(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-518596(P2016-518596A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(54)【発明の名称】重量検出手段を有する輸送レールシステム
(51)【国際特許分類】
G01G 19/04 20060101AFI20160527BHJP
G01G 3/15 20060101ALI20160527BHJP
【FI】
G01G19/04 A
G01G3/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-506859(P2016-506859)
(86)(22)【出願日】2014年4月4日
(85)【翻訳文提出日】2015年10月7日
(86)【国際出願番号】EP2014056815
(87)【国際公開番号】WO2014166834
(87)【国際公開日】20141016
(31)【優先権主張番号】13162814.1
(32)【優先日】2013年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515278950
【氏名又は名称】バイエルン エンジニアリング ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ヴァルツァ
(72)【発明者】
【氏名】エリック クエバドナー
(57)【要約】
本発明は、レール車両(2)の重量を測定可能な輸送レールシステム(1)に関する。輸送レールシステム(1)は、1または複数のレール(3a,3b)と、1または複数の、磁気的特性を測定するセンサ(7)とを含む。少なくとも一つセンサ(7)が、1または複数のレール(3a,3b)にかかる重量を検出するために、磁気的特性の変化を測定するよう構成される。磁気的特性の変化は、上記重量によりレール(3a,3b)にかかる応力によって生じる。この輸送レールシステム(1)では、1または複数のセンサ(7)が、レール(3a,3b)そのものの磁気的特性の変化を測定し、及び/または1または複数のセンサ(7)が、レール(3a,3b)の支持構造(4a,4b)の磁気的特性の変化を測定するよう構成されている。これにより簡便でコストの低い輸送レールシステムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール車両(2)の重量を測定可能な輸送レールシステム(1)であって、
1または複数のレール(3a,3b)と、
1または複数の、磁気的特性を測定するセンサ(7)と、を含み、
前記センサ(7)の少なくとも一つが、前記1または複数のレール(3a,3b)にかかる重量を検出するため、当該重量により前記レール(3a,3b)に与えられる応力による磁気的特性の変化を測定するセンサであり、
前記1または複数のセンサ(7)が、レール(3a,3b)そのものの磁気的特性の変化を測定し、及び/または1または複数のセンサ(7)が、レール(3a,3b)の支持構造(4a,4b)の磁気的特性の変化を測定するよう構成されている輸送レールシステム。
【請求項2】
請求項1記載の輸送レールシステム(1)であって、
前記輸送レールシステム(1)が、2つまたはそれ以上の、前記輸送レールシステム(1)の磁気的特性の変化を測定するよう構成されたセンサ(7)を有する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の輸送レールシステム(1)であって、
前記輸送レールシステム(1)が、2つまたはそれ以上のセンサ(7)であって、レール(3a,3b)そのもの、及び/またはレール(3a,3b)の支持構造(4a,4b)の磁気的特性の変化を測定するよう構成され、互いに異なる検出方向の磁気的特性の変化を検出し、当該検出方向は、互いに角度をもって交差する方向であるセンサ(7)を備える。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
一つまたは複数のセンサ(7)が、一つまたは複数の、磁気的特性を測定する測定手段を含み、当該測定手段はコイルまたは一体極鉄心(integral pole core)であって、その表面が、直接、磁気的特性の変化を測定する対象となる輸送レールシステム(1)の対応する構成に機械的に接触している輸送レールシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
1または複数のセンサ(7)が、1または複数の磁気的特性を測定する測定手段を含み、当該測定手段は、測定手段自身と磁気的特性の変化を測定する対象となる輸送レールシステム(1)の対応する構成との間に空隙をおいて配される輸送レールシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
1または複数のレール(3a,3b)、もしくは、支持構造(4a,4b)と、1または複数のセンサ(7)とがレール(3a,3b)にかかる荷重によって生じる応力によってもたらされるレール(3a,3b)の支持構造の磁気的特性の変化を測定するよう構成されている輸送レールシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
1または複数のレール(3a,3b)に、レール(3a,3b)にかかる荷重によって生じる応力によってもたらされるレール(3a,3b)の磁場特性の変化を測定する1または複数のセンサ(7)が取り付けられ、備えられている輸送レールシステム。
【請求項8】
請求項7記載の輸送レールシステム(1)であって、
前記レール(3a,3b)にかかる荷重によって生じる応力によってもたらされる磁気的特性の変化を測定するよう構成された前記1または複数のセンサ(7)が、レール(3a,3b)の支持構造(4a,4b)による一対の支持点間に配されている輸送レールシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
前記センサ(7)により測定される磁気的特性の変化の物理学的原因が、逆磁歪効果である輸送レールシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
前記輸送レールシステム(1)が2またはそれ以上のレール(3a,3b)であって、互いに平行に配されたレール(3a,3b)を含む。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
当該輸送レールシステム(1)がモノレールシステムである輸送レールシステム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の輸送レールシステム(1)であって、
応力により磁気的特性が変化する輸送レールシステム(1)の構成が、強磁性鋼を含む輸送レールシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の輸送レールシステムであって、
輸送レールシステム(1)のレール(3a,3b)の少なくとも一つが、着磁されている輸送レールシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の輸送レールシステムであって、
輸送レールシステム(1)の磁気的特性を測定する1または複数のセンサ(7)が、輸送レールシステム(1)に対し着脱可能に設置される輸送レールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール車両の重量を検出可能な輸送レールシステムに係り、1以上のレールと1、または複数の磁気的特性を測定するセンサとを備える輸送レールシステムであって、少なくとも一つのセンサが、1または複数のレールにかかる荷重を検出するためレールに対する荷重による応力によって生じる磁気的特性の変化を測定するよう構成される。
【背景技術】
【0002】
公開公報DE11 33 141には、レールウェイ車両の荷重を測定する装置が開示されている。この装置は、レール底部に沿って一列に配された少なくとも二つの応力(ストレス)センサを使って、レール上を走行する車輪によってかかる圧力を測定することでそのような車両の荷重を測定する。
【0003】
DE 12 62 628の明細書には、車両の重量を測定する装置が開示される。当該明細書には、レールウェイ車両の重量が垂直方向に自由に移動可能なレールの、荷重に因る伸びによって測定される。この垂直方向の移動量は、磁気抵抗コアを備えた2つの圧力検出手段によって測定信号に変換される。
【0004】
CN 101 36 88 42 Aには、 動的に変化する荷重を継続的に測定する方法が開示されている。この方法では、荷重トラック上の2つの支点から等距離にある2つの荷重点を用いる。センサはE形状をした三極統合型の鉄心を有し、レール側面の中心軸上の測定点に配されたアモルファス合金薄膜層の逆磁歪効果(counter magnetostrictive effect)を用いて、トラックによる荷重を検出する。このアモルファス合金の薄膜層は、検出器の鉄心とレールとの間に配される。
【0005】
GB 941 ,963には、レール車両の重量を測定する装置に関する改良が開示されている。この重量測定装置は、レール車両が通過するレールの、2つの枕木間の3つの異なる点で曲げモーメントを測定する少なくとも3つの歪み応答デバイスを備える。
【0006】
EP 2 397 830 A2の公開公報には、物体に対するトルク及び/または力を測定するトルク及び力を測定するシステムが開示されている。ここで物体は、自転車のドライブシャフトや風車のシャフト等である。強磁性磁束コンセントレータ(ferromagnetic flux concentrator)の周りに巻回されたコイルを含む場生成装置(field generator)の構成により、物体に対して磁場が与えられる。コイルにはDCまたは例えば200Hzから1000Hzの間の周波数のACの電力が供給される。トルクや力が加えられることで物体の形態構造が変化すると、生成された場に影響が与えられる。この変化は、コイルと磁束コンセントレータとを含むような磁場センサ等によって測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、輸送レールシステムを改善することである。具体的には、 容易に設置でき、安価に、または簡便な構成とした重量測定システムを備えた輸送レールシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決するための請求項1記載の発明は、輸送レールシステム1または複数のセンサが、レールそのものの磁気的特性の変化を測定し、及び/または1または複数のセンサがレールの支持構造の磁気的特性の変化を測定するよう構成されたものである。
【0009】
本発明の一例による輸送レールシステムは、レール上のある点から他の点まであらかじめ定めた経路に沿ってレール車両を輸送するレールシステムである。このようなレール車両は、例えば、鉄道車両(rail car)、機関車、トロッコ(lorry)、路面電車(trolley)、または複数の車両を含んだ列車等である。この輸送レールシステムは、屋内に配されても、屋外に配されてもよい。例えば、倉庫内で貨物を輸送するシステムであっても、屋外で鉄道として敷設されるものであってもよい。ここで開示される輸送レールシステムは、レールシステムに吊下げられてレール車両がレール下部を移動するものや、及び/またはレールの高さの間であるいはレールシステム上に置かれて、レールの高さより高い位置でレール車両が移動するものなど、レール車両をガイドして輸送を行うものでよい。
【0010】
本発明のレールは、輸送レールシステムの所定のトラックに沿って敷設され、レール車両を支持する梁(beam)である。この例の態様では、レールは、トラックの部分とは別のものでなく、トラックの一部に統合された重量測定手段を有する。この手段は、車両の重量を測定するよう構成されていない輸送レールシステムの一部から機械的に切り離されていない。さらにこの態様によると、支持構造はレールを支持する構造である。支持構造は、例えば鉄道軌道における枕木、足場(scaffold)、吊下架(rack)、またはレールを所望の位置、例えば地面、壁や天井に設けた足場(scaffold)等に固定する梁であり得る。
【0011】
レールそのもの、及び/またはレールの支持構造による磁気的特性により重量効果を測定することによって、従来必要とされていた追加的な材料、すなわちセンサと支持構造のレール間の特殊合金等を劇的に省略可能にできる。従って、レール車両の重量を検出する輸送レールシステムの複雑性やコストを削減できる。さらなる効果は、後述の好適な実施形態によってもたらされる。
【0012】
後述の数種のセンサは、単に本発明において用いることのできるセンサ設計の例にすぎず、レールにかかる荷重による、レールそのものやレールの支持構造の磁気的特性の変化を測定信号として用いるに十分な感度を有する任意の種類のセンサが、本発明のセンサとして好適に用いられる。好ましくは、これらの種類のセンサは、ピックアップコイル等を通じて、磁場の変化を検出可能に構成される。
【0013】
レールまたは支持構造の磁気的特性の変化を測定するセンサにおいて、当該センサによって測定される磁気的特性の変化は、主に、つまりその50%以上は、レールまたは支持構造の磁気的特性の変化によるものである。好ましくは、70%以上が、またさらに好ましくは80%以上、より好ましくは99%以上、さらにより好ましくは、センサにより測定される磁気的特性の変化が、すべてレールまたは支持構造の磁気的特性の変化に基づくものであることが好適である。この点で、例えばCN101 36 88 42Aに開示されたような、アモルファス合金薄膜層など、レールや支持構造以外の磁気的特性の変化を主に測定する構成とは異なる。本発明の例では、レールそのもの、または支持構造を、センサの測定手段の一部、好適には極鉄心(pole core)の一部としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、概略的な図面によって詳細に説明される。
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る輸送レールシステムの側面図である。
【
図2】
図2は、本発明のもう一つの実施形態の上側図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される実施形態のレールに沿った正面図である。
【
図4】
図4は、2つのレールを備えた本発明の別の実施の形態に係る輸送レールシステムの正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の一例で利用される能動的磁気センサを表す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の一例で利用される能動的磁気センサの別の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[好適な実施形態]
本発明の一実施形態に係る輸送レールシステムは、磁気的特性の変化を測定するよう構成された2つまたはそれ以上のセンサを備える。本実施の形態の一例では、このセンサは、共通の測定方向を備えた輸送レールシステムの同じ面に配される。荷重がレールに対して応力を与えるとき、レールは曲る。レールに対する荷重が小さいほど、レールに生じ得る曲がりは小さくなり、磁気的特性に対する影響も小さくなる。従って、荷重がかけられるレールの長さを伸ばすと、当該伸長した部分に複数のセンサを配することが有用である。例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,または10個のセンサがレールの部分に沿って、好ましくは等間隔に配される。互いに隣接する一対のセンサの間隔は、好ましくは、1センチメートル以上であり、より好ましくは2センチメートル以上、さらに好ましくは3センチメートル以上である。またより好ましくは、5センチメートル以上、より好ましくは10センチメートル以上、さらに好ましくは20センチメートル以上、さらにより好ましくは30センチメートル以上である。またこの間隔は、好ましくは20メートル以下であり、より好ましくは10メートル以下、さらに好ましくは1メートル以下である。さらに、より好ましくは90センチメートル以下であり、さらに好ましくは50センチメートル以下、より好ましくは30センチメートル以下である。つまり、本発明の実施形態の一例では互いに隣接する一対のセンサ間の間隔は、例えば20から90センチメートルの間である。またある実施形態では、この間隔は10センチメートルより小さい。ある実施形態では、この間隔は1メートルより大きく、10メートルより大きいことが好ましいこともある。一般に、レールの長さ方向のある部分に配した測定点は、当該部分にあるレールの支持点の数を超えることが好ましい。好ましくは、レールの長さ方向のある部分は、好適にはレールの枕木(sleeper)等による、2,3,4,5,6,7,8,9,または10の支持点を有する。たとえば、荷重が比較的大きく、レールまたは支持構造が比較的よく曲るいくつかの実施形態において、センサは一つで十分である。この場合、このようなシステムの提供コストは小さくなる。
【0017】
ある実施の形態では、互いに異なる方向の2つの面における磁気的特性の変化を検出するよう、2つまたはそれ以上のセンサを含む輸送レールシステムとすることも好適である。レースの異なる方向に対しては、応力の、互いに異なる成分が効果を及ぼす(例えば応力/歪み)ので、それぞれ磁界中での変化が異なり、複数のセンサがレールまたは支持構造に対する荷重重量の計算のために用いられる。異なる面に配されるセンサは、互いに位置をずらして(offset)、好ましくはレールの長手方向に沿って位置をずらして配されてもよい。例えば、3つのセンサが、レールの底面に所定の距離を置いて配され、さらに3つの追加的なセンサがレールの側面に配され、当該側面のセンサは、それぞれ底面のセンサの間に配される。レールの支持構造には、必要な変更を施す。
【0018】
好ましい実施形態では、システムは2つまたはそれ以上の、レールそのもの、またはレールの支持構造のいずれかにおける磁気的特性の変化を検出するセンサを有し、そうしたセンサのうち少なくとも2つが、互いに異なる測定方向の磁気的特性の変化を測定するように配される。これらの異なる測定方向は、互いに0より大きい角度で交わる。この実施形態は好ましくは、レールロードトラックに適用される。例えば、輸送レールシステムの2つのセンサの測定方向間の角度は、5度より、好ましくは10度より大きく、より好ましくは40度、さらには60度より大きく、具体的には80度と100度との間である。ある実施形態では、少なくとも2つの上記センサが互いに直交する方向の磁界の変化を測定するように配される。車両の車輪は表面を走行している間に傾斜し得るため、レールに対して、地面方向への力と、地面方向に沿った力とを及ぼす。レールの走行面の形状に合わせるため、レールは通常、内側に傾斜している。こうした場合、互いに角度を有した方向の測定を行う2つのセンサを備えることで、精度を向上する。
【0019】
好適な実施形態では、1またはそれ以上のセンサが1またはそれ以上の、磁気的特性を測定する手段(arrangement)を実現する。この手段は、磁気的特性の変化による信号の変化を検出するよう構成されたセンサの一部をなす。この磁気的特性を測定する手段は、例えばコイルと、好ましくはコイルを巻回すコアとを備える。好ましくは、コイルまたは一体極鉄心(integral pole core)の面が、磁気的特性の測定の対象となる輸送レールシステムの対応する構成に直接、機械的に接触していることが好ましい。磁気的特性を測定する手段と、磁気的特性の変化が測定される構成とが直接接触するようにすれば、レールから特に強い信号が得られるので、このように構成することが好ましい。
【0020】
本実施の形態に好適なセンサは、例えばEP2 397 830Aの
図10及び
図15の例に示され、説明されている。このセンサのデザインと必要な測定回路については、この文献に開示のものが利用できるので、その説明を省略する。EP2 397 830Aに開示された実施形態の測定手段は、コアと、コアに巻回されたコイルとを含み、測定の対象物から離されて配されるが、本発明の実施の形態の測定手段では、好ましくはコアが、測定の対象物、すなわちレールまたはその支持構造に直接、機械的に接する面を有していてもよい。かかる測定手段を備えた、本実施の形態に好適なもう一つのセンサがCN101 36 88 42Aの例えば
図2,3に開示されている。このセンサのデザイン等については、この文献に開示の通りであるので、その説明を省略する。本発明の実施の形態に対し、この先行例の文献では、測定のためのコイルや極鉄心(pole core)は、それらの面がレールや支持構造と直接接していないが、このセンサの測定手段では、一体極鉄心(integral pole core)を介して強い逆磁歪効果を表す合金と接している。この合金は、本実施形態のレールやその支持構造に置き換えられるものである。本実施の形態では、合金層は省くことができ、輸送レールシステムにおける煩雑な構成やコストを軽減できる。
【0021】
本実施の形態の輸送レールシステムでは、1つまたは複数のセンサが、磁気的特性を測定する、1つまたはそれ以上の測定手段を備えている。この測定手段はそれ自身と、磁気的特性の変化を測定するべき輸送レールシステムの構成との間に空隙を有している。空隙を有することは、非接触の重量測定システムの実施形態と同じこととなる。好ましくはEP2 397 830Aで知られるセンサが用いられる。この先行技術文献の開示では、センサはトルク及び力の測定に用いられるが、このセンサは重量測定のみならず、測定対象に係っている荷重が対象物の形態を変化させるために、強磁性体である対象物の磁気的特性の変化もまた測定できる。従来例の文献に示されるように、測定手段の一部である測定コイルと鉄心は、磁場を検出するために対象物から離されて、つまり空隙をおいて配される。ある実施の形態では、CN101 36 88 42Aで知られるタイプのセンサが、磁気的特性の変化の測定の対象となる構成から離されて、測定手段とともに配される。これにより、レールに取り付けられない態様のセンサが提供され、さらには、レールの支持構造にも取り付けることのないセンサが提供される。従ってレールや支持構造を交換する際には、センサを交換することなく、レールや支持構造だけを交換することが可能になる。よって、好適な実施形態では、磁気的特性の変化の測定対象となる構成と、センサ全体との間に空隙を設ける。ある実施形態では、この空隙は、所定の物質で充填されてもよい。具体的に所定の物質とは例えば接着剤(glue)等である。また別の好適な物質は、センサをレールまたは支持構造に対して着脱可能に取り付ける磁性化合物(magnetic compound)である。空隙または空隙を充填したレイヤの厚さは、センサの感度が十分であれば100μmまたはそれ以上、またはセンサの感度が比較的低い場合は、50μm以下とし、非接触の測定が望まれる場合でもレールや支持構造と、測定コイルとの間隔は、小さくしておくことが好適である。
【0022】
支持構造を備えた1またはそれ以上のレールと、上記荷重によってレールに対して与えられた応力により生じるレールの支持構造の磁気的特性の変化を測定するよう構成されたセンサとを備えることが好適である。この実施形態では、レールに欠陥が生じたときにセンサをそのままにしてレールを交換可能となる。これよりレールを定期的に交換しなければならない場合の対処時間を低減できる効果がある。
【0023】
好適な実施形態では、上記荷重によりレールに与えられた応力によって生じるレールの磁気的特性の変化を測定するよう構成された、少なくとも一つまたはそれ以上のセンサが一つまたはそれ以上のレールに取り付けられる。この実施形態では、レールとセンサとが一体的に製造でき、後に一度に設置できる。従って、センサを取り付け、調整するために必要な専門的な知識を一箇所に集中でき、フィールドでは、従来通りのレールの敷設作業が必要になるだけとなる。ある設定では、支持構造を備えた少なくとも一つのレールと、上記荷重によりレールに与えられた応力によって生じるレールの磁気的特性の変化を測定するよう構成された少なくとも一つの追加的なセンサがさらに要求される。応力によって生じるレールの磁気的特性の変化は、この例では複数の位置で測定できるようになり、精度が向上する。
【0024】
さらに、応力によって生じるレールの磁気的特性の変化を測定するよう構成された1またはそれ以上のセンサがレール上であって、レールの支持部材による支持点の間に配されることとするのも好適である。レールが2つの支持点間で明瞭であるときに利便性が高く、好ましい態様であり得る。この場合、センサが2つの支持点のちょうど中間に配されることが好適である。好ましい支持点は、レールの、枕木、足場(scaffold)、吊下架(rack)、シーリング(ceiling)またはビームが配された位置である。他の実施形態では、センサは、レールの支持構造の支持点の位置にさらに、あるいは支持点間の代わりに配されてもよい。これより、レールを支持点に取り付けているときに、センサを取り付ける手作業の時間が削減できる。
【0025】
センサによって測定される磁気的特性の変化のもととなる物理的な効果は、逆磁歪効果である。逆磁歪効果は、レールに係る荷重を、レールに係る応力による輸送レールシステムの構成、例えばレールそのものや、レールの支持構造の磁化率の変動に基づいて計算することを可能にする。レールそのものやレールの支持構造における上記効果は弱すぎて測定できないと従来考えられてきたが、近年のセンサ技術の発展により、鉄道のレールや強磁性鋼ビーム等の支持構造のように、従来のレールや支持構造における上記効果の直接測定が可能となっている。従ってレールとセンサとの間に置かれ得る、巨大逆磁歪効果を有する合金のような一般に高価な追加的素材を使用せずに済む。これによりこのような重量を測定可能な輸送レールシステムの構成を簡素化し、コストを低減できる。
【0026】
好ましい輸送レールシステムは、互いに平行に配された2またはそれ以上のレールを有する。この場合、輸送レールシステムは、鉄道トラックシステムであり得る。路面電車(trolley)や、機関車、トロッコ(lorry)、鉄道カート(rail road cart)の重量検出は、産業分野で必要となる。従って、そのような機能を有する輸送レールシステムは有利である。過去に知られている、鉄道トラックに適用される重量測定手段を有した輸送レールシステムは、レールを穿孔して磁気センサを取り付け、あるいは機械的な重量測定装置を設ける切断箇所を設けるなど、比較的複雑な構成を必要としていた。それに対して、本実施の形態の輸送レールシステムは、レールや、レールの支持構造に傷をつけることなく、重量を測定できる。従って、本実施の形態のシステムを鉄道トラックに適用することはきわめて容易であり、センサをレールや支持構造に取り付ける手作業の量を軽減できる。従って本実施の形態の重量測定システムの設置は、コストも、労力も軽減可能なものである。
【0027】
互いに平行に配された2またはそれ以上のレールを有する輸送レールシステムでは、好ましくは少なくとも一つのセンサが各レールに配される。このようにすることは、レール車両の重量は一般に、各レールに均等に荷重するものではなく、その事実は各レールの重量測定を行う際に考慮に入れなければならないため、重量測定の際に効果的となる。好ましくは、2つのセンサが、平行なレールの長手方向に対して垂直な方向に一直線に配される。さらに、センサは、各レールに配され、これらのセンサはペアで配される。各ペアは平行なレールの長手方向に対して垂直な方向に一直線に配される。
【0028】
別の好ましい実施形態では、輸送レールシステムは、モノレールシステムである。モノレールは、車両を運搬する単一のレールを備えたものである。モノレールは、倉庫などにおける利用に適している。単一のレールについて用いられるシステムでは、磁場の変化を測定することで重量を測定する構成を簡便に実装できる。かかるシステムにおける理想的な条件では、単一の予測可能な方向への曲げのみが発生する。従って、単一のセンサにより、再現性のある、信頼度の高い重量測定結果が得られる。その他のケース、例えば曲げ力が一つより多い方向に発生する場合、または曲げがレールの比較的長い距離に亘って発生する場合は、例えば、異なる方向への場の強さの変化を測定し、あるいは、長い距離に亘る曲げの状況を収集する、1より多い、好ましくは2つまたはそれ以上の、より好ましくは4,5,6,7,8個のセンサが用いられる。
【0029】
輸送レールシステムは、応力により磁気的特性が変化する輸送レールシステムの構成要素が、強磁性鋼を含んで、あるいは強磁性鋼により形成されているように設計されてもよい。好ましくは、当該構成要素は、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、あるいはさらに好ましくは少なくとも90%の強磁性鋼を含む。また当該構成要素は、高々10%の、より好ましくは高々20%の、さらに好ましくは高々30%の、より好ましくは高々40%の、さらにより好ましくは高々50%の、さらにより好ましくは高々60%の、さらにより好ましくは高々70%の、さらにより好ましくは高々80%の、さらにより好ましくは高々90%の、あるいはさらに好ましくは100%までの強磁性鋼を含む。つまり、例えば当該構成要素は、40%以上70%以下の強磁性鋼を含み得る。一例として、逆磁歪効果は、機械的負荷が強磁性材料を変形させるときに発生する。このため、より多くの強磁性鋼を含むことで、磁場により得られる信号が増強される。あるいは、他の任意のタイプの強磁性材料が、強磁性鋼に置き換えて用いられても、磁場内の信号変化を得ることができる。要求される測定の観点から、レールそのもの、あるいはレールの支持構造のいずれかが上記の強磁性材料の組成を有する。この強磁性材料は好ましくは強磁性鋼である。
【0030】
好ましい実施形態では、少なくとも一つのシステムのレールが、着磁(parmanently magnetised)されている。このようにすると、輸送レールシステムを、いわゆるパッシブセンサ技術により提供できる。「パッシブセンサ技術」は、磁場のアクティブな形成を要しないことを意味する。従ってこの例のセンサは、レールにかかる重量により生じるレールの磁場の変化を測定するピックアップコイルとしての、少なくとも一つの測定コイルを含むだけでよい。このことにより、コストを低減できる。あるいは、重量を測定するときにレールを一時的に磁化する「アクティブセンサ技術」が用いられてもよい。このようなアクティブセンサは、例えば、CN101 36 88 42Aと、EP2 397 830Aに開示されている。アクティブセンサ技術を用いる場合、センサは好ましくは、対象物であるレールまたは支持構造を磁化するよう磁場を発生させる手段を含む。この手段は例えば磁場を生じさせるコイルである。このような手段は、例えば、EP2 397 830Aに開示がある。当該文献は、磁場を発生させる、コアに巻回したコイルを開示している。従って、磁場を発生させる方法や、センサの電気的特性及び設定については、例えばこの文献に開示のものを用いるので、ここでの詳しい説明を省略する。アクティブセンサ技術を用いると、レールに着磁する必要がなくなる。このほか、支持構造を着磁することでパッシブ測定を行うようにしてもよいし、あるいは、センサとは別に、アクティブに磁場を発生させる手段を用いるなど、変形を行ってもよい。
【0031】
好ましくは、輸送レールシステムの磁場を測定する一つまたは複数のセンサは、システムに対して着脱可能に設置される。このように、レールやレールの支持構造等、輸送レールシステムに対し、センサを簡易に設置、あるいは取り外すことを可能とする。センサはレールに対して一時的に固定され、例えばレールや支持構造が交換されるべき場合、あるいはセンサが他のレールの異なる場所に設置されるべき場合に取外し可能となっていてもよい。これにより保守の時間やコストを低減できる。
【0032】
[実施形態の詳細な説明]
図1から6は、本発明の実施の形態に係る輸送レールシステム1の例または、そのような輸送レールシステム1の主要な構成を表す図である。
【0033】
図1は、レール車両2の重量を測定可能な輸送レールシステム1を示す。
図1の例では、モノレールシステムが示され、レール3aは、第1のビーム4aと第2のビーム4bとで支持される。第1のビーム4aと、第2のビーム4bとは、
図2,3に示すように壁5に取り付けられている。レール3aは、金属合金を鋳造してつくられ、強磁性鋼を含む。
【0034】
重量のある、一つの車輪6を有したレール車両2がレール3aに沿って貨物を運搬しつつ移動し、その質量による重力によって、レール3aと支持ビーム4a,4bとが変形する。
図1に示すように、第1及び第2のセンサ7a,7bは、レール3aの側面8と底面9の測定点に配される。この測定点は第1のビーム4aと第2のビーム4bとから等距離に位置する。
【0035】
この手段は換言すれば、レール3aに2つのセンサ7a,7bを取り付けられ、上記重量によりレール3aにかかる応力によって生じるレール3aの磁気的特性の変化をセンサ7a,7bが検出するものである。センサ7a,7bは、レール3aの支持構造である2つのビーム4a,4bによってレール3a上に形成された2つの支持点の間の中間点に配される。
【0036】
理想的には、モノレールシステムは、一方向にのみ曲がりが生じるが、いくつかの場合に、レール3aは、異なる方向にも曲げが生じることが知られている。従って、2つのセンサが測定方向の異なる磁気的特性の変化を測定する。この測定方向は、互いに非ゼロの角をもって交わるように設定される。レール3aの底面9及び側面8という互いに直交するようにセンサ7a,7bを配することで、対象物に対する直交した方向の応力が測定でき、これは、測定の精度と確度とを向上させる一つの方法となる。この方法ではさらに多くのセンサ7を、レール3aに沿って配することができ、複数のレール3aを備えた、
図4に例示するような輸送レールシステム1に対しても適用できる。別の実施形態では、測定方向は、例えば互いに45度の角度で交差するので、磁気的特性の異なるノン・コリニア成分の測定が、上述の異なる場所で行われ得る。2つのまたはそれ以上のレール3a,3bを備えた例が
図4に示される。
図4では、センサ7は、各レール3a,3bごとに設けられ、各レール3a,3bに係る、互いに異なる荷重がそれぞれ独立して測定され得る。
【0037】
本発明の別の例が
図2,
図3に示される。
図2は、重力方向に見た本実施の形態の平面図である。
図3は、レール3aに沿った方向から見た本実施の形態の正面図である。ここでは、二つの隣り合う支持ビーム4a,4bの曲げが、直交して配されるセンサ7aないし7d(ここでも他の実施態様では、このセンサは互いに異なる角度で配されてもよい)により測定される。レール3aは支持ビーム4a,4b及びセンサ7aないし7dで構成される支持構造で支持される。センサ7aないし7dは、レール3aにかかる上記の重量による応力によって生じるレールの支持構造の磁気的特性の変化を測定する。
【0038】
レール車両2がレール3aに沿って移動し、支持ビーム4a,4bの歪みと応力とをそれぞれ測定するセンサペアが配された一対の支持ビーム4a,4b間にさしかかる。既知の重量をもつレール車両2を用いるなどしたキャリブレーションの後、質量がわかっていないレール車両2の質量を、生成された電気的信号を用いて推定する。従って、レール車両2の運行中に重量測定を行うことができ、所望の輸送を迅速に達成できる。
【0039】
さらに他の実施形態が
図4に示される。ここでは互いに平行に配された2つのレール3a,3bを用いた鉄道軌道等の例が示される。レール車両2(不図示)の重量は、レール3a,3bの双方により同時に支持されるが、各レールに均等に荷重がかかる必要はない。従って、レール車両2の重量を測定するため、センサ7a,7bは、各レール3a,3bに配される。ある例では、センサ7a,7bのペアが一方のレール3bに配される。鉄道のレール車両2の例では、レール車両2によりレール3bに加えられる力は、レールの鉛直方向と長手方向との互いに直交する双方の成分を有する。X,Yとして表示された方向に生じる応力がレール3bに配された第1のセンサ7a及び第2のセンサ7bによりそれぞれ測定される。当業者であれば、他の実施形態では、さらなるセンサ7がレール3bや、他方のレール3aに配されてもよいことが理解される。例えば、鉄道軌道が輸送方向に対して斜めに傾いている場合や、レール3aの長手方向に沿ってレール3aの変形が測定された場合には、センサ7の数を増大させるべきであることが理解される。
【0040】
使用されるセンサ7についての概略図が
図5,
図6に示される。これらのセンサ7はCN101 36 88 42Aで既に説明されているアクティブセンサであり、レール3aそのもの、またはレール3aの支持構造4a,4bに磁場を励磁する励磁コイル10と、レール3aを透過する磁場を検出する測定手段の一部をなす測定コイル11a,11bとを有する。ここで説明されて用いられるセンサ7は、E字状の3極を有する一体鉄心(integral iron core)を含んでいる。励磁コイル10は、中央の鉄心に巻回され、電源(不図示)からの電流が供給される。これにより磁場が生成される。第1,第2の測定コイル11a,11bは、電磁誘導により磁場を測定可能な検出コイルであり、2つの外側の鉄心、つまり上記E字状鉄心の外側の鉄心の一つずつにそれぞれ巻回されている。励磁コイル10により能動的に生成された磁場は、レール3aの強磁性材料内の磁場を誘導する。そしてこの誘導された磁場が、2つの検出コイル11a,11bにより検出される。
図5に示されたセンサ7の例では、センサ7は、2つの測定コイル11a,11bにより磁場を測定する。このコイルは鉄心に巻回され、鉄心は磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素に直接、機械的に接している。ここでの例では、鉄心は磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素はレール3aである。従って、測定手段は磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素に直接、機械的に接する面を有する。ここでの例では、測定手段の上記面は、一体極鉄心(integral pole core)であり、磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素はレール3aであるものとしている。これによりレール3aは、それ自体、測定手段の一部をなしてもよい。
【0041】
図6に励磁するもう一つの実施形態では、センサ7は、磁気的特性を測定する第1、第2の測定コイル11a,11bを含む。これらのコイルは、鉄心に巻回され、この鉄心は、磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素に対して空隙をおいて配される。この例では、磁気的特性の変化が測定されるべき輸送レールシステム1の対応する要素は支持構造、具体的には強磁性鋼により形成された強磁性ビーム4aであるものとしている。ここでの例では、励磁コイル10が巻回された鉄心の極(pole)もまた、ビーム4aに対して空隙をおいて配されている。他の例では、励磁コイルを巻回した極(pole)は、磁気的特性の変化を測定する対象となる要素に対して直接接する面を有し、測定コイル11a,11bを巻回した鉄心の極(pole)は、ビーム4aに対して空隙をおいて配することが好適な場合もあり得る。センサ7の励磁コイル10を省いてパッシブ測定技術を採用することが望まれる場合は、対象となるレール3a,3bやレール3a,3bの支持構造4aに着磁して永久磁石としておく。
【0042】
図示されない他の実施形態では、EP2 397 830Aに示されるセンサが上記センサ7の代わりに利用される。この例での測定方法やセンサの電気的特性、設定については、上記文献に開示されているので、ここでの説明を省略する。EP2 397 830Aのセンサを用いる場合、測定の対象はレール3a,3bそのもの及び/またはレール3a,3bの支持構造4a,4bである。センサの電気的特性と設定、例えば、上記文献で説明されている磁場の周波数等は、上記CN101 36 88 42Aに説明されたセンサや、レール3a,3bそのもの、またはレール3a,3bの支持構造4a,4bの磁気的特性の変化を測定するよう構成された他のセンサ7にも適用可能である。
【0043】
各センサ7は、側面端部に永久磁石13を含むメカニカルハウジング12に収納されてもよい。この永久磁石13により、センサモジュールがレール3a,3bや支持ビーム4a,4bに対して、あるいは測定対象となる輸送レールシステムの他の任意の強磁性構造に対して着脱容易となる。
【0044】
本実施の形態によると、レール車両2の重量を測定する機能を有した、改善された輸送レールシステム1が提供される。レール車両2がレール3aに沿って移動するとき、レール3a及び/または支持ビーム4a,4bが曲げられ、剪断応力や歪みによりレール3a,3bやビーム4a,4bの強磁性材料の磁化率が変化する。このことは、センサによる測定対象の磁気的特性の変化の原因がヴィラーリ効果(Villari effect)としても知られる逆磁歪効果に起因することを意味する。磁化率の変化は、センサの測定コイル11a,11bによって検出される磁場の変化を引き起こす。この変化は、レール3a,3bやビーム4a,4bの曲げの大きさ、つまりはレール車両2の質量に比例する。所定の適切なキャリブレーションを行った後、レール車両2の質量を確実に測定可能となる。測定は、非接触に行うこともでき、またセンサ7は着脱可能に取り付けられてもよい。これより測定はより簡便に、また低いコストで行うことが可能となる。既に述べた例から、磁場の測定がレール3aそのものと、枕木や足場(scaffold)等のビーム4aなどの支持構造の要素とで同時期的に行われてもよいことは容易に理解される。
【0045】
ここまでに説明した特徴、請求の範囲及び図面は、任意に組み合せて用いられてもよい。また請求の範囲における符号は単に読みやすさのために付したものであって、限定する意図を有するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 輸送レールシステム
2 レール車両
3a,3b レール
4a,4b ビーム
5 壁
6 車輪
7a,7b,7c,7d センサ
8 側面
9 底面
10 励磁コイル
11a,11b 測定コイル
12 ハウジング
13 永久磁石
【国際調査報告】