特表2016-511790(P2016-511790A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-511790非リン系添加剤を使用する腐食および汚染の軽減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-511790(P2016-511790A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(54)【発明の名称】非リン系添加剤を使用する腐食および汚染の軽減
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/14 20060101AFI20160328BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20160328BHJP
   C23F 11/18 20060101ALI20160328BHJP
【FI】
   C23F11/14
   C02F1/00 T
   C02F1/00 K
   C02F1/00 V
   C23F11/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-550711(P2015-550711)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】US2013077324
(87)【国際公開番号】WO2014105763
(87)【国際公開日】20140703
(31)【優先権主張番号】13/730,523
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.GSM
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ジャスビル エス
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062BA05
4K062BB18
4K062BC09
4K062FA04
(57)【要約】
水性システムと接触する表面の腐食または汚染を軽減するのに有効な水処理用組成物が提供される。水処理用組成物は、1種以上のアゾール化合物、1種以上の遷移金属、および1種以上の分散剤を、様々な他の添加剤に加えて含むことができる。水処理用組成物は、リンが排除されても依然として有効であり得る。また、水性システムにおける表面の腐食または汚染を軽減する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のアゾール化合物、1種以上の遷移金属、および1種以上の分散剤を含む水処理用組成物であって、リンを含まないことを特徴とする水処理用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の分散剤が、約2ppm〜約50ppmの範囲の量で存在し、任意選択により約3ppmの量で存在することを特徴とする水処理用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上のアゾール化合物が、約1ppm〜約50ppmの範囲の量で存在することを特徴とする水処理用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上のアゾール化合物が、約3ppm〜約20ppmの範囲の量で存在することを特徴とする水処理用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の遷移金属が、約2ppm〜約4ppmの範囲の量で存在することを特徴とする水処理用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の遷移金属が、亜鉛を含むことを特徴とする水処理用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上のアゾール化合物が、トリルトリアゾール(tolytriazole)、およびトリルトリアゾールとブチルベンゾトリアゾールの混合物からなる群から選択されることを特徴とする水処理用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の分散剤が、ポリマー、コポリマー、またはターポリマーを含み、前記ポリマー、コポリマー、またはターポリマーが、アクリル酸、マレイン酸、ポリマレイン酸、およびスルホン化モノマーからなる群から選択される一員を含むことを特徴とする水処理用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の分散剤が、アクリル酸を含むコポリマー、ならびにアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする水処理用組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の分散剤が、約3ppmの量のアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーを含み、前記1種以上の遷移金属が、約2ppm〜約4ppmの範囲の量の亜鉛を含み、前記1種以上のアゾール化合物が、約4ppmの量のトリルトリアゾールを含むことを特徴とする水処理用組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の水処理用組成物であって、前記1種以上の分散剤が、約3ppmの量のポリマレイン酸、ならびにアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーの混合物を含み、前記1種以上の遷移金属が、約4ppmの量の亜鉛を含み、前記1種以上のアゾール化合物が、約3ppmの量のブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含むことを特徴とする水処理用組成物。
【請求項12】
水性システムにおける表面の腐食または汚染を軽減する方法であって、
(a)少なくとも1つの金属表面を有する筐体を用意するステップと、
(b)水性媒体を筐体に導入するステップと、
(c)有効量の1種以上のアゾール化合物、有効量の1種以上の遷移金属、および有効量の1種以上の分散剤を含み、リンを含まない水処理用組成物を、前記水性媒体に注入するステップと、
を含み、
(d)任意選択により、監視および制御ユニット、ならびに1つ以上の化学物質注入ポンプを含むオンライン式自動化法であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、ステップ(b)の前に、少なくとも1つの金属表面を、有効量の1種以上のアゾール化合物、有効量の1種以上の遷移金属、および有効量の1種以上の分散剤を含み、リンを含まない水処理用組成物で前処理するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、前記少なくとも1つの金属表面が、銅または銅合金を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、1種以上のアゾール化合物の前記有効量が、約2ppm〜約20ppmであり、1種以上の遷移金属の前記有効量が、約2ppm〜約4ppmであり、1種以上の分散剤の前記有効量が、約2ppm〜約20ppmであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記1種以上の分散剤が、アクリル酸を含むコポリマー、ならびにアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーからなる群から選択され、前記1種以上の遷移金属が、亜鉛を含み、前記1種以上のアゾール化合物が、トリルトリアゾール、およびトリルトリアゾールとブチルベンゾトリアゾールの混合物からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、1種以上のアゾール化合物の前記有効量が、約2ppm〜約20ppmであり、1種以上の遷移金属の前記有効量が、約2ppm〜約4ppmであり、1種以上の分散剤の前記有効量が、約2ppm〜約20ppmであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、前記1種以上の分散剤が、アクリル酸を含むコポリマー、ならびにアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーからなる群から選択され、前記1種以上の遷移金属が、亜鉛を含み、前記1種以上のアゾール化合物が、トリルトリアゾール、およびトリルトリアゾールとブチルベンゾトリアゾールの混合物からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法であって、前記1種以上の分散剤が、約3ppmの量のポリマレイン酸、ならびにアクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むコポリマーの混合物を含み、前記1種以上の遷移金属が、約4ppmの量の亜鉛を含み、前記1種以上のアゾール化合物が、約3ppmの量のブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
水の1つ以上の特性を監視および制御する方法であって、
(a)保存デバイスを用意するステップと、
(b)水を保存デバイスに導入するステップと、
(c)制御装置、および制御装置と連通している複数のセンサーを含む監視および制御ユニットを用意するステップであり、複数のセンサーのそれぞれが水の特性を測定するように操作可能であるステップと、
(d)制御装置と連通している1つ以上のポンプを用意するステップであり、1つ以上のポンプが1つ以上の化学物質注入ポンプを含むことができるステップと、
(e)測定される水の1つ以上の特性のそれぞれに対する許容範囲を、制御装置に入力するステップと、
(f)水と連通している第1の端部、ならびに監視および制御ユニットの注入口に接続されている第2の端部を有する送出導管を用意するステップと、
(g)保存デバイスから、水の試料を監視および制御ユニットにポンプで注入するステップと、
(h)水の試料の1つ以上の特性を、複数のセンサーで測定するステップと、
(i)リンを実質的に含まない水処理用組成物を、化学物質注入ポンプで水に添加するステップと、
(j)生産水の試料の測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で制御装置に入力された許容範囲内にあるかどうかを決定するステップと、
(k)測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で入力されたその特性に関連する許容範囲外にある場合には、1つ以上の化学物質注入ポンプから水への流入を変化させるステップであり、化学物質が、水に関連して測定された特性を許容範囲内に入るように調節することができるステップと、
(l)任意選択により、ステップ(a)〜(j)を反復して、1つ以上の特性がステップ(e)で入力された許容範囲内に入ったかどうかを決定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腐食の制御に有用な組成物および方法に関する。特に本開示は、リンを全く含まない腐食制御組成物、および腐食性の水性システムにおける金属の腐食を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体における金属表面の腐食は、石油ガス産業、食品/飲料産業、洗浄/消毒産業、パルプおよび紙、発電、製造、ならびに公共施設などの産業にとって長年問題になっている。例えば、石油およびガスの生産中には、塩水、有機酸、二酸化炭素、硫化水素、および微生物などのいくつかの他の腐食性構成要素が存在することが周知である。こうした強い作用のある成分は、金属表面の孔食、脆化、および全般的な喪失から明らかになる通り、激しい腐食を引き起こすおそれがある。金属表面は、クロム鋼、フェライト合金鋼、オーステナイトステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼、および高ニッケル含量鋼、銅、ならびに炭素鋼を含めた高合金鋼から構成され得る。
【0003】
食品/飲料および洗浄/消毒産業では、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの溶液が一般に使用されており、この溶液は、多様な表面を洗浄するための漂白剤および殺菌剤として非常に有効である。しかし、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、多くの処理表面に対して腐食作用を及ぼし、特に金属表面は非常に腐食される。
【0004】
金属を腐食させる原因には、いくつかの機構がある。腐食性水システムでは、全体的な腐食率は、酸素を低減して陰極反応を抑制することによって制御される。しかし、最も強力で費用効率が高い水処理プログラムは、陽極と陰極の両方における反応を阻止するために、陽極抑制剤と陰極抑制剤の両方を含んでいる。
【0005】
腐食および汚染の軽減は、あらゆる水系または水性システムにおいて必須である。先行技術では、腐食および汚染の軽減に一般に使用される添加剤の大部分は、オルトリン酸、ポリリン酸、またはホスホン酸として一般に公知の有機リン酸などのリンを含んでいる。リンを含有する腐食および汚染抑制剤組成物によってある程度の成功が得られたが、近年、リンは環境上好ましくないことが発見され、したがって環境機関は、リンの使用の低減を義務付け、または完全に禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0069202号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、リンを含まない腐食および汚染を軽減する組成物、ならびにこのようなリンを含有していない組成物を使用して腐食または汚染を軽減する方法が、依然求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
汚染および腐食を軽減するのに有用な水処理用組成物が開示される。水処理用組成物は、1種以上のアゾール化合物、1種以上の遷移金属、および1種以上の分散剤を含むことができる。水処理用組成物は、リンが排除されていてもよく、またはリンを含まなくてもよい。
【0009】
また、水性システムにおける表面の腐食および汚染を軽減する方法が開示される。この方法は、少なくとも1つの金属表面を有する筐体を用意するステップと、水性媒体を筐体に導入するステップと、有効量の1種以上のアゾール化合物、有効量の1種以上の遷移金属、および有効量の1種以上の分散剤を含む水処理用組成物を、水性媒体に注入するステップを含むことができる。水処理用組成物は、リンが排除されていてもよく、またはリンを含まなくてもよい。
【0010】
別の態様では、本開示は、水の1つ以上の特性を監視および制御する、オンライン式自動化法を提供する。この方法は、
(a)保存デバイスを用意するステップと、
(b)水を保存デバイスに導入するステップと、
(c)制御装置、および制御装置と連通している複数のセンサーを含む、監視および制御ユニットを用意するステップであり、複数のセンサーのそれぞれが水の特性を測定するように操作可能であるステップと、
(d)制御装置と連通している1つ以上のポンプを用意するステップであり、1つ以上のポンプが化学物質注入ポンプを含むことができるステップと、
(e)測定される水の1つ以上の特性のそれぞれに対する許容範囲を、制御装置に入力するステップと、
(f)保存デバイス内の水と連通している第1の端部、ならびに監視および制御ユニットの注入口に接続されている第2の端部を有する送出(delivery)導管を用意するステップと、
(g)保存デバイスから、水の試料を監視および制御ユニットにポンプで注入するステップと、
(h)水の試料の1つ以上の特性を、複数のセンサーで測定するステップと、
(i)リンを実質的に含まない水処理用組成物を、化学物質注入ポンプで保存デバイス内の水に添加するステップと、
(j)生産水の試料の測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で制御装置に入力された許容範囲内にあるかどうかを決定するステップと、
(k)測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で入力されたその特性に関連する許容範囲外にある場合には、1つ以上の化学物質注入ポンプから水への流入を変化させるステップであり、化学物質が、水に関連して測定された特性を許容範囲内に入るように調節することができるステップと、
(l)任意選択により、ステップ(a)〜(k)を反復して、1つ以上の特性がステップ(e)で入力された許容範囲内に入ったかどうかを決定するステップと
を含む。
【0011】
また、本明細書に記載の方法のいずれも、少なくとも1つの金属表面を、リンが排除された本明細書に開示の水処理用組成物で前処理するステップを含むことができる。
【0012】
これまで、以下の本発明の詳細な説明がより良好に理解され得るように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広範に概説してきた。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点を、以下に記載する。開示の概念および具体的な実施形態は、本発明のその目的を実施するために、他の実施形態を変形または設計するための基礎として容易に利用できることを、当業者は理解されたい。また、このような等価な実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱しないことを、当業者は理解されたい。
【0013】
本発明の詳細な説明を、図を具体的に参照しながら以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ポリマレイン酸分散剤、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマー分散剤の混合物を組み込んだシステムを、これらの分散剤を含んでいない対照システムと比較した、石英結晶の微量天秤による重量増加の経時的比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、水性媒体における腐食および汚染を軽減するのに有用な組成物および方法を含む処理を提供する。この処理では、リン含有組成物を使用する必要が排除される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「腐食抑制剤」は、開示の腐食抑制剤、腐食抑制剤中間体、および腐食抑制剤生産物配合物の少なくとも1種または任意の組合せに言及することを企図する。これらの化合物は、水処理用組成物と呼ぶこともできる。
【0017】
一態様では、本開示は、水系または水性システムと接触し、それらを含有し、または収容する表面の腐食および汚染を抑制または軽減するのに有用な水処理用組成物を提供する。
【0018】
特定の態様では、水処理用組成物は、リンを実質的に含まない。本願では、「リン」という用語は、リンだけでなく、リンを担持している添加剤、リン誘導体等を含むことも企図する。他の態様では、組成物は、リンを全く含んでいない。
【0019】
本開示の水処理用組成物は、1種以上のアゾール化合物を含むことができる。アゾールは、当技術分野で一般に公知であり、任意のアゾール、またはアゾールの組合せが、本開示に従って選択され得る。アゾールは、少なくとも1種の他の非炭素原子、例えば窒素、硫黄、または酸素を含有するあるクラスの5員の窒素複素環化合物である。本開示の水処理用組成物に含まれ得るアゾールの非限定的な例示的な例は、アルキル置換アゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ブチルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、およびそれらの任意の組合せである。例えば、特定の態様では、水処理用組成物は、トリルトリアゾールを含み、リンが排除されている。他の態様では、水処理用組成物は、2つ以上のアゾールの混合物、例えばトリルトリアゾールおよびブチルベンゾトリアゾールの混合物を含み、リンが排除されている。
【0020】
アゾールは、開示の水処理用組成物中に、約1ppm〜約100ppmの範囲の量で存在することができる。例えば、本開示の水処理用組成物は、約2ppm〜約10ppmの1種以上のアゾール、または約3ppm〜約25ppmの1種以上のアゾール、または約10ppm〜約50ppmの1種以上のアゾール、または約2ppm〜約100ppmの範囲内の任意の部分的な組合せの1種以上のアゾールを含むことができる。特定の態様では、本開示の水処理用組成物は、約4ppmのトリルトリアゾールを含み、リンが排除されている。他の態様では、本開示の水処理用組成物は、約3ppmのブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含み、リンが排除されている。
【0021】
さらに特定の態様では、水処理用組成物は、1種以上の分散剤を含むこともできる。分散剤は、例えば、アクリル酸、マレイン酸、またはスルホン化モノマーとのポリマレイン酸、およびそれらの任意の組合せを含む、任意のポリマー、コポリマー、ターポリマー等であり得る。このような分散剤の一例は、アクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)のコポリマーである。このような分散剤の別の例は、マレイン酸およびAMPSのコポリマーである。このような分散剤のさらなる一例は、アクリル酸、スルホン化アクリルアミド、およびAMPSのターポリマーである。したがって一態様では、本開示の水処理用組成物は、アクリル酸を含む分散剤を含むことができ、リンが排除されている。別の態様では、本開示の水処理用組成物は、ポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーを含む分散剤を含むことができ、リンが排除されている。
【0022】
分散剤は、水処理用組成物中に、約2ppm〜約50ppmの範囲の量で存在することができる。例えば、分散剤は、約3ppm〜約10ppm、もしくは約10ppm〜約20ppm、もしくは約20ppm〜約30ppmの範囲、またはそれらの任意の範囲もしくは部分範囲の量で存在することができる。したがって、一態様では、本開示の水処理用組成物は、約3ppmのポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤を含むことができ、リンが排除されている。
【0023】
さらに特定の態様では、本明細書に開示の水処理用組成物は、1種以上の遷移金属を含むこともできる。遷移金属は、当技術分野で一般に公知であり、元素周期表などで分類されている。遷移金属の一例は、亜鉛である。したがって本開示の一態様では、水処理用組成物は、亜鉛を含み、リンが排除されている。
【0024】
1種以上の遷移金属は、水処理用組成物中に、約1ppm〜約5ppmの範囲の量で存在することができる。したがって、特定の態様では、水処理用組成物は、約1ppm〜約3ppmの1種以上の遷移金属、または約2ppm〜約4ppmの1種以上の遷移金属、またはその任意の範囲もしくは部分範囲を含むことができる。例えば、一態様では、水処理用組成物は、約2ppmの亜鉛を含み、リンが排除されている。別の態様では、水処理用組成物は、約4ppmの亜鉛を含み、リンが排除されている。
【0025】
特定の態様では、水処理用組成物中に、1種以上の第四級アンモニウム塩およびメタケイ酸ナトリウムなどの他の構成要素が存在することができるが、リンは排除されている。
【0026】
本開示によれば、水処理用組成物の特定の一実施形態は、亜鉛、ポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびにトリルトリアゾールを含み、リンが排除されている。一態様では、水処理用組成物は、約4ppmの亜鉛、約4ppmのポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびに約4ppmのトリルトリアゾールを含み、リンが排除されている。
【0027】
代替の一実施形態では、水処理用組成物は、亜鉛、ポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびにブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含み、リンが排除されている。一態様では、水処理用組成物は、約4ppmの亜鉛、約4ppmのポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびに約3ppmのブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含み、リンが排除されている。
【0028】
鋼などの金属表面の腐食を軽減するために、先行技術ではいくつかの水処理用組成物が使用されてきたが、本発明者らは、本明細書に開示の水処理用組成物が、銅および銅合金表面に加えて、鋼、亜鉛めっき鋼または炭素鋼表面の腐食および汚染を抑制または軽減するのに有効であることを、予想外に発見した。
【0029】
また、本発明者らは、特定のアゾール化合物と亜鉛の間、およびアゾール化合物の特定の組合せと亜鉛の間に、予期しなかった相乗作用があることを発見した。この相乗作用は、本願の実施例で示される。
【0030】
本開示の水処理用組成物は、表面の腐食を抑制または軽減するのに有用であるだけでなく、表面の汚染を軽減または抑制するのにも有用である。本開示の水処理用組成物で処理される表面は、水性媒体と接触し得る任意の他の表面に加えて、本願の背景技術部分で言及した水性または水システムのいずれかと呼ばれる、またはそれらに存在する任意の表面であり得る。例えば、本開示の水処理用組成物は、本願の実施例で示される通り、油砂操作で使用される再循環用の池水の厳しい環境でも、上手く使用することができる。
【0031】
表面の汚染を抑制または軽減する方法に加えて、表面の腐食を軽減または抑制する方法も、本開示によって保護される。すべての場合において、水性システムが提供され、水性媒体が筐体内に収容され、または筐体の様々な表面と接触する。筐体は、例えば、水性媒体を所望の位置に輸送するパイプまたは導管であり得る。また筐体は、例えば、再循環用の池水を保存する容器、または油砂操作もしくは他の工程における熱交換器であり得る。本開示によれば、処理される表面は、汚染または腐食が生じ得る、水性媒体と接触するいかなる表面であってもよい。
【0032】
一態様では、容器、導管、熱交換器等であり得る金属筐体の1つ以上の表面の腐食を軽減する方法が開示される。この方法は、1つ以上の金属表面を有する筐体を用意するステップと、水性媒体を筐体に導入するステップと、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上を水性媒体に注入するステップとを含むことができる。1つ以上の金属表面は、例えば、銅または銅合金であり得る。1つ以上の金属表面は、鋼、炭素鋼、亜鉛めっき鋼等であってもよい。この方法は、水性媒体を筐体に導入する前に、1つ以上の金属表面を、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上で前処理するステップを含むこともできる。この前処理ステップは、例えば、水処理用組成物を表面上に噴霧することによって、または水処理用組成物を含む溶液に表面を浸漬することによって達成され得る。このステップがこの方法に含まれる場合、この方法は、1つ以上の金属表面を、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上で前処理した後に、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上を水性媒体に注入するステップをさらに含むことができる。この方法に従って、金属筐体の1つ以上の表面の腐食は軽減される。
【0033】
別の態様では、容器、導管、熱交換器等であり得る金属筐体の1つ以上の表面の汚染を軽減する方法が開示される。この方法は、1つ以上の金属表面を有する筐体を用意するステップと、水性媒体を筐体に導入するステップと、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上を水性媒体に注入するステップとを含むことができる。1つ以上の金属表面は、例えば、銅または銅合金であり得る。1つ以上の金属表面は、鋼、炭素鋼、亜鉛めっき鋼等であってもよい。この方法は、水性媒体を筐体に導入する前に、1つ以上の金属表面を、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上で前処理するステップを含むこともできる。このステップがこの方法に含まれる場合、この方法は、1つ以上の金属表面を、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上で前処理した後に、有効量の本開示の水処理用組成物の1種以上を水性媒体に注入するステップをさらに含むことができる。この方法に従って、金属筐体の1つ以上の表面の汚染は軽減される。
【0034】
本明細書に開示の方法の任意の態様では、水処理用組成物は、亜鉛、ポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびにトリルトリアゾールを含むことができ、リンが排除されている。任意の態様では、水処理用組成物は、約4ppmの亜鉛、約3ppmのポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびに約4ppmのトリルトリアゾールを含むことができ、リンが排除されている。
【0035】
本明細書に開示の方法の任意の態様では、水処理用組成物は、亜鉛、ポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびにブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含むことができ、リンが排除されている。任意の態様では、水処理用組成物は、約2ppmの亜鉛、約3ppmのポリマレイン酸、ならびにアクリル酸およびAMPSのコポリマーの混合物を含む分散剤、ならびに約4ppmのブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物を含むことができ、リンが排除されている。
【0036】
本明細書に開示の任意の方法によれば、水性媒体は、いかなるタイプの水を含むこともできる。特定の態様では、水性媒体は、再循環用の池水を含む。
【0037】
本開示の水処理用組成物は、当技術分野で公知の任意の手段によって水性媒体に注入することができる。例えば、組成物は、化学物質定量ポンプによって水性媒体に注入することができる。添加地点として、池水からの注入口への添加地点、またはシステムの至る所に水を輸送する導管への添加地点などの、システムの任意の位置を使用することができる。熱交換器の注入口に添加することもできる。他の許容される注入方法として、水性媒体への曝露前の金属表面の前処理、連続的もしくは間欠的注入、またはバッチ処理が挙げられる。連続的な注入を実施することができ、この場合、化学物質の保存槽と共に適切な化学物質注入装置が現場で利用可能であり、その他の方法では、組成物は、通常1〜2週間毎、特定の場合には1ヵ月毎の長時間間隔で大量の化学物質使用量を適用する特殊処理車両を使用して注入することができる。バッチ適用は、本開示の水処理用組成物(および任意選択により他の化学物質)を含有する保存槽および大型水槽を含む処理運搬車を使用して実施することができる。処理運搬車は、現場位置に移動し、個々の場所を処理する(例えば、米国特許第4,964,468号参照)。
【0038】
さらに、本開示の方法のいずれも、自動化システムを使用して実施することができる。システムは、様々な水の特性を測定し、制御し、かつ/または最適化するために、オンライン式ユニットを含むことができる。最適化は、水性システムの水に関連する1つ以上の特性を測定して、1つ以上の特性が確実に許容範囲内に入るようにすることを含み、測定されるそれぞれの各特性について、1つ以上の特性が許容範囲内に含まれない場合には、水性システムへの本開示の組成物の1つ以上の流れを増大もしくは低減するなどして変化させることを含むことができる。
【0039】
特定の態様では、システムは、制御装置デバイスおよび複数のセンサーを含む監視および制御ユニットを含むことができる。複数のセンサーのそれぞれは、制御装置と連通していてもよい。例えば、ユニットが5つのセンサーを含む場合、5つのセンサーのそれぞれが、制御装置と連通していてもよい。特定の態様では、制御装置は、スキッド(skid)または他のタイプの支持部材に取り付けられていてもよい。さらに、スキッドは、トレーラーなどの可動式筐体の内部に搭載することができる。したがって、監視および制御ユニットは、可動性であり、ある場所から別の場所に非常に容易に移動することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「制御装置」という用語は、構成要素、例えば処理装置、記憶デバイス、デジタル保存媒体、任意の数の通信プロトコルおよび/またはネットワークを通して通信(commuications)を支援するように操作可能な通信回路を含む通信インターフェース、ユーザーインターフェース(例えば、陰極線管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチスクリーン、または他のモニターを含み得るグラフィカルユーザーインターフェース)、および/または他の構成要素を有する手動操作者または電子デバイスを指す。制御装置は、好ましくは、1つ以上の特定用途向け集積回路、プログラム、コンピューター実行可能指示もしくはアルゴリズム、1つ以上の有線デバイス、無線デバイス、および/または1つ以上の機械デバイスと統合するように操作可能である。さらに、制御装置は、本発明のフィードバック、フィードフォワード、または予測ループ(複数可)を統合するように操作可能である。制御装置システム機能のいくつかまたはすべては、例えばローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、無線ネットワーク、インターネット接続、マイクロ波リンク、赤外線リンク、有線ネットワーク(例えば、イーサネット(登録商標))等での通信のためのネットワークサーバーなどの中心位置にあってもよい。さらに、信号伝送および信号処理アルゴリズムを容易にするために、他の構成要素、例えば信号調節装置またはシステムモニターが含まれていてもよい。
【0041】
特定の態様では、制御装置は、システムパラメータに関連する任意の測定されたまたは予測された特性を優先するための階層論理を含む。例えば、制御装置は、ORPよりもシステムのpHを優先し、またはその逆を行うようにプログラムすることができる。このような階層論理の目的は、システムパラメータの制御を改善し、円形制御ループを回避することであると理解されたい。
【0042】
一態様では、監視システムおよびそれに関連する方法は、自動化制御装置を含む。別の態様では、制御装置は、手動または半手動である。例えば、システムが、システム内の様々なセンサーから受信した1つ以上のデータセットを含む場合、制御装置は、どのデータ点/データセットをさらに処理するかを自動的に決定することができ、または操作者が、部分的もしくは完全にこのような決定を行うことができる。生産水のデータセットは、例えばORP、DO、pH、蛍光、濁度、分散剤、アゾールなどの特定の化学物質の濃度、温度、圧力、流速、全溶解または懸濁固形分などの変数またはシステムパラメータを含むことができる。このようなシステムパラメータは、典型的に、任意のタイプの適切なデータ収集装置、例えばこれらのパラメータのために特別に設計されたセンサー、例えばpHセンサー、イオン分析器、温度センサー、熱電対、圧力センサー、腐食モニター、および/または任意の他の適切なデバイスもしくはセンサーを用いて測定される。データ収集装置は、制御装置と連通しており、代替の実施形態によれば、制御装置によって付与される高度機能(本明細書に記載の制御アルゴリズムの任意の一部を含む)を有することができる。
【0043】
これらの水性システムで使用される水は、保存デバイス内に保存することができる。本開示によれば、保存デバイスは、例えば池、パイプライン、または水を保存するために使用できる類似のデバイスであり得る。本開示の特定の態様では、水性システムに由来する水の試料は、例えば支流を介してシステムから取り出し、水の特性の様々な測定を行うための制御装置を介して流れることができる。例えば、池に由来する水は、炭化水素回収工程で使用するために、パイプラインを介して熱交換器に流れることができる。導管は、水が熱交換器に入る前にパイプラインと流体連通している第1の端部、ならびに制御装置上の入力位置または監視および制御ユニット上の入力位置にある第2の端部を有することができる。水は、池またはパイプラインから導管を介して、制御装置デバイスまたは監視および制御ユニットにポンプで注入することができる。
【0044】
監視および制御ユニットは、水試料を分析し、試料に関するデータを制御装置に伝送することができる複数のセンサーを含む。複数のセンサーは、例えば伝導率、腐食モニター値、蛍光、pH、酸化/還元電位(ORP)、殺生物剤の濃度、濁度、温度、流量、および水に溶解した酸素(DO)を測定するためのセンサーを含むことができる。制御装置は、これらのセンサーのいずれか、これらのセンサーのすべて、またはこれらのセンサーの2つ以上の組合せを含むことができ、本開示のすべての態様では、センサーは、制御装置と連通していてもよい。本開示によって企図される他のタイプのセンサーとして、水中油分(oil in water)センサー、全溶解固形分センサー、および全懸濁固形分センサーを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0045】
腐食を測定するために使用されるセンサー(複数可)/モニターに関して、監視および制御ユニットの制御装置と連通している制御装置モジュール、制御装置モジュールと操作可能に連通しているセンサーモジュール、ならびに制御装置モジュールと操作可能に連通している抵抗モジュールを含む腐食モニターを使用することができ、ここで抵抗モジュールは、制御装置モジュールに対するプローブモジュールを識別することができる。腐食モニターは、制御装置モジュールと操作可能に連通している、少なくとも1つの金属センサー(metallurgical sensor)センサーまたはプローブ電極を有するプローブまたはセンサーモジュール、および制御装置モジュールと操作可能に連通している、抵抗値を有する抵抗モジュールを含むことができ、ここで抵抗値は、制御装置モジュールに対するセンサー/プローブ電極の金属的性質(metallurgy)を識別する。さらに、腐食モニターは、以下の、制御装置モジュール、制御装置モジュールと操作可能に連通しているプローブモジュール、および制御装置モジュールと操作可能に連通している抵抗モジュールを含む腐食監視デバイスを用意するステップと、プローブモジュールをシステムの水と接触させるステップと、プローブモジュールおよび抵抗モジュールに、制御装置モジュールを介して電流を充電するステップと、充電された抵抗モジュールの抵抗値に基づいて、制御装置モジュールによってプローブモジュールのタイプを識別するステップと、プローブモジュールが識別された後、制御装置モジュールによって腐食率を決定するステップと、この情報を監視および制御ユニットの制御装置に送信するステップに従って腐食率を決定することができる。腐食モニターおよび腐食を監視する方法のさらなる詳細は、米国特許第6,556,027号に見ることができ、この文書を本願に引用して援用する。
【0046】
水の試料を保存デバイスからポンプで監視および制御ユニットに注入した後、水を、例えば元々水が入っていた特定の保存デバイス、異なる保存デバイスに流し戻し、または廃棄する導管が存在する。これに関して、保存デバイスが池である場合、導管は、監視および制御ユニットから水を池に輸送し戻すことができる。したがって、特定の態様では、制御装置または監視および制御ユニットは、分析のために水を監視および制御ユニットに送るための送出導管を有することができ、分析した水を保存デバイスに戻し、または廃棄するように働く、戻し導管を有することもできる。
【0047】
また、本開示の監視および制御システムは、特定の態様では、1つ以上の化学物質注入ポンプを含むことができる。これらの化学物質注入ポンプは、保存デバイスと流体連通していてもよく、または2つ以上の保存デバイスが存在する場合にはそれぞれの保存デバイスと流体連通していてもよい。例えば、保存デバイスが池である場合、1つ以上の化学物質注入ポンプは、池と流体連通していてもよい。一態様では、化学物質注入ポンプから池につながる導管が存在していてもよい。次に必要に応じて、化学物質注入ポンプは、化学物質を、導管を介してシステム水を含む保存デバイスに供給することができる。また、複数の化学物質注入ポンプが存在していてもよく、各ポンプは、ポンプから保存デバイスにつながる導管を有することができ、または生産水を含む2つ以上の保存デバイスが存在する場合には、それぞれの保存デバイスにつながる導管を有することができる。それぞれ異なる化学物質注入ポンプは、その中に収容されている異なる化学物質を有することができ、それによって、水の試料の測定に基づいて、1種以上の異なる化学物質を保存デバイス内のシステム水に添加して、水の特性を改変することができる。他の態様では、化学物質注入ポンプは、化学物質を保存デバイスに導くための導管を含んでいる必要はないが、保存デバイスに十分に近接して位置することができ、それによって、流し台の上の蛇口と類似の方式で、保存デバイスに化学物質を簡単に放出することができる。さらに、化学物質注入ポンプは、水性システム内の水を輸送するパイプラインに直接つながる導管を含むことができる。すべての態様において、本開示の化学物質注入ポンプは、以下により詳細に記載する通り、制御装置と連通していてもよい。
【0048】
開示の監視および制御システムは、システム内の水に由来する、リアルタイムの信頼性のあるオンラインデータを作成する方法を提供する。前述の通り、水は、池などの保存デバイス内に保存することができ、その水の試料は、保存デバイスから出、導管を介して流れ、制御装置または監視および制御ユニットに注入することができ、そこで複数のセンサーによって分析される。制御装置が複数のセンサーから受信したデータに基づいて、生産水を化学物質により調節することができる。
【0049】
例えば、監視および制御システムが、1つ以上の化学物質注入ポンプを含む場合、これらの化学物質注入ポンプは、例として、有線接続、無線接続、電子的、セルラー方式、赤外線、人工衛星、または任意の他のタイプの通信ネットワーク、トポロジー、プロトコル、標準およびその他の任意の組合せによるものを含めた任意の数の方法で、制御装置と連通していてもよい。したがって、制御装置は、ポンプに信号を送信して、それらの化学物質の供給率を制御することができる。
【0050】
一態様では、監視および制御システムは、連続的または間欠的フィードバック、フィードフォワード、または予測情報を制御装置に提供するための複数のセンサーを有するように実装され、それによって、この情報をNalco Global Gatewayなどの中継デバイスに伝えることができ、それによって、携帯電話、コンピューター、またはセルラー通信を受信できる任意の他のデバイスなどの遠隔デバイスに、セルラー通信を介して情報を伝送することができる。この遠隔デバイスは、情報を解釈し、信号(例えば電子的指示)を、中継デバイスを介して制御装置に自動的に送り返して、制御装置にポンプ出力をいくらか調節させることができる。また情報は、制御装置によって内部処理することができ、制御装置は、信号をポンプに自動的に送信して、化学物質の注入量を調節することができる。複数のセンサーまたは遠隔デバイスから制御装置が受け取った情報に基づいて、制御装置は、ポンプが水性システムに注入する化学物質の量をリアルタイムに自動調節するように、様々なポンプに信号を伝送することができる。
【0051】
あるいは、制御装置からセルラー通信を受信する遠隔デバイスの操作者は、遠隔デバイスを介してポンプを手動で操作することができる。操作者は、遠隔デバイス、セルラー方式またはその他の方法を介して、指示を制御装置に通信することができ、制御装置は、化学物質注入ポンプの化学物質の添加率を調節することができる。例えば、操作者は、制御装置からのセルラー通信を介して、遠隔デバイスから信号またはアラームを受信し、遠隔デバイスを使用して制御装置に指示または信号を送り戻して、化学物質注入ポンプの1つ以上を作動させ、化学物質注入ポンプの1つ以上を停止させ、注入ポンプの1つ以上によって水に添加される化学物質の量を増大もしくは減少させ、またはそれらの任意の組合せを行うことができる。また、制御装置および/または遠隔デバイスは、任意の指示を実際に送信または入力する操作者なしに、自動的に先の調節または改変のいずれかを行うことができる。この能力が得られる理由は、予め設定されたパラメータまたはプログラムを制御装置または遠隔デバイスに入力することができ、それによって、制御装置または遠隔デバイスが、測定された特性が許容範囲外にあるかどうかを決定することができ、複数のセンサーが受信した情報に基づいてポンプを適切に調節し、または適切な警告を送信するようにプログラムされているのに従って、それを実行し得るからである。
【0052】
特定の態様では、遠隔デバイスまたは制御装置は、複数のセンサーからデータを受信し、そのデータが、水の1つ以上の測定された特性が許容範囲内にあること、または許容範囲外にあることを示すかどうかを決定するための適切なソフトウェアを含むことができる。また、ソフトウェアによって、制御装置または遠隔デバイスは、許容範囲外にある特性を修正するために行うべき適切な動作を決定することができる。例えば、測定された濁度が許容範囲を超えている場合、ソフトウェアによって、制御装置または遠隔デバイスは、この決定を行い、例えば、水への本明細書に開示の1種以上の分散剤の流量を増大するようにポンプに警告するなどの改善動作を行うことができる。
【0053】
本明細書に開示の監視および制御システム、ならびに/または制御装置は、複数のセンサーからの分析器信号を、ポンプ調節論理に変換し、特定の実施形態では、独特の原理で複数の化学物質注入ポンプの1つ以上を制御するためのプログラミング論理を組み込むことができる。操作できる化学物質注入ポンプのタイプの非限定的な例示的な例として、分散剤、アゾール、遷移金属、メタケイ酸ナトリウム、蛍光トレーサー、第四級アンモニウム塩、o−ホスファート、ホスフィンスクシナートオリゴマー、殺生物剤、スケール抑制剤、摩擦低減剤、酸、塩基、スルファイト、酸素捕捉剤、および有用であることが証明され得る任意の他のタイプの化学物質の注入に関与する化学物質注入ポンプが挙げられる。先の化学物質の具体例は、本開示を通して提示されており、本明細書に具体的に列挙されていない他の例は、本開示によって保護されるものとする。
【0054】
本開示の制御装置は、殺生物剤の濃度、蛍光、溶解した酸素(DO)の含量、伝導率、全溶解固形分(TDS)、pH、酸化/還元電位(ORP)、濁度、腐食度、温度、流量、水中油分、および全懸濁固形分などの、センサーからの水の読取り値を管理し、解釈することができる。これらの特性のすべてのためのセンサーを、監視および制御ユニットに組み込むことができ、またはこれらの特性の任意の組合せのためのセンサーを、監視および制御ユニットに組み込むことができる。例えば、特定の態様では、監視および制御ユニットは、腐食、濁度、ORP、pH、および蛍光センサーを含むことができる。
【0055】
これらのセンサーからの読取り値は、制御装置に送信し、制御装置によってプログラムすることができ、この制御装置は、例えば化学物質注入ポンプの速度を場合により無効にし、または改変するためのプログラミング論理制御装置(PLC)であってもよい。
【0056】
一態様では、本開示は、水性システム内の水の1つ以上の特性を監視し、制御し、かつ/または最適化する方法を提供する。水の試料のORP、pH、濁度等などの特性を測定し、かつ/または予測し、その後、センサーから制御装置に伝送され得る電気入力信号などの入力信号に変換する。制御装置は、順に、伝送された入力信号を受信し、受信した信号を入力数値に変換し、入力数値を分析し、出力数値を作成し、出力数値を出力電気信号などの出力信号に変換し、出力信号を、例えば遠隔通信デバイスまたは化学物質注入ポンプの1つ以上に伝送するように操作可能である。
【0057】
例えば、入力数値に最適なまたは許容されるORP範囲、pH範囲、濁度範囲等を決定し、かつ/または事前選択することができ、具体的な特性に関して測定された入力数値が最適範囲または許容範囲外にある場合には、化学物質注入ポンプに伝送した出力信号によって、水性システムへの化学物質の流入を変化させる。化学物質は、入力数値が最適範囲または許容範囲内に入るように、システムパラメータに関連する特性を調節することができる。先の工程は、最初に、保存デバイスから得た水の試料から進行することができ、初期の入力数値に基づいて水を調節することが必要な場合には、様々なポンプを調節することができ、その後、その工程を再び実施して、水の特性が最適範囲または許容範囲に入ったかどうかを決定することができる。
【0058】
この方法は、任意選択により、それぞれが独特の関連する特性を有している複数の異なるシステムパラメータ毎に反復され、あるいは、すべてのシステムパラメータを、複数のセンサーによって同時に分析することができる。
【0059】
特定の態様では、前述の通り、制御装置または遠隔デバイスに関連するソフトウェアは、様々な水特性の許容されるパラメータを含むことができ、またはこれらの許容されるパラメータは、制御装置もしくは遠隔デバイスにプログラムすることができ、その結果、制御装置または遠隔デバイスによって、特定の測定された特性が許容範囲内にあるかまたは許容範囲外にあるかがわかる。本開示の様々なパラメータの許容範囲は、例えばpHが約4〜約9、全懸濁固形分として測定された濁度が約50〜約2000PPMの範囲であってもよく、ORP範囲は、約600mV以下であり得る。これらのパラメータは、腐食およびその抑制に直接的または間接的に影響を及ぼす。標的腐食率を達成するために、腐食抑制剤の使用量は、センサー入力に基づいて制御装置によって調節される。使用量は、PLCに構築された所定の論理に基づいて決定される。
【0060】
いずれにしても、制御装置および/または遠隔デバイスは、測定された特性のいずれかが、それらの許容範囲外にあるかどうかを決定することができ、制御装置または遠隔デバイスは、自動的に改善調節を行って、水のこの特性を許容範囲内にすることができる。例えば、測定された濁度が、全懸濁固形分として約100PPM超である場合、制御装置または遠隔デバイスは、本開示の分散剤の1種以上の化学物質供給率を増大するための信号を、化学物質注入ポンプに送信することができる。追加の例示的な一例として、測定された水のORPが約200mVを超える場合、制御装置または遠隔デバイスは、本開示のアゾール、遷移金属、またはメタケイ酸ナトリウムの1種以上の流速を増大するための信号を、1つの化学物質注入ポンプ(または複数の化学物質注入ポンプ)に送信して、腐食率が所望の範囲内に入るように制御することができる。さらなる例示的な一例では、腐食モニターの信号が約3〜約5MPYの許容範囲を超えると、制御装置または遠隔デバイスによって、1種以上のアゾール、任意選択により1種以上の遷移金属、および任意選択によりメタケイ酸ナトリウムなどの本開示の腐食抑制剤の1種以上の化学物質供給率を増大するための信号を、化学物質注入ポンプに送信させる。
【0061】
さらにこのシステムでは、蛍光を使用して、より高い正確性で生産物供給を制御することができ、またはPLCに基づいてポリマーのいくらかの残部を維持して、指定性能のためにいくらかの生産物残部を維持することができる。
【0062】
本明細書に記載の通り、監視および制御ユニットは、水またはシステムパラメータに関連する特性を感知かつ/または予測し、その特性を、制御装置に伝送され得る入力信号、例えば電気信号に変換するように操作可能な複数のセンサーを含む。各センサーに関連する伝送器は、入力信号を制御装置に伝送する。制御装置は、伝送された入力信号を受信し、受信した信号を入力数値に変換し、入力数値を分析して、入力数値が最適範囲または許容範囲内にあるかどうかを決定し、出力数値を作成し、出力数値を出力信号に変換し、出力信号を、このような受信機能力が組み込まれたポンプ、または受信機能力が組み込まれた遠隔デバイス、例えばコンピューターもしくは携帯電話などの受信機に伝送するように操作可能である。受信機は、出力信号を受信し、操作者がポンプの流速を調節するように警告を発し、または受信機は、出力数値がその特性の許容範囲に入っていない場合には、ポンプの流速を自動的に変化させるように操作可能である。
【0063】
生産水の制御プログラムは、例えば中和化学物質、殺生物剤、腐食抑制剤、酸、塩基、スケール抑制剤、酸素捕捉剤、摩擦低減剤、分散剤、アゾール、遷移金属等の構成要素を含むことができる。このような化学物質は、従来、実験室で分析された生産水のグラブ(grab)試料から導出した測定結果に基づいて生産水に注入されてきた。しかし、こうしたタイプの測定では、初期試料を得、試料を分析のために実験室に移動し、水を処理するために現場に戻る間にかなりの時間が経過する場合があるので、水に対する特定の化学物質の使用量が過剰になり、または不足するおそれがある。この時間経過中、保存デバイス内の水の化学的性質は、故意または自然に変化する場合があり、したがって、実験室で試験した水は、現場の水を示す水でなくなることがある。このような問題を克服するために、本開示は、実験室またはグラブサンプリング技術を有する他の試験施設で水質を測定する必要なしに、水を監視し、化学物質の注入によって水の特性を制御する、可動式のオンライン式リアルタイム自動化法を提供する。
【0064】
化学物質ポンプ、アラーム器、遠隔監視デバイス、例えばコンピューターもしくは携帯電話、または他のシステム構成要素への測定パラメータまたは信号のデータ伝送は、任意の適切なデバイスを使用し、例としてWiFi(登録商標)、WiMAX(登録商標)、イーサネット、ケーブル、デジタル加入者回線、ブルートゥース、セルラー技術(例えば、2G、3G、ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)、GSM、ロングタームエボリューション(LTE)またはその他)等を含めた任意の数の有線および/または無線ネットワークを通して達成される。Nalco Global Gatewayは、適切なデバイスの一例である。任意の適切なインターフェース標準(複数可)、例えばイーサネットインターフェース、無線インターフェース(例えば、IEEE802.11a/b/g/x、802.16、ブルートゥース、光学的、赤外線、無線周波数等)、ユニバーサルシリアルバス、電話網など、およびこのようなインターフェース/接続の組合せを使用することができる。本明細書で使用される場合、「ネットワーク」という用語は、これらのデータ伝送方法のすべてを包含する。記載のデバイス(例えば、アーカイブシステム、データ分析ステーション、データ収集デバイス、処理デバイス、遠隔監視デバイス、化学物質注入ポンプ等)のいずれも、前述のまたは他の適切なインターフェースまたは接続を使用して、互いに接続することができる。
【0065】
一実施形態では、システムパラメータ情報は、システムから受信され、アーカイブされる。別の実施形態では、システムパラメータ情報は、時刻表またはスケジュールに従って処理される。さらなる一実施形態では、システムパラメータ情報は、リアルタイムまたは実質的にリアルタイムで直ちに処理される。このようなリアルタイムの受信は、例えばコンピューターネットワーク上の「ストリーミングデータ」を含むことができる。
【0066】
特定の実施形態では、複数の水もしくはシステムパラメータ、または水に存在する他の成分は、測定かつ/または分析することができる。代表的な測定パラメータまたは成分として、塩化物イオン、強酸または弱酸、例えば硫酸、亜硫酸、チオ亜硫酸、二酸化炭素、硫化水素、および有機酸、アンモニア、様々なアミン、ならびに液体または固体析出物が挙げられる。このようなパラメータを測定する様々な方法が企図され、本開示はいかなる特定の方法にも限定されない。代表的な方法として、限定されるものではないが、米国特許第5,326,482号、標題「On−Line Acid Monitor and Neutralizer Feed Control of the Overhead Water in Oil Refineries」;米国特許第5,324,665号、標題「On−Line Method for Monitoring Chloride Levels in a Fluid Stream」;米国特許第5,302,253号、標題「On−Line Acid Monitor and Neutralizer Feed Control of the Overhead Water in Oil Refineries」に開示の方法が挙げられ、これらの文献のそれぞれ全体を本願に引用して援用する。
【0067】
システムおよび/または水に添加される化学物質、例えば酸、塩基、殺生物剤、スケール抑制剤、アゾール、遷移金属、分散剤等は、任意の適切なタイプの化学物質注入ポンプを使用して、システムまたは水に導入することができる。最も一般的には、容積式注入ポンプが使用され、このポンプは、電気または空気圧で電力を得る。また、連続流注入ポンプを使用して、特殊化学物質が、急速移動する処理ストリームに適切かつ正確に注入されるようにすることができる。いかなる適切なポンプまたは送出システムも使用することができるが、例示的なポンプおよびポンプで注入する方法として、米国特許第5,066,199号、標題「Method for Injecting Treatment Chemicals Using a Constant Flow Positive Displacement Pumping Apparatus」および米国特許第5,195,879号、標題「Improved Method for Injecting Treatment Chemicals Using a Constant Flow Positive Displacement Pumping Apparatus」に開示の方法が挙げられ、これらの文献のそれぞれ全体を本願に引用して援用する。
【0068】
水に添加される化学物質は、水性システム内の任意の位置で水に添加することができる。例えば、化学物質は、水保存デバイスに添加することができ、またはシステムを介して水を輸送するパイプラインに添加することができる。
【0069】
特定のパラメータまたは特性の許容範囲または最適範囲は、個々のシステム毎に決定されるべきであることを理解されたい。あるシステムの最適範囲は、別のシステムの最適範囲とは大幅に変わる場合がある。本開示の概念では、企図されたシステムパラメータまたは特性に可能ないかなる許容範囲または最適範囲も保護される。
【0070】
いくつかの実施形態では、化学物質注入ポンプの変更は、頻度が制限される。いくつかの態様では、調節限界は、15分毎に最大1回に設定され、同方向の逐次的な調節は、例えば8回を超えないのがよい。いくつかの実施形態では、合計8回の調節または50%もしくは100%の変更を行った後、ポンプは、ある時間(例えば、2時間または4時間)にわたって停止することができ、アラームを始動させることができる。このような状況に遭遇する場合、操作者に警告するためのアラームを始動することが有利である。最大ポンプ出力などの他の制限が課される場合もある。本発明の範囲では、いかなる数の調節も任意の方向で制限なしに行われることを理解されたい。このような制限は、操作者によって決定される通り、または制御装置に予め設定される通り適用される。
【0071】
本開示の一態様によれば、水の1つ以上の特性を監視および制御するオンライン式の自動化法が提供される。1つ以上の特性とは、この方法によって、水の1つの特性、水の2つの特性、生産水の3つ、4つ、5つ、6つの特性等を制御または監視できることを意味する。前述の通り、特性は、pH、ORP、蛍光、濁度等であり得る。
【0072】
この方法は、(a)水のための保存デバイスを用意するステップを含むことができる。特定の態様では、2つの保存デバイスまたは3つの保存デバイスなどの、2つ以上の保存デバイスを用意することができる。例えば、保存デバイスは、池またはパイプラインであり得る。
【0073】
また、この方法は、(b)水を1つの保存デバイス(または複数の保存デバイス)に導入するステップを含むことができる。さらに、この方法は、(c)制御装置、および制御装置と連通している、それぞれが水の特性を測定するように操作可能である複数のセンサーを含む、監視および制御ユニットを用意するステップを含む。例えば、一態様では、ユニットは、5つのセンサー、例えば腐食モニター/センサー、濁度センサー、ORPセンサー、pHセンサー、および蛍光センサーを含むことができる。
【0074】
この方法は、(d)制御装置と連通している、1つ以上の化学物質注入ポンプを含むことができる1つ以上のポンプを用意するステップをさらに含むことができる。例えば、1種以上の分散剤を水に注入するように操作可能な化学物質注入ポンプを用意することができ、1種以上のアゾールを水に注入するように操作可能な化学物質注入ポンプを用意することができ、1種以上の遷移金属を水に注入するように操作可能な化学物質注入ポンプを用意することができ、蛍光トレーサーを水に注入するように操作可能な化学物質注入ポンプを用意することができ、および/またはメタケイ酸ナトリウムを水に注入するように操作可能な化学物質注入ポンプを用意することができる。さらに、化学物質注入ポンプは、前述の化学物質のいかなる組合せも含むことができる。したがって、一態様では、化学物質注入ポンプは、1種以上の分散剤、1種以上のアゾール、および1種以上の遷移金属、例えば亜鉛の混合物を含むことができ、したがってそれらを水に注入することができる。
【0075】
また、この方法は、(e)測定される水の1つ以上の特性のそれぞれに対する許容範囲を、制御装置に入力するステップを含むことができる。
【0076】
また、この方法は、(f)水保存デバイス(例えば、池に浸水され、またはパイプライン壁に接続されている)と流体連通している第1の端部、ならびに監視および制御ユニットの注入口に接続されている第2の端部を有する送出導管を用意するステップを含むことができる。
【0077】
また、この方法は、(g)保存デバイス(複数可)から、水の試料を監視および制御ユニットにポンプで注入するステップ、ならびに(h)水の試料の1つ以上の特性を、複数のセンサーで測定するステップを含むことができる。
【0078】
さらに、この方法は、(i)水の試料の測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で制御装置に入力された許容範囲内にあるかどうかを決定するステップを含むことができる。この決定ステップは、制御装置によって自動的に実施することができ、このステップでは、測定されたそれぞれの特性に対する測定値は、その特別な特性に関して入力された許容範囲と比較される。
【0079】
また、この方法は、(j)リンを実質的に含まない組成物を、化学物質注入ポンプで水に添加するステップを含むことができる。一態様では、リンを実質的に含まない組成物は、1種以上の分散剤を含む。別の態様では、リンを実質的に含まない組成物は、1種以上のアゾールを含む。さらに別の態様では、リンを実質的に含まない組成物は、1種以上のアゾールおよび1種以上の遷移金属を含む。さらに別の態様では、リンを実質的に含まない組成物は、1種以上のアゾール、1種以上の遷移金属、および1種以上の分散剤を含む。これらの態様のいずれにおいても、組成物は、リンを実質的に含まず、またはリンが完全に排除されている。
【0080】
また、この方法は、(k)測定された1つ以上の特性が、ステップ(e)で入力されたその特性に関連する許容範囲外にある場合には、生産水に関連して測定された特性を許容範囲内に入るように調節することができる化学物質の、1つ以上の化学物質注入ポンプから水への流入を変化させるステップを含むことができる。例えば、測定されたpHの特性が、約9を超える場合、化学物質注入ポンプに信号を送り、酸を生産水に注入させて、pHを約6〜約9の許容範囲内にすることができる。さらなる一例として、測定された濁度の特性が、許容範囲の上限を超えている場合、化学物質注入ポンプに信号を送り、分散剤を水に注入させて、濁度を下げることができる。
【0081】
また、この方法は、(l)任意選択により、ステップ(a)〜(k)を反復して、1つ以上の特性がステップ(e)で入力された許容範囲内に入ったかどうかを決定するステップを含むことができる。各測定された特性が、ステップ(i)、(j)、(k)または(l)のいずれかの後に測定された特性の許容範囲内に入っていた場合、水は、その所期の目的に適していることになり、その水を熱交換器に注入するなどによってシステムで使用することができる。しかし、1つ以上の測定された特性が、実質的にそれらの特性の入力許容範囲外にあり、1つ以上の特性をその特性の許容範囲内にするために多量の時間または資金が必要とされ得る場合には、水本体をただ廃棄すればよい。
【0082】
本明細書に開示し、特許請求する組成物、システムおよび方法のすべては、本開示に照らして過度の実験方法なしに生成し、実施することができる。本発明は、多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書では、本発明の特に好ましい実施形態に詳説されている。本開示は、本発明の原則の一例であり、本発明を、例示した特定の実施形態に制限するものではない。さらに、明確に逆の記載がない限り、「1つ(種)の」という用語の使用は、「少なくとも1つ(種)の」または「1つ(種)以上の」を含むことを企図する。例えば、「1つのデバイス」は、「少なくとも1つのデバイス」または「1つ以上のデバイス」を含むことを企図する。
【0083】
絶対的または近似的に示された任意の範囲は、それらの両方を包含することを企図し、本明細書で使用されるいかなる定義も、明示するためのものであり、限定的ではない。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似であるにもかかわらず、具体例に記載した数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定結果に見られた標準偏差からどうしても生じてしまういくらかの誤差を本来的に含有している。さらに、本明細書に開示のあらゆる範囲は、その範囲に組み込まれる任意のおよびすべての部分範囲(すべての少数値および値全体を含む)を包含すると理解されるべきである。
【0084】
さらに本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態のいくつかまたはすべての任意のおよびすべての可能な組合せを包含する。また、当業者には、本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態に加えられる様々な変更および変形が明らかになることを理解されたい。このような変更および変形は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の所期の利点を減じることなく加えることができる。したがって、このような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって保護されるものとする。
【0085】
前述のシステム、デバイスおよび論理、例えば制御装置は、多くの異なる方法で、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの両方の多くの異なる組合せによって実装され得る。例えば、システムのすべてまたは一部は、制御装置、マイクロプロセッサ、もしくは特定用途向け集積回路(ASIC)に回路を含むことができ、あるいは個別論理もしくは構成要素、または単一の集積回路上で組み合わせ、もしくは複数の集積回路に分散させた他のタイプのアナログもしくはデジタル回路の組合せで実装することができる。前述の論理のすべてまたは一部は、処理装置、制御装置、または他の処理デバイスによって実行するための指示として実装することができ、有形のまたは非一時的な機械可読またはコンピューター可読媒体、例えばフラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは読取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能読取り専用メモリ(EPROM)もしくは他の機械可読媒体、例えばコンパクトディスクを利用した読取り専用メモリ(CDROM)、または磁気もしくは光ディスクに保存することができる。したがって、コンピュータープログラム製品などの製品は、保存媒体および媒体に保存されたコンピューター可読指示を含むことができ、それによって、エンドポイント、コンピューターシステム、または他のデバイスで実行される場合、先の説明のいずれかに従ってデバイスに操作を実施させる。
【0086】
制御装置の処理能力は、任意選択により複数の分散処理システムを含む、複数の処理装置およびメモリなどの複数のシステム構成要素に分散することができる。パラメータ、データベース、および他のデータ構造は、別個に保存し、管理することができ、単一メモリまたはデータベースに組み込むことができ、多くの異なる方法により論理的かつ物理的に構成することができ、連結リスト、ハッシュ表、もしくは暗黙的保存機構などのデータ構造を含めた多くの方法で実装することができる。プログラムは、いくつかのメモリおよび処理装置に分散した単一のプログラム、別個のプログラムの一部(例えば、サブルーチン)であってもよく、または多くの異なる方法で、ライブラリー、例えば共用ライブラリー(例えば、動的リンクライブラリー(DLL))などに実装することができる。DLLは、例えば、前述のシステム処理のいずれかを実施するコードを保存することができる。
【実施例】
【0087】
腐食率を測定する一般的な方法は、注意深く秤量した材料の一部または試験クーポン(coupon)を、公知の時間をかけて腐食環境に曝露し、その環境から試験クーポンを取り出し、洗浄し、再び秤量することである。こうして、金属喪失質量を決定することができる。
【0088】
本発明の実施例では、本発明者らは、水10リットルを保持するガラス容器を含むシステムを開発した。容器に、サーモスタットで加熱した加熱器および再循環ポンプを取り付けた。尾鉱池に由来する水9リットルを、ガラス容器に添加した。予め秤量した2つの炭素鋼の腐食クーポンを、水に浸水させたガラス容器内に吊るした。サーモスタットを、約25〜約80℃の所望の温度に設定した。試験は14日間実施し、その間、特により高温における任意の蒸発を相殺するために蒸留水を添加することによって、容器内の水の体積を維持した。
【0089】
記載の手順は、複数のガラス容器が含んでいた。容器の1つは腐食抑制剤を含有していなかったが、他の容器には、本開示に記載の異なる抑制剤または水処理用組成物を異なる使用量で入れた。
【0090】
各容器に含まれていた水処理用組成物、ならびにそれらの量を、以下の表1に具体的に列挙する。
分散剤1=18%ポリマレイン酸分散剤、ならびに12%アクリル酸およびAMPSのコポリマー分散剤の混合物である組成物;
アゾール1=42.8%アゾールを含むナトリウム塩としてのトリルトリアゾール;
分散剤2=アクリル酸およびヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテルのコポリマー分散剤;ならびに
アゾール2=ブチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの混合物。
【0091】
14日目の最後に、試験クーポンを取り出し、洗浄し、一定重量になるまで乾燥させた。試験クーポンの重量を記録して、腐食抑制剤/水処理用組成物の腐食率および有効性を決定した。これらの実験から得られたデータを、以下の表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に列挙した各セル番号は、異なるガラス容器を表す。全体で、16個のガラス容器を用意し、そのそれぞれに試験クーポンを吊るし、処理用化学物質または抑制剤を添加しなかったセル番号1を除いて、それぞれに処理用化学物質の異なる組合せを入れた。示されている通り、本開示の水処理用組成物は、優れた腐食保護をもたらした。
【0094】
セル番号6に関して、このセルは、水処理用組成物として20ppmのアゾール1を含んでいた。この水処理用組成物は、8.17MPYの腐食率および70%の腐食保護をもたらした。セル番号6の結果を、セル番号10の結果と比較する。セル番号10は、4ppmの亜鉛、4ppmの分散剤1の混合物および4ppmのアゾール1を含む水処理用組成物を含んでいた。この水処理用組成物は、10.2MPYの腐食率および63%の腐食保護をもたらした。これらの結果は、セル番号6で得られた結果をわずかに下回ったが、使用したアゾール1の量は、著しく少なかった(すなわち、セル6は20ppmであり、セル10は4ppmであった)。このデータならびに残りのセルから収集したデータから、アゾールと亜鉛の間には相乗効果があることが予想外に発見された。したがって、水処理用組成物に亜鉛または任意の他の遷移金属が含まれる場合、多量の(例えば20ppmの)アゾールで達成され得る結果と類似の結果を得るのに、アゾールはかなり少なくて済む。
【0095】
本開示の水処理用組成物の汚染軽減有効性を試験するために、以下の手順に従った。石英結晶を使用する微量天秤技術を使用して、汚染軽減に関する水処理用組成物の効率を決定した。この技術を、オンラインで汚染を測定するための直列式、およびバッチ処理の両方で使用した。尾鉱池水1リットルを容器に添加し、その容器を、サーモスタットで所望の温度に制御したホットプレートによって加熱した。また、磁気撹拌機を使用して水を撹拌した。1つの実験では、3ppmの分散剤1を水に添加した。対照実験では、分散剤を水に添加しなかった。微量天秤プローブを、上部から水に浸水させた。微量天秤によって振動数を記録し、その振動数を較正して、石英結晶の振動数を石英結晶上の重量増加に変換した。重量増加が大きいほど、汚染度が高い。結果を図1に示す。
【0096】
示されている通り、約2時間後には、3ppmの分散剤1を用いて実施した試験の重量増加は、ほぼ一定のままであり、3ppmの分散剤1なしに実施した試験の経時的な重量増加よりも著しく低かった。
【0097】
本明細書に開示し、特許請求する組成物および方法のすべては、本開示に照らして過度の実験方法なしに生成し、実施することができる。本発明は、多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書では、本発明の特に好ましい実施形態に詳説されている。本開示は、本発明の原則の一例であり、本発明を、例示した特定の実施形態に制限するものではない。さらに、明確に逆の記載がない限り、「1つ(種)の」という用語の使用は、「少なくとも1つ(種)の」または「1つ(種)以上の」を含むことを企図する。例えば、「1つのデバイス」は、「少なくとも1つのデバイス」または「1つ以上のデバイス」を含むことを企図する。
【0098】
絶対的または近似的に示された任意の範囲は、それらの両方を包含することを企図し、本明細書で使用されるいかなる定義も、明示するためのものであり、限定的ではない。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似であるにもかかわらず、具体例に記載した数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定結果に見出された標準偏差からどうしても生じてしまういくらかの誤差を本来的に含有している。さらに、本明細書に開示のあらゆる範囲は、その範囲に組み込まれる任意のおよびすべての部分範囲(すべての少数値および値全体を含む)を包含すると理解されるべきである。
【0099】
さらに本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態のいくつかまたはすべての任意のおよびすべての可能な組合せを包含する。また、当業者には、本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態に加えられる様々な変更および変形が明らかになることを理解されたい。このような変更および変形は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の所期の利点を減じることなく加えることができる。したがって、このような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって保護されるものとする。
図1
【国際調査報告】