特表2016-520786(P2016-520786A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-520786インラインで加熱される太陽熱ストレージコレクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-520786(P2016-520786A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(54)【発明の名称】インラインで加熱される太陽熱ストレージコレクタ
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20160617BHJP
   F24J 2/42 20060101ALI20160617BHJP
【FI】
   F24H1/00 621B
   F24J2/42 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-505913(P2016-505913)
(86)(22)【出願日】2014年4月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月1日
(86)【国際出願番号】IB2014060376
(87)【国際公開番号】WO2014162274
(87)【国際公開日】20141009
(31)【優先権主張番号】61/807,329
(32)【優先日】2013年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515274077
【氏名又は名称】ティーアイジーアイ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】クライアー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】アデル,マイケル
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA03
3L122AA24
3L122AA53
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA11
3L122BA32
3L122DA01
(57)【要約】
太陽熱を利用して水を加熱するためのシステムは、従来のシステムより低いコスト、高いエネルギー効率で、および迅速な応答時間でユーザーに温水を提供し、エネルギー損失を低減しユーザーの快適性を向上させる。基本構造は4つの主成分を含む:太陽熱コレクタ、熱交換器、インラインのヒーターおよびコントロールシステム。第1のフロージェネレータ(G1)が1次ループについてアクティブである間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱プロフィールが測定される。2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱は、2次ループの水のフロー;現在の第1の温度;および第1の温度の一時的な熱プロフィール:
に基づいて、1次ループ中の第1のフロージェネレータおよび2次ループ中のインラインの温水をアクティブにすることにより、提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を利用して水を加熱するためのシステムであって、該システムは、
(a)太陽熱コレクタを含む1次ループであって、前記太陽熱コレクタは入力と出力を含む、1次ループ;
(b)前記1次ループに動作可能に接続され、第1の温度を測定するように構成される、第1の温度センサ;
(c)前記1次ループでフローを生成するように構成される第1のフロージェネレータ;
(d)前記1次ループに動作可能に接続され、熱伝達流体のフローを測定するように構成される、第1のフローセンサ;
(e)熱交換器であって、該熱交換器は、
(i)1次ループの出力;
(ii)前記太陽熱コレクタの出力に動作可能に接続される1次ループの入力;
(iii)冷水供給に動作可能に接続される2次ループの入力;および
前記インラインのヒータの入力に動作可能に接続された2次ループの出力を含み;
それによって前記冷水供給部から前記熱交換器の2次ループの入力までの、および、前記熱交換器の2次ループの出力から前記インラインのヒータを介して前記温水出力までの、前記2次ループを定める、
熱交換器;
(f)入力と出力を有し、前記2次ループに動作可能に接続されるインラインの温水器;
(g)システム・コントローラであって、該システム・コントローラは、
(i)前記第1のフロージェネレータがアクティブな間、前記1次ループ中の前記第1の温度の一時的な熱特性を測定するために;
(ii)
(A)前記2次ループの水のフロー;
(B)現在の第1の温度;および
(C)前記第1の温度の前記一時的な熱特性:
に基づいて
(i)前記1次ループ中の前記第1のフロージェネレータ、および
(ii)前記2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることによって、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供するために構成される、;
システム・コントローラ
を含むシステム。
【請求項2】
前記インラインのヒータの出力は、温水の出力に動作可能に接続され;前記第1のフロージェネレータは:
(i)前記熱交換器の1次ループの出力に動作可能に接続される入力を含み;
(ii)前記太陽熱コレクタの入力に動作可能に接続される出力を含み;および
(iii)アクティブにされると、前記太陽熱コレクタの出力から熱交換器の1次ループの入力までの、および、前記熱交換器の1次ループの出力から前記フロージェネレータを介して前記太陽熱コレクタの入力までの、前記1次ループ中での熱伝達流体のフローを生成するように構成され、
第2のフローセンサは、前記2次ループに動作可能に接続され、および前記2次ループ中の水のフローを測定するように構成され、
ここで、前記第1のフロージェネレータは、指定された期間の間、指定された時点でアクティブである
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記太陽熱コレクタは統合太陽熱ストレージコレクタ(ISC)であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ISCは透明に絶縁される、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記1次ループ中の前記熱伝達流体は水であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記2次ループは飲用に適した家庭用温水を提供することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のフロージェネレータは可変のフロージェネレータであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記システム・コントローラは、比例積分微分(PID)コントローラであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
太陽熱を利用して水を加熱するための方法であって、該方法は、
(a)第1のフロージェネレータが1次ループについてアクティブである間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定する工程であって;
前記1次ループは太陽熱コレクタを含む、工程;
(b)
(i)前記2次ループの水のフロー;
(ii)現在の第1の温度;および
(iii)前記第1の温度の前記一時的な熱特性:
に基づいて、
(i)前記1次ループ中の前記第1のフロージェネレータ
(ii)前記2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることによって、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供する工程;
を含む、方法。
【請求項10】
(a)システム中の前記第1の温度を測定する工程であって、該システムは
(i)入力と出力を含む太陽熱コレクタ
(ii)出力と入力を有するインラインのヒータであって、
(A)前記出力は温水の出力に動作可能に接続される、ヒータ;
(iii)熱交換器であって:該熱交換器は
(A)1次ループの出力;
(B)前記太陽熱コレクタの出力に動作可能に接続される1次ループの入力;
(C)冷水供給部に動作可能に接続される2次ループの入力;および
(D)前記インラインのヒータの入力に動作可能に接続される2次ループの出力;
を含み、
それによって前記冷水供給部から前記熱交換器の2次ループの入力までの、および、前記熱交換器の2次ループの出力から前記インラインのヒータを介して前記温水出力までの、前記2次ループを定める、;
熱交換器、
(iv)前記太陽熱コレクタの出力に動作可能に接続される第1の温度センサ;
(v)前記第1のフロージェネレータであって:該フロージェネレータは、
(A)前記熱交換器の1次ループの出力に動作可能に接続される入力を含み;
(B)前記太陽熱コレクタの入力に動作可能に接続される出力を含み;および
(C)アクティブにされると、前記太陽熱コレクタの出力から前記熱交換器の1次ループの入力までの、および前記熱交換器の1次ループの出力から前記第1のフロージェネレータを介して前記太陽熱コレクタの入力までの、前記1次ループ中の熱伝達流体のフローを生成するように構成される、
フロージェネレータ
(vi)前記1次ループに動作可能に接続され、前記熱伝達流体のフローを測定するように構成される、第1のフローセンサ;
(vii)前記2次ループに動作可能に接続され、および前記2次ループ中の水のフローを測定するように構成される、第2のフローセンサ
を含み、
ここで、前記第1の温度は前記第1の温度センサにより測定される、工程;
(b)指定された期間のあいだ指定された時点で、前記第1のフロージェネレータをアクティブにする工程
(c)前記第1のフロージェネレータがアクティブな間、前記第1の温度センサによって前記第1の温度の前記一時的な熱特性を測定する工程、
(d)
(i)前記2次ループ中の前記水のフロー
(ii)現在の第1の温度;および
(iii)前記第1の温度の前記一時的な熱特性:
に基づいて、
(i)前記第1のフロージェネレータ、および
(ii)前記インラインの温水器
をアクティブにすることにより、
温水の出力に2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供する工程;
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アクティブにすることは、
(a)周期的な時間;
(b)60分ごと;
(c)あらかじめ定められた時間;
(d)システム測定の評価に基づく時間;
(e)反応特性予測を改良するために、一時的な熱応答の特性に適用された機械学習アルゴリズムに基づく時間、
(f)前記2次ループ中の水のフローの特性に基づく時間、および、
(g)システムユーザーによる温水の使用に相応する温水の出力の評価に基づく時間、
から成る群から選択される、指定された時点で行われる
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記システムは、:
前記温水の出力に動作可能に接続され、第5の温度を測定するように構成される第5の温度センサを含み、前記提供する工程は、前記温水の出力が予め定められた出力の温度であるような第5の温度にさらに基づく、
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記システムは、
第2のフロージェネレータをさらに含み、該第2のフロージェネレータは:
(i)前記温水の出力に動作可能に接続される入力を含み;
(ii)前記冷水供給部に動作可能に接続される出力を含み;および
(iii)アクティブにされると、前記2次ループの水のフローを生成するように構成され、および前記アクティブにする工程は、前記第2のフロージェネレータを、前記の指定された期間のあいだ指定された時点でアクティブにすることをさらに含む
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記システムは、
前記熱交換器の2次ループの出力に動作可能に接続され、第4の温度を測定するように構成される、第4の温度センサ
をさらに含み、
前記提供する工程は、前記第4の温度の一時的な熱応答特性にさらに基づく、
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のフローセンサはフローの不足を測定し、
前記第5の温度センサが前記予め定められた出力温度を測定するまで、前記第1のフロージェネレータと前記第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のフローセンサはフローの不足を測定し、
前記第1の温度センサが予め定められたタンク使用温度を測定するまで、前記第1のフロージェネレータと前記第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
予め定められたシステムパラメータが収集されるまで、前記第1のフロージェネレータおよび/または前記第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記システムは、周囲温度を測定するように構成される温度センサをさらに含み、および
前記周囲温度に基づいて、前記第1のフロージェネレータ、前記第2のフロージェネレータ、および前記インラインのヒータをアクティブにする工程であって、それによって前記2次ループから前記1次ループまで熱を伝達し、前記熱伝達流体の温度を上昇させる、工程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の温度に基づいて、前記第1のフロージェネレータをアクティブにする工程であって、
それにより前記1次ループから前記2次ループまで熱を伝達し、前記熱伝達流体の温度を下降させ、前記太陽熱コレクタの過熱を防ぐ、工程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の温度に基づいて、前記第1のフロージェネレータおよび前記第2のフロージェネレータをアクティブにする工程であって、それにより前記1次ループから前記2次ループまで熱を伝達し、前記熱伝達流体の温度を下降させ、前記太陽熱コレクタの過熱を防ぐ、工程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
上記の請求項の何れか1つを実施するように構成されるシステム・コントローラ。
【請求項22】
コンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ可読記憶媒体は、太陽熱を利用した水の加熱のためのコンピュータ可読コードがその上に埋め込まれており、該コンピュータ可読コードは、
(a)第1のフロージェネレータが1次ループに対してアクティブである間、太陽熱コレクタを含む1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定するための;
(b)
(i) 前記2次ループの水のフロー;
(ii) 現在の第1の温度;および
(iii)前記第1の温度の一時的な熱特性:
に基づいて
(i)前記1次ループ中の前記第1のフロージェネレータ、および
(ii)前記2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることにより、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供するための;
プログラムコードを含む、
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項23】
ネットワークを通じてクライアントコンピュータに接続されたサーバにロードされ得るコンピュータープログラムであって、その結果、コンピュータープログラムを実行するサーバは、上記の請求項の何れか1つに従ってシステム中にシステム・コントローラを構成する、コンピュータープログラム。
【請求項24】
ネットワークを通じてサーバに接続されたコンピュータにロードされ得るコンピュータープログラムであって、その結果、コンピュータープログラムを実行するコンピュータは、上記の請求項の何れか1つに従ってシステム中にシステム・コントローラを構成する、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本発明は、2013年4月2日に出願された仮特許出願(PPA)シリアル番号第61/807329号の利益を主張し、該仮出願は引用により組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は全般的に、太陽熱加熱に関し、特に、太陽熱を利用した水の加熱(solar assisted water heating)の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の家庭用温水ストレージシステムは、典型的には、太陽熱とバックアップの熱を組み合わせる。1つの一般的な太陽熱温水システム(solar water heating system)の構造は、従来の熱サイフォンシステムの図である図1に示される、熱サイフォンシステムとして知られている。熱サイフォンシステムは、温暖で暖かい気候においてコスト効率が良く、使用可能であるが、湯あかや腐食による目詰まりに苦しむ傾向にある。このシステムは、夜間など寒い期間中、屋外タンクを必要とされる家庭用温水(DHW)温度(多くの場合レジオネラ病のリスクを防止するために摂氏65度[℃])まで加熱する必要があるために、および逆熱サイホン(reverse thermo siphoning)による熱損失のために、寒冷な気候においてはエネルギー的に非効率である。
【0004】
熱サイフォンシステムの代替物であり、寒冷な気候でより一般的な、従来のコンビ−システムの図解である図2を参照されたい。コンビシステムは、タンク(200)をコレクター(202)から分離し、それによりタンク(200)を(住居の)内側に配置できる。この構成は、寒冷な気候での熱損失を多少低減するが、それでも上記の熱サイフォンシステムなどにおける満杯のタンクの加熱を必要とする。外部コレクターループ(204)は、潜在的に凍結温度に晒されているので、このループは全般的にグリコールで満たされている。この場合、多くのヨーロッパ諸国での調節には、飲料水の汚染のリスクを防ぐために、付加的な熱交換器ステージ(図示せず)が必要となる。この調節により、エネルギー効率がさらに低減される。
【0005】
代替的な従来のコンビ−システムの図解である図3を参照されたい。この代替的なコンビ・システムは、上記(図2の)コンビ・システムを改良したものである。この改良されたシステムは、タンク内にタンクがある構造(tank−in−a−tank architecture)により調節上の要求を克服するが、実質的にはコストを増加させる。
【0006】
上記従来システムのほとんどは、付加的なフロージェネレータおよびフローループが温水システムに含まれない限り、消費者がお湯の蛇口を開く時、比較的遅い応答時間および変動する温度に悩まされ、システムのコストをさらに増加させる。太陽熱温水システムについての更なるリスク因子は、パイプおよびコレクタ凍結のリスクである。この問題に対する一般的な解決策は、太陽熱伝達ループにおいてグリコールまたは他の凍結防止剤を使用することである。この一般的な解決策は高価であり、グリコールへの損傷並びに上に明示されるような調節システムの複雑な問題(complications)から保護するために、グリコール、ドレインバックシステム、および過熱防止装置の定期的な交換を必要とする。
【0007】
したがって、従来の解決法より低いコスト、高いエネルギー効率、および迅速な応答時間を有する、太陽熱を利用した水の加熱のための改良されたシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本実施形態の教示によると、太陽熱を利用した水の加熱のためのシステムが提供され、該システムは:
1次ループ(a primary loop);
1次ループに動作可能に接続され、第1の温度を測定するように構成される、第1の温度センサ;
1次ループでフローを生成するように構成される第1のフロージェネレータ;
1次ループに動作可能に接続され、熱伝達流体(heat transfer fluid)のフローを測定するように構成される、第1のフローセンサ;
1次ループおよび2次ループに動作可能に接続される熱交換器;
入力および出力を有し、2次ループに動作可能に接続されるインラインの温水器;
とシステム・コントローラを含み、
該システム・コントローラは、
第1のフロージェネレータがアクティブな間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定するために;
2次ループの水のフロー;
現在の第1の温度;および
第1の温度の一時的な熱特性:に基づいて、
1次ループの第1のフロージェネレータ;および
2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることによって、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供するために;
構成される。
【0009】
随意の実施形態では、
1次ループは入力および出力を含む太陽熱コレクタをさらに含み;
インラインのヒータの出力は、温水の出力に動作可能に接続され;
熱交換器は:
1次ループの出力;
太陽熱コレクタの出力に動作可能に接続された1次ループの入力;
冷水供給に動作可能に接続された2次ループの入力;および
インラインのヒータ入力に動作可能に接続された2次ループの出力;
を含み、
それによって、冷水供給部から熱交換器までの、および熱交換器の2次ループの出力からインラインのヒータを介して温水出力までの、2次ループを定め;
第1の温度センサは太陽熱コレクタの出力に接続され;
第1のフロージェネレータは:
熱交換器の1次ループの出力に動作可能に接続される入力を含み;
太陽熱コレクタの入力に動作可能に接続される出力を含み;および
アクティブにされると、太陽熱コレクタの出力から熱交換器の1次ループの入力までの、および1次ループの出力から熱交換器のフロージェネレータを介して太陽熱コレクタの入力までの、熱伝達流体のフローを生成するように構成され、
第2のフローセンサは、2次ループに動作可能に接続され、および2次ループ中の水のフローを測定するように構成され、
ここで、第1のフロージェネレータは、指定された時点で指定された期間アクティブである。
【0010】
別の随意の実施形態では、太陽熱コレクタは統合太陽熱ストレージコレクタ(ISC)である。別の随意の実施形態では、ISCは透明に(transparently)絶縁される。別の随意の実施形態では、1次ループの熱伝達流体は水である。別の随意の実施形態では、2次ループは飲用に適した家庭用温水を提供する。別の随意の実施形態では、第1のフロージェネレータは可変のフロージェネレータである。別の随意の実施形態では、システム・コントローラは、比例積分微分(PID)コントローラである。
【0011】
本実施形態の教示によると、太陽熱を利用した水の加熱についての方法が提供され、該方法は:
第1のフロージェネレータが1次ループについてアクティブである間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定する工程;
2次ループの水のフロー;
現在の第1の温度;および
第1の温度の一時的な熱特性:に基づいて、
1次ループの第1のフロージェネレータ;および
2次ループ中のインラインの温水
をアクティブにすることにより、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供する工程;
を含む。
【0012】
随意の実施形態は:
システム中で第1の温度を測定する工程であって:該システムは、
入力と出力を含む太陽熱コレクタ;
入力と出力を有するインラインのヒータであって、該出力は温水の出力に動作可能に接続される、インラインのヒータ;
熱交換器であって、該熱交換器は、
1次ループの出力;
太陽熱コレクタに動作可能に接続された1次ループの入力;
冷水供給に動作可能に接続される2次ループの入力;および
インラインのヒータの入力に動作可能に接続される2次ループの出力;
を含み、
それによって冷水供給部から熱交換器までの、および、熱交換器の2次ループの出力からインラインのヒータを介して温水出力までの、2次ループを定める、
熱交換器;
太陽熱コレクタに動作可能に接続される第1の温度センサ;
第1のフロージェネレータであって、該第1のフロージェネレータは:
熱交換器の1次ループの出力に動作可能に接続される入力を含み;
太陽熱コレクタの入力に動作可能に接続される出力を含み;および
アクティブにされると、太陽熱コレクタの出力から熱交換器の1次ループの入力までの、および熱交換器の1次ループの出力から第1のフロージェネレータを介して太陽熱コレクタの入力までの、熱伝達流体の流れを生成するように構成される、
第1のフロージェネレータ;
1次ループに動作可能に接続され、および熱伝達流体の転移を測定するように構成される、第1のフローセンサ;
2次ループに動作可能に接続され、および2次ループ中の水のフローを測定するように構成される、第2のフローセンサ;
を含み、
ここで、第1の温度は第1の温度センサにより測定される
工程;
指定された時点で指定された期間、第1のフロージェネレータをアクティブにする工程;
第1のフロージェネレータがアクティブな間、第1の温度センサによって第1の温度の一時的な熱特性を測定する工程;
2次ループの水のフロー
現在の第1の温度
および第1の温度の一時的な熱特性
に基づいて、
第1のフロージェネレータ:および
インラインの温水器
をアクティブにすることにより、
温水の出力に2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供する工程;
を更に含む。
【0013】
別の随意の実施形態では、アクティブにすることは、
周期的な時間;
60分ごと;
あらかじめ定められた時間;
システム測定の評価に基づく時間;
反応特性予測を改良するために、一時的な熱応答の特性に適用された機械学習アルゴリズムに基づく時間;
2次ループ中の水のフローの特性に基づく時間;および;
システムユーザーによる温水の使用に相応する温水の出力の評価に基づく時間;
から成る群から選択される、指定された時点で行われる。
【0014】
別の随意の実施形態では、システムは温水の出力に動作可能に接続され、および第5の温度を測定するように構成される第5のセンサを含み、提供の工程は、温水の出力が予め定められた出力の温度であるような第5の温度にさらに基づく。
【0015】
別の随意の実施形態では、システムは第2のフロージェネレータ:をさらに含み、該フロージェネレータは、
温水の出力に動作可能に接続される出力を含み;
冷水供給部に動作可能に接続される出力を含み;および
アクティブされると、2次ループの水のフローを生成するように構成され、およびアクティベーションの工程は、第2のフロージェネレータを、指定された時点で指定された期間アクティブにする工程をさらに含む。
【0016】
別の随意の実施形態では、システムは、熱交換器の2次ループの出力に動作可能に接続され、および第4の温度を測定するように構成される第4の温度センサをさらに含み、提供の工程はさらに、第4の温度の一時的な熱応答特性にさらに基づく。
【0017】
別の随意の実施形態では、第2のフローセンサはフローの不足を測定し、第5の温度センサが予め定められた出力温度を測定するまで、第1のフロージェネレータと第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む。
【0018】
別の随意の実施形態では、第2のフローセンサはフローの不足を測定し、第1の温度センサが予め定められたタンクの使用温度を測定するまで、第1のフロージェネレータと第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む。
【0019】
別の随意の実施形態は予め定められたシステムパラメータが収集されるまで、第1のフロージェネレータおよび/または第2のフロージェネレータをアクティブにする工程をさらに含む。
【0020】
別の随意の実施形態では、システムは、周囲温度を測定するように構成される周囲温度センサをさらに含み、および、周囲温度に基づいて、第1のフロージェネレータ、第2のフロージェネレータ、およびインラインヒータをアクティブにし、それによって2次ループから1次ループまで熱を伝達し、熱伝達流体の温度を上昇させる、工程をさらに含む。
【0021】
別の随意の実施形態は、第1の温度に基づいて、第1のフロージェネレータをアクティブにし、それによって1次ループから2次ループまで熱を伝達し、熱伝達流体の温度を下降させ、太陽熱コレクタの過熱を防ぐ、工程をさらに含む。
【0022】
別の随意の実施形態は、第1の温度に基づいて、第1のフロージェネレータおよび第2のフロージェネレータをアクティブにし、それによって1次ループから2次ループまで熱を伝達し、熱伝達流体の温度を下降させ、太陽熱コレクタの過熱を防ぐ、工程をさらに含む。
【0023】
本実施形態の教示によれば、現在の記述の特徴のいずれかを実施するように構成されるシステム・コントローラが提供される。
【0024】
本実施形態の教示によれば、コンピュータ可読記憶媒体が提供され、該コンピュータ可読記憶媒体は、太陽熱を利用した水の加熱のためのコンピュータ可読コードがその上に埋め込まれており、該コンピュータ可読コードは、
第1のフロージェネレータが1次ループについてアクティブである間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定するための;
1次ループの第1のフロージェネレータ;および
2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることにより、
2次ループの水のフロー;
最新の第1の温度;および
第1の温度の一時的な熱特性:
に基づいて2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供するための
プログラムコードを含む。
【0025】
本実施形態の教示によれば、ネットワークを通じてクライアントコンピュータに接続されたサーバにロードされ得るコンピュータープログラムが提供され、その結果、コンピュータープログラムを実行するサーバは、現在の記述の任意の特徴に従ってシステム中にシステム・コントローラを構成する。
【0026】
本実施形態の教示によれば、ネットワークを通じてサーバに接続されたコンピュータにロードされ得るコンピュータープログラムが提供され、その結果、コンピュータープログラムを実行するコンピュータは、現在の記述の任意の特徴に従ってシステム中にシステム・コントローラを構成する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本実施形態は、添付の図面を参照することで、ほんの一例としてのみ本明細書に記載されている。
【0028】
図1】従来の熱サイフォンシステムの図解である。
図2】従来のコンビ・システムの図解である。
図3】代替的な従来のコンビ・システムの図解である。
図4】太陽熱を利用した水の加熱のためのシステムの典型的な図解である。
図5】代替的および典型的な図4の実施形態である。
図6A】代替的な実施形態の入力および出力を記載する表である。
図6B】典型的な機能、タイプ、および範囲での、代替的な実施形態のシステムパラメータを記載する表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<詳細な説明−図1−6B>
本実施形態にかかるシステムの原理および操作は、図面および付随する説明を参照することで一層よく理解され得る。本発明は太陽熱を利用して水を加熱するためのシステムである。システムは、より低いコスト、より高いエネルギー効率で、およびより迅速な応答時間でユーザに温水を提供するのを促進し、従来のシステムと比較して、エネルギー損失を低減しユーザの快適性を向上させる。
【0030】
革新的な基本構造は4つの主な構成要素を含む:
太陽熱コレクタ、
熱交換器、
インラインヒータ、および
コントロールシステム。
【0031】
これらの4つの主な構成要素は、個別に、および様々な従来の解決策において使用されるが、しかし、現在の実施形態は、太陽熱を利用した水の加熱の分野における長年のニーズに対する解決策を提供する、革新的な組み合わせである。従来の解決策と比較して現在の実施形態の特徴は次のものを含む:
1次および2次ループの分離によるレジオネラのリスクの防止。
凍結予防シーケンスの実施によって凍結しない。
統合ストレージコレクタの体積熱容量によって、過熱がない。
1次または第2のループ中でグリコールが要求されない。
閉じた1次ループによって湯あか又は腐食がない。
予測制御ループによる速い温度の応答時間。
低減されたポンプ・エネルギー使用量。
低い初期コスト。
低減された貯蔵スペース(cellar space)
フローの変動での、DHW温度の快適性および安定性。
【0032】
任意の太陽熱コレクタが本実施形態において使用され得るが(例えば「正規の」/フラットパネル集熱器)、システムは、太陽熱コレクタが統合太陽熱ストレージコレクタ(ISC)である好ましい実施形態を用いて記載されよう。ISCは当該技術分野で既知であり、典型的なISCの実装は、統合熱ストレージモジュールを含む。当業者は、例えば1次ループ又は2次ループの別の場所における熱ストレージモジュールといった、他の実装が可能であることを理解するだろう。別の好ましい実施形態では、ISCは、環境中への放射性の、伝達性の、および伝導性の熱損失を低減するために、透明な絶縁体の使用を含む。透明な絶縁された太陽熱ストレージコレクタの一例は、米国特許出願第#US2010000143201号中に示され、その全体が引用により含まれる。本実施形態は、様々な用途について流体を加熱するために使用できるが、本記載では、家庭用温水(DHW)を提供する好ましい実装が使用される。本記載を明確にするために、ISCと熱交換器との間の1次ループ中の熱伝達流体として、水が使用されるだろう。
【0033】
ここで図面を参照し、図4は、太陽熱を利用した水の加熱のためのシステム(400)の典型的な図解である。太線が水および/または熱伝達流体のフローを表す一方、細線は入力/出力フローの接続のデータを表している。家庭用の冷水(DCW)はシステム(400)の2次ループ(402)への入力である。DCWの入力フローは、入力フローセンサ(F2)によって測定され、入力DCWの温度はDCW入力温度センサ(T3)によって測定される。熱交換器HEX(408)は、2次ループ(402)中に入って来るDCWと1次ループ(401)との間で熱を伝達する。熱交換器は、当該技術分野で既知であり、商業的なソースから入手可能である。本記載に基づいて、当業者は、特定の実装のための適切な熱交換器を選択できよう。HEXから二次ループ(402)への水の出力温度は、第4の温度センサ(T4)によって測定される。インラインヒーター(404)は、家庭用温水(DHW)のHEXからの水を加熱するために使用できる。DHW温度センサ(T5)は、DHWとして供給されるインライン・ヒーター(404)からの水の温度を測定する。供給されるDHWの実際の温度は、出力温度(Tout)として示される。典型的には、所望のおよび/または必要とされる家庭用温水(DHW)の温度(T_hot_water)は、55℃のようにあらかじめ決定される。1次ループ(401)では、熱伝達流体(この典型的な記載においては水である)のフローは、1次ループのフローセンサ(F1)で測定される。第2の温度センサは、HEXから来てISCに入る1次ループ(401)中の水の温度を測定する。第1の温度センサー(T1)は、ISCを出てHEXに流れ込む1次ループ(401)中の水の温度を測定し、それは一般的にISC中の水の温度と相当する。ISCの環境の周囲温度は温度センサー(Tambient)で測定される。1次ループのフロージェネレータ(G1)は、フローセンサ(F1)と第2の温度センサ(T2)との間に実装され得る。G1をアクティブにすると、水は1次ループ(401)に流れ、ゆえに、熱は1次ループ(401)を流れる。同様に、2次ループのフロージェネレータ(G2)は、A)T5とDHWの間から、B)F2とT3の間まで、実装され得る。G2をアクティブにすると、水は2次ループ(402)に流れ、ゆえに、熱は2次ループ(402)を流れる。好ましくは、フロージェネレータは可変のフロージェネレータである。
【0034】
システムコントローラ(406)は、温度センサ(T1、T2、T3、T4、T5、Tambient)、フロージェネレータ(G1、G2)、およびインラインのヒーター(404)のすべてに、好ましくは接続される。システムパラメータは、限定されないが、温度(T1、T2、T3、T4、T5、Tambient)、流量(F1、F2)、あらかじめ定められた値、動作中に変化する値、使用情報、およびユーザの入力など、システム構成要素からの任意の情報を含む。システムパラメータは、派生したパラメータ、例えば、一時的な熱特性などの時間(t)に依存して測定される特性値も、含むことができる。フローセンサによるフローの不足の測定は、該フローセンサについてそれぞれのループがアクティブでないことを示し、言いかえれば、熱伝達流体または水は流れておらず、そのループのパイプ中で循環していないことを示す。
【0035】
本記載に基づいて、当業者は、限定されないが、付加的なセンサの追加、より少ないセンサの使用、フロージェネレータの位置の変更、より少ないフローの追加または使用、およびより少ない制御接続の追加または使用を含む、特定の用途のニーズを満たすような実装を設計し、配置することができよう。
【0036】
本記載では、センサ、およびそのセンサで測定されたパラメータの値について、同一の表記が使用されることに留意されたい。例えば、DCW入力温度センサ(T3)は、本記載で入力温度(T3)として称される、入力DCWの温度を測定する。装置についての表記の使用か、または装置が測定するパラメータについての表記の使用は、表記の使用の文脈から明白であろう。
【0037】
測定された値の特性は全般的に時間(t)に依存し、形式T3(t)の共通の表記を使用し、ここでT3(t)は、DCW入力温度センサ(T3)で測定されるような温度(T3)の時間変化する値(time−varying value)である。
【0038】
本実施形態では、システムコントローラ(406)は主として、システム(400)の構成要素に関連した電力の量に基づいて作動する。システム(400)の所要電力(Preq)は、DCWの入力温度(T3)および入力流量(F2)の測定により瞬時に計算され得る。DHWの既知の要求温度(例えばTout=65℃)を考慮して、所要電力Preqは下記により決定することができ:
req=C(Tout−T),
式中Cvは水の体積熱容量である。この所要電力は主として、ISCから1次ループ(401)を通り、インラインヒーター(404)によって必要とされるように補充され、それにより、Preqは、P(2次ループ(402)中の電力である)とP(インラインヒーター(404)の電力である)との合計である。
req=P+P
【0039】
DHWのタップが開かれるとき、入力のフローF2は、入力フローセンサ(F2)によって検知され、故にシステムコントローラ(406)で検知される。信号は、システムコントローラ(406)から1次ループのフロージェネレータ(G1)まで送信される。2次ループ(402)の電力Pは、下記により決定される:
=C(T−T
【0040】
第1の温度(T1)および第2の温度(T2)が便宜的に熱交換器(HEX)の近くで測定される場合、その後2次ループ(402)で生成された電力(P)は、1次ループ(401)中の電力(P)に等しいと想定され、それは、
=P
である。
【0041】
したがって、インラインのヒータ404によって必要とされる電力Pは、次の方程式:
【0042】
【数1】
から決定することができる。
【0043】
定常状態において、システムの上述の動作により、インラインヒータの電力Phを決定できる。第1のケース、すなわち、ISCの水温が十分に高いとき、必要な1次ループフロー(F1)は、2つのループの電力(1次ループ(400)のP1、および2次ループ(402)のP2)を均等にすることで決定され得る:
【0044】
【数2】
【0045】
予測制御ループ
典型的なインラインヒータのコントロールシステムは、標準のPID(比例積分微分)コントローラのロジックを使用して、DHW温度センサからの温度フィードバックに依存する。しかしながら、配管と熱交換器中の水の有限体積および温度の不確実性、並びに太陽熱コレクタに蓄えられた未知の温度(つまり熱容量)によって、DHWセンサからの信号と応答との間にタイムラグが生じるのは避けられない。故に、従来の太陽熱を利用した水の加熱システムの性能を改良するための予測制御が必要とされている。
【0046】
実際には、Toutは一定に設定され、温度T3は1日または1シーズンにわたってただゆっくりと変わるが、温度T1およびT2は速く変わることができ、太陽熱コレクタ/熱ストレージモジュール中に現在蓄えられているエネルギー量に依存し得る。太陽熱を利用した水の加熱のための予測制御を実装するシステムの実施形態は、1次ループ(401)の周期的な活性化を特色とする。周期的に、例えば60分ごとに、1次ループのフロージェネレーター(G1)は、短い周期のあいだ熱をHEX中に流れさせる、予測的なコントローラの事象中においてシステムコントローラー(406)によって活性化され得る。短周期はあらかじめ定められるか、またはシステムパラメータに基づくG1の各々の周期的な活性化について計算され得る。周期的な活性化により、2つのパラメータをシステム・コントローラ(406)中で測定し、更新することが可能となる:1)ストレージコレクタ中の水温(上に記載されるように、T1に相当する)、および、1次ループのフロー(F1)のスイッチが押される(すなわち1次ループのフロージェネレータ(G1)が活性化される)時間でT1温度が変化する割合。これら2つのパラメータは、DHWタップが開放され、フローが入力フローセンサ(F2)で検出される際、p(t)からのインラインのヒータの1次的な熱特性と1次ループのフローF(t)からのインラインヒータの一過的な熱特性を制御するために使用することができる。この事象はまた、周期的に生成されるフロー事象(1次ループ(401)の周期的な活性化)間において、一時的な熱特性Ph(t)の更新を可能にする。
【0047】
代替的な実施形態では、予測制御は2次ループ(402)に適用され得る。この場合、周期的に、例えば60分ごとに、フロージェネレータ(G1およびG2)の両方は活性化されて、すべてのシステムパラメータがシステム・コントローラ(406)中で測定され更新されることが可能となる。更新は、1次ループ(401)中の定常状態の水温(すなわち温度(T1))、2次ループ(402)中の定常状態の水温(すなわち温度T4)、および、一時的な熱の反応特性T4(t)と称される、フローのスイッチが押される時間で温度(T4)が上昇する速度を更新することを含む。更新されたパラメータは、DHWタップが開放され、フローが入力フローセンサF2で検出される際、P(t)および/またはF(t)からの一過的な熱特性を制御するために、システムコントローラ(406)によって使用され得る。この代替的な実施形態への可能な改良は、経時的に一時的な熱応答特性をモニターし、応答特性の予測を改良する、遺伝的アルゴリズムまたはニューラル・ネットワーク・アルゴリズムのような機械学習アルゴリズムの使用である。これにより、インラインヒータの電力(P)をDHW温度センサー(T5)からの応答を待たずにセットすることが可能となり、温度(T5)がToutで安定するときに限り、Pは、センサ(T5)により活性化されるシステムコントローラ(406)のコントロールに戻ることができる。
【0048】
予熱機能
DHWタップが開かれた瞬間から温水がユーザに入手可能となるまでの待機時間を最小限にするために、本実施形態は予熱機能をさらに含み得る。この予熱機能は、1次ループのフロージェネレータ(G1)を作動させ、それから短時間(予測された一時的な熱応答特性T4(t)に基づく短時間)の後に、2次ループのフロージェネレータ(G2)を作動させることにより、2次ループ(402)中のフローを生成することができる。代替的には、1次ループのフロー・ジェネレータ(G1)と同時に、2次ループのフロージェネレータ(G2)を作動させる。この予熱機能は、T5またはT1のいずれかに基づくサーモスタットになり得、それによって、設定時間の間、温度が設定値を下回る場合に予熱機能が作動する。代替的には、予熱機能は、浴室などでのライトのスイッチのような外部信号により活性化することができる。
【0049】
凍結防止機能
本実施形態は、凍結防止機能を追加的または代替的に含むことができ、1次(外部)ループ(401)または2次ループ(402)中のISCまたは配管の凍結を防ぐ。この場合、モニターされる温度は、周囲温度Tambientか、または代替的に温度T1を含む。モニターされる温度の1つが特定の設定値を下回る場合、システム(400)は逆作動する。システム(400)の逆作動は、インラインヒータ(404)、1次ループ(401)中のフロージェネレータ(G1)、および2次ループ(402)中のフロージェネレータ(G2)を作動させることにより、2次ループ(402)中のフローを生成することができる。熱交換器(HEX)は逆作動し、温水を押し出し、ISCへとインラインヒーター(404)によって加熱して、1次ループ(401)中で水(熱交換流体)の凍結を防ぐ。凍結防止機能(作動モード)を活性化するための代替の指標は、(予測的コントローラの事象により決定されるような)ISC中の温度が予め定められた設定値を下回ることであり得る。この凍結防止機能は、1次ループ(401)において、水、特に、水/グリコールではなく単に水の使用を可能にし、凍結防止液なしで1次ループの作動を可能にする。
【0050】
全般的に、太陽熱を利用した水の加熱のシステムの本実施形態の実装は、1次ループおよび2次ループを含む。1次ループは:
1次ループに動作可能に接続され、第1の温度を測定するように構成される、第1の温度センサ;
1次ループでフローを生成するように構成される第1のフロージェネレータ;および
1次ループに動作可能に接続され、熱伝達流体のフローを測定するように構成される、第1のフローセンサ;
を含む。
熱交換器は、1次ループおよび2次ループに動作可能に接続される。2次ループは、入力および出力を備えるインラインのヒータを含む。システム・コントローラは:
第1のフロージェネレータがアクティブな間、1次ループ中の第1の温度の一時的な熱特性を測定するために;
2次ループの水のフロー;第1の温度;および第1の温度の一時的な熱特性:に基づいて
1次ループの第1のフロージェネレータ;および
2次ループ中のインラインの温水器
をアクティブにすることにより、
2次ループ中の太陽熱を利用した水の加熱を提供するために;
構成される。
代替的な典型的な実施形態
【0051】
ここで、図4の上記実施形態の代替的および典型的な実施形態である、図5を参照されたい。基本システムの4つの主要構成要素に加え、本実施形態(501)は、以下の3つの主要サブシステムを特色とする:
第1の主要なサブシステムは、好ましくは透明な絶縁体ベースである、太陽熱コレクタであって、4.6mの収集面積を有する典型的な〜300リットルの加圧されていないストレージタンクを含み、どんな温度センサまたは発熱体も含まないことで、センサおよび/または能動素子を欠くコレクタの使用を可能にし、ストレージタンクの水が、水道水または水/グリコール混合物を使用する真水モジュール(FWM)での閉鎖循環中にある太陽熱コレクタである。
第2の主要なサブシステムは、HEX(508)、インライン電気ヒータ(504)、1次循環ポンプ(G3)(好ましくは高効率、速度制御される)、2次循環ポンプ(G4)、可変のフローセンサ(VFS)ユニット、すべてのセンサ位置でのセンサのための乾燥したウェル、膨張容器(528)、減圧弁(522)および混合モジュール部品(図示せず)、シャットオフ弁(図示せず)、安全弁(減圧弁(522、524)を含む)、排気部(air release)(520)(過熱保護のためにも使用される)、およびドレン弁(526)、を含む、真水モジュール(FWM)である。
第3の主要なサブシステムは、コントロールシステム(506)である。
【0052】
本実施形態は、可能な場合は常に(コレクターユニットからの)蓄積された太陽エネルギーを利用し、最適なユーザの快適性を達成するために、インラインの電気ヒーター(504)で追加の必要な熱を補う。制御システム(506)は、最適なユーザの快適性および効率的なエネルギー利用を維持し、システム全体の信頼性および安全性を提供するように設計されている。さらに、システムはユーザ・フレンドリーなデータを表示し、遠隔の制御および利用を可能にするだろう。明瞭性のために、システム・コントローラ(506)からセンサおよび他の部品までの接続は、本図面中では示されていない。
【0053】
現在の図のほとんどの要素は、先に記載された要素と比較可能であり、次のものを含む:
コレクタ(500)−ISC
(「コレクターサイクル」としても知られている)1次ループ(501)−1次ループ(401)
2次ループ(502)(「DHWサイクル」としても知られている)−2次ループ(402)
インラインヒータ(404)−電気ヒータEH(504)
コントローラ(506)−システム・コントローラ(406)
熱交換器HEX(408)−熱交換器HEX(508)
AMBIENT−TAMBIENT
S1−T1
S2−T2
S4−T4
可変のフローセンサ(温度)VFS(T)−T5
第3のフロージェネレータ(G3)−第1のフロージェネレータ(G1)
第4のフロージェネレータ(G4)−第2のフロージェネレータ(G2)
【0054】
図5はさらに次のものを含む:
第1のフローセンサ(F1)および第2のフローセンサ(F2)の機能性に類似しているが、DHWのフローを検知するのに動作可能であるフローセンサ(フロー)VFS(F)。
第2の循環へ戻る温度を測定するのに動作可能である温度センサ(S9)。
熱交換器の中へと)DCW(の温度を測定するのに動作可能である温度センサ(S8)。
上記真水モジュール(FWM)および関連する部品。
【0055】
本実施形態の入力および出力を記載する表である図6Aを参照し、典型的な機能、タイプおよび範囲を有するシステムパラメータを記載する表である図6Bを参照されたい。
【0056】
本実施形態は以下のものを含む、コントローラ(506)により実施されるような様々な機能を支援できる:
1.標準的な使用:
a.電気加熱支援
b.支援なし(単に太陽熱)
c.電気加熱のみ(太陽熱なし)
2.予想される使用への循環
3.データ収集
4.タンクの予熱
5.凍結防止
6.過熱防止(OHP):
a.OHP1循環−1次ループ(501)のみ
b.OHP2極端(extreme)−1次ループ(501)から水を抜き取り、2次ループ(502)により冷却する。
【0057】
ここで機能の典型的な実装を記載する。
【0058】
機能1:
「標準的な使用」
本機能では、温水は、給水栓(DHW)を開くことによってユーザにより消費される。水が出るとき、コレクタからの温水は、要求温度で水道水を供給するために循環する。必要に応じて、電気加熱が加えられる。トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0059】
【表1】
【0060】
供給されたDHWの最大限のユーザの快適性を可能にするための最大電力で、メインポンプ(第3のフロージェネレータ(G3))および電熱(電気ヒーターEH504)は、アクティブにされる。VFS(T)の温度がT_hot_waterに達する際、EH504が止められる。S4温度がT_hot_water+2度に達するとき、メインポンプ(G3)の速さは温度(S4)を維持するように(EHの変動を回避するように)調節される。電気ヒータは、必要に応じて再度つけることができる。コレクター(500)からの温水の温度(S1)が、30秒など所定の整定時間(XS)の後にDCW(S8)より冷たければ、主ポンプ(G3)は止められ、EH504を介する電熱のみが必要に応じて(PID調節計506で)活性化されるだろう。
【0061】
機能2:「予想される使用への循環」
本機能において、システムは、予想される水のタッピング(DHWの使用)への水循環により予熱を実行する。両方のループ(1次ループ(501)および2次ループ(502))中の水は、予想される(予期される)水のタッピングでの使用のために加熱される。ユーザの快適性および応答時間を改良するために、ループ中の水の加熱は、外部トリガーが活性化される(例えば浴室光をつける)時に、又は水のタッピングの予めセットされた時間に向かって、始まる。
【0062】
トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0063】
【表2】
【0064】
両方のポンプ(G3とG4)は、温水を循環させシステムを加熱するために活性化される(1次、2次循環)。循環は予め定められた時間の間(X秒)継続する。
【0065】
機能3:「データ収集」
本機能において、データは、1次ループ(501)および/または2次ループ(502)中で水を循環させることにより、センサから収集される。この機能は、予想される使用のためのシステムを準備するために、および、凍結または過熱に対するシステムの保護を確認するために使用することができる。温度は、いくつかの、および/またはすべてのセンサ中で適宜測定され、コントローラに報告され、データ解析のために保存される。
【0066】
トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0067】
【表3】
【0068】
両方のループ(1次(501)および2次(502))の水の循環は、すべてのセンサ(DCW−S8を除く)での温度測定を可能にする。両方のポンプは、安定のために、定められた期間(X_meas_length)の間、好ましくは同じ速さで活性化される。測定値は、定められた「データ収集時間」(Data_collect_time)から始めて、および、その後2時間ごと(昼夜兼行で2時間ごとに、を意味する)などの続く時間に、コントローラ中で読み取られ保存される。
【0069】
このデータに基づいて、他の機能は、凍結防止、過熱防止、およびタンクの予熱のように、活性化され得る。
【0070】
機能4:「タンクの予熱」
本機能では、コレクタのタンク中の水の逆加熱(reverse heating)が、予想される使用に向けて行なわれる。コレクタのタンク中の水の逆加熱は、水のタッピングの間に要求温度に達し得るために必要かもしれない。
【0071】
トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0072】
【表4】
【0073】
コントローラは、予め設定された時間でユーザにより要求されたシャワーの数、およびシステムの状態のような情報に基づいて、逆加熱の活性化を決定することができる。この場合、電気加熱および両方のポンプは活性化され、その結果、コレクタ中の水は熱交換器を介して電気加熱器から来る水により加熱される。加熱の開始時間および長さは、最後に保存されたデータに基づいて、および最後の測定と予想されるシャワー時間との時間差に基づいて決定されて、1次ループ中の熱伝達流体はあらかじめ定められたタンク使用温度(Tank_use_temp)まで加熱される。
【0074】
機能5:「凍結防止」
本機能では、水は、パイプ中の水の凍結および循環の遮断を防ぐために、循環する。水循環のパイプおよびブロッキングの水の凍結を防ぐために、水は、最小温度(Water_min_temp)より高く保たれなければならない。データ収集に基づいて必要とされた時、水は、水を加熱し凍結を防ぐために両方のループ中で循環されるべきである。
【0075】
トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0076】
【表5】
【0077】
データ収集または水のタッピング中に測定される温度に基づいて、水の凍結は、両方のループ中の水を循環させることで防ぐことができる。水温(Water_min_temp)がすべての温度センサ中で達成されることを最小限に必要とされるまで、両方のポンプ(G3、G4)が活性化されるだろう。周囲温度が非常に低かった場合、データ収集測定間の時間ギャップは一時的に減少させることができる(Critical_amb_temp)。
【0078】
機能6:「過熱防止」
本機能では、水はコレクタの過熱を防ぐために循環される。コレクタの過熱を防ぐために、タンク中の水は、最大のあらかじめ定められた温度(Water_max_temp)の下で保たれねばならない。データ収集に基づいて必要とされる時、水は、2次ループ中の水にエネルギーを移し、コレクタ中の水の熱を低減するために、1次ループ中で循環するべきである。より深刻な場合では、この循環が必要に応じて温度を下げない(温度を十分に下げることに失敗する)とき、循環へ冷水(DCW)を加えている間、2次ループも循環させられる。その後、1次ループの水は熱交換器を介して冷却される。
【0079】
トリガー、入力、パラメータ、および出力は、以下の表でのように要約できる:
【0080】
【表6】
【0081】
データ収集または水のタッピング中に測定される温度に基づいて、コレクタの過熱は、1次ループ中の、または両方のループ中の水を必要に応じて循環させることによって防ぐことができる。まず、メインポンプ(G3)が活性化され、1次ループ中の水の循環が始まる。この動作が十分でない(不十分な)場合、冷水を加えている間、2次ループの水も循環させられる。最大の許容された水温(Water_max_temp)がコレクター(S1)から出て来る水を測定する温度センサにおいて達成されるまで、ポンプは活性化されている。
【0082】
適用に依存して、モジュールおよび加工のための様々な実装が可能であることに留意されたい。上述のモジュール機能は、組み合わされてより少数のモジュールとして実装され得るか、またはサブ機能へ分割されてより多数のモジュールとして実装され得る。上の記載に基づいて、当業者は、特定の適用のための実装を設計できる。
【0083】
上述の例において、使用される数字、および例示的な計算は、本実施形態の説明を補助するためのものであることに留意されたい。不注意の入力ミス、数学的なエラー、および/または簡略化計算の使用によって、本発明の有用性と基本的な利点を損うことはない。
【0084】
添付の特許請求の範囲が多数の従属なしに起草されている程度まで、これはそのような複数の従属を許容しない司法の中で方式要件に適応させるためだけに行われた。
【0085】
請求項を複数従属にすることより、暗示される特徴のすべてのあり得る組み合わせは、明示的に想定され、本発明の一部とみなされるべきであることに留意されたい。上記の記載は単に例として機能するようにのみ意図されること、および、他の多くの実施形態は添付の特許請求の範囲で定められるような本発明の範囲内で可能であることが、認識されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】