(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-521544(P2016-521544A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】デヒドロエピアンドロステロンおよびその中間体の調製法。
(51)【国際特許分類】
C12P 7/26 20060101AFI20160627BHJP
C07J 75/00 20060101ALI20160627BHJP
C07J 1/00 20060101ALI20160627BHJP
【FI】
C12P7/26ZNA
C07J75/00
C07J1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-514517(P2016-514517)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(85)【翻訳文提出日】2016年1月15日
(86)【国際出願番号】IB2014061590
(87)【国際公開番号】WO2014188353
(87)【国際公開日】20141127
(31)【優先権主張番号】2214/CHE/2013
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512276315
【氏名又は名称】ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリスズコウスカ, アナ
(72)【発明者】
【氏名】クイルムバッハ, ミハエル ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ゴラントラ, スリカンス サラット チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アリエティ, サンジャイ レディ
(72)【発明者】
【氏名】ポレッディ, スリニバス レディ
(72)【発明者】
【氏名】ディンネ, ナレシュ クマール レディ
(72)【発明者】
【氏名】ティムマンナ, ウパドヒャ
(72)【発明者】
【氏名】ダハヌカル, ビラス
【テーマコード(参考)】
4B064
4C091
【Fターム(参考)】
4B064AC38
4B064CA21
4B064DA01
4C091AA01
4C091BB06
4C091CC03
4C091DD01
4C091EE04
4C091EE05
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA09
4C091QQ01
4C091RR07
4C091RR09
(57)【要約】
本出願は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の位置選択的および立体選択的調製法、ならびにその中間体の調製法に関する。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、アビラテロンアセテート(去勢抵抗性前立腺癌の処置に使用される薬剤)を包含するがそれに限定されないステロイド系分子の合成における、重要な中間体である。本出願の方法は、デヒドロエピアンドロステロンの調製のための酵素的方法に関する。本出願の酵素還元法は、環境に優しく、費用効率的であり、工業的に実現可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化40】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法であって、ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化41】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元することを含む調製法。
【請求項2】
式(I)の化合物がアビラテロンアセテートに変換される、請求項1に記載の調製法。
【請求項3】
式(I)の化合物がDHEAエナンテートに変換される、請求項1に記載の調製法。
【請求項4】
式(I):
【化42】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法であって、配列番号1のケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化43】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を還元することを含む調製法。
【請求項5】
式(III):
【化44】
の化合物の調製法であって、下記工程:
a)ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化45】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元して、式(I):
【化46】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンを得る工程;
b)式(I)の化合物を、式(III)の化合物に変換する工程;
を含む調製法。
【請求項6】
式(II):
【化47】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法であって、下記工程:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化48】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化49】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)式(II)の化合物を、ハロゲン化炭化水素から再結晶する工程;
を含む調製法。
【請求項7】
式(II):
【化50】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法であって、下記工程:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化51】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化52】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)式(II)の化合物を、抗酸化剤の存在下に分離する工程;
を含む調製法。
【請求項8】
式(III):
【化53】
の化合物の調製法であって、下記工程:
a)式(IV):
【化54】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化55】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元して、式(I):
【化56】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンを得る工程;
c)式(I)の化合物を、式(III)の化合物に変換する工程;
を含む調製法。
【請求項7】
ケトレダクターゼ酵素が配列番号1を有している、請求項6に記載の調製法。
【請求項8】
式(I)の化合物がアビラテロンアセテートに変換される、請求項6に記載の調製法。
【請求項9】
式(I)の化合物がDHEAエナンテートに変換される、請求項6に記載の調製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本出願は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の位置選択的および立体選択的調製法、ならびにその中間体の調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アンドロステノロンまたはプラステロンまたは3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンまたは5−アンドロステン−3β−オル−17−オンとしても既知の、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、重要な内因性ステロイドホルモンであり、下記式(I)の構造を有する:
【化1】
【0003】
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、アビラテロンアセテート(去勢抵抗性前立腺癌の処置に使用される薬剤)を包含するがそれに限定されないステロイド系分子の合成における、重要な中間体である。
【0004】
J.Bryan Jonesらによる論文「Steroids and steroidases.VI.On the C−17 specificity of the Δ5−3−ketoisomerase of Psudomonas testosterone and evidence for substrate micelle formation」、Candian Journal of Chemistry,46,1459−1465(1968)は、DHEAの調製に使用される中間体であるアンドロスタ−5−エン−3,17−ジオンの調製法を記載している。該文献に開示されている方法は、下記を含む:アンドロスタ−4−エン−3,17−ジオンとカリウムt−ブトキシドとを、t−ブチルアルコール中で、窒素雰囲気下に、90分間、20℃で反応させ、次に、10%の酢酸水溶液の迅速添加によって反応生成物をクエンチし、過剰の炭酸水素ナトリウムを添加し、エーテルで抽出し、室温で蒸発させ、アセトンから再結晶して、アンドロスタ−5−エン−3,17−ジオンを得る。
【0005】
しかし、前記方法は下記の点で不利である:多量の塩基、即ち10当量のカリウムtert−ブトキシドの使用を含み、アンドロスタ−5−エン−3,17−ジオンの酸化不純物の形成を生じ、工業規模において適していないと考えうるワークアップ手順を有し、従って、低く不満足な収量を生じる。
【0006】
従って、先行技術の欠点を都合よく除去および減少させるアンドロスタ−5−エン−3,17−ジオンの向上した調製法を提供することが必要とされている。
【0007】
中国特許出願公開第102212099号は、16−デヒドロプレグネノロンアセテートから開始するデヒドロエピアンドロステロンの調製のための多段階法を開示し、該方法は、下記反応式1に示されている反応段階を含む:
【化2】
【0008】
中国特許出願公開第102603841号は、4−アンドロステン−3,17−ジオンからのデヒドロエピアンドロステロンの調製のための多段階法を開示し、該方法は、下記反応式2に示されている反応段階を含む:
【化3】
【0009】
中国特許出願公開第102603839号は、16−デヒドロプレグネノロンアセテートから開始するデヒドロエピアンドロステロンの調製のための多段階合成法を記載し、該方法は、下記工程を含む:(i)16−デヒドロプレグネノロンアセテートオキシムを調製する工程、(ii)16−デヒドロプレグネノロンアセテートオキシムをベックマン転移に付して、デヒドロエピアンドロステロンアセテートを得る工程、(iii)デヒドロエピアンドロステロンアセテートを加水分解して、デヒドロエピアンドロステロンを得る工程。該方法の反応段階は、下記反応式3に示されている:
【化4】
【0010】
中国特許出願公開第CN101362789号および第101717422号、韓国特許出願公開第2004040555号も、デヒドロエピアンドロステロンの調製のための合成法を開示している。
【0011】
デヒドロエピアンドロステロンの調製のための前記合成法は、多段階、およびC3位での立体選択的および位置選択的還元を行うための一連の保護/脱保護段階を含み、工業規模の合成に適していないと考えられる。
【0012】
Mamoliらは、US2186906において、シクロペンタノ−10,13−ジメチル−ポリヒドロ−フェナントレン系(Δ
4,5−アンドロステンジオン)のケト化合物を同系の対応するヒドロキシル化合物(Δ
4,5−アンドロステノール−17−オン−3)に変換するための生化学的水素化法を記載し、該方法は、そのようなケト化合物を還元性酵母含有発酵液の作用に付すことを含む。
【0013】
Misakiらは、US4791057において、分析される試料における成分(これは3β−ヒドロキシステロイドまたは3−ケトステロイドである)に関する高感度定量アッセイ法を記載し、該方法は下記工程を含む:該試料中のこの成分を、3β−ヒドロキシステロイド&3−ケトステロイド・サイクリング反応に参加させる工程、および3β−ヒドロキシステロイドオキシダーゼおよびまたは3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを含む反応系における検出可能な変化を測定する工程。該サイクリング反応において、3β−ヒドロキシステロイドオキシダーゼはO
2を消費し、3−ヒドロキシステロイドを3−ケトステロイドに変換し、還元NAD(P)
+の存在下の3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼは、3−ケトステロイドを3−ヒドロキシステロイドに変換し、NAD(P)を生じる。前記特許に記載されている3β−ヒドロキシステロイド&3−ケトステロイド・サイクリング反応は、下記反応式4に概略的に示されている:
【化5】
【0014】
前記文献は、3−ヒドロキシステロイドの3−ケトステロイドへの酵素変換、またはその逆の酵素変換を開示しているが、それらはデヒドロエピアンドロステロンの調製法を開示しておらず、ステロイドの17−オキソ基はそのままにして3−オキソ基を還元することによって必要とされる位置選択性を示し、かつ対応する3β−ヒドロキシ化合物を生成することによって立体選択性を示す向上した方法を開発することにおいて、困難な課題が残されている。
【0015】
本出願の方法は、デヒドロエピアンドロステロンの調製のための酵素的方法に関する。本出願の酵素還元法は、環境に優しく、費用効率的であり、工業的に実現可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】中国特許出願公開第102212099号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第102603841号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第102603839号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第101362789号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第101717422号明細書
【特許文献6】韓国特許出願公開第2004040555号明細書
【特許文献7】米国特許第2186906号明細書
【特許文献8】米国特許第4791057号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J.Bryan Jonesら、「Steroids and steroidases.VI.On the C−17 specificity of the Δ5−3−ketoisomerase of Psudomonas testosterone and evidence for substrate micelle formation」、Candian Journal of Chemistry,46,1459−1465(1968)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
ある実施態様において、本出願は、式(I):
【化6】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法を提供し、該方法は、ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化7】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元することを含む。
【0019】
他の実施態様において、本出願は、式(I):
【化8】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法を提供し、該方法は、配列番号1のケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化9】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を還元することを含む。
【0020】
ある実施態様において、本出願は、式(II):
【化10】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法を提供し、該方法は下記工程を含む:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化11】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化12】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)式(II)の化合物を、ハロゲン化炭化水素から再結晶する工程。
【0021】
他の実施態様において、本出願は、式(II):
【化13】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法を提供し、該方法は下記工程を含む:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化14】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化15】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)該式(II)の化合物を、抗酸化剤の存在下に分離する工程。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
ある実施態様において、本出願は、
式(I):
【化16】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法を提供し、該方法は、ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化17】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元することを含む。
【0023】
式(II)の化合物は、当分野で既知の方法によって、または本出願に開示されている方法によって、得ることができる。
【0024】
式(II)の化合物の位置選択的および立体選択的還元は、ケトレダクターゼ酵素の存在下に行われ、反応系は、補因子、補因子再生系、基質およびデヒドロゲナーゼ酵素、緩衝液および有機溶媒をさらに含有する。
【0025】
本明細書に使用される場合、「立体選択的または立体選択性」は、化学反応または酵素反応における、他の立体異性体に対する1つの立体異性体の優先的形成を指す。立体選択性は、1つの立体異性体の形成が他の立体異性体の形成より優先される場合に、部分的であることができ、ただ1つの立体異性体が形成される場合に完全でありうる。立体異性体がエナンチオマである場合、立体選択性は、エナンチオ選択性、両エナンチオマの合計における1つのエナンチオマのフラクション(一般にパーセンテージで示される)を意味する。それは当分野において一般に、式[メジャーエナンチオマ−マイナーエナンチオマ]/[メジャーエナンチオマ+マイナーエナンチオマ]から計算されるエナンチオマ過剰(一般にパーセンテージで示される)として示される。立体異性体がジアステレオマである場合、立体選択性は、ジアステレオ選択性、他のジアステレオマとの合計における1つのジアステレオマのフラクション(一般にパーセンテージで示される)を意味する。本開示の文脈において、立体選択性は、式(I)の3α−ヒドロキシ化合物に対する式(I)の3β−ヒドロキシ化合物のフラクション(一般にパーセンテージで示される)を意味する。
【0026】
本明細書に使用される場合、「位置選択的または位置選択性」は、化学結合の形成または切断の1つの方向の、全ての他の可能な方向に対する優先性、または1つの生成物の形成の、他の生成物の形成に対する優先性を意味する。本開示の文脈において、位置選択性は、式(II)の化合物の、17−オキソ基、または3−オキソ基および17−オキソ基の両方に対する、3−オキソ基の優先的還元を意味する。ある実施形態において、本開示の文脈における位置選択性は、式(II)の化合物の投入重量に応じて、90wt%より高い、好ましくは95wt%より高い、より好ましくは97wt%より高い、より好ましくは99wt%より高い程度の、式(II)の化合物の3−オキソ基の優先的還元を意味する。
【0027】
「ケトレダクターゼ酵素」は、ケトンまたはアルデヒドの還元を触媒して対応するアルコールを形成する酵素を意味する。その反応は、補因子(NAD(P)
+またはNAD(P)H)の存在下に、必要に応じて、補因子再循環系を使用して行うことができる。ケトレダクターゼ酵素は、例えば、EC番号1.1.1に分類される酵素を包含する。そのような酵素は、ケトレダクターゼの他に、下記を包含するがそれらに限定されない様々な名称を与えられている:アルコールデヒドロゲナーゼ、カルボニルレダクターゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシイソカプロエートデヒドロゲナーゼ、β−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、ステロイドデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、ケトステロイドレダクターゼ、アルドケトレダクターゼ(AKR)およびアルドレダクターゼ。NADPH依存性ケトレダクターゼは、EC番号1.1.1.2、およびCAS番号9028−12−0に分類される。NADH依存性ケトレダクターゼは、EC番号1.1.1.1、およびCAS番号9031−72−5に分類される。
【0028】
ケトレダクターゼ酵素は、野生型酵素または組換え酵素であることができ、全細胞として、または分離形態/半精製形態で、使用することができる。好ましくは、ケトレダクターゼは分離されている。ケトレダクターゼは、任意の宿主、例えば、哺乳動物、糸状真菌、酵母および細菌から分離することができる。
【0029】
他の実施形態において、ケトレダクターゼ酵素は、Sphingomonas wittichii(株RW1/DSM 6014/JCM 10273)A5VBG8)から得られる酵素を包含する。
【0030】
他の実施形態において、前記の立体選択的還元に使用されるケトレダクターゼ酵素は、配列番号1に対応するアミノ酸配列を有する酵素を包含するが、それに限定されない。本明細書に使用される場合、配列番号1の酵素は、配列番号1に対応するか、または配列番号1に少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性である。
【0031】
ケトレダクターゼ酵素は、配列番号1の酵素、またはその等価製品であることができる。本明細書において使用される場合、「等価」という用語は、類似〜同一の酵素活性を有する酵素または製品を意味する。
【0032】
ある実施形態において、ケトレダクターゼ酵素は、補因子依存性ケトレダクターゼを包含する。
【0033】
本出願の方法によれば、補因子は、NADH、NADPH、NAD
+、NADP
+、それらの塩、およびそれらの混合物から成る群から選択しうる。好ましくは、ケトレダクターゼがNADH依存性である場合、補因子は、NADH、NAD
+、それらの塩、およびそれらの混合物から成る群から選択される。より好ましくは、補因子はNADHまたはその塩である。好ましくは、ケトレダクターゼがNADPH依存性である場合、補因子は、NADPH、NADP
+、それらの塩、およびそれらの混合物から成る群から選択される。より好ましくは、補因子はNADPHまたはその塩である。補因子の塩の例は、NADテトラ(シクロへキシルアンモニウム)塩、NADテトラナトリウム塩、NAD
+テトラナトリウムハイドレート、NADP
+ホスフェートハイドレート、NADP
+ホスフェートナトリウム塩、およびNADHジカリウム塩を包含する。
【0034】
本出願の方法によれば、補因子再生系は、反応に参加する一組の反応物質を含有し、補因子の酸化形を還元する(例えば、NADP
+からNADPHへ)。式(II)の化合物のケトレダクターゼ触媒還元によって酸化された補因子は、補因子再生系によって還元形で再生される。例えば、補因子再生系は、還元性水素等価物の源であり、補因子の酸化形を還元することができる基質、および触媒、例えば、還元剤による補因子の酸化形の還元を触媒する酵素触媒を含有する。
【0035】
好ましくは、補因子再生系は、D−グルコース/グルコースデヒドロゲナーゼ、蟻酸ナトリウム/蟻酸デヒドロゲナーゼ、ラクテート/ラクテートデヒドロゲナーゼ、およびホスファイト/ホスファイトデヒドロゲナーゼから成る群から選択される基質/デヒドロゲナーゼ酵素ペアを含有する。
【0036】
ある実施形態において、D−グルコース/グルコースデヒドロゲナーゼ・ペアが使用される。グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、例えば、EC番号1.1.1.47に分類されるものを包含し、例えば、Codexis,Inc.からカタログ番号GDH−CDX−901で市販されている。
【0037】
例えば、グルコース/グルコースデヒドロゲナーゼ補因子再生系が使用される場合、グルコン酸(pKa=3.6)の同時生成は、生じるグルコン酸水溶液が中和されなければ、反応混合物のpHを低下させる。反応混合物のpHは、標準緩衝法(該方法において、緩衝液が、付与される緩衝能までグルコン酸を中和する)によって、または変換の進行と同時に塩基を付加することによって、所望のレベルに維持しうる。
【0038】
還元反応は、約4〜約9、より好ましくは約4〜約8、より好ましくは約5〜約8、最も好ましくは約6〜約8、または約5〜約7のpHを有する緩衝液の存在下に行うことができる。好ましくは、緩衝液は塩の溶液である。好ましくは、塩は、リン酸カリウムまたはTRIS塩、硫酸マグネシウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される。必要に応じて、緩衝液はチオール化合物を含有する。
【0039】
還元反応は、約10℃〜約50℃の温度で行うことができる。好ましくは、該工程は、周囲温度、約20℃〜約40℃、または約25℃〜約35℃の温度で行われる。
【0040】
還元反応は、水溶性または不水溶性有機溶媒の存在下に行うことができ、該有機溶媒は、アルコール、例えばt−ブタノール、エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等、芳香族炭化水素、例えばトルエン、および極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等から選択しうる。
【0041】
ある実施形態において、不水溶性有機溶媒が使用される。好ましい実施形態において、水に対して2〜98v/v%、より好ましくは25〜75v/v%の比率の不水溶性有機溶媒が使用される。
【0042】
ある実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、0.1〜500g/L、好ましくは少なくとも50〜300g/Lの範囲の基質(式II)濃度で行われる。
【0043】
他の実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、配列番号1のケトレダクターゼ酵素の存在下に行われる。
【0044】
ある実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、基質、即ち式(II)に対して0.1〜20wt%の範囲、好ましくは基質に対して10wt%未満の酵素負荷で行われる。
【0045】
他の実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、pH6.5およびイオン強度50mMのリン酸カリウム緩衝液の存在下に行われる。
【0046】
さらに他の実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、補因子NAD
+、NAD(P)
+、グルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH−CDX−901)を含有する補因子再生系の存在下に行われる。
【0047】
ある実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドから選択される有機溶媒の存在下に行われる。
【0048】
ある実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、約25℃〜約35℃の温度で行われる。
【0049】
好ましい実施形態において、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基の還元が、配列番号1の酵素であるケトレダクターゼ酵素、pH6.5およびイオン強度50mMのリン酸カリウム緩衝液、補因子NAD
+、NAD(P)
+、グルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH−CDX−901)を含有する補因子再生系の存在下に行われる。
【0050】
本出願の発明者らは、驚いたことに、本明細書に記載されている方法が、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの17−オキソ基に対して3−オキソ基を選択的に還元する点で極めて位置特異的であり、かつ、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を選択的に還元して、対応する3β−ヒドロキシ化合物を与える点で立体特異的であることを見出した。
【0051】
さらに、本出願の方法は、選択的であり、環境に優しく、定量的であり、保護/脱保護段階の使用を回避し、毒性酸化剤の使用も回避し、緩やかな条件(温度、pH)下に、高基質濃度で行われ、DHEAおよびその誘導体への効率的かつ直接的な経路である点で有利である。
【0052】
さらに、本出願の方法は、80%〜99%の範囲の収率を与え、かつ95%より高い、好ましくは99%より高い、より好ましくは99.5%より高い立体選択性の程度を有する点で有利である。
【0053】
他の実施態様において、本出願は、式(I):
【化18】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンの調製法を提供し、該方法は、配列番号1のケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化19】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を還元することを含む。
【0054】
配列番号1のケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を還元する方法は、前記の手順に従って、または実施例に記載されている方法に従って、行うことができる。
【0055】
ある実施形態において、本出願は、前記の方法によって得られる式(I)の化合物を、式(III):
【化20】
の化合物に変換する工程を含む方法を提供する。
【0056】
他の実施形態において、本出願は、式(III):
【化21】
の化合物の調製法を提供し、該方法は、下記工程を含む:
a)ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II):
【化22】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元して、式(I):
【化23】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンを得る工程;
b)式(I)の化合物を、式(III)の化合物に変換する工程。
【0057】
式(I)の化合物は、当分野で既知の方法によって、または本出願に開示されている方法によって、式(III)の化合物に変換しうる。
【0058】
ある実施態様において、本出願は、式(II):
【化24】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法を提供し、該方法は下記工程を含む:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化25】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化26】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)式(II)の化合物を、ハロゲン化炭化水素から再結晶する工程。
【0059】
工程a)の反応は、約10℃〜約50℃の温度で行うことができる。好ましくは、約20℃〜約40℃、または約25℃〜約35℃の温度である。
【0060】
ある実施形態において、前記反応の終了後、酢酸を使用して、好ましくは10%酢酸を使用して、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを含有する反応混合物をクエンチし、無機塩基を使用して、好ましくは炭酸水素ナトリウムを使用して、該反応混合物のpHを約6.0〜約7.5に調整し、水を添加することによって式(II)の化合物を分離する。
【0061】
本出願の発明者らは、驚いたことに、ハロゲン化炭化水素溶媒からの式(II)の化合物の再結晶が、より高い収率および純度の式(II)の化合物を生じることを見出した。
【0062】
工程b)に使用しうるハロゲン化炭化水素は、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエテン、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、またはそれらの混合物から選択しうる。
【0063】
他の実施態様において、本出願は、式(II):
【化27】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製法を提供し、該方法は下記工程を含む:
a)カリウムtert−ブトキシドおよびtert−ブタノ−ルを使用して、式(IV):
【化28】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化29】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)式(II)の化合物を、抗酸化剤の存在下に分離する工程。
【0064】
工程a)の反応は、約10℃〜約50℃の温度で行うことができる。好ましくは、約20℃〜約40℃、または約25℃〜約35℃の温度である。
【0065】
本出願の発明者らは、驚いたことに、抗酸化剤の存在下の式(II)の化合物の分離が、より高い収率および純度ならびに減少したまたは検出不能な量の反応中に形成される酸化不純物を有する式(II)の化合物を生じ、それによって付加的精製が回避されることを見出した。
【0066】
工程b)に使用される抗酸化剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシルアニソール(hydroxylanisole)、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、エリトルビン酸、没食子酸プロピル、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、tert−ブチルヒドロキノン、トコフェロールまたはそれらの混合物から成る群から選択しうる。ある実施形態において、アスコルビン酸ナトリウムが使用される。
【0067】
使用される抗酸化剤の量は、触媒量、例えば、1モル当量の式(IV)につき約0.1〜約0.5当量の範囲であってよい。
【0068】
ある実施形態において、工程a)で得られる式(II)の化合物を含有する反応混合物を、酢酸、水および選択された抗酸化剤を含有する抗酸化剤混合物に添加しうる。
【0069】
ある実施形態において、本出願は、式(III):
【化30】
の化合物の調製法を提供し、該方法は、下記工程を含む:
a)式(IV):
【化31】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化32】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)ケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元して、式(I):
【化33】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンを得る工程;
c)式(I)の化合物を、式(III)の化合物に変換する工程。
【0070】
他の実施形態において、本出願は、式(III):
【化34】
の化合物の調製法を提供し、該方法は、下記工程を含む:
a)式(IV):
【化35】
のΔ
4−アンドロステン−3,17−ジオンを異性化して、式(II):
【化36】
のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンを生成する工程;
b)配列番号1のケトレダクターゼ酵素を使用して、式(II)のΔ
5−アンドロステン−3,17−ジオンの3−オキソ基を、位置選択的および立体選択的に還元して、式(I):
【化37】
の3β−ヒドロキシアンドロスタ−5−エン−17−オンを得る工程;
c)式(I)の化合物を、式(III)の化合物に変換する工程。
【0071】
アセチル化は、当分野で既知の方法で行うことができる。使用しうるアセチル化剤は、塩化アセチル、無水酢酸、オルト蟻酸メチル、または同等のアセチル化剤を包含するが、それらに限定されない。使用しうる溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、またはそれらの組み合わせを包含するがそれらに限定されない。使用しうる塩基は、下記を包含するがそれらに限定されない:ジイソプロピルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン、ピペリジン等:および、無機塩基、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物および酸化物、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、カリウムメトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、リチウムメトキシド、水酸化バリウム、酸化カルシウム等。
【0072】
ある実施形態において、前記で得られたデヒドロエピアンドロステロンを、当分野で既知の方法によって、アビラテロンアセテートおよびDHEAエナンテートにさらに変換しうる。
【0073】
本発明のある特定の実施態様および実施形態を以下の実施例に関連してさらに詳しく説明するが、該実施例は、例示目的のためだけに提示され、本発明の範囲を決して限定するものではないと理解すべきである。
【実施例】
【0074】
実施例1: 5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製
tert−ブタノール(75mL)を丸底フラスコに、25〜30℃で、窒素雰囲気下に装填し、窒素ガスバブリング下に10分間撹拌する。カリウムtert−ブトキシド(9.79g)を装填し、窒素雰囲気下に30〜35℃で10〜15分間撹拌する。4−アンドロステン−3,17−ジオン(10.0g)をその丸底フラスコに30〜35℃で装填し、同温度で約90分間維持する。酢酸(5.75g)、水(200mL)およびアスコルビン酸ナトリウム(3.5g)を第二丸底フラスコに装填し、20〜25℃で撹拌する。前記で得られた反応混合物を、第二丸底フラスコに添加し、20〜25℃で約30分間撹拌する。得られた生成物を濾過し、水(100mL)で洗浄し、真空乾燥する。
収率:90.5%
HPLCによる純度:93.6%
【0075】
実施例2: 5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製
tert−ブタノール(2000mL)を丸底フラスコに、窒素ガス雰囲気下に25〜30℃で装填し、窒素ガスバブリング下に10分間撹拌する。カリウムtert−ブトキシド(313.4g)を装填し、窒素ガスバブリング下に35〜40℃で10〜15分間撹拌する。4−アンドロステン−3,17−ジオン(80.0g)を、その丸底フラスコに35〜40℃で装填し、反応混合物を窒素ガスバブリング下に同温度で約90分間撹拌する。反応混合物を10%の酢酸水溶液(3130mL)と20〜25℃で合わし、反応混合物のpHを炭酸水素ナトリウム(200g)で6.5〜7.0に調整する。水(2500mL)を前記反応混合物に添加し、約30分間撹拌する。得られた固形物を濾過し、水(1000mL)で洗浄し、吸引乾燥する。得られた生成物を、ジクロロメタン(500mL)に溶解し、水性層を分離し、有機層を真空下に充分に蒸留して、5−アンドロステン−3,17−ジオンを得る。
収率:81.8%
HPLCによる純度:92.30%
【0076】
実施例3: 5−アンドロステン−3,17−ジオンの調製
tert−ブタノール(1500mL)を丸底フラスコに、窒素ガス雰囲気下に25〜30℃で装填し、窒素ガスバブリング下に10分間撹拌する。カリウムtert−ブトキシド(235g)を装填し、窒素ガスバブリング下に35〜40℃で10〜15分間撹拌する。4−アンドロステン−3,17−ジオン(60.0g)を、その丸底フラスコに35〜40℃で窒素雰囲気下に装填し、反応混合物を窒素ガスバブリング下に同温度で約90分間撹拌する。反応混合物を10%の酢酸水溶液(2500mL)に20〜25℃で添加し、10〜15分間撹拌した。水(1000mL)を前記反応混合物に添加し、約30分間撹拌する。反応混合物のpHを炭酸水素ナトリウム(135g)で7.0〜7.5に調整する。反応混合物を30〜40分間撹拌する。得られた固形物を濾過し、水(500mL)で洗浄し、吸引乾燥する。得られた生成物をジクロロメタン(1000mL)に溶解し、無水硫酸ナトリウム(50g)で処理する。内容物を濾過し、減圧下に40 0C未満で充分に蒸留して、5−アンドロステン−3,17−ジオンを得た。
収率:83%
【0077】
実施例4: デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の調製
オーバーヘッド撹拌器を備えた50mLの反応器において、メチルテトラヒドロフラン(20mL)中の5−アンドロステン−3,17−ジオン(1.80g)を、NAD
+(0.1mg/mL)、NADP
+(0.1mg/mL)、MgCl
2ヘキサハイドレート(2mM、0.4mg/mL)、グルコース(100mM、18.75mg/mL)、グルコースデヒドロゲナーゼGDH CDX−901(0.1mg/mL)および配列番号1の酵素(54mg、3wt/wt%)を含有するリン酸カリウム緩衝液(10mL、イオン強度50mM、pH6.5)の混合物に添加する。反応生成物を約30〜35℃において1000rpmで撹拌する。反応生成物のpHを炭酸水素ナトリウムで約6.5に維持し、約30〜35℃において1000rpmで約4時間〜約24時間維持する。有機層を分離する。水性層を酢酸エチル(50mL)で抽出する。合わせた有機層をMgSO
4で乾燥し、蒸発乾固して、定量NMRにより純度94.5%の粗デヒドロエピアンドロステロン(1.86g)を得、それをさらに精製せずに次の段階に使用した。
【化38】
【0078】
実施例5: デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の調製
オーバーヘッド撹拌器を備えた100mLの反応器において、メチルテトラヒドロフラン(36mL)中の5−アンドロステン−3,17−ジオン(3.59g)を、NAD
+(0.044mg/mL)、NADP
+(0.044mg/mL)、MgCl
2ヘキサハイドレート(5mM、1.67mg/mL)、グルコース(100mM、18.44mg/mL)、グルコースデヒドロゲナーゼGDH CDX−901(0.26mg/mL)および配列番号1(100mg、2.8wt/wt%)を含有するリン酸カリウム緩衝液(18mL、イオン強度50mM、pH6.5)の混合物に添加する。反応生成物を約20〜32℃において1000rpmで撹拌する。反応生成物のpHを炭酸水素ナトリウムで約6.5に維持し、約20〜32℃において1000rpmで約4時間〜約24時間維持する。メチルテトラヒドロフラン層を真空蒸発し、沈殿生成物を濾過によって分離し、50mLの水で2回洗浄し、次に、真空乾燥して、定量NMRにより79%のポテンシ(potency)の粗生成物(3.47g)を得る。0.50gの得られた粗生成物を、酢酸エチル/へプタンから再結晶して、デヒドロエピアンドロステロンを得る。
収量:0.35g
純度:>98%
【0079】
実施例6: デヒドロエピアンドロステロンアセテート(DHEAアセテート)の調製
デヒドロエピアンドロステロン(10g、35mmol)およびピリジン(25mL)を、丸底フラスコに25〜30℃で装填する。無水酢酸(26mL、277mmol)を前記反応混合物に滴下し、室温でアルゴン雰囲気下に約12時間撹拌する。氷水(20mL)を反応混合物に注ぐ。形成された白色沈殿物をジクロロメタン(200mL)に溶解し、有機層を1M塩酸(3.20mL)、5%炭酸水素ナトリウム(1.30mL)、ブライン溶液(1.30mL)および水(1.30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発して、粗デヒドロエピアンドロステロンアセテートを得る。得られた粗デヒドロエピアンドロステロンアセテートをアセトンから再結晶して、デヒドロエピアンドロステロンアセテートを得る。
収量:10.9g
純度:95%
【0080】
実施例7: デヒドロエピアンドロステロンアセテート(DHEAアセテート)の調製
粗デヒドロエピアンドロステロン(2.21g、7.68mmol)およびトルエン(25mL)を、丸底フラスコに25〜30℃で装填する。4−ジメチルアミノピリジン(66mg)、無水酢酸(1.45mL、1.57g、15.36mmol)およびトリエチルアミン(2.33g、3.2mL、23.0mmol)を、前記溶液に添加し、室温で約3時間撹拌する。得られた反応生成物を、1M HCl(30mL)でクエンチし、有機層を水(30mL)、炭酸水素ナトリウム溶液(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空濃縮して、デヒドロエピアンドロステロンアセテートを得る。
収率:85%
HPLCによる純度:84.2%
【化39-1】
【化39-2】
【国際調査報告】