(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-516734(P2016-516734A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】オートファジー誘導ペプチド類似体
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20160513BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20160513BHJP
A61K 47/48 20060101ALI20160513BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20160513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20160513BHJP
【FI】
C07K7/00
C07K7/06ZNA
A61K47/48
A61K37/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-504295(P2016-504295)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】US2014018467
(87)【国際公開番号】WO2014149440
(87)【国際公開日】20140925
(31)【優先権主張番号】61/803,095
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】レバイン,ベス・シー
(72)【発明者】
【氏名】ショージ−カワタ,サナエ
(72)【発明者】
【氏名】グリシン,ニック・ヴィー
(72)【発明者】
【氏名】キンチ,リサ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】リチタージ,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンス,アンジェラ・ディー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC26
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA42
4C084MA05
4C084ZC411
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA35
4H045BA40
4H045EA28
4H045FA33
(57)【要約】
オートファジー誘導化合物は、部分R
1およびR
2がそれぞれNおよびC末端と直に隣接している、ベクリン1ペプチドを含むオートファジー誘導ペプチドを含み、前記ペプチド残基の最大6つは置換されていてよく、R
1およびR
2は、自然な状態ではベクリン1残基と隣接しておらず、F270およびF274は、置換されていてもよく、連結していてもよい。該化合物を使用して、オートファジーを誘導することができる。
【選択図】なし
表訳
明細書
【表1】
表1.標的化突然変異誘発
ペプチド
配列
*配列番号
活性
野生型
突然変異体
特許請求の範囲
【表1】
ペプチド
配列
配列番号:
野生型
突然変異体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートファジー誘導化合物であって、
部分R1およびR2がそれぞれNおよびC末端と直に隣接している、ベクリン1残基270−278(VFNATFHIWHS;配列番号:01、残基2−10)またはこの残基のD−レトロ−インベルソ配列を含むオートファジー誘導ペプチドを含み、
前記残基の最大6つは置換されていてよく、
R1およびR2は、自然な状態では前記ベクリン1残基と隣接しておらず、F270およびF274は、置換されていてもよく、連結していてもよい、オートファジー誘導化合物。
【請求項2】
前記ペプチドが、
【表1】
から選択される非置換配列、
または前記ペプチドのD−レトロ−インベルソ配列を含む、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、形質導入ドメイン、ホーミングペプチドまたは血清安定剤を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、ジグリシンリンカー、特にジグリシン−T−Nリンカーを介して前記ペプチドと連結しているtatタンパク質形質導入ドメインである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R2がカルボキシルであるか、またはR2が、親和性タグもしくは検出可能な標識、特に蛍光標識を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
a)F270およびF274が、架橋性部分で置換されているおよび/もしくは連結しており、それぞれが、置換されていてもよい、ヘテロ低級アルキル、特に置換されていてもよい、ヘテロメチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択されてもよい追加のα−炭素置換を含んでもよい;または
b)F270およびF274が、ジスルフィド架橋を介して結合しているホモシステインで置換されて、環および尾部環状ペプチドを生成する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
F270およびF274の側鎖が、リンカー:
ラクタムペプチドを形成する−(CH2)nONHCOX(CH2)m−、
[ここで、Xは、CH2、NHまたはOであり、mおよびnは、整数1−4である];
エーテルペプチドを形成する−CH2OCH2CHCHCH2OCH2−;または
ステープルドペプチドを形成する−(CH2)nCHCH(CH2)m−
によって置きかえられている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
1から6つの残基が、アラニン置換されている;または
前記ペプチドが、置換:H275EおよびS279Dの少なくとも1つを含む;または
前記ペプチドが、1つ以上のD−アミノ酸、L−β−ホモアミノ酸、D−β−ホモアミノ酸もしくはN−メチル化アミノ酸を含む;または
前記ペプチドが、D−レトロ−インベルソ配列を含む、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
D−レトロ−インベルソ配列:
RRQRRKKKRGY−GG−DHWIEFTANFV(配列番号:08)
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記ペプチドが、アセチル化、アシル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、硫酸化またはグリコシル化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
N末端アセチル、ホルミル、ミリストイル、パルミトイル、カルボキシルもしくは2−フロシル基および/またはC末端ヒドロキシル、アミド、エステルもしくはチオエステル基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記ペプチドが環化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記ペプチドが、配列VWNATFHIWHD(配列番号:26)または該配列のD−レトロ−インベルソ配列DHWIHFTANWV(配列番号:30)を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物を、投与可能な単位剤形で含む、医薬組成物。
【請求項15】
オートファジーを誘導する方法であって、この誘導を必要とする人に、有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって認められた認可番号U54AI057156の下での政府支援により為された。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
出願人らは、2013年3月18日に出願された米国特許出願第61/803,095号明細書に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ベクリン1は、中央コイルドコイルドメインを持つ450アミノ酸タンパク質をコードする。ベクリン1は、N’末端内に、Bcl−2およびBcl−xL等の抗アポトーシス分子との結合を媒介するBH3のみのドメインを含有する。進化的に保存されたドメイン(ECD)と称される最も高度に保存された領域がアミノ酸244−337にわたっており、この領域は、Vps34との相互作用に重要である。ベクリン1の過剰発現は、オートファジーを誘導するために十分なものである。Furuya,et al.,Autophagy 1,46−52,2005;Pattingre,S.et al.Cell 122,927−39,2005.
本発明人らは、国際出願第PCT/US13/22350号においてオートファジー誘導ベクリン1ペプチドを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願第PCT/US13/22350号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Furuya,et al.,Autophagy 1,46−52,2005;Pattingre,S.et al.Cell 122,927−39,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、オートファジーを誘導するための方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、オートファジー誘導化合物であって、部分R
1およびR
2がそれぞれNおよびC末端と直に隣接している、ベクリン1残基270−278(FNATFHIWH;配列番号:01、残基2−10)またはこの残基のD−レトロ−インベルソ配列を含むオートファジー誘導ペプチドを含み、前記残基の最大6つは置換されていてよく、R
1およびR
2は、自然な状態ではベクリン1残基と隣接しておらず、F270およびF274は、置換されていてもよく、連結していてもよい、オートファジー誘導化合物である。
【0008】
特定の実施形態において、本発明は、主題オートファジー誘導化合物であって、
本明細書で開示される非置換構造を有するか、または前記残基の最大6つが置換されていてよく、2つのF残基がF
1およびF
2であり、置換されていてもよく、連結していてもよい、または該ペプチドのD−レトロ−インベルソ配列である;
R
1が、治療的安定性または該化合物の送達を促進する非相同部分である;
R1が、形質導入ドメイン、ホーミングペプチドまたは血清安定剤を含む;
R1が、ジグリシンリンカー、特にジグリシン−T−Nリンカーを介してペプチドと連結しているtatタンパク質形質導入ドメインである;
R
2がカルボキシルである;
R
2が、親和性タグもしくは検出可能な標識、特に蛍光標識を含む;
F270およびF274が、置換されているおよび連結している;
F270およびF274が、架橋性部分で置換されているおよび/もしくは連結しており、それぞれが、置換されていてもよい、ヘテロ低級アルキル、特に置換されていてもよい、ヘテロメチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択される追加のα−炭素置換を含んでもよい;
F270およびF274が、ジスルフィド架橋を介して結合しているホモシステインで置換されて、環および尾部環状ペプチドを生成する;
F270およびF274の側鎖が、リンカー:
ラクタムペプチドを形成する−(CH
2)nONHCOX(CH
2)m−[ここで、Xは、CH
2、NHまたはOであり、mおよびnは、整数1−4である];
エーテルペプチドを形成する−CH
2OCH
2CHCHCH
2OCH
2−;または
ステープルドペプチドを形成する−(CH
2)nCHCH(CH
2)m−
によって置きかえられている;
1から6つの残基が、アラニン置換されている;
ペプチドが、置換:H275EおよびS279Dの少なくとも1つを含む;
ペプチドが、1つ以上のD−アミノ酸、L−β−ホモアミノ酸、D−β−ホモアミノ酸もしくはN−メチル化アミノ酸を含む;
D−レトロ−インベルソ配列、特に、RRQRRKKKRGY−GG−DHWIEFTANFV(配列番号:08)を含む;
ペプチドが、アセチル化、アシル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、硫酸化またはグリコシル化されている;
N末端アセチル、ホルミル、ミリストイル、パルミトイル、カルボキシルもしくは2−フロシル(furosyl)基および/またはC末端ヒドロキシル、アミド、エステルもしくはチオエステル基を含む;ならびに/または
ペプチドが環化されている、
主題オートファジー誘導化合物である。
【0009】
本発明は、主題化合物を、投与可能な単位剤形で含む医薬組成物、および、オートファジーを誘導する方法であって、この誘導を必要とする人に、有効量の主題化合物または組成物を投与するステップを含む方法も提供する。
【0010】
本発明は、列挙されている特定の実施形態のすべての組み合わせを、各組み合わせが入念に別個に列挙されているかの如く包含する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様において、本発明は、オートファジー誘導化合物であって、部分R
1およびR
2がそれぞれNおよびC末端と直に隣接している、ベクリン1残基270−278(FNATFHIWH;配列番号:01、残基2−10)またはこの残基のD−レトロ−インベルソ配列を含むオートファジー誘導ペプチドを含み、前記残基の最大6つは置換されていてよく、R
1およびR
2は、自然な状態ではベクリン1残基と隣接しておらず、F270およびF274は、置換されていてもよく、連結していてもよい、オートファジー誘導化合物である。
【0012】
実施形態において、ペプチドは、部分R
1およびR
2がそれぞれNおよびC末端と直に隣接している、以下の表1の非置換変異配列またはこの配列のD−レトロ−インベルソ配列を含み、ここで、R
1およびR
2は、自然な状態ではベクリン1残基と隣接していない。
【0013】
ペプチドおよび化合物活性は、定義された境界内の多様な追加の部分、隣接残基および置換に寛容である。ペプチドおよび化合物活性は、骨格修飾および置きかえ、側鎖修飾ならびにNおよびC末端修飾にも寛容であり、いずれもペプチド化学の分野において慣例的である。
【0014】
ペプチド結合の化学的修飾を使用して、酵素媒介性加水分解に対する代謝的安定性の増大を提供することができ、例えば、トリフルオロエチルアミン等のペプチド結合置きかえ(ペプチドサロゲート)は、代謝的により安定なおよび生物学的に活性なペプチド模倣薬を提供することができる。
【0015】
ペプチド骨格を拘束するための修飾は、例えば、保護されたCおよびN末端によりエクソペプチダーゼに対する代謝的安定性の強化を呈することができる環状ペプチド/ペプチド模倣薬を包含する。環化のための好適な技術は、Cys−Cysジスルフィド架橋、ペプチドマクロラクタム、ペプチドチオエーテル、平行および逆平行環状二量体等を包含し、例えば、PMID22230563(ステープルドペプチド)、PMID23064223(ペプチド環化のためのクリックバリアント(click variants)の使用)、PMID23133740(環状ペプチドのPK特性を最適化すること:側鎖置換の効果)、PMID:22737969(腸透過性のための主要な骨格モチーフの同定、PMID12646037(2−アミノ−d,l−ドデカン酸(Laa)をN末端(LaaMII)とカップリングすることおよびAsnをこのリポアミノ酸で置きかえることによる環化)を参照されたい。
【0016】
特定の実施形態において、F270およびF274は、F270およびF274の側鎖がリンカーによって置きかえられている場合等、置換されているおよび連結している。例えば、これらの残基は、ジスルフィド架橋を介して結合しているホモシステインで置換されて、環および尾部環状ペプチドを生成することができる。加えて、これらの残基の側鎖は、置換および架橋されて、リンカー、例えば、ラクタムペプチドを形成する−CH
2)nONHCOX(CH
2)m−[ここで、Xは、CH
2、NHまたはOであり、mおよびnは、整数1−4である];エーテルペプチドを形成する−CH
2OCH
2CHCHCH
2OCH
2−;ステープルドペプチドを形成する−(CH
2)nCHCH(CH
2)m−等を形成することができる。リンカーは、追加の原子、ヘテロ原子または他の官能基を組み込んでよく、典型的には、F270およびF274における反応性側鎖から生成される。架橋性部分は、置換されていてもよい、ヘテロ低級アルキル、特に置換されていてもよい、ヘテロメチル、エチル、プロピルおよびブチル等の追加のα−炭素置換(substititions)を包含してもよい。例示的な架橋性部分は、次のものを包含する:
【化1】
【0017】
他の好適な修飾は、アセチル化、アシル化(例えば、リポペプチド)、ホルミル化、アミド化、リン酸化(Ser、Thrおよび/またはTyrに対する)等を包含し、これらの修飾を使用して、ペプチドバイオアベイラビリティおよび/またはキレート剤(例えば、DOTA、DPTA)の活性、グリコシル化、スルホン化、組み込み等を改善させることができる。PEG化は、ペプチド溶解度、バイオアベイラビリティ、インビボ安定性を増大させるおよび/または免疫原性を減少させるために使用することができ、多様な異なるPEG:HiPEG、分枝および分岐PEG、遊離可能なPEG;ヘテロ二官能性PEG(末端基N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステル、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミンおよびカルボン酸を持つ)等を包含する。
【0018】
好適な末端修飾は、N末端アセチル、ホルミル、ミリストイル、パルミトイル、カルボキシルおよび2−フロシル、ならびにC末端ヒドロキシル、アミド、エステルおよびチオエステル基を包含し、これらの末端修飾により、ペプチドは、天然タンパク質における荷電状態をより厳密に模倣し、および/またはエクソペプチダーゼによる分解に対してより安定となることができる。
【0019】
ペプチドは、D−アミノ酸、L−β−ホモアミノ酸、D−β−ホモアミノ酸、N−メチル化アミノ酸等を包含する非定型または非天然アミノ酸を含有していてもよい。
【0020】
多種多様な隣接部分R
1および/またはR
2、例えば、親和性タグ、形質導入ドメイン、ホーミングもしくは標的化部分、標識または他の官能基等を、バイオアベイラビリティおよび/もしくは活性を改善させるためならびに/または追加の特性を提供する等のために用いてよい。
【0021】
そのような部分の1つの有用なクラスは、タンパク質由来(例えば、tat、smac、pen、pVEC、bPrPp、PIs1、VP22、M918、pep−3);キメラ(例えば、TP、TP10、MPGΔ)または合成(例えば、MAP、Pep−1、オリゴArg)細胞透過性ペプチド等の細胞の透過度または取り込みを容易にする形質導入ドメインを包含し、例えば、「Peptides as Drugs:Discovery and Development」,Ed.Bernd Groner,2009 WILEY−VCH Verlag GmbH&Co,KGaA,Weinheim,esp.Chap 7:「The Internalization Mechanisms and Bioactivity of the Cell−Penetrating Peptides」,Mats Hansen, Elo Eriste,and Ulo Langel,pp.125−144を参照されたい。
【0022】
別のクラスは、RGD−4C(CCDCRGDCFC;配列番号:04)、NGR(CCNGRC;配列番号:05)、CREKA、LyP−1(CGNKRTRGC;配列番号:06)、F3、SMS(SMSIARL;配列番号:07)、IF7およびH2009.1(Li et al.Bioorg Med Chem.2011 Sep 15;19(18):5480−9)等のホーミング生体分子、特にがん細胞ホーミングまたは標的化生体分子であり、ここで、好適な例は、当技術分野、例えば、例えばHoming peptides as targeted delivery vehicles,Pirjo Laakkonen and Kirsi Vuorinen,Integr.Biol.,2010,2,326−337;Mapping of Vascular ZIP Codes by Phage Display,Teesalu T,Sugahara KN,Ruoslahti E.,Methods Enzymol.2012;503:35−56において公知である。
【0023】
そのような部分の他の有用なクラスは、PEG、オリゴ−N−メトキシエチルグリシン(NMEG)、アルブミン、アルブミン結合タンパク質または免疫グロブリンFcドメイン等の安定剤;免疫タグ、ビオチン、レクチン、キレート剤等の親和性タグ;光学タグ(例えば、Au粒子、ナノドット)、キレートランタニド、蛍光染料(例えば、FITC、FAM、ローダミン)、FRETアクセプター/ドナー等の標識を包含する。
【0024】
これらの部分、タグおよび官能基は、ポリグリシン、ε−アミノカプロン酸等、当技術分野で公知のリンカーまたはスペーサーを介して、ペプチドとカップリングすることができる。
【0025】
化合物および/またはペプチドを、プロドラッグ等の潜在性または活性化可能形態として提示してもよく、ここで、活性ペプチドは代謝的に遊離しており、例えば、化合物)のアシルオキシアルコキシプロ部分(プロドラッグ1)または3−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−ジメチルフェニル)−3,3−ジメチルプロピオン酸プロ部分(プロドラッグ2)を用いて調製された環状プロドラッグからの直鎖ペプチドの放出である。
【0026】
特定の実施形態は、別個に説明されているかのように特定の実施形態のすべての組み合わせを包含し、例えば、ペプチドがT−NでN末端と隣接しており、TによってC末端と隣接している場合、第一の部分は、ジグリシンリンカーを介してペプチドと連結しているtatタンパク質形質導入ドメインであり、ペプチドがT−NでN末端と隣接しており、TによってC末端と隣接している場合、第一の部分は、マレイミド−PEG(3)リンカーを介してペプチドと連結している、H2009.1として公知の四量体インテグリンα(v)β(6)結合ペプチドである。
【0027】
別の態様において、本発明は、オートファジーを誘導する方法であって、この誘導を必要とする人に、有効量の主題化合物または組成物を投与するステップを含む方法を提供する。応用は、オートファジーの強化を必要とする人を広く包括し、ならびに、細胞内病原体による感染症、神経変性疾患、がん、心筋症および老化を包含する、オートファジーの上方調節が治療的に有益である疾患および病理を包含する。
【0028】
オートファジーは、生化学的に(Atg8−PEもしくはLC3−IIの生成またはp62の分解を評価することによって)または顕微鏡的に(例えば、蛍光的にタグ付けしたAtg8またはLC3の局在パターンを観察することによって)を包含する、本明細書で開示および/または例示されているもの等の慣例的なアッセイによって、直接的に、間接的にまたは推論的に検出することができる。
【0029】
本明細書に記述されている実施例および実施形態は、例証のみを目的としたものであること、ならびに、種々の修正または該修正を踏まえた変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるであろうことが理解される。本明細書において引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、これらの中の引用を包含し、あらゆる目的のために、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
[実施例]
本発明人らは、ベクリン1 ECD構造を、合理的設計のためのおよびベクリン1ペプチドを治療薬として最適化するための基礎として使用した。
【0031】
Atg6/ベクリン1オルソログの配列アラインメントは、Tat−ベクリン1ペプチドのオートファジー誘導活性に必要とされる、該ペプチド内の2つの保存された芳香族残基(F270およびF274)を明らかにした[1]。ベクリン1 ECD構造にマップされた場合、これらの芳香族側鎖は、T型形状で相互作用し、介在残基を表面が露出したループに位置づけるのに役立つ。本発明人らは、芳香族残基がTat−ベクリン1ペプチドにおいて類似の役割を果たし、故に、該ペプチドの構造的安定性に寄与すること、およびこの芳香族相互作用をより恒久的な化学結合で置きかえることが立体配座の安定性をさらに改善するはずであることを推論した[2]。例えば、2つの芳香族を、天然側鎖と同様の長さを呈するホモシステインで置きかえてよく、環化して、安定化した環および尾部ペプチド構造を形成することができる。ペプチドホルモンバソプレッシンの6アミノ酸環および3アミノ酸尾部構造[3]またはRNAポリメラーゼ阻害ペプチドミクロシンの8アミノ酸環および13アミノ酸尾部構造[4]等、同様の生物学的に活性な環状ペプチド構造が自然界において存在する。
【0032】
オートファジー誘導活性に必要とされるベクリン1ペプチドの成分をさらに評価するために、一連のより短いペプチドを開発した。活性は、p62(オートファジーによって分解されたタンパク質)のウエスタンブロット検出およびLC3−IからLC3−II(LC3の脂質化された(lipidated)オートファゴソーム会合型)への変換のウエスタンブロット検出を包含する、生化学的オートファジーアッセイによって測定した。10ミコモル濃度のTat−GG−VFNATFEIWHD(配列番号:09)は、10ミコモル濃度のTat−ベクリン1化合物と比較して増大したp62分解および増大したLC3−II変換をもたらし、以下のShoji−Kawata et al.(2013)を参照されたい。
【0033】
Tat−ベクリン1ペプチドは、2つのN末端ベクリン1アミノ酸を失うことに耐えられるが、第三のN末端残基の除去とともに効能を失う。2つの必要とされる構造的残基(F270およびF274)は、活性を決定づけ得る表面ループを形成するベクリン1ペプチドのN末端半分を構成する。このN末端半分に対応するTAT融合を、単独でおよびC末端半分をトランス付加して試験した。これらのペプチドも該ペプチドの組み合わせも、オートファジーを誘導することができなかった。この活性の欠如は、N末端芳香族安定化ループに加えてC末端の何らかの成分の必要性を示唆している。ECD構造において、Dの後のC末端残基(溶解度について変異したS279に対応する)は大部分が埋もれており、相互作用面に直接的に寄与する可能性は低い。したがって、ベクリン1ペプチドからのこれらの5つのC末端残基の欠落は、このようにして試験したオートファジーの最も強力な誘導因子を産出した。最小ペプチドの表面成分は、1)N末端V2)芳香族介在NATおよび2)C末端WHを包含する。これらの残基は、ECDを模倣しているペプチドにおいて結合表面に寄与すると推論され、ペプチドによるオートファジーの誘導に必要とされる。
【0034】
本発明人らは、進化の過程で置換パターンに基づいて重要であることが予測されるアミノ酸の標的化突然変異誘発を使用した[PMID 8609628;15037084]。このアプローチは、機能部位の活性を修飾する[PMID 20385837]および機能を選択的にブロックする[PMID 16280323]点突然変異体を設計するために成功裏に適用されてきた。本発明人らは、同様に、各位置における一連の3または4つの異なる突然変異を使用して、標準的な遷移マトリックスに基づく保存的から非保存的までの両方の置換[PMID 1438297]を、最小ペプチドにおける主要な結合残基を効率的に精密に記すために陰性対照ほど重要でないことが予測される残基への突然変異を使用して、調査する。効能を強化するためおよび活性決定因子を同定するために、本発明人らは、次第に保存的でなくなる置換、例えば、V269からI、L、M次いでA、またはI276からV、L、F等を介して、残基を次第に無秩序にすることができる。本発明人らは、各残基を1つずつ系統的に変化させるためのスキャニング突然変異誘発も使用する。
【0035】
F270およびF274は、介在残基の配座柔軟性を制限するようにおよび結合のエントロピーコストを削減するように機能する。本発明人らは、標準的な固相ペプチド合成を介して、多数のより化学的に安定なリンカーを調製した。例えば、リジンによるF270のおよびアスパラギン酸またはグルタミン酸残基によるF274の置きかえは、徐々に大きくなる環サイズの大環状ラクタムペプチドの合成を可能にする。さらに一層化学的に安定な結合は、閉環メタセシス戦略を介して実現することができ、ここで、市販の非天然アミノ酸に由来する末端アルケンハンドルは、環化のための化学ハンドルを供与する。この後者の炭素−炭素ベースの環化様式は、多くの場合、ペプチド「ステープリング」と呼ばれ、広範に総説されている(PMID 22230563)。骨格「ステープル」の利点は、炭素−炭素結合のタンパク質分解的切断に対する感受性の低減である。[3+2]付加環化反応に由来する「クリック」バリアントを、ペプチド環化に使用してもよい(PMID 23064223)。
【0036】
これらの種々の環化戦略は、ベクリンペプチドの生物活性配座を強いて、環化されていないペプチドと比べて細胞透過性を増大させるために使用され得る。ペプチド配座は、細胞に浸透する巨大分子の能力に著しく影響を及ぼすことができる(PMID:23133740)。特に、骨格修飾は、細胞透過性に対して劇的な影響を有し得、環状ペプチドの経口投与の機会を潜在的に作成する(PMID 22737969およびPMID 12646037)。アミド加水分解をさらに限定する(PMID 23382963)ために、レトロ−インベルソペプチド戦略と組み合わせてもよく、これらの組成物は、開示化合物をペプチド治療薬として使用することができる。
【表1】
【0038】
*HIV TAT由来の11アミノ酸PTDおよびジグリシンリンカーは収載されておらず、このことはすべてのペプチドについて同じである。突然変異体17および該突然変異体の誘導体が最も活性であり、活性は、対応するD−レトロ−インベルソ配列(例えば、突然変異体30)により保持される。活性を、上述した通り、オートファジー誘導活性として測定した。
【0039】
参考文献
[1]S.Shoji−Kawata,R.Sumpter,M.Leveno,G.R.Campbell,Z.Zou,L.Kinch,A.D.Wilkins,Q.Sun,K.Pallauf,D.MacDuff,C.Huerta,H.W.Virgin,J.B.Helms,R.Eerland,S.A.Tooze,R.Xavier,D.J.Lenschow,A.Yamamoto,D.King,O.Lichtarge,N.V.Grishin,S.A.Spector,D.V.Kaloyanova,B.Levine,Identification of a candidate therapeutic autophagy−inducing peptide,Nature,494 201−206,2013.
[2]A.Bryan,L.Joseph,J.A.Bennett,H.I.Jacobson,T.T.Andersen,Design and synthesis of biologically active peptides:a’tail’of amino acids can modulate activity of synthetic cyclic peptides,Peptides,32 2504−2510.
[3]J.P.Rose,C.K.Wu,C.D.Hsiao,E.Breslow,B.C.Wang,Crystal structure of the neurophysin−oxytocin complex,Nat Struct Biol,3(1996)163−169.
[4]K.J.Rosengren,R.J.Clark,N.L.Daly,U.Goransson,A.Jones,D.J.Craik,Microcin J25 has a threaded sidechain−to−backbone ring structure and not a head−to−tail cyclized backbone,J Am Chem Soc,125(2003)12464−12474.
【国際調査報告】