(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-522905(P2016-522905A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(54)【発明の名称】設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを表示する方法及び機器
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20160708BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20160708BHJP
G09F 19/18 20060101ALI20160708BHJP
【FI】
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G09F19/18 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-504665(P2016-504665)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2014056108
(87)【国際公開番号】WO2014154778
(87)【国際公開日】20141002
(31)【優先権主張番号】102013205593.5
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴィンター
(72)【発明者】
【氏名】ヘアヴィグ ハーベンバッハー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ゴゴッラ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヴュルシュ
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA75
2K203GB32
2K203GB62
2K203GC39
2K203KA03
2K203KA04
2K203KA37
2K203KA56
2K203MA21
2K203MA30
(57)【要約】
設計案のオブジェクト21及びオブジェクトデータを部屋11の境界壁面16に表示する方法であって、部屋11の設計案を選択し、制御装置に取り込む第1のステップ、表示装置18の現在の表示領域25を定める第2のステップ、表示装置18の現在の表示領域25を、境界壁面16において、設計案と比較し、現在の表示領域25に展開する設計案のオブジェクト21を定める第3のステップ、現在の表示領域25に展開するオブジェクト21に適切な投影パラメーターを定め、表示装置18へ送信する第4のステップ、現在の表示領域25に展開するオブジェクト21を境界壁面16に前記表示装置18により投影する第5のステップ、からなる方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計案のオブジェクト(21、54.1〜54.4、56.1、56.2)及びオブジェクトデータ(55、57.1、57.2)を部屋(11)の境界壁面(16)に表示する方法であって、
前記部屋(11)の設計案を選択し、制御装置(36)に取り込む第1のステップ、
投影装置(41)の現在の表示領域(25)を定める第2のステップ、
前記投影装置(41)の前記現在の表示領域(25)を、前記境界壁面(16)において、前記設計案と比較し、前記現在の表示領域(25)に展開されている前記設計案の前記オブジェクト(21、54.1〜54.4、56.1、56.2)を定める第3のステップ、
適切な投影パラメーターを前記現在の表示領域(25)に展開する前記オブジェクト(21、54.1〜54.4、56.1、56.2)用に定め、前記投影装置(41)へ送信する第4のステップ、
前記現在の表示領域(25)に展開する前記オブジェクト(21、54.1〜54.4、56.1、56.2)を、前記投影装置(41)により、前記境界壁面(16)に投影する第5のステップ、からなる方法。
【請求項2】
前記投影装置(41)の前記現在の表示領域(25)は、現在の位置及び現在の向きから定められる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部屋(11)における前記投影装置(41)の向きは、少なくとも2つの目標物(23.1、23.2、23.3)の位置座標から定められる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記部屋(11)における前記投影装置(41)の向きは、カメラ装置(24)によって定められる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のステップから前記第5のステップは、ある頻度で繰り返される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至6のいずれか1に記載の方法を実行する、設計案のオブジェクト(21、54.1〜54.4、56.1、56.2)及びオブジェクトデータ(55、57.1、57.2)を部屋(11)の境界壁面(16)に表示する装置(10)であって、
操作部(34)及び制御装置(36)を有する操作装置(17)と、
投影装置(41)及び前記投影装置(41)を制御する制御装置(42)を有する表示装置(18)と、を備える装置(10)。
【請求項7】
前記表示装置(18)は、前記部屋(11)における前記表示装置(18)の位置座標を規定する少なくとも1つの目標物(23.1、23.2、23.3、66、71)を備える、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記表示装置(18)は、前記部屋(11)における前記表示装置(18)の複数の位置座標を規定する複数の目標物(23.1、23.2、23.3)を備える、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記表示装置(18)は、前記部屋(11)における前記表示装置(18)の向きを定めるカメラ装置(24)を備える、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記表示装置(18)は、ハンドル(63)を有する手持ち装置(61)に組み込まれる、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1に記載の装置。
【請求項11】
前記表示装置(18)は、取付けアダプタ(82)を有する装置(81)に組み込まれる、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置(81)は、回転軸又はピボット点に対して調整可能に構成される、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記表示装置(18)は、保護用作業ヘルメット(26)に組み込まれる若しくは保護用作業ヘルメット(72)に取り付けられる、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る、建設設計案(Konstruktionsplans)のオブジェクト(objekten)及びオブジェクトデータを部屋の境界壁面に表示する方法及び請求項6の前提部に係る、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを表示する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
建設プロジェクトにおいて、多くの専門家集団が、工事計画、施工、及び建物検査に携わっている。建設プロジェクトの計画では、建築士や建築技師そして、必要に応じて更なる専門家を交えて、建設プロジェクトの設計案を作成する。設計案におけるオブジェクトは、建設プロジェクトのサイズや複雑さに合わせたスケールで表示される。建設工程において、工事計画に続き、建設現場における建設作業が行われる。建設作業は、工具や建設機械を用いて施工作業者や技能者により行われ、施工管理者や現場監督により管理・調整される。様々な技能者は、建設工事に割り当てられた作業を広く行う業界団体により組織される。建設業における仕事は、特に大工職や木工業、据付工事、壁面工事、タイル工事や電気工事等である。
【0003】
建設作業では、非常に手間がかかる方法で、技能者が設計案に描かれたオブジェクトを建設現場に転記する必要があるが、この転記をする際にエラーが起こる可能性がある。また、従来の設計案は、建設現場において作成すべきオブジェクトの作成手順を示さないという欠点がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを部屋の境界壁面に表示する方法及び機器を開発することを目的とし、これは、操作者を手助けし、設計案から建設現場へオブジェクトを転記する際に起こるエラーを減らす。
【0005】
この目的は、独立請求項1の特徴により、導入部分に記載された本発明に係る方法及び独立請求項6の特徴や導入部分に記載された本発明に係る機器により達成される。効果的な技術的詳細は従属項に記載される。
【0006】
本発明によると、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを部屋の境界壁面に表示する方法は、
部屋の設計案を選択し、制御装置に取り込む第1のステップ、
投影装置の現在の表示領域を境界壁面に定める第2のステップ、
現在の表示領域を、境界壁面において、設計案と比較し、現在の表示領域に展開される設計案のオブジェクトを定める第3のステップ、
適切な投影パラメーターを、現在の表示領域に展開するオブジェクト用に定め、投影装置へ送信する第4のステップ、
現在の表示領域に展開するオブジェクトを、投影装置により境界壁面に投影する第5のステップ、からなることを特徴とする。
【0007】
設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを部屋における境界壁面へ表示すると、オブジェクトが建設作業の一部として作成される場所に表示されるという点で利点である。設計案から部屋の境界壁面へのオブジェクトの転記作業は、もはや不要であり、そのため、オブジェクトを作業が行われる対象物へ転記する際に起こるエラーは起こらない。更に、本発明に係る方法は、設計案オブジェクトを時系列に配置する事が出来る。
【0008】
更なる発展おいて、投影装置の現在の表示領域は、現在の位置及び現在の向きから定められる。設計案にあるオブジェクトを境界壁面の位置に投影するために、設計案及び投影装置の座標系は、互いに対応付けられていなくてはならない。投影装置は、部屋における表示装置の位置座標を規定するための、少なくとも1つの目標物を有する表示装置の一部である。目標物は、基準装置により表示装置の位置座標を定めるのに用いられる。
【0009】
第1の変形態様において、部屋における投影装置の向きは、少なくとも2つの目標物の位置座標から定められ、そして、第2の変形態様において、部屋における投影装置の向きは、カメラ装置により定められる。
【0010】
好ましい展開において、本発明に係る方法の第2ステップから第5ステップは、ある頻度で繰り返される。第2ステップから第5ステップの繰り返しは、表示装置が動かされて、表示装置の位置及び向きが変わったときに重要である。投影装置は、投影装置の現在の表示領域に展開するオブジェクトを、境界壁面に投影する。これにより、操作者が見たいオブジェクトが確実に表示される。
【0011】
特に本発明に係る方法の実行について、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを部屋の境界壁面に表示する装置は、
操作部と制御装置とを有する操作装置と、
投影装置とこの投影装置を制御する制御装置を有する表示装置と、を備える。
【0012】
本発明に係る装置では、設計案のオブジェクトを、建設作業の一部として作成される場所に表示する。設計案から部屋の境界壁面へのオブジェクトの転記作業は省略されるため、オブジェクトを作業が行われる対象物へ転記する際に起こるエラーは起こらなくなる。更に、オブジェクト及び対象物についての情報を表示することも出来る。
【0013】
オブジェクトを設計案に示した通りに境界壁面の位置に投影するために、設計案及び投影装置の座標系は、互いに対応付けられていなくてはならない。対応付けは、一般的に基準装置と呼ばれる、二次元又は三次元の位置座標を定めるための既知の装置により行われ、それは、トータルステーションとして構成され得る。従って、通常、設計案及び基準装置の座標系がまず対応付けられ、それから、基準装置及び投影装置の座標系が互いに対応付けられる。
【0014】
表示装置は、部屋における表示装置の位置座標を設定する少なくとも1つの目標物を有することが好ましい。その少なくとも1つの目標物は、基準装置により、室内における表示装置の位置座標を定めるのに用いられる。
【0015】
特に好ましい態様において、表示装置は、部屋における表示装置の複数の位置座標を設定する複数の目標物を有する。表示装置の目標物は、ディファレンシャルジェネレーション(Differenzbildung)により部屋における表示装置の現在の向きを定めるためや、部屋における現在の位置を定める際の精度を上げるために、用いても良い。
【0016】
表示装置は、部屋における表示装置の向きを定めるカメラ装置を備えても良い。カメラ装置は、基準装置との併用により、部屋における表示装置の現在の向きを定めるのに用いられる。
【0017】
第1の好ましい態様において、表示装置は、ハンドルを備える手持ち式ユニットに組み込まれる。手持ち式ユニットとして構成することは、部屋において、作成されるオブジェクトの簡単な全体像を得たい操作者が使用するのに適している。操作者は、ハンドルを握り、操作者が設計案のオブジェクトを表示したい部屋の境界壁面に、投影装置を備えた手持ち式ユニットを向ける。
【0018】
第2の好ましい態様において、表示装置は、取付けアダプタを備える装置に組み込まれる。この構成では、三脚や昇降台等に表示装置を埋め込む事が可能で、建設作業を行う技能者にとりわけ適している。壁等の境界壁面に、ドリルを用いてドリル孔を開けるために、境界壁面へのドリル孔の投影は、一定且つ可能な限り正確で無くてはならない。
【0019】
そのため、機器は、回転軸に対して調整可能に、特に好ましい態様で構成される。操作者は、表示装置が、境界壁面にその操作者と関係のあるオブジェクトを投影するように、表示装置の位置合わせをする。表示装置の位置合わせは、操作者により手動若しくは遠隔操作により行うことが出来る。
【0020】
第3の好ましい態様において、表示装置は、保護用作業ヘルメットに取り付けられるか、保護用作業ヘルメットに組み込まれる。保護用作業ヘルメットへの表示装置の取り付け又は組み込みは、表示装置の現在の表示領域が常に操作者が見ている場所に展開されるという利点を持つ。操作者の視野に展開する設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータは、操作者に対して表示される。仮に操作者が、最初は部屋の左側壁を見ていて、それから180°向きを変え、反対側の右側壁を見ると、操作者には、反対側の右側壁に配置したオブジェクト及びオブジェクトデータが示される。
【0021】
本発明の様態を、図面を参照して説明する。以下は、発明の様態を必ずしも正確な縮尺で表しておらず、図面は、発明の様態を説明する助けとして、むしろ概略的に及び/又は若干歪曲した形で描かれている。図面から直接的に明確な教示については、関連する従来技術を参照されたい。この場合、本発明は、本発明の一般的な概念を逸脱することなく、発明の特定の様態の形態や詳細について、様々な変形や修正が可能である。明細書、図面及び特許請求の範囲に記載の本発明の特徴は、個別に及び任意の組合せにおいて本発明の改良に必要となろう。明細書、図面及び/又は特許請求の範囲に記載の本発明の特徴の内、少なくとも2つの特徴の全ての組合せが、この発明の技術的範囲内である。本発明の一般的な概念は、以下に図示及び記載する発明の好ましい特定の様態そのものやその細部に限定されるものでは無く、また、特許請求の範囲に係る発明と比較して限定された対象に限定されない。規定された測定範囲の場合、上記限定内の数値も限界値として採用されるはずであり、適宜使用可能及び請求可能である。便宜上、同一の参照符号が、同一又は同様の機能を持つ同一又は同様の部分を示すために以下で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを内部空間に表示する、操作装置、表示装置及び基準装置を備えた本発明に係る機器の使用を示す図である。
【
図2】
図1に示した本発明に係る機器の、操作装置、表示装置及び基準装置の相互関係を示したブロック図である。
【
図3】
図1に示した本発明に係る機器を用いて、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを作業が行われる対象物に表示する本発明に係る方法を示した図である。
【
図4A】
図1に示した実施例を用いて、設計案の第1の画面を有する表示装置の表示領域を示す図である。
【
図4B】
図1に示した実施例を用いて、設計案の第2の画面を有する表示装置の表示領域を示す図である。
【
図5A】表示装置の異なる実施例を示す図であり、手持ち装置として構成された表示装置の図である。
【
図5B】表示装置の異なる実施例を示す図であり、保護用作業ヘルメットに組み込んだ表示装置の図である。
【
図5C】表示装置の異なる実施例を示す図であり、取付けアダプタを有する機器として構成された表示装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを内部空間11に表示する本発明に係る機器10の使用を示す図である。内部空間11は、床12、天井13、2つの側壁14、15及び後壁16からなる。内部空間11の境界12〜16は、集合的に「境界壁面」という用語でまとめる。
【0024】
図1は、機器10の必須要素を示す概略図である。機器10は、操作装置17、表示装置18及び基準装置19を備える。
図1に示した操作装置17及び表示装置18を別々に設置する代わりに、操作装置は、表示装置に組み込まれても良い。機器10は、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを対象物に表示する。設計案は、建設プロジェクトの技術図面のことを指し、構成材料や組立品の作成に必要な全ての情報が図表により描かれる。「オブジェクト」という用語は、設計案に含まれる構成材料や組立品等の総称である。オブジェクトのオブジェクトデータは、例えば、オブジェクトの幾何学的な形状(長さ、幅又は直径)を含む。
【0025】
機器10の機能は、典型的なワークタスクによって説明される。取付けレール21は、後壁16に備え付けられる。取付けレールは、2つの取付け板により、備え付けられる。そうするために、所定のパターンに従って、ドリル孔は、後壁16に開けられなければならず、そこに適切なスクリューアンカーを続けて挿入する。スクリューアンカーの種類とスクリューアンカーの寸法(直径)は、後壁16の対象物によって決まり、また、取付けレール21の負荷容量によって決まる。後壁16の対象物は、適切な穿孔工具の選択及びドリルの穿孔パラメータにも影響を及ぼす。
【0026】
機器10は、様々な技能者をそれぞれのタスクにおいて補助することを目的とする。機器10の補助援作業は、後壁16にドリル孔を表示することを含む。後壁16上の設計案に示されたドリル孔を開ける位置にドリル孔を投影するために、設計案及び表示装置18の座標系は、基準装置19を用いて対応付けられる。その際、まず、設計案及び基準装置19の座標系が対応付けられ、そして、基準装置19及び表示装置18の座標系が対応付けられる。
【0027】
基準装置19及び設計案との対応付けは、既知の参照オブジェクトを用いて行われる。設計案において、複数の参照オブジェクトは、内部空間11の目立つ位置に配置されるものと定義付けされ、このため、設計案及び基準装置19の座標系を対応付けるのに適している。
図1は、内部空間11の四隅に置かれている、後壁16に接している4つの参照オブジェクト22.1、22.2、22.3、22.4を示す。例えば、反射目標物が参照オブジェクトとして用いられる。
【0028】
基準装置19に対する表示装置18の位置及び向きは、目標物を用いて定める。表示装置18は、複数の目標物を有する。
図1では、3つの目標物23.1、23.2、23.3を示す。基準装置19に対する表示装置18の向きは、表示装置18に取り付けられたカメラ装置24を用いて、別の方法で定めることも出来る。その方向及び向きに応じて、表示装置18は、表示装置18と向かい合っている境界壁面に表示領域25を投影する。
図1において、表示装置18の表示領域25は、後壁16に投影される。
図1は、保護用作業ヘルメット26に設けられている表示装置18を示した図である。
【0029】
図2は、
図1に示した本発明に係る機器10の操作装置17、表示装置18及び基準装置19の相互関係を示したブロック図である。
【0030】
操作装置17及び表示装置18は、別々に構成されているか、通信リンク31を介して接続されているか接続可能に構成されている。操作装置17及び基準装置19も、通信リンク32を介して互いにつながっているか互いに接続可能である。通信リンク31、32は、無線通信リンク、例えば、赤外線、ブルートゥース(登録商標)、WLAN即ちWi−Fi接続、又は有線通信リンクとして構成され得る。記載した無線接続技術の他、全ての既知の及び将来の無線接続技術が、データ及び画像転送に適している。
【0031】
携帯型である操作装置17は、操作部34及び表示部35を実装する筐体33を備える。操作部34及び表示部35は、
図2に示すように別々に構成されているか、若しくは、タッチスクリーン等に一体的に組み込むように構成され得る。操作装置17は、制御装置36、記憶部37及び第1の送受信部38も備える。
【0032】
表示装置18は、投影装置41、その投影装置41を制御する制御装置42及び第2の送受信部43を有する。操作装置17の第1の送受信部38に基づき、通信リンク31は、表示装置18の第2の送受信部43のために設定される。投影装置41を回転するための制御コマンドは、通信リンク31を介して、操作装置17の制御装置36により、表示装置18の制御装置42へ送信される。
【0033】
基準装置19は、レーザー測定装置44、そのレーザー測定装置44を制御する制御装置45及び第3の送受信部46を備える。基準装置19は、例えば、トータルステーションとして構成され、レーザー測定装置44は、例えば、距離・角度測定装置として構成される。操作装置17の第1の送受信部38に基づき、通信リンク32は、基準装置19の第3の送受信部46のために設定される。操作部34を用いて、操作者は、基準点及び基準配向の判定を開始する。基準判定用の制御コマンドは、通信リンク32を介して、操作装置17の制御装置36により、基準装置19の制御装置45へ送信される。
【0034】
設計案は、操作装置17の記憶部37に記憶される。操作装置17は、更なる通信リンク47を介して、中央記憶装置48に接続され得る。「中央記憶装置」という用語は、データをアーカイブするために使用される全ての電子機器を含む。それらは、サーバー、ノートブック型パソコン、コンピュータ、外付けハードディスク及びPDAを含む。通信リンク47を介して、設計案は、中央記憶装置48から操作装置17へ送信され、記憶部37に記憶することが出来る。また、実行済みの設計案及び関連資料が、操作装置17により、中央記憶装置48へ送信され、そこでアーカイブされる。
【0035】
中央記憶装置48は、記憶部51及び第4の送受信部52を備える。操作装置17の第1の送受信部38に基づき、通信リンク47は、中央記憶装置48の第4の送受信部52のために設定される。設計案、写真、ビデオファイル等としてのデータは、通信リンク47を介して、操作装置17の制御装置36から記憶部51へ送信されるか、制御装置36が、データを記憶部51から操作装置17へ送信する。
【0036】
図3は、
図1に示した本発明に係る機器10を用いて、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータを内部空間11の境界壁面16に表示する本発明に係る方法を示したフローチャートである。
【0037】
ステップS01において、操作者は、自身のワークタスクに用いる内部空間11の設計案を操作装置17で選択する。設計案は、操作装置17の記憶部37に記憶され、操作者により、適切な設計案が操作部34を用いて選択される。設計案は、制御装置36に取り込まれる。あるいは、操作者は、操作部34を介して、中央記憶装置48への通信リンク47を設定し、そして、その通信リンク47を介して、設計案を記憶部51から操作装置17の制御装置36へ送信しても良い。
【0038】
全体計画として、設計案は、内部空間11のオブジェクト全てを有しても良く、また、部分計画として、設計案は、一部のオブジェクトのみを有しても良い。設計案の異なるオブジェクト及びオブジェクトデータは、異なる技能者、例えば、電気技師、レンガ工及び据付者に関連する。設計案をそれぞれの技能者の要求に適合させるために、ステップS01において、二次設計案は、個別に、又は、少なくとも2つの二次設計案の様々な組み合わせにおいて選択し、制御装置36に取り込んでも良い。
【0039】
ステップS02において、操作者は、操作部34により、第1及び第2の参照オブジェクトを、基準判定(基準位置及び基準配向)用に、設計案に含まれる参照オブジェクト22.1〜22.4から、操作装置17で選択する。基準判定は、基準装置19及び設計案の座標系を同期するのに用いる。基準判定には、少なくとも2つの参照オブジェクトが必要で、それらの位置は設計案において示される。更なる参照オブジェクトを用いることで、基準判定の精度を向上させることが出来る。更に、操作者は、ステップS03において、第1及び第2の目標物を目標物23.1〜23.3から選択する。目標物を用いることにより、基準装置19に対する表示装置18の現在の方向及び向きが定められ、それには、少なくとも2つの目標物が必要である。あるいは、基準装置19に対する表示装置18の向きは、カメラ装置24を用いて定めることも出来る。表示装置18の現在の位置を定めるには、1つの目標物のみが必要で、更なる目標物を用いることにより、位置判定の精度を向上させることが出来る。
【0040】
ステップS04において、基準装置19のレーザー測定装置44は、操作者により、手動又は自動で第1の参照オブジェクトへ向けられ、そのレーザー測定装置44は、ステップS05において、第1の参照オブジェクトの距離及び角度測定を行う。測定した距離及び角度の値は、ステップS06において、通信リンク32を介して、操作装置17の制御装置36へ送信され、その制御装置36に記憶される。第1の参照オブジェクトの測定後、第2の参照オブジェクトが、第1の参照オブジェクトと同様に測定される。レーザー測定装置44は、ステップS07において、第2の参照オブジェクトの方へ向けられ、そのレーザー測定装置44は、ステップS08において、第2の参照オブジェクトの距離及び角度測定を行う。測定した距離及び角度の値は、ステップS09において、通信リンク32を介して、操作装置17の制御装置36へ送信され、その制御装置36に記憶される。
【0041】
それらの基準判定の後、表示装置18の現在の位置及び向きは、基準装置19に対して定められる。ステップS10において、レーザー測定装置44は、操作者により、手動又は自動で第1の目標物へ向けられ、ステップS11において、レーザー測定装置44は、第1の目標物の距離及び角度測定を行う。測定した距離及び角度の値は、ステップS12において、通信リンク32を介して、操作装置17の制御装置36へ送信され、その制御装置36に記憶される。第1の目標物の測定後、第2の目標物が、第1の目標物同様に測定される。レーザー測定装置44は、ステップS13において、第2の目標物へ向けられ、レーザー測定装置44は、ステップS14において、第2の目標物の距離及び角度測定を行う。測定した距離及び角度の値は、ステップS15において、通信リンク32を介して、操作装置17制御装置36へ送信され、その制御装置36に記憶される。目標物の測定した距離及び角度の値から、制御装置36は、ステップS16において、基準装置19に対する表示装置17の現在の位置及び現在の向きを算出する。あるいは、基準装置19に対する表示装置18の現在の向きは、カメラ装置24を用いて定められ得る。
【0042】
ステップS17において、制御装置36は、表示装置18の現在の表示領域25を、その表示装置18の現在の位置及び現在の向きから定める。続いて、制御装置36は、ステップS18において、現在の表示領域25に配置されている、設計案のオブジェクト用の適切な投影パラメーターを定め、ステップS19において、投影パラメーターを投影装置41へ送信する。内部空間11の境界壁面12〜16には、投影されたオブジェクトの質や精度を低下させるむらがあっても良い。境界壁面12〜16の表面は、カメラによって定められ、境界壁面12〜16のむらは、画像処理によって定められ、ステップS18の投影パラメーターにおいて考慮される。投影装置41は、ステップS20において、現在の表示領域25に配置されたオブジェクト及び関連オブジェクトデータを後壁16に投影する。ステップS20の後、この方法はステップS10へと続く。ステップS10からステップS20は、ある頻度で繰り返される。
【0043】
図4A及び
図4Bは、表示装置18の表示領域25を、一例として、
図1に表したワークタスクを用いて、第1の画面(
図4A)及び第2の画面(
図4B)に示した図である。取付けレール21は、2つの取付け板を用いて、後壁16に備え付けられる。
【0044】
図4Aは、後壁16に開けられた4つの同じドリル孔54.1〜54.4を含むドリルパターンを示す図である。後壁16上のドリル孔54.1〜54.4の位置の他に、ドリル孔54.1〜54.4に関する関連オブジェクトデータ55が、後壁16に投影される。操作者は、操作部34を用いて、重ねられたオブジェクトデータ55の数及び種類を定めることが出来る。ドリル孔に関して、関連オブジェクトデータは、例えば、ドリル孔の直径(直径8mm)、ドリル孔の深さ(深さ30mm)、及び後壁16となる対象物に関する情報(コンクリート)を含む。
【0045】
図4Bは、対象物に投影された第1及び第2の取付け板56.1、56.2を示した図である。取付け板10は、取付け板56.1、56.2により後壁16に取り付けられる。取付け板56.1、56.2の他に、表示領域25は、取付け板56.1、56.2に関する、関連オブジェクトデータ57.1、57.2も表示する。
【0046】
図5Aから
図5Cは、表示装置18の3つの異なる実施例を示し、手持ち装置として構成された表示装置(
図5A)、保護用作業ヘルメットに組み込んだ表示装置(
図5B)、及び取付けアダプタを有する機器として構成された表示装置(
図5C)を示す図である。
【0047】
図5Aは、機器10の表示装置18及び操作装置17が組み込まれた手持ち装置61を示した図である。手持ち装置61は、ハンドル63と連結した装置ハウジング62を備える。操作者は、ハンドル63を握り、投影装置41を配置した正面64で、手持ち装置61を、操作者が設計案のオブジェクトを表示しようとしている部屋の境界壁面へ向ける。操作装置17の操作部34及び表示部35は、装置ハウジング62の上面65に設置されている。装置ハウジング62の内部に配置されているものは、操作装置17の制御装置36及び投影装置41を制御する操作装置17である。
【0048】
手持ち装置61又は表示装置18の現在の位置は、装置ハウジング62の上面65に取り付けられた目標物66を用いて定められる。手持ち装置61又は表示装置18の現在の向きは、装置ハウジング62の正面64に設置されているカメラ装置24を用いて定められる。
【0049】
図5Bは、保護用作業ヘルメット72に組み込んだ、若しくは保護用作業ヘルメット72に取り付けた、投影装置41、カメラ装置24及び目標物71を有する機器10の表示装置18を示す図である。投影装置41の保護用作業ヘルメット72への組み込みは、表示装置18の現在の表示領域25が、常に操作者が見ている場所へ展開されるという利点がある。操作者の視野に、設計案のオブジェクト及びオブジェクトデータが、明確に示される。
【0050】
保護用作業ヘルメットは、建設現場での労働安全設備として多くの工業国や、その他の危険地域で必要とされる安全帽である。既知の保護用作業ヘルメットには、聴覚保護、電池式照明、動力鋸作業用の顔面保護等の様々な付属部品を取り付けることが出来る。
【0051】
図5Cは、第3の実施例の機器10の表示装置18を、取付けアダプタ82を備えた装置81として示した図である。装置81は、調整装置84に接続された装置ハウジング83を備える。装置81は、調整装置84によって、回転軸に対して調整可能に設計される。操作者は、表示装置18の表示領域が、操作者に関連するオブジェクトを境界壁面に投影するように、部屋の中で表示装置18を指向させる。表示装置18は、操作者により手動で指向させるか、若しくは、遠隔操作により制御されても良い。装置81は、取付けアダプタ82により、例えば、三脚85や昇降台に取り付けられても良い。
【国際調査報告】