(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-510838(P2016-510838A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(54)【発明の名称】フルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 214/18 20060101AFI20160314BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20160314BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20160314BHJP
【FI】
C08F214/18
C08L27/12
C08F2/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-500777(P2016-500777)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月14日
(86)【国際出願番号】US2014021499
(87)【国際公開番号】WO2014149911
(87)【国際公開日】20140925
(31)【優先権主張番号】61/788,434
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン−サナイェイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD131
4J002BD141
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4J100AC23P
4J100AC24P
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4J100AC27P
4J100AC31P
4J100AG04Q
4J100CA04
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4J100DA24
4J100DA41
4J100FA20
4J100JA11
4J100JA15
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、0.5〜25モルパーセントの少なくとも1種のビニルエステルモノマー単位を含む、新規な直鎖状で半晶質のフルオロポリマーに関する。そのコポリマーの中では、ビニルエステルモノマー単位の少なくとも40モルパーセントが、2個のフルオロモノマー単位の間に、(ダイアドまたはトリアドまたはそれ以上の多連体ではなく)単一のモノマー単位として存在している。本発明はさらに、フルオロモノマー/ビニルエステルのコポリマーを形成させるプロセスにも関する。本発明のフルオロポリマーは、官能性フルオロポリマーからのメリットが受けられる用途、たとえばバインダーとして、または親水性膜および中空繊維の形成における使用のために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
75〜99.95モルパーセントの1種または複数のフルオロモノマーと、0.05〜25モルパーセントの、式CH2=CH−O−(CO)−Rn(式中、Rnは、水素原子またはC1〜4直鎖状もしくは分岐状の炭化水素である)を有する1種または複数のビニルエステルとを含み、前記ビニルエステルモノマー単位の少なくとも40モルパーセントが、前記コポリマーの中で、2個のフルオロモノマー単位の間の単一のモノマー単位として存在している、ランダムコポリマー。
【請求項2】
前記フルオロモノマーが、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、エチレン テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ならびにそれらの混合物、からなる群より選択される、請求項1に記載のランダムコポリマー。
【請求項3】
前記コポリマーが、親水性コポリマーである、請求項1に記載のランダムコポリマー。
【請求項4】
前記フルオロモノマーが、70〜100重量パーセントのフッ化ビニリデンを含む、請求項1に記載のランダムコポリマー。
【請求項5】
前記ビニルエステルが、酢酸ビニルを含む、請求項1に記載のランダムコポリマー。
【請求項6】
前記ビニルエステルモノマー単位のモルパーセントが、0.5〜15モルパーセントである、請求項1に記載のランダムコポリマー。
【請求項7】
前記ビニルエステルモノマー単位のモルパーセントが、1〜10モルパーセントである、請求項6に記載のランダムコポリマー。
【請求項8】
請求項1に記載のランダムコポリマーを形成させるためのプロセスであって、
a)フルオロモノマーを含む初期モノマーチャージを仕込む工程、および
b)重合が開始したら、前記反応器に、ビニルエステルモノマーをフルオロモノマーと共に共連続的にスターブ・フィードする工程、
の工程を含む、プロセス。
【請求項9】
前記初期モノマーフィードが、フルオロモノマーからなっている、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記重合プロセスにおいて、非フッ素化界面活性剤のみが使用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のフルオロポリマーを含む材料。
【請求項12】
前記材料が、非水溶媒タイプの二次電池またはコンデンサー電極を形成させるのに使用される濾過膜、中空繊維濾過デバイス、およびスラリーバインダーから選択される、請求項11に記載の材料。
【請求項13】
前記スラリーバインダーが、
a)0.2〜150部の、請求項1に記載のフルオロポリマー;
b)10〜500部の、1種または複数の粉体状電極形成物質;
c)任意選択で、0〜10部の、1種または複数の増粘剤;
d)任意選択で、1種または複数のpH調節剤;
e)任意選択で、0〜10部の、沈降防止剤および界面活性剤からなる群より選択される1種または複数の添加剤;
f)任意選択で、0〜5部の、1種または複数の濡れ剤;
g)任意選択で、0〜150部の、1種または複数の逃散性接着促進剤;
h)100部の水;
を含み、
すべての部は、100重量部の水を基準にした重量部であり、前記組成物には、フルオロ界面活性剤をまったく含まない、
水系のスラリーである、請求項12に記載の材料。
【請求項14】
前記スラリーバインダーが、
a)0.1〜150部の、請求項1に記載のフルオロポリマー、
b)10〜500部の、1種または複数の粉体状電極形成物質;
c)100部の、前記フルオロポリマーを溶解させることが可能な溶媒、
を含む溶媒系のスラリーである、請求項12に記載の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.5〜25モルパーセントの少なくとも1種のビニルエステルモノマー単位を含む、新規な直鎖状で半晶質のフルオロポリマーに関する。そのコポリマーの中では、ビニルエステルモノマー単位の少なくとも40モルパーセントが、2個のフルオロモノマー単位の間に、(ダイアドまたはトリアドまたはそれ以上の多連体ではなく)単一のモノマー単位として存在している。本発明はさらに、フルオロモノマー/ビニルエステルのコポリマーを形成させるプロセスにも関する。本発明のフルオロポリマーは、官能性フルオロポリマーからのメリットが受けられる用途、たとえばバインダーとして、または親水性膜および中空繊維の形成における使用のために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは従来から、たとえば、低表面エネルギー、化学作用に対する高い抵抗性、耐老化性、電気化学的安定性など、特殊な性能を必要とする用途で使用されてきた。しかしながら、それらの有利な性質のために、フルオロポリマーが、使いにくいものとなり、それらの用途を限定することにもなっている。たとえば、フルオロポリマーの上に官能基がないということによって、それらの基材への接着、架橋の容易さ、後続の化学的変性のための部位の備え、水による濡れ、および親水特性の付与などが困難となる。たとえば官能基のような、変性された性質を有するフルオロ化ポリマーが求められており、そのことによって、それらの性能の幅を広げることが可能となる。フルオロポリマーに、たとえば無水マレイン酸を用いて、後反応でグラフトさせて、官能性を与えることが行われた(米国特許第7,241,817号明細書および米国特許第8,182,912号明細書)。
【0003】
しかしながら、フッ素含有フリーラジカルの反応性の高い性質が原因で、重合しているポリマー骨格の中に、官能性モノマー単位を直接、特にランダムに、導入することは困難である。
【0004】
米国特許出願公開第2008−0249201号明細書には、二フッ化ビニリデン(VDF)を重合させ、その後でそのPVDF粒子の細孔の内部で重合させる、酢酸ビニル(VAc)の重合を行う、逐次的な重合が記載されている。このことによって、均質なブレンドは可能となるが、ランダムコポリマーが生成することはない。
【0005】
米国特許第5,415,958号明細書には、PVDFの異種の基材への接着性を改良する目的で、PVDFの主鎖にカルボニル基を導入するために、フッ化ビニリデンを不飽和二塩基酸モノエステルの極性モノマーと共重合させることが開示されている。
【0006】
V.Panchalingam and J.R.Reynoldsによる論文には、VAcとVDFとの共重合が記載されている(J.Polm.Sci Part C 27,201(1989))。そのようにして得られたコポリマーでは、VAcが均等に分散していなかった。それらについての特性解析から、一つの相でVAcリッチであり、他の相ではVDFリッチであることが判明した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
フルオロポリマー、特にフッ化ビニリデンのランダムコポリマーを、ビニルエステルと、そのビニルエステルモノマー単位の最小でも40%がそのポリマー骨格の内部で単一の単位で存在しているように共重合させる、ということが今や見いだされた。
【0008】
本発明は、75〜99.95モルパーセントの1種または複数のフルオロモノマーと、0.05〜25モルパーセントの、式CH
2=CH−O−(CO)−Rn(式中、Rnは、水素原子またはC
1〜4直鎖状もしくは分岐状の炭化水素である)を有する1種または複数のビニルエステルとを含み、そのビニルエステルモノマー単位の少なくとも40モルパーセントが、そのコポリマーの中で、2個のフルオロモノマー単位の間の単一のモノマー単位として存在している、ランダムコポリマーに関する。
【0009】
本発明はさらに、ランダムなビニルエステルコポリマーを製造するための、スターブ・フィード(starve−feed)プロセスにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に断らない限り、パーセントはすべて重量パーセントであり、分子量はすべて重量平均分子量である。
【0011】
本発明は、75〜99.95モルパーセントの少なくとも1種のフルオロモノマーと、少なくとも0.05〜25モルパーセントの、式CH
2=CH−O−(CO)−Rn(式中、Rnは、水素原子またはC
1〜4直鎖状もしくは分岐状の炭化水素である)を有する少なくとも1種のビニルエステルとのコポリマーに関する。その中では、ビニルエステル画分の少なくとも40%は、そのポリマー骨格の中で、(2個のフルオロモノマー単位の間の)単一な単位としてランダムに分散されている。
【0012】
本発明において使用する場合、「フルオロモノマー」という用語は、フリーラジカル重合反応をすることが可能な、フッ素化されたオレフィン性不飽和モノマーを意味している。本発明において使用するのに好適なフルオロモノマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、エチレン テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ならびにそれらの混合物。
【0013】
そのフルオロモノマーが、50〜100重量パーセントのフッ化ビニリデンであるのが好ましく、70〜100重量パーセントのフッ化ビニリデンであれば、より好ましい。
【0014】
本発明のビニルエステルモノマーは、コポリマー中に、0.05〜20モルパーセント、好ましくは0.5〜15モルパーセント、より好ましくは1〜10モルパーセントで存在する。そのコポリマーには、式CH
2=CH−O−(CO)−Rn(式中、Rnは、水素原子またはC
1〜4直鎖状もしくは分岐状の炭化水素である)を有する、1種または複数のビニルエステルモノマーが含まれる。好ましいビニルエステルモノマーは酢酸ビニルである。
【0015】
本発明の好ましいコポリマーは、フッ化ビニリデンと酢酸ビニルとのランダムコポリマーである。ランダムなターポリマー、たとえばフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、および酢酸ビニルからなるものもまた考えられる。
【0016】
本発明のコポリマーは、溶液重合または乳化重合で形成させることができ、連続法またはセミバッチ法のフリーラジカル反応で形成させる。フリーラジカル乳化重合で記述していくが、当業者ならば、その手順を他の重合プロセスにあてはめることも可能であろう。
【0017】
好ましい重合プロセスにおいては、そのフルオロポリマーを、水性媒体中、フリーラジカル重合開始剤の存在下、フルオロポリマーを形成させるのに十分な圧力と温度で十分な時間をかけて、コモノマーをフリーラジカル重合させることによって調製する。
【0018】
反応器に、脱イオン水、および少なくとも1種の界面活性剤、好ましくは非フッ素化界面活性剤を最初に加える。それに続けて、脱酸素を行う。反応器が所望の温度に達してから、その反応器にVDFモノマーを加えて所定の圧力に到達させ、次いでその反応器にフリーラジカル重合開始剤を、適切な重合速度を維持するのに適した流量で導入する。反応開始の直後、または反応の開始と同時、またはある程度の転化率の後に、反応器の中にVDFおよびビニルエステル(および任意選択で、他のフルオロモノマー)のコモノマーを所望の比率で連続的にフィードする。その比率は、重合の過程でビニルエステルが、反応器に対して、スターブ・フィードになるように選択する。スターブ・フィード重合においては、反応器の中にモノマーを、モノマーの大部分が、さらに添加されるより前に反応によって消費されてしまっているような速度で、徐々に導入する。その目的は、異なった種類のモノマーの分布を制御して、ブロックが形成されるのを最小化することであって、そのことによって、最終的なポリマーにおいて、モノマーが統計的によりランダムに分布しているポリマーとは、顕著に異なった性質を与えることができる。
【0019】
所望のポリマー固形分レベルに達したら、モノマーのフィードを停止することは可能であるが、重合開始剤の仕込みは維持して、未反応モノマーをすべて消費させるのが好ましい。次いで、重合開始剤の仕込みも停止することが可能で、反応器の圧力を低下させ、次いで反応器を冷却する。未反応モノマーを排出させることも可能であり、フルオロポリマーは、ドレーンポートを通すかまたはその他の捕集手段を用いて捕集する。ポリマーは、標準的な単離方法(たとえば、オーブン乾燥、スプレー乾燥、剪断凝固または酸凝固の後に乾燥など)を用いて単離することもできるし、あるいは後続の適用のためにエマルションの形態で保持することもできる。
【0020】
そのフルオロポリマー分散体は、良好な保存安定性を示す。必要があれば、水に希釈した沈降防止剤または界面活性剤を、PVDF分散体ラテックスに対して撹拌しながら後添加して、そのラテックスにさらなる保存安定性を与えることも可能である。
【0021】
本発明のコポリマーは、各種の基材、たとえば金属および金属酸化物に対する良好な接着性を示し、親水特性を有し、すぐれた化学的および電気化学的抵抗性を示す。
【0022】
本発明の樹脂は、水と結合するビニルエステルの親水特性と、フッ化ビニリデン樹脂の耐薬品性の両方を有することとなり、それによって、水性媒体の濾過において使用される親水性多孔質膜または中空繊維を製造するのに好適となる。
【0023】
コポリマーの親水性は、熱水に所定時間浸漬させた後でも接触角が一定であることから確認できるし、その組成物の耐水性が良好であることは、同じ実験の際の重量損失から確認することができる。
【0024】
フッ化ビニリデンポリマーと親水性ポリマーとを単に混合したり、逐次重合させたりしただけの場合には、それらのポリマーは、サブ分子レベルで相互に均質に溶融混合させることが不可能であり、その結果、水精製膜および中空繊維のような用途で必要とされる適切な耐薬品性および寿命を有さないことになるであろう。
【0025】
本発明のフッ化ビニリデンコポリマーは、非水溶媒タイプの二次電池またはコンデンサーにおける、電極形成組成物のためのバインダーとして使用することができる。本発明のフルオロポリマー分散体、および1種または複数の粉体状電極形成物質、それにプラスして逃散性接着促進剤たとえば有機カーボネート、増粘剤、沈降防止剤、界面活性剤、および濡れ剤などの任意成分を含む、水系のスラリーが形成される。増粘剤を有効とするために、必要に応じてpHを調節することもできる。そのスラリーは、好ましくは、導電性材料の上にコーティングして、電極を形成させることができる。
【0026】
次いでその最終的な組成物に、高剪断混合を与えて、組成物の中にその粉体状物質を均質にしっかりと分散させる。本発明の最終的な水系組成物は、基材の上にキャスティングまたはコーティングさせるのに有用な粘度を有しているべきである。その有用な粘度は、適用方法に依存して、25℃、20rpmで2,000〜20,000cpsの範囲である。
【0027】
また別な実施態様においては、最初に本発明のフッ化ビニリデンコポリマーを単離、乾燥させ、次いでそれを、そのフッ化ビニリデンコポリマーを溶解させることが可能な溶媒と組み合わせ、粒子状の活性物質を添加することによって、スラリーを形成させることも可能である。
【0028】
上記いずれかのプロセスによって形成させたスラリーを、当業界で公知の手段によって導電性基材の少なくとも一つの表面、好ましくは両方の表面の上に適用するが、そのような手段としては、たとえば以下のものが挙げられる:ブラシ法、ローラー法、インクジェット法、スキージー法、フォームアプリケーター法、カーテンコーティング法、真空コーティング法、またはスプレー法。その導電性基材は、一般的には薄く、通常は、たとえばアルミニウム、銅、リチウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、または銀のような金属のフォイル、メッシュまたはネットからなっている。次いで、そのコーティングされた導電性基材を乾燥させて、カレンダー加工可能な凝集性の複合電極層を形成させ、非水系のタイプの電池で使用可能な相互接続された複合電極を得る。
【0029】
上述の、水系および/または溶媒系スラリーでコーティングされた電極はいずれも、任意選択で高温で焼成して、高い接着強度を達成させることもできる。乾燥させた電極を、任意選択で、高温高圧のカレンダリングにかけて、電極の接着性をさらに改良させることも可能である。
【実施例】
【0030】
実施例1:
7.5リットルのステンレス鋼製反応器に、4000gの水および2.5gの界面活性剤としてのPLURONIC 31R1を入れた。アルゴンを用いてその混合物をパージし、0.5時間撹拌した。撹拌を継続しながら、その反応器をシールし、加熱して83℃とした。その反応器にフッ化ビニリデンを仕込んで、圧力650psigとし、0.85重量%の過硫酸カリウムおよび0.85%重量%の酢酸ナトリウムからなる水性重合開始剤溶液を480g/hrの速度で仕込んで反応を開始させてから、残りの反応時間の間はずっと、その重合開始剤溶液のフィード速度を約60.0g/hに設定した。必要とされるフッ化ビニリデンと酢酸ビニルを表1に示したような所定の比率で添加することによって、その反応圧力を650psigに維持した。合計して2000gのVDFを反応器に添加した後、モノマーのフィードを停止した。温度を維持しながら、撹拌を10分間続けた。撹拌と加熱を停止した。室温にまで冷却してから、過剰なガスを放出させ、反応器から、ステンレス鋼の網を通過させてラテックスを抜き出した。そのラテックスについて、重量法の固形分測定を実施し、反応器にフィードしたフッ化ビニリデンおよび酢酸ビニルの重量を基準にして、ポリマー収率を求めた。モノマーをポリマーに転換させるために使用した過硫酸カリウムの量は、フッ化ビニリデンモノマーの重量を基準にして報告している。
【0031】
【表1】
【0032】
ラテックスの安定性は、沈降特性に基づいて評価した。たとえば、6%のVAcを含むラテックスは、周囲条件下で300日間の貯蔵後でも沈降していなかった。
【0033】
分散体の粒径は、単一モードの35mWレーザーダイオード(波長、639nm)を備えた、Nicomp Model 380 Sub Micron Particle Sizerを使用して測定した。
【0034】
NMR分析の、1Hおよび19Fスペクトルは、5mmのTXOプローブを備えた、Bruker DRX 500(11.75 T)上で測定した。「ドライな」DMSO−d6中に、80℃で溶解させることによってサンプルを調製した。「ドライな」という用語は、その内容物を空気に曝露されたことがない個別のバイアルからの、ということを意味している。約0.1重量%の溶液を調製した。DMSO溶媒中に残存している水と、アイソレジック(isoregic)−CH2−の領域との間でいくぶんかの重なりが起こりうるので、バイアルからのDMSO−d6を使用して、溶媒中の水の存在量を可能な限り低くした。NMRスペクトルは、データ取得の際に50℃にしたサンプルについて測定した。
1H−NMRにおける酢酸ビニルのピークの帰属は、5.5ppmがシングレット(−VDF−VAc−VDF−)、5.3ppmがダイアド(−VDF−VAc−VAc−VDF−)、4.9ppmがトリアドおよびそれより上である。
【0035】
結晶質含量および融点を測定するためのDSCスキャンは、ASTM D 451−97に従い、Intercooler II付属品を備えた、Perkin Elmer 7 DSC装置を使用して実施する。その装置にはドライボックスが備わっていて、そのドライボックスを通過させてN2パージしている。9〜10mgの試験片を使用し、アルミニウムパンの中に畳み込む。DSCの試験は、3段のサイクルで実施する。そのサイクルは、−50℃で開始し、次いで10℃/分の昇温速度で250℃まで上昇させ、10分間保持する。次いで、そのサンプルを10℃/分の速度で−50℃にまで冷却し、次いで10℃/分の速度で250℃まで加熱しない。
【0036】
樹脂を単離した後で、その樹脂の溶融粘度を、ASTM D3835に従い、230℃、100s−1で測定した。
【0037】
【表2】
【国際調査報告】