特表2016-515168(P2016-515168A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-515168スチールおよび鉄基材上の高温化成コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-515168(P2016-515168A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(54)【発明の名称】スチールおよび鉄基材上の高温化成コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/08 20060101AFI20160422BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C23C22/08
   B05D3/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-561642(P2015-561642)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】US2014021106
(87)【国際公開番号】WO2014138361
(87)【国際公開日】20140912
(31)【優先権主張番号】61/773,393
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511268878
【氏名又は名称】クエーカー ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ジェイムズ イー. ザ サード
【テーマコード(参考)】
4D075
4K026
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA82
4D075AA83
4D075BB23Y
4D075BB23Z
4D075BB28Z
4D075BB73
4D075CA33
4D075DA06
4D075DB02
4D075EA06
4D075EB01
4D075EC30
4D075EC35
4K026AA02
4K026BA03
4K026BB08
4K026CA16
4K026CA26
4K026CA37
4K026DA02
4K026DA03
(57)【要約】
本発明は、高温(すなわち、400°Fまたは400°F超)で、液体組成物を基材の表面と接触させることによって、化成コーティングを基材の表面上に形成するための組成物および方法を対象とする。一態様では、本発明は、鉄含有基材上に化成コーティングを形成する方法であって、鉄含有基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させるステップを含み、鉄含有基材の表面が最低400°Fの温度である方法を提供する。さらなる実施形態では、鉄含有基材の表面は少なくとも1100°Fの温度である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有基材上に化成コーティングを形成する方法であって、前記方法は、前記鉄含有基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させるステップを含み、前記鉄含有基材の前記表面が最低400°Fの温度である、方法。
【請求項2】
前記鉄含有基材の前記表面が少なくとも1100°Fの温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させるステップの間、前記鉄含有基材の前記表面が約400°F〜約1500°Fの範囲の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触させるステップの間、前記鉄含有基材の前記表面が約600°F〜約1200°Fの範囲の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化成コーティングが、前記接触させるステップで、20ミリ秒未満で形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体組成物が、4.0〜95.0%のリン酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体組成物が、0.0〜10.0%のリン酸エステルナトリウム塩をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液体組成物が、0.0〜10.0%のリン酸エステルカリウム塩をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体組成物が、以下の、
水、5.0〜96.0%
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウム、0.0〜1.0%
塩素酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウム、0.01〜5.0%
スルホン酸ナトリウム、またはスルホン酸カリウムまたはスルホン酸アンモニウム、0.01〜5.0%
アミンポリグリコールエーテルまたはドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムもしくはドデシル硫酸カリウム、0.0〜1.0%
ポリグリコールエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、0.0〜1.0%
のうちの1種または複数種をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体組成物が、促進剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはこれらのいくつかの組合せをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体組成物が、溶解した二価のマンガンカチオンをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記接触が、前記鉄含有基材の前記表面への前記液体組成物の噴霧適用によって達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化成コーティングが、約50〜約100mg/ftの間の範囲のコーティング重量で形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
鉄含有基材上に化成コーティングを形成する方法であって、前記方法は、前記鉄含有基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させるステップを含み、前記液体組成物が少なくとも400°Fの温度で適用される、方法。
【請求項15】
前記液体組成物が、少なくとも1100°Fの温度で適用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基材上に化成コーティングを形成する方法であって、前記方法は、前記基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させるステップを含み、前記基材の前記表面が最低400°Fの温度である、方法。
【請求項17】
前記基材が、10秒超かつ40秒未満の間、前記液体組成物と接触している、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2013年3月6日に出願された、「High Temperature Conversion Coating on Steel and Iron Substrates」と題する米国仮特許出願第61/773,393号の利益を主張する。この米国仮特許出願は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
鉄およびスチールの高温加工における重大な損害は、形成プロセスまたはローリングプロセスにおける表面の継続的酸化による歩留まり損失である。これらの作業における多くの段階で、酸化鉄(またスケールとも呼ばれる)は、「巻き込みスケール」または「刷り込みスケール」という欠陥を阻止するために、機械的手段または高圧水手段のいずれかを介して意図的に叩き落される。最終製品の歩留まり損失は、スケールの除去ばかりでなく、保存条件下でも生じる。多くの場合、プレート、コイル、管状の品物、長い製品および造形品は保護されていない環境に保存される。低温酸化鉄(サビ)は、これらの製品が環境に放置された場合に形成され、さらなる歩留まり損失が結果として生じる。
【0003】
鉄含有基材などの基材の上のスケールおよびサビを減少させる一つの方法は、基材の表面にリン酸鉄コーティングなどの化成コーティングを形成することである。低温化成コーティングは多くの場合、化成コーティング組成物の5%溶液を反応させることによって、(浴内で30秒後に)25mg/ftのリン酸鉄を形成することで、60℃で形成され、このリン酸鉄は酸化鉄から基材を保護し、下流の作業に対して潤滑表面を提供し、そして/または塗料が表面へ接着するのを助ける。このような低温コーティングは一般的に、サブマージョンタンク、または有効量のコーティングを作り上げるための噴霧ゾーンの長期運転を含む噴霧システムを使用して形成されなければならない。
【0004】
サブマージョンを必要とすることなく、高温および高い化成処理速度で、鉄含有表面上に化成コーティングを効率的に形成するための方法および組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
したがって、本発明は、鉄含有基材上に高温で化成コーティングを形成するための方法および組成物を提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、鉄含有基材上に化成コーティングを形成する方法であって、鉄含有基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させるステップを含み、鉄含有基材の表面が最低400°Fの温度である方法を提供する。さらなる実施形態では、鉄含有基材の表面は少なくとも1100°Fの温度である。またさらなる実施形態では、鉄含有基材の表面は、約400°F〜約1500°Fの範囲の温度である。またさらなる実施形態では、鉄含有基材の表面は、約600°F〜約1200°Fの範囲の温度である。
【0007】
さらなる態様では上記に従い、本発明は、基材を、リンを含む液体組成物と接触させたときに、化成コーティングが20ミリ秒未満で形成される方法を含む。
【0008】
さらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、化成コーティングを形成するために使用される液体組成物は、約4.0〜95.0%のリン酸を含む。
【0009】
またさらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物は約0.0〜10.0%のリン酸エステルナトリウム塩(sodium phosphate ester)をさらに含む。
【0010】
またさらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物は約0.0〜10.0%のリン酸エステルカリウム塩(potassium phosphate ester)をさらに含む。
【0011】
またさらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物は、以下の(i)水5.0〜96.0%;(ii)水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウム0.0〜1.0%;(iii)塩素酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウム0.01〜5.0%;(iv)スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウムまたはスルホン酸アンモニウム0.01〜5.0%;(v)アミンポリグリコールエーテルまたはドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムもしくはドデシル硫酸カリウム0.0〜1.0%;(vi)ポリグリコールエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル0.0〜1.0%のうちの一つまたは複数を任意の組合せでさらに含む。
【0012】
またさらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物は、促進剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそのいくつかの組合せをさらに含む。
【0013】
またさらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物は、溶解した二価のマンガンカチオンをさらに含む。
【0014】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、液体組成物と鉄含有基材の表面との間の接触は、該鉄含有基材の表面への液体組成物の噴霧適用によって達成される。
【0015】
さらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、化成コーティングは、約50〜約100mg/ftの間の範囲のコーティング重量で形成される。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、鉄含有基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させることによって、該鉄含有基材上に化成コーティングを形成する方法であって、液体組成物が少なくとも400°Fまたは少なくとも1100°Fの温度で適用される方法を含む。
【0017】
またさらなる態様では、本発明は、基材の表面を、リンを含む液体組成物と接触させることによって、基材上に化成コーティングを形成する方法であって、基材の表面が最低400°Fの温度である方法を提供する。
【0018】
前述の概要、ならびに本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の例示的実施形態および添付の図と共に読んだ場合、より良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、化成コーティング溶液中に浸したスチールパネル試料の写真である。
【0020】
図2図2は、浸したスチールパネル試料のEDS結果を示している。
【0021】
図3図3は、100%化成コーティング溶液中に浸したスチールパネル試料のSEM画像を示している。
【0022】
図4図4は、25%化成コーティング溶液中に浸したスチールパネル試料のSEM画像を示している。
【0023】
図5図5は、5%化成コーティング溶液中に浸したスチールパネル試料のSEM画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、「ポリメラーゼ」についての言及は、1種の剤またはこのような剤の混合物を指し、「本方法」についての言及は、当業者に公知の同等のステップおよび方法についての言及を含み、その他も同様である。
【0025】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているような同じ意味を有する。本明細書中に記述されているすべての刊行物は、刊行物に記載されて、そして現在記載されている発明に関連して使用され得る装置、組成物、配合物および方法論を記載および開示する目的のために本明細書に参考として援用される。
【0026】
ある範囲の値が提供されている場合、その範囲の上限値と下限値との間にある各値、およびその述べられた範囲内の任意の他の述べられたかまたは間にある値は、文脈で明確に指示されていない限り下限値の単位の10分の1までが本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲内に独立して含まれ得る上記より小さな範囲の上限値および下限値もまた、述べられた範囲内で任意の特に除外された限界値を条件として、本発明の範囲内に包含される。述べられた範囲がこれらの限界値の一方または両方を含む場合、含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0027】
以下の記載において、本発明のより十分な理解が得られるよう、多くの特定の詳細が記述されている。しかし、本発明は、これらの特定の詳細のうちの一つ以上を用いずに実施することができることは当業者には明らかである。他の例では、周知の特徴および当業者に周知の手順は、本発明を不明瞭にすることを避けるために記載されていない。
【0028】
本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、組成物および方法は列挙した構成要素を含むが、その他のものを除外しないことを意味することを意図する。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用された場合、組成物または方法に対して任意の本質的な重要性がある他の構成要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、特許請求された組成物および実質的な方法ステップについて、他の成分の微量を超える構成要素を除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれにより定義された実施形態は本発明の範囲内である。したがって、本方法および組成物は、追加的ステップおよび成分を含むことができるか(含む)、または代わりに重要でないステップおよび組成物を含む(から本質的になる)、または代わりに、述べられている方法ステップもしくは組成物のみを意図する(からなる)ことを意図する。
【0029】
すべての数値的指定、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、範囲を含めて、0.1の増分だけ(+)または(−)に変化する近似値である。常に明示的に述べられているわけではないが、すべての数値的指定には「約」という用語が先行することを理解されたい。「約」という用語はまた、「X」の微量の増減、例えば、「X+0.1」または「X−0.1」などに加えて正確な値「X」も含む。常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書中に記載されている試薬は単に例示であり、このような試薬の同等物が当技術分野で公知であることも理解されたい。
【0030】
I.本発明の概説
本発明は、高温で(すなわち、400°Fまたは400°F超)、液体組成物を基材の表面と接触させることによって、基材の表面上に化成コーティングを形成するための組成物および方法を対象とする。
【0031】
いくつかの態様では、本発明は、高温で、鉄含有基材またはスチール基材上に化成コーティングを形成するための方法を提供する。さらなる態様では、化成コーティングは、ホスフェ−トコーティングが基材の表面上に形成されるように、基材の表面を、リンを含有する液体組成物と接触させることによって形成される。特定の実施形態では、この接触により、液体組成物が基材の表面に適用される高温に起因して、ホスフェートコーティングが瞬間的に形成される。
【0032】
さらなる実施形態では、基材(または少なくとも基材の表面)は高温である。他の実施形態では、液体組成物は高温である。さらなる実施形態では、基材の表面と液体組成物の両方が高温である。またさらなる実施形態では、基材および液体組成物が、同じか、実質的に同じか、または異なる高温であるが、これらの高温は、400°Fまたはそれより高い温度である。
【0033】
本明細書でさらに詳細に論じられるように、液体組成物は、化成コーティングを形成するのに有用な界面活性剤、促進剤、および他の成分をさらに含有してもよい。
【0034】
II.化成コーティングを形成する方法
一態様では、本発明は、400°Fまたはそれより高い温度で基材上に化成コーティングを形成する方法を対象とする。低温化成コーティングの方法(すなわち、約140〜212°Fの温度での化成コーティング組成物の適用)は多くの場合、化成コーティングで表面をコーティングするために使用されているが、このような低温化成コーティング方法は一般的に、効果的な保護コーティングを作り上げるために、浸漬浴内で少なくとも30秒を必要とする。
【0035】
対照的に、本発明の方法は高温で化成コーティングを形成し、その結果、化成処理組成物と接触させたときに基材の表面上で化成コーティングが瞬間的に形成される。「瞬間的形成」またはコーティングを「瞬間的に」形成するとは、本明細書で使用する場合、基材とコーティング組成物とのミリ秒内の接触で化成コーティングが形成されることを意味する。例示的実施形態では、基材とコーティング組成物との接触後20ミリ秒未満で化成コーティングが形成される。さらなる例示的実施形態では、基材とコーティング組成物との接触後、100ミリ秒未満、90ミリ秒未満、80ミリ秒未満、70ミリ秒未満、60ミリ秒未満、50ミリ秒未満、40ミリ秒未満、30ミリ秒未満、20ミリ秒未満、15ミリ秒未満、10ミリ秒未満、9ミリ秒未満、8ミリ秒未満、7ミリ秒未満、6ミリ秒未満、5ミリ秒未満、4ミリ秒未満、3ミリ秒未満、2ミリ秒未満、1ミリ秒未満、0.5ミリ秒未満で化成コーティングが形成される。またさらなる実施形態では、化成コーティングは、基材とコーティング組成物との接触後、0.1〜500ミリ秒以内、0.5〜450ミリ秒以内、1〜400ミリ秒以内、5〜350ミリ秒以内、10〜300ミリ秒以内、20〜250ミリ秒以内、30〜200ミリ秒以内、40〜150ミリ秒以内、50〜100ミリ秒以内、25〜90ミリ秒以内、30〜80ミリ秒以内、35〜70ミリ秒以内、40〜60ミリ秒以内、45〜50ミリ秒以内に形成される。基材は、任意の長さの時間にわたって、化成コーティングと接触したままにしておいてよいが、通常は、0.1〜500ミリ秒、または約0.5、2.0、3.0、5.0、10.0、20秒、30秒、60秒、または10〜60秒の間、または40秒未満もしくは60秒未満である。いくつかの実施形態では、接触時間は1、5、10、または20秒を超える。
【0036】
化成コーティングの反応速度は通常、10℃増加するごとに2倍になり、よって、上で論じたように、本発明の方法で使用される作業温度では、コーティング反応は瞬間的である。いくつかの態様では、コーティング反応が生じる高温は少なくとも400°F、500°F、600°F、700°F、800°F、900°F、1000°F、1100°F、1200°F、1300°F、1400°F、1500°F、1600°F、1700°F、1800°F、1900°F、2000°Fである。さらなる実施形態では、本発明の方法は、400°F〜2500°F、450〜2400°F、500°F〜2300°F、650°F〜2200°F、700°F〜2100°F、750°F〜2000°F、800°F〜1900°F、850°F〜1800°F、900°F〜1700°F、950°F〜1600°F、1000°F〜1500°F、1050°F〜1400°F、1100°F〜1300°F、1150°F〜1200°F、600°F〜1300°F、610°F〜1250°F、620°F〜1200°F、630°F〜1150°F、640°F〜1100°F、650°F〜1050°F、660°F〜1000°F、670°F〜950°F、680°F〜900°F、700°F〜850°F、650°F〜800°Fの範囲の温度で化成コーティングを形成することを含む。またさらなる実施形態では、本発明の方法は、約350°F、375°F、400°F、425°F、450°F、475°F、500°F、525°F、550°F、575°F、600°F、625°F、650°F、675°F、700°F、725°F、750°F、775°F、800°F、825°F、850°F、875°F、900°F、925°F、950°F、975°F、1000°F、1025°F、1050°F、1075°F、1100°F、1125°F、1150°F、1175°F 1200°F、1225°F、1250°F、1275°F、1300°F、1325°F、1350°F、1375°F、1400°F、1425°F、1450°F、1475°F、1500°Fで化成コーティングを形成することを含む。
【0037】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明の方法は、化成コーティングを形成することを含み、化成コーティング反応について本明細書で論じた高温のうちのいずれかになるのは基材(またはその表面、または基材もしくはその表面の一部分)である。いくつかの態様では上記のうちのいずれかに従い、化成コーティング反応について本明細書で論じた高温になるのは、基材または基材の表面に適用された組成物である。またさらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、基材と基材に適用された組成物の両方が、化成コーティング反応について本明細書で論じた高温になる。理解されるように、基材および/または化成コーティングを形成するために基材に適用された組成物は両方とも同じ温度であっても、異なる温度であってもよい。
【0038】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明の方法で使用される基材は、化成コーティングでコーティングされることに耐えられる任意の材料の基材であってよい。このような基材として、制限なしで、鉄、亜鉛、カドミウム、およびアルミニウム基材(およびその合金)が挙げられる。例示的実施形態では、本発明で使用する基材は鉄含有(鉄を含有、生産または生成する)基材である。さらなる実施形態では、本発明の方法に使用される基材は、鉄または鉄の合金、例えば、スチールなどを含む。
【0039】
理解されるように、本発明の基材は、本発明のコーティング組成物と接触することに耐えられる任意の形状またはサイズの基材であってよい。非限定的な例示的実施形態では、本発明の基材は平坦なシート、プレート、管、球状の形状(制限なしでベアリングを含む)または複数の成分を含む不規則な形状の基材である。これらの形態が何であろうと、本発明で使用する基材のすべてまたは一部は、本明細書で論じた方法のうちのいずれかに従いコーティングされることに耐えられる。
【0040】
またさらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明の方法により形成された化成コーティングは、腐食およびサビに対する耐性を提供する任意のコーティングを含む。例示的実施形態では、このような化成コーティングとして、制限なしで、クロメート化成コーティング、ホスフェート化成コーティング、ブルーイング(bluing)、黒色酸化物コーティング、過マンガン酸塩、スズ酸塩系(stannate based)、セリウム系(cerium based)、ランタン、バナジウム、プラセオジム化成コーティング、タンニン系処理(tannic based treatment)、有機系(シラン)コーティングおよび陽極処理コーティング(anodizing coating)が挙げられる。明快にするために、本明細書での考察はホスフェートコーティングを対象とするが、本明細書で論じられている方法は、当技術分野で公知の多種多様な化成コーティングを形成するために利用されてよいことを理解されたい。
【0041】
特定の実施形態では上記のうちのいずれかに従い、本発明は、高温で、鉄含有基材上にホスフェート化成コーティングを形成することを対象とする。またさらなる実施形態では、本発明は、上記記載のいずれかに従い、ある温度で鉄含有基材上にリン酸鉄コーティングを形成することを対象とする。またさらなる実施形態では、本発明は、少なくとも400°F〜2500°F、450〜2400°F、500°F〜2300°F、650°F〜2200°F、700°F〜2100°F、750°F〜2000°F、800°F〜1900°F、850°F〜1800°F、900°F〜1700°F、950°F〜1600°F、1000°F〜1500°F、1050°F〜1400°F、1100°F〜1300°F、および1150°F〜1200°Fの温度で、鉄含有基材上にリン酸鉄コーティングを形成することを対象とする。またさらなる実施形態では、本発明の方法は、少なくとも400°F、500°F、600°F、700°F、800°F、900°F、1000°F、1100°F、1200°F、1300°F、1400°F、1500°F、1600°F、1700°F、1800°F、1900°F、2000°Fで形成するための方法を含む。さらなる実施形態では、本発明の方法は、400°F〜2500°F、450〜2400°F、500°F〜2300°F、650°F〜2200°F、700°F〜2100°F、750°F〜2000°F、800°F〜1900°F、850°F〜1800°F、900°F〜1700°F、950°F〜1600°F、1000°F〜1500°F、1050°F〜1400°F、1100°F〜1300°F、1150°F〜1200°F、600°F〜1300°F、610°F〜1250°F、620°F〜1200°F、630°F〜1150°F、640°F〜1100°F、650°F〜1050°F、660°F〜1000°F、670°F〜950°F、680°F〜900°F、700°F〜850°F、650°F〜800°Fの範囲の温度で、鉄含有基材上にリン酸鉄コーティングを形成することを含む。またさらなる実施形態では、本発明の方法は、約350°F、375°F、400°F、425°F、450°F、475°F、500°F、525°F、550°F、575°F、600°F、625°F、650°F、675°F、700°F、725°F、750°F、775°F、800°F、825°F、850°F、875°F、900°F、925°F、950°F、975°F、1000°F、1025°F、1050°F、1075°F、1100°F、1125°F、1150°F、1175°F、1200°F、1225°F、1250°F、1275°F、1300°F、1325°F、1350°F、1375°F、1400°F、1425°F、1450°F、1475°F、1500°F、またはそれより高い温度で、鉄含有基材上にリン酸鉄コーティングを形成する方法を含む。上で論じたように、このような温度では、リン酸鉄コーティングは瞬間的に形成される。例示的実施形態では、リン酸鉄コーティングは、基材とコーティング組成物との接触後20ミリ秒未満で形成される。さらなる例示的実施形態では、上記化成コーティングは、基材とコーティング組成物との接触後、100ミリ秒未満、90ミリ秒未満、80ミリ秒未満、70ミリ秒未満、60ミリ秒未満、50ミリ秒未満、40ミリ秒未満、30ミリ秒未満、20ミリ秒未満、15ミリ秒未満、10ミリ秒未満、9ミリ秒未満、8ミリ秒未満、7ミリ秒未満、6ミリ秒未満、5ミリ秒未満、4ミリ秒未満、3ミリ秒未満、2ミリ秒未満、0.1ミリ秒未満、0.5ミリ秒未満で形成される。またさらなる実施形態では、上記化成コーティングは、基材とコーティング組成物との接触後、0.1〜500ミリ秒以内、0.5〜450ミリ秒以内、1〜400ミリ秒以内、5〜350ミリ秒以内、10〜300ミリ秒以内、20〜250ミリ秒以内、30〜200ミリ秒以内、40〜150ミリ秒以内、50〜100ミリ秒以内に形成される。リン酸鉄コーティングを形成するために使用されるコーティング組成物は、当技術分野で公知であり、本明細書でさらに詳細に論じられている任意のコーティング組成物を含む。
【0042】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、化成コーティングは、高温で、基材を液体組成物と接触させることによって、基材上に形成される。液体組成物は、当技術分野で公知であり、そして本明細書でさらに詳細に論じられているように、いくつかの成分を含むことができる。例示的実施形態では、高温で基材に適用される液体組成物はリンを含む。
【0043】
またさらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本明細書中で論じたような高温で形成される化成コーティングのタイプおよびコーティング重量は、化成コーティング組成物の濃度および含有量ならびに反応に利用可能である入手可能な表面基材に依存する。例示的実施形態では、化成コーティングは、約50〜100、55〜95、60〜90、65〜85、70〜80mg/ftの間の範囲内の重量を有する、高温で鉄含有基材上に形成されたリン酸鉄コーティングである。さらなる実施形態では、コーティング(特定の実施形態ではリン酸鉄コーティングであってよい)は、約30〜300、35〜250、40〜200、45〜150、50〜140、55〜130、60〜120、65〜110、70〜100、75〜90mg/ftの間の範囲内の重量を有する。
【0044】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明は、高温で、液体組成物を基材に適用して、その基材の一つまたは複数の表面上に化成コーティングを形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、液体組成物中に基材を浸すことによって、組成物は浴適用で適用される。いくつかの実施形態では、基材は、液体組成物で覆われる(flooded)。いくつかの実施形態では、組成物は、当技術分野で公知の方法、例えば、従来の噴霧ヘッダーを用いる方法または空気噴霧適用による方法などを使用して基材(または基材の一部分)上に噴霧する。過剰噴霧は、当技術分野で公知のヘッダー設計により排除することができる。基材が本明細書中に記載されている高温である実施形態では、低温化成処理方法は、化成コーティングが形成される温度を制御するための溶液の温度に一般的に依存し、噴霧適用が水の沸点より高い温度で一般的に実行可能ではないので、本発明の方法は、低温化成処理方法とは対照的に、噴霧適用を使用して達成することができる。したがって、本発明の方法は、特に、従来の浸漬タンク(浴)または噴霧洗浄機での適用に容易に適さない不規則な表面または形状を有する基材のコーティングに対して、低温化成処理方法を超える利点を提供する。さらなる実施形態では、本発明のコーティング組成物は、本明細書で論じた温度のいずれかに合致する温度で、鉄含有基材を含めた基材に適用され、この場合、コーティング組成物の適用は、上側および下側に単一のヘッダーを有する単一バンクの噴霧による。
【0045】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、コーティング組成物は、様々な製造プロセスにおける任意の時点、特に基材ができるだけスケールを含まない製造プロセスの時点で適用され得る。このような時点として、制限なしで以下を挙げることができる:ビレット、鋼片または厚板が金型を出た後;ストリップが連続鋳造機を出た後;粗圧延機を1回通過した後;可逆式粗選機、可逆式圧延機またはステッケル圧延機を最後に通過した後;コイルボックスを含む任意の脱スケール作業後;最終加工装置(finishing train)の最後の場所の後。
【0046】
理解されるように、本明細書で論じた方法は、基材上に単一の化成コーティングを形成するために使用され得るか、または、本方法は、適用された化成コーティングの特徴を変化させるために、かつ/または同じ基材へ複数のコーティングを加えるために、コーティング組成物および温度の両方を等しい条件下で、または異なる条件下で複数回反復させてもよい。
【0047】
さらなる実施形態では上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、基材の一つまたは複数の表面を予め洗浄した後、そうでなければ、当技術分野で公知の方法を使用してスケールを除去する処理を行った後で基材に適用される。
【0048】
特定の実施形態では、本発明は、低温(例えば、140〜212°F)コーティング方法ではない、表面上に化成コーティングを形成するための方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明の方法は、低温(例えば、140〜212°F)コーティング方法ではない方法を使用して鉄含有基材上にリン酸鉄コーティングを形成することを含む。
【0049】
さらなる実施形態では、当技術分野で公知の化成コーティングを形成するための方法および組成物は、少なくとも400°F〜2500°F、450〜2400°F、500°F〜2300°F、650°F〜2200°F、700°F〜2100°F、750°F〜2000°F、800°F〜1900°F、850°F〜1800°F、900°F〜1700°F、950°F〜1600°F、1000°F〜1500°F、1050°F〜1400°F、1100°F〜1300°F、および1150°F〜1200°Fの温度で化成コーティングを形成するように適合させられ、そしてそれを形成するために使用される。このような方法として、制限なしで、例えば、US3458364;US4950339;US7294210;WO1984002722;US20040062873;US2856322;US4865653;US20060237098;US5891268;US5976272;US6638370;US20030104228;US7294211;US20020142178;US20030066632;US2257313A;Lin, C. S.ら((2006年)Journal of the Electrochemical Society、153巻(3号):B90〜B96頁);Sudagar, J.ら((2012年)Transactions of the Institute of Metal Finishing、90巻(3号):129〜136頁);Yangら((2007年)Materials Chemistry and Physics、101巻、2〜3号、480〜485頁)に記載されている方法などの方法が挙げられ、これらのそれぞれがすべての目的で、特に基材上に化成コーティングを形成するための方法および組成物に関係したすべての教示について、その全体が参考として援用される。
【0050】
III.コーティング組成物
上で論じたように、本発明は、高温で基材上に化成コーティングを形成するための方法を提供する。理解されるように、形成される化成コーティングのタイプは、基材に適用される組成物の成分に依存する。本発明の化成コーティングを形成するために使用される組成物は、本明細書では「化成処理組成物」、「コーティング組成物」、「化成処理化合物」、「化成処理組成物」およびその文法的同等物と呼ばれる。
【0051】
一態様では、本発明の化成処理組成物は、基材上へのコーティングの形成において使用する任意の成分を含み、そのコーティングは、腐食を阻止し、サビを阻止し、表面硬度を増加させ、塗料の表面への接着能力を向上させる。さらなる態様では、本発明の化成処理組成物は、制限なしで、粉末状金属、金属酸化物、クロム酸塩、ホスフェート、亜鉛、チタン、マグネシウム、過マンガン酸塩、スズ酸塩、セシウム、ランタン、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、セレン、およびタンタルを含む。本発明の化成処理組成物は、促進剤および/または界面活性剤をさらに含んでもよい。本発明において使用する促進剤は、制限なしで、ニトレート、ニトライト、クロレート、ニトロベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミン、および過酸化水素を含むことができる。
【0052】
一態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明の化成処理組成物は、リンを含む液体組成物である。例示的実施形態では、本発明の液体化成処理組成物は、制限なしで、リン酸、リン酸エステルナトリウム塩、リン酸エステルカリウム塩、またはこれらのいくつかの組合せを含む。さらなる実施形態では、液体化成処理組成物は、制限なしで、水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、塩素酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸アンモニウム、アミンポリグリコールエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、またはこれらのいくつかの組合せをさらに含む。本発明の化成処理組成物は、促進剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、溶解した二価のマンガンカチオン、不動態化剤(制限なしで金属亜硝酸塩および金属二クロム酸塩を含む)、補助イオン(制限なしで、ナトリウム、亜鉛、カドミウム、鉄、銅、鉛、ニッケル、コバルト、アンチモン、アンモニウム、塩化物、臭化物、ニトレートおよびクロレートを含む)、溶媒(制限なしで、水、アルコール、ケトン、または1種もしくは複数種の溶媒のうちのいくつかの混合物を含む)、またはこれらのいくつかの組合せをさらに含んでもよい。
【0053】
さらなる態様では上記のうちのいずれかに従い、本発明の化成処理組成物は、表示された濃度で、以下の成分のうちの1種または複数種を任意の組合せで含む:
【0054】
(a)リン酸4.0〜95.0%
【0055】
(b)リン酸エステルナトリウム塩0.0〜10.0%
【0056】
(c)リン酸エステルカリウム塩0.0〜10.0%
【0057】
(d)水5.0〜96.0%
【0058】
(e)水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウム0.0〜1.0%
【0059】
(f)塩素酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウム0.01〜5.0%
【0060】
(g)スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウムまたはスルホン酸アンモニウム0.01〜5.0%
【0061】
(h)アミンポリグリコールエーテルまたはドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムもしくはドデシル硫酸カリウム0.0〜1.0%
【0062】
(i)ポリグリコールエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル0.0〜1.0%。
【0063】
以下のセクションは、上に列挙された成分についてさらなる詳細を提供する。理解されるように、これらの成分のうちの1種または複数種は、任意の組合せで本発明のコーティング組成物に含まれていてもよく、本明細書中に記載されている方法のうちのいずれかに従い基材に適用されてもよい。
【0064】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(a)リン酸を、約2.0〜98.0、4.0〜95.0、6.0〜90.0、8.0〜80.0、10.0〜70.0、15.0〜60.0、20.0〜50.0、25.0〜40.0%の濃度で含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、リン酸を、少なくとも2.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0%の濃度でさらに含んでもよい。
【0065】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(b)リン酸エステルナトリウム塩を、約0.0〜20.0、0.2〜19.0、0.4〜18.0、0.6〜17.0、0.8〜16.0、1.0〜15.0、1.5〜14.4、2.0〜14.0、2.5〜13.4、3.0〜13.0、3.5〜12.4、4.0〜12.0、4.5〜11.6、5.0〜11.0、6.0〜10.0、7.0〜9.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、リン酸エステルナトリウム塩を、少なくとも0.0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8、10.0、10.2、10.4、10.6、10.8、11.0、11.2、11.4、11.6、11.8、12.0、12.2、12.4、12.6、12.8、13.0、13.2、13.4、13.6、13.8、14.0、14.2、14.4、14.6、14.8、15.0、15.2、15.4、15.6、15.8、16.0、16.2、16.4、16.6、16.8、17.0、17.2、17.4、17.6、17.8、18.0、18.2、18.4、18.6、18.8、19.0、19.2、19.4、19.6、19.8、20.0%の濃度でさらに含んでもよい。
【0066】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(c)リン酸エステルカリウム塩を、約0.0〜20.0、0.2〜19.0、0.4〜18.0、0.6〜17.0、0.8〜16.0、1.0〜15.0、1.5〜14.4、2.0〜14.0、2.5〜13.4、3.0〜13.0、3.5〜12.4、4.0〜12.0、4.5〜11.6、5.0〜11.0、6.0〜10.0、7.0〜9.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、リン酸エステルカリウム塩を、少なくとも0.0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8、10.0、10.2、10.4、10.6、10.8、11.0、11.2、11.4、11.6、11.8、12.0、12.2、12.4、12.6、12.8、13.0、13.2、13.4、13.6、13.8、14.0、14.2、14.4、14.6、14.8、15.0、15.2、15.4、15.6、15.8、16.0、16.2、16.4、16.6、16.8、17.0、17.2、17.4、17.6、17.8、18.0、18.2、18.4、18.6、18.8、19.0、19.2、19.4、19.6、19.8、20.0%の濃度でさらに含んでもよい。
【0067】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(d)水を、約5.0〜96.0、3.0〜98.0、3.5〜93.0、4.0〜88.0、4.5〜83.0、5.0〜78.0、5.5〜73.0、6.0〜68.0、6.5〜63.0、7.0〜58.0、7.5〜53.0、8.0〜48.0、8.5〜43.0、9.0〜38.0、9.5〜33.0、10.0〜28.0、10.5〜23.0、11.0〜18.0、11.5〜13.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、水を、少なくとも5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0%の濃度でさらに含んでもよい。
【0068】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(e)水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムを、約0.0〜1.0、0.0〜2.0、0.2〜1.9、0.4〜1.8、0.6〜1.7、0.8〜1.6、1.0〜1.5、および1.2〜1.4%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、成分(e)を、少なくとも0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0%の濃度でさらに含んでもよい。
【0069】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(f)塩素酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウムを、約0.01〜5.0、0.00〜10.0、0.05〜9.5、0.25〜9.0、0.45〜8.5、0.65〜8.0、0.85〜7.5、1.05〜7.0、1.25〜6.5、1.45〜6.0、1.65〜5.5、1.85〜5.0、2.05〜4.5、2.25〜4.0、2.45〜3.5、2.65〜3.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、成分(f)を、少なくとも0.00、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00%の濃度でさらに含んでもよい。
【0070】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(g)スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウムまたはスルホン酸アンモニウムを、約0.01〜5.0、0.00〜10.0、0.05〜9.5、0.25〜9.0、0.45〜8.5、0.65〜8.0、0.85〜7.5、1.05〜7.0、1.25〜6.5、1.45〜6.0、1.65〜5.5、1.85〜5.0、2.05〜4.5、2.25〜4.0、2.45〜3.5、2.65〜3.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、成分(g)を、少なくとも0.00、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00%の濃度でさらに含んでもよい。
【0071】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、成分(h)アミンポリグリコールエーテルまたはドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムもしくはドデシル硫酸カリウムを、約0.0〜1.0、0.05〜4.5、0.10〜4.0、0.15〜3.5、0.20〜3.0、0.25〜2.5、0.30〜2.0、0.35〜1.5、0.40〜1.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、成分(h)を、少なくとも0.00、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00%の濃度でさらに含んでもよい。
【0072】
上記のうちのいずれかに従い、本発明のコーティング組成物は、(i)ポリグリコールエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルを、約0.0〜1.0、0.05〜4.5、0.10〜4.0、0.15〜3.5、0.20〜3.0、0.25〜2.5、0.30〜2.0、0.35〜1.5、0.40〜1.0%の濃度でさらに含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、成分(i)を、少なくとも0.00、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00%の濃度でさらに含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、上に記載のようなコーティング組成物は、実際の使用に適した追加の水で、体積対体積ベースで希釈してもよい。100%未満のコーティング組成物配合物を金属表面と接触させて保護層を得ることが望まれるいくつかの実施形態では、コーティング組成物配合物は、体積ベースで水(例えば水道水)と合わせることによって、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、約15%〜約45%、約20%〜約50%、約25%〜約60%、約30%〜約65%、約35%〜約70%、約40%〜約75%、約45%〜約80%、または約50%〜約85%の溶液百分率を達成することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、上に記載のようなコーティング組成物は100%濃度で使用される、すなわち、追加の水と混合されない。
【実施例】
【0075】
実施例
【0076】
(実施例1)
【0077】
本発明の実施形態の化成コーティング溶液を調製し、以下の表に記述されているような体積による濃度で水と混合した。スチールパネルを秤量し、加熱し、上記溶液に30秒間浸し、秤量し、記述された時間および温度で加熱し、冷却し、再秤量した。詳細および結果は、以下のチャートに含まれている。
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
上の表の結果により実証されるように、加熱したパネルを化成コーティング溶液中に30秒間浸すことによって、パネル上に測定可能なコーティングが提供された。さらに、化成コーティング溶液で処理したパネルは、マッフル炉内での加熱後、コーティングされてないパネルと比較してかなり低い量の酸化をもたらした。
【0084】
(実施例2)
【0085】
本発明の実施形態の化成コーティング溶液を調製し、5%化成コーティング溶液および25%化成コーティング溶液の濃度(体積で)で水と混合した。100%化成コーティング溶液(すなわち水と混合していない)もまた使用した。スチールパネルを700°Fに加熱し、次いで5%、25%、および100%溶液のそれぞれに浸した。
【0086】
図1は試料の写真を示している。上から下へ:5%、25%および100%化成コーティング溶液中に浸した。試料の右側は浸した領域である。左側の領域は溶液と接触させなかった。
【0087】
試料についていくつかのエネルギー分散分光法(「EDS」)スペクトルを、左から右へ1〜7まで番号付けしたスポット上に得た。25%および100%溶液に浸した試料の表面外観はかなり不均一であったので、7つのEDSスペクトルを得た。5%溶液に浸した試料の表面外観はより均一であったので、4つのスペクトルのみを得た(およそ1−3−5−7の位置)。使用されたEDS環境は、acc.V5 keV、magn.100×、スポット99、33000cps、Lsec50であった。
【0088】
様々な構成要素の組成は、位置1から7へと至るまでかなり一貫していることが判明した。様々な構成要素の量を平均し、浸漬液体の濃度に対してプロットした。結果は図2において見ることができる。
【0089】
表面上に最も豊富な構成要素は酸素である。2番目に豊富な構成要素はリンであり、選択された浸漬条件下で、リンの測定は容易に達成可能であることを示している。リンはホスホネートに関連するものである。
【0090】
ナトリウムもまた大量に存在し、これはホスホネートと反応することが可能であったはずだが、乾燥した、水酸化物の形態で存在することもできる。化成コーティングの配合物中に少量の有機材料もまた存在し、表面層の有機の性質は浸漬液体の濃度と共に増加することがわかる。配合物中の極少量のClおよびSもまた、表面にさかのぼることができる。Feの量は、浸漬液体の濃度が増加するにつれてかなり低減することを見ることができ、これは、パネルのコーティング率が重要となることを示している。
【0091】
図3、4、および5は、3つの試料上の位置1〜7における走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像を示している。100%化成コーティング溶液に浸した試料のほぼ完全な表面被覆が明確に視認可能である。位置7において、液体からストリップを引き出した後の小滴の残留に起因して、密ではない材料が堆積していると思われる。
【0092】
25%化成コーティング溶液に浸した試料について、基材を随所に見ることができるが、EDSデータは位置1〜3の表面は依然としてかなりの表面層で覆われていることを示しており、推測できるように、この表面層はより巧妙な性質を有する、すなわち表面を極めてよく覆うが、元の組織には影響を及ぼさないままである。位置4〜7では、極めて壊れやすい、粉末状の材料が表面を覆っているように見える(また裸眼でも認識可能)。
【0093】
5%化成コーティング溶液に浸した試料について、基材を、すべての位置において明確に見ることができ、これは、EDSデータと共に表面層がかなり薄くなったことを示唆している。
【0094】
結果およびデータは、堆積した/反応した表面層の性質および品質は、浸漬液体の濃度にかなり依存することを実証している。
【0095】
本発明の明細書は、現在記載されている技術の実施例態様において、方法論、システムならびに/またはその構造および使用の完全な記載を提供する。本技術の様々な態様は、ある程度の特殊性と共に、または一つまたは複数の個々の態様を参照して上に記載されてきたが、当業者であれば、本発明の技術の趣旨または範囲から逸脱することなく、開示されている態様に対して多くの変更を行うことができる。現在記載されている技術の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの態様を作ることができるので、適当な範囲は、本明細書中のこれより以下に添付される特許請求の範囲に属する。したがって他の態様が想定される。さらに、明示的に特許請求されていない限り、または特定の順序が特許請求の範囲の言語により本質的に必要とされない限り、任意の作業を任意の順序で実施することができることを理解すべきである。上記の記載に含まれ、付随の図面に示されているすべての物質は、特定の態様の単なる例示であるものとし、示されている実施形態に制限されるものでないと解釈されるべきであることを意図する。文脈から明白ではない限り、または明示的に述べられていない限り、本明細書中で提供されているいずれの濃度値も、混合物の特定の成分の添加により、または添加後に生じる任意の化成処理に関係なく、混和物の値または百分率に換算して一般的に与えられている。本開示において言及されたすべての公開された参考文献および特許文献は、本明細書にまだ明示的に組み込まれていない範囲まで、すべての目的でそれら全体が本明細書に参考として援用される。以下の特許請求の範囲で定義されているような本発明の技術の基本的構成要素から逸脱することなく、詳細または構造における変更を行ってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】