(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-514516(P2016-514516A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】ヒトの母乳の圧出および定量化のための方法、装置、およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/06 20060101AFI20160418BHJP
【FI】
A61M1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-504391(P2016-504391)
(86)(22)【出願日】2014年3月21日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】US2014031510
(87)【国際公開番号】WO2014160614
(87)【国際公開日】20141002
(31)【優先権主張番号】14/221,113
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/879,055
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/804,722
(32)【優先日】2013年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515264159
【氏名又は名称】ナヤ ヘルス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス, ジェフリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス, ジャニカ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】リッドフォース, ジャン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA22
4C077DD01
(57)【要約】
母乳の圧出および採取のための装置は、作動可能なアセンブリと、胸部インターフェースと、チューブとを含む。胸部インターフェースは、胸部を受ける大きさであり、胸部に対し流体密封シールを形成する。胸部インターフェースは、胸部インターフェースの少なくとも一部に設けられた変形可能部材を含む。変形可能部材は、作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、胸部に真空圧をかけて乳を圧出させる。チューブは、作動可能なアセンブリを胸部インターフェースに操作可能に結合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母乳の圧出および採取のための装置であって、前記装置は、
作動可能なアセンブリと、
胸部インターフェースであって、前記胸部インターフェースは、胸部に係合し、これに対し流体密封を行う大きさであり、前記胸部インターフェースは、その少なくとも一部内に配置された可動部材を有する、胸部インターフェースと、
前記作動可能なアセンブリを前記胸部インターフェースに操作可能に結合するチューブと、
を備え、
前記可動部材は、前記作動可能なアセンブリの作動に応じて動作し、それによって前記胸部インターフェース内に真空を形成し、前記胸部に前記真空を適用してそこから乳を圧出させる、装置。
【請求項2】
前記作動可能なアセンブリは、ピストンまたはポンプを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記作動可能なアセンブリは、一対のピストンまたは一対のポンプを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記作動可能なアセンブリの作動は、前記チューブ内にある流体を移動させる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記可動部材は、柔軟膜を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記柔軟膜は、膨張・収縮するように構成された波形領域を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記柔軟膜は、前記作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、前記作動可能なアセンブリの作動が前記チューブ内に収められた流体を移動させる、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記可動部材は、変形可能部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記胸部インターフェースは、前記胸部に係合し、前記胸部に対して流体密封を形成する弾力性があり馴染みやすいフランジを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
流体は、前記チューブ内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記流体は、非圧縮性流体である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
引張要素は、前記チューブ内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記引張要素は、ロープ、ワイヤ、またはケーブルを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記引張要素は、前記可動部材および前記作動可能なアセンブリと操作可能に結合される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記作動可能なアセンブリと操作可能に結合され、前記作動可能なアセンブリを作動させるように構成された駆動機構をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記駆動機構は、電気機械装置である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記駆動機構は、モータを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記駆動機構は、前記作動可能なアセンブリに解放自在に結合される、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記胸部インターフェースは、出口弁を備え、前記出口弁は、前記圧出した母乳の流れを採取容器内に向けて制御するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記出口弁は、前記変形可能部材が変形されたときには前記出口弁を通して前記圧出した母乳が流れないようにし、前記変形可能部材が非変形形状のときには前記出口弁を通して前記圧出した母乳が流れるようにすることによって前記流れを制御する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記出口弁は、前記変形可能部材内に一体的に形成される、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
第2の胸部インターフェースであって、前記第2の胸部インターフェースは、第2の胸部に係合し、これに対し流体密封を行う大きさであり、前記第2の胸部インターフェースは、その少なくとも一部内に配置された可動部材を有する、第2の胸部インターフェースと、
前記作動可能なアセンブリを前記第2の胸部インターフェースに操作可能に結合する第2のチューブと、
をさらに備え、
前記可動部材は、前記作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、それによって前記第2の胸部インターフェース内に真空を形成し、前記第2の胸部に真空を適用してそこから乳を圧出させる、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
第2の作動可能なアセンブリと、
第2の胸部インターフェースであって、前記第2の胸部インターフェースは、第2の胸部に係合し、これに対し流体密封を行う大きさであり、前記第2の胸部インターフェースは、その少なくとも一部内に配置された可動部材を有する、第2の胸部インターフェースと、
前記第2の作動可能なアセンブリを前記第2の胸部インターフェースに操作可能に結合する第2のチューブと、
をさらに備え、
前記可動部材は、前記作動可能なアセンブリまたは前記第2の作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、それによって前記第2の胸部インターフェース内に真空を形成し、前記第2の胸部に前記真空を適用してそこから乳を圧出させる、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記作動可能なアセンブリの作動を制御するためのコントローラを有する筐体をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
母乳産出情報の計算および表示を制御し、他の装置との通信を制御するためのコントローラを有する筐体をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
母乳の圧出および採取のための前記装置に電力を提供する電源を有する筐体をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記作動可能なアセンブリを作動させるための駆動用機構を有する筐体をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記胸部インターフェースと流体的に結合された採取容器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記胸部インターフェースに隣接するセンサをさらに備え、前記センサは、そこを流れる乳の少なくとも1つの側面を感知するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記乳の圧出に関するデータを表示するための表示ユニットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
母乳の圧出および採取のためのシステムであって、請求項1に記載の装置を備えるシステム。
【請求項32】
患者に圧力または真空を適用するための装置であって、前記装置は、
作動可能なアセンブリと、
標的組織インターフェースであって、前記標的組織インターフェースは、標的組織に係合し、これに対し流体密封を行う大きさであり、前記標的組織インターフェースは、その少なくとも一部内に配置された変形可能部材を有する、標的組織インターフェースと、
前記作動可能なアセンブリを前記標的組織インターフェースに操作可能に結合するチューブと、
を備え、
前記変形可能部材は、前記作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、それによって標的組織インターフェース内に真空または圧力を形成し、前記標的組織に前記真空または圧力を適用する、装置。
【請求項33】
母乳を圧出させ採取する方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの胸部インターフェースと、前記少なくとも1つの胸部インターフェースに操作可能に結合された少なくとも1つの作動可能なアセンブリとを有する胸部圧出および採取装置を提供するステップであって、前記胸部インターフェースは、変形可能部材を含む、ステップと、
胸部を前記胸部インターフェースに係合させて流体密封するステップと、
前記作動可能なアセンブリを作動させるステップと、
前記作動可能なアセンブリの作動に応じて変形可能部材を変形させ、それによって真空を形成し前記胸部に適用するステップと、
前記胸部から乳を圧出させて採取するステップと、
を含む、方法。
【請求項34】
前記係合ステップが、前記胸部インターフェース上の弾力性があり馴染みやすいフランジを前記胸部に係合させ、それによって前記胸部インターフェースと前記胸部との間に流体密封を形成するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記作動可能なアセンブリは、流体を移動させる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記流体は、前記作動可能なアセンブリおよび前記変形可能部材に流体的に結合されたチューブ内に配置される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記作動可能なアセンブリを作動させるステップは、ピストンを動作させるステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記作動可能なアセンブリを作動させるステップは、前記チューブ内に配置された引張要素に張力を適用するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
軸荷重吸収部材は、前記引張要素の周囲に同心円状に配置され、前記方法が、前記引張要素の反力を吸収するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記作動可能なアセンブリを、それと操作可能に結合された駆動機構から解放するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記作動ステップと、前記変形ステップと、前記圧出ステップとを繰り返すステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記圧出された乳の産出を定量するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記圧出された乳の1つまたはそれより多い側面を定量するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記母乳の圧出に関するデータを前記胸部圧出および採取装置と計算機との間で伝送するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記モバイル装置は、スマートフォンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記データをディスプレイに表示するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記圧出された乳の採取容器への流れを、前記胸部圧出および採取装置に流体的に結合された弁で制御するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
流れを制御するステップは、前記変形可能部材が未変形の時には前記弁を開け、前記変形可能部材が変形されたときには前記弁を閉めるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記圧出した母乳の流れを、前記胸部インターフェースに流体的に結合されたセンサで感知するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
前記胸部圧出および採取装置は、第2の胸部インターフェースと、前記第2の胸部インターフェースに操作可能に結合された第2の作動可能なアセンブリとをさらに備え、前記第2の胸部インターフェースは、変形可能部材を含み、前記方法は、
第2の胸部を前記第2の胸部インターフェースに係合させて流体密封させるステップと、
前記第2の作動可能なアセンブリを作動させるステップと、
前記第2の胸部インターフェース内の前記変形可能部材を前記第2の作動可能なアセンブリの作動に応じて変形させ、それによって前記第2の胸部に真空を形成し適用するステップと、
前記第2の胸部から乳を圧出させて採取するステップと、
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
両方の胸部から乳を圧出させ採取するステップは、同時に起こる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
乳を圧出させ採取するステップは、両方の胸部の間を交互に繰り返す、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
差圧を患者に適用する方法であって、前記方法は、
インターフェースと、差圧装置に操作可能に結合された作動可能なアセンブリと、を有する差圧装置を提供するステップであって、前記インターフェースは、変形可能部材を備える、ステップと、
前記インターフェースを前記患者上の標的領域に係合させ、流体的に密封するステップと、
前記作動可能なアセンブリを作動させるステップと、
前記変形可能部材を前記作動可能なアセンブリの作動に応じて変形させ、それによって正圧または真空を形成し、前記正圧または前記真空を前記標的領域に適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項54】
前記変形可能部材を変形させるステップは、前記標的領域に適用される正圧を形成し、前記標的領域が、口または鼻を含み、それによって前記患者が睡眠している間の無呼吸状態を低減または解消する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記柔軟膜を変形させるステップは、前記標的領域に適用される真空を形成し、前記標的領域は、体液貯蔵器官を含み、それによって、そこから前記体液を圧出させるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2013年3月24日に出願された、米国仮特許出願第61/804,722号(代理人管理番号第44396−702.101号)、2013年9月17日に出願された、米国仮特許出願第61/879,055号(代理人管理番号第44396−703.102号)、2014年3月20日に出願された、米国特許出願第14/221,113号(代理人管理番号第44936−703.201号)の利益を主張するものであり、これらの全内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、概して、医療装置および方法に関し、より具体的には、ヒトの母乳の圧出および採取のための装置および方法に関する。
【0003】
本明細書で開示される例示的実施形態は、好ましくは、母乳の圧出を対象とするが、当業者は、これが限定を意図するものではなく、本明細書で開示される装置、システム、および方法が差圧の適用を必要とする他の治療法にも用いられ得ることを認識するであろう。
【0004】
胸部ポンプは、母親が自らの子供と離れていても授乳を続けられるように母乳を採取するため一般に用いられている。今のところ、胸部ポンプには、2種類の基本型、すなわち、小型ではあるが非効率的で使用の疲れを生じる手動措置と、効率的ではあるが大きくかさばる電動装置とがある。このため、母乳の圧出および採取のために小型で非常に効率的な改良された胸部ポンプを提供することが望ましいであろう。乳産出の定量化やモバイル装置との通信等の追加的な特徴は、ユーザの利便性を高める上でさらに望ましい。これらの目的の少なくともいくつかは、以下に開示される装置および方法によって満足されるであろう。
【背景技術】
【0005】
以下の米国特許は、ヒトの母乳の圧出および採取に関する。米国特許第6,673,036号(特許文献1)、第6,749,582号(特許文献2)、第6,840,918号(特許文献3)、第6,887,210号(特許文献4)、第7,875,000号(特許文献5)、第8,118,772号(特許文献6)、および第8,216,179号(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,673,036号明細書
【特許文献2】米国特許第6,749,582号明細書
【特許文献3】米国特許第6,840,918号明細書
【特許文献4】米国特許第6,887,210号明細書
【特許文献5】米国特許第7,875,000号明細書
【特許文献6】米国特許第8,118,772号明細書
【特許文献7】米国特許第8,216,179号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、概して、医療装置、システム、および方法に関し、より具体的には、ヒトの母乳の圧出および採取のための装置、システム、および方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面では、母乳の圧出および採取のための装置が、作動可能なアセンブリと、胸部インターフェースと、チューブとを備える。胸部インターフェースは、胸部と係合し、それを流体密封する大きさになっている。胸部インターフェースはまた、その少なくとも一部内に配置された可動部材を含む。可動部材は、作動可能なアセンブリの作動に応じて動作し、それによって胸部インターフェースに真空を形成し、真空を胸部に適用し、そこから乳を圧出させる。チューブは、作動可能なアセンブリと、胸部インターフェースとに、操作可能に結合されている。
【0009】
作動可能なアセンブリは、ピストンもしくはポンプ、または一対のピストンもしくは一対のポンプを備えてもよい。作動可能なアセンブリの作動は、チューブ内に配置された流体を移動させ得る。
【0010】
可動部材は、柔軟膜を備え得る。柔軟膜は、膨張し収縮するように構成された波形領域を有してもよい。柔軟膜は、作動可能なアセンブリの作動に応じて変形し、作動可能なアセンブリの作動が、チューブに含まれる流体を移動させ得る。可動部材は、変形可能部材を備えてもよい。
【0011】
胸部インターフェースは、胸部に係合して流体密封を形成する弾力性があり馴染みやすいフランジを備えてもよい。
【0012】
流体が、チューブ内に配置されてもよい。流体は、水や油等の非圧縮性流体であり得る。他の実施形態では、チューブ内に、引張要素が配置されてもよい。引張要素は、ロープ、ワイヤ、またはケーブルを含み得る。引張要素は、可動部材および作動可能なアセンブリに操作可能に結合され、引張要素の反荷重を吸収する軸方向圧縮要素と同心円状に配置されてもよい。
【0013】
本装置は、作動可能なアセンブリに操作可能に結合され、作動可能なアセンブリを作動させるように構成された駆動機構を備えてもよい。駆動機構は、モータ等の電気機械装置を含み得る。駆動機構は、作動可能なアセンブリに解放自在に結合され得る。
【0014】
胸部インターフェースは、圧出した母乳の採取容器内への流れを制御するように構成された出口弁を備えてもよい。出口弁は、変形可能部材が変形されたときには、圧出された乳が弁を通して流れることを防ぎ、変形可能部材が非変形形状にあるときは、圧出した母乳が弁を通して流れることを可能にすることによって、流れを制御し得る。出口弁は、変形可能部材内に一体的に形成され得る。
【0015】
本装置は、第2の作動可能なアセンブリと、第2の胸部インターフェースと、第2のチューブとをさらに備えてもよい。第2の胸部インターフェースは、第2の胸部と係合し、それに対し流体密封する大きさになり得る。第2の胸部インターフェースは、少なくともその一部内に配置された可動部材を有し得、可動部材は、作動可能なアセンブリまたは随意の第2の作動可能なアセンブリのいずれかによる作動に応じて変形し、それによって第2の胸部インターフェース内に真空を形成し、これを第2の胸部に適用し、そこから乳を圧出させてもよい。第2のチューブは、第2の作動可能なアセンブリおよび第2の胸部インターフェースに操作可能に結合され得る。
【0016】
本装置は、作動可能なアセンブリの作動を制御するためのコントローラを有する筐体をさらに備えてよい。コントローラは、母乳産出情報の計算および表示を制御し得、またコントローラは、他の装置との通信も制御し得る。筐体内に電源を配置し、電源が、乳の圧出および採取のための装置に電力を提供し得る。筐体は、その内部に配置され、作動可能なアセンブリを作動させるための駆動用機構を有し得る。
【0017】
本装置は、胸部インターフェースと流体的に結合された採取容器をさらに備えてよい。本装置はまた、胸部インターフェースに隣接し、そこを過ぎる乳通過のある側面を測定するように構成されたセンサを備えてもよい。本装置はまた、乳の圧出に関するデータを表示する表示ユニットを備えてもよい。母乳の圧出および採取のためのシステムは、これまで上に記された装置を含み得る。これらの構成要素はいずれも、他の構成要素とは別個であってもよく、もしくはこれらは、筐体またはペンダント内に配置され得る。
【0018】
本発明の別の側面では、患者に圧力または真空を適用するための装置が、作動可能なアセンブリと、標的組織インターフェースと、チューブとを備える。標的組織インターフェースは、好ましくは、標的組織と係合しそれに対し流体密封する大きさになっている。標的組織インターフェースは、その少なくとも一部内に配置された変形可能部材を有し、変形可能部材は、作動可能なアセンブリの作動に応じて変形する。これが、標的組織インターフェース内に真空または圧力を形成し、真空または圧力を標的組織に適用する。チューブは、作動可能なアセンブリおよび標的組織インターフェースに操作可能に結合される。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、母乳を圧出させ、採取するための方法が、胸部インターフェースと、胸部インターフェースに操作可能に結合された作動可能なアセンブリとを有する胸部圧出および採取装置を提供するステップを含む。胸部インターフェースは、変形可能部材を備える。本方法はまた、胸部を胸部インターフェースと係合させ流体密封するステップと、作動可能なアセンブリを作動させるステップとを含む。本方法はまた、作動可能なアセンブリの作動に応じて変形可能部材を変形させるステップを含み、それによって真空を胸部に形成し適用して、胸部から乳を圧出させて採取するステップを含む。
【0020】
係合ステップは、胸部インターフェース上の弾力性があり馴染みやすいフランジを胸部と係合させ、それによって胸部インターフェースと胸部との間に流体密封を形成するステップを含んでもよい。
【0021】
作動可能なアセンブリを作動させると、流体が移動し得る。作動可能なアセンブリおよび変形可能部材と流体的に結合されたチューブ内に流体を配置してもよい。作動可能なアセンブリを作動させるステップは、ピストンを動作させること、またはチューブ内に配置された引張要素に張力を適用することを含んでもよい。本方法は、作動可能なアセンブリを、それと操作可能に結合された駆動機構から解放することをさらに含み得る。
【0022】
本方法は、作動、変形、および圧出のステップを繰り返すことをさらに含んでよい。本方法は、圧出された乳の産出を定量するステップと、胸部圧出および採取装置とモバイル装置との間で、母乳の圧出に関するデータを伝送するステップをさらに含み得る。モバイル装置は、スマートフォン、タブレット、または計算機であり得る。データは、ディスプレイに表示され得る。本方法はまた、圧出された乳の採取容器への流れを、胸部圧出および採取装置に流体的に結合された弁によって制御するステップを含み得る。流れを制御するステップは、変形可能部材が未変形のときに弁を開き、変形可能部材が変形したときに弁を閉じることを含み得る。また母乳の側面は、胸部インターフェースに流体的に、または別様に結合されたセンサで感知してもよい。
【0023】
胸部圧出および採取装置は、第2の胸部インターフェースと、第2の胸部インターフェースに操作可能に結合された第2の作動可能なアセンブリとをさらに備えてもよい。第2の胸部インターフェースは、変形可能部材を備え得る。本方法は、第2の胸部を第2の胸部インターフェースと係合させ流体密封するステップと、第1または第2の作動可能なアセンブリを作動させるステップとをさらに含み得る。本方法はまた、第2の胸部インターフェース内の変形可能部材を第2の作動可能なアセンブリの作動に応じて変形させ、それによって第2の胸部に真空を形成して適用し、第2の胸部から乳を圧出させ採取するステップを含み得る。両方の胸部からの乳の圧出と採取は、両方の胸部で同時に行なってもよく、または交互に行ってもよい。
【0024】
本発明のさらに別の側面では、患者に差圧を適用する方法が、インターフェースを有する差圧装置と、差圧装置に操作可能に結合された作動可能なアセンブリとを提供することを含む。インターフェースは変形可能部材を備え、本方法は、インターフェースを患者上の標的領域と係合させ流体密封し、作動可能なアセンブリを作動させるステップをさらに含む。本方法はまた、作動可能なアセンブリの作動に応じて変形可能部材を変形させ、それによって正圧または真空を形成し、標的領域に正圧または真空を適用するステップを含む。いずれの構成要素も他の構成要素から切り離してよく、またはこれらを筐体もしくはペンダント内に配置してもよい。
【0025】
変形可能部材を変形させるステップは、標的領域に適用される正圧を形成し得る。標的領域は、口または鼻を含み、正圧の適用が、患者の睡眠時の無呼吸または同様な障害を低減または解消し得る。柔軟膜を変形させるステップは、標的領域に適用される真空を形成し得る。標的領域は、体液貯蔵器官を含み、そのようにして、真空が、貯蔵器官からの体液の圧出を引き起こす。
【0026】
これらおよび他の実施形態は、添付図面に関連する以下の記述により詳細に記される。
(参照による組み込み)
【0027】
本明細書で述べられる全ての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、および特許出願が具体的かつ個々に参照によって組み込まれるのと同程度に参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の新規の特徴は、具体性をもって添付の請求項に示される。本発明の特徴および利点のより深い理解は、本発明の原理が活用された例証的実施形態を示す以下の詳細な記述および付随の図面の参照によって得られるであろう。
【
図1】
図1は、ポンプ装置の例示的実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、ポンプ装置の例示的実施形態の斜視図である。
【
図3】
図3は、ポンプ装置の例示的実施形態の断面である。
【
図4】
図4は、駆動機構に結合された作動可能なアセンブリの例示的実施形態を図示する。
【
図5A】
図5A−5Bは、ペンダントユニットに結合された作動可能なアセンブリの例示的実施形態を図示する。
【
図5B】
図5A−5Bは、ペンダントユニットに結合された作動可能なアセンブリの例示的実施形態を図示する。
【
図6】
図6は、胸部インターフェースの例示的実施形態の断面図である。
【
図7】
図7は、胸部インターフェースの別の例示的実施形態の断面図である。
【
図8A】
図8Aは、開位置にある一体化された弁の例示的実施形態の断面図である。
【
図8B】
図8Bは、閉位置にある一体化された弁の例示的実施形態の断面図である。
【
図9A】
図9Aは、胸部インターフェース内に一体化されたセンサの例示的実施形態の断面図である。
【
図9B】
図9Bは、胸部インターフェース内に一体化されたセンサの別の例示的実施形態の断面図である。
【
図10】
図10は、ペンダントユニットおよびモバイル装置の例示的実施形態を図示する。
【
図11】
図11は、モバイル装置と通信中のペンダントユニットの例示的実施形態を図示する。
【
図12】
図12は、機械的変形可能部材のついた胸部インターフェースの例示的実施形態の断面図である。
【
図13】
図13は、機械的変形可能部材用の機械的駆動機の例示的実施形態の断面図である。
【
図14】
図14は、商用装置と比較した例示的実施形態のポンプ性能を図示するグラフである。
【
図15】
図15は、商用装置と比較した例示的実施形態のポンプ効率を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
開示された装置および方法の具体的な実施形態を、図面を参照しつつ以下に記述する。いかなる詳細な記述も、特定の構成要素、特徴、またはステップが本発明にとって絶対必要であることを示唆することを意図しない。当業者は、様々な特徴またはステップが、互いに置き換え、または組み合わせされ得ることを理解するであろう。
【0030】
本発明は、母乳の圧出および採取に関連して記述される。しかしながら、当業者は、それが限定を意図するものではなく、本明細書で開示される装置および方法が、睡眠時無呼吸の治療および/または他の遠隔圧力ニーズ等、圧力差の形成と伝達を必要とする他の用途にも使用し得ることを理解するであろう。
【0031】
図1は、本発明の例示的実施形態を図示する。ポンプ装置100は、胸部インターフェース105と、チューブ110と、チューブ110を通して胸部インターフェース105に操作可能に結合されたコントローラまたはペンダントユニット115とを含む。胸部インターフェース105は、胸部と係合し、それに対し流体密封を形成する弾力性があり馴染みやすいフランジ120と、採取容器125とを含む。本装置は、随意に、単一の胸部インターフェースのみを有してもよい。ペンダントユニット115は、ポンプ装置100の電源および駆動用機構を収容し、また、ポンプ装置100の制御、乳産出の定量化、他の装置との通信等、様々な機能のためのハードウェアを含む。チューブ110は、機械的なエネルギー入力等の好適なエネルギー入力を、ペンダントユニット115から胸部インターフェース105までの長い距離にわたって伝達する。胸部インターフェース105は、エネルギー入力を胸部に対する真空圧力に効率よく変換し、採取容器125内への乳の圧出を引き起こす。
【0032】
当業者は、本例示的実施形態の構成要素および特徴が、以下に示すいずれの本発明の実施形態の構成要素および特徴とも組み合わせ、または代替ができることを理解するであろう。同様に、本明細書で開示される他の実施形態の構成要素および特徴は、互いに代替または組み合わされ得る。
(液圧ポンプ装置)
【0033】
液圧システムは、必要とされるポンプ力を減らすことができ、そのため、ポンプ効率を維持しながらポンプ装置のサイズを減らすことができる。好適な実施形態では、ポンプ装置が、液圧ポンプ装置を利用して、乳の圧出および採取のため、胸部に対する圧力差を発生させることができる。
【0034】
例示的液圧ポンプ装置が、
図2および3に示される。
図2は、チューブ165によって胸部インターフェース160に流体的に結合された注射器155を有するポンプ装置150を図示する。注射器155は、三方弁170を通してチューブ165に結合される。胸部インターフェース160は、出口ポート175を含む。注射器155は、チューブ165内に含まれる流体180を、胸部インターフェース160内に収容された柔軟な部材に向けて、またはこれから離れるように駆動し、胸部からの乳の圧出に必要な圧力差を作り出す。
【0035】
図3は、ポンプ装置200の別の実施形態を図示する。作動可能なアセンブリ205は、アセンブリ筐体210と、駆動要素215と、ラジアルシール220と、シャフト222と、を含む。駆動要素215は、シャフト222を通してペンダントユニット115等のペンダントユニットに操作可能に結合される。チューブ225は、流体230を含み、作動可能なアセンブリ205および胸部インターフェース235に流体的に結合される。胸部インターフェース235は、インターフェース筐体240と、柔軟膜245と、貯蔵器250と、密封要素255と、圧出領域260と、排出ポート265とから成る。密封要素255は、変形可能部分270を含む。排出ポート265は、採取容器275に結合され、フラップ弁280を含む。
【0036】
作動可能なアセンブリ205は、たわみ管路であり得るチューブ内225に含まれる流体230を移動させる。流体230は、胸部インターフェース235内の貯蔵器250内を占め、柔軟膜245と結合される。柔軟膜245は、流体230から密封要素255の変形可能部分270に真空圧力を伝達する。胸部が密封要素255によって胸部インターフェース235と係合し流体的に密封されたとき、作動可能な要素215の移動が、柔軟膜245および変形可能部分270を通して、胸部に対する実質的な真空圧力を作り出し、その結果、圧出領域260中への母乳の圧出が引き起こされる。圧出された乳は、排出ポート265を通して採取容器275中に排出される。排出ポート265は、フラップ弁280を持つ構成になっており、圧出領域260内の真空圧力を維持しながら乳の通路を確保する。
【0037】
液圧ポンプ装置の流体は、非圧縮性流体等、任意の好適な流体とすることができる。多くの実施形態では、非圧縮性流体は、水または油であり得る。代わりに、流体は、空気等、任意の好適な気体とすることができる。液圧システム用の好適な非圧縮性流体およびガスは、当業者に知られている。
【0038】
当業者は、液圧ポンプ装置のいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴が、本明細書に記載される本発明のいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴とも組み合わせ、または置き換えができることを理解するであろう。
(作動機構)
【0039】
当業者に知られる多くの作動機構が、作動可能なアセンブリ205に利用されることができる。作動可能なアセンブリ205は、ピストンアセンブリ、ダイアフラムポンプ等のポンプ、または任意の他の好適な作動機構とすることができる。作動可能なアセンブリ205の最適な構成は、真空要件、サイズ、電力、およびポンプ装置200のその他の必要性、ならびに粘度、生体適合性、および流体寿命要件等の流体230の特性等、多くの要因によって異なり得る。
【0040】
図3は、作動可能なアセンブリ205がピストンアセンブリで、駆動要素215がピストンである例示的実施形態を図示する。作動可能なアセンブリ205は、流体230の不要な滲出を防ぎ、流体230の駆動を可能にするようにアセンブリ筐体210に対して密封を行うOリング等のラジアルシール220を含む。
【0041】
図4は、一対のピストン305を含む作動可能なアセンブリ300の別の例示的実施形態を図示する。
【0042】
好適な実施形態では、作動可能なアセンブリが、ペンダントユニット115内の駆動機構等、好適な駆動機構によって動く駆動要素を含む。多くの駆動機構が当業者に知られている。例えば、駆動要素215等の駆動要素は、モータによって電気機械的に作動されてもよく、レバー等の好適なユーザー・オペレータインターフェースによって手動で作動されてもよい。当業者に知られる様々な駆動モードが用いられることができる。特に、本明細書に記載されるような例示的液圧ポンプ装置の実施は、液圧システムにより低減された力の要件により、直接駆動やソレノイド等の好適な駆動モードの使用を可能にする。
【0043】
図4の例示的実施形態を参照すると、ピストン305は、クランクシャフト315へのカップリング310を含む。クランクシャフト315は、ベルト駆動325を通してモータ320に操作可能に結合されている。クランクシャフト315は、両方の胸部に同時に真空圧力を適用するように一対のピストン305を同じストロークタイミングで駆動するが、この特徴は、乳の産出増大に望ましい。代わりに、クランクシャフト315は、交互またはオフセットストロークサイクル等の任意の好適なストロークタイミングで一対のピストン305を駆動できる。
【0044】
駆動機構は、局部電池またはACアダプタ等の任意の好適な電源で動かすことができる。駆動機構は、ペンダントユニット115内に配置された内臓電子装置等のハードウェアにより制御することができる。
【0045】
図5は、解放自在なカップリング355を含む作動可能なアセンブリ350の例示的実施形態を図示する。好ましくは、作動可能なアセンブリ350が、ペンダントユニット360と、そこに収納される駆動機構とに解放自在に結合される。カップリングは、機械的カップリング、または当業者に公知の任意の好適な簡易脱着機構であり得る。解放自在に結合された設計は、構成の柔軟性とポンプ装置の使用とを可能にする。例えば、使い心地は、様々な胸部サイズと適合する異なる大きさの胸部インターフェースによって改良され得る。加えて、この特徴は、取り換え可能な胸部インターフェースとともに一般のポンプ装置の使用を可能にし、病原体の拡散リスクを低減する。さらに、解放自在カップリングは、ポンプ装置の個々の部品の容易な交換を可能にする。
【0046】
当業者は、作動機構のいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴も、本明細書に記述されるような本発明のいずれの実施形態の構成要素および特徴と組み合わせまたは代替できることを理解するであろう。
(柔軟膜)
【0047】
図3に示される実施形態等、多くの実施形態において、柔軟膜245は、胸部インターフェース235内に位置し、少なくともその一部を覆うように配置されており、インターフェース筐体240と柔軟膜245との間に貯蔵器250を形成する。好ましくは、柔軟膜245は、流体230が作動可能なアセンブリ205によって貯蔵器250から移動されたときに形成される負圧にさらされたとき、実質的に変形する。柔軟膜245の変形量は、多くの要因(例えば、壁厚、ゴム硬さ、表面積)によって制御することができ、ポンプ装置(例えば、ポンプ電力、真空要件)に基づいて最適化できる。
【0048】
図6は、特定の厚さとゴム硬さとを有する例示的柔軟膜370を図示する。
【0049】
図7は、表面積を増大させる波形の特徴380が付いた柔軟膜375の別の実施形態を図示する。
【0050】
柔軟膜に好適な材料は、当業者に知られている。多くの実施形態では、柔軟膜は、シリコーン、PEBAX等のポリエーテルブロックアミド、およびネオプレン等のポリクロロプレン等の結合流体からの圧力にさらされたとき、膨張および収縮するように設計された材料で作ることができる。代わりに、柔軟膜は、ステンレス鋼、ニチノール、硬質ポリマー、または硬質エラストマー等の実質的剛体材料から作られ得る。これらの実施形態では、剛体材料が、材料の降伏点を超えない柔軟膜の実質的な変形を可能にする応力および/またはひずみ分散要素とともに設計されるであろう。
【0051】
図8Aおよび8Bは、出口弁405が柔軟膜410に一体化され、圧出された乳の流れを、出口ポート415を通して制御する胸部インターフェース400の好適な実施形態を図示する。出口弁405は、
図8Aに示されるように、柔軟膜410が緩和されたときに開かれて流体の流れを可能にし、また、
図8Bに示されるように、柔軟膜410が変形されたときに閉じられて流体の流れを阻止する。出口弁405は、抽出の間には圧出領域420に実質的な真空圧力が存在できるようにする一方、ポンプストロークの休止状態の間は、乳が排出できるようにする。多くの従来型胸部ポンプバルブは、圧力差のみで機能する一方、出口弁405は、好ましくは、柔軟膜410の機械的動きにも機能するように構成されることができる。一体化された出口弁405に、本明細書に記載されるような機械的機能を組み込むことで、真空形成の間、胸部インターフェース400の密封が改良され得る。さらに、出口弁405のように、柔軟膜410内に一体的に形成された出口弁を使用すると、洗浄すべき部品の数が減る。
【0052】
当業者は、柔軟膜のいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴が、本明細書に記述されるような本発明のいずれの実施形態の構成要素および特徴とも組み合わせまたは代替できることを理解するであろう。
(乳採取および定量化システム)
【0053】
図3を参照すると、圧出された乳は、柔軟膜245内の出口ポート265を通して採取容器275中に排出される。採取容器275は、ビンや袋等の任意の好適な容器であり得る。多くの実施形態で、採取容器275は、柔軟膜245に、取り外し可能に結合されている。採取容器275は、延長配管等の任意の好適な装置を介して、直接または離れて結合されることができる。
【0054】
多くの場合、乳産出の量等、乳圧出および採取に関する様々なデータを追跡することが望まれ得る。現在のところ、乳産出の追跡は、手動測定と記録管理によって一般に行われている。本明細書に記載される本装置の例示的実施形態は、改良された利便性、効率、および精度のため、乳産出を自動測定し追跡するデジタルに基づく手段を提供し得る。
【0055】
図9Aおよび9Bは、1つまたはそれより多い一体化されたセンサ455の付いた胸部インターフェース450の例示的実施形態を図示する。センサ455は、好ましくは、フラップ弁460内に位置されるが、出口弁465または流体の流れを監視するのに好適な任意の他の場所に位置されてもよい。好適な実施形態では、少なくとも1つのセンサ455が、流体の流れによって開かれる弁に一体化され、弁が開いている延べ時間を検知する。センサ信号は、流体の流れを定量するように問い合わられ得る。好適なセンサは、加速度計、ホール効果センサ、およびフォトダイオード/LEDセンサ等が当業者に知られている。胸部インターフェースは、乳産出を定量する単一センサまたは多重センサを含むことができる。
【0056】
図10は、乳圧出データがディスプレイスクリーン505に表示されたペンダントユニット500の例示的実施形態を図示する。多くの実施形態では、ペンダントユニット500は、乳圧出に関するデータを採取し、処理し、貯蔵し、表示する。好ましくは、ペンダントユニット500は、モバイルフォン510等の第2の装置にデータを伝送することができる。
【0057】
図11は、ペンダントユニット500とモバイルフォン510との間のデータ伝送515を図示する。装置間の通信およびデータ伝送の好適な方法は、Bluetooth(登録商標)や近距離無線通信等が当業者に知られている。
【0058】
例示的実施形態では、ペンダントユニット500が、モバイルフォン510と通信し、圧出体積、持続時間、および日付等の乳圧出データを伝送する。モバイルフォン510は、圧出データを採取して集計し、それを対話式フォーマットで表示するモバイルアプリケーションを含む。好ましくは、モバイルアプリケーションは、ライフスタイルの選択、食生活、乳産出増大のための方略等の情報をユーザがオーバーレイできるようにする追加的な特徴を含み、このような情報と乳産出統計との比較を容易にする。加えて、ペンダントユニット500が、ポンプの使用回数に関する情報をモバイルフォン510に送り、モバイルアプリケーションが、ポンプ動作がいつ起こるかを識別し、所望のポンプ動作回数にリマインダを設定できるようにすることができる。このようなリマインダは、ポンプセッションの忘れ防止に役立ち、その結果、乳腺炎等の合併症の発生率を低減することができる。
【0059】
当業者は、乳採取および定量化システムのいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴が、本明細書に記述されるような本発明のいずれの実施形態の構成要素および特徴とも組み合わせまたは代替できることを理解するであろう。
(機械的ポンプ装置)
【0060】
図12は、柔軟膜の代わりに機械的変形可能部材605が用いられ得る、胸部インターフェース600の代替的実施形態を図示する。機械的変形可能部材605は、本明細書に記載の柔軟膜に用いられるのと同様な手法で構成されることができる。機械的変形可能部材605は、引張要素610に結合される。ある場合には、引張要素610は、軸荷重吸収部材615内に配置される。軸荷重吸収部材615は、チューブ620内に配置される。好ましくは、引張要素610が、軸荷重吸収部材615内に同心円状に配置され、軸荷重吸収部材615が、チューブ620内に同心円状に配置される。引張要素610の代替的構成では、軸荷重吸収部材615およびチューブ620を使用することもできる。
【0061】
図13は、作動可能なアセンブリ630のアセンブリ筐体635内の駆動要素625に結合された引張要素610を図示する。駆動要素625は、シャフト640を介して、ペンダントユニット内に収納された駆動機構等の駆動機構に操作可能に結合される。チューブ620内の軸荷重吸収部材615は、アセンブリ筐体635に固定的に結合される。駆動要素625の移動が、引張要素610を通して機械的変形部材605に張力を伝達し、胸部に対し真空圧力を形成する。
【0062】
引張要素610は、ワイヤ、コイル、またはロープ等の任意の好適な装置であることができ、また金属、ポリマー、またはエラストマー等の任意の好適な材料で作られることができる。軸荷重吸収部材615は、金属やポリマー等、軸方向に剛い任意の好適な材料で作られることができ、チューブやコイル等、軸方向に剛い任意の好適な形状で構成されることができる。
【0063】
当業者は、機械的ポンプ装置のいずれの例示的実施形態の構成要素および特徴も、本明細書に記述されるような本発明のいずれの実施形態の構成要素および特徴と組み合わせまたは代替できることを理解するであろう。
(実験データ)
【0064】
図14および15は、商用の胸部ポンプ装置および本発明の例示的実施形態から得られた実験的ポンプ動作のデータを図示する。例示的実施形態は、ポンプ動作に非圧縮性流体を用い、4ccの最大液圧流体体積を有し、一方、商用装置は、空気ポンプ動作を用い、114ccの最大体積を有した。
【0065】
図14は、1行程あたりに発生される真空圧力で定量されたポンプ性能のグラフを図示する。例示的実施形態については、ポンプによって移動された流体体積の1cc、2cc、3cc、および4ccについて圧力測定を行い、行程番号は体積ccに対応する。商用装置については、ポンプによって移動された流体体積の46cc、57cc、68cc、80cc、91cc、103cc、および114ccをそれぞれ代表する真空調整ゲージに沿った7つの等間隔位置の1つにポンプを設定して測定が行われ、行程番号が位置番号に対応する。曲線700は、例示的実施形態に対応し、曲線705は、商用装置に対応する。例示的実施形態は、商用装置に比べ移動体積あたりにより高レベルな真空圧力を発生させ、最高真空圧力は、それぞれ、−240.5mmHgおよび−177.9mmHgであった。
【0066】
図15は、流体移動の最大体積当たりの最大真空圧力で測定されたポンプ効率のグラフを図示し、棒710は、例示的実施形態に対応し、棒715は、商用装置に対応する。例示的実施形態は、商用装置に比べて42倍のポンプ効率増加を実証し、効率は、それぞれ、−71.1mmHg/ccおよび−1.7mmHg/ccであった。
【0067】
本発明の好適な実施形態が、本明細書に示され記述されたが、このような実施形態が、例としてのみ提示されることは当業者にとって当然である。多くの変形、変更、および代替が、本発明から逸脱することなく当業者に想起されることであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態への様々な代替が、本発明の実施に使われ得るものと理解されるべきである。以下の請求項は、本発明の範囲を画定することを意図したもので、これら請求項の範囲内にある方法、構成、およびそれらの均等物は、それによって包含されることを意図する。
【国際調査報告】