(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-512526(P2016-512526A)
(43)【公表日】2016年4月28日
(54)【発明の名称】オナプリストン多形体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07J 9/00 20060101AFI20160401BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20160401BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20160401BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20160401BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20160401BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20160401BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20160401BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20160401BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20160401BHJP
【FI】
C07J9/00CSP
A61K31/575
A61K9/20
A61K9/48
A61K45/00
A61K37/48
A61K31/56
A61K31/07
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-501305(P2016-501305)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月4日
(86)【国際出願番号】US2014023651
(87)【国際公開番号】WO2014164861
(87)【国際公開日】20141009
(31)【優先権主張番号】61/777,752
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515243992
【氏名又は名称】アルノ セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】ARNO THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】ステファン プロニウク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
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4C206NA14
4C206ZB26
(57)【要約】
オナプリストンの多形体並びにそのような多形体の製造及び使用方法が提供される。結晶多形体は、それらの粉末X線回折パターン及びその他の特性により特徴付けることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図3の高分解能粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項2】
図4の粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項3】
図7の高分解能粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項4】
図8の粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項5】
図11の高分解能粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項6】
図12の粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項7】
図13の粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項8】
図14の粉末X線回折パターンを特徴とする、オナプリストン結晶形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のオナプリストン結晶形体及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を含む薬剤組成物。
【請求項10】
単位剤形中の、請求項9に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
単位剤形が錠剤、丸剤、カプセル剤、及びトローチ剤からなる群より選択される、請求項10に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
オナプリストン結晶形体が約10〜約200mgの量で存在する、請求項9に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの追加活性薬剤をさらに含む、請求項9に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
追加活性薬剤が抗腫瘍剤、ホルモン、ステロイド、又はレチノイドからなる群より選択される、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
追加活性薬剤がエベロリムス、トラスツズマブ、TM1-D、抗HER2薬、ベバシズマブ、パクリタキセル、ドセタキセル、タキサン、ドキソルビシン、リポソマールドキソルビシン、ペグ化リポソマールドキソルビシン、アントラサイクリン、アントラセンジオン、カルボプラチン、シスプラチン、5-FU、ゲムシタビン及びシクロホスファミドからなる群より選択される、請求項14に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
請求項9〜15に記載の薬剤組成物の治療有効量を、治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物を治療する方法。
【請求項17】
治療有効量が約2.5mg〜約200mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
薬剤組成物が経口、非経口、舌下、鼻腔内、髄腔内、局所、又は直腸からなる群より選択される投与経路により哺乳動物に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物が人間である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
オナプリストンと水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノン、2-, 酢酸エチル、ジオキサン、1,4-, tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、p-, クメン、アニソール、ギ酸エチル、及び酢酸ブチルからなる群より選択される溶媒とを混合させることを含む、オナプリストン多形体の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2013年3月12日に出願された米国特許仮出願第61/777,752号の優先権の利益を主張する。上記参照出願は、全て言い換えられるかのように、参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
オナプリストン(ONA)は、もともとは避妊薬としての使用のために開発された抗プロゲスチン薬及びプロゲステロン受容体アンタゴニスト(拮抗薬)である。しかしながら、それは進行性乳がんにおいて実質的な活性を示した。オナプリストンは、以前は乳がんの有力な治療薬として研究されてきたが、その開発は、毒性の懸念のために停止された。Robertson(ロバートソン)らの「Onapristone, a Progesterone Receptor Antagonist, as First-line Therapy in Primary Breast Cancer(オナプリストン、原発性乳がんにおける第一選択薬としてのプロゲステロン受容体アンタゴニスト)」、European J. of Cancer(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー)、35巻(2号)、214〜218頁(1999年)。ONAはプロゲステロン受容体(PR)に結合して、PRがDNAに結合するのを阻止し、それによりPR誘導性転写を抑制又は排除すると考えられている。例えば、Klijn(クレイン)らの「Progesterone antagonists and progesterone receptor modulation in the treatment of breast cancer(乳がん治療におけるプロゲステロンアンタゴニスト及びプロゲステロン受容体調節)」、Steroids(ステロイド)、65巻、825〜830頁(2000年);Jonatt(ジョナット)らの「乳がんにおけるプロゲステロンアンタゴニストの臨床効果(The clinical efficacy of progesterone antagonists in breast cancer)」、乳がんの内分泌療法(Endocrine Therapy of Breast Cancer)、117〜124頁を参照。
【0003】
オナプリストンは、非晶質(アモルファス)化合物であることが知られている。例えば、オナプリストンの(3-アシルオキシプロピル)-誘導体は、親化合物と比較して結晶性である。Neef(ニーフ), G.;Wiechert(ヴィーヘルト), R.;Beier(バイアー), S;Elger(エルガー), W.;Henderson(ヘンダーソン), D.、UP 4,780461、1988年。オナプリストンは、非晶質固体及び黄色オイルとしてこれまで分離されてきた。Neef, G.;Wiechert, R.;Beier, S.;Elger, W.;Henderson, D.、Steroids、1984年、44巻、349頁;Neef, G;Sauer(サウアー), G.;Wiechert, R.;Beier, S.;Elger, W.;Henderson, D.;Rohde(ローゼ), R.、DE3321826、1984年。
【0004】
「多形(polymorph又はpolymorphic)」という用語は、化合物の異なる結晶形体を意味する。化合物の多形体又は結晶形体は、化合物の溶解性、安定性、生物学的利用能、及び有効性に影響を与える特性を持ち得る。化合物の多形体は、例えば非晶質形体又は他の結晶形体と、融点、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、粉末X線回折(XRPD)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ラマン顕微鏡法、FT-IR分光法、質量分析(MS)、及び質量分析と連結した熱重量分析(TG-MS)を含むが、これらに制限されない様々な技術により測定される熱力学的挙動に関して比較することができる。結晶形の物理的安定性は、例えば、環境の温度と湿度が様々な期間にわたり制御される条件の下で測定され得る。
【発明の概要】
【0005】
ここに開示される態様は、ONAであり、また以下の化学構造を有する既知のオナプリストン(例えば、(8S,11R,13R,14S,17S)-11-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(3-ヒドロキシプロピル)-13-メチル-1,2,6,7,8,11,12,14,15,16-デカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン))の多形体又は結晶形体を提供する。
【化1】
【0006】
一態様において、ONAの多形体又は結晶形体は、これまで分離された非晶質形体と比べると有利に結晶性である。化合物の結晶形体は、例えば、概してより安定であり、より溶解性が低く、そして生物学的利用能がより高いことがある。
【0007】
一態様において、多形体には塩、溶媒和物、水和物、無水物、共結晶及びその他の結晶形体並びにそれらの組合せが含まれる。多形体は、向上した安定性、向上した生物学的利用能、徐放性、及びその他の特性を有する種々の剤形に製剤化され得る。ここで説明されるONAの多形体は、高分解能粉末X線回折パターン(HR-XRPD)、粉末X線回折パターン(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、及び熱重量分析質量分析(TG-MS)を含む方法により特徴付けられる。
【0008】
他の一態様において、ONAの多形体は、ONAと以下の例示的な溶媒のいずれかとを混合させることにより製造され得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノン、2-, 酢酸エチル、ジオキサン、1,4-, tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、p-, クメン、アニソール、ギ酸エチル、及び酢酸ブチル。
【0009】
一態様において、ONA多形体は、ONA若しくはその塩と上記の溶媒若しくは他の適切な溶媒のいずれかとを混合させ、混合物を加熱し又は加熱せず、ここに記述のように分析することができる沈殿物を形成するために、その後様々な速度で溶媒を冷却及び又は蒸発させることで製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ONA多形体Aに対応する例示的なTGA及びSDTAスペクトルを表す。
【
図2】ONA多形体Aに対応する例示的なDSCを表す。
【
図3】ONA多形体Aに対応する例示的なHR-XRPDパターンを表す。
【
図4】ONA多形体Aに対応する例示的なXRPDパターンを表す。
【
図5】ONA多形体Bに対応する例示的なTGA及びSDTAスペクトルを表す。
【
図6】ONA多形体Bに対応する例示的なDSCを表す。
【
図7】ONA多形体Bに対応する例示的なHR-XRPDパターンを表す。
【
図8】ONA多形体Bに対応する例示的なXRPDパターンを表す。
【
図9】ONA多形体Cに対応する例示的なTGA及びSDTAスペクトルを表す。
【
図10】ONA多形体Cに対応する例示的なDSCを表す。
【
図11】ONA多形体Cに対応する例示的なHR-XRPDパターンを表す。
【
図12】ONA多形体Cに対応する例示的なXRPDパターンを表す。
【
図13】ONA多形体Dに対応する例示的なXRPDパターンを表す。
【
図14】ONA多形体Eに対応する例示的なXRPDパターンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここに記述のいくつかの例示的な態様を説明する前に、本発明は以下の説明において記載された構成またはプロセスステップの詳細に制限されないことが理解されるべきである。ここに記述の態様は、様々な方法で実施又は実行されることが可能である。
【0012】
ここに記述の態様は、向上した生物学的利用能、向上した安定性、及び増加した溶解度を含むがこれらに制限されない有利な特性を有するONAの多形体を提供する。一態様において、これらの特性は、ONAを適切な剤形に形成することに関する利点を付与する特性に関連する。
【0013】
ONAの多形体は、例えば溶解性、融点、吸湿性、及び蒸気圧に関するような、ONAの特定の剤形の安定性に影響を及ぼし得る変化する物理的及び化学的特性を有する。製剤及び投与形態の選択は、製造コストに著しい影響を与える。特定の剤形の安定性も、薬物の保存期間、補給の必要な頻度、及び受動体(患者)への薬剤の費用に著しく影響を与え得る。したがって、所望の化学的特性を有する多形体を選択することは、製造のコスト及び容易さ、薬物の有効性、並びに受動体にとっての薬物使用の費用と利便性に影響を及ぼし得る。
【0014】
流動性、粒子サイズ、表面積、及び硬度などの物性は、薬物の薬物動態に著しく影響を与え得る。例えば、体内における薬物の溶解及びその後の吸収は、最大血中濃度、薬物のクリアランス、及び薬物が体内に最適な期間留まるかどうかに影響を与える。
【0015】
ONAの多形体を、種々の溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ブタノン、2-, 酢酸エチル、ジオキサン、1,4-, tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、p-, クメン、アニソール、ギ酸エチル、及び酢酸ブチル)への溶解性の評価を行うことにより同定した。得られたONAの多形体を、HR-XRPD(高解像度)、XRPD、TGA及びSDTA、並びにDSCを含む方法により特徴づけた。
【0016】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
*初期材料が溶解したため、追加材料を加えた。
【0017】
多形体を一般的に取得する及び特徴付ける方法は当該技術分野で知られており、例えば、H.G. ブリテン(H.G. Brittain)による「医薬品固体における多形(Polymorphism in Pharmaceutical Solids)」、第2版[インフォーマヘルスケアプレス、ニューヨーク、2009]、J. バーンスタイン(J. Bernstein)による「分子結晶における多形(Polymorphism in Molecular Crystals)」、[Clarendon Press(クラレンドンプレス)、オックスフォード、2002]、及びR.ヒルファイカー(R. Hilfiker)による「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry(製薬業界における多形)」、[Wiley-VCH(ウイリー-VCH)、ワインハイム、2006]などで示され、それらの全体は参照によりここに組み込まれる。
【0018】
一態様において、ONA多形体Aは
図3に示されるようなHR-XRPDパターンを有する。
【0019】
一態様において、ONA多形体Aは
図4に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0020】
一態様において、ONA多形体Bは
図7に示されるようなHR-XRPDパターンを有する。
【0021】
一態様において、ONA多形体Bは
図8に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0022】
一態様において、ONA多形体Cは
図11に示されるようなHR-XRPDパターンを有する。
【0023】
一態様において、ONA多形体Cは
図12に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0024】
一態様において、ONA多形体Dは
図13に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0025】
一態様において、ONA多形体Eは
図14に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0026】
他の一態様において、溶解性の評価実験を、上記テーブル2に記載の種々の溶媒および条件下において行った。
【0027】
ONAの多形体又は結晶形体は、ここに記載のように処置を必要とする受動体を処置するために使用され得る。ここで使用される用語「処置する」、「防止する」、又は類似の用語は、100%又は完全な処置若しくは防止を必ずしも意味するものではない。むしろ、これらの用語は、当該技術分野で有益であると認識されるような、特定の疾患の処置又は防止の種々の程度を意味する(例えば、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、又は1%)。用語「処置」又は「防止」は、疾患の発症を一定期間遅延させること又は発症を無期限に遅延させることも意味する。用語「処置」又は「処置すること」は、患者に投薬若しくは処置を施すこと、又は、受動体若しくは第三者(例えば、介護者、家族、若しくは医療従事者)が投薬若しくは処置を管理する場合に、受動体に薬物を処方することを意味する。
【0028】
ONAの多形体又は結晶形体は、誘導体も包含する。一実施態様において、「誘導体」という用語はエーテル誘導体、酸誘導体、アミド誘導体、エステル誘導体などを含むが、これらに制限されない。これらの誘導体を調製する方法は当業者に知られている。例えば、エーテル誘導体は対応するアルコールのカップリングにより調製される。アミド及びエステル誘導体は、対応するカルボン酸から、それぞれアミン及びアルコールとの反応により調製される。
【0029】
ONAの多形体又は結晶形体は、ONAの多形体又は結晶形体の水和物若しくは溶媒和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物など)も包含する。ONAの水和物又は溶媒和物は、適切な条件下でONAを水若しくは溶媒に接触させ、最適な水和物又は溶媒和物を生成することにより調製され得る。
【0030】
ONAの多形体又は結晶形体は、ONA多形体又は結晶形体の代謝産物も包含する。「代謝産物」又は「代謝物」とは、代謝又は生細胞や器官の代謝過程を経て別の物質から生成された任意の物質を意味する。
【0031】
ここに記述の任意のONA多形体は、経口、非経口(IV、IM、デポ-IM、SQ、及びデポ-SQ)、舌下、鼻腔内(吸入)、髄腔内、局所、若しくは直腸に投与され得るか、又は投与される出発物質として使用され得る。当業者に知られる剤形は、ここに記載のONA多形体のデリバリーに適している。
【0032】
ONA多形化合物は、経口投与用の錠剤、カプセル剤、若しくはエリキシル剤など、又は非経口投与用の滅菌溶液若しくは懸濁液などの適切な製剤に処方することができる。ここに記述のONA多形化合物は、当該技術分野でよく知られる技術及び手法を用いて薬剤組成物に製剤化することができる。
【0033】
一態様において、約10〜約200mgのONA多形化合物、又はそれらの生理学的に許容可能な塩、プロドラッグ、若しくは共結晶は、一般に認められた製薬実務によって要求されるような単位投与形態で、生理学的に許容可能な輸送体、担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料などと配合され得るか、又は配合するための出発物質として使用され得る。ONA多形化合物を含む組成物中又は製剤中の活性物質の量は、示された範囲における適用量を得るようなものである。
【0034】
他の一態様において、組成物は単位剤形で製剤化することができ、各投与量には約1mg〜約1.2g、又は約2.5〜約200mgの活性成分が含まれる。用語「単位剤形」は、ヒト対象及び他の哺乳動物の単位用量として適した物理的に別々の単位を意味し、各単位は、一又はそれよりも多くの適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された活性物質の所定量を含む。
【0035】
一態様において、一又はそれよりも多くのONA多形化合物は、組成物を形成するのに適した薬学的に許容可能な担体と混合されるか、又は混合される出発物質として使用される。化合物(複数含む)の混合又は添加の際、得られた混合物は溶液、懸濁物、エマルジョンなどであってよい。リポソーム懸濁物もまた、薬学的に許容可能な担体として使用することができる。これらは当業者に知られる方法に従って調製することができる。得られる混合物の形態は、意図する投与様式及び選定した担体又は輸送体における化合物の溶解性を含め多くの要因に依存する。一態様において、有効濃度は、処置される疾患、障害、若しくは病状の少なくとも1つの症状を軽減又は改善するのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0036】
ここに記述のONA多形化合物の投与に適した薬学的担体又は輸送体は、特定の投与様式に適しているそのような担体を含む。さらに、活性物質は、また所望の作用を損なうことのない他の活性物質と、又は所望の作用を補うか、若しくは別の作用を有する物質と混合することができる。当該化合物は、組成物中で唯一の薬学的に活性な成分として製剤化されてもよく、又は他の活性成分と組み合わされてもよい。
【0037】
他の一態様において、ONA多形化合物が不十分な溶解度しか示さない場合、可溶化する方法を用いてもよい。そのような方法は知られており、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、TWEENなどの界面活性剤の使用、及び重炭酸ナトリウム水溶液への溶解を含むが、これらに制限されない。塩又はプロドラッグなどのような化合物の誘導体も、有効な薬剤組成物を調剤するのに使用され得る。
【0038】
当該化合物の濃度は、化合物が投与される疾患の少なくとも一つの症状を軽減又は改善する投与量を送るのに有効である。典型的には、組成物は、単回投与用に製剤化される。
【0039】
他の一態様において、ここに記述のONA多形化合物は、時間放出製剤又はコーティングのような、体内からの迅速な排出からそれらを保護する担体を用いて調製され得る。このような担体には、マイクロカプセル化送達システムなどの放出制御製剤が含まれるが、これらに制限されない。活性化合物は、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で、処置される患者に望ましくない副作用なしに、薬学的に許容される担体中に含有され得る。治療有効濃度は、既知化合物を処置される疾患のin vitro及びin vivoモデルシステムで試験することにより経験的に決定することができる。
【0040】
他の一態様において、ここに記述のONA多形化合物及び組成物は、複数又は単回用量容器に封入することができる。封入された化合物及び組成物は、例えば、使用時に組み合わせることができる構成成分を含むキットで提供されることができる。例えば、ONA多形化合物は、凍結乾燥形態のための出発材料として使用することができ、適切な希釈剤は、使用前に混合するための別個の材料として提供され得る。キットは、同時投与のために、ONA多形化合物及び第二の治療剤を含んでもよい。ONA多形化合物及び第二の治療剤は、別々の構成成分として提供されてもよい。キットは複数の容器を含むことができ、各容器はここに記載のONA多形化合物の一又はそれよりも多くの単位用量を保持している。一態様において、容器は所望の投与様式に適合させることができ、経口投与用の錠剤、ゲルカプセル、徐放性カプセル剤など;非経口投与用のデポ剤、充填済みシリンジ、アンプル、バイアルなど;及び局所投与用のパッチ、メディパッド、クリームなどを含むが、これらに制限されない。
【0041】
薬剤組成物中のONA多形化合物の濃度は、活性化合物の溶解、吸収、代謝、及び排泄速度、投与スケジュール、投与量、並びに当業者に知られている他の因子による。
【0042】
他の一態様において、活性成分は一度に投与されてもよく、又は多数のより少ない用量に分割されて、間隔を置いて投与されてもよい。治療の正確な投与量及び期間は、治療される疾患によるものであり、既知の試験プロトコルを用いることにより、又はin vivo若しくはin vitro試験データの外挿により経験的に決定され得ることが理解される。濃度及び投薬量の値はまた、軽減されるべき症状の重症度に伴って変化し得ることに留意すべきである。さらに、どのような特定の被験体についても、特定の投与計画は、個々人の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する専門家の判断に応じて、時間をかけて調整すべきであり、ここに記載した濃度範囲は単なる例示であって、請求項に係る組成物の範囲又は実施を制限することを意図していないことが理解されるべきである。
【0043】
経口投与が望ましい場合、化合物は、胃の酸性環境からそれを保護する組成物中に提供され得る。例えば、組成物は、胃の中でその完全性を維持し、腸内で活性化合物を放出する腸溶性コーティングに製剤化され得る。組成物はまた、制酸剤又は他のそのような成分と組み合わせて製剤化されてもよい。
【0044】
経口組成物、一般に不活性希釈剤又は食用担体を含み、錠剤に圧縮され得るか、又はゼラチンカプセルに封入され得る。経口治療投与の目的のために、活性化合物又は化合物群は賦形剤と共に組み込まれることができ、錠剤、カプセル剤、又はトローチ剤の形態で使用され得る。薬学的に適合性のある結合剤及びアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。
【0045】
錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、類似の性質の以下の成分又は化合物のいずれかを含むことができる:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、若しくはゼラチンなど、これらに制限されない結合剤;微結晶性セルロース、デンプン、若しくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸及びコーンスターチなど、これらに制限されない崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなど、これに制限されない潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素など、これに制限されない流動促進剤;スクロース若しくはサッカリンなどの甘味剤;並びにペパーミント、サリチル酸メチル、若しくは果実フレーバーなどの香味剤。
【0046】
投与単位形態がカプセルである場合、それは上記の種類の物質に加えて、脂肪油などの液状担体を含有することができる。加えて、投与単位形態は、例えば糖のコーティング及び他の腸溶剤など、投与単位の物理的形態を変える様々な他の物質を含むことができる。化合物はまた、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハー、チューインガムなどの成分として投与され得る。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、ある種の防腐剤、色素及び着色剤、並びに香料を含んでいてもよい。
【0047】
活性物質はまた、所望の作用を損なわない他の活性物質と、又は所望の作用を補う物質と混合され得る。ONA多形化合物は、例えば、抗腫瘍剤、ホルモン、ステロイド、又はレチノイドと組み合わせて使用され得る。抗腫瘍剤は、多くの化学療法剤のうちの一つであってもよい(例えば、エベロリムス、トラスツズマブ、TM1-D、抗HER2薬、ベバシズマブ、パクリタキセル、ドセタキセル、タキサン、ドキソルビシン、リポソマールドキソルビシン、ペグ化リポソマールドキソルビシン、アントラサイクリン、アントラセンジオン、カルボプラチン、シスプラチン、5-FU、ゲムシタビン及びシクロホスファミド)。
【0048】
一態様において、非経口、皮内、皮下、若しくは局所投与用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分のいずれかを含むことができる:注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水溶液、固定油、ゴマ油、ココナッツ油、ピーナッツ油、綿実油などの天然由来の植物油、若しくはオレイン酸エチルなどの合成脂肪輸送体、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール若しくは他の合成溶媒;ベンジルアルコール及びメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸及び亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩などの緩衝剤;並びに塩化ナトリウム及びデキストロースなどの等張化剤。非経口製剤は、ガラス、プラスチック、若しくは他の適切な材料で作られたアンプル、処分可能なシリンジ、又は複数用量バイアル中に封入することができる。必要に応じて緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤などが配合され得る。
【0049】
静脈内投与する場合、適切な担体としては、制限されないが、生理的塩類溶液、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)、並びにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物などの増粘剤及び可溶化剤を含む溶液が含まれる。組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として適切であり得る。これらは当該分野で知られる方法に従って調製することができる。
【0050】
他の一態様において、ONA多形化合物は、時間放出製剤又はコーティングなどの、体内からの迅速な排出から化合物を保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体には、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムなどの、これらに制限されない放出制御製剤、並びにコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、他のセルロース誘導体などの生物分解性、生体適合性のポリマーが含まれる。そのような製剤の調製方法は、当業者に知られている。
【0051】
さらに他の一態様において、本開示の方法で用いられる化合物は、経腸的または非経口的に投与されてもよい。経口投与するとき、当業者によく知られるように、本開示の方法で使用される化合物は、経口投与用の通常の剤形で投与され得る。これらの剤形には、錠剤及びカプセルの通常の固形単位剤形、並びに溶液、懸濁物、及びエリキシル剤などの液状剤形が含まれる。固形剤形が使用されるとき、それらは、持続放出型であり得、そのため、ここに記述される方法で使用される化合物は1日1回又は2回だけ投与される必要がある。
【0052】
経口剤形は、1、2、3、又は4回、日常的に患者に投与され得る。ここに記述のONA多形化合物は、3回若しくはそれ以下の回数、又はさらに1日に1回若しくは2回でも投与され得る。したがって、本開示の方法において使用されたONAは、経口剤形で投与され得る。どのような経口剤形が使用されても、ここに記述される方法で使用される化合物を胃の酸性環境から保護するようにそれらを設計することができる。腸溶性コーティングされた錠剤は、当業者によく知られる。加えて、酸性の胃から保護するためにそれぞれコーティングされた小球を充填したカプセルも、当業者によく知られる。
【0053】
用語「治療上有効な量」及び「治療上有効な期間」は、腫瘍細胞の増殖を減少させるのに効果的な投薬量及び期間での処置を示すために使用される。上述のように、そのような投与は非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、又は直腸内であり得る。一態様において、全身投与されるとき、治療上の組成物は約0.01μΜから約20μΜまでの化合物の血中レベルを達成するのに十分投薬量で投与され得る。局在化投与では、これよりはるかに低い濃度が有効であることがあり、そしてはるかに高い濃度が許容されることがある。ONA多形化合物のより低い有効濃度で得られるこのような治療効果が、組織、器官、又は治療される特定の動物若しくは患者によって大幅に異なる場合があることを、当業者は理解するであろう。また、受動体は単回投与から開始することができるが、その用量は、受動体の状態の変化に応じて時間外に変化してもよいことが理解されよう。一態様では、ONA多形化合物は、胸部、脳、髄膜腫、前立腺、卵巣、子宮内膜、子宮平滑筋腫、肺、及び子宮組織が含まれるが、これらに制限されない組織に由来する腫瘍の増殖を抑制するために使用することができる。
【0054】
施与の正確な投薬量及び頻度は、本開示の方法において用いられる、施与される特定の化合物、処置される特定の病状、処置される病状の重症度、齢、重量、特定の受動体の一般的な肉体的条件、及び個体が服用し得る他の薬物治療に依存することは、当業者である投与する医師らによく知られるように、当業者にはきっと明らかである。
【0055】
上記の説明は、特定の態様に言及しているが、これらの態様は単なる例示であることは理解されるべきである。ここに記載の多形体及び方法で、様々な修飾及び変形がなされ得ることは当業者には明らかであろう。したがって、本説明は、添付の請求の範囲及びその等価物の範囲内にある修飾並びに変形を含むことが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2016年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項16】
請求項9〜15に記載の薬剤組成物の治療上有効な量を、処置を必要とする哺乳動物に施与することにより哺乳動物を処置するための、薬剤組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項17
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項17】
治療上有効な量は約2.5mg〜約200mgである、請求項16に記載の薬剤組成物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項18
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項18】
薬剤組成物は経口、非経口、舌下、鼻腔内、髄腔内、局所、又は直腸からなる群より選る投与経路により哺乳動物に施与される、請求項16に記載の薬剤組成物。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項19
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項19】
哺乳動物は人間である、請求項16に記載の薬剤組成物。
【国際調査報告】