(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-518076(P2016-518076A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(54)【発明の名称】効率的な広帯域受動ジャイレータ
(51)【国際特許分類】
H03B 15/00 20060101AFI20160523BHJP
H03H 7/00 20060101ALI20160523BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20160523BHJP
【FI】
H03B15/00
H03H7/00
H01L43/06 Z
H01L43/06 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-506781(P2016-506781)
(86)(22)【出願日】2014年3月15日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】DE2014000136
(87)【国際公開番号】WO2014166465
(87)【国際公開日】20141016
(31)【優先権主張番号】102013006377.9
(32)【優先日】2013年4月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィンチェンツォ・ダヴィード
【テーマコード(参考)】
5F092
5J024
【Fターム(参考)】
5F092AB10
5F092AC02
5F092BA02
5F092BA21
5F092EA08
5J024CA06
5J024CA07
5J024DA26
5J024DA32
(57)【要約】
本発明は、交流電流信号用ジャイレータに関する。このジャイレータは、ホール効果材料と、このホール効果材料に交流電流(I
1;I
4)を入力結合させる手段と、このホール効果材料に、その平面又は表面に対して直角の磁界を通過させる手段と、前記の電流(I
1)が発生する電界に対して直角に、この電流(I
1)がホール効果材料内に発生する電流(I
3;I
2)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する手段とを備える。本発明では、電流(I
1;I
4)のホール効果材料内への入力結合及び/又はホール効果材料内の電流(I
3;I
2)の出力電圧(U
4;U
1)への変換のために、常導体又は半導体材料から成る少なくとも一つの導体ループ(1a;2a)と、ホール効果材料から成る少なくとも一つの導体ループ(1;2)との間に変成器が配備される。金属又は半導体製導体でのホール効果材料の不効率な流電結合を排除することによって、入力電流(I
1;I
4)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する際に生じる散逸損失が最小化される。それによって、ジャイレータを低い温度での高感度な量子情報処理実験でも使用することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール効果材料と、このホール効果材料に交流電流(I1;I4)を入力結合させる手段と、このホール効果材料に、その面又は表面に対して直角の磁界を通過させる手段と、前記の電流(I1)が発生する電界に対して直角に、この電流(I1)がホール効果材料内に発生する電流(I3;I2)を出力電圧(U4;U1)に変換する手段とを備えた交流電流信号用ジャイレータにおいて、
前記の電流(I1;I4)のホール効果材料内への入力結合及び/又は前記のホール効果材料内の電流(I3;I2)の出力電圧(U4;U1)への変換のために、常導体又は半導体材料から成る少なくとも一つの導体ループと、ホール効果材料から成る少なくとも一つの導体ループとの間に変成器が配備されることを特徴とするジャイレータ。
【請求項2】
二つの変成器の常導体又は半導体材料から成る導体ループが誘導に関して互いに分離されることを特徴とする請求項1に記載のジャイレータ。
【請求項3】
ホール効果材料が、1Tの磁界強度において、少なくとも80°のホール角θHを有する材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジャイレータ。
【請求項4】
ホール効果材料が、半金属、特に、砒素、α錫(灰色錫)、アンチモン、ビスマス、グラファイトのグループの構成要素及び/又はドーピングした半導体から成る半金属であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項5】
ホール効果材料が量子ホール効果材料であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項6】
量子ホール効果材料が、二次元の電子ガスを発生させるグラフェン及び/又は半導体ヘテロ構造を有することを特徴とする請求項5に記載のジャイレータ。
【請求項7】
磁界が印加された場合に、一方のセグメント内の起電力が主に他方のセグメント内を流れる電流を生じさせるように、ホール効果材料が少なくとも二つのセグメント内に配置されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項8】
ホール効果材料が、一方の一つの点で互いに電気的に接続されるとともに、少なくとも一つの他方の点で電気的に接続されずに交差する少なくとも二つの導体ループ(1,2)を形成することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項9】
一方の導体ループ(1;2)が、入力電流(I1;I4)を入力結合させる変成器の二次巻線であることと、
他方の導体ループ(2;1)が、ホール効果材料内の電流(I3;I2)を出力電圧(U4;U1)に変換する変成器の一次巻線であることと、
の中の一つ以上を特徴とする請求項8に記載のジャイレータ。
【請求項10】
ホール効果材料が、空間内で二次元の面を閉じた経路に沿って動かすことにより表すことが可能な三次元の面に置かれることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項11】
ホール効果材料が層として絶縁基板上に配置されるか、当該の三次元の面がホール効果材料から成る中空体を形成するか、或いはその両方であることを特徴とする請求項10に記載のジャイレータ。
【請求項12】
当該の閉じた経路に沿った、或いはこの経路に対して平行なホール効果材料内のパスが、入力電流(I1;I4)を入力結合させる変成器の二次巻線又はホール効果材料内の電流(I3;I2)を出力電圧(U4;U1)に変換する変成器の一次巻線であることを特徴とする請求項10又は11に記載のジャイレータ。
【請求項13】
当該の閉じた経路の一つの点における当該の二次元の面の周囲に沿ったホール効果材料内のパスが、入力電流(I1;I4)を入力結合させる変成器の二次巻線又はホール効果材料内の電流(I3;I2)を出力電圧(U4;U1)に変換する変成器の一次巻線であることを特徴とする請求項10から12までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項14】
当該の三次元の面が一つのトーラスであることを特徴とする請求項10から13までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項15】
ホール効果材料が、当該の三次元の面を通して磁力線を通過させる少なくとも一つの開口部を有することを特徴とする請求項10から14までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項16】
ホール効果材料に磁界を通過させる磁気多重極場配置構成を有することを特徴とする請求項10から15までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【請求項17】
当該の三次元の面上の少なくとも一つの位置に局所的な補助電界を発生させる手段を有することを特徴とする請求項10から16までのいずれか一つに記載のジャイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流信号用ジャイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイレータは、出力電圧が入力電流に比例し、入力と出力を置き換えた場合にその電圧の符号を切り換える2ポート部品である。そのため、電流が交流電流である場合、その電流がジャイレータの如何なるポートに加えられるかに応じて、同相又は逆相の交流電圧に変換される。抵抗、キャパシタンス、インダクタンス及び理想的な変成器以外の第五の線形部品としては、交流電圧を一つの方向にのみ通過させる2ポート部品(アイソレータ)又は一つのポートの交流電圧を固定した回転方向における次のポートにのみ通過させる3ポート以上の部品(サーキュレータ)を実現する必要がある。
【0003】
ジャイレータによって、入力電流から出力電圧への変換を電流方向に依存させるために、マイクロ波帯域において、外部磁界の影響下でのフェライト内のファラデー回転を利用している。そのためには、入力電流が発生する電磁波をフェライト内に拡散させる必要がある。従って、そのフェライトのサイズは、波長の規模としなければならず、そのため、無線又は音声周波数帯域の周波数に対しては非現実的な程大きくなる。マイクロ波帯域以内の周波数では、もはや効率的にも動作しない。更に、各ジャイレータは、その物理的なサイズによって、多少狭い周波数帯域に固定されている。
【0004】
それに代わって、ジャイレータは、トランジスタとフィードバック演算増幅器から成る能動回路として実現することもできる。しかし、そのような回路は、エネルギー供給部を必要とし、雑音も熱も発生する。
【0005】
特許文献1により、フェライト内のファラデー回転を平坦なホール効果により置き換えた、より低い周波数用の受動ジャイレータが周知である。その電流のホール効果材料への入力結合も、ホール電圧の取り出しも高い接点抵抗によって阻害され、それがジャイレータの効率を損なっていることが不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2,649,574号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことから、本発明の課題は、1〜100MHz規模の低い周波数において、従来技術によるジャイレータよりも効率的に動作するジャイレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、本発明の主請求項によるジャイレータによって解決される。別の有利な実施形態は、それを引用する従属請求項から明らかとなる。
【0009】
本発明の範囲内において、交流電流信号用ジャイレータを開発した。このジャイレータは、ホール効果材料と、交流電流(I
1;I
4)をホール効果材料に入力結合させる手段と、ホール効果材料に、その面又は表面に対して直角の磁界を通過させる手段と、前記の電流I
1が発生する電界に対して直角に、この電流I
1がホール効果材料内に発生する電流(I
3;I
2)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する手段とを備えている。
【0010】
交流電流I
1がジャイレータの第一のポートに印加されて、ホール効果材料を通して駆動されると、その電流を搬送する電子は、磁界によって電流方向に対して直角に偏向される。それにより、全電流が、電流I
1が発生する電界に対して直角の成分I
3を有することとなる。これは、出力電圧U
4に変換することができる。この出力電圧U
4は、例えば、ホール効果材料におけるホール電圧として、電流I
1の方向に対して直角に取り出することができる。ジャイレータの第二のポートに交流電流I
4が印加されると、磁界方向が同じ場合、右手の法則に基づき、偏向作用を受ける電流成分I
2の方向が変化する。それに応じて、出力電圧U
1の符号が逆になる。
【0011】
本発明では、電流(I
1;I
4)のホール効果材料への入力結合及び/又はホール効果材料内の電流(I
3;I
2)の出力電圧(U
4;U
1)への変換のために、常導体又は半導体材料から成る少なくとも一つの導体ループと、ホール効果材料から成る少なくとも一つの導体ループとの間に変成器が配備される。
【0012】
金属製又は半導体製導体でのホール効果材料の不効率な流電結合を排除することによって、入力電流(I
1;I
4)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する際に生じる散逸損失が最小化されることが分かった。10mK規模の低い温度での量子情報処理実験は感度が良く、実験の測定信号が出来る限り妨害されずに電子測定機器に到達するが、電子測定機器が雑音を実験に戻さないようにするために、アイソレータを用いて電子測定機器から分離されている。そのためには、能動ジャイレータは熱も雑音も発生するので、受動ジャイレータに基づくアイソレータが重要となる。同じく、従来技術によるホール効果に基づくジャイレータは、散逸損失が測定信号を減衰させて、望ましくない熱を発生するともに、全てのオーム抵抗と同様に雑音を発生するので、そのような使用目的に用いることができない。本発明によるジャイレータは、これらの欠点を持たず、前述した実験に用いることが可能である。このジャイレータは、それ以外のジャイレータ、そのため、アイソレータを用いること無く、これらの実験の幾つかを初めて実用的な実験とした。
【0013】
この場合、入力電流(I
1;I
4)の出力電圧(U
4;U
1)への変換率は、ホール効果材料でのホール効果の強さに依存する。この強さは、電流I
1が発生する電界によってホール効果材料を流れる全電流を偏向させるホール角θ
Hにより規定される。従って、ホール効果材料は、有利には、1Tの磁界強度で少なくとも80°のホール角θ
Hを有する材料である。そのために、ホール効果材料は、有利には、半金属、特に、砒素、α錫(灰色錫)、アンチモン、ビスマス、グラファイトのグループの構成要素及び/又はドーピングした半導体から成る半金属により構成される。ホール効果の強さは、ほぼ真性の材料特性(主に荷電粒子密度)と電界強度の積である。ホール角が90°から大きくずれる程、入力電流(I
1;I
4)がジャイレータにより大きく反射される。
【0014】
本発明に基づき配備される変成器は、ジャイレータの使用範囲を交流電流信号に限定する。しかし、下限を約50Hzまでとする周波数での動作を可能とする。
【0015】
そして、入力結合及び変換のために変成器を配備する場合、有利には、常導体又は半導体材料から構成される、二つの変成器の導体ループは、誘導に関して互いに分離される。そして、入力電流I
1は、ホール効果材料のホール効果を介してのみ出力電圧U
4に作用し、それと逆に、入力電流I
4も、そのホール効果を介してのみ出力電圧U
1に作用する。入力と出力を置き換えた場合、ホール効果材料を迂回して直接誘導される出力電圧が符号を変えないことが欠点である。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態では、ホール効果材料は量子ホール効果材料である。そのような材料では、θ
Hは、測定できない程小さい量だけ90°と異なる。そして、入力電流I
1は、ホール効果材料内で実際完全に直角の電流I
3に変換され、その電流が出力電圧U
4に変換される。この量子ホール効果は、多くの非常に薄い材料と構造において得られる。有利には、量子ホール効果材料は、二次元の電子ガスを発生させるグラフェン及び/又は半導体ヘテロ構造を有する。
【0017】
本発明の特に有利な実施形態では、ホール効果材料は、磁界が印加された場合に、一方のセグメント内の起電力が主に他方のセグメント内に流れる電流を生じさせるように、少なくとも二つのセグメントに配置される。この場合、入力電流(I
1;I
4)が、一方のセグメントに起電力を生じさせ、その起電力が、ホール効果によって、他方のセグメントを流れる電流に変換される。この電流の流れは、又もや誘導により出力電圧(U
4;U
1)に変換される。
【0018】
これは、例えば、本発明の特に有利な実施形態において実現される。その実施形態では、ホール効果材料は、少なくとも二つの導体ループ1と2を形成し、これらの導体ループは、一方の一つの点で互いに電気的に接続されるとともに、少なくとも一つの他方の点で電気的に接続されずに交差する。この交差は、例えば、一方の導体ループを他方の導体ループの上又は下を通して、隙間及び/又は絶縁材料により他方の導体ループから分離することによって実現することができる。しかし、一方の導体ループを他方の導体ループと交差させ、その際隙間及び/又は絶縁材料により他方の導体ループから切り離すこともできる。これらの導体ループは、円形状に固定されるのではなく、如何なる形状も採ることができる。
【0019】
ホール効果材料は、例えば、渦巻きの形で実現することができ、それらの端部を螺旋の中の一つにおける共通の一つの交差点に巻き付けるか、或いはその交差点と電気的に接触させることができる。
【0020】
本発明の特に有利な実施形態では、一方の導体ループ(1;2)は、入力電流(I
1;I
4)を入力結合させる変成器の二次巻線であるか、他方の導体ループ(2;1)がホール効果材料内の電流(I
3;I
2)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する変成器の一次巻線であるか、或いはその両方である。そして、両方の導体ループは、それぞれ二重機能を果たし、一方では、ホール効果材料内の全電流の関連する成分(I
3;I
2)を導体ループの中の一方に分離する。他方では、それぞれ入力結合又は変換用変成器の半分を形成し、その結果、そのための追加の部分が節約される。
【0021】
本発明の特に有利な実施形態では、ホール効果材料は、空間内において閉じた経路に沿って二次元の面を動かすことにより表すことが可能な三次元の面に置かれる。この平面は、例えば、一つのトーラスとすることができる。三次元空間内において二次元の面としての円をより大きな円に沿って動かすことによって、一つのトーラスが得られる。
【0022】
このホール効果材料は、特に、層として絶縁基板上に配置することができるか、この三次元の面が、ホール効果材料から成る空中体を形成することができるか、或いはその両方である。両形態の作用は、この三次元の面に沿った電流パスだけが得られ、中実のホール効果材料を通る寄生電流パスが生じないことである。このホール効果材料は、絶縁基板上に成長させるか、或いはその基板上にコーティング技術により成膜することができる。
【0023】
この三次元の面は、一方の一つの点で互いに電気的に接続されるとともに、少なくとも一つの他方の点で電気的に接続されずに交差する導体ループ1と2を自動的に含む。第一の導体ループ1は、閉じた経路に沿った、或いはその経路に対して平行なホール効果材料内のパスである。第二の導体ループ2は、この閉じた経路の一つの点における二次元の面の周囲に沿ったホール効果材料内のパスである。この導体ループは、理想的には第一の導体ループに対して直角である。両方の導体ループ1と2は、前述した通り機能する。
【0024】
この三次元の面上の配置構成は、一方の導体ループ(1;2)への入力電流(I
1;I
4)の特に良好な誘導による入力結合と、ホール効果材料内の電流(I
3;I
2)の出力電圧(U
4;U
1)への特に良好な誘導による変換とを実現できるとの利点を有する。それによって、ジャイレータは、全体的に、より効率的となる。
【0025】
従って、有利には、閉じた経路に沿った、或いはその経路に対して平行なホール効果材料内のパスは、入力電流(I
1;I
4)を入力結合させる変成器の二次巻線又はホール効果材料内の電流(I
3;I
2)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する変成器の一次巻線である。そして、この変成器の他方の巻線は、例えば、閉じた経路に沿って、或いはその経路に対して平行に巻かれたコイルとすることができる。
【0026】
有利には、それに代わって、或いはそれと組み合わせて、閉じた経路の一つの点における二次元の面の周囲に沿ったホール効果材料内のパスは、入力電流(I
1;I
4)を入力結合させる変成器の二次巻線又はホール効果材料内の電流(I
3;I
2)を出力電圧(U
4;U
1)に変換する変成器の一次巻線である。そして、この変成器の他方の巻線は、例えば、二次元の面の周囲に沿って巻かれたコイルとすることができる。
【0027】
前述した手法により三次元の面上に配置されたジャイレータは、もはや空間的に均一な磁界を伴わない。それに代わって、磁界が三次元の面に対して直角になることをそれぞれ局所的に保証すべきである。そのことを実現できる面の割合が大きくなる程、ジャイレータは、より効率的に動作する。従って、有利には、ホール効果材料は、三次元の面を通る磁力線を通過させる少なくとも一つの開口部を有する。有利には、それに代わって、或いはそれと組み合わせても、ホール効果材料に磁界を通過させる磁気多重極場配置構成が規定される。
【0028】
有利には、三次元の面上の少なくとも一つの位置に局所的な補助電界を発生させる手段が配備される。そして、電界効果によって、局所的な電子密度を、そのため、ホール効果を精密に調整することができる。それにより、磁界の三次元の面に対して直角の局所的な成分の場合によっては起こる不均一を補正することができる。この磁界自体を精密に調整するために、三次元の面上に、この面により包囲される立体部分又はその周囲に透磁性材料を配置することができる。
【0029】
以下において、図面に基づき本発明の対象を説明するが、それにより、本発明の対象は制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるホール効果材料から成る二つの導体ループを備えたジャイレータの模式図
【
図2a】本発明によるトーラス表面上にホール効果材料を有し、二つの電流パスがトーラス表面に沿って延びるジャイレータの実施例の模式図
【
図2b】本発明によるトーラス表面上にホール効果材料を有し、コイルを介して誘導により外界と接続された二つの電流パスがトーラス表面に沿って延びるジャイレータの実施例の模式図
【
図2c】本発明によるトーラス表面上にホール効果材料を有し、コイルを介して誘導により外界を接続された二つの電流パスがトーラス表面に沿って延びるジャイレータの実施例の模式図
【
図3】トーラス表面に沿った均一な直角磁界を実現する磁気多重極場配置構成の模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明によるジャイレータの実施例を模式図で図示している。このホール効果材料は、二つの導体ループ1と2に分割されている。見易くするために表示されていない磁界は空間内で均一であり、図面平面に対して直角である。これらの導体ループ1と2の周りには、それぞれコイル1aと2aが巻かれている。コイル1aを介して入力結合された入力電流I
1は、導体ループ1内に起電力E
1を発生させる。ホール効果が、この起電力を導体ループ2内に流れる電流I
3に変換する。この電流は、コイル2a内に出力電圧U
4を誘導する。それと逆に、コイル2aに入力電流I
4が流れると、導体ループ2内に起電力E
2を発生させる。右手の法則により、磁界の方向が同じ場合、ホール効果は、この起電力E
2を入力電流に対して180°位相シフトした、導体ループ1内に流れる電流I
2に変換する。この電流は、コイル1a内に同じく入力電流I
4に対して180°位相シフトした出力電圧U
1を誘導する。
【0032】
図2は、本発明によるジャイレータの別の実施例を図示している。この場合、ホール効果材料は、一つのトーラスの表面に配置されている(
図2a)。この表面を覆う線の網は、三次元構造を目に見えるようにする役割だけを果たし、ホール効果材料から成る層が、明るい灰色の領域内に延びている。この層は、電流の流れが起こり得ない、黒で表示された領域3だけで中断されている。これらの領域は、一方では、磁気多重極場がトーラス表面を通過することを可能とする役割を果たし、それにより、この表面に対して直角の磁界を表面上に出来る限り広範囲に発生させている。他方では、トーラスの大きい方の円に沿った動きが起こるように、電流I
3が円の周囲に沿って流れることを可能とする所定の領域を形成する役割を果たす。それに対して直角の方向には、電流I
2が、その大きい方の円に対して平行に流れることができる。
【0033】
図2bは、
図2aに表示されたI
2の電流パスを外界と誘導結合させるコイル1aを図示している。このコイルに入力電流I
1を入力結合させると、このI
2の電流パスに沿って電界E
1が発生し、この電界は、ホール効果により、それに対して直角の方向の電流I
3に変換される。それと逆に、電流I
3のパスに沿って起電力が発生すると、ホール効果が、コイル内に出力電圧U
1を誘導する電流I
2を発生させる。このジャイレータの最適な作用のためには、コイルの空間的な輪郭を電流I
2の空間的な分布に出来る限り近付けるべきである。更に、有利には、トーラスの下側に、第二の同形式のコイルが
図2bに図示されたコイルと直列に接続される。このコイルは、ホール効果材料に対して電気的に絶縁される。
【0034】
図2cは、
図2aに表示されたI
3の電流パスを外界と誘導結合させるコイル2aを図示している。トーラスを定義する二つの円の中の大きい方に沿った異なる部分が直列に接続されている。入力電流I
1に基づきコイル1aを通って電流I
3が流れると、この電流がコイル2aによって出力電圧U
4に変換される。それと逆に、コイル2aに入力電流I
4を加えると、電流I
3のパスに沿って起電力E
3が発生し、この起電力が、ホール効果により、電流I
2に変換されて、コイル1aに出力電圧U
1を誘導する。このコイル2aは、コイル1aに対しても、ホール効果材料に対しても電気的に絶縁されている。これらのコイル1aと2aの間に直接的な誘導結合も生じない。このジャイレータの最適な作用のためには、コイルの空間的な輪郭を電流I
3の空間的な分布に出来る限り近付けるべきである。このコイル2aは、電流が流れることができない、黒で表示された領域3を完全に、或いは部分的に覆うことができる。
【0035】
二つのコイル1aと2aは、それぞれトーラス表面の内側又は外側に置くことができる。また、コイル1aがコイル2aの上に有るか、或いはその逆であるかは重要でない。
【0036】
図3は、トーラスの表面上に均一な直角磁界を発生させる磁気多重極場配置構成をトーラスの赤道平面における断面図で図示している。N磁極から出た磁力線は、ホール効果材料を中断する領域3を通ってトーラス内に入り、ホール効果材料で覆われた領域を直角に通ってトーラスからS磁極の方向に再び出て行く。有利には、トーラスの外面には、ほぼ図面平面の上と下に、別の磁石が配備されて、そこに別のS極が前置され、その結果、そこでは、別の磁力線が表面から直角に出る。
【国際調査報告】