特表2016-513968(P2016-513968A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-513968O−結合N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼを標的する組成物及び方法並びに創傷治癒を促進する組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-513968(P2016-513968A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(54)【発明の名称】O−結合N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼを標的する組成物及び方法並びに創傷治癒を促進する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20160415BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160415BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20160415BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160415BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20160415BHJP
【FI】
   C12N15/00 GZNA
   A61K31/7088
   A61P17/02
   A61P43/00 121
   A61K48/00
   A61K45/00
   A61K45/06
   A61K9/06
   A61K9/70 401
   A61K47/10
   A61K47/34
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K9/08
   A61K9/107
   A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-501273(P2016-501273)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月6日
(86)【国際出願番号】US2014023525
(87)【国際公開番号】WO2014164805
(87)【国際公開日】20141009
(31)【優先権主張番号】61/775,937
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515252307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ノースキャロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ルーベンスタイン,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルナガー,キャスパー
【テーマコード(参考)】
4B024
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B024AA01
4B024CA11
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA17
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA27
4C076AA72
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC19
4C076DD09
4C076DD37
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE48
4C076FF31
4C084AA19
4C084AA22
4C084AA23
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA28
4C084MA32
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書に開示された主題は、UDP-N-アセチルグルコサミンポリペプチドβ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(OGT)を標的する化合物、組成物及び方法を提供する。更に、本明細書に開示された主題は、創傷治癒を促進する化合物、組成物及び方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有する単離されたアンチセンスOGTポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号3に示される配列、又は
配列番号1又は配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列
を有する請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド、及び
(ii)医薬的に許容され得るキャリア
を含んでなる医薬組成物。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが
配列番号3に示される配列、又は
配列番号1又は配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列
を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリヌクレオチドが中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
ポリヌクレオチドが配列番号1又は配列番号173のコード領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが配列番号173の調節領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項9】
ポリヌクレオチドが配列番号173のイントロン領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項10】
ポリヌクレオチドが配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項11】
ポリヌクレオチドが配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列又は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する配列を含んでなり、該配列が配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項12】
ポリヌクレオチドの配列が、配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメント又は配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な18〜30ヌクレオチド分子に相当するように、配列番号4〜168のいずれか1つのフラグメントを含み、更に1〜10ヌクレオチド残基を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項13】
ポリヌクレオチドがオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項14】
医薬的に許容され得るキャリアがゲルである、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
医薬的に許容され得るキャリアがアルコールを含んでなる、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
医薬的に許容され得るキャリアがポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを含んでなる、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
医薬的に許容され得るキャリアがPluronic(登録商標) F-127を含んでなる、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
医薬的に許容され得るキャリアがアルギネート又はヒドロゲルを含んでなる、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
医薬的に許容され得るキャリアがセルロース系キャリアを含んでなる、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
セルロース系キャリアがヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項4〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
局所塗布用に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
局所注射用に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
創傷被覆材中に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
コロイドゲル被覆材中に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
持続放出用に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
緩徐放出、延長放出又は制御放出用に製剤化された請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
液体、クリーム、軟膏、エマルジョン、ローション、スプレー、フォーム又は塗布剤である、請求項4〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
創傷を有する対象者の治療用である請求項1〜27のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項29】
創傷が予想した速度で治癒していない、請求項1〜28のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項30】
創傷の治癒が遅れているか、困難であるか、又は創傷が慢性的である、請求項1〜29のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項31】
創傷がOGTの発現増強によって少なくとも部分的に特徴付けられる、請求項1〜30のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項32】
対象者が糖尿病である、請求項1〜31のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項33】
対象者が1型真性糖尿病を有する、請求項1〜32のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項34】
対象者が2型真性糖尿病を有する、請求項1〜32のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項35】
対象者が正常より高い血中グルコースレベルを有する、請求項1〜34のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項36】
対象者がインスリン抵抗性レセプターを有する、請求項1〜35のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項37】
対象者が糖尿病でない、請求項1〜31のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は組成物。
【請求項38】
第2の創傷治癒剤を更に含んでなる請求項4〜37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
第2の抗OGT剤を更に含んでなる請求項4〜37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド;
(ii)OGTの発現を阻害する二本鎖RNA分子;及び
(iii)OGTの発現を阻害する短ヘアピンRNA分子
から選択される抗OGT剤を細胞に投与することを含んでなる、細胞においてOGTを阻害する方法。
【請求項41】
(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド;
(ii)OGTの発現を阻害する二本鎖RNA分子;及び
(iii)OGTの発現を阻害する短ヘアピンRNA分子
から選択される抗OGT剤を対象者に投与することを含んでなる、創傷を有する対象者を治療する方法。
【請求項42】
ポリヌクレオチドが中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
ポリヌクレオチドが
配列番号3に示される配列(前記18〜30ヌクレオチドの配列は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する]、又は
配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列
を有する、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項44】
ポリヌクレオチドがアンチセンスOGTポリヌクレオチドである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項45】
ポリヌクレオチドがオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項46】
アンチセンスOGTポリヌクレオチドが配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項47】
ポリヌクレオチドが配列番号1又は配列番号173のコード領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチドが配列番号173の調節領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項49】
ポリヌクレオチドが配列番号173のイントロン領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相同な配列を有する、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項50】
ポリヌクレオチドが配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列又は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する配列を含んでなり、該配列が配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項51】
ポリヌクレオチドの配列が、配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメント又は配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な18〜30ヌクレオチド分子に相当するように、配列番号4〜168のいずれか1つのフラグメントを含み、更に1〜10ヌクレオチド残基を含んでなる、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項52】
単離された二本鎖RNA分子が配列番号169〜171から選択される配列を含んでなる第1の鎖を含み、約11〜27ヌクレオチドを含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項53】
小ヘアピンRNAが配列番号172の配列を含んでなる請求項40又は41に記載の方法。
【請求項54】
抗OGT剤が医薬組成物中で提供される、請求項38〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
医薬組成物が医薬的に許容され得るキャリアを更に含んでなる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
医薬的に許容され得るキャリアがゲルである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
医薬的に許容され得るキャリアがアルコールを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
医薬的に許容され得るキャリアがポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
医薬的に許容され得るキャリアがPluronic(登録商標) F-127を含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
医薬的に許容され得るキャリアがアルギネート又はヒドロゲルを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
医薬的に許容され得るキャリアがセルロース系キャリアを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
セルロース系キャリアがヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
組成物が局所塗布用に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
組成物が局所注射用に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
組成物が創傷被覆材中に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
組成物がコロイドゲル被覆材中に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
組成物が持続放出用に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
組成物が緩徐放出、延長放出又は制御放出用に製剤化されている、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
組成物が液体、クリーム、軟膏、エマルジョン、ローション、スプレー、フォーム又は塗布剤である、請求項54〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
抗OGT剤が局所投与される、請求項44及び46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
抗OGT剤が局所注射により投与される、請求項44及び46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
組成物又は剤が創傷を有する対象者の治療用である、請求項44〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
創傷が予想した速度で治癒していない、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
創傷の治癒が遅れているか、困難であるか、又は創傷が慢性的である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
創傷がOGTの発現増強によって少なくとも部分的に特徴付けられる、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
細胞がインスリン抵抗性レセプターを含む、請求項44及び46〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
細胞が対象者に存在する請求項76に記載の方法。
【請求項78】
対象者が糖尿病でない、請求項45〜75及び77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
対象者が糖尿病である、請求項45〜75及び77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
対象者が1型真性糖尿病を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
対象者が2型真性糖尿病を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
対象者が正常より高い血中グルコースレベルを有する、請求項45〜75及び77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
対象者がインスリン抵抗性レセプターを有する、請求項45〜75及び77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
第2の創傷治癒剤を投与する工程を更に含んでなる、請求項45〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
第2の抗OGT剤を投与する工程を更に含んでなる、請求項45〜83のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2013年3月11日に出願された米国仮特許出願第61/775,937号に基づく優先権を主張する。この引用によって同出願の開示全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
米国政府の権益
本明細書に開示された主題は、米国国立衛生研究所による助成第RO1 AI49427号の下、米国政府の支援でなされたものである。米国政府は、以下に説明する本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書に開示された主題は、UDP-N-アセチルグルコサミンポリペプチドβ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(OGT)を標的する化合物、組成物及び方法に関する。更に、本明細書に開示された主題は、創傷治癒を促進する化合物、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景技術
慢性創傷は、米国で6.5百万人の患者が罹患している主な病的状態であり、その治療に年間約250億ドルの費用を要している(1)。糖尿病患者は、慢性非治癒性創傷の発症リスクが増大する。おそらくは、種々の因子が、慢性創傷(ニューロパシー、血管症並びにグルコースレベル上昇を生じる基礎疾患たる内分泌機能不全を含む)を発症する糖尿病患者の疾病素質の一因となる。
【0005】
リン酸化同様、細胞内タンパク質O-グリコシル化は、多くの細胞内タンパク質(酵素、転写因子、構造タンパク質及び細胞接着タンパク質を含む)を調節する共通の動的な翻訳後修飾である。セリン及びスレオニンのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)修飾は、酵素UDP-N-アセチルグルコサミン-ポリペプチドβ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(O-GlcNAcトランスフェラーゼ,OGT)により触媒される;一方、GlcNAcはO-GlcNAc-選択性N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(GlcNAcase,OGA)により除去される((2)に概説)。
【0006】
高血糖(過剰グルコース)はグルコサミン経路に送られ、OGTが細胞内タンパク質を修飾するための過剰UDP-GlcNAcを提供する(3)。過剰グルコースはグルコサミンに転換され、グルコサミンは、最終的には、細胞内タンパク質のOGT修飾のドナー基質であるUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)に転換される。結果的に、高血糖は、種々のタンパク質のO-グリコシル化の増加に関連付けられる(3-7)。高血糖状態(糖尿病を含む)で観察される細胞内タンパク質のGlcNAc修飾増加は、糖尿病と関連付けられるいくつかの病的状態の一因と考えられている。例えば、(i)膵臓 -細胞は高レベルのOGTを有し、細胞内O-GlcNAc修飾の変化に感受性であり、(ii)筋肉及び脂肪組織でのOGT過剰発現は、トランスジェニックマウスモデルで糖尿病を引き起こす(8)。細胞内タンパク質のGlcNAc修飾増加は、ヒト糖尿病組織(9)及び高血糖動物モデル(4)を含む糖尿病組織で観察される。糖尿病における細胞内O-グリコシル化の病理学的役割についての更なるサポートは、糖尿病と細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加を引き起こす変異との遺伝的関係を立証した研究によってもたらされる;OGAをコードする遺伝子において早期終止を生じる変異が、メキシコ系米国人でII型糖尿病を成人発症しやすい遺伝的素因と関係付けられている(10)。OGAはGlcNAcを細胞内タンパク質から除去し、同定したOGA変異は、タンパク質O-グリコシル化レベルの上昇を生じる。
【0007】
創傷治癒の間、創縁のケラチノサイトは、縁から離れて創傷へ移動できるように、後縁の隣接細胞への接着をダウンレギュレートしなければならない(11)。このグループの以前のデータは、O-グリコシル化の増加が、一部はデスモソーム成分(プラコグロビンを含む)の翻訳後安定性を増大させることによって、細胞-細胞接着を安定化することを立証している(12)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単な要旨
簡潔には、本開示は、OGTを標的するため及び/又は創傷治癒を促進するための化合物、組成物及び方法に関する。
本開示の或る特定の実施形態では、18〜30ヌクレオチド長であり、更にOGT mRNAにハイブリダイズする配列を含んでなる単離されたアンチセンスOGTポリヌクレオチドが提供される。幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号3に示される配列、又は配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有していてもよい。幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする。
【0009】
幾つかの実施形態では、本開示は、(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド、及び(ii)医薬的に許容され得るキャリアを含んでなる医薬組成物に関する。幾つかの実施形態では、アンチセンスOGTポリヌクレオチドは、第1の創傷治癒剤及び/又は第1の抗OGT剤である。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、第2の創傷治癒剤及び/又は第2の抗OGT剤を更に含んでなる。
【0010】
幾つかの実施形態では、医薬組成物のポリヌクレオチドは、中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする。幾つかの実施形態では、医薬的に許容され得るキャリアは、ゲル、アルギネート、ヒドロゲル、又はヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの混合物から選択されるセルロース系キャリアである。或る特定の実施形態では、医薬的に許容され得るキャリアは、アルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、Pluronic(登録商標) F-127及び/又はこれらの混合物を含んでなる。
【0011】
幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号173のコード領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、配列番号173の調節領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。或る特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、配列番号173のイントロン領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相同な配列を有する。
幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる。
【0012】
幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列、又は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する配列を含んでなり、該配列は、配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる。幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの配列が配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメント、又は配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な18〜30ヌクレオチド分子に相当するように、配列番号4〜168のいずれか1つのフラグメントを含み、更に1〜10ヌクレオチド残基を含んでなる。
【0013】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、局所塗布用及び/又は局所注射用に製剤化される。或る特定の実施形態では、医薬組成物は創傷被覆材中に製剤化される。幾つかの実施形態では、医薬組成物はコロイドゲル被覆材中に製剤化される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、持続放出、緩徐放出、延長放出及び/又は制御放出用に製剤化される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、液体、クリーム、軟膏(ointment, salve)、エマルジョン、ローション、スプレー、フォーム、及び/又は塗布剤である。
【0014】
幾つかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチド及び/又は医薬組成物のポリヌクレオチドは創傷を有する対象者に投与される。幾つかの実施形態では、創傷は、予想した速度で治癒していない。或る特定の実施形態では、対象者の創傷は治癒が遅れているか、困難であり、及び/又は創傷は慢性的である。更なる実施形態では、創傷はOGTの発現増強によって少なくとも部分的に特徴付けられる。
幾つかの実施形態では、対象者は糖尿病である。或る特定の実施形態では、対象者は、(i)1型真性糖尿病、(ii)2型真性糖尿病、(iii)正常より高い血中グルコースレベル、及び/又は(iv)インスリン抵抗性レセプターを有する。幾つかの実施形態では、対象者は糖尿病でない。
【0015】
本明細書に開示された主題の幾つかの実施形態では、細胞においてOGTを阻害する方法が提供される。この方法は抗OGT剤を細胞に投与することを含み、抗OGT剤は、(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド;(ii)OGTの発現を阻害する二本鎖RNA分子;及び(iii)OGTの発現を阻害する短ヘアピンRNA分子から選択される。幾つかの実施形態では、細胞はインスリン抵抗性レセプターを含む。或る特定の実施形態では、細胞は対象者に存在する。
【0016】
本明細書に開示された主題の或る特定の実施形態では、創傷を有する対象者を治療する方法が提供される。この方法は抗OGT剤を対象者に投与することを含み、抗OGT剤は、(i)18〜30ヌクレオチド長であり、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド;(ii)OGTの発現を阻害する二本鎖RNA分子;及び(iii)OGTの発現を阻害する短ヘアピンRNA分子からなる群より選択される。
【0017】
本開示の方法の幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする。本開示の方法の幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは配列番号3に示される配列を有する。或る特定の実施形態では、18〜30ヌクレオチドの配列は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する。或る特定の実施形態では、アンチセンスOGTポリヌクレオチドは配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる。
【0018】
本開示の方法の或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する。
開示の方法の幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドはアンチセンスOGTポリヌクレオチドである。或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0019】
本開示の方法の幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、(i)配列番号173の調節領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列、(ii)配列番号173のイントロン領域に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列、及び/又は(iii)配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な配列又は配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメントに相当する配列(ここで、該配列は配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含んでなる)を含んでなる。
【0020】
開示の方法の或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドの配列は、配列番号3の連続する18〜30ヌクレオチドのフラグメント、又は配列番号1若しくは配列番号173に示される18〜30ヌクレオチドの配列に相補的な18〜30ヌクレオチド分子に相当するように、配列番号4〜168のいずれか1つのフラグメントを含み、更に1〜10ヌクレオチド残基を含んでなる。
開示の方法の幾つかの実施形態では、単離された二本鎖RNA分子は、配列番号169〜171から選択される配列を含んでなる第1の鎖を含み、約11〜27ヌクレオチドを含む。この方法の或る特定の実施形態では、小ヘアピンRNAは配列番号172の配列を含んでなる。
【0021】
本明細書に開示された主題の幾つかの実施形態では、抗OGT剤は医薬組成物中で提供される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は医薬的に許容され得るキャリアを更に含んでなり、医薬的に許容され得るキャリアは、例えば、ゲル、アルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、Pluronic(登録商標) F-127、アルギネート、ヒドロゲル、及び/又はヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの混合物から選択されるセルロース系キャリアを含んでなる。
【0022】
本開示の方法の幾つかの実施形態では、医薬組成物は、局所塗布用、局所注射用、創傷被覆材用及び/又はコロイドゲル被覆材用に製剤化され、及び/又は、局所塗布、局所注射、創傷被覆材及び/又はコロイドゲル被覆材により投与される。開示の方法の或る特定の実施形態では、医薬組成物は、持続放出、緩徐放出、延長放出又は制御放出用に製剤化される。更に、組成物は、液体、クリーム、軟膏、エマルジョン、ローション、スプレー、フォーム又は塗布剤の形態である。
【0023】
開示の方法の幾つかの実施形態では、医薬組成物は局所的に及び/又は局所注射により投与される。或る特定の実施形態では、医薬組成物又は剤は創傷を有する対象者を治療すするために投与される。幾つかの実施形態では、創傷は治癒が遅れているか、困難であるか、予想した速度で治癒しておらず、及び/又は創傷は慢性的である。或る特定の実施形態では、創傷は、OGTの発現増強によって少なくとも部分的に特徴付けられる。
【0024】
本開示の方法の幾つかの実施形態では、(i)対象者は糖尿病であり、(ii)対象者は1型真性糖尿病を有し、(iii)対象者は2型真性糖尿病を有し、(iv)対象者は正常より高い血中グルコースレベルを有し、(v)対象者はインスリン抵抗性レセプターを有し、及び/又は(vi)対象者は糖尿病でない。
幾つかの実施形態では、開示の方法は、第2の創傷治癒剤及び/又は第2の抗OGT剤を細胞又は対象者に投与する工程を更に含んでなる。
【0025】
前記の一般的説明及び下記の詳細な説明は共に本開示の実施形態を示し、特許請求の範囲に記載したとおりの本開示の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解すべきである。本明細書は、特許請求の範囲に記載した主題の原理及び作用を説明するために資され、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を記載する。本開示の他の特徴及び利点並びに更なる特徴及び利点は、以下の開示を読み、添付図面を考慮すれば、当業者に容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高血糖は、ヒトケラチノサイトにおいてO-GlcNアシル化を増加させ、創傷治癒を遅延させる。HaCaT細胞を、グルコースを表示の最終濃度まで補充した培地中で培養した。細胞溶解物を、SDS-PAGE及びイムノブロッティングによりO-GlcNAc修飾を認識するRL2抗体及びローディングコントロールとしてのGAPDHを用いて分析した(図1)。RL2シグナルをGAPDHローディングコントロールとの比較で定量した(図1B)。ヒトケラチノサイト単層を、表示したグルコース濃度のDMEM中でインキュベートした。細胞をピペット先端で引っ掻き、0時間及び16時間で顕微鏡写真を撮影した(図1C)。次いで、画像分析ソフトウェアを用いて創傷サイズを測定した。全条件についてN=11(図1D)。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を反映する。正常グルコースレベル(5.5mM)と比較したとき、*はP値<0.07を示し、**はP値<0.0005を示す。25mMと100mMとの間のP値は<0.01である。
図2】O-GlcNAc経路中でのRNA干渉(RNAi)は、ヒトケラチノサイトにおける創傷治癒速度に影響する。更に、shRNAを用いるOGTノックダウンは創傷治癒を加速する。HaCaT細胞に、OGT、OGA及びGFP(コントロール)を標的するshRNAを安定的に形質導入し、細胞をコンフルーエントまで増殖させた。次いで、O-GlcNAc修飾(RL2)、OGTタンパク質及びアクチン(ローディングコントロール)をプロービングするイムノブロッティングにより細胞溶解物を分析した(図2A)。RL2反応性をアクチンシグナルとの比較で定量した(図2B)。形質導入細胞を、25mMグルコースを有する増殖培地中でコンフルーエントまで増殖させ、引っ掻いて創傷を形成した。0時間及び12時間で得た代表的な顕微鏡写真を図2Cに示し、開口創傷面積の定量を図2Dに示す。スクラッチ創傷形成アッセイでは、未処理細胞はN=18、shGFPはN=10、shOGTはN=8、shOGAはN=14であった。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を反映する。アスタリスク(*)はp値<0.05の結果を示す。
図3】OGTの特異的ノックダウンはヒトケラチノサイトの創傷治癒を加速する。100nMの、OGTに対するsiRNA又はスクランブルコントロールのsiRNAでHaCaT細胞をトランスフェクトした。コンフルーエント培養物の細胞溶解物について、RL2、抗OGT及び抗GAPDHの反応性をプロービングするイムノブロッティングを行い(図3A)、定量した(図3B)。siRNAでのトランスフェクションの60時間後、コンフルーエントな細胞を引っ掻き、0時間、16時間及び26時間で顕微鏡写真を撮影した(図3C)。画像分析ソフトウェアを用いて開口創傷面積を定量した(図3D)。非トランスフェクト細胞はN=7、コントロールsiRNAはN=7、OGT siRNAはN=6であった。エラーバーは標準誤差を反映する。アスタリスクは、コントロールと比較したときのp値<0.05を示す。
図4】細胞-細胞接着は、OGTトランスフェクトケラチノサイトで増加する。図4Aはディスパーゼアッセイの結果を示す。コントロール(Con)及びOGT(OGT)トランスフェクトケラチノサイトの単層コンフルーエント培養物をディスパーゼ処理後にプレートから剥がして浮遊させ、前後に10回揺り動かして該培養物に剪断力を加えた。OGT細胞から生じる断片は少ない。このことにより、コントロールと比較して細胞-細胞接着がより大きいことが示される。図4B及び図4Cは、コントロールのケラチノサイト及びOGT過剰発現ケラチノサイトの電子顕微鏡写真を示す。図4Bは上方からの写真であり、図4Cは側方からの写真であり、各々が、OGT過剰発現ケラチノサイトの細胞膜はコントロールのケラチノサイトと比較してより強固に結合していることを示す。
図5】細胞内タンパク質のO-グリコシル化は、コントロールマウスと比較して、糖尿病マウスの皮膚で増加していることが観察される。図5は、GlcNAc特異的モノクローナル抗体RL2を用いるイムノブロット分析を示し、これは、糖尿病マウスの上皮抽出物中のGlcNAc修飾が野生型コントロールと比較して増加していることを証明している。アスタリスクは、コントロールでは観察されず糖尿病皮膚で検出された、タンパク質の更なるGlcNAc修飾を示す。矢印は、糖尿病皮膚とコントロールとで変化のない、タンパク質のGlcNAc修飾を示し、ローディングコントロールとして役立つ(+,陽極;−,陰極)。
図6】細胞内O-グリコシル化の増加は創傷治癒を遅らせる。コントロールのケラチノサイト(Con)及びOGTトランスフェクトケラチノサイト(OGT)の単層コンフルーエント培養物を引っ掻いて傷つけ、創傷閉塞までの時間を測定した。図6に示すように、コントロールケラチノサイトは16時間までに創傷が治癒した;一方、OGT過剰発現ケラチノサイトはt=16時間で創傷を閉塞できていない。
図7】OGT特異的shRNAを用いるOGT活性の阻害は、ケラチノサイトの創傷治癒を促進し、単層スクラッチアッセイにおいてグルコースによる用量依存性の創傷治癒阻害を逆転させる。ヒトHaCatコントロールケラチノサイト(濃色バー)及びOGT特異的shRNAを用いてOGTをノックダウンしたHaCatケラチノサイト(shOGT、淡色バー)のコンフルーエント培養物を、漸増濃度のグルコースで処理し、引っ掻いて傷つけ、図7Aに示すように、創傷作成の19時間後に治癒中の創傷のサイズを測定した(n=12/群)。図7Aと同様なスクラッチアッセイを非形質導入コントロールHaCatケラチノサイト及びGFP特異的shRNA(shGFP)形質導入コントロールについてshOGT形質導入HaCatケラチノサイトとの比較で行った(n=12/群)。データを図7Bに示す。
図8】OGTのshRNAノックダウンは、ケラチノサイト細胞内タンパク質O-グリコシル化を低減させる;一方、OGAノックダウンはタンパク質O-グリコシル化を増加させる。GFP(コントロール)、OGT及びOGAを標的するshRNAで安定にトランスフェクトしたHaCaT細胞をコンフルーエントまで増殖させた。次いで、図8A及び図8Bに示すように、細胞溶解物を、(i)O-GlcNAc修飾(RL2)、(ii)OGTタンパク質及び(iii)GAPDH(ローディングコントロール)に対する抗体を用いるイムノブロッティングにより分析した。示されるように、OGTの遺伝子ノックダウンはO-GlcNAcタンパク質修飾を低減させる;一方、OGAの遺伝子ノックダウンはO-GlcNAcタンパク質修飾を増加させる。
図9】OGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドは、試験マウス皮膚において、創傷に局所的に適用されたとき、OGTタンパク質レベル及びO-GlcNAc修飾をダウンレギュレートする。創傷作成後t=0及びt=24時間での、50μlのPluronic(登録商標) F-127ゲル中10nMのOGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの、WTマウスの全層皮膚創傷への局所適用。OGTアンチセンスODN又はビヒクルコントロールで処置したマウスの損傷周囲皮膚を創傷作成後48時間で採集した。皮膚抽出物をSDSPAGEにより分離し、図9に示すように、O-GlcNAc修飾(RL2)、OGTタンパク質又はGAPDH(ローディングコントロールとして)に対する抗体を用いるイムノブロットによりプロービングした。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例示的実施形態の詳細な説明
本明細書に開示された主題の1以上の実施形態の詳細を以下に示す。本明細書に記載された実施形態及び他の実施形態に対する改変は、本明細書に提供された情報を精査することで当業者に明らかとなる。本明細書に提供された情報、特に、記載された例示的実施形態の具体的詳細は、主に理解を明瞭にするために提供されるものであって、これらに基づいて不必要な限定を理解すべきではない。矛盾する場合には、本明細書(定義を含む)が優先する。
【0028】
各実施例は本開示の説明のために提供されるのであって、本開示を何ら限定するものではない。事実、本開示の教示に対して、本開示の範囲を逸脱することなく、種々の改変及び変形をなし得ることが当業者に明らかとなる。例えば、或る1つの実施形態の部分として説明又は記載される特徴は、別の実施形態に使用でき、更に別の実施形態を生じ得る。
本開示の単数形での特性又は限定への言及は全て、特に断らない限り又はその言及がなされた文脈からそうでないことが明らかでない限り、対応する複数形の特性又は限定を含み、その逆も同様とする。
【0029】
本明細書で使用されているような方法又は工程は、特に断らない限り又は言及された組合せがなされた文脈からそうでないことが明らかでない限り、全ての組合せが任意の順序で可能である。
本開示の方法及び組成物(それらの構成成分を含む)は、本明細書に記載された実施形態の必須の要素及び制限並びに本明細書に記載されているか又はその他の有用ないずれかの追加の又は任意選択の構成成分又は制限を含んでなることも、該要素及び制限からなることも、該要素及び制限から本質的になることもできる。
【0030】
本明細書に開示された主題は、細胞において及び/又は創傷治癒のために、UDP-N-アセチルグルコサミンポリペプチドβ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(OGT)の阻害に有用である化合物、組成物及び方法を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された主題は、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有する単離されたアンチセンスOGTポリヌクレオチドを含む。
用語「単離された」は、単離されたポリヌクレオチドに関して使用される場合、人間の手によって、その天然環境から分離されて存在し、したがって天然産物ではないポリヌクレオチドである。
用語「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸配列」とは、一本鎖形態又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーをいう。
【0031】
アンチセンスポリヌクレオチド及び他の抗OGTポリヌクレオチド(例えば、siRNA及びshRNA)の合成は、当業者に公知である。例えば、Stein C. A及びKrieg A. M.(編),Antisense Oligonucleotide Technology,1998(Wiley-Liss)を参照。アンチセンスポリヌクレオチドはOGTの転写及び/又は翻訳を阻害することができる。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、OGT遺伝子又はmRNAからの転写及び/又は翻訳の特異的インヒビターであり、他の遺伝子又はmRNAからの転写及び/又は翻訳を阻害しない。その産物は、OGT遺伝子又はmRNAと、(i)コード配列の5'側に、及び/又は(ii)コード配列に、及び/又は(iii)コード配列の3'側に結合し得る。
【0032】
アンチセンスポリヌクレオチドは、一般に、OGT mRNAに対してアンチセンスである(例えば、配列番号1又は配列番号173に示される配列に相補的である)。このようなポリヌクレオチドは、OGT mRNAにハイブリダイズすることによってOGT発現を阻害してもよいし、OGT mRNAの代謝(転写、mRNAプロセシング、核からのmRNA輸送、翻訳又はmRNA分解を含む)の1以上の局面と干渉することによってOGT発現を阻害してもよい。アンチセンスポリヌクレオチドは、代表的には、OGT mRNAにハイブリダイズして、mRNA翻訳の直接阻害及び/又はmRNAの脱安定化を引き起こすことができる二重鎖を形成する。このような二重鎖はヌクレアーゼによる分解に感受性であり得る。
【0033】
用語「相補的」とは、逆平行ヌクレオチド配列中の相補塩基残基間で水素結合を形成することで互いに対合できる該逆平行ヌクレオチド配列を含んでなる2つのヌクレオチド配列をいう。当該分野で公知のとおり、2つの相補鎖の核酸配列は、各々を5'→3'方向で視たときに互いに逆相補である。また、当該分野で公知のとおり、所定条件下で互いにハイブリダイズする2つの配列は、必ずしも、100%完全相補でなければならないとは限らない。
【0034】
アンチセンスポリヌクレオチドは、OGT mRNAの全体又は部分にハイブリダイズし得る。代表的には、アンチセンスポリヌクレオチドは、OGT mRNAのリボソーム結合領域又はコード領域にハイブリダイズする。ポリヌクレオチドは、OGT mRNAの全体又は一領域に相補的であり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、OGT mRNAの全体又は一部の正確な相補体であり得る。しかし、絶対的な相補性は必要なく、生理学的条件下で約20℃、30℃又は40℃より高い融解温度を有する二重鎖を形成するに十分な相補性を有するポリヌクレオチドが、本発明での使用に特に適切である。
【0035】
よって、ポリヌクレオチドは、代表的には、mRNAに相補的な配列のホモログである。ポリヌクレオチドは、中〜高ストリンジェンシー条件(例えば、約50℃〜約60℃の0.03M塩化ナトリウム及び0.03Mクエン酸ナトリウム)下でOGT mRNAにハイブリダイズするポリヌクレオチドであり得る。幾つかの実施形態では、句「中〜高ストリンジェンシー」は約0.0165〜約0.033M塩化ナトリウムを意味する;幾つかの実施形態では、「中〜高ストリンジェンシー」は約0.0165〜約0.033Mクエン酸ナトリウムを意味する;幾つかの実施形態では、「中〜高ストリンジェンシー」は、融解温度(Tm)(50%ハイブリダイゼーションが起きる温度)より約5〜約30℃低い温度を意味する。
【0036】
幾つかの実施形態では、適切なポリヌクレオチドは約6〜40ヌクレオチド長である。幾つかの実施形態では、適切なポリヌクレオチドは約18〜30ヌクレオチド長である。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチド長であり得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドはオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0037】
幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に示される配列、又は配列番号1に示される配列に相補的な配列を有し得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは中〜高ストリンジェンシー条件下でOGT mRNAにハイブリダイズする。
幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号173のコード領域に示されるヌクレオチド配列に相補的な配列を有し得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号173の調節領域に示されるヌクレオチド配列に相補的な配列を有し得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号173のイントロン領域に示されるヌクレオチド配列に相補的な配列を有し得る。
幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を含み得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは配列番号4〜168のいずれか1つから選択される配列を有する。
【0038】
本明細書に開示された主題は更に医薬組成物を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、抗OGT剤及び医薬的に許容され得るキャリアを含む。本明細書で使用される場合、抗OGT剤とは、OGTインヒビター及びポリヌクレオチド、例えばsiRNA、shRNA、アンチセンスポリヌクレオチド(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)及び本明細書に開示されている特異的ポリヌクレオチド(配列番号4〜172のいずれか1つの配列を有するポリヌクレオチドを含む)のような特異的ポリヌクレオチドの全てをいう。
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号4〜172のいずれか1つの配列を有するポリヌクレオチド及び医薬的に許容され得るキャリアを含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するポリヌクレオチド及び医薬的に許容され得るキャリアを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号3に示される配列、又は配列番号1若しくは配列番号173に示される配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチド及び医薬的に許容され得るキャリアを含む。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容され得るキャリア」とは、滅菌の、水溶液若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン並びに使用直前に滅菌注射溶液若しくは分散液に再構成するための滅菌粉体をいう。適切な水性及び非水性キャリア、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びこれらの適切な混合物、植物油(例えばオリーブ油)並びに注射用有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。例えば、コーティング材(例えばレシチン)の使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により、適正な流動性を維持することができる。組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような補助剤を含有することもできる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含ませることで確保することができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含ませることもまた望ましくあり得る。注射用医薬剤形の延長吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含ませることでもたらされる。注射用デポー剤形は、生分解性ポリマー中、例えばポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)中に薬剤のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより製造される。薬剤 対 ポリマー比及び使用する特定ポリマーの性質に応じて薬剤放出速度を制御することができる。デポー注射製剤もまた、体組織と適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬剤を捕捉させて製造される。注射用製剤は、例えば、細菌捕捉フィルターでの濾過により、又は使用直前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散させることができる滅菌固体組成物の形態で殺菌剤を組み込むことで、滅菌することができる。適切な不活性キャリアとしては、糖、例えばラクトースを挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が0.01〜10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを有する。
【0041】
幾つかの実施形態では、医薬的に許容され得るキャリアは、ゲル、アルギネート、ヒドロゲル、アルコール及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、医薬的に許容され得るキャリアはPluronic(登録商標) F-127を含む。幾つかの実施形態では、医薬的に許容され得るキャリアは、セルロース系キャリア、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの混合物を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、液体、クリーム、軟膏、エマルジョン、ローション、スプレー、フォーム又は塗布剤である。
本明細書に開示された主題の組成物は、種々の所望の投与形態用に製剤化することができる。幾つかの実施形態では、組成物は局所塗布用に製剤化される。幾つかの実施形態では、組成物は局所注射用に製剤化される。幾つかの実施形態では、組成物は創傷被覆材中に製剤化される。幾つかの実施形態では、組成物はコロイドゲル被覆材中に製剤化される。幾つかの実施形態では、組成物は持続放出用に製剤化される。幾つかの実施形態では、組成物は緩徐放出、延長放出又は制御放出用に製剤化される。
【0042】
用語「創傷被覆材」とは、創傷への局所塗布用の被覆材をいい、全身投与に適切な組成物を含まない。例えば、1以上の抗OGTポリヌクレオチド(例えば、OGTアンチセンスポリヌクレオチド)は、創傷接触材(例えば、織布材又は不織布材)の固体シート中又は上に分散させることができ、又はフォーム(例えば、ポリウレタンフォーム)層の中若しくはヒドロゲル(例えば、ポリウレタンヒドロゲル、ポリアクリレートヒドロゲル、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギネート及び/又はヒアルロン酸ヒドロゲル)中に、例えばゲル状又は軟膏状で分散させてもよい。或る特定の実施形態では、1以上の抗OGTポリヌクレオチドは、創傷への活性成分の持続放出を提供する生分解性シート材、例えば、凍結乾燥コラーゲン、凍結乾燥コラーゲン/アルギネート混合物(Johnson & Johnson Medical Limitedから登録商標FIBRACOLで入手可能)又は凍結乾燥コラーゲン/酸化型再生セルロース(Johnson & Johnson Medical Limitedから登録商標PROMOGRANで入手可能)のシート)中又は上に分散される。
【0043】
本明細書中で使用する場合、「創傷治癒促進マトリクス」には、例えば、合成の又は天然に存在するマトリクス、例えば、コラーゲン、無細胞マトリクス、架橋型生物学的足場分子、組織ベースの生物工学的処理された構造フレームワーク、生物学的に製造したバイオプロテーゼ、及び他の移植される構造物(例えば、創傷治癒の促進に有用な細胞浸潤・増殖に適切な血管移植物)が含まれる。更なる適切なバイオマトリクス材として、抗原性及び免疫原性が減少するように化学修飾されたコラーゲン様組織を挙げてもよい。他の適切な例としては、創傷被覆材用のコラーゲンシート、無抗原若しくは抗原低減化無細胞マトリクス(Wilson G Jら(1990) Trans Am Soc Artif Intern 36:340-343)又は異種移植片材料に対する抗原応答が減少するように操作された他のバイオマトリクスが挙げられる。創傷治癒の促進に有用な他のマトリクスとしては、例えば、不溶性コラーゲン及びエラスチンを含む加工処理したウシ心膜タンパク質(Courtman D Wら(1994) J Biomed Mater Res 28:655-666)及び宿主細胞の移動用天然微小環境を提供して組織再生を加速するに有用であり得る他の無細胞組織(Malone J Metal. (1984) J Vase Surg 1:181-91)を挙げてもよい。本発明は、本明細書に記載した1以上の抗OGTポリヌクレオチド(OGTアンチセンスポリヌクレオチドを含む)を含んでなる合成又は天然のマトリクスを企図する。OGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドが好ましい。
【0044】
本明細書に開示された主題たる単離されたポリヌクレオチド及び組成物は、細胞におけるOGTの阻害及び/又は対象者における創傷の治療に有用である。幾つかの実施形態では、創傷は予想した速度で治癒していない。幾つかの実施形態では、創傷の治癒は遅れているか、困難であるか、又は創傷は慢性的である。幾つかの実施形態では、創傷は、OGTの発現増強又はOGTの活性増大によって少なくとも部分的に特徴付けられる。
本明細書中で使用する場合、用語「創傷」には、任意の組織に対する損傷が含まれ、例えば、治癒が遅延しているか又は困難である創傷及び慢性創傷が含まれる。創傷の例としては、開口及び閉口の創傷の両方を挙げてもよい。用語「創傷」にはまた、例えば、種々の方法で開始され(例えば、ベッドでの長期療養による床ずれ及び外傷により誘導される創傷)、様々な特徴を有する皮膚及び皮下組織に対する損傷が含まれ得る。創傷は、創傷の深さに応じて4つのグレードの1つに分類され得る:i)グレードI 上皮に限定される創傷;ii)グレードII 真皮にまで及ぶ創傷;iii)グレードIII 皮下組織にまで及ぶ創傷;iv)グレードIV(又は全層創傷) 骨(例えば、大転子又は仙骨のような骨圧点[bony pressure point])が露出する創傷。
【0045】
用語「非全層創傷(partial thickness wound)」とは、グレードI〜IIIを含む創傷をいう。非全層創傷の例としては、床ずれ、静脈鬱血性潰瘍及び糖尿病性潰瘍が挙げられる。本発明は、治癒が遅延している創傷、不完全に治癒している創傷及び慢性創傷を含む、予想した速度で治癒しない全てのタイプの創傷の治療を企図する。
「予想した速度で治癒しない創傷」は、治癒が遅延しているか又は困難である創傷(遅延して治癒しているか又は不完全に治癒している創傷を含む)及び慢性創傷を含む、任意組織に対する損傷を意味する。予想した速度で治癒しない創傷の例としては、潰瘍、例えば糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、脈管性潰瘍、動脈性潰瘍、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、圧迫潰瘍、褥瘡性潰瘍、感染性潰瘍、外傷性潰瘍、熱傷潰瘍、壊疽性膿皮症に関係する潰瘍形成及び混合型潰瘍が挙げられる。予想した速度で治癒しない他の創傷には裂開性創傷が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用する場合、治癒が遅延しているか又は困難である創傷としては、例えば、1)長期の炎症期、2)形成が緩徐な細胞外マトリクス、及び/又は3)上皮形成又は閉塞速度の低下によって少なくとも部分的に特徴付けられる創傷を挙げてもよい。
用語「慢性創傷」とは、一般に、治癒したことがない創傷をいう。例えば、3ヶ月以内に治癒しない創傷は慢性創傷と考えられる。慢性創傷としては、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、動脈性潰瘍、圧迫潰瘍、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、脈管性潰瘍、褥瘡性潰瘍、熱傷潰瘍、外傷性潰瘍、感染性潰瘍、混合型潰瘍及び壊疽性膿皮症が挙げられる。慢性創傷は、完全な又は部分的な動脈閉塞に起因する潰瘍形成を含む動脈性潰瘍であり得る。慢性創傷は、静脈弁の機能不全及び関係する血管疾患に起因する潰瘍形成を含む静脈性潰瘍又は静脈鬱血性潰瘍であり得る。或る特定の実施形態では、圧迫潰瘍のAHCPRステージ:ステージ1、ステージ2、ステージ3及び/又はステージ4の1以上によって特徴付けられる慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0047】
本明細書中で使用する場合、慢性創傷とは、例えば、(i)創傷炎症の慢性的自己持続状態、(ii)創傷細胞外マトリクスの欠乏及び欠陥、(iii)反応性に乏しい(老化)創傷細胞(特に、細胞外マトリクス産生が限定的である線維芽細胞)及び/又は(iv)必要な細胞外マトリクスの調和的統合の欠如及び移動用足場の欠如に部分的に起因する上皮再形成の失敗の1以上によって少なくとも部分的に特徴付けられる創傷をいい得る。慢性創傷はまた、1)潰瘍性病変に至る長期炎症及びタンパク質分解活性(例えば、糖尿病性潰瘍、圧迫(褥瘡性)潰瘍、静脈性潰瘍及び動脈性潰瘍を含む);2)罹患領域でのマトリクスの進行性堆積、3)より長い修復期間、4)創傷縮小が小さいこと、5)緩徐な上皮再形成及び6)肉芽組織の肥厚によって特徴付けられてもよい。
【0048】
例示的な慢性創傷は、「圧迫潰瘍」を含んでもよい。例示的な圧迫潰瘍は、AHCPR(Agency for Health Care Policy and Research, U.S. Department of Health and Human Services)のガイドラインに基づく4つのステージに分類され得る。ステージ1の圧迫潰瘍は、無傷皮膚の圧迫に関連する視認可能な変化であり、その指標は、身体の隣接領域又は対側領域と比較して、以下:皮膚温(高温又は低温)、組織の硬さ(硬い感じ又はブヨブヨした感じ)及び/又は知覚(疼痛、痒み)の1以上の変化を含み得る。この潰瘍は、色素沈着の弱い皮膚では、所定領域の持続性発赤として出現する一方、色素沈着の強い皮膚では、この潰瘍は、持続性の赤、青又は紫の色調を伴って出現し得る。ステージ1の潰瘍は、無傷皮膚の白化不能紅斑及び皮膚潰瘍化の先駆病変を含み得る。皮膚の色が濃い個体では、皮膚の褪色、温かさ、浮腫、硬変又は硬度もまた、ステージ1の潰瘍化の指標であり得る。ステージ2の潰瘍化は、表皮、真皮又はその両方を含む非全層皮膚喪失によって特徴付けられ得る。この潰瘍は浅在性であり、臨床的には、擦過傷、水疱又は浅い掘れ込みとして現れる。ステージ3の潰瘍化は、下床の筋膜にまで達し得るが、筋膜を超えることはない皮下組織の傷害又は壊死を含む全層皮膚喪失によって特徴付けられ得る。この潰瘍は、臨床的には、隣接組織の穿掘を伴うか又は伴わない深い掘れ込みとして現れる。ステージ4の潰瘍化は、広範な組織破壊、組織壊死又は筋肉、骨若しくは支持構造(例えば、腱、関節包)の傷害を伴う全層皮膚喪失によって特徴づけられ得る。或る特定の実施形態では、以下の圧迫潰瘍のAHCPRステージ:ステージ1、ステージ2、ステージ3及び/又はステージ4の1以上によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0049】
例示的な慢性創傷は「褥瘡性潰瘍」を含み得る。例示的な褥瘡性潰瘍は、骨による隆起部分に対する(虚血に至る)長期の軽減されない圧迫の結果として起こり得る。この創傷は、自身で体位を変えて荷重を回避することができない患者、例えば麻酔下の、意識不明の又は重度に衰弱した患者で生じる傾向がある。米国保健省によって規定されているように、主要な防止策としては、高リスク患者の特定;頻繁な判定;及び計画的な体位の変更、適切な圧迫軽減寝具、防湿障壁及び適切な栄養状態のような予防策が挙げられる。治療オプションとして、例えば、圧迫軽減、外科的及び酵素的デブリドマン、創傷湿潤処置及び細菌抑制を挙げてもよい。或る特定の実施形態では、骨による隆起部分に対する長期の軽減されない(虚血に至る)圧迫に起因する褥瘡性潰瘍又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0050】
慢性創傷はまた「動脈性潰瘍」を含んでもよい。慢性動脈性潰瘍は、一般には、動脈硬化性及び高血圧性心血管疾患を伴う潰瘍形成であると理解される。これらは、疼痛性で急峻な縁があり、しばしば下肢外側及び爪先に見出される。動脈性潰瘍は、組織壊死及び/又は潰瘍形成に至り得る完全な又は部分的な動脈閉塞によって特徴付けられ得る。動脈性潰瘍の徴候としては、例えば、肢の脈拍触知不能;疼痛性潰瘍化;通常は充分に限局された小さな点状潰瘍;皮膚の低温又は冷温;毛細管回復時間の遅延(爪先の端を短時間押して放すと、爪先は約3秒以内に正常な色に戻るはずである);萎縮症の外観を示す皮膚(例えば、光沢、薄い、乾燥);並びに指及び足の毛喪失を挙げ得る。或る特定の実施形態では、完全な又は部分的な動脈閉塞に起因する動脈性潰瘍又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0051】
例示的な慢性創傷は「静脈性潰瘍」を含んでもよい。例示的な静脈性潰瘍は、下肢が罹患する最も一般的なタイプの潰瘍であり、静脈弁の機能不全によって特徴付けられ得る。正常な静脈は血液の逆流を防止する弁を有する。この弁が役立たなくなれば、静脈血の逆流が静脈性鬱血を引き起こす。赤血球由来のヘモグロビンが血管外空間に漏れ出て、よく見られる褐色変色を引き起こす。静脈性潰瘍の周囲皮膚の経皮酸素分圧は低下することが示されており、当該領域の正常な血管分布を妨害する力の存在が示唆される。これら潰瘍では、リンパ液の排出及び流れも或る役割を演じている。静脈性潰瘍は内果近傍に現われ得、通常、下肢の浮腫及び硬化との合併で生じる;この潰瘍は表在性(痛みは激しくない)であり得、罹患部位からの滲出を伴い得る。或る特定の実施形態では、静脈弁の機能不全及び関連する血管疾患に起因する静脈性潰瘍又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。或る特定の実施形態では、完全な又は部分的な動脈閉塞に起因する動脈性潰瘍又は潰瘍形成よって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0052】
例示的な慢性創傷は「静脈鬱血性潰瘍」を含んでもよい。鬱血性潰瘍は、静脈不全に関連する病変であり、より一般的には内果上部に、圧痕浮腫、結節状構造、斑状色素沈着、紅斑並びに触知不能な点状出血及び紫斑を通常伴って現れる。鬱血性皮膚炎及び潰瘍は、一般には、疼痛性というよりむしろ掻痒性である。例示的な静脈鬱血性潰瘍は、局所低酸素を生じる下肢の慢性受動静脈性鬱血によって特徴付けられ得る。この創傷の病理の1つの可能な機序として、血管周囲の厚いフィブリンカフを横切る組織中への酸素拡散の障害が挙げられる。別の1つの機序は、血管周囲組織中に漏れた巨大分子が皮膚の完全性の維持に必要とされる成長因子を捕捉するというものである。加えて、大きな白血球の流れが静脈性鬱血に起因して緩徐であり、毛細管を塞いで、活性化され、血管内皮を損傷させて潰瘍形成を生じ易くする。或る特定の実施形態では、静脈弁の機能不全及び関連する血管疾患に起因する静脈性潰瘍又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。或る特定の実施形態では、下肢の慢性受動静脈性鬱血及び/又は結果として生じる局所低酸素に起因する静脈鬱血性潰瘍又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0053】
例示的な慢性創傷は「糖尿病性潰瘍」を含んでもよい。糖尿病患者は、神経性及び血管性の合併症の両方に起因する足潰瘍形成を含む潰瘍化を生じやすい。末梢性ニューロパシーは、足(foot)及び/又は脚(leg)における知覚の変化又は完全喪失を引き起こすことがある。進行性ニューロパシーを伴う糖尿病患者は、鋭いか鈍いかの弁別能力を全て失う。ニューロパシー患者では、足が切れたことや足への外傷に数日又は数週間全く気付かなくなることもあり得る。ニューロパシー患者が、実際に潰瘍がかなり前から存在している場合に、その潰瘍が「今しがた現れた」と気付くことは珍しくない。ニューロパシーの患者については、厳格なグルコース制御が疾患の進行を緩徐にすることが示されている。シャルコー足変形もまた知覚低下の結果として生じ得る。足が「正常な」感触を有する人は、足の或る領域に過度の圧迫があれば自動的に知覚する能力を有する。一旦特定すれば、我々の身体は本能的に体位を変えてこの圧迫を取り除く。進行性ニューロパシーの患者は、持続する圧侵襲を知覚する能力を失い、その結果として、組織虚血及び壊死が起こり、例えば足裏潰瘍化に至り得る。加えて、足の骨の微小破壊は、気付かず治療しなければ、醜い傷跡(disfigurement)、慢性膨潤及び更なる骨突出を生じ得る。微小血管疾患は、糖尿病(これもまた潰瘍形成に至り得る)の重大な合併症の1つである。或る特定の実施形態では、糖尿病の神経性及び血管性の両方の合併症に起因する糖尿病性足潰瘍及び/又は潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0054】
例示的な慢性創傷として「外傷性潰瘍」を挙げることができる。外傷性潰瘍の形成は、身体への外傷の結果として起こり得る。これら傷害には、例えば、動脈系、静脈系又はリンパ系に対する障害;骨格の骨構造への変化;組織層−表皮、真皮、皮下軟組織、筋肉又は骨−の喪失;身体の部分又は器官に対する損傷及び身体の部分又は器官の喪失が含まれる。或る特定の実施形態では、身体の外傷と関連する潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0055】
例示的な慢性創傷として「熱傷潰瘍」を挙げることができ、これには、I度熱傷(すなわち、赤くなった皮膚表在領域);II度熱傷(水ぶくれになった外傷部位。これは水泡液の除去後に自然治癒し得る);III度熱傷(皮膚全層の熱傷。通常は創傷治癒に外科的介入を必要とする);湯焼(scalding)(熱い湯、グリース又はラジエター液により生じ得る);熱による熱傷(火炎により起こり得る。通常は深達性熱傷);化学的熱傷(酸及びアルカリにより起こり得る。通常は深達性熱傷);電気的熱傷(家庭の低電圧によるもの、仕事場での高電圧によるもの);爆発閃光性熱傷(通常は浅達性外傷);及び接触性熱傷(通常、深達性。マフラーテールパイプ、高温のアイロンやストーブにより起こり得る)が挙げられる。或る特定の実施形態では、身体への熱傷性外傷に関連する潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0056】
例示的な慢性創傷として「脈管性潰瘍」を挙げることができる。脈管性潰瘍もまた下肢で起こり、疼痛性で急峻な縁のある病変であり、関連する触知可能な紫斑及び出血性ブラ(bullae)を有し得る。コラーゲン疾患、敗血症及び種々の血液学的疾患(例えば、血小板減少症、異常蛋白血症)がこの重篤な急性状態の原因であり得る。
例示的な慢性創傷として壊疽性膿皮症を挙げることができる。壊疽性膿皮症は、単一又は複数の、下腿の非常に柔らかい潰瘍として生じる。濃赤色〜紫色の穿掘性境界が化膿性の中心欠損を取り囲む。概して、生検は脈管炎を明らかにできない。患者の半分で、壊疽性膿皮症は、全身性疾患(例えば、潰瘍性結腸炎、限局性回腸炎又は白血病)と関連している。或る特定の実施形態では、壊疽性膿皮症と関係する潰瘍形成によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0057】
例示的な慢性創傷として感染性潰瘍を挙げることができる。感染性潰瘍は、種々の生物への直接感染に続いて起こり、重大な限局性アデノパシーと関連し得る。マイコバクテリア感染、炭疽、ジフテリア、ブラストミセス症、スポロトリクス症、野兎病及びネコ引っ掻き熱が例示である。第一期梅毒の生殖器潰瘍は、代表的には、無痛性であり、きれいな硬結基部を有する。軟性下疳及び鼡径部肉芽腫のものは、でこぼこし、汚れた、よりひどい病変となる傾向がある。或る特定の実施形態では、感染と関連する潰瘍化によって特徴付けられる慢性創傷の治療方法が提供される。
【0058】
本明細書中で使用する場合、用語「裂開性創傷」とは、裂けているか又は開裂している創傷、通常は外科的創傷をいう。或る特定の実施形態では、創傷が裂開によって特徴付けられる、予想した速度で治癒しない創傷の治療方法が提供される。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された主題の組成物は、1以上の追加の創傷治癒剤、例えば、米国特許第8,063,023号及び同第8,247,384号並びに米国特許出願公開第US 1012/0289479号(これらは各々引用により本明細書中に組み込まれる)に記載の剤のような創傷治癒剤(例えば抗コネクチン剤を含む)を更に含むことができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された主題の組成物は、1以上の追加の抗OGT剤を更に含むことができる。
【0059】
本明細書中で使用する場合、用語「対象者」はヒト対象者及び動物対象者の両方を含む。よって、獣医学的治療的使用が本明細書に開示された主題に従って提供される。したがって、本明細書に開示された主題は、哺乳動物、例えばヒト、並びに絶滅危惧にあるため重要な哺乳動物(例えば、シベリアトラ);経済的重要性を有する哺乳動物(例えば、人間による消費用に農場で飼育される動物);及び/又は人間にとって社会的重要性を有する動物(例えば、ペットとして又は動物園で飼われる動物)の治療を提供する。このような動物の例としては、以下のもの挙げられるがそれらに限定されない:肉食動物(例えば、ネコ及びイヌ);ブタ(swine)(豚(pig)、去勢豚(hog)を含む)及びイノシシ;反芻動物及び/又は有蹄動物(例えば、ウシ(cattle)、去勢ウシ(ox)、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ);及びウマ。
【0060】
幾つかの実施形態では、対象者は糖尿病ではない。幾つかの実施形態では、対象者は糖尿病である。幾つかの実施形態では、対象者は、1型真性糖尿病を有し、2型真性糖尿病を有し、正常レベルより高い血中グルコースレベルを有し、及び/又はインスリン抵抗性レセプターを有する。
本明細書中で言及するように、本明細書に開示された主題は、細胞においてOGTを阻害する方法及び創傷を有する対象者を治療する方法を更に含む。
幾つかの実施形態では、細胞においてOGTを阻害する方法は、細胞に抗OGT剤を投与することを含む。幾つかの実施形態では、細胞は対象者に存在する。幾つかの実施形態では、創傷を有する対象者を治療する方法は、抗OGT剤を対象者に投与することを含んでなる。
【0061】
本明細書に開示された主題の方法の幾つかの実施形態では、抗OGT剤は、本明細書に記載されているような、OGT mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスOGTポリヌクレオチド;本明細書に記載されているような、OGTの発現を阻害する二本鎖RNA分子、例えばsiRNA;及び本明細書に記載されているような、OGTの発現を阻害する短ヘアピンRNA分子からなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、この方法は、第2の創傷治癒剤及び/又は第2の抗OGT剤を投与することを含む。幾つかの実施形態では、抗OGT剤は、本明細書に開示された主題の方法に従う投与のために、本明細書に記載されているような組成物で提供される。
【0062】
特定の場合で、本明細書に開示のヌクレオチド及びポリペプチドは、GENBANK(登録商標)及びSWISSPROTのような公衆に利用可能なデータベースに含まれている。そのような公衆に利用可能なデータベースに含まれるヌクレオチド及びポリペプチドに関連する配列その他の情報を含む情報は、引用により本明細書中に明示的に組み込まれる。そうではないことが示されていないか又は明らかでない場合には、前記の公衆に利用可能なデータベースへの言及は、本出願の出願時点で最新バージョンのデータベースへの言及である。
【0063】
本明細書で使用する用語は、当業者により十分に理解されると考えられるが、本明細書に開示された主題の説明を容易にするため定義を示す。
別段の規定がない場合、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に開示された主題が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものに類似するか又は等価である任意の方法、デバイス及び材料を本明細書に開示された主題の実施及び試験に使用できるが、代表的な方法、デバイス及び材料をここに記載する。
【0064】
長年の特許法上の慣例に従って、用語「a」、「an」及び「the」は、本出願(特許請求の範囲を含む)で使用する場合には、「1以上の」をいうものとする。よって、例えば、「細胞」への言及は複数の当該細胞を含む、といった具合である。
そうでないことが示されていない場合、本明細書及び特許請求の範囲で使用する成分、性質(例えば反応条件)などの量を表す全ての数は、全ての場合で、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されていない場合、本明細書及び特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本明細書に開示された主題により得ることが求められる所望の性質に応じて変動し得る近似値である。
【0065】
本明細書で使用する場合、質量、重量、時間、容量、濃度又はパーセンテージの値又は量に言及するときの用語「約」は、特定された量からの、幾つかの実施形態では±20%、幾つかの実施形態では±10%、幾つかの実施形態では±5%、幾つかの実施形態では±1%、幾つかの実施形態では±0.5%、幾つかの実施形態では±0.1%の変動を包含するとされる。なぜならば、そのような変動は、開示された方法を実行するに適切であるからである。
【0066】
本明細書で使用する場合、範囲は、「約」を付した1つの特定値から及び/又は「約」を付した別の1つの特定値までとして表現されることがある。また、本明細書に開示されている値について、各値は、当該値自体に加えて「約」を付した当該特定の値としても開示されていると理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」もまた開示されている。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていると理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14も開示されている。
本明細書に開示された主題は、下記の具体的(非限定的)実施例により更に説明される。以下の実施例は、明らかになるように、或る種の予言的な例を含む。以下の実施例は、本発明に関連する開発及び実験の過程で種々の時点で集めたデータの代表例であるデータを合併したものを含み得る。
【実施例】
【0067】
実施例
実施例1
本研究は、糖尿病皮膚における細胞タンパク質のO-GlcNAc修飾増加が慢性糖尿病性皮膚潰瘍の患者で観察される創傷治癒遅延の一因であり得るかどうかを調べるために行った。高グルコース下でのヒトケラチノサイト培養によって高血糖をモデル化した。高血糖条件下で、(i)ケラチノサイトタンパク質のO-GlcNAc修飾レベルの上昇、及び重要なことに(ii)創傷閉鎖の遅延を観察した。創傷閉鎖の高血糖誘導遅延は、OGT(タンパク質へのGlcNAc成分の付加を担う遺伝子)のshRNA及びsiRNAノックダウンによって逆転した。この観察は、OGTの標的化が非治癒性糖尿病性創傷の治療に有益であり得ることを示唆する。
【0068】
非治癒性創傷は主要な病的状態である。このことは、慢性皮膚創傷を発症する傾向がある糖尿病患者には特に、真実である。 セリン及びスレオニン残基のO-グリコシル化は、タンパク質リン酸化と同様な共通の調節性翻訳後修飾である;細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加は、糖尿病及び高血糖状態で観察されている。2つの細胞内酵素たるUDP-N-アセチルグルコサミン-ポリペプチド β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(OGT)及びO-GlcNAc選択性N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(OGA)は、細胞内タンパク質基質のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の付加及び除去をそれぞれ媒介する。細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾の変化は糖尿病に関連し、糖尿病組織で観察されるタンパク質O-グリコシル化レベルの上昇は、観察されている、創傷治癒遅延の一因である基礎病態生理の幾らかを部分的に説明し得る。本発明者らは、マウスケラチノサイトにおけるOGT過剰発現によるタンパク質O-グリコシル化の増加がタンパク質O-グリコシル化の亢進及び超接着性表現型を生じることを以前に示した。本研究は、糖尿病皮膚における細胞タンパク質のO-GlcNAc修飾増加が慢性糖尿病性皮膚潰瘍の患者で観察される創傷治癒遅延の一因であり得るかどうかを調べるために行った。本研究で、本発明者らは、高血糖条件下で培養したヒトケラチノサイトがインビトロでO-GlcNAc修飾レベルの上昇及び創傷閉鎖速度の遅延を示すことを証明する。本発明者らは更に、RNA干渉(RNAi)によるOGTの特異的ノックダウンがこの効果を有意に逆転させることを証明し、そのことにより、糖尿病患者の創傷治癒遅延にOGT標的化治療介入の機会を開く。
【0069】
実験手順
材料. 細胞培養培地はInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手した。shRNAプラスミドはOpen Biosystems(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)から購入し、University of North Carolina at Chapel Hill Lenti-shRNAコア施設にて、不活化レンチウイルス粒子中にパッケージングした。ヘアピン中の成熟センス鎖の配列は次のとおりであった:shOGT(TRCN0000035064;配列番号72):5'-GCCCTAAGTTTGAGTCCAAAT-3'、及びshOGA(TRCN0000134040):5'-CCAGAAACTTTCCTTGCTAAT-3'。TRCレンチウイルスeGFP shRNAを形質導入のポジティブコントロールとして使用した(Open Biosystems catalog #RHS4459)。マウスモノクローナルO-GlcNAc特異抗体(クローンRL2)はThermo Scientific(Waltham, MA)のものであった。GAPDHに対するウサギモノクローナル抗体はCell Signaling(Danvers, MA)のものであった。β-アクチンに対するマウスモノクローナル抗体及びOGT特異的抗体はSigma(St. Louis, MO)のものであった。ウサギポリクローナルOGT抗体はAbcam(Cambridge, MA)のものであった。マウス及びウサギ抗ヒツジホースラディッシュパーオキシダーゼ結合二次抗体はGE Healthcare(Pittsburgh, PA)のものであった。3'UUオーバーハングを有するコントロールsiRNA(センス鎖:GCAGUUAUAAUGACUAGAU)及びOGT siRNA(センス鎖:GCACAAUCCUGAUAAAUUU)はSigma-Aldrichから購入した。
【0070】
細胞培養及び引っ掻き創傷形成. 非トランスフェクト及びshRNAトランスフェクトHaCaT細胞を、正常又は高グルコースのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(それぞれ5.5mM又は25mMグルコース)(13)、1%ウシ胎仔血清(FBS)、1,000単位ペニシリン/mL、100μgストレプトマイシン/mL中で培養した。培地に、図に示した量のグルコース又はインヒビターを補充した。1μgピューロマイシン/mL培地を用いて、shRNAトランスフェクト細胞を選択した。引っ掻き創傷形成の6時間前にピューロマイシン含有培地を交換した。細胞を60時間(コンフルーエントまで)増殖させた後、スクラッチアッセイを行った。24ウェル培養プレート中のコンフルーエントな単層細胞を横切って線状に引っ掻いて引っ掻き創傷を形成し、続いて1×PBSで1回洗浄し、新鮮な培養培地の加えた。引っ掻いた直後にNikon TE2000-Uスピンディスク顕微鏡で10×倍率で写真撮影し、図に示した時間37℃でインキュベートした後に別のセットの写真撮影を行った。その後、Tscratchソフトウェアパッケージを用いて創傷を分析した(14)。当初創傷サイズが同じ創傷のみを評価し、比較した。
統計分析. エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を示す。Tscratchソフトウェアマニュアルの記載どおりに、スチューデントのt検定を非等分散で両側検定として行った。
【0071】
shRNAでのケラチノサイトの安定な形質導入。 HaCaT細胞をDMEM、10% FBS中で50〜60%コンフルーエントまで培養し、感染多重度(MOI)2で10μg/mLポリブレン及びshRNA(shGFP、shOGT又はshOGA)と5時間インキュベートし、その後に培地を新鮮なDMEMに交換した。翌日、1μg/mLピューロマイシン含有培地を細胞に加え、形質導入に成功した細胞を選択した。細胞培養物をピューロマイシン選択下で6〜8回継代後に実験に使用した。

イムノブロットシグナルの定量. サンプルを等量ロードし、以前に記載されたとおりSDS-PAGEで分離した。確立されたプロトコルに従ってイムノブロッティングを行い、増強化学発光(enhanced chemiluminescence;ECL)反応(Amersham Biosciences)により顕現させた。イムノブロットのタンパク質バンドを、GeneSnapソフトウェア(SynGENE, Frederick, MD)を用いて定量した。RL2染色については、3つの最も顕著なバンドを、GeneSnapソフトウェアを用いて分析した。
【0072】
ケラチノサイトのsiRNAトランスフェクション. 3'-UUオーバーハングを有する、OGTに対するsiRNA(3'-GCACAAUCCUGAUAAAUUU-5')及びスクランブルコントロールsiRNA(3'-GCAGUUAUAAUGACUAGAU-5')を合成し、水中20mM(作業ストック)に希釈し、40%コンフルーエントなケラチノサイトを含む24ウェルプレートの各ウェルを、オリゴフェクタミン(Invitrogen)をプロトコルに従って用いてトランスフェクトした。簡潔には、3μLオリゴフェクタミン(Invitrogen)を12μLのOpti-MEM I(Invitrogen)に希釈し、8分間インキュベートした。その間に、3μLのsiRNAを50μLのOpti-MEM Iと混合し、これをオリゴフェクタミン希釈物に加え、複合体を形成させるために20分間放置した。次いで、32μLのOpti-MEMを混合物に添加し、(500μLの高グルコースDMEM中の)細胞に加えた。48時間後、培地を高グルコースDMEMに交換し、60時間の時点で、細胞をスクラッチアッセイに使用した。図に示す時点で写真撮影をした。
【0073】
結果
高血糖条件は、ヒトケラチノサイトでO-GlcNAcレベル亢進を生じる. 糖尿病皮膚でのO-GlcNAc修飾レベルの上昇が組織中の高グルコースレベルに関連するかどうかを調べるために、これら条件を、増殖培地中に種々の量のグルコースを補充してヒトケラチノサイト(HaCaT)を48時間増殖させることによって細胞培養物中で模倣した(図1)。細胞溶解物のイムノブロットは、O-GlcNAc特異的抗体RL2で検出されるように、グルコースレベルの上昇が確かにケラチノサイト溶解物においてより多くのO-GlcNAc修飾を生じたことを示す(図1A及び1B)。この用量依存的なO-GlcNアシル化増加により、ケラチノサイトにおけるグルコース濃度増加とO-GlcNAc修飾との間の連関が強調される。

ヒトケラチノサイトは、高血糖条件下で創傷治癒遅延を示す. そこで、高血糖条件がヒトケラチノサイトの創傷閉鎖速度に影響するかどうかを調べることとした。このために、「スクラッチアッセイ」を創傷治癒のインビトロモデルとして利用した(図1C)。このアッセイは、HaCaT細胞を種々の量のグルコースと48時間プレインキュベートした後、コンフルーエントな細胞層に「創傷」を作成して行った。「創傷治癒」を16時間進行させることで、培養培地中のグルコースレベルの上昇は創傷閉鎖速度を用量依存的に減少させたことが示される(図1D)。
【0074】
RNA干渉によるO-GlcNAc経路の鍵となる酵素の遺伝子ノックダウンは、ヒトケラチノサイト培養物において創傷閉鎖速度に影響する。HaCaT細胞における創傷閉鎖遅延とO-GlcNAc修飾レベル上昇との連関が明らかになったことで、更に、O-GlcNAcタンパク質修飾の付加及び除去を担う酵素(それぞれOGT及びOGA)の役割をより詳細に調べることとした。このために、いずれかの酵素に対するshRNAでHaCaT細胞を安定に形質導入し、細胞溶解物をイムノブロット分析で分析した(図2A及び2B)。細胞溶解物のイムノブロット分析により、O-GlcNAcレベルに対するRNAiの影響が確証された。すなわち、shOGTはO-GlcNAc修飾レベルの有意な低減をした。shOGA形質導入細胞は、非形質転換コントロール及びshGPFコントロールと類似のO-GlcNAc修飾レベルを示した(図2B)。shRNA形質導入細胞の引っ掻き創傷形成により、OGTのノックダウンは創傷閉鎖速度を有意に増加させる一方、OGAについてはそうでないことが示される(図2C及び2D)。shGFP形質導入コントロールは、非形質導入細胞と有意に異ならなかった。まとめると、これらデータは、ヒトケラチノサイトにおいて、O-GlcNAc量の減少(shOGT)は創傷治癒を加速させる一方、O-GlcNAc除去の抑制(shOGA)は創傷治癒を阻害することを強く示唆し、よってO-GlcNAcレベルと創傷治癒速度との連関を強調するものである。
【0075】
OGTのsiRNAノックダウンは、高血糖条件で、ケラチノサイトのO-GlcNアシル化を減少させ、創傷閉鎖を加速させる. OGT遺伝子発現を標的するために治療上より適切なアプローチの使用可能性を調べるため、OGTをノックダウンする手段として小干渉RNA(siRNA)を試験した(図3)。OGT mRNA配列に指向させた19マーsiRNAを合成し、HaCaT細胞を、コントロールとしてスクランブル配列を有するsiRNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞溶解物をRL2及びOGT免疫反応性についてプロービングした(図3A及び3B)。結果は、イムノブロットから定量されるように、OGTに対するsiRNAがOGTレベル及びRL2免疫反応性の両方の有意なノックダウンを生じることを示す。
次に、siRNAトランスフェクト細胞を引っ掻き創傷形成アッセイで試験して、この形態のOGT RNAiの創傷閉鎖に対する効果をインビトロで調べた。図3Cは、26時間の時点での創傷治癒がOGT siRNAでコントロールsiRNA細胞及び非処理細胞の両方と比較して有意に進行することを示す(図3D)。これら結果は、ヒトケラチノサイト中の細胞内O-GlcNAc修飾レベルが創傷閉鎖速度に連関しており、創傷閉鎖速度がOGTノックダウンを用いて操作され得ることを更に支持するものである。
【0076】
OGTのshRNAノックダウンはケラチノサイト細胞内タンパク質O-グリコシル化を減少させ;一方、OGAノックダウンはタンパク質O-グリコシル化を増大させる. GFP(コントロール)、OGT及びOGAを標的するshRNAで安定にトランスフェクトしたHaCaT細胞をコンフルーエントまで増殖させた。次いで、細胞溶解物を、図8A及び図8Bに示されるように、(i)O-GlcNAc修飾(RL2)、(ii)OGTタンパク質及び(iii)GAPDH(ローディングコントロール)に対する抗体を用いるイムノブロッティングで分析した。図に示されるように、OGTの遺伝子ノックダウンはO-GlcNAcタンパク質修飾を減少させ;一方、OGAの遺伝子ノックダウンはO-GlcNAcタンパク質修飾を増加させる。

OGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドは、試験マウスの皮膚で、創傷に局所塗布したとき、OGTタンパク質レベル及びO-GlcNAc修飾をダウンレギュレートする. 50μlのPluronic(登録商標) F-127ゲル中10nMのOGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドをWTマウスの全層皮膚創傷に創傷形成後t=0及びt=24時間で局所塗布した。OGTアンチセンスODN又はビヒクルコントロールで処置したマウスの損傷周囲皮膚を、創傷形成の48時間後に採集した。図9に示すように、皮膚抽出物をSDSPAGEにより分離し、O-GlcNAc修飾(RL2)、OGTタンパク質又はGAPDH(ローディングコントロールとして)に対する抗体を用いるイムノブロットによりプロービングした。
【0077】
考察
増加している文献の証拠から、ヘクソサミン経路の変化が糖尿病の病態生理において鍵となる役割を演じていることが示唆される。例えば、マウスにおけるOGT過剰発現は糖尿病表現型を生じ(8)、O-GlcNアシル化レベルが健常コントロールと比して上昇していることが2型糖尿病患者の細胞及び組織で観察されている(9,15)。以前、本発明者らは、ケラチノサイト中でのOGT過剰発現が(i)細胞タンパク質のGlcNAc修飾を増加させ、(ii)細胞-細胞接着を顕著に亢進させることを報告した(12)。これら観察と一致して、漸増濃度のグルコース中で増殖させたヒトケラチノサイト培養物における用量依存的なタンパク質O-グリコシル化増加を観察した。更に、グルコース濃度増加及びO-GlcNAcタンパク質修飾は、創傷閉鎖遅延と用量依存的に関連付けられる。意義深いことに、OGT特異的shRNA又はsiRNAでのOGT活性のサイレンシングは、スクラッチモデルアッセイにおいて、高グルコース濃度の存在下でさえ、ケラチノサイトタンパク質のGlcNAc修飾を減少させ、創傷治癒を促進する。まとめると、これら観察から、酵素OGTにより媒介される細胞内O-グリコシル化の増加が、慢性糖尿病性皮膚創傷での損傷治癒遅延の一因である可能性が高いことが示唆される。
【0078】
本発明者らが以前に報告したように(12)、細胞接着促進及び創傷治癒遅延に対するOGT活性増大の効果は、一部、ケラチノサイト細胞接着成分(デスモソーム、接着結合及び細胞骨格エレメントを含む)の調節に起因し得る。これに関連して、本発明者らは、以前に、プラコグロビン(接着結合及びデスモソーム細胞-細胞接着複合体の両方の成分)が、OGT過剰発現ケラチノサイトでO-グリコシル化増加により並進的に安定化されることを示した。プラコグロビンタンパク質レベルの上昇は、デスモソームの形成及びプラコグロビンに基づく接着結合を推進し、細胞-細胞接着を顕著に増強した(12)。これら観察は、ケラチノサイトにおいて、O-グリコシル化が、一部、プラコグロビンの翻訳後安定性を調節するように、そして意義深いことに、ケラチノサイト細胞-細胞接着を調節するように機能することを示唆する。創傷治癒の間、ケラチノサイトは創傷に移動して上皮再形成を促進する。創縁のケラチノサイトは、縁から離れ創傷へ移動できるように、後縁の隣接細胞への接着をダウンレギュレートしなければならない。細胞-細胞接着を増強させることにより、細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加が創傷治癒を遅らせる一方、細胞内タンパク質O-グリコシル化のダウンレギュレーションは創傷治癒を促進することが示唆される。
【0079】
O-グリコシル化が遍在性の細胞内修飾であることは注目に値する。細胞接着及び構造タンパク質の修飾に加え、転写因子及び調節性酵素もまた、セリン及びスレオニン残基へのGlcNAcの付加を触媒するOGTにより修飾される。よって、OGT活性の効果は多面性である可能性が高い。接着に対する効果に加え、細胞内タンパク質O-グリコシル化レベルの変化は、細胞の増殖及び化学走性にも影響し得、観察された創傷治癒遅延の一因はこれら効果の組合せであり得る。
糖尿病性創傷は相当な保健医療負担の代表である。これら創傷の発生並びに当該創傷の治療に係る社会的及び財政的費用は、糖尿病の発生が肥満発生率増加及び人口高齢化に起因して増加するにつれて増大する可能性が高い。本発明者らは、高血糖ケラチノサイト培養物モデルにおいて、RNAiを用いるOGTのノックダウンによりO-GlcNアシル化の全体的レベルを減少させることで創傷治癒が加速されることを証明した。まとめると、これらデータは、OGTの局所的標的化が、糖尿病性潰瘍における治癒を促進する有効なアプローチを証明し得ることを示す。創傷における障壁機能の損傷によりオリゴヌクレオチドでのトランスフェクションが可能になることが以前に示されているので(16)、OGTに対するsiRNAの局所投与が慢性糖尿病性皮膚創傷及び創傷一般の治癒を促進する有効な治療方法であり得ることが示唆される。
【0080】
実施例2
糖尿病性創傷の治癒を促進するOGTアンチセンスオリゴヌクレオチドの局所送達
本発明者らのデータは、核原形質酵素であるO-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)により触媒される細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加が慢性糖尿病性皮膚創傷における創傷治癒遅延の一因であることを示している。本実施例に記載した研究は、糖尿病性皮膚創傷の治癒を、OGT特異的オリゴヌクレオチドの直接送達による皮膚中の酵素OGTのノックダウンによって加速させることができるかどうかを試験するものである。OGTアンチセンスオリゴヌクレオチド(OGTアンチセンスODN)及び/又はOGT siRNAの皮膚創傷部位への局所塗布によりOGT活性をダウンレギュレートさせることが通常の創傷及び糖尿病性創傷の治癒を加速させると考えられる。
本実施例に記載した研究は、以下:
I)糖尿病マウスモデルにおけるOGTノックダウンが創傷治癒速度を加速させることができるかどうかの決定、及び
II)OGT媒介性細胞内O-グリコシル化が創傷治癒を調節する機序の更なる特徴づけ
に関連する。
【0081】
糖尿病性創傷の治癒を促進するOGTアンチセンスオリゴヌクレオチドの局所送達
慢性創傷は、米国で6.5百万人の患者が罹患している主な病的状態であり、その治療に年間約250億ドルの費用を要している。糖尿病患者は、慢性非治癒性創傷の発症リスクが増大する。おそらくは、種々の因子が、慢性創傷(ニューロパシー、血管症並びにグルコースレベル上昇を生じる基礎疾患たる内分泌機能不全を含む)を発症する糖尿病患者の疾病素質の一因となる。
セリン及びスレオニン残基のO-グリコシル化は、タンパク質リン酸化と同様な共通の調節性翻訳後修飾である;細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加は、糖尿病及び高血糖状態で観察されている。2つの細胞内酵素たるUDP-N-アセチルグルコサミン-ポリペプチドβ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(OGT)及びO-GlcNAc選択性N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(OGA)は、細胞内タンパク質基質のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の付加及び除去をそれぞれ媒介する。細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾の変化は糖尿病に関連し、糖尿病組織で観察されるタンパク質O-グリコシル化レベルの上昇は、観察されている、創傷治癒遅延の一因である基礎病態生理の幾らかを部分的に説明し得る。
【0082】
ケラチノサイト中のOGT活性増大は創傷治癒を遅延させる。創傷治癒の間、ケラチノサイトは創傷に移動して上皮再形成を促進する。創縁のケラチノサイトは、縁から離れ創傷へ移動できるように、後縁の隣接細胞への接着をダウンレギュレートしなければならない。細胞-細胞接着を増強させることにより、細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加が創傷治癒を遅らせる一方、細胞内タンパク質O-グリコシル化のダウンレギュレーションは創傷治癒を促進すると考えられる。この提案では、創傷治癒におけるO-グリコシル化の役割が更に特徴付けられる。予備試験として、スクラッチアッセイを用いて、OGT過剰発現ケラチノサイトでの創傷閉鎖時間をコントロールケラチノサイトと比較した(図6)。細胞内タンパク質のOGT媒介O-グリコシル化の増加は、治癒の遅延を生じた。創傷形成の16時間後に、コントロールケラチノサイトは創傷を完全に閉鎖した。対照的に、OGT過剰発現ケラチノサイトは創傷を閉塞できなかった;創傷形成の16時間後で、50%未満の創傷閉鎖がOGT細胞で観察された。
【0083】
本発明者らは、(i)マウスケラチノサイトでのOGT過剰発現によるタンパク質O-グリコシル化の増加がタンパク質O-グリコシル化の増強及び超接着性表現型を生じ(図2及び(17))、(ii)更なる高血糖条件下で培養したヒトケラチノサイトがO-GlcNAc修飾レベルの上昇及び創傷閉鎖速度の遅延を示す(図7)ことをインビトロで証明した。本発明者らは、RNA干渉(RNAi)によるOGTの特異的ノックダウンがこの効果を有意に逆転させることを更に証明し(図2、3、7)、そのことにより糖尿病患者における創傷治癒遅延にOGTを標的とする治療的介入の機会を開いた。OGTの阻害は糖尿病性創傷を含む慢性創傷の治癒を促進すると考えられる。本発明者らは、阻害性ヌクレオチド(例えば、OGTアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNA)の局所投与によりインビボで創傷治癒を促進させることを提案する。
【0084】
糖尿病における細胞内O-グリコシル化. 高血糖(グルコース過剰)はグルコサミン経路に流れ込み、細胞内タンパク質を修飾するOGTに過剰なUDP-GlcNAcを提供する(18)。過剰なグルコースはグルコサミンに変換され、最終的には細胞内タンパク質のOGT修飾のドナー基質であるUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)に変換される。結果的に、高血糖は、種々のタンパク質のO-グリコシル化増加に関連付けられる(18-22)。高血糖状態(糖尿病を含む)で観察される細胞内タンパク質のGlcNAc修飾増加は、糖尿病に関連する病理の幾つかの一因であると考えられている。例えば、膵臓β-細胞は高レベルのOGTを有し、細胞内O-GlcNAc修飾の変化に感受性であり、筋肉及び脂肪組織でのOGT過剰発現はトランスジェニックマウスモデルにおいて糖尿病を引き起こす(23)。
【0085】
糖尿病と細胞内タンパク質O-グリコシル化増加を引き起こす変異との遺伝的関連性. O-GlcNAcase(OGA)をコードする遺伝子中の早期終止を生じる変異は、メキシコ系アメリカ人において、成人発症II型糖尿病の遺伝的素因と関連付けられている(24)。OGAは細胞内タンパク質からGlcNAcを除去し、同定されたOGA変異は、タンパク質O-グリコシル化レベルの上昇を生じる。この観察は、糖尿病における細胞内O-グリコシル化増加の病理学的役割についての更なる支持を提供する。
【0086】
以下を含む予備的研究により、酵素OGTにより媒介される細胞内O-グリコシル化の増加が、慢性糖尿病性皮膚創傷での創傷治癒遅延の一因であることが示唆される:
ケラチノサイト中のOGT過剰発現は、(i)細胞タンパク質のGlcNAc修飾を増加させ、(ii)細胞-細胞接着を有意に増強し(図7)(1)、(iii)創傷治癒のケラチノサイトスクラッチアッセイモデルで創傷閉鎖を遅延させる(図6);
細胞タンパク質のGlcNAc修飾の増加が糖尿病マウスの皮膚で観察される(図5);
ヒトケラチノサイト培養物中でのグルコース濃度増大がケラチノサイトタンパク質のGlcNAc修飾増加と関連付けられ、創傷閉鎖を用量依存的に阻害する(図7);及び
OGT特異的shRNA又はsiRNAでのOGT活性のサイレンシングがケラチノサイトタンパク質のGlcNAc修飾を減少させ、スクラッチモデルアッセイにおいて、高グルコース濃度の存在下でさえ創傷治癒を促進する(図2、3、7)。
【0087】
本発明者らが以前に報告したとおり(17)、細胞接着促進及び創傷治癒遅延に対するOGT活性増大の効果は、一部、ケラチノサイト細胞接着成分(デスモソーム、接着結合及び細胞骨格エレメントを含む)の調節に起因し得る。
よって、(i)グルコース濃度の増加、OGT活性の増大又はOGA活性の減少による細胞内タンパク質O-グリコシル化の増加による上皮創傷治癒の遅延、及び(ii)タンパク質O-グリコシル化を減少させるOGT特異的shRNA又はsiRNAによる創傷治癒の加速は、慢性糖尿病性皮膚創傷の治癒遅延におけるこの経路の役割を支持する。
【0088】
糖尿病及び高血糖状態におけるケラチノサイト創傷治癒の調節因子としてのOGTの同定並びにOGT活性のダウンレギュレーションによる創傷治癒の促進の証明は、高度に新規で革新的な観察である。インビボでOGT活性をダウンレギュレートする局所アンチセンスOGT ODNの開発は、OGT阻害が慢性糖尿病性創傷の治癒を加速させるという概念を証明する。更に、創傷へのアンチセンスODNの局所送達は、ヒト対象者において、創傷に存在する障壁損傷に起因して標的遺伝子をダウンレギュレートすることが証明される。よって、OGTアンチセンスODNの局所送達は、治癒を促進する高度に新規な、実用的で実行可能なアプローチであり、慢性非治癒性糖尿病性創傷のケアに有意義な進歩をもたらす。治癒時間の短縮により、局所OGTアンチセンスODNは、これら創傷のケアの直接費用及び患者の生産性喪失による間接費用の両方を低減すると予期される。この提案により、糖尿病性皮膚創傷の治癒が、OGT特異的オリゴヌクレオチドの直接送達による皮膚の酵素OGTのノックダウンによって加速されるかどうかが検討される。これは、OGT阻害がインビボで治癒を促進できるという概念の証明により、慢性糖尿病性皮膚創傷の患者でのOGTアンチセンスODNの並進的臨床研究に迅速に繋がる可能性を有する高リスクで、影響力の大きい研究である。
【0089】
アプローチ/方法:
I.糖尿病マウスモデルにおけるOGTノックダウンが創傷治癒速度を加速できるかの決定
糖尿病マウスモデル.初期インビボ研究では、Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME)から入手した、充分に特徴付けられ容易に入手可能なストレプトゾチシン(STZ)誘導糖尿病C57BL/6Jマウスに焦点を当てる;非糖尿病C57BL/6JマウスをWTコントロールとして使用する。或いは、確立プロトコルを用いて、ストレプトゾチシン(STZ)の腹腔内注射(50mg STZ/kg体重,1日1回×5日)により、6〜8週齢雄性C57BL/6Jマウスに糖尿病を誘導することができる。注射の10日後、血中グルコースレベルを測定して糖尿病マウス(すなわち、非絶食時血中グルコースレベル>300〜400mg/dl)を同定した。試験し得る更なる糖尿病マウスモデルとしては、食餌誘導肥満モデル(プレ糖尿病性2型糖尿病モデル)及び/又はdb/dbマウス(共にJackson laboratoriesから入手可能)が挙げられる。
【0090】
糖尿病マウスモデルにおける創傷治癒実験.マウスを麻酔し、剃毛し、6mmパンチ生検で皮膚を切除して背側中央に全層創傷(直径6mmの円形,面積113mm2)を作成する。創傷を作成したマウスは、何も処置しないか(グループ1)、ビヒクル単独を投与するか(グループ2)、又はビヒクル中のOGTアンチセンス-ODN(OGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド)で局所的に処置するか(グループ3)又はビヒクル中のコントロール(OGTセンス)ODNで局所的に処置する(グループ4)。4つの全層切除創傷を、糖尿病マウス及びコントロールマウスの剃毛した背中に背側正中線の両側で作成する。1つの創傷には氷上で冷却した30% Pluronic F-127ゲル(SIGMA)中1μMのOGTアンチセンス-ODNを、1つの創傷には1μMのコントロールOGTセンス-ODNを、1つの創傷にはビヒクル単独を適用し、残る創傷には何もしない。OGTノックダウンの程度及びO-GlcNAc修飾に対する効果を調べる実験のため、創傷及び周囲皮膚を8mmパンチ生検で種々の時点で採集する(最低8マウス/時点)。
【0091】
インビボ投与の最適化.最適な濃度及び投与レジメンを特定するため、ビヒクル中のOGTアンチセンスODNの用量応答曲線をWTバックグランドのC57BL/6Jマウスにおいて用いる。ビヒクル中0.01μM〜10μMのODN濃度を最初に用いる。なぜなら、公表された研究により、インビボで、この濃度が試験動物の皮膚でノックダウンに有効であることが示されているからである。30% Pluronic(登録商標) F-127ゲル(SIGMA)が当初のODN送達用ビヒクルである。なぜなら、これは、インビボでのODN局所送達に有効であることが証明されているからである;しかし、更なるビヒクルを調べてもよい。インビボで最適な投与レジメンを決定するために時間経過研究を行う。例えば、単回送達後のOGTノックダウンの持続性を、局所ODN適用の24時間後、48時間後、4日後及び7日後に試験動物の皮膚の生検により評価する。OGTノックダウンのレベル及び細胞内タンパク質O-GlcNAc修飾の効果を、(i)皮膚生検切片の免疫蛍光及び/又は免疫ペルオキシダーゼ染色、及び(ii)OGTに対する抗体及びO-GlcNAcに対する抗体での皮膚抽出物のイムノブロットによりアッセイする。局所ODNの投与レジメンは、ノックダウン効果の半減期に基づく。例えば、ノックダウンが48時間持続する場合、隔日の局所ODN投与レジメンをインビボ創傷治癒研究に利用する。
【0092】
インビボ創傷治癒アッセイ.完全な創傷閉鎖が達成されるまで種々の時点で動物を臨床的に検査する。完全治癒まで非処置マウス、ビヒクルコントロールマウス及びOGTアンチセンス-ODN処置マウスの創傷閉鎖を毎日測定する。個々のマウスの創傷をデジタル撮影して創傷面積を定量し(Sigma-Scan;Sigma-Aldrich)、標準化して初期創傷サイズ(100%)のパーセンテージとして表す(9)。各時点について平均値(n=8〜10動物/群)±SEMをプロットする。コントロール群とOGTアンチセンス-ODN処理群との比較にはスチューデントのt検定を用いる。創傷が完全に治癒したら、UNC-CHのAnimal Care Committeeが承認したプロトコルに従ってマウスを断頭により犠牲にする。皮膚組織サンプルを、抗OGT特異抗体及びO-GlcNAc特異抗体(クローンRL2又はCTD110)をそれぞれ用いる皮膚生検の直接免疫蛍光染色及び免疫ペルオキシダーゼ染色により、OGTレベル及び機能的観点からタンパク質 O-GlcNAc修飾について分析する。OGT及びRL2に対する抗体並びにCTD 110.1 O-GlcNAc特異抗体を利用する組織抽出物のイムノブロットは、OGTアンチセンスODN送達及びOGTの機能的ノックダウンの有効性を調べる更なるアプローチである。
【0093】
II.OGT媒介O-グリコシル化がインビトロ及びインビボで創傷治癒を調節する機序の更なる特徴決定
接着に加え、細胞増殖及び/又は化学走性の調節もまた、高血糖条件又はOGT過剰発現ケラチノサイトで観察される創傷治癒遅延の一因であり得る。本研究は、(1)細胞-細胞接着、(2)細胞増殖、(3)化学走性に対する、ケラチノサイト細胞内タンパク質のGlcNAc修飾増大の効果を更に特徴付けるものである。(i)OGT活性の効果が多面性である可能性が高く、(ii)細胞内O-グリコシル化レベルが細胞増殖、化学走性及び接着を変化させ、(iii)これら効果の組合せが、観察される創傷治癒遅延の一因であると考えられる。
【0094】
理論的根拠:本発明者らが単層スクラッチアッセイを用いて得た予備データは、ケラチノサイトでの細胞内O-グリコシル化の増加が創傷治癒を遅らせ、OGTノックダウンが創傷治癒を加速させることを示す。O-グリコシル化は遍在性の細胞内修飾である。細胞接着及び構造タンパク質の修飾に加え、転写因子及び調節性酵素もまた、セリン及びスレオニン残基へのGlcNAcのOGT触媒性付加により修飾される。接着に加え、細胞増殖及び/又は化学走性のO-GlcNAc媒介性調節もまた、高血糖条件又はOGT過剰発現ケラチノサイトで観察される創傷治癒遅延の一因であり得る。本研究は、(1)細胞-細胞接着、(2)細胞増殖、(3)化学走性に対する、ケラチノサイト細胞内タンパク質のGlcNAc修飾増加の効果を特徴付ける。(i)OGT活性の効果が多面性である可能性が高く、(ii)細胞内O-グリコシル化レベルが細胞増殖、化学走性及び接着を変化させ、(iii)これら効果の組合せが、観察される創傷治癒遅延の一因であると考えられる。
【0095】
インビトロアッセイ.初代ヒトケラチノサイト及び恒久的にトランスフェクトした不死化ケラチノサイト細胞株を用いて、細胞内O-グリコシル化の変化の効果を調べる。O-グリコシル化レベルを、細胞株でのヒトOGTのトランスフェクション、内因性OGT及び内因性OGAのshRNAノックダウン、増大濃度の細胞外グルコースへの細胞の曝露、OGAインヒビターPUGNAcの使用により操作する。これらツールを用いて細胞内O-グリコシル化レベルを操作して、下記で概説するように、(1)細胞増殖、(2)細胞移動、(3)細胞-細胞接着、(4)創傷閉鎖の変化についてアッセイする。
細胞内O-グリコシル化レベルが細胞増殖に影響するかどうかを決定する。細胞増殖のアッセイとして、定量分析を容易にするBrDu取込み実験及び3H-チミジン代謝物放射性標識実験が挙げられる。ヒトOGTを不死化ケラチノサイトA431扁平細胞ガン腫に一過性にトランスフェクトした予備結果に基づき、OGT活性及び細胞内O-グリコシル化の増加が増殖を低下させる一方、O-グリコシル化の減少は増殖を増大させると予想される。
【0096】
細胞内O-グリコシル化レベルが細胞の化学走性に影響するかどうかを決定する。ケラチノサイトの運動性を刺激することが知られている種々の物質(ウシ胎仔血清、EGF、PDGF及びGPCRアゴニストを含む)に対する化学走性の変化についてアッセイするために改変ボイデンチャンバアッセイを用いる。OGT活性及び細胞内O-グリコシル化の増加が化学走性を低下させると予想される。
細胞内O-グリコシル化レベルが細胞-細胞接着に影響するかどうかを決定する。ディスパーゼアッセイを用いて、細胞-細胞接着を直接測定し、接着結合及びデスモソーム成分に対する抗体を用いるイムノブロット及びIF分析により接合タンパク質成分の効果を分析して、接合タンパク質レベル及び細胞局在に対するOGTの効果を以前に記載されたように決定する(17)。OGT活性及び細胞内O-グリコシル化の増加が細胞-細胞接着を増強すると予想される。
【0097】
創傷治癒モデル(i.スクラッチモデル及びii.器官型モデル)で全3つ効果を同時に試験する。ケラチノサイト単層スクラッチアッセイ及び皮膚等価器官型培養物の両方を用いて、創傷治癒に対する細胞内O-グリコシル化の効果を調べる。恒久的にトランスフェクトしたOGTケラチノサイトを用いて、これらモデル系で細胞内O-グリコシル化の増加を引き起こす。加えて、単層培養物中のケラチノサイト又は皮膚等価物の構築に使用したケラチノサイトにおけるOGT又はO-GlcNAcaseのshRNAノックダウンにより、内因性OGT及びOGA活性の変化を調べることが可能になる。OGT shRNA及びOGA shRNAをそれぞれ用いて、創傷治癒プロセスに対する、細胞内O-グリコシル化の減少及び増加の効果を調べる。(1)細胞-細胞接着、(2)細胞移動、(3)細胞増殖、(4)創傷閉鎖の変化についてアッセイする。本発明者らは、OGT活性及び細胞内O-グリコシル化の増加が創傷治癒を低下させると予想される。
【0098】
インビトロアッセイ:
OGT活性の操作.幾つかのアプローチを用いて、細胞及び組織モデル系内でOGT活性をモジュレートする。本発明者らは、それぞれクローン化マウス及びヒトOGTの過剰発現を引き起こす、恒久的にトランスフェクトされたマウス及びヒトケラチノサイト細胞株を作製している。加えて、本発明者らは、OGT及びOGA mRNA、タンパク質及び活性の内因性レベルを顕著に低減するに有効であることが本発明者らにより示されている、OGT及びOGAに対するshRNA構築物を有している。細胞外グルコース濃度のモジュレーションもまた、細胞内タンパク質GlcNAc修飾を変化させることが示されている(2)。最後に、OGAインヒビター、具体的にはPUGNACを用いて、セリン及びスレオニン残基からのGlcNACの除去を触媒する酵素を阻害することによって細胞内O-グリコシル化を増加させることができる。
【0099】
O-グリコシル化のアッセイ.細胞内タンパク質のOGT媒介性GlcNAc修飾の増加を検出するために幾つかのアッセイを用いる。GlcNAc修飾タンパク質の検出は、(i)市販のGlcNAc特異的モノクローナル抗体RL2(26-29)(Affinity Bioreagents)又はCTD110.6(Covance)を用いるイムノブロット、(ii)3H-GlcNAC中での細胞培養によるタンパク質基質中への放射性標識の特異的取込み、又は(iii)ガラクトシルトランスフェラーゼ放射性標識による;β1,4-ガラクトトランスフェラーゼは、ドナーUDP-ガラクトース由来のガラクトースの、N-アセチルグルコサミンのOH-4への付加を触媒し、したがってGlcNAc修飾細胞タンパク質中への3H-ガラクトースの特異的取込みに利用できる(30)。本発明者らは、これらアプローチの各々を用いてプラコグロビンO-グリコシル化を証明している(17)。
【0100】
細胞増殖のアッセイ.細胞を、10μMのチミジンアナログである5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)(新たに複製されるDNA中に優先的に取り込まれる)と3時間インキュベートし、5%スクロース(pH7.0)を含有する4%パラホルムアルデヒド中で20分間室温にて固定する。BrdUを取り込んだ核を抗-BrdU抗体で検出し、Zeiss蛍光顕微鏡を用いて計数する。一点につき少なくとも500細胞をスコア決定する(ランダムに選択した少なくとも5つの異なる視野を含む)。或いは、増殖中のケラチノサイトを3H-チミジンで標識する;各実験条件について規定数の細胞に取り込まれた3Hシグナルレベルが、細胞増殖の直接の定量的尺度を提供する。増殖速度を測定する他のアプローチとして、クリスタルバイオレット又はMTTでの染色及び陽性染色細胞数の計数が挙げられる。
【0101】
細胞-細胞接着のアッセイは、記載されているようなディスパーゼに基づく解離アッセイによる(17,31,32)。簡潔には、12又は24ウェル組織培養プレートで3連でコンフルーエントまで増殖させた細胞を、PBSで2回洗浄し、0.25又は0.05mlのディスパーゼII(2.4U/ml;Roche Diagnostics GmbH)中で37℃にて1時間インキュベートし、ClayAdams転頭器で前後に10回揺り動かし、フラグメント数を計数する。
【0102】
化学走性のアッセイ.ポリカーボネートフィルター(25×80mm,12μm孔サイズ)を用いる改変ボイデンチャンバで化学走性を測定する。化学誘引物質を下部チャンバに加え、細胞を5×104細胞/ウェルで上部チャンバに加える。指定した時点(0〜12時間)で、上部膜表面に存在する非移動性細胞を機械的に除去し、フィルターを横断して下面に至った細胞を固定し、Diff-Quik(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)で染色する。移動した細胞を顕微鏡にて10倍の対物レンズで計数する。各データ点について、ランダムに選択した4つの視野を各々2回計数し、3つの個々のウェルの平均±標準偏差(SD)を決定する。化学走性に対するOGT媒介性細胞内O-グリコシル化の効果は、全体的でもあり得るし、経路特異的でもあり得る。これら可能性を区別するため、アッセイを種々の化学遊走物質(増殖因子、例えばEGF及びPDGF、血清並びにGPCRアゴニスト)について行う。
【0103】
インビボアッセイ:
細胞接着の変化に加えて、OGTは増殖に影響し得る。Ki67(核増殖抗原;33)についての皮膚生検の免疫組織化学的染色によって、ケラチノサイト増殖をインビボでアッセイして、創傷形成後のインビボでのケラチノサイト増殖に対するOGTノックダウンの効果を測定する。
創傷治癒の間、炎症性浸潤(好中球による早期浸潤及びその後のマクロファージによる浸潤を含む)に進行性の変化が存在する。炎症変化は早期創傷治癒を損なうと考えられるので、インビボでの創傷炎症に対するOGTノックダウンの効果を決定するため、OGTアンチセンスODNの効果のための組織サンプルを、炎症性浸潤に対する効果についても更に分析する。
【0104】
創傷形成後のd1及びd3で創傷の皮膚生検によって好中球及びマクロファージの浸潤を評価する。切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、高倍率視野あたりの細胞の計数により好中球を定量する。加えて、創傷中へ浸潤した好中球を定量する更なる手段としてミエロペルオキシダーゼの染色も用いる。マクロファージは皮膚生検サンプルの染色により定量する。
【0105】
参考文献
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【0106】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個の刊行物、特許又は特許出願が個別具体的に引用により組み込まれると示されている場合と同程度に、引用により本明細書中に組み込まれる。
本明細書に開示された主題の種々の詳細は、本明細書に開示された主題の範囲を逸脱することなく、変更することが可能であると理解される。更に、上記の説明は、単なる例証の目的に過ぎず、限定のためのものではない。
【0107】
配列表フリーテキスト
配列番号1はOGTセンスDNA/ヌクレオチド配列(コード領域:3141 nt)である。
配列番号2はOGTポリペプチド配列(1046 aa)である。
配列番号3はOGT逆平行配列/OGTアンチセンスDNA配列である。
配列番号4〜11はOGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドであり、配列番号4、5及び6はコード領域であり、配列番号7及び8は3'UTR領域を特定し、配列番号9、10及び11はイントロンを特定する。
配列番号12〜168は、OGTアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(コード領域)を特定する。
配列番号169〜171はOGT siRNAである。
配列番号172はOGT shRNAである。
配列番号173はOGTセンスDNA/ヌクレオチド配列(調節領域、イントロン及びコード配列を含む完全配列)である(49836 nt)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2016513968000001.app
【国際調査報告】