(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-516639(P2016-516639A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】長手方向に調節可能な車両座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20160513BHJP
【FI】
B60N2/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-510977(P2016-510977)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2014057198
(87)【国際公開番号】WO2014177351
(87)【国際公開日】20141106
(31)【優先権主張番号】102013207945.1
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013214175.0
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】プルタ、 ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ディル、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ、 クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クリストッフェル、 トーマス
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC04
3B087BC06
3B087BC08
3B087BC09
(57)【要約】
本発明は、快適性調節領域内で長手方向に移動可能に案内されることができる下方レール(5)及び上方レール(3)、並びに下方レール(5)に取り付けられ且つ上方レール(3)に取り付けられるストップ要素(36)と相互作用することにより快適性調節領域を定める端ストップ(40、40b)を備える長手方向に調節可能な車両座席(1)に関する。ストップ要素(36)を離すことにより、上方レール(3)は、快適性調節領域を超えてイージーエントリ領域に移動可能である。ストップ要素(36)は、枢動軸S周りで枢動可能なストップモジュール(30)の一部であり、ストップモジュール(30)は、偏向要素(34)を備え、ストップ要素(36)が離されていない場合に、偏向要素が上方レール(3)と下方レール(5)との間の空洞に位置するネジ頭(22)との接触に応じて垂直方向に上向きに移動するように構成され、このストップ要素(36)は、端ストップ(40、40b)に到達すると端ストップ(40、40b)と形状適合的に係合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
快適性調節領域内で長手方向に移動可能に案内されことができる下方レール(5)及び上方レール(3)、並びに前記下方レール(5)に取り付けられる端ストップ(40、40b)であって、前記上方レール(3)に取り付けられるストップ要素(36)と協働することにより前記快適性調節領域を定める端ストップ(40、40b)を備え、前記ストップ要素(36)を離すことにより、前記上方レール(3)は、前記快適性調節領域を超えてイージーエントリ領域に移動可能であり、前記ストップ要素(36)は、枢動軸S周りで枢動可能なストップモジュール(30)の一部である、長手方向に調節可能な車両座席(1)において、
前記ストップモジュール(30)は偏向要素(34)を備え、前記ストップモジュール(30)は、前記ストップ要素(36)が離されていない場合に、前記偏向要素(34)が前記上方レール(3)と前記下方レール(5)との間の空洞に位置するネジ頭(22)との接触に応じて垂直方向に上向きに移動するように構成され、
前記ストップ要素(36)は、端ストップ(40、40b)に到達すると前記端ストップ(40、40b)に係合することを特徴とする、車両座席(1)。
【請求項2】
前記ストップ要素(36)は、フック形状に構成される各々のストップ領域により前記偏向要素(34)の両側を横断方向に取り囲むことを特徴とする、請求項1に記載の車両座席(1)。
【請求項3】
前記端ストップ(40、40b)は、横断方向に互いに対してオフセットして配置され且つ溝穴(44)が間に形成される2つのストップアーム(42)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両座席(1)。
【請求項4】
前記ストップ要素(36)が離されていない場合に、前記偏向要素(34)は、前記端ストップ(40、40b)に到達すると前記端ストップ(40、40b)の前記溝穴(44)を貫通することを特徴とする、請求項3に記載の車両座席(1)。
【請求項5】
前記ストップモジュール(30)は、前記上方レール(3)を貫通する作動要素(32)を有することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項6】
前記ストップモジュール(30)はロッカーの形態で設計され、前記偏向要素(34)及び前記ストップ要素(36)は前記枢動軸Sの一方に配置され、前記作動要素(32)は前記枢動軸Sの他方に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の車両座席(1)。
【請求項7】
前記作動要素(32)を押すことにより、前記ストップモジュール(30)は、前記枢動軸S周りで枢動され、それにより前記ストップ要素(36)は離されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の車両座席(1)。
【請求項8】
圧力により前記作動要素(32)を起動するために、起動要素(50)の制御アーム(60)に配置されるランプ要素(54)が設けられ、前記ランプ要素は、前記制御アーム(60)に対して傾斜するように延び且つ前記作動要素(32)に作用する外形を有することを特徴とする、請求項7に記載の車両座席(1)。
【請求項9】
バネ要素が設けられ、前記バネ要素は、前記作動要素(32)の解放後に、前記枢動軸S周りで戻すように前記ストップモジュール(30)を枢動させることを特徴とする、請求項7又は8に記載の車両座席(1)。
【請求項10】
前記偏向要素(34)、前記ストップ要素(36)及び前記作動要素(32)は、一体的に構成されることを特徴とする、請求項5〜9の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項11】
前記偏向要素(34)は、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように延びる前方傾斜部を有することを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項12】
前記偏向要素(34)は、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように延びる後方傾斜部を有することを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項13】
前記偏向要素(34)は、前記ストップ要素(36)よりも垂直方向に深く延びることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項14】
前記偏向要素(34)及び前記ストップ要素(36)は、一体的に構成されることを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【請求項15】
前記枢動軸Sは、横断方向に延びることを特徴とする、請求項1〜14の何れか1項に記載の車両座席(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する長手方向に調節可能な車両座席に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2012/084116A1に一般的な車両座席が開示されている。車両座席は、2つのレールペアを有する長手方向調節器を備えており、2つの座席レールの各々が互いに対して移動可能であり、即ち、上方レール及び下方レールが相互に互いを取り囲む。上方レールは、下方レールに対して快適性調節領域内に及びイージーエントリ領域にも移動可能である。快適性調節領域内の位置において上方レールを下方レールに固定するために固定装置が設けられる。
【0003】
快適性調節領域を制限するために、可動式ストップ面を有する端ストップ要素が上方レールに設けられ、このストップ面は下方レールに配置された端ストップと協働する。快適性調節領域からイージーエントリ領域への下方レールの移動のために、端ストップ要素は可動式ストップ面から離れるようにシフト可能である。
【0004】
また、US 2012/0168595 A1にも一般的な車両座席が開示されており、この車両座席は端ストップを有する下方レール及びストップ要素を有する上方レールを備える。この場合、ストップ要素及び端ストップが快適性調節領域を制限する。ストップ要素は軸周りに枢動することによりシフト可能であり、上方レールは快適性調節領域を超えてイージーエントリ領域に移動可能である。
【0005】
DE 10 2004 049 404 A1には、快適性調節領域に及びイージーエントリ領域に調節可能な車両座席が開示されている。この場合、上方レールにカムが取り付けられ、快適性調節領域を制限するためにこのカムが下方レールに固定されるストップストリップと協働する。
【0006】
DE 10 2011 011 766 A1には、快適性調節領域に及びイージーエントリ領域に調節可能な車両座席が開示されている。この場合、快適性調節領域は、離れるようにシフト可能なストップ部により制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2012/084116A1
【特許文献2】DE 10 2004 049 404 A1
【特許文献3】DE 100 20 923 A1
【特許文献4】US 2012/0168595 A1
【特許文献5】DE 10 2011 011 766 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、導入部で言及されたタイプの車両座席を改良することであり、特に、上方レールと下方レールとの間の空洞に設置される障害物と上方レールに固定されるストップ要素の衝突を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する車両座席によって達成される。
【0010】
個別に又は互いに組み合わせて使用され得る有利な実施形態によって、従属請求項の主題が形成される。
【0011】
長手方向に調節可能な車両座席は、概して、快適性調節領域内で長手方向に移動可能に案内できる下方レール及び上方レール、並びに下方レールに取り付けられる端ストップであって、上方レールに取り付けられるストップ要素と協働することにより快適性調節領域を定める端ストップを備え、ストップ要素を離すことにより、上方レールは、快適性調節領域を超えてイージーエントリ領域に移動可能であり、ストップ要素は、枢動軸周りで枢動可能なストップモジュールの一部である。
【0012】
本発明によれば、この場合、ストップモジュールは偏向要素を備え、ストップモジュールは、ストップ要素が離されていない場合に、上方レールと下方レールとの間の空洞に位置するネジ頭との接触に応じて垂直方向に上向きに移動するように構成され、ストップ要素は、端ストップに到達すると端ストップと係合することが規定される。
【0013】
結果として、ストップ要素は、障害物、特に、上方レールと下方レールとの間の空洞に設けられるネジ頭を乗り越えるが、それにもかかわらず快適性調節領域を制限するために下方レールに取り付けられる端ストップと協働する。
【0014】
ストップ要素は、有利に、フック形状に構成される各々1つのストップ領域により偏向要素を両側で取り囲む。結果として、横断方向においてストップモジュールは鏡面対称に設計され、それにより端ストップに作用するときに発生する力が均一に分散される。
【0015】
本発明の有利な実施形態によれば、端ストップは、横断方向に互いに対してオフセットして配置される2つのストップアーム42を有し、それらの間に溝穴が形成される。結果として、横断方向において端ストップは鏡面対称に構成され、それによりストップ要素に作用するときに発生する力が均一に分散される。
【0016】
好ましくは、ストップ要素が離される場合、偏向要素は、端ストップに到達すると端ストップの溝穴を貫通する。
【0017】
ストップモジュールは、好ましくは、ストップ要素を起動する、即ち離すために上方レールを貫通する作動要素を有する。
【0018】
好ましくは、ストップモジュールはロッカー(rocker)の形態で設計され、偏向要素及びストップ要素は枢動軸の一方に配置され、作動要素は枢動軸の他方に配置される。
【0019】
作動要素を押すことにより、ストップモジュールが枢動軸周りで枢動され、それによりストップ要素が離される場合に、ストップモジュールの起動は比較的単純である。
【0020】
本発明の有利な展開によれば、圧力により作動要素を起動するために、起動要素の制御アームに配置されるランプ要素が設けられ、このランプ要素は、制御アームに対して傾斜するように延び且つ作動要素に作用する外形を有する。
【0021】
好ましくは、バネ要素も設けられ、このバネ要素は作動要素の解放後に枢動軸周りに戻るようにストップモジュールを枢動させる。
【0022】
偏向要素は、有利に、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように延びる前方傾斜部、及び/又は垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように延びる後方傾斜部を有する。
【0023】
偏向要素は、好ましくは、ストップ要素よりも垂直方向に深く延びる。従って、偏向要素のみがネジ頭と接触し、その間ストップ要素はネジ頭から離れたままである。
【0024】
ストップモジュールの突起は、偏向要素及びストップ要素が一体的に構成される場合に比較的単純である。
【0025】
好ましくは、この場合、偏向要素、ストップ要素及び作動要素は一体的に構成される。
【0026】
本発明は、以下、図面に示される有利な例示的実施形態を参照してより詳細に説明される。しかしながら、本発明はこの例示的な実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】後方調節位置における車両座席の長手方向調節器のレールペアの側部断面図を示す。
【
図2】中央調節位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図3】前方調節位置におけるレールペアの斜視部分断面図を示す。
【
図4】前方調節位置におけるレールペアの更なる斜視部分断面図を示す。
【
図5】固定状態にある前方調節位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図6】解放状態にある前方調節位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図7】前端位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図8】移動位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図9】イージーエントリ位置におけるレールペアの側部断面図を示す。
【
図10b】修正された実施形態による端ストップの斜視図を示す。
【
図13】イージーエントリ機能が起動されていないときの制御要素を有するレールペアの側部断面図を示す。
【
図14】イージーエントリ機能が起動されているときの制御要素を有するレールペアの側部断面図を示す。
【
図15】本発明による車両座席の構造の外側からの斜視図を示す。
【
図16】本発明による車両座席の構造の内側からの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願の3ドア自動車用の車両座席1、この場合、前部座席は、座部2及びこれに取り付けられ且つ傾斜が調節可能な背もたれ10を有する。しかしながら、車両座席は、特に、3つの座席列及び7つの後部座席を有する5ドア自動車における後部座席であってもよい。
【0029】
車内の車両座席1の配置及びその通常の進行方向は、以下に用いられる方向情報を定義する。この場合、地面に直角に向いた方向が、以後、垂直方向と記される。また、垂直方向に対して直角且つ進行方向に対して直角な方向が、以後、横断方向と記される。
【0030】
自動車の車両フロアに接続された2つの下方レール5及び2つの上方レール3を有する長手方向調節器によって、車両座席1は、快適領域内で長手方向に調節可能である。これは、背もたれ10と共に座部2が、この場合、略進行方向に対応する長手方向に調節可能であることを意味する。このため、上方レール3の各々は、長手方向に並行に延びる下方レール5の1つにそれぞれ移動可能に案内される。
【0031】
2つの上方レール3の各々は、何れも、関連する下方レール5と座席レールペアを形成する。従って、長手方向調節器は、横断方向に互いに対してオフセットして、互いに平行に延びて配置される2つの座席レールペアを備える。上方レール3及び下方レール5は、相互に互いを取り囲み、何れの場合も、上方レール3と下方レール5との間に空洞がもたらされる。
【0032】
このような空洞に配置される各固定装置14によって、2つの上方レール3の各々は、各下方レール5に固定可能である。この場合、進行方向において車両座席1の前方に配置される解除レバー16によって固定装置14は解除可能であり、車両座席1は長手方向に移動可能になる。
【0033】
この場合、2つの座席レールペアは互いに鏡面対称に構築される。従って、以下では、長手方向調節器の1つだけの座席レールペアの詳細が与えられる。
【0034】
下方レール5は、締め付けネジ20によって、特に、車両のフロア構造に固定される。この場合、その胴部により、締め付けネジ20は、垂直方向に下方レール5を貫通して、車両のフロア構造におけるネジ山にねじ込まれる。締め付けネジ20は、胴部より上の垂直方向に位置するネジ頭22を有し、上方レール3と下方レール5との間の空洞に突出する。締め付けネジ20は、長手方向に下方レール5の後部領域に位置する。
【0035】
固定装置14は、垂直方向に移動可能な固定プレート18を備え、この固定プレートは横断方向に突出する固定歯を有する。固定プレート18は、図示されていないが、固定バネによって上方レール3に取り付けられる。この場合、固定バネは、固定プレート18を垂直方向に上向きに引く。
【0036】
固定プレート18に円筒解除ピン19が取り付けられ、この解除ピンの中央軸が垂直方向に延びる。解除ピン19は、解除ピン19のための案内部を示す上方レール3における開口を貫通する。
【0037】
下方レールは、垂直方向に下向きに、開放切り欠き7を有する。レールペアの固定状態において、固定プレート18は上方位置にあり、固定プレート18の固定歯は切り欠き7に係合する。解除過程において、解除レバー16により作動される解除要素17が解除ピン19を下方に押し、固定プレート18も下向きに下方位置へと押される。結果として、固定プレート18の固定歯は、切り欠き7から外れて下向きに移動する。次に、レールペアは解除されて、上方レール3は、下方レール5に対して快適性調節領域内で長手方向に移動可能になる。
【0038】
更に、車両座席1はイージーエントリ機能を有する。後部座席への進入を容易にするために、上方レール3は、下方レール5に対して快適領域を超えてイージーエントリ領域へと前方に移動されてもよい。イージーエントリ機能は、操作レバー8を作動させることにより起動される。
【0039】
長手方向に後部領域において、特に、固定装置14の後方に、ストップモジュール30が、上方レール3に、及び略全体的に上方レール3と下方レール5との間の空洞に取り付けられる。ストップモジュール30は、この場合、ロッカーの形態に構成され、横断方向に延びる枢動軸S周りを枢動可能である。この枢動軸Sは、円筒軸受けピン38により定義され、これは上方レール3に固定される保持プレート28に取り付けられる。
【0040】
保持プレート28は、上方レール3と下方レール5との間の空洞内に設けられ、略U字形状の輪郭を有している。この輪郭の底部が水平に延び、上方レール3に固定される。垂直方向に下向きに延びる2つの肢が底部から直角に突出する。
【0041】
軸受けピン38は、そのために設けられている保持プレート28の肢の穴に取り付けられる。軸受けピン38の取り付けに加えて、保持プレート28は、上方レール3を補強する役割を更に果たす。しかしながら、保持プレート28は省略されてもよく、軸受けピン38は上方レール3に直接固定されてもよい。
【0042】
長手方向に前方に、ストップモジュール30は、そのために設けられている開口を通じて上方レール3を上向きに貫通する作動要素32を有する。長手方向に後方に、ストップモジュール30は、偏向要素34及びストップ要素36を有する。偏向要素34は、横断方向にストップ要素36内に中央に配置される。従って、ストップ要素36は、フック形状に構成される各々1つのストップ領域により両側で偏向要素34を取り囲む。
【0043】
偏向要素34は、軸受けピン38に面する側に、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように、上向き且つ前方に延びる前方傾斜部を有する。偏向要素34は、軸受けピン34から離れた側に、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して傾斜するように、上向き且つ後方に延びる後方傾斜部を有する。偏向要素34は、垂直方向に、少なくともストップ要素36のストップ領域まで、この場合、それよりも深く延びる。
【0044】
操作レバー8を作動させて座部2に対して背もたれ10を枢動させるとき、作動要素32は、起動要素50により垂直方向に下向きに押される。この場合、ストップモジュール30は、軸受けピン38により定義される枢動軸S周りに枢動運動を行い、それにより偏向要素34及びストップ要素36は上向きに動く。操作レバー8を作動させて座部2に対して背もたれ10を枢動させるとき、固定装置14も解除される。
【0045】
作動要素32が解放されると、バネ要素は、図示されていないが、枢動軸S周りでストップモジュール30を枢動させて、最初の位置に戻る。この場合、作動要素32は上向きに動き、偏向要素34及びストップ要素36は下向きに動く。バネ要素は、好ましくは、トーションバネとして構成され、軸受けピン38の周囲に配置される。しかしながら、バネ要素の他の実施形態、例えば、ぜんまい又は脚バネ(leg spring)も考えられる。
【0046】
端ストップ40が長手方向に締め付けネジ20の前方において下方レール5に配置される。端ストップ40は、横断方向に互いに対してオフセットして配置され且つ互いに平行に延びる2つのストップアーム42と共に、下方レール5に固定される底プレート46を備える。2つのストップアーム42の間に溝穴44が形成される。このような端ストップ40は、
図10aに示されている。
【0047】
図10bでは、修正された実施形態による端ストップ40bが示されており、この端ストップは断面がU字形状の構造を有する。この場合、U字形状の断面の底部が下方レール5に固定される底プレート46を形成し、U字形状の断面のアーム部がストップアーム42を形成する。この場合、ストップアーム42は、例えば、垂直方向に上向きに互いに対して平行に、又は互いに対して僅かに傾斜し、且つ垂直方向に対して傾斜するように延びる。溝穴44は、2つのストップアーム42の間に形成される。
【0048】
この場合、端ストップ40の底プレート46は下方レール5の下に配置され、ストップアーム42は、下方レール5にそのために設けられる開口を通じて、上方レール3と下方レール5との間の空洞の中に突出する。この場合、ストップアーム42は、底プレート46を起点として、垂直方向に対して傾斜し且つ長手方向に対して上向きにそして後方に傾斜するように延びる。
【0049】
端ストップ40のストップアーム42は、この場合、下降位置にあっても、固定プレート18がまだストップアーム42より上に位置するのに十分な分だけ、垂直方向に上向きに延びる。従って、下方レール5に対する上方レール3の移動の間に、ストップアーム42と固定プレート18の衝突が確実に回避される。
【0050】
図1に示された視点では、レールペアは、後方調節位置における快適領域に位置している。ストップモジュール30の偏向要素34は、この場合、長手方向の締め付けネジ20のネジ頭22の後方に位置している。イージーエントリ機能は起動されておらず、固定装置14は解除されている。
【0051】
図1に示された後方調節位置から開始して、車両座席1は前方に押される。同時に、偏向要素34の前方傾斜部が、ストップモジュール30に対する障害物となる締め付けネジ20のネジ頭22に接触する。偏向要素34の前方傾斜部は、この場合、ネジ頭22に沿ってスライドし、それにより偏向要素34は上向きに移動する。ストップモジュール30は、同時に、枢動軸S周りにバネ要素の力とは反対に枢動される。
【0052】
図2では、偏向要素34が締め付けネジ20のネジ頭22上に位置する中央調節位置が示されている。
【0053】
図2に示された中央調節位置から開始して、車両座席1は更に前方に押される。同時に、偏向要素34の後方傾斜部が、締め付けネジ20のネジ頭22と接触する。偏向要素34の後方傾斜部は、この場合、ネジ頭22に沿ってスライドし、それにより偏向要素34は、バネ要素の力の助けで、下向きに移動する。この場合、ストップモジュール30は、枢動軸S周りにバネ要素の力で枢動する。
【0054】
次に、レールペアは、
図3〜6に示されている前方調節位置に到達し、そこで偏向要素34は長手方向に締め付けネジ20のネジ頭22の前方に位置する。イージーエントリ機能は起動されていない。
図5の視点では、固定装置14は固定されている。固定プレート18は、上昇位置に位置している。
【0055】
車両座席1を更に前方に押すために、
図5の視点から開始して、
図6に示されるように最初に固定装置14が解除される。この場合、固定プレート18は、下降位置に移動する。次に車両座席1が更に前方に押されると、レールペアは、前方への快適領域を制限する
図7に示された前端位置に到達する。この場合、ストップモジュール30は、端ストップ40と接触する。
【0056】
図7に示されている前端位置において、偏向要素34は端ストップ40の溝穴44を貫通し、それと同時にフック形状の構成を有するストップ要素36のストップ領域が端ストップ40のストップアーム42により支承される。ストップ要素36のストップ領域及び端ストップ40のストップアーム42は、この場合、互いに自己固定式に接触している。従って、下方レール5に対する上方レール3の更なる移動は不可能である。
【0057】
イージーエントリ機能を起動するために、快適領域内の位置で、例えば、
図7に示された前端位置で又は
図5に示された前方調節位置で又は
図2に示された中央調節位置で又は
図1に示された後端位置で、操作レバー8が作動される。結果として、固定装置14の解除ピン19及びストップモジュール30の作動要素32が下向きに押され、それにより偏向要素34及びストップ要素36が上向きに移動して、固定装置14が解除される。
【0058】
この場合、ストップ要素36は、フック形状のストップ領域が垂直方向に端ストップ40のストップアーム42の上に位置するほど上向きに十分に遠くに移動する。結果として、上方レール3は下方レール5に対して更に前方に動かされてもよく、レールペアはイージーエントリ領域に入る。
【0059】
端ストップ40のストップアーム42及びストップモジュール30のストップ要素36の外形は、下方レール5に対する上方レール3の前方移動に関して、自己固定式の接触が前端位置に存在するように設計される。しかしながら、前端位置において、ストップモジュール30の枢動運動が枢動軸S周りで可能であり、それによりストップ要素36はストップアーム42に対して上向きに移動する。
【0060】
図8では、レールペアの移行位置が示されており、そこではストップモジュール30の偏向要素34及びストップ要素36が垂直方向に端ストップ40のストップアーム42の真上に位置している。
【0061】
上方レール3は、今度は、
図9に示されたレールペアのイージーエントリ位置に到達するまで下方レール5に対して更に前に動かされてもよい。イージーエントリ位置において、上方レール3に構成されるカウンタストップ26が下方レール5に構成される固定ストップ24に突き当たり、それにより上方レール3の前進経路が制限される。
【0062】
カウンタストップ26の代わりに、下方レール5に対する上方レール3の前進経路を制限するために、ストップモジュール30のストップ要素36がイージーエントリ位置において固定ストップ24を支承してもよい。この場合、固定ストップ24は記載されている端ストップ40又は修正された実施形態による端ストップ40bに類似の設計であり、そこではストップ要素36のフック形状のストップ領域が端ストップ40のストップアーム42を超えることができない程度に固定ストップ24が垂直方向に上向きに十分に遠くに延びている。
【0063】
この場合、ストップモジュール30は一体的に構成される。例えば、ネジ頭22等の障害物上をスライドする剛性の偏向要素34の代わりに、回転又は転動要素、例えば、ローラがストップモジュールに設けられてもよい。
【0064】
この例示的な実施形態では、イージーエントリ機能の起動は、ストップモジュールの作動要素32を垂直方向に下向きに押すことにより行われる。代替的に、例えば、ボーデンケーブルの形態の牽引要素が、偏向要素34上に又はストップ要素36上に配置されてもよい。この場合、イージーエントリ機能の起動は、垂直方向に上向きに引くことにより実行されてもよい。
【0065】
この場合、端ストップ40は、別個の構成要素として構成されて、下方レール5に固定される。例えば、ストップアーム42が下方レール5の材料から外に延びて上方に曲げられることにより、端ストップ40を下方レール5と一体的に構成することも考えられる。
【0066】
イージーエントリ機能を起動し且つ座部2に対して背もたれ10を枢動させるために操作レバー8を作動させる場合、背もたれ10に回転に関して固定して接続されるカム58が、上方レールに固定され枢動可能に取り付けられたトランスミッションレバー56を作動させる。その結果として、トランスミッションレバー56は、同様に上方レールに枢動可能に取り付けられ且つ固定される起動要素50を作動させる。カム58、トランスミッションレバー56及び起動要素50の配置は、
図15の視点により開示される。
【0067】
起動要素50は、座部2に対して及び上方レール3に対して枢動ピン52周りで枢動可能であり、枢動ピン52から略半径方向に突出する制御アーム60を有する。制御アーム60にランプ(ramp)要素54が配置される。このランプ要素は、制御アーム60に対して傾斜するように延び、且つイージーエントリ機能を起動するとストップモジュール30の作動要素32に作用する外面形状を有する。この場合、ランプ要素54の外面形状は、湾曲するように設計される。
【0068】
図13及び
図14の視点では、この場合、残りの視点に対して修正された作動要素32が示されている。
図13及び
図14に示された作動要素32は、ランプ要素54と協働するために略進行方向に延びる追加舌部を有する。
【0069】
背もたれ10を枢動させてトランスミッションレバー56により起動要素50を作動させると、制御アーム60は枢動ピン52周りで枢動し、それによりランプ要素54は略垂直方向に下向きに動く。この場合、ランプ要素54は、下向きにストップモジュール30の作動要素32を押し、それに応じてストップモジュール30は、軸受けピン38により定義される枢動軸S周りで枢動運動を行う。
【0070】
解除レバー16は、上方レール3上の解除シャフト15周りで枢動可能に取り付けられ、解除シャフト15に回転に関して固定されて接続される。また、解除要素17も、解除シャフト15に回転に関して固定して接続される。解放レバー16を作動させると、解除要素17は、解除シャフト15周りで枢動され、その結果、解除ピン19を押し、それにより固定装置14が解除される。
【0071】
背もたれ10を枢動させてトランスミッションレバー56により起動要素50を作動させると、制御アーム60は、枢動ピン52周りで枢動し、それと同時に、結果として解除ピン19を押すことになる解除要素17を更に押して、それにより固定装置14は解除される。解除要素17は、
図13及び
図14の視点では示されていない。
【0072】
イージーエントリ機能を起動して、座部2に対して背もたれ10を枢動させるために操作レバー8を作動させると、それと同時に、ストップモジュール30が作動されて、固定装置14は解除される。
【0073】
先の説明、請求項及び図面に開示された特徴は、様々な実施形態で本発明を実現するために個別に及び組み合わせて重要性を有してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 車両座席
2 座部
3 上方レール
5 下方レール
7 切り欠き
8 操作レバー
10 背もたれ
14 固定装置
15 解除シャフト
16 解除レバー
17 解除要素
18 固定プレート
19 解除ピン
20 固定ネジ
22 ネジ頭
24 固定ストップ
26 カウンタストップ
28 保持プレート
30 ストップモジュール
32 作動要素
34 偏向要素
36 ストップ要素
38 軸受けピン
40 端ストップ
40b 修正された実施形態の端ストップ
42 ストップアーム
44 溝穴
46 底プレート
50 作動要素
52 枢動ピン
54 ランプ要素
56 移行レバー
58 カム
60 制御アーム
S 枢動軸
【国際調査報告】