(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-515917(P2016-515917A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(54)【発明の名称】タンクから液体の添加剤を取り出す方法
(51)【国際特許分類】
B01D 37/02 20060101AFI20160502BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20160502BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20160502BHJP
【FI】
B01D37/02 A
F01N3/08 BZAB
B01D53/94 400
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-560616(P2015-560616)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2014053703
(87)【国際公開番号】WO2014135411
(87)【国際公開日】20140912
(31)【優先権主張番号】102013102233.2
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ マギン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン シェーパース
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホジソン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D048
4D066
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB05
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA17
4D048AA06
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4D066BB31
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4D066EA06
4D066EA11
4D066FA02
(57)【要約】
本発明は、取出し位置(3)においてタンク(2)の内室(1)から液体の添加剤(8)を取り出す方法に関する。ステップa)では、フィルタ(4)は、取出し位置(3)を覆い、取出し位置をタンク(2)の内室(1)から分離させており、フィルタを通って液体の添加剤(8)が流れるようになっており、液体の添加剤(8)の汚染物質をフィルタ(4)の表面(5)に堆積させ、取出し位置(3)においてタンク(2)から液体の添加剤(8)を取り出す。ステップb)では、フィルタの表面(5)において液体の添加剤(8)の汚染物(7)から少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキ(6)を形成する。ステップc)では、少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキ(6)によって液体の添加剤(8)をろ過し、液体の添加剤(8)の汚染物質(7)をろ過ケーキ(6)に堆積させ、取出し位置(3)においてタンク(2)から液体の添加剤(8)を取り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取出し位置(3)においてタンク(2)の内室(1)から液体の添加剤(8)を取り出す方法であって、
a)少なくとも1つのフィルタ(4)によって前記液体の添加剤をろ過するステップであって、該フィルタ(4)は、前記取出し位置(3)を覆い、該取出し位置を前記内室(1)から分離させており、前記フィルタを通って前記液体の添加剤(8)が流れるようになっており、前記液体の添加剤(8)の汚染物質を前記フィルタ(4)の表面(5)に堆積させ、前記取出し位置(3)において前記タンク(2)から前記液体の添加剤(8)を取り出す、ステップと、
b)前記フィルタの前記表面(5)において前記液体の添加剤(8)の前記汚染物から少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキ(6)を形成するステップと、
c)該少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキによって前記液体の添加剤(8)をろ過するステップであって、前記液体の添加剤(8)の前記汚染物質(7)を前記ろ過ケーキ(6)に堆積させ、前記取出し位置(3)において前記タンクから前記液体の添加剤(8)を取り出す、ステップと、を少なくとも有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップb)で形成されたろ過ケーキ(6)は、前記フィルタの前記表面(5)から前記タンクの前記内室(1)に延在し、多孔(31)を形成する複数のダクトを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
d)ろ過ケーキ(6)を繰り返し少なくとも部分的に除去する更なるステップを有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタ(4)のフィルタ表面積(10)の平方センチメートルあたりの前記ろ過ケーキ(6)の重さが閾値を超えているときに前記ろ過ケーキ(6)が少なくとも部分的に重力(9)により除去されるように、前記フィルタ(4)の前記表面(5)が少なくとも部分的に配向されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタ(4)の前記表面(5)に、ろ過ケーキ(6)を前記表面(5)から少なくとも部分的に分離させる、液体の添加剤(8)の流れ(11)を形成する、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
ろ過ケーキ(6)を分離するための液体の添加剤(8)の流れ(11)は、前記取出し位置(3)から前記タンク(2)の前記内室(1)へ流れる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記流れ(11)は、液体の添加剤(8)を排出するためのポンプ(27)により後方へ排出されることにより形成される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
方法ステップa)及びc)において前記タンク(2)の前記内室(1)から液体の添加剤(8)を取り出す間、前記内室(1)と前記取出し位置(3)との間でフィルタ(4)を境に圧力勾配を生じさせ、該圧力勾配が所定の閾値を超えると、ろ過ケーキ(6)が除去される、請求項3から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記圧力勾配を、液体の添加剤(8)を排出するためのポンプ(27)の電力消費量に基づいて、及び前記ポンプ(27)により形成される圧力に基づいて決定する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
液体の添加剤(8)を提供する装置(12)であって、
タンク(2)であって、該タンク(2)は、前記液体の添加剤(8)が貯蔵されている内室(1)と、取出し位置(3)であって、該取出し位置(3)において前記液体の添加剤(8)を前記タンク(2)から取り出すことができる取出し位置(3)と、を備えるタンクと、
前記取出し位置(3)を覆い、該取出し位置(3)を前記タンク(2)の前記内室(1)から分離させているフィルタ(4)と、を備え、
前記フィルタ(4)の表面(5)は、前記液体の添加剤(8)が前記フィルタ(4)を通って流れるときに前記液体の添加剤(8)の汚染物質(7)が前記フィルタ(4)の前記表面(5)に堆積させられ、前記汚染物質(7)が前記表面(5)に多孔性のろ過ケーキ(6)を形成するように、設計されていることを特徴とする、液体の添加剤(8)を提供する装置(12)。
【請求項11】
内燃機関(16)と、該内燃機関(16)の排ガスを浄化するための排ガス処理装置(17)と、該排ガス処理装置(17)のために液体の添加剤(8)を供給する装置(12)と、を備え、前記液体の添加剤を供給する装置(12)は、請求項10に記載のように設計されていて、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、自動車(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクから液体の添加剤を取り出す方法に関する。自動車分野において、内燃機関の排ガスを浄化するために液体の添加剤が使用されている排ガス処理装置が広く利用されている。
【0002】
そのような排ガス処理装置において特に通例の場合に実施される排ガス浄化方法は、選択的触媒還元法(SCR法)である。前記方法では、排ガス中の窒素酸化化合物の反応が還元剤により促進され、無害の物質が生成される。アンモニアは、特に、この目的のために還元剤として使用されている。アンモニアは、通常、自動車には直接には貯蔵されておらず、液体の添加剤として貯蔵及び提供できる還元剤前駆体溶液の態様で貯蔵されている。前述の液体の添加剤は、排ガスに供給される。液体の添加剤は、排ガスの熱の働きにより、排ガス中で変化して、アンモニアを生成することができる。この変化は、(適しているならば排ガスの外側で)加水分解触媒コンバータにより促進してもよい。特に通例では排ガス浄化のために還元剤前駆体溶液として使用される液体の添加剤は、尿素水溶液である。32.5%尿素水溶液は、商標名「AdBlue」で入手可能である。
【0003】
自動車に液体の添加剤を供給するために、通常、液体の添加剤が貯蔵されているタンクが必要である。更に、液体の添加剤をタンクから取り出して、調量した形で排ガス処理装置に調量して供給できる装置が必要である。
【0004】
自動車のタンクに存在する液体の添加剤は、汚染物質を含み得る。そのような汚染物質は、一面ではタンク充填過程中にタンクに進入し得る。液体の添加剤が、タンク内で汚染物質として含まれる結晶質の堆積物を形成する可能性もある。記載の汚染物質は、液体の添加剤を排出しかつ計量供給するための装置に損傷を与え得る。例えば、排ガス処理装置への液体の添加剤の調量に用いられるインジェクタ又はノズルは、汚染物質により閉塞され得る。汚染物質が排出兼計量供給装置において研磨粒子として作用し、従って摩耗の増加をもたらす場合もあり得る。汚染物質は、排ガス処理装置自体に損傷を与えることすらあり得る。
【0005】
液体の添加物を浄化するために、フィルタ装置が適切であることが証明されている。しかし、フィルタ装置の問題点は、その作用が汚染物質により損なわれることである。例えば、フィルタ装置は、前記汚染物質により汚染されるかつ/又は閉塞される。従って、液体の添加物のための公知のフィルタ装置の定期的な保守及びクリーニングが必要である。
【0006】
前掲の先行技術を出発点として、本発明の課題は、先行技術に関して記載された問題点を解消する又は少なくとも減じることである。特に、タンクの内室から液体の添加物を取り出すための好適な方法を開示することが求められている。その方法は、先ず第1に、十分な程度に液体の添加剤を浄化し、液体の添加剤から汚染物質を除去すべきものである。更に、排出兼計量供給装置の保守が必要でない、又は最低限しか必要でないようにすべきである。
【0007】
前述の課題は、請求項1の特徴による方法並びに請求項8の特徴による装置によって解決されている。本発明の別の好適な態様は、従属請求項に記載されている。請求項に個別に記載された特徴は、あらゆる所望の技術的に有意義な方式で互いに組み合わせてよく、明細書からの解釈上の事実によって、記載されている発明の別の態様で補足してよい。
【0008】
よって、取出し位置でタンクの内室から液体の添加物を取り出す方法が提案されており、この方法は、
a)少なくとも1つのフィルタによって液体の添加剤をろ過するステップであって、フィルタは、取出し位置を覆い、取出し位置を内室から分離させており、フィルタを通って液体の添加剤が流れるようになっており、液体の添加剤の汚染物質をフィルタの表面に堆積させ、取出し位置においてタンクから液体の添加剤を取り出す、ステップと、
b)フィルタの表面において液体の添加剤の汚染物から少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキを形成するステップと、
c)少なくとも1つの多孔性のろ過ケーキによって液体の添加剤をろ過するステップであって、液体の添加剤の汚染物質をろ過ケーキに堆積させ、取出し位置においてタンクから液体の添加剤を取り出す、ステップと、を少なくとも有する。
【0009】
取出し位置は、好適には、液体の添加剤をポンプによりタンクから吸い出すことができる吸出し位置である。取出し位置は、好適には、液体の添加剤を供給する装置に配置されている。前記装置は、好適には、ハウジングを備える。ハウジングは、タンクのタンク底における開口に挿入されていて、前記開口を液密に閉鎖している。この装置は、好適には、ハウジングに管路接続部も備える。タンクから取り出された液体の添加剤は、前記管路接続部で供給される。管路接続部に供給管路を接続してよい。そのような供給管路は、例えば排ガス処理装置に液体の添加剤を調量する供給装置に通じてよい。排出ダクトは、装置のハウジングを通って取出し位置から管路接続部まで延在している。前記排出ダクトには好適には液体の添加剤の排出を行うポンプが位置している。
【0010】
フィルタは、好適には、装置のハウジングの外側をめぐって配置されている。ハウジングは、好適には円筒状である。従って、フィルタは、好適には、円筒状のハウジングの周りに環状に配置されている。
【0011】
中間室が、好適にはフィルタとハウジングとの間に存在する。前記中間室は、フィルタによりタンクの内室から分離されている。内室から中間室に進入する液体の添加剤は、フィルタを通って進入しなければならない。従って、液体の添加剤における汚染物質はフィルタによって留め置かれ、中間室に進入できないことを保証することができる。よって、ろ過された添加剤又は所望されない汚染物質から実質的に解放された添加剤だけが、内室に位置している。フィルタは、フィルタ表面積(タンクの内室及び中間室にそれぞれ面している)を有する。フィルタ表面積は、フィルタの面積範囲を表している。フィルタ表面積は、好適には90cm
2〜600cm
2(平方センチメートル)の大きさである。フィルタは、フィルタ深さも有する。フィルタ深さは、タンク内室に面しているフィルタの表面と中間室に面しているフィルタの表面との間の距離により特定されている。フィルタ深さは、好適には0.2mm〜10mm(ミリメートル)である。
【0012】
フィルタは、好適には多孔性の材料から成っている。前記材料は、例えば不織布(特に入り組んだかつ/又は不規則な配列で)又は開放気孔フォームであってよい。フィルタは、内室に面している表面と中間室に面している表面との間を延在しているダクトシステムにより表されてよい。前記ダクトシステムは、2つの表面の開口に接続されている。第1に、内室における表面の開口を中間室における表面の開口に接続する複数のろ過ダクトが存在する。更に第2に、前記ダクトを互いに接続し、ひいては、内室から中間室へのろ過ダクトが少なくとも部分的に閉塞されているときに、液体の添加剤が流れることができるバイパスを形成する接続ダクトが存在する。多孔性の材料は、特に、一定にダクト形状が繰り返されている通常のダクトシステムを含むのではなく、むしろある種の開放された(相互に接続された)無秩序な多孔システムを含むことを特徴としている。
【0013】
ステップa)における液体の添加剤のろ過中、液体の添加剤の汚染物質は、フィルタの表面の下流側の中間室にではなく、むしろ直接にフィルタの表面(外側及び/又は内側)に堆積される。従って、汚染物質はフィルタを通過しない。特に、汚染物質は、タンクの内室に留め置かれる。前記ろ過プロセスは、特に、添加剤の取出しと同時に、いうなれば添加剤の流れが前記フィルタを通って行われているときに実施される。
【0014】
ステップb)では、ろ過ケーキがフィルタの表面において汚染物質から形成される。このことは、ますます多くの汚染物質がフィルタの表面に堆積されることにより生じる。この場合、汚染物質は、最初にフィルタの表面に付着する。フィルタの表面が汚染物質で覆われると、汚染物質は、互いに対しても付着し始める。従って、ろ過ケーキは、より厚くなり始める。この厚さは、ろ過ケーキ厚さと云われる。ステップb)で形成されるろ過ケーキは、5mm(ミリメートル)に至るまでのろ過ケーキ厚さに成長し得る。そのために、大量の汚染物質がフィルタの表面に堆積しなければならない。
【0015】
ろ過ケーキ自体は、多孔性である、又は、多孔を有する。これは、ろ過ケーキが液体の添加剤に対して透過性であることを意味している。液体の添加剤は、ろ過ケーキを通って内室からフィルタの表面に進入することができ、そこからフィルタを通って中間室に、そして取出し位置に前方へ流れることができる。ろ過ケーキの多孔性は、好適には、フィルタ自体の材料の透過性とは(実質的に)異なっている。
【0016】
ステップc)では、液体の添加剤の更なる汚染物質が堆積されている。しかし、ステップc)の間、堆積は、フィルタケーキの表面(だけ)ではなく、むしろ(特に又は主に)ろ過ケーキ内で行われる。ステップb)の間、堆積物は、好適には、ろ過ケーキの表面に更に堆積され、ろ過ケーキをより厚くする。ろ過ケーキ内の堆積の結果、ろ過ケーキの多孔性が低下する。従って、液体の添加剤に対するろ過ケーキの透過性も同時に低下する。ステップc)では、ろ過ケーキにおける汚染物質の堆積と同時に、液体の添加剤は、取出し位置でタンクから引き続き取り出される。
【0017】
方法ステップb)及びc)は、好適には、特に時間に関して部分的に並行しても行われる。特に、ろ過ケーキ厚さが更に成長し続け(ステップb))、同時にろ過ケーキにおける液体の添加剤の(部分的な)堆積が起こる(ステップc))段階が存在する。タンクからの液体の添加剤の取出しは、好適には、方法ステップa)〜c)の間、中断なくかつ/又は連続的に行われる。
【0018】
記載の方法により、液体の添加剤の汚染物質を、フィルタへの汚染物質の浸透なくフィルタに留め置くことが可能である。従って、フィルタは閉塞されることがない。従って、タンクから液体の添加剤を取り出す装置の保守は、簡素化することができる。特に、フィルタのクリーニングのための定期的なクリーニングプロセスは不要である。
【0019】
方法は、特に、ステップb)で形成されたろ過ケーキが、フィルタの表面からタンクの内室に延在し、多孔を形成する複数のダクトを有するとき、好適である。
【0020】
液体の添加剤の汚染物質は、液体の添加剤が開口に流れる間に、前記開口の縁でフィルタの表面に堆積される。従って、ろ過ケーキにおけるダクト(ろ過ケーキダクト)は、フィルタの開口からタンクの内室に向かって延在している。ろ過ケーキにおける前記ダクトは、好適には、フィルタに、上述されたろ過ダクトの連続を形成する。ステップb)及びc)において、ろ過ケーキにおけるダクトを可能な限り長く開放されたままにし、閉塞されないようにすることが好適である。汚染物質の堆積を可能な限り長く、主にろ過ケーキの(外側)表面で行い(ステップb))、未だろ過ケーキにおいて行わない(ステップc))ことが保証されている。従って、ろ過ケーキの多孔が形成されている。
【0021】
方法は、ろ過ケーキが繰り返し少なくとも部分的に除去されると、更に好適である。
【0022】
ろ過ケーキの除去は、ステップc)の後で行われるステップd)と云われてよい。方法ステップa)〜c)又はa)〜d)は、好適には、ループの形で規則的な時間間隔で繰り返される、かつ/又は少なくとも部分的に同時に行われる。
【0023】
特にステップc)においてろ過ケーキに汚染物質が堆積する間に、ろ過ケーキの多孔性は低下し、ひいては液体の添加剤に対するろ過ケーキの浸透性も低下する。これにより、ろ過ケーキの流れ抵抗が増加する。そのために、ろ過ケーキが規則的な時間間隔で繰り返し少なくとも部分的に除去されると、好適である。これにより、ろ過ケーキの流れ抵抗が低下する。
【0024】
ろ過ケーキの除去は、規則的な時間間隔で繰り返してよい。この目的のための可能な繰返し時間間隔は、例えばタンクから液体の添加剤を取り出す装置の10作動時間〜400作動時間である。繰返し時間間隔は、好適には、フィルタの汚染速度に関して特定される。汚染速度は、液体の添加剤における汚染物質の量に依存する。ろ過ケーキが所定の厚さに達したときに、その都度、ろ過ケーキの除去を行うこともできる。例えば、ろ過ケーキが1mm、好適には2mmを超えるろ過ケーキ厚さに達する毎に、ろ過ケーキの除去を行ってよい。ろ過ケーキの除去は、好適には、純粋に機械的な動作により行われる。更に、フィルタがステップd)の間タンク内に留まる、即ち、前記ステップはタンクの外側でのかつ/又はタンクを空にした状態でのフィルタの独立したクリーニングを全く含まないと考えられるべきであることを明確にしなければならない。
【0025】
方法は、フィルタのフィルタ表面積の平方センチメートルあたりのろ過ケーキの重さが閾値を超えたときにろ過ケーキが少なくとも部分的に重力により除去されるように、フィルタの表面が少なくとも部分的に配向されていると、更に好適である。フィルタの下において、装置及び/又はタンクに、ろ過ケーキから分離された粒子が集まるいわゆる溜めを設けてよい。
【0026】
液体の添加剤の汚染物質は、通常、液体の添加剤よりも重い。従って、液体の添加剤の汚染物質は、重力により下方に引っ張られる。汚染物質から成るろ過ケーキがより厚くなるほど、フィルタ表面積の平方センチメートルあたりのろ過ケーキの重さもより大きくなる。フィルタ又はフィルタの表面の適切な配向により、フィルタ表面積の平方センチメートルあたりのろ過ケーキの重さが閾値を超えたときに、ろ過ケーキに作用している重力が汚染物質を除去することが達成される。閾値は、例えば、100mg/cm
2(平方センチメートルあたりミリグラム)、好適には200mg/cm
2より大きくてよい。以下でフィルタの表面と云ったときには、これは、タンクの内室に面しているフィルタの表面を意味する。
【0027】
配向は、重力がフィルタの表面から離反する方向に大きな力成分を加えるように、選択される。フィルタの表面は、例えば鉛直に配向されている。この場合、ろ過ケーキは、重力により、フィルタの表面に対して平行にフィルタから剥離される。タンクの内室に面しているフィルタの表面を少なくとも部分的に下向きに配向することも可能である。この場合、重力は、直接にフィルタの表面から離反する方向に作用する。これは、ろ過ケーキの特に効果的な除去を可能にする。
【0028】
方法は、フィルタの表面に、ろ過ケーキを表面から少なくとも部分的に分離する液体の添加剤の流れが形成されると、更に好適である。
【0029】
ろ過ケーキを分離するための液体の添加剤の流れは、例えばタンク内で液体の添加剤が跳ね動くことにより生じさせてよい。
【0030】
方法は、ろ過ケーキを分離するための液体の添加剤の流れが、取出し位置からタンクの内室に向けて流れても、好適である。
【0031】
方法は、流れが液体の添加剤を排出するためのポンプにより後方に排出されることにより形成されると、更に好適である。例えば、ポンプの排出方向は、液体の添加剤が取出し位置からフィルタを通ってタンクに押し戻されるように、逆転させてよい。この場合、液体の添加剤は、ろ過ケーキを、フィルタから押し離す。ポンプのそのような作動は、目的に合わせて所定の時間で行ってよい。これは、ろ過ケーキの特に効果的な除去を可能にする。後方の排出は、例えば、液体の添加剤を供給する装置の作動が終了したときに行ってよい。この装置は、後方の排出により同時に空にすることができる。即ち、液体の添加剤が装置から除去される。
【0032】
方法は、方法ステップa)及びc)においてタンクの内室から液体の添加剤を取り出す間、内室と取出し位置との間でフィルタを境に圧力勾配が形成され、この圧力勾配が所定の閾値を超えたときにろ過ケーキが除去されると、更に好適である。
【0033】
フィルタを境にした圧力勾配は、特に、タンクの内室と、フィルタと取出し位置との間の中間室との間の圧力勾配である。前記圧力勾配は、例えば内室及び中間室において圧力センサにより監視してよい。監視は、直接に内室と中間室との間の圧力差を測定する差圧センサにより行ってもよい。
【0034】
方法は、圧力勾配が、液体の添加剤を排出するためのポンプの電力消費量に基づいて、かつポンプにより形成される圧力に基づいて決定されると、特に好適である。
【0035】
ポンプの電力消費量及びポンプにより形成される圧力は、(流れ)抵抗に依存している。この(流れ)抵抗に抗して、タンクから液体の添加剤を取り出す間に液体の添加剤を排出するためにポンプが作動する。圧力の上昇中に消費された電力を電力消費量から引くと、これは、抵抗ひいては圧力勾配の測定をもたらす。ポンプの電力消費量を、ポンプの駆動装置の制御装置により電子的に測定してよい。ポンプにより形成される圧力を、圧力センサにより監視してよい。圧力センサは、液体の添加剤の流れ方向でみてポンプの下流側で排出ダクトに配置されている。
【0036】
圧力勾配が閾値を超えると、例えば、フィルタからろ過ケーキを分離するための流れを形成してよい。これは、例えばポンプの排出方向の逆転により実現してよい。
【0037】
本願において、液体の添加剤を供給する装置も提供されており、この液体の添加剤を供給する装置は、液体の添加剤が貯蔵されている内室と、液体の添加剤をタンクから取り出すことができる取出し位置とを有するタンクと、取出し位置を覆い、取出し位置をタンクの内室から分離するフィルタと、を備え、フィルタの表面は、液体の添加剤がフィルタを通って流れ、汚染物質が表面に多孔性のろ過ケーキを形成するときに、液体の添加物の汚染物質がフィルタの表面に堆積されるように、設計されている。
【0038】
そのような装置は、特に、特に好適には本願で提案された、タンクから液体の添加剤を取り出す方法を実施するように適し、かつ構成されている。既に上記に記載されたような前記タイプの装置の特別な設計特徴は、装置を改善するために実施してよい。記載の方法に関して記載された格別な利点は、装置に同様に適用しかつ転用することができる。
【0039】
フィルタの表面は、好適には、液体の添加剤の汚染物質の付着を促進する。これは、例えばフィルタの表面の格別な表面張力により保証されてよい。フィルタの表面は、例えば汚染物質の付着を向上させるために、疎水性又は親水性であってよい。フィルタの表面は、汚染物質の堆積を促進する化学的性質を有することもできる。フィルタの表面は、例えば汚染物質に化学的に適合するように設計してよい。汚染物質が主に結晶尿素粒子から成っているとき、表面は、例えば、化学結合が表面と結晶尿素粒子との間で形成されるように設計してよい。
【0040】
内燃機関と、内燃機関の排ガスを浄化するための排ガス処理装置と、排ガス処理装置のために液体の添加剤を供給する対応する装置と、を備え、前記装置は、記載の方法を実施するように構成されている、自動車も記載されている。
【0041】
SCR触媒コンバータは、好適には、排ガス処理装置に設けられている。排ガス処理装置は、好適には、供給装置も備える。供給装置により、液体の添加剤を排ガス処理装置に供給することができる。供給装置は、記載の装置により液体の添加剤が供給されるかつ/又は記載の装置の構成要素でさえある。供給装置は、例えば、インジェクタ及び/又はノズルを備える。インジェクタは、液体の添加剤の計量供給を行い、ノズルは、排ガス処理装置における液体の添加剤の微細な霧化を保証する。タンクに供給装置を接続するために、供給装置に通じている管路が、装置の管路接続部に接続されている。
【0042】
本発明及び技術分野を、図面に基づいてより詳しく以下に説明する。図面は、特に好適な態様を示しているが、発明は、これに限定されるものではない。特に、図面及びとりわけ図示の寸法的な関係は、単に概略的なものでしかないことを指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】前記タイプの装置のためのフィルタの詳細図である。
【0044】
図1は、内室1を有するタンク2を示している。内室1には、液体の添加剤8が蓄えられている。内室1は、タンク底24を備える。タンク底24に装置12が挿入されている。この装置12は、ハウジング21を備え、ハウジング21は、タンク底24における開口を液密に閉じている。ハウジング21には取出し位置3が位置しており、その取出し位置で、液体の添加剤8をタンク2から取り出すことができる。排出ダクト26は、ハウジング21を通って取出し位置3から管路接続部22まで延在している。排出ダクト26にはポンプ27も位置しており、ポンプ27により、液体の添加剤を排出することができる。液体の添加剤8の排出方向35でみて、ポンプ27の下流側において、排出ダクト26に圧力センサ37が配置されている。圧力センサ37を用いて、ポンプ27により排出ダクト26において形成された圧力を監視することができる。
【0045】
取出し位置3は、フィルタ4により、タンク2の内室1に対して覆われている。前記フィルタ4は、フィルタ表面積10とフィルタ深さ32とを有する。フィルタ4と取出し位置3との間には中間室25(中間室25は断面で部分的に自由に取り囲んでいる)が位置し、中間室25は、液体の添加剤8がフィルタ4のあらゆる位置から取出し位置3へ通過できることを保証している。汚染物質7が、液体の添加剤8の中に位置している。前記汚染物質7は、ろ過ケーキ6として、フィルタ4の、内室1に面する表面5に堆積している。前記ろ過ケーキ6は、ろ過ケーキ厚さ33を有する。
【0046】
図1には、重力9も示されている。重力9により、フィルタ表面積10の構成単位ごとのろ過ケーキ6の重さが閾値よりも大きくなるとき、ろ過ケーキ6が除去される。同様に、
図1には、フィルタ4からろ過ケーキ6を除去する流れ11が略示されている。
図1に示されたタンク2は、溜め23を備え、溜め23に、ろ過ケーキから分離された粒子を捕集することができる。
【0047】
図2は、ろ過ケーキ6が形成されている、フィルタ4の一区分を示している。フィルタ4は、横断面積14を有する開口13を含む表面5を備える。ろ過ダクト28は、開口13からフィルタ4を通って延在している。ろ過ダクト28は、部分的に接続ダクト29でもあり、接続ダクト29は、ろ過ダクト28を互いに接続し、ひいては多孔31のダクトシステム30を形成する。ろ過ダクト28は、ろ過ケーキ6に続いている。ろ過ケーキ6において、ろ過ケーキダクト34が形成されており、ろ過ケーキダクト34は、フィルタの表面5における開口13に隣接している。
【0048】
図3は、単純化され、例示したに過ぎない方法の一覧を示している。フィルタ4が図示されている。ステップi)では、最初の汚染物質7がフィルタ4に集まる。同時に、液体の添加剤8がフィルタ4を通って流れる。ステップii)では、汚染物質7からろ過ケーキ6がフィルタ4上に形成されている。液体の添加剤8は、フィルタ4とろ過ケーキ6とを通って前方へ流れる。ステップiii)では、ろ過ケーキ6がフィルタ4から分離されている。ろ過ケーキ6は、例えば流れ又は重力によりフィルタ4から分離されている。ここでは、ろ過ケーキ6から分離された粒子36が溜め23に集まる。矢印は、例示された方法ステップがループの形で繰り返されていることを示している。ろ過ケーキ6を完全に除去し、全ての方法ステップi)〜iii)を規則的な時間間隔で繰り返すことができる。ろ過ケーキを常に部分的にだけ分離し、方法ステップiii)及びii)のみを規則的な時間間隔で繰り返すこともできる。このとき、ろ過ケーキ6又は汚染物質7の残量は、常にフィルタ4上に残っている。方法ステップi)及びii)は、上述の方法のa)、b)及びc)に相当する。方法ステップiii)は、ろ過ケーキ6の除去のための、追加的に記載されたステップd)に相当する。
【0049】
図4は、内燃機関16と、内燃機関16の排ガスの浄化のための排ガス処理装置17とを備える自動車15を示している。排ガス処理装置17は、SCR触媒コンバータ18を備え、触媒コンバータ18により、排ガスの浄化のために、選択的触媒還元法を実施することができる。このために、液体の添加剤を、供給装置19により排ガス処理装置17に供給することができる。液体の添加剤8は、装置12により、タンク2から供給装置19に供給される。このために、装置12は、管路20を介して供給装置19に接続されている。
【0050】
図面において例示された状況の個々の詳細又は過程は、必ずしも同一の図面における他の詳細又は過程と組み合わせなくてもよいことが明らかである。従って通例では、図面の主題の個々の特徴の組み合わせには、これが明細書に明確に記載されているとき又は要求される技術的な機能が他の場合にはもはや提供されないことが明らかであるときにだけ必然的に組み合わせなければならないことが、適用される。
【0051】
本発明は、タンクから液体の添加剤を取り出すための特に効果的な方法に関する。その方法では、液体の添加剤は、汚染物質から浄化される。同時に、装置の保守は不要である。特に、フィルタの定期的なクリーニングを行う必要はない。
【符号の説明】
【0052】
1 内室
2 タンク
3 取出し位置
4 フィルタ
5 表面
6 ろ過ケーキ
7 汚染物質
8 液体の添加剤
9 重力
10 フィルタ表面積
11 流れ
12 装置
13 開口
14 横断面積
15 自動車
16 内燃機関
17 排ガス処理装置
18 SCR触媒コンバータ
19 供給装置
20 管路
21 ハウジング
22 管路接続部
23 溜め
24 タンク底
25 中間室
26 排出ダクト
27 ポンプ
28 ろ過ダクト
29 接続ダクト
30 ダクトシステム
31 多孔
32 フィルタ深さ
33 ろ過ケーキ厚さ
34 ろ過ケーキダクト
35 排出方向
36 粒子
37 圧力センサ
【国際調査報告】