(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、細胞の標的亜集団を検出、富化、培養、同定、単離、及び/又は特性評価する方法、組成物、キット、及びシステムを提供する。本発明は、将来的に遺伝学、プロテオミクス及び形態学の分析に使用され得る標的細胞亜集団を富化する規定された環境条件を利用する。上記方法は、例えば、サイズ、形態学及び動態学的特性等の物理的特性に基づいて細胞を特性評価する画像取得及び分析ソフトウェアを使用することができる。
前記標的細胞亜集団の前記メンバーによって1又は複数の形態学的特徴及び/又は動態学的特性の表示の際に前記標的細胞亜集団のメンバーを同定する工程を更に含み、前記1又は複数の形態学的特徴及び/又は動態学的特性がコロニー形成、増殖、非標的細胞の表面積と比べて大きな表面積、非標的細胞の前記基材に対する付着と比べて前記基材への付着の増加、急速な細胞分裂、及び多核細胞化からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
前記標的細胞亜集団が、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、及び上皮前駆細胞からなる群から選択される細胞を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
前記CTCsが、急性白血病細胞、急性T細胞白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞、骨髄芽球性白血病細胞、前骨髄球性白血病細胞、骨髄単球性白血病細胞、単球性白血病細胞、赤白血病細胞、慢性白血病細胞、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病細胞、慢性リンパ球性白血病細胞、真性多血症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症細胞、重鎖病細胞、肉腫細胞、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、去勢抵抗性前立腺癌細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、皮脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支細胞、腎細胞癌細胞、肝癌細胞、胆管癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮癌細胞、神経膠腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、黒色腫細胞、神経芽細胞、網膜芽腫細胞、子宮内膜癌細胞、非小細胞肺癌細胞、頭頸部癌細胞、又は腎臓癌細胞を含む、請求項5に記載の方法。
前記基材がコーティングを含み、前記コーティングがGOL基材、GEL基材、1又は複数の層のフィーダー細胞、及びそれらの任意の組み合せからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
前記条件が、平板培養培地、R型長期成長培地、DF型長期成長培地、D型長期成長培地、MEF−順化培地、及びそれらの任意の組み合せからなる群から選択される細胞培養培地中で前記標的細胞亜集団の前記メンバーを培養することを更に含む、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
前記条件が、EGF、ヒドロコルチゾン、プロゲステロン、ジヒドロテストステロン及び/又はそれらの任意の組み合せを含む細胞培養培地中で前記標的細胞亜集団の前記メンバーを培養することを更に含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
前記低酸素誘導因子が、低酸素誘導因子1α(HIF−1α)、低酸素誘導因子−1β(HIF−1β)、低酸素誘導因子2α(HIF−2α)、低酸素誘導因子−2β(HIF−2β)、低酸素誘導因子−3α(HIF−3α)、低酸素誘導因子−3β(HIF−3β)、又はそれらの任意の組み合せを含む、請求項34に記載の方法。
前記低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤がベクターを含み、前記ベクターが前記低酸素誘導因子をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項34〜36のいずれかに記載の方法。
前記フィーダー細胞が、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)、及びマウス胚線維芽細胞(MEF)からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
前記コンピュータ可読媒体が、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、及び血管内皮前駆細胞(EPCs)を自動的に分類するように構成される、請求項46に記載の方法。
前記コンピュータ可読媒体が前記標的亜集団の細胞の物理的特性に基づいてパラメーターを統合するように構成され、前記パラメーターが細胞の外形サイズ、細胞形状、細胞運動、細胞核サイズ、及び細胞分裂からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
細胞培養基材を備えた細胞培養プレートであって、前記基材が標的細胞の前記基材への付着を促進するために選択され、前記標的細胞が付着性の生存細胞であり、前記基材が細胞外マトリクスタンパク質を含む、細胞培養プレート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様は、標的細胞亜集団の富化、同定、単離、及び/又は培養に関する。例えば、本発明は、不均一細胞集団から標的細胞亜集団を捕捉及び富化する方法であって、細胞の不均一集団に由来する細胞と基材とを接触させること、及び細胞の標的亜集団の富化を可能とするのに十分な時間に亘って富化培地中で細胞をインキュベートし、細胞の標的亜集団をそれらの物理的及び動態学的特性に基づいて単離することを含む方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
また、本発明は、不均一細胞集団から細胞の標的亜集団を捕捉、富化、及び同定する方法であって、不均一細胞集団に由来する細胞と基材とを接触させること、細胞の標的亜集団の富化を可能とするのに十分な時間に亘って富化培地中で細胞の標的亜集団をインキュベートすること、標的細胞亜集団の画像を経時的に得るための器具を使用すること、及び画像の分析を行うためのソフトウェアを使用することであって、ここで、上記ソフトウェアは、細胞の物理的及び動態学的特性に基づいて自動的に細胞を分類することができる、ソフトウェアを使用することを含む方法を提供する。或る実施形態では、ソフトウェアは、物理的特性に基づくパラメーターを統合し、ここで、上記パラメーターは、全体的な細胞サイズ、細胞の外形サイズ、細胞形状、細胞運動、細胞核サイズ、及び細胞分裂を含む群から選択される。或る実施形態では、ソフトウェアは細胞の蛍光標識を検出する。
【0007】
また、本発明は、ヒト被験体からCTCsを捕捉及び富化する方法であって、ヒトから採血すること、血液中に含有される細胞を基材と接触させること、CTCsの富化を可能とするのに十分な時間に亘って培地中で細胞をインキュベートすること、及びCTCsの画像分析及びCTCsの分類を自動的に行う器具を使用することであって、ここで、癌患者に対する治療を指示するために上記分類が使用される、器具を使用することを含む方法を提供する。
【0008】
上述のいずれかの方法の実施において、標的細胞亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、癌細胞及び上皮前駆細胞からなる群から選択され得る。
【0009】
上述のいずれかの方法の実施において、不均一細胞集団は、体液、又はその派生物で構成され得る。或る実施形態では、不均一細胞集団は、体液、又はその派生物、及び標識することができる異なる供給源に由来する細胞で構成される。或る実施形態では、標的細胞亜集団に由来する1又は複数の細胞を単離し、培養する。
【0010】
上述のいずれかの方法の実施において、基材を、GOL基材、GEL基材及び細胞を含む群から選択することができる。或る実施形態では、基材の構成を、単層、二層、中間層(複数の場合がある)及び逆位構成を含む群から選択する。
【0011】
上述のいずれかの方法の実施において、富化培地を、平板培養培地、R型長期成長培地、DF型長期成長培地、D型長期成長培地、MEF−順化培地、及びそれらの任意の組み合せを含む群から選択する。或る実施形態では、1又は複数の個々の細胞を顕微操作を使用して単離する。
【0012】
上述の方法の或る実施形態では、標的細胞集団に由来する1又は複数の細胞を顕微操作を使用して単離する。
【0013】
本発明の上述の方法のいずれかを、様々な臨床適用において使用することができる。或る実施形態では、本発発明の方法を使用して患者をモニターし、癌の存在を調査する。或る実施形態では、再発基準で連続的な血液検査を行って癌の再発見込みを予測する。或る実施形態では、単離した細胞を、培養して薬理学的アッセイに使用し、癌患者に対する治療の最良の形態を決定してもよい。或る実施形態では単離した細胞を増殖させて細胞培養物を作製する。或る実施形態では、細胞培養物を癌の研究に使用する。或る実施形態では、細胞の分類は、癌患者の診断、予後、又はセラノシスを指示する。或る実施形態では、上記方法は、ネットワークにより分類に関連するデータを伝送することを含む。
【0014】
また、本発明は、1又は複数のプロセッサによる遂行に際し、上述の方法のいずれかを実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0015】
また、本発明は、請求項10に記載の方法を実行するシステムであって、試料に関連するデータセットを記憶する記憶メモリ、記憶メモリに通信可能に連結されたプロセッサ及び、データセットを含むシステムを提供する。
【0016】
また、本発明は、生体試料に由来する不均一細胞集団から標的細胞亜集団の選択的富化のための方法であって、不均一細胞集団と基材を接触させること、及び上記標的細胞亜集団の成長を可能とするのに十分な条件下で上記不均一細胞集団をインキュベートすることであって、ここで、上記条件は、陽圧条件及び/又は低酸素条件下で上記不均一細胞集団をインキュベートすることを含み、上記インキュベートが結果として上記標的細胞亜集団の選択的富化を生じる、インキュベートすることを含む方法を提供する。
【0017】
或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーによる1又は複数の形態学的特徴及び/又は動態学的特性の提示によって、標的細胞亜集団のメンバーを同定することを更に含み、ここで、1又は複数の形態学的特徴及び/又は動態学的特性は、コロニー形成、増殖、非標的細胞の表面積と比較して大きな表面積、非標的細胞の基材への付着と比較した基材への付着の増加、急速な細胞分裂及び多核細胞化からなる群から選択される。或る実施形態では、同定は、抗体又はポリヌクレオチドマーカーの使用を含まない。
【0018】
或る実施形態では、標的細胞亜集団は、初代細胞を含む。或る実施形態では、標的細胞亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、癌細胞及び上皮前駆細胞からなる群から選択される細胞を含む。或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーは、CTC又はCSCである。或る実施形態では、CTCは転移性CTCである。或る実施形態では、CTCは生存CTCである。或る実施形態では、CTCは、急性白血病細胞、急性t細胞白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞、骨髄芽球性白血病細胞、前骨髄球性白血病細胞、骨髄単球性白血病細胞、単球性白血病細胞、赤白血病細胞、慢性白血病細胞、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病細胞、慢性リンパ球性白血病細胞、真性多血症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症細胞、重鎖病細胞、肉腫細胞、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、去勢抵抗性前立腺癌細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、皮脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支細胞、腎細胞癌細胞、肝癌細胞、胆管癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮癌細胞、神経膠腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、網膜芽腫細胞、子宮内膜癌細胞、非小細胞肺癌細胞、頭頸部癌細胞、又は腎臓癌細胞である。或る実施形態では、非標的初代細胞亜集団は、白血球、老化上皮細胞、線維芽細胞、非生存細胞、又は断片化した細胞を含む。
【0019】
或る実施形態では、生体試料は体液又はその派生物を含む。或る実施形態では、体液は、血液、血漿、血清、リンパ、唾液、尿、汗、又は腹水から選択される。或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーは、体液又はその派生物1ml当たり1個以下の標的細胞の濃度で存在する。或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーは、体液又はその派生物1ml当たり0.8個以下の標的細胞の濃度で存在する。或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーは、体液又はその派生物1ml当たり0.6個以下の標的細胞の濃度で存在する。或る実施形態では、生体試料は固形組織試料を含む。
【0020】
或る実施形態では、基材はコーティングを含み、ここで、コーティングは、GOL基材、GEL基材、1又は複数のフィーダー細胞層、及びそれらの任意の組み合せからなる群から選択される。或る実施形態では、基材の構成は、単層構成、二層構成、中間層(複数の場合がある)構成、及び逆位構成からなる群から選択される。
【0021】
或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーを個別に単離することを更に含む。或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーを個別に単離し、培養することを含む。或る実施形態では、単離は、顕微操作器具の使用を含む。
【0022】
或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーを2週間に亘って細胞培養物として培養することを含む。
【0023】
或る実施形態では、低酸素条件は、10%未満のO
2レベルの下で培養することを含む。或る実施形態では、O
2レベルは1%である。
【0024】
或る実施形態では、陽圧条件は、14.7PSIAを超える加圧条件下で上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、陽圧条件は、15PSIA以上の加圧条件下で上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、陽圧条件は、15.7PSIA以上の加圧条件下で上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、陽圧条件は、16.7PSIA以上の加圧条件下で上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、陽圧条件は、19.7PSIAの加圧条件下で上記メンバーを培養することを含む。
【0025】
或る実施形態では、条件は、平板培養培地、R型長期成長培地、DF型長期成長培地、D型長期成長培地、MEF−順化培地、及びそれらの任意の組み合せからなる群から選択される細胞培養培地中で標的細胞亜集団のメンバーを培養することを含む。或る実施形態では、条件は、EGF、ヒドロコルチゾン、プロゲステロン、ジヒドロテストステロン、及び/又はそれらの任意の組み合せを含む細胞培養培地中で標的細胞亜集団のメンバーを培養することを更に含む。
【0026】
或る実施形態では、条件は、細胞の表面張力を調節する化合物を含む細胞培養培地中で上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、上記化合物はRhoキナーゼ阻害剤である。或る実施形態では、化合物は、
【化1】
【0027】
からなる群から選択される。
【0028】
或る実施形態では、条件は、上記メンバーにおいて低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤と共に上記メンバーを培養することを含む。或る実施形態では、低酸素誘導因子は、低酸素誘導因子1α(HIF−1α)、低酸素誘導因子−1β(HIF−1β)、低酸素誘導因子2α(HIF−2α)、低酸素誘導因子−2β(HIF−2β)、低酸素誘導因子−3α(HIF−3α)、及び低酸素誘導因子−3β(HIF−3β)、又はそれらの任意の組み合せを含む。或る実施形態では、低酸素誘導因子は、HIF−1αを含む。或る実施形態では、低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤はベクターを含み、ここで、ベクターは低酸素誘導因子をコードするポリヌクレオチドを含む。或る実施形態では、ベクターは発現ベクターである。或る実施形態では、低酸素誘導因子は、配列番号1に対して少なくとも70%以上の相同性を含むアミノ酸配列を含む。
【0029】
或る実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2に対して少なくとも70%以上の相同性又は相補性を含む。
【0030】
上述のいずれかの方法の実施において、上記方法は、細胞培養培地をフィーダー細胞と接触することを含んでもよい。或る実施形態では、フィーダー細胞は、培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)、及びマウス肺線維芽細胞(MEF)からなる群から選択される。
【0031】
本明細書に記載される方法のいずれかの或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーをシーケンシングすることを含む。或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーにおける1又は複数の遺伝子の発現を特定することを含む。或る実施形態では、上記方法は、標的細胞亜集団のメンバーにおける1又は複数のタンパク質の発現を特定することを含む。
【0032】
或る実施形態では、同定は、メンバーの画像を得ること、及びそのメンバーを標的細胞亜集団に属するものとして自動的に分類するためのコンピュータ可読媒体を使用することを含む。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、癌細胞及び上皮前駆細胞を自動的に分類するように構成される。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、及び血管内皮前駆細胞(EPCs)を自動的に分類するように構成される。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、細胞の標的亜集団の物理的特性に基づくパラメーターを統合するように構成され、ここで、上記パラメーターは、からなる群から選択される。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は細胞の蛍光標識を検出するように構成される。
【0033】
また、本発明は、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、被験体に由来する生体試料中の標的細胞の検出に際して、被験体に抗癌剤を投与することを含み、ここで、上記標的細胞が本明細書に記載される方法によって検出される、癌を治療する方法を提供する。
【0034】
また、本発明は、抗がん剤の投与を必要とする被験体に抗がん剤を投与する方法であって、複数の時間点で被験体に抗がん剤を投与すること、投与の少なくとも第1及び第2の時間点で被験体から得られた生体試料に由来する標的細胞を分析することであって、ここで、上記分析が先行する請求項のいずれか1つに記載の方法を含む、分析すること、分析に基づいて投与のために抗凝集剤の用量を調整すること及び/又は異なる抗凝集剤を選択することを含む方法を提供する。
【0035】
また、本発明は、転移性癌を発症していない被験体において転移性癌の発症見込みの増加を検出する方法であって、本明細書に記載される方法を使用して被験体に由来する不均一細胞集団から標的細胞亜集団を単離すること、標的細胞亜集団を検出すること、及び検出に際して、被験体を転移性癌を発症する見込みが増加していると指定することを含む方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、抗癌治療法を開発する方法であって、本明細書に記載される方法を使用して標的細胞亜集団を培養すること、標的細胞亜集団と試験薬剤を接触させること、標的細胞亜集団の生存能及び/又は成長をアッセイすること、並びに標的細胞亜集団の生存能及び/又は成長が、試験薬剤と接触していない標的細胞亜集団と比較して減少される場合に、試験薬剤を抗癌治療法として選択することを含む方法を提供する。
【0037】
また、本発明は、個別化された疾患治療法を必要とする患者に対して個別化された疾患治療法を選択する方法であって、本明細書に記載される方法を使用して標的細胞亜集団を培養すること、標的細胞亜集団のメンバーに由来する核酸をシーケンシングして標的細胞亜集団のメンバーの遺伝子プロファイルを作製すること、及び標的細胞亜集団のメンバーの遺伝子プロファイルに基づいて被験体に対して個別化された疾患治療法を選択することを含む方法を提供する。或る実施形態では、上記方法は、被験体に個別化された疾患治療法を提案することを更に含む。或る実施形態では、個別化された疾患治療法は、個別化された癌治療法である。
【0038】
また、本発明は、閉鎖環境チャンバを備えた細胞培養インキュベータを提供し、ここで、細胞培養インキュベータは(i)閉鎖環境チャンバの気体組成、(ii)閉鎖環境チャンバの使用者によって制御される大気圧、及び(iii)閉鎖環境チャンバの内部周囲温度を維持するように構成される。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは1又は複数の制御ユニットを備え、ここで、1又は複数の制御ユニットは、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも1つを維持するように構成される。或る実施形態では、1又は複数の制御ユニットは、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも2つを維持するように構成される。或る実施形態では、1又は複数の制御ユニットは、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度を維持するように構成される。或る実施形態では、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも1つを、非標的初代細胞亜集団と比較して標的初代細胞亜集団の選択的増殖用に構成する。或る実施形態では、選択的増殖は、非標的初代細胞亜集団の増殖と比較して2倍の標的初代細胞亜集団の増殖の増加により証明される。或る実施形態では、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも1つを、非標的初代細胞亜集団と比較して標的初代細胞亜集団の選択的付着用に構成する。或る実施形態では、選択的付着は、非標的初代細胞亜集団の付着と比較して2倍の標的初代細胞亜集団の付着の増加により証明される。或る実施形態では、気体組成、使用者によって制御される大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも1つを、非標的初代細胞亜集団のコロニー形成と比較して、標的初代細胞の選択的コロニー形成を促進するように構成する。或る実施形態では、選択的コロニー形成は、非標的初代細胞亜集団のコロニー形成と比較して2倍の標的初代細胞亜集団のコロニー形成の増加により証明される。或る実施形態では、コロニー形成は二次元及び/又は三次元のコロニー形成である。
【0039】
或る実施形態では、標的初代細胞亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、癌細胞及び上皮前駆細胞からなる群から選択される。或る実施形態では、標的初代細胞亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、及び血管内皮前駆細胞(EPCs)から選択される。或る実施形態では、標的初代細胞亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、初代胎児細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、及び血管内皮前駆細胞(EPCs)からなる群から選択される。或る実施形態では、標的初代細胞亜集団は、CTCs及びCSCsからなる群から選択される。或る実施形態では、循環腫瘍細胞(CTC)は、急性白血病細胞、急性t細胞白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞、骨髄芽球性白血病細胞、前骨髄球性白血病細胞、骨髄単球性白血病細胞、単球性白血病細胞、赤白血病細胞、慢性白血病細胞、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病細胞、慢性リンパ球性白血病細胞、真性多血症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症細胞、重鎖病細胞、肉腫細胞、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、去勢抵抗性前立腺癌細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、皮脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支細胞、腎細胞癌細胞、肝癌細胞、胆管癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮癌細胞、神経膠腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、網膜芽腫細胞、子宮内膜癌細胞、非小細胞肺癌細胞、頭頸部癌細胞、又は腎臓癌細胞である。或る実施形態では、非標的初代細胞亜集団は、白血球、老化上皮細胞、線維芽細胞、非生存細胞、又は断片化した細胞を含む。
【0040】
或る実施形態では、気体組成は、0.1%〜20%のO
2レベルを含む。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、5%以下の閉鎖環境チャンバのO
2レベルを維持する。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、2%以下の閉鎖環境チャンバのO
2レベルを維持する。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、1%以下の閉鎖環境チャンバのO
2レベルを維持する。
【0041】
或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバの使用者によって制御される大気圧を15.7PSIA以上に維持する。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバの使用者によって制御される大気圧を16.7PSIA以上に維持する。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバの使用者によって制御される大気圧を19.7APSIAに維持する。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、インレット気圧を制御することにより大気圧を維持する。
【0042】
或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、1又は複数のユーザーインターフェースを備える。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者が気体組成を制御できるように構成される。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者がO
2レベルを制御できるように構成される。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者が大気圧を制御できるように構成される。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者に気体組成の表示を提供するように構成される。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者にO
2レベルの表示を提供するように構成される。或る実施形態では、1又は複数のユーザーインターフェースは、使用者に大気圧の表示を提供するように構成される。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、(iv)閉鎖環境チャンバの内部湿度を維持するように構成される。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは棚を備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは圧力センサを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバはO
2センサを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは酸素除去触媒を備える。
【0043】
或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、滅菌ユニットを備える。或る実施形態では、滅菌ユニットは、UV滅菌ユニットである。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、加圧ドアを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、使用者によって制御されるO2レベルと±0.5%よりも大きく異なる閉鎖環境チャンバのO
2レベルの検出に際して、検出可能なアラームを提供するセンサを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、使用者によって制御される大気圧と±0.5%よりも大きく異なる閉鎖環境チャンバの大気圧の検出に際して、検出可能なアラームを提供するセンサを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、閉鎖環境チャンバの大気圧レベルを表示するユーザーディスプレイを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、閉鎖環境チャンバのO
2レベルを表示するユーザーディスプレイを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、閉鎖環境チャンバのCO
2レベルを表示するユーザーディスプレイを備える。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、閉鎖環境チャンバの温度レベルを表示するユーザーディスプレイを備える。
【0044】
或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、6立法フィート以下の空間を占める。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、3.5立法フィート以下の空間を占める。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、2立法フィート以下の空間を占める。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、1.5立法フィート以下の空間を占める。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、1立法フィート以下の空間を占める。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバは、1立法フィート未満の空間を占める。
【0045】
或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバ内に細胞画像化システムを更に備える。或る実施形態では、細胞画像化システムは顕微鏡を備える。或る実施形態では、顕微鏡は倒立顕微鏡である。或る実施形態では、細胞画像化システムは顕微操作器具を備え、ここで、顕微操作器具は、標的細胞の単離を可能とするように構成される。或る実施形態では、細胞画像化システムは、制御可能にコンピュータシステムに連結され、ここで、コンピュータシステムは、本明細書に記載されるコンピュータ可読媒体を備える。或る実施形態では、細胞画像化システムは、生存細胞の画像化用に構成される。或る実施形態では、細胞画像化システムは、ハイコンテントスクリーニング分析用に構成される。
【0046】
また、本発明は、細胞培養基材を備えた細胞培養プレートを提供し、ここで、基材は基材への標的細胞の付着を促進するように選択され、ここで、標的細胞は付着性の生存細胞であり、基材は細胞外マトリクスタンパク質を含む。或る実施形態では、細胞培養プレートは、標的細胞が基材に付着される場合に標的細胞の長期培養を促進するように構成される。或る実施形態では、標的細胞は初代細胞である。或る実施形態では、初代細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)、癌幹細胞(CSC)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSC)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPC)、癌細胞及び上皮前駆細胞からなる群から選択される。或る実施形態では、初代細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)、癌幹細胞(CSC)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSC)、初代神経細胞、初代胎児細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、及び血管内皮前駆細胞(EPC)からなる群から選択される。或る実施形態では、循環腫瘍細胞(CTC)は、急性白血病細胞、急性t細胞白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞、骨髄芽球性白血病細胞、前骨髄球性白血病細胞、骨髄単球性白血病細胞、単球性白血病細胞、赤白血病細胞、慢性白血病細胞、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病細胞、慢性リンパ球性白血病細胞、真性多血症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症細胞、重鎖病細胞、肉腫細胞、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、去勢抵抗性前立腺癌細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、皮脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支細胞、腎細胞癌細胞、肝癌細胞、胆管癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮癌細胞、神経膠腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、網膜芽腫細胞、子宮内膜癌細胞、非小細胞肺癌細胞、頭頸部癌細胞、又は腎臓癌細胞である。或る実施形態では、非標的初代細胞亜集団は、白血球、老化上皮細胞、線維芽細胞、非生存細胞、又は断片化した細胞を含む。或る実施形態では、基材は正に帯電した分子を更に含む。或る実施形態では、正に帯電した分子は、ポリ−オルニチンである。
【0047】
また、本発明は、第1の細胞培養基材、及び少なくとも第2の細胞培養基材を備えた細胞培養プレートを提供し、ここで、第1の細胞培養基材は、第1の標的細胞亜集団の長期培養を促進するように構成され、ここで、少なくとも第2の細胞培養基材は、第2の標的細胞亜集団の長期培養を促進するように構成される。或る実施形態では、細胞培養プレートは少なくとも2つのウェルを備え、ここで、2つのウェルの第1は第1の細胞培養基材を備え、ここで、少なくとも2つのウェルの第2は、少なくとも第2の細胞培養基材を備える。或る実施形態では、第1の標的細胞亜集団及び/又は少なくとも第2の細胞培養亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、胎児細胞、幹細胞、成人幹細胞、免疫細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、血管内皮前駆細胞(EPCs)、癌細胞及び上皮前駆細胞からなる群から選択される。或る実施形態では、第1の標的細胞亜集団及び/又は少なくとも第2の細胞培養亜集団は、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、固形腫瘍に由来する細胞、造血幹細胞(HSCs)、初代神経細胞、初代胎児細胞、初代肝細胞、初代心筋細胞、及び血管内皮前駆細胞(EPCs)からなる群から選択される。或る実施形態では、循環腫瘍細胞(CTC)は、急性白血病細胞、急性t細胞白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞、骨髄芽球性白血病細胞、前骨髄球性白血病細胞、骨髄単球性白血病細胞、単球性白血病細胞、赤白血病細胞、慢性白血病細胞、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病細胞、慢性リンパ球性白血病細胞、真性多血症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症細胞、重鎖病細胞、肉腫細胞、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、去勢抵抗性前立腺癌細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、皮脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支細胞、腎細胞癌細胞、肝癌細胞、胆管癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮癌細胞、神経膠腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、髄膜腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、網膜芽腫細胞、子宮内膜癌細胞、非小細胞肺癌細胞、頭頸部癌細胞、又は腎臓癌細胞である。或る実施形態では、非標的初代細胞亜集団は、白血球、老化上皮細胞、線維芽細胞、非生存細胞、又は断片化した細胞を含む。或る実施形態では、基材は、GOL基材、GEL基材、1又は複数のフィーダー細胞層、又はそれらの任意の組み合せを含む。或る実施形態では、細胞培養プレートは、1ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1056ウェル、1536ウェル、又は3456ウェルを備える。或る実施形態では、第1の標的細胞亜集団は、転移性去勢抵抗性前立腺癌を含み、第1の基材は、アンドロゲン及び/又はアンドロゲン模倣物を含む。
【0048】
また、本発明はキットを提供する。或る実施形態では、キットは、本明細書に記載される細胞培養インキュベータと、標的細胞亜集団の培養における使用に関する指示書とを含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を15.7PSIA以上の大気圧に維持する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を16.7PSIA以上の大気圧に維持する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を19.7PSIA以上の大気圧に維持する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を10%以下のO
2レベルに維持する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を5%以下のO
2レベルに維持する指示を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を2%以下のO
2レベルに維持する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、インキュベータの閉鎖環境チャンバ内を1%以下のO
2レベルに維持する指示文を含む。
【0049】
また、本発明は、先行する請求項のいずれかに記載される基材を備えた細胞培養プレートと、標的細胞亜集団を培養するためのプレートの使用に関する指示書とを含むキットを提供する。或る実施形態では、指示書は、10%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、5%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、2%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、1%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、15.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、16.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、19.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。
【0050】
また、本発明は、好適な包装に細胞の表面張力を調節する化合物と、標的細胞亜集団の培養における使用のための化合物を含む細胞培養培地の調製に関する指示書とを含むキットを提供する。或る実施形態では、化合物はRhoキナーゼ阻害剤である。或る実施形態では、化合物は、
【化2】
【0051】
からなる群から選択される。
【0052】
また、本発明は、先行する請求項のいずれかに記載される細胞培養培地と、標的細胞亜集団を培養するための細胞培養の使用に関する指示書とを含むキットを提供する。或る実施形態では、指示書は、10%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、5%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、2%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、1%以下のO
2レベルで標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、15.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、16.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。或る実施形態では、指示書は、19.7PSIA以上の大気圧で標的細胞亜集団を培養する指示文を含む。
【0053】
また、本発明は、上記メンバーにおいて低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤と、標的細胞亜集団を培養するための薬剤の使用に関する指示書とを含むキットを提供する。或る実施形態では、低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤はベクターを含み、ここで、ベクターは、低酸素誘導因子をコードするポリヌクレオチドを含む。或る実施形態では、ベクターは発現ベクターである。或る実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2に対して少なくとも70%以上の相同性又は相補性を含む。
【0054】
或る実施形態では、低酸素誘導因子は、配列番号1に対して少なくとも70%以上の相同性を含むアミノ酸配列を含む。
【0055】
また、本発明は、1又は複数のプロセッサによる遂行に際して、本明細書に記載される方法によって記載されるような同定工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。例えば、本発明は、1又は複数の初代細胞の画像データを受け取るに際して、以下の工程、すなわち、画像データから1又は複数の初代細胞のサイズを決定する工程、及びそのサイズが腫瘍に由来しない細胞よりも少なくとも1.5倍大きい場合にその初代細胞を腫瘍に由来すると分類する工程であって、ここで、1又は複数の初代細胞が生体試料から得られ、ここで、1又は複数の初代細胞を標的細胞亜集団の成長を可能とするのに十分な条件下で培養し、ここで、その条件が陽圧条件及び/又は低酸素条件下で1又は複数の初代細胞をインキュベートすることを含む工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、分類に際して、生体試料が腫瘍細胞を含むと同定する工程を実行する。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、そのサイズが腫瘍に由来しない細胞の少なくとも2倍以上である場合に初代細胞を腫瘍に由来すると分類する工程を実行する。或る実施形態では、サイズは、少なくとも20μmの直径を含む。或る実施形態では、サイズは、少なくとも900μm2の表面積を含む。
【0056】
また、本発明は、生体試料から得られた1又は複数の初代細胞の画像データを受け取るに際して、以下の工程、すなわち、画像データから固体又は半固体の基材に付着した三次元コロニーの存在又は不在を検出する工程、及び三次元コロニーの存在の検出に際して、生体試料が腫瘍細胞を含んでいると分類する工程であって、ここで、1又は複数の初代細胞を標的細胞亜集団の成長を可能とするのに十分な条件下で培養し、ここで、上記条件が陽圧条件及び/又は低酸素条件下で1又は複数の初代細胞をインキュベートすることを含む工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0057】
また、本発明は、生体試料から得られた1又は複数の初代細胞の画像データを受け取るに際して、以下の工程、すなわち、画像データから複数の核を含む初代細胞の存在又は不在を検出する工程、及び複数の核含む初代細胞の存在の検出に際して、生体試料が腫瘍細胞を含んでいると分類する工程であって、ここで、1又は複数の初代細胞を標的細胞亜集団の成長を可能とするのに十分な条件下で培養し、ここで、上記条件が陽圧条件及び/又は低酸素条件下で1又は複数の初代細胞をインキュベートすることを含む工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、複数の核を含む初代細胞を腫瘍細胞と同定するように構成される。
【0058】
また、本発明は、生体試料から得られた1又は複数の初代細胞の画像データを受け取るに際して、以下の工程、すなわち、画像データから負の正味表面電荷を含む初代細胞の存在又は不在を検出する工程、及び負の正味表面電荷を含む初代細胞の存在の検出に際して、生体試料が腫瘍細胞を含んでいると分類する工程であって、ここで、負の正味表面電荷が、非腫瘍細胞の正電荷を有する固体又は半固体の基材に対する付着と比較した、初代細胞の正電荷を有する固体又は半固体の基材に対する付着の増加によって証明される工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。或る実施形態では、正電荷を有する固体又は半固体の基材は、細胞外マトリクスタンパク質を含む。或る実施形態では、細胞外マトリクスタンパク質は、ポリ−l−オルニチンである。
【0059】
また、本発明は、生体試料から得られた1又は複数の初代細胞の画像データを受け取るに際して、以下の工程、すなわち、画像データから急速に分裂する細胞の存在又は不在を検出する工程、及び急速に分裂する細胞の存在の検出に際して、生体試料が腫瘍細胞を含んでいると分類する工程であって、ここで、1又は複数の初代細胞を標的細胞亜集団の成長を可能とするのに十分な条件下で培養し、上記条件が陽圧条件及び/又は低酸素条件下で1又は複数の初代細胞をインキュベートすることを含む工程を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は急速に分裂する細胞を腫瘍細胞と同定するように構成される。或る実施形態では、画像データは、第1及び第2の時間点で得られた画像データを含む。或る実施形態では、第1及び第2の時間点は、3日以下の間隔であり、ここで、急速に分裂する細胞の存在は、第1と第2の時間点の間の細胞培養密度の2倍以上の増加により証明される。或る実施形態では、第1及び第2の時間点は2日以下の間隔である。或る実施形態では、急速に分裂する細胞の存在は、第1と第2の時間点の間の細胞培養密度の30倍以上の増加により証明される。或る実施形態では、コンピュータ可読媒体は、腫瘍開始細胞として腫瘍細胞を分類するように構成される。
【0060】
コンピュータ可読媒体の上述の実施形態のいずれかでは、生体試料は流体試料である。或る実施形態では、流体試料は血液試料である。或る実施形態では、血液試料は全血試料である。或る実施形態では、生体試料は固形組織試料である。或る実施形態では、陽圧条件及び/又は低酸素条件は、先行する請求項のいずれかにより記載される通りである。
【0061】
また、本発明は、試料に関連するデータセットを記憶する記憶メモリ、記憶メモリに通信可能に連結されたプロセッサであって、ここで、プロセッサが本明細書に記載されるコンピュータ可読媒体を備える、プロセッサ、及びデータセットを備えたコンピュータシステムを提供する。或る実施形態では、コンピュータシステムは、データセットを受け取るように構成されたコンピュータ、及びシステムからコンピュータにデータセットを転送するように構成されたネットワークを更に備える。
【0062】
また、本発明は、細胞から画像データを産生するように構成された顕微鏡、及びその顕微鏡から画像データを受け取るように構成されたコンピュータシステムであって、ここで、顕微鏡が本明細書に記載されるコンピュータ可読媒体を備える、コンピュータシステムを備える細胞画像化システムを提供する。或る実施形態では、上記顕微鏡はステージを備え、ここで、ステージは、本明細書に記載される細胞培養プレートを保持するように構成される。或る実施形態では、細胞画像化システムは、生存細胞画像化用に構成される。或る実施形態では、細胞画像化システムは、ハイコンテントスクリーニング分析用に構成される。或る実施形態では、細胞画像化システムは環境チャンバを備え、ここで、環境チャンバは、(i)環境チャンバの気体組成、(ii)閉鎖環境チャンバの大気圧、及び(iii)閉鎖環境チャンバの内部周囲温度の少なくとも1つを維持するように構成される。或る実施形態では、環境チャンバは、気体組成、大気圧、及び内部周囲温度の少なくとも2つを維持するように構成される。或る実施形態では、気体組成は1%〜20%のO
2レベルを含む。或る実施形態では、気体組成は5%以下のO
2レベルを含む。或る実施形態では、気体組成は2%以下のO
2レベルを含む。或る実施形態では、気体組成は1%以下のO
2レベルを含む。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバの大気圧は15.7PSIA以上である。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバの大気圧は16.7PSIA以上である。或る実施形態では、閉鎖環境チャンバの大気圧は19.7PSIAである。
【0063】
また、本発明は、本明細書で記載される細胞培養インキュベータ、並びに(i)細胞培養プレート、(ii)細胞培養培地、及び(iii)細胞画像化システムの少なくとも1つを備えた標的細胞集団を培養するためのシステムを提供する。或る実施形態では、上記システムは、細胞培養プレート、細胞培養培地、及び細胞画像化システムの少なくとも2つを備える。或る実施形態では、細胞培養プレートは本明細書に記載される細胞培養プレートである。或る実施形態では、細胞培養培地は、平板培養培地、R型長期成長培地、DF型長期成長培地、D型長期成長培地、MEF−順化培地、及びそれらの任意の組み合せを含む。或る実施形態では、細胞画像化システムは、本明細書に記載される通りである。
【0064】
参照による援用
本明細書で言及される全ての出版物、特許及び特許出願は、各々個別の出版物、特許、又は特許出願が具体的且つ個別に参照により援用されると示される場合と同じ程度に参照により本明細書に援用される。
【0065】
本発明の新規な性質は、添付の特許請求の範囲において具体的に述べられる。本発明の性質及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される実例となる実施形態を記述する下記の詳細な説明及び添付の図面に対する参照により得られるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0067】
発明の詳細な説明
本出願を通して、本発明の様々な実施形態が範囲フォーマットで提示される場合がある。範囲フォーマットの記載は、単に便宜上及び簡潔のためにすぎず、本発明の範囲の変更の余地のない限定と解釈されるべきではないことが理解される。したがって、範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能性のある部分範囲、並びにその範囲内の個々の数字を有するものとする。例えば、1〜6等の範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の具体的に開示される部分範囲、また同じく、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5及び6を有するものとする。これはその範囲の幅にかかわらず適用される。
【0068】
一般的な技術
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野の技術に含まれる、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、遺伝学及び組換えDNAの従来技術を採用する。例えば、参照により本明細書に援用される、Sambrook,Fritsch and Maniatis,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,4th edition(2012);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel,et al.eds.,(1987));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995))、及びCULTURE OF ANIMAL CELLS:A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE AND SPECIALIZED APPLICATIONS,6th Edition(R.I.Freshney,ed.(2010)を参照されたい。
【0069】
定義
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」の単数形は、別段の明確な指示がない限り、複数の参照を含む。例えば、「一つの細胞(a cell)」は、その混合物を含む、複数の細胞を含む。
【0070】
「抗癌剤」の用語は、一般的には、1又は複数の癌細胞と接触して、直接的又は間接的に癌細胞の増殖を阻害、停止及び/若しくは低減する、並びに/又は癌細胞を殺傷する任意の薬剤を指すことができる。1又は複数の抗癌剤を、何の抗癌剤(複数の場合がある)がその癌細胞に最も望ましい効果(複数の場合がある)を有するかを決定する目的で1又は複数の癌細胞と接触させることができる。
【0071】
抗癌剤は、抗癌特性を決定する目的で1又は複数の癌細胞と接触させてもよい。「抗癌剤」の句が単数名詞、例えば、「一つの抗癌剤」又は「その抗癌剤」として記載されていたとしても、「抗癌剤」の句は、1又は複数の抗癌剤を指すものとして判断され得る。
【0072】
抗癌剤は、抗癌効果を有すると仮定され得る薬剤を含むことができる。すなわち、抗癌剤は、抗癌特性が未知であるか、又は十分に特性評価されていない薬剤を含むことができる。抗癌剤を、その薬剤が任意の抗癌特性を有するかどうかを決定する目的で1又は複数の癌細胞と接触させてもよい。
【0073】
抗癌剤は、癌細胞に影響を及ぼすと当該技術分野で既知の薬剤であってもよい。抗癌剤の幾つかの非限定的な例として、ホルモン除去剤、抗アンドロゲン剤/抗アンドロゲン、分化剤、抗新生物剤、キナーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、免疫剤、インターフェロン型製剤、挿入剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、有糸分裂阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、再吸収抑制剤、モノクローナル抗体、接着分子、成長因子、アポトーシス促進剤、アンチセンス剤、ビタミンD類似体、RNAi製剤、修飾ペプチド、酵素阻害剤、治療の副作用を改善する製剤、遺伝子治療剤及びそれらの任意の組み合せが挙げられる。
【0074】
抗癌剤は、ホルモン除去剤(例えば、デスロレリン、ロイプロリド、ゴセレリン及び/又はトリプトレリン)であってもよい。ホルモン除去剤は、抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、フルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリド、デュタステリド、アビラテロン、及び/又はニルタミド)であってもよい。ホルモン除去剤は、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)であってもよい。
【0075】
抗癌剤は、分化剤(例えば、ポリアミン阻害剤;カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、22−オキサカルシトリオール、ジヒドロタキステロール、パリカルシトール、及びセオカルシトール等のビタミンD及びその類似体;RAMBAS等のビタミンA代謝の阻害剤、例えばリアロゾール、ATRA等のビタミンA代謝産物;レチノイン酸;レチノイド;短鎖脂肪酸;フェニルブチレート;及び非ステロイド系抗炎症剤)であってもよい。
【0076】
抗癌剤は、抗新生物剤であってもよい。抗新生物剤の非限定的な例として、チューブリン相互作用剤、トポイソメラーゼ阻害剤及び製剤、アシトレチン、アルストニン、アモナフィド、アムフェチニル、アムサクリン、アンキノマイシン、抗ネオプラストン、グリシン酸アフィジコリン、アスパラギナーゼ、バッカリン、バトラシリン、ベンフルロン、ベンゾトリプト、ブロモフォスファミド、カラセミド、塩酸カルメチゾール、クロルスルファキノキサロン、クランフェヌール、クラビリデノン、クリスナトール、クラデルム、シタラビン、シトシチン、ダカルバジン、ダテリプチニウム、ジヘマトポルフィリンエーテル、ジヒドロレンペロン、ジナリン、ジスタマイシン、ドセタキセル、エリプラビン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エルゴタミン、エトポシド、エトレチナート、フェンレチニド、硝酸ガリウム、ゲンクワダフニン、ヘキサデシルホスホコリン、HDAC阻害剤、ホモハリントニン、ヒドロキシ尿素、イルモフォシン、イソグルタミン、イソトレチノイン、ロイコレグリン、ロニダミン、メルバロン、メロシアニン誘導体、メチルアニリノアクリジン、ミナクチビン、ミトナフィド、ミトキドン、ミトキサントロン、モピダモール、モトレチニド、N−(レチノイル)アミノ酸、N−アシル化−デヒドロアラニン、ナファザトロム、ノコダゾール誘導体、オクレオチド、オキザノシン、パクリタキセル、パンクラチスタチン、パゼリプチン、ピロキサントロン、ポリヘマトポルフィリン、ポリプレン酸、プロビマン、プロカルバジン、プログルミド、ラゾキサン、レテリプチン、スパトール、スピロシクロプロパン誘導体、スピロゲルマニウム、ストリポルジノン、スーパーオキシドジスムターゼ、テニポシド、サリブラスチン、トコトリエノール、トポテカン、ウクライン、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビネストラミド、ビノレルビン、ビントリプトール、ビンゾリジン、及びウィタノリドが挙げられる。
【0077】
抗癌剤は、キナーゼ阻害剤であってもよい。キナーゼ阻害剤の非限定的な例として、p38阻害剤;CDK阻害剤;TNF阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤;セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ及びエトリコキシブを含むCOX−2阻害剤;SOD模擬体;及びαvβ3阻害剤が挙げられる。
【0078】
抗癌剤は、代謝拮抗剤であってもよい。代謝拮抗剤の非限定的な例として、
5−FU−フィブリノーゲン、アカンサス葉酸、アミノチアジアゾール、ブレキナールナトリウム、カルモフール、シクロペンチルシトシン、リン酸ステアリン酸シタラビン、シタラビン複合体、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、ドキシフルリジン、ファザラビン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、N−(2’−フラニジル)−5−フルオロウラシル、必須アミノ酸の阻害剤、イソプロピルピロリジン、メトベンザプリム、メトトレキサート、ノルスペルミジン、オルニチン脱炭酸阻害剤、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、チオグアニン、チアゾフリン、トリメトレキサート、チロシンキナーゼ阻害薬、及びウリシチンが挙げられる。
【0079】
抗癌剤は、アルキル化剤であってもよい。アルキル化剤の非限定的な例として、アルド−ホスファミド類似体、アルトレタミン、アナキシロン、ベストラブシル、ブドチタン、カルボプラチン、カルムスチン、クロルアンブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シプラタート、ジフェニルスピロムスチン、二白金細胞増殖抑制剤、エルムスチン、リン酸エラムスチンナトリウム、フォテムスチン、ヘプスルファム、イフォスファミド、イプロプラチン、ロムスチン、マフォスファミド、ミトラクトール、オキサリプラチン、プレドニムスチン、ラニムスチン、セムスチン、スピロムスチン、タウロムスチン、テモゾロミド、テロキシロン、テトラプラチン、及びトリメラモールが挙げられる。
【0080】
抗癌剤は、抗生物質であってもよい。抗生物質の非限定的な例として、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アクチノプラノン、アドリアマイシン、アエロプリシニン誘導体、アムルビシン、アントラサイクリン、アジノマイシン−A、ビスカベリン、硫酸ブレオマイシン、ブリオスタチン−1、カリケマイシン、クロモキシマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジトリサルビシンB、ドキソルビシン、ドキソルビシン−フィブリノーゲン、エルサミシン−A、エピルビシン、エルブスタチン、エソルビシン、エスペラミシン−A1、エスペラミシン−A1b、フォストリエシン、グリドバクチン、グレガチン−A、グリンカマイシン、ヘルビマイシン、イダルビシン、イルジン、カズサマイシン、ケサリロジン、メノガリル、マイトマイシン、ネオエナクチン、オキサリシン、オキサウノマイシン、ペプロマイシン、ピラチン、ピラルビシン、ポロスラマイシン、ピリンダニシンA、ラパマイシン、リゾキシン、ロドルビシン、シバノミシン、シウェンマイシン、ソランギシン−A、スパルソマイシン、タリソマイシン、テルペンテシン、スラジン、トリクロザリンA、及びゾルビシンが挙げられる。
【0081】
抗癌剤はステロイド、コルチコステロイド、又はグルココルチコイドであってもよい。ステロイドの非限定的な例として、エプレレノン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、及びデキサメタゾンが挙げられる。
【0082】
抗癌剤は酵素阻害剤であってもよい。酵素阻害剤は、イミダゾール、及びアゾール、並びに/又は抗真菌剤(例えば、ケトコナゾール)であってもよい。
【0083】
抗癌剤は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、抗ガン活性を有する場合がある。モノクローナル抗体の非限定的な例として、リツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、アレムツズマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、トシツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、及びオファツムマブが挙げられ得る。
【0084】
抗癌剤は、アンチセンス剤であってもよい。アンチセンス剤の幾つかの非限定的な例として、Genasense(商標)(オブリメルセン)、Affinitak(ISIS 3521)、ISIS 112989(OGX 011)、ISIS 23722、AP 12009、GEM 231、GEM 240、IGF−1R/AS ODN、MG98、LErafAON、Ki−67アンチセンスオリゴヌクレオチド、GTI−2040、ISIS 2503、及びAPI 1014が挙げられ得る。
【0085】
抗癌剤は、ペプチド及び/又は改変ペプチドであってもよい。ペプチド又は改変ペプチドは、リガンドであってもよい。ペプチド及び/又は改変ペプチドは、阻害剤であってもよい。ペプチド及び/又は改変ペプチドは、ワクチンであってもよい。ペプチド及び/又は改変ペプチドは、免疫応答を惹起することができる。免疫応答は、癌細胞に対するT細胞応答であってもよい。ペプチド及び/又は改変ペプチドは、抗癌活性を有してもよい。
【0086】
抗癌剤は、抗ガン活性を有するRNAi治療剤であってもよい。
【0087】
抗癌剤は、癌治療の副作用を改善する薬剤であってもよい。治療の副作用を改善する薬剤は、利尿剤、止痛剤、鎮痛剤、抗炎症剤、エプレレノン、プレドニゾン、プロトンポンプ阻害剤、H
2受容体拮抗薬、脂質低下薬、抗吸収薬、抗精神病薬、及び/又はデキサメタゾンであってもよい。
【0088】
抗癌剤の他の非限定的な例として、アセマンナン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミフォスチン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンセスチム、ベキサロテン、ブロクスウリジン、カペシタビン、セルモロイキン、セトロレリックス、クラドリビン、クロトリマゾール、ダクリズマブ、デクスラゾキサン、ジラゼプ、ドコサノール、ドキシフルリジン、ブロモクリプチン、カルムスチン、シタラビン、ジクロフェナック、エデルフォシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エミテフール、エキセメスタン、エクシスリンド(exisulind)、ファドロゾール、エリスロポエチン、フィルグラスチム、フィナステリド、リン酸フルダラビン、フォルメスタン、フォテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、グリコピン、ヘプタプラチン、イバンドロン酸、イミキモド、イオベングアン、イリノテカン、イルソグラジン、ランレオチド、レフルノミド、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レトロゾール、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、マソプロコール、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミトグアゾン、ミトラクトール、モルグラモスチン、ナファレリン、ナルトグラスチン、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、オプレルベキン、オサテロン、オキサリプラチン、パミドロン酸、ペガスパルガーゼ、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、ペントスタチン、ピシバニール、ピラルビシン、ポルフィマーナトリウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラスブリケース、リツキシマブ、ロムルチド、サルグラモスチン、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン、スラミン、タソネルミン、タザロテン、テガフール、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、サリドマイド、トロンボポエチン、チマルファシン、チロトロピンアルファ、トポテカン、トレミフェン、トラスツズマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキサート、ウベニメックス、バルルビシン、ベルテポルフィン及びビノレルビンが挙げられる。
【0089】
「生体試料」の用語は、一般的には、生物学的実体から単離された試料又は部分を指す。生体試料は全体の性質を指してもよく、例えば、限定されないが、体液、分離された腫瘍検体、培養細胞、及びそれらの任意の組み合せが挙げられる。生体試料の例は、限定されないが、血液、血清、血漿、鼻腔スワブ又は鼻咽頭洗浄液、唾液、尿、胃液、脊髄液、涙、便、粘液、汗、耳垢、油、腺分泌物、脳脊髄液、組織、精液、膣分泌液、腫瘍組織由来の間質液、眼液、脊髄液、咽頭スワブ、息、髪、爪、皮膚、生検、腫瘍、胎盤液、羊水、臍帯血、リンパ液、腔液、喀痰、膿、細菌叢、胎便、母乳及び/又は他の排泄物が挙げられ得る。上記試料は、鼻咽頭洗浄液を含んでもよい。被験体の組織試料の例として、限定されないが、結合組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織、軟骨、癌性試料(例えば、腫瘍試料)又は骨が挙げられ得る。上記試料は、ヒト又は動物から提供されてもよい。上記試料は、哺乳動物、脊椎動物、例えば、マウス、サル、ヒト、家畜、競技用動物又はペットから提供されてもよい。上記試料を生体又は死体から採取してもよい。上記試料は被験体から採取した新鮮なものであってもよく、前加工、保存、及び/又は輸送の何らかの形態を経たものであってもよい。
【0090】
「体液」は、被験体に由来する流体又は分泌物を指す場合がある。体液の例として、例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、胃液、脊髄液、涙、粘液、汗、油、腺分泌物、脳脊髄液、精液、膣分泌液、腫瘍組織由来の間質液、眼液、脊髄液、胎盤液、羊水、臍帯血、リンパ液、腔液、胎便、母乳、骨髄、胸膜液、リンパ液及び/又は他の排泄物が挙げられる。体液は、複雑で不均一細胞集団を含むことができ、CTCs、CSCs、HSCs及び/又はEPCs等の細胞種を含有してもよい。場合によっては、体液は、1種より多い体液の混合物であってもよい。
【0091】
「癌」の用語は、一般的には、細胞の制御されていない、異常な成長を特徴とする疾患を指す。場合によっては、癌は拡散する可能性がある。本明細書に記載されるように、「癌」は新生物又は腫瘍を包含し得る。
【0092】
「癌幹細胞(CSCs)」は、一般的には、自己再生できる癌細胞のサブセットを指す。CSCsは、一般的には、その持続的成長を担う少数の腫瘍を含み、新たな腫瘍をもたらすことによって転移を担う場合がある。CSCsは、同じ腫瘍に由来する他の細胞と異なる細胞マーカーを発現することができ、治療耐性に寄与し得る。
【0093】
「細胞亜集団」の用語は、一般的には、より大きく不均一細胞集団に見出され得る同様の種類の細胞の分類を指す。細胞亜集団の非限定的な例として、前癌細胞、幹細胞、胎児幹細胞、未分化幹細胞、胎児細胞、骨髄細胞、前駆細胞、泡沫細胞、間葉細胞、上皮細胞、上皮前駆細胞、内皮細胞、内皮前駆細胞(EPCs)、子宮内膜細胞、造血幹細胞(HSCs)、トロホブラスト、癌細胞、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、赤血球、白血球、免疫系細胞、及び結合組織細胞、並びにそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。
【0094】
「循環腫瘍細胞」(CTCs)は、一般的には、血液血管構造及び/又はリンパ系を循環できる原発腫瘍に起因する癌細胞を指す。
【0095】
細胞を「培養すること」及び「インキュベートすること」の用語は、本明細書では同義的に使用され、一般的には、細胞を制御された条件下で成長させるプロセスを指す。上記条件は、培養される細胞の種類に応じて変化し得る。
【0096】
本明細書で使用される「初代細胞」の用語は、一般的には、生体組織(例えば、生検)により得られ、in vitroでの成長(例えば、培養)用に樹立された細胞を指す。
【0097】
「細胞形態学」又は「形態学的特性」の用語は、サイズ、形状、又は特定の特徴の存在若しくは不在等の細胞の観察可能な物理的特性を指すため使用され得る。
【0098】
血管内皮前駆細胞(EPCs)は、一般的には、内皮細胞に分化する能力を有する細胞の集団を指す。
【0099】
富化の用語は、一般的には、細胞の混合物中に存在する細胞の総数に対する、存在する標的細胞亜集団の細胞数の比率を増加することを指す。富化は、例えば、標的細胞亜集団を捕捉することにより、又は標的細胞亜集団の増殖(すなわち、繁殖)により、又はそれらの組み合せにより生じ得る。
【0100】
造血幹細胞(HSCs)は、一般的には、異なる血液細胞種をもたらすことができる多能性幹細胞を指す。
【0101】
不均一細胞集団は、一般的には、2以上の細胞種の混合物を指す。不均一細胞集団の例として、体液、生物標本、分離された腫瘍標本、培養細胞、及びそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。
【0102】
ヒト血清は、一般的には、ヒトに由来する体液を指し、それにより、遺伝物質の大半が除去され、体液は、主に、例えば、水、酵素、代謝産物、成長因子、シグナル伝達ペプチド及び他の宿主に生来的なタンパク質を含む。ヒト血清の供給源の或る非限定的な例として、末梢血から採取した血清、間質液、細胞内液、及び/又は細胞透過液が挙げられる。
【0103】
細胞の動態学的特性は、一般的には、細胞が経時的に運動、侵入、及び/又は分裂する能力を指す。
【0104】
本明細書で使用される顕微操作は、一般的には、単一細胞を取り扱う任意の方法を記載する。典型的な顕微操作システムとして、例えば、ジョイスティック操作が付加された倒立顕微鏡、電動顕微操作プラットフォーム、マイクロピペッター又はレーザ捕獲顕微解剖が挙げられ得る。
【0105】
「富化培地」及び「細胞培養培地」の用語は、本明細書で同義的に使用され、一般的には、標的細胞亜集団の富化が達成され得るように、細胞に栄養を供給するため使用することができる、その中に細胞を浸漬し、インキュベートする溶液を指す。富化培地は、細胞分裂を増強することができる具体的な上流リガンドに基づくシグナル伝達キューを含有してもよい。富化培地の正確な組成は、捕捉され、富化される細胞の種類に応じて変化し得る。
【0106】
被験体は、一般的には生物を指す。被験体は、動物であってもよい。動物の例として、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル及びチンパンジー等の実験動物、イヌ及びネコ等の家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の農業用動物、及びクマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、及びクジラ等の野生動物が挙げられる。
【0107】
本明細書で使用される「基材」は、一般的には、不均一細胞集団からの標的細胞亜集団の富化、回復、捕捉及び/又は増殖を高めることができる基材を指す。上記基材の正確な組成を、具体的な種類の標的亜集団の細胞の富化について適合できる。上記基材は、単層又は多層を含んでもよい。
【0108】
「ベクター」の用語は、一般的には、自己複製し得るか、それをし得ない核酸分子を指し、これは、挿入された核酸分子を宿主細胞へと及び/又は宿主細胞間を輸送する。上記用語は、DNA又はRNAの細胞への挿入に対して主に機能するベクター、DNA又はRNAの複製に主に機能するベクターの複製、並びにDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳に機能する発現ベクターを含む。また、1より多い上記機能を提供するベクターも含まれる。
【0109】
「発現ベクター」の用語は、一般的には、適切な宿主細胞に導入された場合に、ポリペプチド(複数の場合がある)に転写され翻訳され得るポリヌクレオチドを指す。「発現ベクター」は、通常、所望の発現産物を生じるように機能できる発現ベクターを含む好適な宿主細胞を含意する。
【0110】
腫瘍の用語は、一般的には、異常な細胞成長及び分裂の結果生じる異常な組織質量を指す。腫瘍は癌性の場合がある。
【0111】
治療若しくは治療する、軽減する若しくは改善するという用語は、一般的には同義的に使用され、治療利益を達成するため、既存の疾患、障害、若しくは状態の治癒若しくはその重症度を軽減するため、及び/又は予防利益を達成するため、疾患、障害若しくは状態の発症の可能性若しくは発生の重症度の阻止若しくは軽減のため物質を投与することを意味する場合がある。
【0112】
本明細書で使用される治療効果又は治療利益は、一般的には、ヒト又は他の動物における疾患の治癒、緩和、改善、又は予防、或いはヒト又は動物の身体又は精神的な健康を増強することを含むがそれらに限定されない、生理学的効果を指す。治療利益は、治療される根底にある障害の治療、又は被験体がなおも根底にある障害に苦しめられる可能性があるにもかかわらず、被験体において改善が観察されるように、根底にある障害と関連する生理学的症状の1又は複数の治療を意味する場合がある。
【0113】
「制御可能に連結された」の用語は、一般的には、「制御可能に連結された」と記載される2以上の成分が、それらの意図される方式で機能することを可能とする関係での並列を指す。
【0114】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」の用語は、本明細書では同義的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はその類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、また、既知又は未知の任意の機能を果たしてもよい。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子フラグメントのコーディング領域又は非コーディング領域、連鎖分析から規定される遺伝子座(単数の場合がある)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列のDNA、任意の配列のRNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体等の改変ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーの集合前又はその後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化成分との複合等による重合化の後に更に改変されてもよい。
【0115】
総括
本発明は、不均一細胞集団から1又は複数の標的細胞亜集団を検出し、単離し、捕捉し、富化し、培養し、及び/又は特性評価することができる方法、装置、組成物、及びキット、また同様にそれらの適用を提供する。標的細胞亜集団は、任意の種類の生存細胞を含み得る。生存細胞は、付着特性を備え得る。付着特性は、例えば、細胞外マトリクス、他の細胞等の固体又は半固体の表面、又は本明細書に記載される基材に付着する細胞の能力により証明され得る。付着特性を有する細胞は、1又は複数の接着分子を発現し得る。接着分子の例として、例えば、とりわけ、セレクチン、インテグリン、カドヘリン、シンデカン、上皮細胞接着分子(EpCAM)、cd133、cd44、cd166が挙げられ得る。接着分子の発現は、遺伝子発現研究、免疫組織化学、免疫ブロッティング等を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の手段により判定することができる。標的細胞亜集団は、任意の種類の初代細胞を含んでもよい。初代細胞は、例えば、とりわけ、初代ニューロン、初代グリア、初代心筋細胞、初代肝細胞、初代肺細胞、初代軟骨細胞、初代内皮細胞、初代線維芽細胞、初代胃腸細胞、初代免疫細胞、初代ケラチノサイト、初代骨芽細胞、初代膵臓細胞、初代前立腺細胞、初代腎細胞、初代網膜細胞、初代筋細胞、初代セルトリ細胞、胎児細胞等の哺乳動物の初代細胞であってもよい。標的細胞亜集団は、高い増殖特性及び再生特性を有する。標的細胞亜集団の或る非限定的な例として、例えば、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、血管内皮前駆体細胞(EPCs)、胎児細胞、幹細胞、免疫細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、癌細胞、白血球、成人幹細胞、初代細胞(例えば、本明細書に記載される初代細胞)、固形腫瘍に由来する細胞、及び/又は上皮前駆細胞が挙げられる。或る実施形態では、標的細胞亜集団は、CTCs、CSCs、EPCs、幹細胞、上皮細胞及び癌細胞から選択される。標的細胞亜集団は、CTCs及び/又はCSCsを含んでもよい。CTCs及び/又はCSCsは、腫瘍開始細胞であってもよい。CTCs及び/又はCSCsは、転移性細胞であってもよい。標的細胞亜集団が固形腫瘍に由来する細胞を含む場合では、細胞は、固形腫瘍の形態のままであってもよい(例えば、本明細書に記載される方法、装置、組成物、及びキットを固形腫瘍生検を培養する目的に使用することができる)。或る実施形態では、標的細胞亜集団は、不死化細胞株由来の細胞を含まない。或る実施形態では、標的細胞亜集団は、白血球を含まない。標的細胞亜集団は、初代標的細胞亜集団であってもよい。
【0116】
本明細書の例証は、主に血液からの細胞亜集団の単離及び富化によるものであるが、本発明は、任意の不均一細胞集団からの細胞亜集団の単離及び富化に容易に適用できることが更に認識されるであろう。かかる例として、体液、体液の混合物、分離された腫瘍試料、固形組織試料(例えば、固形腫瘍試料)、細胞培養物、又はそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。更に、体液、分離された腫瘍試料、及び細胞培養物は、1若しくは複数の被験体に由来してもよく、又はそれらの組み合せであってもよい。
【0117】
図1は、本開示による方法の例を示す。
図1は、本発明の実施形態による標的細胞亜集団の捕捉及び富化のための例示的プロセス100を示す。プロセス100は、被験体105から試料110を得ること、試料115の1又は複数の成分を分離して不均一細胞集団を得ること、不均一細胞集団を基材120と接触させること(例えば、不均一細胞集団を基材上に播種すること、不均一細細胞集団を標的細胞亜集団の成長を十分可能とする条件下でインキュベートすることであって、ここで、標的細胞亜集団の成長を十分可能とする上記条件が装置130の富化培地125と共にインキュベートすることを含み得る、インキュベートすること、時間135に亘って試料をインキュベートすることであって、ここで、時間135は細胞分裂が起こるのに十分である、インキュベートすること、を含む。細胞を画像化システム140(例えば、顕微鏡)を使用してモニターしてもよい。画像化システムを用いるモニタリングによるデータを分析ソフトウェア145を使用して加工することができる。分析ソフトウェア145は、結果150のアウトプットを作成できる。細胞及び/又は結果150を疾患状態155の診断、予後又はモニタリングに使用して、被験体160の治療計画を指示することができ及び/又は研究165に使用できる。
【0118】
図2A及び
図2Bは、本発明の例示的方法のワークフローを示す。例示的方法は、被験体、例えば、ヒト被験体に由来する生体試料を得る工程210を含むことができる。或る実施形態では、生体試料は体液試料(例えば、血液試料)である。例示的方法は、血液から全ての有核細胞を単離するため血液試料のフィコールに基づく遠心分離の後の工程220を含むことができる。その後、有核細胞を、基材上に直接播種してもよい。例示的方法は、通例の培養条件で細胞を培養する後の工程230を含むことができる。工程230は、急速に増殖する癌細胞を同定するためにタイムラプス撮影を含んでもよい。例示的方法は、タイムラプス撮影画像を分析するためのソフトウェア(例えば、コンピュータ可読媒体)を使用する後の任意工程240を含んでもよい。分析は、癌細胞増殖速度を測定することを含んでもよい。例示的方法は、更なる分子/細胞分析及び/又は画像化のため、急速に増殖する細胞を単離する及び/又は急速に増殖する細胞を成長させる工程250を更に含んでもよい。単離は、顕微操作器具の使用を含んでもよい。或る実施形態では、更なる分子分析及び細胞分析は、エキソームシーケンシング及び/又はトランスクリプトーム分析を含む。例示的方法は、例えば、新たなバイオマーカー及び/又は1若しくは複数の癌治療のための治療標的の同定に有用な可能性がある。
【0119】
被験体の例
被験体105(
図1に示される)は、一般的には生体である。被験体は、1又は複数の標的細胞亜集団を含むことができる。被験体が標的細胞亜集団を含むかどうかわからない場合がある。或る実施形態では、本開示の方法及び装置は、被験体が1又は複数の標的細胞亜集団を含むかどうかを決定するために使用されてもよい。例えば、被験体を、1又は複数の標的細胞亜集団の存在又は不在についてスクリーニングしてもよい。
【0120】
被験体は、癌を有する被験体、癌から回復段階にある被験体、癌に対する治療を行っている被験体、癌のスクリーニングを行っている被験体、癌を有することが疑われる被験体、癌の存在について試験されている(例えばスクリーニングされている)被験体、癌を有しない被験体、自己免疫疾患を有する被験体、自己免疫疾患を有することが疑われる被験体、骨髄移植用に細胞を提供する被験体、骨髄細胞を受ける被験体、心血管疾患を有する被験体、心臓発作又は脳卒中を経験した被験体、将来心臓発作又は脳卒中を経験することが疑われる被験体、創傷治癒の治療を行っている被験体、創傷治癒に対する治療を必要とし得る被験体、及びそれらの任意の組み合せであってもよい。上記被験体は、任意疾患を有するか、又はそれを有することが疑われるものであってもよいと理解される。
【0121】
癌は、例えば、腫瘍、急性白血病、急性t細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、又は慢性リンパ性白血病、真性多血症等の白血病、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫又は非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、リンパ管肉腫等の癌腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、去勢抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支、癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌、又は腎臓癌であってもよい。
【0122】
自己免疫疾患は、個体自身の組織から生じそれを対象とする疾患又は障害、又はその共分離若しくは兆候若しくはそれから生じる状態であってもよい。自己免疫疾患又は障害の例として、限定されないが、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、関節炎、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性の血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性の高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫蕁麻疹、軸索及び神経ニューロパシー、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、寒冷凝集素疾患、先天性心臓ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、混合性クリオグロブリン血症、神経障害、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維筋痛症、線維化性肺胞炎、ジャイアント細胞動脈炎(側頭動脈炎)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎(GPA)、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節リポタンパク質、封入体筋炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、I型糖尿病、川崎症候群、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス(SLE)、ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ミュシャ−ハーバーマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック)、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌性小児自己免疫神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネージ・ターナー症候群、毛様体扁平部炎(周辺部ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、I型、II型、又はIII型多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン性皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、レイノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子及び精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ−ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、小水疱水疱性の皮膚病、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0123】
心血管疾患(CVD)は、心臓及び全身の欠陥構造に関与する多くの障害によって現れ得る。或る非限定的な例として、動脈瘤、狭心症、アテローム性動脈硬化症、脳血管障害(例えば、脳卒中)、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、及び末梢血管疾患が挙げられ得る。
【0124】
被験体は、本明細書に開示されるいずれの疾患も伴わない健康な被験体であってもよい。
【0125】
生体試料の例
生体試料110(
図1に示される)は、被験体から取得され得る。1又は複数の試料を被験体から1又は複数の時間点で被験体から取得してもよい。単一の試料を被験体から一度し採取することができる。複数の試料を或る期間に亘って被験体から採取することができる。
【0126】
生体試料の例を本明細書に記載する。生体試料110は、例えば、任意の体液、生体標本、固形組織試料、細胞培養物、細胞の不均一集団、又はそれらの任意の組み合せであってもよい。上記試料の供給源は既知であってもよい。上記試料の供給源は不明であってもよい。試料が採取される被験体の同一性は、試料の同一性と関連してもよい。被験体の同一性の関連は、介護者により入手できる。
【0127】
生体試料は体液試料を含んでもよい。体液試料の例を本明細書に記載する。或る実施形態では、体液試料は血液である。血液(例えば、末梢血)を、当業者に既知の任意の手段、例えば、静脈穿刺、動脈穿刺及び/又は臍帯からの単離により被験体から得ることができる。生体試料の容量は、例えば、およそ1mL〜10mLの間、およそ5mL〜20mLの間、又はおよそ15mL〜35mLの間の容量範囲であってもよい。試料容量は、およそ4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、12mL、15mL、17mL、20mL、25mL、30mL又は35mLの容量であってもよいが、他の容量も考慮される。より大量の血液試料を採取することができ、その大量の試料の一部を使用することができる。
【0128】
生体試料110を、同じ被験体又は異なる被験体に由来する1又は複数の生体試料(例えば、細胞)と混合してもよい。生体試料110は、例えば、1又は複数の細胞によりスパイクされてもよい。試料への細胞のスパイキングは、陽性対照若しくは陰性対照を提供することができ、及び/又は標的細胞亜集団の富化を改善し得る。一例に過ぎないが、生体試料110を不死化細胞株に由来する細胞でスパイクすることができる。不死化細胞株は、癌(例えば、ヒト癌)に由来するものであってもよい。腫瘍又は癌細胞株の例は、例えば、ATCC、国立癌研究所、及び他の供給源を通して利用可能である。既知の不死化細胞株を使用して試料をスパイクすることができる。試料をスパイクするのに使用できる既知の不死化細胞株の或る非限定的な例として、HeLa、LnCAP、F47D、THP−1、U87、SHSY5Y、Saos02、Vero、DU145、MCF−7、MDA−MB−438、PC3、GH3、PC12、MC3T3、293−T、HL−60、NCI−H322M、SW620、UACC−62、HCC2998、UACC−257、SN12C、CAKI−1、ACHN、LOXIMVI、EKVX、A549、786−0、Hs−578−T、RPMI−8226、SR M14、A498、OVCAR−4、NCI−ADR−RES、MDA−MB−231、HOP−92、DU−145、CCRF−CEM、HT−29、IGROV−1、SF295、TK10、SK−MEL−2、SK−OV−3、MDA−MB−435、NCI−H522、T47D、SNB75、NCI−H226、SK−MEL−28、SK−MEL−5、HOP−62、RXF393、COLO−205、SF268、U031、HCT−15、BT−549、U251、OVCAR−5、SF539、Malme−3M、KM12、HCT−116、SNB19、OVCAR−3、NCI−H23、NCI−H460、MOLT−4、OVCAR−8、K−562が挙げられ得る。
【0129】
生体試料110を、1又は複数の印をつけた細胞でスパイクすることができる。本明細書で使用される「印をつけた細胞」の用語は、一般的には、検出可能な標識を含む細胞を指す。印をつけた細胞は、対照として作用することができる。例えば、印をつけた細胞を使用して、細胞捕捉の有効性、細胞増殖の有効性を判定することができ、細胞増殖の速度を決定することができ、又はそれらの任意の組み合せをすることができる。印をつけた細胞は、遺伝子又はタンパク質を発現する形質転換細胞であってもよい。印をつけた細胞は、印をつけた抗体に結合し得る細胞表面抗原を発現する細胞であってもよい。
【0130】
検出可能な標識の或る非限定的な例として、例えば、染料、蛍光マーカー、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)等)、生物発光タンパク質(例えばルシフェラーゼ)、タグ付けしたタンパク質、放射性分子、ビオチン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、蛍光複合分子(例えば、デキストラン、β−ガラクトシダーゼ)、及び/又は細胞株若しくは動物に対する遺伝的変更(例えばcre−loxリコンビナーゼ系、FLPリコンビナーゼ等)が挙げられる。
【0131】
或る実施形態では、試料を追加の細胞でスパイクしない。
【0132】
試料の任意の分離
試料115の1又は複数の成分を分離する工程(
図1に示される)は、その本来の試料の濃度に対して1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、10,000倍、20,000倍、50,000倍、100,000倍、200,000倍、500,000倍、1,000,000倍、2,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、20,000,000倍、50,000,000倍、100,000,000倍、200,000,000倍、500,000,000倍、1,000,000,000倍、2,000,000,000倍、又は5,000,000,000倍の因数で標的細胞亜集団の濃度を増加することができる。また、試料115の1又は複数の成分を分離する工程は、本来の試料の容量を減少することにより(例えば、流体の除去により)細胞亜集団の濃度を増加することができる。一例に過ぎないが、亜集団の細胞を含む10mL、15mL、20mL、50mL、又は100mLの総容量より多い体液試料(例えば、血液試料)を、それぞれ、0.5mL、1mL、2mL、3mL、5mL、又は10mL未満の総容量の溶液へと濃縮することができる。
【0133】
標的亜集団細胞を含む試料の穏やかな取り扱いを使用して細胞に対するいかなる機械的損傷も軽減する。穏やかな取り扱いは、試料中の少数の亜集団細胞及び/又は核酸若しくは巨大分子の完全性を保護するはたらきをし得る。標的細胞亜集団の完全性は、後の富化工程に重要な可能性がある。
【0134】
原試料が体液(例えば、全血)である場合の例では、試料115の1又は複数の成分を分離する工程は、参照により本明細書に援用されるFuss et al,Curr Protoc Immunol(2009)Chapter 7:Unit7.1に記載されるフィコール試薬の使用を含むことができる。
図3は、フィコール試薬(例えば、GE HealthcareのFicoll−Paque PLUS)を使用して血液成分を分離する例示的方法300を示す。例示的方法300は、フィコール試薬310の最上部に全血試料305を重ねることを含む。例示的方法は、全血/フィコール試料を密度に基づく遠心分離335に供することを更に含む。遠心分離は、全血/フィコール試料を異なる層、すなわち(1)赤血球を含む無核細胞層315、(2)フィコール試薬層320、(3)例えば、白血球(WBCs)及び他の有核細胞(例えば、CTCs、CSCs、HSCs、EPCs等)を含む有核細胞層325、並びに(4)血漿層330への分離を生じることができる。標的細胞亜集団の捕捉のため、有核細胞層を単離し、基材340に暴露することができる。
【0135】
また、試料115の1又は複数の成分を分離する工程は、1又は複数のサイズに基づく分離技術を使用して達成され得る。サイズに基づく分離技術の或る非限定的な例として、サイズに基づく分離モジュール、例えば、濾過モジュール、篩、マトリクス、障害からの側方変異等の使用を含んでもよい。サイズに基づく分離は、血液から赤血球及び血小板を除去することができる(例えば、参照により本明細書に援用される、国際公開第2004/113877号)。障害物又はギャップのネットワークを使用して粒子を分離することができる(例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第20040144651号)。或る実施形態では、亜集団細胞の分離及び/又は富化は、サイズに基づく分離モジュールを含まない。
【0136】
サイズに基づく分離モジュールは、ギャップのネットワークを形成する障害物の1又は複数のアレイを含んでもよい。その障害物は、粒子の流体力学的サイズに基づいて異なる方向又はアウトレットへとギャップのアレイ/ネットワークを流れるように粒子を向けるため構成することができる。例えば、所定のサイズ(例えば、8ミクロンより大きい)を有する有核細胞を含む血液試料を他の血液成分と別のアウトレットへと向けることができる。
【0137】
ギャップ、障害物、及び障害物の連続する各列の間の周期におけるオフセットを調整することにより所定のサイズより小さい又は大きい細胞を分離するようにアレイを構成することができる。障害物又は障害物の間のギャップは、長さ10ミクロン、20ミクロン、50ミクロン、70ミクロン、100ミクロン、120ミクロン、150ミクロン、170ミクロン、又は200ミクロン以下、又は長さ約2ミクロン、4ミクロン、6ミクロン、8ミクロン又は10ミクロンである。サイズに基づく分離のためのアレイは、10、20、50、100、200、500、又は1000よりも多い列に配置された100、500、1,000、5,000、10,000、50,000又は100,000よりも多い障害物を含むことができる。障害物の第1列の障害物は、前の列の障害物の50%以下の周期の前の(すなわち、上流の)障害物の列からのオフセットとなり得る。障害物の第1列の障害物は、前の列の障害物の45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%以下の周期前の障害物の列からのオフセットとなり得る。第1列の障害物と第2列の障害物の間の距離は、10ミクロン、20ミクロン、50ミクロン、70ミクロン、100ミクロン、120ミクロン、150ミクロン、170ミクロン又は200ミクロン以下であってもよい。特定のオフセットは、持続的(例えば、複数の列に対して繰り返す)又は非連続的であってもよい。分離モジュールは、互いに連続するように流動的に連結された複数の別々のアレイの障害物を含むことができる。障害物の各アレイは、持続的なオフセットを有してもよい。しかしながら、後の(すなわち、下流の)アレイの障害物は、各々、前(すなわち、上流)のオフセットとは異なるオフセットを有する。後のアレイの障害物は、前のアレイの障害物よりも小さいオフセットを有する。これにより、細胞が障害物のアレイを通過していくにしたがって、分離プロセスを精密化することを可能にする。複数のアレイを連続して又は並列に(例えば、2、4、6、8、10、20、30、40、50より多い)流体連結することができる。流体連結する分離モジュール(例えば、アレイ)は、並行して、1時間当たり少なくとも1mL、2mL、5mL、10mL、20mL、50mL、100mL、200mL又は500mLが富化モジュールを流れることができるように、又は1時間当たり少なくとも100万個、500万個、1000万個又は5000万個の細胞がソートされるか、装置を流れることができるように、試料のハイスループット分析を可能とする。
【0138】
障害物を平坦な基材に連結して、ギャップのアレイを形成することができる。障害物は、前の障害物列に関して水平にシフトした各々の連続する列によって二次元のアレイを形成することができ、ここで、障害物のアレイを、第1の方向で所定のサイズよりも小さい流体力学的サイズを有する成分及び、第2の方向で所定のサイズよりも大きい流体力学的サイズを有する別の成分を対象とすることができる。一例に過ぎないが、除核細胞からの上皮細胞又は循環腫瘍細胞の富化において、所定のサイズの障害のアレイは、約6μm〜12μm又は6μm〜8μmであってもよい。障害物のアレイへの試料の流れは、アレイの見通し線に関して小さい角度(すなわち、流れ角)で並べることができる。上記アレイを注入ポンプに連結して障害物を通して試料を灌流してもよい。本明細書に記載されるサイズに基づく分離モジュールの流動条件は、最小限の損傷でアレイにより亜集団細胞をソートするようにすることができる。これにより、無傷の細胞及び無傷の核の下流分析をより効率的且つ確実にすることができる。
【0139】
試料115の1又は複数の成分を分離する工程は、1又は複数の細胞の動態学的特性を選択的に阻害する1又は複数の捕捉技術の使用を含むことができる。補足技術を使用して、1又は複数の他の分離技術及び/又は富化技術と共に使用することができる。補足技術は、親和性精製を含んでもよい。標的細胞亜集団を陽性選択に基づいて、例えば、捕捉試薬に対する標的細胞亜集団の親和性に基づいて、富化することができる。
【0140】
標的細胞亜集団を捕捉試薬、例えば、捕捉抗体の親和性に基づいて富化することができる。例えば、標的細胞亜集団を陽性選択試薬に対する親和性に基づいて富化することができる。陽性選択試薬は、陽性選択抗体、例えば、非標的細胞亜集団と比べて標的細胞亜集団において選択的に発現されるペプチドに対する抗体であってもよい。上記ペプチドは、細胞表面ペプチドであってもよく、そうでなくてもよい。陽性選択抗体の例として、限定されないが、とりわけ、上皮細胞付着分子(EPCAM)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)、CK19、サイトケラチン8、18、Twist、EGFR、CD133、ビタミンが挙げられる。したがって、或る場合には、標的細胞亜集団(例えば、CTCs)をEPCAM抗体を使用して富化することができる。捕捉試薬(例えば、抗体)を固体又は半固体の支持体、例えば、ウェル、ビーズ、磁性ビーズ、チャンバに複合することができる。一例に過ぎないが、陽性選択による標的細胞亜集団の富化は、標的細胞が陽性選択抗体に結合するように、その上に陽性選択抗体が固定化される固体又は半固体の相と生体試料とを接触させることを含むことができる。上記方法は、試料の結合していない画分を除去すること(例えば、1又は複数の洗浄工程により)を更に含むことができる。上記方法は、結合した画分を採取することを更に含むことができる。標的細胞亜集団の富化は、その上に陽性選択試薬が固定化される固体又は半固体相の使用を必要としない場合がある。例えば、陽性選択試薬(例えば、陽性選択抗体)に対する親和性を介する富化は、フローサイトメトリー、例えば、FACSソーティングの使用を含むことができる。或る実施形態では、標的細胞亜集団を、例えば、検出可能に標識化したEpCAM抗体で標識化して、EpCAM+細胞のFACSに基づく捕捉により富化する。
【0141】
標的細胞亜集団を陰性選択に基づいて、例えば、捕捉試薬、例えば捕捉抗体に対する非標的細胞亜集団の親和性に基づいて富化することができる。標的細胞亜集団は、非標的細胞亜集団と比べて補捉抗体に対してより低い親和性を有することができる。例えば、捕捉抗体は、非標的細胞亜集団において典型的に発現されるが、標的細胞亜集団においては典型的には発現されないペプチドに対する抗体であってもよい。例えば、捕捉抗体は、白血球、単球、及び/又はマクロファージにおいて選択的に発現されるペプチドに対する抗体であってもよい。陰性選択に使用することができる捕捉抗体の例として、とりわけ、抗CD45抗体、抗CD14抗体、抗CD34抗体、抗線維芽細胞表面タンパク質抗体が挙げられ得る。一例に過ぎないが、陰性選択による標的細胞亜集団の富化は、非標的細胞が陰性選択抗体に結合するように、その上に陰性選択抗体が固定化される固体又は半固体の相と生体試料とを接触させることを含むことができる。上記方法は、生体試料の結合していない画分を採取することを更に含むことができる。標的細胞亜集団の富化は、その上に陰性選択試薬が固定化される固体又は半固体の相の使用を必要としない場合がある。例えば、陰性選択試薬(例えば、陰性選択抗体)に対する親和性を介する富化は、フローサイトメトリー、例えば、FACSソーティングの使用を含むことができる。或る実施形態では、標的細胞亜集団を、例えば、検出可能に標識化した陰性選択抗体(例えば、CD45抗体)で標識化し、CD45−細胞のFACSに基づく捕捉によって富化する。
【0142】
捕捉技術は、1又は複数の捕捉分子の使用を含んでもよい。捕捉分子は、1又は複数の分析物(例えば、目的の細胞又は目的ではない細胞)の捕捉のため構成された装置であってもよい。或る一つの非限定的な例では、親和性に基づく分離分子は、細胞を補捉することができるか、又は試料の流れを可能とするように適合された障害のアレイを含むことができ、ここで、障害は、1又は複数の目的の細胞集団(例えば、標的細胞亜集団細胞、上皮細胞、有核細胞、CTCs、CSCs等)又は目的ではない分析物(例えば、一例として、白血球等の非標的細胞)に選択的に結合することができる表面結合部分を含むことができる。結合部分を障害に連結することができる。結合部分は、例えば、タンパク質(例えば、リガンド/受容体)、保持された細胞、抗体等においてハイブリダイズ可能な対応する部分を有する核酸を含むことができる。
【0143】
捕捉技術は、かかる細胞又は目的ではない細胞の磁気特性又は磁位に基づいて細胞を分離及び/又は富化するため磁場を利用することができる。例えば、わずかに反磁性の(すなわち、磁場に忌避される)場合がある赤血球を、ヘモグロビンのメトヘモグロビンへの脱酸素により常磁性体(すなわち、磁場により引きつけられる)とすることができる。この磁気特性は、赤血球の物理的又は化学的処理により達成され得る。よって、目的の細胞を含む血液試料について、最初に赤血球における磁気特性を誘導し、その後、試料を磁場に通すことにより、目的の細胞から赤血球を分離することによって、目的の細胞を赤血球から分離することができる。磁場は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0144】
標的細胞亜集団の選択的付着及び成長のためのin vitroシステム
本明細書に記載されるin vitroシステムは、標的細胞亜集団の選択的付着を促進することができる。標的細胞亜集団は、生存能を維持することができ、細胞の増大を経る。in vitroシステムを、例えば、標的細胞亜集団の付着及び成長を選択的に促進する条件を提供することにより標的細胞亜集団の選択的な付着及び成長を促進するように構成することができる。上記条件は、生理学的に関連のある条件(例えば、in vivo環境条件に似た環境条件)であってもよい。
【0145】
基材の例
基材120(
図1に示され、本明細書では「「本発明の基材(substrate of the invention)」、「本発明の基材(invention substrate)」又は単に「基材」と同義に参照される)は、細胞の不均一な集団を含む試料から標的細胞亜集団を捕捉することができる。本発明の基材は、非標的細胞亜集団(例えば、付着性ではない、及び/又は非生存細胞)と比べて、標的細胞亜集団(例えば、付着性の、及び/又は生存細胞)の選択的な付着及び成長を促進することができる。例えば、基材は、他の種類の細胞と比べて、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、血管内皮前駆細胞(EPCs)、初代細胞、胎児細胞、幹細胞、免疫細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、癌細胞、白血球、成人幹細胞、及び/又は上皮前駆細胞(EPCs)の選択的な付着及び成長を促進することができる。本発明の基材を、特定の種類の標的細胞亜集団の選択的な付着及び成長を促進するように構成することができる。基材は、他の種類の細胞と比べて、CTCs、CSCs、EPCs、幹細胞、上皮細胞、初代細胞又は癌細胞の選択的な付着及び成長を促進することができる。基材は、他の種類の細胞と比べて、CTCs及び/又はCSCsの選択的な付着及び成長を促進することができる。したがって、本発明の基材は、標的細胞亜集団を更に富化する場合がある。本発明の基材は、標的細胞亜集団/非標的細胞亜集団の比率を、本来の比率に対して少なくとも1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、10,000倍、20,000倍、50,000倍、100,000倍、200,000倍、500,000倍、1,000,000倍、2,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、20,000,000倍、50,000,000倍、100,000,000倍、200,000,000倍、500,000,000倍、1,000,000,000倍、2,000,000,000倍、又は5,000,000,000倍の因数で富化することができる。
【0146】
基材を、標的細胞亜集団が1又は複数の明確に異なる形態学的特性をとることを可能とするように構成することができる。或る一つの非限定的な例では、1又は複数の明確に異なる形態学的特性の採用は、標的細胞亜集団を非標的細胞亜集団とは明確に異なるようにすることができる。そのようにして、基材は、1又は複数の形態学的特性に基づいて、細胞亜集団の不均一な集団から標的細胞亜集団の選択を可能とすることができる。
【0147】
一例に過ぎないが、本発明の基材上に播種した後、非標的細胞亜集団の表面積と比べて大きな表面積により、CTCs及び/又はCSCsを他の細胞亜集団とは形態学的に明確に異なるようになる場合がある。一例に過ぎないが、本発明の基材上に播種してから約20分〜1時間後にCTCs及び/又はCSCsは、基材に接触する前の細胞の直径の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、50倍超と想定される直径で基材上に拡散する。本発明の基材と接触した後のCTC及び/又はCSCの直径は、約20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、80μm以上、85μm以上、90μm以上、95μm以上、100μm以上、又は100μm超であってもよい。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが大きな直径を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0148】
或る実施形態では、CTCs及び/又はCSCsは、基材上に播種した後、非常に大きな表面積を伴う細胞質を特徴とする、「パンケーキ」様の形状を想定する。CTC及び/又はCSCの細胞質の表面積は、CTC及び/又はCSCの核の表面積よりも大きい場合がある。例えば、CTC及び/又はCSCの細胞質の表面積は、核の表面積の2倍〜4倍であってもよい。対照的に、非CTC又は非CSCの細胞の表面積はその核の表面積の2倍未満であってもよい。本発明の基材上に播種した後のCTC及び/又はCSCの表面積は、非CTC又は非CSCの細胞の表面積の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又は100倍以上であってもよい。本発明の基材上に播種した後のCTC及び/又はCSCの表面積は、少なくとも900μm
2、1000μm
2、1100μm
2、1200μm
2、1300μm
2、1400μm
2、1500μm
2、1600μm
2、1700μm
2、1800μm
2、1900μm
2、2000μm
2、2100μm
2、2200μm
2、2300μm
2、2400μm
2、2500μm
2、2600μm
2、2700μm
2、2800μm
2、2900μm
2、3000μm
2、3100μm
2、3200μm
2、3300μm
2、3400μm
2、3500μm
2、3600μm
2、3700μm
2、3800μm
2、3900μm
2、4000μm
2、4500μm
2、5000μm
2、5500μm
2、6000μm
2、6500μm
2、7000μm
2、7500μm
2、8000μm
2、8500μm
2、9000μm
2、9500μm
2、10000μm
2、又は10000μm
2超であってもよい。対照的に、本発明の基材上に播種した後の非CTC又は非CSCの細胞の表面積は、約500μm
2〜700μm
2である。大きさの相違は、基材に細胞が付着するまで検出できない場合がある。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが非標的細胞の表面積よりも大きな表面積を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0149】
CTCs及び/又はCSCsは、上記基材上に播種した後に1つの細胞当たり複数の核を呈する場合がある。CTCs及び/又はCSCsは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10超の核を呈する。対照的に、非CTC又は非CSCの細胞は一般的には1つの細胞当たり1つの核を呈する。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが1つの細胞当たり1より多い核を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0150】
本発明の基材は、形態学的特性に基づいてEPCsを同定することを可能とし得る。EPCsは、基材と接触すると紡錘体様の外観を形成し得る。基材と接触するEPCの幅は、EPCの長さの少なくとも2倍〜5倍小さくてもよい。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、EPCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが標的細胞亜集団のメンバーの長さよりも少なくとも2倍〜5倍小さい幅を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0151】
本発明の基材は、HSCsを形態学的特性に基づいて同定されることを可能とし得る。HSCsは、本発明の基材と接触すると丸い、緻密な外観を形成する。場合によっては、基材と接触しているHCSsの直径は、20μmを超えない場合がある。場合によっては、播種後のHSCsの直径は、培養培地に懸濁した場合にHSCsの直径の2倍を超えない。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、HSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及びメンバーが、基材への付着前の細胞の直径の2倍を超えない播種後直径を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0152】
標的細胞亜集団が1又は複数の異なる動態学的性質をとれるように上記基材を構成することができる。或る非限定的な例として、1又は複数の異なる動態学的性質の採用は、標的細胞亜集団が非標的細胞亜集団と異なるようにすることを可能とし得る。そのため、基材は、1又は複数の動態学的特性に基づいて、細胞亜集団の不均一な集団から標的細胞亜集団の選択を可能とすることができる。
【0153】
動態学的性質の例として、細胞増殖速度が挙げられ得る。例えば、異なる速度で不均一集団の細胞における異なる細胞亜集団の増殖を促進するように基材を構成することができる。例えば、不均一集団の細胞(複数の細胞亜集団、例えば、非癌性細胞、CTCs、CSCs及び白血球を含む)を本発明の基材上に播種してもよい。不均一集団の細胞を増殖に十分な時間に亘りインキュベートする場合、異なる細胞亜集団は異なる速度で増殖を経る場合がある。例えば、非癌性細胞は増殖しない場合がある。他の例として、CTCsは各々のサブコロニーが異なる速度で増殖を経る、サブコロニーを形成する可能性がある。CTCs及び/又はCSCsの異なる速度の増殖は、非癌性細胞の増殖速度よりもより速い場合がある。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが急速な細胞分裂を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。急速な細胞分裂は、本発明の基材上に播種して3日以内に細胞培養密度の30倍の増加により証明され得る。急速な細胞分裂は、本発明の基材上に播種して5日以内に細胞培養密度の100倍の増加により証明され得る。急速な細胞分裂は、本発明の基材上に播種して10日以内に細胞培養密度の100倍の増加により証明され得る。急速な細胞分裂は、非標的細胞亜集団の増殖と比較して、標的細胞亜集団の増殖2倍以上の増加により証明され得る。
【0154】
また、動態学的性質の例としてコロニー形成も挙げられ得る。細胞コロニーは、固体培地の表面又はその内部での細胞成長のクラスターであってもよい。コロニーは、単一の細胞に起因することができる。クラスター内の細胞は、互いの頂部で成長し得る。非標的細胞亜集団の感知できる程度のコロニー形成を伴わずに標的細胞亜集団のコロニー形成を促進するように基材を構成することができる。例えば、本発明の基材上に播種するに際して、白血球は増殖するがコロニーを形成しない場合がある。CTCs及び/又はCSCsは、本発明の基材上に播種した際にコロニー形成を経る場合がある。コロニーは、三次元コロニーの場合がある。三次元コロニーは、互いの頂部でCTCs及び/又はCSCsを成長させることにより形成され得る。対照的に、非CTC又は非CSC細胞は、一般的には三次元コロニーを形成しない。したがって、本発明は、不均一細胞集団と本発明の基材とを接触させること、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の成長を可能とするのに十分な条件下で不均一細胞集団をインキュベートすること、及び標的細胞亜集団のメンバーが三次元コロニー形成を呈する場合に標的細胞亜集団のメンバーを同定することの方法を提供する。
【0155】
図4は、標的細胞亜集団415が本発明の基材405上に播種され、基材上で1又は複数の異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質を採用する例示的方法400を図解する。フィコールに基づく密度分離による単核層は、基材と接触させることができる。パネル420は、基材405とインキュベートした細胞の不均一集団を含む試料410を説明する。この説明では、細胞の不均一集団は、標的細胞亜集団415、白血球425及び他の細胞427を含む。
【0156】
パネル430は、白血球425又は他の細胞427よりも高い親和性で基材405に付着する標的細胞亜集団415を説明する。基材405に付着しない細胞を、例えば培地433又は他の物質で洗浄することにより除去することができる。
【0157】
パネル440は、基材405上で増大し、細胞分裂周期を開始する標的細胞亜集団415に由来する細胞を示す。捕捉された白血球425は分裂し得るが、白血球425は一般的には標的細胞亜集団415と同じような増大する形態学又は動態学的特性を有しない。パネル450は、異なる速度で1又は複数の細胞分裂周期を経た捕捉された標的細胞亜集団415を示す。標的細胞亜集団415は、基材上にコロニーを形成する可能性がある。捕捉した白血球425は増殖し得るが、白血球は一般的には基材405上にコロニーを形成しない。コロニーに存在せず、基材405に付着していない細胞は、培地433又は他の物質で洗浄され得る。
【0158】
基材構成の例
本発明の基材の多くの構成が本発明に包含される。
図5は、捕捉した標的細胞亜集団505により説明される基材構成の種々の例を説明する。パネル510は、本発明の基材の「単層」構成の例を示し、結合表面層515が唯一の層である。パネル520は、結合表面層515に隣接する基底層530を含む本発明の基材の「二層」構成の例を示す。パネル540は、基底層530、1又は複数の中間層550、及び結合表面層515を含む本発明の基材の「中間層」構成の例を示す。パネル560は、2つの基底層530、結合表面層515、及びフィーディング層570を含む本発明の基材の「逆位」構成の例を示す。逆位構成は、外層が互いに向かい合い、2つの基材間の距離は0.1mm〜20mm程度、1mm〜10mm程度、又は1mm〜5mm程度の範囲であってもよく、およそ0.1mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、12mm、15mm、17mm、又は20mmであってもよい、半密封チャンバ作成することができる。
【0159】
基底層の例
基底層530は、プラスチック、ガラス、ゼラチン、基底膜、ポリアクリルアミド又はそれらの組み合せを含む成分で作製され得る。基底膜を含む成分の例として、限定されないが、ラミニン、IV型コラーゲン、エンタクチン、及びペルレカンが挙げられる。基底層は、硬度を有するように構成され得る。場合によっては、基底層の硬度は、脳組織等の軟組織の硬度を疑似する。かかる場合では、基底層の硬度は、0.02キロパスカル(kPa)〜20kPa、0.05kPa〜1.5kPa、又は0.1kPa〜1.0kPaである。場合によっては、基底層の硬度は骨組織の硬度を疑似する。かかる場合では、硬度は30kPa〜150kPa、40kPa〜125kPa、又は50kPa〜100kPaであってもよい。場合によっては、基底層の材料は、器具として構成されてもよい。かかる商業的に利用可能な機器の例として、顕微鏡スライド、培養プレート/皿、ペトリ皿、顕微鏡カバースリップ、密閉した培養皿、及びマルチウェル培養皿(例えば、EMD Millipore CorporationのMillicell Cell Culture Inserts(商標))が挙げられる。
【0160】
結合表面層の例
結合表面層515は、例えば細胞単相、細胞内成分(例えば、細胞溶解物から得られる)、細胞外マトリクス(ECM)と関連する生体材料、ゼラチンの1若しくは複数、又はそれらの任意の組み合せを含むことができる。
【0161】
結合表面層は、細胞単相を含むことができる。細胞単相は、全体に又は部分的に、哺乳動物の培養細胞を含むことができる。哺乳動物の培養細胞は、哺乳動物の細胞株を含むことができる。哺乳動物の細胞株は、例えば、上皮の性質であってもよく、血管、静脈、若しくは毛細血管の起源であってもよい。哺乳動物の培養細胞の非限定的な例として、マウス胚線維芽細胞(MEFs)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)が挙げられる。細胞株を、初代供給源又は不死化細胞株から得ることができる。場合によっては、細胞の単層を紫外線又はX線の供給源により照射し、細胞の老化を引き起こしてもよい(例えば、単層細胞の更なる増殖を停止するため)。場合によっては、細胞単層は、1又は複数の異なる細胞種(例えば、異なる系統又は異なる細胞株に起因する細胞)の混合物を含有してもよい。異なる細胞種を共に共培養してもよい。一つの非限定的な例は、細胞単層を形成するように混合されたトランスジェニックマウス胚線維芽細胞と共培養された初代ヒト血管内皮細胞の組み合せである。
【0162】
結合表面層は、細胞内成分の混合物を含むことができる。細胞内成分の混合物を得るための一つの方法は、細胞を溶解し(例えば、細胞原形質膜を破壊すること)、細胞質成分を採取することによる。溶解した細胞は、初代であってもよく、不死化されていてもよい。更に、溶解した細胞は、単独培養又は共培養のいずれに由来してもよい。それから溶解物を得る細胞株の例として、限定されないが、MEFs、HUVEC及びHLMVECの細胞が挙げられる。細胞溶解物を、過剰量の溶液を除去することによりそれら組成を濃縮してもよい。過剰量の溶液は、遠心分離、膜による透析、気体で補助する蒸発、又はそれらの任意の組み合せを含む、当業者に既知の種々の方法で除去され得る。
【0163】
結合表面層は、細胞外マトリクス(ECM)又は結合部分と関連する生体材料を含むことができる。かかるECMと関連する生体材料として、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、レチクリン、吸湿性分子(グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、グリコカリックス)、ウシ血清アルブミン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、及びポリ−オルニチン(例えば、ポリ−L−オルニチン)が挙げられ得る。或る実施形態では、ECMと関連する生体材料は正電荷を帯びる(例えば、ポリ−オルニチン)。また、ECMと関連する生体材料の商業的に入手可能な供給源も存在し、商業的に入手可能な供給源の一例は、Matrigel(商標)(BD Biosciences)である。結合部分の例は本明細書に記載される。
【0164】
結合表面層は、ゼラチンを含んでもよい。ゼラチンは、動物の供給源に由来する。例えば、ゼラチンは、ブタ及び/又はウシのゼラチンであってもよい。場合によっては、結合表面層は、コラーゲンと混合したゼラチン(例えば、ブタゼラチン)を含むことができる。場合によっては、ゼラチンを、1又は複数の細胞単層、細胞内成分、結合部分、ECMと関連する生体材料、又はそれらの任意の組み合せと直接混合して結合表面層を作製することができる。場合によっては、結合表面層は、商業的に入手可能な製品(例えば、Matrigel(商標)(BD Biosciences);Vita−Assay(商標)(ニューヨーク州のVitatex))を含むことができる。場合によっては、結合表面層は、血清を含むことができる。
【0165】
任意の中間層(複数の場合がある)の例
基材が「中間層」構成540である場合、基材は1又は複数の中間層を有することができる。「中間層」構成540では、基底層530と結合表面層515の間に1又は複数の中間層550が存在してもよい。サンドイッチの中間層(複数の場合がある)は、1又は複数の細胞の単層であってもよい。単相の細胞は、様々な起源であってもよい。中間層の或る一つの非限定的な例は、基底層上でマウス胚線維芽細胞のコンフルエントな単相を成長させた後、別の細胞層である結合表面層をコンフルエントなマウス胚線維芽細胞の頂部で成長させることにより作製される。
【0166】
フィーダー層の例
「逆位」構成を有する基材560は、フィーダー層570を含むことができる。フィーダー層570は、基底層に隣接し得る。フィーダー層は、結合表面層から分離され得る。或る実施形態では、標的細胞亜集団505は、フィーダー層570と比較して結合表面層515に優先的に結合する。フィーダー層570は、フィーダー細胞の単層を含み得る。単層の細胞は任意の起源であってもよい。フィーダー細胞の例は、本明細書に記載される。フィーダー細胞の或る一つの非限定的例は、ヒト血管内皮細胞又はマウス胚線維芽細胞の単層を基底層上で成長させることにより作製される。
【0167】
「逆位層」基材の例を
図6に示す。「逆位層」基材の例は、組織培養プラスチック及び/又はガラスを含む2つの基底層、結合基材(例えば、ECMと関連する生体材料)を含む結合表面層、及びフィーダー細胞の単層を含むフィーダー層を含む。また、
図6は、逆位層基材上に播種した後の標的細胞の形態学的及び運動の特性の例を示す。播種から30分以内に標的細胞は結合表面層への付着を呈する場合がある。播種から2時間以内に標的細胞は細胞拡散を呈する場合がある。24時間〜72時間以内に標的細胞は細胞分裂を呈し、標的細胞のコロニーを生じる場合がある。
【0168】
本明細書において「GOL基材」と呼ばれる本発明の基材の例示的実施形態は、ゼラチン、ECMと関連する生体材料、及び血清を含むことができる。ゼラチンはブタゼラチンであってもよい。ECMと関連する生体材料は、ポリ−オルニチン(例えば、ポリ−L−オルニチン)であってもよい。血清は、ウシ胎仔血清であってもよい。或る実施形態では、GOL基材はブタゼラチン、ポリ−オルニチン、ウシ胎仔血清を含む。例えば、GOL基材は、0.01%〜10%のブタゼラチン、0.001mg/ml〜0.5mg/mlのポリ−L−オルニチン、及び0.5%〜20%のウシ胎仔血清を含むことができる。或る一つの実施形態では、GOL基材は、約0.1%のブタゼラチン、およそ0.05mg/mLのポリ−L−オルニチン塩酸塩、及びおよそ5%のウシ胎仔血清(FBS)を含む。
【0169】
本明細書で「GEL基材」と呼ばれる本発明の基底層(substratum)の別の例は、ゼラチン及び1又は複数のECMと関連する生体材料を含むことができる。GEL基材は、例えば、ゼラチン、及び2以上のECMと関連する生体材料を含むことができる。GEL基材は、ゼラチン及び3以上のECMと関連する生体材料を含むことができる。GEL基材は、例えば、ゼラチン及びコラーゲンを含むことができる。GEL基材は、ゼラチン、コラーゲン、及び/又はラミンを含むことができる。GEL基材は、ゼラチン、コラーゲン、ラミン、及び/又はフィブロネクチンを含むことができる。或る実施形態では、GEL基材は、0.01%〜10%のブタゼラチン、0.01mg/ml〜1mg/mlのコラーゲン、0.01mg/ml〜1mg/mlのラミニン、0.01mg/ml〜1mg/mlのフィブロネクチンを含むことができる。或る一つの実施形態では、GEL基材は、約0.1%のブタゼラチン、及び1又は複数の以下のタンパク質、すなわち、およそ0.1mg/mLのコラーゲン(例えば、Sigma C7774)、およそ0.1mg/mLのラミニン(例えば、Sigma L2020)、及び/又はおよそ0.1mg/mLのフィブロネクチン(例えば、Sigma F0895)を含む。
【0170】
本発明の基材を、本明細書に記載の1又は複数の層の接合により調製することができる。層の接合は、頂部の単層、基底層又は中間層における細胞の成長によって完成され得る。また、層の接合は、正味の正電荷、正味の負電荷、又は正味の中性電荷のいずれかの表面により表面を前処理することにより完成され得る。複合の手順は、化学部分、リンカー、タンパク質フラグメント、ヌクレオチドフラグメント、又はそれらの任意の組み合せにより支援され得る。
【0171】
当業者が認識するように、基材の正確な構成及び組成を特定の標的細胞亜集団の富化のために調整することができる。基材の組成は、患者のタイプ、癌の種類、癌のステージ、患者の病歴、並びに患者の腫瘍(複数の場合がある)の遺伝子解析及びプロテオーム解析に基づいて変化し得る。
【0172】
標的細胞亜集団の成長に適した環境条件
分析に十分な標的亜集団細胞のメンバー、例えば、CTCs又はCSCs等を提供する挑戦の一つは、長期間、細胞生存能を維持できないことである。したがって、本発明は、標的細胞亜集団の長期間のin vitroでの生存能及び増大を促進する培養方法を提供する。培養方法は、標的細胞亜集団の成長に適した環境条件において標的細胞亜集団をインキュベートすることを含むことができる。したがって、本発明は、閉鎖環境チャンバを含む細胞培養インキュベータも提供し、そのインキュベータは、標的細胞亜集団の成長に適した環境条件を維持するように構成される。環境条件は、in vivo血管構造系を疑似するように構成され得る。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、非標的細胞亜集団と比較して基材への標的細胞亜集団の付着を高めることができる。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の標的細胞亜集団の基材への付着をもたらすことができる。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、標的細胞亜集団の生存能を促進する。例えば、標的細胞亜集団は、本明細書に記載される1又は複数の環境条件下でのインキュベーションにより、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、又は12週間超に亘る培養で生存し得る。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、少なくとも1週間の培養において少なくとも15%、20%、25%%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の生存する標的細胞亜集団を生じることができる。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、少なくとも2週間の培養において少なくとも15%、20%、25%%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の生存する標的細胞亜集団を生じることができる。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、少なくとも4週間の培養において少なくとも15%、20%、25%%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の生存する標的細胞亜集団を生じることができる。本明細書に記載される1又は複数の環境条件下での標的細胞亜集団のインキュベーションは、無期限の培養において少なくとも15%、20%、25%%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の生存する標的細胞亜集団を生じることができる。
【0173】
分析に十分な標的亜集団細胞のメンバー、例えば、CTCs又はCSCs等を提供する別の挑戦は、長期の培養で標的細胞亜集団を増大できないことである。本発明の方法を利用することにより、標的細胞亜集団を、1週間、2週間、3週間、4週間、8週間、12週間、又は12週間超に亘る培養で増大し得る。本発明の方法を利用することにより、基材亜集団に付着した後に少なくとも15%、20%、25%%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%超の標的細胞亜集団を、1週間、2週間、3週間、4週間、8週間、12週間、又は12週間超に亘る培養で増大し得る。本発明の方法を利用することにより、標的細胞亜集団を無期限に生存させ得る、及び/又は増大させ得る。或る実施形態では、上記培養方法は、成長に適した環境条件において標的細胞亜集団をインキュベートすることを含む。場合によっては、標的細胞亜集団は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、又は100超の倍加周期に亘り増大することができる。
【0174】
標的細胞亜集団に適した環境条件は、規定の内部周囲温度を含む閉鎖環境チャンバにおいて培養することを含む。閉鎖環境チャンバは、細胞培養インキュベータの内部チャンバであってもよい。閉鎖環境チャンバの内部周囲温度は、摂氏およそ34度〜およそ42度であってもよく、摂氏およそ34度、35度、36度、37度、38度、39度、40度、41度、又は42度を含む。したがって、本発明の細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバを含み、そのインキュベータは、閉鎖環境チャンバの内部周囲温度を維持するように構成される。
【0175】
標的細胞亜集団の成長に適した環境条件は、内部気体組成を含む閉鎖環境チャンバにおいて培養することを含むことができる。閉鎖環境チャンバの気体組成は、規定のO
2レベルを含むことができる。規定のO
2レベルは、無視できる量のO
2から約20%O
2以下の範囲(例えば、内部気体組成の約20%を占めるO
2)であってもよく、およそ0%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%のO
2を含む。規定のO
2レベルを標的細胞亜集団の培養のため低酸素環境を提供するように構成することができる。或る実施形態では、規定のO
2レベルは、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下である。場合によっては、閉鎖環境チャンバのO
2レベルは、0.5%〜2%の範囲である。閉鎖環境チャンバのO
2レベルは約1%であってもよい。
【0176】
気体組成は、規定のCO
2レベルを含むことができる。例えば、標的細胞亜集団を、約1%〜約15%CO
2の間、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%のCO
2レベルを含む閉鎖環境チャンバにおいて成長させることができる。閉鎖環境チャンバのCO
2レベルは、約2%〜10%であってもよい。閉鎖環境チャンバのCO
2レベルは、約3%〜8%であってもよい。閉鎖環境チャンバのCO
2レベルは、約5%であってもよい。
【0177】
気体組成は、窒素ガスレベルを含むことができる。窒素ガスレベルは、約50%〜99.5%であってもよく、およそ50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.5%超を含む。窒素ガスレベルは、約90%〜99%、約92%〜98%、約93%〜96%、又は約94%であってもよい。或る実施形態では、窒素ガスレベル約93%〜94%である。或る特定の場合では、標的細胞亜集団を約1%O
2、5%CO
2、及び94%窒素ガスを有する環境において成長させる。特定の場合、標的細胞亜集団を約2%O
2、5%CO
2、及び93%窒素ガスを有する環境において成長させる。
【0178】
標的細胞亜集団の成長に適した環境条件は、加圧条件下で培養することを含むことができる。例えば、標的細胞亜集団の成長に適した環境条件は、規定の大気圧を含む閉鎖環境チャンバにおいて培養することを含むことができる。閉鎖環境チャンバの規定の大気圧を、使用者によって設定することができる。例えば、閉鎖環境チャンバの規定の大気圧を、ヒト血管構造系の毛細血管に存在する平均圧と等しい又はそれより大きい力を生じるように設定することができる。閉鎖環境チャンバの規定の大気圧は、15PSIA以上であってもよく、15.7PSIA以上であってもよく、16.7PSIA以上であってもよく、17.7PSIA以上であってもよく、18.7PSIA以上であってもよく、又は19.7PSIA以上であってもよい。閉鎖環境チャンバの規定の大気圧は、約15.7PSIA〜19.7PSIA、約15.7PSIA〜18.7PSIA、約15.7PSIA〜17.7PSIA、又は約16.7PSIAであってもよい。インキュベーション条件は、増殖される細胞の種類に応じて変化し得る。
【0179】
標的細胞亜集団の成長に適した環境条件は、加圧環境チャンバで低酸素条件において成長させることを含む。場合によっては、標的細胞亜集団を規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び規定の内部大気圧を含む閉鎖環境チャンバにおいて成長させることができる。特定の場合には、規定の気体組成は1%O
2、5%CO
2、94%及び窒素ガスであり、規定の内部大気圧は16.7PSIAであり、規定の内部周囲温度は約37℃である。
【0180】
標的細胞亜集団を嫌気性細胞の成長用に構成された環境チャンバにおいてインキュベートすることができる。かかる環境チャンバとして、Shel LabsによるBactron(商標)嫌気チャンバ(www.shellab.com)が挙げられ得る。
【0181】
したがって、本発明は、標的細胞亜集団の成長に適した環境条件を提供するように構成された細胞培養インキュベータを提供する。細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバ内の規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び規定の内部大気圧を維持するように構成され得る。また、細胞培養インキュベータは、閉鎖環境チャンバ内で規定の内部湿度を維持するように構成され得る。例示的な規定の内部周囲温度、規定の内部大気圧、及び規定の気体組成は本明細書に記載される。細胞培養インキュベータは、1又は複数の制御ユニットを含むことができる。1又は複数の制御ユニットは、規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び/又は規定の内部大気圧の1又は複数を維持するように構成され得る。規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び規定の内部大気圧のいずれか1つを使用者によって制御することができる。場合によっては、規定の内部大気圧は使用者によって制御される。細胞培養インキュベータは、ユーザーインターフェースを含むことができる。ユーザーインターフェースは、規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び規定の内部大気圧のいずれか1つを制御するように構成され得る。
【0182】
細胞培養インキュベータを1又は複数の気体タンクに制御可能に連結することができる。1又は複数の気体タンクは、CO
2タンク、窒素ガスタンク、酸素ガスタンク、規定の混合物又は1若しくは複数の気体を含む気体タンク、又はそれらの任意の組み合せを含むことができる。細胞培養インキュベータを、加圧ポンプ及び/又は加圧センサ(例えば、圧力ゲージ)により1又は複数の気体タンクに制御可能に連結することができる。加圧ポンプ及び/又は圧力センサを、細胞培養インキュベータの閉鎖環境チャンバへの1又は複数の気体タンクからの制御された気流を維持するように構成することができる。1又は複数のタンクからの制御された気流は、設定されたインレット圧力、閉鎖環境チャンバの所望の内部気体組成及び/又は内部大気圧を維持するように構成された1又は複数のタンクの設定インレット圧力を有することができる。
【0183】
細胞培養インキュベータは、1又は複数のセンサを含むことができる。1又は複数のセンサを、規定の気体組成、規定の内部周囲温度、及び/又は規定の内部大気圧からの気体組成、内部周囲温度、及び/又は内部大気圧の1又は複数の偏差に際して検出可能なアラームを提供するように構成することができる。例えば、1又は複数のセンサは、検出されたO
2レベルが規定のO
2レベルから±0.5%より大きく異なる場合に閉鎖環境チャンバのO
2レベルの検出に際して検出可能なアラームを提供することができる。1又は複数のセンサは、検出された内部大気圧が規定の大気圧から±0.5%より大きく異なる場合に閉鎖環境チャンバの内部大気圧の検出に際して検出可能なアラームを提供することができる。1又は複数のセンサは、検出された内部周囲温度が規定の内部周囲温度から±0.5%より大きく異なる場合に閉鎖環境チャンバの内部周囲温度の検出に際して検出可能なアラームを提供することができる。
【0184】
細胞培養インキュベータは、酸素除去触媒を含むことができる。酸素除去触媒は、1又は複数の気体タンクに制御可能に連結されていてもよく、又は連結されていなくてもよい。当該技術分野で既知の、或いは本明細書に記載される任意の酸素除去触媒を使用してもよい。例示的な酸素除去触媒は、例えば、BASFから商業的に入手可能である。例示的な酸素除去触媒は、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,735,670号及び第4,034,062号、並びに米国特許出願公開第20090041646号に記載される。
【0185】
本発明の細胞培養インキュベータを、インキュベータの閉鎖環境チャンバが小さい体積の空間を占めるように構成することができる。例えば、インキュベータの閉鎖環境チャンバは、3.5立法フィート以下の空間、22立法フィート以下の空間、1.5立法フィート以下の空間、又は1立法フィート以下の空間を占めることができる。或る実施形態では、細胞培養インキュベータの閉鎖環境チャンバは、1立法フィート未満の空間を占め、例えば、0.5フィート×0.5フィート×0.5フィートの空間を占める。細胞培養インキュベータを、3.5立法フィート以下の空間、22立法フィート以下の空間、1.5立法フィート以下の空間、又は1立法フィート以下の空間を占めるように構成することができる。或る実施形態では、細胞培養インキュベータは、1立法フィート未満の空間を占める、例えば、0.5フィート×0.5フィート×0.5フィートの空間を占める。
【0186】
図7Aは、本発明の細胞培養インキュベータ700の例を示す。インキュベータ700は、加圧ドアを含むことができる。或る実施形態では、インキュベータは、外部加圧ドア及び内部加圧ドアを含む。外部加圧ドア及び/又は内部加圧ドアは、例えば、二重壁ドアであってもよい。二重壁ドアは、圧力密封ラッチを有することができる。外部加圧ドアは、ドアに一体型圧力センサを含んでもよい。インキュベータ700は、ドアエントリを含むことができる。ドアエントリは、閉鎖環境チャンバへの入り口を提供することができる。ドアエントリの開口の寸法は、加圧ドアよりも小さくてもよい。ドアエントリはゴムガスケットを含むことができる。ゴムガスケットは、加圧シールを作り出すことができる。細胞培養インキュベータは、一体型圧力センサを含むことができる。一体型圧力センサは、マニホルド圧力センサであってもよい。一体型圧力センサは、水による又はシリコンによる圧力センサであってもよい。インキュベータ700は、滅菌ユニットを含むことができる。滅菌ユニットは、UVによる滅菌ユニットであってもよい。UVによる滅菌ユニットを、インキュベータの閉鎖環境チャンバの全空間に対して紫外線を供給するように構成することができる。インキュベータ700は、CO
2センサを含むことができる。CO
2センサを、閉鎖環境チャンバの規定のCO
2レベルから+/−0.5%偏差の際の検出アラームを提供するように構成することができる。インキュベータ700は、閉鎖環境チャンバを含むことができる。閉鎖環境チャンバによって占められる容積は、1立法フィート以下であってもよい。閉鎖環境チャンバは、棚を備えることができる。棚は、閉鎖環境チャンバから取り除けるものであってもよい。棚は、金属材料を含むことができる。金属材料は、ステンレス鋼、銅、又は他の好適な金属であってもよい。インキュベータ700は、水分湿気トレイを備えることができる。水分湿気トレイは、閉鎖環境チャンバの無菌状態を高めることができる。水分湿気トレイを湿度センサ/調節器に直接つないでもよい。インキュベータ700は、エアジャケットを備えることができる。エアジャケットは、最適温度及び適切な気体調節を維持することができる。エアジャケットは、物理的に異なるコンパートメントであってもよい。エアジャケットは、電気制御装置及び配電盤を収容してもよい。インキュベータ700は、酸素除去触媒、及びインキュベータ内の酸素レベルを調節するセンサを含むことができる。
【0187】
インキュベータ700は、加熱素子及び/又は温度制御を含むことができる。加熱素子及び/又は温度制御は、低音ファンによる加熱素子を含むことができる。低音ファンによる加熱素子は、エアジャケットコンパートメントへの加熱した空気の一定の流れを分配することができる。その後、パッシブ加熱は、均一に分配された一定の方式で内部チャンバを温めることができる。インキュベータは、規定のガス組成及び内部大気圧を提供するように構成された加圧ポンプ及び調整器を含むことができる。電動式ポンプは、規定の気体混合物を分配してチャンバ圧及び気体組成レベル(例えば、1%酸素、5%CO
2、94%N
2)を維持することができる。インキュベータは、ユーザーインターフェースを含むことができる。使用者は、ユーザーインターフェースを使用して気体レベル及び圧力を設定することができる。ユーザーインターフェースを、直接制御のためセンサ及びポンプに統合することができる。加圧ポンプ及び調節器は、1又は複数の気体インレットを含むことができる。より多くの気体インレットの1つを、閉鎖環境チャンバへの任意の気体の流れを可能とするように構成することができる。例えば、1又は複数の気体インレットを酸素タンクに接続することができる。1又は複数の気体インレットをCO
2タンクに接続することができる。1又は複数の気体インレットを窒素タンクに接続することができる。或る実施形態では、インキュベータは、酸素タンクに接続された気体インレット、CO
2タンクに接続された気体インレット、及び窒素タンクに接続された気体インレットを含む。1又は複数の気体インレットを特注の気体混合物を含有するタンクに接続することができる。或る実施形態では、使用者は、気体インレットのいずれか及び/又は各々を通る気流を制御することができる。気体インレットのいずれか1つを流量計に接続してもよい。流量計は、流入する気圧を調節することができる。細胞培養インキュベータは、湿度制御ユニット/センサを含むことができる。湿度制御ユニット/センサは、水分湿気トレイに直接に接続されていてもよく、そうでなくてもよい。
【0188】
本明細書に記載される具体的な環境条件において標的細胞亜集団をインキュベートすることにより、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の生存能及び増殖を高めることができる。様々な組織及び臓器のin vivo微小環境は、新たな癌の成長に対して影響を受けやすい特有の圧力、硬度、及び/又は気体組成を有することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の培養方法は、本明細書に記載される特定の硬度を有する本発明の基材上で標的細胞亜集団を成長すること、本明細書に記載される外部圧力を印加すること、及び本明細書に記載される気体条件(例えば、O
2、CO
2条件)を設定することの組み合せによりin vivo微小環境を真似ることができる。本明細書に記載される環境条件は、細胞接着及び後の細胞分裂を促進する遺伝子及びタンパク質の発現を調節することができる。例えば、低酸素条件(例えば、1%O
2)は、増殖するCTCsにおいて高発現することが示されている、低酸素誘導因子I(HIF−1)の発現を誘導することができる。
【0189】
理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される環境条件は、標的細胞亜集団(例えば、CTCs及び/又はCSCs)の内部の張力又は硬度を調整する可能性がある。一例に過ぎないが、CTCの張力又は硬度に関して、CTC硬度の増加は、血管構造系に見出される剪断力に耐える防御能力を与える可能性がある。逆を言えば、その全体的な硬度を減少する組織に結合するCTCは、より転移しやすい可能性がある。本明細書に記載される環境条件は、細胞張力を低減することができ、それにより、細胞サイズの増加、付着細胞の強度の減少、及び/又は細胞動態学的特性の増加を導くことができる。癌の成長を促進し得る細胞張力及び/又は基材硬度は、CTCの癌の種類に依存し得る。したがって、本明細書に記載される環境条件は、標的とされるCTC(複数の場合がある)の種類に応じて調節され得る。
【0190】
細胞培養培地の例
本発明は、1又は複数の細胞培養培地125(
図1に示され、本明細書において「富化培地」とも呼ばれる)を具体的な富化標的細胞亜集団に対して提供することができる。例えば、他の種類の細胞と比べて、循環腫瘍細胞(CTCs)、癌幹細胞(CSCs)、造血幹細胞(HSCs)、血管内皮前駆細胞(EPCs)、胎児細胞、幹細胞、免疫細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、癌細胞、白血球、成人幹細胞、及び/又は上皮前駆細胞の成長を選択的に促進するように細胞培養培地を処方することができる。特定の実施形態では、細胞培養培地は、他の種類の細胞と比べて、CTCs、CSCs、EPCs、幹細胞、上皮細胞、又は癌細胞の選択的な成長を促進する。細胞培養培地は、本発明の培地中の培養前の本来の比率に対して、少なくとも1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、10,000倍、20,000倍、50,000倍、100,000倍、200,000倍、500,000倍、1,000,000倍、2,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、20,000,000倍、50,000,000倍、100,000,000倍、200,000,000倍、500,000,000倍、1,000,000,000倍、2,000,000,000、又は5,000,000,000倍の因数で標的細胞亜集団及び/又は非標的細胞集団の比率を富化し得る。
【0191】
図8は、標的細胞亜集団の増殖を促進するように処方された富化培地805の例示的な実施形態800を示し、この説明において標的細胞亜集団はCTCs815である。富化培地805の組成を、富化のため標的とされる細胞の種類に対して適合することができる。細胞を富化するのに使用される富化培地805の1又は複数の処方が存在する可能性があり、富化培地は、一連の細胞富化の間に変更されてもよい。富化培地805は、基材810と接触していてもよい。或る一つの非限定的な例では、富化培地の処方は、癌の種類、癌のステージ、患者の病歴、並びに患者の腫瘍(複数の場合がある)の遺伝子分析及びプロテオーム分析に対して適合される。細胞の不均一集団(複数の細胞亜集団、例えば、非癌性細胞825、CTCs815、及び白血球820を含む)を基材810上に播種してもよい。細胞を富化培地805中で増殖830に十分な期間に亘りインキュベートする場合、細胞亜集団は、異なる速度の増殖を経ることができる。或る一つの例では、非癌性細胞825は増殖しない場合があり、CTCs815は異なる速度(例えば、840、845、850、及び855を比較)で増殖を経るサブコロニーを形成する場合があり、白血球は、増殖を経る場合があるがコロニー820を形成しない。或る実施形態では、富化培地は、明らかな非標的細胞亜集団のコロニー形成を伴わずに標的細胞亜集団のコロニー形成を促進するように処方される。細胞コロニーは、固体培地の表面又はその内部で成長する細胞のクラスターであってもよい。コロニーは、単一の細胞に起因してもよい。CTCs815は、それらの増殖速度に基づいて分類されてもよい。CTC815分類体系の一例は、非分裂850、低速分裂840、中間速度分裂855、及び高速分裂845として示される。培地中での細胞の増殖能力に基づく細胞の分類は、CTCsの転移特性に関係する可能性がある。或る実施形態では、富化培地、基材、及び圧力条件は、相乗的にはたらいて標的細胞の富化を向上する。
【0192】
細胞培養培地は、商業的に入手可能な細胞培養培地を含むことができる。本発明における使用に適した商業的に入手可能な細胞培養培地の例として、限定されないが、RPMI培地、DMEM、MEM、F−12、DMEM/F12、F10 Nutrient Mixture、培地199、Advanced(商標)培地、Opti−MEM(登録商標)、IMDM、SensiCell(商標)培地、Fluorobrite(商標) DMEM培地が挙げられる。
【0193】
細胞培養培地805は、基材への細胞付着を促進し、長期の細胞生存能力を保証するために特定の添加剤と共に主な栄養源から構成され得る。主な栄養源は、哺乳動物起源、又は哺乳動物起源の混合物に由来してもよい。或る哺乳動物栄養源として、限定されないが、仔ウシ、ウマ、ヤギ、マウス、ラット、及び/又はヒトに由来する血清が挙げられる。或る実施形態では、1又は複数の動物の血清を混合する。ウシ胎仔血清及びヒト血清を、ウシ胎仔血清に対するヒト血清の比率をおよそ1:1、1.5:1、又はおよそ2:1として共に混合することができる。添加され得る添加剤として、イオン、元素、カルシウム、グルタミン酸塩、マグネシウム、亜鉛、鉄、カリウム、ナトリウム、アミノ酸、ビタミン、グルコース、成長因子、ホルモン、組織抽出物、タンパク質、小分子、又はそれらの任意の組み合せが挙げられる。或る実施形態では、培養培地は、細胞培養物、血液血漿、又はそれらの任意の組み合せから採取された培養培地で補充されてもよく、又はそれらで作製されてもよい。場合によっては、1より多い種類の富化培地を使用してもよい。アミノ酸の例として、例えば、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、イソロイシン、メチオニン、ロイシン、リジン、及びヒスチジン等の必須アミノ酸、例えば、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン、プロリン、セリン、チロシン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の他のアミノ酸が挙げられる。細胞培養培地に含まれ得る成長因子の例として、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子(BDNF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子(IGF)、脳由来トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGF−β)が挙げられる。細胞培養培地に含まれ得るホルモンの例として、限定されないが、例えば、インスリン等のペプチドホルモン、例えば、ヒドロコルチゾン、プロゲステロン、テストステロン、エストロゲン、ジヒドロテストステロン等のステロイドホルモンが挙げられる。組織抽出物の例として、例えば、下垂体抽出物が挙げられる。小分子添加剤の例として、例えば、ピルビン酸ナトリウム、エンドセリン−1、トランスフェリン、コレステロール等が挙げられる。
【0194】
或る実施形態では、細胞培養培地は、RPMI−1640(例えば、Sigma−AldrichのR1145)、およそ20%のウシ胎仔血清、およそ0.2g/L〜1.0g/LのL−グルタミン、およそ2g/L〜5g/Lの高グルコース、およそ2g/Lの炭酸水素ナトリウム、及びおよそ25mMのHEPES(例えば、Invitrogenの15630106)を含む。
【0195】
細胞培養培地は、平板培養培地であってもよい。平板培養培地は、F12培地(例えば、Sigma−AldrichのN6658)、およそ5g/L又はおよそ1g/L〜10g/LのD−(+)−グルコース(例えば、Sigma−AldrichのG7021)、1×又は任意に0.1×〜2×最小必須培地(MEM)、およそ10mM又は10mM〜25mMのL−グルタミン(例えば、Sigma−AldrichのG7513)、およそ10mM又は10mM〜25mMのHEPES(例えば、Invitrogenの15630106)、及びおよそ20%哺乳動物の血清(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヒト血漿等)を含むことができる。
【0196】
細胞培養培地はR型長期成長培地であってもよい。R型長期成長培地は、RPMI−1640系培地(例えば、Sigma−AldrichのR4130)、およそ5g/L又はおよそ1g/L〜10g/LのD−(+)−グルコース(例えば、Sigma−AldrichのG7021)、およそ1×MEM非必須アミノ酸(例えば、Sigma−AldrichのM7145)、およそ1×RPMIビタミン(例えば、Sigma−AldrichのR7256)、およそ10mM又はおよそ1mM〜20mMのL−グルタミン(例えば、Sigma−AldrichのG7513)、およそ20%又は5%〜50%の哺乳動物の血清(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヒト血漿等)を含んでもよい。R型長期成長培地のpHをおよそ7.2に調整してもよいが、pHはおよそ6〜8の範囲であってもよい。任意のR型長期成長培地の栄養補助剤として、5μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのインスリン(例えば、組換えヒトインスリン(rhインスリン))、50μg/mL又はおよそ10μg/mL〜100μg/mLのアスコルビン酸、5ng/mL又はおよそ1ng/mL〜20ng/mLの上皮成長因子(EGF)(例えば、組換えヒト(rhEGF))、0.75単位/mLのヘパリン硫酸、1μg/mL又はおよそ0.5μg/mL〜2μg/mLのヒドロコルチゾンヘミスクシネート、15ng/mL又はおよそ5ng/mL〜30ng/mLのインスリン様成長因子1(IGF−1)(例えば、rhIGF−1)、1単位/mL又はおよそ1単位/mL〜10単位/mLのペニシリン、1μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのストレプトマイシン、およそ0.1ng/mL〜25ng/mLのアンホテリシンB、又はそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。
【0197】
細胞培養培地は、DF型長期成長培地であってもよい。DF型長期成長培地は、DMEM/F12培地(例えば、Sigma−Aldrichの51445C)、5g/L又はおよそ1g/L〜10g/LのD−(+)−グルコース(Sigma−AldrichのG7021)、およそ1×MEMの非必須アミノ酸(Sigma−AldrichのM7145)、10mM又はおよそ1mM〜20mMのL−グルタミン(例えば、Sigma−Aldrich、G7513)、及び20%又はおよそ5%〜50%の哺乳動物の血清(例えば、(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清、ウマ血清ヒト血清、ヒト血漿等)を含んでもよい。DF型長期成長培地のpHをおよそ7.2に調整することができるが、pHはおよそ6〜8の範囲であってもよい。任意のDF型長期成長培地の栄養補助剤として、およそ10mM又は10mM〜25mMのHEPES(例えば、Invitrogenの15630106)、5μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのインスリン(例えば、組換えヒトインスリン(rhインスリン))、50μg/mL又はおよそ10μg/mL〜100μg/mLアスコルビン酸、5ng/mL又はおよそ1ng/mL〜20ng/mLの上皮成長因子(EGF)(例えば、組換えヒト(rhEGF))、0.75単位/mLのヘパリン硫酸、1μg/mL又はおよそ0.5μg/mL〜2μg/mLヒドロコルチゾンヘミスクシネート、15ng/mL又はおよそ5ng/mL〜30ng/mLインスリン様成長因子(IGF−1)(例えば、rhIGF−1)、1単位/mL又はおよそ1単位/mL〜10単位/mLのペニシリン、1μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのストレプトマイシン、およそ0.1ng/mL〜25ng/mLのアンホテリシンB、又はそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。
【0198】
細胞培養培地は、D型長期成長培地であってもよい。D型長期成長培地は、DMEM培地、高グルコース(Sigma−AldrichのD6429)、5g/L又はおよそ1g/L〜10g/LのD−(+)−グルコース(Sigma−AldrichのG7021)、およそ1×MEMの非必須アミノ酸(Sigma−AldrichのM7145)、10mM又はおよそ1mM〜20mMのL−グルタミン(例えば、Sigma−AldrichのG7513)、及び20%又はおよそ5%〜50%哺乳動物の血清(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヒト血漿等)を含んでもよい。D型長期成長培地のpHをおよそ7.2に調整することができるが、pHはおよそ6〜8の範囲であってもよい。任意のD型長期成長培地の栄養補助剤として、10mM又は10mM〜25mMのHEPES(例えば、Invitrogenの15630106)、5μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのインスリン(例えば、組換えヒトインスリン(rhインスリン))、50μg/mL又はおよそ10μg/mL〜100μg/mLのアスコルビン酸、5ng/mL又はおよそ1ng/mL〜20ng/mLの上皮成長因子(EGF)(例えば、組換えヒト(rhEGF))、0.75単位/mLのヘパリン硫酸、1μg/mL又はおよそ0.5μg/mL〜2μg/mLヒドロコルチゾンヘミスクシネート、15ng/mL又はおよそ5ng/mL〜30ng/mLのインスリン様成長因子(IGF−1)(例えば、rhIGF−1)、1単位/mL又はおよそ1単位/mL〜10単位/mLのペニシリン、1μg/mL又はおよそ1μg/mL〜10μg/mLのストレプトマイシンおよそ0.1ng/mL〜25ng/mLのアンホテリシンB又はそれらの任意の組み合せが挙げられ得る。
【0199】
細胞培養培地を順化細胞株に対する培地に暴露することにより予め順化することができる。順化細胞株の例として、本明細書に記載されるフィーダー細胞のいずれかを挙げることができる。例えば、細胞培養培地は、マウス胚線維芽細胞(MEF)順化培地であってもよい。MEF順化培地は、DMEM培地、高グルコース(Sigma−AldrichのD6429)、5g/L又はおよそ1g/L〜10g/LのD−(+)−グルコース(Sigma−AldrichのG7021)、およそ1×MEMの非必須アミノ酸(Sigma−AldrichのM7145)、10mM又はおよそ1mM〜20mMのL−グルタミン(例えば、Sigma−AldrichのG7513)、10mM又は10mM〜25mMのHEPES(例えば、Invitrogenの15630106)、およそ10%の哺乳動物の血清(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清、ウマ血清、ヒト血清、ヒト血漿等)を含むことができる。MEF培地は、MEF細胞の存在下で培養された後に「順化」となり得る。或る実施形態では、MEF細胞を最低48時間に亘り、細胞培養密度が少なくとも70%まで培養する。
【0200】
本明細書に記載される細胞培養培地のいずれかにおいて、細胞張力を調整する小分子及び薬物を栄養補助剤として添加して細胞の生存能及び増大を高めてもよい。例えば、rhoキナーゼは、繊維状アクチン(F−アクチン)(2つのタンパク質が、通常、アクトミオシン束又はフィラメントと呼ばれる)に結合する細胞骨格関連タンパク質であるミオシンIIに対するその作用により、細胞の収縮機構を調整するのに重要である。アクトミオシン束は骨格筋に見出される主要な収縮機構である。富化培地中のrhoキナーゼ阻害剤の存在により、細胞張力を減少することができ、細胞のサイズ、付着細胞強度の減少、及び細胞動態学的特性の増加をもたらし、より柔らかい(例えば、1000Pa〜2000Pa)と記載され得る基材表面弾性を真似ることができる。かかる商業的に入手可能な化合物/薬物として、ブレビスタチン(Straight et al.2003)、ML−7及び9(Saitoh et al.1987)、Y−27623(Ishizaki et al.2000 Pharmacological Properties of Y−27632,a specific inhibitor of rho−associated kinases.Mol Pharmacol.57(5):976−83)、カリキュリンA(Kato et al.1988)、並びに細胞骨格及びその上流の調節因子(RhoキナーゼI及びII、ミオシン軽鎖キナーゼであるLIMキナーゼ)により生み出される細胞内の力を制御する等価物が挙げられる。上述の参考文献はいずれもその全体が参照により本明細書に援用される。
【0201】
ブレビスタチンの構造は以下の通りである。
【化3】
【0202】
ML−7の構造は以下の通りである。
【化4】
【0203】
ML−9の構造は以下の通りである。
【化5】
【0204】
Y27623の構造は以下の通りである。
【化6】
【0205】
カリキュリンAの構造は以下の通りである。
【化7】
【0206】
かかる細胞張力調節補助剤は、中間径フィラメント、微小管及びアクトミオシンフィラメントに影響を及ぼすことができる。本明細書に記載される小分子/薬物は、圧力及び/又は低酸素環境条件によって調整される遺伝子及びタンパク質の発現を調整することができる。或る実施形態では、本明細書に記載される小分子及び/又は薬物による富化培地の補充を、本明細書に記載される圧力及び/又は低酸素条件に代えて使用することができ、標的細胞亜集団を正常酸素条件及び正常大気圧の下で培養することを可能とする。
【0207】
上述の方法のいずれかは、細胞内で低酸素誘導因子の発現を増加する薬剤と共に培養することを含むことができる。低酸素誘導因子は、一般的には、低酸素閑居条件によって活性化される転写因子を指す。低酸素誘導因子の例として、限定されないが、低酸素誘導因子1α(HIF−1α)、低酸素誘導因子−1β(HIF−1β)、低酸素誘導因子2α(HIF−2α)、低酸素誘導因子−2β(HIF−2β)、低酸素誘導因子−3α(HIF−3α)、及び低酸素誘導因子−3β(HIF−3β)が挙げられる。特定の実施形態では、上記薬剤は、HIF−1αの発現を増加する。上記薬剤は、低酸素誘導因子をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。例えば、上記薬剤は、本明細書に記載される低酸素誘導因子のいずれかに対するコーディング配列を含むことができる。コーディング配列は、HIF−1αポリペプチドをコードすることができる。HIF−1αポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0208】
HIF−1αのコーディング配列は、配列番号2に対して少なくとも70%の相同性又は相補性を有するポリヌクレオチド配列を含むことができる。
【0209】
薬剤は、低酸素誘導因子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターであってもよい。ベクターは、任意のプラスミド、ウイルス、ウイルスベクター、又は核酸の挿入又は取込みによって操作され得る当該技術分野で既知の他のビヒクルを含むことができる。例えば、遺伝子操作の目的で「クローニングベクター」を採用することができる。別の例として、挿入したポリヌクレオチドを転写又は翻訳するために「発現ベクター」を採用することができる。
【0210】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス、レトロウイル、又はロタウイルスのゲノム、シミアンウイルス40(SV40)又はウシパピローマウイルスに基づくものであってもよい(Cone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349(1984);Eukaryotic Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,Gluzman ed.,1982;Sarver et al.,Mol.Cell.Biol.1:486(1981)。発現に有用な追加のウイルスベクターとして、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソ及びラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルス)、パルボウイルス、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)が挙げられる。
【0211】
また、ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)系ベクター(米国特許第5,561,063号)を含むことができる。腸管の細胞へ遺伝子を効率的に輸送するベクターが開発されている(例えば、米国特許第5,821,235号、第5,786,340号、及び第6,110,456号を参照されたい)。
【0212】
ベクターは、一般的には、細胞内に増殖のための複製起点を含む。本明細書に述べられる、ベクター内に存在する発現制御因子を含む制御因子を、転写及び翻訳を容易にするために含めることができる。
【0213】
好適な転写又は翻訳制御配列として、限定されないが、複製領域、プロモーター、エンハンサ―、リプレッサー結合領域、転写開始部位、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、並びに転写及び翻訳の終結部位が挙げられる。
【0214】
本明細書で使用される「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに結合し、プロモーターの(3’方向の)下流に位置するコーディング領域の転写を開始することができるDNA領域である。プロモーターは、構成的又は誘導性であってもよい。一般的に、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端に結合され、上流(5’方向)に伸びてバックグラウンドを上回って検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小の塩基又は因子を含む。プロモーター配列内に転写開始部位、また同じくRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメインが存在する。真核生物プロモーターは、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含む場合がある。
【0215】
プロモーターの選択は、ベクターを導入する宿主細胞に大きく依存する。動物細胞については、様々なロバストなプロモーター、ウイルス及び非ウイルスプロモーターが当該技術分野で既知である。非限定的な代表的ウイルスプロモーターとして、CMV、SV40ウイルスの初期及び後期のプロモーター、様々な種類のアデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)及びアデノ随伴ウイルスのプロモーターが挙げられる。また、かかる対照配列が宿主細胞系と互換性がある限り、所望の軽鎖又は重鎖遺伝子と正常に関連するプロモーターを利用することが可能であり、またそれが望ましいことが多い。
【0216】
他の真核生物に好適なプロモーター配列として、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼ等の他の糖分解酵素のプロモーターが挙げられる。成長条件により制御される転写の追加的な利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素及び上述のグリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトースの利用に関与する酵素のプロモーター領域である。
【0217】
ベクターを、形質移入、ウイルス形質導入等の当該技術分野で既知の任意の手段によって培養細胞中に導入することができる。形質移入の方法は、物質の取込みを可能とするため細胞膜に一時的に孔又は「穴」をあけることを含むことができる。形質移入を、例えば、リン酸カルシウムを使用して、エレクトロポレーションにより、光学形質移入により、インペルフェクションにより、流体力学輸送により、遺伝子銃により、マグネットアシストトランスフェクションにより、カチオン性脂質と、細胞膜と融合してそれらの積荷を内部に置くリポソームを製造するための材料とを混合することにより、例えば、DEAE−デキストラン又はポリエチレンイミン等のカチオン性ポリマーの使用により行うことができる。
【0218】
標的細胞の同定
本明細書に記載される基材、細胞培地、環境条件、及び/又は細胞培養方法は、標的細胞亜集団が1又は複数の異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質をとることを可能とする。異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質のいずれかを標的細胞亜集団のメンバーを区別及び/又は同定するために使用することができる。形態学的特性及び/又は動態学的性質の例は本明細書に記載される。したがって、本発明は、本発明の基材上への播種に際して、本明細書に記載される細胞培養培地における培養に際して、及び/又は本明細書に記載される環境条件下での培養に際して、標的細胞によって採用される1又は複数の異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質の提示に基づいて標的細胞亜集団のメンバーを同定及び/又は選択する方法を提供する。
【0219】
標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択のかかる方法は、標的細胞同定のための陽性選択抗体の使用に対する必要性をなくすことができる。したがって、或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、陽性選択抗体の使用を含まない。しかしながら、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、場合によっては、陽性選択抗体の使用を含む。例えば、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、前記メンバーが1又は複数の異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質を提示する場合に、及び/又は前記メンバーが陽性選択抗体で検出可能に標識化される場合、前記メンバーを同定することを含むことができる。
【0220】
本明細書に記載される標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、標的細胞同定のための陰性選択抗体の使用に対する必要性をなくすことができる。したがって、或る実施形態では、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、陰性選択抗体の使用を含まない。しかしながら、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、場合によっては、陰性選択抗体の使用を含むことができる。例えば、標的細胞亜集団のメンバーの同定及び/又は選択の方法は、前記メンバーが1又は複数の異なる形態学的特性及び/又は動態学的性質を提示する場合に、及び/又は前記メンバーが陰性選択抗体で検出可能に標識化されない場合、前記メンバーを同定することを含むことができる。
【0221】
コンピュータ可読媒体
また、本発明は、本明細書に記載されるいずれかの方法を実行するように構成されるコンピュータによる遂行可能なコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。上記コンピュータ可読媒体は、標的細胞亜集団の半自動化又は自動化された同定、列挙、及び/又は分類のための方法を実行することができる。標的細胞亜集団の同定、列挙、及び/又は分類は、本明細書に記載される条件下での培養に際して細胞がとる1又は複数の形態学的特性及び/又は動態学的特性に基づいてもよい。標的細胞亜集団の同定、列挙、及び/又は分類は、本明細書に記載される本発明の基材上への播種に際して細胞がとる1又は複数の形態学的特性及び/又は動態学的特性に基づいてもよい。細胞の1又は複数の形態学的特性及び/又は動態学的特性は、経時的に評価されてもよい。例えば、細胞の1又は複数の形態学的特性及び/又は動態学的特性は、
図9に示される座標システム900において経時的に評価されてもよい。上記ソフトウェアは、培養皿又はウェル910中の基材上に検出された標的細胞亜集団の場所を参照するため仮想の座標システム920を作るように構成される。仮想座標システムは使用者が規定した原点(「原点」)930に培養皿を並べることにより伝播され、計測可能なベクター象限で作製された仮想グリッド920が900の上に置かれる。最も好ましい実施形態では、仮想座標システムを画像取得システムにより使用して、培養皿の表面全体に亘って自動化タイムラプス取込みを促進する。使用されている標準サイズの培養皿及び/又はウェルの幾つかの例として、10mm、35mm、60mm、及び100mm、並びに高度なマルチウェルプレート(例えば、6ウェル、12ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェル、1056ウェル、1536ウェル、又は3456ウェル)のウェルが挙げられるが、他のサイズの培養皿も考慮される。或る一つの実施形態では、操作者は、特定の目的の具体的なコロニーの場所に立ち戻ることができ、細胞をマイクロマニピュレーター及びトランスジェクタの使用により採取することができる。個別の細胞を、標的化生体医学研究における使用のために捕捉してもよく、又は更なる培養実験のために回収して使用することができる。
【0222】
コンピュータ可読媒体は、自動的に画像を取込み、再結合し、再編成し、及び/又は最適化するために座標システム900を使用してもよい。例えば、コンピュータ可読媒体は、任意の数の近傍領域を含む画像をスティッチしてもよい。この自動化スティッチングプロセスは、所与の時間点について単一のスティッチした画像を作成することができる。場合によっては、スティッチした画像は、およそ25〜およそ200の画像を包含することができる。スティッチした画像は、それによって画像を圧縮してファイルサイズを減少する初期化プロセスを経る場合がある。コントラストに基づくフィルタをスティッチした画像に適用することができる。
【0223】
コンピュータ可読媒体は、細胞の総数、生存及び非生存細胞の数、活発に分裂している細胞の数及びセルコロニーの数、生存細胞と非生存細胞の比率、分裂細胞と非分裂細胞の比率を決定することができる。患者のCTCsの攻撃性又は悪性度を特定するためにかかる分析を使用することができる。例えば、急速に分裂する細胞を「攻撃的」、例えば、転移性のクラスのCTCsとすることができる。
【0224】
同定及び分類パラメーター
コンピュータ可読媒体は、標的細胞亜集団を同定し、特性評価するため、本明細書に記載される細胞の形態学的特性及び/又は動態学的特性のいずれかを使用するソフトウェアを含むことができる。例えば、コンピュータ可読媒体は、標的細胞亜集団を同定し、分類するために下記パラメーター、すなわち、細胞サイズ、細胞形状、細胞運動、核サイズ及び細胞分裂速度を使用してもよい。上記ソフトウェアは、標的細胞亜集団を分類するためにかかるパラメーターをアルゴリズムへと統合することができる。上記ソフトウェアは、周期的にパラメーターを加工することができ、例えば、マルチコアコンピュータチップを使用して順次に又は接線方向のいずれかに加工することができる。使用者は、前記パラメーターの各々に対して異なる重み付けをしてもよい。
【0225】
細胞検出の向上
或る実施形態では、標的細胞亜集団の可視化は、細胞透過性色素及び/又は細胞付着タンパク質に対する抗体の使用により増強され得る。細胞透過性蛍光色素を、全般的な細胞及び核の形状、大きさ、及び数を特定するための分析ソフトウェアを支援するために使用してもよい。当業者に既知の幾つかの細胞透過性色素が存在する。或る非限定的な例として、カルシウム系色素(例えば、Life TechnologiesのCalcium−Green−1 AM)又は蛍光複合でキストランが挙げられる。
【0226】
また、ミトコンドリアの可視化により分析ソフトウェアを支援してもよい。ミトコンドリア特異的抗体又は浸透性色素(例えば、Life TechnologiesのMitoTracker(商標))を使用して、標的細胞亜集団の検出を増強してもよい。更に、所与の細胞亜集団又はコロニーに関してミトコンドリアが全くないこと又は過剰なミトコンドリアを下位分類の追加的なパラメーターとして使用することができるが、当業者であれば検出を支援するために使用され得る他の細胞透過性蛍光色素が存在し得ることを認識するであろう。
【0227】
細胞付着分子等の細胞表面分子に対する抗体を使用して、標的細胞亜集団の検出を増強することもできる。標的細胞亜集団に印をつける既知のバイオマーカーにより分析ソフトウェアを支援することができる。検出部分に複合化された標的化抗体を使用して検出を向上することができ、具体的なバイオマーカーの存在に基づいて下位分類することができる。CTCsに対する既知のバイオマーカーとして、EpCAM、EGFR、及びCD133が挙げられるが、当業者であれば同定された他のバイオマーカーが存在することを認識するであろう。非評定細胞亜集団において発現されるが、一般的には発現されない既知のバイオマーカー、又は標的細胞亜集団においてはより低レベルで発現する既知のバイオマーカーの使用により、分析ソフトウェアを支援することができる。非標的細胞に対して選択的である既知のバイオマーカーとして、とりわけ、CD45、CD14、CD34、及び線維芽細胞表面タンパク質が挙げられる。
【0228】
図10は、細胞の検出を増強したそのような一例である(図をカラー画像から採用した)。パネルAは、本発明の方法を使用して培養した標識化癌細胞を示し、細胞のミトコンドリアをMitoTrackerで標識化する。パネルBは、細胞付着タンパク質であるパキシリンに対する蛍光複合抗体で標識化した癌細胞を示す。
【0229】
コンピュータシステム
また、本発明は、本開示の方法を実行するように構成されるコンピュータシステムを提供する。上記システムは、本明細書に記載される方法を実行するようにプログラムされたコンピュータサーバー(「サーバー」)を含むことができる。
図11は、使用者が細胞の画像を検出、分析及び加工することが可能なように適合されたシステム1100を示す。システム1100は、本明細書に記載される例示的方法を実行するようにプログラムされた中央コンピュータサーバー1101を含む。サーバー1101は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、又は複数の並行処理用プロセッサであってもよい、中央処理装置(CPU、「プロセッサ」とも呼ぶ)1105を含む。また、サーバー1101は、メモリ1110(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置1115(例えば、ハードディスク)、1又は複数の他のシステムと通信するための通信用インターフェース1120(例えば、ネットワークアダプタ)、並びにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、及び/又は電子ディスプレイアダプタを含み得る周辺機器1125を含む。メモリ1110、記憶装置1115、インターフェース1120、及び周辺機器1125は、マザーボード等の通信バス(実線)を通じてプロセッサ1105と通信状態にある。記憶装置1115は、データを記憶するためのデータ記憶装置であってもよい。サーバー1101、通信インターフェース1120の支援によりコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1130に制御可能に連結される。ネットワーク1130は、インターネット、イントラネット及び/又はエクストラネット、インターネット、テレコミュニケーション、若しくはデータネットワークと通信状態にあるイントラネット及び/又はエクストラネットであってもよい。ネットワーク1130は、場合によっては、サーバー1101の支援により、サーバー1101に連結されたデバイスをクライアント又はサーバーとして振る舞うことを可能とし得る。顕微鏡及びマイクロマニピュレーターは、周辺機器1125又はリモートコンピュータシステム1140であってもよい。
【0230】
記憶装置1115は、個々の画像、タイムラプス画像、個々の細胞に関するデータ、細胞コロニー、又は本発明と関連する任意の態様のデータ等のファイルを記憶することができる。データ記憶装置1115は、仮想グリッドにおいて細胞の場所に関係するデータと連結されてもよい。
【0231】
サーバーは、ネットワーク1130を通じて1又は複数のリモートコンピュータシステムと通信することができる。1又は複数のリモートコンピュータシステムは、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレット、電話、スマートフォン、又はパーソナルデジタルアシスタントであってもよい。
【0232】
或る状況では、システム1100は、単一のサーバー1101を含む。他の状況では上記システムは、イントラネット、エクストラネット及び/又はインターネットを通じて互いに通信状態にある複数のサーバーを含む。
【0233】
サーバー1101を、細胞増殖情報、例えば、細胞のサイズ、形態学、形状、遊走能、増殖能力、動態学的特性、及び/又は潜在的な関連性の他の情報等を記憶するように適合することができる。かかる情報を、記憶装置1115又はサーバー1101に記憶することができ、かかるデータをネットワークを通じて伝送することができる。
【0234】
本明細書に記載される方法を、サーバー1101の電子記憶場所上に保存された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)コンピュータ可読媒体(又はソフトウェア)、例えば、メモリ1110又は電子記憶装置1115等により実行することができる。使用中、コードをプロセッサ1105により遂行することができる。場合によっては、コードを記憶装置1115から受け取って、プロセッサ1105による容易なアクセスのためメモリ1110上に記憶することができる。或る状況では、電子記憶装置1115を排除することができ、機械により遂行可能な指示をメモリ1110上に記憶する。代替的には、コードを第2のコンピュータシステム1140上で遂行することができる。
【0235】
サーバー1101等の本明細書で提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングにおいて具体化され得る。技術の様々な態様を、典型的には機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又は機械可読媒体(例えば、コンピュータ可読媒体)の型で運搬されるか、又はそれに具現化される関連データの形態の「製品」又は「製造品」と考えてもよい。機械遂行可能コードを、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)又はハードディスクのような電子記憶装置上に記憶することができる。「記憶」型媒体は、ソフトウェアプログラミングについて随時に非一時的記憶を提供し得る、コンピュータ、プロセッサ等の有形メモリ、又は様々な半導体メモリ、テープデバイス、ディスドライブ等のその関連するモジュールのいずれか又はそれらの全てを含むことができる。ソフトウェアの全部又は一部は、時には、インターネット又は様々な他の電気通信網を通じて通信され得る。かかる通信は、例えば、1つのコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサへの、例えば、管理サーバー又はホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトのローディングを可能とし得る。そのため、ソフトウェア要素を運搬し得る別の種類の媒体として、有線及び光固定電話網、並びに様々なエアリンクを通じて周辺デバイス間の物理的インターフェースを越えて使用されるような光波、電波、及び電磁波が挙げられる。有線若しくは無線、光リンク等のかかる電波を輸送する物理的要素もまた、ソフトウェアを運搬する媒体とされ得る。本明細書で使用される、非一時的に制限されない限り、コンピュータ又は機械「可読媒体」等の有形「記憶」媒体の用語は、遂行のためプロセッサに対する支持の供給に関与する任意の媒体を指す。
【0236】
したがって、コンピュータ遂行可能コード等の機械可読媒体は、多くの形態をとってもよく、限定されないが、有形記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体が挙げられる。非揮発性記憶媒体として、例えば、任意のコンピュータ(複数の場合がある)等におけるいずれかの記憶デバイス等の光学又は磁気ディスクが挙げられ得、かかるものをシステムの実行に使用してもよい。有形伝送媒体として、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバ(コンピュータシステム内のバスを備えたワイヤを含む)が挙げられ得る。搬送波媒体は、電気信号若しくは電磁信号、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信の間に生成されるもの等の音波若しくは光波の形態をとり得る。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態として、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、他の任意の光媒体、パンチカード、ペーパーテーム、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM、及びEPROM、FLASH−EPROM、その他のメモリチップ若しくはカートリッジ、搬送波輸送データ若しくは指示、ケーブル、又はかかる搬送波を搬送するリンク、又はコンピュータがプログラミングコード及び/若しくはデータを読み取ることができる他の任意の媒体が挙げられる。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、遂行のためプロセッサに1又は複数の指示の1また複数の配列を輸送するのに関与してもよい。
【0237】
細胞モニタリングの結果を、グラフィカルユーザーインターフェース等のユーザーインターフェースの支援により使用者に提示することができる。
【0238】
細胞画像化システム
また、本発明は細胞画像化システムを提供する。細胞画像化システムは、細胞集団の細胞に対応する画像データを作成するように構成されてもよい。細胞画像化システムは、初代細胞に対応する画像データを作成するように構成されてもよい。細胞画像化システムは、標的細胞亜集団のハイコンテント分析用に構成されてもよい。
【0239】
細胞画像化システムは、顕微鏡を備えてもよい。顕微鏡は、システムハードウェアを備えてもよい。システムハードウェアは、顕微鏡制御のためのハードウェアを備えてもよい。例示的な顕微鏡ハードウェア制御は、オープンソースのjavaベースの画像取込みソフトウェア、μManager(参照により本明細書に援用される、Arthur Edelstein,et al.(2010)、参照により本明細書に援用される、Computer Control of Microscopes Using μManager.Current Protocols in Molecular Biology 14.20.1−14.20.17)に加えて開発される。カスタムドライバ及びスクリプトを以下の顕微鏡に必須の周辺機器、すなわち、画像取込みカメラ、カメラシャッター、電動リニアエンコードXYステージ、ピエゾ駆動Z軸ステッパ、及び近赤外に基づくオートフォーカスのいずれかを制御するために使用することができる。
【0240】
顕微鏡は倒立顕微鏡であってもよい。倒立顕微鏡は、カスタマイズされた環境チャンバを備えてもよい。特注の環境チャンバは、培養細胞の生存能を維持するのに適した環境条件(例えば、温度、CO
2、酸素、圧力)を提供するように構成されてもよい。環境条件は、標的細胞亜集団の成長に適した本明細書に記載されるいずれかの条件であってもよい。カスタマイズされた環境チャンバは、温度、CO
2、及び酸素レベルを例えば0.1%の精度で調節する。顕微鏡は、蛍光能を有する5倍、10倍、20倍、40倍のノンオイル対物レンズを備えることができるが、他の対物レンズも考慮される。倒立顕微鏡は、細胞の検出のためコントラストを高めるため位相シフトした変更フィルタを有する、電動式ステージ及び明視野光源を有するハードウェアに基づくオートフォーカシングを備えてもよい。光源は、ハロゲン、キセノン、水銀、固体レーザ、又は発光ダイオードであってもよい。
【0241】
細胞画像化システムは、コンピュータシステムを更に備えてもよい。コンピュータシステムは、本明細書に記載されるようなものであってもよい。或る実施形態では、コンピュータシステムは、本明細書に記載されるコンピュータ可読媒体を備える。
【0242】
本明細書に記載されるいずれかの方法では、標的細胞亜集団のメンバーは、例えば、顕微操作を使用して採取され得るか、印付けられ得る。顕微操作を、電動式マイクロマニピュレーター及びトランスジェクタ又はレーザ顕微解剖を含む、当該技術分野で既知の任意の技術を使用して行うことができる。使用者は、特定のコロニー又は特定の目的の細胞の場所に立ち戻ることができる。これにより、例えば、使用者が単一細胞レベルで標的化された生物医学研究のため、更なる培養実験用の細胞を回収するため、又は化学感受性試験を行うため、個別に細胞を捕得ることを可能とする。したがって、細胞画像化システムは、マイクロマニピュレーターを更に備えることができる。
【0243】
電動式マイクロマニピュレーター及びトランスジェクタの例を
図12に示す。パネルAは、単一細胞選択を示し、電動式マイクロマニピュレーター(矢印)の注入針/選択針が癌細胞株(MDA−MB231)に由来する細胞のコロニーから単一の癌細胞を単離する。パネルBは、蛍光複合デキストランを伴う単一の細胞の注入を示し、白色矢印は、注入されていない癌細胞を指す(カラー画像から適合させた画像)。
【0244】
図13は、自動化細胞培養及び/又はハイコンテント分析用に構成された細胞画像化システム1300の例を示す。システム1300は、明視野であってもよく、位相に基づく光学顕微鏡に対して照明を供給することができる光源1305を含む。光源1305は、フィラメント又は発光ダイオード(LED)に基づいてもよい。また、システム1300は、タレット1310による位相差リングを含むことができる。或る例では、タレットは、電動化され、互換性の位相差リングを適切な対物レンズ1345と対にすることができる。
【0245】
システム1300は、集光器1315を含んでもよい。場合によっては、集光器1315は、場合によって細胞のコントラストを改善することができる光源を集中するために使用してもよい。また、システムは、細胞セレクタ(例えば、細胞ピッカー)1320を含んでもよい。或る例では、細胞セレクタは、単一の細胞を選択することができる(例えば、マイクロマニピュレーターに基づく細胞選択針又はレーザ支援微小解剖手段)。
【0246】
システム1300は、液体ディスペンサ1325を備えてもよい。液体ディスペンサ1325を培地の輸送又は転送を操作するための機構として使用することができる。液体ディスペンサは、シリンジに基づくものであってもよい。液体ディスペンサ1325は、マルチウェルプレート(例えば、1ウェル、2ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、96ウェルのプレート等)へと液体を分配するため、1又は複数の分配口(例えば、1、2、6、12、24、96等)を備えることができる。場合によっては、液体ディスペンサは、自動化液体分配能力を有するアドオンモジュール式であってもよい(例えば、エッペンドルフのepMotion,GE’s IN CELL Analyzer6000)、
システム1300は、プレートローダー1330を備えてもよい。プレートローダー1330は、最小で1、2、3、4、5、6、10、15、20、25、又は30のプレートを保持する能力を有することができる電動式プレートコンテナを備えてもよい。プレートローダーは、追加のプレートの収容力を可能とするモジュール構成を有することができる。場合によっては、プレートローダーは、ロボット制御でプレートを操作し、例えば、画像化のため顕微鏡のX−Yステージにプレートを置くことができる(例えば、ASIのロボットプレートローダー)。
【0247】
システム1300は、X−Yステージ1335を備えてもよい。X−Yステージ1335は、正確な動きのためにリニアエンコーダーを含んでもよい。X−Yステージ1335は、単一のプレートを保持することができるステージで構成されてもよい(例えば、ASI MS−2000フラットトップXYZ自動化ステージ)。X−Yステージ1335は、1、2、3、4、5、6又はそれより多いプレートを同時に保持する能力を有する大きなフォーマットステージで構成されてもよい。
【0248】
システム1300は、Z−ステッパ1340を備えることができる。Z−ステッパは、例えば、多平面画像化に使用され得る、電動式、ピアゾ駆動のZ軸制御であってもよい。
【0249】
システム1300は、1又は複数の対物レンズを備えることができる。対物レンズは、およそ、1倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、60倍及び/又は100倍であってもよい。場合によっては、対物レンズ1345は、電動式対物レンズタレットに取り付けられる。対物レンズ1345は、位相対物レンズであってもよい。対物レンズ1345は、明視野及び蛍光画像化の両方に適した顕微鏡対物レンズ(例えば、Zeiss Plan−Neofluar対物レンズ)であってもよい。或る実施形態では、対物レンズ1345は、ハードウェアに基づくオートフォーカスシステム(例えば、NikonのPerfect Focus System)と互換性でなくてはならない。
【0250】
システム1300は、オートフォーカスシステム1350を含むことができるものであってもよい。オートフォーカスシステム1350は、ハードウェアに基づく画像オートフォーカシング(例えば、NikonのPerfect Focus System)を使用することができる。
【0251】
システム1300は、フィルタ1355を含むことができるものであってもよい。フィルタ1355は、照明フィルタであってもよい。フィルタ1355は、二色性であってもよい。二色性の鏡を蛍光画像化に対して適切な励起フィルタ及び発光フィルタと共に使用することができ、互換性波長は、例えば、およそ360nm、488nm、及び568nmであってもよい。
【0252】
システム1300は、カメラ1360を備えることができる。カメラ1360は、電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)であってもよい。カメラ1360は、蛍光、明視野又は両方と互換性であってもよい。カメラ1360は、液冷式であってもよい。カメラ1360は、広視野であってもよい。カメラ1360は、広角撮像センサであってもよい。また、カメラ1360は、裏面照明基づく画像センサを備えてもよい。カメラ1360は、情報を伝送する能力を備えてもよい。情報を伝送する能力は、既知の高速転送法(例えば、ファイヤワイヤ又はUSB3.0ポート)であってもよい。
【0253】
システム1300は、環境チャンバ1365を含むことができる。環境チャンバ1365は、密閉され、光制御された(例えば、暗)環境を備えることができる。環境チャンバ1365は、エアロックシステムを使用してもよい。場合によっては、エアロックシステムの使用を、実験を進めながら1又は複数のプレートへのアクセスが必要な場合に使用することができる。また、環境チャンバ1300は、加圧環境を支持する能力を備えることもできる。場合によっては、加圧環境は、標準的な大気圧に対しておよそ1PSI、2PSI、3PSI、4PSI、5PSI、6PSI、7PSI、8PSI、9PSI、10PSI、11PSI、12PSI、13PSI、14PSI、15PSIであってもよい(例えば、標準的な大気圧は14.7PSIA)。或る実施形態では、環境チャンバ1365は、滅菌又は清掃プロトコルを支持するように構築される。或る実施形態では、環境チャンバは、除湿、加熱、真空加圧制御及び/又はそれらの任意の組み合せを備えてもよい。
【0254】
システム1300は、マニピュレーター1370を備えてもよい。マニピュレーター1370を細胞セレクタ1320を制御するために使用してもよい。マニピュレーター1370は、使用者(例えば、ジョイスティック)により制御されてもよく、又はソフトウェアによって制御されてもよい。マニピュレーターは、単一細胞の操作用に機械的であってもよく、また圧力ハブであってもよい。(例えば、エッペンドルフトランスジェクタ、マニピュレーター、Cell TRAM VARIO(商標))
システム1300は、液体操作モジュール1375を備えてもよい。液体操作モジュール1375を液体(例えば、媒体、廃棄媒体)用の貯蔵槽として使用することができる。液体操作モジュール1375を1又は複数の液体を支持するために使用することができる。液体操作モジュール1375は、場合によっては、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び/又は20の溶液を支持することができる。或る実施形態では、液体操作モジュール1375は、自動化滅菌キャピラリを備えることができる。
【0255】
システム1300は、調湿制御装置1380を備えることができる。調湿制御装置1380を使用して除湿することができる。場合によっては、除湿は、画像化を増強し、内部電子回路の寿命を延ばす場合がある。
【0256】
システム1300は、加熱素子1385を備えることができる。加熱素子1385は、環境チャンバ1365の内容物を温めるために使用され得る。或る実施形態では、環境チャンバの内容物を、摂氏およそ26度、27度、28度、29度、30度、31度、32度、33度、34度、35度、36度、37度、38度、39度、40度、41度、42度、43度、44度、又は45度まで加熱し得る。或る実施形態では、加熱素子1385は、自動化フィードバックにより温度を制御することができる一体型温度システムを備える。
【0257】
システム1300は、気体インレット1390を備えることができる。気体インレット1390は、一体型気体制御及び個別の気体ラインに対するサポート(例えば、二重弁サポート)を備えることができる。場合によっては、気体インレット1390は窒素、二酸化炭素及び/又は酸素等の大気ガスのレベルを制御することができる。
【0258】
システム1300は、加圧真空ポンプ1392を備えることができる。加圧真空ポンプ1392は、圧力ゲージ及び/又は一体型圧力センサ若しくはマニホルドを備えることができる。加圧真空ポンプ1392は、大気圧に対しておよそ1PSI、2PSI、3PSI、4PSI、5PSI、6PSI、7PSI、8PSI、9PSI又は10PSIの圧力を供給する能力を有し得る。或る実施形態では、加圧真空ポンプ1392は、10立法フィート〜18立法フィートの推定されるおよその体積に対して圧力を供給することができる。
【0259】
システム1300は、蛍光光源1394を備えることができるものであってもよい。蛍光光源1394は、キセノンであってもよい。蛍光光源1394は、水銀系ランプによるものであってもよい。蛍光光源1394は、固体状態、又はレーザダイオード系照明光源によるものであってもよい。
【0260】
システム1300は、データ記憶1396を備えることができる。データ記憶1395用のシステムは、任意の数の記憶タイプの媒体を備えることができ、それらは、コンピュータ、プロセッサ等の任意の若しくは全ての有形記憶、又は様々な半導体メモリ、磁気テープドライブ、ディスクドライブ等のその関連するモジュールを含むことができ、これらはソフトウェアプログラミングに対していつでも非一時的記憶を提供し得る。また、データ記憶用システムは、例えば、インターネット又は様々な他の電気通信網を通す、任意の数のデータ通信タイプを備えることができる。ローカルデバイス間で物理的インターフェースを越えて、有線及び固定電話網により、並びに様々なエアリンクに亘って使用されるように、データを光学的、電気的、及び/又は電磁波により伝送してもよい。有線又は無線等、光リンク等のかかる波を搬送する物理的要素は、データ記憶用システムの一部であってもよい。非一時的に制限されない限り、コンピュータ又は機械「可読媒体」等の本明細書で使用される有形データ記憶媒体の用語は、遂行用プロセッサに対する支持の供給に関与する任意の媒体を指す。したがって、データ記憶は多くの形態をとる可能性があり、限定されないが、有形の記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体が挙げられる。不揮発性記憶媒体として、例えば、任意のコンピュータ(複数の場合がある)における記憶装置のいずれか等の光学ディスク又は磁気ディスクが挙げられ得、それらは上記システムを実行するために使用され得る。有形の伝送媒体として、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバ(コンピュータシステム内のバスを萎えたワイヤを含む)が挙げられ得る。搬送波伝送媒体は、電気信号若しくは電磁信号の形態、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生じるもののような音波若しくは光波の形態をとってもよい。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態として、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、他の任意の光媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンによる任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH−EPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、データ又は指示を伝送する搬送波、ケーブル、若しくはかかる搬送波を伝送するリンク、又はそれからコンピュータがプログラミングコード及び/若しくはデータを読み取る可能性がある任意の他の媒体が挙げられる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、記憶のためのデータ搬送に関与し得る。或る実施形態では、データ保存用のシステムは、マルチコアプロセッサであってもよい。
【0261】
システム1300は、機器アクセスドア1398を備えることができる。機器アクセスドア1398は、プレートローダー1330及び/又は環境チャンバ1365へのエントリのポートを提供し得る。機器アクセスドア1398は、エアロックシステムを統合してもよい。
【0262】
システム1300は、本明細書に記載される本発明のハイスループットの使用のためのプラットフォームを提供することができる。例えば、システム1300は、顕微鏡を備えてもよい。顕微鏡は、倒立顕微鏡であってもよい。顕微鏡は、生存細胞の画像化及び/又はハイコンテント分析用に構成され得る。ハイコンテント、生存細胞画像化のため構成された顕微鏡は、幾つかの販売業者、例えば、とりわけ、BioTek Instruments(Cytation(商標))、Carl Zeiss Microscopy(Lightsheet Z.1 Live Cell Imaging Microscope、Cell Observer Research Microscope、PrimoVert Monitor Inverted Microscope)、Molecular Devices LLC(ImageXpress(登録商標)Micro XLS Widefield High Content Screening System、CloneSelect(商標) Imager)、EMD Millipore(CellASIC(商標))、Nikon Instruments(Biostation CT)を通じて商業的に入手可能である。ハイスループットの顕微鏡及び画像化システムの例は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第20040152188号に記載される。
【0263】
キット
また、本発明は、本発明の1又は複数の方法を実施するのに有用なキット及び/又は細胞培養システムを提供する。キット及び/又は細胞培養システムは、(i)本明細書に記載される基材を含む細胞培養プレート、(ii)本明細書に記載される細胞培養培地、若しくはその成分、(iii)本明細書に記載される細胞培養インキュベータ、(iv)本明細書に記載される細胞画像化システム、及び/又は(v)本明細書に記載される基材、若しくはその成分の組み合せを含むことができる。また、キットは、標的細胞亜集団の培養及び/又は同定のための細胞培養プレート、細胞培養培地、インキュベータ、及び画像化システムの1又は複数の使用に関する指示書を含んでもよい。上記指示書は、標的細胞亜集団の成長に適した環境条件における指示培養を含んでもよい。環境条件は本明細書に記載される。例えば、指示書は、陽圧条件下で標的細胞を培養するための指示文を含んでもよい。圧力条件の例は、本明細書に記載される。例えば、指示書は、低酸素条件下で標的細胞を培養する指示文を含んでもよい。低酸素条件の例は本明細書に記載される。
【0264】
細胞培養システム1400の実施形態の例を
図14に示す。細胞培養システム1400は、本明細書に記載される細胞インキュベータ1410を備えることができ、インキュベータ1410は、標的細胞亜集団の成長に適した1又は複数の環境条件を提供するように構成される。細胞インキュベータは、本明細書に記載される顕微鏡(示されていない)を備えてもよい。顕微鏡は、標的細胞亜集団の1又は複数のメンバーを画像化するために構成されてもよい。顕微鏡は、顕微鏡の閉鎖環境チャンバ内にあってもよい。顕微鏡は、コンピュータシステム1420に制御可能に連結されてもよい。コンピュータシステムは、例えば、画像表示用のモニター及びキーボードを備えることができる。細胞培養システム1400は、標的細胞の同定のためのソフトウェアを含むコンピュータ可読媒体1430を含むことができる。コンピュータ可読媒体1430は、コンピュータシステム1420に統合されてもよい。上記システムは、本明細書に記載される基材1440を備えることができる。基材を標的細胞亜集団の選択的な付着及び/又は成長を促進するように構成することができる。上記システムは、本明細書に記載される細胞培養培地1450を備えることができる。
【0265】
本発明の使用例
本発明の実用的な適用が幾つか存在する。希少な標的亜集団の細胞を富化する能力は、基礎研究、医療、医学研究、薬物及び生物製剤の開発及び発見、ハイスループットスクリーニング、抗体開発、並びにワクチン開発に使用される商品として価値を有する。CTCs、CSCs、HSCs及びEPCsは、血液中を循環する細胞の例であるが、実用的な実験目的又は医療目的に十分な量で単離及び富化することが困難であった。本発明の方法、キット及び/又はシステムのいずれかの使用により、試料1ml当たり10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、又は1個の濃度の標的細胞、又は試料1ml当たり平均1個未満の標的細胞の濃度で標的細胞が試料中に存在する場合に体液試料又はその派生物からの標的細胞の単離及び富化を可能とする。例えば、本発明の方法、キット、及び/又はシステムのいずれかは、標的細胞が、試料1ml当たり約0.8個の標的細胞(例えば、20mlの血液中に16個の標的細胞)、又は血液1ml当たり0.6個の標的細胞(例えば、20mlの血液中に12個の標的細胞)の濃度で試料中に存在する場合に、体液試料又はその派生物から標的細胞亜集団の単離及び富化を可能とする。本発明の別の適用では、変化する機能的特性を有する培養した標的細胞亜集団は、高度に標的化されたバイオマーカーの開発用プラットフォームを提供することができる。ゲノム分析、プロテオーム分析、及び代謝分析をこれらの培養細胞に行うことができ、これらの希少な細胞の商業的に入手可能な供給源を作製する能力は、癌治療法の開発(例えば、創薬)、癌クチン、癌スクリーニング及び診断、個別化抗体の開発、造血幹細胞の移植、臓器移植、並びに心臓血管疾患の治療に使用される新規なバイオマーカーの同定に重要である。
【0266】
個別化医療
標的細胞亜集団を個別化医療に使用することができる。CTCs及びCSCsの例では、細胞を化学感受性試験に使用することにより、培養したCTCsについて、また、所与の薬物の有効性を決定するための細胞生存能及び細胞分裂速度の計測を含むCTCsに対する化学療法薬物の効果の決定に対して標準的及び探索の化学療法計画を試験することができる。本発明の別の適用は、患者が治療を経るにつれて患者のCTC集団の連続的なモニタリングによって、行われる所与の癌治療に対する患者の反応をモニターすることである。血液試料を、治療の前、その間、及びその後に定期的に分析することができ、結果として、治療法に対する陽性反応はCTC生存能の減少及びより遅い分裂速度を生じるであろう。
【0267】
本発明の別の適用は、現在寛解期にある患者をモニターして癌再発の可能性を調査することである。CTCsに関する彼らの血液の連続的な検査を、癌の再発の可能性又はその見込みを決定するために定期的に行うことができる。場合によっては、連続的な検査は、再発のより早期の検出をもたらす。
【0268】
薬物輸送/ハイスループットスクリーニング
本開示の別の適用は、ハイコンテントスクリーニング分析(例えば、ハイスループット創薬)のため、また基礎研究用の直接研究プラットフォームとしてである。特定の細胞の種類に対する薬物の効能について有意義な研究を行うためには、細胞の大量供給が必要とされる。更に、異なる種類の細胞に対する異なる薬物処理の有効性を比較することは、大量の細胞を必要とする。本開示は、科学者に細胞種を単離するプロセスを自動化又は一部自動化を可能とする基礎研究用の研究プラットフォームを提供し、それにより、ハイスループットな実験を可能とする。かかる研究プラットフォームは、創薬プラットフォームとしての実用性を有し得る。したがって、本発明は、(a)本明細書に記載される方法を使用して標的細胞亜集団を培養すること、(b)前記標的細胞亜集団と試験薬剤を接触させること、(c)前記標的細胞亜集団の生存能及び/又は成長をアッセイすること、並びに(d)前記アッセイに基づいて前記試験薬剤を抗癌治療法として選択することを含む、抗癌治療法を開発する方法を提供する。或る実施形態では、標的細胞亜集団はCTCs及び/又はCSCsを含む。或る実施形態では、複数の試験薬剤を標的細胞亜集団に適用する。(例えば、併用療法を試験する)。或る実施形態では、標的細胞亜集団をマルチウェルプレートで培養する。或る実施形態では、マルチウェルプレートは、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル、又は3456ウェルを備える。或る実施形態では、上記方法は、前記標的細胞亜集団と複数の試験薬剤を接触することを含み、各試験薬剤はマルチウェルプレートの単一のウェルに適用される。或る実施形態では、上記方法は、マルチセルプレートのウェルを同時にアッセイすることを含む。或る実施形態では、試験薬剤は、その薬剤が標的細胞亜集団の生存能、増大又は成長を低減する場合、抗癌治療法として選択される。
【0269】
被験体の治療
本明細書に記載される発明は、被験体を治療するために医療専門家に使用され得るデータを提供することができる。好ましい実施形態では、細胞の分類は、被験体の治療を対象とすることができる。被験体の治療として、診断、予後又はセラノシスが挙げられ得る。診断は、被験体の状態を決定することを含む。診断は、1つの時間点又は継続的に行われ得る。例えば、被験体を癌と診断することができる。別の例では、寛解期にある癌患者を日常的にスクリーニングして、癌の再発が起きたかどうかを特定してもよい。予後は、被験体の疾患の転帰、回復の可能性、又はどのようにして疾患が進行するかを決定することを含むことができる。例えば、特定の種類のCTCsを同定することにより、予後が基づく情報を提供することができる。セラノシスは、治療的処置を決定することを含むことができる。例えば、被験体の癌の治療的処置は、化学療法、放射線照射、薬物治療、治療なし、又はそれらの任意の組み合せで構成され得る。被験体を、被験体が治療を経る前、その間、及びその後のCTC集団を測定するため、例えば、連続的な血液検査によりモニターしてもよい。治療法に対する陽性反応は、CTCの生存能の減少及びより遅い分裂速度をもたらすであろう。
【0270】
癌被験体から単離され分類されたCTCsの場合では、CTCsの存在又は不在は、癌の診断を支援又は形成し得る。疾患の予後は、被験体の血液中に存在するCTCsの種類により支援され得る。存在するCTCsの種類の知識に基づいてセラノシスを支援することができる。また、成功する見込みが最も高い化学療法剤等の様々な治療の成功する可能性を検定するために単離したCTCsを使用することによりセラノシスを支援してもよい。
【0271】
場合によっては、標的細胞(例えば、単離されたCTCs)は、標的細胞中の1又は複数のバイオマーカーの存在又は不在を検出することにより特徴づけることができる。或る実施形態では、1又は複数のバイオマーカーの存在又は不在は、疾患の治療を必要とする被験体から単離された標的細胞から単離された核酸をシーケンシングすることにより決定することができる。シーケンシングを、シーケンシングした標的細胞の遺伝子プロファイルを作製するために使用することができる。標的細胞の遺伝子プロファイルを被験体について個別化治療を選択するために使用することができる。例えば、かかる方法を癌治療を必要とする被験体の個別化された癌治療を選択するために使用してもよい。或る実施形態では、核酸を、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、CTCsから単離し、また正常細胞から単離してもよい。或る実施形態では、核酸はDNAである。或る実施形態では、腫瘍試料及び正常細胞に由来するDNAを使用して被験体に特異的な腫瘍DNAライブラリ及び/又は正常DNAライブラリを調製する。DNAライブラリを、シーケンシングプラットフォームによりシーケンシングに使用することができる。シーケンシングプラットフォームは、次世代シーケンシング(NGS)プラットフォームであってもよい。或る実施形態では、上記方法は、NGS技術を使用して核酸ライブラリをシーケンシングすることを更に含む。
【0272】
シーケンシングは、当該技術分野でよく知られている古典的なサンガーシーケンシング法によりなされ得る。また、シーケンシングは、ハイスループットシステムを使用してなされ得、その幾つかは、成長する鎖への組込の直後又はその際にシーケンシングされたヌクレオチドの検出、例えば、リアルタイム又は実質的にリアルタイムの配列の検出を可能とする。場合によっては、ハイスループットシーケンシングは、1時間当たり少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも30,000、少なくとも40,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000又は少なくとも500,000の配列の読み取りを生じ、各読み取りは、1つの読み取り当たり少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120又は少なくとも150の塩基である。シーケンシングをゲノムDNA又はテンプレートとしてのRNA転写産物に由来するcDNAを使用して行うことができる。
【0273】
或る実施形態では、ハイスループットシーケンシングは、合成による一分子シーケンシング(the Single Molecule Sequencing by Synthesis)(SMSS)法等のHelicos BioSciences Corporation(マサチューセッツ州ケンブリッジ)により利用可能な技術の使用を含む。SMSSは、24時間以下で全ヒトゲノムをシーケンシングすることを可能とすることから、独特である。また、この迅速なシーケンシング法は、実質的にリアルタイム又はリアルタイムで配列中のSNP/ヌクレオチドの検出も可能とする。最終的に、SMSSは、MIP技術のように、ハイブリダイゼーション前に予備増幅工程を必要としないことから強力である。実際、SMSSは、いかなる増幅も必要としない。SMSSは、参照により本明細書に援用される、米国出願公開第20060024711号、同第20060024678号、同第20060012793号、同第20060012784号及び同第20050100932号に記載される。
【0274】
或る実施形態では、ハイスループットシーケンシングは、機器のCCDカメラにより記録されるシーケンシング反応によって生じる化学発光シグナルを発信する光ファイバプレートを含むPicoTiterPlate装置等の454 Lifesciences,Inc.(コネチカット州ブランフォード)により利用可能な技術の使用を含む。この光ファイバの使用により、4.5時間の間に最低2000万の塩基対の検出を可能とする。
【0275】
ビーズ増幅の後に光ファイバ検出を使用する方法は、参照により本明細書に援用されるMarguiles,M.,et al.「Genome sequencing in microfabricated high−density picolitre reactors」,Nature,doi:10.1038/nature03959、同じく、米国特許出願第20020012930号、同第20030068629号、同第20030100102号、同第20030148344号、同第20040248161号、同第20050079510号、同第20050124022号、及び同第20060078909号に記載される。
【0276】
或る実施形態では、標的細胞の遺伝子材料の配列分析は、ライゲーション機構(縮重ライゲーション)による4色のシーケンシングを含んでもよく、これは、4つのポジションの内の1つにアンカープライマーをハイブリダイズすることを含む。その後、蛍光染料で標識化された縮重九量体の集団に対するアンカープライマーの酵素によるライゲーション反応を行う。任意の所与の周期において、使用される九量体の集団が、その位置の1つの同一性が九量体に結合するフルオロフォアの同一性と相関するように構築される。ライゲースがクエリー位置での相補性について区別する限り、蛍光シグナルは塩基の同一性の推論を可能とする。ライゲーション及び4色の画像化を行った後、アンカープライマーと九量体の複合体を取り除いて新たな周期が始まる。ライゲーション後の配列情報を画像化する方法は当該技術分野で既知である。
【0277】
薬物スクリーニングの適用として、本発明は、循環腫瘍細胞の「結合」又は付着特性を特異的に阻害する新たな種類の薬物の選択的スクリーニングを可能とする。CTCsの他の細胞の種類、組織及び基材への結合能力を阻害することにより、研究者が癌の転移が起こらないようにする新たな薬物を創薬することを可能とする。具体的な薬物標的として、インテグリン、パキシリン、タリン、及びE−カドヘリンが挙げられる。
【0278】
本発明の別の態様では、被験体のHSCsを彼らのCTCsと並行して培養することができる。いずれの細胞種も末梢血、リンパ液、及び骨髄から共に単離することができる。HSCsの増殖及びヒト免疫系(ナチュラルキラー細胞、T細胞、及びB細胞)を含むそれらのリンパ系統への後の分化は、これらの細胞を、同じ被験体から単離されたCTCsに暴露することにより、例えば、CTC培養物において見出された最も激しく成長する癌コロニーにHSCsを暴露することにより、上記細胞の「細胞リプログラミング」を可能とすることができる。CTCs、例えば、in vitroで最も激しく分裂するCTCsに対して被験体の免疫細胞を共培養することにより、これを達成することができる。これらの免疫細胞の導入により、研究者は、CTCコロニーを認識して破壊するそれらの能力を観察できるであろう。CTC成長の攪乱又はCTCコロニーの全体的な排除に明らかに有効である培養免疫細胞を、培養で増大することができる。かかる増大した免疫細胞を癌に対する治療薬として被験体に再導入することができる。かかる増大した免疫細胞を癌の治療薬として被験体に再導入することができる。
【0279】
本明細書において、本発明は、不均一細胞集団に由来する標的細胞亜集団の検出及び富化のための新たなアプローチを提供する。不均一細胞集団を有し、標的細胞亜集団の富化が必要な場合にはいつでも上記方法を適用することができる。
【0280】
上記の記載は、実例であり制限ではない。本開示を検討するにあたり、本発明の多くの変種が当業者に明らかとなるであろう。単なる例示として、主に、体液に由来するCTCs、CSCs、HSCs及びEPCsを含む標的細胞亜集団の富化に関して本発明を説明するが、本発明はそれらに制限されない。
【0281】
[実施例]
[実施例1]:本発明の基材例の調製:
基材調製:0.1%ブタゼラチンの基層を0.1mg/mlのポリ−L−オルニチン(例えば、ポリ−L−オルニチン塩酸塩又はポリ−L−オルニチン臭化水素酸塩)で前処理した。前処理の後、基層をおよそ0.1mg/ml〜およそ1.0mg/mlのI型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びラミニンで処理した。
【0282】
[実施例2]:循環乳癌細胞の基材に対する結合親和性:
全血試料をMDA−MB231乳癌細胞でスパイクした。スパイクした血液試料を本明細書に記載されるフィコールに基づく密度遠心分離に供した。有核細胞画分を基材上に播種し、37℃、2%O
2、及び16.7PSIAで培養した。白血球細胞(WBCs)を蛍光標識した抗CD45抗体で可視化した。
図15は、標識化WBCs(パネルA)及び基材に付着した循環乳癌細胞(パネルB)を示す。付着した乳癌細胞は形態学によりWBCs(小さい矢印)と容易に区別できる。
【0283】
[実施例3]:GOL及びGEL基材を使用する細胞培養プレートの調製:
GOL基材を0.1%ブタゼラチン、0.05mg/mLポリ−L−オルニチン塩酸塩、及び5%ウシ胎児血清(FBS)として調製する。GEL基材を0.1%ブタゼラチン、及び1又は複数の0.1mg/mLコラーゲン(例えば、SigmaC7774)、0.1mg/mLラミニン(例えば、SigmaL2020)、及び0.1mg/mLフィブロネクチン(例えば、SigmaF0895)として調製する。細胞培養プレートをGOL基材又はGEL基材で被覆し、基材が37℃で4時間以上に亘りウェルの表面全体を被覆することを確実にする。基材溶液をウェルから除去する。ウェルを滅菌蒸留水で2回洗浄した。1×リン酸緩衝食塩水(PBS)を各ウェルに添加した。その後、細胞培養プレートを室温でおよそ4時間以上に亘ってUV滅菌する。
【0284】
[実施例4]:フィーダー細胞を含む基材の調製:
GOL基材を調製し、実施例3に記載されるように組織培養プレートに被覆する。マウス胚線維芽細胞(MEFs)をGOL被覆プレートに播種し、約48時間に亘り培養するか、細胞が約70%培養密度になるまで培養する。別の実施形態では、MEFsをMillicellインサート(Millipore)上で培養し、ここで、インサートをGOL基材で処理した組織培養プレートのウェルへと挿入する。MEFsを細胞が70%以上の培養密度になるまで培養する(例えば、およそ48時間)。
【0285】
[実施例5]:CTC亜集団培養プロトコル:
20mlの末梢血をヒト被験体から採取した。末梢血有核細胞(PBNC)を、本明細書に記載されるフィコールに基づく密度遠心分離により精製した後、下記プロトコルに従って播種した。ポリ−L−オルニチンを含み、基材硬度を与えるゼラチン−寒天混合物で補足したコラーゲン系基材で被覆した細胞培養プレートの各ウェルに平板培養培地(例えば、6ウェルプレートの1ウェル当たり2mL、又は12ウェルプレートの1ウェル当たり1mL)を添加した。300μLのPBNC溶液(2mLの平板培養培地に再懸濁した20mLの末梢血から得た)を6ウェルプレートの各ウェルに添加した(12ウェルプレートについては150μL)。そのプレートを摂氏37度、5%CO
2で1時間インキュベートした。最初の播種から1時間後に細胞培養プレートを数回軽く叩いてゆるく付着した細胞(例えば、白血球)を除去し、その細胞培養培地を予め温めておいた平板培養培地と交換した。その後、そのプレートを、5%CO
2、2%O
2、及び93%N
2を含む加圧インキュベータにおいて、16.7PSIA、摂氏37度で24時間以上インキュベートした。24時間経過後に細胞培養プレートを数回軽く叩いてゆるく付着した細胞を除去し、予め温めておいた長期成長培地と培地を交換した。細胞を5%CO
2、2%O
2、及び93%N
2を含む加圧インキュベータにおいて16.7PSIA、摂氏37度でインキュベートした。72時間毎におよそ3分の1から半分の長期成長培地を予め温めておいた新しい培地と置換した。このプロトコルを使用して、CTCsを検出し、培養中に樹立することに成功した。
【0286】
[実施例6]:フィーダー細胞を使用するCTC亜集団培養プロトコル:
癌を伴うヒト被験体に由来するCTC細胞でスパイクしたPBNCsをGOL基材上へのフィコールに基づく密度遠心分離を使用して精製した。新たに単離した細胞を平板培養培地に再懸濁した。6ウェル又は12ウェルの標準サイズの培養プレートを使用した。その培養プレートを放射線照射した又は放射線照射していないMEF細胞で、MEF細胞が少なくともおよそ70%の培養密度に達するまで、最低48時間に亘り前処理した。MEF富化培養培地を平板培養培地と交換した。MEF順化培養培地を保持した。末梢血有核細胞(PBNC)溶液を20mLの末梢血を使用して作製し、遠心沈殿し、2mLの平板培養培地に再懸濁した。PBNC溶液を培養皿の各ウェルに添加し、細胞を摂氏37度、5%CO
2で1時間インキュベートした。最初の播種から1時間後、培養プレートを数回軽く叩いてゆるく付着した細胞を除去し、培地を以前に保持したMEF順化培養培地と交換した。そのプレートを以下:16.7PSIA、摂氏37度、5%CO
2、2%O
2、及び93%N
2で最低48時間の条件のもと、加圧インキュベータでインキュベートした。48時間経過後、およそ3分の1から半分のMEF順化培地を予め温めておいたR型長期成長培地と交換した。その後、細胞を以下:16.7PSIA、摂氏37度、5%CO
2、2%O
2、及び93%N
2で最低48時間の条件のもと、加圧インキュベータで再びインキュベートした。再度、半分から3分の1の培地を新しい、予め温めておいたR型長期成長培地と置換した。72時間毎に、およそ半分から3分の1のR型長期成長培地を予め温めておいた新しい培地と置換した。このプロトコルを使用して富化したCTCを
図16に示す。パネルAは、倍率10倍のもとで患者から単離されたCTCsを示し、パネルBは、倍率20倍のもとで同じCTC細胞を示す。パネルCは、倍率20倍の多核化CTC細胞を示す。単一細胞内の1以上の核の存在は、癌と関連することが多い間違った細胞周期制御を示す可能性がある。これらの結果は、かかる培養条件が、非標的細胞亜集団(例えば、WBCs)に対して、標的細胞亜集団(例えば、CTCs)の選択的増加を促進することを実証する。かかる選択的増殖は、WBCsと比較して2倍を上回るCTC増殖の増加により証明された。
【0287】
[実施例7]:画像分析のためのコンピュータ可読媒体の使用:
ImageJ(参照により本明細書で援用される、Collins(2007)ImageJ for microscopy.BioTechniques 43:S25−S30)を使用してソフトウェアパッケージの例を開発し、細胞増殖の検出及び測定のための新たなプラグインを作成する。ImageJ用の押ボタン式JAVAベースプラグインは、所与の画像シリーズについて細胞数及び細胞分裂速度を自動的に検出及び測定する。グラフィカルユーザーインターフェースベースのプラグインは、使用者の入力及びバッチ処理能力を支持する。上記ソフトウェアは、細胞総数を生じるために順次実行される4つの異なるスクリプト(又は処理)を含む。
【0288】
上記ソフトウェアプログラムは、下記5つのパラメーター(1)細胞全体のサイズ、(2)細胞の形状、(3)細胞の運動、(4)細胞核のサイズ、(5)細胞分裂速度の1又は任意の組み合せを細胞分類アルゴリズムへと統合するソフトウェアの使用により、増殖性細胞を同定する。上記ソフトウェアの同定は、上述の5つのパラメーターを通して循環する。上記パラメーターをマルチコアコンピュータチップの使用により順次及び/又は接線的に処理する。上記ソフトウェアプログラムは、細胞分裂速度に基づき転移能に従って細胞を下位分類する(例えば、CTCsを所定の転移能があると分類する)。上記ソフトウェアプログラムは、使用者が5つのパラメーターの各々に対して異なる重みを割り当てることを可能とするユーザーインターフェースを含む。
【0289】
上記ソフトウェアプログラムは、各取得時間における正確な場所又は位置を特定することにより所与の集団の生存細胞の割合を同定する。上記ソフトウェアは、単一細胞の形状及び運動を測定する。細胞形状、変形能、及び運動のパラメーターを、細胞が生存しているかどうかを決定するために使用する。逆に言えば、形態学的変化を経ない、又は運動を呈さない細胞は生存していないと考えられる。
【0290】
上記ソフトウェアプログラムは、所与の時間点で、張り付けられた各画像について所与の細胞又は細胞コロニーの全体的な表面積を算出することにより細胞分裂速度を測定することができる。全画像取得工程の間、その本来の表面積の少なくとも4倍の表面積変化を呈する単一の増殖性細胞は、活発に分裂しているとすることができる。サイズ増加を呈する細胞又は細胞コロニーを、前記細胞の核を数えることによって更に分析してそれらの正確な数を決定することができる。
【0291】
生細胞画像化及び分裂癌細胞のソフトウェア分析の例を
図17に示す。本明細書で記載される(例えば、実施例2及び実施例6)細胞スパイキング実験から得られた乳癌細胞(MDA−MB231)を1時間、24時間、72時間に画像化した。播種から1時間後、24時間後、及び72時間後に画像化された乳癌細胞の生画像をパネルAに示す。パネルA中の白色矢印は、基材に付着した白血球を指し、パネルA中の黒色矢印は基材に付着した乳癌細胞を指す。パネルBは、ビニングおよび分散フィルタの適用後のパネルAと同じ画像を示す。パネルCでは、所与の細胞コロニーの総表面積(元のカラー画像から適合させた白黒画像)を提供するため、画像を自動的に閾値化し、セグメント化した。パネルDは、細胞核の閾値−セグメンテーションを示す。パネルEは、パネルDで閾値化した細胞核の計数を示す。
【0292】
[実施例8]:転移性去勢抵抗性前立腺癌を伴うヒト被験体から単離されたCTCsの長期培養及び分子特性評価:
後期の転移性去勢抵抗性前立腺癌(ステージ3より上、腺癌)を伴う60名の被験体を採用する。採用した被験体の大半は、骨への転移(最も一般的に前立腺癌と関連する)が確認された65歳以上の白人男性である。更に、10名の健康な成人ボランティア(男性5名、女性5名)を対照被験体として上記研究に採用する。
【0293】
各被験体からBDによる2つのCPT Vacutainerチューブ(クエン酸ナトリウムを含む細胞調製チューブ)に20mLの新鮮な末梢血を採取する。血液採取の2時間以内に試料を1500gで20分間遠心分離する。有核細胞画分を単離し、ポリ−L−オルニチンを含み、基材硬度を与えるゼラチン−寒天混合物で補足したコラーゲン系基材で被覆した12ウェルプレートに直接播種する。約2mLの各々の有核細胞画分(WBCs及びCTCsを含有する)を無血清RPMI系培養培地(EGF、ヒドロコルチゾン、プロゲステロン、及びジヒドロテストステロンで補足)で希釈し、12ウェル全てに均等に分配する。
【0294】
その後、新たに播種した細胞を細胞培養インキュベータに移す。細胞培養インキュベータは、カスタマイズされた気体混合物を16.7PSIAの一定の圧力で輸送しつつ、完全に閉鎖され、滅菌された環境において湿度及び温度(摂氏37度)を維持する。上記気体混合物は、1%酸素、5%二酸化炭素、及び94%窒素を含み、同時に過剰な酸素を除去するため混合金属触媒により酸素レベルを維持する。
【0295】
新たに播種した細胞を1時間インキュベートして、基材上に有核細胞が付着するのを可能とする。WBCsは基材にゆるく付着し、容易に脱離して細胞の播種から1時間後に行われる培地交換により各ウェルから除去される。また、培地交換は、非生存細胞及び膜フラグメントも除去する。WBC含有画分を遠心分離して凍結し、被験体内部対照細胞とする。残りの基材に結合した細胞は、懸濁液中又は最初に結合した際のこれらの細胞の球状の外観とは対照的に、基材に堅く結合し、細胞膜分極を呈し拡がる。上記プロトコルのこの時点で、培養プレートの半分のウェルを、1:2000の濃度で培養培地に直接添加されるAlexaフルオロフォア(568nm)に直接複合した抗体を使用してEpCAM発現細胞に対してプローブする。EpCAM+細胞を、初代細胞培養インキュベータ内に完全に収容される蛍光顕微鏡(
図18に示される)を使用して技術者により各ウェルにおいて数える。その後、EpCAMスコアリングが完了した後、抗体含有培養培地を新しい培養培地に交換して細胞増殖研究を続ける。予備データは、1ウェル当たり平均1〜2のEpCAM+細胞が存在することを示し、訓練された技術者による迅速な計数を可能とする。細胞播種及びEpCAMスコアリングの完了からおよそ1.5時間後、MilliporeのMillicellインサートシステム(CTC培養培地を使用し、予め48時間調製した、50%培養密度のHUVEC又はHLMVEC細胞株)上で成長させたフィーダー細胞の単層を各ウェルにフィットさせ、細胞−細胞シグナル伝達キュー及び成長因子を提供して、CTC増殖を促進しながら、2つの培養物を可能性のある細胞汚染から物理的に分離する。その後、培地の蒸発に対抗するため24時間毎に添加される新しい培養培地と共に、細胞を72時間インキュベートする。培養3日後に細胞プレートを技術者により再度検査し、明視野顕微鏡(位相光学)を使用して細胞コロニーについてスキャンする。成長細胞を含有するウェルを、WBCsの表面露出抗原(抗CD45)、単球/マクロファージ(抗CD14)、血管内皮前駆細胞(抗CD34)、及び線維芽細胞(抗線維芽細胞表面タンパク質)を同定する規定の波長(Alexa488nm)の蛍光プローブに直接複合したカクテル陰性選択抗体に対してプローブする。これらの対照マーカーに陰性の細胞コロニーを含有するプレートウェルを抗EpCAM、抗PSA、及び抗アンドロゲン受容体に対して順にプローブし、前立腺がん関連マーカーの存在を特定する。
【0296】
前立腺がんマーカーに対して陽性の細胞コロニー及び/又は試験した全てのマーカーに対して陰性であるが7日間で最低50%の培養密度に達する細胞コロニーをCTC細胞とて同定し、全エキソームシーケンシング及び包括的トランスクリプトーム分析のため選択した。全エキソームシーケンシング及び包括的トランスクリプトーム分析をPersonalis Inc.(カリフォルニア州メンローパーク)により行った。最低50%の細胞培養密度まで成長させたCTC培養物は、次世代シーケンシングプラットフォームを使用するこれらの分析セットを行うのに十分なDNA含有量(1μg〜2μg)を提供した。これらの細胞から作成されたデータを使用して、新規なバイオマーカー研究に使用される培養において急速に分裂するCTCsの包括的な分子プロファイルを提供しながら、前立腺関連突然変異を確認した。1μg未満のDNAを含む可能性のある残りの被験体試料は、全ゲノム増幅(WGA)の後、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)による遺伝子コピー数分析を経た。その後、アンドロゲン受容体の増幅、Myc遺伝子増幅、腫瘍抑制遺伝子PTENの欠失、並びにTMPRSS2とETS転写因子であるERG及びETV1とを含む遺伝子融合について試験した。
【0297】
[実施例9]:バイオマーカー非依存性選択及びヒト被験体由来CTCsの培養:
多様な転移性癌に由来する末梢血試料を、前立腺癌(2)、乳癌(4)、肺癌(4)、黒色腫(2)、大腸癌(2)、食道癌(2)、及び膵臓がん(2)を伴うヒト被験体から取得した。登録の主な決定因子として確認された転移巣により、患者の選択基準を幅広く維持した。血液の加工及びCTC培養方法を、実施例8に記載されるように行った。18の試料中10がEpCAM+、サイトケラチン+、CD45−細胞を含有したのに対し、18の試料中8が生存CTCコロニーを提示した。
図19は、前立腺癌患者の全血から捕捉した培養物中のCTCsの顕微鏡写真を示す。パネルAは、EPCAM及びサイトケラチン8、18に対して陽性の前立腺癌CTCの明視野及び蛍光画像を示す。パネルBは、転移性前立腺癌を伴う患者に由来する急速に成長するCTC培養物を示す。その患者は、骨転移が確認されたステージIVの腺癌を有した。パネルBに示される細胞培養物は、EpCAMの発現が低いか又は発現を呈さず、CD45に陰性であり、播種から5日未満で100%培養密度に達する速い細胞分裂速度を呈した。これらのコロニー内の個別の細胞は、サイズ及び形状が異なり、また高い膜ラフリング活性を呈した。更に、細胞は、一斉に分裂する複数の近辺の細胞と同調的に分裂することが明らかとなった。分裂細胞は、四方八方の上方に延びることが多く、「泡立った」外観をとる。このCTC培養は、全エキソームシーケンシング及びトランスクリプトーム分析を経る10の試料の一部としてPersonalisによる本発明者らの遺伝子特性研究に含まれる。
【0298】
[実施例10]:血液中でスパイクしたCTCsの抗癌剤感受性試験
スパイクした血液に由来する癌細胞を本明細書に記載されるように単離し、富化し、培養した(例えば、実施例2及び実施例6を参照されたい)。細胞をRhoキナーゼ阻害剤であるY−27632(本明細書において参照により援用されるIshizaki et al.2000 Pharmacological Properties of Y−27632,a specific inhibitor of rho−associated kinases.Mol Pharmacol.57(5):976−83)で処理した。抗癌剤感受性試験の結果を
図20に示す。パネルAは、Y−27632処理前の単一細胞を示す。パネルBは、Y−27632の添加の際の細胞の画像を示す。上記細胞の形質膜は、薬物処理の2分後(パネルCに示す)及び5分後(パネルDに示す)に際して縮んだ。
【0299】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載したが、かかる実施形態は、単なる例として提供されるに過ぎないことが当業者に明らかであろう。ここで、本発明から解離することなく、多数の変化、変更及び置換が当業者に対して起こるであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が本発明の実施において採用され得ることが理解される。下記特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造、並びにそれらの等価物がそれにより包含されることを意図する。