【実施例】
【0072】
以下の実施例は、特許請求された本発明をさらによく例示するために提供されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。具体的な材料が言及されている範囲では、実施例は例示の目的のためだけのものであり、本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の能力を行使することなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発することができる。
【0073】
実施例1−ベッカー型筋ジストロフィー
対象
本発明者らは、正常なLVEFを有する18〜55歳の10人の歩行可能なBMDを有する男性患者、及び年齢とBMIが一致する7人の健常男性対照を調査した。すべての患者は、BMDの既存の臨床診断を受けており、本発明者らは、ジストロフィン遺伝子の直接配列決定解析で確認した(University of Utah Genome Center, Salt Lake City,UT)。
【0074】
潜在的な対象(症例と対照の両方)は、もし彼らが、高血圧の病歴もしくは測定血圧>140/90mmHg;糖尿病;病歴、身体検査、上昇脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、もしくは心エコー法によるLVEF<50%による心不全;夜間人工呼吸器のサポート;血清クレアチニン≧1.5mg/d;物質乱用(アルコールを含む)もしくは他の精神疾患の病歴;またはタダラフィルの禁忌(ニトレート、αアドレナリン遮断薬、他のPDE5A阻害物質、もしくは強力なシトクロムP4503A4の阻害物質の使用)を有していた場合、調査から除外した。
【0075】
この調査は、シーダーズ−シナイメディカルセンターの施設内審査委員会によって承認され、各対象は十分な説明に基づく書面同意を与えて参加した。この試験でタダラフィルを使用するために、調査中の新規薬物申請のための権利放棄がFDAによって付与された。本研究はclinicaltrials.gov(識別子NCT01070511)で登録された。
【0076】
ジストロフィン遺伝子の直接配列決定解析
ジストロフィン遺伝子の変異スクリーニングが、全血から単離されたゲノムDNAの多重ライゲーション依存プローブ増幅(MLPA)により行われた(52)。試験は、筋肉の主要なmRNA転写物アイソフォーム(Dp427m、参照mRNA転写物NM004006)の79個のすべてのコーディングエクソンにおける重複をスクリーニングするために、MLPAを用いて、ジストロフィン遺伝子におけるシングルまたはマルチのエクソンの重複を調査した。MLPAは、MRC−オランダからのP034とP035キットを用いて、記載されているように(53)行った。これらMLPA反応は、ゲノムDNA上で実施した。エクソン欠失の程度は、各限定エクソンが存在しないことを確認するために、4つの独立したプライマー対を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(54)によって確認した。
【0077】
血行動態測定
対象は仰臥位で調査した。心拍数は、自動化されたオシロメトリック血圧測定(Welch Allyn Vital Signs Monitor 300 Series, Skaneateles Falls, NY)により心電図及び血圧によって連続的に測定した。
【0078】
NIR分光法における骨格筋の酸素化
前腕の筋肉の酸素化は、近赤外(NIR)分光法を用いて測定された。これは、700〜900nmの範囲の波長のレーザ光は、容易に骨格筋に侵入し、ヘモグロビンおよびミオグロビンの鉄ポルフィリン部分に吸収されるという原理に基づいている。NIR光吸収の変化は、酸素化ヘモグロビンとミオグロビン(HbO
2とMbO
2)の相対濃度の変化に比例する。それらのほぼ同一の吸収スペクトルのため、HbO
2とMbO
2の個々の寄与を決定することはできない。直径1mmよりも大きな血管は、血液の高い吸光係数により、光子の最大吸収体となるため、NIR信号は、微小血管系で主に発生する酸素化の変化を反映する。従って、NIR分光法は、その使用に対する組織の酸素運搬の妥当性に関する継続的な測定を提供する。
【0079】
NIR光の組織吸収をモニタするには、カスタマイズされた柔軟なゴム製のケースに収納された5本の光ファイババンドル(光電子増倍管に接続された4本の発光バンドル及び1本の検出器バンドル)が、ハンドグリップの最中に回復する主要な筋肉である、深指屈筋の上の皮膚に接着剤で配置される。4つの固定されたエミッタ−検出器距離(1.5、2.0、2.5、及び3.0cm)は、皮膚と皮下非筋肉組織(55)からの散乱の直接的算出、従って、減算を可能にした。各発光バンドルは、2つのレーザダイオード光源を含んでいた。1つは酸素化及び脱酸素化したHb/Mbの種が同様の吸収係数を示す波長である、830nmの光源であり、もう1つは、光が主に脱酸素化した種によって吸収される波長である、690nmの光源である。2つの波長間の吸収の違いは、HbO
2+MbO
2(56)である。NIR信号は、5Hzの速度でサンプリングされ、検証アルゴリズムを使用してHbO
2+MbO
2濃度に変換され、50の連続したサンプルの移動平均として表示され、解析(OxiplexTS, ISS, Inc. Champaign, IL)のためにデジタルで保存された。各実験の前に、各波長での吸収と散乱係数は、外部標準に対して較正された。各実験後、カフは、「全不安定信号」(TLS、筋肉組織の酸素化のベースラインと最下点の間の差)を確立するために、上腕上で250mmHgの超収縮期圧力に膨張させた。前腕組織の酸素化の変化は、TLSの%として表した。
【0080】
ハンドグリップ運動
ハンドグリップ運動は、ダイナモメータ(Stoelting, Wood Dale, ILによって修正されたSmedley Hand Dynamometer)によって行われた。MVCを決定するために、各対象はダイナモメータをできるだけ固くグリップするように頼まれた。力の出力は、対象に視覚的なフィードバックを提供するために、コンピュータ画面上に表示された。対象は、7分間に20%MVCでの断続的な等尺性ハンドグリップ(20ハンドグリップ/分、50%のデューティサイクル)を行った。この軽度のレベルのハンドグリップ運動だけでは、骨格筋への交感神経流出を活性化しない(13、57)。
【0081】
下半身陰圧による反射性交感神経活性化
上記のように、対象の下半身を腸骨稜のレベルまで陰圧チャンバ内に収容した(13)。チャンバ内の圧力は、Statham transducer(Gould Inc., Oxnard, CA)を用いて測定した。−20mmHgでのLBNPは軽度の起立性ストレス(すなわち、仰臥位から座位への移行)をシミュレートする。この技術は、心肺圧受容器を開放して、全身の動脈圧を変更することなく、骨格筋の血管系への交感神経性血管収縮駆動において再現性の高い反射性増加を生じさせる(13、58〜60)。
【0082】
機能的交感神経遮断
反射性血管収縮の運動誘発減衰(すなわち、機能的交感神経遮断)を測定するために、LBNPを安静時に適用し(a)、次いで軽度のハンドグリップ運動に併発させた(b)。反射性血管収縮は、NIR分光法による前腕筋の酸素化のLBNP誘発の減少として測定した。このアプローチは、これらの条件下で反射性神経性血管収縮の有効な尺度を提供する(13)。
【0083】
BP、心拍数、ハンドグリップ力、及びNIR信号が、安静時に及び7分間の運動期間の3分〜5分の間に適用された2分間のLBNPへの応答で記録された。
【0084】
症例−対照の調査のためのプロトコール
すべての対象は、臨床検査、総合的な血液化学パネル、心電図、及び心エコー図により、適格性についてスクリーニングされた。BMD患者も、CK、BNP、及びDNAのために、採血された。すべての適格な対象では、機能的交感神経遮断が、2つの別々の日に両腕(順不同)で測定された。すべての4つの測定値は、各対象の平均値を算出するために平均された。
【0085】
タダラフィル緊急治療試験のためのプロトコール
症例−対照プロトコールを完了したすべてのBMD患者は、(タダラフィルの17.5時間の消失半減期を考慮して)クロスオーバーの前の2週間の洗浄期間を伴う、ランダム化されたプラセボ対照二重盲検クロスオーバーデザインを利用した、タダラフィル治療試験も完了した。患者は、調査前夜に(有害事象を試験するために)経口タダラフィルまたはプラセボの10mgの試験投与を受け、翌朝、機能的交感神経遮断(両腕の)の測定の少なくとも3時間前に(ピークタダラフィル吸収を可能にするために)、タダラフィルまたはプラセボの20mg錠を受けた。タダラフィル/プラセボの順序はランダムであった。薬物またはプラセボの試験投与と調査投与の両方のために、研究薬剤師は、患者及び研究者に見えないように、タダラフィル錠剤またはラクトース粉末(プラセボ)を不透明なカプセル中に配置した。患者は、安全性の監視のためおよび盲検が維持されているかどうかを評価するための両方で、潜在的なタダラフィル固有の副作用について質問された。タダラフィルの血中濃度は、高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(NMS Labs Willow Grove, PA)を用いて測定した。
【0086】
免疫組織化学
2人の患者(P5及びP9)由来の針筋生検材料が、標準的な技術を用いて得られ、最適切断温度(OCT)化合物に取り付けられ、液体窒素で冷却したイソペンタン中で凍結された。凍結切片(6μm)を切断し、SuperFrost(登録商標)プラススライド上に取り付けた。切片は、nNOS(NCL−NOS−1、Novocastra、1:400)、及びジストロフィンC末端(NCL−DYS2、Novocastra社、1:1000)のモノクローナル抗体を用いてインキュベートした。免疫検出は、高感度の検出プロトコール(製造業者の指示によるX−Cell−Plus HRP Detection−Menapath MPXCPDAB−U100)を用いて行った。切片は、液体の安定DAB(Menapath)で視覚化され、Carazziのヘマトキシリンで対比染色され、脱水され、永久的に取り付けられた。陰性対照では、一次抗体は除外された。患者の生検は、以前に健康な個体から得られた正常な組織構造およびタンパク質発現を有する保存された筋肉のサンプルと比較された。ヘマトキシリン及びエオシン染色が、標準的プロトコールを用いて行われた。
【0087】
統計
患者および対照のベースライン特性を、不等分散に適用される自由度に関するウェルチ変動によるスチューデントt検定を用いて比較した。反射性血管収縮の運動誘発減衰(機能的交感神経遮断)を、安静時のLBNP誘発のΔHbO
2+MbO
2(TLS%)対ハンドグリップ中のΔHbO
2+MbO
2のLBNP誘発の低下を比較することによって評価した。症例−対照調査における各対象について、各試験日の両腕由来の平均データは、安静時のLBNP応答とハンドグリップ中のLBNP応答の単一の値を導出するために平均化した。これらのデータは、コルモゴロフ−スミルノフ検定により正規性を、レーベン検定により分散の均一性を評価した。本発明者らは、グループ(BMD患者または対照)と運動状態(安静またはハンドグリップ)の固定効果と個々の対象に関するランダムな効果による線形混合効果モデルを用いて、LBNP中のΔHbO2+MbO2におけるグループ差について、試験した。タダラフィルの治療試験では、両腕由来のデータは、プラセボの最中及びタダラフィルの最中のLBNP応答に関する患者固有の値を得るために平均化された。主な分析は、ランダム効果として配列内の配列、期間、薬物治療、運動状態、ベースライン値、及び対象に関する固定効果を含む、2つの期間とランダム化クロスオーバーデザインの2つの治療に適した線形混合効果モデルであった。キャリーオーバー効果(配列効果を使用して)及び期間効果の試験を行ったが、どちらの効果も統計的には有意でなかった。キャリーオーバー効果の有意な閾値は0.1であった。他のすべての変数については、0.05未満の両側P値は統計的有意性を示すと考えられた。すべての解析はR、バージョン2.13.1で行った。データは平均±標準誤差(SEM)として表されている。
【0088】
イムノブロット
全筋肉溶解物を抽出し、ウエスタンブロットを、以前に公表されたプロトコール(61)に従って実施した。膜は、筋肉タンパク質の指標として、ジストロフィンC末端(1:100)、ジストロフィンロッドドメイン(NCL−DYS1、Novocastra、1:300)、及び抗デスミン(Dako、1:400)の抗体で探索した。次いで、膜は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ウサギ抗マウス免疫グロブリンG(IgG)二次抗体(Dako、1:300)でインキュベートし、続いて化学発光検出(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate, Pierce)を行った。
【0089】
結果
適格性についてスクリーニングした15人の患者のうち、5人の男性を除外した。2人は、ハンドグリップを実行するには余りにも虚弱であり、1人は左室駆出率(LVEF)が低下しており、1人は高血圧を有しており、1人は突然変異分析によりBMDを有していなかった。BMD患者には夜間の人工呼吸器のサポートはなかった。
【0090】
調査グループに関する特性
個々のBMD患者のベースライン特性と疾患の重症度の指標が表1に示されている。最も深刻に影響を受けた患者P10は、車椅子を使用することが多かったが、すべての患者は歩行可能であった。10人の患者のうちの6人(P1〜P6)は、nNOSμの標的筋細胞膜(11、33、34)に関与するジストロフィンのスペクトリン様リピートをコードするエクソン欠失を有していた。予想通りに、すべての10人の対象は、クレアチンキナーゼ(CK)レベルを上昇させていた。
【0091】
(表1)ベッカー型筋ジストロフィー患者のベースライン特性
P、患者;CK、クレアチンキナーゼ。
【0092】
表2に示すように、患者および対照は、年齢、肥満度(BMI)、血圧(BP)、心拍数、及びLVEFで一致させた。予想した通り、BMD患者は、両腕のグリップ強度が、より低かった(ハンドグリップ最大随意収縮、MVCで測定)。
【0093】
(表2)2つの調査グループのベースライン比較
BMI、肥満度;MVC、最大随意収縮;SBP、収縮期血圧;DBP、拡張期血圧;HR、心拍数;LVEF、左室駆出率。
*P<0.05対対照。
【0094】
機能的交感神経遮断はBMDにおいて損なわれる
患者対対照における筋肉の血流量調節を比較するために、本発明者らは、機能的交感神経遮断を評価したが、これは、通常、代謝的に活性な骨格筋の灌流を確実にする防御機構である、反射性交感神経性血管収縮の運動誘発減衰を指す。機能的交感神経遮断は、対象の前腕の筋肉が安静であるかまたは軽度のリズミカルなハンドグリップ運動を行っているかのいずれかで、同じ反射性交感神経刺激を、つまり、軽度の起立性ストレスをシミュレートし、骨格筋循環に反射性交感神経活性化を誘発するために心臓の圧受容器に係合させる下半身陰圧(LBNP)を適用することによって評価した。骨格筋の微小血管の交感神経性収縮は、LBNPに応答して、前腕筋の酸素化の減少として、つまり近赤外分光法により測定された酸素化ヘモグロビンプラス酸素化ミオグロビン(HbO
2+MbO
2)として測定した。
【0095】
安静にしている前腕筋では、LBNPは同等の反射血管収縮を示し、BMD患者と健常対照個体における前腕筋の酸素化(HbO
2+MbO
2)において同等の減少を引き起した(
図1A、B)。単独のハンドグリップ運動による酸素消費量の増加中に、筋肉の酸素化は急速に新たな定常状態レベルに到達して、両グループで減少した。健常対照でLBNPがハンドグリップに重畳された場合には、筋肉の酸素化の反射減少は、機能的交感神経遮断を示して、60±8%だけ減衰した(ΔHbO2+MbO2:安静時−18±1%対ハンドグリップ中−7±2%、P<0.01)。しかし、このような減衰はBMD患者では見られず(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−19±2%対ハンドグリップ中−17±2%、P>0.10)、交感神経遮断が損なわれたことを示し、従って機能的筋虚血を示した(
図1C、D)。
【0096】
タダラフィルはBMDにおいて機能的交感神経遮断を回復させる
次いで、タダラフィルが、BMDにおいて交感神経遮断を回復させるかどうかを試験するために、すべての10人の患者が二重盲検ランダム化クロスオーバー試験を完了した。患者は、タダラフィルの単一の20mgカプセルまたはプラセボカプセルのいずれかを受けた後、交感神経遮断を評価するために、研究薬剤師によってランダムに割り当てられた。2週間の洗浄期間後、対象が他の治療を受けた後に(タダラフィルグループは研究薬剤師によってプラセボを受けるように切替えられた、及びその逆)交感神経遮断が再評価された。
図2に示されるように、タダラフィル治療はBMD患者において機能的交感神経遮断を回復させた。タダラフィル治療の後にLBNPがハンドグリップに重畳された場合、筋肉の酸素化の反射性減少は、52±12%だけ減衰した(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−17±2%対ハンドグリップ中−9±2%、P<0.01)。対照的に、プラセボで処置したBMD患者は効果を示さなかった。安静時と運動中で、LBNPは同等の筋肉の酸素化の減少を引き起した(ΔHbO2+MbO2:安静時−18±2%対ハンドグリップ中−17±2%、P>0.1)。
【0097】
治療試験のプラセボ腕におけるハンドグリップ中の各患者のLBNP応答と、症例−対照調査におけるそれとを比較すると、クラス内相関はr=0.80であり、有効な薬物治療がない場合の損なわれた機能的交感神経遮断の再現性を示した。また、タダラフィル治療の患者における機能的交感神経遮断の程度は、正常(健常対照、P>0.1)と区別できなかった。利き手は交感神経遮断実験の結果に影響を及ぼさなかった(
図5)。
【0098】
図3は、タダラフィル及びプラセボに対する患者固有の応答を示している。10人のBMD患者のうち9人は、タダラフィル後に交感神経遮断を有していたが、プラセボに関しては、1人の患者(P9)のみ交感神経遮断を有していた。この患者におけるエクソン14〜44の欠失は、まだnNOSμを筋細胞膜に向けることができる切断型ジストロフィンタンパク質をもたらす(35)と予想されうる。
【0099】
図4は、P9及び、比較により、エクソン45〜48の欠失を有する患者の1人(P5)由来の筋生検サンプルに対して行った免疫組織化学実験の結果を示す。筋細胞膜のnNOSの発現は、P9において検出された(減少したレベルで)が、P5では(予想した通り)検出されなかった。細胞質のnNOSの発現は両方の患者で検出された。両方の患者において、切片のジストロフィンC末端染色は、正常な筋肉と同様であったが、イムノブロット分析は、両方の患者で、BMDの切断型または縮小ジストロフィンの特性を示した(
図6)。ピークタダラフィル血中濃度は170〜310ng/ml(平均:260±13ng/ml)の範囲であった。タダラフィル後に交感神経遮断のない1人の患者(P10)では、タダラフィルのピーク血中濃度は300ng/mlであった。タダラフィルは、収縮期血圧(116±3対114±4mmHg、タダラフィル前対タダラフィル後)、拡張期血圧(72±2対73±3mmHg)、または心拍数(84±4対80±4回/分)に影響しなかった(P>0.05)。タダラフィルに関しては、有害事象または副作用はなかった。具体的には、患者は、試験用量または調査用量のいずれかのタダラフィルまたはプラセボのいずれかで、自発的な陰茎勃起、紅潮、または視覚障害を経験しなかった。
【0100】
実施例2−デュシェンヌ型筋ジストロフィー
対象
本発明者らは、DMDを有し正常な左室駆出率(>50%)を有する歩行可能な男児(8〜13歳)、および、健康な対照を提供するための健康な同年代の男児を募集した。すべての患者は、事前のDMDの臨床診断を受けた。
【0101】
潜在的な対象(症例と対照の両方)は、彼らが、高血圧の病歴もしくは測定BP>120/80mmHgを有していた場合;糖尿病を有していた場合;病歴、身体検査、もしくは二次元心エコー検査による左室駆出率<50%による心不全を有していた場合;夜間人工呼吸器のサポートを使用していた場合;または、ホスホジエステラーゼ阻害物質への任意の禁忌(ニトレート、αアドレナリン遮断薬、他のPDE5A阻害物質、または強力なシトクロムP4503A4の阻害物質の使用)を有していた場合、調査から除外した。
【0102】
血行動態測定
対象は仰臥位で調査した。心拍数は心電図により連続的に測定し、血圧は、子供のカフを使用して自動オシロメトリック血圧測定(Welch Allyn Vital Signs Monitor 300 Series)により測定された。
【0103】
近赤外分光法による骨格筋の酸素化
前腕筋の酸素化は、上述のように、近赤外(NIR)分光法を用いて測定された。
4B簡潔には、ハンドグリップ中、オプトードは深指屈筋の筋腹の上に置かれ、主要な筋肉が採用された。オプトードは、カスタマイズされた柔軟なゴム製のケース内に収容され、確実に互いに対して一定かつ不変のオプトードの位置になるようにされ、接着剤を用いて皮膚に固定した。オプトードは、外光からの干渉またはNIR透過光の損失を最小限にするために、光学的に密で黒のビニールシートで覆った。前腕は、オプトードの動きを最小限にするために弾性包帯を巻きつけた。
【0104】
NIR信号は、5Hzの速度でサンプリングし、検証されたアルゴリズムでHbO
2+MbO
2濃度に変換し、50の連続したサンプルの移動平均として表示し、解析のためにデジタルで保存した(OxiplexTS,ISS Inc.)。各実験の前に、吸収および散乱係数は、外部標準に対して較正した。各実験後、カフは全不安定信号(TLS、筋肉組織の酸素化のベースラインと最下点の間の差)を確立するために上腕上で200mmHgの超収縮期圧まで膨張させた。前腕組織の酸素化の変化は、TLSの%として表した。
【0105】
ドップラー超音波による上腕動脈の血流量
上腕動脈平均血流速度(MBV)は、パルスドップラー超音波検査(Siemens iE33)を使用して運動している腕から測定した。データは、腋窩の遠位の皮膚表面に配置された60°の角度の超音波照射で、9MHzのプローブを用いて連続的に取得した。超音波のゲートは、一定強度で全体血管断面の完全な超音波照射を確実にするために最適化した。ドップラーオーディオ信号は、検証されたドップラーオーディオコンバータを用いてリアルタイム流速信号に変換され、
8B PowerLabデータ収集システム(ADInstruments, CO)を用いて記録された。上腕動脈の直径は、安静時に3回通り、B―モードのイメージングにより測定された。以前の報告は、上腕動脈の直径は、ハンドグリップ運動の広い範囲にわたって安静時の値から変化しないことを示している。上腕動脈の血流量は、MBV(cm/s)・πr
2・60として算出された。ここでrは上腕動脈の半径である。
【0106】
ハンドグリップ運動
ハンドグリップ運動はダイナモメータ(Stoeltingによって変更されたSmedley Hand Dynamometer)を用いて行った。最大随意収縮(MVC)を決定するために、各対象は、ダイナモメータをできるだけ強くグリップするように頼まれた。力の出力は、対象に視覚的なフィードバックを提供するために、コンピュータ画面上に表示された。対象は、7分間20%MVCで、断続的な等尺性ハンドグリップ(20ハンドグリップ/分、50%デューティサイクル)を行った。この軽度のレベルのハンドグリップ運動だけでは、骨格筋への交感神経流出を活性化しない。
9B、10B
【0107】
下半身陰圧による反射性交感神経活性化
対象の下半身は、上述のように、腸骨稜のレベルまで陰圧室内に収容された。
9B チャンバの圧力は、Statham transducer(Gould Inc.)により測定された。−20mmHgでの下半身陰圧(LBNP)は軽度の起立性ストレス(すなわち、仰臥位から座位への移行)をシミュレートする。この技術は、全身の血圧を変えることなく、主に心肺圧受容器を開放し、骨格筋の血管系への交感神経性血管収縮駆動における再現性の高い反射性増加を生じさせる。
9B
【0108】
機能的交感神経遮断
対象の下半身は、上述のように、腸骨稜のレベルまで陰圧室内に収容された。チャンバの圧力は、Statham transducer(Gould Inc.)により測定された。−20〜−30mmHgの下半身陰圧(LBNP)は、仰臥位から座位への移行に起因する軽度の起立性ストレスをシミュレートする。この技術は、全身の血圧を変えることなく、主に心肺圧受容器を開放し、骨格筋の血管系への交感神経性血管収縮駆動における再現性の高い反射性増加を生じさせる。反射性血管収縮の運動誘発減衰(すなわち、機能的交感神経遮断)を測定するために、LBNPは、(i)安静時に適用され、次いで、(ii)20%MVCでの軽度のリズム的ハンドグリップに併発させられた。反射性血管収縮は、NIR分光法による前腕筋の酸素化におけるLBNP誘発の減少として測定した。LBNP室内の圧力をトリガとして使用して、Powerlabソフトウェアは、LBNP開始前の20秒間とLBNP停止前の20秒間とのHbO
2+MbO
2信号を平均化するようにプログラムされた。これらの平均値の差は、前腕筋組織の酸素化のLBNP誘発変化とされた(20)。血圧、心拍数、及びハンドグリップ力も、安静時に及び7分間の運動プロトコールの3分〜5分の間に適用された2分間のLBNPへの応答で記録された。
【0109】
運動誘発の充血
安静時から運動後への上腕動脈の血流量の増加の%として定義される、骨格筋血流量の運動誘導性の変化を評価するために、安静時において及び運動後の60秒間、上腕動脈の血流量が測定された。血管コンダクタンスは平均動脈圧で割った前腕血流量として算出された。
【0110】
薬物動態試験及び薬物血中濃度
薬物動態学的測定のための血清血液試料が、各治療(シルデナフィルとタダラフィル)及び各用量(0.5対1.0mg/kg)の後に、0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、及び24時間において、患者から採取された。血中濃度は、高速液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(NMS Labs)を用いて測定された。
【0111】
プロトコール − 症例−対照調査
すべての対象は、12誘導心電図と2次元経胸壁心エコー図の臨床検査によって適格化についてスクリーニングした。機能的交感神経遮断は左腕を用いて測定した。
【0112】
プロトコール − ホスホジエステラーゼ阻害
患者は、(タダラフィルの17.5時間の消失半減期を考慮するために)クロスオーバーの前に2週間の洗浄期間を伴うオープンラベルクロスオーバー方式でシルデナフィルまたはタダラフィルのいずれかを受けた。患者は、1日目に0.5mg/kgの経口シルデナフィルまたはタダラフィルを、続いて2日目に1.0mg/kgのシルデナフィルまたはタダラフィルを受けた。続いて、患者は反対の薬物に関して2週間後にクロスオーバーした。実験は、ピーク血中濃度を用いた実験と一致するように、経口治療の1時間後(シルデナフィル)または3時間後(タダラフィル)に行った。患者は、調査訪問を通して、潜在的な副作用について質問された。
【0113】
統計
患者と対照のベースライン特性が、スチューデントt検定を用いて比較された。反射性血管収縮の運動誘発減衰(機能的交感神経遮断)を、安静時のLBNP誘発のΔHbO2+MbO2(TLS%)対ハンドグリップ中のΔHbO2+MbO2のLBNP誘発の低下を比較することによって評価した。ΔHbO2+MbO2のグループ差は、スチューデントt検定を用いて評価した。安静時のLBNP誘発ΔHbO2+MbO2(TLS%)対ハンドグリップ中のΔHbO2+MbO2のLBNP誘発の低下に及ぼす薬物治療の効果が、スチューデントt検定を用いて、各患者に対するベースラインと比較された。上腕動脈の血流量のΔ%のグループ差が、スチューデントのt検定を用いて評価された。上腕動脈の血流量のΔ%に対する薬物治療の効果は、スチューデントt検定を用いて比較された。すべての分析は、SigmaPlotで行った。特に指定しない限り、データは、平均値±SEMとして表されている。
【0114】
結果(12人のDMDを有する男児と10人の健常対照のすべてを用いた分析)
本発明者らは、12人のDMDを有する男児と10人の年齢を一致させた健常な男性対照を調査した。本発明者らのDMD患者のベースライン特性と疾患の重症度の指標を表3に示す。男児たちの一部は、特により長い距離をカバーするために、車椅子またはスクーターを使用したが、すべての患者は、歩行可能であった。
【0115】
(表3)
【0116】
表4に示されるように、患者及び対照は、年齢、肥満度(BMI)、血圧、及び左室駆出率についてよく一致した。安静時の心拍数は、DMDを有する男児においては著しく高く(P<0.05)、かつ、予想された通り、グリップ強度は、対照に比較して、DMDを有する男児ではずっと低かった(P<0.05)。
【0117】
(表4)健常対照と比較したデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者のベースライン特性
平均値±SE。
*は、健常対照と著しく異なることを示す(P<0.05)。
【0118】
薬物動態研究及び安全性データ
9人のDMD患者が、シルデナフィルまたはタダラフィルの2つの異なる経口投与(0.5または1.0mg/kg)の後の薬物血中濃度の経時変化を評価する本発明者らの薬物動態研究に参加した。1人の患者は、シルデナフィルの試験に参加しなかった。1人の患者は、0.5mg/kgのタダラフィル後に、4時間を超えて持続する勃起を生じ、より高用量には増加させなかった。平均グループ応答曲線が
図12に示されている。ピークシルデナフィル血中濃度は、0.5mg/kg:82.5±26.6ng/mL;1.0mg/kg:167.5±34.1ng/mLの用量依存的に増加して、経口投与1時間後に達成された。同様に、タダラフィルの血中濃度も、経口投与から2時間〜4時間の間でピーク血中濃度に達し、0.5mg/kg:286.31.3ng/mL; 1.0mg/kg:492.5±47.3ng/mLの用量依存的に応答した。予想されたとおり、タダラフィルは、24時間まで血液中で高いままであったのに対し、シルデナフィルは、摂取後4時間でベースラインレベル近傍に戻っていた。
【0119】
顔面紅潮は、経口PDE5阻害では非常に一般的であり、治療から数時間持続した。安静時血圧は、いずれのPDE5阻害物質によっても影響を受けなかった。上記のように、1人の患者は、低用量のタダラフィルで4時間以上持続する勃起を生じたので、より高い用量に増加させなかった。2番目の男児は、低用量のタダラフィルで3時間、より高容量のタダラフィルで4時間継続する長時間の勃起を経験した。
【0120】
機能的交感神経遮断はDMDにおいて損なわれかつPDE5阻害によって回復される
機能的交感神経遮断、つまり、反射性交感神経性血管収縮の運動誘発減衰は、安静時および軽度のリズミカルなハンドグリップ運動中に対象の前腕筋肉に同じ反射性刺激(下半身陰圧)を適用することによって評価した(
図7)。骨格筋の微小血管の交感神経性収縮を、NIR分光法によって、前腕筋の酸素化の減少として測定した。NIR分光法は、重度の動きアーチファクトのために、2人のDMD患者には適用できず、従って、データは10人のみで報告される。安静にしている前腕筋では、LBNPは、DMD患者と健常対照における前腕筋の酸素化(HbO
2+MbO
2)において同等の減少を引き起した(
図8)。健常対照においてハンドグリップにLBNPを重畳すると、筋肉酸素化の反射性減少は、54±8%だけ減衰し(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−19±3%対ハンドグリップ中−9±2%、P<0.01)、機能的交感神経遮断を示した。対照的に、このような減衰は、DMD患者では観察されず(ΔHbO2+MbO2:安静時−15±4%対ハンドグリップ中−14±3%)、損なわれた交感神経遮断、従って機能的筋虚血を示した(
図8)。注目すべきことに、本発明者らの結果は、アンジオテンシン変換酵素阻害物質(すなわち、リシノプリル)、またはアンジオテンシン受容体遮断薬(すなわち、ロサルタン、
図12)による予防的心臓治療からは独立したままである。
【0121】
次に、本発明者らは、DMDにおいて機能的交感神経遮断を回復させるために、シルデナフィル及びタダラフィルの2つの異なるPDE5阻害物質の能力を試験した。
図8及び
図9に示すように、タダラフィル治療は、DMD患者において、用量依存的に機能的交感神経遮断を回復させた。0.5mg/kgのタダラフィル治療後に、ハンドグリップ運動にLBNPを重畳すると、筋肉酸素化の反射性減少は、57±16%だけ減衰した(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−20±2%対ハンドグリップ中−9±3%、P<0.01)。さらに、タダラフィルの用量を1.0mg/kgに増加すると、筋肉酸素化のLBNP誘発減少はさらに大きく80±11%減衰した(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−16±2%対ハンドグリップ中−4±2%、P<0.01)。サブセットの患者でも、本発明者らは、異なるPDE5阻害物質(シルデナフィル、
図9)を使用してこれらの結果を確認した;ΔHbO
2+MbO
20.5mg/kg:安静時−18±4%対ハンドグリップ中−10±3%、P<0.05;1.0mg/kg:安静時−20±3%対ハンドグリップ中−1±3%、P<0.01。
【0122】
運動後の充血はDMDで鈍くなりかつPDE5阻害によって回復される
運動後の充血、つまり、骨格筋の血流量の運動誘発増加は、上腕動脈のパルスドップラー超音波を使用して、安静から運動直後への筋肉の血流量の変化として評価した。
図10に示されるように、ハンドグリップ運動は、健常対照において骨格筋の血流量の71±13%の増加を引き起した。対照的に、DMDを有する男児では、ハンドグリップ運動は、骨格筋の血流量のずっと小さい増加(28±6%)を引き起した。タダラフィルまたはシルデナフィルのいずれかによるPDE5阻害は、DMDの患者において運動後の充血および血管コンダクタンスを回復させた(
図10及び11)。いずれのPDE5阻害物質への応答においても、血圧、心拍数、またはベースラインの血流量の差異は観察されなかった。また、上腕動脈の直径の変化は、軽度のハンドグリップ運動では見出されなかった。従って、血管コンダクタンスは上腕動脈の血流量と同様の応答を共有していた(表5)。
【0123】
(表5)デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者及び年齢を一致させた健常対照の安静時とその後のリズミカルなハンドグリップ運動(20%最大随意収縮)における前腕血流量および血行動態。平均値±SEとして報告されたデータ。
【0124】
結果−(DMDを有する12人の男児のうちの10人及び10人の健常対照の分析)
データは、DMDを有する10人の男児と10人の健常対照について示されている。動きアーチファクトにより、DMDを有する2人の男児のデータ分析は除外された。これらの10人の患者のベースライン特性と疾患の重症度の指標は、表6に示されている。すべての患者は歩行可能であったが、何人かは車椅子またはスクーターを使用することが多かった。すべてのDMD患者は、グルココルチコイド(デフラザコートまたはプレドニゾンのいずれか)によるバックグラウンド治療を受けていた。10人の患者のうち5人も、予防的心臓薬(リシノプリルまたはロサルタンのいずれか)を受けていた。
【0125】
(表6)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者のベースライン特性
coQ10、コエンザイムQ
10;hGH、ヒト成長ホルモン;Ca
2+−carbonate、炭酸カルシウム;VD
3、ビタミンD
3(コレカルシフェロール);MV、マルチビタミン。
【0126】
患者と対照は、年齢、肥満度(BMI)、血圧、及び左室駆出率でよく一致した(表7)。予想された通り、安静時の心拍数はDMDを有する男児の方が高く(健常対照に対してP<0.05)、最大随意収縮(MVC、すなわちグリップ強度)はずっと低かった(P<0.05)。
【0127】
(表7)健常対照と比較したデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者のベースライン特性
平均値±SEとして報告されたデータ。
*は、健常対照と著しく異なることを示す(P<0.05)。BMI、肥満度;MVC、最大随意収縮;SBP、収縮期血圧;DBP、拡張期血圧;HR、心拍数;LVEF、左室駆出率。
【0128】
機能的交感神経遮断はDMDにおいて損なわれかつPDE5阻害によって回復される
安静にしている前腕筋では、LBNPは、患者と健常対照における前腕筋の酸素化(HbO
2+MbO
2)において同等の減少を引き起した(
図14)。健常対照においてハンドグリップにLBNPを重畳すると、筋肉酸素化の反射性減少は、54±8%だけ減衰し(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−18±3%対ハンドグリップ中−9±2%、P<0.01)、機能的交感神経遮断を示した。対照的に、このような減衰は、DMD患者では観察されず(ΔHbO2+MbO2:安静時−14±2%対ハンドグリップ中−13±2%)、機能的筋虚血を示した(
図14)。DMDを有する男児では、交感神経遮断は、予防的心臓薬で治療した(n=5)または治療しなかった男児(n=5)で、同様に損なわれた(
図13B)。
【0129】
タダラフィルは、DMDを有する男児において、用量依存的に機能的交感神経遮断を回復させた(
図14)。0.5mg/kgのタダラフィル用量で、筋肉酸素化の反射性減少は、45±8%だけ減衰した(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−20±2%対ハンドグリップ中−11±1%、P<0.01)。この応答は、正常から区別できない(P=ns対健常対照)。1.0mg/kg用量は、超正常の63±5%の減衰を引き起した(ΔHbO
2+MbO
2:安静時−17±1%対ハンドグリップ中−7±1%、P<0.01)。サブセットの患者(n=6)で、本発明者らはシルデナフィルでこれらの結果を確認した(
図14及び15A)。個々のデータは補足
図15Bに示されている。
【0130】
運動誘発充血はDMDを有する男児において鈍くなりかつタダラフィルによって回復される
ハンドグリップ運動は、健常対照のベースラインに対し、78±12%だけ上腕動脈の血流量を増加させたが、DMDを有する男児ではほんの32±5%であった(P<0.05、
図10)。DMDにおいて、タダラフィルは用量依存的に運動誘発充血を顕著に回復させた(表5)。シルデナフィルに関しても、同様の傾向が見られたが、治療効果は統計的に有意でなかった(
図11)。
【0131】
薬物動態データ
DMDを有する9人の男児が薬物動態調査を完了した。平均グループ応答曲線が
図12に示されている。0.5mg/kg用量に対しては2.4±0.09時間、1.0mg/kg用量に対しては3.2±0.5時間の消失半減期で、経口シルデナフィル投与後約1時間で、血中濃度はピークに達した。対照的に、0.5mg/kg用量に対しては24.9±3.1時間、1.0mg/kg用量に対しては39.5±6.6時間の消失半減期で、経口タダラフィル投与後2〜4時間で、血中濃度はピークに達した。
【0132】
安全性データ
顔面紅潮は、いずれかのPDE5阻害物質を両方の用量で用いたすべての男児に生じた。血圧は、いずれの薬物によっても影響されなかった。1人の患者は、低用量のタダラフィル後、6時間持続する陰茎勃起を生じ、より高用量には増加させなかった。第2の患者は、低用量のタダラフィル後3時間、高用量のタダラフィル後4時間持続する勃起を経験した。どちらの場合も、勃起は、苦痛がなく、かつ自然に消散した。
【0133】
参照文献
【0134】
参照文献
【0135】
本発明の様々な態様は、詳細な説明において上記に説明されている。これらの説明は上記の実施形態を直接説明すると同時に、当業者が本明細書で示されかつ説明される具体的な実施形態に対する改変および/またはバリエーションを想到し得ることが理解される。本説明の範囲内に入る任意のこのような改変および/またはバリエーションは同様にその中に含まれることが意図される。特に記載のない限り、本明細書および特許請求の範囲における語および句が当技術分野における当業者に通常およびいつもの意味を与えることが本発明者らの意図である。
【0136】
本出願の提出の時点では本出願人には認識されている本発明の様々な実施形態に関する前記の説明は例証および説明する目的のためのものである。本説明は、網羅的であることも、開示された厳密な形態ならびに上記の教示に鑑みて可能である多くの改変およびバリエーションに本発明を限定することも意図しない。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を説明するのに役立ち、かつ、当業者が、本発明を、企図された特定の使用に適している場合と同様に様々な態様においておよび様々な態様とともに用いることが可能であるように役立つ。従って、本発明は本発明を実施するために開示された特定の実施形態に限定されるものではないことが意図される。
【0137】
本発明の特定の実施形態は示されておりかつ説明されていると同時に、本明細書における教示に基づいて、本発明およびそのより幅広い態様を逸脱することなく変更および改変がなされることができ、従って、添付の特許請求の範囲がその範囲内に、本発明の真の精神内および範囲内である場合と同様にすべてのこのような変更および改変を包含するものであることが当業者には明らかであると考えられる。全体として本明細書において使用される用語は一般には、「開放的」用語(例えば、用語「含む(including)」は「〜を含むが〜に限定されない(including but not limited to)」として解釈されるべきであり、用語「〜を有する(having)」は「少なくとも〜を有する(having at least)」として解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「〜を含むが〜に限定されない(includes but is not limited to)」として解釈されるべきであるなど)として意図されることが当業者には理解されると考えられる。