特表2016-521727(P2016-521727A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-521727寸法および生物活性を維持するフリーズドライ高分子電解質複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-521727(P2016-521727A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】寸法および生物活性を維持するフリーズドライ高分子電解質複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/19 20060101AFI20160627BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160627BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160627BHJP
【FI】
   A61K9/19
   A61K47/26
   A61K47/36
   A61K47/10
   A61K47/40
   A61K47/38
   A61K47/30
   A61K47/32
   A61K47/42
   A61K47/18
   A61K47/12
   A61K47/02
   A61K47/46
   A61K48/00
   A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2016-518808(P2016-518808)
(86)(22)【出願日】2014年6月9日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】CA2014000490
(87)【国際公開番号】WO2014197970
(87)【国際公開日】20141218
(31)【優先権主張番号】61/833,010
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513297449
【氏名又は名称】ポリヴァロール ソシエテ アン コマンディト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュマン マイケル ディー
(72)【発明者】
【氏名】ラベルチュ マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイユ ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076DD25
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE39
4C076EE42
4C076FF65
4C076GG06
4C076GG47
4C084AA13
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA03
4C086AA10
4C086EA16
4C086EA20
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA03
(57)【要約】
本発明は、ポリマー、核酸分子、凍結保護剤および緩衝剤を含む高分子電解質複合体組成物に関する。前記高分子電解質複合体組成物は、フリーズドライおよび再水和後に前記高分子電解質複合体の生物活性を保持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、核酸分子、凍結保護剤および緩衝剤を含む高分子電解質複合体組成物であって、フリーズドライ及び再水和後に前記高分子電解質複合体の生物活性を保持する、高分子電解質複合体組成物。
【請求項2】
フリーズドライ及び再水和後に約750nm未満のZ平均を有する、請求項1に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項3】
フリーズドライ及び再水和後に凝集が実質的にない、請求項1又は2に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項4】
フリーズドライ及び再水和後に最大で0.5である多分散指数を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項5】
フリーズドライ及び再水和後に少なくとも約10%のトランスフェクションレベルを達成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項6】
フリーズドライ及び再水和後約10分以内に復元される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項7】
フリーズドライ及び再水和後約5分以内に復元される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項8】
フリーズドライ及び再水和後にほぼ等オスモル濃度である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項9】
フリーズドライ及び再水和後に約100mOsm〜約750mOsmの等オスモル濃度を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項10】
フリーズドライ及び再水和後にほぼ中性pHを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項11】
フリーズドライ及び再水和後に約5〜8のpHを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項12】
フリーズドライされている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがキトサンである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項14】
前記キトサンの数平均分子量(Mn)が4〜200kDaである、請求項13に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項15】
前記キトサンのMnが10〜80kDaである、請求項13又は14に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項16】
前記キトサンの脱アセチル化度(DDA)が70〜100%である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項17】
前記キトサンのDDAが80〜95%である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項18】
キトサン/核酸のN/P比が1.2〜30である、請求項13〜17のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項19】
キトサン/核酸のN/P比が2〜10である、請求項13〜17のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項20】
キトサン/核酸のN/P比が5である、請求項13〜17のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項21】
前記核酸分子が、プラスミド(pDNA)、ミニサークル、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)及びリボ核酸分子の少なくとも1つである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項22】
前記リボ核酸分子が、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)、短鎖ヘアピンリボ核酸(shRNA)又はメッセンジャーリボ核酸(mRNA)である、請求項21に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項23】
前記凍結保護剤が、二糖、三糖、オリゴ糖/多糖、ポリオール、ポリマー、高分子量賦形剤、アミノ酸分子又はこれらの組み合わせである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項24】
前記二糖が、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、セロビオース及びメリビオースの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項25】
二糖の濃度が0.1〜10%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項26】
二糖の濃度が0.5〜5%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項27】
二糖の濃度が0.5〜2%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項28】
前記三糖が、マルトトリオース及びラフィノースの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項29】
三糖の濃度が0.1〜10%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項30】
三糖の濃度が0.5〜5%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項31】
三糖の濃度が0.5〜2%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項32】
前記オリゴ糖/多糖が、デキストラン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ヒドロキシエチルデンプン、フィコール、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びイヌリンの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項33】
前記デキストランのMnが1〜70kDaである、請求項32に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項34】
前記デキストランのMnが1〜5kDaである、請求項32又は33に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項35】
オリゴ糖/多糖の濃度が0.1〜10%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項36】
オリゴ糖/多糖の濃度が0.5%〜5%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項37】
オリゴ糖/多糖の濃度が0.5〜2%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項38】
前記ポリオールがマンニトール及びイノシトールの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項39】
前記ポリオールの濃度が、0.1〜10%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項40】
前記ポリオールの濃度が0.5%〜5%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項41】
前記ポリオールの濃度が2〜3%(w/v)である、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項42】
前記アミノ酸分子が、リシン、アルギニン、グリシン、アラニン及びフェニルアラニンの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項43】
前記アミノ酸分子の濃度が1〜100mMである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項44】
前記アミノ酸分子の濃度が3〜14mMである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項45】
前記アミノ酸分子の濃度が3〜8mMである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項46】
前記アミノ酸分子の濃度が、更に好ましくは3〜4mMである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項47】
前記高分子量賦形剤が、PEG、ゼラチン、ポリデキストロース及びPVPの少なくとも1つである、請求項23に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項48】
前記緩衝剤が、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムの少なくとも1つである、請求項1〜47のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項49】
前記緩衝剤の濃度が1〜100mMである、請求項1〜48のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項50】
前記緩衝剤の濃度が3〜14mMである、請求項1〜48のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項51】
前記緩衝剤の濃度が3〜8mMである、請求項1〜47のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項52】
前記緩衝剤の濃度が3〜4mMである、請求項1〜48のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項53】
前記凍結保護剤がトレハロースであり、前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項54】
前記凍結保護剤が0.5〜2%(w/v)のトレハロースであり、前記緩衝剤が3〜4mMのヒスチジンである、請求項53に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項55】
前記凍結保護剤がスクロースであり、前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項56】
前記凍結保護剤が0.5〜2%(w/v)のスクロースであり、前記緩衝剤が3〜4mMのヒスチジンである、請求項55に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項57】
前記核酸がDNAである、請求項1〜13及び53〜56のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物。
【請求項58】
キトサンと、約50μg/mLの量のデオキシリボ核酸と、約0.5%(w/v)〜約1%(w/v)の量のトレハロースと、約3mM〜約4mMの量のヒスチジンとを含む、高分子電解質複合体組成物。
【請求項59】
キトサンと、約100μg/mLの量のデオキシリボ核酸と、約1%(w/v)〜約2%(w/v)の量のトレハロースと、約6mM〜約8mMの量のヒスチジンとを含む、高分子電解質複合体組成物。
【請求項60】
フリーズドライ及び再水和後にその生物活性を保持する高分子電解質複合体組成物を調製する方法であって、
a)キトサンを凍結保護剤及び緩衝剤と混合してキトサン組成物を形成する工程と、
b)別途、核酸を前記凍結保護剤及び前記緩衝剤と混合して核酸組成物を形成する工程と、
c)前記キトサン組成物を前記核酸組成物と混合して前記高分子電解質複合体組成物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項61】
前記キトサンが、溶解されたキトサンである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記工程a)が、前記キトサンを前記凍結保護剤及び前記緩衝剤で希釈することを含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記工程b)が、前記キトサンを前記凍結保護剤及び前記緩衝剤で希釈することを含む、請求項60〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程c)で得た前記組成物をフリーズドライする工程d)をさらに含む、請求項60〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記核酸分子が、プラスミド(pDNA)、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)及びリボ核酸分子の少なくとも1つである、請求項60〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記凍結保護剤が、二糖、三糖、オリゴ糖/多糖、ポリオール、ポリマー、高分子量賦形剤、アミノ酸分子又はこれらの組み合わせである、請求項60〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記緩衝剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムの少なくとも1つである、請求項60〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
請求項1〜59のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物と、前記組成物の復元のための説明書とを含むキット。
【請求項69】
水を更に含む、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記水が、対象への注射に好適な水である、請求項68に記載のキット。
【請求項71】
対象への注射前に復元するための説明書を更に含む、請求項68〜70のいずれか1項に記載のキット。
【請求項72】
前記高分子電解質複合体組成物が、その初期濃度の5倍の濃度で、水で復元される、請求項69に記載のキット。
【請求項73】
前記高分子電解質複合体組成物が、その初期濃度の10倍の濃度で、水で復元される、請求項69に記載のキット。
【請求項74】
前記高分子電解質複合体組成物が、その初期濃度の20倍の濃度で、水で復元される、請求項69に記載のキット。
【請求項75】
核酸を必要とする対象に核酸を送達するための、請求項1〜59のいずれか1項に記載の高分子電解質複合体組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年6月10日に出願された米国特許仮出願第61/833,010号の恩典および優先権を主張するものであり、前記仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に援用されている。
本発明は、溶液中での安定性が増され、かつ長期保管中の物理的または化学的分解に対する耐性が改善された高分子電解質複合体組成物、かかる高分子電解質複合体組成物を得るための方法、および核酸の送達のためのこれらの高分子電解質複合体組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬、例えば、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)、例えばプラスミド(pDNA)およびオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、ならびにリボ核酸、例えば短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および短鎖ヘアピンリボ核酸(shRNA)の送達のためのナノ粒子組成物を開発するために、近年、有意な努力がなされている。しかし、これらのコロイド状組成物は、溶液中での限られた安定性を有することおよび長期保管中に物理的または化学的分解をこうむりやすいことが証明されている[1]。
凍結乾燥としても公知のフリーズドライによるこれらの組成物の脱水がそれらの長期安定性を増すために用いられている[2〜4]。この方法は、凍結、一次乾燥および二次乾燥という3つの主な工程から成る。この方法は、低減された体積の乾燥組成物を再水和して活性剤濃度を増加させ、治療投与量に達する可能性をもたらす。これは、小さい均一な粒径のナノ粒子を生じさせる希薄条件での調製を必要とする、ポリカチオンと核酸(NA)間で形成される自己集合性高分子電解質複合体組成物の場合、特に興味深い[1]。
【0003】
凍結乾燥時の溶液中でのナノ粒子の不可逆的凝集および官能性の喪失を防止するために、一般に、組成物への凍結保護剤(lyoprotectant)の添加が求められる[4、5]。凍結・解凍研究は、所定の組成物に使用することができる可能性のある凍結保護剤の特定を可能にする[6、7]。二糖(例えばスクロース、トレハロース、ラクトースなど)、オリゴ糖/多糖(例えばセルロース、デキストランなど)、ポリマー(例えばPEG、PVPなど)などが長期保管用の組成物を安定させるために凍結保護剤として使用されている[3、4]。トレハロースも卓越したナノ粒子凍結保護剤である[4、11〜13]。しかし、多糖はそれらの嵩高さのためあまり有効な凍結保護剤でないことが判明している[15、16]のだが、フリーズドライされた非晶質二糖は、高温での保管時に複合体凝集のリスクが増して多糖より容易に結晶化することが判明した[14]。オリゴ糖は、複合体の最適な安定化のための二糖と多糖両方の有利な特性を有するとすれば、優れた安定剤であり得る[17]。低分子量デキストランは、フリーズドライして再水和したときポリプレックスの物理化学的特性および官能性を保持すること、その上、インビトロおよびインビボ研究中にスクロースより高い細胞生存率を保持することに有効であることが証明されている[15]。
【0004】
緩衝剤を使用し、凍結乾燥プロセスの凍結段階によって起こる溶質の凍結濃縮中にpHを安定させることおよびナノ粒子酸加水分解を防止することができる[2]。フリーズドライ中に使用される緩衝剤は、一部(リン酸塩、コハク酸塩または酒石酸塩)が凍結中に結晶化または沈殿し、それに起因してpHがシフトして4単位にまで達するので、注意して選択しなければならない[2、20〜23]。Tg’は、最大限凍結濃縮された溶液のガラス転移温度を指し、フリーズドライ用の賦形剤を選択する際に考慮すべき重要なパラメータであり、最終生成物に影響を及ぼすことなく一次乾燥を行うことができる最高温度の良好な推定値である。クエン酸ナトリウムは、様々なpH値でのそのより高いTg’[22]および中性に近いそのpKa(pKa3=6.4)[24]を考えると、フリーズドライされた注射用組成物での使用に適している結晶化しない緩衝剤である。L−ヒスチジンも、その3つのpKa値のうちの1つが6.1であること、5.5〜6.5のpHでフリーズドライすると殆ど結晶化を示さないこと、および高いTg’(−33℃)を有すること[21、25]を考えると適切であり得る。賦形剤、大部分は凍結保護剤、一部は緩衝剤の使用は、ポリ(D,Lラクチド−co−グリコール酸)(PLGA)(米国特許出願公開第2011/262490号)[26〜28]、ポリ(l−リシン)(PLL)[29]、ポリ乳酸(PLA)(米国特許出願公開第2011/0275704号)[30]、ゼラチン[31]、ポリエチレンイミン(PEI)[7、15、17、32〜37]を用いて形成されるフリーズドライ高分子電解質複合体組成物の開発のために特徴付けられている。
【0005】
フリーズドライに関して最も多く記述されているものは、PEIベースナノ粒子系である。いくつかの二糖は、フリーズドライ中のPEI/NAナノ粒子の凍結保護に有効と証明されている。以前の凍結保護剤選別研究は、比較的高いスクロース濃度(mL当たり50μgのDNAを含有する組成物についての37.5%(質量/体積)と等価)を要して凍結・解凍時に70kDa(質量平均分子量(Mw))分岐PEI/DNA粒径を保持するが、ゼータ電位およびトランスフェクション効率が激減する結果となることを明らかにした[32]。より最近の研究は、25kDa(Mw)分岐PEI/DNA複合体を、粒子凝集もインビトロトランスフェクションの損失も伴うことなくはるかに低いスクロース、ラクトースまたはトレハロース濃度(mL当たり50μgのDNAを含有する組成物についての1.25%(質量/体積)と等価)で、ゼータ電位の許容可能な増加(10〜20mV)で、およびラクトース組成物を用いて最高インビボトランスフェクション効率でフリーズドライすることができることを明らかにした[33]。スクロースまたはトレハロースばかりでなくマンニトールも凍結乾燥時のPEI/DNA複合体の凝集および有効性喪失を防止するために使用することができるだろうが、凍結保護剤はPEI/ODNまたはリボザイム複合体に必要とされなかった[34]。
【0006】
以前の研究は、フリーズドライ時にナノ粒子を安定させるために高いスクロース/DNA質量比が必要とされ、その結果、組成物が、典型的なプラスミドDNA投与量のための皮下(SC)または筋肉内(IM)注射と不適合であるオスモル濃度を有することになることを確証した[32]。
【0007】
デキストラン(多糖)を二糖の代替品として使用して凍結乾燥70kDa(Mw)分岐PEI/DNA複合体を安定させる可能性が調査された。デキストラン3kDaは、複合体の完全性の保持にスクロースと同様に有効であったが、復元溶液のオスモル濃度をおおよそ40%低下させた[15]。デキストラン3kDa/スクロース組成物を再水和によって最大10倍に濃縮してほぼ等張性にすることができ、測定される濁度の変動の不在によって判定して、濃縮による粒径の変更なくインビボ注射により好適な投与量(例えば1mg/mL)を得ることができた。しかし、10倍濃縮後のその最終濃度に達するために、凍結保護剤の添加前に粒子を200μg/mLの初期DNA濃度で調製しなければならず[15]、この初期DNA濃度は、小さい均一な粒径のナノ粒子を確実に生成する典型的な最大濃度(mL当たり100μgのDNA)[1]より高く、これは、これらの組成物における粒径および多分散性がより高くなるかもしれないことを示唆した。
【0008】
また、デキストラン使用の主な欠点は、PEGとそれらの公知不相溶性(リポプレックスのPEG化度の増加に伴うそれらの安定化効果減少)である[17]。デキストラン5kDaは、PEG化PEI/DNAポリプレックスの完全凝集を防止したが、粒径はなお170〜240%増加した[7]。イヌリン(別のオリゴ糖)は、PEG化リポプレックスまたはポリプレックスのための有効な凍結保護剤であろう[7]。
【0009】
つい最近、6のアミノ/リン酸(N/P)比で調製した直鎖状PEI/DNA複合体への緩衝剤(pH6の10mM L−ヒスチジン)の添加は、粒子の流体力学直径の(176から118nmへの)減少、多分散指数(PDI)の(0.18から0.13への)減少、ゼータ電位の(29.6から36.3mVへの)増加をもたらしたが、それらのインビトロ代謝活性および遺伝子発現に有意な影響を及ぼさなかった[36]。デキストランは、これらの複合体にとって不良な凍結保護剤であると判明したが、スクロースは、少なくとも2000の凍結保護剤/DNA質量比(mL当たり50μgのDNAを含有する組成物についての10%(質量/体積)と等価)で、フリーズドライ時にそれらの複合体を安定させた。14%ラクトスクロース、10%ヒドロキシプロピルベータデクス/6.5%スクロース、または10%ポビドン/6.3%スクロースを含有する等張性組成物は、170nmより小さい粒子で、40℃で6週間の保管を通して安定していた。ラクトスクロースまたはヒドロキシプロピルベータデクス/スクロース組成物がインビトロで最も有効であった[36]。別の緩衝剤(pH7のトリエタノールアミン)は、50%グリセロールとの組み合わせでフリーズドライ時のPEI−マンノビオース(PEIm)/pDNA複合体の寸法の保持に有効であることが判明した。フリーズドライ組成物を−20℃または4℃で30日間保管することができ、さらに粒径を200nmで保持することができた(WO2010/125544)[37]。
【0010】
ポリエチレングリコール(PEG)およびコレステロール(Chol)に共有結合でコンジュゲートさせたPEIを使用して、PEG−PEI−Chol(0.554mg/mL)/pDNA(0.15mg/mL)[ラクトースまたはスクロース中で調製したリポポリプレックス(0.3、1.5または3%(質量/体積)]を、組成物に緩衝剤を添加することなく、フリーズドライして5、1または0.5mg/mLの最終DNA濃度に再水和することができた。フリーズドライ試料の2年間、−20もしくは−80℃、60%RHでの保管後、または試料の復元および4℃で最大3カ月間の保管後、これらの組成物間での粒径または(インビトロ、インビボ、がん患者における)生物活性の変動は殆ど見られなかった(WO2009/021017)[35]。実際、リポポリプレックスは、低いスクロース含有量(mL当たり50μgのDNAを含有する組成物についての0.0625%(質量/体積)と等価)でのほうが凍結・解凍後に分解を受けにくく、それらの物理化学的特性への修飾がなく、対照の少なくとも50%のトランスフェクション効率を有すると以前に報告されていた[32]。
当技術分野の現状を考えると、溶液中での高分子電解質複合体の安定性増加をもたらし、かつ例えばフリーズドライを要する長期保管中に高分子電解質複合体の物理的または化学的分解に対する耐性を改善し、ほぼ等オスモル濃度である有効用量を表す濃度で再水和される高分子電解質複合体組成物が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の様々な態様は、ポリマー、核酸分子、凍結保護剤および緩衝剤を含む高分子電解質複合体組成物であって、フリーズドライおよび再水和後に前記高分子電解質複合体の生物活性を保持する、高分子電解質複合体組成物に関する。
本発明の様々な態様は、キトサンと、約50μg/mLの量のデオキシリボ核酸と、約0.5%(質量/体積)から約1%(質量/体積)の間の量のトレハロースと、約3mMから約4mMの間の量のヒスチジンとを含む、高分子電解質複合体組成物に関する。
【0012】
本発明の様々な態様は、キトサンと、約100μg/mLの量のデオキシリボ核酸と、約1%(質量/体積)から約2%(質量/体積)の間の量のトレハロースと、約6mMから約8mMの間の量のヒスチジンとを含む、高分子電解質複合体組成物に関する。
【0013】
本発明の様々な態様は、フリーズドライおよび再水和後にその生物活性を保持する高分子電解質複合体組成物を調製する方法であって、キトサンを凍結保護剤および緩衝剤と混合してキトサン組成物を形成する工程と、別途、核酸を凍結保護剤および緩衝剤と混合して核酸組成物を形成する工程と、前記キトサン組成物を前記核酸組成物と混合して高分子電解質複合体組成物を形成する工程とを含む方法に関する。
【0014】
本発明の様々な態様は、本明細書で定義の高分子電解質複合体組成物と、その組成物の復元のための説明書とを含むキットに関する。
本発明の様々な態様は、核酸を、それを必要とする対象に送達するための、本明細書で定義の高分子電解質複合体組成物の使用に関する。
添付の図面に言及することにする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A-C】図1Aは、ナノ粒子凝集(粒径の5倍増加)が凍結保護剤不在下で凍結・解凍(F/T)後に見られたが、組成物に少なくとも1%質量/体積マンニトール、0.5%(質量/体積)スクロース、0.5%(質量/体積)デキストラン5kDaまたは0.1%(質量/体積)トレハロース二水和物を添加すると凝集が防止された(直径≦150nm)ことを示すグラフを例示する。図1Bは、最低でも示されている凍結保護剤含有量を使用することによるトランスフェクション効率を示すグラフを例示する。図1Cは、ナノ粒子のルシフェラーゼ発現が凍結・解凍後に維持されたが、凍結保護剤不在下では有意な減少が見られたことを示すグラフを例示する。トランスフェクション効率およびルシフェラーゼ発現レベルを、賦形剤なしの作りたて(fresh)対照(0FT)に対する百分率によって表し、前記0FTは、全細胞の43%のトランスフェクション効率およびタンパク質1mg当たり8.03×1010RLU/分のルシフェラーゼ発現レベルを有した。
図2A-H】図2は、1または10%(質量/体積)マンニトール(図2A〜2B)、スクロース(図2C〜2D)またはデキストラン5kDa(図2E〜2F)の存在下で凍結・解凍したナノ粒子が、凍結保護剤を含有しない新たに調製した粒子組成物(図2G)より球形であることを示す画像を例示する。凍結保護剤不在下で凍結・解凍したナノ粒子は、重度に凝集した(図2H)。
図3A-D】図3Aは、0.5%(質量/体積)スクロース、デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物を含有する組成物のフリーズドライおよび等体積への再水和はナノ粒子凝集をもたらし、再水和粒子は、新たに調製した複合体より最大24倍大きいZ平均を有したことを示すグラフを例示する。図3Bは、強度でのそれらの平均粒径が新たに調製した粒子より最大9.5倍大きかったことを示すグラフを例示する。図3Cは、多分散指数(PDI)が0.35より上であったことを示すグラフを例示する。図3Dは、ゼータ電位がゼロまたは負であったことを示すグラフを例示する。
図4A-C】図4A〜Cは、0.5%凍結保護剤を含有する組成物へのpH4.5またはpH6.5のクエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝剤の添加が、作りたて試料中での顕微鏡的凝集の形成をもたらし、凍結・解凍後に完全凝集をもたらすことを示すグラフを例示する。
図5A-B】図5Aは、新たに調製したキトサン/DNA複合体が異なる形態を有することを示す画像を例示する。図5Bは、13.75mMの最終濃度に達するためのpH6.5のL−ヒスチジンの添加が、わずかに大きくより球形のナノ粒子の形成をもたらすことを示す画像を例示する。
図6A-C】図6A〜Bは、0.5%凍結保護剤を含有する組成物へのL−ヒスチジンの添加が凝集を生じさせなかったことを示すグラフを例示する:作りたておよび凍結・解凍組成物において粒径のわずかな増加が見られる。図6Cは、PDIが0.35より下で維持されることを示すグラフを例示する。
図7A-I】図7A〜Cは、0.5または1%(質量/体積)賦形剤および13.75mMヒスチジンの存在下でフリーズドライしたナノ粒子を、それらのPDIは減少したが粒径に影響を及ぼすことなく、それらの原体積の10%ほどもの小ささで再水和することができることを示すグラフを例示する。図7D〜Fは、0.5%(質量/体積)スクロースまたはトレハロース二水和物と13.75mMヒスチジンとを含有する組成物をフリーズドライし、粒子凝集なしに原体積(Rh1X)にまたはそれらの初期濃度の20倍(Rh20X)に再水和することができることを示すグラフを例示する。図7G〜Iは、0.5%(質量/体積)スクロースまたはトレハロース二水和物組成物を、それらの粒径またはPDIを変化させずに3.44mMほどもの少ないL−ヒスチジンでフリーズドライすることができたことを示すグラフを例示する。
図8A-H】図8A〜Cは、複合体形成前の賦形剤でのキトサンおよびDNAの希釈は作りたてナノ粒子の粒径に殆ど影響を及ぼさなかったが、L−ヒスチジンの存在はより低いPDIを有する粒子を生じさせたことを示すグラフを例示する。図8D〜Hは、0.5%(質量/体積)スクロースまたはトレハロースと3.44mMヒスチジンとを含有する組成物のRh1XまたはRh20Xで粒径(Z平均または強度での平均粒径)変化は見られなかったが、PDIはRh20Xでわずかに低かったことを示すグラフを例示する。0.5%(質量/体積)デキストランを用いると、粒子はより大きかったが300nm付近を維持し、PDIは、Rh1Xでの0.4から、Rh20Xでの0.18に減少した。
図9A-D】図9A〜Bは、賦形剤なしの作りたて対照(Lyoなし−His(0)−作りたて)の百分率によって表したトランスフェクション効率およびルシフェラーゼ発現レベルを示すグラフを例示する。前記Lyoなし−His(0)−作りたては、全細胞の53%のトランスフェクション効率、およびタンパク質1mg当たり6.75×10-5μMのルシフェラーゼの発現レベルを有した。0.5%(質量/体積)凍結保護剤を含有する組成物は、フリーズドライ前には対照のほぼ100%およびフリーズドライ後には対照の45%未満のトランスフェクション効率を有したが、フリーズドライ後のそれらのルシフェラーゼ発現レベルは、対照の25%未満であった。図9C〜Dは、0.5%凍結保護剤と3.44mM L−ヒスチジンの両方を含有する組成物が、トレハロースが含有する組成物についてはフリーズドライ前に対照のほぼ110%、等体積への再水和(Rh1X)後に対照の80%より上、および20Xでの再水和後に対照の最大77%のトランスフェクション効率を有したことを示すグラフを例示する。L−ヒスチジンとスクロースまたはトレハロース二水和物を含有する組成物は、対照と同様のルシフェラーゼ発現レベル(対照の116〜66%)を有したが、デキストラン5kDaを含有するものについては発現が対照の57〜12%であった。
図10A-F】図10A〜Dは、0.5%トレハロース二水和物と3.5mM L−ヒスチジンとを含有するナノ粒子組成物の再水和前の20X倍濃縮は、粒径およびPDIの小規模な増加をもたらしたが、複合体のゼータ電位を変化させず、最終濃縮率20Xに達するための1回または2回の逐次的フリーズドライ/再水和サイクルの使用は、ナノ粒子の物理化学的特性に影響を及ぼさなかったことを示すグラフを例示する。図10E〜Fは、単回フリーズドライ後に20X濃縮した組成物(FD/Rh20x)は対照の100%のトランスフェクション効率を有したが、2回の逐次的フリーズドライサイクル[Rh(10X+2X)およびRh(5X+4X)]後、それらが対照の少なくとも85%のトランスフェクション効率を有したことを示すグラフを例示する。20Xの最終濃縮率を有するすべての組成物は、それらを1回または2回フリーズドライしたが、対照の64〜69%のルシフェラーゼ発現レベルを有した。
図11A-C】図11A〜Bは、粒子形成後の100μg/mLのsiRNA濃度のために1または2%(質量/体積)トレハロースと7または3.5mMヒスチジンとを含有するCS/siRNA組成物のRh1XまたはRh20X時に、最小限の粒径変化(Z平均)が見られたことを示すグラフを例示する。これらの組成物のPDIは、Rh1X後0.25未満であり、Rh20X後0.20未満であった。図11Cは、1%トレハロースと7mM L−ヒスチジンとを含有する組成物は、組成物が作りたてであろうと、Rh1Xであろうと、Rh10Xであろうと、FD後にサイレンシング効率を保持し、残留eGFP発現レベルが未処置細胞の52から47%の間であったことを示すグラフを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、適切な凍結保護剤タイプおよび濃度、ならびに緩衝剤タイプおよび濃度が、凍結乾燥される粒子懸濁液中に存在するという条件で、キトサン核酸ナノ粒子をフリーズドライし、濃縮することができ、再水和すると粒径が変化することも、生物活性が喪失することも、高浸透液が生じることもないとう本発明者らによる発見に端を発したものである。
【0017】
したがって、本発明の一実施形態は、溶液中での高分子電解質複合体の安定性増加および/または長期保管中の物理的もしくは化学的分解に対する高分子電解質複合体の耐性改善をもたらす、高分子電解質複合体組成物を提供する。
本発明の別の実施形態は、溶液中での高分子電解質複合体の安定性および/または長期保管中の物理的もしくは化学的分解に対する高分子電解質複合体の耐性改善をもたらす、フリーズドライ高分子電解質複合体組成物を提供する。
これらのうちのいくつかの実行例では、高分子電解質複合体は、多糖系高分子電解質複合体である。いくつかの事例では、前記高分子電解質複合体は、多糖と核酸間の高分子電解質複合体である。
本明細書において用いる用語「高分子電解質」は、繰り返し単位が電解質基を有するポリマーを指す。したがって、高分子電解質は、ポリカチオンおよびポリアニオンを含む。これらの基は、水溶液中で解離してポリマーを荷電させる。したがって、高分子電解質の特性は、電解質とポリマーの両方に似ている。
【0018】
本明細書において用いる用語「多糖」は、グリコシド結合によって互いに結合された単糖単位の長鎖から成る分子であって、加水分解されると構成要素の単糖またはオリゴ糖をもたらす分子を指す。
【0019】
いくつかの事例では、多糖はキトサンである。本明細書において用いる用語「キトサン」は、ランダムに分布するβ−(1−4)結合D−グルコサミン(脱アセチル化単位)とN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)から成る直鎖状多糖を指す。キトサンは、エビおよび他の甲殻類の殻をアルカリ性水酸化ナトリウムで処理することによって一般に製造される。キトサンは、生体適合性、生分解性、粘膜付着性、抗菌/抗真菌活性および非常に低い毒性を含む、広範な有益特性を有する。
キトサンの分子量および鎖上のアミン基の量(脱アセチル化度またはDDA)は、その生物学的および生理的特性に大きな影響を及ぼす。例えば、アセチル基の量および分布は生分解性に影響を及ぼす。アセチル基の不在またはそれらの均質な分布の不在(ブロックではなくランダム)は非常に低い酵素的分解速度をもたらすからである。
【0020】
これらの実施形態のいくつかの実行例では、キトサンは化学的修飾を含むことがある。化学的修飾を含むキトサンの例としては、(i)キチンおよび/もしくはキトサンに共有結合で結合させることができる、または核酸もしくはオリゴヌクレオチドと複合体化したキトサン系化合物にイオン的にもしくは疎水的に付着させることができる、特異的または非特異的細胞標的部分と、(ii)キチンおよびキトサンの物理的、化学的または生理的特性の改変に役立つ、キチンおよびキトサンの様々な誘導体または修飾体とを有する、キトサン系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。かかる修飾キトサンの例は、特異的または非特異的標的リガンド、膜透過化剤、細胞内局在成分、エンドソーム溶解(細胞溶解)剤、核局在シグナル、コロイド安定剤、血液中での長い循環半減期を促進する薬剤を有する、キトサン系化合物、ならびに化学的誘導体、例えば、塩、O−アセチル化およびN−アセチル化誘導体である。キトサンの化学的修飾のためのいくつかの部位としては、C2(NH−CO−CH3もしくはNH2)、C3(OH)、またはC6(CH2OH)が挙げられる。
【0021】
本明細書で定義する実施形態のいくつかの実行例では、キトサンは、約4kDa〜約200kDaの間、好ましくは約5kDaから約200kDaの間、より好ましくは約5kDaから約100kDaの間、より好ましくは約10kDaから約80kDaの間である特定の平均分子量(Mn)を有する。キトサンは、好ましくは約70%から約100%の間、より好ましくは約80%から95%の間である特定の脱アセチル化度(DDA)をさらに有する。
これらの実施形態のいくつかの実行例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)の1つまたは複数である。核酸は、例えば、プラスミド(pDNA)、ミニサークルまたはオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の1つまたは複数である。核酸は、短鎖干渉リボ核酸(siRNA)および短鎖ヘアピンリボ核酸(shRNA)またはメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の1つまたは複数であってもよい。
本明細書で定義する組成物に入るポリマーと核酸の比は、ポリマーのアミン基のモルの、核酸のリン酸基のモルに対する比(N/P比)によって決定される。いくつかの実行例では、本明細書で定義する組成物のN/P比は約1.2から約30の間であり、好ましくは、N/P比は約2から約10の間であり、より好ましくは、N/P比は約5である。
【0022】
キトサン/核酸高分子電解質複合体に関する研究が行われている[38〜45]。これらの研究は、核酸(例えばDNAまたはRNAなど)と、約8から200kDaの間の数平均分子量(Mn)および72%から95%の間の脱アセチル化度(DDA)を有するキトサンとを含有する、高効率トランスフェクションのための組成物を含む(WO2009/0075383およびWO2012/149215)。しかし、これらの研究は、これらの組成物の長期安定化に関連した複数の難題を考慮しておらず、それらの難題に取り組んでもいない。
【0023】
以前の研究は、低減された体積のフリーズドライ組成物の再水和によって治療濃度の等張性キトサン/核酸組成物を生成する可能性にも取り組んでいない。二糖(例えばスクロースまたはマンニトール)は、フリーズドライおよび短期保管(≦2カ月)時にキトサンベースポリプレックスの凝集および官能性の喪失を防止することになった[8〜10]。初期組成物pHは、フリーズドライ中のキトサン加水分解の状態にとって重要であり、溶液pHを6から4.1に低下させると分解速度は30倍増加することになった[2]。組成物の十分な緩衝を確実にするために緩衝液のモル濃度はキトサンモノマーのものと少なくとも同等でなければならず、さらに、生理的緩衝剤との競合、および他の望ましくない作用を防止するために注射する最終組成物中0.1M未満でなければならない。キトサン加水分解速度は、HCl濃度の増加とともに増加することになり[18]、より緻密なキトサン鎖高次構造を促進する溶媒の存在下では、その構造の中央に位置するグリコシド結合が加水分解にあまり利用できず、キトサン加水分解速度は減少することになる[19]。
【0024】
レチノールを水溶性キトサン(18kDa、96%DDA)に封入して球形ナノ粒子を形成し、それらの粒子をその後3日間、一切の凍結保護剤不在下で凍結乾燥させ、容易に再水和した。これらの再水和粒子は、わずかに小さい平均粒径および分布の広さを有したが、凍結乾燥は、それらのゼータ電位に影響を及ぼさず、封入されたレチノールを分解することもなかった[46]。経口インスリン送達用のフリーズドライキトサン(80kDa、85%DDA)/ポリ(γ−グルタミン酸)ナノ粒子を1.5%トレハロース中でフリーズドライし、ドライケーキの強い起泡破壊にもかかわらず、再水和複合体の寸法または形態(平均粒径≦245nm、PDI<0.3)の変更もインスリン含有量の低下もなかった[47]。キトサンナノ粒子は、酸性pH値で加水分解感受性であることが明らかになった:pH=1.2で粒子は分解し、pH=2.0でのほうが28%大きかった。トリメチルキトサン(TMC;200kDa、85%DDA、15もしくは30%の四級化度(DQ))またはTMC−システインコンジュゲート(TMC−Cys)とインスリンとで形成された高分子電解質複合体をスクロース中、20のスクロース/インスリン(質量/質量)比で凍結乾燥させ、再水和後に粒径、ゼータ電位およびインスリン封入効率の変更はなかった[48]。ガチフロキサシンの送達用のアルギネート(75〜100kDa)/キトサン(65〜90kDa、DDA>80%)ナノ粒子を5%質量/体積マンニトール中で配合し、フリーズドライし、室温で最大12カ月間保管した。初期体積で再水和後、粒径の最小限の(345から410nmへの)増加しか認められず、それらのゼータ電位の変化も、それらのインビトロガチフロキサシン放出プロファイルの変化もなかった[49]。メトキシポリ(エチレングリコール)グラフトキトサン(10kDa、97%DDA)コポリマーのメトトレキサート組み込み高分子ナノ粒子を調製し、凍結保護剤不在下で2日間凍結乾燥させ、脱イオン水で再水和し、その後、特性づけした:粒径は100nm未満であり、ゼータ電位値は+20〜+40mVの範囲であり、負荷効率は65%より高かった[50]。
【0025】
本明細書において用いる表現「ゼータ電位」は、コロイド系の界面動電位を指す。ゼータ電位は、ギリシャ文字ゼータ(ζ)を用いて一般に表示され、したがってζ−電位である。ゼータ電位は、界面二重層(DL)における滑り面の位置での、その界面から離れているバルク流体中の地点に対する電位である。ゼータ電位は、分散媒と分散粒子に結合した静止流体層との間の電位差である。
【0026】
キトサンおよびポリグルタミン酸(PGA)、α−PGA、PGAの可溶性塩、PGAの金属塩またはヘパリンのナノ粒子を、骨粗鬆症の処置のための標的部位への核酸の送達のために生成した。ナノ粒子は266nmの平均粒径を有し、それらをフリーズドライし、2.5%ほどもの低いトレハロースで13%粒径増加で再水和することができ、または2.5%ほどもの低いマンニトールで57%平均粒径増加で再水和することができた(米国特許第7,901,711号)[51]。PEG化キトサン(110kDa、87%DDA)/pDNAナノ粒子を1%マンニトール中で凍結乾燥させた後、1カ月、4℃または−20℃で保管するか、または40%スクロース中で凍結乾燥させた後、−20℃で保管し、それらの粒径、ゼータ電位およびトランスフェクション効率は一切変化しなかった[8]。他のナノ粒子[DNA:キトサン(90kDa):細胞溶解性ペプチド(電荷比1:6:1−/+/−)]は、10%ラクトース中でフリーズドライ時にそれらの粒径(300〜350nm)を保持し、レポーター遺伝子CMV−CATのインビボ発現がウサギにおいて経口投与72時間後に証明された(WO97/42975)[52]。
【0027】
キトサン(CS:170kDa、84%DDA)/siRNA複合体(50のN/P比)の凍結乾燥の研究により、10%スクロースは再水和後の粒径の保持に必要であることが明らかになった。粒径は、作りたて組成物においてスクロース添加後に(126〜169nmに)わずかに増加し、フリーズドライおよび再水和後142nmであった[9]。凍結保護剤不在下での再水和複合体は大き過ぎて動的光散乱(DLS)で粒径を測定することができなかった。試料遺伝子ノックダウン効率は、siRNA濃度に伴って増加し、スクロースの存在に依存した:より低いsiRNA濃度(≦25nM)については、10%スクロースで最高ノックダウン(60%)が得られ、最高siRNA濃度(50nM)については、最大ノックダウン効率(70%)に達するのに5%スクロースで十分であった。キトサン/siRNA(50nM)複合体を5%以上のスクロース中で配合したとき、10%のH1229細胞生存率低下が測定された。10%スクロース組成物のサイレンシング活性は、2カ月間の室温での保管後、32%に達した[9]。
【0028】
オリゴヌクレオチドおよびsiRNAの送達に使用したキトサンコーティングPLGA複合体は、0.05%(質量/体積)キトサンおよび1%(質量/体積)ポリビニルアルコール(PVA)の溶液中でフリーズドライしたとき凝集することが明らかになった[10]。緩衝剤:0.25%(質量/体積)キトサン、10%(質量/体積)PVAおよびpH4.4の0.5M酢酸緩衝剤を補足したより高濃度の組成物中でのフリーズドライ時にも複合体凝集が生じる結果となった[53]。フリーズドライ時の凝集は、5:1より大きい凍結保護剤:ナノスフェア質量比でのマンニトールの添加によって回避することができた[10]。キトサンコーティング不在下では、フリーズドライ時のPLGA/オリゴヌクレオチド粒子の凝集を1:1より大きい凍結保護剤:ナノスフェア質量比を用いることによってしか回避することができなかった[10]。
最後に、キトサン/DNA複合体は、Tris−HCl緩衝剤中で形成され、水性媒体中での遠心分離によって単離され、金型に濾過された後、凍結保護剤不在下でフリーズドライされた(特公平4−354445号)[54]。
【0029】
希薄な状況で調製したポリマー/核酸ポリプレックスの物理化学的特性およびトランスフェクション効率をフリーズドライ時に保持するために、組成物は、mL当たり0.5〜1mgのDNAの等張性注射への再水和と不適合である濃度の凍結保護剤(二糖、三糖またはポリオール)を含む必要がある。それ故、最終注射投与量は非常に制限される。非常に高張性でなければフリーズドライ組成物をより高濃度に再水和することができないからである。高濃度の凍結保護剤への緩衝剤の添加は、凍結乾燥後のナノ粒子特性の保持に殆ど効果がない。しかし、その存在は、注射前により低い凍結保護剤濃度を有する再水和組成物のpHを制御するために必要とされ得る。デキストラン/スクロース組成物により、10倍濃縮時のフリーズドライ分岐PEI系組成物をほぼ等張性に再水和することが可能になるが、これらの組成物は、デキストランとスクロースに限られ、凍結乾燥後の粒径および完全性の維持に必要であり得るいかなる緩衝剤も含まない。
【0030】
別の実施形態では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマーと、核酸分子とフリーズドライ保護剤とを含む。本明細書において用いる表現「フリーズドライ保護剤」は、フリーズドライ材料を保護する分子を指す。フリーズドライ保護剤は、例えば、凍結保護物質および凍結保護剤を含む。公知の凍結保護剤としては、ポリヒドロキシ化合物、例えば、糖(単、二および多糖)、ポリアルコール、およびこれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。トレハロースおよびスクロースは、天然凍結保護剤である。トレハロースは、干ばつ期の間、仮死状態で生き残る(無水生活としても公知)様々な植物[例えば、イワヒバおよびシロイヌナズナ(arabidopsis thaliana)]、真菌、および無脊椎動物によって生産される。この実施形態のいくつかの実行例では、凍結保護剤は、二糖、三糖、オリゴ糖/多糖、ポリオール、ポリマー、高分子量賦形剤、アミノ酸分子またはこれらの任意の組み合わせの1つまたは複数である。二糖は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、セロビオースおよびメリビオースの1つまたは複数であってもよい。二糖は、約0.1%(質量/体積)から約10%(質量/体積)の間、好ましくは約0.5%(質量/体積)から約5%(質量/体積)の間、より好ましくは約0.5%(質量/体積)から約2%(質量/体積)の間である濃度で本発明の組成物中に存在してもよい。三糖は、マルトースおよびラフィノースの1つまたは複数であってもよい。三糖は、約0.1%(質量/体積)から約10%(質量/体積)の間、好ましくは約0.5%(質量/体積)から約5%(質量/体積)の間、より好ましくは約0.5%(質量/体積)から約2%(質量/体積)の間の濃度で存在してもよい。オリゴ糖/多糖は、デキストラン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ヒドロキシエチルデンプン、フィコール、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびイヌリンの1つまたは複数であってもよい。オリゴ糖/多糖は、約0.1%(質量/体積)から約10%(質量/体積)の間、好ましくは約0.5%(質量/体積)から約5%(質量/体積)の間、より好ましくは約0.5%(質量/体積)から約2%(質量/体積)の間である濃度で本発明の組成物中に存在してもよい。デキストランは、生体分子に浸透圧をかけるのに有用であり得る。いくつかの実行例では、デキストランは、1から70kDaの間、好ましくは1から5kDaの間の平均分子量(Mn)を有する。ポリオールは、マンニトールおよびイノシトールの1つまたは複数であってもよい。ポリオールは、約0.1%(質量/体積)から約10%(質量/体積)の間、好ましくは約0.5%(質量/体積)から約5%(質量/体積)の間、より好ましくは約2%(質量/体積)から約3%(質量/体積)の間である濃度で本発明の組成物中に存在してもよい。アミノ酸分子は、リシン、アルギニン、グリシン、アラニンおよびフェニルアラニンの少なくとも1つであってもよい。アミノ酸分子は、約1mMから約100mMの間、好ましくは約3mMから約14mMの間、より好ましくは約3mMから約4mMの間である濃度で本発明の組成物中に存在してもよい。高分子量賦形剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ゼラチン、ポリデキストロースおよびピリビニルピロリドン(PVP)の1つまたは複数であってもよい。
【0031】
いくつかの他の実施形態では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマー、核酸分子、フリーズドライ保護剤および緩衝剤を含む。本組成物のための緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムの少なくとも1つを含み得る。緩衝剤は、本明細書において定義する組成物中に、約1mMから約100mMの間、好ましくは約3mMから約14mMの間、好ましくは約3mMから約8mMの間、より好ましくは約3mMから約4mMの間である濃度で存在してもよい。
【0032】
これらの実施形態のいくつかの事例では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマー、核酸、トレハロースおよびヒスチジンを含む。
【0033】
これらの実施形態のいくつかの事例では、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、核酸、トレハロースおよびヒスチジンを含む。
これらの実施形態の他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマー、核酸、約0.5%(質量/体積)〜約2%(質量/体積)の量のトレハロース、および約3mM〜約8mMの量のヒスチジンを含む。
これらの実施形態の他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、核酸、約0.5%(質量/体積)〜約2%(質量/体積)の量のトレハロース、および約3mM〜約8mMの量のヒスチジンを含む。
【0034】
これらの実施形態の他の事例は、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、約50μg/mLの量のデオキシリボ核酸、約0.5%(質量/体積)〜約1%(質量/体積)の量のトレハロース、および約3mM〜約4mMの量のヒスチジンを含む。
これらの実施形態の他の事例は、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、約100μg/mLの量のリボ核酸、約1%(質量/体積)〜約2%(質量/体積)の量のトレハロース、および約6mM〜約8mMの量のヒスチジンを含む。
他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマー、核酸、スクロースおよびヒスチジンを含む。
他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、核酸、スクロースおよびヒスチジンを含む。
【0035】
他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、ポリマー、核酸、約0.5%(質量/体積)〜約2%(質量/体積)の量のスクロース、および約3mM〜約4mMの量のヒスチジンを含む。
他の事例では、高分子電解質複合体組成物は、キトサン、核酸、約0.5(質量/体積)〜約2%(質量/体積)の量のスクロース、および約3mM〜約4mMの量のヒスチジンを含む。
本実施形態の特定の実行例によると、高分子電解質複合体組成物はフリーズドライされる。分かるであろうが、凍結乾燥(lyophilisation、lyophilizationまたはcryodesiccaion)としても公知のフリーズドライは、腐食しやすい材料を保存するためにまたはその材料の輸送をより適便にするために用いられる脱水法である。フリーズドライは、材料を凍結させ、次いで周囲圧を低下させて材料中の凍結水を固相から気相へ直接昇華させることによって作動する。
【0036】
フリーズドライ法は、凍結前に製品を処理する任意の方法を含む前処理工程を含むことがある。この工程は、例えば、これらに限定されるものではないが、安定性を増加させる成分および/もしくは加工を増進する成分の添加、高蒸気圧溶媒の減少、または表面積の増加などの操作含む。前処理方法としては、凍結濃縮、溶液相濃縮、製品の外観を保つための配合、反応生成物を安定させるための配合、表面積を増加させるための配合、および高蒸気圧溶媒の減少が挙げられる。
小規模での凍結は、典型的には、材料をフリーズドライ用フラスコに入れ、シェルフリーザーと呼ばれる槽内でそのフラスコを回転させることによって行われ、前記槽は、機械冷凍、ドライアイスとメタノール、または液体窒素により冷却される。大規模での凍結は、通常、フリーズドライマシンを使用して行われる。この工程では、材料を、その材料の固相と液相が共存できる最低温度であるその三重点より下に冷却することが重要である。これにより、後続の工程で融解ではなく昇華が確実に起こることになる。結晶が大きいほどフリーズドライは容易である。
【0037】
一次乾燥段階中に、圧力を低下させ、水が昇華するために十分な熱を材料に印加する。必要な熱の量は、昇華分子の昇華潜熱を用いて算出することができる。この最初の乾燥段階中に材料中の水の約95%が昇華される。この段階での圧力を部分真空の印加によって制御する。真空は、昇華を加速するため、計画的乾燥法として有用なものとされる。さらに、冷却コンデンサチャンバおよび/またはコンデンサプレートは、水蒸気が再凝固するための表面を提供する。氷は一次乾燥段階で除去されたので、二次乾燥段階の目的は未凍結水分子の除去である。フリーズドライ法のこの部分は、材料の吸着等温線によって左右される。この段階での温度は、水分子と凍結材料間で形成された一切の物理化学的相互作用を破壊するために、一次乾燥段階での温度より高温に上昇され、0℃より上であることさえある。
【0038】
好適なフリーズドライ装置としては、マニホールド型フリーズドライ装置、回転型フリーズドライ装置およびトレー式フリーズドライ装置が挙げられるが、これらに限定されない。
別の実施形態では、本発明は、本明細書で定義の高分子電解質複合体および高分子電解質複合体組成物を調製する方法も提供する。この実施形態の一実行例では、前記方法は、ポリマー組成物および核酸組成物を調製する工程、前記ポリマー組成物と前記核酸組成物を混合して高分子電解質複合体組成物を形成する工程を含む。その後、その得られた高分子電解質複合体組成物をフリーズドライすることができる。
この実施形態のいくつかの実行例では、前記方法は、ポリマーを溶解する工程と、溶解されたポリマーを好適なフリーズドライ保護剤および好適な緩衝剤と混合してポリマー組成物を形成する工程とを含む。前記方法は、核酸分子を好適なフリーズドライ保護剤および好適な緩衝剤と混合して核酸組成物を形成する工程も含む。その後、ポリマーと核酸組成物を混合して高分子電解質複合体組成物を形成する。その後、その得られた高分子電解質複合体組成物をフリーズドライすることができる。
【0039】
別の実行例では、前記方法は、キトサンを溶解する工程、および溶解されたキトサンを好適な凍結保護剤および好適な緩衝剤と混合してキトサン組成物を形成する工程を含む。前記方法は、核酸分子を好適な凍結保護剤および好適な緩衝剤と混合して核酸組成物を形成する工程も含む。その後、キトサンと核酸組成物を混合して高分子電解質複合体組成物を形成する。得られた高分子電解質複合体組成物
本発明は、容器、容器上のラベル、本明細書で定義の高分子電解質複合体組成物、および使用説明書のうちの1つまたは複数を含む、製品または商用パッケージもしくはキットも提供する。本明細書で定義の高分子電解質複合体組成物に加えて、製品または商用パッケージもしくはキットは、使用前に高分子電解質複合体組成物を復元するための水も含むことがある。
本発明は、容器、容器上のラベル、本明細書で定義のフリーズドライ高分子電解質複合体組成物、および使用説明書のうちの1つまたは複数を含む、製品または商用パッケージもしくはキットも提供する。本明細書で定義のフリーズドライ高分子電解質複合体組成物に加えて、製品または商用パッケージもしくはキットは、使用前に高分子電解質複合体組成物を復元するための水も含むことがある。好適な
【0040】
この実施形態のいくつかの実行例では、水は対象への注射に好適である。高分子電解質複合体組成物を水で初期濃度の5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍の濃度で復元することができる。1回より多くの復元サイクルを行うことによって、例えば2回の復元サイクルを行うことなどによって、高分子電解質複合体組成物を水で初期濃度の25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍または60倍の濃度で復元することができる。
【0041】
本明細書で定義の高分子電解質複合体組成物を(各組成物に特異的な、例えば、これらに限定されるものではないが、mL当たり約100μgの核酸などの)希薄条件で調製して、核酸送達用の小さい均一な粒径のナノ粒子を生成することができる。フリーズドライされ再水和された組成物は、小さいナノ粒子径および低い多分散指数を有することができる。
本明細書において用いる用語「多分散性」または「多分散指数」(PDI)は、所定のポリマー試料中の分子量の分布の尺度を指す。算出されるPDIは、数平均分子量で割った質量平均分子量である。これは、ポリマーの枝内の個々の分子質量の分布を示す。PDIは、1以上の値を有するが、ポリマー鎖が均一な鎖長に近づくにつれてPDIは一(1)に近づく。
【0042】
実施形態のいくつかの実行例では、本明細書で定義の新たに調製した、フリーズドライおよび/または再水和組成物は、以下の特性の1つまたは複数を有する:
(A)それらは、トランスフェクション中の細胞取り込みを促進するために正のゼータ電位を有する。ゼータ電位は、複合体形成とフリーズドライ間および組成物再水和と注射間の短期安定化を確保にするために十分な高さのものである。
(B)それらは、ナノ粒子の均一な凍結乾燥をもたらすので、フリーズドライおよび再水和後の組成物において最小限の凝集しか検出されないか、または凝集は検出されない。
(C)それらは、フリーズドライおよび再水和後に高分子電解質複合体生物活性を保持する。
本明細書で定義の高分子電解質複合体に関して本明細書において用いる表現「生物活性」は、本明細書で定義の高分子電解質複合体の生物活性、細胞活性または薬理を指し、特に、プラスミドDNAを送達するときのタンパク質を発現するそれらの能力(トランスフェクション効率)およびsiRNAを送達するときRNAiにより遺伝子発現をサイレンシングさせるそれらの能力(両方とも、望ましくない毒性または免疫応答の誘導を伴わない)を指す。これらの生物活性は、好ましくは、特性A〜Gの1つまたは複数とともに保持される。
【0043】
D)診療所での使いやすさのために、本明細書で定義のフリーズドライ組成物は、対象への注射に都合のよい時間内に完全に復元される。
E)診療所での使用時に限られた注射体積で治療投与量に達するために、本明細書で定義の再水和高分子電解質複合体組成物は、最大核酸濃度を有する。
F)それらは、より高い最終核酸濃度への再水和時にほぼ等張性になるように最小量の賦形剤を有する。特に、再水和製剤は、注射時の細胞傷害、患者の不快感または疼痛を最小にするためにほぼ等張性である。
G)本明細書で定義の再水和高分子電解質複合体組成物は、注射時の細胞傷害、患者の不快感または疼痛を最小にするためにほぼ中性のpHを有する。特に、本明細書中で定義の組成物は、溶液中でのポリカチオンまたはナノ粒子の沈殿を防止するためにやや酸性であり得る。
【0044】
実施形態のいくつかの実行例では、本明細書中で定義の作りたて組成物、凍結・解凍組成物および/またはフリーズドライされ再水和された組成物は、以下のナノ粒子物理化学的特性の1つまたは複数を提供する:
A)ナノ粒子Z平均は750nm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは250nm未満である。ナノ粒子Z平均は、例えばDLSによって決定することができる。
B)ナノ粒子平均多分散指数(PDI)は最大で0.5、好ましくは最大で0.35、最も好ましくは最大で0.25である。ナノ粒子平均PDIは、例えばDLSによって評価することができる。
C)ナノ粒子平均ゼータ電位は正であり、組成物の短期安定性を確実にするために十分なものである。ナノ粒子平均ゼータ電位は、例えばLDVによって評価することができる。
D)本発明の組成物には凝集実質的にがない。凝集の存在は、例えばESEMによって評価することができる。
【0045】
本明細書で定義の組成物のナノ粒子はまた、以下のインビトロ有効性基準の少なくとも1つまたは複数を提供する:
A)それらは、賦形剤なしの作りたて高分子電解質粒子のトランスフェクションレベルの約10%より大きい、好ましくは約25%より大きい、最も好ましくは約50%より大きいトランスフェクションレベルを提供する。トランスフェクションレベルは、例えばフローサイトメトリーによって評価することができる。
B)それらは、賦形剤なしの作りたてCS/DNA粒子の発現レベルの10%より大きい、好ましくは25%より大きい、および最も好ましくは50%より大きいルシフェラーゼ発現レベルを提供する。ルシフェラーゼ発現レベルは、例えばルミノメトリーによって評価することができる。
C)それらは、作りたて高分子電解質粒子のサイレンシング効率の10%より大きい、好ましくは25%より大きい、最も好ましくは50%より大きいサイレンシング効率を提供する。サイレンシング効率は、例えばフローサイトメトリーによって評価することができる。
【0046】
本明細書で定義する組成物は、それらを臨床使用に好適なものにする、以下の水和時性能基準の1つまたは複数を提供する:
A)フリーズドライケーキが約10以内、より好ましくは約9分以内、より好ましくは約8分以内、より好ましくは約7分以内、より好ましくは約6分以内および最も好ましくは約5分以内に完全に復元される。復元レベルは、復元時に目視検査によって評価することができる。
【0047】
B)最終核酸濃度は、少なくとも0.1mg/mL、好ましくは少なくとも0.2mg/mL、より好ましくは少なくとも0.3mg/mL、より好ましくは少なくとも0.4mg/mL、および最も好ましくは少なくとも0.5mg/mLである。最終DNA濃度は、初期DNA含有量および用いた再水和率から決定することができる。いくつかの事例では、最終DNA濃度は、少なくとも0.1mg/mL、好ましくは少なくとも0.2mg/mL、より好ましくは少なくとも0.3mg/mL、より好ましくは少なくとも0.4mg/mL、および最も好ましくは少なくとも0.5mg/mLである。最終RNA濃度は、初期DNA含有量および用いた再水和率から決定することができる。いくつかの他の事例では、最終RNA濃度は、少なくとも0.1mg/mL、好ましくは少なくとも0.2mg/mL、より好ましくは少なくとも0.3mg/mL、より好ましくは少なくとも0.4mg/mL、および最も好ましくは少なくとも0.5mg/mLである。最終RNA濃度は、初期RNA含有量および用いた再水和率から決定することができる。
【0048】
C)本明細書で定義の再水和組成物は、ほぼ等オスモル濃度(iso−osmolality)である。いくつかの事例では、本明細書で定義の再水和組成物は、約100から750mOsmの間、好ましくは約150から500mOsmの間、および最も好ましくは約200から約400mOsmの間であるオスモル濃度を有する。再水和組成物のオスモル濃度は、組成物のオスモル濃度モデルで決定することができる。
D)本明細書で定義の再水和組成物は、ほぼ中性pHを有する。特定の態様では、本明細書で定義の再水和組成物は、5から8の間、より好ましくは5.5から7.5の間、最も好ましくは6から7の間であるpHを有する。再水和組成物のpHは、pHメーターを使用して決定することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書で定義の組成物を対象の障害または疾患の処置に使用し、前記対象は動物またはヒトである。本明細書において用いる「処置」および「処置すること」は、障害または疾患に関連した病状および症状を予防、抑制および緩和することを含む。処置は、治療有効量の本明細書に記載する組成物を投与することによって行うことができる。いくつかの事例では、本明細書で定義の組成物は、動物またはヒトなどの対象への注射に好適である。注射は、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、髄腔内、硬膜外、心臓内、関節内、陰茎海綿体内または硝子体内であり得る。
いくつかの事例では、本明細書に定義の組成物を遺伝子治療に使用することができる。本明細書において用いる表現「遺伝子治療」は、治療用核酸を対象の細胞に送達することにより疾患を処置するための薬物としての核酸、例えばDNAの使用を指す。遺伝子治療の最も一般的な形態は、機能的な治療用遺伝子をコードする核酸を使用して突然変異遺伝子を置換することを含む。他の形態は、突然変異を直接修正すること、または(天然ヒト遺伝子ではなく)治療タンパク薬をコードするDNAを使用して処置を行うことを含む。
この説明は、本発明の範囲を制限するためにではなく本発明を例証するために与える下記実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0050】
実験およびデータ分析
高分子電解質複合体組成物の調製
室温キトサン(Mn 10kDa、92%DDA)を4mL Lab Fileガラスバイアルに計り入れ、Milli−Q水および1N HClを各バイアルに添加した。最終キトサン濃度は5mg/mLであり、HCl最終濃度は28mMであった。完全溶解を確実にするために、バイアルを回転板上に配置して一晩、室温で撹拌した。そのキトサン保存溶液を濾過滅菌した。
【0051】
組成物への賦形剤の添加を1)複合体形成後、または2)キトサンおよびDNA予存溶液を希釈する場合には複合体形成前、または3)キトサンおよびsiRNA保存溶液を希釈する場合には複合体形成前に行った:
1)層流フード下で、保存キトサン溶液をMilli−Q水で271μg/mLに希釈し、次いで100μLを100μLのプラスミドDNA(pEGFPLuc)と100μg/mLで混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させ、その後、試料体積を、必要に応じて、Milli−Q水、および/または無菌2、4もしくは20%(質量/体積)マンニトール、スクロース、デキストラン5kDaもしくはトレハロース二水和物、および/またはpH4.5もしくは6.5の70mMクエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝剤、またはpH6.5の13.75、27.5もしくは55mM L−ヒスチジンで、400μLにした。
【0052】
2)層流フード下で、保存キトサン溶液を、必要に応じて、Milli−Q水、および/または無菌2、4もしくは20%(質量/体積)スクロース、デキストラン5kDaもしくはトレハロース二水和物、および/またはH6.5の13.75もしくは55mM L−ヒスチジンで、271μg/mlに希釈した。200μg/mL DNA保存溶液を同じ方法に従って100μg/mLに希釈した。その後、100μLのキトサン組成物を100μLのDNA組成物と混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させた。
3)層流フード下で、保存キトサン溶液を、必要に応じて、RNase不含水、無菌8%(質量/体積)デキストラン5kDaおよび/またはトレハロース二水和物、およびpH6.5の14mM L−ヒスチジンで、271または542μg/mLに希釈した。1mg/mL siRNA保存溶液を同じ方法に従って100または200μg/mLに希釈した。その後、100μLのキトサン組成物を100μLのsiRNA組成物と混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させた。
【0053】
凍結・解凍する試料を1.5mLクライオバイアルに移し、少なくとも2時間、−1℃/分の速度で−80℃に凍結させた。使用前30分間、室温で試料を解凍した。
フリーズドライする試料を2mL血清バイアルに移し、13mmブチル凍結乾燥ストッパーを用いてフリーズドライし、すべての試料を収容しているトレーを透水性膜で覆って埃または細菌汚染を防止した。フリーズドライは、2サイクルの一方を用いて、Millrock Laboratory Series Freeze−Dryer PC/PLCで行った:
1)1時間で室温から−40℃に勾配凍結し、その後、−40℃で2時間、等温を維持し;48時間、−40℃で、100ミリトル(約13.3Pa)で一次乾燥させ;そして100ミリトル(約13.3Pa)で二次乾燥させ、12時間で温度を30℃に上昇させ、そしてその後、30℃で6時間、等温を維持する。
2)段階的に5℃に冷却して30分間、等温で維持し、段階的に−5℃に冷却して30分間、等温で維持し、その後、35分間で−40℃に勾配冷却して2時間、等温で維持し、48時間、−40℃で、100ミリトル(約13.3Pa)で一次乾燥させ、そして100ミリトル(約13.3Pa)で二次乾燥させ、12時間で温度を30℃に上昇させ、そしてその後、30℃で6時間、等温を維持する。
【0054】
試料にストッパーをし、圧着させ、使用するまで4℃で保管した。使用15〜30分前に、必要に応じて原体積の100%、20%、10%または5%と同じ体積のMilli−Q水を使用して試料を再水和した。
40μLまたは400μL試料を用いて動的光散乱(DLS)により粒径および多分散性(PDI)を測定した。Milli−Q水または賦形剤で希釈した、全試料または試料の小部分を、測定に使用した。粒径分析中、賦形剤のタイプおよびそれらの最終濃度によって計器で希釈剤粘度を調整した。各試料について、少なくとも2回の連続粒径分析を25℃で行い、12〜20の逐次的読み取り(10秒光子カウント/読み取り)の結果として得た各分析を平均してデータセットを得た。各分析に要した逐次的読み取り数を前記装置によって最適化した。Z平均直径、強度による粒径分布、およびPDIを相関関数から導出した。
【0055】
粒子ゼータ電位、すなわち表面電荷、をレーザードップラー速度計測法によって測定した。全試料をMilli−Q水およびNaCl溶液で希釈して、10mM NaClを有する800μLの試料を得た。賦形剤のタイプおよびそれらの最終濃度によって前記計器で希釈剤粘度を調整した。各試料について、3回の連続ゼータ電位分析を25℃で行い、10〜20の逐次的読み取りの結果として得た各分析を平均してデータセットを得た。各分析に要した逐次的読み取り数を前記装置によって最適化した。
ナノ粒子の形態を環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)撮像によって評価した。気体噴霧法を用いて研磨シリコンウェーハ上で小量の試料を粉砕し、その後、金でスパッタコーティングした。より高い解像度のためにESEMの高真空モードを用いて観察を行った。高真空観察パラメータは次の通りであった:加速電圧=20kV、スポットサイズ=3、作動距離 約5mm。
測定値を得るために少なくとも100μLの試料を要する微小電極を使用して、異なる組成物のpHを測定した。
【0056】
初期濃度の20倍で再水和されたフリーズドライ試料のオスモル濃度の測定に関係する試料の大きな体積、および作りたて溶液のオスモル濃度に対するナノ粒子の明らかな無視できる影響を考えて、賦形剤のみを使用して組成物オスモル濃度を推定するモデルを開発した。スクロース、デキストラン5kDa、トレハロース二水和物、およびL−ヒスチジンの系列希釈物のオスモル濃度を用いて追加のモデルを確立し、その後、それを、5%(質量/体積)デキストラン、5%(質量/体積)トレハロース二水和物、およびpH6.5の35mM L−ヒスチジンを含有する組成物で検証した。次いで、50μgのDNA/mLのナノ粒子を伴う組成物の推定におけるこのモデルの精度を、pH6.5の3.44mMヒスチジンと0.5%(質量/体積)スクロース、デキストランまたはトレハロースとを含有するフリーズドライされ再水和された5倍濃縮状態の組成物で検証した。このモデルは、スクロースまたはトレハロースを含有する上記組成物にはそれぞれ6および8%のオスモル濃度過小推定で許容され得たが、デキストラン含有組成物には57%のオスモル濃度過小推定で不適当であった。
【0057】
ヒト胎児腎293(HEK293)細胞を使用して、組成物のトランスフェクション効率および遺伝子発現レベルを評価した。10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したpH7.4の高グルコースDMEMでHEK293細胞を増殖させ、37℃、5%CO2でインキュベートした。トランスフェクション当日に約50%集密(ウェル当たり約150000細胞)に達するように、トランスフェクション24時間前に60,000細胞/ウェルを24ウェルプレートにプレーティングした。各試料を使用して24ウェルプレートの2ウェルにトランスフェクトした。一方のウェルはフローサイトメトリーでのトランスフェクション効率分析用であり、他方のウェルは、ルシフェラーゼ発現定量用であった。各ウェルに、正確な体積のナノ粒子組成物をトランスフェクション培地(10%FBSを補足したpH6.5の高グルコースDMEM)とともに添加して、2.5μgのDNAを含有する合計500μLのトランスフェクション培地と試料を得た。その後、細胞を24時間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでトランスフェクション培地を500μLの増殖培地で置換した。細胞をさらに24時間、37℃、5%CO2でインキュベートした後、分析した。
【0058】
フローサイトメトリーでトランスフェクション効率を測定した。20,000事象を試料ごとに収集し、488nmアルゴンレーザーを使用してトランスフェクト細胞における増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)の励起後に光電子増倍管で510/20nmバンドパスフィルターにより蛍光を検出した。非トランスフェクト細胞を使用してHEK293細胞系自己蛍光を測定し、相応じて蛍光検出ゲートを調整した。前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)も用いて、記録した事象から死細胞およびデブリを排除した。最後に、そのデータを用いてトランスフェクション効率を分析するときにFSCを用いてそれらの事象から重複を特定し、排除した。
【0059】
Bright−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイを使用して試料中のルシフェラーゼタンパク質含有量を定量することにより遺伝子発現を評価し、ビシンコニン酸(BCA)アッセイで測定された各試料の全タンパク質含有量に対して正規化した。分析するトランスフェクト試料を含有する各ウェルから増殖培地を除去し、細胞をpH7.4の100μL PBSで2回洗浄し、ウェル当たり100μLのGlo溶解バッファーを使用して5分間、室温で細胞を溶解し、その後、細胞溶解物を分析まで−20℃で保管した。溶解物を室温で解凍した。ルシフェラーゼ発現を白色96ウェルプレートで測定した:25μLのBright−Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を25μLの細胞溶解物と混合し、その後、発光を測定した。ルシフェラーゼ含有量を相対光単位毎分(RLU/分)で表すか、または既知濃度の組換えルシフェラーゼ標準物質の系列希釈物で作成した標準曲線を使用してμgに変換した。タンパク質含有量を透明96ウェルプレートで測定した:200μLのBCA研究試薬を25μLの細胞溶解物と混合し、試料を30分間、37℃、5%CO2でインキュベートし、次いで室温に冷却し、562nmでの吸光度を測定した。200μg/mLウシ血清アルブミン(BSA)標準物質の系列希釈物を使用して作成する、標準曲線を作成し、試料と並行して分析し、吸光度読取値をタンパク質濃度に変換した。
【0060】
増強緑色蛍光タンパク質陽性ヒト非小細胞肺癌(eGFP陽性H1299)細胞を使用して組成物のサイレンシング効率を評価した。10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したpH7.4のRPMI−1640で細胞を増殖させ、37℃、5%CO2でインキュベートした。トランスフェクション当日に約75〜85%集密に達するようにトランスフェクション24時間前に45,000細胞/ウェルを24ウェルプレートにプレーティングした。各ウェルに、正確な体積のナノ粒子組成物をpH6.5の高グルコースDMEM(FBSなし)とともに添加して、100nMのsiRNAを含有する合計500μLの培地と試料を得た。その後、細胞を4時間37℃、5%CO2でインキュベートし、55μL FBSを補足し、そしてその後、さらに44時間、37℃、5%CO2でインキュベートした後、分析した。サイレンシング効率をフローサイトメトリーによって測定した。10,000事象を試料ごとに収集し、488nmアルゴンレーザーを使用してトランスフェクト細胞における増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)の励起後に光電子増倍管で510/20nmバンドパスフィルターにより蛍光を検出した。未処置細胞に対するeGFP強度の平均減少を計算した。前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)も用いて、記録した事象から死細胞およびデブリを排除した。最後に、そのデータを用いてトランスフェクション効率を分析するときにFSCを用いてそれらの事象から重複を特定し、排除した。
【実施例】
【0061】
(例1)
凍結保護剤はナノ粒子凝集を防止し、凍結・解凍サイクル後にトランスフェクション効率を保持する
1−キトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン(Mn 10kDa、92%DDA)を一晩、室温でHClに溶解して5mg/mLの最終キトサン濃度を得た。その保存溶液を271μg/mlに希釈し、次いで100μLを100μLのプラスミドDNA(pEGFPLuc)と100μg/mLで混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させ、その後、試料体積を、表1の通り、無菌Milli−Q水および/または無菌20%(質量/体積)マンニトール、20%(質量/体積)スクロース、20%(質量/体積)デキストラン5kDa、もしくは20%(質量/体積)トレハロース二水和物で400μLにした。
【0062】
【表1】
【0063】
2−試料凍結・解凍(乾燥なし)
凍結・解凍する試料を1.5mLクライオバイアルに移し、少なくとも2時間、−1℃/分の速度で−80℃に凍結した。試料を使用前に30分間、室温で解凍させた。
【0064】
3−DLS測定
0.1%〜10%(質量/体積)の範囲の濃度のマンニトール、スクロースおよびデキストラン5kDaで出発して、凍結保護剤選別を行った。後でトレハロース二水和物を試験したが、最初の3つの凍結保護剤について測定した粒径は、上記のその上限のまま変わらなかったため選別中にさらなる凍結保護剤を添加する必要がないと思われたので、0.1〜3%(質量/体積)の範囲の濃度でしか試験しなかった。2つが新たに調製した試料であり、2つが凍結・解凍サイクル後の試料である4つの試料を、組成物ごとに分析した。各試料について、2回の連続したDLS粒径分析を行い、12〜20の逐次的読み取り(10秒光子カウント/読み取り)の結果として得た各々を平均してデータセットを得た。各分析に要した逐次的読み取り数をその装置によって最適化した。強度での平均粒径を、そのデータセットから得た相関関数から導出した。凍結保護剤を含有しない組成物は、凍結・解凍時に凝集を示し、粒径が約5倍増加した。少なくとも1%(質量/体積)マンニトール、0.5%(質量/体積)スクロース、0.5%(質量/体積)デキストラン5kDaまたは0.1%(質量/体積)トレハロース二水和物を含有する組成物は、凍結・解凍時に150nm未満の強度でのナノ粒子平均粒径を維持した。より高い凍結保護剤含有量では、試料間で粒径変動が見られなかった(±125nm)。マンニトールは、最も有効性の低い凍結保護剤であり、0.1または0.5%(質量/体積)の濃度で凍結・解凍後に粒子は300nmより大きかった(図1A)。
【0065】
4−ESEM撮像
凍結保護剤を有さない組成物を凍結・解凍前および後に観察した一方、低(1%(質量/体積))および高(10%(質量/体積))マンニトール、スクロースまたはデキストラン5を含有する試料を凍結・解凍後に観察した。気体噴霧法を用いて研磨シリコンウェーハ上で小量の試料を粉砕し、その後、金でスパッタコーティングした。より高い解像度のために環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)の高真空モードを用いて観察を行った。高真空観察パラメータは次の通りであった:加速電圧=20kV、スポットサイズ=3、作動距離 約5mm。凍結保護剤不在下で新たに調製した複合体は、寸法が200nm未満であり、異なる形態(球形、棒状またはドーナツ形)を有したが、大部分は、凍結・解凍後に大きい(500nmより大きい)球形凝集体を形成した。1または10%凍結保護剤中で凍結・解凍させた試料は、より球形であり、200nmより小さいままであった(図2A〜H)。1%質量/体積マンニトール中で調製した複合体は、DLSで前に見られたように、スクロースまたはデキストラン5中で調製したものよりわずかに大きいようであった。
【0066】
5−インビトロトランスフェクション
マンニトールを含有する組成物は、前に見られたように凍結・解凍時に粒径を保持する点で最小の有効性であったのでインビトロで試験しなかった。凍結・解凍時に200nm未満の粒径を保持することを示し、最大で3%(質量/体積)の凍結保護剤を含有した組成物のみをインビトロアッセイした。これらは、0.5〜3%(質量/体積)スクロース、0.5〜3%(質量/体積)デキストラン5、および0.1〜3%(質量/体積)トレハロース二水和物であった。10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したpH7.4の高グルコースDMEM中で増殖させ、37℃、5%CO2でインキュベートしたHEK293細胞を、インビトロ研究に使用した。トランスフェクションのために約50%集密(1ウェル当たり約150000細胞)に達するように、トランスフェクション24時間前に60,000細胞を24ウェルプレートのウェルごとにプレーティングした。各試料を24ウェルプレートの2ウェルにトランスフェクトした。一方のウェルはフローサイトメトリーでのトランスフェクション効率分析用であり、他方のウェルは、ルシフェラーゼ発現定量用であった。各ウェルに、正確な体積のナノ粒子組成物をトランスフェクション培地(10%FBSを補足したpH6.5の高グルコースDMEM)とともに添加して、2.5μgのDNAを含有する合計500μLのトランスフェクション培地と試料を得た。その後、細胞を24時間37℃、5%CO2でインキュベートした。各ウェル中のトランスフェクション培地を500μLの増殖培地で置換し、細胞をさらに24時間、37℃、5%CO2でインキュベートした後、分析した。
【0067】
6−トランスフェクション効率
フローサイトメトリーを用いてトランスフェクション効率を測定した。試料調製:分析する試料を収容している各ウェルから増殖培地を除去し、細胞をpH7.4の100μLリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、ウェル当たり100μLのトリプシン/EDTAを使用して5分、37℃でトリプシン処理し、その後、100μL増殖培地を添加し、全試料をサイトメトリーチューブに移した。フローサイトメトリー測定:20000事象を試料ごとに収集し、488nmアルゴンレーザーを使用してトランスフェクト細胞における増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)の励起後に光電子増倍管で510/20nmバンドパスフィルターにより蛍光を検出した。非トランスフェクト細胞を使用してHEK293細胞系自己蛍光を測定し、相応じて蛍光検出ゲートを調整した。前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)も用いて、記録した事象から死細胞およびデブリを排除した。最後に、そのデータを用いてトランスフェクション効率を分析するときにFSCを用いてそれらの事象から重複を特定し、排除した。凍結・解凍組成物中のトランスフェクト細胞の百分率を、全細胞の43%のトランスフェクション効率を有した、凍結保護剤を含有しない新たに調製した複合体(0FT)で得られたトランスフェクト細胞の百分率に対して表した。インビトロ試験した凍結保護剤を含有するすべての組成物は、凍結・解凍後にトランスフェクション効率を保持し、新たに調製した複合体のものの少なくとも87%のトランスフェクションレベルであった。凍結保護剤不在下で凍結・解凍したナノ粒子は、新たに調製した複合体のものの25%のトランスフェクションレベルしか有さなかった(図1B)。
【0068】
7−ルシフェラーゼ発現
相対光単位毎分(RLU/分)でのルシフェラーゼ発現を、Bright−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイを使用して測定し、ビシンコニン酸(BCA)アッセイで測定した各試料における全タンパク質含有量に対して正規化した。試料調製:分析する試料を収容している各ウェルから増殖培地を除去し、pH7.4の100μL PBSで細胞を2回洗浄し、ウェル当たり100μL Glo溶解バッファーを使用して5分間、室温で細胞を溶解し、その後、細胞溶解物を分析まで−20℃で保管した。溶解物を使用前に室温で解凍した。ルシフェラーゼ発現定量:白色96ウェルプレートにおいて25μLのBright−Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を25μLの細胞溶解物と混合し、その後、発光を測定した。タンパク質含有量定量:透明96ウェルプレートにおいて200μLのBCA研究試薬を25μLの細胞溶解物と混合し、試料を30分間、37℃、5%CO2でインキュベートし、その後、室温に冷却し、562nmでの吸光度を測定した。200μg/mLウシ血清アルブミン(BSA)標準物質の系列希釈物を使用して作成する、標準曲線を作成し、試料と並行して分析し、吸光度読取値をタンパク質濃度に変換した。ルシフェラーゼ発現レベルを、タンパク質1mg当たり8.03×1010RLU/分の発現レベルを有する、凍結保護剤不在下の作りたてキトサン/DNA複合体について得た値に対して正規化した。ルシフェラーゼ発現は、作りたて対照より40〜60%低い発現レベルを有した1%および3%(質量/体積)トレハロースをそれぞれ配合した試料を除いて、作りたて複合体と凍結保護剤存在下で凍結・解凍した複合体との間で同様であった。凍結保護剤不在下で凍結・解凍した試料は、作りたて対照より75%少ないルシフェラーゼを発現した(図1C)。
【0069】
【表2】
【0070】
(例2)
凍結・解凍時のナノ粒子凝集を防止する低凍結保護剤含有量組成物はフリーズドライ中の凝集を防止できない
1−キトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
凍結保護剤を含有しないナノ粒子組成物(組成物#1)または0.5%(質量/体積)スクロースを含有するナノ粒子組成物(組成物#9)、0.5%(質量/体積)デキストラン5を含有するナノ粒子組成物(組成物#15)もしくは0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物を含有するナノ粒子組成物(組成物#21)を、実施例1に記載の通り調製した。フリーズドライする試料を2mL血清バイアルに移し、13mmブチル凍結乾燥ストッパーをしてフリーズドライし、すべての試料を収容しているトレーを透水性膜で覆って埃または細菌汚染を防止した。
2−試料フリーズドライ
フリーズドライは、次のサイクルを用いて、Millrock Laboratory Series Freeze−Dryer PC/PLCで行った:1時間で室温から−40℃に勾配凍結し、その後、−40℃で2時間、等温を維持し;48時間、−40℃で、100ミリトル(約13.3Pa)で一次乾燥させ;そして100ミリトル(約13.3Pa)で二次乾燥させ、12時間で温度を30℃に上昇させ、そしてその後、30℃で6時間、等温を維持する。試料にストッパーをし、圧着させ、使用するまで4℃で保管した。使用15〜30分前に、フリーズドライ前の初期体積と同じ体積のMilli−Q水を使用して試料を再水和した。すべての試料が5分以内に再水和されたが、凍結保護剤を用いると再水和が瞬時に起こり、いずれの凍結保護剤も用いないほうがわずかに遅かった。
【0071】
3−DLS測定
2つが新たに調製した試料であり、2つがフリーズドライして初期体積に再水和した後の試料である、4つの試料を組成物ごとに分析した。各試料について、2または3回の連続した粒径分析を行い、12〜20の逐次的読み取り(10秒光子カウント/読み取り)の結果として得た各々を平均してデータセットを得た。各分析に要した逐次的読み取り数をその装置によって最適化した。Z平均直径、強度での平均粒径およびPDIを、そのデータセットから得た相関関数から導出した。すべてのフリーズドライして再水和した組成物は、新たに調製したナノ粒子と比較して大きい凝集体を生じさせた:Z平均は、最大24倍増加し(図3A)、強度での平均粒径は、最大9.5倍増加し(図3B)、PDI値は、0.7より上であり、約4倍の平均増加であった(図3C)。
【0072】
4−ゼータ電位測定
2つが新たに調製した試料であり、2つがフリーズドライして初期体積に再水和した後の試料である、4つの試料を組成物ごとに分析した。フリーズドライ試料を、フリードライ前のそれらの体積と同じ体積のMilli−Q水を使用して再水和し、その後、15〜30分間放置して安定させた。作りたて試料および再水和試料に400μL 20mM NaClを補足し、必要に応じて、それらの体積をゼータ電位分析前にMilli−Q水で800μLにした。ゼータ電位をレーザードップラー速度計測法(LDV)によって測定した。各試料について、3回の連続したゼータ電位分析を行い、10〜20回の逐次的読み取りの結果として得た各々を平均してデータセットを得た。各分析に要した逐次的読み取り数をその装置によって最適化した。新たに調製した組成物は、30から32mVの間のゼータ電位を有し、したがって、凍結保護剤はナノ粒子の表面電荷に対して影響を及ぼさなかった。フリーズドライして再水和した組成物は、0〜−5mVのゼータ電位を有した(図3D)。
【0073】
【表3】
【0074】
(例3)
クエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝剤系はキトサン系組成物と相溶性でない−クエン酸三ナトリウムはキトサンゲル化を促進する
1−キトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン(Mn10kDa、92%DDA)を一晩、室温でHClに溶解して5mg/mLの最終キトサン濃度を得た。その保存溶液を271μg/mlに希釈し、その後、100μLを100μLのプラスミドDNA(pEGFPLuc)と100μg/mLで混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させ、その後、試料体積を、表4の通り、無菌2%(質量/体積)スクロース、2%(質量/体積)デキストラン5kDaまたは2%(質量/体積)トレハロース二水和物と、pH4.5または6.5の無菌70mMクエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝剤とで400μLにした。
【0075】
【表4】
【0076】
2−試料凍結・解凍
試料を実施例1に記載の通りに凍結・解凍した。
3−DLS測定
調製した作りたておよび凍結・解凍試料を、実施例2に記載の通りに粒径およびPDIについて分析した。クエン酸/クエン酸三ナトリウムを含有する組成物は、凍結・解凍前に大きい粒子を形成し、強度での平均粒径は900nmより大きかった(図4B)。凍結・解凍後、試料は完全に凝集し、DLS分析に適さず、Z平均は3500nmより上であり(図4A)、PDI値は0.66より上であった(図4C)。
【0077】
4−クエン酸/クエン酸三ナトリウム不相溶性
キトサン、スクロースまたはトレハロース二水和物を、図5の通り、pH6.2のクエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝剤と混合するか、またはキトサンをクエン酸もしくはクエン酸三ナトリウムのみと混合した。
【0078】
【表5】
【0079】
キトサン溶液は、緩衝剤またはクエン酸三ナトリウムの存在下で濁ってきたが、クエン酸の存在下では濁ってこなかった(データを示さない)。濁度は、クエン酸三ナトリウムの存在下で最大であり、キトサン/クエン酸三ナトリウム混合物のゲル化により溶液中で白色雲状構造が形成した(データを示さない)。ゲル化は、負電荷を有する三価クエン酸三ナトリウムによる正電荷を有するキトサン鎖の架橋によって生じ得る(データを示さない)。
【0080】
【表6】
【0081】
(例4)
L−ヒスチジンはキトサン系組成物と不相溶性であり、多分散指数がより低いナノ粒子懸濁液をもたらす
1−ESEM撮像のためのキトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン/DNA複合体を実施例3に記載の通り調製した。室温で30分間の複合体安定化後、試料体積を、表7の通り、無菌4%(質量/体積)スクロース、4%(質量/体積)デキストラン5kDaまたは4%(質量/体積)トレハロース二水和物、pH6.5の無菌55mM L−ヒスチジン緩衝剤またはMilli−Q水で400μLにした。
【0082】
【表7】
【0083】
2−ESEM撮像
ESEM試料調製および撮像は、実施例1に記載の通り行った。凍結保護剤またはヒスチジン不在下で配合した作りたてナノ粒子は、球形、棒状またはドーナツ形の形態を有した(図5A)が、pH6.5および13.75mMの最終濃度のL−ヒスチジンの添加後、より球形であった(図5B)。13.75mMヒスチジンを有するまたは有さない1%(質量/体積)凍結保護剤中での複合体の配合は、観察されたナノ粒子に同様の影響を及ぼした。
【0084】
3−凍結・解凍後のDLS分析のためのキトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン/DNA複合体を実施例3に記載の通り調製した。室温で30分間の複合体安定化後、試料体積を、表8の通り、無菌2%(質量/体積)スクロース、2%(質量/体積)デキストラン5kDaまたは2%(質量/体積)トレハロース二水和物と、pH6.5の無菌55mM L−ヒスチジン緩衝剤またはMilli−Q水とで400μLにした。試料を実施例1に記載の通り凍結・解凍した。
【0085】
【表8】
【0086】
4−DLS測定
ヒスチジンなしの各組成物の二つ組(組成物#9〜11)を新たに調製して分析した。ヒスチジンを有する各組成物の二つ組(組成物#12〜14)を新たに調製して凍結・解凍後に分析した。粒径およびPDI分析は実施例2に記載の通り行った。ヒスチジンの添加は、作りたて組成物に殆ど影響を及ぼさなかった(図6A〜C):Z平均は、スクロースおよびトレハロースの存在下でそれぞれ30および13nm増加し、デキストランの存在下で34nm減少し、強度での平均粒径は、スクロースおよびトレハロースの存在下でそれぞれ12および29nm増加し、デキストランの存在下で48nm減少し、PDIは、すべての凍結保護剤の存在下で0.05減少した。ヒスチジンの存在下で凍結・解凍時に組成物において有害反応は見られなかった(図6A〜C):Z平均および強度での平均粒径は200nm未満であり、平均PDI値は0.35未満であった。
【0087】
【表9】
【0088】
(例5)
L−ヒスチジンは、凍結保護剤を含有する組成物に添加したとき、フリーズドライ後のナノ粒子凝集を防止する
組成物をナノ粒子径およびPDIを有意に変化させることなく最大20倍濃縮することができ;
組成物中のL−ヒスチジンを最少にし、その上、フリーズドライ後の粒子凝集をなお防止することができる。
【0089】
1−フリーズドライおよびより高濃度への再水和のためのキトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン/DNA複合体を実施例3に記載の通り調製した。室温で30分間の複合体安定化後、試料体積を、表10の通り、無菌2%(質量/体積)スクロース、2または4%(質量/体積)デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物と、pH6.5の55mM L−ヒスチジン緩衝剤とで400μLにした。
【0090】
【表10】
【0091】
Rh1X、Rh5XおよびRh10X:組成物#3〜5の6試料(表10参照)を実施例2に記載の通り調製し、フリーズドライした。各組成物について、2つの試料を400μL Milli−Qでそれらの原体積に再水和(Rh1X)し、2つを80μL Milli−Qで再水和5倍濃縮(Rh5X)し、2つを40μL Milli−Qで再水和10倍濃縮(Rh10X)した。Rh1XおよびRh20Xについては、組成物#1、2および4(表10参照)の4つの試料を実施例2に記載の通り調製し、フリーズドライした。各組成物について、2つの試料を400μL Milli−Q(Rh1X)でそれらの原体積に再水和し、2つを20μL Milli−Q水で再水和20倍濃縮(Rh20X)した。再水和試料を15〜30分間放置して安定させた後、分析した。すべての試料は5分以内に再水和したが、Rh20Xは、そのケーキ体積に比べて小さい再水和体積を考えると、より達成困難であった。
【0092】
2−より高濃度に再水和された組成物のDLS測定
粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。組成物#3〜5(13.75mM ヒスチジンと1%(質量/体積)デキストラン、または0.5もしくは1%(質量/体積)トレハロース二水和物)の最大10倍濃縮される再水和(Rh1X〜Rh10X)は、120から155nmまで幅がある粒子Z平均に対して影響を及ぼさず(図7A)、または131から165nmまで幅がある強度での平均粒径に対して影響を及ぼさなかった(図7B)。ナノ粒子PDI値は、濃縮率が増加すると0.18から0.05に減少した(図7C)。13.75mMヒスチジンに併せた0.5%スクロースまたはトレハロースを含有する組成物であって、それらの初期濃度の20倍で再水和された組成物は、250nm(Z平均、図7D)または200nm(強度での平均粒径、図7E)より小さい粒子を生じさせ、デキストランおよびRh20Xを含有する組成物は、305nmのZ平均(図7D)および324nmの強度での平均粒径(図7E)を有した。0.37のPDIを有した0.5%デキストランRh1Xを除いて、すべての組成物が0.2未満のPDI値を有し、組成物Rh20X中のナノ粒子は、組成物RH1Xでのものより劣ったPDI値を有した(図7F)。
【0093】
3−より低いヒスチジン含有量を有するフリーズドライ用のキトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン/DNA複合体を実施例3に記載の通り調製した。室温で30分間の複合体安定化後、試料体積を、表11の通り、無菌2%(質量/体積)スクロース、デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物と、pH6.5の55、27.5または13.75mM L−ヒスチジン緩衝剤とで400μLにした。
【0094】
【表11】
実施例2に記載の通り各組成物の二つ組を調製し、フリーズドライし、そしてその後、それらの原体積に400μL Milli−Qで再水和した(Rh1X)。
【0095】
4−より低いヒスチジン含有量を有するフリーズドライ組成物のDLS測定
粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。ヒスチジン含有量の減少は、0.5%(質量/体積)スクロースまたはトレハロース二水和物を含有する再水和組成物の粒径に影響を及ぼさず、粒子の直径は160nm未満であった(図7G〜H)。これら2つの組成物のPDIは、ヒスチジン含有量を13.75から3.44mMに低下させたとき、0.25以下のままであった(図7I)。デキストラン組成物Rh1XのZ平均および強度での平均粒径は、ヒスチジン濃度を13.75から3.44mMに低下させると、それぞれ、151から71nmに、および477から157nmに減少した(図7G〜H)。これらの組成物の平均PDIは、ヒスチジン含有量を13.75から6.88mMに低下させると0.37から0.25に減少し、3.44mMヒスチジンでの最終PDIは0.24であった(図7I)。
【0096】
5−オスモル濃度モデルおよび推定値
20倍小さい体積(20倍濃縮)で再水和されるフリーズドライ試料のオスモル濃度を測定するために要する作りたて試料の大きい体積を考えて、組成物オスモル濃度を推定するためのモデルを開発した。ナノ粒子オスモル濃度が無視できると仮定して、賦形剤(スクロース、デキストラン5kDa、トレハロース二水和物およびL−ヒスチジン)のみの系列希釈物を使用してモデルを確立した。得られたモデルは、5%(質量/体積)デキストランと5%(質量/体積)トレハロース二水和物とpH6.5の35mM L−ヒスチジンとを含有する組成物のオスモル濃度を1.8%の精度で予測した。このモデルに基づき、オスモル濃度は、凍結保護剤、ヒスチジン含有量、および再水和による濃縮率に依存して、4から570mOsmの間で変動した。スクロースを含有する組成物のオスモル濃度のほうが高く、デキストラン5kDaを含有する組成物のオスモル濃度のほうが低かった。2つの組成物は、等張性に近かった:279mOsmの0.5%dex−his(13.75)−Rh20X、および268mOsmの0.5%dex−his(13.75)−Rh10X。
【0097】
【表12】
【0098】
(例6)
複合体形成前に核酸およびキトサンに凍結保護剤および緩衝剤を添加することにより作りたて組成物中のナノ粒子濃度を最大にすることができ;
これらの組成物中の凍結保護剤および緩衝剤含有量を最少にすることにより、ほぼ等張性のままでより高い濃度にケーキを復元することが可能になり;および
ナノ粒子物理化学的特性およびトランスフェクション効率を有意に変化させることなくこれらの組成物を最大20倍濃縮することができる。
【0099】
1−13.75mMヒスチジンを含有する濃縮キトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン(Mn10kDa、92%DDA)を一晩、室温でHClに溶解して5mg/mLの最終キトサン濃度を得た。そのキトサン保存溶液を、表13の通り、無菌凍結保護剤溶液(2または4%(質量/体積)スクロース、デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物)、pH6.5の無菌55mM L−ヒスチジン緩衝剤、およびMilli−Q水を使用して271μg/mlに希釈した。
【0100】
【表13】
【0101】
表14の通り、無菌凍結保護剤溶液(2または4%(質量/体積)スクロース、デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物)、pH6.5の無菌55mM L−ヒスチジン緩衝剤、および/またはMilli−Q水を使用してDNA(200μg/mLでのpEGFPLuc)保存溶液を100μg/mlに希釈した。
【0102】
【表14】
【0103】
各組成物の二つ組を調製した。各二つ組について、100μLのキトサン溶液と100μLのその相補DNA溶液(例えば、キトサン組成物#1とDNA組成物#1)を混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させた後、分析した。
【0104】
2−13.75mMヒスチジンを含有する濃縮組成物のDLS測定
粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。複合体形成後ではなく前のキトサンまたはDNAへの凍結保護剤およびL−ヒスチジンの添加により、200nm未満のZ平均、250nm未満の強度での平均粒径および0.3未満のPDI値を有する、2倍希釈された組成物組成物の生成が可能になった(図8A〜D)。L−ヒスチジンなしで調製した組成物は、Z平均が115から176nmの間の様々であり、強度での平均粒径が144から214の間であり、PDI値が0.21から0.26の間である粒子を有し、L−ヒスチジン(L−histdine)を用いて調製した組成物のほうがわずかに粒径が大きく、Z平均は143から187nmの間であり、強度での平均粒径は165から237nmの間であったが、より小さいPDI値(0.13〜0.18)を有した(図8A〜C)。複合体形成前のキトサンおよびDNAへの賦形剤の添加は、ナノ粒子形成後に添加したときに以前に見られたものよりわずかに大きい粒子を生じさせたが、PDI値は同様のままであった(図8C〜Eの「0FT,Hisなし」および「0FT,13.75mM His,pH6.5」を参照されたい)。
【0105】
3−より高濃度に再水和するための3.44mMヒスチジンを含有する濃縮キトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン/DNA複合体をセクション1に記載の通り調製したが、表15および16の通り、55mMではなく13.75mMのヒスチジン保存溶液を使用してキトサンおよびDNAを希釈した。
【0106】
【表15】
【0107】
【表16】
【0108】
試料を実施例2に記載の通りフリーズドライした。Rh1X試料を200μLのMilli−Q水で再水和し、Rh10X試料を20μLのMilli−Q水で再水和し、Rh20X試料を10μLのMilli−Q水で再水和した。すべての試料は5分以内に再水和したが、Rh20Xは、そのケーキ体積に比べて小さい再水和体積を考えると、より達成困難であった。
4−より高濃度に再水和された、3.44mMヒスチジンを含有する濃縮組成物のDLS測定
他の組成物(#17〜19)の各々についての6つの複製物:2つのRh1X、2つのRh10Xおよび2つのRh20X、をセクション3に記載の通り調製した。粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。3.44mMヒスチジンのみを用いてフリーズドライしたナノ粒子を、粒子凝集を見ることなく、最大20倍に再水和することができ、凍結保護剤に依存して、粒子Z平均が3〜68nm増加し、強度での平均粒径がRh1Xと比較して7〜46nm増加した(図8D〜E)。再水和濃縮率を1Xから20Xに増加させるとPDI値が減少し、PDIは、スクロース組成物については0.17から0.06に、デキストラン組成物については0.40から0.18に、およびトレハロース二水和物組成物については0.15から0.10になった(図8F)。
【0109】
5−より高濃度に再水和された、3.44mMヒスチジンを含有する濃縮組成物のゼータ電位測定
組成物#15の二つ組をRh1X調製し、他の組成物(#17〜19)の各々についての6つの複製物(2つの作りたて、2つのRh1X、および2つのRh20X)をセクション3に記載の通り調製した。再水和試料を15〜30分間放置して安定させた。すべての試料は5分以内に再水和したが、Rh20Xは、そのケーキ体積に比べて小さい再水和体積を考えると、より達成困難であった。作りたて試料および再水和試料に600μL 13mM NaClを補足し、ゼータ電位分析前に必要に応じてそれらの体積をMilli−Qで800μLにした。ゼータ電位を実施例2に記載の通り測定した。新たに調製した組成物は、24mVのゼータ電位を有し、フリーズドライして再水和した組成物は、それらの凍結保護剤または再水和体積に関係なく、18〜21mVのゼータ電位を有した(図8G)。
【0110】
6−より高濃度に再水和された、3.44mMヒスチジンを含有する濃縮組成物のESEM撮像
他の組成物(#17〜19)の各々についての6つの複製物:2つのRh1X、2つのRh10Xおよび2つのRh20X、をセクション3に記載の通り調製した。ESEM試料調製および撮像は、実施例1に記載の通り行った。3.44mMヒスチジンを含有する組成物について観察されたナノ粒子は、13.75mMヒスチジンを含有する組成物について以前に観察されたものより球形でない形状であった。これは、DLSで観察されたPDIの変動と一致する。フリーズドライした後Rh1Xした組成物と、フリーズドライした後Rh20Xした組成物の間に有意差は観察されなかったが、それらは、新たに調製した組成物より球形の粒子を有するようであった。粒子は、大部分が、200nmより下の直径であった(データを示さない)。
【0111】
7−インビトロトランスフェクション
各組成物(#15〜22)の6つの複製物:2つの作りたて、2つのRh1X、および2つのRh20X、をセクション3に記載の通り調製した。Fugeneベースリポプレックスをトランスフェクション効率の陽性対照として使用した。インビトロトランスフェクションを実施例1に記載の通り行った。
【0112】
8−pH
組成物#15〜22のpHを、新たに調製した試料、およびフリーズドライしてそれらの初期体積に再水和した(Rh1X)またはそれらの初期体積の二十分の一に再水和した(Rh20X)試料に関して測定した。L−ヒスチジン不在下で、新たに調製した試料は、凍結保護剤の存在または性質に関係なく5.8±0.2の平均pHを有した。それらの平均pHは、Rh1X後に7.0±0.2、およびRh20X後に5.1±0.2であった。3.44mM L−ヒスチジンを含有する新たに調製した組成物は、凍結保護剤の存在または性質に関係なく6.42±0.05の平均pHを有したが、フリーズドライ試料のpHは、Rh1X後に6.50±0.06、およびRh20X後に6.48±0.02であった。
【0113】
9−オスモル濃度
上記方法は、2倍の複合体量を有する組成物を生じさせたので、前に開発したオスモル濃度モデルの妥当性を、フリーズドライして再水和5倍濃縮した組成物#17〜19について検証した。このモデルは、スクロースを含有する組成物(#17)またはトレハロースを含有する組成物(#19)にはそれぞれ6および8%のオスモル濃度過小推定で許容され得たが、デキストランを含有する組成物(#18)には57%のオスモル濃度過小推定で不適当であった。組成物#17および19のオスモル濃度を、作りたて、またはそれらの初期体積に再水和された(Rh1X)、それらの初期体積の十分の一に再水和された(Rh10X)およびそれらの初期体積の二十分の一に再水和された(Rh20X)フリーズドライ試料について推定した。このモデルに基づき、オスモル濃度は、スクロースを含有する試料については19から372mOsmの間で変動し、トレハロース二水和物を含有する試料については17から339mOsmの間で変動した。両方の組成物Rh20Xが等張性に近かった:372mOsmでの0.5%suc−his(3.44)−Rh20X、および339mOsmでの0.5%tre−his(3.44)−Rh20X。
【0114】
10−トランスフェクション効率
トランスフェクション効率を実施例1に記載の通り測定した。試料トランスフェクション効率を、全細胞の53%のトランスフェクション効率を有した賦形剤不在下の作りたて複合体(図9A、A:Lyoなし−His(0)−作りたて)について得た値に対して正規化した。Figeneは、作りたて対照の116%のトランスフェクション効率を有した(図9Aおよび9C)。ヒスチジンなしの作りたて組成物は、作りたて対照の90〜100%のトランスフェクション効率を有し(図9A)、3.44mMヒスチジンを有する作りたて組成物は、作りたて対照の108〜113%のトランスフェクション効率を有した(図9C)。凍結保護剤不在下で3.44mMヒスチジンを用いてまたはなしでフリーズドライした組成物は、対照の22%未満のトランスフェクション効率を有した(図9Aおよび9C)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤を用いて、しかしヒスチジンなしでフリーズドライした組成物は、対照の約40%のトランスフェクション効率を有した(図9A)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤および3.44mMヒスチジンを用いてフリーズドライし、再水和1X(Rh1X)した組成物は、作りたて対照に比べて、スクロースについては100%、デキストランについては85%、およびトレハロースについては83%のトランスフェクション効率を有した(図9C)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤および3.44mMヒスチジンを用いてフリーズドライし、再水和20X(Rh20X)した組成物は、作りたて対照に比べて、スクロースについては48%、デキストランについては53%、およびトレハロースについては78%のトランスフェクション効率を有した(図9C)。
【0115】
11−ルシフェラーゼ発現
ルシフェラーゼ発現を実施例1に記載の通り定量した。測定したルシフェラーゼ相対光単位毎分(RLU/分)を、既知濃度の組換えルシフェラーゼ標準物質の系列希釈物で作成した標準曲線を用いてμMに変換した。試料ルシフェラーゼ発現レベルを、タンパク質1mg当たり6.76×10-5μMのルシフェラーゼの発現レベルを有した賦形剤不在下の作りたてキトサン/DNA複合体(Ctl)について得た値に対して正規化した。凍結保護剤不在下で3.44mMヒスチジンを用いてまたはなしでフリーズドライした組成物は、対照について測定されたルシフェラーゼレベルの10%未満を発現した(図9Bおよび9D)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤を用いて、しかしヒスチジンなしでフリーズドライした組成物は、対照について測定されたルシフェラーゼレベルの25%未満を発現した(図9B)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤および3.44mMヒスチジンを用いてフリーズドライし、再水和1X(Rh1X)した組成物は、スクロースおよびトレハロース二水和物については陽性対照と同様のルシフェラーゼ発現レベル、ならびにデキストランについては陽性対照の56%のルシフェラーゼ発現レベルを有した(図9D)。0.5%(質量/体積)凍結保護剤および3.44mMヒスチジンを用いてフリーズドライし、再水和20X(Rh20X)した組成物は、スクロースについては陽性対照と同様のルシフェラーゼ発現レベル、デキストランについては陽性対照の12%のルシフェラーゼ発現レベル、およびトレハロース二水和物については陽性対照の65%のルシフェラーゼ発現レベルを有した(図9D)。
【0116】
【表17】

【0117】
(例7)
注射前の最終再水和が助長するために2回の逐次的フリーズドライ/再水和サイクルを用いて組成物を最大20倍濃縮(ケーキ体積に対してより大きい再水和体積)することができ、これは、ナノ粒子の物理化学的特性およびトランスフェクション効率の有意に変化を伴わない
1−複数回のフリーズドライのための0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有するキトサン/DNAナノ粒子組成物の調製
キトサン(Mn 10kDa、92%DDA)を一晩、室温でHClに溶解して5mg/mLの最終キトサン濃度を得た。そのキトサン保存溶液を、表18の通り、無菌2%(質量/体積)トレハロース二水和物、pH6.5の無菌14mM L−ヒスチジン緩衝剤、およびMilli−Q水を使用して、271μg/mlに希釈した。
【0118】
【表18】
【0119】
表19の通り、無菌2%(質量/体積)トレハロース二水和物、pH6.5の無菌14mM L−ヒスチジン緩衝剤、およびMilli−Q水を使用して、DNA(400μg/mLでのpEGFPLuc)保存溶液を100μg/mlに希釈した。
【0120】
【表19】
【0121】
21の試料を調製した。各試料について、625μLの希釈キトサン溶液(表18)を625μLの希釈DNA溶液(表19)と混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させた後、分析またはフリーズドライした。
【0122】
2−試料フリーズドライ
15の試料をフリーズドライした。各試料について、表20の通り1200μLを10mL血清バイアルに移し、実施例2に記載の通り20mmブチル凍結乾燥ストッパーを用いてフリーズドライした。6つの試料を120μLで再水和Rh10Xし、その後、表20の通り各試料の100μLを2mL血清バイアルに移し、実施例2に記載の通り13mmブチル凍結乾燥ストッパーを用いてフリーズドライした。3つの試料を240μLで再水和Rh5Xし、その後、表20の通り、200μLを使用して、一方のバイアルはDLS分析用であり、他方はトランスフェクション用である2つの2mL血清バイアルに100μLの試料を充填した。実施例2に記載の通り13mmブチル凍結乾燥ストッパーを用いて試料をフリーズドライした。
【0123】
【表20】
3−DLSまたはトランスフェクションのための試料の再水和
実験により、再水和試料の希釈がナノ粒子特性(粒径、ゼータ電位、トランスフェクション効率など)に影響を及ぼさないことが明らかになったので、試料を分析前に下記の通り再水和し、希釈した。
試料#1を分析30分前に60μLのMilli−Qで再水和Rh20Xし、その後、分析の15分前に1140μL Milli−Qで希釈した。
試料#2を分析30分前に50μLのMilli−Qで再水和Rh20X(10X+2X)し、その後、分析の15分前に950μL Milli−Qで希釈した。
試料#3を分析30分前に25μLのMilli−Qで再水和Rh20X(5X+4X)し、その後、分析の15分前に475μL Milli−Qで希釈した。
すべての試料が5分以内に再水和したが、試料#1(Rh20X)は、そのケーキ体積に比べて小さい再水和体積を考えると、より達成困難であった。試料#2および3は、容易かつ迅速に再水和した上、20Xの最終濃縮率にも達した。
【0124】
4−より高濃度に再水和された、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有する濃縮組成物のDLS測定
3つの複製物をセクション1に記載の通り新たに調製し、各組成物の3つのフリーズドライ複製物をセクション3に記載の通り再水和した。粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mM L−ヒスチジン中で配合したナノ粒子を2回フリーズドライして、粒子凝集を見ることなく20Xの最終濃縮率(Rh20X)に達することができた。新たに調製した粒子と比較して、Rh20Xに達するために用いたフリーズドライ・再水和サイクルの数に依存して、X平均は56〜68nm増加し、強度での平均粒径は54〜63nm増加した。Z平均(180〜192nm)および強度での平均粒径(204〜213nm)は、行ったフリーズドライ・再水和サイクルの数に関係なく、Rh20X試料間で同様であった(図10A〜B)。PDI値は、フリーズドライおよび再水和後、新たに調製したときの0.17から、Rh20X後の0.20から0.25の間に、わずかに増加した(図10C)。
【0125】
5−より高濃度に再水和された、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有する濃縮組成物のゼータ電位測定
前にDLSによって分析した試料(セクション4)に400μL 20mM NaClを補足し、その後、それらのゼータ電位を実施例2に記載の通り測定した。新たに調製したナノ粒子は、19mVの平均ゼータ電位を有し、フリーズドライして再水和した組成物は、R20Xに達するために用いたフリーズドライサイクルの数に関係なく18〜21mVのゼータ電位を有した(図10D)。
【0126】
6−より高濃度に再水和された、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有する濃縮組成物のインビトロトランスフェクション
3つの複製物をセクション1に記載の通り新たに調製し、各組成物の3つのフリーズドライ複製物をセクション3に記載の通り再水和した。インビトロトランスフェクションを実施例1に記載の通り行った。
【0127】
7−より高濃度に再水和された、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有する濃縮組成物のトランスフェクション効率
トランスフェクション効率を実施例1に記載の通り測定した。試料トランスフェクション効率を、全細胞の44%のトランスフェクション効率を有した0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物およびpH6.5の3.5mM L−ヒスチジン中で調製した作りたて複合体(図10E、作りたて)について得た値に対して正規化した。すべてのフリーズドライ組成物が作りたて対照の85〜100%のトランスフェクション効率を有した(図10E):単一フリーズドライサイクル後に再水和20Xした組成物(FD/Rh20X)は、作りたて試料と同等のトランスフェクション効率(100%)を有し、再水和10Xし、その後、フリーズドライしてRh2Xした組成物[Rh(10X+2X)]は、対照の86%のトランスフェクション効率を有し、再水和5Xし、その後、フリーズドライしてRh4Xした組成物[Rh(5X+4X)]は、対照の85%のトランスフェクション効率を有した。
【0128】
8−より高濃度に再水和された、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物と3.5mMヒスチジンとを含有する濃縮組成物のルシフェラーゼ発現
ルシフェラーゼ発現を実施例1に記載の通り定量し、相対光単位毎分(RLU/分)で表した。試料ルシフェラーゼ発現レベルを、タンパク質1mg当たり5.24×108RLU/分の発現レベルを有した、0.5%(質量/体積)トレハロース二水和物およびpH6.5の3.5mM L−ヒスチジン中で調製した作りたて複合体(図10F:作りたて)について得た値に対して正規化した。最終Rh20Xのすべてのフリーズドライ組成物は、作りたて対照のものの64〜69%の値で、同様のルシフェラーゼ発現レベルを有した(図10F):単一フリーズドライサイクル後に再水和20Xした組成物(FD/Rh20X)は、対照の64%のルシフェラーゼ発現レベルを有し、再水和10Xし、その後、フリーズドライしてRh2Xした組成物[Rh(10X+2X)]は、対照の発現の69%で、より高いルシフェラーゼ発現レベルを有し、再水和5Xし、その後、フリーズドライしてRh4Xした組成物[Rh(5X+4X)]は、対照の66%のルシフェラーゼ発現レベルを有した。
【0129】
【表21】
【0130】
(例8)
キトサン/siRNAナノ粒子を、CS/DNAナノ粒子と比較して高い初期核酸濃度で調製することができるが、賦形剤含有量を相応じて増加させなければならない;
ナノ粒子物理化学的特性およびサイレンシング効率を有意に変化させることなく、これらの組成物を最大10倍濃縮することができる。
【0131】
1−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物の調製
キトサン(Mn 10kDa、92%DDA)を一晩、室温でHClに溶解して5mg/mLの最終キトサン濃度を得た。そのキトサン保存溶液を、表22の通り、無菌凍結保護剤溶液(8%(質量/体積)デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物)、pH6.5の無菌14mM L−ヒスチジン緩衝剤、およびRNase不含水を使用して、271または542μg/mlに希釈した。
【0132】
【表22】
【0133】
抗ApoB siRNA(センス:GUCAUCACACUGAAUACCAAU、アンチセンス:AUUGGUAUUCAGUGUGAUGACAC、1mg/mLで)保存溶液を、表23の通り、無菌凍結保護剤溶液(8%(質量/体積)デキストラン5kDaまたはトレハロース二水和物)、pH6.5の無菌14mM L−ヒスチジン緩衝剤、および/またはRNase不含水を使用して、100または200μg/mlに希釈した。
【0134】
【表23】
【0135】
各複製物について、100μLのキトサン溶液と100μLのその相補siRNA溶液(例えば、キトサン組成物#1とsiRNA組成物#1)を混合して、5のN/P比の複合体を形成した。キトサン添加直後におおよそ10回、ピペットでその溶液を吸い上げ、吐き出すことによって混合を行った。試料を室温で30分間放置して安定させた後、分析した。
2−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のフリーズドライ
フリーズドライする試料を2mL血清バイアルに移し、13mmブチル凍結乾燥ストッパーを用いてフリーズドライした。すべての試料を収容しているトレーを透水性膜で覆って埃または細菌汚染を防止した。フリーズドライは、次のサイクルを用いて、Millrock Laboratory Series Freeze−Dryer PC/PLCで行った:段階的に5℃に冷却して30分間、等温で維持し、段階的に−5℃に冷却して30分間、等温で維持し、その後、35分間で−40℃に勾配冷却して2時間、等温で維持し、48時間、−40℃で、100ミリトル(約13.3Pa)で一次乾燥させ、そして100ミリトル(約13.3Pa)で二次乾燥させ、12時間で温度を30℃に上昇させ、そしてその後、30℃で6時間、等温を維持する。試料にストッパーをし、圧着させ、使用するまで4℃で保管した。使用15〜30分前に、Rh1X試料を200μLのRNase不含水で再水和し、Rh10X試料を20μLのRNase不含水で再水和し、Rh20X試料を10μLのRNase不含水で再水和した。すべての試料が5分以内に再水和した。
【0136】
4−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のDLS測定
各組成物の9つの複製物:3つの新たに調製したもの(FDなし)、3つのRh1Xおよび3つのRh20X、をセクション1および2に記載の通り調製した。粒径およびPDI分析を実施例2に記載の通り行った。すべての組成物は、Rh20X後の重度凝集を防止したが、作りたて組成物と比較して、Rh1Xおよび/またはRh20後に粒径の有意な変化を示さなかったのは組成物#2および4だけであり、それらのZ平均はそれぞれ21および9nm増加した(図11A)。平均PDI値は、大部分が(組成物#1、Rh1Xを除く)0.25未満であり、組成物#2および4は、RH20X後にそれぞれ0.16および0.20のPDI値を有した(図11B)。
【0137】
5−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のゼータ電位測定
各組成物の9つの複製物:3つの新たに調製したもの(FDなし)、3つのRh1Xおよび3つのRh10X、をセクション1および2に記載の通り調製した。すべてが5分以内に再水和したが、再水和試料を15〜30分間、放置して安定させた。RNase不含水を使用して作りたておよび再水和試料の体積を400μLにし、その後、ゼータ電位分析前に400μL 20mM NaClを添加した。ゼータ電位を実施例2に記載の通り測定した。新たに調製した組成物は、21mVのゼータ電位を有し、フリーズドライして再水和した組成物は、それらの再水和体積に関係なく21〜23mVのゼータ電位を有した。
【0138】
6−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のESEM撮像
組成物#2の9つの複製物:3つの新たに調製したもの(FDなし)、3つのRh1Xおよび3つのRh10X、をセクション1および2に記載の通り調製した。ESEM試料調製および撮像は、実施例1に記載の通り行った。観察されたすべてのナノ粒子は球形の形状であり、大部分が100nmより下の直径であった。作りたて、Rh1XまたはRh10X組成物からの粒子間に有意差は観察されなかった。
【0139】
7−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のインビトロサイレンシング
組成物#2の9つの複製物:3つの新たに調製したもの(FDなし)、3つのRh1Xおよび3つのRh20X、をセクション1および2に記載の通り調製した。DharmaFECT2をサイレンシング効率の陽性対照として使用した。10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したpH7.2のRPMI−1640で増殖させ、37℃、5%CO2でインキュベートした、eGFP陽性H1299細胞を、インビトロ研究に使用した。トランスフェクションのために約75〜85%集密に達するように、トランスフェクション24時間前に24ウェルプレートのウェルごとに45,000細胞をプレーティングした。100nMのsiRNAを含有する合計500μLの溶液のために、ナノ粒子組成物は、各ウェル内の培養培地をpH6.5の高グルコースDMEM(FBS不含)で置換した。細胞を4時間、37℃、5%CO2でインキュベートし、その後、55μL FBSを補足し、その後、さらに44時間インキュベートした後、分析した。
【0140】
8−濃縮キトサン/siRNAナノ粒子組成物のサイレンシング効率
フローサイトメトリーを用いてサイレンシング効率を測定した。試料調製:分析する試料を収容している各ウェルから増殖培地を除去し、細胞をpH7.4の500μLリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、ウェル当たり75μLのトリプシン/EDTAを使用して5分間、37℃でトリプシン処理し、その後、325μL増殖培地を添加し、全試料をサイトメトリーチューブに移した。フローサイトメトリー測定:10000事象を試料ごとに収集し、488nmアルゴンレーザーを使用して細胞における増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)の励起後に光電子増倍管で510/20nmバンドパスフィルターにより平均蛍光強度を測定した。前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)も用いて、記録した事象から死細胞およびデブリを排除した。最後に、そのデータを用いてトランスフェクション効率を分析するときにFSCを用いてそれらの事象から重複を特定し、排除した。平均残留eGFP強度を未処置細胞について測定された平均eGFP発現の百分率として表した。組成物#2のサイレンシング効率は、5%の残留eGFP発現を有するDharmaFECT2より低かった(データを示さない)が、FDは、CS/siRNAのサイレンシング効率に悪影響を及ぼさなかった。作りたて組成物は、未処置細胞の52%の、Rh1Xは49%の、およびR10Xは47%の、残留eGFP発現を有した(図11C)。
【0141】
【表24】
【0142】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、さらなる修飾が可能であること、本出願が、本発明の原理に一般に準拠する、ならびに本発明が属する技術分野内の公知のまたは慣例的な施行の範囲内に入るような、および上文に記載の本質的特徴に当てはまり得るような、および添付の「特許請求の範囲」の範囲に倣うような本開示からの逸脱を含む、本発明のあらゆる変形、使用または適応を包含することを意図したものであることは、理解されるであろう。
【0143】
本明細書中で言及したすべての文献は、参照により本明細書に援用されている。
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図1A
図1B
図1C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A-5B】
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図2A-2H】
【国際調査報告】