(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-513315(P2016-513315A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】RFID追跡における改善
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20160408BHJP
G01S 19/34 20100101ALN20160408BHJP
G01S 13/74 20060101ALN20160408BHJP
B65G 1/137 20060101ALN20160408BHJP
【FI】
G06K19/07 230
G06K19/07
G06K19/07 160
G01S19/34
G01S13/74
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-556342(P2015-556342)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】AU2014000096
(87)【国際公開番号】WO2014121338
(87)【国際公開日】20140814
(31)【優先権主張番号】2013900384
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515218026
【氏名又は名称】ニューポート、デジタル、テクノロジーズ、オーストラリア、プロプライエタリー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEWPORT DIGITAL TECHNOLOGIES AUSTRALIA PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】アニルッダ、アニル、デサイ
(72)【発明者】
【氏名】クリヤンバイ、ビノッドバイ、シャー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、フィトリオ
(72)【発明者】
【氏名】ムースタンスリージ、ラシス、エランガ、フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ジャグット、シン
【テーマコード(参考)】
3F522
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
3F522BB01
3F522CC09
3F522DD03
3F522DD24
3F522DD32
3F522FF02
3F522FF16
3F522GG30
3F522LL61
5J062AA01
5J070BC05
5J070BC06
5J070BC19
(57)【要約】
低電力RFIDセンサタグ(100)が、プロセッサ(102)と、電源(106)と、RFトランシーバ(112,114,116)と、センサインタフェースを介してプロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサ(108)と、少なくとも1つのメモリ装置(104)とを備えている。一態様では、タグ(100)は、低消費電力状態、センサ測定が実行される中程度の消費電力状態、およびRF通信が実行される際の高消費電力状態の、3つの消費電力状態で動作するように構成されている。別の態様では、消費電力とメモリ使用量は、所定の条件が成立した際にセンサデータを記録するためのタグ(100)を構成することによって低減される。さらなる態様では、タグ(100)は、信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含む場合にのみ、RF問い合わせ信号に応答するように構成されている。別の態様では、新たなデータが利用可能でない場合の送信を最小限にするために、タグは、問い合わせの際に新たに記録されたセンサデータが予備段階として利用可能であるかどうかを確認するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFトランシーバ、電源、および1つまたは複数のセンサを備えるRFIDセンサタグを動作させる方法であって、前記方法が、
低消費電力状態で前記RFIDセンサタグを配置するステップと、
所定の条件が成立した際に、前記1つまたは複数のセンサを介してセンサ測定を実行するための中程度の消費電力状態で前記RFIDセンサタグを配置するステップと、
前記RFトランシーバを介してRF信号を検出する際に、RF信号源とのRF通信を実行するための高消費電力状態で前記RFIDセンサタグを配置するステップと、
RF通信またはセンサ測定が完了する際に、低消費電力状態に前記RFIDセンサタグを戻すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記RFIDセンサタグが、
少なくとも2つの異なる速度を有するクロックを生成するように構成されたクロック生成回路と、
中程度の消費電力状態で前記RFIDセンサタグを配置するステップが、第1のクロック速度で前記RFIDセンサタグを動作させるステップと、
高消費電力状態で前記RFIDセンサタグを配置するステップが、第2のクロック速度で前記RFIDセンサタグを動作させるステップとを含み、
前記第2のクロック速度が前記第1のクロック速度よりも速い、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中程度の消費電力状態でセンサ測定を実行するステップが、
前記1つまたは複数のセンサから少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップと、
前記所定の条件に関連する情報と共に、前記RFIDセンサタグのメモリに前記センサ値を格納するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件が所定時間の経過であり、前記所定の条件に関連する前記情報が、対応するタイムスタンプである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中程度の消費電力状態でセンサ測定を実行するステップが、
前記1つまたは複数のセンサから少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップと、
前記センサ値を所定の記録基準と比較するステップと、
前記所定の記録基準が成立した場合に、前記RFIDセンサタグのメモリに前記センサ値を格納するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の記録基準は、前記センサ値が少なくとも1つの所定の値の範囲に収まることとすることができる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高消費電力状態でRF通信を実行するステップが、
前記RF信号を受信するステップと、
前記受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含むかどうかを決定するステップと、
前記受信RF信号が前記所定の通信プロトコルに従った命令を含む場合に、対応する応答を提供するステップと、
前記受信RF信号が前記所定の通信プロトコルに従った命令を含まない場合に、前記RFIDセンサタグを低消費電力状態に戻すステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記応答が、1つまたは複数の、前記RFIDセンサタグのメモリに記録されたセンサデータの利用可能性の表示、および/または前記RFIDセンサタグの状態表示を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記応答が、前記電源からの電力の前記利用可能性の表示を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記応答が、前記RFIDセンサタグのメモリに記録された1つまたは複数のセンサデータの記録をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含まない場合に、前記方法が、前記RFトランシーバを無効にするステップと、再有効化条件を満たした際に前記RFトランシーバを再度有効にするステップとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記再有効化条件は、指定された期間の経過である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記指定された期間は、前記受信RF信号が前記所定の通信プロトコルに従った命令を含まない連続的な各機会で、所定の最長期間まで増える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
RFトランシーバ、電源、および1つまたは複数のセンサを備えるRFIDセンサタグのメモリに記録されたセンサデータを読み取る方法であって、前記方法が、
前記RFIDセンサタグによって、所定の通信プロトコルに従った命令を含むRF信号を受信するステップと、
前記RFIDセンサタグによって、記録されたセンサデータの利用可能性を示す応答を含むRF信号を送信するステップと、
前記RFIDセンサタグによって、前記所定の通信プロトコルに従って記録されたセンサデータを送信するための命令を含むRF信号を受信するステップと、
前記RFIDセンサタグによって、前記メモリに記録されたセンサデータを含むRF信号を送信するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記方法が、RF信号の受信時により低い消費電力状態からより高い消費電力状態に切り替える前記RFIDセンサタグと、前記受信RF信号の処理の完了時に前記より高い消費電力状態から前記より低い消費電力状態に切り替える前記RFIDセンサタグとをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記記録されたセンサデータの利用可能性を示す前記応答が、前記電源からの電力の前記利用可能性の表示をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
所定の領域内の1つまたは複数のRFIDセンサタグと通信する方法が、
送信RF電力レベルの制御を可能にするように構成されたRFトランシーバを含むRFIDセンサタグ問い合わせ装置を設けるステップと、
前記所定の領域の対応する領域内に配置されたRFIDセンサタグによって検出されたRF信号を提供するために、前記送信RF電力レベルを設定するステップと、
前記RFIDセンサタグ問い合わせ装置によってRFIDセンサタグ問い合わせ信号を送信するステップと、
前記RFIDセンサタグ問い合わせ装置によって、前記所定の領域内に配置された前記RFIDセンサタグにより送信された1つまたは複数の応答を受信するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記方法が、前記領域内に配置されたRFIDセンサタグから受信した応答に基づいて、前記所定の領域の前記対応する領域の大きさを増加または減少させるために、前記送信RF電力レベルを調整するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記所定の領域内に配置された前記RFIDセンサタグは、前記応答が前記RFIDセンサタグ問い合わせ装置に送信された後、少なくとも所定の期間、他のセンサタグ問い合わせ信号を無視するように構成されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
プロセッサと、
電源と、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられたRFトランシーバと、
センサインタフェースを介して前記プロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサと、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのメモリ装置と
を備えるRFIDセンサタグであって、
前記メモリ装置が、前記プロセッサにアクセス可能かつ前記プロセッサによって実行可能なプログラム命令を含み、
前記プロセッサが、
低消費電力状態に入るステップと、
所定の条件が成立した際に、前記1つまたは複数のセンサを介してセンサ測定を実行するための中程度の消費電力状態に入るステップと、
前記RFトランシーバを介してRF信号を検出する際に、RF信号源とのRF通信を実行するための高消費電力状態に入るステップと、
RF通信またはセンサ測定が完了する際に、前記低消費電力状態に再度入るステップと
を含む方法を前記RFIDセンサタグに実施させる、RFIDセンサタグ。
【請求項21】
前記RFIDセンサタグが、前記中程度の消費電力状態および前記高い消費電力状態に対応する少なくとも2つの異なる速度を有するクロックを生成するように構成された、クロック生成回路をさらに備える、請求項20に記載のRFIDセンサタグ。
【請求項22】
プロセッサと、
電源と、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられたRFトランシーバと、
センサインタフェースを介して前記プロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサと、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのメモリ装置と
を備えるRFIDセンサタグであって、
前記メモリ装置が、前記プロセッサにアクセス可能かつ前記プロセッサによって実行可能なプログラム命令を含み、
前記プロセッサが、
所定の条件が成立した際に、前記1つまたは複数のセンサからの少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップ、および
前記所定の条件に関連する情報とともに、前記RFIDセンサタグのメモリに前記センサ値を格納するステップ
を含む方法を前記RFIDセンサタグに実施させる、RFIDセンサタグ。
【請求項23】
プロセッサと、
電源と、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられたRFトランシーバと、
センサインタフェースを介して前記プロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサと、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのメモリ装置と
を備えるRFIDセンサタグであって、
前記メモリ装置が、前記プロセッサにアクセス可能かつ前記プロセッサによって実行可能なプログラム命令を含み、
前記プロセッサが、
前記RFトランシーバのRF信号を検出するステップと、
前記検出されたRF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含むかどうかを決定するステップと、
前記検出されたRF信号が前記所定の通信プロトコルに従った命令を含む場合にのみ、対応する応答を提供するステップと
を含む方法を前記RFIDセンサタグに実施させる、RFIDセンサタグ。
【請求項24】
プロセッサと、
電源と、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられたRFトランシーバと、
センサインタフェースを介して前記プロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサと、
前記プロセッサに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのメモリ装置と
を備えるRFIDセンサタグであって、
前記メモリ装置が、前記プロセッサにアクセス可能かつ前記プロセッサによって実行可能なプログラム命令を含み、
前記プロセッサが、
所定の通信プロトコルに従った命令を含むRF信号を受信するステップと、
記録されたセンサデータの利用可能性を示す応答を含むRF信号を送信するステップと、
前記所定の通信プロトコルに従って記録されたセンサデータを送信するための命令を含むRF信号を受信するステップと、
前記メモリに記録されたセンサデータを含むRF信号を送信するステップと
を含む方法を前記RFIDセンサタグに実施させる、RFIDセンサタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品や機器の追跡および検知のためのRFIDタグの使用に関し、特に、基本的な識別機能を提供することに加えて、環境情報などを検出、記録、および中継するように構成されたRFIDセンサタグにおける改善に関するものである。本発明の実施形態は、セキュリティ、食品の安全性、監視、物流、輸送、農業、在庫管理、資産追跡などを含む多くの分野に適用され得る。
【0002】
無線周波数識別(RFID)は、物流、輸送、在庫管理、資産追跡などにおいてさまざまなアプリケーションを有する広く展開されている技術である。
【0003】
既存のRFID配備は、一般に30MHzから300MHzの超短波(VHF)帯、および/または300MHzから3GHzの極超短波(UHF)帯で動作する。一般的な動作周波数は、例えば2.4GHzの免許不要帯内である。
【0004】
RFID配備の大部分は、基本的な識別のために、単独で、または主として使用される。このような配備で使用されるRFIDタグは、典型的には受動的であり、すなわち、独自の電源を有しておらず、起動されて、タグの問い合わせのために使用されるRFフィールドのエネルギーから完全に動力が供給される。典型的には、固定または携帯用とすることができるRFIDタグリーダが、問い合わせ信号を生成しながら、タグ付けされた物品や機器等の近傍で操作され、この問い合わせ信号は、識別情報および/または他の格納された固定データを提供するために、RFIDタグを起動して照会する。RFIDリーダ/ライタデバイスを、RFIDタグ内に格納された情報を追加または更新するために使用することができる。
【0005】
このようなRFID追跡システムを、施設内の物品または機器の進捗を監視するために、または公知のプロセスを経て使用することができる。監視は、RFIDリーダ/ライタデバイスの近くに入ってくるタグに依存し、この時点で、アイデンティティおよびその他の情報をタグから取得する、および/またはタグに格納することができる。ただし、タグが適切なRFIDリーダの近くにない場合には、それ以上の情報は利用できないかまたは取得できない。
【0006】
位置条件および/または環境条件の連続的な監視が望まれ得る、いくつかのアプリケーションが存在する。例えば、食料品などの生鮮食品は、既知の安全な温度範囲内で保存および輸送が必要とされるかもしれない。周囲の温度がこの範囲外にある場合、いつでも、保存された食品の品質や安全性が損なわれる可能性がある。特に輸送中に、これはいつでも発生する可能性があり、タグ付けされた製品が、適切なRFIDリーダや追加の環境監視および制御機器に近接して配置されている場合のみではない。
【0007】
他のシナリオでは、タグ付けされた物品、製品、または機器の他の態様、例えば、位置、露光、水分/湿潤曝露、および他の環境要因の連続的な監視を提供することが望ましいかもしれない。したがって、環境条件やその他の要因のこのような連続的な監視を提供することができる改善されたRFIDタグおよびシステムが必要とされている。実用的な検討として、コストを最小化しかつ動作寿命を最大化するために、RFIDタグは、好ましくは、非常に低消費電力と記録された環境情報に対する最小の記憶要件を有するべきであり、この両方が、実行可能な商業上の配備における重要なパラメータである。
【0008】
さらに、さまざまな通信アプリケーションによってVHF帯およびUHF帯がますます混雑することにより、代替の周波数帯域、例えば3GHzから30GHzのセンチメートル波(SHF)で動作するRFIDタグ付けおよび検知システムを提供することが望ましいかもしれない。特に、5.725GHzから5.850GHzの周波数帯は、オーストラリアやその他の多くの国で、免許不要帯である。
【0009】
さまざまな態様および実施形態において、本発明は、これらの望ましい特徴に対処することを目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、RFトランシーバ、電源、および1つまたは複数のセンサを備えるRFIDセンサタグを動作させる方法を提供し、この方法は、低消費電力状態でRFIDセンサタグを配置するステップと、所定の条件が成立した際に、1つまたは複数のセンサを介してセンサ測定を実行するための中程度の消費電力状態でRFIDセンサタグを配置するステップと、RFトランシーバを介してRF信号を検出する際に、RF信号源とのRF通信を実行するための高消費電力状態でRFIDセンサタグを配置するステップと、RF通信またはセンサ測定が完了する際に、低消費電力状態にRFIDセンサタグを戻すステップとを含む。
【0011】
本発明の方法の実施形態は、RFIDセンサタグの動作によって全体の消費電力を低減する結果となることが有利であり、これにより、例えばオンボードバッテリである電源の有効寿命を延長することができる。
【0012】
さらに、本発明の実施形態は、電源の消耗をさらに低減するために、受信RF信号からRFエネルギーを回収するように構成されたRFIDセンサタグを使用する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、RFトランシーバは、少なくとも1つのアンテナを含む、受信/送信回路を備え、この回路を、完全に受動的(すなわち、回収したRFエネルギーによって完全に電力を供給)、半受動的(例えば、バッテリ補助の後方散乱を用いて回収したRFエネルギーによって部分的に電力を供給)、半能動的(例えば、受動的な受信機およびバッテリ補助の送信機)、または完全に能動的(すなわち、バッテリ補助の送信機および受信機)とすることができる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、RFIDセンサタグは、少なくとも2つの異なる速度を有するクロックを生成するように構成されたクロック生成回路を含み、中程度の消費電力状態でRFIDセンサタグを配置するステップは、第1のクロック速度でRFIDセンサタグを動作させるステップを含み、高消費電力状態でRFIDセンサタグを配置するステップは、第2のクロック速度でRFIDセンサタグを動作させるステップを含み、ここで、第2のクロック速度は第1のクロック速度よりも速い。
【0015】
また、迅速な操作または処理を行わないRFIDセンサタグの構成要素の動作に対して、このような構成要素の消費電力を最小化するために、非常に遅いクロック速度を有するクロック信号が生成されてもよい。非常に遅いクロック速度は、1Hz未満から最大1kHzまで、またはより具体的には100ヘルツ未満、さらに具体的には10Hz未満の周波数を含むことができる。一実施形態では、3.8Hzのクロック速度が使用されている。
【0016】
第1のクロック速度は、例えば、1kHzから10MHzの間、またはより具体的には2MHz未満で動作する低速クロックであってもよく、例示的な実施形態では、1MHzのクロック速度となっている。
【0017】
第2のクロック速度は、例えば、1MHzより高い、またはより具体的には10MHzより高い速度で動作する高速クロックであってもよく、一実施形態では22MHzとなっている。
【0018】
本発明の実施形態によれば、中程度の消費電力状態でセンサ測定を実行するステップが、1つまたは複数のセンサから少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップと、所定の条件に関連する情報と共に、RFIDセンサタグのメモリにセンサ値を格納するステップを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、所定の条件が所定時間の経過であり、所定の条件に関連する情報は、対応するタイムスタンプである。タイムスタンプは、例えば、時間のオフセットパラメータであってもよい。
【0020】
例示的な実施形態によれば、中程度の消費電力状態でセンサ測定を実行するステップが、1つまたは複数のセンサから少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップと、このセンサ値を所定の記録基準と比較するステップと、所定の記録基準が満たされた場合に、RFIDセンサタグのメモリにこのセンサ値を格納するステップとを含む。
【0021】
例えば、所定の記録基準は、センサ値が少なくとも1つの所定の値の範囲に収まることとすることができる。
【0022】
例示的な実施形態では、センサは、温度センサを含むことができ、所定の範囲の値を、最小の安全な/所望の値より小さい値、および/または最大の安全な/所望の値よりも大きい値とすることができる。この手法により、RFIDセンサタグが「重要な」センサ情報のみを記録することを可能にすることが有利であり、これにより、実際的関心のないセンサデータを記録するための限られたメモリリソースの消費を回避することができる。
【0023】
例示的な実施形態によれば、高消費電力状態でRF通信を実行するステップは、RF信号を受信するステップと、受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含むかどうかを決定するステップと、受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含む場合に、対応する応答を提供するステップと、受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含まない場合に、RFIDセンサタグを低消費電力状態に戻すステップとを含む。
【0024】
この手法により、受信RF信号が認識可能な命令を含まない場合に、高消費電力状態で費やされる時間を減少させることが有利である。例えば、RFIDセンサタグの動作周波数での疑似RF干渉、および/または他の互換性のないこの周波数の範囲内のRF送信の存在に起因して、このような状態が発生する可能性がある。
【0025】
例示的な実施形態において、応答は、1つまたは複数の、RFIDセンサタグのメモリに記録されたセンサデータの利用可能性の表示、および/またはRFIDセンサタグの状態表示を含む。例えば、センサデータが利用可能であるかどうかのみを最初に示す応答により、新しいまたは有益な情報が入手できない場合のデータの拡張送信の必要性を回避することが有利である。
【0026】
また、例示的な実施形態において、応答は、電源からの電力の利用可能性の表示を含む。すなわち、本発明の実施形態は、残りのバッテリ寿命の監視とともに、RFIDセンサタグの内容を同時に問い合わせることを可能にする。
【0027】
応答は、RFIDセンサタグのメモリに記録された1つまたは複数のセンサデータの記録をさらに含むことができる。例示的な実施形態では、センサデータの記録を送信することによって応答する命令を、このデータの利用可能性の表示の送信後にのみ、RFIDセンサタグに提供することができる。
【0028】
例示的な実施形態によれば、受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含まない場合に、この方法は、RFトランシーバを少なくとも部分的に無効にするステップ、および再有効化条件が成立した際にRFトランシーバを再度無効にするステップをさらに含む。
【0029】
このような実施形態が、RF干渉および/または認識されていない信号源の存在下でのRFIDセンサタグの疑似起動を妨げることが有利である。このような干渉は、ある期間にわたって一般に存在するため、RFIDセンサタグが、継続的なRFイベントによって高消費電力状態に繰り返し再起動されるという危険性がある。その後の再有効化条件が成立するまで、RFトランシーバを無効にすることにより、さらなる疑似起動を回避することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、再有効化条件は、指定された期間の経過である。指定された期間は、受信RF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含まない連続的な各機会で、例えば所定の最長期間まで増えることができる。
【0031】
電力を節約するためにRFトランシーバを少なくとも部分的に無効にし、続いて再度有効にすることができる代替のおよび/または追加の条件が実装され得ることは理解されよう。
【0032】
別の態様では、本発明は、RFトランシーバ、電源、および1つまたは複数のセンサを備えるRFIDセンサタグのメモリに記録されたセンサデータを読み取る方法を提供し、この方法は、RFIDセンサタグによって、所定の通信プロトコルに従った命令を含むRF信号を受信するステップと、RFIDセンサタグによって、記録されたセンサデータの利用可能性を示す応答を含むRF信号を送信するステップと、RFIDセンサタグによって、所定の通信プロトコルに従って記録されたセンサデータを送信するための命令を含むRF信号を受信するステップと、RFIDセンサタグによって、メモリに記録されたセンサデータを含むRF信号を送信するステップとを含む。
【0033】
例示的な実施形態では、この方法は、RF信号の受信時により低い消費電力状態からより高い消費電力状態に切り替えるRFIDセンサタグ、および受信RF信号の処理の完了時により高い消費電力状態からより低い消費電力状態に切り替えるRFIDセンサタグをさらに含む。
【0034】
高消費電力状態で受信RF信号を処理するステップは、受信RF信号内のメッセージを復号化するステップ、応答メッセージを生成するステップ、および/または応答メッセージを送信するステップを含むことができる。
【0035】
さらに、例示的な実施形態において、記録されたセンサデータの利用可能性を示す応答が、電源からの電力の利用可能性の表示をさらに含む。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、所定の領域内の1つまたは複数のRFIDセンサタグと通信する方法を提供し、この方法は、送信RF電力レベルの制御を可能にするように構成されたRFトランシーバを含むRFIDセンサタグ問い合わせ装置を設けるステップと、所定の領域の対応する領域内に配置されたRFIDセンサタグによって検出されたRF信号を提供するために、送信RF電力レベルを設定するステップと、RFIDセンサタグ問い合わせ装置によってRFIDセンサタグ問い合わせ信号を送信するステップと、RFIDセンサタグ問い合わせ装置によって、所定の領域内に配置されたRFIDセンサタグにより送信された1つまたは複数の応答を受信するステップとを含む。
【0037】
設定可能な送信RF電力レベルを有するRFトランシーバの使用により、RFIDセンサタグが問い合わされる領域が、適切な送信RF電力レベルの選択によって制御されることが有利である。問い合わせ装置からの距離の増加に伴う送信された問い合わせ信号の減衰により、選択されたRF電力レベルが問い合わせの有効範囲を決定する。
【0038】
いくつかの実施形態では、この方法は、領域内に配置されたRFIDセンサタグから受信した応答に基づいて、所定の領域の対応する領域の大きさを増加または減少させるために、送信RF電力レベルを調整するステップをさらに含む。例えば、応答が受信されない場合、または少数の応答が受信される場合、追加のRFIDセンサタグを含むことができるより広い範囲を包含するために、RF電力レベルを増加させることが望ましいかもしれない。反対に、送信RF電力を減少させることによって、タグをより小さな領域にわたって問い合わせることができ、これにより、少数のRFIDセンサタグを包含する。
【0039】
例示的な実施形態によれば、所定の領域内に配置されたRFIDセンサタグは、応答がRFIDセンサタグ問い合わせ装置に送信された後、少なくとも所定の期間、他のセンサタグ問い合わせ信号を無視するように構成され得る。
【0040】
例えば、これは、特定の領域内のRFIDタグが複数の「ゾーン」で問い合わせすることを可能にし、一方では、個々のRFIDセンサタグが問い合わせ工程中に一度だけ応答する保証を提供することが有利である。これにより、タグを減少させ/コリジョンに応答することになるのが有益である。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、プロセッサと、電源と、プロセッサに動作可能に関連付けられたRFトランシーバと、センサインタフェースを介してプロセッサにアクセス可能な1つまたは複数のセンサと、プロセッサに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのメモリ装置とを備える、RFIDセンサタグを提供し、このメモリ装置は、RFIDセンサタグに本発明の態様による方法を実施させるために、プロセッサにアクセス可能かつプロセッサによって実行可能なプログラム命令を含んでいる。
【0042】
RFIDセンサタグは、ウォッチドッグタイマ、タイムスタンプタイマ、クロック制御回路などのさらなる構成要素を含むことができることが、本発明を実施する方法の前述の概要から理解されよう。
【0043】
例えば、一態様において、プログラム命令は、RFIDセンサタグに方法を実施させ、この方法は、低消費電力状態に入るステップと、所定の条件が成立した際に、1つまたは複数のセンサを介してセンサ測定を実行するための中程度の消費電力状態に入るステップと、RFトランシーバを介してRF信号を検出する際に、RF信号源とのRF通信を実行するための高消費電力状態に入るステップと、RF通信またはセンサ測定が完了する際に、低消費電力状態に再度入るステップとを含む。
【0044】
RFIDセンサタグは、中程度のおよび高い消費電力状態に対応する少なくとも2つの異なる速度を有するクロックを生成するように構成された、クロック生成回路をさらに備えることができる。
【0045】
さらなる態様によれば、プログラム命令は、所定の条件が成立した際に、1つまたは複数のセンサからの少なくとも1つのセンサ値を読み取るステップ、および所定の条件に関連する情報とともに、RFIDセンサタグのメモリにセンサ値を格納するステップを含む方法を、RFIDセンサタグに実施させる。
【0046】
さらなる態様において、プログラム命令は、RFトランシーバのRF信号を検出するステップと、検出されたRF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含むかどうかを決定するステップと、検出されたRF信号が所定の通信プロトコルに従った命令を含む場合にのみ、対応する応答を提供するステップとを含む方法を、RFIDセンサタグに実施させる。
【0047】
さらに別の態様では、プログラム命令は、所定の通信プロトコルに従った命令を含むRF信号を受信するステップと、記録されたセンサデータの利用可能性を示す応答を含むRF信号を送信するステップと、所定の通信プロトコルに従って記録されたセンサデータを送信するための命令を含むRF信号を受信するステップと、メモリに記録されたセンサデータを含むRF信号を送信するステップとを含む方法を、RFIDセンサタグに実施させる。
【0048】
これを明示的に指定しなくてもよいが、上述した本発明の態様のいずれかのさまざまな特徴は、他の態様に関連して適用されてもよいことが理解されよう。本発明の実施形態のこの特徴および他の特徴、利益および利点は、例としてのみ提供される以下の詳細な説明から明らかにされ、前文に記載されたような、そして添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0049】
次に、本発明の実施形態は、同じ参照符号が同じ特徴を示す添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明を実施するセンサタグのブロック図である。
【0051】
【
図2】
図1のセンサタグのより詳細なブロック図である。
【0052】
【
図3】本発明を実施するクロック制御部の状態遷移図である。
【0053】
【
図4】本発明の実施形態に係る疑似起動の処理を示すフローチャートである。
【0054】
【
図5】本発明を実施する起動/問い合わせプロトコルを示すコマンド/応答のフローチャートである。
【0055】
【
図6】発明を実施するセンサタグのグループ起動/問い合わせを示すフローチャートである。
【0056】
【
図7】本発明を実施する例示的なタイムスタンプと温度のデータフォーマットである。
【0057】
【
図8】本発明の実施形態に係る別のデータ削減方法を示す温度−時間グラフである。
【0058】
【
図9】本発明を実施するリーダ/ライタシステムのブロック図である。
【0059】
【
図10】
図9のリーダ/ライタシステムのマイクロコントローラのファームウェア構成要素を示すブロック図である。
【0060】
【
図11】受信機のファームウェアの動作を示すフローチャートである。
【0061】
【
図12】本発明の実施形態に係る問い合わせ範囲を調整する方法を示すフローチャートである。
【0062】
【
図13】
図9のリーダ/ライタシステムの主要なソフトウェア構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサタグ100のハイレベルブロック図である。
【0064】
センサタグ100は、メモリ104を有する制御モジュール102を備えている。メモリ104は、動作プログラムやデータのための不揮発性記憶装置、ならびにスクラッチスペースとして、および/または一時変数のために使用する揮発性記憶装置を含むことができる。
【0065】
センサタグ100は、制御モジュール102およびタグ100の他の構成要素のための基本的な電源として、バッテリ106をさらに備えている。
【0066】
図1に示されるRFIDセンサタグの具体的な実施形態100は、温度センサ108をさらに備えている。本明細書中では、温度センサ108は、RFIDセンサタグによって実行され得る環境検知の例として使用されているが、これが本発明の範囲を限定するものではないことは理解されよう。例えば、環境光あるいは湿度センサのような環境センサの他の形態、および/または、全地球測位システム(GPS)受信機のような他の種類の検知装置あるいは監視装置を、追加的または代替的に、本発明を実施するRFIDセンサタグに組み込むことができる。
【0067】
センサタグ100は、アンテナ素子110をさらに備えている。アンテナ素子110は、動作周波数帯域の信号を受信および送信するために使用される。本明細書に記載の例示的な実施形態では、動作周波数帯域は、5.725GHzから5.850GHzのSHF帯である。ただし、VHF帯またはUHF帯の周波数のような代替のRF帯を使用してもよい。
【0068】
現状では、SHF帯の5.8GHz前後で動作するRFIDタグの動作に関する、確立されまたは広く採用されている業界標準はない。ただし、開発努力を最適化するだけでなく、一般的な相互運用性、業界の受け入れなどを支援する利益のために、本発明の実施形態は、実用的な程度に他の動作帯域における既存のRFID規格の特徴を採用することが有利である。
【0069】
RF−DC変換モジュール112が、受信RF信号からのエネルギーを抽出または「回収」するために使用され、制御モジュール102および/またはセンサタグ100の他の構成要素のための電源としてこのエネルギーを使用することができる。受信RF信号から回収したエネルギーを使用することにより、バッテリ106への負荷が低減されて、バッテリ寿命を延ばすことが有利である。センサタグ100は、RF復調器114およびRF変調器116を備えるトランシーバをさらに含んでいる。RF復調器構成要素114は、有効な受信RF信号からクロックおよびデータを抽出し、これを制御モジュール102に提供する。データは、RF変調器構成要素116を介して制御モジュール102によって送信される。
【0070】
図2は、センサタグ100のより詳細なブロック図を示している。開示されている実施形態では、
図2に示す構成要素のすべてが単一のチップに集積されており、システムオンチップ(SoC)設計に組み込まれている予め設計された回路素子(一般にIPとして知られている)を用いてこのチップを構成することができる。ただし、代替の実施形態では、RFIDセンサタグ100は、個別の物理的な構成要素を複数使用して実装されてもよいことが理解されよう。
【0071】
タグ100の制御モジュール102は、マイクロコントローラ202を含んでいる。マイクロコントローラ202は、シリアルポート202aのような複数の入力/出力(I/O)ポートとインタフェースされる。I/Oポート202aは、マイクロコントローラ202とタグ100の複数の他の構成要素との間に、センサおよびRF通信用フロントエンドを含むインタフェースを設ける。
【0072】
特に、I/Oポート202aは、復調器114から入ってくる復号信号を受信し、変調器116を介して送信用の信号を出力する。いくつかの実施形態では、変調器116に提供される送信信号が、受信信号と後方散乱されたRF信号との間でオフセットされた周波数を導入するように、設定可能な周波数のクロック(図示せず)を用いてクロックされる。この場合、(
図9を参照して以下に説明されるような)リーダ/ライタ装置は、オフセットを考慮したうえで後方散乱信号の周波数に対応する受信機を同調することができ、これにより、強い送信信号の存在下で、センサタグ100から送信された弱い信号の検出を改善することができる。例示的な実施形態では、10MHzのオフセットが、感度に適切な改善をもたらすことがわかっている。
【0073】
メモリ104は、複数の異なるメモリ構成要素を含んでいる。図示のように、変数や他のスクラッチデータの記憶のために使用される小さな(256バイト)内部ランダムアクセスメモリ(RAM)204Aが存在している。より大きい(4キロバイト)外部RAM204bは、マイクロコントローラ202の通常動作に必要とされるより大きな量のデータの一時的な記憶のために使用される。不揮発性メモリは、4キロバイトのEEPROM204cの形態で、センサデータのような記録された情報を記憶するために設けられている。不揮発性読み出し専用メモリ(ROM)204dは、マイクロコントローラ202の動作に必要とされる固定プログラムや固定データを記憶するために設けられており、これはセンサタグ100の機能を実装するために使用されて実行される。また、完結前のマイクロコントローラ202用のプロトタイプソフトウェアのプログラム作成に使用される外部EEPROM、および不揮発性(NV)ROM204d内の永久記憶装置へのインタフェースを可能にする、任意の外部データ接続204eを設けてもよい。最終的な製品の実施形態では、外部EEPROMインタフェース204eは不要であり、省略されてもよい。
【0074】
また、タグ100は、センサ208を含んでいる。これらは、(
図1を参照した上述のような)温度センサだけでなく、RFIDタグ100が使用されるべきアプリケーションに必要とされる任意の他のセンサも含むことができる。さらに、
図2に示すセンサタグ100の実施形態はバッテリセンサを備え、このバッテリセンサは、バッテリ106の端子電圧の低下を検出するように構成され、これによりローバッテリ表示の実装を可能にする。
【0075】
センサ選択論理208aにより、マイクロコントローラ202が所望の利用可能なセンサ208の1つを選択することが可能になる。アナログ−デジタル変換器(ADC)208b、およびADC復号器208cは、センサ信号をマイクロコントローラ202によって読み取り可能なデジタル表現に変換するために設けられている。本開示の実施形態では、ADCの出力は、2つの8ビット読み取りを介してマイクロコントローラ202によって読み取られる10ビットワードとして提供される。
【0076】
RF−DC変換器112は、整流器のチャージポンプ212a、制限器212b、および電圧調整器212cを含んでいる。同時に、安定化電源の出力212dが提供され、この出力212dは、タグ100の動作帯域内のRF信号の存在の表示としても機能する。受信RF信号から得られる電源212dは、それ自体では、センサタグ100のすべての機能に電力を供給するために不十分かもしれないが、それにもかかわらず、バッテリ106の電源要件が低減して、バッテリ寿命を延ばすこと可能にする。
【0077】
RF復調器114は、包絡線検出器114a、制限器114b、差動アンプ114c、平均化フィルタ114d、比較器114eを含んでいる。同時に、これらの構成要素は、マンチェスタ復号器およびエッジトリガモジュール114gに入力される受信データ出力信号114fを提供する。マンチェスタ復号器は、同期されたクロックおよびデータ出力ビットを提供し、これは、I/Oポートモジュール202aを介してマイクロコントローラによって読み取られる。
【0078】
専用ハードウェアベースのマンチェスタデータの復号化は、あまりにひどく歪められていない受信信号(例えば、波形のデューティサイクル)に有効である。より高い感度または堅牢性が要求される場合、本発明の実施形態は、追加または代替のクロックおよびデータリカバリ技術を実装することができる。例えば、一実施形態(図示せず)では、比較器114eの出力114fは、データ速度を実質的に超える速度でサンプリングされ、波形の遷移間の回数(すなわち、サンプルの数)が先入れ先出し(FIFO)方式のバッファメモリに記憶された後に、このバッファメモリからマイクロコントローラ202によって取得される。この追加の技術は、加法性雑音および/または他のソースの信号歪みに起因する実質的なタイミングジッタの存在下での受信機の堅牢性を向上させることができる。
【0079】
図1および
図2に示したセンサタグ100の実施形態では、RF−DC変換器112および復調器114は、構成要素の別々のブロックとして示されている。これは、これらのブロックの機能を説明する目的のための便宜的な構成であり、センサタグの実用的な一実施形態を表している。代替の実施形態では、これら2つのブロックは、どちらもアンテナ110を介して受信した信号に応じて動作し、単一の復調ブロックおよび動力リカバリブロックに組み合わされる。組み合わせた実装の1つの特徴は、アンテナ110上への電気負荷が低減されることである。
【0080】
センサタグ100の基本的な電源は、バッテリ106に接続されたパワーオンリセット生成器218を含んでいる。出力は、固定デジタル電圧供給源を生成するために、電圧調整器220を介して調整される。クロック生成器222は、出力212dによって示されるように、RFフィールドが存在するか否かに応じて、「低速クロック」または「高速クロック」のいずれかを生成する。また、センサタグ100は、「超低速クロック」を使用し、3つの利用可能なクロックからのシステムクロックの選択は、マイクロコントローラ202からの信号の制御下で、クロック選択論理224によって実行される。
図3を参照して、3つのクロックの使用を以下でより詳細に説明する。
【0081】
センサタグ100は、カウンタと設定可能なタイムスタンプ生成器226をさらに備え、これらは、以下の図の番号を参照して以下でより詳細に記載されるように、さまざまなタイミングおよび記録機能のために使用される。
【0082】
最後に、センサタグ100は、エラーリカバリ用のウォッチドッグタイマ(WDT)228を含んでいる。このタイマは、超低速クロックで動作され、不揮発性メモリ204d内に格納されたプログラムコードの制御下での通常動作中のさまざまな時点で、マイクロコントローラ202によってリセットされる。タイムアウト期間内にWDT228をリセットするためのマイクロコントローラ202による失敗により、WDTがマイクロコントローラ202をリセットさせる。これにより、任意の小さなまたは断続的な、ソフトウェアまたはハードウェアの不具合により永久にセンサタグ100が無効になることを防ぐ。
【0083】
図3は、本発明の実施形態に係る例示的なクロック制御を示す状態遷移
図300である。上述したように、開示されたRFIDセンサタグ100は、3つのクロックを使用する。例えば1MHzで動作する「低速クロック」は、RF信号伝達を含まないマイクロコントローラ202の通常の処理機能のために使用される。例えば3.8Hzの「超低速クロック」は、タグ100が実質的な処理をしない、低電力の「アイドル」または「スリープ」状態を提供する。高速のRF信号を処理する際に、例えば22MHzでの「高速クロック」が必要とされる。
【0084】
状態遷移
図300は、「低速」および「高速」クロックを切り替えるために使用される論理を示している。コントローラは、状態302で最初に電源がオンになっているか、またはリセットされている。状態304で、最初のセットアップおよび設定手順が、遅いクロック速度で実行される。これらの手順が完了すると、センサタグ100は、低速クロックがマイクロコントローラに提供されたままアイドル状態306に入ることができる。ただし、マイクロコントローラは低消費電力の「スリープ」モードに入り、ここでは、割込み信号によって復帰されるまで処理は実行されない。
【0085】
一般に、2つの事象のうちの1つは、アイドル状態306からセンサタグ100を起こすことになる。このような一事象は、センサの読み取りを収集して記録するための必要条件である。センサの読み取りをトリガする信号は、ブロック226内のカウンタの1つによって生成され得る。この信号を受信すると、例えばマイクロコントローラ202への割込み入力を介して、システムは、遅いクロック速度で動作しながらセンサアクティブ状態308に移行する。この状態では、マイクロコントローラ202は、センサ測定値を受信し、不揮発性メモリ204c内で任意の適切な記録を行う。センサの記録が完了すると、タグ100は、典型的には、アイドル状態306に戻ることになる。
【0086】
タグ100をアイドル状態306に出すことができる第2の事象は、RF信号の検出である。適切なRF信号の存在により、電源電圧が出力212dで存在する。また、これにより高速クロックが起動され、センサタグ100はRFアクティブ状態310に入る。この状態では、マイクロコントローラは、RFタグリーダとの通信用に画成されたプロトコルに従って、RFデータ信号を受信および/または送信する。これらの機能のいくつかは、例えば
図5を参照して、以下でより詳細に説明される。
【0087】
RF信号が存在しなくなると、センサタグ100は、一般に、アイドル状態306に戻ることになる。
【0088】
また、いくつかの状況では、タグ100は、センサアクティブ状態308およびRFアクティブ状態310との間で遷移することができる。例えば、記録の開始時に存在しなかったセンサデータ記録の完了時にRF信号が存在している場合、これが起こることになる。センサの記録信号が、RF処理完了後に存在している場合、同様に、タグ100は、RFアクティブ状態310からセンサアクティブ状態308に遷移することができる。
【0089】
「超低速クロック」は、ウォッチドッグタイマを実行しながら、タイムスタンプ生成のために使用され、タグ100の他の非タイムクリティカルな機能のために使用されてもよい。したがって、超低速クロックが実際にコントローラ202に提供されることはないが、マイクロコントローラ202をアイドル状態306の「スリープ」モードから復帰することを確実にする手段となっている。
【0090】
次に、
図4を見ると、本発明の実施形態に係る疑似起動の処理を示すフローチャート400が示されている。
図4に示した手順の目的は、動作周波数帯域内の疑似RF信号によって起動された場合に、タグがRFアクティブ状態310のままではないことを確実にすることである。例えば、同じ帯域内で動作する他のデバイスから受信した干渉に起因して、これが起こり得る。高速クロックモードでの動作は、低速クロックまたは超低速クロックモードでの動作よりもかなり多くの電力を消費することが理解されよう。したがって、高速クロックモードでの不要な動作は、回避されることが好ましい。
【0091】
フローチャート400に示すように、RF信号は、第1のステップ402で初期のアイドル状態から検出される。タグ100はRFアクティブ状態310に移行する。この状態では、404で、検出されたRFキャリアに送信されたデータを受信および復号することを試みる。有効なデータが406で検出された場合は、次に、タグ100は、この受信情報の通常の処理を続行することになる。
【0092】
ただし、有効なデータが検出されない場合、マイクロコントローラ202は、その代わりに、RFトランシーバ(受信機および/または送信機)を少なくとも部分的に無効にすることができる。
図2に示された実施形態100では、これは、制限器212bに無効信号を適用することによって行われる。これは、RF信号の出力212dを終了させる電圧調整器212cに、十分な信号が入力されることを妨げる。本実施形態100では、変調器116および復調器114を含むRFフロントエンドの構成要素は、これらの回路ブロックに行く電圧調整器の出力を無効にすることによって無効にされる。この実装によれば、十分なRFアクティビティが検出された場合に、RF−DC変換回路112のみが、RF信号を検出して、無効にされた構成要素を再度有効にするためのトリガ信号を生成するように機能し続ける。
【0093】
タイマは、RF検出が無効になっている時間を制御するために使用される。したがって、ステップ408でこのタイマは設定または調整され、これにより、タグ100を再びアイドル状態から復帰させることができる前に、410で対応する最小の時間遅延が起こる。
【0094】
上述したように、ステップ408でタイマを設定または調整することができる。例えば、繰り返される疑似覚醒を防ぐための「バックオフ」戦略を実現するためには、調整が望ましい。例えば、タグ100は、連続的な干渉の領域内に配置されてもよく、環境条件が変更されるまで、これらの覚醒は再び疑似的になるため、これらの状況で頻繁に再度覚醒されることは好ましくない。ただし、疑似起動が短期のRFスパイクに起因した場合に、長いタイムアウト遅延を使用することも好ましくない。したがって、妥協的戦略は、繰り返される疑似起動の際に、この遅延を増加させないために、最初に比較的短い遅延を使用することである。したがって、各疑似起動の際に、バックオフタイマの値を、少なくともある最大値に達するまでは、ステップ408で増加させることができる。
【0095】
タイマは、上述したように、ある実用的なバックオフ機構を提供するが、当業者には明らかなように、代替的な技術を用いることができる。例えば、連続した疑似起動のカウントを維持することができ、所定のカウンタ値が達成された後に、タグ100は選択されたコマンドの実行を「ロック」することができる。
【0096】
起動が疑似的でない場合、すなわち、有効なデータが検出された場合、バックオフタイマがステップ412でリセットされるため、それに続く任意の疑似起動の後に、再び比較的短い遅延が続くことになる。
【0097】
ステップ414では、マイクロコントローラ202は、アイドル状態に再び戻る前に、受信した問い合わせ信号に従って、必要なRF受信応答処理を実行する。
【0098】
RF処理を実行する際には、RFアクティブ状態310で費やされる時間を最小化し、バッテリ106の消耗を抑えるために、送信されるデータの量を最小限にすることも望ましい。
図5は、問い合わせ中の消費電力を低減するように設計された、本発明を実施する起動/問い合わせプロトコルを示す模式
図500である。
【0099】
模式
図500に示すように、リーダ502はタグ504と通信する。最初に、リーダは、タグを覚醒する問い合わせ用RF信号506を送信する。問い合わせ信号の有効性を検証するために、すなわち疑似起動と区別するために、信号506は、タグによって復号されることができる明瞭なデータを搬送する。また、最初の問い合わせ信号506は、センサデータに一致するタグのみが応答する必要があることを示す、1つまたは複数のRFIDセンサタグの識別データを搬送することができる。例示的な実施形態では、リーダ502とタグ504との間のこの通信は、ISO/IEC18000−4規格の2.45GHzにおけるエアインタフェースプロトコル標準による、タグとリーダ/ライタとの間の通信用のエアインタフェースプロトコルに従って行われる。システムプロトコルは、モード1のプロトコルパラメータおよびモード1のアンチコリジョンパラメータに実装され、これにより、リーダ/ライタが1回のリードサイクルにおいて複数のタグ(最大120個のタグまで)を識別および通信することが可能になる。また、例示的なシステムは、ISO/IEC18000−4規格のモード1の、2.45GHzの周波数帯から5.8GHzのSHF帯に変換する必要がある修正を対象とした、フォワードリンクおよび後方錯乱用のリターンリンクのための物理的なメディアアクセス制御(MAC)のパラメータを適応している。
【0100】
また、データ整合性の保護メカニズムは、ISO/IEC18000−4のモード1のプロトコルから適応される。これらの技術のさらなる詳細は関連する規格で利用可能であり、したがって、さらなる議論は本明細書では必要とされない。重要な点は、
図5の模式
図500に示される通信が、確立されたプロトコルのセットに従ってすべて適切にサポートされ、検証されていることである。さらに、ISO/IEC18000−4のプロトコルが使用されることは必須ではなく、他のプロトコルを本発明の範囲内で利用できることは理解されよう。
【0101】
有効な問い合わせ信号の検証の際に、タグは、1つまたは複数の状態表示を含む確認応答508を返信する。最初の状態表示は、「新たなデータ」または「データ状態」の表示を含む。タグが、以前に検索されていない関心のある任意の記録されたデータを有する場合のみ、この表示が設定されることになる。これにより、さらなる通信をすぐに結論付けることができるようになり、任意のさらなる不要なRF通信が行われずに、タグがアイドル状態306に戻ることができる。
【0102】
さらに、確認応答送信508での状態表示は、バッテリ表示を含むことができ、このバッテリ表示は、バッテリセンサがローバッテリ状態を検出した場合にアクティブである。これにより、リーダが操作者に、この表示を返す特定のセンサタグが耐用期限に近づいていること、および/またはバッテリの交換が必要であることを知らせることができる。
【0103】
新たなデータが利用可能である場合に、リーダ502は、タグ504にデータの要求510を送信する。これに応答して、タグ504は、512でリーダ502に未読のデータを送信する。
【0104】
図5に示す例500は、リーダ502とタグ504との間の拡張通信の相互作用を表している。ただし、本発明を実現するRFIDセンサタグは、リーダによって送信されるさまざまな異なる命令を実装するようにおよび/またはこれに応答するように構成され得ることが理解されよう。いくつかの例では、単一の「コマンド/応答」(例えば506、508)シーケンスが、操作を完了するのに十分とされる。他の例では、さらなるトランザクションがデータの操作および/または転送を完了するために必要とされ得る。二段階のトランザクション500は、したがって、単に例示的であると理解されるべきである。
【0105】
上記のように、ISO/IECエアインタフェースプロトコル規格は、リーダの範囲内の複数のタグの識別および通信を可能にする。ただし、同時に、センサタグの電力要件を最小限に抑えながら、このようなグループ通信が行われることが望ましい。
【0106】
図6は、この所望の結果を達成するように設計されたセンサタグのグループ起動/問い合わせを示すフローチャートである。フローチャートに示した処理600によれば、ステップ602で、リーダは範囲内のセンサタグを識別し、ステップ604で、返された状態表示から、どのタグが取得される新たなデータを有するかを決定する。この時点で、新たな取得データを有していないすべてのタグが、バッテリ残量を節約するために、アイドル状態306に戻ることができる。
【0107】
次に、ステップ606で、リーダ/ライタは、新たなデータの存在を示すこれらのタグを問い合わせる。新たなデータがすべての応答タグから取得されるまで、この問い合わせは608を続行する。
【0108】
図3〜
図6を参照すると、本発明の実施形態のさらなる特徴は、上述の省電力機能に加えて、データ記録および記憶の量を低減するための対策を実施することであり、これにより、センサデータのために必要なEEPROM204cのサイズを小さくすること、ならびにRF問い合わせに応答して送信されるのに必要なデータ量を低減させることができる。
【0109】
この点に関し、
図7は、本発明の実施形態による例示的なタイムスタンプと温度のデータフォーマット700を示している。フォーマット700によれば、各センサの読み取りは、第1ワード702が2バイトのタイムスタンプ値であり、第2ワード704が2バイトの温度値である、16ビットワードの対として格納されている。フォーマット700は適切なデータ構造の1つの可能な例を提供しているが、一般的なデータフォーマットでは、サイズおよびコンテンツが、タグの対象アプリケーションの要件および/または設定に依存することは理解されよう。
【0110】
2バイトのタイムスタンプ値702を使用して、合理的な記録時間を可能にするために、センサタグは、基準タイムスタンプ、すなわち、タイムスタンプ702がこの後のオフセットを表す絶対起動時間を表す値を用いて最初にプログラムされ得る。タイムスタンプ値は、それ自体は単に、センサタグ100のカウンタおよび設定可能なタイムスタンプ生成器226内に維持されるカウンタの値であってもよい。タイムスタンプカウンタの増分が、センサタグ100の所望の最大動作周期に依存し得る。例えば、カウンタの増分が10分ごとに1回の場合、カウンタのオーバーフロー前の最大動作期間は約7.6日である。温度データがこれと同じ速度で記録される場合、すなわち、1時間当たり6回、または1日当たり144回記録される場合、記録されるタイムスタンプと温度のデータ対の最大数は1092個となる。これは、EEPROM204cに設けられた4キロバイトをわずかに超えている4368バイトの記憶装置を必要とするかもしれない。したがって、例示的なセンサタグ100は、この例では、7.1日間と少しの操作に相当する最大1024個の温度測定値に記憶制限され得る。
【0111】
長期的なデータ記録、および/またはより高い時間分解能での記録を可能にするために、いくつかの実施形態において、本発明は、より効率的なデータ記録論理を使用することができる。一例が、
図8に示す温度/時間グラフ800によって示されている。グラフ800は、縦軸に記録された温度802、横軸に時間経過804を示している。それぞれの縦線806は、1つのデータ記録の間隔、すなわち、温度が測定された時刻を表している。生鮮食品の貯蔵や輸送などの一部のアプリケーションでは、実際の温度は、所定の安全な範囲内に収まる限り重要ではない。グラフ800では、安全な範囲を、最低温度808および最高温度810を示す水平線で表している。例えば、牛乳などの製品は、一般に、常に摂氏4度以下に保存されている限り、少なくともその特定消費期限の日付まで保つことが保証されている。加えて、品質上の理由から牛乳は凍結されないことが望ましく、すなわち、温度は摂氏零度を下回ることはない。したがって、温度が零度の最低温度808を超え、4度の最高温度810を下回る限り、この場合の温度は重要ではない。
【0112】
グラフ800の曲線812は、マークされた各時間間隔で取得されている温度測定値を用いて、時間の関数としての温度の例示的なトレースを表している。温度は、期間814と期間816を除き、示されたすべての時間で最小値808と最大値810との間に留まり、ここでは、期間814で温度が最大値810を超え、期間816で温度が最小値808を下回る。これらの2つの期間中に取得される測定値のみが記録される場合、記憶データの大幅な削減が達成され、さらに、すべての顕著な情報、すなわちセンサタグが安全な範囲の限界を超えた周囲温度を検出した最中の時間および温度の測定値が保持される。
【0113】
さらに、温度が所定の安全な範囲の間であっても、一定の間隔で温度測定値を記録するようにマイクロコントローラ202をプログラムすることができる。例えば、温度測定値に関係なく、1時間に1回、検証目的のために、記録を行うことができる。この場合、例えば、記録は、その時点の温度が、最小値808レベルと最大値810レベルとの間にあるにもかかわらず、時間間隔818で行われ得る。
【0114】
関心のあるおよび/または重要である情報のみを記録することにより記憶要件を最小化するために、他のデータ記憶戦略を特定のアプリケーションに用いてもよいことが理解されよう。
【0115】
次に
図9を参照すると、本発明を具現化するセンサタグ100と通信するのに適した例示的なリーダ/ライタ装置のブロック図が示されている。リーダ/ライタ装置900は、SHFのRFフロントエンド902、マイクロプロセッサモジュール904、およびバックホール通信モジュール906の3つのモジュールを含んでいる。
【0116】
SHFのRFフロントエンド902は、無線モジュールを備えるアナログ部908を含んでいる。送信アンテナ910が電力増幅器912によって駆動され、次に、その送信モードで動作する市販のSHFのフロントエンドチップ914により駆動される。受信側では、受信アンテナ916が市販の低雑音増幅器918を駆動し、次に、その受信モードで動作する市販のSHFのフロントエンドチップ920に信号を渡す。いくつかの実施形態では、送信および受信周波数が同じであってもよい。センサタグ100が、その受信信号と後方散乱信号との間のオフセットを導入するように構成されている他の実施形態では、受信側のRFフロントエンド902は、設定された周波数オフセットによって送信機から離調される。上述したように、例示的な実施形態では10MHzのオフセット周波数が有効であることが判明しているが、さまざまなオフセット周波数が適切であり得ることは当業者には理解されよう。
【0117】
SHFのRFフロントエンド902は、ベースバンドコントローラ922をさらに備え、このベースバンドコントローラ922は、送信用フロントエンドチップ914および受信用フロントエンドチップ920にインタフェースされる市販のベースバンドマイクロコントローラを基本的に備え、マイクロプロセッサモジュール904にインタフェースする標準のユニバーサルシリアルバス(USB)を設けている。
【0118】
例示的な実施形態のマイクロプロセッサモジュール904は、シングルボードの、Windows(登録商標)互換性のある、内蔵マイクロプロセッサシステム926である。シングルボードコンピュータ926は、USBポート、イーサネット(登録商標)ポート、およびRS232シリアルポートを含む複数の標準的なI/Oポートを備えている。また、シングルボードコンピュータ926は、人間の操作者とインタフェースするためのLCDタッチスクリーンを備えている。バックホールネットワークモジュール906は、例えば、USBポートを介して、またはイーサネットポートにより、標準のインタフェースポートの1つを介してシングルボードコンピュータ926に接続されている。
【0119】
例示的な実施形態900では、ネットワーク通信モジュール906は、バックホール無線モジュール928であり、例えば、GSM(登録商標)、3G、LTE/4G、WiMAX、Wi−Fi、または他の適切なプロトコルに従って動作するネットワークインタフェースである。他の実施形態では、バックホール通信モジュール906は、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN)への有線接続を介して動作することができる。いずれの場合も、リーダ/ライタ装置900によってセンサタグから収集したデータを、バックホール通信接続を介して、中央データ収集ポイントに返送することができ、および/またはリモートアクセスすることができる。
図10および
図11は、ベースバンドマイクロコントローラ924のプログラム作成および動作のいくつかの態様を示している。具体的には、
図10は、マイクロコントローラのファームウェア構成要素を示すブロック
図1000であり、
図11は、受信機のファームウェア動作の一般的な工程を示すフローチャート1100である。
【0120】
まず、
図10を参照すると、マイクロコントローラのファームウェア1000は、複数の主要な構成要素を含んでいる。第1の構成要素1002は、I/Oピン、SHFのフロントエンドチップ914,920を有する拡張シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)の通信チャネル、割込み設定などのセットアップを含む、マイクロコントローラの一般的な初期化に関与している。第2のモジュール1004は、起動時に必要とされ得るフロントエンド設定に関与し、シングルボードコンピュータ926の制御下での再設定が必要となる場合もある。第3および第4のファームウェアモジュールは、SHFのフロントエンドチップ914,920の動作要件に応じた、送信機制御1006と受信機制御1008のためのものである。
【0121】
図11のフローチャート1100は、初期化、設定、および受信機のファームウェア動作を示している。最初のステップ1102では、ベースバンドマイクロコントローラ924が初期化され、初期化構成要素1002内のコードを実行する。ステップ1104で、フロントエンド設定が実行され、すなわち、構成要素1004が実行される。
【0122】
ステップ1106で、フロントエンドの受信機チップが待機モードに置かれている。判断ステップ1108に従って、適切なコマンドがシングルボードコンピュータから受信されるまでは、この状態のままである。コマンドは、受信を可能にする命令を含むことができ、この場合、決定1110はスッテプ1112に分かれ、ここで、SHFフロントエンド902は、1つまたは複数のRFIDセンサタグからデータを受信し、シングルボードコンピュータ926にこのデータを転送するように動作する。
【0123】
また、シングルボードコンピュータ926から受信したコマンドは、再設定の命令を含むことができ、この場合、決定ステップ1114は、新たな設定情報がシングルボードコンピュータ926から受信されるステップ1116に制御を指示する。この情報は、ステップ1118で、SHFフロントエンドを再設定するために、フロントエンド設定用の構成要素1004によって使用される。その後、フロントエンドは、待機モード1106に戻される。
【0124】
SHFフロントエンドの再設定によって実現することができる本発明のいくつかの実施形態のさらなる特徴は、複数のタグの問い合わせに関する。特に、多かれ少なかれRFIDセンサタグと通信するために、リーダ/ライタ装置900の動作の範囲を増加または減少させることが、いくつかのアプリケーションにおいて望ましいかもしれない。RF信号が受信され得る範囲を制御するために、SHFフロントエンドからの送信電力を増加または減少させることによって、これを達成することができる。
図12のフローチャート1200は、本発明のいくつかの実施形態に係る問い合わせ範囲を調整する方法を示している。
【0125】
ステップ1202で、SHFフロントエンドは、範囲内のRFIDセンサタグ問い合わせのための初期送信電力を設定するように構成されている。ステップ1204で、グループ問い合わせが開始され、範囲内のすべてのタグがこれに応答することになる。ステップ1206で、検出されたタグの数が許容可能であるか否かを判断するための決定が下される。携帯型の読み取り装置の場合、例えば、この決定は、ユーザ入力を必要とする場合があり、この場合、操作者は、リーダの電流範囲が、検出されたタグの数に基づいて、多過ぎるかまたは少な過ぎるかどうかを評価する位置に居ることができる。例えば、倉庫環境では、複数のコンテナが存在する場合があり、これらのすべてが複数のRFIDセンサタグを含み、操作者は、リーダが単一のコンテナまたは複数のコンテナの範囲内にあるかどうかを評価することができるかもしれない。
【0126】
この範囲が許容可能でない場合(すなわち、多過ぎるかまたは少な過ぎる)、SHFフロントエンドは、ステップ1208で、問い合わせ用送信電力を調整するために再設定される。次に、問い合わせ1204および決定1206のステップを繰り返すことができ、必要に応じて、その後さらに繰り返されてもよい。
【0127】
範囲が所望のレベルに調整された後、ステップ1210で、範囲内のRFIDセンサタグのすべてからデータを受信するためにリーダを使用することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、「スリープ」機能を、代替的または追加的に、複数のタグの問い合わせ手順中に使用することができるため、リーダによる問い合わせに応答した後に、しばらくの間、非応答、低消費電力状態に入ることになる。これは、例えば、重複領域をカバーする複数の操作によるタグの問い合わせを可能にする。各タグは一度だけ応答するため、リーダは重複した応答を処理する必要はない。さらに、各タグが一度だけ問い合わせに応答するため、消費電力が最小化される。タグは、応答を提供した後に自動的に低電力状態に入ることができ、あるいは、タグは、リーダによって送信された別の「スリープ」コマンドに応答して、そうすることができる。
【0129】
次に、
図13を参照すると、
図9に示したリーダ/ライタシステム900の主要なソフトウェア構成要素を示すブロック
図1300が示されている。
【0130】
一番下のレベルで開始し、ソフトウェアシステム1300が、SHFフロントエンドモジュール902の設定および動作に関与するベースバンドインタフェースのドライバ構成要素1302を含んでいる。
【0131】
さらに、バックホールインタフェースのドライバモジュール1304が、バックホール通信モジュール906を介した、設定および通信に関与している。これに所望の通信ドライバ、ならびにセキュリティおよび認証コンポーネントが含まれるため、リーダ/ライタ装置が、例えばインターネット経由で、有利にリモートアクセス可能である。
【0132】
ベースバンドインタフェースのドライバ1302およびバックホールインタフェースのドライバ1304は、動作システムソフトウェア1306とインタフェースし、この動作システムソフトウェア1306は、Windows CEカーネル、種々の標準デバイスドライバ、タッチスクリーンインタフェース1308によってユーザと通信するためのタッチスクリーンドライバ、およびユーザアプリケーションによって動作システム機能へのアクセスを提供する.Netフレームワークを含んでいる。
【0133】
さらなるソフトウェア構成要素は、エアインタフェースプロトコルの構成要素1310である。これは、例えばISO/IEC18000−4規格で指定されるような、RFID通信プロトコルのレイヤ2およびレイヤ3処理に関与している。エアインタフェースプロトコルの構成要素1310の機能は、データ完全性保護機構(例えば、CRCの生成/確認)、コマンドおよび応答の符号化および復号化、コリジョン/コンテンションの調停、エラー処理、およびイベント生成の実施を含んでいる。
【0134】
さらなるソフトウェア構成要素は、リーダ/ライタ装置のシステム設定および管理(1312)、ならびにエアインタフェースプロトコルの構成要素1310が提供する機能上に構築される低レベルのリーダプロトコル1314のためのアクセスを提供している。
【0135】
ソフトウェアシステム1300は、SQL−CEデータベース1318へのアクセスを提供するデータベースマネージャの構成要素1316をさらに含んでいる。
【0136】
アプリケーションプログラミングインタフェース(API)は、リーダ/ライタシステム1320の機能へのアプリケーションアクセス、ならびにバックホールインタフェース1304を介してリモートクライアントに配信することができるウェブサービス1322のために設けられている。
【0137】
上記の構成要素すべては、最終的に、ユーザアプリケーション1324が使用するためのインタフェースおよび機能を提供し、これによりリーダ/ライタ装置を操作することができ、問い合わせたRFIDセンサタグから取得したデータを見直し、将来の参照のためにデータベース1318内に格納することができる。
【0138】
全体として、本発明の実施形態は、タグが互換性のあるRFIDリーダの範囲内にあろうとなかろうと、長期間にわたって環境および他のパラメータの連続的な監視を容易にする多機能RFIDセンサタグシステムを提供する。特徴および機能は、消費電力の削減、およびバッテリ寿命の延長のために提供される。さらに、本発明のさまざまな実施形態は、センサデータの効率的な記憶と、関連するタイムスタンプ情報を提供する。
【0139】
上述の実施形態は、例としてのみ提示され、本発明に従って実装または提供され得るすべての特徴および機能を網羅することを意図するものではない。例えば、追加の検知用構成要素には、例えば、GPS受信機、光センサ、湿度センサなどが含まれていてもよい。本明細書中に記載されるRFIDセンサタグ100の具体的な実施形態では、最大8個までのセンサをサポートすることができるが、これも本発明の特徴を限定することを意図するものではなく、所与のアプリケーションで実用的であり得るような任意の数のセンサを設けることができる。
【0140】
したがって、本明細書に記載の実施形態の種々の変更および/または修正が、電子およびRF設計の関連分野の当業者には明らかであることが理解されるべきであり、このような変形は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれ得る。
【国際調査報告】