特表2016-515470(P2016-515470A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-515470(P2016-515470A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(54)【発明の名称】メタン化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20160425BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20160425BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20160425BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20160425BHJP
【FI】
   B01J23/755 M
   B01J35/10 301G
   C07C9/04
   C07C1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-505438(P2016-505438)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】SG2014000143
(87)【国際公開番号】WO2014158095
(87)【国際公開日】20141002
(31)【優先権主張番号】201302358-5
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】SG
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508305029
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】チェン ルエイ
(72)【発明者】
【氏名】チアン ズ キュン
(72)【発明者】
【氏名】ボーグナ アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 博之
(72)【発明者】
【氏名】泉 良範
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA12
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BC68A
4G169BC68B
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4G169EC22X
4G169ED07
4G169FA02
4G169FB08
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB44
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA21
4H006BA55
4H006BA56
4H006BA81
4H006BB61
4H006BB62
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC13
4H006BC18
4H006BC31
4H006BC37
4H006BD10
4H006BD81
4H006BE20
4H006BE40
(57)【要約】
本発明は、メタン化反応を触媒するための、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒の使用に関する。また、少なくとも一酸化炭素及び水素といったガスを含有する原料を触媒に接触させる工程を備える、原料のメタン化方法も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン化反応の触媒に使用する際、多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子を備える触媒。
【請求項2】
前記触媒の前記多孔質シリカマトリックスは、直径約1〜100nmの細孔を有する請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ニッケル粒子は、約2〜10nmの平均粒径を有する請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒は、少なくとも約200m2/g又は約200〜1000m2/gのBET表面積を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒の前記細孔は、反応物質が前記ニッケルの表面に浸透するように、前記シリカマトリックスの外面から前記ニッケルの外面まで連続的に延びる請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
約16〜63重量%の金属ニッケルを含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒のうち、活性ニッケル表面積は、約50〜160m2/g.Niである請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
メタン化反応の触媒のための、多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子を備えた触媒の使用。
【請求項9】
一酸化炭素及び水素を含有する混合ガス中の一酸化炭素含有量を低減するための、多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子を備えた触媒の使用。
【請求項10】
一酸化炭素及び水素を含有する原料を、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒に接触させる工程を備える、前記原料のメタン化方法。
【請求項11】
前記原料はさらに、二酸化炭素ガスを含有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記原料はさらに、蒸気を含有する請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記原料は、石炭ガス化及び/又はバイオマスガス化による生成したガスを含有する請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記原料はさらに、硫黄含有ガスを含有する請求項に記載10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記硫黄含有ガスは、約0.1〜5000ppmの濃度で存在する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記硫黄含有ガスは、硫化水素、硫化カルボニル、二酸化硫黄、有機チオールのうちのいずれか1つ以上を含有する請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記原料中の水素対一酸化炭素のモル比は、約4:1〜約1:1の範囲である請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記接触させる工程は、前記触媒を含有した充填層反応器中に前記原料を通過させる工程を備える請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記接触させる工程中の前記原料の圧力は、約0.5〜40バールの範囲である請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記接触させる工程は、少なくとも約250℃の温度で実施される請求項10〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記接触させる工程中の前記温度及び原料の流量は、酸化炭素からメタンへの変換平衡を達成するのに十分である請求項10〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記原料の流量は、約1000〜100000h−1の範囲である請求項10〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒は、少なくとも約20ppmの硫黄含有ガスを含有する原料を使用することにより、前記方法における少なくとも2000分間の使用後、再生しなくても活性がある請求項10〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
一酸化炭素及び水素を含有する混合ガスを、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒に接触する工程を備える、前記混合ガス中の一酸化炭素含有量を低減する方法。
【請求項25】
前記混合ガスは、硫黄含有ガスを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
水素をガスに添加することによって混合ガスを生成する工程と、
前記混合ガスを、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒に接触する工程とを備える、前記ガス中の一酸化炭素含有量を低減する方法。
【請求項27】
前記ガスは、硫黄含有ガスを含む請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、シンガポール特許出願番号SG201302358−5に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
本発明は、メタン化触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
代替天然ガスは、石炭やバイオマスガス化プロセスで製造される所謂合成ガスを利用して、ニッケル触媒のメタン化反応によって生成することができる。しかしながら、合成ガス中に含まれる硫黄化合物は、ニッケル触媒を深刻に被毒するものである。硫黄はほとんどの石炭中に含まれる成分であるため、製造される合成ガス中から完全には除去できないことが多い。触媒として利用するために活性金属であるニッケルを酸化アルミニウム担体に担持する際、合成ガスに含有される硫黄がニッケル触媒に供給されるのに先立って、その硫黄のほぼすべてを取り除く必要がある。特に、硫黄が約0.1ppm未満のレベルよりいくらか高い濃度で存在する場合、ニッケル触媒を被毒してしまうため、供給ガス中の硫黄含有量を約0・1ppm未満のレベルまで減らすことが必要である。硫黄を0.1ppmまで除去するガス浄化プロセスを行えば、追加の資本コスト及び処理コストが掛かってしまう。従って、代替天然ガスの生成コストを最小化するような、硫黄に対して耐性高いニッケル触媒への要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、以上の要求を少なくとも部分的に満足することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、メタン化反応向けの触媒として使用する際、多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子を備える触媒を提供する。
【0006】
本発明はさらに、メタン化反応向けの触媒のための、多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子を備えた触媒の使用に係る。
【0007】
以下のオプションは、それぞれ又はその他の好ましい組み合わせにより、第1の態様と併せて使用されてもよい。
【0008】
触媒の多孔質シリカマトリックスは、直径約1〜100nmの細孔を有してもよい。ニッケル粒子は、酸化ニッケル粒子を含んでもよい。酸化ニッケル粒子は、水素含有雰囲気下での還元に先立ち、約2〜10nmの平均粒径を有してもよい。ニッケル粒子は、金属ニッケル粒子を含んでもよい。金属ニッケル粒子は、約2〜10nmの平均粒子径を有してもよい。触媒は、微粒子であってもよい。触媒は、シート状構造を有してもよい。触媒粒子は、少なくとも約10のアスペクト比を有してもよく、このアスペクト比とは、シート状構造のシートの厚さに対する長さの比率をいう。
【0009】
触媒は、その内部に分散された複数のニッケル粒子を含有してもよく、ニッケル粒子は金属ニッケル粒子であってもよい。
【0010】
触媒は、少なくとも約200m2/gのBET表面積を有してもよい。また触媒は、約200〜1000m2/gのBET表面積を有してもよい。触媒は多孔質であってもよい。触媒及び/又はシリカマトリックスの細孔は、シリカマトリックスの外面からニッケルの外面まで連続的に延びてもよい。これにより、反応物質又はその他の種が、シリカマトリックスを通じて前記ニッケルの表面に浸透する。
【0011】
触媒は、約16〜63重量%の金属ニッケルを含有してもよい。触媒は、約20〜80重量%の酸化ニッケルを含有してもよい。触媒は、水素含有雰囲気下での還元に先立ち、約20〜80重量%の酸化ニッケルを含有してもよい。触媒は、約50〜160m2/g.Niの活性ニッケル表面積を有してもよい。「活性ニッケル表面積」という用語は、酸化ニッケルの還元後であって、従って水素又は反応ガスにアクセス可能なニッケルの面積をいう。「金属ニッケル」という用語は、元素状態にあるニッケルをいう(すなわちNi(0))。
【0012】
一実施形態は、多孔質シリカマトリックスに分散された複数の金属ニッケル粒子を含有した、メタン化反応の触媒に使用される際の触媒であって、多孔質シリカマトリックスは、シリカマトリックスの外面からニッケルの外面に連続的に延びる細孔を有する触媒を提供する。
【0013】
他の実施形態は、多孔質シリカマトリックスに分散された複数の金属ニッケル粒子を含有した、メタン化反応の触媒に使用される際の触媒であって、多孔質シリカマトリックス又は触媒は、少なくとも約200m2/gのBET表面積を有する触媒を提供する。
【0014】
さらに他の実施形態は、多孔質シリカマトリックスに分散された複数の金属ニッケル粒子を含有した、メタン化反応の触媒に使用される際の触媒であって、約13〜63重量%のニッケルを含有し、約50〜160m2/g.Niの活性ニッケル表面積を有する触媒を提供する。
【0015】
本発明はまた、多孔質シリカマトリックスに分散された金属ニッケル粒子を含有する触媒の使用、例えば、一酸化炭素及び水素と、任意で硫黄含有ガスを含有した原料のメタン化反応を触媒するための、第1の態様による触媒の使用に係る。
【0016】
本発明の第2の態様によると、一酸化炭素及び水素を含有する混合ガス中の一酸化炭素含有量を低減するための、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒の使用、例えば、第1の態様による触媒の使用に係る。
【0017】
第2の態様の一実施形態によると、触媒は、多孔質シリカマトリックスに分散された金属ニッケル粒子を含有する。
【0018】
本発明の第3の態様は、一酸化炭素及び水素を含有する原料のメタン化方法を提供する。この方法は、原料を、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒、例えば、第1の態様の触媒に接触させる工程を備える。
【0019】
第3の態様の一実施形態によると、触媒は、多孔質シリカマトリックスに分散された金属ニッケル粒子を含有する。
【0020】
以下のオプションは、それぞれ又はその他の好ましい組み合わせにより、第3の態様と併せて使用されてもよい。
【0021】
原料はさらに、二酸化炭素ガスを含有してもよい。原料は、石炭をガス化した合成ガス及び/又はバイオマスをガス化した合成ガスを含有してもよい。原料はさらに、硫黄含有ガスを含有してもよい。硫黄含有ガスは、0.1ppm超又は約0.1〜5000ppmの濃度で存在してもよい。原料は、硫化水素、硫化カルボニル、二酸化硫黄、1種以上の有機チオール、及び/又はその他の硫黄含有ガスを含有してもよい。原料中の水素対一酸化炭素のモル比は、約4:1〜約1:1の範囲であってもよい。
【0022】
接触させる工程は、原料を、例えば、触媒を含有した充填床反応物質中を通過させる等、触媒の上方を通過させ、且つ/又は、触媒中を通過させ、且つ/又は、触媒を通り過ぎさせる工程を備えてもよい。接触させる工程中の原料の圧力は、約0.5〜40バールの範囲であってもよい。原料の流量は、約1000〜100000h−1の範囲であってもよい。
【0023】
接触させる工程は、少なくとも約250℃の温度で、例えば、約250〜800℃の範囲の温度で実施されてもよい。接触させる工程中の温度及び原料の流量は、一酸化炭素からメタンへの変換平衡を達成するのに十分であってもよい。
【0024】
触媒は、少なくとも約20ppmの硫黄含有ガスを含有する原料を使用することにより、前記方法における少なくとも2000分間の使用後、再生しなくても活性がある。
【0025】
一実施形態は、一酸化炭素及び水素を含有する原料を、多孔質シリカマトリックスに分散された複数の金属ニッケル粒子を含有する触媒に接触させる工程を備える原料のメタン化方法であって、多孔質シリカマトリックスは、シリカマトリックスの外面から金属ニッケルの外面まで連続的に延びる細孔を有する方法を提供する。
【0026】
他の実施形態は、一酸化炭素及び水素を含有する原料を、多孔質シリカマトリックスに分散された複数のニッケル粒子を含有する触媒に接触させる工程を備える原料のメタン化方法であって、原料はさらに、少なくとも約0.1ppm、例えば、約0.1〜5000ppmの濃度で存在する硫黄含有ガスを含有する方法を提供する。
【0027】
他の実施形態は、一酸化炭素及び水素を含有する原料を、約1000〜100000h−1の範囲の流量で、多孔質シリカマトリックスに分散された複数のニッケル粒子を含有する触媒を含有した充填床反応物質中を通過させる工程を備える原料のメタン化方法であって、通過させる工程中の圧力及び温度は、各々、約0.5〜40バールの範囲及び約250〜800℃の範囲である方法を提供する。
【0028】
さらに他の実施形態は、一酸化炭素、水素、水(蒸気)、メタン、及び二酸化炭素を含有し、さらに少なくとも約0.1ppm、任意で少なくとも約20ppmの濃度で存在する硫黄含有ガスを含有した原料のメタン化方法であって、原料を、多孔質シリカマトリックスに分散された複数のニッケル粒子を含有した触媒に接触させる工程を備え、触媒は、方法における少なくとも2000分間の使用後、再生しなくても依然として活性がある方法を提供する。
【0029】
さらに他の実施形態は、一酸化炭素及び水素を含有し、さらに少なくとも約0.1ppm、任意で少なくとも約20ppmの濃度の硫黄含有ガスを含有した原料のメタン化方法であって、原料を、多孔質シリカマトリックスに分散された複数のニッケル粒子を含有し、シリカマトリックスの外面からニッケルの外面まで連続的に延びる細孔を有する触媒を含有した充填床反応物質を約1000〜100000h−1の範囲の流量で通過させる工程を備え、通過させる工程中の圧力及び温度は、各々、約0.5〜40バールの範囲であり、約250〜800℃の範囲である方法を提供する。
【0030】
他の一の態様は、硫黄含有ガスの存在下において一酸化炭素及び水素をメタン化する方法であって、一酸化炭素及び水素を、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒、例えば、第1の態様による触媒に接触させる工程を備える方法を提供する。
【0031】
さらに他の態様は、一酸化炭素及び水素を含有する混合ガス中の一酸化炭素含有量を低減する方法であって、混合ガスを、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒に露出する工程を備える方法を提供する。混合ガスは、硫黄含有ガスを含んでもよい。
【0032】
さらに他の態様は、ガス中の一酸化炭素含有量を低減する方法であって、混合ガスを形成するため、水素をガスに添加する工程と、混合ガスを、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する触媒に露出する工程とを備える方法を提供する。ガスは、硫黄含有ガスを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】触媒の長期安定性試験を示すグラフである。グラフは、時間経過に対するメタン濃度の変化を示している。使用された供給組成は、H2Oが10%、N2が10%、H2が40%、COが20%、CO2が16%、CH4が4%、H2Sが20ppmであり、T=500℃、GHSV=20000h−1であった。触媒はすべて、50%のH2/N2中において500℃で2時間、還元された。
【0034】
図2】反応前後のNi@SiO2の透過電子顕微鏡像を示している。
【0035】
図3】反応前後の市販の触媒の透過電子顕微鏡像を示している。
【0036】
図4】使用済み触媒Ni@SiO2及び市販の触媒のX線回折(XRD)パターンを示している。
【0037】
図5】種々の還元処理下における、Ni@SiO2、市販の触媒、及びNi/SBA−15上のNiの表面積を示している。
【0038】
図6】Ni@SiO2の長期安定性を示すグラフである。生成物(乾燥基準、N2含有)濃度は、時間経過の関数として示されている。使用された供給組成は、H2が40%、H2Oが10%、COが20%、CO2が10%、CH4が4%、N2が10%であり、T=500℃、P=1バール、GHSV=20250h−1であった。触媒は、50%のH2/N2中において500℃で2時間、還元された。
【0039】
図7】Ni@SiO2(Ni39%)、市販の触媒、及び石炭ガス化プロセスにおける生成ガスを使用して得られた実験結果を示している。メタン濃度は、時間経過の関数として示されている。反応条件は、T=485℃、GHSV=50000h−1であった。触媒は、50%のH2/N2中において600℃で2時間、還元された。
【0040】
図8】500℃、1バール、GHSV=36000h−1の市販(Ni57%)の触媒及びNi@SiO2(Ni39%)触媒に関して、生成物中のCH4(乾燥基準、N2含有)の濃度を時間経過の関数として示している。触媒は、50%のH2/N2中において600℃で2時間、還元された。
【0041】
図9】市販(Ni57%)の触媒及びNi@SiO2(Ni39%)触媒(H2Oが10%、N2が10%、H2が40%、COが20%、CO2が16%、CH4が4%、H2Sが20ppmであり、T=600℃、GHSV=20000h−1)に関して、生成物中のCH4(乾燥基準、N2含有)の濃度を時間経過の関数として示している。
【0042】
図10】Ni@SiO2(Ni55%)触媒の長期安定性、つまり期間経過に対する生成物中のCH4(乾燥基準、N2含有)の濃度の変化を示している(GHSV=19800h−1、300℃、1バール、ガス組成:H2が45%、COが22.5%、CO2が18%、CH4が4%、N2が10%)。
【0043】
図11】種々のNiを担持したNi@SiO2触媒のBET表面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本出願において使用されるように、本文上明示のない限り、単数表現は、複数を意図することもある。例えば、「触媒」という表現は、複数の触媒も含むことを意味する。
【0045】
本明細書において使用されるように、「含有した」という用語は、「含んだ」という意味である。「含有した」という単語の活用形、例えば「含有する」等は、対応して変化した意味を有する。従って例えば、一酸化炭素及び水素を「含有した」混合ガスは、排他的に一酸化炭素及び水素から成ってもよく、又は、1以上の追加の成分(例えば、二酸化炭素、水蒸気、窒素分子、メタン等)を含んでもよい。
【0046】
本明細書において使用されるように、「複数の」という用語は、2以上を意味する。特定の態様又は実施形態において、複数とは2、5、10、103、106、109、1012、1015、1018、1021、1023、1024、又はそれ以上、そこから派生し得るあらゆる整数、及びそこから派生し得るあらゆる範囲を意味してもよい。
【0047】
本明細書中において引用した数値を参照して「約」という用語を使用した場合、指摘のない限り、引用した数値と、引用した値の±10%内の数値を含むことを意味する。
【0048】
本明細書において、数値範囲について言及する際、「の範囲」という用語を使用した場合、その範囲の両端の数値も含む。例えば、原料中の水素分子対一酸化炭素のモル比が約4:1〜約3:1の範囲である場合、水素分子対一酸化炭素のモル比4:1及び水素分子対一酸化炭素のモル比3:1が含まれる。
【0049】
本明細書において、従来技術に係る文献についての記載又はこれら文献から引用したか、それに基づく記述はいずれも、それら文献又は引用記述が関連技術の一般的知識の一部であることを認めるものでない。
【0050】
指摘のない限り、説明の目的で、本明細書において言及した文献はすべて、参照としてその内容をここに援用する。
【0051】
以下の説明は、当業者が本発明を実施することができるよう、本発明の一例としての実施形態を十分に詳細に述べる。開示の種々の実施形態の特徴又は限定は、本発明の他の実施形態又は本発明全体を必ずしも限定するものでない。以下の詳細な説明は、本発明の範囲を限定するものでなく、本発明の範囲は請求項のみによって規定される。
【0052】
本発明は、ニッケル系メタン化触媒Ni@SiO2の使用に係り、メタン化反応における硫黄に対する耐久性を改善する。Ni@SiO2という専門用語は、シリカ中に封入された金属ニッケルを示す。本発明はまた、原料をNi@SiO2触媒に接触させる工程を備える、原料のメタン化方法に関する。
【0053】
本発明者は、石炭気化廃液ストリームの中に頻繁に見られる被毒物質である硫黄の存在下において、メタン化反応を進行させることのできるニッケル系触媒(Ni@SiO2)を特定した。実験により、硫黄の存在下においてメタン化反応を触媒する際、本発明のNi@SiO2が、市販の触媒に比して優れた性能を発揮し、また固相担体(Ni/Al2O3及びNi/SBA−15)に固定されたニッケルを含有する他の触媒に比して非常に優れた性能を発揮することを示している。さらに、Ni@SiO2は、そのニッケル含有量がNi/SBA−15及び市販の触媒のニッケル含有量と同一であるか、それ未満であっても、硫化水素を含有する材料に露出している間、より長い期間、より高いレベルの触媒活性を維持する。本発明によるNi@SiO2のより優れた性能は、多孔質SiO2によって保護されたニッケル粒子の焼結に対する耐性が改善されたことによるものと考えられ、その構造は採用する合成方法によってもたらされるものである。
【0054】
メタン化反応には、一酸化炭素及び水素を含有する原料からのメタンの生成が含まれる。化学反応式は、
CO+3H2→CH4+H2O
【0055】
以上のメタン化反応は、メタンの水蒸気改質反応の逆反応である。
【0056】
さらに、二酸化炭素の存在下において、メタン化反応は、
CO2+4H2→CH4+2H2O
によってメタンを生成してもよい。
【0057】
[触媒]
本発明によるNi@SiO2触媒は、多孔質シリカマトリックスに分散されたニッケル粒子を含有する。ニッケル粒子は、金属ニッケル粒子であってもよい。多孔質シリカマトリックスは、直径約1〜100nmの細孔、又は直径約1〜50nm、約1〜20nm、約1〜10nm、約2〜10nm、約5〜20nm、約10〜20nm、約10〜50nm、若しくは約20〜50nmの細孔、例えば、直径約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nmの細孔を有してもよい。シリカの細孔サイズ及び分布は、当業者により、例えば窒素又は水素の吸脱着法を使用して判定することができる。多孔質シリカマトリックスに分散されるニッケル粒子は、約2〜10nmの平均粒径、又は約2〜5nm、約5〜10nm、若しくは約3〜7nmの平均粒径、例えば、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、又は約10nmの平均粒径を有してもよい。ニッケル粒子が球形でない場合、粒子の直径は、流体力学直径として理解してもよく、粒子の最小直径(例えば、厚さ)と理解してもよく、粒子の最大直径(例えば、長さ)と理解してもよく、又は粒子の平均寸法と理解してもよい。ニッケル粒子の粒径は、透過電子顕微鏡及びX線粉末回折を含む、確立された技術を使用して判定してもよい。ニッケル粒子及び触媒粒子の形状は、独立して、球形、針状、平坦、フレーク状、角錐台状、多面体状、繊維状、不規則形状、回転楕円体状、又は粒状であってもよい。Ni@SiO2触媒の細孔は、多孔質シリカマトリックスの外面からニッケルの外面まで連続的に延びてもよい。これにより、一酸化炭素反応ガス及び水素反応ガス等のガスを、封入シリカを通ってニッケルの表面に浸透させてもよい。
【0058】
ニッケル粒子は、触媒の各粒子がその内部に分散された複数のニッケル粒子を含有するように、多孔質シリカマトリックスを通じて、任意で一様に、すなわち均一に分散してもよい。触媒は、水素含有雰囲気下での還元に先立ち、重量ベースで、約20〜80重量%の酸化ニッケル、又は約20〜30重量%、約30〜40重量%、約40〜50重量%、約50〜60重量%、約40〜60重量%、約60〜70重量%、約50〜70重量%、約70〜80重量%の酸化ニッケル、例えば、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%の酸化ニッケルを含有してもよい。触媒は、約16〜63重量%の金属ニッケル、又は約20〜63重量%、約25〜63重量%、約30〜63重量%、約16〜30重量%、若しくは約16〜55重量%の金属ニッケル、又は約16重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、若しくは約63重量%の金属ニッケルを含有してもよい。多孔質シリカ中の金属含有量の好適な判定方法は、既存の方法を用いる。
【0059】
触媒の活性ニッケル表面積は、約50〜160m2/g.Ni、約50〜70m2/g.Ni、約60〜80m2/g.Ni、約60〜90m2/g.Ni、約70〜110m2/g.Ni、約80〜120m2/g.Ni、約90〜130m2/g.Ni、約80〜140m2/g.Ni、約90〜150m2/g.Ni、約90〜160m2/g.Ni、約70〜90m2/g.Ni、又は約75〜85m2/g.Ni、例えば、約50m2/g.Ni、約55m2/g.Ni、約60m2/g.Ni、約65m2/g.Ni、約70m2/g.Ni、約75m2/g.Ni、約80m2/g.Ni、約85m2/g.Ni、約90m2/g.Ni、約95m2/g.Ni、約100m2/g.Ni、約105m2/g.Ni、約110m2/g.Ni、約120m2/g.Ni、約130m2/g.Ni、約140m2/g.Ni、約150m2/g.Ni、若しくは約160m2/g.Niであってもよい。水素の温度プログラム脱着法を使用して測定した場合、約2時間、水素に露出した後、約500℃で測定した触媒の活性ニッケル表面積は、約40〜90m2/g.Ni、約50〜80m2/g.Ni、約60〜70m2/g.Ni、約40〜60m2/g.Ni、約70〜90m2/g.Ni、約50〜70m2/g.Ni、例えば、約65m2/g.Ni、約40m2/g.Ni、約50m2/g.Ni、約60m2/g.Ni、約70m2/g.Ni、約80m2/g.Ni、又は約90m2/g.Niであってもよい。さらに、約15時間、水素に露出した後、約620℃で測定した触媒の活性ニッケル表面積は、約75〜150m2/g.Ni、約85〜115m2/g.Ni、約95〜105m2/g.Ni、例えば、約100m2/g.Ni、又は約75m2/g.Ni、約80m2/g.Ni、約85m2/g.Ni、約90m2/g.Ni、約95m2/g.Ni、約96m2/g.Ni、約97m2/g.Ni、約98m2/g.Ni、約99m2/g.Ni、約101m2/g.Ni、約102m2/g.Ni、約103m2/g.Ni、約104m2/g.Ni、約105m2/g.Ni、約110m2/g.Ni、約115m2/g.Ni、約120m2/g.Ni、若しくは約125m2/g.Niであってもよく、約15時間、水素に露出した後、約750℃で測定した触媒の活性ニッケル表面積は、55〜160m2/g.Ni、約65〜95m2/g.Ni、約75〜85m2/g.Ni、約55〜90m2/g.Ni、約90〜105m2/g.Ni、約90〜115m2/g.Ni、約90〜125m2/g.Ni、約100〜140m2/g.Ni、約110〜150m2/g.Ni、約120〜160m2/g.Ni、例えば、約80m2/g.Ni、又は約65m2/g.Ni、約70m2/g.Ni、約75m2/g.Ni、約76m2/g.Ni、約77m2/g.Ni、約78m2/g.Ni、約79m2/g.Ni、約81m2/g.Ni、約82m2/g.Ni、約83m2/g.Ni、約84m2/g.Ni、約85m2/g.Ni、約90m2/g.Ni、約95m2/g.Ni、約100m2/g.Ni、約110m2/g.Ni、約120m2/g.Ni、約130m2/g.Ni、約140m2/g.Ni、約150m2/g.Ni、若しくは約160m2/g.Niであってもよい。
【0060】
触媒又は多孔質シリカは、少なくとも約200m2/gのBET表面積、又は少なくとも約300m2/g、400m2/g、若しくは500m2/gのBET表面積、又は約200〜600m2/g、約200〜500m2/g、約500〜1000m2/g、約300〜900m2/g、約400〜700m2/g、約500〜700m2/g、若しくは約300〜600m2/g、又は約200m2/g、約300m2/g、約400m2/g、約500m2/g、約600m2/g、約700m2/g、約800m2/g、約900m2/g、若しくは約1000m2/gのBET表面積を有してもよい。BET方程式の測定及びモデル化は、既存の方法を用いる。
【0061】
触媒粒子は、シート状構造を有する場合、少なくとも約10、少なくとも約12、少なくとも約15、少なくとも約20、約10〜20の範囲、約10〜15の範囲、約10〜30の範囲、約10〜40の範囲、約20〜40の範囲、約15〜25の範囲、又は約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約30、約40、若しくは約50のアスペクト比を有してもよい。ここでアスペクト比とは、シート状構造のシートの長さ対厚さの比を示す。
【0062】
[触媒作用]
本明細書に記載の触媒は、メタン化反応の触媒に使用されてもよい。またこの触媒は、一酸化炭素及び水素を含有する混合ガス中の一酸化炭素含有量を低減するために使用されてもよい。上述のとおり、この触媒は、一酸化炭素のメタン化を進めることができる。これはメタンの生成(例えば、燃料としての使用)、供給ストリームからの一酸化炭素の除去(毒性の低減)、又はその双方の目的に利用してもよい。
【0063】
本明細書に記載の触媒は、一酸化炭素ガス及び水素ガスを含有する原料のメタン化方法に利用してもよく、この方法は、原料を、本発明のNi@SiO2触媒に接触させる工程を備える。
【0064】
本願の方法に導入する原料は、水素分子及び一酸化炭素を含有してもよいが、さらに二酸化炭素、水蒸気、窒素分子、メタンを含有してもよく、もしくはさらに、これらのうちのいずれか2つ以上の混合物を含有してもよい。原料中の水素分子対一酸化炭素のモル比は、約4:1、約3:1、約2:1、又は約1:1、約4:1〜約3:1の範囲、約4:1〜約2:1の範囲、約4:1〜約1:1の範囲、約3:1〜約2:1の範囲、約3:1〜約1:1の範囲、又は約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、若しくは1:1であってもよい。この比率は、原料のソースに応じて変わってもよい。混合ガス中の一酸化炭素濃度は、約10〜40%、又は約10〜30%、約20〜40%、若しくは約20〜30%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%であってもよい。この割合は、質量基準である。本発明における原料は、酸素、蒸気(水蒸気)、及び熱の存在下で石炭又は褐炭を加熱することによって生成したガスである石炭ガス化による製造された合成ガスを含有してもよく、それを基本構成物としてもよい。本発明における原料は、酸素、蒸気(水蒸気)、及び熱の存在下でバイオマスを加熱することによって生成したガスを含有してもよく、それを基本構成物としてもよい。
【0065】
原料はさらに、硫黄含有ガスを含有してもよい。硫黄含有ガスは、少なくとも約0.1ppmの総濃度、又は少なくとも約0.2ppm、0.3ppm、0.4ppm、0.5ppm、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、1000ppm、1500ppm、2000ppm、2500ppm、3000ppm、3500ppm、4000ppm、4500ppm、若しくは5000ppmの総濃度、又は約0.1〜5000ppm、約1〜500ppm、約5〜100ppm、約0.1〜500ppm、約0.5〜500ppm、約10〜100ppm、約10〜80ppm、約20〜80ppm、約20〜100ppm、約10〜50ppm、約20〜200ppm、約50〜300ppm、約100〜300ppm、約100〜500ppm、約200〜600ppm、約300〜700ppm、約500〜1000ppm、約1000〜約2000ppm、約1000〜3000ppm、約1000〜4000ppm、約1000〜5000ppm、約2000〜3000ppm、約2000〜4000ppm、若しくは約2000〜5000ppmの総濃度、又は約0.1ppm、約0.2ppm、約0.3ppm、約0.4ppm、約0.5ppm、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約10ppm、約15ppm、約20ppm、約25ppm、約30ppm、約35ppm、約40ppm、約45ppm、約50ppm、約60ppm、約70ppm、約80ppm、約90ppm、約100ppm、約200ppm、約300ppm、約400ppm、約500ppm、約1000ppm、約1500ppm、約2000ppm、約2500ppm、約3000ppm、約3500ppm、約4000ppm、約4500ppm、若しくは約5000ppmの総濃度で存在してもよい。硫黄含有ガスは、硫化水素であってもよく、硫化カルボニルであってもよく、有機チオール(例えば、メタンチオール、エタンチオール、チオフェノル等)であってもよく、例えば、二酸化硫黄等の硫黄酸化物であってもよく、以上のうちの2つ以上の混合物であってもよい。本発明において、硫黄含有ガスのppmは、質量基準であり、すなわち、空気1リットルあたりの平均マイクロリットル(μL/L)を意味する。
【0066】
接触させる方法には、原料を、触媒を含有した充填層反応器を通過させる方法、反応器内に配された触媒の上方を通過させるか、反応器内に配された触媒を通り過ぎさせる方法が含まれる。反応器は、直列又は並列に配置された1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)の充填触媒層を含んでもよい。1つ又は複数の充填層反応器は、等温条件又は断熱条件下において作用してもよい。触媒は、充填層に充填されてもよく、ロッド、又はプレートに担持されてもよく、反応容器の内面又はその他のいずれかの面に塗布されてもよい。触媒は、ハニカム触媒構造、多孔質金属触媒構造、又はセラミックマトリックス触媒構造のうちのいずれか1つ以上に塗布されてもよい。接触させる方法には、代わりに、触媒を含有したスラリー中に原料ガスを供給する方法が含まれてもよい。
【0067】
原料をNi@SiO2触媒と接触させる間、原料は、約0.5〜40バール、少なくとも約0.5バール、約1バール、約2バール、約5バール、約10バール、約15バール、約20バール、約25バール、約30バール、約35バール、約40バール、又は約1〜2バールの範囲、約1〜5バールの範囲、約5〜10バールの範囲、約5〜20バールの範囲、約10〜20バールの範囲、約15〜25バールの範囲、約15〜30バールの範囲、約20〜40バールの範囲、約25〜40バールの範囲、約30〜40バールの範囲、又は約0.5バール、約1バール、約2バール、約3バール、約3.5バール、約4バール、約4.5バール、約5バール、約6バール、約7バール、約8バール、約9バール、約10バール、約15バール、約20バール、約25バール、約30バール、約35バール、若しくは約40バールの圧力下にあってもよい。原料の流量は、約2000h−1であってもよく、少なくとも約1000h−1、約5000h−1、約10000h−1、約20000h−1、約30000h−1、約40000h−1、約50000h−1、約60000h−1、約70000h−1、約80000h−1、約90000h−1、約100000h−1、又は約1000〜100000h−1、約1000〜10000h−1、約10000〜50000h−1、約20000〜60000h−1、約30000〜70000h−1、約30000〜80000h−1、約40000〜90000h−1、約50000〜100000h−1、約50000〜80000h−1であってもよく、又は約1000h−1、約5000h−1、約10000h−1、約20000h−1、約30000h−1、約40000h−1、約50000h−1、約60000h−1、約70000h−1、約80000h−1、約90000h−1、若しくは約100000h−1であってもよい。場合によって、その他の流量を使用してもよい。これらの流量は、空間速度(SV:体積流量/触媒質量)であってもよく、時間当たりガス空間速度(GHSV:反応ガス流量/触媒質量)であってもよい。接触させる工程は、少なくとも約250℃の温度、又は少なくとも約300℃、少なくとも約350℃、少なくとも約400℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、若しくは少なくとも約600℃、又は約250〜800℃、約350〜600℃、約400〜500℃、約500〜800℃、約400〜600℃、約400〜700℃、約450〜550℃、若しくは約450〜650℃、又は約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、約650℃、約700℃、約750℃、又は約800℃の温度で実施されてもよい。接触させる方法を実施する間の温度及び原料の流量は、変換平衡の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の酸化炭素のメタン化が達成できるように選択されてもよい。
【0068】
本明細書に開示のNi@SiO2触媒は、少なくとも約1000分、又は少なくとも約1500分、約2000分、約2500分、若しくは約3000分の間、再生を伴わない使用において依然として活性を有してもよい。またこのNi@SiO2触媒は、少なくとも約20ppmの硫黄含有ガスを含有した原料を使用してメタン化反応を触媒する場合、上述の時間、依然として活性を有してもよい。ここでの「活性を有する」という用語は、前述の期間、その初期値からの変換効率の低下が約20%未満であること、又は約15%未満、約10%未満、約5%未満、若しくは約2%未満であることをいう。
【0069】
本発明の実施者は、具体的な実施形態において開示した本発明に対して、広範に説明した本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、多数の変更及び/又は修正が加え得ることができる。従って本実施形態は、あらゆる態様において、例示を意図するものであり、限定を意図するものでない。
【実施例】
【0070】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を説明するが、これら具体例は、あらゆる意味において限定を意図するものではない。
【0071】
[実施例1]
[Ni@SiO2触媒の合成及び特性評価]
50重量%のNiO@SiO2の通常の合成では、7.8gのNi(NO3)2・6H2O、及び10gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を400mLのH2O中に溶解し、続いて4.0gのNaOHを含有した80mLのNaOH水溶液を室温で投入することにより添加した。その後、CTABでキャップしたNi(OH)2沈殿物を遠心分離によって回収した。沈殿物を320mLの水に分散させることにより、懸濁液を形成した。この懸濁液のpH値を約12に調整した。続いて80mLのエタノール中に7.6mLのテトラエトキシシラン(TEOS)を含んだものをゆっくりと懸濁液中に滴下し、持続的に攪拌しつつ、48時間、室温に維持することによってNi(OH)2沈殿物上にSiO2シェルを塗布した。遠心分離後、受容したままのSiO2シェルが塗布されたNi(OH)2を脱イオン水で完全に洗浄することによって合成物中のナトリウム残渣を除去し、80℃で乾燥した。最後に、500℃の空気中で2時間、焼成することによって50重量%のNiO@SiO2を得た。50重量%の調製されたままのNiO@SiO2は、メタン化反応の触媒に先立ち、350〜600℃の範囲の温度の純粋な水素ガス又は希釈された水素ガス中で数時間、還元される必要がある。結果として得られたNiO@SiO2触媒中のNi含有量は、39重量%である。
【0072】
ニッケル系NiO@SiO2触媒の合成についても、PCT/SG2013/000472に開示されている。
【0073】
反応前後のNiO@SiO2の粒子サイズ及び形態は、以下に議論のとおり、透過電子顕微鏡(TEM、HR−TEM、JEOL JEM−2010F)によって特性評価した。結晶体サイズ及び相変態は、Cu Ka放射(λ=0.154nm)を備えたBruker D8 Advance X線回折計を使用したX線回折とインサイチュ(in-situ)X線回折との各々によって判定し、その選択結果を以下に述べる。N2吸脱着等温線は、比表面積測定装置ASAP2420V2.05(V2.05J)により測定した。H2温度プログラム還元(H2−TPR)測定は、50mgのフレッシュ触媒で実施した。測定に先立ち、200℃のArストリーム下において2時間、サンプルに熱処理を施すことにより、水分及びその他の汚染物を除去した。反応物質は、5%のH2/Ar50mL/分において10℃/分の割合で30〜850℃に加熱した。水素消費を熱伝導度検出器(TCD)を使用して監視し、触媒Ni@SiO2、市販の触媒、Ni/SBA−15についての結果を以下の節で述べる。
【0074】
[実施例2]
[500℃、H2S存在下における市販の触媒、Ni/SBA−15、及びNi/Al2O3との比較におけるNi@SiO2触媒の評価試験]
10%のH2O、10%のN2、40%のH2、20%のCO、16%のCO2、4%のCH4、及び20ppmのH2Sを含有する原料を使用し、500℃、且つ原料の流量が20000h−1にて、メタン化反応条件下における、本発明のNi@SiO2触媒、他の触媒Ni/SBA−15、Ni/Al2O3、及び市販の触媒の長期安定性の実験室試験を実施した。
【0075】
H2Sを含有する本原料のメタン化反応を進める際の、Ni@SiO2、市販の触媒、Ni/SBA-15、及びNi/Al2O3の実験室試験の結果を図1に示しており、生成混合ガス中のCH4濃度について、市販の触媒(55%Ni)、Ni/SBA-15(44%Ni)、及びNi/Al2O3(20%Ni)の触媒性能を時間の関数として比較した。
【0076】
H2S供給を行わない場合の反応開始時のメタン濃度は、後者3つの触媒(市販の触媒、Ni/SBA-15、及びNi/Al2O3)については約18〜20%であった。H2Sが90分後に導入されると、Ni/Al2O3(20%Ni)上では明らかな失活が開始し、活性は500分後に完全に失われた。44%のNi含有量を有するNi/SBA−15の耐性は、20%超の含有量のNi/Al2O3の約2倍であった。市販の触媒(58%Ni)及びNi@SiO2(39%Ni)の性能は同様であり、時間経過の最初の900分は比較的安定していた。900分後、市販の触媒は、Ni@SiO2に比して早い速度で失活した。市販の触媒及びNi@SiO2の完全な失活は、各々、約1800分及び約3600分で発生した。図1は、Ni担持がNi@SiO2より低いにも関わらず、20ppmのH2Sの存在下において市販の触媒上のNi@SiO2の耐性が改善したことを示している。
【0077】
その後、使用済みのNi@SiO2及び市販の触媒をTEM及びXRDによって解析し、その結果を図2及び図3に各々示した。図2のTEM画像は、Ni@SiO2触媒について、SiO2マトリックス中のNi粒子が小さいままで維持されることを示している。図3のTEM画像は、市販の触媒について、Ni粒子サイズが大きくなっていることを示す。使用済みNi@SiO2についてのXRDパターンにおけるNi(111)ピークは、使用済みの市販の触媒についてのXRDパターンにおける対応のピークに比して幅広く見える(図4)。さらに、シェラー式によってこれらXRDパターンから算出した平均Ni粒子サイズは、Ni@SiO2については3.4nmであり、市販の触媒については6.7nmであった。従って、TEM結果及びXRD結果は一貫して、Ni@SiO2の方が市販の触媒に比して焼結に対する抵抗性が高いことを示している。
【0078】
Ni@SiO2(39%)、市販の触媒(57%)、Ni/SBA-15(44%Ni)の活性Ni表面積を、水素の温度プログラム脱着によって測定した。3つの異なる還元条件、つまり、500℃で2時間、600℃で15時間、750℃で15時間の還元条件を適用した。図5に示すとおり、500℃にて2時間の還元後のNi@SiO2、市販の触媒、及びNi/SBA-15のNi表面積は、各々、65.4m2/g.Ni、78.4m2/g.Ni、及び27.2m2/g.Niであった。還元温度を620℃に上げ、還元時間を15時間まで延ばすと、この面積はNi@SiO2及び市販の触媒の双方について90m2/g(Ni)まで増加した。還元温度をさらに750℃まで上げ、15時間還元すると、市販の触媒の活性Ni面積は24.7m2/g.Niまで大幅に減少し、Ni@SiO2(80.2m2/g.Ni)のNi面積の減少は市販の触媒の減少に比して緩やかであった。
【0079】
[実施例3]
[500℃、H2Sの非存在下におけるNi@SiO2触媒の実験室試験]

図6は、40%のH2、10%のH2O、20%のCO、16%のCO2、4%のCH4、及び10%のN2を含有する原料を使用し、500℃、1バールの圧力、及び20250h−1の原料流量にて、H2Sの存在しない条件下のガスストリーム中においてNi@SiO2の実験室試験を行った結果を示しており、種々の触媒反応生成物の濃度を時間経過の関数として示している。図6は、H2Sが存在しない場合、Ni@SiO2触媒が非常に安定的な活性を発揮し、目認可能な失活を伴うことなく、少なくとも500時間継続することを明らかにしている。
【0080】
[実施例4]
[H2S存在下の市販の触媒との比較におけるNi@SiO2触媒の石炭ガス化設備における試験]
図7は、石炭のガス化設備からの石炭ガス化プロセスの生成ガスを原料として使用して得られた実験結果を示している。Ni@SiO2を含有したものと市販の触媒を含有したものという2つの反応物質を、同一条件(T=485℃、GHSV=50000h−1)下において、連続3日間同時に作用させた。各日の終了時に反応を停止し、触媒をArガスの保護下における反応器中に保持した。反応器を、Arフロー下において所望の反応温度まで加熱し、石炭ガス化装置からの生成ガスを再び導入することによって反応を再開した。
【0081】
初日、双方の触媒は安定的な触媒性能を発揮し、市販の触媒及びNi@SiO2の各々について、平均9%のCH4及び平均8%のCH4を生成した。CH4の変換平衡は、11.5%でなければならない。2日目、双方の触媒は同様の失活速度で徐々に失活を開始した。しかしながら市販の触媒は、試験3日の非常に早い段階でその活性を失っており、一方でNi@SiO2はそれまでと同様、安定的な失活速度を維持しているようであった。
【0082】
まとめると、Ni@SiO2は、市販の基準触媒及び従来の含浸方法を使用して調製した同様のNiを担持するその他の触媒に比して、H2Sの有無に関わらず、ガスストリーム下におけるメタン化反応においてより優れた触媒反応を示した。Ni@SiO2のより優れた性能は、多孔質SiO2によって保護されたNiの焼結抵抗性が改善されたことによるものである。
【0083】
[実施例5]
[500℃、H2S存在下の市販の触媒との比較におけるNi@SiO2触媒の実験室試験]
20%のN2、34.4%のH2、22.9%のCO、18.2%のCO2、4.5%のCH4、及び10ppmのH2Sを含有する原料を使用し、500℃の温度、且つ原料の流量GHSV=36000h−1にて、メタン化反応条件下における、本発明のNi@SiO2(39%Ni)及び市販の触媒(57%)の長期安定性の実験室試験を実施した。結果を図8に示す。
【0084】
図8は、これら2つの触媒について、時間経過に対するCH4濃度の変化を示している。本発明のNi@SiO2(39%Ni)触媒は約70時間継続したが、一方で市販の触媒(57%Ni)は、完全に失活するまで、たった42時間継続が可能であった。
【0085】
[実施例6]
[600℃、H2S存在下の市販の触媒との比較におけるNi@SiO2触媒の実験室試験]
40%のH2、10%のH2O、20%のCO、16%のCO2、4%のCH4、10%のN2、及び20ppmのH2Sを含有する原料を使用し、600℃の温度、且つ原料の流量GHSV=20000h−1にて、メタン化反応条件下における、本発明のNi@SiO2(39%Ni)及び市販の触媒(57%)の長期安定性の実験室試験を実施した。結果を図9に示す。
【0086】
図9は、これら2つの触媒について、時間経過に対するCH4濃度の変化を示している。本発明のNi@SiO2(39%Ni)触媒は約35時間活性が継続したが、一方で市販の触媒(57%Ni)は、完全に失活するまで、16時間のみ活性の継続が可能であった。
【0087】
[実施例7]
[300℃、H2Sの非存在下におけるNi@SiO2触媒の実験室試験]
図10は、45%のH2、22.5%のCO、18%のCO2、4.5%のCH4、及び10%のN2を含有する原料を使用し、300℃、1バールの圧力、及び19800h−1(GHSV)の原料流量にて、H2Sの存在しない条件下のガスストリーム中においてNi@SiO2の実験室試験を行った結果を示しており、種々の触媒反応生成物の濃度を時間経過の関数として示している。図10は、H2Sが存在しない場合、Ni@SiO2触媒が非常に安定的な活性を発揮し、目認可能な失活を伴うことなく、少なくとも1250時間継続することを示している。
【0088】
[実施例8]
[触媒の特性評価−BET表面積及びNi比表面積]
20%、40%、60%、70%、80%、及び90%という種々のNiO含有量を有する本発明のNi@SiO2触媒のBET表面積を図11に比較している。表面積に主に貢献するものは多孔質SiO2であるため、NiO担持の増加に併せて表面積が減少している。BET表面積は、NiO含有量20%の475m2/gからNiO含有量70%の375m2/gまで減少している。しかしながら、BET表面積は、NiO担持が70%から90%まで増加すると、375m2/gから175m2/gへと劇的に減少している。
【0089】
40%、50%、及び60%という種々のNiOを担持する本発明のNi@SiO2と市販の触媒に関して、触媒のグラムあたり及びNiのグラムあたりにおける平方メートルの単位でのNi比表面積を、表1にまとめている。触媒は、H2の吸脱着に先立ち、純粋なH2フローにおいて、620℃で15時間還元した。Ni比表面積は、Ni担持に合わせて増加し、47%のNiを担持するNi@SiO2で152.5m2・g−1に達した。しかしながら、57%のNiを担持する市販の触媒では、Ni比表面積はたった93.5 m2・g−1Niであった。この結果は明らかに、本発明のNi@SiO2触媒が市販の触媒に比して高いNi利用効率を備えていることを示している。
【表1】
触媒作用後のNiの比表面積は、620℃、15時間で減少した。
図1
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図2
図3
【国際調査報告】