(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-519605(P2016-519605A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(54)【発明の名称】センサ較正方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1495 20060101AFI20160610BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20160610BHJP
【FI】
A61B5/14 360
G01N27/26 381C
G01N27/26 381Z
G01N27/26 381A
G01N27/26 371B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-507052(P2016-507052)
(86)(22)【出願日】2014年4月7日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】GB2014051077
(87)【国際公開番号】WO2014167303
(87)【国際公開日】20141016
(31)【優先権主張番号】1306321.9
(32)【優先日】2013年4月8日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504003189
【氏名又は名称】スフェア メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】ニール、トッド
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、ファウラー
(72)【発明者】
【氏名】ガビン、ルーシャス、トラフトン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KM03
(57)【要約】
患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするためのモニタリング装置のセンサを較正するための方法であって、温度依存性ドリフトモデルがセンサのために導かれる、方法を開示する。このようなセンサと、この方法に従ってセンサを較正するようにプログラムされた信号処理装置とを含む、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするためのモニタリング装置のセンサを較正する方法であって、
第1の濃度の前記分析物を有する第1の温度の第1の較正流体への露出に対する前記センサの第1の応答を測定し、
第2の濃度の前記分析物を有する第2の温度の第2の較正流体への露出に対する前記センサの第2の応答を測定し、
前記第1および第2の応答から前記センサの感度の温度依存性を決定することによって、
第1の較正サイクルを行うこと、
ある時間間隔の後に前記第1の較正サイクルを繰り返すことにより第2の較正サイクルを行うこと、
前記センサの温度依存性ドリフト関数を前記第1および第2の較正サイクルのそれぞれで決定された前記温度依存性の差異から導くこと、ならびに
前記センサの前記温度依存性ドリフト関数を含む較正曲線を生成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の濃度と前記第2の濃度とが同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の較正流体と前記第2の較正流体とが同じである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の較正サイクルが、
第3の濃度の前記分析物を有する第3の温度の第3の較正流体への露出に対する前記センサの第3の応答を測定することをさらに含み、
前記センサの前記感度の温度依存性を決定するステップが、前記第1、第2および第3の応答から前記感度を決定することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定温度の体液サンプルの第1の部分への露出に対する前記センサのさらなる応答を測定することであり、前記体液サンプルが未知の量の前記分析物を含む、測定すること、ならびに
前記サンプル中の前記分析物の量を前記較正曲線を使用して前記さらなる応答から推定することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
参照装置を前記体液サンプルの第2の部分に露出すること、
前記参照装置により前記サンプル中の分析物の量を決定すること、
前記推定された量を前記決定された量と比較すること、ならびに
前記推定された量と前記決定された量の間の差異が所定の閾値を超える場合に、前記第1および第2の較正サイクルを行う前記ステップを繰り返し、前記温度ドリフト関数を導き、前記較正曲線を生成することによって、更新された較正曲線を作り出すことをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
予め定められた期間の後、前記第1および第2の較正サイクルを行う前記ステップを繰り返し、前記温度ドリフト関数を導き、前記較正曲線を生成することをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記センサを前記患者の体液サンプルに周期的に露出すること、ならびに
前記周期的な露出中の前記センサ応答が非特徴的に変化するときに、前記第1および第2の較正サイクルを行う前記ステップを繰り返し、前記温度ドリフト関数を導き、前記較正曲線を生成することをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
初期温度の第1の初期較正流体への露出に対する前記センサの初期応答を測定することであり、前記第1の初期較正流体が第1のさらなる濃度の前記分析物を有する、測定すること、
前記センサの初期較正曲線を前記初期応答から生成すること、
ある時間間隔の後、初期温度の第2の初期較正流体への露出に対する前記センサのさらなる応答を測定することであり、前記第2の初期較正流体が第2のさらなる濃度の前記分析物を有する、測定すること、
前記センサの初期ドリフト関数を前記第1の応答および前記第2の応答から導くこと、ならびに
前記初期較正曲線を前記初期ドリフト関数により更新することをさらに含み、
前記温度ドリフト関数を含む較正曲線を生成する前記ステップが、前記更新された初期較正曲線を更新することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ−読取可能な記憶媒体を備え、前記媒体が、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置のプロセッサ上で実行されるときに、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項11】
患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置であって、
前記体液サンプルを受容するためのサンプルチャンバであり、前記体液サンプル中の前記分析物濃度を決定するためのセンサを備えるサンプルチャンバと、
前記サンプルチャンバに流体的に接続された、前記センサに較正流体を供給するための流体ラインと、
前記サンプルチャンバ内の前記較正流体の温度を制御するための温度制御要素と、
請求項10に記載のコンピュータプログラム製品と、
前記センサに導通するように結合された信号処理装置であり、前記コンピュータプログラム製品の前記コンピュータプログラムコードを実行するようになっている信号処理装置と、
を備える装置。
【請求項12】
前記信号処理装置が、前記センサの較正モードで前記温度制御要素を制御するようになっている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記温度制御要素が前記サンプルチャンバ内に置かれている、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記サンプルチャンバ内のサンプルの温度をモニタリングするための温度センサをさらに備える、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が心肺バイパス装置である、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置のセンサを較正(calibration)する方法に関するものである。
【0002】
本発明は、さらに、この方法を実施するように構成される、分析物濃度をモニタリングするためのこのような装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
患者の治療の幾つかの方法は、酸素(O
2)および二酸化炭素(CO
2)等の気体、ナトリウム(Na
+)およびカリウム(K
+)を含む電解質、グルコースを含む代謝物質、およびタンパク質等の生体分子を含む、体液中の1つまたは複数の分析物濃度のモニタリングを必要とすることがある。加えて、このような分析物は、流体中に浮遊する物体、例えば、ヘマトクリットと呼ばれるパラメータにより表現される濃厚赤血球を含むことがある。
【0004】
このようなモニタリングを容易にするために、上述した分析物の検出のための1つまたは複数のセンサを組み込んだモニタリングシステムに患者を接続することがある。この構成は、血液ガス分析器等の独立型デバイス上で、患者サンプルを間欠的に抜き取りサンプリングするレジームとは別個の利点を有する。まず、センサが常に患者サンプルに露出しているので、分析物レベルの変化がリアルタイムでモニタリングされる。このことは、分析物濃度の変化の傾向を観察し、重要な変化により素早く応答することを臨床医に可能にする。このことは、患者の治療において潜在的な合併症が後で検出されるリスクを減らす。
【0005】
加えて、この方法は、患者からサンプルを抜き取り独立型の測定デバイスに運ぶことにより起きうる、アーチファクトの影響を受けにくい。したがって、連続モニタリングは、サンプルの取扱い過誤により起きる不正確な測定に基づいて不適当な臨床的判断が成されるリスクを減らす。例えば、血液中のCO
2およびO
2レベルは、サンプリング用注射器内で時間により変化することがあり、抽出された患者サンプルの不正確な読取値を生じさせる。加えて、これらの特別なサンプル取扱いステップによる赤血球溶解は、血液電解質、特にK
+の濃度の変化を招くことがある。
【0006】
多くの様々なタイプのセンサが知られている。例えば、国際公開第99/17107号パンフレットは、連続モニタリング用のグルコースセンサを開示している。多くの他の例が当業者に知られている。
【0007】
センサが正確な読取値をモニタリングするために、まず、既知の濃度の対象分析物を含有する1つまたは複数の流体にセンサを露出することにより、センサの出力を較正しなければならない。分析物濃度に対するセンサ信号の応答曲線の補間および知識を使用して、必要とされる測定範囲に亘って分析物濃度に対する信号の較正曲線を構築することが可能となる。次いで、センサがテストサンプルに露出したときのセンサの測定された応答から、同じテストサンプル中の分析物の濃度を決定するために、この較正曲線を使用することができる。較正の概念は、当業者に良く知られている。
【0008】
センサの基本性質は、較正中に決定された較正係数が、時間および温度によりしばしば変化する、というものである。時間による較正係数の変化は、しばしばセンサドリフトと称される。例えば、イオン感応性電解効果トランジスタ(ISFET)技術に基づくpHセンサは、著しいベースライン(オフセット)ドリフトを有し、例えば、P.Bergveldによる「ISFET,Theory and Practice」、IEEE Sensor Conference予稿集、トロント、2003年10月、頁1〜26に開示されるように、温度の変化によるオフセットと感度の両方の変化を示すことがある。電流測定酸素センサは、時間による感度の変化をしばしば示す。典型的なセンサの他のドリフト特性は、当業者に良く知られている。
【0009】
ドリフト補正および温度依存性補正の幾つかの例は、従来技術に存在する。例えば、センサドリフトによる測定精度の低下を解消するために、既知の分析物濃度を有する1つまたは複数の溶液にセンサを露出することにより、センサを周期的に再較正することがある。次いで、センサ読取値に対するセンサドリフトの寄与を除去するために、新たな較正係数を適用することがある。加えて、センサ読取値の温度依存性を補償するために、較正が行われた温度(T
cal)および測定されているサンプルの温度(T
sample)を知る必要がある。センサの温度依存性が上手く特徴付けられる場合、感度(a)および/またはオフセット(b)のそれぞれの変換関数f(T
cal,T
sample)を適用して、最後の較正からのセンサ応答に関する温度変化の影響を除去することが可能である。
【0010】
時間による温度依存性ドリフトを呈するセンサの場合、状況は一層厳しく苦労を伴う。これらのセンサの場合、変換関数を時間の関数f(T
cal,T
sample,t)として表現する必要がある。この変換のための正確なモデルを得るのは、例えば、バッチ毎のセンサ特性の変動により、しばしば極めて困難である。
【0011】
ドリフトおよび/または温度依存性を上手く特徴付けられていないセンサの場合、上述した課題は、患者サンプルの間欠的な読取値を第2の独立型分析器上で作ることにより通常対処される。次いで、この第2の分析器による分析物レベルの測定を、サンプルが取られたときの連続モニタリングシステムのセンサによる読取値と比較することができる。これらの読取値の間の差異は、センサドリフトに起因しており、サンプリング時に連続モニタリングシステムにより測定された濃度と、第2の分析器により測定された濃度とが確実に同じになるように、較正係数を調節することができる。
【0012】
この処理は、従来技術で再調整として知られている。この再調整方法は、幾つかの著しい欠点を有する。まず、分析用のシステムからサンプルを回収する必要性は、サンプルの取扱い過誤の可能性を作り出し、例えば、サンプル中の気体レベルがサンプリングと測定の合間に変化することがある。加えて、患者から抜き取ることができるサンプル容量の制約により、再調整の頻度が制限される。このことは、再調整の間のセンサドリフトが考慮されないので、測定の信頼性を損ねることがある。再調整処理は、また、時間を要し、ユーザーにとって不便である。最後に、再調整処理は、センサの温度依存性を正確に測定することを可能にせず、したがって、再調整期間後の温度の著しい変化は、測定結果の誤差を招くことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第99/17107号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“ISFET, Theory and Practice” by P. Bergveld in the Proc. IEEE Sensor Conference Toronto, October 2003, Pages 1−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするためのモニタリング装置のセンサを較正する改良された方法を提供しようとするものである。
【0016】
本発明は、さらに、体液中の分析物濃度をより正確にモニタリングするための装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある態様によれば、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするためのモニタリング装置のセンサを較正する方法であって、第1の濃度の前記分析物を有する第1の温度の第1の較正流体への露出に対するセンサの第1の応答を測定し、第2の濃度の前記分析物を有する第2の温度の第2の較正流体への露出に対するセンサの第2の応答を測定し、第1および第2の応答からセンサの感度の温度依存性を決定することによって、第1の較正サイクルを行うこと、ある時間間隔の後に第1の較正サイクルを繰り返すことにより第2の較正サイクルを行うこと、センサの温度依存性ドリフト関数を第1および第2の較正サイクルのそれぞれで決定された温度依存性の差異から導くこと、ならびに前記センサの前記温度依存性ドリフト関数を含む較正曲線を生成することを含む、方法が提供される。
【0018】
ドリフトに関する温度の影響が含まれる較正曲線を提供することによって、精度が向上した変換関数を提供し、したがって、長期間の温度の範囲に亘ってセンサの精度を向上させることができる。
【0019】
第1の較正流体と第2の較正流体とは、異なる濃度の対象分析物を有することを必要としない。代わりに、第1の濃度と第2の濃度とは同じでもよい。実際に、第1の較正流体と第2の較正流体とは同じでもよい。
【0020】
ある実施形態では、第1の較正サイクルは、第3の濃度の前記分析物を有する第3の温度の第3の較正流体への露出に対するセンサの第3の応答を測定することをさらに含み、センサの感度の温度依存性を決定するステップは、第1、第2および第3の応答から前記感度を決定することを含む。このことは、非線形の温度依存性ドリフト特性を有するセンサの温度依存性ドリフト関数の決定を可能にする。
【0021】
この方法は、患者の体液サンプル中の対象分析物の濃度の正確な推定を得るために、測定温度の体液サンプルの第1の部分への露出に対するセンサのさらなる応答を測定することであり、前記体液サンプルが未知の量の前記分析物を含む、測定すること、ならびに、前記サンプル中の前記分析物の量を、前記較正曲線を使用して前記さらなる応答から推定することをさらに含んでもよい。
【0022】
ある実施形態では、この方法は、参照装置を体液サンプルの第2の部分に露出すること、前記参照装置により前記サンプル中の分析物の量を決定すること、推定された量を決定された量と比較すること、ならびに推定された量と決定された量の間の差異が所定の閾値を超える場合に、第1および第2の較正サイクルを行うステップを繰り返し、温度ドリフト関数を導き、較正曲線を生成することによって、更新された較正曲線を作り出すことをさらに含む。温度依存性ドリフト関数をこの方法で周期的に評価する(必要な場合には補正もする)ことによって、センサの精度がさらに向上する。
【0023】
この方法は、予め定められた期間の後、第1および第2の較正サイクルを行うステップを繰り返し、温度依存性ドリフト関数を導き、較正曲線を生成することをさらに含んでもよい。このことは、温度依存性ドリフト関数の変動が、この方法で発見され補正されるので、センサの精度をさらに向上させる。
【0024】
この方法は、前記センサを患者の体液サンプルに周期的に露出すること、ならびに前記周期的な露出中のセンサ応答が非特徴的に変化するときに、第1および第2の較正サイクルを行うステップを繰り返し、温度ドリフト関数を導き、較正曲線を生成することをさらに含んでもよい。このことは、センサを再較正するとともに較正曲線の温度依存性ドリフト関数を更新することによって、センサのいかなる異常な読取値も直ちに検証されるので、センサの精度をさらに向上させる。
【0025】
較正曲線の生成は、初期温度の第1の初期較正流体への露出に対するセンサの初期応答を測定することであり、前記第1の初期較正流体が第1のさらなる濃度の前記分析物を有する、測定すること、前記センサの初期較正曲線を初期応答から生成すること、ある時間間隔の後、初期温度の第2の初期較正流体への露出に対するセンサのさらなる応答を測定することであり、前記第2の初期較正流体が第2のさらなる濃度の前記分析物を有する、測定すること、センサの初期ドリフト関数を第1の応答および第2の応答から導くこと、ならびに初期較正曲線を前記初期ドリフト関数により更新することをさらに含み、前記温度ドリフト関数を含む較正曲線を生成するステップは、更新された初期較正曲線を更新することを含んでもよい。このことは、初期ドリフト関数の調節により温度依存性ドリフト関数のより簡単な生成を容易にする。
【0026】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ読取可能な記憶媒体を備え、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置のプロセッサ上で実行されるときに、前記媒体が、本発明のある実施形態による方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータ読取可能な記憶媒体は、前記媒体からのデジタルデータの検索のためにコンピュータによりアクセスすることができる任意の媒体でもよい。コンピュータ読取可能な記憶媒体の非限定的な例には、CD、DVD、フラッシュメモリカード、USBメモリスティック、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、コンピュータハードディスク、ストレージエリアネットワーク、ネットワークサーバ、インターネットサーバ等が含まれる。
【0027】
本発明のまた別の実施形態によれば、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置であって、前記体液サンプルを受容するためのサンプルチャンバであり、前記体液サンプル中の前記分析物濃度を決定するためのセンサを備えるサンプルチャンバ、サンプルチャンバに流体的に接続された、センサに較正流体を供給するための流体ライン、サンプルチャンバ内の較正流体の温度を制御するための温度制御要素、本発明のある実施形態によるコンピュータプログラム製品、およびセンサに導通するように結合された信号処理装置であり、前記コンピュータプログラム製品のコンピュータプログラムコードを実行するようになっている信号処理装置を備える装置が提供される。この装置は、信号処理装置が温度依存性ドリフト関数を含む較正曲線を使用してセンサ信号を解釈するという事実により向上した精度で読み出すことができるセンサを有することによって、恩恵をもたらす。
【0028】
有利には、信号処理装置は、さらに前記センサの較正モードで温度制御要素を制御するようになっている。
【0029】
温度制御要素は、サンプルチャンバ内のサンプルの温度の抑制を向上させるために、サンプルチャンバ内に置かれてもよい。
【0030】
この装置は、センサの精度をさらに向上させるために、任意のセンサ読取値を測定された温度に関係付けることができるように、サンプルチャンバ内のサンプルの温度をモニタリングするための温度センサをさらに備えてもよい。
【0031】
ある実施形態では、装置は心肺バイパス装置である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施形態を添付図面を参照して非限定的な例としてより詳しく記述する。
【
図2】センサの別の応答特性を概略的に示す図である。
【
図3】センサのまた別の応答特性を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の装置のある実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】本発明のある実施形態による方法のフローチャートを概略的に示す図である。
【
図6】本発明のある実施形態による方法のある態様のフローチャートを概略的に示す図である。
【
図7】本発明のある実施形態による方法の別の態様を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図は、単なる概要であり縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。同じまたは同様の部品を示すために、図を通して同じ参照数字が使用されていることも理解されたい。
【0034】
一般的に、患者の体液中の分析物をモニタリングするための装置のセンサ等のセンサは、センサにより生成された信号を、センサが露出されるサンプル中の分析物濃度と関係付けることができるような較正を必要とする。
【0035】
例えば、センサが、分析物濃度(X)に関する線形依存性を有する出力信号Vを有する場合、
図1に示すようにV=mX+cの形式であって、ここで、mが感度であり、cがオフセットである形式で関係を記述することができる。オフセットが0でない場合、センサを特徴付けるために異なる分析物レベル(X
aおよびX
b)の2つの較正液が必要とされる。
【0036】
図1のセンサ信号Vも、温度に依存している。この場合、2つの可能性がある。第1の可能性は、センサが単一の温度のみで動作し、この場合、この温度依存性を無視することができる。第2の可能性は、センサがある温度範囲に亘って動作することが想定され、この場合、温度依存性も特徴付けなければならない。2つの温度、T
1およびT
2の場合、分析物濃度の関数としてのセンサ信号を、T
1でV
1=m
1X+c
1、T
2でV
2=m
2X+c
2により表すことができる。
【0037】
測定温度Tでのセンサ信号を、V
T=m
TX+c
Tとして表現することができる。センサ信号が
図2に示すように温度に関する線形依存性を有する場合、線形依存性を、
【数1】
【数2】
測定温度Tでの分析物濃度の正確な推定値を、上式(1)および(2)を使用して信号V
Tから導くことができるように示すことができる。
【0038】
温度に関する非線形依存性が
図3に示すようにより難解である場合、少なくとも3つの温度で測定を成さなければならず、所与の温度での較正を導くために、非線形回帰およびより複雑なモデルを使用しなければならない。代わりに、非線形依存性の事前の知識を使用して、2つの温度での較正を使用して近似的なフィッティングを成すことができ、このことは、線形モデルを使用する場合に、その結果を越して得られる誤差を小さくすることがある。
【0039】
このように得られた較正係数mおよびcは、センサの経年劣化および汚損等の各種の影響がそれらの係数を経時的に変化またはドリフトさせ、センサ読取値の精度が経時的に劣化するので、限定的な有効性を有する。このことには、更新されたセンサ係数をもたらし、したがってセンサ読取値の精度を経時的に維持するようなセンサの周期的な再較正により対処しうる。しかし、このことは、周期的な較正サイクルがモニタリング装置のモニタリング機能を中断させるので、装置が患者の常時モニタリングを提供すべき状況では理想的ではない。心肺バイパス機器は、このような装置の非限定的な例である。他の例は、例えばインライン血液モニタを含む。
【0040】
このような装置の較正頻度を少なくするために、例えば、最初に得られた較正係数を計算されたセンサドリフトを使用して周期的に更新しうることを開示する国際公開第2009/104016A2号パンフレットに開示されるように、較正係数は、センサドリフト挙動の予測を含んでもよい。しかし、このような手法は、ドリフト自体も温度に依存するときには機能しない。
【0041】
本発明は、必要とされる再較正の頻度をさらに少なくし、したがって、センサを含む装置の連続使用期間を延ばすことができるように、センサの較正曲線のために使用するセンサドリフト計算の信頼性を向上しようとするものである。
【0042】
図4は、本発明のある実施形態による、患者の体液サンプル中の分析物濃度をモニタリングするための装置10を概略的に示している。装置10は、幾つかのセンサが内部に位置するサンプルチャンバ20を備える。3つのセンサ21〜23を非限定的な例としてのみ示しており、サンプルチャンバ20は、任意の適した数のセンサ、例えば1つまたは複数のセンサを備えてもよいことを理解されたい。
【0043】
サンプルチャンバ20は、サンプルまたは較正流体をサンプルチャンバ20に供給するための流路または流体ライン30に流体的に接続される。好ましくは、装置10は、流体が1つまたは複数のセンサ21〜23の上を流れている間に、較正またはサンプル測定を行うように構成されるが、本発明は、その構成に限定されず、代わりに、装置10は、流体が1つまたは複数のセンサ21〜23の上に静止している間に較正またはサンプル測定を行うように構成されてもよい。
【0044】
装置10は、サンプルチャンバ20内の流体の温度を制御するための温度制御ステージ25をさらに備える。ある実施形態では、温度制御ステージ25は、サンプルチャンバ20の内側に位置するが、他の配置、例えば、温度制御ステージ25が流体ライン30内にある配置、またはサンプルチャンバ20内の流体の温度を制御しうる他の任意の位置にある配置があることを理解されたい。ある実施形態では、温度制御ステージ25は加熱要素を備える。また別の実施形態では、温度制御ステージ25は、センサ21〜23の少なくとも1つに熱的に結合されて、少なくとも1つのセンサの温度を制御する。例えば、温度制御ステージ25を少なくとも1つのセンサに一体化してもよく、少なくとも1つのセンサの付近に配置してもよい。
【0045】
装置は、センサ21〜23の信号を処理するとともに温度制御ステージ25を制御するための信号処理装置40をさらに備える。非限定的な例として、信号処理装置40は、データ通信バス42を経由してセンサ21〜23に通信可能に結合されるが、センサ21〜23の1つまたは複数を専用配線、例えば、プリント回路基板の導体トラックを経由して信号処理装置40に結合してもよいことを理解されたい。ある実施形態では、センサ21〜23の1つは、サンプルチャンバ20内の温度を決定し、および/または較正される1つまたは複数のセンサの温度を決定するための温度センサでもよい。このような温度センサは、典型的に信号処理装置40に導通して結合されて、例えば、較正される1つまたは複数のセンサの温度依存性の較正処理において、測定された温度を信号処理装置40に処理させる。
【0046】
装置10は、RAMメモリ、ROMメモリ、ソリッドステートメモリ、ハードディスク等、信号処理装置40によりアクセスできるデータ記憶媒体44をさらに備える。データ記憶媒体44は、信号処理装置40により実行されて、以下でより詳しく議論する本発明の方法のある実施形態を実施するように信号処理装置40を構成することができる、プログラムコードを備える。本発明の方法の実施形態によれば、信号処理装置40は、センサ21〜23の少なくとも1つの較正曲線を生成するように構成され、その較正曲線には、このように較正されるセンサの信号をセンサが長期間に亘って感度を有する分析物の濃度に正確に関係付け、したがって、必要とされる再較正の頻度を少なくすることができるように、温度の関数としてのセンサドリフトが含まれる。
【0047】
図5は、本発明のある実施形態による較正方法のフローチャートを示している。この方法は、t=t
1の時点でステップ110に進むことにより始まり、そのステップでは、第1の濃度X
1の対象分析物および温度T
1を有する第1の較正流体をサンプルチャンバ20に通過させ、第1の較正流体へのセンサの露出により生成された、較正されるセンサのセンサ信号を信号処理装置40により得る。代わりに、静止サンプルをサンプルチャンバ20内に供給してもよい。
【0048】
この方法は、信号処理装置が、上でより詳しく説明したように既知の分析物濃度X
1に基づいて較正係数m(t
1,T
1)およびc(t
1,T
1)をそれぞれ導くことによって、センサの初期予測分析物濃度モデルを生成するステップ120に進む。ステップ130では、センサの初期ドリフトモデルが既に利用可能であるか必要であるかを確認する。このような初期ドリフトモデルが未だ利用可能でなく、実際に必要である場合、この方法は、m(t
2,T
1)およびc(t
2,T
1)を得るために、t=t
2でステップ110および120を繰り返す。Δm(T
1)=m(t
2,T
1)−m(t
1,T
1)およびΔc=c(t
2,T
1)−c(t
1,T
1)を決定することによって、mおよびcのドリフト予測モデルD(T
1)を導きうる。ただし、このようなドリフトが非線形であると想定できる場合、先に説明したように、非線形回帰が較正係数の組に関して行われるように、ステップ110および120を異なる時点で数回繰り返してもよい。
【0049】
この方法は、続いて、温度依存性ドリフト予測モデルが生成されているかを判断するステップ140に進む。未だ生成されていない場合、m(t
i,T
2)およびc(t
i,T
2)、ここで、t
iが異なる時点の較正測定の組を示し、T
2≠T
1である、を得るために、ステップ150により示すように異なる設定温度の較正流体により、ステップ110および120を複数回繰り返す。較正測定の第2のサイクルは、較正測定の第1のサイクルに使用されたのと同じ較正流体、または濃度X
2の対象分析物を有する異なる較正流体により行われてもよい。ある実施形態では、X
1=X
2である。代替的な実施形態では、X
1≠X
2である。
【0050】
較正測定のこの第2のサイクルにより、D(T
1)と同じ方法で、すなわちΔm(T
2)=m(t
2,T
2)−m(t
1,T
2)およびΔc=c(t
2,T
2)−c(t
1,T
2)によって、第2のドリフト予測モデルD(T
2)を導きうる。つぎに、センサの較正係数m(t,T)およびc(t,T)を含む較正曲線、すなわち、mとcの両方が時間と温度の両方の関数として定義される較正曲線を得るために、ΔD(T
2−T
1)=D(T
2)−D(T
1)により、センサのドリフトの温度依存性D(T)の性質を導きうる。
【0051】
センサの温度依存性ドリフトモデルが含まれるこの較正曲線を確立すると、この方法は、患者の体液サンプルをモニタリングするステップ160に進む。このことは、例えば、サンプルチャンバ20を通じてサンプルを流すことによる、またはサンプルチャンバ20に静止サンプルを供給することによる等、任意の適した方法で実現されうる。
【0052】
ステップ170では、再較正が必要であるかどうかを確認する。例えば、信号処理装置40により計算された分析物濃度の最新の値が先に計算された分析物濃度のパターンから急に著しく逸脱するか、または可能な値の範囲外にあるために、例えば、ステップ160でセンサが想定されない、または疑わしい測定結果を生成する場合、このことは、較正曲線がもはや有効でないことの目安となることがあり、したがって、この方法がステップ110に復帰して、上で説明したようにセンサの新たな温度依存性ドリフト予測モデルを含む新たな較正曲線を得る処理を開始してもよい。
【0053】
代わりに、センサが再較正を必要としない期間であって、センサの最新の較正の完了により始まる期間を定義してもよい。この実施形態では、この期間が経過したかどうかをステップ170で確認する。この期間が経過した場合、この方法は、上で説明したように、センサの新たな温度依存性ドリフト予測モデルを含む新たな較正曲線を得る処理を開始するためにステップ110に復帰する。
【0054】
図6に示すまた別の代替的な実施形態では、ステップ170は、センサ信号から信号処理装置40により導かれた分析物濃度の、ステップ172でベンチマーク外部分析器により決定された分析物濃度に対する周期的な比較173を含む。センサ信号から信号処理装置40により導かれた分析物濃度と、ベンチマーク外部分析器により決定された分析物濃度との差異が、所定の許容誤差を超えることがステップ174で分かった場合、この方法は、ステップ175でセンサの再較正を起動し、このことは、上で説明したように、センサの新たな温度依存性ドリフト予測モデルを含む新たな較正曲線を得る処理を開始するために、
図5の方法をステップ110に復帰させる。
【0055】
図1に戻ると、ステップ170でセンサの再較正が不要であることが分かった場合、この方法は、患者のモニタリングを続ける必要があるかどうかを確認するステップ180に進む。必要である場合、この方法はステップ160に復帰する。必要でない場合、この方法は終了する。
【0056】
ある実施形態では、温度T
iのセンサを温度T
a1を有する較正流体に露出するときに、センサと較正流体の間の熱交換が、センサの平衡温度が温度T
iと温度T
a1の間の温度T
a1’であることを意味することを考慮に入れて、本発明の較正方法をさらに洗練させてもよい。したがって、この熱交換を補償することが必要であり、これは、そうでなければ、様々な温度での較正測定により導かれるセンサの較正曲線が、仮定されるセンサ温度T
a1と実際のセンサ温度T
a1’との間の差異により不正確になることがあるからである。
【0057】
このような熱交換の影響を補償するための方法を
図7に示している。この方法は、既知の濃度の分析物を有し、温度T
a1を有する対象較正流体を温度T
iを有するセンサの上に通過させるステップ210に進むことにより始まる。温度T
iは、典型的にT
a1とは異なり、これは、例えば、従前の較正測定が異なる温度であるため、または、例えば、血液サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、呼気サンプル等、患者の体液サンプル中の対象分析物の濃度をセンサが従前にモニタリングしたためである。例えば、T
a1は、室温(約21°C)でもよく、T
iは、凡そ患者の体温(例えば約37°C)でもよい。結果として、センサとサンプルの間の熱交換は、先に説明したようにセンサを温度T
a1’に適応させる。
【0058】
つぎに、ステップ220では、センサ信号V
a1’を生成することによって、先に説明したように、温度T
a1のセンサを使用してサンプルの分析物濃度を測定する。次のステップ230では、温度制御ステージ25を使用して較正液をT
a2に加熱し、ステップ240では、センサ信号V
a2’を生成することによって、先に説明したように、温度T
a2のセンサを使用してサンプルの分析物濃度を測定する。この測定ステップには、先に説明したようにセンサ21〜23の上での較正流体の流れの停止が先行してもよい。
【0059】
ステップ250では、センサと較正流体の間の熱交換のための補正が完了したかどうかを確認する。このような完了は、ステップ210、220、230および240が少なくとも2回行われた場合に、達成される。未だ完了していない場合、この方法は、測定の第2の組のためにステップ210に戻る。ステップ210では、対象分析物を含み温度T
a1を有する第2の較正流体を温度T
b2のセンサの上に通過させ、このことは、較正流体とセンサの間の熱交換によりセンサを温度T
b1にし、その後に、センサ信号V
b1を得るためにステップ220を繰り返す。ステップ230では、第2の較正流体およびセンサを温度制御ステージ25によりT
b2に加熱し、その後にステップ240でセンサ信号V
b1を得る。温度T
b1は、この補正方法の精度を向上させるためにT
a1’に可能な限り近付けるべきである。
【0060】
この時点で、T
a1の第1の較正流体のセンサ信号V
a1を以下のように計算することが可能である。
【数3】
次いで、
図5の助けを借りて先に説明したように、温度依存性ドリフトモデルを得るために、V
a1、V
a2、V
b1およびV
b2を使用することができる。
【0061】
図7の助けを借りて記述するように、較正補正を実施するために、温度制御ステージ25の制御、較正液の進入の検出およびセンサ測定を、信号処理装置40を使用して自動化することが好ましい。現実に、センサの加熱および冷却は、有限の速度で起きる。センサ信号は、次いでセンサの応答時間に応じた量だけ温度変化から遅れる。較正液の分析物レベルは、経時的に安定しなくてもよく、温度変化を伴ってもよい。結果として、得られた較正の変動を最小化するために、較正ルーチンを可能な限り一定にすることが好ましく、このことは、以下の前提条件の1つまたは複数を含む。
【0062】
− 較正液の進入と温度制御ステージ25の作動との間に一定の遅延があるべきである。この遅延は、適した測定を成すのに必要とされる以上に長くないべきである。較正流体の進入は、温度の変化により、および/または分析物レベルの変化により、必要に応じて検出することができる。
【0063】
− 測定を行う点は、センサの上の較正流体の通過により生じる温度プロファイルに基づくことができ、または、較正液の検出からの一定の遅延、もしくは時間によるセンサ信号の変化の評価に基づくことができる。
【0064】
− 測定された温度が最小必要時間に亘り目標温度T
a2またはT
b2であると直ぐに、測定を成すべきである。
【0065】
− 測定を行う点は、目標温度に到達した後の一定の遅延に基づくことができ、または時間によるセンサ信号の変化の評価に基づくことができる。
【0066】
不安定な対象分析物の場合、較正流体の加熱とセンサ測定の取得との間に経過する時間を最小化することが望ましい。このことを実現する一方法は、所望の温度を実現するために温度制御ステージ25を使用し、次いで必要最小限の較正液をセンサの上に流し、したがって、センサが可能な限り素早く適当な温度に戻ること、すなわちセンサと流体の間で交換される熱量を最小化することである。
【0067】
ただし、理想をいえば、選択された較正温度は、センサの動作範囲に及ぶべきである。しかし、このことは、実際的でないことがある。センサの最低動作温度が室温を著しく下回る場合、より低い温度較正のための冷却された較正液の使用は、較正精度を向上させうる。同時に、上限較正温度は、適切な温度制御を確実にするために、許容される任意の周囲温度を著しく上回らなければならない。対象分析物が温度の上昇により不安定化する場合、上限較正温度を下げる必要があり、上限温度でのセンサ測定の精度を較正範囲外の温度のための精度の低下と引き替えうる。
【0068】
上述した実施形態は、本発明を限定するものでなく、図示するものであり、当業者は、添付された請求項の範囲から逸脱せずに、多くの代替的な実施形態を設計することが可能であることに留意されたい。請求項では、括弧内に置かれた任意の参照符号は、請求項を限定するものとみなされるべきでない。単語「備える」は、請求項に列挙する以外の要素またはステップの存在を除外しない。要素の前の単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、そのような要素の複数の存在を除外しない。本発明は、幾つかの別個の要素を備えるハードウェアを用いて実施することができる。幾つかの手段を列挙するデバイス請求項では、これらの手段の幾つかを1つの同じハードウェアの項目により具現化することができる。相互に異なる従属請求項に幾つかの処置が記載されているという単なる事実は、これらの処置の組合せを有利に使用できないことを示していない。
【国際調査報告】