(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-520503(P2016-520503A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(54)【発明の名称】耐熱衝撃性の合成宝石材料
(51)【国際特許分類】
C03C 10/08 20060101AFI20160617BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20160617BHJP
C04B 35/653 20060101ALI20160617BHJP
C03C 10/02 20060101ALI20160617BHJP
C03C 10/10 20060101ALI20160617BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20160617BHJP
【FI】
C03C10/08
A44C27/00
C04B35/60 A
C03C10/02
C03C10/10
C03C10/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-505432(P2016-505432)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】RU2013000538
(87)【国際公開番号】WO2014185813
(87)【国際公開日】20141120
(31)【優先権主張番号】2013122741
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】RU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】515269785
【氏名又は名称】ディムシス、オルガ サーギーヴナ
(71)【出願人】
【識別番号】515269796
【氏名又は名称】ジリン、アレクサンダー アレクサンドロヴィッチ
(71)【出願人】
【識別番号】515269800
【氏名又は名称】アヴァキャン、カレン コーレノヴィッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ディムシス、オルガ サーギーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ジリン、アレクサンダー アレクサンドロヴィッチ
【テーマコード(参考)】
3B114
4G062
【Fターム(参考)】
3B114AA03
3B114AA06
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4G062AA11
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4G062NN29
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4G062NN34
4G062QQ02
4G062QQ04
4G062QQ09
4G062QQ10
4G062QQ15
4G062QQ16
4G062QQ17
(57)【要約】
本発明は、宝石産業用の材料、特に、天然の宝石用原石の代替を目的とした合成材料に関する。該耐熱性の合成宝石材料は、ナノサイズの酸化物とシリケート結晶相系の、透明、半透明または不透明な複合ナノ結晶材料を含む。該材料は、遷移元素金属、希土類元素金属および貴金属のイオンの含有量が0.001〜4モル%の以下の結晶相:すなわち、スピネル、石英状の相、サファーリン、頑火輝石、ペタライト状相、コーディエライト、珪酸亜鉛鉱、マグネシウムアルミノチタネート、ジルコン、ルチル、ジルコニウムチタネートおよび二酸化ジルコニウム)の内の少なくとも1つを含む。更に、該結晶相の内の1つは、バージライトまたはキータイト構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの石英状の固溶体である。前記組成物は、以下の成分(その量はいずれもモル%)から選択される:SiO
2−45〜72;Al
2O
3−15〜30;MgO−0.1〜23.9;ZnO−0.1〜29;Li
2O−1〜18;PbO−0.1〜7.0;ZrO
2−0.1〜10;TiO
2−0.1〜15;NiO−0.001〜4.0;CoO−0.001〜3.0;CuO−0.001〜4.0;Cr
2O
3−0.001〜1.0;Bi
2O
3−0.001〜3.0;Fe
2O
3−0.001〜3.0;MnO
2−0.001〜3.0;CeO
2−0.001〜3.0;Nd
2O
3−0.001〜3.0;Er
2O
3−0.001〜3.0;Pr
2O
3−0.001〜3.0;Au−0.001〜1.0。本発明によって、低熱膨張率と高耐熱性を有する宝石材料の製造が可能となる。この方法で得られた提案の材料は、均一な色と、主要な天然の有色鉱物の特性と同様の光学特性と、を有しており、製造可能である。この開発された材料の重要な利点は、低熱膨張率、硬度、耐薬品性、および熱衝撃に対する色安定性であり、それによって、銀または金融液に接触時にカットサンプルが割れないだけではなく、色も保持できるので、特に、研削と研磨を加速して行うことができ、また、「宝石を用いたキャスティング」方法が使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性の合成宝石材料は、ナノサイズの酸化物とシリケート結晶相系の、透明、半透明または不透明な複合ナノ結晶材料を含み、
前記材料は、遷移元素金属、希土類元素金属および貴金属のイオンの含有量が0.001〜4モル%の以下の結晶相:すなわち、スピネル、石英状の相、サファーリン、頑火輝石、ペタライト状相、コーディエライト、珪酸亜鉛鉱、ジルコン、マグネシウムアルミノチタネート、ルチル、ジルコニウムチタネートおよび二酸化ジルコニウムの内の少なくとも1つを含み、
更に、前記結晶相の内の1つは、バージライトまたはキータイト構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの石英状の固溶体であり、
前記組成物は、以下の成分(その量はいずれもモル%)から選択される:SiO2−45〜72;Al2O3−15〜30;MgO−0.1〜23.9;ZnO−0.1〜29;Li2O−1〜18;PbO−0.1〜7.0;ZrO2−0.1〜10;TiO2−0.1〜15;NiO−0.001〜4.0;CoO−0.001〜3.0;CuO−0.001〜4.0;Cr2O3−0.001〜1.0;Bi2O3−0.001〜3.0;Fe2O3−0.001〜3.0;MnO2−0.001〜3.0;CeO2−0.001〜3.0;Nd2O3−0.001〜3.0;Er2O3−0.001〜3.0;Pr2O3−0.001〜3.0;Au−0.001〜1.0。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の宝石の代替を目的とした宝石用の合成材料の製造に関する。合成材料は伝統的に、天然の宝石用原石の代替用の宝石に使用されている。合成宝石用原石は、2つのグループに分けられる。第1のグループの合成宝石用原石は、天然の宝石と同じ組成および物性を有する。この中には、チョクラルスキー法で製造されたアメジスト、横水晶、煙水晶、アレキサンドライト、ルビーおよびスピネル、ベルヌーイ法で製造された合成コランダムとスピネル、および水熱エメラルドが含まれる。
【0002】
第2のグループの人工の合成宝石用原石は、天然の宝石用原石に似た外観、特に色を有するが、その組成と物性は全く異なる。また、それらの一部は自然界に存在しない。こうした材料の例としては、希土類元素および遷移元素の酸化物でドープされたイットリウムアルミニウムガーネット、ガリウムガドリニウムガーネットおよびフィアナイトが挙げられる。合成宝石用原石の重大な欠点は、結晶化の初期から終了までの着色強度が徐々に変化することによる着色の不均質性である。この不均質性は、ドーパントの結晶への進入が選択的であるために、融液(または溶液)中の着色ドーパントの濃度が結晶化の過程で通常変化することによるものである。このために、結晶の成長に伴って、その中のドーパント濃度は変化し得る。最も激しい不均質性は、グリーン,ブルーおよびブラウンフィアナイト(phyanite)、ブルーサファイア、グリーンおよびブルーイットリウムアルミニウムガーネットなどにおけるものである。製造上の観点からは,これらの結晶の成長化、カッティングおよび色による分類は、労力を要し非常に困難であることは周知の事実である。その上、還元条件下で製造された有色の合成宝石用原石の多くは、外気中で加熱時に色が変化する(着色剤が酸化されるため)。
【0003】
無色および有色のガラス(クリスタルガラス、ラインストーン)は、宝石類およびやや安価な宝石類に広く使用されている。ガラスは、通常均質に着色されているが、屈折率、輝き、硬度、密度および耐熱性の点から合成宝石より下位にランクされる。
【0004】
多くの合成材料およびガラスの主な欠点は、耐熱衝撃性が低いこと、すなわち、急激な温度降下時に完全性を維持できないことである。それらは、熱衝撃に耐えられずに割れることが多い。この欠点のために、材料を高速で研削したり研磨できない。こうした材料には、便利で安価な宝石製造技術である「石を用いたキャスティング」は適用できない。
【背景技術】
【0005】
2008年10月20日公開のロシア特許第2,336,005号(分類:IPC А44С27/00、В44С5/06、B44F9/04、C04B30/00、C03C6/02、B28D5/00)では、宝石の代替を目的とした宝石の部品製造用の原料の混合物がクレームされている。該混合物は、粉砕シリケートガラスと、ルビー、およびまたはサファイア、およびまたはエメラルド、およびまたはアレキサンドライト、およびまたはノーブルスピネル、およびまたはユークレース、およびまたはトパーズ、およびまたはアクアマリン、およびまたはヘリオドール、およびまたはガーネット、およびまたはアメジスト、およびまたはヒヤシンス、およびまたはコーディエライト、およびまたはトルマリン、およびまたは水晶、およびまたは煙水晶、およびまたは緑玉髄、およびまたは紅玉髄の廃石を含む。該発明では、溶融温度が500〜950℃のシリケートガラスが使用されている。該組成材料は、溶融温度が非常に低いシリケートガラスを使用して、宝石および半宝石の廃石を共にスタックすることによって製造されている。この方法で製造された部品の機械的強度は低い。該部品は、その外観が再生できないために、連続生産では使用できない。シリケートマトリックスと宝石の廃石から成る充填剤との熱膨張率の差のために、得られた複合材料の耐熱衝撃性は低い。とりわけ、便利で安価な宝石製造技術である「石を用いたキャスティング」は、シリケートガラスの溶融温度が低いために、こうした材料には適用できない。
【0006】
2001年1月27日公開のロシア特許第2,162,456号(分類IPC С04В5/14、С01В33/113)には、ノーブルオパール構造を有する合成材料の製造が記載されている。合成材料は、以下のステップで製造される:1.粒径が140〜600nmの非晶質シリカの単分散懸濁液を調製するステップと;2.沈殿物を層毎に沈殿させて100〜150℃×10〜30時間乾燥させ、その後、圧力1〜10Paで沈殿物を乾燥させるステップと;3.乾燥後、水蒸気とテトラエトキシシラン雰囲気中、温度350〜400℃×圧力15〜45MPaで沈殿物をアニールするステップと;4.沈殿物にシリカゾルを充填し、400〜600℃×1〜2時間で熱処理するステップ。
【0007】
この方法は、非常に困難であり手間と時間がかかるため、製品コストが非常に高くなる。また、この方法では、種々の相の組合せ、構造および色を有する材量は得られない。この材料の主な欠点は、それが非常に脆く、脱水中に、特に加熱時に速く亀裂が発生することである。該プロセスは、100℃という低温でかなり激しいことは注目に値する。
【0008】
2003年11月10日公開のロシア特許第2,215,455号(分類IPC А44С17/00、С30В31/02、С30В33/02)では、天然および合成の宝石用原石の着色方法が提示されている。該方法は、無色および淡青色のサファイア、無色のトパーズと石英の着色を目的とするものである。該方法は、CoOとCO
2O
3の混合物(比1:1)とZnO(比:1:(0.25〜3))を含む薄い酸化コバルトパウダー中に、研削した宝石原石を投入するステップから成る。これらの混合物は、酸化条件下、900〜1250℃で熱処理される。
【0009】
この方法で調製された部品は、表面上だけが着色される。薄い有色層がダメージを受けるため、その部品を更に研削また研磨することはできない。この方法ではブルー色だけが得られ、他の色調は得られない。
【0010】
2005年1月20日公開のロシア特許第2,253,706号(分類IPC С30B29/20、С30В28/00、С30В31/02、С30В33/02)には、宝石材料である合成多結晶コランダム:「マライト(Mariite)」とその合成方法が記載されている。この材料は、アルミナ、色ドーパント、およびバインダーとして使用されるパラフィンワックスで構成される。色ドーパントは、モリブデン、ウォルフラム、ネオジム、エルビウム、酸化クロムである。宝石用の部品として使用される材料は、成形機を用い、4気圧下で該混合物を形成後、連続的または周期的に炉内で焼成することによって製造できる。その後、ダイヤモンドパウダーで、この有色の半透明陶器破片を研磨する。この方法では、半透明な材料は確実に製造できるが、透明な材料はこの方法では製造できないため、最終物品の種類が著しく低減される。また、得られる材料の色の範囲は限られており、ブルー、グリーン、イエローおよびブラウンの材料はない。結合剤−パラフィンワックスの特質から、材料は高温では使用できない。
【0011】
熱膨張率が0に近いガラス−セラミックは、リチウムアルミノシリケート系のガラスのβ−石英(β−ユークリプタイト)構造を有する固溶体の結晶化を制御することによって製造されることは周知である。この方法は、有色で透明な耐熱衝撃性キッチン製品、調理用トップ、冶金炉や加熱炉の窓の製造に使用される。Corning社(米国)の研究によって、熱処理でガラス−セラミックに変換でき、イエロー、ブラウン、紫色などの種々の色調に着色できるガラス組成物が開発された。1974年に公開された米国特許第3,788,865号(分類IPC С03С10/14)には、β−ユークリプタイト結晶を含み、以下のドーパント:すなわち、V
2O
5、MnO、Cr
2O
3、Fe
2O
3、CuO、NiOおよびZnSで着色された透明な有色ガラス−セラミックが記載されている。しかしながら、得られる材料の硬度が比較的低いために、宝石材料としては重大な欠点となっている。1996年2月13日公開の米国特許第5,491,115号(分類IPC C03C010/14、C03C010/12)には、赤紫色および紫色の透明な耐熱衝撃性材料の製造が記載されている。しかしながら、これらの材料すべての硬度は比較的低いために、宝石材料としては重大な欠点となっている。
【0012】
2010年8月20日公開のロシア特許第2,426,488号(分類IPC А44С17/00、А44С27/00)では、高硬度、耐薬品性および熱衝撃に対して耐色性を有する、従来技術による材料が提示されている。この材料は、遷移金属、希土類元素金属および貴金属のイオン含有量が0.001〜4.0モル%の、以下のナノサイズ酸化物またはシリケート結晶相:すなわち、スピネル、石英状相、サファーリン、頑火輝石、ペタライト状相、コーディエライト、珪酸亜鉛鉱、ジルコン、ルチル、ジルコニウムチタネートおよび二酸化ジルコニウムの内の少なくとも1つに基づく、宝石用の合成された透明、半透明または不透明なナノ結晶複合材料である。
【0013】
該材料は、そのユニークな特性にもかかわらず、熱膨張率(CTE)が極めて低くなく(すなわち、30×10
−7K
−1未満でなく)、このことは、要求される高い耐熱衝撃性を有していないことを意味する。要求される高い耐熱衝撃性を有していないために、迅速な機械加工、特に、レーザー表面処理やレーザーによる孔加工ができない。高い熱膨張率を有する結晶相を含む該材料は、熱サイクル中に割れる可能性があるために、「宝石を用いたキャスティング」方法は使用できない。更に、融点が1570〜1640℃の範囲であるために、標準のガラス製造装置を用いたガラスの精製および均質化が複雑になり、また、エネルギー消費が多くなる。
【0014】
このように、類似およびプロトタイプの材料には、現代の宝石の要件をすべて満たし得る材料はない。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、プロトタイプを含む既知の材料と比較して、耐熱衝撃性が高くCTEが低い宝石材料を提供することであり、また、融点を1570℃未満に低減させることである。
【0016】
技術的な成果は、遷移金属、希土類元素金属および貴金属のイオンの少なくとも1つの含有量が0.001〜4.0モル%である以下の酸化物またはシリケート結晶相:すなわち、スピネル、サファーリン、頑火輝石、ペタライト状相、およびまたはマグネシウムアルミノチタネート、コーディエライト、珪酸亜鉛鉱、ジルコン、ルチル、ジルコニウムチタネートおよび二酸化ジルコニウム−この中には、プロトタイプとは対照的に、さらなる結晶相、すなわち、バージライト(virgilite)(β−石英)またはキータイト(keatite)構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの固溶体が存在する−の少なくとも1つに基づく、耐熱衝撃性の透明、半透明または不透明な材料の開発によって達成できる。
【0017】
提案された材料の組成は、下記成分(その量はいずれもモル%)から選択される:SiO
2−45〜72;Al
2O
3−15〜30;MgO−0.1〜23.9;ZnO−0.1〜29;Li
2O−1〜18;PbO−0.1〜7.0;ZrO
2−0.1〜10;TiO
2−0.1〜15;NiO−0.001〜4.0;CoO−0.001〜3.0;CuO−0.001〜4.0;Cr
2O
3−0.001〜1.0;Bi
2O
3−0.001〜3.0;Fe
2O
3−0.001〜3.0;MnO
2−0.001〜3.0;CeO
2−0.001〜3.0;Nd
2O
3−0.001〜3.0;Er
2O
3−0.001〜3.0;Pr
2O
3−0.001〜3.0;Au−0.001〜1.0。
【0018】
宝石用の耐熱衝撃性の合成された透明、半透明または不透明なナノ結晶複合材料は、表1に示す組成物から調製される。
【0020】
ここで、TiO
2、ZrO
2、NiO、CoO、CuO、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2、CeO
2、Nd
2O
3、Er
2O
3、Pr
2O
3およびAuは、ベース組成物100%に対して、上記のように添加される。表1に記載の最初の5つの成分の集まりによって、アルミノシリケート網状組織が確実に形成される。PbOがこの網状組織に入ることによって、材料の屈折率が増加する。TiO
2とZrO
2は、成核剤として使用される。NiO、CoO、CuO、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2、CeO
2、Nd
2O
3、Er
2O
3、Pr
2O
3およびAuは、着色剤である。
【0021】
技術的溶液は以下のように調製される。
【0022】
1.表1に記載の出発成分から選択され、液相線より高い200〜300℃の温度の原料の混合物を1520〜−1550℃で融解する。
【0023】
2.このガラス融液を1300〜1410℃に冷却し、620〜650℃で形成・アニールする(この温度は、粘度10
10.5〜10
11Pa(S)に相当する)。
【0024】
3.更に熱処理を行って、初期ガラスを宝石用の合成の透明、半透明または不透明なナノ結晶複合材料に変換し;核生成が生じる温度660〜800℃で1〜24時間加熱し、780〜1200℃×1〜24時間で、以下のナノスケール酸化物と結晶性シリケート相:すなわち、スピネル、サファーリン、頑火輝石、ペタライト状相、コーディエライト、珪酸亜鉛鉱、ジルコン、ルチル、ジルコニウムチタネートおよび二酸化ジルコニウム−この中には、バージライト(β−石英)またはキータイト構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの固溶体が存在する−の少なくとも1つを形成する。
【0025】
4.合成した透明、半透明または不透明なナノ結晶複合材料を室温まで冷却する。
【0026】
遷移金属、希土類元素金属および貴金属のイオン量を0.001〜4モル%として、材料を着色する。
【0027】
提案された材料の組成、熱処理条件および特性の例を表2に示す。この表から、記載した熱処理条件に従って調製された、提案の組成のガラス−セラミックの光学特性は、主要な天然の有色鉱物のものと同様であり、製造に適しており、低熱膨張率、高硬度、耐薬品性、および熱衝撃に対する色安定性を有しており、その融点は、先行技術のものより低いことがわかる。酸化物とカーボネートの形態の成分を混合・粉砕して均質のバッチとし、このバッチを石英セラミックからなるルツボに入れて炉に投入した。石英セラミックからなる撹拌棒で撹拌しながら、1520〜1550℃×約6時間でこのバッチを融解し、次に、スチール製鋳型にキャスティングして透明な棒を形成した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
導入するSiO
2の量が提案された量より少ないと、ガラス融解中に透明な材料が形成されず、また、その量が提案された量より多いと、融液の溶融温度が1600℃を超えて上昇するために、ガラス溶融に標準のガラス製造装置が使用できない。これによって、純粋なガラス融液が得られなくなる。導入するLiO
2の量がクレームされた濃度範囲より少ないかまたは多いと、バージライト(β−石英)またはキータイト構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの固溶体が得られず、得られる材料のCTEが低下する。導入されるAl
2O
3、MgO、ZnOおよびLi
2Oの量がクレームされた濃度範囲より少ないかまたは多いと、透明な初期ガラスが得られない。導入されるPbOの量が提案された量より少ないと、材料の屈折率が上がらない。導入されるPbOの量がクレームされた濃度範囲より多いと、透明な初期ガラスが得られない。導入されるTiO
2とZrO
2の量がクレームされた量より少ないと、二次熱処理後に固形物のモノリシックな材料が得られない。導入されるTiO
2とZrO
2の量がクレームされた量より多いと、キャスティング中にガラス融液が結晶化する。着色剤(NiO、CoO、CuO、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2、CeO
2、Nd
2O
3、Er
2O
3、Pr
2O
3およびAu)の量がクレームされた量より少ないと、材料が着色されない。NiO、CoO、CuO、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2、CeO
2、Nd
2O
3、Er
2O
3、Pr
2O
3およびAuの量がクレームされた量より多いと、キャスティング中にガラス融液が結晶化する。
【0030】
第1ステップにおけるガラスのさらなる熱処理温度が660℃より低いと、チタン含有相とジルコニウム含有相の液相分離と結晶化が行われず、初期ガラスのナノスケール結晶化が確実に行われない。第1ステップにおけるガラスのさらなる熱処理温度が800℃より高いと、サンプルの完全性が損なわれる大きなサイズのシリケート結晶が結晶化される。第1ステップにおける熱処理継続時間が1時間より短いと、初期ガラスが相分離されず、第2ステップでの熱処理後のサンプルの完全性が損なわれる。第1ステップにおける熱処理継続時間が24時間より長いと、望ましくない結晶相が結晶化されるため、所望の着色が得られない。
【0031】
第2ステップにおけるサンプルの熱処理温度が780℃より低いと、所望の相が結晶化されないため、所望の色が得られない。第2ステップにおけるサンプルの熱処理温度が1200℃より高いと、材料が融解する。第2ステップにおける熱処理の継続時間が1時間より短いと、十分に結晶化されない。第2ステップにおける熱処理の継続時間が24時間より長いと、結晶が破壊されて色がなくなる。
【0032】
表2に記載の条件に従って、初期ガラスを熱処理した。X線回折分析を用いて結晶相の特性を求めた。熱膨張率と耐熱衝撃性も同様に測定した。各実験では、加熱速度300℃/hrで初期ガラスを第1のプラトー温度に加熱後、十分に保持して液相分離させ、次に、加熱速度300℃/hrで温度を第2のプラトー温度に上げ、材料を十分な時間保持して、バージライト(β−石英)構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの固溶体の、またはβ−スポデューメン(spodumene)(キータイト)構造を有するリチウム−マグネシウム−亜鉛−アルミノシリケートの固溶体の、およびまたはスピネル、およびまたは石英状の固溶体、およびまたはサファーリン、およびまたは頑火輝石、およびまたはペタライト、およびまたはコーディエライト、およびまたは珪酸亜鉛鉱、およびまたはマグネシウムアルミノチタネート、およびまたはジルコン、およびまたはルチル、およびまたはジルコニウムチタネート、およびまたは二酸化ジルコニウムのナノサイズ結晶を結晶化させた。こうして得られたサンプルを炉内で室温まで冷却した。
【0033】
この方法で得られた提案の材料は、均一な色と、主要な天然の有色鉱物の特性と同様の光学特性と、を有しており、製造可能である。この材料の非常に重要な利点は、その低熱膨張率、硬度、耐薬品性、および熱衝撃に対する色安定性であり、それによって、銀または金融液に接触時にカットサンプルが割れないだけではなく、色も保持できるので、特に、研削と研磨を加速して行うことができ、また、「宝石を用いたキャスティング」方法が使用できる。
【国際調査報告】