(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
前記エピトープが、配列IEEもしくはCPD;またはIEEもしくはCPDC;またはIEEおよびCPD;またはIEEおよびCPDCを含む、請求項1記載の抗体。
前記エピトープが、******IEE***CPD(SEQ ID NO:12)または*IEE***CPDC****(SEQ ID NO:13)を含み、ここで、*は任意のアミノ酸であり得る、請求項2記載の抗体。
前記抗体が、SEQ ID NO:8の配列、またはSEQ ID NO:8の配列と少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である配列を含む重鎖を有する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
前記抗体が、SEQ ID NO:9の配列、またはSEQ ID NO:9の配列と少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である配列を含む軽鎖を有する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
前記薬剤がメルタンシン、エムタンシン、モノメチルアウリスタチンE、リシン、ジフテリア毒素、ドキソルビシン、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素、およびピロロベンゾジアゼピンからなる群より選択される、請求項19記載の抗体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の抗体、フラグメントおよびその使用を説明する前に、本発明は、記載される特定のペプチド、方法、使用および実験条件に限定されるものではなく、そうしたペプチド、方法、使用および条件は変更することができることを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明することを目的としており、限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解すべきである。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料はどれも、本発明の実施または試験において使用することができ、そのため、修飾および変形は本開示の精神および範囲内に包含されることが理解されよう。
【0026】
本発明では、抗体ペプチドは、c-Metのα鎖中のエピトープに特異的に結合するように設計される。ウェスタンブロッティング、免疫沈降、フローサイトメトリー、エピトープマッピング、c-Metに対するアゴニスト/アンタゴニスト活性および結晶構造は、ヒトc-Metのα鎖に対する二価抗Metマウスモノクローナル抗体のパネルを特性評価するために使用された。本発明者らは、本明細書に記載の抗体が以前に記載されたc-Metを標的とする治療用二価抗体とは違って、c-Metアンタゴニストであることを見出した。本発明の抗体はまた、細胞増殖を減少させるのに有効であることが示される。
【0027】
本明細書で使用される用語「c-Met」または「c-Metタンパク質」は、膜貫通β鎖(SEQ ID NO:59)にジスルフィド結合で連結された細胞外α鎖(SEQ ID NO:58)から構成される190kDのチロシンキナーゼ受容体(SEQ ID NO:1)を意味する。c-Metは170kDの単一のポリペプチドとして合成され、これはタンパク質分解的に切断されてα鎖とβ鎖を形成する。成熟α鎖は45kDであって、semaドメインの一部を構成している。semaドメインは、セマフォリンとプレキシンが共有する保存されたドメインである。このドメインは、ホモ二量体化にとって重要な7枚羽根のβプロペラ構造をとっている。c-Metでは、α鎖とβ鎖の両方がsemaドメインを形成しており、該ドメインは受容体の二量体化およびリガンド結合に必要にしてかつ十分である。140kDの成熟β鎖は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインからなる。β鎖の細胞外部分はsemaドメインの残りの部分を構成している。c-Metのβ鎖の細胞質部分は、膜近傍領域を含み、その後にキナーゼドメインとカルボキシル末端尾部が続いている。カルボキシル末端尾部は、それがc-Metに結合するシグナル伝達タンパク質およびアダプタータンパク質のドッキング部位を含むので、c-Metの下流シグナル伝達にとって不可欠である。
【0028】
本明細書で定義される用語「細胞外領域」とは、膜貫通タンパク質に関して、細胞の外部に露出された該タンパク質の領域を示している。c-Metのα鎖は完全に細胞外にあり、すなわち、c-Metのα鎖は膜貫通ドメインを保有しない。
【0029】
c-Metは、HGF(肝細胞増殖因子)と結合し、その結果として、細胞内シグナル伝達経路を開始する受容体である。c-Metタンパク質はまた、変異体を含むことができる。c-Metタンパク質はまた、断片を含むことができ、例えば、膜貫通および/または細胞内ドメインの全部もしくは一部を持たない細胞外ドメイン、ならびに細胞外ドメインの断片を含む。c-Metのクローニング、特性評価、および調製は、以前に記載されている。ヒトc-Metのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示される。本発明の方法において有用なヒトc-Metの可溶性形態には、細胞外ドメイン、またはシグナルペプチドを欠く成熟形態、またはHGFに結合する能力を保持する細胞外ドメインの断片が含まれる。用語「c-Met」はまた、c-Metアミノ酸配列の翻訳後修飾を含む。翻訳後修飾には、N-およびO-結合型グリコシル化が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明は、c-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。抗体の例には、c-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合するペプチドおよび/またはポリペプチド(任意で、翻訳後修飾を含む)が含まれる。抗体の例には、c-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する抗体、および本明細書でさまざまに定義されるそのフラグメントが含まれる。本発明の実施例は、ヒトc-Metに特異的に結合し、かつHGFがc-Metに結合してそれを活性化するのを抑える、抗体を包含する。
【0031】
用語「抗体」(Ab)は、最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性をまだ示しさえすれば抗体フラグメントを包含する。本発明との関連において、「抗体」とは、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子のフラグメント、またはこれらのいずれかの誘導体であって、典型的な生理学的条件下で抗原に特異的に結合する能力を有し、かなりの期間(例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など)、またはその他の関連する機能的に定義された期間(例えば、抗原への抗体の結合に関連した生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)の半減期を有するものを指す。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系の成分(例えば、補体活性化の古典的経路における第1成分、C1q)を含めて、宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。c-Met抗体はまた、二重特異性抗体、ダイアボディ、または同様の分子であってもよい。実際、本発明により提供される二重特異性抗体、ダイアボディなどは、c-Metの一部のほかに、任意の適切な標的に結合することが可能である。上に示したように、本明細書における抗体という用語は、特に明記しない限りまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、抗原結合フラグメントである、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している、抗体のフラグメントを包含する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって果たされることが分かっている。用語「抗体」に包含される抗原結合フラグメントの例としては、以下が挙げられる:(i) Fab'もしくはFabフラグメント、V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる一価フラグメント、または一価抗体;(ii) F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii) Fdフラグメント、V
HおよびC
H1から本質的になる;(iv) Fvフラグメント、抗体の単一アームのV
LおよびV
Hドメインから本質的になる;(v) dAbフラグメント、V
Hドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる;(vi)ラクダ科(camelid)またはナノボディ、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、V
LおよびV
Hは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、合成リンカーにより接合され得る。合成リンカーは、V
LおよびV
H領域が対合して一価の分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする。このような単鎖抗体は、特に明記されない限りまたは明らかに文脈によって示されない限り、抗体という用語に包含される。このようなフラグメントは一般的に抗体の意味に含まれるが、それらは、集合的にかつそれぞれ独立して、異なる生物学的性質および有用性を示す、本発明のユニークな特徴である。本発明におけるこれらのフラグメントおよび他の有用な抗体フラグメント、ならびにこのようなフラグメントの二重特異性フォーマットは、本明細書中でさらに説明される。また、抗体という用語は、特に指定しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント(抗原結合フラグメント)をも包含する、ことが理解されるべきである。作製された抗体は、どのアイソタイプを有してもよい。
【0032】
用語「一価抗体」は、本発明との関連においては、抗体分子が抗原の単一の分子に結合することができ、したがって抗原を架橋結合することができない、ことを意味する。
【0033】
用語「モノクローナル抗体」は、均質な(本質的に同一の)抗体集団を有する抗体組成物を指す。この用語は、例えばヒト、ネズミ、マウス、もしくはイヌなどの種または抗体の供給源に関して限定されず、それが作製される方法によっても限定されない。例えば、この用語は、ハイブリッド、改変型、キメラ型、またはヒト化型など、どのようにサブカテゴリー化されようとも、モノクローナル抗体をもたらすハイブリドーマ以外の方法によって作製されたモノクローナル抗体を包含する。さらに、この用語は、モノクローナル抗体の作製の間に自然に生じる変異体を包含する。この用語は全免疫グロブリンを含む。本明細書で使用する用語「ヒト化抗体」は、一般的に、非ヒト(例えば、マウス)抗体の可変領域またはその相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体に由来する残りの免疫グロブリン部分とを含む遺伝子操作された抗体、すなわちキメラ抗体、を指す。キメラ抗体およびさらなる遺伝子操作モノクローナル抗体の作製方法としては、当技術分野において記載された方法が含まれる。このようなヒト化抗体は、公知の技術によって作製することができ、該抗体をヒトに投与したとき免疫原性の低減という利点を提供する。
【0034】
かくして、本明細書で使用する用語「c-Met抗体」または「抗c-Met抗体」は、他のタンパク質に結合するよりも高い親和性でc-Metタンパク質に結合することが可能な、上で定義された抗体を指す。「c-Met抗体」は、上で定義されかつ以下に本明細書で定義されるc-Metタンパク質またはその断片に対する抗体である。
【0035】
本明細書で定義される用語「エピトープ」は、抗体が結合することができる抗原上の部位を指し、該部位の分子配列が特定の結合抗体を決定する。それはまた、抗原決定基とも呼ばれる。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基集団(surface groupings)からなり、通常は特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるが後者では失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合ペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基(つまりは、該アミノ酸残基は特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)を含むことができる。
【0036】
本発明の抗体は、c-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する。本明細書で使用する表現「特異的に結合する」とは、抗体(本発明の抗体を含む)とタンパク質(例えば、標的受容体)との間の結合反応を指し、この結合反応は、タンパク質と他の化学種の不均質な集団における該タンパク質の存在を決定づける。さらに具体的には、本明細書で使用する語句「特異的に結合する」は、抗体が他のタンパク質と比べてc-Metに優先的に結合することを意味する。ある態様では、「特異的に結合する」は、c-Met抗体が他のタンパク質に対してよりもc-Metに対して高い親和性を有することを意味する。例えば、平衡解離定数が<10
-7〜10
-11M、または<10
-8〜<10
-10M、または<10
-9〜<10
-10Mである。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下において、特定のタンパク質に結合した抗体は、サンプル中に存在する他のタンパク質に有意な量で結合することはない。そのような条件下でタンパク質に特異的に結合するには、その特定のタンパク質に対する特異性について選択された抗体を必要としうる。特定のタンパク質と選択的に結合する抗体を選択するために、さまざまなイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と選択的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用される。
【0037】
用語「免疫グロブリン」は、2対のポリペプチド鎖からなる構造的に関連した糖タンパク質のクラスを指し、1対の低分子量軽(L)鎖と1対の重(H)鎖、4本すべてがジスルフィド結合によって相互連結されている。免疫グロブリンの構造は十分に特徴づけられている。簡単に説明すると、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではV
HまたはVHと略す)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、C
H1、C
H2、およびC
H3から構成される。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではV
LまたはVLと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメイン、C
Lから構成される。V
HおよびV
L領域は、超可変性の領域(または構造的に規定されたループの配列および/または形態が超可変であり得る超可変領域)にさらに分割することができ、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が組み込まれている。各V
HおよびV
Lは、典型的には、3つのCDRと4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配列される:FR1, CDR1, FR2, CDR2, FR3, CDR3, FR4。特に明記しない限りまたは文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるCDR配列は、IMGT(国際免疫遺伝情報システム)の規則に従って同定される。
【0038】
しかし、抗体配列中のアミノ酸残基の番号付けはまた、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に記載された方法により行うことができる(本明細書における「Kabatによるような可変ドメイン残基の番号付け」、「Kabat位置」または「Kabatに従う」などの語句は、この番号付け方式を指す)。特に、定常領域のアミノ酸の番号付けでは、Kabatら(上掲)に従うEUインデックス番号付け方式が採用され得る。Kabatによる残基の番号付けは、Kabat番号付けされた「標準」配列と、所定の抗体の配列との、相同領域でのアライメントによって、該抗体について決定することができる。
【0039】
本明細書で使用する「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)を指す。天然に存在するインタクトの抗体、つまり免疫グロブリンの構造は、4つのポリペプチド、すなわち2つの完全長の軽鎖と2つの完全長の重鎖を含み、各軽鎖がジスルフィド結合によって重鎖に連結されている。各重鎖は2つの領域、定常領域および可変領域を有する。重鎖定常領域には5つのアイソタイプ、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、またはイプシロン(ε)があり、これらはさらに、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、またはアルファ2(α2)としてサブタイプによって分類することができる。同様に、各軽鎖は2つの領域、定常領域および可変領域を有する。軽鎖定常領域は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかのタイプである。可変領域は、抗体間で配列が異なり、その特定の抗原への所与の抗体の結合および特異性に用いられる。
【0040】
本明細書に記載のc-Met抗体のさまざまな例に言及するとき、それはまた、c-Met抗体のフラグメントを包含することが理解される。c-Met抗体フラグメントは、c-Metに特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載の抗体フラグメントまたはドメインのいずれかを含む。
【0041】
抗体が治療用途のために使用される態様では、c-Met抗体の1つの特徴は、それがHGFの結合およびc-Metの、またはc-Metにより媒介される、1つ以上の生物学的活性を阻害することができる、ことである。このような抗体は、HGFが結合してc-Metのシグナル伝達および/または生物学的活性を引き起こすのを抑えるその能力のために、中和抗体と見なされる。この場合に、抗体は、c-Metに特異的に結合して、10%と100%の間のどこからでも、例えば少なくとも約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上(例えば、本明細書に記載のインビトロ競合結合アッセイで結合を測定することによる)、c-MetへのHGFの結合を阻害する。例えば、c-Met抗体は、当技術分野で公知の任意の適切なアッセイを用いて試験することによって、中和能力について試験することができる。c-Metシグナル伝達および/または生物学的活性の阻害について試験するためのc-Metの追加の生物学的活性(例えば、アッセイの読み出し)の、例示目的のみの、例としては、細胞散乱アッセイにおける細胞散乱のインビトロおよび/またはインビボ測定が挙げられる。
【0042】
一般的な構造として、本発明の抗体は、(a)足場、および(b)1つまたは複数のCDRを含む。本明細書で使用する「相補性決定領域」または「CDR」は、抗原結合のための主要な表面接触点を構成する結合タンパク質の領域を指す。本発明の実施態様は、抗体の足場構造体に埋め込まれた1つ以上のCDRを含む。抗体の足場構造体は、抗体のフレームワーク、またはその断片もしくは変異体であってもよいし、完全に合成されたものでもよい。本発明の抗原結合タンパク質の種々の足場構造体の例は、以下でさらに説明される。
【0043】
本発明の抗体には、足場領域と1つ以上のCDRが含まれる。本発明の抗原結合タンパク質は、CDRを1〜6つ(典型的には天然に存在する抗体のように)含むことができ、例えば、1つの重鎖CDR1(「H-CDR1」)、および/または1つの重鎖CDR2(「H-CDR2」)、および/または1つの重鎖CDR3(「H-CDR3」)、および/または1つの軽鎖CDR1(「L-CDR1」)、および/または1つの軽鎖CDR2(「L-CDR2」)、および/または1つの軽鎖CDR3(「L-CDR3」)を有する。
【0044】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物材料に関連して本明細書を通して使用される用語「天然に存在する」とは、自然界に見出される材料を指す。天然に存在する抗体において、H-CDR1は典型的には約5〜約7個のアミノ酸を含み、H-CDR2は典型的には約16〜約19個のアミノ酸を含み、そしてH-CDR3は典型的には約3〜約25個のアミノ酸を含む。L-CDR1は典型的には約10〜約17個のアミノ酸を含み、L-CDR2は典型的には約7個のアミノ酸を含み、そしてL-CDR3は典型的には約7〜約10個のアミノ酸を含む。本発明の種々の抗体の特定のCDRは、表1および配列表に提供される。
【0046】
本明細書で使用する「拮抗する」または「拮抗」とは、標的受容体のような対象となる関連タンパク質の生物学的活性を遮断する、妨げる、阻止する、減じる、抑制する、軽減する、または何らかの方法で阻害することを指す。用語「アンタゴニスト」は、対象となるタンパク質の生物学的活性に拮抗する化合物を指す。
【0047】
本明細書で使用する「内在化」とは、c-Met抗体との関連で使用する場合、該抗体が、例えばエンドサイトーシスを介して、細胞表面からおよび/または周囲の媒体からc-Met発現細胞内に内在化される任意の機構を含む。抗体の内在化は、内在化された抗体の量を測定する直接アッセイ、または内在化抗体-毒素コンジュゲートの効果を測定する間接アッセイを用いて、評価することができる。
【0048】
本発明はまた、実例の抗体のV
L領域、V
H領域、または1つ以上のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。c-Met抗体との関連で使用されるV
L、V
H、またはCDRの機能的変異体は、依然として、該抗体が親抗体の親和性/結合力および/または特異性/選択性の少なくともかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)を保持することを可能にし、場合によっては、そのようなc-Met抗体は、親抗体よりも高い親和性、選択性および/または特異性を伴っている可能性がある。
【0049】
そのような機能的変異体は、典型的には、親抗体に対してかなりの配列同一性を保持している。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、これらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、当技術分野で公知のアルゴリズムを用いて決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、当業者に知られているアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0050】
例示的な変異体には、対応するコンセンサス配列中に「*」で示される、1つ以上の「変異している」アミノ酸位置で親と異なるものが含まれる。
【0051】
代替的にまたは追加的に、エピトープ変異体の配列は、主に保存的置換によって、コンセンサスエピトープ配列の配列と相違し得る;例えば、変異体における置換の少なくとも10、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2または1つは、保存的アミノ酸残基置換である。
【0052】
本発明との関連において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸のクラス内での置換によって定義され得る。
【0053】
保存的置換のためのアミノ酸残基のクラス
【0054】
用語「作動する」および「アゴニスト」は、本明細書で使用する場合、直接的または間接的に、サイトカインの生物学的活性またはサイトカインの受容体活性化を実質的に誘導する、促進する、または増強することが可能な分子を指すか、または該分子を表す。
【0055】
一態様において、本明細書に開示される抗体は、配列IEEもしくはCPD;またはIEEもしくはCPDC;またはIEEおよびCPD;またはIEEおよびCPDCを含む、またはからなる、エピトープに特異的に結合することができる。さらなる変形例では、該エピトープは、アミノ酸配列******IEE***CPD(SEQ ID NO:12)または*IEE***CPDC****(SEQ ID NO:13)を含む、またはからなる。上で示したように、「*」は任意のアミノ酸を表す。
【0056】
さらなる変形例では、本発明の抗体が特異的に結合するc-Metのα鎖に含まれるエピトープは、C***P*IEEP**CPD(SEQ ID NO:14)である上記の配列******IEE***CPDを含む、またはからなる。さらなる変形例では、配列C***P*IEEP**CPDは、
である。
【0057】
別の態様において、該エピトープのアミノ酸配列は、*IEEP**CPDC****(SEQ ID NO:15)である*IEE***CPDC****を含む、またはからなる。さらなる変形例では、該エピトープのアミノ酸配列は、
である。
【0058】
いくつかの変形例では、該エピトープが得られるc-Metタンパク質は、種に関して、ヒト、ネズミ、ウマ、ウシ、ネコ、ヒツジもしくはイヌ、または抗体の供給源を含むが、これらに限定されず、また、抗体が作製される方法によっても限定されない。ある変形例では、c-Metタンパク質はヒトである。ある変形例では、ヒトc-Metのα鎖は、原核生物により、例えばバキュロウイルス発現ベクターを用いて、発現される。例えば、バキュロウイルス発現系は、最適化した発現ベクターに以前にクローニングされたヒトc-Metのα鎖を発現させるために使用することができる。この発現ベクターは、昆虫細胞におけるヒトc-Metのα鎖の発現および精製のために最適化され得る。タンパク質またはポリペプチドのクローニング、発現および精製は、十分に記述されており、当技術分野で公知である。例は、例示することのみを目的として、以下の実施例2に記載される。
【0059】
本明細書に開示される抗体は、種に関して、例えば、ヒト、ネズミ、ウマ、ウシ、ネコ、ヒツジもしくはイヌ、または抗体の供給源に限定されず、また、それが作製される方法によっても限定されない。例えば、抗体は、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例:二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性をまだ示しさえすれば抗体フラグメントを包含する。さらなる態様では、本明細書に開示されるc-Met抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である。ある変形例では、本明細書に開示される抗体は、マウス抗体である。さらなる変形例では、c-Met抗体は、マウスモノクローナル抗体である。
【0060】
いくつかの態様において、抗体は、限定するものではないが、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、およびIgG4抗体を含むことができる。ある態様では、抗体はキメラ抗体である。
【0061】
特定の態様において、CDRは、H-CDR1(すなわち、重鎖のCDR1など)、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1(すなわち、軽鎖のCDR1など)、L-CDR2、およびL-CDR3、ならびにその断片、誘導体、ムテイン、および変異体から、多くて1、2、3、4、5、または6つのアミノ酸付加、欠失または置換を含む。
【0062】
本発明の例には、重鎖
の少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または全てを含む重鎖可変領域を含む抗体が含まれる。
【0063】
本発明の例には、軽鎖
の少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または全てを含む軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。
【0064】
本発明の例には、抗体mAb 2の重鎖CDR1 (SEQ ID NO:2)、CDR2 (SEQ ID NO:3)、CDR3 (SEQ ID NO:4)および軽鎖CDR1 (SEQ ID NO:5)、CDR2 (SEQ ID NO:6)、CDR3 (SEQ ID NO:7)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または全てのアミノ酸配列を含む、本明細書に記載の抗体が含まれる。
【0065】
他の態様において、前記抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、参照重鎖および/または軽鎖可変ドメインに対して特定の同一性パーセントを有することによって定義される。例えば、該抗体は、A) SEQ ID NO:8の重鎖アミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である重鎖可変ドメインアミノ酸;およびB) SEQ ID NO:9からなる群より選択される軽鎖アミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である軽鎖可変ドメインアミノ酸を含む。
【0066】
本発明の例には、多くて1、2、3、4、5、または6つのアミノ酸付加、欠失または置換を有するSEQ ID NO:8の重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:9の軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。さらに他の態様では、該抗体は、SEQ ID NO:8の重鎖またはSEQ ID NO:8と少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である配列を有する。さらなる態様では、該抗体は、SEQ ID NO:9の軽鎖またはSEQ ID NO:9と少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である配列を有する。
【0067】
本発明の変形例には、SEQ ID NO:9の軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。本発明の例には、多くて1、2、3、4、5、または6つのアミノ酸付加、欠失または置換を有するSEQ ID NO:9の軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。ある態様では、本明細書に開示される抗体は、SEQ ID NO:8の軽鎖可変領域または参照軽鎖可変ドメインに対して特定の同一性パーセントを有することによって定義される配列を含む。例えば、該抗体は、SEQ ID NO:8であるか、またはSEQ ID NO:8の重鎖アミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である、軽鎖可変ドメインアミノ酸を含む。さらに他の態様では、該抗体は、SEQ ID NO:8の重鎖またはSEQ ID NO:8と少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である配列を有する。
【0068】
いくつかの態様において、前記抗体は、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:
A. a. Ab2
Lの軽鎖可変ドメイン配列(SEQ ID NO:9)と少なくとも80%同一である軽鎖可変ドメイン配列;
b. Ab2
Hの重鎖可変ドメイン配列(SEQ ID NO:8)と少なくとも80%同一である重鎖可変ドメイン配列;または
c. (a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン;ならびに
B. 各CDRにおいて多くて合計3つのアミノ酸付加、置換、および/または欠失によって以下の配列と異なる軽鎖CDR1、CDR2、CDR3および重鎖CDR1、CDR2、CDR3:
a. 抗体Ab2の軽鎖CDR1 (SEQ ID NO:5)、CDR2 (SEQ ID NO:6)、CDR3 (SEQ ID NO:7)および重鎖CDR1 (SEQ ID NO:2)、CDR2 (SEQ ID NO:3)、CDR3 (SEQ ID NO:4);ここでは、前記抗体はc-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する。
【0069】
別の態様において、上で定義した抗体は、Ab2
L/Ab2
H(SEQ ID NO:9/SEQ ID NO:8)の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを有するアミノ酸配列を含むことができる;ここでは、前記抗体はc-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する。
【0070】
さらに別の態様において、上に記載した抗体は、抗体Ab2の軽鎖CDR1 (SEQ ID NO:5)、CDR2 (SEQ ID NO:6)、CDR3 (SEQ ID NO:7)および重鎖CDR1 (SEQ ID NO:2)、CDR2 (SEQ ID NO:3)、CDR3 (SEQ ID NO:4)を有するアミノ酸配列を含む;ここでは、前記抗体はc-Metのα鎖に含まれるエピトープに特異的に結合する。
【0071】
いくつかの態様では、本発明の抗体は薬剤に連結され得る。本明細書に開示された抗体またはそのフラグメントは、薬剤にコンジュゲート化したり、融合したり、連結したりすることができる。抗体へのコンジュゲーションは、当業者に公知の方法によって達成され得る。コンジュゲーションはリンカーおよび/またはスペーサーを含んでもよい。例えば、トラスツズマブ-DM1 (T-DM1;トラスツズマブ エムタンシン)は、非還元性チオエーテルリンカー、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC、コンジュゲーション後はMCCと呼ばれる)で結合された、ヒト化抗体トラスツズマブとメイタンシノイド誘導体DM1から構成される。メイタンシノイドは、天然産物であって、ビンカアルカロイドのように微小管重合を妨げる強力な抗有糸分裂剤である。
【0072】
リンカーは、意図された細胞内コンパートメントへの適切な薬物送達のための抗体に架橋される。抗体-薬物コンジュゲートは、抗体上のリシンおよびシステインなどの溶媒接近可能な反応性アミノ酸と薬物または化学的架橋試薬との反応を介して構築される。いくつかの例では、リンカーは、ペプチド、ヒドラゾン、またはジスルフィドリンカーのように切断可能であっても、チオエーテルのように切断不能であってもよい。例えば、アジド-アルキン「クリック」バイオコンジュゲーション化学は、抗体にリンカーを取り付けるために使用され得る。いくつかの例では、溶解性を向上させるために、ポリエチレングリコール(PEG)またはPEG様誘導体をリンカーに付加することができる。リンカーは本質的に、その抗体対応物よりも短い半減期を有し、そのため通常は修飾される必要がある。
【0073】
切断可能なリンカーは、より還元的な環境のために細胞質ゾル内で(例えば、ジスルフィドベースのリンカー)、全身の血液循環と比べて低いpHの結果としてリソソームの細胞内コンパートメント内で(例えば、鎖間ジスルフィド結合の還元を介して生成された抗体チオール基に連結されるヒドラゾンリンカー)、または酵素的加水分解により、例えばペプチドリンカーの場合には、リソソームプロテアーゼにより、切断され得る。
【0074】
一態様において、本発明の抗体に連結される薬剤は、細胞毒性剤である。細胞毒性剤は切断可能であっても、切断不能であってもよい。さらなる態様では、本明細書に開示された抗体またはそのフラグメントは、以下を含むがこれらに限定されない薬剤に連結される:メルタンシン(メイタンシノイドDM1;N2'-デアセチル-N2'-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン)、メイタンシン誘導体4 (DM4)、エムタンシン(-4-3-メルカプト-2,5-ジオキソ-1-ピロリジニルメチル)-シクロヘキサンカルボン酸リンカーを介して抗体に連結されたメルタンシン)、モノメチルオーリスタチンE (MMAE)、モノメチルオーリスタチンF (MMAF)、リシン、ジフテリア毒素、ドキソルビシン、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素、カリケアマイシンクラスの抗腫瘍薬、およびピロロベンゾジアゼピン。
【0075】
別の態様では、重鎖がSEQ ID NO:10に示される配列を含む、本明細書に開示された抗体をコードする核酸が提供される。さらなる態様では、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4を含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードする核酸が提供される。
【0076】
別の態様では、軽鎖がSEQ ID NO:11に示される配列を含む、本明細書に開示された抗体をコードする核酸が提供される。さらなる態様では、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、およびSEQ ID NO:7を含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をコードする核酸が提供される。該核酸は、SEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:11のヌクレオチド配列を持つことができる。
【0077】
本明細書で使用する用語「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態で存在するデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、RNAおよびDNA(ゲノムDNAとcDNA)配列、ならびに特に断らない限り天然のポリヌクレオチドの類似体を包含する。
【0078】
核酸はまた、c-Metタンパク質のα鎖に特異的に結合する抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列ならびにそれに相補的なヌクレオチド配列を含む。相補的配列は、当技術分野で知られているストリンジェントな条件下でc-Metタンパク質の細胞外領域に特異的に結合する抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる、完全に相補的な配列と実質的に相補的な配列を含む。適度にストリンジェントな条件を達成する一つの方法は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA (pH8.0)を含有する予備洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液、および約55℃のハイブリダイゼーション温度(または約42℃のハイブリダイゼーション温度と共に、約50%ホルムアミドを含有するものなどの、他の同様のハイブリダイゼーション溶液)、ならびに0.5×SSC、0.1%SDS中での約60℃の洗浄条件の使用を含む。一般的に、高度にストリンジェントな条件は、上記のようなハイブリダイゼーション条件として定義されるが、約68℃、0.2×SSC、0.1%SDSでの洗浄を含む。SSPE (1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH
2PO
4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中でSSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりに使用することができる;洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後、15分間行われる。洗浄温度および洗浄塩濃度は、当業者に知られているように、ハイブリダイゼーション反応および二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって所望の程度のストリンジェンシーを達成するために、必要に応じて調整することができることを理解すべきである。
【0079】
さらに、重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に変異を起こさせることができる。変異には、ヌクレオチドの付加、欠失または置換、およびアミノ酸の非保存的または保存的置換が含まれる。c-Metタンパク質のα鎖に特異的に結合する抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、上記のヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を含むものと理解される。これらの実質的に同一のヌクレオチド配列は、当技術分野で公知のアルゴリズムを用いて、最大の配列アライメント後に元のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の相同性、少なくとも90%の相同性、または少なくとも95%の相同性を保持することができる。
【0080】
本発明の態様によれば、組換えベクターが提供される。一態様では、組換えベクターは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4を含むがこれらに限定されない少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド;またはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、およびSEQ ID NO:7を含むがこれらに限定されない少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0081】
一態様では、組換えベクターは、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードする核酸、またはSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする核酸を含む。ある態様では、組換えベクターは、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードする核酸と、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする核酸を含む。
【0082】
組換えベクターのいくつかの態様では、重鎖可変領域をコードする核酸は、SEQ ID NO:10のヌクレオチド配列を有し、かつ軽鎖可変領域をコードする核酸は、SEQ ID NO:11のヌクレオチド配列を有するものであり得る。
【0083】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、標的遺伝子を宿主細胞内に運び、そこで発現させる手段、典型的には核酸、を指す。例えば、ベクターには、プラスミドベクター、コスミドベクター、またはウイルスベクター、例えばバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが含まれる。組換えベクターは、当技術分野で知られているプラスミド、ファージ、またはウイルスを操作することによって作製することができる。
【0084】
組換えベクターでは、重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸は、プロモーターに機能的に連結され得る。用語「機能的に連結」とは、転写調節ヌクレオチド配列(例えば、プロモーター配列)と他のヌクレオチド配列の間の機能的連結を意味する。したがって、転写調節ヌクレオチド配列は、他のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を調節することができる。
【0085】
組換えベクターは、クローニングまたは発現のために構築され得る。例えば、組換え発現ベクターは、植物、動物または微生物において外来タンパク質を発現させるための当技術分野で公知のベクターとすることができる。組換えベクターは、当技術分野で公知のさまざまな方法を用いて構築され得る。
【0086】
組換えベクターは、原核または真核宿主細胞で使用するために構築され得る。原核細胞を宿主細胞として用いる場合、発現ベクターは、一般的に、転写を開始することが可能な強力なプロモーター、翻訳を開始するためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳終結配列を含む。真核細胞を宿主細胞として用いる場合、該ベクターは複製起点を含むことができる。真核宿主細胞のための発現ベクター中のプロモーターは、哺乳動物細胞のゲノムまたは哺乳動物ウイルスに由来するものであり得る。真核宿主細胞のための発現ベクター中の転写終結配列は、一般的には、ポリアデニル化配列である。
【0087】
抗体の重鎖および軽鎖可変領域を発現することが可能なベクター系は、単一のベクターからの重鎖および軽鎖可変領域の同時発現、または別々のベクターからの重鎖および軽鎖可変領域の独立した発現を引き起こすことができる。後者の系では、2つのベクターは、同時形質転換または標的化形質転換のいずれかによって宿主細胞に導入され得る。
【0088】
本発明の態様によれば、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドとSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞が提供される。
【0089】
宿主細胞は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドとSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換することができる。
【0090】
宿主細胞は、組換えベクターを安定して連続的にクローニングまたは発現することが可能な、当技術分野で知られたどのような宿主細胞であってもよい。核酸またはそれを含む組換えベクターは、当技術分野で公知の方法を用いて宿主細胞に導入することができる。
【0091】
一態様によれば、本明細書に記載されるc-Metタンパク質のα鎖に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物はさらに、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、または担体を含んでもよい。他の態様では、該組成物はさらに、抗腫瘍剤、免疫刺激剤、免疫調節剤、コルチコステロイドまたはこれらの組み合わせを含有する。一態様では、抗腫瘍剤は、細胞毒性剤、腫瘍の血管新生に作用する薬剤、またはこれらの組み合わせである。別の態様では、免疫調節剤は、サイトカイン、ケモカイン、アジュバント、またはこれらの組み合わせである。さらに別の態様では、免疫刺激剤は、インターロイキン2、αインターフェロン、γインターフェロン、腫瘍壊死因子α、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせである。さらなる態様では、コルチコステロイドは、プレドニゾンおよびドセタキセルである。
【0092】
一態様では、本発明の抗体は、癌を治療/予防する方法において使用することができる。この方法は、本明細書に記載される抗体、そのフラグメント、核酸または薬学的組成物の薬学的有効量を投与することを含む。本発明の方法は、いくつかの態様では、薬学的有効量の抗体を1種以上のさらなる治療用化合物と共に投与することを含み、ここで、投与は同時、逐次または別個である。
【0093】
さらなる態様において、本発明の抗体によって治療または予防される癌としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:乳癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含むがこれらに限定されない肺癌、肝細胞癌および肝細胞腺腫を含むがこれらに限定されない肝臓癌、胃癌、扁平上皮癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、皮膚癌、皮膚もしくは眼球の黒色腫、直腸癌、食道癌、小腸腫瘍、内分泌腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性もしくは急性白血病、癌、リンパ球性リンパ腫、消化器癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌もしくは子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、またはさまざまなタイプの頭頸部癌。
【0094】
さらなる態様では、本明細書に開示された抗体の有効量を投与することを含む、癌を治療または予防するための方法が提供され、ここで、癌は、限定するものではないが、乳癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、脳癌、血液癌、結腸癌、膵臓癌および前立腺癌を含む。さらなる態様では、癌を治療および/または予防するための医薬の製造における、本明細書に開示された抗体が提供される。いくつかの態様では、治療または予防される癌は、どのような形態の癌であってもよい。例えば、良性腫瘍および転移性の悪性腫瘍を含めて、いかなる形態の腫瘍または癌も本発明において使用することができる。癌の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:膠芽腫および神経芽細胞腫などの脳癌、リンパ腫および白血病などの血液癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、黒色腫、頭頸部癌、食道癌および頸癌。腫瘍の他の例には、血液学的悪性疾患および固形腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。固形腫瘍には、例えば、結合支持組織から生じる肉腫、身体の腺細胞および上皮細胞から生じる癌腫、またはリンパ節、脾臓および胸腺などのリンパ組織の癌であるリンパ腫が含まれる。
【0095】
一態様では、c-Metを検出するための本明細書に開示された抗体を投与することによってc-Metの異常な発現を検出することを含む、癌の診断方法が提供される。本明細書で使用する用語「異常な発現」とは、癌などの疾患を有しないかそのような疾患を有するリスクがない健康な個体または健康な組織において見出されるc-Metタンパク質、c-Met cDNAおよび/またはRNAの発現と有意に異なるc-Metタンパク質、c-Met cDNAおよび/またはRNAの発現を意味する。さらなる態様では、異常なc-Met発現を有する細胞を検出するための本明細書に開示された抗体の使用が提供される。さらに別の態様では、癌の予後マーカーとしての本明細書に開示された抗体の使用が提供される。
【0096】
いくつかの態様では、本明細書に記載される薬学的組成物は、治療用化合物(または薬剤または分子または組成物)をさらに含むことができる。本明細書で定義する「治療用」化合物とは、弱体化した状態および/もしくは不健康な状態の発生を防ぐために予防的に作用することが可能であり、かつ/または疾患状態および/もしくは疾患状態の症状、ならびに弱体化した状態および/もしくは不健康な状態を軽減するか取り除くために、十分量のその複合体または薬学的組成物または医薬を対象者に提供することが可能である化合物(または薬剤または分子または組成物)のことである。一例では、治療用化合物は、アポトーシス促進化合物、化学療法化合物、または患者の癌を軽減するか取り除くことができる化合物を含むが、これらに限定されない。アポトーシス促進化合物の例としては、限定するものではないが、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、BCL (B細胞リンパ腫)ファミリーBH3 (Bcl-2相同ドメイン3)模倣阻害剤、および毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)阻害剤が挙げられる。
【0097】
本明細書で使用する用語「治療する」または「治療」は、弱体化した状態および/もしくは不健康な状態の発生を防ぐために予防的に作用するのに十分な、薬学的有効量の本発明のペプチドまたはその薬学的組成物もしくは医薬を提供し、かつ/または疾患状態および/もしくは疾患状態の症状、ならびに弱体化した状態および/もしくは不健康な状態を軽減するか取り除くために、十分量のその複合体または薬学的組成物または医薬を対象者に提供することを指すものとする。
【0098】
いくつかの態様では、タンパク質精製のための、またはタンパク質-タンパク質相互作用を中和する、破壊する、改変する、拮抗する、もしくは阻害するための、例えばc-Met-HGF相互作用を中和、破壊、改変、拮抗、もしくは阻害し、それによってc-Met-HGF軸に影響を与えるための、本明細書に記載された抗体の使用が提供される。
【0099】
具体的な実施態様
抗α鎖c-Met抗体の開発および初期特性評価
ヒトc-Metのα鎖を原核生物において発現させて、精製した。精製したα鎖を使用してBALB/cマウスを免疫した。抗α鎖c-Met抗体を産生するハイブリドーマ細胞を得るために、免疫したマウスの脾臓細胞をSP2/0-Ag14細胞と融合させた。ハイブリドーマ細胞を単一細胞クローニングして、モノクローナルハイブリドーマクローンからの細胞上清を、主にウェスタンブロッティングと細胞染色によって、抗α鎖c-Met反応性についてスクリーニングした。一次および二次抗体スクリーニング(
図1D)後、アイソタイプ特徴付けおよびエピトープマッピングのために21種の抗体のパネルを選択した。抗体のアイソタイプ判定は、モノクローナルハイブリドーマ上清中に市販のアイソタイピングストリップを浸すことによって行った。全21種のモノクローナル抗体は、同じIgGアイソタイプ(ただし、同じサブクラスではない)およびカッパ軽鎖を共有する(表2)。
【0100】
抗体によって結合されたc-Metの領域を同定することは、c-MetがそのリガンドHGFに結合するのを該抗体がブロックできる可能性があるかどうかを判定する上で重要である。ELISAベースのアッセイ(Pepscan)を用いて、合成したペプチドをストレプトアビジン被覆プレートに添加し、それぞれのエピトープへの抗体の結合を比色分析によって測定した。これらのペプチドは、c-Metのα鎖全体にまたがる連続重複ペプチドであった。全部で10の異なるα鎖の抗体結合領域が、試験した21のモノクローナル細胞上清から同定され、高度に免疫原性である主領域が存在しないことを示した。c-Metα鎖上の抗体結合領域の簡略図は、
図1Aに示される。抗体結合領域はまた、c-Metの結晶構造(PDBアクセッション番号1SHY)上でもマッピングされた(
図1BおよびC)。抗体の初期特性評価の結果は、表2にまとめてある。
【0101】
(表1)抗α鎖c-Metモノクローナル抗体のエピトープマッピングとアイソタイピング
【0102】
精製した抗α鎖c-Metモノクローナル抗体のさらなる特性評価
21種のモノクローナル抗体のパネルから、腹水作製および精製のために11種の抗体を選択した。精製した抗体は、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、フローサイトメトリー、および細胞散乱によるアゴニスト/アンタゴニスト活性によってさらに特性評価された。
【0103】
抗α鎖c-Metモノクローナル抗体は、プロテインAビーズを用いて、マウスの腹水から精製した。精製抗体をSDS-PAGEゲル上で分離し、クマシーブルー染料で染色した(データは示さず)。抗体の重鎖(約51kD)と軽鎖(約25kD)に対応する予想された2つのバンド以外に、他のタンパク質バンドはクマシー染色ゲルに観察されなかったが、このことは、マウス腹水からのモノクローナル抗体の精製に成功したことを示唆する。
【0104】
腹水作製および精製後にモノクローナル抗体がその抗α鎖活性を保持していたことを確実にするために、精製したモノクローナル抗体をウェスタンブロッティングによって特性評価した(
図2)。精製したc-Metα鎖、NIH3T3細胞のトランスフェクション後に発現されたc-Met、およびU-87MG細胞中の内因性c-Metを検出するために、1μg/mLの精製モノクローナル抗体を使用した。mAb 13および15を除いて、全てのモノクローナル抗体は、精製c-Metα鎖、トランスフェクトされたc-Metおよび内因性のヒトc-Metの検出に成功した。mAb 13および15は、c-Metに対して低い特異性を有していた。mAb 2および14は、mAb 13および15と比較して、c-Metに対するより高い親和性を有することが観察された。mAb 4、8、16、17および18は、mAb 2、13、14および15と比較して、c-Metに対するより高い親和性およびより少ない非特異的バンドを有する。異なるエピトープを認識するにもかかわらず(
図1A)、抗α鎖c-Metモノクローナル抗体のほとんどは、バンド認識の同じパターンをmAb 11および12と共有する。これは、mAb 11および12のバンドプロファイルが完全に特異的であることを示唆する。したがって、mAb 11および12は、それらが良好な親和性および特異性でc-Metを検出したので、ウェスタンブロット上で使用するのに最適なモノクローナル抗体である。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をmAb 12に結合させて(mAb 12-HRP)、本研究では前駆体c-Metおよび成熟c-Metのα鎖を検出するためのツールとして使用した。
【0105】
c-Metのα鎖に対するモノクローナル抗体の反応性をさらに特徴づけるために、該抗体を用いてSNU-5細胞溶解物からの内因性c-Metを免疫沈降させた。SNU-5は、高レベルのc-Metを発現するヒト胃細胞株である。免疫沈降させた細胞溶解物は、市販のSC-10およびAF276抗体を用いてウェスタンブロッティング(
図3)により分析した。SC-10およびAF276抗体はc-Metの異なる領域に対して引き出された抗体であるが、SC-10とAF276の両方は同様のウェスタンブロットのバンドプロファイルを共有する。本発明者らのモノクローナル抗体のほとんどは、170kDの前駆体c-Met(α鎖とβ鎖が一緒に連結されたもの)を免疫沈降させるのに成功した。興味深いことに、成熟c-Metのβ鎖に対応する145kDのタンパク質バンドもウェスタンブロット上に観察されたが、このことは、c-Metのβ鎖がそのα鎖と一緒にプルダウンされたことを示唆する。成熟α鎖が免疫沈降されたことを確実にするために、mAb 12-HRP(このスクリーニングから開発された)を用いて、ウェスタンブロット上の同じ免疫沈降SNU-5細胞溶解物を分析した。また、このスクリーニングで開発されたmAb 8および18をHRPに結合させて、c-Metのα鎖を検出するために使用した。mAb 8、12および18は、c-Met上の異なるエピトープを認識するが(
図1A)、全てのHRP結合抗体は、成熟c-Metのα鎖および前駆体c-Metを強く検出するのに成功した。
【0106】
フローサイトメトリーを用いて、本発明者らのモノクローナル抗体が生細胞上の天然c-Metに結合できるかどうかを調べた。SNU-5細胞を1μg/mLのモノクローナル抗体とインキュベートした。SNU-5細胞の細胞表面上に発現された天然c-Metへの抗α鎖c-Metモノクローナル抗体の結合は、FITC色素と結合させた抗マウス二次抗体を用いて検出した。低レベルのc-Metを発現するヒト乳癌細胞株T47Dをこのアッセイで使用して、該抗体がその細胞表面に非特異的に結合するかどうかを調べた。精製モノクローナル抗体で処理したT47D細胞のフローサイトメトリーの結果は、陰性対照(二次抗体のみ)と区別できず、モノクローナル抗体が細胞表面に非特異的に結合しないことを示した(データは示さず)。SNU-5細胞で得られたフローサイトメトリーの結果は、天然c-Metに対する異なる蛍光強度により3つの明確に区別できるグループに分類されることを示した:強い蛍光強度、中間の蛍光強度、および弱い蛍光強度(
図4)。mAb 2および13は、このアッセイで最強の蛍光強度を示した。mAb 8、11、12および17は中間の蛍光強度を示し、一方mAb 4、14、15、16および18は弱い蛍光強度(小さなピークシフトにより示される)を示した。
【0107】
細胞散乱は、c-Met活性化の生物学的特徴の一つである。c-Metを標的とするアゴニストの二価モノクローナル抗体は、c-Metを活性化して、細胞を運動性にさせかつ分散させてしまう。ここでは、本発明者らは、精製した抗α鎖c-Metモノクローナル抗体が細胞散乱に及ぼす影響を調べた。HaCaT細胞を低密度で播種し、コロニーを形成するまで増殖させた。細胞を24時間にわたり血清飢餓状態にしてから、1μg/mLのモノクローナル抗体と24時間インキュベートした。次いで細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色した。対照として、HaCaT細胞の細胞散乱を10ng/mLのHGFで誘導した(
図5)。非特異的IgG(マウスIgG)の存在は、散乱に影響を与えなかった。抗HGF抗体およびSU11274を対照として使用した。SU11274はc-Metの小分子阻害剤である。抗HGFおよびSU11274で処理した細胞コロニーは、円形のままであった。細胞散乱は、モノクローナル抗体のみで処理した細胞には観察されなかった(
図5)。このことは、モノクローナル抗体がc-Met活性化細胞散乱に対するアゴニストでないことを示唆する。
【0108】
mAb 2および13はSNU-5細胞において細胞増殖を減少させる
mAb 2および13は、フローサイトメトリーで天然c-Metへの最強の結合を示した。これらの抗体が腫瘍細胞に対して何らかの生理学的効果を有するかどうかを調べるために、10μg/mLのmAbをSNU-5細胞に添加した。SNU-5細胞の生存率およびカスパーゼ活性化に対するmAb 2および13の効果は、抗体処理の72時間後に記録した(
図7A)。mAb 11および18は、フローサイトメトリーでそれぞれ中間のおよび弱い親和性を実証したものであり、これらを対照として使用した。SU11274は、細胞生存率の有意な減少および高いカスパーゼ活性化を示した。これは、SU11274の作用機序がカスパーゼの活性化によるものであり、ひいてはSNU-5腫瘍細胞のアポトーシスをもたらすことを示している。対照的に、mAb 2および13で処理した細胞は、細胞生存率を減少させ、さらにはカスパーゼ活性化をも低減させた。細胞増殖に対する抗α鎖モノクローナル抗体の効果を確かめるために、抗体処理の72時間後に細胞カウントを行った。mAb 2は最も強い細胞増殖減少を示し、その後にmAb 13が続いた。mAb 18はわずかに細胞増殖を減少させ、mAb 11は効果がなかった(
図7A)。
【0109】
さらに、細胞増殖に対する抗α鎖モノクローナル抗体の効果を実証するために、SNU-5細胞を、抗体処理の前に、CellTracker green BODIPY色素で前染色した。CellTracker BODIPY色素は、細胞に自由に入る膜透過性色素である。いったん細胞内に入ったら、この色素は膜不透過性の生成物に変換され、この生成物が細胞を緑色に標識化する。この色素は分裂娘細胞に伝わるが、隣接する細胞に移入することはできない。緑の色素は子孫細胞へと希釈されているので、分裂細胞はこの色素を保持することができないだろう。細胞を10μg/mLのモノクローナル抗体で6日間処理し、細胞内の色素保持をフローサイトメトリーで分析した。予想されたように、未処理細胞、mAb 11およびmAb 18処理細胞における蛍光強度のレベルは、未染色細胞と同様のレベルに低下した(
図7BおよびC)。mAb 2および13は、細胞増殖の減少を示す緑色蛍光のかなりのレベルを保持していた。
【0110】
SNU-5細胞におけるmAb 2および13の内在化
mAb 2および13が抗体結合の際に細胞内に内在化されたかどうかを調べるために、SNU-5細胞を10μg/mLの抗α鎖モノクローナル抗体とインキュベートした。モノクローナル抗体で処理した細胞を固定し、透過処理した。結合され、内在化された抗体は、抗マウスAlexa Fluor(登録商標)488結合二次抗体で検出した。抗体の局在化を共焦点顕微鏡で観察した。4℃では、mAb 2および13の染色はいずれも、拡散細胞質染色を用いて細胞膜上に局在することが観察された(
図8)。細胞表面上の抗体局在化は37℃では目立たなくなった一方で、細胞質において染色の増加が観察された。細胞質染色は細胞内に蓄積することが観察され、このことは、mAb 2および13がc-Metに結合したとき内在化されて細胞内に蓄積することを示唆している。
【0111】
mAb 2の温度感受性
温度が天然c-Metへの抗α鎖モノクローナル抗体の結合親和性に影響を与えるかどうかを確認するために、mAb 2、13、11および18を生存SNU-5細胞と共に4℃または37℃でインキュベートした。生存SNU-5細胞の細胞表面上に発現された天然c-Metへのモノクローナル抗体の結合は、Alexa Fluor(登録商標)488色素と結合した抗マウス二次抗体を用いて検出し、フローサイトメトリーで分析した。蛍光強度と相関する抗体結合を異なる温度で比較した。興味深いことに、各抗体は異なる温度間でのピークシフトを示し(
図9)、4℃での抗体結合の減少を示した。試験した4種の抗体のうち、mAb 2は最も劇的なピークシフトを示した。抗体結合の減少は、生存SNU-5細胞上に発現された天然c-Met上のエピトープを抗体が利用できないことによると考えられる。c-Metは、通常の生理学的温度では動的なタンパク質であるが、低温では柔軟性がなくなって、特定のエピトープを隠蔽させる。
【0112】
mAb 2エピトープの詳細なマッピング
以前のpepscan分析は、最大15アミノ酸残基(全ての残基が抗体-Met相互作用に関与するわけではない)内となるように抗体のエピトープを絞り込むために設計された。低温での抗体結合の減少をさらに理解するために、mAb 2のエピトープをより詳細にマッピングした。mAb 2のPepscan分析は、mAb 2がペプチドO28およびO29に同等の親和性で結合することを実証した。これは、mAb 2のエピトープが両方のペプチドによって共有されることを示している。mAb 2相互作用にとって重要な残基を同定するために、各アミノ酸残基がアラニン残基で置換された、ペプチドO28およびO29の変形を合成した。以前に使用したのと同じELISAベースのアッセイを利用して、精製したmAb 2を各アラニン置換ペプチドに添加した。ペプチドに対する抗体の相互作用の減少は、mAb 2-Met相互作用における置換されたアミノ酸残基の重要性を示すであろう。
【0113】
mAb 2エピトープの総合的マッピングは、mAb 2-Met相互作用にとって重要な残基が連続した残基ではないことを明らかにした。これは観察されたmAb 2の性質と一致しており、すなわち、mAb 2は天然c-Metに対して高い親和性を有するが、変性c-Metに対してはそうでない。タンパク質がその三次コンフォメーションをとる場合にのみ、非連続残基は隣り合わせになって一体となり、タンパク質-タンパク質相互作用のための部位を形成する。c-Metの結晶構造(PBDアクセッション番号1SHY)への重要な残基のマッピングは、これらの残基が2つのクラスターに分かれることを明らかにした(
図10)。ピンク色の一方のクラスターはc-Metの表面に露出しているが、他方のクラスター(シアン)はc-Met内に埋もれている。
【0114】
c-Metは、細胞増殖、細胞運動性、血管新生および形態形成などの広範囲の生物学的活性に関与しているチロシンキナーゼ受容体である。c-Metの異常な発現は、腫瘍の攻撃性および癌の進行と相関する。c-Metの発現はまた、HER2、EGFRおよびB-RAF治療に対する薬剤耐性を引き起こすことが知られている。したがって、c-Metは癌治療のための魅力的な標的である。
【0115】
本発明者らは、ヒトc-Metのα鎖に対するマウスモノクローナル抗体のパネルを開発した。本発明者らは、これらの抗体をウェスタンブロッティング、免疫沈降、フローサイトメトリー、エピトープマッピングおよびc-Metに対するアゴニスト/アンタゴニスト活性によって特性評価した。α鎖は他のc-Met断片(完全長β鎖、細胞外β鎖、c-Metの細胞外ドメイン)の中で最もよく発現され、かつ最も免疫原性であったため、α鎖を免疫原として使用した。市販の抗体(SC-10およびAF276)との比較は、イムノブロッティングにおける本発明の抗体の優れた性能を明らかにした。mAb 11および12はc-Metに対する良好な親和性および特異性を示したので、それらはウェスタンブロッティングのための最良の抗体であった。また、本明細書に開示された抗体は、免疫沈降およびELISAにおいて機能することができる。現在入手可能な市販の抗体に比べてより高い親和性と特異性を有し、かつ種々の生化学的手法で特性評価された抗体は、c-Metのさらなる研究のための貴重なツールになる。最後に、市販のc-Met抗体の信頼性は、癌の予後マーカーとして疑問視されている。c-Metタンパク質レベルを定量するために試験された5種の市販のc-Met抗体のうち、一部の抗体はバッチ間変動を有しており、また、他の抗体は再現性のない結果を有していた。このことは、信頼できるc-Met抗体の開発および特性評価の必要性を強調している。
【0116】
原核生物において発現された変性タンパク質を免疫原として使用したにもかかわらず、天然のc-Metタンパク質を認識する抗体を得ることがまだ可能であった。mAb 13は、ウェスタンブロッティングでc-Metに対する低い親和性および不十分な特異性を示したが、mAb 2と同じく、フローサイトメトリーで測定された最高の蛍光染色をもたらした。明らかに、mAb 2および13のエピトープは、c-Metの未変性コンフォメーションの中に存在する。SNU-5細胞では、mAb 2および13は、カスパーゼ活性化を活性化することがなく、かつアネキシンV染色の欠如によって示唆される細胞死を引き起こすことがない。老化マーカーおよびオートファジーマーカー、それぞれp16およびLC-3、を用いた抗体処理細胞のウェスタンブロット分析は、このような事象について陰性であった(データは示さず)。c-MetへのmAb 2または13の結合を介して、これらの抗体が誘発する唯一の機能的効果は、SNU-5細胞の増殖の低減である。しかし、DNA合成中のBrdUの取り込みは、抗体処理細胞と未処理細胞の間に有意差を示さなかった。最後に、本発明の抗体は、細胞散乱においてc-Metに対して非アゴニストである。
【0117】
抗体工学の進歩を考えると、癌の治療と診断のために抗体を遺伝子工学的に操作しうる方法がいくつか存在する。mAb 2および13は、生存SNU-5細胞上の内因性c-Metに高い親和性および特異性で結合する。免疫蛍光染色は、mAb 2および13が、エンドサイトーシスにより媒介される可能性が最も高く、腫瘍細胞内に内在化されることを示す。分子イメージングとナノテクノロジーにこの技術を組み合わせることで、c-Met抗体は、インビボ腫瘍イメージングのための強力なツールへと工学的に操作することができる。これは、癌の診断、予後および治療を改善するのに役立つ腫瘍生理学に関する貴重な情報を提供するであろう。c-Met抗体はまた、毒性ペイロードを腫瘍細胞に運搬しかつ腫瘍細胞を死滅させるように操作することもできる。
【0118】
本発明者らは、SNU-5細胞を10μg/mLの抗α鎖c-Metモノクローナル抗体で処理することを示した。抗体処理のより高い濃度を使用することも、当技術分野でよく知られるように有望であると考えられる。本明細書に開示された抗体をより高い濃度で試験することは、我々の抗体の作用機序へのより良い洞察を提供するかもしれない。
【0119】
モノクローナル抗Met抗体を用いた、c-Metにより誘導される生物学的活性の部分的阻害は、当技術分野で記載されている。抗Met抗体であるDN-30は、他のc-Met誘導生物学的活性を阻害するが、細胞運動性を阻害することはない。DN-30と同じ免疫法から開発された別のモノクローナル抗体(DO-24)は、十分なc-Met活性を引き出すことができる完全なアゴニストであった。c-Met結合を完全に阻害するためには3種を超えるモノクローナル抗体を必要とすることが実証されている。HGFによるc-Met活性化の分子機構は、まだはっきりしていない。この相互作用は以前に考えられていたよりも複雑であり、これらの抗体の研究から、さまざまなc-Met活性の誘発に関与している重要な相互作用部位が存在することは明らかである。また、mAb 2の潜在性エピトープの新事実は、c-Metが動的なタンパク質であることを示唆しており、これはさらに、c-Met生理学についての我々の理解が不足していることを示す。mAb 2は、おそらく、腫瘍細胞にのみ発現される潜在性エピトープを認識するEGFR 806抗体と同類であろう。
【0120】
本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)または限定(複数可)の非存在下で、適切に実施することができる。したがって、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」などは、拡張的にかつ限定なしに解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定の用語としてではなく、説明の用語として使用されており、このような用語および表現の使用において、示されかつ説明された特徴またはその部分のどのような均等物をも排除する意図はなく、さまざまな修飾がクレームされた本発明の範囲内で可能であることが認識される。かくして、本発明は好ましい態様および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、当業者であれば、本明細書に開示され具体化された本発明の修飾および変形を採用することができ、このような修飾および変形は本発明の範囲内であると見なされることを理解すべきである。
【0121】
本発明は、本明細書に広範かつ一般的に記載されている。一般的開示(generic disclosure)に入る、より狭い種(species)および亜属(subgeneric)グループのそれぞれもまた、本発明の一部を形成する。これは、切除された材料が本明細書に具体的に記述されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を取り除く但し書きまたは否定的限定を含む本発明の一般的記載を包含する。
【0122】
他の態様は、以下の特許請求の範囲および非限定的な実施例に含まれる。
【実施例】
【0123】
材料および方法
細胞株および試薬
全ての細胞は、5%CO
2加湿インキュベーター内に37℃で維持した。ピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変必須培地(DMEM)高グルコース中で培養された、HaCaT細胞、U-87MG細胞およびマウスNIH3T3細胞は、それぞれ、Birgit Lane (Institute of Medical Biology(IMB), シンガポール)、Nick Leslie (Division of Cell Signalling and Immunology, University of Dundee)およびAxel Ullrich (Institute of Medical Biology(IMB), シンガポール)の研究所からの寛大な贈り物であった。SNU-5細胞は韓国細胞株バンク(Korean Cell Line Bank)から購入した。T47D細胞とSNU-5細胞はRPMI 1640培地で培養した。DMEMおよびRPMIはInvitrogen社(米国)から入手した。全ての組織培養培地には、HyClone Laboratories/Thermo Scientific社(米国)から入手した10%の熱不活性化ウシ胎児血清を補充した。
【0124】
組換えヒトHGF(#294-HG)および抗ヒトHGF(#MAB294)は、R&D Systems社(米国)から購入した。c-Met小分子阻害剤であるSU11274は、Calbiochem/Merck社(ドイツ, #448101)から購入した。CellTracker Green BODIPY色素(Invitrogen社 #C2102)は、メーカーのプロトコルに従ってDMSO中に再懸濁した。
【0125】
細胞回収および細胞溶解
細胞培養プレート/皿を冷PBSですすいでから、細胞を掻き取った。細胞を遠心分離によって集めた。PBSを除去し、細胞ペレットをドライアイス上で急速凍結した。凍結した細胞ペレットを、完全プロテアーゼ阻害剤(Roche社,英国,#11 697 498 001)を含有するNP40溶解緩衝液(1%NP40, 150mM NaCl, 50mM Tris-HCL pH8.0)を用いて氷上で溶解させた。細胞溶解物を10,000×gで遠心分離し、上清を分析のために回収した。タンパク質の定量は、BCAキット(Pierce/Thermo Scientific社)を用いて、メーカーのプロトコルに従って行った。
【0126】
c-Metα鎖のクローニング、原核生物発現および精製
c-Metα鎖は、最初に、完全長ヒトc-Met cDNAを含むエントリーベクター(Invitrogen社 #IOH36570)からpCR2.1ベクター(Invitrogen社)に、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen社)を用いてクローニングした。c-Metα鎖の増幅は、c-Metα鎖プライマー
を用いて行った。プラスミド抽出、ゲル抽出、およびPCR産物精製の全ての手順は、Qiagen社(英国)のキットを用いて、メーカーのプロトコルに従って行った。
【0127】
原核生物での発現のために、c-Metα鎖をpCR2.1ベクターからpET19bベクター(Novagen/Merck社)にサブクローニングして、BL21 pLysS細胞(Invitrogen社)に形質転換した。OD600 0.4〜0.6に達するまで形質転換細胞を増殖させた。IPTG(イソプロピル-β-D-チオ-ガラクトシド)を1mMの最終濃度になるまで添加することによってタンパク質の発現を誘導した。培養物を3時間増殖させた。細胞を遠心分離により回収し、溶解緩衝液(0.3M KCL, 50mM KH2PO4, pH8.0)中に再懸濁した。細胞溶解物を33,000×gで遠心分離した。得られた細胞ペレットを、6M尿素を含有する溶解緩衝液に再懸濁し、穏やかに撹拌しながら一晩インキュベートした。生じた懸濁液を遠心分離し、得られた上清をタンパク質精製のために使用した。
【0128】
原核生物により発現されたc-Metα鎖は、自動Profiniaタンパク質精製システム(Bio-Rad社)を用いて、1mL IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)Bio-Scale Miniカートリッジ(Bio-Rad社, 米国)でアフィニティー精製した。c-Metα鎖を溶出させ、抗体産生用のマウスを免疫化するために使用した。
【0129】
マウスの免疫化およびハイブリドーマ融合
抗体産生は、Moravian Biotechnology(チェコ共和国)のBorek Vojtesek博士により実施された。簡単に述べると、細菌から発現された精製ヒトc-Metα鎖でマウスを免疫化した。各注射は、精製したc-Metα鎖を40μg含んでいた。マウスの尾の血液を採取して、c-Metα鎖に対する免疫応答を試験した。c-Metα鎖に対する最高の免疫応答を与えた2匹のマウスを、ハイブリドーマ細胞融合のために犠牲にした。マウス由来の脾臓細胞を、不死のマウス骨髄腫細胞であるSP2/0-Ag14細胞と融合させた。ハイブリドーマ細胞を、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する選択培地中で増殖させた。脾臓細胞と不死細胞との間でうまく融合されたハイブリドーマ細胞のみが選択培地中で生き残って、増殖するだろう。
【0130】
抗体スクリーニング
抗体スクリーニングは、Moravian Biotechnologyと共同で行った。モノクローナル抗体のスクリーニングの概要を
図1bisに示す。細胞融合の10日後に、抗α鎖抗体の産生についてハイブリドーマ細胞をスクリーニングした。
【0131】
アイソタイピング
マウスモノクローナル抗体のアイソタイプは、市販のIsoQuick(商標)ストリップ(Sigma-Aldrich社)を用いて判定した。アイソタイピングストリップをハイブリドーマ細胞の上清中で5分間インキュベートした。ストリップ上に赤のテストラインが現れる。赤のテストラインの位置は抗体のアイソタイプに依存しており、したがって、メーカーのアイソタイピングチャートを参照することにより、抗体のアイソタイプを決定する。
【0132】
Pepscanおよびアラニンスキャン
ビオチンにSGSGリンカー配列によってN末端で連結されたペプチドは、Mimotopes社(オーストラリア)により合成された。Pepscan用のペプチド:c-Metのα鎖全体にまたがるペプチドを合成した。連続重複配列を有する全部で55のペプチドを合成した。各ペプチドは、10アミノ酸残基だけその前のペプチドに重複していた。
【0133】
アラニンスキャン用のペプチド
Pepscanの結果は、mAb 2がペプチドO28およびO29に結合することを示した。各アミノ酸残基を順次アラニン残基に置換したペプチドO28およびO29の変形を合成した。ストレプトアビジン被覆プレート(Pierce/Thermo Scientific社, #15520)を室温で3%BSA/PBSによりブロックした。メーカーの推奨に従ってペプチドをDMSO中に溶解して貯蔵した。ストレプトアビジン被覆プレートに各ペプチド(5μg/mL)を室温で一晩コーティングした。ウェルを洗浄した後、ハイブリドーマ上清または精製したモノクローナル抗体を各ウェルに添加した。結合したモノクローナル抗体を検出するためにHRP結合抗マウス抗体を添加した。ELISA基質(Bio-Rad社, #172-1067)溶液をメーカーの説明書に従って新たに調製し、ウェルに添加した。色の変化を肉眼でモニタリングし、100mM硫酸を添加して反応を停止させた。吸光度をマイクロプレートリーダー(SPECTRAmax PLUS
384, Molecular Device社, 米国)で450nMにて読み取った。c-Metの細胞外ドメインの結晶構造(アクセッション番号1SHY)をタンパク質構造データベース(PDB)から入手した。エピトープのコンピュータイメージングは、PyMol (DeLano Scientific LLC, 米国)ソフトウェアで解析した。
【0134】
ウェスタンブロッティングおよび使用した抗体
商業的に得られるSC-10抗体(Santa Cruz社, 米国)は、ヒトc-MetのC末端細胞質領域内のペプチドに対して産生されたものであり、ウェスタンブロット上のc-Met前駆体(170kD)および成熟c-Metβ鎖(145kD)を認識すると予想される。AF276抗体(R&D systems社)は、c-Metの細胞外ドメインに対するヤギ抗体である。AF276抗体は、ウェスタンブロット上のc-Met前駆体、成熟c-Metβ鎖および成熟c-Metα鎖を認識すると予想される。SC-10抗体とAF276抗体は両方とも、ウェスタンブロッティングにおいて1:10000の希釈率で使用した。1μg/mLの抗α鎖c-Metモノクローナル抗体をウェスタンブロッティングのために使用した。
【0135】
タンパク質サンプルを4X LDSサンプル緩衝液(Invitrogen社)および10Xサンプル還元剤(Invitrogen社)と混合し、その後MOPs緩衝液(Invitrogen社)を用いて4-12%のBis-Tris勾配ゲル(Invitrogen社)上で分析した。SeeBlue Plus2タンパク質ラダー(Invitrogen社)を分子量ラダーとして用いた。ニトロセルロース膜(孔径0.45μm, Whatman社, 英国)へのタンパク質の転写は、Bio-Radウェット転写システムを用いて100Vの定電流で2時間行った。転写緩衝液は25mM Tris、192mMおよび20%メタノールを含有する。ブロッキング緩衝液はPBST (PBS中の1%Tween 20)中の5%Marvelミルクで構成された。膜上の非特異的部位をブロッキング緩衝液中でブロックしてから、一次抗体とインキュベートした。その膜を3回洗浄し、二次抗体をブロッキング緩衝液中に1:10000の希釈率で添加した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合された二次抗体は、Jacksons Laboratory/Stratech Scientific Ltd.(英国)から入手した。ウェスタンブロットの検出のために増強化学発光(Enhanced Chemiluminescence, ECL)(Amersham/G.E. Healthcare社, 英国)を使用した。
【0136】
免疫沈降
上記のように細胞をNP40溶解緩衝液中で溶解することによって細胞溶解物を得た。1μgの精製抗体を細胞溶解物と一晩インキュベートした(約500μL中に200μg〜500μgの総タンパク質)。洗浄したプロテインGビーズ(Sigma-Aldrich社, 米国)を細胞溶解物に添加した。ビーズを18,000×gで遠心分離して収集し、NP40溶解緩衝液で数回洗浄した。結合したタンパク質を2X LDSサンプル緩衝液の添加により溶出し、そのサンプルを100℃に加熱した。10,000×gで遠心分離することにより溶出液からビーズを分離した。溶出液をSDS-PAGEゲルで分析した。
【0137】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、Flow Cytometry Core Facility (College of Medicine, Dentistry and Nursing, University of Dundee, 英国)の支援を受けて実施された。
【0138】
SNU-5細胞(1×10
6個)を冷PBSで1回洗浄した後、1%BSA/PBS中でブロックした。細胞を2回洗浄してから、抗α鎖c-Metモノクローナル抗体とインキュベートした。1μg/mLの抗α鎖モノクローナル抗体を使用した。細胞をヤギ抗マウスIgG FITC結合二次抗体(Invitrogen社)とインキュベートし、最後に1%BSA/PBS中に再懸濁した。フローサイトメトリーは、Becton Dickinson社(米国)のFACScanを用いて行った。Cell Quest (Becton Dickinson社)およびFlowJo (Tree Star Inc., 米国)ソフトウェアをデータ解析のために使用した。
【0139】
温度感受性
10μg/mLの抗α鎖モノクローナル抗体を生存SNU-5細胞と4℃または37℃で1時間インキュベートした。細胞を回収し、冷PBSで1回洗浄した。生細胞への抗体結合は、Alexa Fluor(登録商標)488結合抗マウス二次抗体(Invitrogen社 #A11029)により測定した。細胞を1%BSA/PBS中に再懸濁して、フローサイトメトリーで分析した。
【0140】
細胞散乱アッセイ
100〜200個のHaCaT細胞を24ウェルプレートに播種し、小さなコロニーを形成するまで(約7日間)増殖させた。細胞を24時間血清飢餓状態にした。細胞を精製モノクローナル抗体(1μg/mL)と24時間インキュベートした後、冷PBSで2回すすぎ、氷冷メタノール中で固定した。次に、細胞を1%クリスタル-バイオレット(Sigma-Aldrich社)溶液中で染色した。細胞染色はZeiss Axiovert 25倒立顕微鏡を用いて観察し、Canon EOS 1000 Dカメラを用いて写真撮影した。
【0141】
細胞生存率およびカスパーゼ活性化
CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイおよびCaspase-Glo(登録商標)3/7アッセイ(Promega社, 米国)を用いて、それぞれ細胞生存率およびカスパーゼ活性化を測定した。SNU-5細胞(1×10
5個)を各96ウェルに播種し、72時間処理した後に分析した。細胞生存率およびカスパーゼ活性化はメーカーのプロトコルに従って行った。En Visionプレートリーダー(PerkinElmer社, 米国)を用いて発光を読み取った。
【0142】
細胞カウンターおよびCellTracker Green BODIPY色素を用いた細胞増殖
細胞カウント
細胞を播種し、抗α鎖c-Metモノクローナル抗体で72時間処理した。細胞を回収し、自動ADAM細胞カウンター(Digital Bio社, 韓国)を用いて計数した。
【0143】
CellTracker Green BODIPY色素
SNU-5細胞を5μMのCellTracker BODIPY色素で30分間染色した。染色した細胞を播種し、抗α鎖c-Metモノクローナル抗体で6日間処理した。細胞を回収し、生細胞中の色素保持をフローサイトメトリーにより分析した。
【0144】
免疫蛍光
10μg/mLの抗α鎖モノクローナル抗体を生存SNU-5細胞と4℃または37℃で1時間インキュベートした。抗体処理細胞をPBSで1回洗浄し、Thermo Shandon Cytospin 3 Cytofuge (Thermo Scientific社)を800rpmで5分間使用してポリリシン被覆スライド(Thermo Scientific社, #5991056)上に沈着させ、直ちに4%パラホルムアルデヒド中で固定した。次に、細胞をブロックし、0.4%Triton X-100および5%BSAを含有するPBSで透過処理した。結合した抗α鎖c-Met抗体を、抗マウスAlexa Fluor(登録商標)488結合二次抗体を用いて検出した。ファロイジンを二次抗体と一緒に添加した。細胞を洗浄した後、4',6'-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色し、アンチブリーチング剤として2.5%DABCO (1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン)(Sigma-Aldrich社)を含有するHydromount (National Diagnostics社, 米国)でマウントした。Nikon Eclipse E600顕微鏡を用いて免疫蛍光を観察した。
【0145】
mAb 2エピトープの包括的マッピング
Pepscan分析を使用して、mAb 2によって結合されたc-Metα鎖の領域を決定した。α鎖全体にまたがる連続重複ペプチドをインビトロで合成した(Mimotopes社)。15アミノ酸残基から構成された各ペプチドは、10アミノ酸だけ各隣接ペプチドと重複する。これらのペプチドは、SGSGリンカー配列を介してN末端でビオチンによりタグ付けした。ペプチドを96ウェルプレートの個々のストレプトアビジン被覆ウェルに添加し、未結合のペプチドを徹底的な洗浄により除去した。α鎖上のmAb 2結合の領域を決定するために、mAb 2を各ペプチド含有ウェルに添加した。抗体の結合を比色アッセイにより検出し、450nMで吸光度を読み取ることによって分析した。
【0146】
mAb 2は、ペプチド
に同様の親和性で結合した(
図11A)。これは、mAb 2のエピトープが両ペプチドによって共有されることを示している。mAb 2-Met相互作用にとって重要なペプチドO28およびO29内の残基を同定するために、アラニンスキャンを実施した。各アミノ酸残基を順次アラニン残基に置換したペプチドO28およびO29の変形を合成した(表3)。ペプチドP1〜P16 (SEQ ID NO:26〜39を有する)およびP17〜P31 (SEQ ID NO:40〜56を有する)を、それぞれ元のペプチドO28およびO29から誘導した。上記と同じELISAベースのアッセイを用いて、合成ペプチドをストレプトアビジン被覆ウェルに添加し、各ペプチド含有ウェルに精製mAb 2を添加した。mAb 2の結合は、450nMで吸光度を読み取ることによって測定した。ペプチドへの抗体結合の低下は、置換されたアミノ酸残基のmAb 2-Met相互作用における重要性を実証する。ペプチドO27、ペプチドO1およびペプチドなしを陰性対照として使用した。興味深いことに、ペプチドO28の最初の10アミノ酸はペプチドO27と重複するにもかかわらず、mAb 2はペプチドO27に結合しない。
【0147】
(表3)mAb 2のアラニンスキャンのために用いたペプチド
【0148】
1mMのDTTの存在下では、アラニンスキャン分析は、mAb 2がペプチドP1、P7、P8、P9、P10、P14、P15、P17、P19、P20およびP25に結合できないことを明らかにした(
図12A)。したがって、これらのペプチド中の置換されたアミノ酸残基は、mAb 2のエピトープに関与している。興味深いことに、タンパク質構造にねじれを形成するプロリンは、mAb 2エピトープにおける重要な残基であることが観察された。これは、ペプチドP14、P25およびP10でのプロリンのアラニンによる置換が原因でmAb 2結合が低下することにより支持される。mAb 2結合においてどの残基がより重要な役割を果たすかを判定するために、mAb 2をペプチドに対してタイトレーションした(
図12B)。ペプチドは、mAb 2への結合親和性の昇順に表4に示される。mAb 2はペプチドP1、P8およびP14に最も少なく結合し、置換された残基、それぞれ「C」、「E」および「P」、がmAb 2結合にとって最も重要であることを示した(
図12Bおよび表4)。mAb 2に結合しないペプチドのさらなる分析は、残基166〜168「IEE」および残基172〜175「CPDC」がmAb 2の主要なエピトープを形成していることを示した。これらの残基は連続残基ではない。mAb 2の主要なエピトープにおけるプロリン残基と非連続残基の重要性は、c-Metの天然構造がmAb 2結合にとって重要であることを示唆する。これは観察されたmAb 2の性質と一致しており、すなわち、mAb 2は、天然c-Metに対して高い親和性および特異性を有するが、変性c-Metに対しては有しない(
図11CおよびD)。
【0149】
c-Metの結晶構造(PBD 1SHY)へのmAb 2の主要なエピトープ「IEE」および「CPDC」のマッピングは、オレンジ色の「IEE」がc-Metの表面に露出している一方で、ピンク色の「CPDC」はc-Met内に埋もれている、ことを明らかにした(
図12C)。mAb 2がどのようにして「CPDC」に結合できるかは、まだ分かっていないが、この領域は癌細胞ではより突き出ていると推測される。mAb 2結合のコンピュータシミュレーション研究は、mAb 2のこの潜在的エピトープをさらに解明するであろう。
【0150】
(表4)mAb 2結合の昇順に示されたアラニン置換ペプチド
【0151】
mAb 2 scFvのファージ発現
mAb 2の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を、抗体単鎖可変フラグメント(scFv)発現用のファージ発現ベクターpIT2にクローニングした。2つのmAb 2 scFv構築物を作製した:VH-VL scFvおよびVL-VH scFv。mAb 2の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列とタンパク質配列を、それぞれ
図13および
図14に示す。
【0152】
mAb 2 scFvはファージ表面に発現された。ファージ発現されたscFvがmAb 2の結合特異性を保持するかどうかを確認するために、mAb 2 scFvを発現するファージのペプチドO28およびO29への結合について該ファージを分析した。先に記載したのと同じELISAベースのアッセイを用いて、mAb 2 scFv発現ファージのペプチドO28およびO29への結合を、HRP結合抗ファージ抗体により測定した。吸光度を450nMで分析した。陰性対照として、ペプチドO27およびペプチドなしの対照を使用した。両方のmAb 2 scFv構築物はペプチドO28およびO29に結合したが、これは、mAb 2のVHおよびVLがうまくクローニングされたことを示す(
図15)。興味深いことに、完全長マウスmAb 2はペプチドO28およびO29に対して結合優先を示さないのに、ファージ発現されたmAb 2 scFvの両構築物は、ペプチドO28よりもペプチドO29により強く結合した。これは、抗体の構造/フレームワークの違いによるのかもしれない。scFvは一価であり、柔軟なヒンジ領域を含む抗体の定常領域を欠いていた。これは、抗体の柔軟性、結合力および結合親和性に影響を与える可能性がある。