(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本明細書に記載の治療法は、様々な異なるがん細胞型および対象のがん状態に対して選択的に致死性であり得る。本明細書に記載の併用療法は、選択的致死性が化学療法、特に疾患がNQO1のレベル上昇を伴う場合に有益である、疾患の管理、処置、コントロール、または補助処置のために有用であり得る。
がん性細胞を有する患者のがん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害するための、a)塩基除去修復(BER)酵素阻害剤、b)ポリ(ADP-リボシル)ポリメラーゼI(PARP1)阻害剤、またはc)AP塩基修飾薬と組み合わせての、NQO1生体内活性化可能薬の使用。
がん性細胞を有する患者のがん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害するための医薬製造のための、NQO1生体内活性化可能薬の第二の薬剤と組み合わせての使用であって、第二の薬剤はa)塩基除去修復(BER)酵素阻害剤、b)ポリ(ADP-リボシル)ポリメラーゼI(PARP1)阻害剤、またはc)AP塩基修飾薬であり、医薬は有効致死量または阻害量のNQO1生体内活性化可能薬および第二の薬剤を含む、使用。
がん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する方法であって、がん細胞を有効致死量または阻害量のNQO1生体内活性化可能薬と塩基除去修復(BER)酵素阻害剤との組み合わせに接触させる段階を含み、それによりがん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する、方法。
がん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する方法であって、がん細胞を有効致死量または阻害量のNQO1生体内活性化可能薬とポリ(ADP-リボシル)ポリメラーゼI(PARP1)阻害剤との組み合わせに接触させる段階を含み、それによりがん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する、方法。
がん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する方法であって、がん細胞を有効致死量または阻害量のNQO1生体内活性化可能薬とAP塩基修飾薬との組み合わせに接触させる段階を含み、それによりがん細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
腫瘍選択性はがんに対する有効な化学療法戦略の難題のままである。ほとんどの固形腫瘍におけるNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)のレベル上昇を特異的に利用するためのβ-ラパコンの最近の開発は、新規化学療法アプローチの代表例であるが、高い効力でプログラム壊死などの様々なメカニズムにより死滅させるさらなる治療法が必要とされている。デオキシニボキノン(DNQ)は広い範囲のがん細胞型(すなわち、乳がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん)をNQO1依存的様式で、β-ラパコンに比べて大幅に改善された効力(20〜100倍)で死滅させる。DNQ致死性はNQO1依存性無益酸化還元サイクリングに頼っており、酸素を用い、高度に反応性の酸素種(ROS)、特にスーパーオキシドおよび過酸化水素を生成する。ROSレベルの上昇は高度のDNA損傷およびPARP-1過剰活性化を引き起こし、これは次いで、このクラスのNQO1「生体内活性化」薬物(例えば、β-ラパコンおよびDNQ)に特有のカルシウム依存性プログラム細胞壊死反応を刺激する、重度のNAD
+/ATP欠乏を生じる。驚くことに、NQO1生体内活性化可能薬とDNA修復阻害剤との組み合わせは相乗的かつ腫瘍選択的療法を提供することが判明した。
【0024】
膵臓がんは2020年までに米国におけるがん関連死の二番目の原因になると思われ、5年生存率は<6%である。現行の治療法の標準は選択性がほとんどなく、高毒性である。したがって、新規の腫瘍選択的アプローチが切迫して必要である。膵臓がんのほぼ90%がNQO1レベル上昇(10〜40倍)を示し、本発明者らは最近、ベータ-ラパコン(ベータ-lap)は膵臓がんに対してNQO1依存的様式で有効であることを示した(Li et al., Clin. Cancer Res., 2011)。ベータ-lapはほとんどのキノンのようにNQO1によって還元されるが、ほとんどのキノンとは異なり、そのハイドロキノン型は不安定で、自発的に無益様式で酸化還元循環し、1モルのベータ-lapは約120モルのスーパーオキシドを2分以内に生成して、主としてDNA塩基および一本鎖切断(SSB)損傷を誘導する。これはPARP1過剰活性化およびプログラム壊死をもたらして、i、p53;ii、細胞周期;iii、すべての公知の発がんドライバー;およびiv、アポトーシス/抗アポトーシス遺伝子発現(例えば、Bax、Bak、Bcl2)には無関係にNQO1+がん細胞を死滅させる。したがって、「NQO1生体内活性化可能薬」は腫瘍選択的で、膵臓がんおよび他の固形腫瘍がんの治療法を含むがん療法の有効性を改善するためのすぐれた候補である。
【0025】
その有効性を改善するために、NQO1過剰発現膵臓がん細胞に対して、AP部位修飾薬および塩基除去修復(BER)阻害剤、メトキシアミン(MeOX)を、ベータ-lapに添加することの相乗効果を試験した。MeOX+ベータ-lap相乗作用はベータ-lapの亜致死用量の致死性増強;腫瘍細胞だけでのDNA損傷形成の増大;ATPレベルの劇的損失;および解糖の劇的抑制をもたらした。したがって、MeOXはベータ-lapによるPARP1過剰活性化および相乗的細胞殺滅を増強する。メカニズムとしては、データはPARP1がMeOX-AP修飾部位またはSSBを検出し、PARP1過剰活性化および相乗的細胞死を可能にすることを示している。MeOXは非毒性物質であるため、MeOXと第二の薬剤との組み合わせはがん、特に膵臓がん、ならびに他のNQO1過剰発現固形がんの処置のための治療法を提供しうる。
【0026】
治療用キノン
DNQは、膵臓がんおよび非小細胞肺がんを含む広い範囲の治療が困難ながんに対する標的療法のために非常に有望な、広い治療ウィンドウを示す強力な化学療法剤である。がん化学療法におけるかなりの進歩にもかかわらず、ほとんどのがん化学療法剤の選択性の欠如は大きな制限因子のままである。ほとんどの固形腫瘍、特に非小細胞肺がん細胞(NSCLC)、前立腺がん、膵臓がんおよび乳がんで見られる、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ-1(NQO1、DT-ジアホラーゼ、EC 1.6.99.2)レベルの上昇は、本明細書に記載の治療的処置の標的を提供する。NQO1は、ほとんどのキノンを還元して安定なヒドロキノンを生成することが可能な、誘導性解毒第II相2電子オキシドレダクターゼである。ほとんどの場合に、グルタチオントランスフェラーゼが次いでヒドロキノンを解毒し、分泌のためにそれらをグルタチオンで抱合し、より毒性のセミキノンを効果的に回避する。
【0027】
しかし、いくつかのまれな化合物では、NQO1媒介性生体内還元を抗腫瘍活性のために利用することができる。解毒を促進するよりも、NQO1活性は特定のキノンを高細胞毒性種に変換することができる。NQO1に依存するほとんどの抗腫瘍性キノンはDNAアルキル化剤である:(a)マイトマイシンC(MMC);(b)RH1;(c)E09;および(d)AZQ。しかし、これらのDNAアルキル化剤は解毒経路の対象であるだけでなく、亢進または誘導性のDNA修復経路からの耐性がそれらの有用性を制限している。さらに、これらの薬物の多くは、正常組織で広範に発現される1電子オキシドレダクターゼの効率的基質である。
【0028】
オルト-ナフトキノンのβ-ラパコン(β-lap、スキーム1)は、培養がん細胞およびマウス異種移植片ならびにインビボで同所性ヒトまたはマウス腫瘍モデルをNQO1依存的様式で死滅させる。アルキル化キノンとは対照的に、β-lapはNQO1依存的反応性酸素種(ROS)生成および酸化ストレスによって細胞死を誘導する。β-lapのNQO1代謝は不安定なヒドロキノンを生じ、これは2つの等価の二酸素によって自発的に酸化されてスーパーオキシドを生成する。
【0030】
酸化還元の無益サイクルがこのように確立され、次いでスーパーオキシドレベルの上昇は大量のDNA塩基および一本鎖切断(SSB)損傷を引き起こすが、これらは通常は容易に、かつ速やかに修復される。しかし、β-lap-処置したNQO1過剰発現がん細胞で生じた大規模のDNA損傷は、他の場合には必須の塩基およびSSB修復酵素であるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP1)の過剰活性化をもたらす。次いで、PARP1過剰活性化はADPリボシル化によりNAD
+/ATPプールの劇的な低減をもたらし、大幅なエネルギー枯渇および細胞死を引き起こす。その結果、NQO1は細胞周期のすべての期で発現されるため、β-lapはNQO1+がん細胞を(a)カスパーゼ活性化またはp53状態とは無関係;(b)bcl-2レベルとは無関係;(c)BAX/BAK欠乏によって影響されない;(d)EGFR、Rasまたは他の構成性シグナル伝達活性化とは無関係;および/または(e)増殖に依存しない、特有のプログラム壊死メカニズムによって死滅させる。したがって、β-lapは魅力的な実験的化学療法剤であり、様々なβ-lap製剤が第I/II相臨床試験で試験された、または現在試験中である。
【0031】
デオキシニボキノン(DNQ、スキーム1)は有望な抗新生物剤である。以前のデータは、DNQが酸化ストレスおよびROS生成によってがん細胞を死滅させることを示した。DNQの細胞毒性は、全般的フリーラジカルスカベンジャーであり、グルタチオンの前駆体である、N-アセチルシステインによって部分的に防止された。現在、DNQはβ-lapと同様のNQO1依存的無益サイクルを起こし、ここで酸素が消費され、ROSが生成して、大規模DNA損傷がPARP1過剰活性化を誘発し、プログラム壊死を示す必須のNAD
+/ATPヌクレオチドプールの劇的な低減を伴うことが明らかにされている。重要なことに、DNQはβ-lapよりも20〜100倍強力で、NQO1- NSCLC細胞に対してNQO1+細胞では治療ウィンドウの有意な増強を示す。DNQによる有効なNQO1依存的殺滅が、インビトロで乳がん、前立腺がん、および膵臓がんモデルでも示されている。さらに、インビトロNQO1はDNQをβ-lapよりもはるかに効率的に処理し、利用率増大によってその効力が増大することを示している。したがって、DNQはNQO1レベルが上昇した固形腫瘍の処置のための選択的化学療法剤として非常に有望であるが、本明細書に記載の併用療法は、組み合わせの相乗作用により、様々なキノン化合物による有効な治療法を提供することができる。
【0032】
NQO1は固形腫瘍の大多数で過剰発現され、様々なキノン化合物の細胞毒性は主に酵素NQO1の発現上昇に依存するため、キノン化合物およびそれらの誘導体は、固形腫瘍を標的とするアプローチに対するすぐれた手段であり得る。本発明は、本明細書に記載のとおり、新しいがん治療薬として使用しうる多くの新しい細胞毒性化合物を提供する。
【0033】
本開示の前述および他の目的および特徴は、添付の図面を参照しながら進める、以下の詳細な説明からより明白になるであろう。本出願のさらなる態様、形態、特徴、局面、恩典、目的、および利点は、詳細な説明および本明細書と共に提供する図面から明らかになるであろう。
【0034】
DNA修復阻害剤による腫瘍特異的使用のためのNQO1生体内活性化可能薬の使用
NQO1生体内活性化可能薬(NQO1の基質であるすべてのβ-ラパコンおよびDNQ誘導体)は、膨大なレベルの反応性酸素種を、NQO1依存的、腫瘍選択的様式で生成し、腫瘍特異的様式で用いられる、すべてのPARP1阻害剤、DNA二本鎖切断修復阻害剤、ならびに塩基除去修復阻害剤を含む、DNA損傷阻害剤の使用を可能にし、両方の薬剤の腫瘍選択的効果をもたらす。DNA修復阻害剤は、一般には、腫瘍選択性の欠如ゆえに失敗している。これらのNQO1生体内活性化可能薬は、DNA塩基損傷、一本鎖切断および二本鎖切断を含むDNA損傷の腫瘍選択的生成を引き起こすため、DNA修復阻害剤を用いて腫瘍選択的抗腫瘍活性を提供することができる。腫瘍選択的活性および反応には、解糖の劇的阻害ならびに他の腫瘍選択的代謝阻害が含まれる。
【0035】
NQO1生体内活性化可能薬を用いて、DNA損傷が生じたことを知らないかぎり明白でない様式で、ならびに、明白ではなくかつ用いるDNA修復阻害剤に依存して変わる代謝変化および細胞死反応を引き起こす様式で、DNA修復阻害剤を腫瘍選択的にすることができる。例えば、DNQ生体内活性化可能薬と共に投与したPARP1阻害剤は、エネルギー損失なしに標準のアポトーシス反応を引き起こす。これとは対照的に、DNA二本鎖切断修復、一本鎖切断修復、および塩基除去修復阻害剤は、PARP1過剰活性化を増強し、続いてエネルギー代謝の損失およびプログラム壊死が起こる。
【0036】
PARP-1阻害剤などのDNA修復阻害剤の唯一の現行の使用は、腫瘍特異的合成致死性反応の特有の利用を通じてである(例えば、BRACA1/2変異体腫瘍におけるPARP1阻害剤の使用)。これは、しかし、DNA修復阻害剤の非常に限られた使用であり-乳がんの約5%にすぎない。これとは対照的に、本明細書に記載のアプローチは、NQO1上昇およびカタラーゼレベル低下を有するすべてのがんを処置しうる一方で、正常組織はカタラーゼレベル上昇および低レベルのNQO1を有する。本明細書に記載の方法はDNA修復阻害剤の新しい使用を提供し、腫瘍選択的様式でのそれらの使用を可能にするが、NQO1生体内活性化可能薬を強化もする。両方の薬剤を非毒性用量で用いて、相乗的、腫瘍選択的有効性反応を提供することができる。
【0037】
今日まで、DNA修復阻害剤は腫瘍選択的反応および有効性の欠如に失敗している。本明細書に記載の方法はこれらの制限を解決する一方で、NQO1生体内活性化可能薬を大幅に強化する。方法は2〜4分の1の低い用量のNQO1生体内活性化可能薬の使用も可能にし、これらのNQO1生体内活性化可能薬の毒性効果(例えば、メトヘモグロビン血症(methemaglobinemia))を解決する。治療的方法において、阻害剤をNQO1生体内活性化可能薬の前および後に、直前、および任意に前、同時、後、またはその組み合わせで加えることができる。細胞死反応は用いる阻害剤に依存する。反応は自明ではなく、インビボで追跡するために特定のバイオマーカーを必要とする。
【0038】
定義
一般に、本明細書において用いられる用語および語句はそれらの技術分野において認められた意味を有し、これらは標準の教科書、参照文献および当業者には公知の文脈を参照することによって見出すことができる。そのような当技術分野において認められた意味は、Hawley's Condensed Chemical Dictionary 14
th Edition, by R.J. Lewis, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 2001などの技術辞書を参照することによって得てもよい。
【0039】
BER、塩基除去修復;SSBR、一本鎖切断修復;DSBR、二本鎖切断修復。
【0040】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないと示さないかぎり、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物」への言及はそのような化合物の複数を含み、したがって化合物Xは複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は任意の要素を除外するよう立案されうることがさらに留意される。したがって、この言明は、特許請求の範囲の要素の詳説または「負」の限定の使用と連結して、「単に」、「のみ」などの排他的用語の使用のための先行する基礎として役立つことが意図される。
【0041】
「および/または」なる用語は、この用語が関連する項目の任意の1つ、項目の任意の組み合わせ、または項目のすべてを意味する。「1つまたは複数の」なる語句は、特にその使用の文脈において読まれる場合、当業者には容易に理解される。例えば、フェニル環上の1つまたは複数の置換基とは、1〜5つ、または、例えば、フェニル環が二置換されている場合は、1〜4つを意味する。
【0042】
「約」なる用語は、指定の値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を意味し得る。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの態様において、45〜55パーセントの変動を有しうる。整数の範囲について、「約」なる用語は、範囲のそれぞれの端で挙げられる整数よりも大きいおよび/または小さい1つまたは2つの整数を含みうる。本明細書において特に記載がないかぎり、「約」なる用語は、個々の成分、組成物、または態様の機能性に関して同等である、列挙した範囲に近い値、例えば、重量パーセンテージを含むことが意図される。
【0043】
当業者であれば理解されるとおり、成分、分子量などの性質、反応条件などの量を表すものを含む、すべての数字は近似であり、「約」なる用語によってすべての場合に任意に修飾されていると理解される。これらの値は、本明細書における記載の教示を用いて、当業者により得ようとされる所望の性質に応じて変動しうる。そのような値は本質的に、それらの各試験法において見られる標準偏差から必ず生じる変動性を含むことも理解される。
【0044】
本発明は多くの異なる形態を取り得るが、本発明の原理の理解を促進するために、ここで図面に例示する態様を参照し、これらを説明するために特定の用語を用いることになる。それにもかかわらず、本発明の範囲の限定はそれによって意図されないことが理解されよう。記載する態様の任意の変更およびさらなる改変、ならびに本明細書に記載の本発明の原理の任意のさらなる適用は、本発明が関連する技術分野の当業者には通常想起されるとおりに企図される。
【0045】
置換基の群が本明細書において開示される場合、その群のメンバーの任意の異性体、鏡像異性体、およびジアステレオマーを含む、その群およびすべての部分群のすべての個々のメンバーが別々に開示されることが理解される。マーカッシュ群または他の群を本明細書において用いる場合、群のすべての個々のメンバーならびにその群で可能なすべての組み合わせおよび部分組み合わせは本開示に個別に含まれることが意図される。化合物の特定の異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーが、例えば、式または化学名で指定されないような、化合物が本明細書において記載される場合、その記載は個別または任意の組み合わせで記載される化合物の各異性体および鏡像異性体を含むことが意図される。加えて、特に記載がないかぎり、本明細書において開示される化合物のすべての同位体変種は開示に含まれることが意図される。例えば、開示される分子中の任意の1つまたは複数の水素は、重水素またはトリチウムで置き換え得ることが理解されよう。分子の同位体変種は一般に、分子の検定において、ならびに分子またはその使用に関する化学的および生物学的研究において、標準として有用である。そのような同位体変種の作製法は当技術分野において公知である。化合物の特定名称は、当業者であれば同じ化合物を異なるように命名しうることが公知であるため、例示であることが意図される。
【0046】
本明細書において範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、炭素鎖範囲、または組成もしくは濃度範囲が示される場合はいつでも、すべての中間範囲および部分範囲、ならびに所与の範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に個別に含まれることが意図される。本記載に含まれる範囲または部分範囲内の任意の部分範囲または個々の値は、本発明の態様から任意に除外されうることが理解されよう。
【0047】
本明細書において用いられる「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「特徴付けられる」と同義で、包括的または開放式であり、さらなる、列挙していない要素または方法段階を除外しない。本明細書において用いられる「からなる」は、請求項要素において指定されていない任意の要素、段階、または成分を除外する。本明細書において用いられる「本質的に〜からなる」は、請求項の基本的および新規特徴に実質的に影響をおよぼさない、材料または段階を除外しない。本明細書におけるそれぞれの場合に、「含む」、「本質的に〜からなる」および「からなる」なる用語の任意のものは他の2つの用語のいずれかと置き換えられてもよい。本明細書において例示的に記載される本発明は、適切には、本明細書において具体的に開示されない任意の要素または限定なしで実施してもよい。
【0048】
「化学療法剤」とは、がん細胞、がん細胞の集団、腫瘍、または他の悪性組織の成長、増殖、または拡散を低減または防止することができる任意の物質を意味する。この用語は任意の抗腫瘍または抗がん剤を含むことも意図される。
【0049】
本発明の処置法に関する化合物の「治療的有効量」とは、所望の投与計画の一部として(ヒトなどの哺乳動物に)投与した場合に、例えば、任意の医学的処置に適用可能な妥当な損益比で、処置する障害もしくは状態、または美容的目的のための、臨床的に許容される標準に従って、症状を緩和し、状態を改善し、または疾患状態の発症を遅らせる、製剤中の化合物の量を意味する。
【0050】
「処置すること」、「処置する」および「処置」なる用語は、(i)疾患、病的または医学的状態が起こるのを防ぐこと(例えば、予防);(ii)疾患、病的もしくは医学的状態を阻害すること、またはその発生を停止すること;(iii)疾患、病的または医学的状態を軽減すること;および/または(iv)疾患、病的または医学的状態に関連する症状を減弱することを含む。したがって、「処置する」、「処置」、および「処置すること」なる用語は、予防に拡大することができ、処置中の状態または症状の進行または重症度を防止する、防止、防止すること、低下させること、停止すること、または逆転させることを含みうる。したがって、「処置」なる用語は、適宜、医学的、治療的、および/または予防的投与を含みうる。「処置すること」または「処置」なる用語は、状態の症状、臨床徴候、および根元的病態を、対象の状態を改善または安定化させる様式で、逆転させること、低減すること、または停止することを含みうる。
【0051】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」なる用語は、疾患、感染、状態、または細胞群の成長または進行を遅延させること、休止すること、または逆転させることを意味する。阻害は、処置または接触なしで起こる成長または進行に比べて、例えば、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、または99%よりも大きくてよい。
【0052】
「接触すること」なる用語は、触る、接触させる、または細胞もしくは分子レベルを含む、すぐ近くに、または極めて接近させる行為、例えば、生理的反応、化学反応、または物理的変化を、例えば、溶液中、反応混合物中、インビトロ、またはインビボで起こさせる行為を意味する。
【0053】
「曝露すること」なる用語は、当技術分野において広く理解されている定義を含むことが意図される。1つの態様において、この用語は、作用、影響、または状態を受ける、またはさらされることを意味する。例えば、および例示にすぎないが、細胞は化学療法剤の薬学的に許容される形態の治療的有効量の作用、影響、または状態にさらされうる。
【0054】
「がん細胞」なる用語は、当技術分野において広く理解されている定義を含むことが意図される。1つの態様において、この用語は、ヒトまたは動物のがんの臨床状態に寄与し得る、異常に制御された細胞を意味する。1つの態様において、この用語は、ヒトまたは動物の体内または体由来の培養細胞株または細胞を意味し得る。がん細胞は、当技術分野において理解されている、多様な分化した細胞、組織、または器官型のものでありうる。
【0055】
「腫瘍」なる用語は、新生物、典型的には複数の凝集した悪性細胞を含む塊を意味する。
【0056】
以下の基は、本明細書に記載の式において、適宜にR基または架橋基であり得る。
【0057】
「アルキル」なる用語は、好ましくは1〜30個の炭素原子を有する、分枝または非分枝飽和炭化水素鎖のモノラジカル(monoradical)を意味する。短鎖アルキル基は、そのすべての異性体を含む、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシル基を含む、1〜12個の炭素原子を有するものである。長鎖アルキル基は、12〜30個の炭素原子を有するものである。基は末端基または架橋基であってもよい。
【0058】
アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、および複素環基、ならびにその環式および/または不飽和版は、式IのR基であり得、各基は置換されていてもよい。
【0059】
「置換された」なる用語は、「置換された」を用いた表現で示される基上の1つまたは複数の水素原子が「置換基」で置き換えられていることを示す。「1つまたは複数の」によって意味される数は、置換基が存在する部分から明白であり得る。例えば、1つまたは複数は、例えば、1、2、3、4、5、または6;いくつかの態様において、1、2、または3;および他の態様において、1または2を意味することができる。置換基は示した基の選択肢の1つであり得、または置換される原子の通常の原子価を超えないこと、および置換が安定な化合物を生じることを条件に、当業者には公知の適切な基であり得る。適切な置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、アロイル、(アリール)アルキル(例えば、ベンジルまたはフェニルエチル)、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスフェート、スルフェート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン、およびシアノが含まれる。加えて、適切な置換基は、例えば、-X、-R、-O
-、-OR、-SR、-S
-、-NR
2、-NR
3、=NR、-CX
3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO
2、=N
2、-N
3、-NC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NRR、-S(=O)
2O
-、-S(=O)
2OH、-S(=O)
2R、-OS(=O)
2OR、-S(=O)
2NR、-S(=O)R、-OP(=O)O
2RR、-P(=O)O
2RR、-P(=O)(O
-)
2、-P(=O)(OH)
2、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(S)R、-C(O)OR、-C(O)O
-、-C(S)OR、-C(O)SR、-C(S)SR、-C(O)NRR、-C(S)NRR、または-C(NR)NRRであり得、ここで各Xは独立にハロゲン(「ハロ」):F、Cl、Br、またはIであり;かつ各Rは独立にH、アルキル、アリール、(アリール)アルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリール、(ヘテロアリール)アルキル、複素環、複素環(アルキル)、または保護基である。当業者には容易に理解されるとおり、置換基がケト(=O)またはチオキソ(=S)などである場合、置換される原子上の2つの水素原子が置き換わる。いくつかの態様において、前述の置換基の1つまたは複数は、置換される基上の置換基のために潜在価値がある群から除外されうる。
【0060】
「ヘテロアルキル」なる用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、多くの場合鎖中に2〜14個の炭素、または2〜10個の炭素を有し、少なくとも1個の炭素原子とO、N、P、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環式炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味する。ヘテロ原子、O、N、PおよびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置またはアルキル基が分子の残部に結合している位置にあってもよい。ヘテロアルキル基は、例えば、鎖中に1〜約20個の炭素原子を有しうる。例には、--CH
2--CH
2--O--CH
3、--CH
2--CH
2--NH--CH
3、--CH
2--CH
2--N(CH
3)--CH
3、--CH
2--S--CH
2--CH
3、--CH
2--CH
2--S(O)--CH
3、--CH
2--CH
2--S(O)
2--CH
3、--CH=CH--O--CH
3、--Si(CH
3)
3、--CH
2-CH=N--OCH
3、--CH=CH--N(CH
3)--CH
3、O--CH
3、--O--CH
2--CH
3、および--CNが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ヘテロアルキル基のさらなる例にはアルキルエーテル、二級および三級アルキルアミン、アミド、アルキルスルフィドなどが含まれる。基は末端基または架橋基であってもよい。本明細書において用いられる、架橋基の文脈で用いられる場合の鎖への言及は、架橋基の2つの末端の位置を連結する原子の直鎖を意味する。
【0061】
本明細書において用いられる「アルコール」なる用語は、水素原子において1つのヒドロキシル基で置換されたC
1-12アルキル部分を含むアルコールと定義されうる。アルコールにはエタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-のナノール、n-デカノールなどが含まれる。アルコール中の炭素原子は直鎖、分枝または環式であり得る。
【0062】
「アシル」は、アルキル-CO-基と定義されてもよく、ここでアルキル基は本明細書に記載のとおりである。アシルの例には、アセチルおよびベンゾイルが含まれる。アルキル基はC
1-C
6アルキル基であり得る。基は末端基または架橋(すなわち、二価)基であり得る。
【0063】
「アルコキシ」とは、-O-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義される。好ましくはアルコキシはC
1-C
6アルコキシである。例には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0064】
基または基の一部としての「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、直鎖中に好ましくは2〜14個の炭素原子、より好ましくは2〜12個の炭素原子、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝であってもよい、脂肪族炭化水素を意味する。基は直鎖中に複数の二重結合を含んでもよく、それぞれの周りの配向は独立にEまたはZである。例示的アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびノネニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0065】
基または基の一部としての「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含み、その鎖は直鎖中に2〜14個の炭素原子、より好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝であってもよい、脂肪族炭化水素と定義されうる。例示的構造には、エチニルおよびプロピニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0066】
「アルケニルオキシ」とは、--O--アルケニル基を意味し、ここでアルケニルは本明細書において定義されるとおりである。好ましいアルケニルオキシ基はC
1-C
6アルケニルオキシ基である。基は末端基または架橋基であり得る。
【0067】
「アルキニルオキシ」とは、--O-アルキニル基を意味し、ここでアルキニルは本明細書において定義されるとおりである。好ましいアルキニルオキシ基はC
1-C
6アルキニルオキシ基である。基は末端基または架橋基であり得る。
【0068】
「アルコキシカルボニル」とは、-C(O)--O-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC
1-C
6アルキル基である。例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0069】
「アルキルスルフィニル」は、-S(O)-アルキル基と定義されてもよく、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC
1-C
6アルキル基である。例示的アルキルスルフィニル基には、メチルスルフィニルおよびエチルスルフィニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0070】
「アルキルスルホニル」とは、-S(O)
2-アルキル基を意味し、ここでアルキルは本明細書において定義されるとおりである。アルキル基は好ましくはC
1-C
6アルキル基である。例には、メチルスルホニルおよびエチルスルホニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0071】
「アミノ」とは、-NH
2を意味し、「アルキルアミノ」とは、-NR
2を意味し、ここで少なくとも1つのRはアルキルであり、第二のRはアルキルまたは水素である。「アシルアミノ」なる用語は、RC(=O)NH-を意味し、ここでRはアルキルまたはアリールである。アルキル基は、例えば、C
1-C
6アルキル基であり得る。例には、メチルアミノおよびエチルアミノが含まれるが、それらに限定されるわけではない。基は末端基または架橋基であり得る。
【0072】
「アルキルアミノカルボニル」とは、アルキルアミノ-カルボニル基を意味し、ここでアルキルアミノは前述の定義のとおりである。基は末端基または架橋基であり得る。
【0073】
「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの、多くの場合環ごとに3〜約9個の炭素を含む、炭素原子3〜約30個の飽和または部分飽和、単環式または縮合もしくはスピロ多環式炭素環を意味する。これにはシクロプロピルおよびシクロヘキシルなどの単環式系、デカリンなどの二環式系、ならびにアダマンタンなどの多環式系が含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0074】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、好ましくは環ごとに5〜10個の炭素原子を有する、非芳香族単環式または多環式環系と定義されてもよい。例示的な単環式シクロアルケニル環には、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルが含まれる。シクロアルケニル基は1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。基は末端基または架橋基であり得る。
【0075】
アルキルおよびシクロアルキル基は、アルコキシ、アルキルアミン、アルキル ケトン、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホニルおよびアルキルエステル置換基などであるが、それらに限定されるわけではない、他の基のアルキル部分上の置換基であり得る。基は末端基または架橋基であり得る。
【0076】
「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル-アルキル基と定義されてもよく、ここでシクロアルキルおよびアルキル部分は前述のとおりである。例示的モノシクロアルキルアルキル基には、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルおよびシクロヘプチルメチルが含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0077】
「ヘテロシクロアルキル」とは、窒素、硫黄、酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは少なくとも1つの環において1〜3個のヘテロ原子を含ぬ、飽和または部分飽和単環式、二環式、または多環式環を意味する。各環は好ましくは3〜10員、より好ましくは4〜7員である。適切なヘテロシクロアルキル置換基の例には、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3-ジアザパン(diazapane)、1,4-ジアザパン、21,4-オキサゼパン、および1,4-オキサチアパン(oxathiapane)が含まれる。基は末端基または架橋基であり得る。
【0078】
「ヘテロシクロアルケニル」とは、前述のとおりであるが、少なくとも1つの二重結合を含む、ヘテロシクロアルキルを意味する。基は末端基または架橋基であり得る。
【0079】
「ヘテロシクロアルキルアルキル」とは、ヘテロシクロアルキル-アルキル基を意味し、ここでヘテロシクロアルキルおよびアルキル部分は前述のとおりである。例示的ヘテロシクロアルキルアルキル基には、(2-テトラヒドロフリル)メチル、および(2-テトラヒドロチオフラニル)メチルが含まれる。
基は末端基または架橋基であり得る。
【0080】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードなどのハロゲン置換基を意味する。
【0081】
「アリール」なる用語は、親芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される芳香族炭化水素基を意味する。ラジカルは親環系の飽和または不飽和炭素原子においてであり得る。アリール基は6〜18個の炭素原子を有しうる。アリール基は1つの環(例えば、フェニル)または複数の縮合環を有し得、ここで少なくとも1つの環は芳香族である(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアンスリル)。典型的アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導される基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。アリールは、アルキル基について前述したとおり、無置換または置換されていてもよい。
【0082】
「ヘテロアリール」なる用語は、本明細書において、1、2、または3つの芳香環を含み、芳香環中に少なくとも1個の窒素、酸素、または硫黄原子を含み、無置換または、例えば、「置換された」の定義において前述した、1つもしくは複数の、特に1〜3つの置換基で置換されていてもよい、単環式、二環式、または三環式環系と定義される。ヘテロアリール基の例には、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チオニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル(imidizolyl)、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル(perimidinyl)、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、およびキサンテニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの態様において、「ヘテロアリール」なる用語は、炭素ならびに非過酸化物酸素、硫黄、およびN(Z)から独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含む、5または6個の環原子を含む、単環式芳香環を意味し、ここでZは存在しない、またはH、O、アルキル、アリール、もしくは(C
1-C
6)アルキルアリールである。もう1つの態様において、ヘテロアリールは、それから誘導される環原子約8〜10個のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体またはそれにプロピレン、トリメチルチレン、もしくはテトラメチレンジラジカルを縮合することにより誘導されるものを意味する。
【0083】
「複素環」なる用語は、酸素、窒素、および硫黄の群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、「置換された」なる用語で本明細書において定義された、1つもしくは複数の基で置換されていてもよい、飽和または部分不飽和環系を意味する。複素環は、1つまたは複数のヘテロ原子を含む単環式、二環式、または三環式基であり得る。複素環基は、環に結合したオキソ基(=O)も含みうる。複素環基の非限定例には、1,3-ジヒドロベンゾフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,4-ジチアン、2H-ピラン、2-ピラゾリン、4H-ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン、およびチオモルホリンが含まれる。
【0084】
本明細書において用いられる「DNQ
d」なる略語は、DNQの類縁体または誘導体を意味する。
【0085】
R
1、R
2、R
3、およびR
4の架橋基または末端基でありうる、さらなる基を以下に記載する。
【0086】
「カーボネートエステル」なる用語は、一般構造R'OC(=O)ORを有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得る。
【0087】
「エステル」なる用語は、一般構造RC(=O)OR'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0088】
「ピリジル」基は、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジル基であり得る。
【0089】
「スルフヒドリル」なる用語は、一般構造-S-Hを有する官能基と定義されてもよい。
【0090】
「スルフィニル」なる用語は、一般構造R-S(=O)-R'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0091】
「スルホニル」なる用語は、一般構造R-S(=O)
2-R'を有する官能基と定義されてもよく、ここでR'は式Iの三環式の核であり得、かつRは式Iの変数の定義における定義のとおりであり得、または逆も同じである。
【0092】
「ヘキソース」なる用語は、一般化学式C
6H
12O
6を有する、6個の炭素原子を有する単糖と定義されてもよく、1位にアルデヒド官能基を有するアルドヘキソースまたは2位にケトン官能基を有するケトヘキソースが含まれうる。例示的アルドヘキソースには、DまたはL型いずれかのアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、およびタロースが含まれる。
【0093】
PARP阻害剤は、酵素ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の薬理学的阻害剤の群である。これらは、がんの処置を含む複数の適応のために開発されている。いくつかのがんの形は通常の細胞よりもPARPに依存し、PARPをがん療法の魅力的な標的としている。PARP-1阻害剤は本明細書に記載の併用療法において特に有用である。PARP-1阻害剤はSelleck Chemicalsなどの商業的供給業者から購入することができる。PARP-1阻害剤の例には、以下の表1に挙げる阻害剤が含まれる。
【0094】
(表1)PARP-1阻害剤
*BSI-201は報告されたPARP1阻害剤であり、β-lapまたはDNQと相乗作用したが、PARP1ノックダウン細胞を用いて、本発明者らは、他のPARP1阻害剤では見られなかったさらなる相乗作用を認めた。さらに、それを加えても、他の阻害剤すべてのように、PARP1 PAR生成を防止することはなかった。本発明者らは、したがって、BSI-201はPARP1阻害剤ではなく、むしろDNA損傷剤であり、これは認められた相乗作用を説明するものであると結論付ける。
**PARP1阻害剤それぞれの様々な用量(μM)を、β-ラパコンまたはDNQの様々な用量と共に加えた。報告した感受性の値は、β-ラパコン(A549に対しては3μM、2μM Mia Paca2細胞)またはDNQ(A549細胞に対しては0.02μM、MiaPaca-2細胞に対しては0.025μM)いずれかの非毒性用量と各PARP1阻害剤の最適用量(すなわち、15μM)との組み合わせでの、A549 NSCLC細胞またはMiaPaCa-2膵臓がん細胞の生存率の変化を表す。10の値は1logの殺滅に等しく、100の値は2logの殺滅に等しく、他も同様である。PARP1阻害剤は100μMの高濃度まで非致死的であった。
【0095】
本発明の化合物および方法
本発明は、DNQ化合物、ベータ-ラパコンおよびその誘導体、ならびにがんの処置のための併用療法におけるNQO1生体内活性化可能薬の使用を提供する。DNQ化合物の例には式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物が含まれる:
式中
R
1、R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立に-Hまたは-X-Rであり;
各Xは独立に直接結合または架橋基であり、ここで架橋基は-O-、-S-、-NH-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、または式-W-A-W-のリンカーであり、ここで
各Wは独立に-N(R')C(=O)-、-C(=O)N(R')-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N(R')-、-C(=O)-、-(CH
2)
n-、ここでnは1〜10であり、または直接結合であり、ここで各R'は独立にH、(C
1-C
6)アルキル、または窒素保護基であり;かつ
各Aは独立に(C
1-C
20)アルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
2-C
16)アルキニル、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、-(OCH
2-CH
2)
n-、ここでnは1〜約20であり、-C(O)NH(CH
2)
n-、ここでnは1〜約6であり、-OP(O)(OH)O-、-OP(O)(OH)O(CH
2)
n-、ここでnは1〜約6であり、または2つの炭素の間、もしくは炭素と酸素との間にシクロアルキル、複素環、もしくはアリールが割り込んだ、(C
1-C
20)アルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
2-C
16)アルキニル、もしくは-(OCH
2-CH
2)
n-であり;
各Rは独立にアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、(シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、(シクロアルキル)ヘテロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(アリール)アルキル、(ヘテロアリール)アルキル、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、(アルコキシ)アルキル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、(シクロアルキル)アルコキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、-COR
x、-COOR
x、-CONHR
x、-NHCOR
x、-NHCOOR
x、-NHCONHR
x、-N
3、-CN、-NC、-NCO、-NO
2、-SH、-ハロ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、スルホネート、スルホン酸、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アミノスルホニル、R
xS(O)R
y-、R
xS(O)
2R
y-、R
xC(O)N(R
x)R
y-、R
xSO
2N(R
x)R
y-、R
xN(R
x)C(O)R
y-、R
xN(R
x)SO
2R
y-、R
xN(R
x)C(O)N(R
x)R
y-、カルボキシアルデヒド、アシル、アシルオキシ、-OPO
3H
2、-OPO
3Z
2であり、ここでZは無機カチオン、または糖であり;ここで各R
xは独立にH、OH、アルキルまたはアリールであり、かつ各R
yは独立に基Wであり;
ここで任意のアルキルまたはアリールは1つまたは複数のヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、またはハロきで置換されていてもよい。
【0096】
いくつかの態様において、R
1、R
2、およびR
3がメチルである場合、R
4はHまたはメチルではない。他の態様において、R
1、R
3、およびR
4がメチルである場合、R
2の基-X-Rは-CH
2-OAcではない。特定の態様において、R
1、R
3、およびR
4がメチルである場合、R
2のR基はアシルオキシではない。様々な態様において、R
1〜R
4はそれぞれHではない。特定の態様において、R
1〜R
4はそれぞれ、無置換アルキルなどのアルキルではない。いくつかの態様において、R
1〜R
4はそれぞれメチルではない。
【0097】
1つの態様において、R
1、R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ(C
1-20)アルキル基である。いくつかの態様において、(C
1-20)アルキル基は(C
2-20)アルキル基、(C
3-20)アルキル基、(C
4-20)アルキル基、(C
5-20)アルキル基、または(C
10-20)アルキル基である。アルキル基は、例えば、ヒドロキシ類縁体またはホスフェート基で置換されうる。ホスフェート基はホスホン酸またはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくはホスホン酸の他の公知の塩などのホスホン酸塩でありうる。
【0098】
R
1の特定の値はHである。R
2の特定の値はHである。R
3の特定の値はHである。R
4の特定の値はHである。
【0099】
R
1の特定の値はメチルである。R
2の特定の値はメチルである。R
3の特定の値はメチルである。R
4の特定の値はメチルである。メチルは「置換された」なる用語について前述したとおりに置換されうる。
【0100】
式(I)のいくつかの態様において:
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4は2-メチル-プロパンであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はブチルであり;
R
1およびR
4はメチルであり、かつR
3は水素であり;かつR
2はエチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり、かつR
3は水素であり;かつR
4はエチルであり;
R
1はメチルであり;R
3は水素であり;R
2はプロピルであり;かつR
4はブチルであり;
R
1およびR
4はメチルであり;R
2はプロピルであり、かつR
3は水素であり;
R
1はプロピルであり;R
2およびR
4はメチルであり、かつR
3は水素であり;
R
1およびR
2はエチルであり;R
3は水素であり;かつR
2はメチルであり;
R
1はプロピルであり;R
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はブチルであり;
R
1およびR
2はプロピルであり;R
3は水素であり;かつR
4はブチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はC
12アルキルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はtert-ブチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はヒドロキシプロピルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4は3,3-diメチルブチル[-CH
2CH
2C(CH
3)
2CH
3]であり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4は3-メチブチル[-CH
2CH
2CH(CH
3)CH
3]であり;
R
2およびR
4はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
1はエチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はプロピルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はn-ペンチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はn-ヘキシルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はイソプロピルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はシクロオクチルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はシクロプロピルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はメチルシクロプロピルであり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
4はエチルシクロプロピルであり;
R
1はC
12アルキルであり;R
2およびR
4はメチルであり;かつR
3は水素であり;
R
1およびR
4はメチルであり;R
3は水素であり;かつR
2はC
12アルキルであり;
R
1、R
2、およびR
3はメチルであり;かつR
4は-CH
2OPO
3Na
2であり;
R
1は-CH
2OPO
3Na
2であり;R
2およびR
3はメチルであり;かつR
4は水素であり;
R
1およびR
3はメチルであり;R
2は-CH
2OPO
3Na
2であり;かつR
4は水素であり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は-CH
2OPO
3Na
2であり;かつR
4は水素であり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は-CH
2CH
2OPO
3Na
2であり;かつR
4は水素であり;
R
1、R
2、およびR
3はメチルであり;かつR
4は-CH
2OHであり;
R
1は-CH
2OHであり;R
2およびR
3はメチルであり;かつR
4は水素であり;
R
1およびR
3はメチルであり;R
2は-CH
2OHであり;かつR
4は水素であり;
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は-CH
2OHであり;かつR
4は水素であり;または
R
1およびR
2はメチルであり;R
3は-CH
2CH
2OHであり;かつR
4は水素である。本発明のさらなる特定の化合物および式は
図11および12に例示する。
【0101】
式Iの特定の態様において、R
1は(C
1-4)アルキル基である。特定の場合に、R
1は(C
1-3)アルキル基である。特定の場合に、R
1は(C
1-2)アルキル基である。
【0102】
式Iの特定の態様において、R
2は(C
1-4)アルキル基である。特定の場合に、R
2は(C
1-3)アルキル基である。特定の場合に、R
2は(C
1-2)アルキル基である。
【0103】
式Iの特定の態様において、R
3は水素である。
【0104】
式Iの特定の態様において、R
4は置換されていてもよい(C
1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、またはチオールで置換されている。特定の場合に、R
4は(C
1-10)アルキル基、(C
1-8)アルキル基、(C
1-6)アルキル基、または(C
1-4)アルキル基である。特定の場合に、R
4は(C
2-6)アルキル基である。特定の場合に、R
4は置換(C
1-10)アルキル基、置換(C
1-8)アルキル基、置換(C
1-6)アルキル基、または置換(C
1-4)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、またはチオールで置換されている。特定の場合に、R
4はヒドロキシルで置換されたアルキル基である。特定の場合に、R
4はハロゲンで置換されたアルキル基である。特定の場合に、R
4はアミノで置換されたアルキル基である。特定の場合に、R
4はチオールで置換されたアルキル基である。
【0105】
式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-4)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は置換されていてもよい(C
1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0106】
式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は置換されていてもよい(C
1-10)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0107】
式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は(C
1-10)アルキル基である。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は(C
1-8)アルキル基である。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は(C
1-6)アルキル基である。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は(C
1-4)アルキル基である。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は(C
2-6)アルキル基である。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は置換(C
1-6)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。式Iの特定の態様において、R
1およびR
2は独立に(C
1-2)アルキル基であり;R
3は水素であり;かつR
4は置換(C
1-4)アルキル基であり、ここでアルキル基はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、およびチオールで置換されている。
【0108】
特定の態様において、式Iの化合物は化合物87またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-253またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-251またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物10-41またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物109またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物107またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-281またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-249またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-255またはその塩もしくは溶媒和物である:
。特定の態様において、式Iの化合物は化合物9-257またはその塩もしくは溶媒和物である:
。
【0109】
本発明は、式(I)の化合物および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む薬学的組成物も提供する。担体は、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)存在下の水であり得る。化合物の溶解性は、HPβCDを含まない水中の化合物溶解性に比べて、約100倍、約200倍、約500倍、約1000倍、約2000倍、または約3000倍増大しうる。さらなるDNQ化合物および方法は、国際特許出願番号PCT/US12/59988(Hergenrother et al.)によって記載されている。
【0110】
1つまたは複数の置換基を含む前述の式または基のいずれかに関して、当然のことながら、そのような基は立体的に実現不可能および/または合成的に不可能な任意の置換または置換パターンを含まないことが理解される。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換によって生じるすべての立体化学的異性体を含む。
【0111】
本明細書に記載の化合物の選択された置換基は、再帰的な程度まで存在してもよい。この文脈において、「再帰的置換基(recursive substituent)」とは、置換基がそれ自体の別の実例を列挙してもよいことを意味する。そのような置換基の再帰的性質のために、理論的には、任意の所与の請求項において多数のものが存在しうる。薬品化学および有機化学の当業者は、そのような置換基の総数が意図する化合物の所望の特性によって合理的に限定されることを理解する。そのような特性は、例示のためであり限定するものではないが、分子量、溶解性またはlog Pなどの物理的特性、意図する標的に対する活性などの適用性、および合成の容易性などの実用的な特性を含む。
【0112】
再帰的置換基は、本発明の意図される局面である。薬品化学および有機化学の当業者は、そのような置換基の多用性を理解する。再帰的置換基が本発明の請求項において存在する程度まで、総数は前述のように決定されることになる。いくつかの態様において、再帰的置換基は化合物の分子質量が約400〜約1600、約450〜約1200、約500〜約100、約600〜約800である程度でのみ存在する。他の態様において、再帰的置換基は化合物の分子質量が2000未満、1800未満、1600未満、1500未満、1400未満、1200未満、1000未満、900未満、800未満、750未満、700未満、または約600未満である程度でのみ存在する。
【0113】
NQO1レベル上昇を有する固形腫瘍患者を、DNQおよび/またはDNQ
d(DNQ化合物)の薬学的活性型の有効量の投与により処置することができる。DNQおよびDNQ
d化合物は、例えば、
図11の式の1つによって規定される化合物、または
図12に例示する化合物であり得る。n=1〜30である
図11において、nの値は1または1から約30までの任意の整数であり得る。したがって、1〜30の範囲は、1〜30のそれぞれ個々の整数および1〜30の任意の1つから任意の2つ目の数字までの任意の範囲を含む。本明細書に記載の各範囲において、範囲の一部を規定する態様から除外してもよい。例えば、様々な態様において、変数nは6〜24であり得、同じ式の別のn変数は1〜24であり得る。
【0114】
DNQ
d-20についての
図11において、R
1、R
2、およびR
3は前述の式Iについて規定するとおりであり得る。様々な態様において、R
1、R
2、およびR
3はそれぞれ独立にC
1-20アルキルでもあり得、またはR
1、R
2もしくはR
3のそれぞれは独立に、任意に式-W-A-W-もしくは(C
1-C
10)アルキレン基などのリンカーを通じて、ヘキソースのアノマーの位置に連結されうる。
【0115】
DNQ
d-27およびDNQ
d-28についての
図11において、Xは式-W-A-W-のリンカーまたは二価のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルコキシ(cycloalkylkoxy)、ヘテロシクロアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノ、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、スルホニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アミノスルホニル、またはアシルなどの二価の架橋基であり得、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
【0116】
DNQ
d-29についての
図11において、各Xは独立に式-W-A-W-のリンカーまたはDNQ
d-27およびDNQ
d-28について前述した二価の架橋基であり得;かつ各Yは独立に下記であり得る。
【0117】
本発明は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞を有する患者の処置法も提供する。方法は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞を有する患者に式(I)の化合物、または本明細書に記載の組成物の治療的有効量を投与する段階を含みうる。本発明は、NQO1レベル上昇を有する腫瘍細胞の処置法であって、腫瘍細胞を本明細書に記載の化合物または組成物の治療的有効量に曝露する段階を含み、ここで腫瘍細胞は処置される、死滅する、または成長を阻害される方法をさらに提供する。腫瘍または腫瘍細胞は悪性腫瘍細胞であり得る。いくつかの態様において、腫瘍細胞は、非小細胞肺癌などのがん細胞である。
【0118】
したがって、本発明の方法を、末端黒子型黒色腫、光線性角化症、腺癌、腺様嚢胞癌(adenoid cycstic carcinoma)、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細管、カルチノイド、癌、癌肉腫、空洞、胆管癌、軟骨肉腫(chondosarcoma)、脈絡嚢乳頭腫(choriod plexus papilloma)/癌腫、明細胞癌、嚢胞腺腫、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類子宮内膜腺癌、上衣、類上皮、ユーイング肉腫、線維層板型、限局性結節性過形成、ガストリン産生腫瘍、胚細胞腫瘍、神経膠芽腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽腫(hemangiblastoma)、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリノーマ、上皮内新生物(intaepithelial neoplasia)、上皮内扁平上皮新生物(interepithelial squamous cell neoplasia)、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、髄膜、中皮、転移性癌、粘表皮癌、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌結節型黒色腫、燕麦細胞癌、オリゴデンドログリア、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、乳頭状漿液性腺癌、松果体細胞、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、小細胞癌、軟部組織癌、ソマトスタチン産生腫瘍、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮細胞癌(squamous cell crcinoma)、中皮下、表在拡大型黒色腫、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、ビポーマ、高分化癌、ウィルムス腫瘍を含む様々な新生物障害の処置または防止のために用いてもよい。したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、膀胱がん、脳がん(神経膠腫、髄膜腫(meninigioma)、神経鞘腫、および腺腫などの頭蓋内腫瘍を含む)、乳がん、結腸がん、肺がん(SCLCまたはNSCLC)、卵巣がん、膵がん、および前立腺がんを処置するために用いることができる。
【0119】
本発明の化合物の作製法
本発明は、本発明の化合物および組成物の作製法にも関する。化合物および組成物は、有機合成の任意の適用可能な技術によって調製することができる。多くのそのような技術は当技術分野において周知である。しかし、公知の技術の多くはCompendium of Organic Synthetic Methods (John Wiley & Sons, New York), Vol. 1, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1971;Vol. 2, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1974;Vol. 3, Louis S. Hegedus and Leroy Wade, 1977;Vol. 4, Leroy G. Wade, Jr., 1980;Vol. 5, Leroy G. Wade, Jr., 1984;およびVol. 6, Michael B. Smith;ならびにMarch's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5
th Ed. byM.B. Smith and J. March (John Wiley & Sons, New York, 2001), Comprehensive Organic Synthesis; Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry, in 9 Volumes, Barry M. Trost, Ed.-in-Chief (Pergamon Press, New York, 1993 printing) );Advanced Organic Chemistry, Part B: Reactions and Synthesis, Second Edition, Cary and Sundberg (1983);Protecting Groups in Organic Synthesis, Second Edition, Greene, T.W., and Wutz, P.G.M., John Wiley & Sons, New York;およびComprehensive Organic Transformations, Larock, R.C., Second Edition, John Wiley & Sons, New York (1999)などの標準の有機参考書に詳述されている。
【0120】
本発明の組成物のいくつかの例示的調製法を以下に提供する。これらの方法はそのような調製の性質を例示することを意図し、適用可能な方法の範囲を限定することを意図するものではない。さらなる方法および有用な技術は国際公開公報第2013/056073号(Hergenrother et al.)に記載されている。
【0121】
一般に、温度、反応時間、溶媒、後処理手順などの反応条件は、実施する特定の反応に対して当技術分野において一般的なものである。引用する参照材料は、その中で引用される材料と共に、そのような条件の詳細な記載を含む。典型的には、温度は-100℃〜200℃であり、溶媒は必要とされる条件に応じて非プロトン性またはプロトン性であり、反応時間は1分〜10日間である。後処理は典型的には、任意の未反応の試薬を反応停止することに続いて、水/有機層系の間での分配(抽出)および生成物を含む層の分離からなる。酸化および還元反応は典型的には室温に近い温度(約20℃)で実施するが、金属水素化物還元については、温度を0℃〜-100℃に下げることが多い。適当な場合には加熱を用いることもできる。溶媒は典型的には、還元に対しては非プロトン性であり、酸化に対してはプロトン性または非プロトン性のいずれかであってもよい。反応時間は所望の変換が達成されるように調節する。
【0122】
縮合反応は典型的には室温に近い温度で実施するが、非平衡の動力学的に制御された縮合では、低い温度(0℃〜-100℃)も一般的である。溶媒はプロトン性(平衡反応で一般的)または非プロトン性(動力学的に制御された反応で一般的)のいずれかでありうる。反応副生成物の共沸除去および無水反応条件(例えば、不活性ガス環境)の使用などの標準の合成技術は当技術分野において一般的で、該当する場合に適用される。
【0123】
保護基。「保護基」、「ブロック基」、または「PG」なる用語は、ヒドロキシまたは他のヘテロ原子に結合した場合に、この基で望ましくない反応が起こるのを防ぎ、通常の化学的または酵素的段階により除去して、ヒドロキシル基を再建することができる、任意の基を意味する。用いる特定の除去可能なブロック基は必ずしも重大ではなく、好ましい除去可能なヒドロキシルブロック基には、例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナシル、メチル メトキシ、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、t-ブチル-ジフェニルシリル(TBDPS)、またはt-ブチルジメチルシリル(TBS))などの通常の置換基、およびヒドロキシル官能基上に化学的に導入することができ、後に生成物の性質に適合性の緩和な条件で化学的または酵素的方法のいずれかによって選択的に除去可能な任意の他の基が含まれる。式(I)のR基は、本明細書に記載の保護基でもあり得る。
【0124】
適切なヒドロキシル保護基は当業者には公知で、T.W. Greene, Protecting Groups In Organic Synthesis; Wiley: New York, 1981 (''Greene'')およびその中で引用される参照文献、ならびにKocienski, Philip J.; Protecting Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994)により詳細に開示され、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0125】
保護基は、本発明の方法によって化合物を調製するための合成手順、すなわち経路または方法中に、保護された基との副反応を防止するために利用可能であり、一般に公知で使用され、任意に使用される。大部分は、どの基を保護するか、いつするかの決定、および化学的保護基「PG」の性質は、それに対して保護する反応の化学(例えば、酸性、塩基性、酸化的、還元的または他の条件)および合成の所期の方向に依存することになる。
【0126】
化合物が複数のPGで置換されている場合、保護基は同じである必要はなく、一般的に同じではない。一般に、PGはカルボキシル、ヒドロキシル、チオ、またはアミノ基などの官能基を保護するため、したがって副反応を防止し、またはそれ以外に合成効率を促進するために用いることになる。遊離の脱保護された基を生じるための脱保護の順序は、合成の所期の方向および発生する反応条件に依存し、当業者によって決定される任意の順で起こりうる。
【0127】
本発明の化合物の様々な官能基を保護してもよい。例えば、-OH基(ヒドロキシル、カルボン酸、または他の官能基のいずれか)の保護基には「エーテルまたはエステル形成基」が含まれる。エーテルまたはエステル形成基は本明細書に示す合成スキームにおける化学保護基として機能することができる。しかし、いくつかのヒドロキシルおよびチオ保護基は、当業者には理解されるとおり、エーテルまたはエステル形成基のいずれでもない。カルボン酸保護基および酸のための他の保護基に関するさらなる詳細は、上で引用するGreeneを参照されたい。そのような基には、例としてであって、限定するものではないが、エステル、アミド、ヒドラジドなどが含まれる。
【0128】
塩および溶媒和物
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は本発明の範囲内であり、所望の薬理活性を保持し、生物学的に有害でない(例えば、塩は過度に毒性、アレルギー性、または刺激性でなく、生物が利用可能である)、酸または塩基付加塩を含む。化合物が、例えば、アミノ基などの塩基性基を有する場合、薬学的に許容される塩は無機酸(塩酸、ヒドロホウ酸、硝酸、硫酸、およびリン酸などの)、有機酸(例えば、アルギネート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸などの)と形成されうる。本発明の化合物が、例えば、カルボン酸基などの酸性基を有する場合、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、Na
+、Li
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+)などの金属、アンモニアもしくは有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジンおおびオルニチン)と塩を形成しうる。そのような塩は、化合物の単離および精製中にインサイチューで、または精製した化合物をその遊離塩基もしくは遊離酸の形で、それぞれ適切な酸もしくは塩基と別々に反応させ、そのようにして生成した塩を単離することによって調製することができる。
【0129】
本明細書に開示する分子の多くは、1つまたは複数のイオン化可能な基[プロトンを除去(例えば、-COOH)もしくは追加(例えば、アミン)することができる、または四級化することができる(例えば、アミン)基]を含む。そのような分子およびその塩のすべての可能なイオン型は、本明細書の開示に個別に含まれることが意図される。本明細書に記載の化合物の塩に関して、当業者であれば、所与の適用のために本発明の塩の調製に適した、種々の入手可能な対イオンの中から選択することができる。特定の適用において、塩の調製のための所与のアニオンまたはカチオンの選択は、その塩の溶解性を増大または低減することがある。
【0130】
本明細書に記載の化合物の適切な塩の例には、それらの塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩またはラセミ混合物を含むその混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩およびグルタミン酸などのアミノ酸との塩が含まれる。これらの塩は当業者には公知の方法によって調製してもよい。同様に含まれるのは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩などの塩基付加塩、または類似の塩である。本発明の化合物が相対的に塩基性の官能基を含む場合、そのような化合物の中性型を十分な量の所望の酸と、ニートまたは適切な不活性溶媒中のいずれかでで接触せることにより、酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素(monohydrogencarbonic)、リン酸、リン酸水素(monohydrogenphosphoric)、リン酸二水素(dihydrogenphosphoric)、硫酸、硫酸水素(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸に由来するもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸に由来する塩が含まれる。同様に含まれるのは、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツノル(galactunoric)酸などのような有機酸の塩である。本発明の特定の具体的化合物は、化合物が塩基または酸付加塩のいずれかに変換されるのを可能にする、塩基性および酸性官能基の両方を含みうる。
【0131】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和型、ならびに水和型を含む溶媒和型として存在することができる。一般に、溶媒和型は非溶媒和型と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の化合物は、複数の結晶型または非結晶型で存在してもよい。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用のために等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0132】
「溶媒和物」なる用語は、1つまたは複数の溶媒分子をその固体構造に結合して有する固体化合物を意味する。溶媒和物は、化合物が溶媒から結晶化するときに生成しうる。溶媒和物は、凝固と同時に1つまたは複数の溶媒分子が固体結晶マトリックスの不可欠な部分になる場合に生成する。本明細書に記載の式の化合物は溶媒和物、例えば、エタノール溶媒和物であり得る。溶媒和物のもう1つのタイプは水和物である。「水和物」は同様に、1つまたは複数の水分子をその固体または結晶構造に分子レベルで密接に結合して有する固体化合物を意味する。水和物は、化合物が水中で凝固または結晶化する際に生成し得、ここで1つまたは複数の水分子は固体または結晶マトリックスの不可欠な部分となる。本明細書に記載の式の化合物は水和物であり得る。
【0133】
薬学的組成物
以下は、薬学的および薬理学的態様に関連する情報を記載し、当業者には入手可能な当技術分野における情報によってさらに補足される。厳密な製剤、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して、個々の医師または臨床家が選択することができる(例えば、Fingl et al., in The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975, Ch. 1参照)。
【0134】
主治医は、毒性、または臓器機能不全などにより、投与をいかにして、およびいつ停止、中断、または調節するかを知っていることに留意すべきである。反対に、主治医は、臨床反応が十分でない場合に、処置をより高いレベルに調節することも知っているであろう(毒性局面を考慮して、または防止して)。対象となる障害の管理における投与量は、処置する状態の重症度、および投与経路に応じて変動し得る。状態の重症度は、例えば、部分的には標準の予後評価法によって評価してもよい。さらに、用量およびおそらくは投与頻度も、状況、例えば、個々の患者の年齢、体重、および反応に応じて変動し得る。前述のものに匹敵するプログラムを獣医学において用いてもよい。
【0135】
処置中の特定の状態および選択した標的指向法に応じて、そのような薬剤を製剤化し、全身または局所投与してもよい。製剤および投与の技術はAlfonso and Gennaro (1995)および当技術分野における他所で見いだし得る。
【0136】
化合物を患者に、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤との組み合わせで投与することができる。「薬学的に許容される」なる語句は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用に適した、リガンド、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
【0137】
「薬学的に許容される担体」なる語句は、当業者には公知であろうとおり、任意およびすべての溶媒、分散媒、希釈剤、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、緩衝剤、保存剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、色素、そのような同様の材料およびその組み合わせを含む(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。任意の通常の担体が活性成分と不適合である場合を除いて、化学療法剤または薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0138】
DNQ
dまたはDNQ化合物を、それが固体、液体またはエアロゾル型で投与されるかどうか、および注射などの投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体と組み合わせてもよい。本発明は、当業者には公知であろうとおり、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、表面、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、経口、表面、局所、注射、注入、持続点滴、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルにより、洗浄により、脂質組成物(例えば、リポソーム)中、または他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって投与することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0139】
患者に投与する本発明の組成物の実際の投薬量は、体重、状態の重症度、処置中の疾患のタイプ、過去もしくは現在の治療的介入、患者の特発性疾患、および投与経路などの身体的および生理的な因子によって決定することができる。投与を担当する医師は、いかなる場合にも、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に対する適切な用量を決定することになる。
【0140】
対象に投与する場合、有効量は,当然のことながら、処置中の特定の癌;特定のがんの遺伝子型;がんの重症度;年齢、身体状態、サイズおよび体重、同時処置、処置の頻度、ならびに投与様式を含む個々の患者パラメーターに依存することになる。これらの因子は医師には周知で、日常的実験だけによって対応することができる。いくつかの態様において、健全な医学的判断に従って、最高安全用量を用いることが好ましい。
【0141】
特定の態様において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%のDNQ
dまたはDNQ化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、単体の重量の約2%〜約75%、または例えば約25%〜約60%、およびそれらの中で導き出せる任意の範囲を構成し得る。他の非限定例において、用量は、1回の投与あたり約0.1mg/kg/体重、0.5mg/kg/体重、1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約20mg/kg/体重、約30mg/kg/体重、約40mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約750mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびそれらの中で導き出せる任意の範囲も構成し得る。本明細書に挙げる数値から導き出せる範囲の非限定例において、約10mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重の範囲などを、前述の数値に基づいて投与することができる。
【0142】
いかなる場合にも、組成物は、1つまたは複数の成分の酸化を遅延させるための様々な抗酸化剤を含んでもよい。さらに、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤により、微生物の作用の防止をもたらすことができる。
【0143】
DNQ
dまたはDNQ化合物などの本明細書に記載の活性物質は、遊離塩基、中性または塩の形態で組成物に製剤化してもよい。薬学的に許容される塩には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基から誘導される遊離カルボキシル基と形成される塩が含まれる。
【0144】
経口使用のための薬学的製剤は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、任意に得られた混合物を粉砕し、かつ望まれる場合には適切な補助剤を加えた後、錠剤または糖衣錠の核を得るために顆粒の混合物を処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む、糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。望まれる場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤を加えてもよい。
【0145】
糖衣錠の核は任意に適切なコーティングをして提供される。このために、濃縮糖溶液を用いてもよく、これらは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、ならびに/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでもよい。特定のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素を錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0146】
組成物が液体の形である態様において、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)、およびその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により;例えば、液体ポリオールもしくは脂質などの担体中への分散による、必要な粒径の維持により;例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの界面活性剤の使用により;またはそのような方法の組み合わせにより、維持することができる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはその組み合わせなどの、等張化剤を含むことが好ましいであろう。
【0147】
無菌注射液剤は、活性化合物を必要とされる量の適切な溶媒中に、必要があれば上に挙げた様々な他の成分と共に組込み、続いて滅菌ろ過することにより調製する。一般に、分散剤は、様々な滅菌活性成分を基本の分散媒および/または他の成分を含む無菌ビヒクル中に組み込むことにより調製する。無菌注射液剤、懸濁剤または乳剤の調製用の無菌散剤の場合、好ましい調製法は真空乾燥または凍結乾燥技術であり、これらは事前に滅菌ろ過したその液体媒質から活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。液体媒質は、必要があれば適切に緩衝化され、液体希釈剤はまず十分な食塩水またはグルコースで注射前に等張にされるべきである。
【0148】
組成物は、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。したがって、好ましい組成物は、約5よりも高い、好ましくは約5〜約8、より好ましくは約5〜約7のpHを有する。エンドトキシン汚染は安全レベル、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきである。
【0149】
特定の態様において、注射用組成物の長期吸収は、組成物中の、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、またはその組み合わせなどの、吸収遅延剤の使用によってもたらすことができる。
【0150】
インビボ投与のためのDNQ化合物の製剤
リン酸緩衝化食塩水(PBS)中、pH7.4でのDNQの水溶性を、LC-MSで測定した。DNQをPBS中で30分間音波処理し、次いで溶解していない固体を0.45μmシリンジフィルターを通してのろ過により除去し、ろ液をLC-MSで分析した(λ=275nm、負モードでのESI-TOF)。最適音波処理時間は、DNQを1、5、10、および30分間音波処理することによって決定した。溶液中のDNQの濃度は1、5、および10分の間で実質的に増大したが、10分と30分との間ではわずかな差しかなかった。30分間の音波処理中、水浴は45℃まで加温した(試料はろ過の前に室温まで冷却した)。較正曲線は、DNQをメタノール中に500μMの濃度まで溶解し、この保存液の水:メタノール=80:20の希釈液を作製することにより、1〜100μMまで生成した。較正曲線(UV吸光度による尺度)はこの範囲全体で直線で;1μMはほぼ検出限界であった。DNQのPBS中の溶解度は115μMと測定された。溶液は非常に薄い黄色であった。
【0151】
DNQの水溶性が低いため、本発明者らはDNQの溶解性を改善するために、一般的な賦形剤の2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)の使用を試験した。HPβCD非存在下で、DNQの溶解性は強塩基性溶液では有意に増大し、pHが中性に戻ると、DNQは沈澱する。しかし、十分な量のHPβCD存在下では、DNQはpHが中性に戻っても沈澱しない。HPβCD中のDNQのこの同じ中性溶液は、直接(すなわちpH調節なしに)作製することはできない。これは、DNQ化合物が塩基中で脱プロトン化し、この脱プロトン化分子は、pHが低下するにつれてのプロトン化を防止するのに十分安定な、HPβCDとの緊密な複合体を形成する。水性塩基中で適度に脱プロトン化されうるDNQ上の唯一のプロトンはN-Hである。DNQのN-H結合の酸性度は測定していないが、DNQの誘導体では測定されており、8.0のpKaを有することが判明している。
【0152】
HPβCD中でDNQ化合物を製剤化するためのプロトコルは以下のとおりである:DNQ化合物をpH7.4のPBS中HPβCDの20%溶液中でスラリー化し、次いで10M NaOHの添加によってpHを高めて、DNQ化合物の溶解を誘導する。pHを1M HClの注意深い添加によってpH7.5〜8.0に戻す。DNQ化合物の3.3mM溶液をこの方法によって作製することができ、これは少なくとも24時間安定である。これはPBS単独に比べてDNQの溶解性の30倍増大を表す。本発明者らは当初、20%HPβCD溶液を選択した。しかし、本発明者らは、β-lapがヒト臨床試験用にHPβCDの40%溶液として製剤化されていることを見出し、我々のDNQについての経験は、DNQの濃度はHPβCDの濃度と共に直線的に増大することを示し;したがって40%HPβCD溶液はDNQおよび他のDNQ化合物の6.6mM溶液の作製を可能にするであろう。
【0153】
併用療法
本明細書に記載の活性成分(例えば、式(I)の化合物)は他の活性成分との組み合わせで用いることもできる。そのような組み合わせは、処置する状態、成分の交差反応性および組み合わせの薬物特性(pharmaco-property)に基づいて選択される。例えば、がんを処置する場合、組成物を他の抗がん化合物(パクリタキセルまたはラパマイシンなどの)と組み合わせることができる。
【0154】
本発明の化合物は、患者への同時または逐次投与のための単位剤形において、1つまたは複数の他の活性成分と組み合わせることも可能である。併用療法を同時または逐次投与計画として投与してもよい。逐次投与する場合、組み合わせを複数回投与してもよい。
【0155】
併用療法は「相乗作用」および「相乗的」を提供し得、すなわち、活性成分を一緒に用いた場合に達成される効果は、化合物を別々に用いることで得られる効果の合計よりも大きい。相乗効果は、活性成分を:(1)組み合わせ製剤中で同時製剤化し、投与または送達する;(2)別々の製剤として交替にまたは並行に送達する;または(3)いくつかの他の投与計画による場合に獲得しうる。交替療法で送達する場合、相乗効果は化合物を逐次、例えば、別々の錠剤、丸剤もしくはカプセル剤で、または別々のシリンジ中の異なる注射により、投与または送達する場合に獲得しうる。一般に、交替療法中は、各活性成分それぞれの有効用量を逐次、すなわち連続して投与するが、併用療法では、複数の活性成分の有効量を一緒に投与する。相乗的抗がん効果は、組み合わせの個々の化合物の予想される純粋に相加的な効果よりも大きい抗がん効果を意味する。
【0156】
併用療法は米国特許第6,833,373号(McKearn et al.)によってさらに記載されており、これは本明細書に記載の化合物と組み合わせうるさらなる活性剤、および本明細書に記載の化合物で処置しうるさらなるがんのタイプおよび他の状態を含む。
【0157】
したがって、DNQ
dまたはDNQを別の薬剤または治療法、好ましくは別のがん処置との組み合わせで使用しうることは、本発明の局面である。DNQ
dまたはDNQは、数分から数週間の間隔で、他の薬剤処置の前または後に行ってもよい。他の薬剤および発現コンストラクトを細胞に別々に適用する態様において、一般には、薬剤および発現コンストラクトが細胞に対して有利に組み合わされた効果をまだ発揮しうるように、各送達の間で著しい時間が経過しないようにする。例えば、そのような場合には、細胞、組織または生物を活性剤と、2、3、4またはそれ以上の様式で実質的に同時に(すなわち、約1分未満内に)接触させうることが企図される。他の局面において、1つまたは複数の薬剤を、活性剤の投与の前および/または後約1分、約5分、約10分、約20分 約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約9時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、約28時間、約31時間、約35時間、約38時間、約42時間、約45時間から約48時間まで、またはそれ以上の範囲内で投与してもよい。特定の他の態様において、薬剤を活性剤の投与の前および/または後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約8日、約9日、約12日、約15日、約16日、約18日、約20日から約21日までの範囲内で投与してもよい。いくつかの状況では、しかし、それぞれの投与の間で数週間(例えば、約1、約2、約3、約4、約6、もしくは約8週またはそれ以上)が経過する場合、処置の期間を著しく延長することが望ましいこともある。
【0158】
本発明の化学療法組成物の患者への投与は、毒性がある場合にはこれを考慮して、化学療法剤の投与の一般的プロトコルに従うことになる。処置周期を必要に応じて繰り返すことが予想される。様々な標準の療法または補助的がん療法、ならびに外科的介入を、記載の活性剤との組み合わせで適用しうることも企図される。これらの療法には、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法および手術が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0159】
化学療法
がん療法は、化学物質および放射線に基づく処置の両方との様々な併用療法も含みうる。併用化学療法には、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン、kアンプトスター(camptostar)、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポシロン、タキソテール、タモキシフェン、5-フルオロウラシル、メトキシトレキセート(methoxtrexate)、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、R115777、L778,123、BMS 214662、イレッサ(商標)(ゲフィチニブ)、タルセバ(商標)(塩酸エルロチニブ)、EGFRに対する抗体、グリベック(商標)(イマチニブ)、イントロン、ara-C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシル マスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン(pentostatine)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、テニポシド、17α-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾール、ナベルベン(navelbene)、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、ドロロキサフィン(droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、アバスチン、ハーセプチン、ベキサール、ゼバリン、トリセノックス、ゼローダ、ビノレルビン、ポルフィマー、アービタックス(商標)(セツキシマブ)、リポソーム製剤、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、トラスツズマブ、レロゾール(lerozole)、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスフォミド(ifosfomide)、リツキシマブ、C225、キャンパス、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP 16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、パクリタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、、トランス白金製剤(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前述の任意の類縁体もしくは誘導体変種などの化学療法剤の使用を含む。
【0160】
放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く用いられている他の因子には、ガンマ線、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への指向送達として一般に公知のものが含まれる。マイクロ波およびUV照射などの、DNA損傷因子の他の形態も企図される。おそらく、これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の組み立ておよび維持における広範囲の損傷に影響をおよぼす。X線の線量範囲は、長期間(例えば、3〜4週間)のためには50〜200レントゲンの1日線量から2000〜6000レントゲンの1回線量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強さおよび種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。「接触した」および「曝露した」なる用語は、細胞に適用する場合、本明細書において、それにより治療用コンストラクトおよび化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達される、または標的細胞に直接並置されるプロセスを記載するために用いられる。細胞死滅または静止を達成するために、両方の薬剤を細胞に、細胞を死滅させる、またはその分裂を防止するのに有効な組み合わせ量で送達する。
【0161】
免疫療法
免疫療法は、一般には、がん細胞を標的とし、これらを破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に頼っている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は単独で治療のエフェクターとしてはたらいてもよく、または細胞死滅に実際に影響をおよぼすために他の細胞を動員してもよい。抗体は薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートし、単に標的指向剤としてはたらいてもよい。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と、直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞毒性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0162】
免疫療法は、したがって、遺伝子療法と共に、併用療法の一部として用いうるであろう。併用療法の一般的アプローチを以下に論じる。一般に、腫瘍細胞は、標的指向に適用できる、すなわち、他の細胞の大部分には存在しない、あるマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかは本発明の文脈において標的指向のために適切であり得る。一般的腫瘍マーカーには、がん胎児抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が含まれる。
【0163】
遺伝子療法
さらにもう1つの態様において、第2の処置は、治療用ポリヌクレオチドを第1の化学療法剤の前、後、または同時に投与する第2の遺伝子療法である。遺伝子産物をコードするベクターと共に化学療法剤を送達することで、標的組織に対して組み合わせの抗過剰増殖効果がある。
【0164】
手術
がんを有する人の約60%が、ある種の手術を受けることになり、それには予防的、診断的もしくは病期分類、治癒的、および緩和的手術が含まれる。治癒的手術は、本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の治療と共に使用し得るがん処置である。治癒的手術は、がん性組織の全て、または一部を物理的に除去し、切り出し、かつ/または破壊する切除術を含む。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を意味する。腫瘍切除術に加えて、手術による処置には、レーザー手術、冷凍手術、電気手術、および顕微鏡制御下での手術(モース術)が含まれる。本発明は表在性がん、前がん、または付随的な量の正常組織の除去とともに用い得ることが、さらに企図される。
【0165】
当業者であれば、具体的に例示するもの以外の出発原料、生物材料、試薬、合成法、精製法、分析法、検定法、および生物学的方法を、過度の実験に頼ることなく、本発明の実施において用いうることを理解するであろう。任意のそのような材料および方法の、すべての当技術分野において公知の機能的等価物は、本発明に含まれることが意図される。用いてきた用語および表現は、説明の用語として用いており、限定のものではなく、そのような用語および表現の使用において、示し、記載する特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、特許請求する本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが理解される。したがって、本発明を好ましい態様および任意の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示する概念の改変および変種が当業者によって行われてもよいこと、ならびにそのような改変および変種は添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0166】
以下の実施例は、前述の発明を例示することが意図され、その範囲を狭めると解釈されるべきではない。当業者であれば、実施例が本発明を実施しうる多くの他の様式を示唆することを容易に理解するであろう。多くの変種および改変を行いうるが、本発明の範囲内にとどまることが理解されるべきである。本発明は以下の非限定的実施例によってさらに理解されるであろう。
【0167】
スキームおよび実施例において用いられる略語には下記が含まれうる:
A549=ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞
ATP=アデノシン三リン酸
β-lap=β-ラパコン
DHE=ジヒドロエチジウム
DNQ=デオキシニボキノン
DNQ
d=デオキシニボキノンの任意の類縁体または誘導体
ELISA=酵素結合免疫吸着検定法
h=時間
H596=[NCI-H596] ヒト肺腺扁平上皮癌細胞株
HT1080=霊長類線維肉腫細胞株
LD
50=死亡を引き起こす確立50%を有する致死用量
LD
90=死亡を引き起こす確立90%を有する致死用量
LD
100=死亡を引き起こす確立100%を有する致死用量
MCF-7=ヒト乳腺癌細胞株
MDA-MB-231=ヒト乳がん細胞株
MIA-PaCa2=膵臓がん細胞株
mins=分
NADH=ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
NQO1=NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1
NSCLC=非小細胞肺がん細胞
OCR=酸素消費速度
p53=腫瘍抑制タンパク質
PC-3=ヒト前立腺がん細胞株
ROS=反応性酸素種
±SE=標準誤差
siRNA=低分子干渉リボ核酸
shRNA=低分子ヘアピン型リボ核酸
μM=マイクロモル濃度
nM=ナノモル濃度
μmol=マイクロモル
【実施例】
【0168】
実施例1. 塩基除去修復阻害は膵臓がんの腫瘍選択的療法のためのβ-ラパコン媒介性細胞死を相乗的に増強する
DNA塩基除去(BER)またはSSB修復プロセスをPARP1阻害剤で阻止することにより、膵臓がんなどのNQO1+過剰発現がんに対するNQO1生体内活性化可能薬の有効性を劇的に高め、その必要な用量を著しく下げることができる。これらの方法を示すために、インビトロでNQO1+対NQO1-またはshRNAノックダウン膵臓がん細胞に対し、BERまたはSSB修復の阻害がNQO1生体内活性化可能薬と相乗作用することを機構的に示すための実験を行った。加えて、インビボでNQO1生体内活性化可能薬の有効性を増強するためにMeOXまたはPARP1阻害剤を最適化するための実験も行った。したがって、DNA修復阻害剤(例えば、BERおよびPARP1阻害剤)を用いての併用療法を、腫瘍特異的アプローチとして用いることができる。
【0169】
本実施例は、膵臓がん、ならびに他のNQO1過剰発現がんに対するNQO1生体内活性化可能薬の腫瘍特異的有効性を示し;また現行の、制限のある、がん療法の「合成致死性」アプローチ以外の、PARP1阻害剤の「腫瘍選択性」を示す。
【0170】
NQO1過剰発現膵臓がん細胞に対してメトキシアミン(MeOX)をβ-lapと共に加える相乗効果を試験した。MeOX+β-lapの相乗作用は以下の結果を示した:a、NQO1+細胞ではβ-lapの亜致死用量の致死性を増強し、肩(Dq)を低減し、致死率(Do)を増大し、かつアポトーシス(TUNEL+)を誘導したが、NQO1-、MIA PaCa-2膵臓細胞では見られなかった;b、腫瘍細胞でのみDNA損傷形成の増大;c、ATPレベルの劇的な損失と、回復はほとんどなし;およびd、解糖の劇的な抑制。したがって、MeOXはβ-lapによるPARP1過剰活性化および相乗的細胞殺滅を増強する。同様の結果がshRNA-XRCC1ノックダウン細胞でも認められた。しかし、Ogg1ノックダウン細胞はβ-lapに耐性となった。機構的に、データはPARP1がMeOX-AP修飾部位またはSSBを検出し、PARP1過剰活性化および相乗的細胞死を可能にすることを示している。MeOXは非毒性物質であるため、薬剤の組み合わせは膵臓がん、ならびに他のNQO1過剰発現固形がんの処置のための治療法を提供しうる。
【0171】
図1は、膵臓腫瘍および関連する正常組織におけるNQO1およびカタラーゼの発現を示す。したがって、カタラーゼは腫瘍組織に対して正常組織で有意に過剰発現される。膵臓がんおよび正常組織におけるNQO1:カタラーゼ比はβ-lapおよびDNQなどのNQO1生体内活性化可能薬の有効性の主要な決定要因である(
図2)。特に、高いNQO1:カタラーゼ比存在下で、NQO1生体内活性化可能薬は腫瘍特異的DNA損傷によって死滅させ、PARP1過剰活性化および特有のプログラム壊死細胞死を誘導する。腫瘍特異的致死性はp52状態、Bax/bak損失、がん遺伝子活性化状態、細胞周期状態、および低酸素状態には無関係である。
【0172】
NQO1はβ-lap細胞毒性の主な決定要因であり、shRNA-NQO1ノックダウンによるNQO1の機能的阻害はβ-lap曝露後の細胞死から保護する(
図3)。β-lap誘導性DNA損傷はNQO1依存的、腫瘍特異的で、NQO1 shRNA-ノックダウンによって有意に低減される(
図4)。同様に、NQO1生体内活性化可能薬は、DNA修復を阻害しうる解糖の劇的抑制およびATPの損失を引き起こす(
図5)。
【0173】
BERまたはSSB修復の変更はNQO1生体内活性化可能薬の有効性を腫瘍選択的様式で増強することができる。Ogg1グリコシラーゼのsiRNA媒介性ノックダウンは、β-lap処置膵臓がん細胞をβ-ラパコンに対して耐性にする(
図6)が、NQO1生体内活性化可能薬はSSBおよび塩基損傷を腫瘍特異的様式で引き起こし、したがってこれらを用いてDNA修復阻害剤を腫瘍選択的にすることができる(
図7)。PARP1阻害剤は、膵臓がん細胞などのNQO1+がん細胞における有効性増強について、NQO1生体内活性化可能薬と相乗作用する(
図8)。同様に、NQO1生体内活性化可能致死性はMeOXによって増強され、代謝効果を伴う(
図9)。さらに、
図10に示す前臨床試験データによって示されるとおり、β-ラパコンはMIA PaCa-2腫瘍異種移植片に対する有意な抗腫瘍効果を有する。
【0174】
したがって、本実施例およびその支持データは、NQO1生体内活性化可能薬がDNA塩基損傷および一本鎖DNA切断を誘導すること、ならびに塩基除去修復(BER)の阻害はβ-lap媒介性膵臓がん選択的致死性を増強することを示している。加えて、PARP1活性の阻害はNQO1+膵臓がんに対するβ-lapの有効性を増強する。最後に、
図11の式の化合物および
図12の特定の化合物などの、NQO1生体内活性化可能薬の使用は、DNA修復阻害剤の腫瘍選択的使用を提供し、NQO1生体内活性化可能薬はグルコース代謝の抑制などの劇的効果を引き起こす。
【0175】
実施例2. DNQ化合物およびβ-ラパコンのデータおよび治療法
IB-DNQ(DNQ-87;
図12)はβ-ラパコンよりもはるかに低い用量、および親DNQ化合物と同等の用量で作用する。
図13に示すとおり、これは乳がん細胞に対してNQO1依存的様式で、ならびに三重陰性乳がん細胞に対して有効である。β-ラパコン(β-lap)とは異なり、DNQ87の有効性はNQO1依存的様式で増大し、治療ウィンドウはより大きい(
図14)。
図15に示すとおり、DNQ87は細胞死を引き起こし、これはジクマロール、カタラーゼ、およびBAPTA-AM(カルシウムキレート化剤)によって、上位からこの順に阻止され得(A)、NQO1生体内活性化可能薬によって引き起こされる細胞死の提唱される経路と一致する(B)。(C)DNQ87曝露によって引き起こされるPARP1過剰活性化を、PAR-PARP1形成によって測定し、μ-カルパイン媒介性p53切断(C)および細胞死中のPARP1の約60kDaのタンパク質分解性断片への非定型的切断(D)によって強調された。ガンマ-H2AX、ATMのser1981でのリン酸化、およびDNA-PKcsのThr1892部位でのリン酸化によりモニターして、DNQ87は遅延様式でDNA損傷(DNA二本鎖切断)も引き起こした(
図16)。これらのデータは、DSB修復阻害剤を用いてDNQ87致死性を増強し得ることも示している。重要なことに、アルカリ性溶出は広範なDNA塩基損傷およびDNA一本鎖切断を示すが、中性コメット検定により評価した同じ細胞はDNA損傷を示さない。
【0176】
P-ATMおよびP-H2AXによりモニターしたDSB形成はNQO1過剰発現ヒト乳がん細胞で遅延し、PARP1過剰活性化後にのみ起こる。IB-DNQ(DNQ-87;
図12)は大量のH
2O
2生成を引き起こして、DNA塩基および一本鎖切断につながるが、これはDNAを保護し、塩基除去およびDNA一本鎖切断修復を刺激するPARP1によって速やかに認識される。PARP1がその過剰活性化によって枯渇したときにのみ、DNA二本鎖切断が認められる(
図17)。
図18は、NQO1過剰発現MCF-7ヒト乳がん細胞における正常組織を模擬するためにジクマロールを用いての、DNQ87の治療ウィンドウを示す。
図19に示すとおり、NQO1生体内活性化可能薬への曝露は、500μM H
2O
2曝露と同等のレベルである、高い8-オキソグアニンレベルを生じる。8-オキソグアニン(8-OG)を優先的に検出する、グリコシレート、Ogg1のノックダウンは、β-ラパコンなどのNQO1生体内活性化可能薬に対する劇的な耐性をもたらす。A)β-ラパコン曝露は8-オキソグアニンの大量生成を引き起こす。B、C)2つの別々の実験を示す。Mia Paca-2膵臓がん細胞をsiRNA-スクランブルまたはOgg1特異的siRNAに24時間曝露し、次いで細胞を示した用量のβ-ラパコンで2時間処置した。次いで、コロニー形成能検定により測定した生存率を実施し、用いたβ-ラパコン用量でグラフにした。
【0177】
NQO1発現細胞は、がん細胞中ではカタラーゼのレベルが低下しているため、カタラーゼによって除去されない高レベルのH
2O
2を生じる。これに対して、正常組織は低いNQO1レベルを有し、薬物への曝露によってH
2O
2が生じれば、上昇したレベルのカタラーゼがこの薬剤に対する偏性ROSを除去する。したがって、正常組織は保護される(
図2参照)。DNQ、β-ラパコンまたはそれらのそれぞれの類縁体により生じるDNA損傷についての知識は、致死性増強のための新しく、非自明の戦略を可能にする。反対に、DNA修復阻害剤は腫瘍選択性を欠くため、一般には失敗する。特定の固形腫瘍でもっぱら生じるNQO1依存的DNA損傷は、特定のDNA塩基損傷(例えば、8-オキシグアニン)を引き起こし、これは無益DNA修復プロセスを通じて、PARP1過剰活性化をもたらす。この損傷についての知識は、NQO1生体内活性化可能薬の腫瘍特異的致死性を増強するための2つの別々の戦略をもたらす:(A)現在臨床試験中である、メトキシアミン(MeOX)などのDNA脱プリン/脱ピリミジン(AP部位)修飾剤の使用;および(B)その過剰活性化を防止するが、がん細胞において無益BER修復およびDNA複製によって引き起こされるDNA一本鎖と、次いでDNA二本鎖切断の修復も防止する、PARP1阻害剤の使用。本発明者らは以前にNQO1生体内活性化可能薬による致死性にはPARP1過剰活性化が必要であることを示すデータを得ていたため、PARP1活性を阻害して相乗作用を達成することは驚くべき結果である。細胞は、MeOXを用いての(A)のメカニズムによるPARP1過剰活性化増強およびプログラム細胞死によって死滅する一方で、細胞は、PARP1阻害剤を用いてのBに概要を示す戦略における正常なアポトーシスによって死滅する(
図7参照)。
【0178】
図20に示すとおり、メトキシアミンはβ-ラパコン誘導性の致死性を増強する。A、非致死用量のメトキシアミン(MXまたはMeOX)をβ-ラパコンに曝露した細胞に添加すると、Mia Paca2膵臓がん細胞の相乗的致死をもたらす。BおよびC、メトキシアミン(MeOX)は、相対生存率およびATP損失により測定して>100mMまで非毒性である、AP部位修飾化学物質である。NQO1生体内活性化可能薬との組み合わせでの最適濃度は6〜12mMの間である。
図21は、原理試験の証明を示す。A. メトキシアミン(MeOX)はMiaPaca2膵臓がん細胞におけるβ-ラパコン(β-lap)誘導性の致死を増強する。B. MeOXの添加はAP部位を修飾し、したがってβ-lap+MeOX曝露細胞におけるAP部位形成のシグナルを低減する。MeOX用量は12mM、β-lap用量は6μMであった。C、D. XRCC1は塩基除去修復(BER)を可能にする足場タンパク質である。XRCC1の除去は、PARP1が結合し、活性化/過剰活性化されうる、AP部位およびDNA一本鎖切断の増大を引き起こす。XRCC1のノックダウン(C)はβ-ラパコン処置の致死性を増強する。
【0179】
図22に示すとおり、非毒性用量のメトキシアミン(MeOX)の添加は、亜致死用量のβ-ラパコン(2μM)に曝露したMia PaCa-2細胞におけるDNA損傷を大きく増強する。A)ガンマ-H
2AXによりモニターしたDNA二本鎖切断(DSB)は、非毒性用量のメトキシアミン(MeOX)の添加によって大きく増強される。MeOX、12mM;ジクマロール、NQO1阻害剤、50μM;β-ラパコン用量、表示量または2μM。Mia Paca2細胞に対して、2〜2.5μMは亜致死、6μMは致死量である。H
2O
2用量は500μM、2時間であった。すべての処置の期間は2時間であった。細胞を、2時間の前処置と、次いで該当する場合にはβ-lapとの組み合わせで2時間として、MeOXにより2×処置した。
【0180】
メトキシアミン前処置および同時処置は、β-ラパコン(β-lap)などのNQO1生体内活性化可能薬に曝露したMia PaCa-2膵臓がん細胞におけるATP回復反応を防止する(
図23)。A、ATP回復反応は、おそらくはPARP1過剰活性化増強により、MeOXおよびXRCC1ノックダウンによって防止される。B、β-lap処置Mia PaCa-2細胞へのMeOX添加は、ATP回復を防止する。C、BAPTA-AM、カルシウムキレート化剤は、MeOX相乗的ATP損失を防止する。BAPTA-AMは6μMで用いた。D、MeOXの添加はNAD+損失を増強し、PARP1過剰活性化増強t一致する。
【0181】
メトキシアミン(MeOX)の添加は、致死および亜致死用量でのβ-lap処置Mia PaCa-2細胞におけるATP回復反応を防止する(
図24)。β-ラパコンの致死用量は6および4μMであったが、3.0および2.5μMはβ-ラパコン(β-lap)の亜致死用量である。
【0182】
ピルビン酸メチル(MP)はβ-ラパコン誘導性細胞死を抑制する(
図25)。効果はTCAサイクルの回復によるものであろうが、MPも顕著な酸素フリーラジカル(反応性酸素種、ROS)スカベンジャーである。
【0183】
メトキシアミンの添加は、おそらくは修復不能(およびMeOX修飾)AP部位を生じるのに必要な初期ROS(H
2O
2)が少ないため、MP効果を減弱する(
図26)。β-lap用量は表示のとおり、MPは1または5mMで使用、およびMeOXは12mMで使用した。
【0184】
β-ラパコンに曝露したMia PaCa-2細胞において、メトキシアミン(MeOX)はPARP1過剰活性化誘導性NAD+/ATP損失を促進し、修復をさらに促進する(
図27)。A. β-ラパコンはMia PaCa2細胞における酸素消費速度(OCR)を増強する。β-lapの致死用量は劇的なOCRスパイクと、続くすべての代謝能の損失を引き起こす。β-lapの亜致死用量は経時的にOCRの一貫した上昇を引き起こす。いずれの反応もNQO1媒介性である。B、MeOXの添加は、β-ラパコンの致死用量(4μM)と同様、β-lapの亜致死用量との組み合わせでOCR速度を増強し、これはおそらくはPARP1過剰活性化から誘導されるNAD+およびATPの損失による。
【0185】
NQO1生体内活性化可能薬処置はMia PaCa2細胞における解糖を抑制する(
図28)。グルコース利用(A)およびラクテート産生(B)の両方が抑制される。A549 NSCLC細胞を12mMメトキシアミン(MeOX)およびDNQ 87と2時間同時処置し(
図29)、相対生存率を測定した(Huang et al., Cancer Res., 2012)。
【0186】
PARP1阻害はNQO1生体内活性化可能薬の腫瘍選択的致死性を増強する。PARP1阻害剤はNQO1生体内活性化可能薬の致死性を増強する(
図30)。Mia PaCa-2細胞を
図30に示す阻害剤で2時間処置し、次いでDNQ+阻害剤(すべて15μM)で2時間処置した。次いで、細胞を洗浄し、7日間成長させ、相対生存率をHuang et al., Cancer Res., 2012, 72(12), 3038-3047のとおりに評価し、この内容も本明細書に記載の方法に組み込むことができるさらなる有用な方法および技術を提供する。BSI-201を除くすべての阻害剤は、PAR生成を阻害した。さらなる分析により、BSI-201は有効なPARP1阻害剤ではないが、DNA損傷は引き起こし、これはこの阻害剤がNQO1生体内活性化可能薬(DNA(表示の)またはβ-lap)と相乗作用するメカニズムであることが示された。
図31は、A549 NSCLC細胞におけるPARP1阻害剤単独の非致死用量の判定についてのデータを示す。
図32は、PARP1阻害剤、AG014699について得られたデータを示す。
【0187】
AG014699はA549 NSCLC細胞においてβ-ラパコンのNQO1依存的致死性を増強する(
図33)。A、BRCA1-/- CAPAN-1細胞に対する薬物単独の合成致死性を示すための対照であり、一方、他のBRAC1野生型がん細胞(A549およびMia PaCa-2細胞はPARP1阻害剤に完全に耐性である。B、AG014699がβ-lapに反応してのPARP1過剰活性化を阻害することを示す。C、AG014699のβ-lapとの組み合わせでの相乗的致死性で、これはNQO1阻害剤、ジクマロールで防止される。D、AG014699のβ-lapとの組み合わせでの用量反応、およびジクマロール添加による逆転。
【0188】
PARP1ノックダウンは三重陰性MDA-MB-231(231)乳がん細胞においてβ-ラパコンの致死性を増強する(
図34)。A. 本発明者らが開発した安定PARP1 shRNAノックダウン細胞(Bentle et al., JBC 2006)。ウェスタンブロットはNQO1を発現する、またはこれを欠く細胞における安定なノックダウンを示している。B. PARP1ノックダウン細胞におけるPAR-PARP1生成の劇的な低減を示す。DNA二本鎖切断がPARP1野生型細胞よりもはるかに早く起こることに留意されたい。C. 長期生存検定において、PARP1ノックダウンは細胞をβ-lapに対して感作させる。PARP1ノックダウンはβ-lapにより誘導されるプログラム壊死を抑制する(Bentle et al., JBC 2006)が、長期の結果は、PARP1なしで細胞はβ-lapなどのNQO1生体内活性化可能薬によって生じたDNA損傷を修復することができず、それらの損傷は最終的には通常のカスパーゼ媒介性経路によって細胞を死滅させるDSBに変換されるというものである。D. AG014699のPARP1ノックダウン231細胞への添加は、β-lapによって誘導されるそれらの致死性を有意に増強しない。BSI-201以外のすべてのPARP1阻害剤は同様の反応を示した。
【0189】
MCF-7乳がん細胞におけるPARP1ノックダウンもβ-lap致死性を増強する(
図35)。A、B、NQO1過剰発現MCF-7細胞におけるPARP1ノックダウンはβ-lap致死性を大きく増強する。ジクマロール(DIC)によるNQO1阻害は、NQO1生体内活性化を阻止することにより相乗作用を防止することに留意されたい。
【0190】
非毒性用量のβ-lap+非毒性用量のAG014699で処置したNQO1+ H596 NSCLC細胞は、切断されたカスパーゼ-3の形でアポトーシスの証拠を示す(
図36)。STS、スタウロスポリン(1μm、1時間)は陽性対照としてはたらく。カスパーゼ3の活性型はブロット上の低い位置のバンドである。
【0191】
PARP1 shRNA安定ノックダウンはPARP1過剰活性化の抑制(損失)により致死性を増強する(A)が、ATP損失を抑制する(B)(
図37)。
【0192】
図38に示すとおり、β-lapとPARP1損失または阻害との間で相乗的致死が起こるが、β-lap誘導性ATP損失はPARP1 shRNA安定ノックダウンまたはAG014699の添加によって防止される。
図39〜42は、Mia Paca-2細胞における試験およびいくつかのDNQ併用PARP1阻害剤データを示す。
【0193】
図43は、インビボでのdC
3ミセルの薬物動態分析および標的評価を示す。a、dC3およびβ-lap(dC3から変換)の血中濃度。薬物動態パラメーター(例えば、t
1/2)は2コンパートメント薬物動態モデルを用いて算出した。b、dC3およびβ-lap(dC3から変換)の腫瘍濃度。
図44は、インビボでのDNQ誘導体PAR-PARP1生成を示す。MDTパイロット試験データを以下の表2-1に示す。
【0194】
(表2−1)DNQ誘導体の最大耐量(MTD)のパイロット試験
NOD/SCID:100万個の3LL-Luc細胞を各マウスに注射し、2日後にIVを開始した。
*パイロット実験により、NOD/SCID、iv、1日おきに1×、5回注射における新しい実質的MTDが示される。
【0195】
表示のとおり、A459 NSCLC細胞を15μM AG014699で2時間前処置し、次いで同じ濃度のAG014699+様々な濃度のDNQ87で2時間処置した(
図45)。次いで、細胞を洗浄して薬物を除去し、以前に記載したとおりに(Huang et al., Cancer Res., 2012)相対生存率試験を実施した。非毒性用量のβ-lapによりこの様式で処置した細胞は、致死用量のβ-lap(8μM、2時間)により形成されたDNA損傷と同等の、DNA損傷形成の増強を示す(
図46)。
【0196】
カタラーゼ比の計算。
図1は、マッチングさせた(n=59)(A、B)、ならびにバッチのヒト膵臓腫瘍および関連する正常組織におけるNQO1/カタラーゼレベルを示す。重要なことに、NQO1は、酵素の基質であるDNQおよびβ-ラパコンならびにそれらの類縁体を「生体内活性化」する必要があるが、カタラーゼはこれらの薬物に対して保護しうる公知の耐性フリーラジカル除去酵素である。NQO1比は腫瘍組織では非常に高いが、関連する正常組織では低いことに留意されたい(E、H)。
図47は、乳がん腫瘍ではNQO1/カタラーゼ比は上昇するが、関連する正常組織では低いことを示す(C、F)。三重陰性(ER-、PR-およびHR-)ヒト乳がん細胞も、関連する正常組織に比べて、NQO1レベルが上昇している。
図48は、正常組織に比べて非小細胞肺がん(NSCLC)でもNQO1レベルが上昇している(n=105)(A)が、カタラーゼは正常組織で上昇し、NSCLC腫瘍では低いレベルが見られる(B)ことを示す。膵臓がんおよび乳がん対正常組織と同様に、NQO1/カタラーゼ比は腫瘍では上昇し、正常組織では低いレベルが見られる。NQO1レベルは前立腺がんでも上昇する(Dong et al., Cancer Res., 2010)が、カタラーゼレベルはその特定の試験では評価されなかったことに留意されたい。
図49のデータは、ヒトNSCLC患者試料における腫瘍対正常組織中のNQO1/カタラーゼ比の確認を提供する。
【0197】
実施例3. 薬学的剤形
以下の製剤は、本明細書に記載の式の化合物(例えば、DNQもしくはDNQ化合物、またはβ-Lapもしくはβ-Lap誘導体)、本明細書に具体的に開示される化合物、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または本明細書に記載の化合物の組み合わせ(以下「化合物X」と呼ぶ)の治療的または予防的投与のために使用しうる代表的な薬学的剤形を例示する。
【0198】
これらの製剤は、薬学の技術分野において周知の通常の手順によって調製してもよい。前述の薬学的組成物は、活性成分「化合物X」の異なる量およびタイプに適応させるために、周知の薬学的技術に従って変動してもよいことが理解されよう。エアロゾル製剤(vi)は標準の、定量エアロゾルディスペンサーと共に用いてもよい。本明細書に記載の化合物は、ナノ粒子、ミセル、またはリポソームなどの送達系との組み合わせで送達してもよい。加えて、特定の成分および比率は例示のためである。成分は適切な等価物と交換してもよく、比率は、対象となる剤形の所望の特性に従って、変動してもよい。
【0199】
本明細書において用いてきた用語および表現は、説明の用語として用いており、限定のものではなく、そのような用語および表現の使用において、示し、記載する特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、特許請求する本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが理解される。したがって、本発明を好ましい態様によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示する概念の例示的態様ならびに任意の特徴、改変および変種が当業者によって行われてもよいこと、ならびにそのような改変および変種は添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。本明細書において提供される特定の態様は、本発明の有用な態様の例であり、当業者であれば、本発明を本記載に示す装置、装置構成要素、方法段階の多くの変種を用いて実施しうることが明白であろう。当業者には理解されるとおり、本発明の方法に有用な方法および装置は多くの任意の組成および加工要素および段階を含みうる。
【0200】
本発明をその特定の態様に関して記載してきたが、本発明から逸脱することなく、他の態様も可能である。本明細書の記載は複数の特異性を含むが、これらは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、単に本発明の現在好ましい態様のいくつかの例示を提供すると解釈されるべきである。添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、したがって、本明細書に含まれる任意の特定の態様の記載に限定されるべきではない。特許請求の範囲の意味に含まれるすべての態様は、文字通り、または等価物により、その中に含まれることが意図される。さらに、前述の利点は必ずしも本発明の唯一の利点ではなく、また必ずしも記載の利点のすべてが本発明のあらゆる態様によって達成されるとは予想されない。
【0201】
本出願の全体を通してのすべての参照文献、例えば、発行された、もしくは付与された特許または等価物を含む特許文書;特許出願公報;および非特許文献文書または他の素材は、各参照文献が少なくとも部分的に本出願の開示と矛盾しない程度に、個別に参照により組み入れられるがごとく、その全体が参照により本明細書に組み入れられる(例えば、部分的に矛盾する参照文献は、参照文献の部分的に矛盾する部分を除いて参照により組み入れられる)。本明細書において引用する参照文献は、それらの公開日または出願日時点の最新技術を示すために参照により組み入れられ、この情報は、必要があれば、先行技術に含まれる特定の態様を除外するために、本明細書において用いうることが意図される。例えば、化合物が包括的に特許請求される場合、可能にする開示が本明細書において引用される参照文献中に提供されている化合物を含む、出願人の発明以前に当技術分野において公知かつ入手可能な化合物は、本明細書における化合物請求項に含まれるとは意図されないことが理解されるべきである。
【0202】
本開示の原理を適用しうる多くの可能な態様を考慮して、例示する態様は本開示の例にすぎず、本発明の範囲を限定すると考えられるべきではないことが理解されるべきである。それよりも、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲および精神内に入るものすべてを、本発明者らの発明として主張する。