特表2016-515935(P2016-515935A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-515935メチルメルカプタンの合成用触媒ならびに合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-515935(P2016-515935A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(54)【発明の名称】メチルメルカプタンの合成用触媒ならびに合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/19 20060101AFI20160502BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160502BHJP
   C07C 321/04 20060101ALI20160502BHJP
   C07C 319/02 20060101ALI20160502BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160502BHJP
【FI】
   B01J27/19 Z
   B01J37/02 101C
   C07C321/04
   C07C319/02
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-504701(P2016-504701)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014056343
(87)【国際公開番号】WO2014154885
(87)【国際公開日】20141002
(31)【優先権主張番号】1352871
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミ,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】バール,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】サンショー,カリーネ
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ,アレシア
(72)【発明者】
【氏名】ラモニエ,カロル
(72)【発明者】
【氏名】ブランシャール,パスカル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA16A
4G169BA16B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB09A
4G169BB09B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169CB62
4G169CB70
4G169DA05
4G169FA02
4G169FB18
4G169FC02
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC63
4H006BA02
4H006BA14
4H006BA55
4H006BE20
4H006BE40
4H006TA04
4H039CA60
(57)【要約】
本発明は、モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分ならびにヒドロキシアパタイトをベースとする担体を含む触媒に関し、前記触媒の調製方法、一酸化炭素、硫黄および/または硫化水素ならびに水素を反応させることによる、前記触媒の使用を含む触媒的方法におけるメチルメルカプタンの製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分ならびにヒドロキシアパタイトをベースとする担体を含む触媒。
【請求項2】
触媒担体が、化学量論式Ca10(PO(OH)を有するヒドロキシアパタイトであることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分が、Mo−S−Kをベースとする化合物、Mo−O−Kをベースとする化合物およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
Mo−S−Kをベースとする活性成分のための前駆体が、構造KMoSを有することを特徴とする、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
本発明による触媒についての重量比が、
MoS/Ca10(PO(OH)=31.3/100
であることを特徴とする、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
Mo−O−Kをベースとする活性成分のための前駆体が、構造KMoOを有することを特徴とする、請求項3に記載の触媒。
【請求項7】
本発明による触媒についての重量比が、
MoO/Ca10(PO(OH)=50.7/100
であることを特徴とする、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒の調製方法であって、以下のステップ:
− 活性相のための前駆体を調製するステップ
− 担体を調製するステップ、および
− 担体を活性相前駆体で乾式含浸するステップ
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒の使用を含む、酸化炭素、硫黄および/または硫化水素ならびに水素を反応させることによる、触媒的方法におけるメチルメルカプタンの製造方法。
【請求項10】
メチルメルカプタンの製造用触媒を調製するための担体としての、ヒドロキシアパタイトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に至った研究は、欧州連合から第7次フレームワークプログラム(FP7/2007−2013)の一環としてプロジェクト番号241718 EUROBIOREFとして融資を受けた。
【0002】
本発明は、合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造するために有用な、特定のモリブデンおよびカリウムをベースとする触媒ならびに前記触媒の調製方法に関する。
【0003】
また、本発明は、前記触媒を使用するメチルメルカプタンの製造方法に関する。
【0004】
最後に、本発明は、メチルメルカプタンの製造用触媒のための担体としての、ヒドロキシアパタイトの使用に関する。
【背景技術】
【0005】
メチルメルカプタンは、特にメチオニンといった動物の餌において広く使用される必須アミノ酸の合成のための原材料として産業上高い関心が寄せられている。また、メチルメルカプタンは、多くの他の分子、特にジメチルジスルフィド(DMDS)といった、数ある用途の中でも石油分留における水素化触媒用の硫化添加剤のための原材料である。
【0006】
メチルメルカプタンは、通常、工業的にメタノールおよび硫化水素から高いトン数で生産される。それにより、メチルメルカプタンを、以下の反応式:
CO+2H+HS→CHSH+HO (1)
に従って、一酸化炭素、水素および硫化水素から直接的に生産しようとする経済的関心は理解できる。
【0007】
この合成からの主たる副生成物は、二酸化炭素である。硫化カルボニル(COS)は、以下の反応式:
CO+HS→COS+H (2)
COS+3H→CHSH+HO (3)
に従って水素化の後にメチルメルカプタンとなる反応中間体であるとみなされる。
【0008】
二酸化炭素は、2つの副反応:
CO+HO→CO+H (4)、および
COS+HO→CO+HS (5)
から生ずる。
【0009】
主要な原材料である一酸化炭素および反応中間体である硫化カルボニルを消費するこれらの2つの副反応は、メチルメルカプタン合成の間に副産される不可避の水の存在を原因とするものである。二酸化炭素は、場合によってメチルメルカプタンの生成のために、同様に以下の式:
CO+3H+HS→CHSH+2HO (6)
に従って再利用されることがある。
【0010】
しかし、この反応は、一酸化炭素からの反応よりも遅いことが知られている。従って、メチルメルカプタン反応器の出口では二酸化炭素の生成をできるだけ少なくしようとする動機付けが存在する。
【0011】
文献WO2005/040082からは、合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを合成するために幾つかの触媒が知られている。
【0012】
特に、この文献は、Mo−O−Kベースの活性成分、活性助触媒および場合によって担体を含む触媒の使用を開示している。例示される触媒は、KMoO/Fe/NiOまたはKMoO/CoO/CeO/SiOなどの種々の化学的性質を有し、それぞれシリカ上に担持されている。この触媒は、333℃で0.88のCO選択率/MeSH選択率の比をもたらす。
【0013】
また、上面に金属が電気分解的に堆積された多孔質担体から構成される一群の触媒が、文献US2010/0286448から知られている。そこでは、KMoOおよび助触媒としてのもう一つの金属酸化物が、この担体上に含浸されている。この文献の実施例15は、KMoO/NiO/CoSiOの調製を記載している。この複合触媒を用いてのCO選択率/MeSH選択率の比は0.65である。
【0014】
最後に、文献US2010/0094059は、KMoOベースの担持触媒であって、単一物または混合物で使用される多孔質担体が、SiO、Al、TiO、Al/SiO、ZrO、ゼオライトまたは炭素含有材料から選択される担持触媒を記載している。テルル酸化物(TeO)が助触媒として使用される。CO選択率/MeSH選択率の比は、300℃で測定されて、0.60および0.77の間に含まれる。
【0015】
これらの文献の教示から、特別な構造を有する触媒、助触媒および担体を、それぞれ慎重に選択して組み合わせることは、興味深い選択率の比を達成できることを意味することが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2005/040082号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0286448号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0094059号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
最近では、簡単に合成され、非常に良好な選択性をもたらす触媒に要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この技術的課題は、ヒドロキシアパタイトによって担持されたモリブデンおよびカリウムをベースとする触媒によって解決された。
【0019】
助触媒の存在が不可欠でないことからして、本発明による触媒はより調製が簡単であることが分かっている。本発明による触媒は、先に引用された文献に開示される触媒よりもコスト的に安い。そして最後に、本発明による触媒は、非常に良好なCO/MeSHの選択率をもたらす。
【0020】
また、本発明は、本発明の触媒の調製方法に関する。
【0021】
また、本発明は、本発明による触媒を使用して、合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造するための方法に関する。
【0022】
また、本発明は、合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを合成するための、前記定義の通りの触媒の使用に関する。
【0023】
最後に、本発明は、メチルメルカプタンの製造用触媒を調製するための担体としての、ヒドロキシアパタイトの使用、特にヒ酸化炭素、硫黄および/または硫化水素ならびに水素の反応による触媒的方法におけるメチルメルカプタンの製造用触媒を調製するための担体としての、ドロキシアパタイトの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の他の特性、特徴、主題および利点は、以下の詳細な説明および実施例の解釈で更により明瞭になる。
【0025】
表現「aおよびbの間」によって表されるどの値の範囲も、aより大きい値からbより小さい値までの範囲の値を表し(すなわち、限界値aおよびbを除外)、一方で表現「aからbまで」によって表されるどの値の範囲も、aからbまでの範囲の値を意味する(すなわち、限界値aおよびbを含む。)。
【0026】
触媒
本発明は、触媒に関する。
【0027】
前記触媒は、モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分ならびにヒドロキシアパタイトをベースとする担体を含む。
【0028】
活性成分
本発明による触媒中に存在する活性成分は、単一成分内にモリブデンおよびカリウムを含む。
【0029】
好ましくは、モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分は、Mo−S−Kをベースとする化合物、Mo−O−Kをベースとする化合物およびそれらの混合物から選択される。
【0030】
Mo−S−Kをベースとする活性成分は、別々に担体へ添加される、KMoSまたは、含浸されたKCOを有する(NHMoS前駆体の堆積および焼成により得ることができる。
【0031】
Mo−O−Kをベースとする活性成分は、別々に担体へ添加される、KMoOまたは、含浸されたKCOを有する(NHMoO前駆体の堆積および焼成により得ることができる。
【0032】
また、試薬としての七モリブデン酸アンモニウム(NHMo24・4HOを、例えば硝酸カリウムKNO、炭酸カリウムKCOまたは水酸化カリウムKOHのようなカリウム塩の存在下に使用することもできる。
【0033】
これらの化合物は、それぞれ、Mo−S−Kをベースとする活性相およびMo−O−Kをベースとする活性相の前駆体である。それらの活性相は、例えば、窒素中250℃で乾燥させ、引き続き同じ温度で硫化水素により1時間にわたり硫化する最初のステップと、H/HSにより350℃で1時間にわたり還元/硫化する次のステップからなる手順による、インサイチューでの前駆体前処理後に得られる。
【0034】
担体
本発明による触媒担体は、式Ca10(PO(OH)を有するヒドロキシアパタイト、有利には化学量論型ヒドロキシアパタイトである。
【0035】
本発明により有用であるヒドロキシアパタイトは、好ましくは1.5から2.1までの範囲のCa/Pモル比を有し、より好ましくは化学量論型ヒドロキシアパタイトに求められる値に相当する1.67のCa/Pモル比を有する。
【0036】
好ましくは、本発明による触媒の重量比は、
MoS/Ca10(PO(OH)=31.3/100
MoO/Ca10(PO(OH)=50.7/100
である。
【0037】
触媒活性は、25m/gを超える比表面積(specific area)を有する担体材料を使用することによって向上させることができる。
【0038】
好ましくは、本発明によるヒドロキシアパタイト担体は、少なくとも40m/gの比表面積を有し、より具体的には40m/gから300m/gまでの範囲の比表面積を有し、そして1.67のCa/Pモル比を有する。
【0039】
担体の構造は、立体形状、球形状、円柱形状、リング形状、星形状の粒状物であってよく、もしくは任意の他の立体形状であってよく、または圧縮成形、押出成形、造粒がなされてよい粉体の形状もしくは立体形状であってよい。
【0040】
好ましくは、触媒粒子は、ふるい分析により測定して、0.1mmから20.0mmまでの直径を有する一様な粒度分布を有する。
【0041】
助触媒
好ましくは、本発明による触媒は、モリブデンおよびカリウムをベースとする活性成分ならびにヒドロキシアパタイトをベースとする担体からなる。
【0042】
しかしながら、当業者に公知の助触媒、例えば酸化テルル、酸化ニッケルまたは酸化鉄の存在を想定することも可能である。
【0043】
触媒調製方法
また、本発明は、本発明による触媒の調製方法に関する。前記方法は、以下の連続的なステップ:
− 活性相のための前駆体を調製するステップ
− 担体を調製するステップ、および
− 担体を活性相前駆体で乾式含浸するステップ
を含む。
【0044】
活性相のための前駆体の調製
1/Mo−O−K
1. KMoO塩は市販の塩である。Mo−O−Kをベースとする触媒を調製するために、固定量のKMoOを、例えば0.5g/mLから1.0g/mLまでの範囲の濃度のような所望の濃度を有する溶液を得るための容量の水中に溶解させる。
【0045】
2. 個別の、すなわち同じ化合物部分でないモリブデン塩とカリウム塩から始めることも可能である。この合成のために、七モリブデン酸アンモニウムを水中に添加して22重量%から33重量%までの範囲のMoO濃度を得ることによって、モリブデンをベースとする溶液が調製される。
【0046】
並行して、硝酸カリウムを水中に添加して31重量%から43重量%までの範囲のKO濃度を得ることによって、カリウムをベースとする溶液が調製される。
【0047】
2/Mo−S−K
MoS合成は、一般的に2つのステップで行われる。
【0048】
第一のステップは、テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)を調製することを含み、第二のステップは、テトラチオモリブデン酸カリウム(KMoS)を第一のステップで調製された塩から合成することである。
【0049】
ATTMを調製するために、七モリブデン酸アンモニウム(HMA)が溶解された25%アンモニア水溶液中に硫化水素を連続的にバブリングしたままにする。溶液温度が上がり、これは発熱反応を表している。温度が下がったら(一般的に1時間後)、硫化水素のバブリングを止める。
【0050】
溶液は、その結果テトラチオモリブデン酸アンモニウムに相当する、緑色反射を伴う赤色結晶を含有する。
【0051】
第二のステップは、得られたテトラチオモリブデン酸アンモニウム塩中のアンモニウムイオンおよび水酸化カリウム溶液に由来するカリウムイオンの間のイオン交換からなる。得られた塩は、次いで真空下で貯蔵される。多量のテトラチオモリブデン酸カリウムが水中に溶解される。
【0052】
本発明による触媒において有用なカリウム塩は、以下の化合物:酢酸カリウム(KAc)、シュウ酸カリウム(K)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(KCO)、硝酸カリウム(KNO)および重炭酸カリウム(KHCO)に由来しうる。
【0053】
担体の調製
ヒドロキシアパタイトから構成される触媒担体は、共沈法によって調製される。硝酸カルシウムCa(NOの水溶液を、リン酸水素アンモニウム(NH)HPO溶液に撹拌しながら滴加した。温度は100℃に保たれ、pHはアンモニア溶液(25%)を添加して10に保たれる。
【0054】
生じた白色沈殿物は、濾過され、洗浄され、80℃で一晩乾燥され、そして400℃で焼成される。ヒドロキシアパタイトCa10(PO(OH)は、化学量論型ヒドロキシアパタイトに求められる値に相当する1.67のCa/Pモル比で得られた。
【0055】
担体の活性相前駆体での乾式含浸
1/Mo−O−K
触媒の調製のために乾式含浸法が使用される。KMoO溶液は担体上に一工程で含浸される。カリウムを含む溶液とモリブデンを含む溶液が異なる場合には、含浸は二工程で行われる。
【0056】
2/Mo−S−K
テトラチオモリブデン酸カリウム溶液は、次いでヒドロキシアパタイト上に含浸される。触媒中のモリブデン含量は、KMoSまたはKMoOの溶解度および担体の細孔容積に依存する。
【0057】
MoSの溶解度は、0.25g/mLおよび0.50g/mLの間(0.35g/mL)であり、そしてKMoOの溶解度は、0.50g/mLおよび1.50g/mLの間(0.90g/mL)である。担体の細孔容積は、0.8mL/gおよび2.2mL/gの間である。
【0058】
従って、使用される溶液の容積を計算することで、所望の重量比、好ましくは前記定義の通りの重量比が得られる。
【0059】
含浸の後に、固体は、2時間にわたる熟成ステップに続き、80℃で24時間にわたる炉内乾燥、そして490℃のガス流(一般的に空気)のもと4時間にわたる焼成を経る。第二の含浸ステップが必要であれば、その固体は再度、熟成ステップ、乾燥ステップおよび焼成ステップを経る。
【0060】
メチルメルカプタンの製造方法
本発明は、酸化炭素、硫黄および/または硫化水素ならびに水素を反応させることによる、前記定義の通りの触媒の使用を含む触媒的方法におけるメチルメルカプタンの製造方法に関する。
【0061】
COもしくはCO/HS/Hのモル比は、1/1/0から1/8/8までの範囲であり、または硫黄が硫化水素の代わりに使用される場合に、COもしくはCO/HS/H/S試薬のモル比は、1/1/0/1から1/8/8/8までの範囲である。
【0062】
好ましくは、COもしくはCO/HS/Hのモル比は、1/2/1から1/4/4までの範囲であり、硫黄が硫化水素の代わりに使用される場合に、COもしくはCO/HS/H/S試薬のモル比は、1/2/2/1から1/4/4/4までの範囲である。
【0063】
これらのモル比は、COを考慮に入れている。従って、それらは反応式(1)および反応式(6)の両方を考慮している。
【0064】
好ましくは、反応は、固定管式反応器、固定多管式反応器、触媒壁マイクロ流路反応器または流動床反応器において行うことができる。
【0065】
また、本発明は、合成ガスおよび硫化水素からメチルメルカプタンを製造するための、前記定義の通りの触媒の使用に関する。
【0066】
最後に、本発明は、メチルメルカプタンの製造用触媒の調製のための担体としての、ヒドロキシアパタイトの使用、特に、酸化炭素、硫黄および/または硫化水素ならびに水素の反応による触媒的方法におけるメチルメルカプタンの製造用触媒の調製のための担体としての、ヒドロキシアパタイトの使用に関する。
【0067】
ここで本発明を以下の実施例で説明するが、これらの実施例は、説明を目的とするものであるにすぎず、もちろん制限するものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1
本発明による触媒は、前記定義の通りの乾式含浸法に従って調製される。
【0069】
得られた触媒は、以下の特性を有する。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例2:使用した触媒は、ヒドロキシアパタイト上のKMoOである。
【0072】
実施例3:試験した触媒は、SiO上のKMoOである。
【0073】
実施例4:試験した触媒は、Al上のKMoSである。
【0074】
実施例5:試験した触媒は、Al上のKMoOである。
【0075】
触媒の評価
触媒は、以下の条件:
温度:280℃
圧力:10bar
供給ガスの組成CO/H/HS=1/2/1(体積/体積)
GHSV(気体毎時空間速度)=1333h−1
における固定床反応器中でメチルメルカプタンを製造するための反応において評価される。
【0076】
反応物および生成物は、ガスクロマトグラフィーによってインラインで分析された。
【0077】
試験前に、触媒は、窒素中250℃で乾燥され、引き続き同じ温度で硫化水素により1時間にわたり硫化する最初のステップと、H/HSを用いて350℃で1時間にわたり還元/硫化する次のステップからなる第一の方法によってインサイチューで活性化された。
【0078】
結果は、以下の表2の通りである。
【0079】
【表2】
【0080】
表2で表された結果は、本発明による触媒(実施例1および実施例2)が、先行技術の担体(シリカ:実施例3またはアルミナ:実施例4および5)上の触媒よりもかなり低いCO(不所望な生成物)選択率を与えることを示している。
【0081】
選択率は、一酸化炭素の等しい転化率を用いて比較される。この転化率は、触媒の比表面積m当たりの値によって表現される。
【0082】
触媒1および4で得られた結果を比較することによって、比率で30%の改善が確認され、この改善は、担体としてヒドロキシアパタイトを選択したことに結びついている。
【0083】
本発明による実施例2と実施例3および5とを比較した場合に同じことが確認される。
【0084】
副反応により生成される二酸化炭素と比較して高められたメチルメルカプタンの選択性が確認される。
【0085】
注目すべきことは、この選択性は、先行技術に記載されるような酸化テルル、酸化ニッケルまたは酸化鉄のような助触媒の補助なくして得られるということである。
【国際調査報告】