(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-516636(P2016-516636A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】底部に空洞を有する船
(51)【国際特許分類】
B63B 1/38 20060101AFI20160513BHJP
B63B 1/32 20060101ALI20160513BHJP
【FI】
B63B1/38
B63B1/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-510647(P2016-510647)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月10日
(86)【国際出願番号】RU2014000298
(87)【国際公開番号】WO2014178757
(87)【国際公開日】20141106
(31)【優先権主張番号】2013119868
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】RU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515295728
【氏名又は名称】ミニストリー オブ インダストリー アンド トレード オブ ザ ロシアン フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】MINISTRY OF INDUSTRY AND TRADE OF THE RUSSIAN FEDERATION
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】プストシャニー、アレキサンダー ウラジミロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】スベルシュコフ、アンドレイ ウラジミロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルバチョフ、ユリイ ニコラエヴィッチ
(57)【要約】
底部に空洞を有する移動船舶であって、波状の輪郭を有する単一の空洞を形成するために底部にくぼみを有し、くぼみは、船首の段部で始まり、両側に沿ったスケグと傾斜プレート形態の船尾のアーチ部とが境界である。くぼみの空洞は、加圧された空気供給部に接続している。くぼみの内部には、空気の横方向の動きを制限するための長手竜骨があり、傾斜プレート形態の横方向邪魔板は、この邪魔板を動作位置に展開でき、底部に隣接して折り畳んで戻せるように流れ方向に交互に配置される。くぼみを形成する船首の段部の下流では、底部を横断するスピンドル周りにプレートの前縁を下げたり上げたりすることによってプレートを回動できるようにプレートが取り付けられ、前記スピンドルは、プレートに連結され、底部くぼみの表面に固定される。プレートの流れ方向の長さは、プレートがスピンドル周りを回動すると、プレートが段部の上流にある底部の表面をくぼみ内部にある底部の表面と合わせて段部の下流で流れが分離するのを防止するような長さである。プレートは、その前縁が段部の領域で船の底部の高さを下げるのを制限できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に空洞を有する船舶であって、
波形の輪郭を有する一体空洞を発生させるためのくぼみを有し、該くぼみは、船首の段部から始まって、両サイドに沿ったスケグと傾斜プレートで形成された船尾のアーチ部とで包囲され、前記くぼみの空間は、加圧された空気供給部に接続し、前記くぼみの内部に装着された長手竜骨と連結して空気が横方向に動くのを制限し、傾斜プレート形態の横方向邪魔板は、流線方向に交互に配置される船舶において、前記くぼみを形成する船首の前記段部の下流にはプレートがあり、該プレートは、その前縁をスピンドル周りに下げたり上げたりすることによって回動できるよう取り付けられ、前記スピンドルは、前記底部を横断するように底部のくぼみの表面に固定されて前記プレートに連結し;前記プレートの流れ方向の長さは、前記プレートが前記スピンドル周りを回動すると、前記プレートが前記段部の上流にある前記底部の表面を前記くぼみ内部にある底部の表面と合わせて前記段部の下流で流れが分離するのを防止するような長さであり、前記プレートは、その前縁が前記段部の近傍で前記底部の高さを下げるのを制限でき、前記くぼみの前記底部にある前記横方向邪魔板は、該邪魔板が動作位置に展開でき、該邪魔板を前記スピンドル周りに回動させることによって前記底部に収納されるように取り付けられ、前記スピンドルは、前記くぼみ底部に位置して前記船舶の中央線に対して横向きで、前記邪魔板の前縁近辺で前記邪魔板と連結している
ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記段部の近傍にある前記底部の端部は、前記くぼみが始まる前記段部の下流で前記くぼみの領域が広がっている張り出し部を有し、前記底部の表面と前記段部の近傍にある前記回動プレートとが隙間なしで合わさるようにするとともに、前記プレートの前縁が前記段部近辺で前記船舶底部の高さよりも下がるのを制限する
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記回動プレートおよび回動する横方向邪魔板は、該両者を回動するための駆動装置を有する
請求項1または2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部に空洞を有し、流体力学による抵抗を低減して動作性能を向上させる造船および移動船舶の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術には模範が開示されており、この模範は、底部の下に空気層を有する船舶であり、この空気層は、底部のくぼみで形成され、船首の段部と、側部の竜骨と、船尾の傾斜プレートとで包囲され、長手竜骨によって別々の区画に分割され、横方向邪魔板がくぼみに沿って流れ方向にくぼみの全幅に広がり、加圧された空気供給部が、空気層すなわち人工的な空洞を横方向邪魔板の下流で発生させて保持するために底部のくぼみ空間に接続している(ソ連国の発明者による1994年4月30日付の特許文献1、1983年9月29日付の特許文献2)。構造の主要構成要素は、波状の輪郭を有する一体空洞になって発生した空気層を収容するようになっている底部のくぼみである。くぼみの内部に配置された長手竜骨は、この空洞を区画に分割して空気の横方向の動きを制限し、船舶の横方向の安定性を向上させる。横方向邪魔板により、船舶が航行している際にくぼみに波形の輪郭を有する空洞を形成するとともに、この空洞が崩壊するのを防止することが可能になる。
【0003】
しかしながら、船舶が荒れた海況で航行しているとき、一体空洞は崩壊し、船舶が大きい初期トリムで航行していれば、このような空洞を形成することはまったく不可能である。これによって船舶底部の段部の近傍で流れが分離するため、船舶の動きに対する抵抗が劇的に増大する。そのため、船舶の経済的性能を向上させることを考慮した場合の構成の効率は低下する。そのような場合、底部に空洞を有する船舶の流体力学による抵抗は、前述のくぼみがない従来の船舶よりも遙かに大きい。空洞のある船舶の抵抗が最も根本的に増大するのは、空気供給が失敗していることによるものである。
【0004】
さらに、船舶が前述の好ましくない条件で航行しているとき、しっかりと固定された横方向邪魔板によって、波形の輪郭を有する一体空洞がくぼみの内部に形成されず、この空洞の崩壊を防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ソ連国登録番号第1145587号
【特許文献2】ソ連国出願番号第3664908/11号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一体空洞が崩壊したり空気供給部が故障したりした場合に、大きい初期トリムかつ荒れた海況で航行する船舶の流体力学による抵抗を低減することによって、底部に空洞を有する移動船舶の動作性能および経済的効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このようにするために、底部に空洞を有する移動船舶は、波形の輪郭を有する一体空洞を発生させるためのくぼみを有し、このくぼみは、船首の段部から始まって、両サイドに沿ったスケグと傾斜プレートで形成された船尾のアーチ部とで包囲され、くぼみの空間は、加圧された空気供給部に接続し、くぼみの内部に装着された長手竜骨と連結して空気が横方向に動くのを制限し、傾斜プレート形態の横方向邪魔板は、流線方向に交互に配置され、したがってここで、本発明によれば、船首の段部の下流でくぼみを形成し、船舶はプレートを装着され、このプレートは、その前縁をスピンドル周りに上げ下げすることによって回動でき、スピンドルは、底部の端から端に配置されてプレートに連結し、くぼみ底部の表面に固定される。この場合、プレートの流れ方向の長さは、プレートがスピンドル周りを回動すると、プレートが段部の上流にある底部の表面をくぼみ内部にある底部の表面と合わせて段部の下流で流れが分離するのを防止するような長さであり、プレートはその前縁が段部の近傍で底部の高さを下げるのを制限できる。同時に、くぼみの底部にある横方向邪魔板はこの邪魔板が動作位置に展開でき、この邪魔板をスピンドル周りに回動させることによって底部に収納されるように取り付けられ、スピンドルは船舶の中央線に対して横向きで、邪魔板の前縁近辺で邪魔板と連結している。
【0008】
このほか、段部の近傍にある底部の端部は、くぼみが始まる段部の下流でくぼみが広がっている張り出し部を有し、底部の表面と段部の近傍にある回動プレートとが隙間なしで合わさるようにするとともに、プレートの前縁が段部近辺で船舶底部の高さよりも下がるのを制限する。
【0009】
回動プレートおよび邪魔板は、両者を回動するための駆動装置をさらに装着されている。
【0010】
くぼみを形成する段部の下流でプレートを装着することは、その前縁を下げたり上げたりすることによってスピンドル周りに回動できるように行われ、スピンドルは、くぼみ底部の表面で底部を横断するように固定され、底部を横断するように向けられてプレートに連結し、これによって、底部のくぼみに空洞がないとき、または空洞が崩壊しているときに、段部の上流およびくぼみの内部にある底部表面を滑らかに移行させることによって前記段部の下流で流れを滑らかにし、このようにして段部の下流で流れが分離するのを防止できる。
【0011】
くぼみの底部に取り付けられた横方向邪魔板であって、この邪魔板が動作位置に展開でき、この邪魔板をスピンドル周りに回動させることによって底部に収納されるように取り付けられ、スピンドルが、船舶の中央線に対して横向きで、邪魔板の前縁近辺で邪魔板と連結している横方向邪魔板により、船舶の底部に連続した空気層を波状の輪郭を有する一体空洞の形態で発生させて保持でき、この空洞の崩壊を防止する。
【0012】
本発明を以下の図を用いて説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
底部1に空気層を有する本船舶(
図1)は、空気層を形成するくぼみであって、この空気層が、波形の輪郭を有する一体空洞3であり、段部4から始まる船舶底部1に設けられたくぼみ2と、空洞に空気を送出して底部1の下に空気層を形成するために使用されるパイプライン5を介してくぼみ2の空間と接続している空気供給部6とを有する。くぼみ2の内部には、中央線と平行に配置され、くぼみ2の底部(
図2)にある空気の横向きの動きを制限することを目的とする長手竜骨7があるとともに、くぼみ2に沿って流れ方向に交互に配置された横方向邪魔板8がある。上記の横方向邪魔板8(
図3)は、この邪魔板が動作位置に展開でき、この邪魔板をスピンドル9周りに回動させることによってくぼみ2の底部に収納されるように取り付けられ、スピンドルは、船舶の中央線を横断し、邪魔板の前縁近辺で横方向邪魔板8と連結し、くぼみ2底部に位置している。
【0015】
くぼみ2を形成している段部4の下流には、プレート10があり(
図4)、このプレートは、その前縁11を下げたり上げたりすることによってスピンドル12周りに回動できるように取り付けられ、スピンドルは、くぼみ2の底部の表面で底部を横断するように固定され、プレート10に連結している。プレート10の流れ方向の長さは、プレートが回動した際にくぼみ2底部に向かうプレートの傾斜角度13によって、段部4の上流にある底部1の表面がくぼみ2の内側にある底部の表面と合わさって、段部4の下流で流れが分離するのを防止するような長さである。この場合、プレート10は、その前縁11が段部4の近傍での船舶底部1の高さを下げるのを制限できる。
【0016】
段部4の近傍にある底部1の端部は、くぼみが始まる段部4の下流領域に広がっている張り出し部14でできており、底部1と段部の近傍にある回動プレート10とが合わさる面どうしの隙間をなくすとともに、プレートの前縁11が船舶底部の高さよりも下がるのを制限する。
【0017】
回動プレート10および回動する横方向邪魔板8は、両者を回動するための駆動装置を装着されている(駆動装置は図面に示していない)。
【0019】
船舶が静止した水または穏やかな海況を航行しているとき、空気供給部6からの空気は、空気パイプライン5を介して段部4および横方向邪魔板8に送出されて、くぼみ2の内部に人工的な空洞3の形態の空気層を形成する。供給された空気は、段部4および横方向邪魔板8の下流にある液圧の低い領域に保持され、その結果、段部4および各横方向邪魔板8の下流に形成された空気の空洞が別々かつ交互に配置されるシステムになる。空気供給部によって、いくつかの空洞の長さは徐々に長くなり、時間の経過とともに最大値に達し、この値は、経済的な船舶の速度での横方向邪魔板8の下縁どうしの間の距離に等しい。空洞の後ろ部分が横方向邪魔板8の下縁に達すると、別々の空洞が波形の輪郭を有する一体空洞3と合流する。様々な動作モードで個々の空洞が一体空洞3と最適に合流することは、くぼみ2に適切な空気容量を供給し、くぼみ2の底部に位置して船舶中央線を横断するスピンドル9周りに横方向邪魔板8を適切に回動させることによって達成される。このとき、一体空洞3内の圧力は増大し、これによって波形輪郭の範囲を小さくし、空洞3の表面(空気と水とのインターフェース)を水と接触しなくなった横方向邪魔板8から離す。
【0020】
船舶が縦揺れまたは横揺れの動きが大きい荒れた海況を航行しているとき、一体型の空洞3は崩壊する。船舶が大きい初期トリムで航行しているとき、空洞はまったく発生しない。これによってくぼみ2の底部表面で摩擦抵抗が増大する。さらに、段部4および横方向邪魔板8の下流で流れが分離することで、流体力学による抵抗が抜本的に増大する。このように、空洞3が崩壊するまたは空洞がないことにより、船舶の動きに対する全抵抗は劇的に増大し、底部にくぼみ2がない同様の船舶の全抵抗をも上回る。これによって消費力が大きくなり、したがって、空洞用のくぼみ2を有する船舶の動作性能が低下する。この場合、段部の下流で流れが分離するのを防止するために、段部4近辺の船舶底部1での流れのパターンを調整して、プレート10を用いて段部4の上流およびくぼみ2の内部で底部1の表面を滑らかに移行させることによって、分離しない流れを提供する。このようにするために、プレート10がスピンドル12周りを回動している間、段部4の下流に位置しているプレートの前縁11は、段部4の上流で船舶底部1の高さまで下がり、これ続くプレートの回動を制限する。底部の張り出し部14があることで、プレート10は、その前縁11が底部の張り出し部14の内面に達するまでスピンドル12周りに回動する。その結果、段部4の近傍の流れは分離しなくなる。横方向邪魔板8の下流で流れが分離するのを防止するため、横方向邪魔板は、スピンドル9周りに回動することによってくぼみ2底部上で折り畳まれ、このスピンドルは、くぼみ2の底部に位置して船舶中央線を横断し、前縁11の近辺で横方向邪魔板と連結している。その結果、横方向邪魔板8の下流の流れも同じく分離しなくなる。段部4および横方向邪魔板8の下流で流れが分離するのを防止することが可能になり、その結果、流体力学による抵抗を低減し、荒れた海況または大きい初期トリムでの船舶の動作性能および経済的効率を向上させることが可能になる。
【0021】
プレート10および横方向邪魔板8の回動は、回動駆動装置によって実施される。
【0022】
底部に空洞を有する本船舶は、一体空洞が崩壊したり空気供給が失敗したりした場合に、好ましくは模範的なものと比較して流体力学による抵抗を低減することによって、荒れた海況または初期トリムが大きい状態でこのような船舶の動作性能および経済的効果を向上させる。
【符号の説明】
【0023】
1 船舶の底部
2 波状の輪郭を有する一体空洞を発生させるための船舶底部にあるくぼみ
3 波状の輪郭を有する一体空洞
4 段部
5 パイプライン
6 空気供給部
7 長手竜骨
8 横方向邪魔板
9 横方向邪魔板を回動させるスピンドル
10 回動プレート
11 回動プレートの前縁
12 回動プレートのスピンドル
13 回動プレートの傾斜角度
14 くぼみが始まる段部の下流領域に広がる張り出し部
ОП 船舶中央線
【国際調査報告】