(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-512170(P2016-512170A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(54)【発明の名称】スプレー水を連続鋳造機からサンプリングするための固水分離
(51)【国際特許分類】
B22D 11/124 20060101AFI20160328BHJP
B22D 11/14 20060101ALI20160328BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20160328BHJP
【FI】
B22D11/124 Z
B22D11/14
G01N1/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-500247(P2016-500247)
(86)(22)【出願日】2014年2月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】US2014016055
(87)【国際公開番号】WO2014158402
(87)【国際公開日】20141002
(31)【優先権主張番号】13/800,842
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビオトン リーセ デライン
(72)【発明者】
【氏名】モア ロカ ライア
(72)【発明者】
【氏名】フェイルストラ エリック
(72)【発明者】
【氏名】デ フラーフ ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ブロッカー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フレイホーフェン ステファヌス ヘンドリクス マリア
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AB01
2G052AB26
2G052AC24
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA22
2G052EA04
2G052GA23
2G052JA11
(57)【要約】
本発明は、連続鋳造動作における溶融金属ストランドを冷却するために用いられるスプレー水の特性を測定しているモニタの精度を向上させるための方法と装置に向けられている。この方法は、サンプル水から粒子を除去するために、高効率のスライド篩を利用する。このスライド篩を利用しなければ、前記モニタが故障するか破損するであろう。このような粒子除去により、モニタが、より正確な測定を提供し、これにより、動作費用が低減され、また、メンテナンス費及び製造費が削減できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の連続鋳造プロセスのスプレーチャンバ内でストランドにスプレーされた冷却媒体の特性を正確にサンプリングする方法であって、
冷却媒体のサンプルを分離装置に通過させるステップを含み、前記分離装置が、角度付きの流れ面を備え、当該流れ面が、媒体流が前記流れ面上を流れ、前記媒体サンプルからの流体及び微粒子が前記流れ面を通過してモニタに達するように構成及び配置され、前記媒体中の大きい粒子は通過せずに前記角度付き流れ面を滑り落ちて除去され、これにより、前記面上での詰りの形成を防止し、且つ、
前記モニタが冷却媒体の化学的又は物理的特性を決定するように構成及び配置されている、方法。
【請求項2】
前記角度付き流れ面が複数の延在部材を含み、前記延在部材が、上部がより幅広で底部がより幅狭の先細状の構造を有し、且つ、隣り合う延在部材の上部が複数の細孔を画成し、前記面が水平軸に対して20度〜60度の範囲の角度で配置され、且つ、サンプルが前記細孔プレートを10リットル/分〜100リットル/分の流量で通過することを可能にしている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離装置が、前記ストランドのすぐ下に、又は、装置の腐食し易い特定の部品の下に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記面が、0.15mm〜1mmの断面径を有する複数の細孔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分離装置が、0.1m2〜1m2の表面積を有する面を有し、当該面に沿って複数のスリットが配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、以前に前記スプレーチャンバ内では蒸気であった凝縮液媒体、直接スプレー水、及びスプラッシュにより構成された混合液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モニタが、pH測定器、フッ化物測定プローブ、酸化還元電位測定器、腐食測定器、温度、導電率、及び、これらの任意の組合せから成るリストから選択される装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが前記分離装置を通過していない場合、前記モニタへの流体流が、前記媒体中に存在する粒子により詰まっていると考えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モニタが、前記スプレーチャンバ内で生じている腐食の程度を判断する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モニタが、前記冷却媒体の組成が予め決められた量を超える腐食を生じさせるかどうかを判断する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モニタにより測定された特性に応答して、前記媒体のpHを上下させ、且つ、適切な量の腐食抑制物質を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが、モニタにより分析された後にスケールピットに送られるか、又は前記スプレーチャンバ内に戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モニタに到達する粒子が、圧倒的に、前記モニタが前記媒体を測定している5分間内に前記媒体中に導入された粒子である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、連続鋳造機システムにて使用されるスプレー水の特性を正確にモニタリングする方法及び装置に関する。例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載されているように、連続鋳造は、溶融金属を半完成金属製品(例えば、ビレット、ブルーム又はスラブ)に変える方法であり、高容量且つ連続的な動作に有用である。典型的には、連続鋳造において、溶融金属は、タンディッシュと称される特別なトラフに収集され、次いで、正確な制御率で第1の冷却ゾーンへと送られる。第1冷却ゾーンにおいて、溶融金属は、ソリッドモールド(銅からつくられる場合が多く、水/液体冷却される)に接触する。ソリッドモールドは、溶融金属から熱を奪って、金属のソリッド(固体)「スキン」(“skin”)を、まだ液体のコアの周囲に形成させる。この固体被覆液体金属をストランドと称する。
【背景技術】
【0002】
次いで、通常、ストランドは第2の冷却ゾーンへと送られる。この第2ゾーンにおいて、ストランドがスプレーチャンバ内に配置され、スプレーチャンバにて液体冷却媒体(大抵は水)がストランドに対してスプレーされ、それにより、金属をさらに冷却する。スプレーチャンバにて用いられるスプレー技術の例が、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11に記載されている。ストランドは、スプレーされている間、ローラにより支持もされている。これらのローラは、ストランドの固体壁が破断されること(液体金属がストランドの固体スキンのひび割れから漏出すること)を防止する。この破断は、溶綱静圧(互いに押圧して移動している固体と液体金属との異なる特性により生じる圧力)により生じるものである。そして、より固体のストランドが、次の冷却、形成、及び/又は切断ステップへと送られる。
【0003】
特許文献12及び特許文献13に詳細に記載されているように、適切な鋳造動作は、使用部品の全てに対する正確な制御及び調整を必要とする。特に重要なのは、スプレー時の冷却媒体のスプレーに関する精密な制御である。非特許文献1は、適切な冷却技術において、液滴寸法、スプレー密度分布、及び液滴速度などの因子の全てがいかに重要であるかを記載している。なぜなら、これらの因子がストランド上での蒸気層又は蒸気層の形成に影響を与え、これが、熱流束分布及びストランドの冷却局所化に影響を与える(これらの全てが、製造される金属の全品質に影響を与える)からである。液滴の化学組成を知ることで、これらの因子を決定し、また、腐食及び冷却率に対する洞察を行うことができる。しかしこれは、スプレーチャンバ内に存在する冷却媒体の正確な特性をリアルタイムで知ることを必要とする。しかし、このような理解は、スプレーチャンバの性質により困難である。
【0004】
しばしば、多数の粒子が最終的に冷却媒体と接触する場合があり、これらの粒子は媒体の特性を変化させ、これらの特性の測定を困難にする。例えば、潤滑剤(特許文献14に記載されているような成形粉など)がソリッドモールド上にしばしば塗布され、これらがストランドにより第2冷却ゾーンに引き込まれる。潤滑剤がこのゾーンに引き込まれると、超高温水に反応して、高反応性フッ化水素酸を含む錯体化学構造を形成する場合がある。これが、強度の圧力及び温度と共に、ストランドからの、又はスプレーチャンバ自体のパイプ若しくは壁部からの金属片の腐食からさらなる粒子を形成させることがある。そしてこれは、サンプリングに使用される収集された何らかの冷却媒体を粒子で満たし、これがパイプを詰まらせ、或いは、モニタ自体を損傷する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,549,797号明細書
【特許文献2】米国特許第8,220,525号明細書
【特許文献3】米国特許第8,066,054号明細書
【特許文献4】米国特許第4,699,202号明細書
【特許文献5】米国特許第4,494,594号明細書
【特許文献6】米国特許第4,444,495号明細書
【特許文献7】米国特許第4,235,280号明細書
【特許文献8】米国特許第3,981,347号明細書
【特許文献9】米国特許第6,360,973号明細書
【特許文献10】米国特許第8,216,117号明細書
【特許文献11】米国特許第7,905,271号明細書
【特許文献12】米国特許第7,799,151号明細書
【特許文献13】米国特許第4,024,764号明細書
【特許文献14】米国特許第6,315,809号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】学術論文:American Iron and Steel Technology会議(2004)のクリスティ・タナー(Kristy Tanner) による「キャスタ内のノズル性能の再評価のための衝撃、速度、液滴寸法、及び熱流束の比較」(Comparison of Impact, Velocity, Drop Size and Heat Flux to Redefine Nozzle Performance in the Caster)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、連続鋳造動作において使用される凝縮された液体冷却媒体から固体分子を分離する方法及び装置を提供することが有用で望ましい。本項に記載した技術は、本明細書にて参照するいずれの特許、刊行物、又はその他の情報に関しても、特に明示されていない限り、本発明に対する「先行技術」(“Prior art”)と認められるものではない。さらに、本項は、調査がなされたこと、或いは、米国特許法施行規則第1.56(a)条に規定されているようなその他の関連情報が全く存在しないことを意味するものと解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、金属の連続鋳造プロセスのスプレーチャンバ内でストランドにスプレーされた冷却媒体の特性を正確にサンプリングする方法に向けられている。この方法は、冷却媒体のサンプルを分離装置に通過させるステップを含む。前記分離装置は、角度付きの流れ面を備え、当該流れ面は、媒体流が前記流れ面上を流れ、前記媒体サンプルからの流体及び微粒子が前記流れ面を通過してモニタに達するように構成及び配置されている。前記媒体中の大きい粒子は、通過せずに前記角度付き流れ面を滑り落ちて除去され、これにより、前記面上での詰り(clog)の形成を防止する。前記モニタは、冷却媒体の化学的又は物理的特性を決定するように構成及び配置されている。詰りがないことにより、鋳造動作中の媒体の連続モニタリングが可能である。もしも詰りが形成されると、モニタは、サンプルを十分に/全く受け取れなくなるであろう。そして、鋳造動作は、媒体組成物から得られる効果を検知できない(blind)であろう。
【0009】
本発明の前記角度付き流れ面は、複数の延在部材を含み得る。前記延在部材は、上部がより幅広で底部がより幅狭の先細状の構造を有する。隣り合う延在部材の上部が複数の細孔を画成し得る。前記面は、水平軸に対して20度〜60度の範囲の角度で、好ましくは30度〜50度の範囲の角度で配置されることができ、前記細孔プレートを10リットル/分〜100リットル/分の流量、好ましくは、20リットル/分〜80リットル/分の流量でサンプルが通過することを可能にする。前記分離装置は、前記ストランドのすぐ下に、又は、装置の腐食し易い特定の部品の下に配置され得る。
【0010】
前記面は、0.15mm〜1mmの断面径を有する複数の細孔を含み得、且つ/又は、0.15mm
2〜1mm
2の断面積、好ましくは、0.3mm〜0.8mmの断面径を含み得る。前記分離装置は、0.1m
2〜1m
2の表面積、好ましくは、0.3m
2〜0.8m
2の表面積を有する面を有し、当該面に沿って複数のスリットが配置されている。
【0011】
前記サンプルは、以前に前記スプレーチャンバ内では蒸気であった凝縮液媒体、直接スプレー水、及びスプラッシュにより構成された混合液を含み得る。前記モニタは、pH測定器、フッ化物測定プローブ、酸化還元電位測定器、腐食測定器、温度、導電率、及び、これらの任意の組合せから成るリストから選択され得る。前記サンプルが前記分離装置を通過していない場合には、前記モニタへの流体流が、前記媒体中に存在する粒子により詰まってしまったかもしれない。前記モニタは、前記スプレーチャンバ内で生じている腐食の程度を判断し得る。前記モニタは、前記冷却媒体の組成が、予め決められた量を超える腐食を生じさせるかどうかを判断し得る。前記方法は、さらに、前記モニタにより測定された特性に応答して、前記媒体のpHを上下させ、且つ、適切な量の腐食抑制物質を投与するステップを含み得る。前記サンプルは、モニタにより分析された後にスケールピットに送られるか、又は、スプレーチャンバ内に戻され得る。前記モニタに到達する粒子は、前記モニタが前記媒体を測定している5分間内に前記媒体中に導入された粒子を圧倒的に含み得る。
【0012】
さらなる特徴及び利点が、以下に記載する詳細な説明から明らかになろう。
【0013】
以下に、本発明の詳細な説明を、図面を具体的に参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【0015】
本開示に関し、図面における類似の参照番号は、特に明記しない限り類似の特徴物を示すものとする。図面は本発明の原理の例示に過ぎず、本発明を、例示された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の定義は、本出願において用語がどのように用いられるか、特には、請求項がどのように解釈されるべきかを決定するために提供される。定義の組織化は便宜上のものに過ぎず、いずれの定義も、いずれかの特定のカテゴリに制限することを意図していない。
【0017】
「キャスタ」(“Caster”)は、溶融金属を、半完成の固体金属製品、例えば、ビレット、ブルーム、又はスラブに変えるための連続鋳造プロセスを用いる装置を意味する。
【0018】
「冷却媒体」(“Cooling medium”)は、ストランドにスプレーされてストランドをさらに冷却しかつ凝固させる流体(典型的には液体)を意味し、この流体は、典型的に本質的に水を含み又は水から成るが、霧及び/又は空気を含み得、或いは、霧及び/又は空気から成り得る。
【0019】
「モニタ」(“Monitor”)は、少なくとも1つの物理的又は化学的特徴を測定し、そして、この測定に応答して信号又は表示を出力するように構成及び配置された装置を意味し、これは、米国特許出願第13/095,042号、及び/又は第13/730,087号、並びに、米国特許第6,645,428号、第6,280,635号、第7,179,384号、第6,312,644号、第6,358,746号、第7,601,789号、及び、第7,875,720号に記載されている方法及び/又は装置のいずれか1以上の装置を含むが、これらに限定されない。
【0020】
「スプレーチャンバ」(“Spray Chamber”)は、ストランドに冷却媒体をスプレーしてさらに固化する場所であるキャスタの一部を意味する。通常、スプレーチャンバは、ソリッドモールド(第1の冷却ゾーン)の直後に配置される第2の冷却ゾーンである。しかし、スプレーチャンバが溶融金属を冷却する第1の源であってもよく、又は、その他の冷却装置の後に、或いは、その他のスプレーチャンバの後に配置されてもよい。
【0021】
「ストランド」(“Strand”)は、相対的に固体の外側スキンを有し、かつ、このスキン内で溶融状態にある流れを意味する。
【0022】
本出願における上記の定義又はいずれか他の箇所に記載されている説明が、一般的に辞書で用いられているか又は参照により本出願に組み込まれる文献源に記載されている意味(明示的又は黙示的)と一致しない場合、本出願、及び、特に請求項の用語は、本出願における定義又は記載に従うものであり、一般的な定義、辞書の定義、及び、参照により本出願に組み込まれる定義に従うものではないことが理解されよう。上記に鑑みて、或る用語が辞書により解釈される場合にのみ理解可能であるような場合、その用語が、カーク・オスマー科学技術辞典(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)第5版(2005)(ワイリー・ジョンアンドサンズ社(Wiley, John & Sons, Inc.)により出版)により定義されているならば、その定義が、特許請求項においてこの用語がどのように定義されるべきかを定めるものとする。
【0023】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却媒体のサンプルが、連続鋳造スプレーチャンバから出て分離装置を通り、その後、冷却媒体の化学的及び/又は物理的特性を決定するモニタリング装置に到達する。冷却媒体は水を含むことができ、或いは、基本的に水から構成され得る。冷却媒体のサンプルは、ストランドと接触したときに蒸発した媒体から凝縮されることができる。この媒体は、酸(例えばフッ化水素酸)を含み得る。この酸は、媒体と、鋳型にて使用された潤滑剤との反応から生成されたものである。媒体は、ストランドの腐食部又は浸食部からの、或いは、装置(例えば、第2冷却ゾーンのパイプ又は壁部)からの金属粒子を含む場合がある。
【0024】
一般的に、分離装置をストランドの下に配置することができる。しかし、多くの場合、モニタリングすべき水は、装置の特定の部品又はスプレーチャンバのゾーンで生じている水の影響を示すような、非常に局所的領域に特定の水である。従って、流量は大き過ぎてはならない。これは、その他の場所の水が跳ねて流入し、サンプルを希釈し、特定の場所の水が含んでいる情報を失うことを避けるためである。
【0025】
また、分離装置を、戦略的に、非常に腐食し易い場所の付近又はすぐ下に配置してもよい。分離装置を、微細金属粒子の通過は可能にするが大きい金属粒子の通過は遮断するように構成及び配置することができる。これは、サンプル中に十分な金属が存在することを可能にし、それにより、キャスタ内で生じている腐食を有効に測定させ、同時に、サンプルが、容易に検査され且つモニタリング装置を損傷する可能性が少ない形態に移行することを可能にする。
【0026】
分離装置は、液体媒体の代表的なサンプルを収集するように配置及び構成することができる。少なくとも1つの実施形態において、スライドされる篩(slid-sieve)が、10〜100リットル/分の流量を、好ましくは、20〜80リットル/分の流量を可能にする。この速度で、十分な量の媒体がモニタに入って代表的なサンプルを提供するが、この量は、キャスタ内で生じている様々な化学的効果を打ち消すほどには多すぎない。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、分離装置は、キャスタのスプレーチャンバ内部の水の化学的特性の変化のモニタリングを容易にするように構成及び配置される。これを達成するために、分離装置を通過してモニタリング装置へ流れる十分な流量が、プロセスをリアルタイムで反映する読み取りを行うために必要である。例として、処理水から5分間以内の読み取りを行う場合、水サンプルの流量は、10〜25リットル/分、好ましくは、15リットル/分が最適である。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、スライド篩は、粒子状物質をより収集し易い場所に配置される。例えば、粒子源(例えば、ストランド、又は、装置の腐食し易い部品)のすぐ下の場所か、或いは、スプレーの流れベクトルのすぐ下流の場所に、その他の場所よりも多くの粒子が蓄積するであろう。
【0029】
ここで、
図1及び
図2を参照すると、分離装置(10)の少なくとも1つの例が示されている。分離装置(10)は、第1の角度付き面(1)を備え、この面の上から流体サンプルが装置に流入する。流体は、第1角度付き面(1)から第2の角度付き面(2)に流れる。第2角度付き面(2)は1以上の細孔(ポア)を有し、流体及び微粒子はこの細孔を通過できるが粗い物質は通過できない。こうして、分離装置に非常に近い場所でごく最近腐食又は浸食されたばかりの微粒子を分離させ、モニタに向かって流れる流体と共に通過させる。しかし、以前に腐食/浸食されたスプレーチャンバ内の残存物質の塊といったような、より粗い物質は分離装置に保持される。次いで、流体は、第3の角度付き面(3)上へ流れる。少なくとも1つの実施形態において、第2角度付き面(2)に沿って流れる流体流は、粗い粒子を第2角度付き面(2)から、第3角度付き面(3)上に落下させることなく運び去る。
【0030】
少なくとも1つの実施形態において、第1角度付き面及び/又は第2角度付き面(1,2)の角度は、最適な流量が達成されるように確立される。少なくとも1つの実施形態において、この角度は、水平軸に対して20度〜60度であり、好ましくは30度〜50度である。これは、流体が堆積粒子をプレートの表面から流し去ることを可能にし、そして同時に、代表的な量の微粒子を含む流体が第3角度付き面(3)へと流れていくことも可能にする。そして、第3角度付き面(3)が、濾過された流体サンプルを収集してモニタリング装置に送る。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、第2角度付き面は、流体及び微粒子は通過できるが粗い物質は通過できない1以上の又は複数の細孔を含み得る。このような細孔は、0.15mm
2〜1mm
2の断面積、及び/又は、0.15mm〜1mmの断面径、好ましくは、0.30mm
2〜0.8mm
2の断面積を有する。少なくとも1つの実施形態において、フィルタ面(2)の表面積は、好ましくは、0.1m
2〜1m
2、より好ましくは、0.3m
2〜0.8m
2である。少なくとも1つの実施形態において、細孔の寸法は、分離装置が粒子を蓄積するために配置される場所の傾向に比例し得る。少なくとも1つの実施形態において、分離装置の一部又は全てが、酸、熱、及び/又は水性腐食に対して耐性を有する材料から構成される。分離装置の一部又は全てがステンレス鋼から構成されてもよい。
【0032】
図2、
図3及び
図4を参照すると、第2角度付き面(2)が1以上のスライド篩を含み得ることが示されている。スライド篩は、複数の延在部材(extending member)(5)を含み得る。延在部材は、上面(この面上に媒体(7)の流れが着地する)が下面よりも幅広であるような先細状の構造を有する。隣り合う延在部材(5)間の狭いスロット開口部(4)が、微粒子及び流体は通過させるが粗い物質(8)は通過させない細孔を画成している。
【0033】
図2に示されているように、スロット開口部(4)は、少なくともその一部が鉛直軸及び水平軸に沿って延在するように配置され得る。その結果、媒体は、スロット開口部(4)に沿ってその下端に落下するまで跳動(slosh)する。流体がスロット開口部(4)をこのように移動している間に、流体及び微粒子は、長い時間をかけて粗い物質から分離される。
図3に示されているように、スロット開口部(4)は、鉛直軸及び水平軸に対して少なくとも垂直に延在するように配置され得る。
図4に示されているように、延在部材(5)は、1以上の支持ロッド(6)に係合により支持され得る。延在部材(5)及び支持ロッド(6)から成るアレイが、第2角度付き面(2)の一部又は全体を画成し得る。
【0034】
図2及び
図5に示されているように、分離装置は、第3の角度付き面(3)が流体流を第2角度付き面(2)の流れ方向に対してほぼ垂直の方向に向けるように構成及び配置され得る。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、サンプルは、分離装置からモニタ装置(pH測定器、フッ化物測定プローブ、酸化還元電位測定器、腐食測定器、導電率、温度、及び、これらの任意の組合せから成るリストから選択される)へと送られる。粗い粒子をサンプルから除去することにより、より正確な測定を行うことができ、より頻繁な測定を行うことができ、測定をより良い容易に行うことができ、モニタリング装置を損傷しなくなるであろう。少なくとも1つの実施形態において、最初にスライド篩を通過しなかった場合、モニタ及び/又はモニタへの供給装置が損傷されるか又はサンプルを適切に測定できない。
【0036】
分離装置(10)の1以上の部品の配置は、キャスタシステムのスプレーチャンバの性質に特に適している。キャスタは金属を高速で流し込む場合が多いため、熱環境のわずかな変化が鋳型の熱流束を大きく変化させる場合がある。その結果、冷却媒体の異なる又は一貫性がない特性又は作用により、熱伝達及び熱応力の速度が広範に異なる場合がある。例えば、冷却媒体中に幾つかの材料が存在する場合、これらの材料が、鋳型にランダムに堆積して熱伝達を不均一にするであろう。同様に、水中に存在する幾つかの粒子がランダムな酸化銅生成物を銅鋳型上に形成する場合があり、或いは、媒体の微生物侵襲により鋳型上に酸化鉄がランダムに堆積する場合がある。その他の材料、例えば有機炭素が、媒体の幾つかを発泡させる可能性があり、これは、幾つかの媒体の冷却特性を一貫性なく変化させる。このような作用が鋳型の熱伝達を不均一にする場合があり、鋳型の破損、過度の摩耗、及び、割れ及び欠陥を生じるであろう。従って、冷却媒体の組成のリアルタイム分析が、冷却媒体がどのように機能するかを理解するために、及び、チャンバの動作効率の全体を維持するために必須である。分離装置は、粗い物質は除去するが、流体及び微粒子がモニタ上に運ばれることは可能にするため、分離装置は、冷却媒体の状態の長期間リアルタイム分析を容易にすることができ、モニタへのサンプルの入力流れの詰まりを定常的に除去する必要による障害がない。その結果、本発明は、ユーザがキャスタを動作させ、そして同時に、媒体に起因する問題を、本発明の分離装置を有さない類似のモニタよりも長時間モニタすることを可能にする。
【0037】
少なくとも1つの実施形態において、面の角度、並びに/又は、面上を流れる媒体の流量、及び/若しくは、微粒子を有する流体が細孔を通過する速度が、連続鋳造動作における媒体の、特定の粗度、粒子集団寸法、及び媒体の供給速度のために最適化される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態において、分離装置を通過したサンプルは、次いでモニタにより、発生している腐食の程度を判断するために分析される。次いで、任意選択的に、ストランドにスプレーされるスプレー水の組成が、腐食を低減するために変更される。
【0039】
少なくとも1つの実施形態において、分離装置を通過したサンプルは、次いで、予め決められた量を超える腐食を生じるかどうかを判断するために分析される。次いで、任意選択的に、ストランドにスプレーされるスプレー水の組成が、腐食を低減するために変更される。
【0040】
少なくとも1つの実施形態において、スプレー媒体サンプルの測定されたパラメータに応答して、さらなるスプレーのpHが上下され、且つ/又は、1以上の化学添加物が媒体に加えられる。
【0041】
少なくとも1つの実施形態において、スプレー媒体サンプルの測定されたパラメータに応答して、スプレーされた冷却媒体は、再循環され又は再循環されずにストランドに再スプレーされる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態において、スプレー媒体サンプルの測定されたパラメータに応答して、スプレーされた冷却媒体は、将来の使用のために保存されるか、又は、廃棄物として処理される。
【0043】
少なくとも1つの実施形態において、分離装置を通過したサンプルは、次いで、分離装置内の金属粒子がストランドから生じているのか、或いはキャスタ装置の特別な部品から生じているのかを判断するために分析される。この分析に基づいて、プロセス状況(金属供給速度、金属温度、スプレー特性)、ストランドの組成を変えるかどうか、装置を修理/交換するかどうか、及び、どれだけ長い間鋳造動作を維持するか、動作を停止/開始するかどうか、並びに、これらの任意の組合せに関して決定が行われ得る。
【0044】
少なくとも1つの実施形態において、分離装置を通過する前には、ストランドから生じた金属の、装置から生じた金属に対する比率は非常に大きいが、スライド篩を通過することで、この比率は、装置から生じた金属を検出する信号を打ち消すことになり、そして、装置の腐食は検出されないか、又は、その見かけの程度は誤りとなろう。
【0045】
少なくとも1つの実施形態において、蒸気媒体が凝縮して液体媒体になる速度を決定するためにモニタが用いられる。しかし、粒子が分離される間、サンプルがモニタに入ることを粒子が妨害していたために、モニタは誤って低い凝縮速度を提示していたであろう。
【実施例】
【0046】
上記の説明は、以下の例を参照することにより、より良好に理解されるであろう。これらの例は例示のために提示されるのであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0047】
スプレーチャンバにてスプレーされた多数の冷却水サンプルが分離装置を通過した。第2角度付き面の不動スクリーンの孔寸法は0.15mmであった。様々な角度及び向きをテストした(表1)。
【0048】
収集した200gの粒子を4リットルの水中に分散し、混合液をグリッドの上面に流した。水及び粒子の一部が不動スクリーンを通過した。その他部分はサンプル装置により収集されなかった。通過した粒子及び水の重量を加え、スプレーされた総重量と比較し、これにより、除去効率を決定した(表1)。
【0049】
最良の向きは、最良の水流収集と、サンプリング装置に入る粒子が最小であることの組合せであった。表1に示されているように、最良の向きは水平であり且つグリッドの角度が45度であった。
【表1】
* OXY2にて収集された水流は、製造される鋼鉄の等級及び鋳造速度に応じて、0.1m
3/h〜3.6m
3/hであった。
【0050】
本発明を多くの異なる形態で具体化し得るが、本明細書においては、本発明の特定の好ましい実施形態を詳細に記載した。本開示は本発明の原理の例示であり、本発明を、例示された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書にて言及した全ての特許、特許出願、科学誌、及び、その他の任意の参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本発明は、本明細書にて記載されて本明細書に組み込まれる様々な実施形態の一部又は全ての任意の可能な組合せを包含する。
【0051】
上記の開示は例示を目的としたものであり、網羅的であることを意図してはいない。この記載は、多くの変型及び代替案を当業者に示唆するであろう。これらの代替案及び変型の全てが、特許請求の範囲内に包含されるものとする。特許請求の範囲において、用語「含む」(“comprising”)は、「〜を含むがこれに限定されない」(“including but not limited to”)ことを意味する。当業者は、本明細書に記載された特定の実施形態のその他の等価物を認識するであろう。等価物もまた特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0052】
本明細書に開示された全ての範囲及びパラメータが、その中に包含される任意の及び全ての部分的範囲、並びに、端点間の全ての数を含むものと理解されたい。例えば、「1〜10」と示された範囲は、最小値1と最大値10との間(1及び10も含む)の任意の及び全ての部分的範囲、すなわち、最小値1又は1より大きい値(例えば1〜6,1)から始まり、最大値10又は10未満の値(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7)で終了する全ての部分的範囲、そして、最終的には、その範囲に含まれる各数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10を含むと理解されるべきである。
【0053】
これによって本発明の好適な及び代替の実施形態の記述を終える。当業者は、本明細書中に記載された特定の実施形態に対するその他の均等物を認識するであろう。これらの等価物もまた、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【国際調査報告】