特表2016-517021(P2016-517021A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-517021(P2016-517021A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(54)【発明の名称】遊離銅を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20160513BHJP
   G01N 33/58 20060101ALI20160513BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20160513BHJP
【FI】
   G01N33/52 C
   G01N33/58 Z
   G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-511154(P2016-511154)
(86)(22)【出願日】2014年4月29日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月8日
(86)【国際出願番号】IB2014061079
(87)【国際公開番号】WO2014181215
(87)【国際公開日】20141113
(31)【優先権主張番号】RM2013A000253
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515120095
【氏名又は名称】カノークス4ドラッグ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コラブフォ、ニコラ、アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】ベラルディ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】レオポルド、マルチェッロ
(72)【発明者】
【氏名】ペッローネ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】スキッティ、ロザンナ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA01
2G043CA03
2G043DA01
2G043EA01
2G045AA13
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB11
2G045DA36
2G045DA38
2G045DB13
2G045FA11
2G045FB06
2G045FB09
2G045FB12
2G045GC15
(57)【要約】
本発明は、血清中の『遊離』銅の濃度、すなわち構造的にセルロプラスミンに結合しない血清銅の部分を決定するための新しい方法に関する。本発明は、アルツハイマー病患者の血清試料における、遊離銅を決定するための、感度及び精度が高い方法にも言及する。【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清試料において遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法であって、
a)結合画分及び遊離銅を含む溶出画分を得る、固相抽出用の樹脂上に前記血清試料をロードするステップと、
b)クマリン蛍光プローブを用いてステップa)で溶出した画分中の遊離銅の濃度を決定するステップと
を含む上記方法。
【請求項2】
前記樹脂がポリオレフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記樹脂が超高分子量ポリエチレンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ロードするステップa)において、移動相として生理溶液が使用される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記クマリン蛍光プローブが0.1から10μMの間の濃度範囲で使用される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クマリン蛍光プローブがHEPES:DMSOの溶液中で使用される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)が校正曲線の作成のステップを含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップb)における遊離銅の濃度の決定が、430nmの励起波長(λex)及び490nmの吸収波長(λem)で前記クマリンプローブの蛍光を読むことによって得られる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記クマリン蛍光プローブが以下の一般的な構造式:
【化1】

(式中、
は、nが0から5までのN[(CH)nCHであり、
は、H、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルである)
を有する化合物から選択される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記クマリン蛍光プローブが以下の一般的な構造式:
【化2】

を有する化合物から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するステップc)を含み、遊離銅のより高い濃度からアルツハイマー病の臨床診断が確認される、患者のアルツハイマー病の診断のための請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記閾値が0.5から50μMの間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップa)及びb)が、その後の時点で前記患者から収集された血清試料で繰り返され、これらの試料中の遊離銅の濃度の時間ごとの進行が評価される、患者のアルツハイマー病の予後診断のための請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
銅のより高い濃度が軽度認知障害からアルツハイマー病への転換を指し示す、ステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するステップc)を含み、軽度認知障害を患っている患者の軽度認知障害(MCI)の状態からアルツハイマー病への転換の素因の評価のための請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値が0.5から3μMの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
固相上でクロマトグラフィー抽出を実行するための1つ又は複数の手段、及び1つ又は複数の蛍光クマリンプローブを含む、血清中の遊離銅の検出のためのキット。
【請求項17】
前記手段が固相として超高分子量ポリエチレンを含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記クマリン蛍光プローブが以下の一般的な構造式:
【化3】

(式中、Rは、nが0から5までのN[(CH)nCHであり、
は、H、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルである)
を有する化合物から選択される、請求項16又は17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清中の『遊離』銅の濃度、すなわち構造的にセルロプラスミンに結合しない血清銅の部分を決定するための新しい方法に関する。本発明は、アルツハイマー病患者の血清試料における、遊離銅を決定するための、感度及び精度が高い方法にも言及する。
【背景技術】
【0002】
血清銅の決定は、多数の疾患において、例えばアルツハイマー病(AD)において、最も重要である。アルツハイマー病は、記憶喪失及び進行性の痴呆によって特徴づけられる神経障害である。疾患の原因は、ベータアミロイド(Αβ)タンパク質及びタウペプチドが脳内で凝集することと厳密に関連があるように見える。さらに、アポリポタンパク質E(APOE)遺伝子のイプシロン4対立遺伝子は、アルツハイマー病の危険性を増加させることが証明された。アルツハイマー病の発症に関する最も一般的な仮説であると認識される、『アミロイドカスケード』についての新しい詳細が、最近出された。実際に、アルツハイマー病の発症及び進行の原因となる多様な病原性経路が仮定された。主に金属酸化還元反応を介した酸化的ストレスが、アルツハイマー病脳に脳障害を引き起こす可能性がある、ということを証明する十分な証拠がある。具体的には、ベータアミロイドタンパク質の過剰金属化が酸化的ストレス及びH生産の酸化還元サイクルの根底にあり、Αβタンパク質オリゴマー形成及び沈着を決定する可能性があることが提唱された。金属の恒常性の乱れは、結果として、脳の銅貯蔵庫に供給し、Αβ酸化ストレスサイクルに入る可能性のある遊離銅の形成を導き、アルツハイマー病に多面効果を生み出す。この命題は、現在、遊離銅がアルツハイマー病患者の血清でわずかに、しかし、有意に増加することを示すいくつかの証拠によって支持される。
【0003】
セルロプラスミンは血液中で銅を運ぶ主要なタンパク質であり、タンパク質の活性化状態を形成するために構造的に6原子の銅を結合し、それは循環する銅の約85〜95%であると考えることができ、残りの銅が遊離であると定義される。以前の研究で、発明者は血清中の遊離銅を、銅及びセルロプラスミン測定から始め、以下に示す計算で決定した。血清銅濃度は、プラットホームHGA800と共にグラファイト炉を備えたAAanalyst 300 Perkin Elmer原子吸光分光光度計を利用した原子吸光分析技術、又は、Abeら、Clin Chem 1989(Randox Laboratories、Crumlin、UK)の比色法のどちらかで血清銅濃度を測定することによって再確認された。セルロプラスミン濃度はWolf PL Crit Rev Clin Lab Sci 1982に従って免疫比濁分析検定(Horiba ABX、Montpellier、France)によって分析され、各々の血清銅及びセルロプラスミンペアについて、セルロプラスミンに結合する銅(CB)の量及びセルロプラスミンに結合しない銅(『遊離』銅)の量が、Walshら、Ann Clin Biochem 2003に記載された標準手順に従って計算された。この計算はμmol/Lの『遊離』銅を表し、セルロプラスミンが0.3%の銅を含むという証拠に基づく。さらに、発明者は基質としてo−ジアニシジンジヒドロクロリドを用いるセルロプラスミンオキシダーゼ活性の測定手順を最近記載した。
【0004】
以前、市販の標準物質(ヒト血清セルロプラスミン、Sigma−Aldrich)でタンパク質のオキシダーゼ活性から始めるセルロプラスミン量を決定するための方法が記載されているが、分光光度分析よりタンパク質ピークの吸光度が減衰することが明らかになり、遊離銅値を推定するのに必要なタンパク質量を定量するために酵素検出を使用する上での信頼性が低下した。
【0005】
現況技術に記載された酵素法に基づく銅及びセルロプラスミンの定量化には、いくつかの欠点、例えば、高い費用、市販のセルロプラスミンの様々な純度、国際単位(Ul)で血清酵素を報告する一般的推奨、及び決定された濃度の低い正確度を伴う。
【0006】
Hyo Jung Sungら(J. Am. Chem. Soc. 2009)は、生物系における遊離銅の決定のためのクマリンプローブの合成及び使用を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の範囲は、従来技術の欠点を伴わない、血清中の遊離銅を測定するための新しい方法及びキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、血清試料において遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法であって、
a)結合画分及び遊離銅を含む溶出画分を得る、固相抽出用の樹脂上に前記血清試料をロードするステップと、
b)クマリン蛍光プローブを用いてステップa)で溶出した画分中の遊離銅の濃度を決定するステップと
を含む上記方法である。
【0009】
本発明のさらなる目的は、a)、b)と同一のステップ、及び、さらにステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するステップc)を含み、遊離銅のより高い濃度からアルツハイマー病の臨床診断が確認される、患者のアルツハイマー病の診断のために遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法である。
【0010】
本発明のさらなる目的は、前記ステップa)及びb)が、その後の時点で前記患者から収集された血清試料で繰り返され、これらの試料中の遊離銅の濃度の時間ごとの進行が評価される、患者のアルツハイマー病の予後診断のための遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法である。
【0011】
本発明のさらなる目的は、遊離銅のより高い濃度が軽度認知障害からアルツハイマー病への転換を指し示す、a)及びb)と同一のステップ、並びに、さらにステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するステップc)を含み、軽度認知障害(MCI)を患っている患者の軽度認知障害の状態からアルツハイマー病への転換の素因の評価のための遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法である。
【0012】
本発明のさらなる目的は、固相上でクロマトグラフィー抽出のための1つ又は複数の装置、及び1つ又は複数のクマリン蛍光プローブを含む、血清中の遊離銅の検出のためのキットである。
【0013】
発明者は、血清中の遊離銅濃度が血液タンパク質の存在のために不正確に見積もられることを観察し、さらに、低分子量の化学元素を血液タンパク質から分離する様々な方法、例えば膜フィルター装置、が正確に遊離銅の濃度を決定することができないことも観察した。本明細書に記載された本発明は、血液タンパク質から遊離銅を分離するステップの選択、及び、特異的な種類の蛍光プローブの選択に基づく。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法は、現況技術の決定方法と比較して、いくつかの利点を伴う:
− 高い精度及び正確度で血清中の遊離銅の濃度を決定することができること、
− 非常に減じられた費用と時間で血清中の遊離銅の濃度を決定することができること、
− 簡単に自動化可能な方法であること。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】HEPES:DMSO 9:1中でCu++(10−4M)の存在下における、クマリン蛍光プローブ7−(ジエチルアミノ)−2−オキソ−N−((ピリジン−2−イル)メチル)−2H−クロメン−3−カルボキサミドの校正曲線(λex=430nm、490nmのλem)の図である。
図2】HEPES:DMSO 9:1中でCu++(10−5M)の存在下における、クマリン蛍光プローブ7−(ジエチルアミノ)−2−オキソ−N−((ピリジン−2−イル)メチル)−2H−クロメン−3−カルボキサミドの校正曲線(λex=430nm、490nmのλem)である。
図3】受信者操作特性(ROC)曲線である。本発明の1つの実施形態に従って、702個の試料を分析した。曲線は、本発明を用いて、アルツハイマー病の診断が、高い特異度(80%)及び個別の感度(60%)で得ることができることを示す。
図4】遊離血清銅レベルによって、アルツハイマー病に罹患した患者における悪化する可能性(ミニメンタルステート検査)を予測するモデルを示す図である。丸は、患者の遊離血清銅の値を表す。線は、ミニメンタルステート検査の予測された可能性のモデルが悪化していることを表す。現在の試験パネルの患者で、2.1μmol/Lの遊離銅の値と一致する、z−スコア−0.138を超える患者は、そのようなレベル未満の『遊離』銅の値を持つ患者よりも悪化する可能性が高まった。
図5】遊離銅の濃度を用いて、軽度認知障害を訴え、やがてアルツハイマー病になる被験者の割合を予測することもできることを示す図である。遊離銅の濃度が1.6μΜを超える軽度認知障害被験者は、アルツハイマー病に転換する割合がより高い。
図6】1つの実施形態に従って本発明の方法を実行する装置の写真である。
図7】固相上の抽出によって分離された血清試料の分光光度分析を示す図である。分光光度分析によって、濾液中のタンパク質の存在を確かめることが可能になり、タンパク質の存在がより高いほど、これらのタンパク質が銅の読み取りをマスクするので、遊離銅の回収率に関する性能はより悪くなる。曲線の幅が狭くなるに従って、タンパク質組成は減少し、したがって、遊離銅の回収率が改善する。
図8A】膜濾過によって分離された血清試料の分光光度分析を示す図である。
図8B】膜濾過によって分離された血清試料の分光光度分析を示す図である。
図9】現況技術の参照試験(計算された銅)によって、又は、本発明(C4D)に記載の方法によって決定されたセルロプラスミンに結合しない銅(非cp銅)の値で得られた、多項式及び「非パラメトリックlowess」(局所的な重み付けをした散布図平準化)直線回帰分析を示す図である。
図10】現況技術の参照試験(計算された銅)によって、又は、本発明(C4D)に記載の方法によって決定された、健康な被験者、軽度認知障害(MCI)被験者、及びアルツハイマー病(AD)被験者における、非cp銅の信頼区間(95%)を示す図である。
図11】現況技術の参照試験(計算された銅)によって決定された非cp銅濃度の値を用いて、又は、本発明(C4D)に記載の方法によって得られたROC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前に示したように、本発明は血清試料において遊離銅の濃度を決定するためのin vitroの方法に関する。本記載において、「遊離銅」という用語は、全身循環で、構造的にセルロプラスミンに結合されない銅を意味する。アルブミン、小ペプチド、アミノ酸及び他の微量要素に不安定に結合し、それらの間で簡単に交換可能なその特性を指して、それは最近『不安定』銅とも名付けられている。遊離銅は、血液脳関門を横切って脳組織に簡単に到着することができる低分子量銅である。
【0017】
遊離銅を血清試料の血液タンパク質から分離するために、方法は、第1ステップ(a)固相抽出(SPE)クロマトグラフィーを含む。血清試料は、当該分野の技術者に知られている手順に従って、例えば遠心分離によって、全血から得てもよい。分離を行う前の血清は、好ましくは、1から10の間の希釈係数に従って、適切に希釈してもよい。血清は、例えば、クロマトグラフィーの移動相としても使用可能な生理溶液(0.9%NaCl)で希釈してもよい。
【0018】
血清試料は、通常、例えば、200mg、300mg、400mg、500mg、600mgの小型クロマトグラフィーカラムの固相(血液タンパク質を結合することができる樹脂)上に、ロードされる(接種される)。セルロプラスミンを含む、血清試料に存在する血液タンパク質は固相上に吸着されるが、固相から溶出される銅を含む画分は収集されて、方法の第2ステップb)にかけられる。したがって、本記載において、『溶出された画分』とは、固相抽出クロマトグラフィー(固相上のクロマトグラフィー抽出)で使用した樹脂に吸着されない画分を意味する。
【0019】
試料は、ペリスタル型ポンプによって、例えば、100μl/minから1ml/mlの間、例えば200、300、400、500μl/minの流量で固相上にロードしてもよい。
【0020】
ステップa)で、ポリオレフィン、好ましくは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン−1(PB−19)から選択される熱可塑性ポリオレフィンを、固相として使用してもよい。前記固相は、例えば、35から75%の間の結晶化度を持つ可能性がある。
【0021】
本発明の一実施形態によると、固相として超高分子量ポリエチレン(すなわち、3から6MDaの間の原子質量で)の樹脂、例えば、カタログ番号434264−1KGでSigma−Aldrichから商業的に入手可能(超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びその他同等の商用樹脂)が使用される。したがって、ステップa)のすべては、非常に迅速で、簡単に自動化可能であり、さらに、一度適した溶媒、例えばメタノールで再生されると、固相は他の分離に再生利用されて、経済的な利点がある可能性がある。
【0022】
方法は、クマリン蛍光プローブを用いて、ステップa)で溶出された画分の銅を決定する第2のステップ(b)を含む。クマリン蛍光プローブは、[Cu++]を結合すると、蛍光放射の減衰を記録することができるキレート化蛍光プローブである。クマリン蛍光プローブが例えば以下の一般的な構造式:
【化1】

(式中、
は、nが0から5までのN[(CH)nCHであり、
は、H、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルである)
を有する化合物から選択されてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブは、Rがn=1のN[(CH)nCHであり、RがH、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルでオルト位、パラ位又はメタ位のいずれかである上記の群から選択される。
【0024】
本発明の別の実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブは、Rがn=2のN[(CH)nCHであり、RがH、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルでオルト位、パラ位又はメタ位のいずれかである上記の群から選択される。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブは、Rがn=3のN[(CH)nCHであり、RがH、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルでオルト位、パラ位又はメタ位のいずれかである上記の群から選択される。
【0026】
本発明の別の実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブは、Rがn=4のN[(CH)nCHであり、RがH、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルでオルト位、パラ位又はメタ位のいずれかである上記の群から選択される。
【0027】
本発明の別の実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブは、Rがn=5のN[(CH)nCHであり、RがH、F、Cl、Br、NO、OCH、シクロヘキシルでオルト位、パラ位又はメタ位のいずれかである上記の群から選択される。
【0028】
本発明の別の実施形態によると、前記クマリン蛍光プローブが以下の構造式:
【化2】

を有する7−(ジエチルアミノ)−2−オキソ−N−((ピリジン−2−イル)メチル)−2H−クロメン−3−カルボキサミドである。
【0029】
クマリン蛍光プローブは、例えばEtOH、MeOH、DMSOなどの有機溶媒中で、PBS又はHepesなどの緩衝液と混合して使用してもよい。一実施形態では、クマリン蛍光プローブは、HEPES:DMSOの溶液中で使用される。
【0030】
クマリン蛍光プローブは、好ましくは0.1から10μΜの間、例えば1、2.5、5.0、9μΜの濃度範囲で、試料との反応に使用される。発明者は、この範囲において遊離銅の濃度と蛍光放射との間に直接的な相関関係があることを見いだし、例えば励起波長(λex)は430nmであり、吸収波長(λem)は490nmである。
【0031】
遊離銅の濃度を決定するために、ステップb)は、校正曲線を作成するさらなるステップを含んでもよい。校正曲線を作成するために、既知濃度の銅の複数のアリコートを使用してもよい。好ましくは、この曲線は、0.1から10μΜの間の範囲である(図1を参照)。
【0032】
以前にアルツハイマー病に罹患した患者について報告されたように、セルロプラスミンに結合しない血清銅(『遊離』銅)は上昇するように見え、わずかであるがその増加は、通常アルツハイマー病患者と健康で高齢の被験者(疾患の初期も含む)を区別するのに十分である。
【0033】
それゆえに、ステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するさらなるステップc)を含み、遊離銅のより高い濃度からアルツハイマー病の臨床診断が確認される、アルツハイマー病の疑いがある患者のアルツハイマー病の診断のためのin vitroの方法は本発明の目的である。
【0034】
「アルツハイマー病の診断のためのin vitroの方法」という表現は、アルツハイマー病の疑いがある患者におけるアルツハイマー病の臨床診断を確かめる方法を意味する。
【0035】
明らかに、クロマトグラフィー上にロードされる前に、血清が特定の希釈係数によって希釈されるならば、閾値と比較するステップc)において、ステップb)で決定された遊離銅濃度を希釈係数で乗じなければならない。
【0036】
銅の閾値(カットオフ)は、例えば、健康な個体及びアルツハイマー病の個体の一組の試料(統計的に有意な)の濃度を加工することによって得られるROC(受信者操作特性)曲線によって決定してもよい。そのような加工を通して、0.5から50μmの間好ましくは0.5から3μmの間、例えば1、1.5、2、2.5、3μmの閾値が得られた。
【0037】
好ましくは、前記診断方法は、『銅の表現型機能障害』でアルツハイマー病の疑いがある患者におけるアルツハイマー病の臨床診断を確認する検査として使用される。
【0038】
Squittiら、Neurology(2009)が示すように、患者のアルツハイマー病の予後をモニターするため、並びに、軽度認知障害(軽度認知障害)からアルツハイマー病への転換を予測するために、前記患者の血清中の遊離銅の濃度を決定することは重要である(図5)。
【0039】
軽度認知障害の臨床症状は、記憶障害によって特徴づけられ、客観的な測定によって証明できるが、痴呆の定義は与えられていない。正確な診断が重要であるのは、状態が軽度であるにもかかわらず、軽度認知障害は通常、アルツハイマー病の前兆であると考えられるという事実にある。これは、軽度認知障害からアルツハイマー病までの進行の高い統計率に起因する。
【0040】
通常、健康な状態からアルツハイマー病への年間転換率は、0.17%から3.86%にわたる。軽度認知障害からアルツハイマー病への変転換率は非常に高く、6%から40%にわたる。場合によっては、軽度認知障害は、痴呆への進行がない良性の状態である可能性がある。2つのグループの平均を比較することによって明らかにされるように、遊離銅濃度は、軽度認知障害被験者を健康な対照個体と区別する(図5)。遊離銅濃度を用いて、軽度認知障害で、やがてアルツハイマー病になる被験者の割合を予測することもできる。遊離銅濃度が1.6μΜを超える軽度認知障害被験者は、アルツハイマー病に転換する割合がより高く、つまり1年につき17%であり、銅が1.6μΜ以下の軽度認知障害被験者に関しては、つまり1年につき10%である。銅が1.6μΜを超える軽度認知障害被験者は、銅が1.6μΜ以下の軽度認知障害被験者よりもアルツハイマー病に転換する割合がより高く、最初の2年以内にアルツハイマー病へ転換した割合が24〜35%の間にあるのに対し、遊離銅が1.6μΜ以下の軽度認知障害被験者で3年半以内に転換したのは25〜30%であることを、カプラン−マイヤー統計分析は立証する。分析を5年のフォローアップに限定すると、アルツハイマー病へ転換する割合は、銅が1.6μΜ以下の軽度認知障害被験者では50%未満であり、一方、銅が1.6μΜを超える軽度認知障害コホートでは、患者の50%が4〜6年以内に転換する(図5)。
【0041】
一実施形態では、本発明の方法は、銅のより高い濃度が軽度認知障害からアルツハイマー病への転換を示す、ステップb)で決定された値を、閾値(カットオフ)と比較するステップc)を含み、軽度認知障害を患っている患者の軽度認知障害(MCI)の状態からアルツハイマー病への転換を予測するために使用される。この閾値は、例えば0.5から3μΜの間であり、好ましくは1.6μΜである。前記予測方法のステップa)及びb)を、上記に開示されたステップa)及びb)のいずれかの実施形態に従って実行してもよい。
【0042】
本発明のさらなる目的は、患者のアルツハイマー病の予測のためのin vitroの方法であって、上記に開示されたステップa)及びb)のいずれかの実施形態に記載の方法のステップa)及びb)は、異なる時点で収集された前記患者のより多くの試料で実行され、各々の試料から得られたデータの定量化は、交互に比較され、したがって前記患者の血清試料中の遊離銅の濃度の時間ごとの進行が構築される。
【0043】
本発明のさらなる目的は、固相上でクロマトグラフィー抽出を実行するための手段又は指示、及び1つ又は複数の蛍光クマリンプローブを含む、血清中の遊離銅の検出のためのキットである。固相上でクロマトグラフィー抽出を実行するための手段は、例えば、固相樹脂を含むクロマトグラフィーカラムである。一実施形態では、前記手段は固相として超高分子量ポリエチレンを含む。さらなる実施形態では、前記クマリン蛍光プローブは、上記の構造式を有する化合物から選択される。
【0044】
一実施形態では、キットは銅の既知の力価を有する対照の1つ又は複数のアリコートをさらに含み、これらの対照は、校正曲線を作成するために使用してもよい。
【0045】
本発明の一部の実施形態を例示することを目的とする実施例は、以下に報告され、いかなる場合も、そのような実施例は、本記載及び後続の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されないことになっている。
【実施例】
【0046】
(例1)
血液タンパク質分離のために、固相抽出(SPE)クロマトグラフィー法を設定した。固相としては、相互作用し、血清タンパク質を保持することができる、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)樹脂(Sigma−Aldrich、カタログ番号434264−1KG)が用いられた。移動相としては、タンパク質(セルロプラスミン)結合性銅の放出を阻止するために、純水ではなく生理溶液(0.9%のNaCl)を使用し、一定の溶出流量(流量:400μl/min)を維持するためにペリスタル型ポンプによって吸引した。1mlのクロマトグラフィーカラムに500mgの樹脂を充填し(図6)、2つの異なる方針を用いて調整した:
− カラムに入れた500mgの樹脂は、6mlの生理溶液で調整した。
− 500mgの樹脂を約3mlのメタノール中に懸濁し、次いでカラムにロードするために用いた。
次いで、6mlの蒸留水をカラムに通して溶出し、完全にメタノールを除去し、その後6mlの生理溶液を通した。次いで、いずれの場合も、50μlの血清をロードし、生理溶液で溶出した。最初の250μlの溶出液及び後続の500μlのアリコートは別に収集した。分光光度分析により、250μlのアリコート(図7のアリコート1)ではタンパク質が検出されず、一方、後続の500μlのアリコート(図7のアリコート2及び3)ではタンパク質の存在が観察された。あらゆる実験室のニーズのために、目的のアリコートを収集するために要する時間を減じるために、カラム調整のために必要な移動相体積を減らすことによって、プロトコールを改善することができる。前記技術の1つの利点は、メタノール吸着タンパク質を溶出する(約2ml)ことによってカラムを再生させる可能性によってもたらされる。再生され、後続の3回の分離に使用されたカラムでは、分光光度分析により、250μlのアリコート中にタンパク質が検出されない、という期待される結果が確認された。プロトコールのすべては、最長30分で展開する。最適化された方法は、20分又は15分又は10分まで時間を短縮し、6サイクル/時間まで短縮する。
【0047】
1.比較実験
様々な血清試料中の遊離銅濃度を、既知の遊離銅濃度を使って決定した。解析した試料及びその濃度のリストを表1に報告する。試料中の遊離銅濃度は、本発明の方法によって、特に実施例1に詳細に記載された実施形態に従って、同時に、分離ステップで固相(SPE)上のクロマトグラフィー抽出の代わりに濾過膜を使用することによって、決定された。
【0048】
しかし、得られた結果は、異なる種類の濾過膜を用いることによって、試料に含まれる遊離銅の回収率が35〜77%減少したことを示す。特に、実験は、膜装置が1:10(Cu検定で許容される最大の希釈度)に希釈された血清試料からタンパク質を除去することができないことを示す。
【0049】
これに反して、固相(SPE)上のクロマトグラフィー抽出を用いた濾過収量は、接種した血清量に比例する。さらに、MeOH溶出液において、濾過した量にほぼ反比例するタンパク質量が得られ、方法の正確度が確認される(10μl濾過後に1mL中に保持されるタンパク質は、50μlで5mL中より多く、さらに25μlで2.5mL中より多い)。
【0050】
50μlを接種したタンパク質画分は、最初の2回の500μl画分に収集される。次いで、全血清を1mLで収集する。最初の250μl画分を除いても、その他の2つの画分は、タンパク質を含む画分である。
【0051】
要約すると、膜装置による濾過は効率的ではないが、固相上のクロマトグラフィー抽出による濾過はより正確でより迅速である。
【表1】
【0052】
2.比較実験
以下に記載された実験では、本発明に記載の方法、及び現況技術で用いられ、Walshら、Ann Clin Biochem 2003に記載された参照方法(計算された銅)の両方を用いて、かなりの個体の試料から得られた血清中の「遊離銅」の濃度を決定した。
【0053】
本発明に記載の方法は、以下に、及び図9〜11に、C4D(Canox4Drugの頭字語)という名称によってより簡潔に示される。
【0054】
次の分析:
a.現況技術の参照試験との比較、
b.C4D試験の精度、
c.C4D試験の直線性、
d.C4D試験の検出限界、
e.C4D試験の基準範囲、
f.判別妥当性
i.手段の比較、
ii.診断正確度(特異度、感度、陽性予測値、陰性予測値)。
が報告されている。
【0055】
2.1参照試験との比較(CLSI用語:真度/比較性)
現況の技術において、遊離銅、すなわちセルロプラスミンに結合していない(非Cp銅)、は直接測定されず、次のアルゴリズム:
非Cp銅=銅総量−0.472xCp
に基づいて計算される(Walshら、Ann. Clin. Biochem 2003)。
【0056】
この手順は、発明者のデータベースで11%と等しい偽陰性値の割合を決定する。本発明に記載の非Cp銅の直接測定は、2つの分布が非対称であるので、このエラーを決定しない。図9に、試験された273例の被験者の2種類の定量による値を示す。直線回帰、多項式及び「非パラメトリックlowess」(局所的な重み付けをした散布図平準化)回帰分析は、線形フィットが十分ではないこと、2次要素をモデルに挿入することは、適応効果を有意に強化して(0.525から0.591まで、R2−変化に対する試験、p<0.001)、曲線性が存在することが示唆されること、及び、そのような曲線性は、区分的回帰によって、計算された非Cp銅の臨界点値0を持つ2つの直線回帰に分解することができることを示す。計算された非Cp銅の負の値が手続き的なエラーと考えることでき、比較的わずかであるので、2つの測定間の一致は、負でない値についてのみ実行された。比較するのは2つの測定装置ではなく、2つの検出モード(セルロプラスミンへ結合する銅の化学式に基づく標準規格のもの、及び本発明に記載の直接測定に基づくもの)であることを考慮すれば、クラス内相関係数は、「総一致」ではなく「一貫性」の評価のために計算された。
【0057】
参照試験との比較分析は、
クラス内相関は0.75と等しいこと(95%の信頼区間:0.69〜0.80)、及び、組織的影響が2つの検出モード(識別テスト、p=0.959)の間に存在しないことを示す。
【表2】
【0058】
基準範囲を定めるために、発明者が根拠をおいた試料は、147例の被験者から成り、そのために神経科医が認知障害、並びに、過去及び最近の心血管性エピソード及び脳血管性エピソードの存在を除外した。対照被験者の平均年齢は、49歳(DS=12.8)であり、女性が53%、男性が47%であった。性別及び年齢の非cp銅への影響に関する予備分析は、性別が関連性のある影響を持たないこと(F(1.140)=0.846、p=0.359、年齢の二乗=0.006)、及び年齢効果は、男性と女性で有意差のないこと(F(1.140)=0.631、p=0.428、年齢の二乗=0.004)を示した。年齢効果は、統計的に有意であることを証明し(F(1.140)=5.114、p=0.035、年齢の二乗=0.035)、非Cp銅の3.5%が年齢可変性に起因することが示された。追加の年齢10年ごとに、非Cp銅が0.09マイクロモル増加することを伴い、関係は実質的に線形である。次いで、年齢補正値を、次の式:
年齢補正非Cp銅=(c4d−0.009*(年齢−49.05))
に従って得た。
【0059】
新しい値を、非パラメトリックCLSI手順で分析した。基準上限(95%)は、1.91と等しかった(関連する90%の信頼区間は、1.78〜2.06と等しかった)。
【0060】
2.2.識別能力及び数値(マイクロモル)
分散分析により、両測定で、対照、軽度認知障害(MCI)患者、及びアルツハイマー病(AD)患者の間で明白な識別能力が示された(F(2.265)=47.317、p<0.00、年齢の二乗=0.260、非Cp銅について測定;F(2.265)=32.695、p<0.001、年齢の二乗=0.198、現況技術の方法に従って非Cp銅について計算)。図10は、3つのグループの平均及び信頼区間を示す。
【0061】
対照と標的病状(アルツハイマー病の可能性、及び/又は見込みの診断)に罹患した患者の間の比較だけを考慮すると、ROC曲線は、現況技術の参照試験によって非Cp銅を計算すると0.761の正確度(AUC−曲線下面積として測定)を、及び本発明に記載の方法で非Cp銅を測定すると0.806を示した。そのような差異は、統計的に有意であることを証明した(ペアワイズROC比較、p<0.001)。図11にハイライトされるように、95%の特異度で、感度は、現況技術の方法によって計算された決定の44%から、本発明の方法によって測定された決定の56%へ進む。
【0062】
2.3診断の正確度(特異度、感度、陽性予測値、陰性予測値)
対照被験者の試料の基準限界に基づいてセットされた(95%)特異度で(1.9)、48.3%(95%の信頼区間:38%〜58%)と等しい方法感度が検出された。陽性テスト(LR+)の尤度比は9.94であり、従来通りに認められたカットオフ(>5)を優に上回った。陰性テスト(LR−)の尤度比は0.54であり、従来通りに認められたカットオフ(<0.2)と比較して値は適切ではなく、高い割合の偽陰性(非Cp銅の値が1.9未満のAD患者)に起因した。テストの陽性予測値(PPV)を推定するために、発明者は、可変的な発生率(年齢、並びに、他の遺伝的、及び臨床的条件に基づく)によって特徴づけられた3つのシナリオを推察した。
【0063】
以下に、上記の実験に関連した結果のいくつかを、表形式にまとめる。表2に、本発明の方法で達成できる診断正確度の値を要約する。表3.1〜3.3に、図11で報告したROC曲線を加工するために用いた値が報告される。
【表3】

【表4-1】

【表4-2】

【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
【国際調査報告】