(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-520446(P2016-520446A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(54)【発明の名称】高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメット
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20160617BHJP
A42B 3/06 20060101ALI20160617BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20160617BHJP
F41H 1/04 20060101ALI20160617BHJP
F41H 5/04 20060101ALI20160617BHJP
【FI】
B32B27/30 102
A42B3/06
B32B27/42 101
F41H1/04
F41H5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-504251(P2016-504251)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】KR2014002302
(87)【国際公開番号】WO2014148809
(87)【国際公開日】20140925
(31)【優先権主張番号】10-2013-0029690
(32)【優先日】2013年3月20日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0163819
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0030979
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515172751
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シム ジェ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ロ キョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ベ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ハ
【テーマコード(参考)】
2C014
3B107
4F100
【Fターム(参考)】
2C014KK04
3B107AA02
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4F100AH02B
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4F100JB12B
4F100JK02A
4F100JL01
4F100JL03
(57)【要約】
業界で要求するレベルの防弾性能を満足させながらも軽量性が大きく向上した高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットが開始される。高強度繊維複合材は、高強度繊維材;及び高強度繊維材の一面に積層された樹脂フィルムを含むが、樹脂の含量は、高強度繊維材と樹脂の総重量に対して10〜18重量%であり、樹脂フィルムは20〜70重量%のフェノール樹脂と20〜70重量%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂とを含み、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)の分子量は、30,000〜120,000である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度繊維材;及び
前記高強度繊維材の一面に積層された樹脂フィルムを含み、
前記樹脂フィルムの含量は、前記高強度繊維材と前記樹脂フィルムの総重量に対して10〜18重量%であり、
前記樹脂フィルムは、20〜70重量%のフェノール樹脂と20〜70重量%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂とを含み、
前記ポリビニルブチラール(PVB)樹脂の分子量は、30,000〜120,000であることを特徴とする高強度繊維複合材。
【請求項2】
前記高強度繊維材は、アラミド織物、超高分子量ポリエチレン織物、アラミドフィラメントと超高分子量ポリエチレンフィラメントからなるハイブリッド織物、超高分子量ポリエチレンフィラメントが一方向に配列された超高分子ポリエチレンシート、またはアラミドフィラメントが一方向に配列されたアラミドシートであることを特徴とする請求項1に記載の高強度繊維複合材。
【請求項3】
前記フェノール樹脂の分子量は、500〜2,000であることを特徴とする請求項1に記載の高強度繊維複合材。
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した溶融温度(Tm)のピークが50〜100℃であることを特徴とする請求項1に記載の高強度繊維複合材。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは可塑剤を更に含み、前記可塑剤はアルキレン、ポリアルキレングリコール、ベンゾエイト、脂肪族ジオール、アルキレンポリオール、及びジエステルのうち、少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の高強度繊維複合材。
【請求項6】
高強度繊維材を製造する段階;
前記高強度繊維材の一面に樹脂フィルムを積層させて半硬化高強度繊維材を製造する段階;及び
前記半硬化高強度繊維材を積層した後硬化させて高強度繊維材積層材を製造する段階を含に、
前記樹脂フィルムの含量は、前記高強度繊維材と前記樹脂フィルムの総重量に対して10〜18重量%であり、
前記樹脂フィルムは、20〜70重量%のフェノール樹脂と20〜70重量%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂とを含み、
前記ポリビニルブチラール(PVB)樹脂の分子量は、30,000〜120,000であることを特徴とする高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項7】
前記フェノール樹脂の分子量は、500〜2,000であることを特徴とする請求項6に記載の高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項8】
前記半硬化高強度繊維材を製造する段階は、
前記高強度繊維材に前記樹脂フィルムを貼着する段階;
前記樹脂フィルムが貼着された前記高強度繊維材を加圧する段階;及び
前記加圧した高強度繊維材を乾燥する段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥する段階は、20〜60℃の温度が維持された状態で行うことを特徴とする請求項8に記載の高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥する段階は、前記加圧した高強度繊維材が4〜20m/分の速度に移動するように設定したチャンバを用いて行うことを特徴とする請求項8に記載の高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項11】
前記高強度繊維材は、アラミド織物、超高分子量ポリエチレン織物、アラミドフィラメントと超高分子量ポリエチレンフィラメントからなるハイブリッド織物、超高分子量ポリエチレンフィラメントが一方向に配列された超高分子ポリエチレンシート、またはアラミドフィラメントが一方向に配列されたアラミドシートであることを特徴とする請求項6に記載の高強度繊維複合材の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高強度繊維複合材を含み、
総重量が1400g以下であり、MIL−STD−662Fの規定によって測定した平均速度(V50)が610〜660m/sであり、前記平均速度は破片模擬弾(FSP)を用いて完全に貫通した際の速度と部分貫通した際の速度を平均して得た値から測定したことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットに関するものであり、より詳細には、業界で要求するレベルの防弾性能を満足させながらも、軽量性が大きく向上した高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防弾製品は弾丸や砲弾から人体を保護するための製品であって、製品の防弾性能は使用する材料によって大きく左右される。
【0003】
このような防弾用材料のうち、高密度ポリエチレン(high−density polyethylene)は、水より低い0.98の比重を有しているので、防弾用材料して広く使用されている。
【0004】
しかし、高密度ポリエチレンは使用中に物理的衝撃を受ける場合、大きな変形が生じる恐れがあり、熱に弱い特性がある。特に、ヘルメットに適用する場合は、弾丸の衝突時、局所的に内表面層が変形されてヘルメットの内部までつながり、許容安全離間距離より大きい変形が生じるため、優れた防弾性能を得るには限界がある実情である。
【0005】
他の防弾用材料のうち、一般的にアラミド纎維に通称される全芳香族ポリアミド纎維は、ベンゼン環がアミド基(−CONH)を通じて直線状に連結された構造を有するパラ系アラミド纎維と、そうでないメタ系アラミド纎維とを含む。パラ系アラミド纎維は高強度、高弾性、低収縮性などの優れた特性を有している。従って、5mm程度太さの細い糸で2トンの自動車を持ち上げるほどの大きな強度を有しているので、防弾用途に広く使用されている。
【0006】
防弾用複合材料は、通常に、パラ系アラミド纎維を用いてアラミド織物を製造し、このようなアラミド織物を樹脂に浸漬した後乾燥させて、半硬化(プリプレグ)アラミド織物を製造し、このような半硬化アラミド織物を多層に積層した後、硬化させて完成する。
【0007】
しかし、このような浸漬工程を用いて半硬化アラミド織物を製造する場合は、樹脂溶液の濃度及びスクイズ圧力によって含浸された樹脂の量が変わるため、均一な重量の半硬化アラミド織物を得ることができず、アラミド織物の両面に樹脂が含浸されているため、優れた軽量性の半硬化アラミド織物を得ることが難しい実情である。
【0008】
また、通常に半硬化アラミド織物の製造に使用されるフェノール樹脂は、硬い特性により成形性が低下し、アラミド織物に強く貼着することができないため、優れた防弾性能を提供することができない実情である。
【0009】
一方、特許文献1はアラミド織物の一面にフェノール樹脂と、分子量が50,000〜60,000であるポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral、PVB)を含む樹脂コーティング層を形成したアラミド複合材、その製造方法及びこれにより製造したヘルメットを開示している。しかし、前記従来技術関連特許は、ポリビニルブチラールの分子量が低くて樹脂コーティング層が割れ易くなって、巻き取られたアラミド複合材を巻き戻す時、樹脂コーティング層から樹脂粒子が離脱して作業性が低下し、アラミド複合材により製造した防弾ヘルメットの性能が低下する問題点があった。
【0010】
また、特許文献2、特許文献3及び特許文献4などもアラミド纎維にフェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂からなる樹脂組成物を塗布または含浸させたプリプレグで防弾ヘルメットなどのような防弾製品を製造する方法を開示している。
【0011】
しかし、これらの従来技術関連特許は以下のような問題がある。ポリビニルブチラール樹脂の分子量、フェノール樹脂の分子量、またはフェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂の混合割合などが好ましい範囲に特定されていないため、分子量が80,000未満のポリビニルブチラール樹脂を使用する場合、樹脂フィルムが割れ易くなって巻き取られたアラミド複合材を巻き戻す時、樹脂フィルムから樹脂粒子が離脱して作業性が低下し、防弾ヘルメットの性能も低下する。また、フェノール樹脂混合割合が20重量%未満の場合は、硬化性が低下して形態安全性と防弾性能が低下し、フェノール樹脂混合割合が70重量%を超過する場合は、耐熱性と形態安全性は増加するが、粘着力と成形性が低下する。更に、分子量3,000〜4,000の通常的なフェノール樹脂を使用する場合は、フェノール樹脂の固有特性によって樹脂フィルムの成形性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2011−0009441号公報
【特許文献2】日本特開第2009−028944号公報
【特許文献3】日本特開平7−180997号公報
【特許文献4】米国特許第7,124,449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は前述したような関連技術の制限及び短所に起因した問題点を解決することができる高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットを提供することにその目的がある。
【0014】
本発明の他の目的は業界で要求するレベルの防弾性能を満足させながらも軽量性が大きく向上した高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は高強度繊維材の間の粘着力及び成形性が大きく向上した高強度繊維複合材、その製造方法及びこれを用いたヘルメットを提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の特徴及び利点は以下の記載において述べられ、その一部は当該記載から明らかである。または、本発明の実施により本発明の目的及び他の利点を理解することができる。本発明の目的及び他の利点は、本発明の詳細な説明、及び特許請求の範囲で特定された構造により実現され、取得される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述したような目的を達成するために、本発明の一側面によれば、高強度繊維材;及び前記高強度繊維材の一面に積層された樹脂フィルムを含み、前記樹脂の含量は、前記高強度繊維材と前記樹脂の総重量に対して10〜18重量%であり、前記樹脂フィルムは、20〜70重量%のフェノール樹脂と20〜70重量%のポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral、PVB)樹脂とを含み、前記ポリビニルブチラール(PVB)樹脂の分子量は、30,000〜120,000であることを特徴とする高強度繊維複合材が提供される。
【0018】
本発明の他の側面によれば、高強度繊維材を製造する段階;前記高強度繊維材の一面に樹脂フィルムを積層させて半硬化高強度繊維材を製造する段階;及び前記半硬化高強度繊維材を積層した後硬化させて高強度繊維材積層材を製造する段階を含み、前記樹脂の含量は、前記高強度繊維材と前記樹脂の総重量に対して10〜18重量%であり、前記樹脂フィルムは、20〜70重量%のフェノール樹脂と20〜70重量%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂とを含み、前記ポリビニルブチラール樹脂(PVB)の分子量は、30,000〜120,000であることを特徴とする高強度繊維複合材の製造方法が提供される。
【0019】
本発明のまた他の側面によれば、本発明に係る前記高強度繊維複合材を含み、総重量が1400g以下であり、MIL−STD−662Fの規定によって測定した平均速度(V50)が、610〜660m/sであり、前記平均速度は破片模擬弾(fragment simulating projectile、FSP)を用いて完全に貫通した際の速度と部分貫通した際の速度を平均して得た値から測定したことを特徴とするヘルメットが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高強度繊維複合材によれば、積層工程を用いて高強度繊維材の一面のみに樹脂をコートすることで、樹脂含量を大きく低下することができるので、優れた軽量性を提供することができ、 高強度繊維材上に樹脂を均一にコートさせることで、優れた防弾性能を提供することができる。
【0021】
また、本発明の高強度繊維複合材によれば、分子量が30,000〜120,000であるポリビニルブチラール樹脂が含まれた樹脂を使用することで、割れ易い性質を防止して成形性及び工程性が向上することができ、向上した貼着性が得られるので、優れた防弾性能を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明をより具体的に説明する。しかし、 当業者ならば、このような実施形態は例示の目的に提供し、詳細な説明および添付の特許請求範囲に開示したように保護される主題を限定するものではないことを理解できるであろう。従って、当業者ならば、本発明の範疇及び思想から外れずに、添付の特許請求範囲によって規定されるような範囲内で、実施形態の多くの変形及び修正がなされ得ることがわかるはずである。
【0023】
本の明細書で使用する「半硬化高強度繊維材」との用語は、高強度繊維材に樹脂がコートされているが、樹脂は完全に硬化されず半硬化(prepreg)された状態にある高強度繊維材を意味する。
【0024】
本の明細書で使用する「高強度繊維材積層材」との用語は、高強度繊維材が多層に積層されており、含浸された樹脂が硬化された状態にある高強度繊維材を意味する。
【0025】
以下、本発明の高強度繊維複合材を製造する方法の具体的な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明の高強度繊維複合材は、高強度繊維材を製造する段階、高強度繊維材の一面に樹脂フィルムを積層させて半硬化高強度繊維材を製造する段階、及び半硬化高強度繊維材を積層した後硬化させて高強度繊維材積層材を製造する段階を含む。
【0027】
高強度繊維材は、アラミド織物、超高分子量ポリエチレン織物、アラミドフィラメントと超高分子量ポリエチレンフィラメントからなるハイブリッド織物、超高分子量ポリエチレンフィラメントが一方向に配列された超高分子ポリエチレンシート、またはアラミドフィラメントが一方向に配列されたアラミドシートである。
【0028】
まず、高強度繊維材の一例であるアラミド織物を製造する方法について詳細に説明する。
【0029】
アラミド織物の製造に用いるアラミド纎維は、次のような方法によって製造する。芳香族ジアミンと芳香族二酸塩化物を重合溶媒中で重合させることで、芳香族ポリアミドポリマーを製造し、その後芳香族ポリアミドポリマーを含む紡糸ドープを紡糸口金を通じて紡糸した後、凝固させてアラミド纎維を製造する。
【0030】
アラミド纎維は、600〜3,000デニール(denier)範囲の総繊度を有することが好ましい。万一、総繊度が500デニール未満の場合には、製織後の密度を増加させなければならないため、生産性が低下する恐れがある。反面、総繊度が4,000デニールを超過する場合には、製織工程性が低下する恐れがある。
【0031】
アラミド纎維は20g/d以上の引張強度を有することが好ましい。万一、低い引張強度を有するアラミド纎維を使用する場合には、業界で要求するレベルの防弾性能を得ることが難しい。
【0032】
高強度繊維複合材を支持する役目をするアラミド生地は、多様な形態の生地を使用することができるが、優れた防弾性能を提供し、製造が比較的容易であるアラミド織物を使用することができる。
【0033】
以下、アラミド織物を製造する方法について説明する。まず、上述した方法で製造したアラミド纎維を縦糸として適用して縦糸巻きを製造した後、縦糸巻きを織機に設けてアラミド纎維を横糸として適用して製織することで、アラミド織物を完成する。この時、アラミド織物は平織り、またはバスケット織り組職が好ましい。このような平織りまたはバスケット織り組職は、縦糸及び横糸が一定の屈曲をなしながら形成されているので、銃弾などによる外力を受ける場合、織物全体に亘って外力を均一に分散させる。それによって、優れた防弾性能を提供することができる。
【0034】
また、アラミド織物は150〜520g/m
2の密度を有することが好ましい。万一、密度が低く過ぎる場合には、織物に空間が生成されるため防弾性能が低下する恐れがあり、密度が高過ぎる場合には、織物の製造が容易ではないため、生産効率が大きく低下する恐れがある。
【0035】
次に、高強度繊維複合材の一例であるアラミド複合材を製造する方法について詳細に説明する。
【0036】
まず、半硬化高強度繊維材の一例である半硬化アラミド織物を製造する方法について説明する。半硬化アラミド織物は積層方法を用いて製造する。これをより詳細に説明すると、上述した方法によって製造したアラミド織物に樹脂フィルムを貼着する段階、樹脂フィルムが貼着されたアラミド織物を加圧する段階、及び加圧したアラミド織物を乾燥する段階を順に行うことで、半硬化アラミド織物が製造される。
【0037】
アラミド織物に樹脂フィルムを貼着する段階は、連続工程や非連続工程を通じて行うことができる。連続工程は、アラミド織物と樹脂フィルムを別個の供給ローラーなどにより、同時にそれぞれ供給した後、アラミド織物及び樹脂フィルムを互いに貼着させる。非連続工程は、一定の大きさのアラミド織物と樹脂フィルムを準備した後、一定の大きさのアラミド織物と樹脂フィルムを順に整列して貼着させる。
【0038】
樹脂フィルムが貼着されたアラミド織物を加圧する段階は、加圧ローラーを用いて連続的に行うか、加圧板を用いて非連続的に行うことができる。
【0039】
加圧したアラミド織物を乾燥する段階は、チャンバ(chamber)などを用いて連続的に行うか、加熱板を用いて非連続的に行うことができる。
【0040】
樹脂フィルムに溶融温度が低いポリビニルブチラール樹脂が含まれた場合、乾燥段階は20〜60℃の低い乾燥温度で行うことができる。万一、乾燥温度が20℃未満の場合は、乾燥がなだらかに行うことができず、反面乾燥温度が60℃を超過する場合は、コートした樹脂が硬化されることで、後述するアラミド積層材の粘着力が低下する恐れがある。このような乾燥工程を通じて、アラミド織物の一面に半硬化状態の樹脂コーティング層が形成される。乾燥工程は加圧したアラミド織物を4〜20m/分の速度に移動させることができるように設定したチャンバを用いて行うことができる。
【0041】
従来には通常に、樹脂組成物にアラミド織物を浸漬させた後、乾燥させて半硬化アラミド織物を製造した。
【0042】
しかし、このような浸漬方法は樹脂の貼着率を一定に調節することができないため、均一な重量感及び防弾性能を得ることが難しい。また、アラミド織物の両面に樹脂が含浸されることで、優れた軽量性を得ることが難しい。従って、このような半硬化アラミド織物を用いて防弾ヘルメットを製造する場合、重いヘルメットを着用した軍人は十分な起動性を発揮することができなくて戦闘力が低下する恐れがあり、不均一の防弾性能によって危険に露出することができる。
【0043】
一方、本発明の半硬化アラミド織物は、積層工程を用いてアラミド織物の一面のみに樹脂をコートさせて製造することで、軽くて均一な防弾性能を有することができる。
【0044】
半硬化アラミド織物に形成された樹脂コーティング層の含量は、アラミド織物の重量に対して10〜18重量%が好ましい。万一、樹脂コーティング層の含量が10重量%未満の場合には、外部摩擦によってアラミド織物がよく損傷される恐れがあり、製品成形時粘着力が低下して防弾性能が低下する恐れもある。一方、樹脂コーティング層の含量が18重量%を超過する場合には、それを用いて製造したアラミド複合材の軽量性が低下する恐れがある。
【0045】
樹脂フィルムは、溶融温度が50〜100℃である樹脂を含む。このような低い溶融温度を有する樹脂を含むことで、成形性が向上し、製造コストが節減されることができる。特に、フェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂が混合した樹脂フィルムを使用することができる。
【0046】
フェノール樹脂は耐熱性に優れ、アラミド纎維との粘着力の強い長所があるが、こわれやすい性質によって成形性が低下する。一方、ポリビニルブチラール樹脂は可塑性を提供することによって、成形性を向上することができ、共反応剤の役目をすることで、貼着性を向上することができる。溶融温度は10℃/分のスキャン速度下で示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を用いて測定する。
【0047】
樹脂フィルムは所定の範囲内で混合したフェノール樹脂、及び分子量が30,000〜120,000であるポリビニルブチラール樹脂を含む。ポリビニルブチラール樹脂の含量は樹脂フィルムの含量 に対して20〜70重量%であり得る。万一、ポリビニルブチラール樹脂の含量が20重量%未満の場合には、成形性が不良になって粘着力が低下する恐れがある。一方、ポリビニルブチラール樹脂の含量が70重量%を超過する場合には、加工性及び粘着力は向上するが、耐熱性及び防弾性能が低下する恐れがある。
【0048】
ポリビニルブチラール樹脂の分子量が前記範囲より低いと、樹脂フィルムが割れ易くなって巻き取られたアラミド複合材を巻き戻す時、樹脂フィルムから樹脂粒子が離脱して作業性が低下し、これにより製造した防弾ヘルメットの性能も低下する。
【0049】
本発明においては、樹脂フィルム製造時、こわれやすい性質によって成形性が低下するフェノール樹脂の固有特性を克服するために、従来分子量が3,000〜4,000であるフェノール樹脂を使用することの代わりに、分子量が500〜2,000である、従来に比べて相対的に低分子量を有するフェノール樹脂を使用することを特徴とする。
【0050】
フェノール樹脂の分子量が前記範囲より高いと、樹脂フィルムが割れ易くなって巻き取られたアラミド複合材を巻き戻す時、樹脂フィルムから樹脂粒子が離脱して作業性が低下し、これにより製造した防弾ヘルメットの性能も低下する。
【0051】
また、フェノール樹脂の含量は樹脂フィルムに対して20〜70重量%であり得る。万一、フェノール樹脂の含量が20重量%未満の場合には硬化性が低下し形態安全性が不良であり、防弾性能が低下する恐れがある。一方、フェノール樹脂の含量が70重量%を超過する場合には、耐熱性及び形態安全性は増加するが、粘着力及び成形性が低下する恐れがある。
【0052】
また、樹脂フィルムは可塑剤を含むことができる。可塑剤の含量はポリビニルブチラール樹脂の含量によって適切に調節することが好ましい。すなわち、ポリビニルブチラール樹脂の含量が多いと、 相対的に可塑剤の含量を減少させ、反面ポリビニルブチラール樹脂の含量が小さいと、相対的に可塑剤の含量を増加させる。好ましくは、樹脂フィルムの含量 に対して0.1乃至5重量%の範囲内で混合する。
【0053】
可塑剤としては、アルキレン、ポリアルキレングリコール、ベンゾエイト、脂肪族ジオール、アルキレンポリオール、及びジエステルのうち、少なくとも一つであり得る。
【0054】
以下、実施例と比較例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、以下の実施例は本発明の理解を助けるための例示であって、いかなる意味においても本発明の権利範囲を限定するものと解すべきではない。
【0055】
[実施例1]
芳香族ジアミンであるパラ−フェニレンジアミンと芳香族二酸塩化物である二塩化テレフタロイルをN−メチル−2−ピロリドン重合溶媒中で重合させてポリパラフェニレンテレフタルアミドポリマーを製造し、その後ポリマーを濃硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造し、紡糸ドープを紡糸口金を通じて紡糸した後、凝固させて3,000デニールの全芳香族アラミド纎維を製造した。
【0056】
その後、アラミド纎維を縦糸及び横糸としてそれぞれ適用し、平織りで製織して450g/m
2の密度を有するアラミド織物を製造した。
【0057】
次に、製造したアラミド織物と樹脂フィルムを用いて積層工程を通じて一面のみに樹脂コーティング層が形成された半硬化アラミド織物を製造した。この時、樹脂フィルムは、固形分の割合で分子量が550である65重量%のフェノール樹脂と分子量が90,000である35重量%のポリビニルブチラール樹脂をメタノール溶媒に溶解させた後、メタノールを取り除いて製造した。積層工程は、供給ローラーによりアラミド織物と、他の供給ローラーにより樹脂フィルムとをそれぞれ供給してアラミド織物の一面に樹脂フィルムを貼着させ、一面に樹脂フィルムが貼着されたアラミド織物を加圧ローラーを用いて加圧させた後、引き続き40℃の温度及び10m/分の移動速度を維持しているチャンバを用いて乾燥させて行った。このような積層工程を通じて、アラミド織物の重量に対して13重量%の樹脂コーティング層が形成された半硬化アラミド織物が得られた。
【0058】
その後、17枚の半硬化アラミド織物を積層した後、ヘルメット製造用鋳型に挿入し、160barの圧力及び150℃の温度で20分間加圧成形することで、防弾ヘルメットを製造した。
【0059】
[実施例2〜5]
前述した実施例1で、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の分子量、及び樹脂フィルムの組成比を表1に示すように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により防弾ヘルメットを製造した。
【0060】
[実施例6〜9]
前述した実施例1で、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の分子量、及び半硬化アラミド織物の積層枚数を表1に示すように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により防弾ヘルメットを製造した。
【0061】
[実施例10〜12]
前述した実施例1で、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の分子量、及び樹脂コーティング層の樹脂含量を表1に示すように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により防弾ヘルメットを製造した。
【0062】
[比較例1〜3]
前述した実施例1で、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の分子量を表1に示すように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法により防弾ヘルメットを製造した。
【0063】
[比較例4]
前述した比較例1で、フェノール樹脂の分子量を変更すると共に、100%フェノール樹脂を含む樹脂フィルムを使用したことを除いて、比較例1と同様の方法によって防弾ヘルメットを製造した。
【0064】
実施例及び比較例によって製造したアラミド複合材のそれぞれの標準偏差及び平均速度を次の方法で測定し、その結果を以下の表1に示した。
【0065】
標準偏差の測定
アラミド織物に含浸された樹脂の含量の均一度レベルを間接的に示す標準偏差(σ)は、10個のアラミド複合材の試料を採取して平方メートル当たり重量をそれぞれ求め、これらから測定した。
【0066】
平均速度(V50)の測定
アラミド複合材の防弾性能レベルを間接的に示す平均速度(m/s)は、MIL−STD−662Fの規定によって破片模擬弾(FSP)を用いて完全に貫通した際の速度と部分貫通した際の速度を平均して得た値から測定した。
【表1】
【0067】
表1の実施例1乃至12と比較例1乃至3で製造した防弾ヘルメットの標準偏差及び平均速度の測定結果から、フェノール樹脂の分子量が500〜2,000であり、ポリビニルブチラール樹脂の分子量が80,000〜120,000である場合、製造したヘルメットの防弾性能が優れることが分かった。
【0068】
実施例2乃至5で製造した防弾ヘルメットの標準偏差及び平均速度の測定結果 から、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の適正含量が1:1である樹脂フィルムを使用する場合、ヘルメットの防弾性能が最も優れることが分かった。
【0069】
実施例6乃至9で製造した防弾ヘルメットの標準偏差及び平均速度の測定結果から、積層枚数が増加するほどヘルメットの防弾性能が徐徐に増加することが分かった。
【0070】
実施例10乃至12で製造した防弾ヘルメットの標準偏差及び平均速度の測定結果から、樹脂コーティング層の含量が増加するほどヘルメットの防弾性能が徐徐に増加することが分かった。
【0071】
以上、本発明は、たとえ限定された実施例によって説明されたが、これらは単に例示である。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者なら、本発明の多様な修正及び変形が可能であることを理解するべきである。従って、本発明の真の技術的範囲は、添付の特許請求範囲によって規定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の高強度繊維複合材は防弾ヘルメット、防弾服などのような防弾用製品の素材として有用である。
【国際調査報告】