特表2016-519997(P2016-519997A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-519997(P2016-519997A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(54)【発明の名称】スラリー用レオロジー改質剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20160613BHJP
【FI】
   C02F11/00 ZZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-511765(P2016-511765)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月2日
(86)【国際出願番号】US2014035099
(87)【国際公開番号】WO2014179129
(87)【国際公開日】20141106
(31)【優先権主張番号】13/875,061
(32)【優先日】2013年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジル ジャスバー エス
(72)【発明者】
【氏名】チェン ツー ワイ
(72)【発明者】
【氏名】フェイス リーガン
(72)【発明者】
【氏名】コールターマン アダム
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA30
4D059BF20
4D059DB11
4D059DB24
4D059DB26
4D059DB40
4D059EB11
(57)【要約】
レオロジー改質剤およびスラリーのレオロジーを改質する方法が開示され、また、ファウリングを防止するための方法が開示される。スラリーは、石灰スラリーまたは酸化マグネシウムスラリーでよい。レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、高分子量ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、高分子量ポリマーとキレート剤との混合物、およびキレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰スラリーのレオロジーを改質する方法であって、
石灰スラリーを提供するステップと、
前記石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加するステップと、を含み、
前記レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、高分子量ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、キレート剤と高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する、方法。
【請求項2】
前記石灰スラリーに添加される前記レオロジー改質剤の量は、約0.1ppm〜約300ppmと、約1〜約100ppmと、約2ppm〜約70ppmとからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミドとキレート剤との混合物、アクリル酸とアクリルアミドとの高分子量コポリマー、低分子量ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマー、および、ポリマレイン酸ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子量ポリマーは、1,000,000より大きい分子量を有し、前記低分子量アニオン性ポリマーは、約20,000より小さい分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミド約2%とエチレンジアミン四酢酸約0.5%とを含有する組成物、分子量約5,000未満のアクリル酸ポリマー、および、アクリル酸約40%とアクリルアミド約20%とスルホン化アクリルアミド約40%とを含有するターポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リグノスルホン酸塩、ジメルカプロール(2,3−ジメルカプト−1−プロパノール)、ポルフィン、および、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸化マグネシウムスラリーのレオロジーを改質する方法であって、
酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、
前記酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加するステップと、を含み、
前記レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する、方法。
【請求項8】
前記酸化マグネシウムスラリーに添加された前記レオロジー改質剤の量は、約10ppm〜約300ppmと、約30ppm〜約250ppmとからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミドとキレート剤とポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとを含有する組成物、低分子量ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマー、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物、および、AA/AMPSコポリマーからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子量ポリマーは、1,000,000より大きい分子量を有し、前記低分子量アニオン性ポリマーは、約20,000より小さい分子量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
炭化水素製造プロセス中のファウリングを防止する方法であって、
石灰スラリーを提供するステップと、
前記石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加して混合物を形成するステップであって、前記レオロジー改質剤は、
a)低分子量アニオン性ポリマー、高分子量ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、キレート剤と高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する、ステップと、
フィードラインを通して前記混合物を中温石灰軟化装置へ搬送するステップと、
前記フィードラインのファウリングを防止するステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記石灰スラリーに添加されるレオロジー改質剤の量は、約0.1ppm〜約300ppmと、約1〜約100ppmと、約2ppm〜約70ppmとからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミドとキレート剤との混合物、アクリル酸とアクリルアミドとの高分子量コポリマー、低分子量ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマー、および、ポリマレイン酸ポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子量ポリマーは、1,000,000より大きい分子量を有し、前記低分子量アニオン性ポリマーは、約20,000より小さい分子量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミド約2%とエチレンジアミン四酢酸約0.5%とを含有する組成物、分子量約5,000未満のアクリル酸ポリマー、および、アクリル酸約40%とアクリルアミド約20%とスルホン化アクリルアミド約40%とを含有するターポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リグノスルホン酸塩、ジメルカプロール(2,3−ジメルカプト−1−プロパノール)、ポルフィン、および、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
炭化水素製造中のファウリングを防止する方法であって、
酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、
前記酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加して混合物を形成するステップであって、前記レオロジー改質剤は、
a)低分子量アニオン性ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有するステップと、
フィードラインを通して前記混合物を装置へ搬送するステップと、
前記パイプラインのファウリングを防止するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記装置は、中温石灰軟化装置と、熱交換器と、蒸発器とからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化マグネシウムスラリーに添加される前記レオロジー改質剤の量は、約10ppm〜約300ppmと、約30ppm〜約250ppmとからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記レオロジー改質剤が、加水分解ポリアクリルアミドとキレート剤とポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとを含有する組成物、低分子量ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマー、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物、および、AA/AMPSコポリマーからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、スラリーのレオロジー(rheology)を改質するために有用な種々のレオロジー改質剤に関する。より詳細には、本開示は、石灰スラリーおよび酸化マグネシウムスラリーのレオロジーを改質するために有用なレオロジー改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰および酸化マグネシウムのスラリーは、水の硬度を処理(つまり硬水イオンを除去)し、またシリカの除去を促進するために、石灰軟化装置および中温石灰軟化装置(warm lime softeners) によく添加される。これらのイオンを水から除去しないと、水と接触することになる後続機器に硬水堆積物が生じて機器のファウリング(fouling)が起こる。硬水ファウリングは、例えば、熱交換器、蒸発器、およびボイラーにおいて発生する可能性がある。熱交換器、蒸発器、およびボイラーは、炭化水素製造および発電などの様々なプロセスで使用することが可能な熱水または蒸気を生成するのに使用することが可能である。また、石灰スラリーおよび酸化マグネシウムスラリーをスクラバに添加して、SO、HS、COなどの酸性ガスの洗浄を促進することもでき、酸化マグネシウムスラリーを使用して廃水処理中にpHを調整することもできる。
【0003】
フィードラインを使用して、上記スラリーを各プロセスで使用される様々な装置へ搬送する。石灰スラリーおよび酸化マグネシウムスラリーを適切に処理しないと、石灰およびマグネシウムがフィードライン内に堆積物を形成し、それによってスラリーの供給流量が減少し、最終的にはフィードラインを塞いだり詰まらせたりすることがある。一度詰まれば、フィードライン内の硬堆積物は、通常、危険かつ取扱いが難しいHClなどの酸でフィードラインを洗浄することによって除去または分解されることになる。さらに、このような酸処理には、廃棄物処理用の特殊な手順が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
詰まったフィードラインを洗浄するために使用される従来技術の方法は、このように危険かつ費用がかかり、また長時間のダウンタイムが必要となる。スラリーフィードラインが詰まってしまうと、全運転をシャットダウンする必要があり、フィードラインをオフラインにして、その後酸で洗浄する必要がある。特定のプロセスでは、これらのステップが、時には週に一回など頻繁に繰り返されなければならず、それによって、炭化水素製造などのプロセス全体の意図した目標を達成するために必要な合計時間が大幅に増加する。従って、フィードラインをオフラインにしたり洗浄したりしなくてよいように、スラリーフィードライン内の石灰堆積物および酸化マグネシウム堆積物を低減または抑制する化学的処理が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、レオロジー改質剤およびスラリーのレオロジーを改質する方法が開示される。一態様では、石灰スラリーのレオロジーを改質する方法が開示される。該方法は、石灰スラリーを提供するステップと、石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加するステップと、を含み、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、高分子量ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、キレート剤と高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する。
【0006】
追加の態様では、酸化マグネシウムスラリーのレオロジーを改質する方法が開示される。該方法は、酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加するステップと、を含み、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する。
【0007】
別の態様では、炭化水素製造プロセス中のファウリングを防止する方法が開示される。該方法は、石灰スラリーを提供するステップと、石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加して混合物を形成するステップであって、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、高分子量ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、キレート剤と高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有する、ステップと、フィードラインを通して混合物を中温石灰軟化装置へ搬送するステップと、フィードラインのファウリングを防止するステップと、を含む。
【0008】
さらに別の態様では、炭化水素製造プロセス中のファウリングを防止する別の方法が開示される。該方法は、酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加して混合物を形成するステップであって、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマー、低分子量アニオン性ポリマーと高分子量ポリマーとの混合物、および、キレート剤と高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとの混合物からなる群から選択される要素を含有するステップと、フィードラインを通して混合物を装置へ搬送するステップと、パイプラインのファウリングを防止するステップと、を含む。
【0009】
上記は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、本開示の特徴および技術的利点を幾分広く概説したものである。本出願の特許請求の範囲の主題を形成する本開示のさらなる特徴および利点を以下に説明する。本開示の同様の目的を実施するために他の実施形態を修正または設計する基礎として、開示された概念および特定の実施形態を容易に利用できることが、当業者には理解されよう。そのような同等の実施形態が添付の特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、スラリーのレオロジーを改質するために有用な組成物および方法に関する。特定の態様では、スラリーは石灰スラリーである。「石灰」は、酸化カルシウムまたはCaOと言い換えてもよい。他の態様では、スラリーは、酸化マグネシウムスラリーである。本開示のレオロジー改質剤は、酸化マグネシウムスラリーに加え、水酸化マグネシウムスラリーのレオロジーを改質するのにも効果的である。
【0011】
石灰スラリーに関しては、これらのスラリーが高粘性となりうること、または、特定の状況では、実質的に凝固しうることが良く知られている。さらに、石灰スラリーは、それらの搬送に使用されるフィードラインに堆積物を形成することがあり、またフィードラインを完全に塞ぐこともあり、それによりプロセス全体をシャットダウンして、フィードラインを手作業または酸処理で洗浄することが必要となる。本開示によれば、これらの石灰スラリーのレオロジーを有利に改質することによって堆積物の形成およびフィードラインの詰まりを抑制または最小化させることができる種々のレオロジー改質剤が開示される。
【0012】
一態様では、レオロジー改質剤が石灰スラリーに添加され、そのレオロジーを改質する。いくつかの態様では、レオロジー改質剤は、1つまたは複数の高分子量ポリマーを含有することができる。他の態様では、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマーを含有することができる。さらなる態様では、レオロジー改質剤は、高分子量ポリマーとキレート剤とを含有することができる。さらに他の態様では、レオロジー改質剤は、高分子量ポリマーと低分子量アニオン性ポリマーとを含有することができる。追加の態様では、レオロジー改質剤は、高分子量ポリマーと、キレート剤と、低分子量アニオン性ポリマーとを含有することができる。本開示によれば、「ポリマー(polymer)」または「ポリマー(polymers)」の用語は、ホモポリマー、2種以上のモノマーのコポリマー、ターポリマーなどを含むことを意図する。
【0013】
概して、高分子量ポリマーは、約200,000より大きい数平均分子量を有する。特定の態様では、高分子量ポリマーは、約50,000より小さい分子量を有する。追加の態様では、高分子量ポリマーは、約500,000より大きい分子量を有する。いくつかの態様では、高分子量ポリマーは、約750,000より大きい分子量を有し、また、他の態様では、高分子量ポリマーは、約1,000,000より大きい分子量を有する。
【0014】
石灰スラリーに添加するレオロジー改質剤の量は、少なくともスラリー中の石灰の量に依存する。例えば、特定の添加量のレオロジー改質剤を石灰10%のスラリーに添加してよく、異なる添加量のレオロジー改質剤を石灰30%のスラリーに添加してよい。一般に、石灰スラリーに添加されるレオロジー改質剤の量は、活性高分子(active polymer)に基づき、約0.1ppm〜約300ppmとなる。他の態様では、上記量は、活性高分子に基づき、約1ppm〜約100ppmであってよい。さらなる態様では、上記量は、活性高分子に基づき、約2ppm〜約70ppmであってよい。レオロジー改質剤がキレート剤を含有する場合も、上記の量は同じである。
【0015】
特定の態様では、高分子量ポリマーは、アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマーである。アクリル酸とアクリルアミドとの高分子量コポリマーは、アクリル酸モノマー約1%〜約15%およびアクリルアミドモノマー約99%〜約85%など、任意のモノマー比を含むことができる。コポリマーは、約95%の高程度のアクリル酸と約5%の低程度のアクリルアミドとを含むことができる。例えば、高分子量コポリマーは、アクリル酸約90%とアクリルアミド約10%とを含むことができる。一態様では、コポリマーは、アクリル酸約3%とアクリルアミド約97%とを含有する。上記コポリマーは、特定の態様では約50,000未満の分子量を、いくつかの態様では約200,000超の分子量を、他の態様では約1,000,000超の分子量を、追加の態様では、約5,000,000超の分子量を、さらなる態様では約10,000,000超の分子量を、その他の態様では約15,000,000超の分子量を有することができる。例えば、コポリマーが、約3%のアクリル酸と約97%のアクリルアミドとを含有する場合、該ポリマーは、15,000,000超の分子量を有することができる。さらに、コポリマーが、アクリル酸約90%とアクリルアミド約10%とを含有する場合、該ポリマーは、約50,000未満の分子量を有することができる。他の態様では、高分子量ポリマーは、加水分解ポリアクリルアミドでよい。加水分解ポリアクリルアミドは、約200,000より大きい分子量を有することができ、特定の態様では、その分子量は、約1,000,000よりも大きい。
【0016】
さらに、特定の態様では、キレート剤またはキラントが、高分子量ポリマーとともに石灰スラリーに添加される。このように、レオロジー改質剤を石灰スラリーに添加することができ、レオロジー改質剤は任意の量の高分子量ポリマーと任意の量のキレート剤とを含んでよい。特定の態様では、このレオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマーを含有することができる。キレート剤は、当技術分野において一般に知られており、任意のキレート剤を当業者が選択して、本開示に関連して使用することが可能である。特定の態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、リグノスルホン酸塩、ジメルカプロール(2,3−ジメルカプト−1−プロパノール)、ポルフィン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。特定の一態様では、キレート剤はEDTAである。
【0017】
このように、本開示の特定の態様では、レオロジー改質剤を石灰スラリーに添加することができ、ここで、レオロジー改質剤は、キレート剤、および、アクリル酸とアクリルアミドとの高分子量コポリマーとを含有する。レオロジー改質剤は、キレート剤約40%〜約60%と、高分子量ポリマー約60%〜約40%とを含有することができる。任意の上記アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマーを使用することができ、該コポリマーは任意の上記モノマー比を有することができ、レオロジー改質剤は任意の量のキレート剤とコポリマーとを含有することができ、また、キレート剤は、EDTAなどの当技術分野で周知の任意のキレート剤とすることができる。前述のように、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマーを含有することもできる。
【0018】
他の態様では、石灰スラリーに添加されるレオロジー改質剤は、キレート剤、および、高分子量加水分解ポリアクリルアミドを含有することができる。レオロジー改質剤は、キレート剤約40%〜約60%と、高分子量ポリマー約60%〜約40%とを含有することができる。加水分解ポリアクリルアミドは、約200,000よりも大きい分子量を有することができ、特定の態様では、その分子量は、約1,000,000よりも大きい。一態様では、レオロジー改質剤は、加水分解ポリアクリルアミド約1%〜約10%と、キレート剤約0.1%〜約5%とを含有する。特定の態様では、レオロジー改質剤は、加水分解ポリアクリルアミド約1.6%と、エチレンジアミン四酢酸約0.4%とを含有する。前述のように、レオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマーを含有することもできる。
【0019】
本開示の追加の態様では、石灰スラリーに添加されるレオロジー改質剤は、低分子量アニオン性ポリマーを含有することができる。特定の態様において、低分子量アニオン性ポリマーは、約1,000〜約20,000の範囲内の数平均分子量を有する。さらなる態様において、低分子量アニオン性ポリマーは、約2,000〜約15,000の間、また、約2,000〜約5,000の間の分子量を有することができる。
【0020】
本願では、レオロジー改質剤として種々の低分子量アニオン性ポリマーの使用が考慮される。一態様では、低分子量アニオン性ポリマーは、アクリル酸と、アクリルアミドと、スルホン化アクリルアミドとのターポリマーである。このターポリマーでは任意のモノマー比を使用することができる。例えば、アクリル酸は、ターポリマー中に約5%〜約95%存在することができ、アクリルアミドは、ターポリマー中に約5%〜約95%存在することができ、スルホン化アクリルアミドは、ターポリマー中に約5%〜約95%存在することができる。一態様では、アクリル酸:アクリルアミド:スルホン化アクリルアミドのモノマー比は、それぞれ、約40:20:40である。別の態様では、低分子量アニオン性ポリマーは、アクリル酸ポリマーで、必要に応じて、5,000未満の分子量を有する。さらなる態様では、低分子量アニオン性ポリマーは、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーである。このコポリマーでは、任意のモノマー比を使用することができる。例えば、該コポリマーは、約5%〜約95%のアクリル酸と、約5%〜約95%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とを含有することができる。特定の一態様では、該コポリマーは、モノマー比がそれぞれ約60:40であるアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とを含有する。低分子量アニオン性ポリマーのレオロジー改質剤のさらなる例としては、ポリマレイン酸とAA/AMPSとの混合物、ポリマレイン酸ポリマー、およびポリマレイン酸とアクリル酸とのコポリマーがある。前述のように、低分子量アニオン性ポリマーに加えて、レオロジー改質剤は、高分子量ポリマーと、必要に応じてキレート剤を含有することもできる。
【0021】
上述のように、上記レオロジー改質剤は、石灰スラリーを組み込んだ任意のプロセスに添加することができる。このようなプロセスには、中温石灰軟化装置、高温石灰軟化装置(hot lime softener)、または硬水イオンを水から除去する任意の他のプロセスを組み込んだプロセスが含まれる。また、上記のレオロジー改質剤は、炭化水素製造プロセスおよび発電プロセスなど、熱交換器、蒸発器、およびボイラーを利用するプロセスに添加することができる。さらに、上記のレオロジー改質剤をスクラバに添加して、SO、HSおよびCOなどの酸性ガスの洗浄を促進することもできる。
【0022】
一態様では、石灰スラリーのレオロジーを改質する方法が開示される。本方法は、石灰スラリーを提供するステップと、石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加するステップとを含むことができる。石灰スラリーは、貯蔵装置に貯蔵することができる。貯蔵装置内の該スラリーにレオロジー改質剤を添加することができる。特定の態様では、レオロジー改質剤は、上記高分子量ポリマーのいずれかを含有する。特定の態様では、レオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかを含有することができる。追加の態様では、レオロジー改質剤は、キレート剤と組み合わせて上記高分子量ポリマーのいずれかを含有することができる。さらに、レオロジー改質剤は、上記高分子量ポリマーのいずれかと、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかと、キレート剤とを含有することができる。
【0023】
一態様では、レオロジー改質剤は、加水分解ポリアクリルアミド約1%〜約10%と、キレート剤約0.1%〜約5%とを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、アクリル酸とアクリルアミドとの高分子量コポリマーを含有し、該コポリマーは、アクリル酸モノマー約1%〜約15%と、アクリルアミドモノマー約99%〜約85%とを含有する。さらなる態様では、レオロジー改質剤は、低分子量ポリアクリル酸を含有する。さらなる態様では、レオロジー改質剤は、アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマーを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、ポリマレイン酸ポリマーを含有する。
【0024】
追加の態様では、炭化水素製造プロセス中のファウリングを防止する方法が開示される。本方法は、石灰スラリーを提供するステップと、混合物を形成するために石灰スラリーにレオロジー改質剤を添加するステップとを含むことができる。特定の態様では、レオロジー改質剤は、上記高分子量ポリマーのいずれかを含有することができる。また、レオロジー改質剤は、上記高分子量ポリマーのいずれかと組み合わせて上記キレート剤のいずれかを含有することができる。さらに、レオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかを含有してもよく、あるいは、代替的に、レオロジー改質剤は低分子量アニオン性ポリマーと、高分子量ポリマーと、キレート剤との組み合わせを含有することができる。本方法はさらに、フィードラインを通して混合物を中温石灰軟化装置へ搬送するステップを含む。混合物は、本開示のレオロジー改質剤の態様を備えているため、フィードライン上の石灰沈着が防止または大幅に低減され、汚れたフィードラインを洗浄するためにプロセスをシャットダウンする必要なく運転を続けることができる。
【0025】
特定の炭化水素製造プロセスでは、炭化水素の回収と関連して用いられる水(以下、「生産水」とする)を貯蔵するために、池または類似の水貯蔵装置が設けられている。この生産水は、多くの異なる水源に由来することがあり、概して精製されていない。したがって、生産水は、シリカを大量に含有することがある。生産水を中温石灰軟化装置に供給して、シリカのような汚染物質を除去する。特定の運転では、石灰スラリーおよび/または酸化マグネシウムスラリーもまた中温石灰軟化装置に供給される。石灰および/または酸化マグネシウムスラリーは、シリカの除去を促進する。例えば、シリカを酸化マグネシウムまたは石灰の上に沈殿させることができる。特定の状況では、中温石灰軟化装置の内部の媒体のpHを上昇させて、シリカの沈殿を容易にする。次に、水から沈殿物を分離させて、水を中温石灰軟化装置から熱交換器または蒸気発生器などの次の装置に供給することができる。
【0026】
しかし、前述のように、石灰スラリーと酸化マグネシウムスラリーは、生産水からのシリカ除去を容易にする利点を提供するものの、それらのスラリーは、中温石灰軟化装置の中へスラリーを供給するために使用されるフィードラインに堆積物を形成することもある。特定の態様では、貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置は、石灰スラリーを収容することができる。他の態様では、貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置は、酸化マグネシウムスラリーを収容することができる。さらなる態様では、2つ以上の貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置の少なくとも一方は、石灰スラリーを収容し、該貯蔵装置の少なくとも一方は、酸化マグネシウムスラリーを収容する。フィードラインは、石灰スラリー貯蔵装置および酸化マグネシウムスラリー貯蔵装置を中温石灰軟化装置に接続する。また、フィードラインは、石灰スラリーと酸化マグネシウムスラリーとをそれぞれの貯蔵装置から中温石灰軟化装置に搬送するのに使用される。上述のように、これらのフィードラインは、石灰および/または酸化マグネシウム堆積物で汚れてしまい、約1週間〜約1か月後には、運転全体をシャットダウンする必要が生じ、フィードラインを手動または酸のいずれかで洗浄する必要が生じる。しかし、前述のレオロジー改質剤のいずれかを石灰スラリーに添加すると、フィードラインの堆積物は発生しないか、または大幅に低減される。酸化マグネシウムスラリーに添加されるレオロジー改質剤については、さらに後述する。
【0027】
上記したように、本願が考慮するプロセスは、石灰スラリーと、酸化マグネシウムスラリーまたは水酸化マグネシウムスラリーとの両方を組み込むことができる。以下に説明するレオロジー改質剤はすべて、酸化マグネシウムスラリーおよび水酸化マグネシウムスラリーに対してほとんど同じように使用することができる。理解を容易にするために、化学作用は、酸化マグネシウムスラリーに関連して説明する。
【0028】
本開示は、いろいろなレオロジー改質剤を酸化マグネシウムスラリーに添加することを考慮する。一態様では、1つまたは複数の上記開示の低分子量アニオン性ポリマーを酸化マグネシウムスラリーに添加して、そのレオロジーを改質して、酸化マグネシウムの搬送に使用されるフィードラインを汚染するのを防止する。他の態様では、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかと、上記高分子量ポリマーいずれかとの組み合わせをスラリーに添加することができる。さらなる態様では、酸化マグネシウムスラリーに添加されるレオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかと、上記高分子量ポリマーのいずれかと、本開示のキレート剤のいずれかとを含有することができる。
【0029】
例えば、一態様では、酸化マグネシウムスラリーに添加されるレオロジー改質剤は、加水分解ポリアクリルアミド約1%〜約10%とキレート剤約0.1%〜約5%とを含む組成物、および、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物を含有する組成物の組み合わせを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、低分子量ポリアクリル酸を含有する。追加の態様では、レオロジー改質剤は、アクリル酸と、アクリルアミドと、スルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマーを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物を含有し、また追加の例示的態様では、レオロジー改質剤は、AA/AMPSコポリマーを含有する。
【0030】
酸化マグネシウムスラリーに添加するレオロジー改質剤の量は、スラリーの特性に基づいて選択することができる。特定の態様では、スラリーに対してレオロジー改質剤を約10〜約300ppm添加することができる。別の態様では、スラリーに対してレオロジー改質剤を約30〜約250ppm添加することができる。
【0031】
上述のように、上記レオロジー改質剤は、酸化マグネシウムスラリーを組み込んだ任意のプロセスに添加することができる。このようなプロセスには、中温石灰軟化装置、高温石灰軟化装置、または硬水イオンを水から除去する任意の他のプロセスを組み込んだプロセスが含まれる。また、上記レオロジー改質剤は、炭化水素製造プロセスおよび発電プロセスなど、熱交換器、蒸発器、およびボイラーを利用するプロセスに添加することができる。さらに、上記のレオロジー改質剤をスクラバに添加して、SO、HSおよびCOなどの酸性ガスの洗浄を促進することもできる。
【0032】
一態様では、酸化マグネシウムスラリーのレオロジーを改質する方法が開示される。本方法は、酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加するステップとを含むことができる。酸化マグネシウムスラリーは、貯蔵装置に貯蔵することができる。貯蔵装置内の該スラリーにレオロジー改質剤を添加することができる。レオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかを含有する。レオロジー改質剤は、上記高分子量ポリマーのいずれかと組み合わせて上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかを含有することもできる。さらに、レオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかと、上記高分子量ポリマーのいずれかと、上記キレート剤のいずれかとの組み合わせを含有することができる。
【0033】
追加の態様では、炭化水素製造プロセス中にファウリングを防止する方法が開示される。本方法は、酸化マグネシウムスラリーを提供するステップと、酸化マグネシウムスラリーにレオロジー改質剤を添加して混合物を形成するステップとを含むことができる。特定の態様では、レオロジー改質剤は、上記低分子量アニオン性ポリマーのいずれかを、単独で、または、上記高分子量ポリマーのいずれかと組み合わせて、また必要に応じて上記キレート剤のいずれかと組み合わせて含有することができる。本方法は、さらに、フィードラインを通して混合物を装置へ搬送するステップを含む。装置とは、例えば、中温石灰軟化装置、熱交換器、および/または蒸発器などでよい。混合物は、本開示のレオロジー改質剤を含有しているため、フィードライン上の堆積物が防止または大幅に削減され、汚れたフィードラインを洗浄するためにプロセスをシャットダウンする必要なく運転を続けることができる。
【0034】
上述のように、特定の炭化水素製造プロセスでは、炭化水素の回収と関連して用いられる生産水を貯蔵するために、池または類似の貯水装置が設けられている。この生産水は、多くの異なる水源に由来することがあり、概して精製されておらず、シリカを大量に含有することがある。従って、汚染物質を除去するために、生産水を中温石灰軟化装置に供給し、石灰スラリーおよび/または酸化マグネシウムスラリーを中温石灰軟化装置に供給することも可能である。石灰および/または酸化マグネシウムスラリーは、シリカの除去を促進する。例えば、シリカを酸化マグネシウムまたは石灰の上に沈殿させることができる。特定の状況では、中温石灰軟化装置の内部の媒体のpHを上昇させて、シリカの沈殿を容易にする。次に、水から沈殿物を分離させて、水を中温石灰軟化装置から熱交換器または蒸気発生器などの次の装置に供給することができる。
【0035】
しかし、前述のように、石灰スラリーと酸化マグネシウムスラリーは、生産水からのシリカ除去を容易にする利点を提供するものの、それらのスラリーは、中温石灰軟化装置の中へスラリーを供給するために使用されるフィードライン上に堆積物を形成することもある。特定の態様では、貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置は、酸化マグネシウムスラリーを収容することができる。他の態様では、貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置は、石灰スラリーを収容することができる。さらなる態様では、2つ以上の貯蔵装置が、中温石灰軟化装置の近傍に設けられている。該貯蔵装置の少なくとも一方は、石灰スラリーを収容し、該貯蔵装置の少なくとも一方は、酸化マグネシウムのスラリーを収容する。フィードラインは、石灰スラリー貯蔵装置と酸化マグネシウムスラリー貯蔵装置とを中温石灰軟化装置に接続する。また、フィードラインは、石灰スラリーと酸化マグネシウムスラリーとをそれぞれの貯蔵装置から中温石灰軟化装置に搬送するのに使用される。上述のように、これらのフィードラインは、石灰堆積物および/または酸化マグネシウム堆積物で汚れてしまい、約1週間〜約1か月後には、運転全体をシャットダウンする必要があり、フィードラインは、手作業または酸を用いて洗浄する必要がある。しかし、前述のレオロジー改質剤のうち1つまたは複数を石灰スラリーおよび/または酸化マグネシウムスラリーに添加すると、フィードライン堆積物は発生しないか、または大幅に低減される。
【0036】
さらなる態様では、熱交換器/蒸発器内のファウリングを防止する方法が開示される。熱交換器/蒸発器は炭化水素生産によく使用される。本方法の一態様では、例えば、池からの生産水を熱交換器内に注入することができるが、前述のように、生産水はシリカのような汚染物質を高レベルで含むことがあるので、熱交換器が汚れることがある。貯蔵装置は熱交換器の近くに配置することができ、該貯蔵装置は、酸化マグネシウムスラリーを収容することができる。フィードラインを使用して酸化マグネシウムスラリーを熱交換器に供給し、酸化マグネシウム上へのシリカの沈殿を促進することによって、熱交換器のファウリングを低減することができる。シリカのほかにも、水中の他の鉱物を酸化マグネシウムの上に沈殿させることもできる。酸化マグネシウムの添加により水性媒体のpHも上昇し、それによって、シリカおよび他の鉱物の沈殿がさらに促進される。しかし、上記のように、酸化マグネシウムスラリーのフィードラインは、酸化マグネシウム堆積物のために汚れ、最終的には塞がってしまうことになる。したがって、本方法は、酸化マグネシウムスラリーに上記開示のレオロジー改質剤の1つまたは複数を添加し、それによってファウリングを阻害するかまたはファウリングを大幅に減少させることを図る。
【0037】
例えば、一態様では、酸化マグネシウムスラリーに添加されるレオロジー改質剤は、加水分解ポリアクリルアミド約1%〜約10%と、キレート剤約0.1%〜約5%とを含有する組成物、および、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物を含有する組成物の組み合わせを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、低分子量ポリアクリル酸を含有する。追加の態様では、レオロジー改質剤は、アクリル酸と、アクリルアミドと、スルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマーを含有する。別の態様では、レオロジー改質剤は、ポリマレイン酸とAA/AMPSコポリマーとの混合物を含有し、また追加の例示的態様では、レオロジー改質剤は、AA/AMPSコポリマーを含有する。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は、本開示のレオロジー改質剤の有益な技術的効果を示している。最初の実験設定では、濃度9%の石灰スラリーが、6個の別々のメスシリンダに添加された。メスシリンダ1にはレオロジー改質剤を全く添加しなかった。しかし、メスシリンダ2〜6にはレオロジー改質剤を添加した。表1に関して、添加剤Aを示した量でメスシリンダ2〜5に添加した。添加剤Bを表1に示した量でメスシリンダ6に添加した。メスシリンダ内のスラリーを、その後、6時間放置した(凝結させた)。次に、メスシリンダに蓋をして反転させた。上述の手順が実行され、表1〜4に示すデータが得られ、示した異なる凝結時間を使用したが、示した異なる添加剤などを使用した。メスシリンダ中で石灰スラリーまたは酸化マグネシウムスラリーを完全に分散させるのに必要な反転の総回数が、表に示されている。特定の状況では、スラリーが完全には分散しなかった。反転数が少ないことが、より効果的なレオロジー改質剤であることに相当する。各表において、メスシリンダに添加されるレオロジー改質剤は以下のように定義される。
添加剤A=15,000,000超の分子量を有するアクリル酸とアクリルアミド(モノマー比3:97)のコポリマーであって、活性高分子を28%含有する。
添加剤B=加水分解ポリアクリルアミド1.6%(分子量1,000,000超)とEDTA0.4%とを含有する組成物である。
添加物C=ポリマレイン酸18%とAA/AMPSコポリマー12%との混合物であって、全活性は30%である。
添加剤D=AA/AMPSコポリマーが28%である。
添加剤E=活性低分子量(<5000)ポリアクリル酸が42%である。
添加剤F=アクリル酸とアクリルアミドとスルホン化アクリルアミドとを含有するターポリマー(モノマー比40:20:40)である。
添加剤G=活性ポリマレイン酸が50%である。
添加剤H=ポリマレイン酸とアクリル酸との活性コポリマー(モノマー比50/50)が50%である。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
本明細書において開示され請求される組成物と方法の全ては、本開示に照らして必要以上の実験をすることなく、作製し実行することができる。本発明は、多くの異なる形態で具現化されうるが、本発明の具体的な好適な実施形態については本明細書に詳細に記載している。本開示は本発明の原理を例示するものであって、本発明を特定の説明された実施形態に限定することを意図するものではない。また、別段の記載がない限り、用語「1つの(a)」の使用は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を含むことを意図している。例えば、「1つの(a)装置」は、「少なくとも1つの装置」または「1つまたは複数の装置」を含むことを意図している。
【0044】
絶対項または近似項のいずれかで与えられた任意の範囲は、両者を包含することを意図したものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図したものであって限定することを意図したものではない。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値もそれらの試験測定値それぞれにおいて見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を本来含有している。また、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(すべての小数値および整数値を含む)を含むものと理解されるべきである。
【0045】
さらに、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態の一部または全てのあらゆる可能な組み合わせを包含する。本明細書に記載の本好適な実施形態の様々な変更および修正が当業者にはあきらかであることが理解されるべきである。そのような変更および修正は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、また、意図した利益を損なうことなく、実施することができる。したがって、そのような変更および修正は、添付の請求項によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】