘍モジュール50を腫瘍支持体52(図示せず)に固定するように構成された1つ又はそれよりも多くの接続特徴部72を含む。図9には、接続特徴部72を腫瘍支持体52内に形成された対応する穴内への挿入のためのスナップフィット係合を与える延長ペグとして示している。モジュール50を支持体52に取外し可能方式で接続するために、摩擦嵌め手段又はフックアンドループ式材料のような他のファスナ手段又は接続手段をモジュール50及びモジュール支持体52上に使用することができる。
【0037】
尚も図8及び図9を参照すると、模擬組織部分60は、図2図5を参照して上述した構成のうちのいずれかとすることができる。第1の枠64と第2の枠66の両方内に形成された窓を使用すると、モジュール50のいずれ側からも模擬組織部分60に接近することができる。カバー層として上述のいかなる層も、模擬組織部分60がいかなる側又は方向から接近されるかに基づいて、上層又は底層として機能することができる。例えば、ベース層も、模擬組織部分60がいかなる側又は方向から接近されるかに基づいて、上層又は底層として機能することができる。そのような双方向構成では、望ましい模擬効果を与えるために、層の厚み及び色を相応に調節することができる。
【0038】
図9の模擬組織部分60は、第1の層74と第2の層76を含む。第1及び第2の層74、76は、現実の生組織を模倣するように構成されたシリコーン又は他のポリマーのようなポリマー材料から作られ、いずれか1つ又はそれよりも多くの適切な色の染料、又はメッシュ、繊維、又は他の補強体を含むことができる。層74、76の各々は、それぞれ腫瘍受け入れ部分78、80を含む。各腫瘍受け入れ部分78、80は、層74、76内に形成された凹部、窪み、半ポケット、又は小幅層厚の場所である。腫瘍受け入れ部分78、80は、実質的に位置合わせされて腫瘍38に対するポケットを形成する。図9には、各層74、76を腫瘍受け入れ部分78、80を有するように示すが、一変形では、第1及び第2の層74、76のうちの少なくとも一方内に単一腫瘍受け入れ部分が形成される。腫瘍38は、1つ又はそれよりも多くの層74、76内に形成された1つ又はそれよりも多くの腫瘍受け入れ部分78、80によって形成されるポケット内に置かれる。腫瘍38は、いずれかの層74、76に接着するか又はポケット内で浮遊させることができる。図9に示すように層内に形成された腫瘍受け入れ部分は、欠陥の1つのタイプと考えることができ、図9の変形は、腫瘍を挟む2つの欠陥層を含む模擬組織構成を説明する。ユーザが模擬組織部分60に接近するときに、ユーザは、ターゲットの腫瘍位置を見ることになる。ターゲット腫瘍38の可視化は、凹部又はポケットによって与えられる層の薄肉化により、腫瘍受け入れ部分の厚みが層の残りの部分と比較して薄肉であることによって改善する。次いで、ユーザは、大体の腫瘍位置で切断を行うことになり、腫瘍38を除去するために層74、76のうちの少なくとも一方内に切り込みを行う。1つ又はそれよりも多くの層を切開することによって間隙又は完全欠陥の生成が完了し、次いで、ユーザは、それを縫合、又は他に閉じ合わせる練習をすることができる。別の変形では、層74、76内に形成された腫瘍受け入れ部分は存在しない。そのような変形では、2つの層74、76の間に少なくとも1つの腫瘍が位置付けられ、層74、76は、実質的に均一の厚みを有し、腫瘍38は、層内に軽微な膨らみを生成する。
【0039】
ここで図10A図10B図11A図11B、及び図12に移ると、模擬組織部分の別の変形86が示されている。上述のように、組織部分86は、一体的又はモジュラーとすることができる。組織部分86は、縫合糸を保持する間又は縫合される間に断裂を食止めることになる繊維、メッシュ、ナイロン、又は他の補強材のような補強材又は充填材を含んでも含まなくてもよいシリコーン又は他の弾性ポリマーのようなあらゆる適切な弾性ポリマーで形成されたベース層88を含む。ベース層88は、その上に重ねられる欠陥層90に接続される。欠陥層90は、ベース層88から上方に延びる複数の突出部を含む。欠陥層90は、ベース層88と一体的に形成するか又はベース層88に接着された別個の層とすることができる。図10A図11A、及び図12で分るように、欠陥層90は、ベース層88の上で隆起するような又はベース層88から上方に突出するような格子の形状のパターンに構成される。格子パターンは例示的なものであり、欠陥層90により、複数の隣接突出部を含むようなあらゆる形状を形成することができる。ベース層90のこれらの突出部は、容易な切除に向けてベース層88の上に腫瘍38a、38bを隆起させるプラットフォームとしての縫合針を引っ掛ける位置をユーザに提供する。腫瘍38a、38bは、欠陥層90に接着することができ、一変形では、カバー層92を含めることができる。図10A及び図11Aは、ベース層88と、欠陥層90と、腫瘍38a、38bと、カバー層92とを模擬組織部分86の半分解組立図に示しており、カバー層92は、他の層の上に隆起する。図10aの腫瘍38aは実質的に平面であり、図10Bではカバー層92によって覆われるように示されている。図11Aの腫瘍38bは、より大きい高さを有し、形状が実質的に球形であり、図11Bは、構成内に隆起部分又は突出部を残しながら、カバー層92で覆われた球形腫瘍38bを示している。図12は、欠陥がカバー層92の下で又はそれを通してアクセスされた状態でベース層88内に残存欠陥94を残しながら除去されている腫瘍38と、欠陥94内の間隙を横断する縫合針とを示している。
【0040】
生きている組織の特性を模倣する合成材料は、シリコーン弾性体、天然ラテックス、ポリウレタン弾性体、ヒドロゲル、及びスチレンブロックコポリマーを含むことができる。一般的に、エラストマー材料は、特殊処理が行われない限り誘電材料である。一般的に、弾性体は、天然ゴムのものに似た弾力的特質を有する様々なポリマーのうちのいずれかである。一般的に、ヒドロゲルは、50%と99%の間の水を含有する親水性ポリマーである。一般的に、熱可塑性は、加熱と冷却によって繰り返し軟質と硬質にすることができる材料に属する。熱可塑性は、非導電性を有し、トレイ又はベース、骨格、及び他の類似の構造を生成するのに適している。一般的に、熱硬化性樹脂は、加熱又は硬化されて永久に硬化するエラストマー材料に属する。熱硬化性プラスチックは、シリコーン及びポリエステルのように非導電性を有し、病変部及び腫瘍などを形成するのに適している。シリコーン弾性体は、通常は非常に軟質で安定しており、かつ非導電性を有し、従って、肝臓、腎臓、脾臓、卵巣、胆嚢、胃、主幹動脈、結腸、腸、主幹静脈、網、腸間膜のような人工臓器、病変部、及び他の解剖学的構造を形成するのに適している。天然ラテックスは非常に弾性が高く、非導電性を有し、人工の筋肉及び軟骨などを形成するのに適している。ポリウレタンの弾性体及び発泡体は非導電性を有し、中空構造及び骨などを充填するのに適している。ヒドロゲルSBCは、導電性を有することができ、電気手術によって手術されるいずれの軟質構造にも良好である。
【0041】
一変形では、腹腔鏡法及び電気手術法を含む外科技術を練習するための腹腔鏡訓練器10内に挿入可能な手術シミュレーショントレイは、ベースと、解剖学的臓器の配置と、カバー層とを含む。ベースは、手術訓練デバイス10の内部又はその上に嵌合するようにサイズ決定され、かつそのように構成された剛性又は半剛性の構造を含む。これに加えて、ベースには、レセプタクル部分の内部又はベースの上への身体臓器の配置とサイズ及び形状において協動及び適合する直立壁によって形成された解剖学的な支持特徴部又はレセプタクル部分が与えられる。エラストマー材料で作られる身体臓器は、訓練デバイスの特定の必要性及び/又はターゲット解剖学的構造に則してベースの内部又はその上に計画的に置かれる。アセンブリ全体の上に又はその特定の区域の上には、少なくとも1つのカバー層を配置することができる。カバー層は、網、腸間膜、脂肪、結合組織、腹膜、中皮、及び広間膜などうちの1つ又はそれよりも多くを表すようにサイズ決定され、かつそのように構成される。カバー層は、非導電性を有するシリコーン弾性体を含むことができる。非導電性カバー層は、カバー層に対して電気手術動作が使用されない場合に適している。電気手術動作が企図される場合に、カバー層は、ヒドロゲルのような導電性ゲルからなる。導電性層と非導電性層の組合せは、電気手術が層のうちの1つに向けられる場合に設けられる。
【0042】
ベースの内部又はその上に置かれた臓器に加えて、臓器と相対的に又は模擬臓器自体内には、同じく計画的に置かれた複数の病変部又は欠陥を存在させることができる。病変部又は欠陥は、腫瘍、嚢腫、又は子宮外妊娠部などを表すことができる。例えば、図7に関して上述したように、シリコーンゴムの外側層と、軟質ポリウレタン発泡体の実質的に中空の内側層とを有する子宮を形成することができる。手術訓練生による識別及び除去に向けて、シリコーン層と発泡体層の間の様々な位置に合成類線維腫を配置することができる。合成類線維腫の1つの模擬構成は、少量の超軟質未硬化シリコーンゴムを含む。未硬化シリコーンゴムは、充填材及び流動制御器として機能する一定量の無定形未処理ヒュームド二酸化珪素と混合される。未硬化シリコーンゴムと二酸化珪素の組合せは、成形されて硬化される。完全に硬化すると、この組合せは、人間の類線維腫に似た不規則形状の幾分繊維性を有する構造をもたらす。次いで、この模擬人間類線維腫の構成は、子宮のもののような模擬臓器モデルに置かれる。この腫瘍シミュレーションは、婦人科モデルにおける腫瘍を模倣するための使用に限定されず、腫瘍の除去を練習するために腫瘍を含む他の臓器モデルに対して使用することができる。シリコーンゴムと二酸化珪素とで構成される硬化混合物を含むこの腫瘍シミュレーションは、婦人科手術の関連において見られる現実の腫瘍に非常に似ており、外科技術を練習するときに無定形の現実的な外観及び感触を提供する。この混合物には、全体を通して硬化及び混合する前に、赤色又は黒色のような暗色の染料を追加することができる。この構成は、訓練デバイス10内に置かれた模擬臓器の模擬卵管内への挿入のための模擬子宮外妊娠部を構成するために使用することができる。非常に乾燥しており、かつ賦形性の高いシリコーンと充填材との混合状態の稠度は、実際の身体状態を模倣するために腫瘍又は他の病変部を非常に創造的に、容易に、かつあらゆるサイズで形成することを有利に可能にする。シリコーンと充填材とで作られる腫瘍は、非導電性を有し、適切に取り扱われないと破断又は断裂する可能性がある。
【0043】
次いで、導電性部分と非導電性部分の組合せを含む臓器模擬モデルの一部の例を解説する。肝臓切除の外科手順では、電気外科手順を訓練するための模擬臓器モデルは、導電性ヒドロゲルの肝臓、包嚢管、及び腸間膜を有することになる。モデルのうちのこれらの導電性部分は、同じ臓器又は異なる臓器を含む解剖学的構造の非導電性部分に隣接して位置付けられる。例えば、胆嚢摘除の外科手順を練習するためには、臓器モデルは、導電性ヒドロゲルから作られた包嚢管及び中皮を含み、肝臓及び胆嚢は非導電性を有する。スリーブ状胃切除術を練習するためには、模擬臓器モデルは、導電性ヒドロゲル材料で作られた胃の大彎に沿う血管及び大網/腸間膜のうちの1つ又はそれよりも多くと、非導電材料で作られた胃、大腸、及び小腸のうちの1つ又はそれよりも多くとを含む。胃バイパス術を練習するためには、模擬臓器モデルは、導電性ヒドロゲル材料で作られた胃の大彎に沿う短胃血管及び腸間膜/網のうちの1つ又はそれよりも多くと、非導電材料で作られた胃とを含む。一変形では、空腸及び/又は胃の少なくとも一部分は、導電性ヒドロゲルで作られる。類線維腫の除去、子宮外妊娠、卵巣嚢腫の治療、及び子宮摘出のような卵巣の手順を練習するためには、訓練モデルは、導電材料と非導電材料の両方を含む。例えば、臓器モデルは、導電性ヒドロゲルで作られた1つ又はそれよりも多くの卵管、円靭帯、卵巣靭帯、IP靭帯、広靭帯、膀胱弁、子宮動脈/静脈、基靱帯、子宮仙骨靭帯のシミュレーションを含むことができ、子宮、卵巣、直腸、膀胱、尿管、及び腎臓のうちの1つ又はそれよりも多くは非導電性を有する。一変形では、子宮頸部の直上及び/又は直下の位置は、子宮頸管上部腟切開術又は全腟切開術を練習するために導電性ヒドロゲルで作られる。結腸、小腸、S状結腸、又は直腸が係わる手順は、特定の部分が導電性を有することを要求する場合もある。これらの導電性部分は、非導電性部分に隣接して位置付けられる。例えば、腫瘍の局所切除のための経肛門低侵襲手術を練習するためには、臓器モデルは、腫瘍を取り囲む導電性ヒドロゲル材料で作られることになる区域を除き、非導電性エラストマー材料で作られた結腸及び/又は直腸、並びに腫瘍を含むことになる。別の変形では、経肛門直腸間膜全切除の練習などのためには、直腸の少なくとも一部分は、導電性ヒドロゲルで作られる。虫垂切除術の練習では、模擬臓器モデルは、導電性ヒドロゲルで作られた腸間膜/虫垂間膜、虫垂動脈、及び血管のうちの1つ又はそれよりも多くと、非導電性エラストマー材料で作られた虫垂、盲腸、及び回腸終末部のうちの1つ又はそれよりも多くとを含むことができる。結腸切除術を練習するためには、模擬臓器モデルは、導電性ヒドロゲルで作られた腸間膜、回結腸動脈、中結腸動脈、右結腸動脈、下腸間膜動脈、下腸間膜静脈、左結腸動脈、S状結腸動脈、直腸動脈、辺縁動脈、対応する静脈、網、トルト白線、後腹膜腔への腸間膜取り付け部、及び直腸間膜のうちの1つ又はそれよりも多くと、非導電材料で作られた結腸、肝臓、脾臓、胃、腎臓、十二指腸、後腹膜腔のうちの1つ又はそれよりも多くとを含むことができる。ヒドロゲル材料は、十分な導電性を有するためには水和させる必要があり、従って、長い有効保存寿命を維持するのは困難である場合がある。
【0044】
基靱帯に関しては、一変形において、カバー層は、テクスチャ及び自然に発生したものであるように見える仕上がりを有するようにカレンダー製作又はプレス形成されたシリコーンゴムの薄肉の半透明シートを含む。カバー層の別の変形は、スラリから硬化され、硬化するときに面特徴部を発達させたヒドロゲル材料の薄肉の半透明シートを更に含むことができる。ヒドロゲル材料は、水和すると導電性を有するようになり、電気手術デバイスの使用を可能にする。カバー層に対する複合構造は、2つのシリコーン弾性非導電性層の間に挟まれた導電性ゲル層を含む。そのような場合に、導電性ゲル層を露出させるために、外側非導電性層のうちの1つ又はそれよりも多くが除去される。非導電性シリコーン層は、ヒドロゲル層に対して有利に密封を施し、導電性ゲルの流体成分を保持する。
【0045】
カバー層の別の変形では、テクスチャが付けられたポリエチレン発泡体のシート上には、2部分構成のプラチナ硬化又は錫硬化の液体シリコーンの薄膜が置かれる。次いで、ノッチこて又は延展器を用いて、第1の発泡体層の面の上に、材料厚の不規則パターンを残しながらシリコーン材料が延展される。第1の発泡体層の上には、第2のテクスチャ付きポリエチレン発泡体層が、これらの間にシリコーンを残しながら置かれる。次いで、発泡体層の間のシリコーン材料をカレンダー製作するために、第2の発泡体層の面上でテクスチャ付きローラ又は箔押デバイスが移動される。得られるシリコーンシートは、硬化されると粘着性を持たず、網、腸間膜、脂肪のような特性を示す。このシートは、機械的解剖器具及び剪刀の使用を実演するために使用することができる高強度領域と低強度領域を有利に有する。
【0046】
手術シミュレーションデバイス内に使用することができる特定の臓器は、図13に示すような子宮100を含む。子宮は、子宮形態の上にモールド成形された軟質シリコーンゴムからなるシェルを含む。このシェルは、完全に硬化されると、実質的に中空であり、約7ミリメートルから9ミリメートルまでの厚みの壁を有するモールド成形発泡体ゴム子宮形態の上に置かれる。シリコーンシェルと発泡体壁の間には、様々な病変部を配置することができる。壁内腫瘍、卵管102、又は嚢腫を模倣するために、一部の病変部は、発泡体壁内に挿入することができる。シリコーン/発泡体構造内には、卵管104、卵巣靭帯106、及び他の付帯構造を挿入し、接着剤を用いて取り付けることができる。卵巣嚢腫124を設け、同じ腫瘍材料で作ることができる。付帯構造は、大動脈114と、内腸骨動脈116と、卵巣動脈118と、子宮動脈120と、膣動脈121と、子宮仙骨靭帯122とを含むことができる。子宮シェルは、手術される主要部分である。一変形では、子宮シェルは、シリコーン弾性体からなり、従って、訓練において子宮モデルを切断又は切開することが意図される場合に適している。子宮モデルに対して電気手術が練習されている場合に、導電性ゲルを含む子宮モデルが選択される。手術方式に基づいて、接続構造及び接続チューブは、シリコーン弾性体又は導電性ゲルからなる。
【0047】
2部分構成のプラチナ硬化又は錫硬化のシリコーンからなる卵管104は、第1の開口端部と第2の開口端部と貫通内腔とを含む。第1の開口端部は、約20センチメートルの距離を延びて約6.5ミリメートルの直径と約1〜1.5ミリメートルの非常に薄肉の壁とを有する管状構造を形成する。管状構造の端部に向けて、約1.5センチメートルの直径と約3センチメートルの長さとを有する球根状部分が形成される。球根状部分は、約7ミリメートルまでの管状構造の狭窄部に遷移する。次いで、狭窄管状構造は、約2センチメートルの最終開口径を有し、約3.5センチメートルの長さにわたる漏斗形構造に徐々に拡大する。卵管104をそれが上に作られた形態から除去する前に、第2の拡大開口端部に複数の軸線方向切断部108が作られる。形態から除去されると、これらの切り込みは、シリコーン材料が、人間の線毛に似た方式で移動することを可能にする。卵管104の球根状部分の中に、子宮外妊娠部のような病変部110を帰属化又は切除に向けて挿入することができる。更に、折り畳まれた時に卵管の薄壁導管部分の形状を維持するために、編み物に使用される或る長さの軟質繊維糸条を内腔内に置くことができる。
【0048】
この模擬子宮モデルでは、卵巣112は、2部分構成のプラチナ硬化又は錫硬化のシリコーンから形成された中空球根状構造である。卵巣構造内には、軟質ポリウレタン発泡体支持体が置かれる。ポリウレタン支持体は、卵巣シェル内にきれいに嵌合し、卵巣嚢腫124のような病変部に対するネスト又はレセプタクルを有するようにサイズ決定され、かつそのように構成される。訓練生は、病変部を除去し、その後に欠陥を縫合して閉鎖するために、卵巣壁を通ってポリウレタン発泡体内に切開することができる。卵巣は、非導電材料で作られ、剪刀又はメスを用いて切断される。別の変形では、卵巣は、導電性ゲルで作られ、従って、電気手術によって切断することができる。嚢腫は、非導電材料で作られる。
【0049】
別の模擬臓器モデルでは、胃は、第1の開口端部と、第2の開口端部と、拡大中心部分とを有する中空の胃形の嚢を含む。拡大中心部分は、第1の開口端部の近くから第2の開口端部の近くまで延びる経路によって分割される。この経路は、計画的に胃の小彎に隣接する望ましい軌道に沿って置かれたシリコーン接着剤領域を含む。胃嚢の対向する壁は、互いに接近し、接着剤によって保持される。特定の手順を模擬するために、胃を接着剤経路に沿って分割することができる。すなわち、接着剤経路は、好ましい手術経路に沿ってステープル吻合又は切断するように訓練生を誘導する。接着剤は、手術ステープル吻合器内の切断要素が配備される前に数列のステープルが置かれると考えられる状態を模擬する。その結果、解剖胃部分は、堅固にステープル吻合されたように見え、残留胃部分は気密で堅固なものである。別の変形では、胃の接着部分は、胃の非導電性隣接部分に隣接する導電性ゲル材料で形成される。更に別の変形では、胃又は他の臓器を横切る予め決められた手術経路は、同じ臓器の非導電材料に隣接するか又は異なる臓器及び解剖学的構造の非導電材料に隣接する導電性ゲル材料からなる。
【0050】
別の模擬臓器モデルでは、ヒドロゲルからなる肝臓は、手順が電気手術解剖を伴うと考えられる訓練モジュール10内に置くことができる。一変形では、訓練モジュール10のベース又はトレイは、シリコーン肝臓又はヒドロゲル肝臓のいずれかを受け入れて所定位置に保持する。受け入れ特徴部は、特定の訓練モジュールの必要性に基づいてシリコーン、ヒドロゲル、又は発泡体ゴムの肝臓を予め決められた位置に維持するようにサイズ決定され、かつそのように構成されたネスト、ポケット、又はレセプタクルを含むことができる。手順が、肝臓切除のような電気手術動作を必要とする場合に、肝臓は、導電性ゲルで作られる。ベース又はトレイは、特定の手順に基づいてゲル、シリコーン、又は発泡体で作られた肝臓を受け入るように構成される。練習される手順が電気手術を含まない場合に、シリコーン又は発泡体モデルを使用するのが遥かに経済的である。
【0051】
ある一定の実施形態をその例示的実施形態を参照して具体的に図示かつ説明したが、以下に続く特許請求の範囲によって定められるようなその精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細の様々な変更をそこに行うことができることは当業者によって理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
【国際調査報告】