(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-522038(P2016-522038A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(54)【発明の名称】放出機構の作動を不能にする手段を有する薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/24 20060101AFI20160701BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20160701BHJP
【FI】
A61M5/24 500
A61M5/315 550E
A61M5/315 500
A61M5/315 550P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-514371(P2016-514371)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014060318
(87)【国際公開番号】WO2014187812
(87)【国際公開日】20141127
(31)【優先権主張番号】13168539.8
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/827,806
(32)【優先日】2013年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13170093.2
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソーレンセン, モーデン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066DD13
4C066EE06
4C066HH13
4C066HH22
4C066QQ48
4C066QQ72
(57)【要約】
薬剤送達装置は、カートリッジを収容して保持するカートリッジホルダを有し、カートリッジホルダは、収容状態および保持状態を有する。さらに、薬剤送達装置は、駆動アセンブリを備え、駆動アセンブリは、ピストンロッド、駆動ばね、放出される用量を使用者側で設定し、駆動ばねを設定に応じてねじらせる設定手段、および駆動ばねを解放するための、使用者により作動される解放手段とを備える。ここに、駆動アセンブリのばねは、カートリッジホルダが保持状態にならない限り解放されず、ピストンロッドは移動しない。
【選択図】
図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部分、先端側出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備えるカートリッジ(380)を収容するように構成された薬剤送達装置(101)であって、
ハウジング(340)と、
前記カートリッジを収容して保持するように構成されたカートリッジホルダ(330)であって、
(i)前記カートリッジが挿入されて収容しられ得る受入状態、および
(ii)挿入された前記カートリッジが動作位置に保持される保持状態
を有するカートリッジホルダ(330)と、
放出アセンブリであって、
装填された前記カートリッジの前記ピストンに係合し、これを先端方向に向かって軸方向に変位させ、その結果、前記カートリッジからある用量の薬剤を放出するように構成されたピストンロッド(280)、ならびに
駆動アセンブリであって、
前記ピストンロッドを先端方向に移動させるように構成された、駆動ばね(135)を備える駆動手段、
使用者が放出される用量を設定するのと同時にこれに対応して前記駆動ばねをねじることを可能にする設定手段(170)、および
前記駆動ばねを解放し、その結果、設定された用量に応じて前記ピストンロッドを先端方向に移動させるための、使用者により作動される解放手段(181、290)
を備える駆動アセンブリ
を備える放出アセンブリと
を備え、
前記駆動アセンブリが、前記カートリッジホルダが前記保持状態にならない限り前記ピストンロッドを移動させるために解放され得ない、薬剤送達装置。
【請求項2】
初期阻止位置と解放位置との間で動かすことができる第1の阻止部材(260)をさらに備え、
前記阻止位置にある前記第1の阻止部材が、前記解放手段(181、290)が解放されることを防止し、および/または前記駆動手段が前記ピストンロッドを移動させることを防止する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記解放手段が、
初期ロック位置と解放位置との間で動かすことができる結合部材(290)
を備え、
前記阻止位置にある前記第1の阻止部材(260)が、前記結合部材が前記初期ロック位置から前記解放位置に動かされることを防止する、請求項2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記結合部材が、動かされるときに先端方向に向かって軸方向に移動され、
前記第1の阻止部材が、動かされるときに先端方向に向かって軸方向に移動され、その結果、前記結合部材が前記解放位置まで先端側に移動されることを可能にする、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
装填状態から動作状態に動かすことができる、使用者により操作される動作手段(310)をさらに備え、
前記動作手段を前記装填状態から前記動作状態に動かすことが、(i)前記カートリッジホルダが、前記受入状態から前記保持状態に動かされること、および(ii)前記第1の阻止部材(260)が、前記初期阻止位置から前記解放位置に動かされることをもたらす、請求項2から4のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記動作手段が、前記装填状態から中間状態を経て前記動作状態に動かすことができ、
(i)前記カートリッジホルダが、前記動作手段が前記装填状態から前記中間状態に動かされるときに前記受入状態から前記保持状態に動かされ、
(ii)前記第1の阻止部材(260)が、前記動作手段が前記中間状態から前記動作状態に動かされるときに前記初期阻止位置と前記解放位置との間で動かされる、請求項5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記放出アセンブリが、結合具(260)をさらに備え、前記結合具(260)が、
(i)前記ピストンロッドが基端側に移動され得るリセット状態と、
(ii)前記駆動アセンブリが前記ピストンロッドを先端側に駆動し得る動作状態と
の間で動かすことができ、
前記結合具が、前記動作手段が前記中間状態から前記動作状態に動かされるときに前記リセット状態から前記動作状態に動かされる、請求項6に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記駆動アセンブリが、前記カートリッジが取り付けられない限り、前記ピストンロッドを移動させるために解放され得ない、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記カートリッジがその動作位置に挿入されて保持されるときに初期阻止位置と解放位置との間で動かすことができる第2の阻止部材(430)をさらに備え、
前記阻止位置にある前記第2の阻止部材が、前記解放手段が解放されることを防止し、および/または前記駆動手段が前記ピストンロッドを移動させることを防止する、請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記駆動手段が、
前記ねじられた駆動ばねによって移動され、その結果、前記ピストンロッドを先端方向に移動させるように構成された駆動部材(450)
を備え、
前記阻止位置にある前記第2の阻止部材が、前記駆動部材に係合し、前記駆動部材が移動されることを防止する、請求項9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記駆動部材が、回転するように構成されており、
前記第2の阻止部材が、動かされるときに軸方向に移動され、その結果、前記駆動部材から係脱され、これにより、前記駆動部材が、前記ねじられた駆動ばねによって回転され、その結果、前記ピストンロッドを先端方向に移動させることが可能となる、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記カートリッジホルダ(330)が、先端側に配置された保持手段(335)を備え、前記保持手段(335)が、前記受入状態の場合に、前記カートリッジが前記カートリッジホルダに基端方向に挿入されることを可能にし、
前記保持手段が、前記保持状態の場合に、収容しられた前記カートリッジが先端側に移動することを防止する、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記薬剤送達装置が、前方装填式のものであり、前記カートリッジホルダが、前記カートリッジを基端方向に収容するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記設定手段が、前記使用者が設定された用量を減らすことを可能にし、前記駆動ばねが、これに対応して緩められる、請求項1から13のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
筒状の本体部分、先端側出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備えるカートリッジ(380)を収容するように構成された薬剤送達装置(101)を操作する方法であって、
(i)前記薬剤送達装置を用意するステップであって、前記薬剤送達装置が、
前記カートリッジを収容して保持するように構成されたカートリッジホルダ(330)、
ピストンロッド、前記ピストンロッドを先端方向に駆動するための駆動ばね、使用者が放出される用量を設定するのと同時にこれに対応して前記駆動ばねをねじることを可能にする設定手段(170)、および前記駆動ばねを解放し、その結果、設定された用量に応じて前記ピストンロッドを先端方向に移動させるための、使用者により作動される解放手段(181、290)を備える駆動アセンブリ、ならびに
阻止状態において前記解放手段(181、290)が解放されることを防止し、および/または前記駆動手段が前記ピストンロッドを移動させることを防止する阻止手段
を備えるステップと、
(ii)前記カートリッジホルダを、
(a)前記阻止手段が前記阻止状態にあり、前記カートリッジが挿入されて収容しられ得る受入状態から、
(b)挿入された前記カートリッジが動作位置に保持され、前記阻止手段が前記阻止状態から解放される動作状態に操作するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬剤の入ったカートリッジを収容したうえで、用量をカートリッジから放出するようにした薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に糖尿病の治療を参照するが、これは、本発明の単なる使用例に過ぎない。
【0003】
所定の薬剤を皮下に送達するようにした薬剤送達装置のなかで、最も一般的な種類は、ペン型の形態である。ペン型の薬剤送達装置では、装填されたカートリッジから所望の量の薬剤を放出すべく、カートリッジピストンを先端方向に移動させて、先端に取り付けた皮下針を介して薬剤を放出するようにしている。ピストンを移動させる手段は、典型的には、ピストンロッドの形態であり、このピストンロッドが放出機構によって先端側へと駆動される。薬剤送達装置としては、「プレフィルド型」で、薬剤の入ったカートリッジを交換することができず、カートリッジが空になり次第、装置を廃棄する「使い捨ての装置」のようなものから、「耐久性型」で、一旦、カートリッジを挿入した後、それを取り外して、新しいカートリッジを挿入することができる再利用可能な装置のようなものがある。また、「手動型」と「自動型」との区別があり、「手動型」は、放出機構を駆動するためのエネルギーを注射時に使用者が直に与えるものであり、「自動型」は、使用者がエネルギー源を解放して、放出機構を駆動するものである。エネルギー源は、たとえば、用量の設定時に使用者によってねじられるばね駆動式の形態であってもよい。ばね駆動式の装置としては、Novo NordiskのFlexTouch(登録商標)としてプレフィルドされたものや、YpsomedのServoPen(登録商標)として耐久性のあるものなどがある。本発明は、ばね駆動式の耐久型薬剤送達装置の問題に対処可能であって、この種の薬剤送達装置としては、取り外し可能なカートリッジホルダを有する「従来型」であってもよければ、あるいは、「前方装填式」すなわち、カートリッジを先端の開口から基端側へと軸方向に収容する構成一体型の取り外し不能なカートリッジホルダを備えたもののどちらであってもよい。このような装置は、多くの場合に「前方装填式」と呼ばれている(例えば、国際公開第2004/020026号パンフレットを参照)。カートリッジホルダは、軸方向に挿入されたカートリッジを保持し、解放するように構成された把持手段を備えてよい。
【0004】
通常動作時、製剤は、供給動作の間細い針を通って流れる必要がある。その際に、薬剤の粘性が、ピストン駆動要素(例えば、ピストンロッド)の力に抗して作用するため、駆動要素や放出機構の付加的な部品は、用量の薬剤が放出される間、比較的低い速度レベルに抑えられる。比較的低い速度レベルであることから、可動部分や可動部品が、注射装置の別の部分や部品に当たる際の衝撃や衝突は弱いものとなる。これは、装置の寿命に対してプラスに働く。しかしながら、これは、薬剤カートリッジが注射装置に挿入されている場合にのみ当てはまる。カートリッジが挿入されないまま薬剤供給動作を開始した場合、粘性による減衰効果は発生しない。そのため、注射装置の放出機構部品、特に、回転部品が異常に高い加速度値になる可能性があり、部品が互いに接触する際に高エネルギーの衝突になりうる。これは、注射装置の寿命に対してマイナスに働く。結果として、注射装置は、薬剤の投与ができなくなるような損傷を受ける虞があり、悪い場合には、損傷によって適量でない薬剤が放出される事態となる。これに対処すべく、可動部品の衝突や可動部品間の衝突を吸収したり、無効にするために寸法を大きくしようとすれば、通常、注射装置のサイズが大きくなってしまい、追加費用も発生することになる。
【0005】
上記の問題に対処するため、米国特許第2011/0077595号明細書では、ブレーキ機構を開示しており、放出機構の回転移動中に前後にブレーキ要素を移動させて放出機構を制動し、機械的エネルギーを熱として消散させている。
【0006】
英国特許第2477487号明細書に記載される薬剤送達装置では、カートリッジホルダを取り外すと作動(cock)するばねによってピストンロッドを駆動している。安全上の理由から、ばねは、カートリッジホルダが取り付けられない限り解放され得ない。国際公開第98/15307号パンフレットに記載されるジェット注射装置では、前方から取り付けたアンプル部を取り外すと作動するばねによってスラストロッドを駆動している。負傷を防止するという安全上の理由から、ばね機構には、アンプル部が駆動部に取り付けられない限りスラストロッドが解放されないようにする解放阻止手段が備えられる。米国特許出願公開第2009/0227955号明細書に記載される手動式の薬剤送達ペンでは、カートリッジホルダが装置本体部分に取り付けられない限りは用量を設定することができないようにしている。
【0007】
上記を考慮した上で、本発明の目的は、所望の用量を設定する際に使用者側から駆動ばねがねじられる自動式の薬剤送達装置を提供することであり、薬剤送達装置は、非常に使い易く、精度があって、頑丈であり、信頼できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/020026号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2011/0077595号明細書
【特許文献3】英国特許第2477487号明細書
【特許文献4】国際公開第98/15307号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0227955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の開示において、上記の目的の1つ以上に対処する実施形態等、または以下の開示および例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する実施形態等を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第1の態様において、カートリッジを収容するように構成された薬剤送達装置であって、カートリッジが、筒状の本体部分、先端側出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備える薬剤送達装置が提供される。薬剤送達装置は、装填位置にカートリッジを収容して保持するように構成されたカートリッジホルダを備え、カートリッジホルダは、(i)カートリッジが挿入されて収容しられ得る受入状態、および(ii)挿入されたカートリッジが動作位置に保持される保持状態を有する。薬剤送達装置は、放出アセンブリをさらに備え、放出アセンブリは、装填されたカートリッジのピストンに係合し、これを先端方向に向かって軸方向に変位させ、その結果、カートリッジからある用量の薬剤を放出するように構成されたピストンロッド、および駆動アセンブリを備える。駆動アセンブリは、ピストンロッドを先端方向に移動させるように構成された、駆動ばねを組み込んだ駆動手段と、使用者が放出される用量を設定するのと同時にこれに対応して駆動ばねをねじることを可能にする設定手段と、駆動ばねを解放して、設定された用量に応じてピストンロッドを先端方向に移動させるための、使用者により作動される解放手段とを備え、この場合、駆動アセンブリは、カートリッジホルダが保持状態にならない限りピストンロッドを移動させるために解放され得ない。薬剤送達装置は、前方装填式のものであってもよく、この場合、カートリッジホルダは、カートリッジを基端方向に収容するように構成される。
【0011】
放出される用量は、各投与状況において使用者により所望のサイズに設定される用量であってもよい。あるいは、装置は、固定の用量しか設定されていないことを可能にしてもよい。後者は、使用者によって設定されてもよいし、あるいは、装置が、プリセットされた用量が変更され得ない固定用量装置として使用者に提供されてもよい。設定手段は、使用者が設定された用量を減らすか、または取り消すことを可能にしてもよく、この場合、駆動ばねは、これに対応して緩められる。
【0012】
「ピストンロッドを移動させるために解放され得ない」という規定は、駆動ばね自体が解放されることが防止される実施形態、駆動手段がピストンロッドを駆動するために移動されること(これは、ばねが解放されるか否かに関係ない)が防止される実施形態、またはばねの解放および駆動手段の移動の両方が防止される実施形態を含む。カートリッジホルダは、カートリッジが取り付けられているか否かに関係なく保持状態になり得る。
【0013】
上記の機序によって、カートリッジホルダが(カートリッジが取り付けられていようがいまいが)閉じられない限り、使用者が駆動ばねを解放することができることが防止される。このようにして、ばねにより駆動されるピストンロッドが抵抗なしに解放される可能性が低減される。このような解放は、放出機構に損傷を与える可能性があった。なぜなら、ばねが、ピストンロッドおよび他の可動部品/回転部品を高速に加速させ、その後、これらが突如停止されることが、高負荷、したがって、損傷のリスクの原因となり得るからである。一方、放出機構は解放され得ないが、使用者は依然として用量を設定することが可能である。これは、例えば、カートリッジホルダを閉じずに、またはカートリッジを取り付けずにペンの実演を行うときに有効である。あるいは、装置が、カートリッジが取り付けられて完全に動作するのでない限り、用量を設定することが防止されてもよい。しかしながら、これは、用量設定機能が、非動作条件で装置を用いて実演されることを妨げる。さらに、用量設定は、大抵の場合、ダイヤル部材を回転させることによって行われるため、この操作のための阻止機構は、使用者が阻止されたダイヤル部材を用いて用量を設定しようとする場合に極めて高いトルクが加えられ得ることから極めて頑丈でなければならない。一方、解放機構または駆動機構の阻止は、使用者により直接負荷を加えられ得ない手段によって達成され得る。
【0014】
薬剤送達装置は、カートリッジホルダが受入状態から保持状態に動かされるときに初期阻止位置と解放位置との間で動かすことができる第1の阻止部材を備えてもよく、この場合、阻止位置にある第1の阻止部材は、解放手段が解放されることを防止し、および/または駆動手段がピストンロッドを移動させることを防止する。解放手段は、初期ロック位置と解放位置との間で動かすことができる結合部材を備えてもよく、この場合、阻止位置にある第1の阻止部材は、結合部材が初期ロック位置から解放位置に動かされることを防止する。
【0015】
例示的な実施形態において、結合部材は、動かされるときに先端方向に向かって軸方向に移動され、第1の阻止部材は、動かされるときに先端方向に向かって軸方向に移動され、その結果、結合部材が解放位置まで先端側に移動されることを可能にする。
【0016】
薬剤送達装置は、装填状態から動作状態に動かすことができる、使用者により操作される動作手段を備えてもよく、この場合、動作手段を装填状態から動作状態に動かすことが、(i)カートリッジホルダが、受入状態から保持状態に動かされること、および(ii)第1の阻止部材が、初期阻止位置から解放位置に動かされることをもたらす。
【0017】
「カートリッジホルダ」および「動作手段」は、別個の構造として説明されているが、これらは、例示的な実施形態において、カートリッジホルダアセンブリと呼ばれ得るものの一体構造である。これに対応して、これらの用語は、機能的に解釈されるべきであり、様々な構造が、組み合わせにおいて所定の目的を果たすに過ぎない。例えば、例示的な実施形態において、カートリッジホルダ部材は、動作部材の内部に配置されて支持され、カートリッジホルダ部材は、組み合わされたカートリッジホルダアセンブリの一部としてその目的を果たすに過ぎない。これに対応して、動作手段は、カートリッジを保持するための組み合わされたアセンブリの一体部分である。
【0018】
例示的な実施形態において、動作手段は、装填状態から中間状態を経て動作状態に動かすことができ、カートリッジホルダは、動作手段が装填状態から中間状態に動かされるときに受入状態から保持状態に動かされ、第1の阻止部材は、動作手段が中間状態から動作状態に動かされるときに初期阻止位置と解放位置との間で動かされる。明らかなように、この機序によって、駆動アセンブリが解放されることを可能にするためにさらなる動作ステップが必要とされる。
【0019】
放出アセンブリは、リセット結合具であって、ピストンロッドが基端側に移動され得るリセット状態と、駆動アセンブリがピストンロッドを先端側に駆動し得る動作状態との間で動かすことができるリセット結合具をさらに備えてもよく、この場合、結合具は、動作手段が中間状態から動作状態に動かされるときにリセット状態から動作状態に動かされる。明らかなように、この機序によって、駆動アセンブリが、リセット結合具がリセット状態から動作状態に動かされる前に解放され得ることが防止される。この状況は、例えば、カートリッジが取り付けられ、カートリッジホルダがその保持状態に動かされているが、リセット結合具がまだ動かされていない場合に発生し得る。
【0020】
さらに例示的な実施形態において、駆動アセンブリは、カートリッジが実際に取り付けられない限りピストンロッドを移動させるために解放され得ない。このような装置は、カートリッジがその動作位置に挿入されて保持されるときに初期阻止位置と解放位置との間で動かすことができる第2の阻止部材を備えてもよく、この場合、阻止位置にある第2の阻止部材は、解放手段が解放されることを防止し、および/または駆動手段がピストンロッドを移動させることを防止する。
【0021】
「第2の」阻止部材という用語は、2つの異なる阻止手段を区別するために使用されるに過ぎない。本発明の実際の実施形態は、第2の阻止部材のみを備えてもよいし、あるいは第1の阻止部材と組み合わされた第2の阻止部材を備えてもよい。明らかなように、「駆動アセンブリは、カートリッジホルダが保持状態にない限りピストンロッドを移動させるために解放され得ない」という規定は、第2の阻止部材のみが設けられ、カートリッジホルダが、その保持状態にある場合に、取り付けられたカートリッジを介して第2の阻止部材のロックを解除する役割を果たす実施形態を含む。言い換えれば、本発明は、(i)駆動アセンブリが、カートリッジが取り付けられていようがいまいがカートリッジホルダがその保持状態にあるときに解放され得る第1の阻止部材を有するか、(ii)駆動アセンブリが、カートリッジが取り付けられていて、カートリッジホルダがその保持状態にあるときに解放され得る第2の阻止部材を有するか、または(iii)駆動アセンブリが、カートリッジが取り付けられていて、カートリッジホルダがその保持状態にあるときに解放され得る第1の阻止部材および第2の阻止部材の両方を有する実施形態によって実現されてもよい。なお、最後の機序は、同じ目的を果たす2つの異なる機構を提供する。
【0022】
上で説明した駆動手段は、ねじられた駆動ばねによって移動され、その結果、ピストンロッドを先端方向に移動させるように構成された駆動部材を備えてもよく、この場合、阻止位置にある第2の阻止部材は、駆動部材に係合し、駆動部材が移動されることを防止する。駆動部材は、回転するように構成されてもよく、第2の阻止部材は、動かされるときに軸方向に移動され、その結果、駆動部材から係脱されるように配置されてもよく、これにより、駆動部材が、ねじられた駆動ばねによって回転され、その結果、ピストンロッドを先端方向に移動させることが可能となる。
【0023】
薬剤放出装置の上で説明した変形例において、カートリッジホルダは、先端側に配置された保持手段を備えてもよく、この場合、保持手段は、受入状態の場合に、カートリッジがカートリッジホルダに基端方向に挿入されることを可能にし、また、保持手段は、保持状態の場合に、収容しられたカートリッジが先端側に移動することを防止する。
【0024】
カートリッジが、所定の位置に「保持」されると説明されているとき、カートリッジが先端側に移動されることが防止される一方で、多くの場合に、カートリッジが、基端側に移動されることが可能であるのと同時に回転されることが可能であることが意味されている。なお、後半の内容については、他の構造または放出機構の実際の設計によって決定される。例えば、ばねは、先端方向への付勢力を挿入されたカートリッジに加えてもよく、この場合、このような設計は、カートリッジが付勢ばねの力に抗して幾らか基端側に押されることを可能にする。
【0025】
薬剤送達装置は、ピストンロッドが、雄ねじを備え、放出アセンブリが、ピストンロッドに係合する係合要素を備え、結合具が、係合要素に作用し、動作状態にある結合具が、ピストンロッドが先端側に移動されることを可能にするタイプのものであってもよい。
【0026】
係合部材は、回転することによりピストンロッドを先端側に駆動するように構成された駆動要素の形態であってもよく、この場合、駆動アセンブリは、駆動要素を回転させるように構成され、リセット状態にある結合具は、駆動要素が駆動アセンブリから回転方向に切り離されることをもたらし、動作状態にある結合具は、駆動要素が駆動アセンブリに対して回転方向にロックされることをもたらす。駆動要素は、ピストンロッドに回転不可能に係合されるが、これに対して軸方向に移動可能であるように配置されてもよく、この場合、駆動アセンブリは、駆動要素を回転させ、その結果、ハウジングに対して固定して配置されたねじ付きナット部分を通ってピストンロッドを軸方向に移動させるように構成される。
【0027】
あるいは、係合部材は、ナット要素の形態であってもよく、この場合、該ナット要素は、ピストンロッドの雄ねじに係合する雌ねじを備え、リセット状態にある結合具は、ナット要素がハウジングから回転方向に切り離されることをもたらし、動作状態にある結合具は、ナット要素がハウジングに対して回転方向にロックされることをもたらす。
【0028】
さらなる代替例において、係合部材は、キー要素であって、ピストンロッドに対して回転方向にロックされるが、これらの間の軸方向移動を可能にするキー要素の形態であり、この場合、リセット状態にある結合具は、キー要素がハウジングから回転方向に切り離されることをもたらし、動作状態にある結合具は、キー要素がハウジングに対して回転方向にロックされることをもたらす。
【0029】
上で説明した、使用者により操作される動作手段は、装填状態から中間状態を経て動作状態までハウジングに対して回転方向に動かすことができる動作スリーブを備えてもよく、この場合、動作スリーブは、取り付けられるカートリッジの少なくとも一部を収容し、動作スリーブは、収容されるカートリッジ部分の少なくとも一部を視覚的に検査することを可能にする検査手段を備える。動作スリーブは、1つ以上の開口を備えるか、または少なくとも部分的に透明であり、これにより、検査手段が設けられてもよい。カートリッジホルダは、1つ以上の横方向開口を備えるか、または少なくとも部分的に透明であってもよく、この場合、これにより、カートリッジホルダおよび動作スリーブの両方を通して、装填されたカートリッジを視覚的に検査することが可能となる。これは、カートリッジホルダおよび動作スリーブが、装填されたカートリッジの実質的に全長を収容する場合に関連する。
【0030】
本発明のさらなる態様において、薬剤送達装置を操作する方法であって、該装置が、筒状の本体部分、先端側出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備えるカートリッジを収容するように構成されており、(i)薬剤送達装置を用意するステップであって、該薬剤送達装置が、カートリッジを収容して保持するように構成されたカートリッジホルダ、ピストンロッド、ピストンロッドを先端方向に駆動するための駆動ばね、使用者が放出される用量を設定するのと同時にこれに対応して駆動ばねをねじることを可能にする設定手段、および駆動ばねを解放し、その結果、設定された用量に応じてピストンロッドを先端方向に移動させるための、使用者により作動される解放手段を備える駆動アセンブリ、ならびに、阻止状態において解放手段が解放されることを防止し、および/または駆動手段がピストンロッドを移動させることを防止する阻止手段を備えるステップと、(ii)カートリッジホルダを、(a)阻止手段が阻止状態にあり、カートリッジが挿入されて収容しられ得る受入状態から、(b)挿入されたカートリッジが動作位置に保持され、阻止手段が阻止状態から解放される動作状態に操作するステップとを含む方法。
【0031】
本明細書で使用される場合、「インスリン」という用語は、制御された方法でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することが可能であり、かつ血糖制御効果を有する任意の薬剤含有流動性薬剤(液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの)(例えば、ヒトインスリンおよびその類似物ならびにGLP−1などの非インスリンおよびその類似物)を包含することが意図されている。例示的な実施形態の説明において、インスリンの使用が参照される。
【0032】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】薬剤カートリッジが取り付けられている前方装填式の薬剤送達装置を示している。
【
図1B】薬剤カートリッジが取り付けられていない前方装填式の薬剤送達装置を示している。
【
図2A】開状態にある
図1Aのカートリッジホルダの詳細図を示している。
【
図2B】閉状態にある
図1Aのカートリッジホルダの詳細図を示している。
【
図3】
図1Aに示されているタイプのペン装置の部品を分解図で示している。
【
図4】
図3に示されている部品の一部を分解図で示している。
【
図5A】制御トラックアセンブリの断面図を示している。
【
図5B】制御トラックアセンブリの斜視図を示している。
【
図6A】一動作状態にあるカートリッジホルダアセンブリの斜視図を示している。
【
図6B】別の動作状態にあるカートリッジホルダアセンブリの斜視図を示している。
【
図6C】さらに別の動作状態にあるカートリッジホルダアセンブリの斜視図を示している。
【
図7A】
図6Aに対応する動作状態にある結合アセンブリの斜視図を示している。
【
図7B】
図6Bに対応する動作状態にある結合アセンブリの斜視図を示している。
【
図7C】
図6Cに対応する動作状態にある結合アセンブリの斜視図を示している。
【
図8】
図7Aに対応するものであるが、一部の構造が省略されている。
【
図9A】一動作状態にある代替的な結合アセンブリの斜視図を示している。
【
図9B】別の動作状態にある代替的な結合アセンブリの斜視図を示している。 図において、同じ構造は、主に同じ参照符号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下において、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語または同様の相対的表現が使用されている場合、これらは、添付の図に言及しているのみで、必ずしも実際の使用状況に言及しているわけではない。示されている図は、概略図であり、このため、様々な構造の構成およびそれらの相対寸法は、例証の目的を果たすためのものに過ぎない。部材または要素という用語が、所定の部品に対して使用されているとき、これは、説明されている実施形態において、その部品は、単体部品であるが、同じ部材または要素が、代替的に多数の副部品を備えてもよいこと、また、説明されている部品の2つ以上が、単体部品(例えば、射出成形された単一部品として製造される)として用意されてもよいことを一般に示している。複数の部材が、互いに軸方向に自由に取り付けられると規定されているとき、これは、それらが典型的には所定の停止位置の間で互いに対して移動され得ることを一般に示し、一方、複数の部材が、互いに回転方向に自由に取り付けられると規定されているとき、これは、それらが自由にあるいは所定の停止位置の間で互いに対して回転され得ることを一般に示す。「アセンブリ」および「サブアセンブリ」という用語は、説明されている部品が必ず、所定の組み立て手続きの間に単体のまたは機能するアセンブリまたはサブアセンブリを形成するように組み立てられ得ることを含意するわけではなく、機能的により密接に関係するものとしてグループ化された部品を説明するために使用されるに過ぎない。
【0035】
図1Aおよび
図1Bを参照して、ペン型の薬剤送達装置1について説明する。より具体的には、ペン装置は、キャップ部(図示せず)および主要部を備え、主要部は、薬剤放出機構が配置されたもしくは組み込まれたハウジング40を有する基端側本体または駆動アセンブリ部分2、および、針により穿刺可能な先端の隔膜92を有する、薬剤が充填された透明カートリッジ90が、基端側部分に取り付けられたカートリッジホルダアセンブリ3によって適所に配置されて保持される先端側カートリッジホルダ部分を有する。カートリッジは、例えばインスリン、GLP−1、または成長ホルモン製剤を含んでもよい。装置は、カートリッジホルダアセンブリの先端の受入開口を通して使用者により新しいカートリッジが装填されるように設計されており、カートリッジは、放出機構の一部を形成するピストンロッド80によって駆動されるピストンを備える。最も基端側にある回転可能な用量設定部材70は、表示窓50に示される薬剤の所望の用量を手動で設定する役割を果たし、この所望の用量の薬剤は、その後、解放ボタン81が作動されたときに放出され得る。図示の薬剤送達装置において、放出機構は、用量設定時にねじられ、その後、解放ボタンが作動されたときに解放されて、ピストンロッドを駆動するばねを備える。あるいは、放出機構は、完全に手動であってもよく、この場合、用量設定部材および解放ボタンは、用量設定時に、設定される投与サイズに応じて基端側に移動され、その後、設定された用量を放出するために使用者によって先端側に移動される。カートリッジは、針ハブマウント95の形態の先端結合手段を備え、針ハブマウント95は、図示の例では、針アセンブリの対応するハブの雌ねじに係合するように構成された雄ねじを有する。代替的な実施形態において、ねじは、他の連結手段(例えば、バヨネット結合具)と組み合わされてもよいし、あるいはこれに置き換えられてもよい。図示の例示的なハブマウントは、以下でより詳細に説明されるようにカートリッジホルダアセンブリのための結合手段としての役割を果たす、先端側に向かって尖った多数の突起を有する外周フランジをさらに備える。図示のタイプのハブマウントは、米国特許第5,693,027号明細書に説明されている。あるいは、針ハブマウントは、カートリッジホルダの一部として(例えば、把持ショルダ(以下参照)のそれぞれに配置される2つの部分を有する「分割」ハブマウントの形態で)形成されてもよい。
【0036】
図示のように、カートリッジホルダアセンブリ3は、従来のカートリッジホルダであって、例えばねじ結合具またはバヨネット結合具によってハウジングに着脱可能に結合され、基端の開口を通して新しいカートリッジがその中に収容しられ、また取り除かれ得る従来のカートリッジホルダ(すなわち、これは、使用者により操作される付加的な解放またはロッキング手段を備えていない)と同じ一般的な外観を有する。その代わり、カートリッジホルダ自体にしか見えないものは、実際は、内側カートリッジホルダ部材30(
図2A参照)の形態のカートリッジ保持手段の移動を制御し、その結果、カートリッジを把持および保持するように構成された把持ショルダ35を開閉するように使用者によって操作される回転可能な外側チューブ部材10の形態の、使用者により操作される結合手段である。より具体的には、把持ショルダ35は、複数の間隙を設けるように周方向に離間された複数の把持歯38を備え、各歯は、基端方向に尖った端部を有する三角形構成を有し、その結果、先端方向に尖った構成を有する複数の間隙を形成している。これにより、カートリッジの、上で説明した先端側に向かって尖った突起が、カートリッジ保持手段が移動されてカートリッジに係合されるときに歯38の間に収容しられ、その結果、把持手段としての役割を果たすことが可能となっている。このようにして、従来の後方装填式の装置のように見え、さらには、カートリッジを取り付け、また取り除くために回転移動によって動かされる使い易い前方装填式の薬剤送達装置が提供される。なお、類似性により、従来型の後方装填式の薬剤送達装置に慣れている使用者の間での容易な受容および順応が可能となっている。
【0037】
新しいカートリッジを取り付けるとき、外側チューブ部材は、例えば90度回転され、この動作によって、把持ショルダ35は、先端側かつわずかに外側に移動され、これにより、取り付けられているカートリッジを取り除くことが可能となる。操作を簡単にするために、カートリッジは、例えば把持ショルダを形成するアームとの係合によって、および/または先端方向への付勢力を加える付加的なばね手段によって、ショルダが移動されるときに特定の距離だけ先端側に移動されてもよい。
図1Bは、カートリッジが取り除かれ、把持ショルダがそのロックされていない「開」位置にある装置を示しており、この場合に、カートリッジを取り除いて、新しいものを挿入することができる。ロッキング・動作機構の設計に応じて、把持ショルダは、開位置にとどめることができてもよいし、あるいは外側チューブ部材が戻しばね手段によって逆に回転されるときに自動的に引っ込められてもよい。ばねが設けられようが設けられまいが、カートリッジホルダは、外側チューブ部材が例えば回転スナップロックによって開位置または閉位置のいずれかにしっかりとどまることを可能にするロッキング手段を備えてもよい。新しいカートリッジが挿入されるとき、駆動放出手段は、ピストンロッドが新しいカートリッジのピストンによって基端側に押されることを可能にする状態になければならない。この機能を実現する結合機構の例示的な実施形態は以下で説明される。
【0038】
上で説明したユーザインターフェース(すなわち、外側管状スリーブ部材の回転により、把持ショルダが内外に移動されること)を実現する機械的機序は、多数の方法で実現され得る。
図2Aおよび
図2Bに示されているように、カートリッジホルダ30は、2つの互いに対向する可撓性アーム31を備え、2つの互いに対向する可撓性アーム31は、軸方向に案内されて摺動するように配置された基端側リング部分から延在し、したがって、外側管状スリーブ部材に回転不可能に係合されており、各アームは、把持ショルダ35を備える。この機序によって、把持ショルダは、軸方向に移動されるときに外側管状スリーブ部材と共に回転し、したがって、ハウジング40に対して回転する。図示の実施形態において、2つの互いに逆向きの窓32は、把持部材の各アームに1つずつ形成されており、各窓は、外側管状スリーブ部材に形成された対応する窓12に揃えられており、2対の窓は、回転整列して一緒に移動する。あるいは、把持部材および/または外側管状スリーブ部材は、完全にまたは部分的に透明な材料から製造されてもよい。各把持ショルダは、傾斜した湾曲外面37であって、これに対応して湾曲している、外側管状スリーブ部材10の先端側の動作縁部17に係合するように構成された傾斜した湾曲外面37、および、1対の傾斜した縁部分36であって、動作スリーブの内面に配置された1対の対応する傾斜した動作面16に係合するように構成された1対の傾斜した縁部分36を備える。この機序によって、傾斜した動作面36は、動作面36が先端側に移動されて、スリーブ動作面16に摺動接触するときに把持ショルダをその開位置に向かって外側に動かす。これに対応して、アームが、基端側に移動されるとき、湾曲外面37は、動作縁部17に係合し、その結果、その把持位置に向かって内側に動かされる。
【0039】
代替的な実施形態において、把持部材は、本体部分2に対して回転不可能に配置されてもよく、このとき、動作スリーブは、軸方向にのみ移動されるように配置されてもよいし、あるいは軸方向移動および回転移動の組み合わせによって移動されるように配置されてもよい。
【0040】
図3は、
図2Aおよび
図2Bに示されているタイプのペン型の薬剤送達装置101の分解図を示している。本発明の態様は、このようなペンの動作原理に関係するため、完全なペン機構およびその特徴の例示的な実施形態が説明されるが、その大部分は、本発明の態様と共に機能し、これを支えるように構成された特徴および設計の例証的な例に過ぎない。ペンは、3つのアセンブリ、すなわち、用量設定アセンブリ100、用量放出・結合アセンブリ200、およびカートリッジホルダ・ハウジングアセンブリ300を備えるものとして説明される。
図4は、
図3に対応しているが、より良い詳細図を提供するために、部品の一部が示されておらず、また、残りの部品が配置し直されている。
【0041】
より具体的には、用量設定アセンブリ100は、ラチェット部材110と、ラチェットチューブ120と、リセットチューブ130と、トルク巻きばね139と、外側に螺旋状に配置された用量数表示の列(図示せず)を有するスケールドラム140と、ばねベース部材150と、ボタンモジュール160と、放出される薬剤の用量を設定するための、使用者により操作されるダイヤル部材170と、ボタンリング181、ボタン上端窓182、およびボタンばね180を備える解放ボタンサブアセンブリとを備える。ボタンモジュールは、説明されている機械設計に組み込まれるように構成された単純な機械部材の形態であってもよいし、あるいは、電子的な用量ロギング特徴を実現するために異なる部材間の相対移動を検出するように構成された電子モジュールの形態であってもよい。ただし、後者のモジュールバージョンは、単純なバージョンと同じ方法で組み込まれる。ボタン窓は、ボタンモジュールが基端側を向いたディスプレイを有するロギングモジュールの形態のときに使用されるように構成されている。そうでなければ、ボタンリングおよびボタン上端は、単一のボタン部材として製造されてもよい。リセットチューブ部材130の基端は、ボタンモジュール160の先端側チューブ部分に連結されて回転方向および軸方向にロックされるように構成されている。しかしながら、この機序は主に、ボタン部が、別個のモジュール(例えば、電子的特徴を有するまたは有さない)として設けられることを可能にするためのものである。
【0042】
機能的に、組み立てられた状態において、ボタンモジュールの先端側チューブ部分161は、リセットチューブ130に取り付けられて軸方向および回転方向にロックされ、リセットチューブ130は、ラチェットチューブの内部に同心円状に取り付けられる。このとき、2つのチューブは、それらの先端において軸方向および回転方向にロックされる。後者の機序は主に、2つの部品の成形およびその後の組み立てのためのものである。しかしながら、分割設計はまた、2つの部材が、例えばリセットチューブの2つの対向する突起がラチェットチューブの対応する開口に収容しられることによって自在継手と同様に連結されることを可能にする。これにより、過度に制約され過ぎない、改善された運動学的可動性を有する機構が実現される。
【0043】
ラチェット部材110は、リセットチューブに取り付けられて軸方向にロックされるが、リセットチューブの軸方向スナップ連結手段によってわずかな程度だけ(以下参照)回転することが可能である。この「遊び」は、ラチェットチューブ切欠部123に配置される制御突起113によって制御される。このようにして、回転方向に柔軟性のある連結が、ラチェット部材とリセットチューブとの間に実現され、この結果、ラチェット部材とラチェットチューブとの間にも実現される。
【0044】
リセットチューブは、その内面に、EOC部材(以下参照)の半径方向突起286に係合するように構成された2つの互いに対向する長手方向溝131を備える。これにより、EOCは、リセットチューブによって回転され得るが、軸方向に移動することが可能である。外側スプライン要素を有するクラッチ部材290は、ラチェット部材に取り付けられて軸方向にロックされる。これにより、ラチェット部材を介するラチェットチューブが、クラッチ部材を介してハウジングに回転方向に係合するように、またこれから回転方向に係脱されるように軸方向に移動され得ることが実現される。ダイヤル部材170は、内側ハウジング基端に取り付けられて軸方向にロックされるが、回転方向に自由である。用量設定時、ダイヤル部材は、ボタンモジュール(以下参照)との噛合を介してリセットチューブに対して回転方向にロックされており、この結果、ダイヤル部材の回転は、リセットチューブの対応する回転をもたらし、その結果、ラチェットチューブおよびラチェット部材の回転をもたらす。解放ボタン181は、ボタンモジュールを介してリセットチューブに軸方向にロックされるが、自由に回転する。戻しばね180は、ボタンおよびボタンに取り付けられたリセットチューブに基端方向への力を加える。スケールドラム140は、ラチェットチューブと内側ハウジングとの間の環状空間に配置され、ドラムは、協働する長手方向スプライン121、141を介してラチェットチューブに対して回転方向にロックされ、また、協働するねじ構造142、202を介して内側ハウジングの内面に回転螺合される。これにより、数表示の列は、ドラムが、ラチェットチューブによってハウジングに対して回転されるときに内側ハウジングおよび外側ハウジング(以下参照)のそれぞれの窓開口203、343を通過するようになる。スケールドラムの基端は、ばねベース部材150の対応する停止面に係合するように構成された停止面144を備え、これにより、初期(または最終)回転位置のための回転ストッパが形成されている。また、スケールドラムの先端は、用量設定時に最大用量(例えば、100インスリン単位(IU))に達したときに基端側ハウジング内面の対応する停止面に係合するように構成されたさらなる停止面143を備える。トルクばね139は、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の環状空間に配置され、その基端においてばねベース部材150に、したがって、ハウジングに固定され、その先端においてラチェット部材110に固定される。これにより、ばねは、ラチェット部材が、ダイヤル部材の回転によってハウジングに対して回転されるときにねじられるようになる。可撓性のラチェットアーム111を有するラチェット機構が、ラチェット部材とクラッチ部材との間に設けられて、後者は、内周歯構造291(または歯部)を備え、各歯は、ラチェットストッパを提供し、これにより、ラチェットチューブは、ラチェットチューブが用量の設定のときにリセットチューブを介して使用者によって回転される位置に保持されるようになっている。設定された用量を減らすことを可能にするために、解放部材122の形態のラチェット解放機構が、ラチェットチューブに設けられており、ラチェット部材に作用してこれを内側に移動させ、その結果、歯構造から係脱させる。これにより、設定された用量を、ダイヤル部材を反対の第2の方向に回すことによって1つ以上のラチェットインクリメントだけ減らすことが可能になっている。なお、解放機構は、ラチェットチューブがラチェット部材に対する上で説明したわずかな程度の遊びだけ回転されたときに動かされる。あるいは、解放機構は、リセットチューブに配置されてもよい。
【0045】
用量放出・結合アセンブリ200は、フォーク部材(または「スライダ」)210と、先端側ハウジング220と、リング部材230と、圧縮ばね235と、ねじ付きナットボア245を有する中央部分を備えるナットハウジング240と、外側駆動部材250、結合部材260、および内側駆動部材270を備える駆動アセンブリと、雄ねじ285および2つの互いに逆向きの長手方向平面283を有するねじ付きピストンロッド280と、エンドオブコンテント(end−of−content)(EOC)部材285と、ピストンロッドワッシャ289と、クラッチ部材290と、基端側ハウジング201とを備える。
【0046】
機能的に、組み立てられた状態において、2つの対向する平面を有する中央ボアを備える内側駆動部材270は、ナットボアの基端側開口を囲む外周フランジ244(
図8参照)および内側駆動部材の先端に配置された1対の対向する把持フランジ274によってナットハウジング240の中央部分に取り付けられて軸方向にロックされるが、回転方向に自由である。中央ナット部分は、アーム構造246(
図8参照)によってナットハウジング内に支持されて、開口を形成しており、この開口を通って、フォーク要素の最も基端側の部分214が配置される。ピストンロッドは、ピストンロッドねじ285を収容するねじ付きボア245およびピストンロッドの互いに逆向きの平面283と係合する、内側駆動部材の2つの互いに対向する平面273によって、2つの位置合わせされたボアを通って配置される。これにより、内側駆動部材の回転が、回転をもたらし、その結果、ピストンロッドとナットボアとの螺合に起因してピストンロッドの先端側への軸方向移動をもたらす。ピストンロッドには、エンドオブコンテント(EOC)部材285が螺着され、ワッシャ289は、先端に軸方向に取り付けられるが、回転方向に自由である。ワッシャは、カートリッジピストンに直接係合するように構成されたピストンロッドの一部として考えられてもよい。EOC部材は、リセットチューブ(上記参照)との係合のための1対の互いに逆向きの半径方向突起286を備える。
【0047】
ナットハウジングに取り付けられて軸方向にロックされるが、回転方向に自由であるリング形の外側駆動部材250は、協働する結合構造によってリング形のクラッチ部材290と恒久的に回転係合されるが、この場合、この係合は、外側駆動部材に対するクラッチ部材の軸方向移動を可能にする。外側駆動部材は、ナットハウジング内面に配置された対応するラチェット歯241(
図7A参照)に一方向に係合するように構成された1対の互いに対向する、周方向に延在する可撓性のラチェットアーム251をさらに備える。
図4の実施形態において、外側駆動部材は、基端側支持リング構造256を備える。クラッチ部材は、基端側ハウジング内面の対応するスプライン要素204に係合するように構成された外側スプライン要素292を備える。これにより、クラッチ部材は、スプラインが内側ハウジングに係合する、回転方向にロックされた基端側位置と、スプラインが内側ハウジングから係脱される、回転方向に自由な先端側位置との間で移動されることが可能となる。
【0048】
外側駆動部材と内側駆動部材との間には、リング形の結合部材260が配置され、これにより、駆動アセンブリが、リセット状態(以下参照)(この場合、内側駆動部材が、したがって、ピストンロッドが、外側駆動部材、したがって、ナットハウジングに対して回転され得る)と、動作状態(この場合、内側駆動部材および外側駆動部材が互いに回転方向にロックされる)との間で動かされ得ることが実現される。結合部材は、フォーク部材210の基端部分214に取り付けられて軸方向にロックされるが、回転方向に自由であり、また、協働するスプライン構造261、271を介して内側駆動部材に対して回転方向にロックされるが、軸方向に自由である。結合部材は、外側駆動部材の内面に周方向に配置された対応する結合歯252に係合し、これから係脱するように軸方向に移動されるよう構成された、周方向に配置された外側結合歯262を備える。この機序によって、結合部材は、フォーク部材の軸方向移動によって、結合部材および外側駆動部材が回転方向に係脱される基端側位置(これは、リセット状態に対応する)と、結合部材および外側駆動部材が回転方向に係合される先端側位置(これは、動作状態に対応する)との間で動かされ得る。以下で説明されるように、フォーク部材は、使用者により操作されるカートリッジの交換時に動かされる。
【0049】
軸方向に動かされる結合部品として「内部」結合部材を有する駆動アセンブリを用意することによって、上で説明したように軸方向に固定して外側駆動部材および内側駆動部材の両方を取り付けることが可能であり、これにより、例えば、EOC部材と協働する内側駆動部材が、安全システムの一部としての役割を果たすことが可能になる。これは、国際公開第2007/017053号パンフレットに説明されている通りである。
【0050】
リング部材230は、ナットハウジング240に取り付けられて回転方向にロックされるが、軸方向に自由であり、また、圧縮ばね235によって先端側に付勢され、これにより、リングは、先端方向への力を挿入されるカートリッジに加える。リング部材および先端側ハウジング220の機能は、カートリッジホルダ・ハウジングアセンブリの部品と共に説明される。
【0051】
カートリッジホルダ・ハウジングアセンブリ300は、キャップ部材360と、使用者により操作される概ね管状の動作スリーブ310と、リング形のスリーブマウント320と、カートリッジホルダ330と、管状ハウジング部材340、拡大レンズ350、およびレンズマウントとしての役割も果たすクリップ部材355を備える外側ハウジングアセンブリとを備える。カートリッジホルダは、略筒状の、薬剤が充填されたカートリッジ390を収容して保持するように構成されており、カートリッジ390は、針ハブマウント395の形態の先端結合手段を備え、針ハブマウント395は、図示の例では、針アセンブリの対応するハブの雌ねじに係合するように構成された雄ねじを有する。代替的な実施形態において、ねじは、他の連結手段(例えば、バヨネット結合具)と組み合わされてもよいし、あるいはこれに置き換えられてもよい。ハブマウントは、以下でより詳細に説明されるようにカートリッジホルダアセンブリのための結合手段としての役割を果たす、先端側に向かって尖った多数の突起398を有する外周フランジをさらに備える。図示のタイプのハブマウントは、米国特許第5,693,027号明細書に説明されている。
【0052】
機能的に、組み立てられた状態において、カートリッジホルダ330は、動作スリーブ310の内部に取り付けられて回転方向にロックされるが、軸方向に自由であり、動作スリーブ310は、スリーブマウント320に取り付けられて軸方向にロックされるが、回転方向に移動可能であり、さらに、スリーブマウント320は、先端側ハウジングに取り付けられて軸方向および回転方向にロックされる。フォーク部材210は、2つのフォーク脚部219がカートリッジホルダに形成された互いに対向するスロット339に収容しられることによってカートリッジホルダに取り付けられて回転方向にロックされるが、軸方向に自由である。以下で詳細に説明されるように、組み合わされたスリーブマウントおよび先端側ハウジングは、内周制御トラックを形成し、内周制御トラックには、カートリッジホルダおよびフォーク部材のそれぞれの互いに逆向きの横方向制御突起333、213の各対が収容しられ、トラックは、2つの部品が、使用者による動作スリーブの回転によってトラックに対して回転されるときにカートリッジホルダおよびフォーク部材のそれぞれの制御された軸方向移動を実現する。スリーブマウントは、2対の停止面329(
図5A参照)をさらに備え、2対の停止面329は、動作スリーブの基端に配置された1対の制御延在部319に設けられた対応する横方向停止面に係合するように構成されており、これらの停止面は、動作スリーブのための回転ストッパを形成する。
【0053】
カートリッジホルダは、基端側リング部分から延在する1対の互いに対向する可撓性アーム331を備え、各アームは、先端側の把持部分(または「顎部」)335を備え、把持部分335は、カートリッジの、上で説明した先端側に向かって尖った突起398に係合するように周方向に離間された複数の基端側を向いた把持歯338を有する。1対の長手方向に配置された互いに対向するスロットが、アーム間に形成されており、スロットはそれぞれ、動作スリーブの内面に形成された、長手方向に配置されたスプライン314を収容するようになっている。これにより、軸方向に案内されるが回転不可能な、スリーブとの係合が実現される。2つの互いに逆向きの窓332が、カートリッジホルダの各アームに1つずつ形成されており、各窓は、外側管状スリーブに形成された対応する窓312に揃えられ、2対の窓は、回転整列して一緒に移動する。
図2Bの実施形態に対応して、把持部分335のそれぞれは、基端側を向いた傾斜した湾曲外面337であって、これに対応して湾曲している、スリーブ部材310の先端側の周縁部317に係合するように構成された基端側を向いた傾斜した湾曲外面337、および、1対の先端側を向いた傾斜した縁部分336であって、動作スリーブの内面に配置された1対の対応する先端側を向いた傾斜した動作面316に係合するように構成された1対の先端側を向いた傾斜した縁部分336を備える。この機序によって、傾斜した動作面336は、動作面336が先端側に移動されて、スリーブ動作面316に摺動接触するときに把持ショルダをその開位置に向かって外側に動かす。これに対応して、アームが、基端側に移動されるとき、湾曲外面337は、動作縁部317に係合し、その結果、その把持位置に向かって内側に動かされる。上に示したように、カートリッジホルダの軸方向移動は、カートリッジホルダ制御突起333が、動作スリーブを回転させるにより制御トラックにおいて回転されることによって制御される。
【0054】
上で説明したように、フォーク部材は、フォーク脚部219を介してカートリッジホルダに回転方向に結合され、これに対応して、動作スリーブが回転されるときにこれと共に回転し、軸方向移動は、フォーク制御突起213が制御トラックに収容しられることによって制御される。ピストンロッドがカートリッジ挿入時に基端側に自由に押されることを保証するために、カートリッジホルダをその受入状態と把持状態との間で動かすことおよびフォーク部材を介して駆動結合具を動かすことが順番に行われる。より具体的には、図示の実施形態において、カートリッジホルダを完全に動かすことは、動作スリーブの60度の回転の間に行われ、その間、フォーク部材は、軸方向に移動されない。カートリッジが、このようにして適所に適切にロックされ、これに対応してピストンロッドが、対応する基端側位置に押されると、動作スリーブのその後の30度のさらなる回転によって、駆動結合具は、フォーク部材が先端側に移動される(この間、カートリッジホルダは、軸方向に移動されない)ことによりリセット状態と動作状態との間で動かされる。このようにして、ピストンロッドワッシャが、システムの負荷を増加させることなく、またはピストンロッドワッシャとカートリッジピストンとの間に空隙を形成することなくカートリッジピストンにぴったり接触して配置されることが高度に保証される。
【0055】
リング部材230は、リング部分と、ナットハウジングの対応する開口242に係合するように構成された1対の互いに逆向きの半径方向案内突起232と、1対の互いに対向する基端側突起231とを備える。最後のものはそれぞれ、挿入されるカートリッジの基端側縁部に係合するように構成された先端側表面233およびフォーク部材の対応する先端側停止面に係合するように構成された基端側停止面を有する。この目的のために、フォーク部材は、1対の外周アーム212を備え、1対の外周アーム212のそれぞれは、先端側停止面を有する。明らかなように、カートリッジホルダを取り囲むリング部分は、様々な突起のための支持体としての役割を果たすに過ぎない。使用者が、カートリッジをカートリッジホルダに深く挿入し過ぎることを防止するために、リング部材は、受入状態と動作状態との間で動かされる。より具体的には、カートリッジホルダが、最初の受入状態にあり、把持部分335が完全に離れているとき、使用者は、リング部材によって加えられている付勢力に抗してカートリッジを挿入する。しかしながら、カートリッジが、カートリッジホルダに深く押し入れられ過ぎることを防止するために、フォーク部材は、上で説明した停止面によってリング部材のための基端側ストッパを提供し、この場合、停止位置は、完全挿入位置から幾らか先端側の位置に対応する。次に、使用者が、動作スリーブを回転させ始め、把持部分が基端側に移動されるとき、フォーク部材停止面212は回転されて、リング部材から係脱され、これにより、リング部材が、カートリッジが把持部分によって基端側に移動されるときにその動作位置に移動されることが可能となる。前方装填式の薬剤送達装置において、このような機序は、カートリッジが、カートリッジの最初の装填時に深く挿入され過ぎないことを保証するのを助ける。すなわち、使用者が、カートリッジが挿入されるときにピストンロッドを基端側に押し過ぎて、これにより、カートリッジがカートリッジホルダに取り付けられ、ピストンロッドがその動作状態にロックされる動作状態においてピストンロッドとカートリッジピストンとの間に空隙が形成されることを防止することができる。明らかなように、制御トラックの実際の設計に応じて、ロッキングアームは、停止面が回転されてリング部材から係脱される前に基端側に移動し始めてもよいが、システムの負荷を回避するために、リング部材は、把持アームが、カートリッジに係合して、リング部材からの付勢力に抗してそれを基端側に引っ張り始めるときに自由に基端側に移動すべきである。
【0056】
使用者が、動作スリーブがその動作位置まで完全に回転される前に放出機構を解放することを防止するために、フォーク部材は、設定されてねじられている放出機構が解放されることを防止する役割も果たす。より具体的には、駆動結合具が、動作状態になるまで、フォーク要素に取り付けられた結合部材の最も基端側の表面は、ラチェットアセンブリのためのストッパとしての役割を果たし、これにより、クラッチ部材が、先端側に移動されてハウジングから係脱され、この結果解放されることを防止する。使用者が、カートリッジが取り付けられる前に放出機構を解放することを防止するさらなる機構は、
図9Aおよび
図9Bを参照して以下で説明される。
【0057】
外側ハウジング340は、主に、内部部品を保護し、剛性および魅力的な外観を提供する役割を果たす。特に、外側ハウジングは、様々な内側ハウジング部品のすべての接続部を覆う。
【0058】
図3および
図4の分解図を参照して個々の部品ならびに構造的および機能的関係について説明してきたが、特定のサブシステムの機能が、個々の部品間の構造的および機能的相互作用を示す
図5〜
図9を参照してより詳細に説明される。
【0059】
より具体的には、
図5Aは、一方のカートリッジホルダ制御突起および一方のフォーク部材制御突起の軸方向移動の役割を担う、制御トラックの完全な180度の半分の部分の断面図を示している。なお、制御トラックの、もう一方の反対側の半分は、他方の2つの制御突起に係合する。制御トラックは、組み合わされたスリーブマウント320および先端側ハウジング220によって形成される。
図5Bは、制御トラックの部分の斜視図を示している。図示のトラック部分は、スリーブマウントのカートリッジホルダ傾斜部分321、中間の軸方向に等距離の部分323、およびフォーク部材傾斜部分324を備える(参照符号は、トラックのスリーブ部を示している)。
【0060】
図6A〜
図6Cは、上で説明したカートリッジホルダ330と、フォーク部材210と、動作スリーブ310と、スリーブマウント320と、結合部材260とを備えるカートリッジホルダアセンブリの異なる動作状態を示している。上で説明したように、動作スリーブは、結果的に制御トラックを形成するように先端側ハウジング220に取り付けられたスリーブマウントに回転可能に取り付けられており、カートリッジホルダは、制御突起333が制御トラックに配置されるように動作スリーブに軸方向に変位可能に取り付けられており、フォーク部材は、制御突起213が制御トラックに配置されるようにカートリッジホルダに軸方向に変位可能に取り付けられており、結合部材260は、フォーク部材先端に回転可能に取り付けられている。動作スリーブが回転されると、カートリッジホルダおよびこれと共にフォーク部材は、制御トラックとの係合を介して回転されるのと同時に軸方向に移動される。結合部材は、内側駆動部材270に対して回転方向にロックされているため、ピストンロッドに対して回転しないが、ピストンロッドが、カートリッジ装填時に基端側に押されるとき、ピストンロッドおよびその結果として結合部材は、ハウジングに対して回転する。
【0061】
図示の実施形態に関するカートリッジ装填時に、以下の動作が行われる。カートリッジホルダが、その受入状態にあり、把持部分335が完全に離れていて、その最も先端側の位置にある場合、使用済みカートリッジを取り除くことができ、また、新しいカートリッジを挿入することができる。このとき、最初のうちは使用済みカートリッジのピストンの位置に応じて配置されるピストンロッドが、基端側に押される。
図6Aに示されているように、カートリッジホルダ制御突起333は、カートリッジホルダ傾斜部分の先端に配置され、フォーク部材制御突起213は、カートリッジホルダ傾斜部分のすぐ隣の中間トラック部分に配置されている。
【0062】
次に、動作スリーブの60度の回転の間に、カートリッジホルダが動かされるが、その間に、把持部分は、内側に移動され、その最も基端側の保持位置まで引っ込められる。この中間状態において、カートリッジは、適所に適切にロックされており、これに対応してピストンロッドは、対応する基端側位置まで押されている。フォーク部材は、この動作の間、回転するのみで軸方向に移動されない。より具体的には、
図6Bに示されているように、動作スリーブ310の最初の60度の回転の間に、カートリッジホルダ制御突起333は、カートリッジホルダ傾斜部分321において基端側に移動され、カートリッジホルダ傾斜部分のすぐ隣の中間トラック部分323まで移動され、フォーク部材制御突起213は、中間トラック部分において、カートリッジホルダ傾斜部分のすぐ隣からフォーク部材傾斜部分324のすぐ隣まで移動される。
【0063】
次に、動作スリーブのさらなる30度の回転の間に、駆動結合具が動かされるが、その間に、フォーク部材は、その最も先端側の位置に移動され、結合部材は、外側駆動部材250に係合する。カートリッジホルダ330は、この動作の間、回転するのみで軸方向に移動されない。より具体的には、
図6Cに示されているように、動作スリーブのさらなる30度の回転の間に、フォーク部材260制御突起213は、フォーク部材傾斜部分324において先端側に移動され、カートリッジホルダ制御突起333は、中間トラック部分324において、カートリッジホルダ傾斜部分321のすぐ隣から中間トラック部分323の中央部分まで移動される。このようにして、ピストンロッドワッシャが、システムの負荷を増加させることなくカートリッジピストンにぴったり接触して配置されることが高度に保証される。
【0064】
装填されているカートリッジを交換すべきとき、上で説明した動作が、動作スリーブを反対方向に完全に90度回転させることによって逆の順序で実行され、これにより、最初に駆動結合具が係脱され、次にカートリッジホルダが、その基端側保持位置からその先端側受入位置まで移動される。
【0065】
例証目的のための
図6A〜
図6Cは、リング部材230を示していないが、フォーク部材260の外周アーム212がどのように、最初にカートリッジホルダが動かされる間に回転され、その結果、リング部材のための停止面を回転させて引っ込めるか(これにより、付勢されているリング部材が、カートリッジによって基端側に移動されることが可能になっている)を見ることができる。
【0066】
図6A〜
図6Cを参照して、カートリッジホルダおよび駆動結合具のための組み合わされた動作機構について説明した。次に、
図7A〜
図7Cを参照して、実際の結合要素自体に焦点を合わせて同じ動作状態について説明する。
【0067】
より具体的には、
図7C(部品の最良の図を提供する)は、上で説明したフォーク部材210と、ナットハウジング240と、外側駆動部材250、結合部材260、および内側駆動部材270を備える駆動アセンブリと、ねじ付きピストンロッド280と、EOC部材285と、ピストンロッドワッシャ289とを備える結合アセンブリを示している。
【0068】
上で説明したように、内側駆動部材270は、ナットボアの基端側開口を囲む外周フランジ244(
図8参照)および内側駆動部材の先端に配置された1対の対向する把持フランジ274によってナットハウジング240の中央部分に取り付けられて軸方向にロックされているが、回転方向に自由である。ピストンロッドは、ピストンロッドねじを収容するねじ付きボアおよびピストンロッドの互いに逆向きの平面283と係合する、内側駆動部材の2つの互いに対向する平面273(
図4参照)によって、2つの位置合わせされたボアを通って配置されている。ピストンロッドには、EOC部材285およびワッシャ289が取り付けられている。外側駆動部材250は、可撓性のラチェットアーム251が、ナットハウジング内面に配置されたラチェット歯241に一方向に係合するようにナットハウジングに取り付けられて軸方向にロックされているが、回転方向に自由である。
【0069】
結合部材260は、フォーク部材210の基端部分214に取り付けられて軸方向にロックされているが、回転方向に自由であり、また、協働するスプライン構造261、271を介して内側駆動部材270に対して回転方向にロックされているが、軸方向に自由である。結合部材は、外側駆動部材の内面に周方向に配置された対応する結合歯252に係合し、これから係脱するように軸方向に移動されるよう構成された、周方向に配置された外側結合歯262を備える。この機序によって、結合部材は、フォーク部材の軸方向移動(
図6A〜
図6Cを参照して上で説明したような)によって、結合部材および外側駆動部材が回転方向に係脱される基端側位置(
図7A参照)(これは、リセット状態に対応する)から、フォーク部材が回転されたが軸方向に移動されていない中間状態(
図7B参照)を経て、結合部材および外側駆動部材が回転方向に係合される先端側位置(これは、
図7Cに示されているような動作状態に対応する)に動かされ得る。
【0070】
図8は、
図7Aに対応しているが、上で説明した軸受構造244、274を介した中央ナット部分への内側駆動部材260の取り付けをより良く示すために、結合部材が省略され、フォーク部材210が部分的に切り取られている。
【0071】
図9Aおよび
図9Bを参照して、
図4のリング部材230および外側駆動部材250の代替的な構成を説明する。これらの部材は、カートリッジ保持アセンブリの状態に関係なく、カートリッジがカートリッジホルダに装填されない限り、設定されてねじられている放出機構の解放を防止するロックを実現するように修正されている。
【0072】
より具体的には、リング部材430は、上で説明したリング部材230のように、ナットハウジングの開口に係合するように構成された1対の互いに逆向きの半径方向案内突起432および1対の互いに対向する基端側突起431を備える。制御アーム433は、横方向案内突起の一方から基端側に延在し、内側制御突起434を備える。制御アームは、修正されたナットハウジング(図示せず)の対応する長手方向スロットにおいて案内される。外側駆動部材450は、上で説明した外側駆動部材250のように、1対の互いに対向するラチェットアーム451、複数の結合歯452、および基端側支持リング部分456を備えるが、加えて、複数の歯構造454が、先端側外面に周方向に配置されており、等間隔に配置された歯は、複数の間隙455であって、それぞれが制御突起434を収容するように構成された複数の間隙455を形成している。カートリッジが、カートリッジホルダに挿入されていないとき、リング部材およびその結果としてさらに制御突起434は、ばね235によってその最も先端側の位置に付勢されており、これによって、
図9Aに示されているように、制御突起は、2つの歯構造454の間に配置されており、その結果、外側駆動部材の回転を防止している。カートリッジが、カートリッジホルダに装填されるとき、リング部材およびその結果としてさらに制御突起434は、基端側に移動され、外側駆動部材から係脱される。カートリッジが取り除かれると、ばね235は、リング部材をその初期位置に戻し、これにより、
図9Bに示されているように、制御突起を外側駆動部材に移動させて阻止係合(blocking engagement)させる。歯の間への制御突起の配置を容易にするために、どちらの構造も、それらの互いに対向する端部に尖った表面を備える。
【0073】
上で説明したように、スケールドラム140は、協働するねじ構造142、202を介して基端側の内側ハウジング201の内面に回転螺合される。図示の実施形態の基端側ハウジングが、本質的に完全な螺旋溝220の形態の雌ねじを備えるのに対して、スケールドラムは、スケールドラムの基端部分に対応して配置されたねじ構造の形態の雄ねじを備えるに過ぎない。スケールドラムのねじ構造は、例えば360度にわたる単一のフランジ構造の形態であってもよいし、あるいは螺旋溝に係合する多数の互いに離れたフランジ部分または突起(すなわち、溝ガイド)に分割されてもよい。スケールドラム雄ねじ構造をドラムの全長にわたって外周に配置する代わりに端部のみに配置することによって、螺旋状に配置される用量数表示の列を互いにより近づけて印刷することが可能であり、これにより、数表示の所定の数に対してより短いドラムの長さが可能になる。
【0074】
放出機構の様々な部品およびそれらの機能的関係ならびにカートリッジホルダおよび結合具の動作について説明してきたが、次に、主に
図3および
図4を参照して、ペン放出機構の動作について説明する。
【0075】
ペン機構は、2つの相互作用するシステム(投与システムおよびダイヤルシステム)として考えられてもよい。用量設定時、ダイヤル機構が回転され、ねじりばねに、荷重が加えられる。投与機構は、ハウジングにロックされており、移動し得ない。押しボタンが押下されると、投与機構が、ハウジングから解放され、ダイヤルシステムとの係合に起因してねじりばねは、直ちにダイヤルシステムを始点まで逆回転させ、これと共に投与システムを回転させる。
【0076】
投与機構の中心的な部品は、ピストンロッド280であり、ピストンの実際の変位は、ピストンロッドによって行われる。薬剤送達時、ピストンロッドは、内側駆動部材270によって回転され、ハウジングに固定されたねじ付きナットボア245とのねじの相互作用に起因して、ピストンロッドは、先端方向に向かって前方に移動する。ゴムピストンとピストンロッドとの間には、ピストンワッシャ289が配置され、ピストンワッシャ289は、回転するピストンロッドのための軸受としての役割を果たし、ゴムピストンにかかる圧力を均一にする。ピストンロッドが、ピストンロッド駆動部材がピストンロッドに係合する位置に非円形断面を有するため、内側駆動部材は、ピストンロッドに対して回転方向にロックされるが、ピストンロッドの軸線に沿って自由に移動するようになっている。結果的に、内側駆動部材の回転は、ピストンの直線的な前方への(すなわち、先端側への)移動をもたらす。外側駆動部材250は、小さなラチェットアーム251を備え、ラチェットアーム251は、結合部材260を介して、内側駆動部材が(押しボタンの端部から見て)時計回りに回転することを防止する。このように、内側駆動部材との係合に起因して、ピストンロッドは、前方にのみ移動することができる。薬剤送達時、内側駆動部材は、反時計回りに回転し、ラチェットアーム251は、ナットハウジング内面のラチェット歯との係合に起因して小さなクリック音(例えば、放出されるインスリンの単位ごとに1回のクリック音)を使用者に提供する。
【0077】
ダイヤルシステムに目を向けると、用量は、ダイヤル部材170を回すことによって設定およびリセットされる。ダイヤル部材を回すと、リセットチューブ130、EOC部材285、ラチェットチューブ120、ラチェット部材110、およびスケールドラム140のすべてが、ダイヤル部材と共に回される。ラチェットチューブが、ラチェット部材を介してトルクばね139の先端に連結されているため、ばねには、荷重が加えられる。用量設定時、ラチェットのアーム111は、クラッチ部材290の内側歯構造291との相互作用に起因して、ダイヤルの単位ごとにダイヤルクリックを実行する。図示の実施形態において、クラッチ部材は、ハウジングに対する完全な360度の回転の間に24のクリック(インクリメント)を提供する24のラチェットストッパを備える。ばねには、組み立ての間に予備荷重が加えられ、これにより、機構が、許容可能な速度間隔内で少ない用量および多い用量の両方を送達することが可能となる。スケールドラムは、ラチェットチューブに回転係合されているが、軸方向に移動可能であり、また、スケールドラムが、ハウジングに螺合されていることから、スケールドラムは、ダイヤルシステムが回されたときに螺旋パターンで移動し、設定される用量に対応する数字が、ハウジング窓343に示される。
【0078】
ラチェットチューブ120とクラッチ部材290との間のラチェット110、291は、ばねが部品を逆に回すことを防止する。リセット時、リセットチューブは、ラチェットアーム111を移動させ、その結果、1クリック(1クリックは、説明されている実施形態では1インスリン単位IUに対応する)ずつラチェットを解放する。より具体的には、ダイヤル部材が、時計回りに回されるとき、リセットチューブは、単にラチェットチューブを回転させ、これにより、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造291と自由に相互作用することを可能にする。ダイヤル部材が、反時計回りに回されるとき、リセットチューブは、ラチェットクリックアームと直接相互作用して、クリックアームを、ペンの中心に向かってクラッチの歯から離れる方向に動かし、これにより、ラチェットのクリックアームが、荷重が加えられているばねによって発生するトルクに起因して「1クリック」分後ろに移動することを可能にする。
【0079】
設定された用量を送達するために、押しボタン180は、使用者によって先端方向に押される。リセットチューブ130は、ダイヤル部材とボタンモジュールとの噛合162、172が軸方向に離れる(以下参照)ことから、ダイヤル部材から切り離され、その後、クラッチ部材290が、ハウジングスプライン204から係脱されて、外側駆動部材270と共に回転し始める。次に、ダイヤル機構が、クラッチ部材、駆動部材250、270、および結合部材260と共に「ゼロ」に戻り、これにより、ある用量の薬剤が放出される。薬剤送達中にいつでも押しボタンを解放するまたは押すことによっていつでも投与を中止および開始することが可能である。5IU未満の投与は、ゴムピストンが極めて急速に圧縮されるため、通常は中断することができず、ゴムピストンの圧縮およびピストンが元の寸法に戻るときのその後のインスリンの送達をもたらす。
【0080】
EOC特徴は、使用者が、カートリッジの残量よりも多くの用量を設定することを防止する。EOC部材285は、リセットチューブに対して回転方向にロックされており、これにより、EOC部材は、用量設定時、リセット時、および薬剤送達時に回転し、それらの間に、EOC部材285は、ピストンロッドのねじに沿って軸方向に前後に移動され得るようになっている。EOC部材285は、ピストンロッドの基端に到達すると停止する。これにより、ダイヤル部材を含むすべての連結された部品が、ばねによって用量設定方向にさらに回転されることが防止される。すなわち、このとき設定された用量は、カートリッジの薬剤残量に対応する。
【0081】
スケールドラム140は、ハウジング内面の対応する停止面に係合するように構成された先端側停止面を備える。これにより、ダイヤル部材を含むすべての連結された部品が、用量設定方向にさらに回転されることを防止する、スケールドラムのための最大用量ストッパが実現される。図示の実施形態では、最大用量は、100IUに設定されている。これに対応して、スケールドラムは、ばねベース部材の対応する停止面に係合するように構成された基端側停止面を備える。これにより、ダイヤル部材を含むすべての連結された部品が、用量放出方向にさらに回転されることが防止され、これにより、放出機構全体のための「ゼロ」ストッパが実現される。これはつまり、ダイヤル部材が、ダイヤル部材がその通常の停止位置を過ぎてダイヤルされることを可能にするトルクリミッタを備え得るということである(以下参照)。
【0082】
ダイヤル機構において何かが故障して、スケールドラムまたはラチェットチューブをそのゼロ位置を越えて移動させてしまう場合の偶発的な過剰投与を防止するために、EOC部材は、安全システムを提供する役割を果たす。より具体的には、満杯のカートリッジを伴う初期状態において、EOC部材は、内側駆動要素にほぼ接触する、最も先端側の軸方向位置に配置される。所定の用量が放出された後、EOC部材は再び、内側駆動要素にほぼ接触するように配置される。これに対応して、EOC部材は、機構がゼロ位置を越えて用量を送達しようとする場合に内側駆動要素に対してロックされる。機構の様々な部品の公差および可撓性に起因して、EOCは、短い距離を移動して、放出される薬剤の少量の「過剰投与」(例えば、3〜5IUのインスリン)を許す。
【0083】
放出機構は、薬剤の全量が放出されたことを使用者に知らせる明確なフィードバックを用量の放出の最後に提供する投与終了(end−of−dose)(EOD)クリック特徴をさらに備える。より具体的には、EOD機能は、ばねベースとスケールドラムとの相互作用によって実現される。スケールドラムが、ゼロに戻るとき、ばねベースの小さなクリックアームは、前進するスケールドラムによって後ろに動かされる。「ゼロ」の直前で、アームは解放され、アームは、スケールドラムの表面を打つ。
【0084】
図示の機構は、ダイヤル部材を介して使用者により加えられる過負荷から機構を保護するためにトルクリミッタをさらに備える。この特徴は、上で説明したように用量設定の間互いに回転方向にロックされるダイヤル部材170およびボタンモジュール160の間の接触部によって実現される。より具体的には、図示の実施形態において、ダイヤル部材は、内周歯構造172を備え、内周歯構造172は、ボタンモジュールの可撓性の支持部分162に配置された多数の対応する歯に係合する。ボタンモジュールの歯は、所定の特定の最大サイズのトルク(例えば、150〜300Nmm)を伝達するように設計されており、これを上回ると、可撓性の支持部分および歯は、内側に曲がって、ダイヤル機構の残り部分を回転させることなくダイヤル部材が回るようにする。このように、ペン内部の機構には、トルクリミッタが歯を介して伝達する荷重よりも高い荷重で応力が加えられ得ない。これは、両方向の回転に当てはまる。
【0085】
例示的な実施形態に関する上記の説明において、様々な部品に関して説明されている機能を実現する様々な構造および手段は、本発明の概念が当業者に明らかとなる程度には説明されている。様々な部品に関する詳細な構成および仕様は、本明細書に述べられている趣旨に沿って当業者により実行される通常の設計手続きのために考えられている。
【国際調査報告】