(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-523302(P2016-523302A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20160711BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20160711BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20160711BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20160711BHJP
A61K 31/337 20060101ALN20160711BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20160711BHJP
【FI】
C08G81/00
A61K47/34
A61K9/107
A61K9/19
A61K31/337
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-522250(P2016-522250)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月28日
(86)【国際出願番号】CN2014082293
(87)【国際公開番号】WO2015120693
(87)【国際公開日】20150820
(31)【優先権主張番号】201410050783.4
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410326099.4
(32)【優先日】2014年7月10日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516004570
【氏名又は名称】蘇州海特比奥生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】阮 君山
(72)【発明者】
【氏名】杜 鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】王 立勉
(72)【発明者】
【氏名】周 歓
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4J031
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA29
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC27
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4C076EE24M
4C076EE24N
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4C076EE49F
4C076EE49M
4C076EE49N
4C076FF15
4C076FF16
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4C086NA12
4C086NA13
4C086ZB26
4J031AA49
4J031AA53
4J031AB04
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE04
4J031AE08
4J031AE11
4J031AF03
(57)【要約】
D,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルとが開環重合して形成されたブロック共重合体であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は1:0.55〜0.65または1:0.73〜0.89または1:0.91〜0.99であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体。本発明は、さらに上記ブロック共重合体の調製方法が提案されている。このブロック共重合体をキャリアとして薬物ミセルを調製することにより、調製された薬物ミセルは、水で再溶解された後、封入率が90%よりも大きい時間は12時間以上に達することが可能であり、臨床での薬品応用の実状に合致しているため、臨床の要求を満たすものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
D,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルとが開環重合して形成されたブロック共重合体であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は1:0.55〜0.65または1:0.73〜0.89または1:0.91〜0.99であることを特徴とする、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体。
【請求項2】
配合量のD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルを秤量しておき、配合量のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを60〜130℃で反応器の中で2〜8h真空乾燥させ、窒素置換後、配合量のD,L−ラクチドを入れ、さらに金属触媒を投入した後、真空引きをし、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉しまたは窒素で保護した後、125〜150℃まで昇温させ、6〜20h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られることと、前記淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を加えて溶解させ、30〜50min撹拌した後、無水エーテルを入れて20〜40min撹拌し、0〜5℃で12〜24h静置した後、吸引濾過し、最後に真空乾燥させることにより、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られることとを備えることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体の調製方法。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は1000〜20000であることを特徴とする、請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記触媒はスタナスオクトエートであり、スタナスオクトエートの質量がD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの全質量の0.05wt%〜0.5wt%を占めることを特徴とする、請求項2に記載の調製方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を0.2〜1ml加えることを特徴とする、請求項2に記載の調製方法。
【請求項6】
1gあたりの無水エーテルの使用量は、1gあたりの黄色透明、粘稠な液体に無水エーテルを5〜10ml加えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子材料合成分野に属し、具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ技術に基づく薬物輸送手段は研究者から大きな注目を集めている。中でも、両親媒性ブロック共重合体が水溶液で自己集積化して形成されたナノミセルキャリアシステムはすでに新規の広い応用展望を持つ薬物キャリアとなっている。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーは生分解性材料であり、種々の薬物剤型に広く用いられ、人体内において最終的に炭酸ガスと水に分解し、所定分子量のポリエチレングリコールモノメチルエーテル−dl−ポリ乳酸ブロック共重合体がミセルを形成することができる。これらのミセルとある原料薬物とで薬物剤型に調製された後、徐放性、標的化、安全性、吸収しやすいこと、及び副作用が小さいこと等にメリットを有する。
【0003】
ナノポリマーミセルは近年来開発されてきた、難溶性薬物向けの薬物送達システムであり、コア・シェル状構造を有し、中でもコアは疎水性部分であり、シェルは親水性部分である。ポリマーミセルは難溶性薬物をコア部分に内包してそれを可溶化させることができる。一般的に用いられる可溶化剤と潜伏性溶剤に比べて、ポリマーミセル薬物送達システムは生分解性材料を材料として選択するので、その安全性が高い。このため、難溶性薬物の被包補助材料として、良好な応用展望を有する。
【0004】
現在、ポリエーテルとポリエステルのブロック共重合体を調製するには、主に二種類の合成方法がある。一つの方法は、まず、ポリエーテルを予め乾燥しておいた重合ビンに入れ、加熱、真空引きをする方法により、ポリエーテルに残存する水分を除去した後、ラクトンを入れ、ポリエーテルとラクトンとが溶融したまま、触媒を入れ、重合ビンを密閉して反応させる。当該方法のディメリットは、ラクトンと触媒を入れる過程で反応系が不可避的に外部と接し、空気中の水を極めて取り込みやすく、ラクトンは溶融状態において、極めて加水分解しやすいことである。別の方法は、ポリエーテルを高温で乳酸と直接重縮合させてブロック共重合体が得られるが、そのディメリットは、乳酸の重合活性が低く、最終に生成物に乳酸は多く残存するため、溶解・沈殿を複数回繰り返すことにより残存の乳酸モノマーを除去する必要があり、最終に共重合体の収率が低くなるばかりでなく、ロットごとの製品間の安定性が悪く、繰り返された沈殿過程で有害な重金属触媒を効果的に除去することができない。また、重縮合の温度が高く、反応時間が長いので、製品が酸化されて黄変しやすくなる。中国特許出願第2011100637853号には、十分に乾燥されたポリエーテルで真空条件にてラクトンを開環重合させブロック共重合体を調製し、真空度が<1mmHgとなるように求められ、重合プロセスは130℃以上に制御されて行われ、重合時間は1〜12hであることと、反応完了後、水を添加して生成物に残存する未反応のモノマーを反応させて除去し、重金属触媒を高速遠心の方法で除去することにより、分子量の均一性のよい共重合体材料にすることとを備える、医療用ポリエーテルポリエステルブロック共重合体を調製する方法が開示されている。このような共重合体薬物送達により、難溶性薬物の溶解度を効果的に向上し、薬物の安全性と有効性を改善したが、そのディメリットは水で分散させた後の安定性が悪く、短時間で薬物漏れが発生したことにより、臨床応用時に、その物理的安定性が高くないため、さらなる普及と確実な応用ができない。この問題を解決するために、中国特許出願第201010114289号には、ポリマーミセルにアミノ酸を添加する方法でミセル再溶解後の安定性を向上する技術が開示されているが、添加された物質の工業的生産に対する要求が高い上に、添加された安定剤により製剤工程の繁雑性が高くなるとともに、添加されたアミノ酸等は主薬に対して分解効果があるので、大規模な生産には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する技術問題を解決するために、本発明は、ミセルを形成した後水再溶解の安定性が良く、水分散後、封入率が90%よりも大きい時間は12時間以上に達することが可能である、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の解決しようとするもう一つの技術問題は、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体の調製方法及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術の目的を図るために、本発明は以下の技術方案を採用する。
【0008】
D,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルとが開環重合して形成されたブロック共重合体であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は1:0.55〜0.65または1:0.73〜0.89または1:0.91〜0.99であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドとの質量比は、合成されたブロック共重合体がミセルを形成した後で、水で再溶解した後の封入率に大きな影響をもたらすので、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチドの使用量を厳格に制御しなければならない。
【0009】
上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体の調製方法は、
配合量のD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルを秤量しておき、配合量のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを60〜130℃で反応器の中で2〜8h真空乾燥させ、窒素置換後、配合量のD,L−ラクチドを入れ、さらに金属触媒を投入した後、真空引きをし、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉しまたは窒素で保護した後、125〜150℃まで昇温させ、6〜20h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られることと、前記淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を加えて溶解させ、30〜50min撹拌した後、続いて無水エーテルを入れて20〜40min撹拌し、0〜5℃で12〜24h静置した後、吸引濾過し、最後に真空乾燥させることにより、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られることとを備える。
【0010】
中でも、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は1000〜20000である。好ましくは、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分子量は2000または5000である。
【0011】
前記触媒はスタナスオクトエートであり、スタナスオクトエートの量がD,L−ラクチドとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの全質量の0.05wt%〜0.5wt%を占める。
【0012】
好ましくは、前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、短鎖脂肪族アルコールと酢酸エチルの中のいずれか一種または複数種であり、有機溶媒の使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に有機溶媒を0.2〜1ml加える。
【0013】
好ましくは、無水エーテルの使用量は、1gあたりの淡黄色の透明、粘稠な液体に無水エーテルを5〜10ml加える。
【0014】
(作用効果)
本発明は適当な質量比のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとD,L−ラクチド調製されたブロック共重合体をキャリア材料として用い、それを薬物ポリマーミセル凍結乾燥製剤の調製に用いられ、調製された凍結乾燥製剤は水分散後、封入率が90%よりも大きい時間は12時間以上に達することが可能であり、普通の凍結乾燥製剤に比べて遥かに優れた効果があり、臨床での薬品応用の実状に合致しているため、臨床の要求を満たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のCDCl
3 1HNMRスペクトルである。
【
図2】ポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のGPCスペクトルである。
【
図3】ドセタキセルポリマーミセルの凍結乾燥製剤のCDCl
3 1HNMRスペクトルである。
【
図4】ドセタキセルポリマーミセルの凍結乾燥製剤のD
2O
1HNMRスペクトルである。
【
図5】ポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のCDCl
3 1HNMRスペクトルである。
【
図6】ポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体の赤外スペクトルである。
【
図8】ドセタキセルポリマーミセルの赤外スペクトルである。
【
図10】ポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のDSCスペクトルである。
【
図11】ドセタキセルポリマーミセルのDSCスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、試験例の形により、本発明の上記内容についてさらに詳しく説明するが、本発明の上記主旨の範囲が以下の実施例のみに限定されると理解すべきではなく、本発明の上記内容に基づき実現された技術はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【0017】
(実施例1)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)51.07gのD,L−ラクチドと0.57gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを入れ、触媒であるスタナスオクトエートを0.2g投入し、真空度が0.096Mpaになるまで真空引きをし、密閉して、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させ、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを加え、25mlのジクロロメタンを入れ、30min撹拌した。その後、510mlの無水エーテルを入れ、30min撹拌した。その後0℃で12h静置し、吸引濾過して真空乾燥させ、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約75%であった。得られたポリマーは核磁気共鳴とゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより同定を行ったところ、
図1と
図2の通りであった。
図1はポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体における種々な水素の同定であり、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が合成できたことが裏付けられた。
図2の検出結果は以下の通りであった:Mp:6330、Mn:5887、Mw:6374、Mz:6873、M
z+1:7393、Mv:6301、PDI:1.08272。
【0018】
(実施例2)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)48.77gのD,L−ラクチドと51.27gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で5h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入した後、触媒であるスタナスオクトエートを0.048g投入し、真空度が0.095Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、窒素で保護した後、140℃まで昇温させ、14h反応させ、反応完了後、淡黄色透明の液体が得られた。
(2)上記淡黄色透明液体に29mlのジクロロメタンを加えて溶解させ、撹拌溶解した。その後、586mlの無水エーテルを入れ、30min撹拌した。5℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させた。上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約85%であった。
【0019】
(実施例3)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)47.53gのD,L−ラクチドと52.17gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を130℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、触媒であるスタナスオクトエートを0.3g投入した後、D,L−ラクチドを投入し、真空度が0.093Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を130℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉した後、150℃まで昇温させ、6h反応させ、反応完了後、淡黄色透明の液体が得られた。
(2)工程(1)中の淡黄色透明の液体にジクロロメタンを45ml加え、撹拌溶解した。その後、無水エーテルを50ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させた。上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0020】
(実施例4)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)47.11gのD,L−ラクチドと52.85gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で4h真空乾燥させた後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.4g入れ、真空度が0.093Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、130℃まで昇温させ、18h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明粘稠液体にジクロロメタンを40ml加えて溶解させ、30min撹拌した。その後、無水エーテルを500ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0021】
(実施例5)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)45.91gのD,L−ラクチドと54.06gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を120℃で3h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.25g投入し、真空引きをし、反応温度を120℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、窒素置換を3回行い、反応器中が負圧であるように保証し、密閉して、140℃まで昇温させ、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを50ml加え、30min撹拌した。その後、無水エーテルを500ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約75%であった。
【0022】
(実施例6)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)44.45gのD,L−ラクチドと55.68gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を110℃で5h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.36g投入し、真空度が0.09Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を110℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、14h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを60ml加え、30min撹拌した。その後、無水エーテルを660ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0023】
(実施例7)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)39.51gのD,L−ラクチドと61.77gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で6h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.08g投入し、真空度が0.098Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを50ml加え、30min撹拌した。その後、無水エーテルを540ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約70%であった。
【0024】
(実施例8)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)42.17gのD,L−ラクチドと57.89gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で8h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.45g投入し、真空度が0.095Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、制御130℃まで昇温させ、10h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを75ml加えて溶解させ、30min撹拌した。その後、無水エーテルを720ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0025】
(実施例9)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)37.53gのD,L−ラクチドと62.71gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を110℃で6h真空乾燥させ、窒素置換後、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.1g投入し、真空度が0.085Mpaになるまで真空引きをし、反応温度を110℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、反応器中が負圧であることを保証するように、さらに真空引きをし、密閉して、140℃まで昇温させるように制御し、6h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体にジクロロメタンを40ml加えて、30min撹拌した。その後、無水エーテルを556ml加え、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約80%であった。
【0026】
(実施例10)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーの調製。
(1)35.54gのD,L−ラクチドと64.68gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000とを秤量しておき、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000を100℃で7h真空乾燥させ、窒素置換し、D,L−ラクチドを投入し、さらに触媒であるスタナスオクトエートを0.08g投入し、真空度が0.098Mpaになるまで真空引きをし、窒素置換し、反応温度を100℃に保持させ、D,L−ラクチドがすべて溶融した後、さらに真空引きをし、窒素で保護し、140℃まで昇温させるように制御し、12h反応させ、反応完了後、淡黄色の透明、粘稠な液体が得られた。
(2)工程(1)で得られた淡黄色の透明、粘稠な液体に35mlのジクロロメタンを加えて溶解させ、30min撹拌した。その後、無水エーテルの体積と淡黄色の透明、粘稠な液体生成物の重量との比(即ちml/g)が5:1となるように無水エーテルを入れて析出を行い、30min撹拌した。0℃で12h静置した後、吸引濾過して真空乾燥させ、上記操作手順に従い、純化を3回行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が得られ、総収率は約85%であった。
【0027】
(実施例11)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の調製。
本発明で調製されたブロックポリマーをキャリアとして用い、薬物のナノポリマーミセルを調製し、工程は以下の通りであった。
(1)ドセタキセル20g、実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマー400g(mPEG
2000:PLA=1:0.99)、水4000ml、有機溶媒のアセトニトリル400mlを取っておいた。
(2)取っておいたドセタキセルに1000mlのアセトニトリルを加え、超音波溶解を行った。その後、400gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル−ポリ乳酸ブロックポリマーを入れ、続いて溶解させ、無菌濾過させた。その後50℃、80r/minの回転数で2h回転蒸発させ、アセトニトリルを留去してドセタキセルポリマーゲルフィルムが得られ、迅速に50℃の水を4000g入れてボルテックス水和を行い、完全に水和された後ミセル溶液の温度を迅速に5℃まで下げ、ミセル溶液が得られた後、無菌濾過し、分割充填し、凍結乾燥させた。
【0028】
(実施例12)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤の同定。
(1)
図3は実施例11で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤のCDCl
3 1HNMRスペクトルであり、
図4は実施例11で調製されたドセタキセルポリマーミセルの凍結乾燥製剤のD
2O
1HNMRスペクトルであり、
図5は実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸ブロック共重合体のCDCl
3 1HNMRスペクトルである。その結果から、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが明らかであり、ミセルの
1HNMRスペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
(2)僅かな量の実施例11で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤、ドセタキセルと実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸を取り、フーリエ変換赤外スペクトル走査を行った結果、
図6、
図7と
図8に示されるように、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが裏付けられ、ミセルの赤外スペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
(3)僅かな量の実施例11で調製されたドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤、ドセタキセルと実施例1で調製されたポリエチレングリコールモノメチルエーテルポリ乳酸を取り、DSC走査を行った結果、
図9、
図10と
図11に示されるように、ドセタキセルがミセルのコアに内包されることが裏付けられ、ミセルのDSCスペクトルにおいて、ドセタキセルの特徴的吸収ピークが見られなかった。
【0029】
(実施例13)
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤再溶解後の異なる時間における封入率の検出結果。
中国特許出願第201110105540.2号に開示されている実施例1中の処方17(ポリエチレングリコールとポリ乳酸との質量比は1:1.2、薬物送達量は6%)に従いコントロール薬を調製した。本発明の実施例11に従いドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤を調製し、実験群とし、実験群は並列実験を三つ行い、実施例11−1、実施例11−2と実施例11−3と記された。コントロール群と実験群の製剤をそれぞれ取り、生理食塩水を入れて濃度が1mg/mlとなるまで(ドセタキセルで)溶解させ、室温(25±2℃)で放置し、異なる時間でその封入率を検出した。結果は表1に示される。
【0030】
高速遠心法(10000r/min、10min)によるミセルの封入率について、封入率=(1−遊離薬物/総薬物)×100%であった。HPLCによりドセタキセルポリマーミセルの封入率を測定する際に用いられるクロマトグラフ条件は、ODSを充填剤とし、0.043mol/L醋酸アンモニウム水溶液−アセトニトリル(45:55)を移動相とし、検出波長は230nmであった。理論段数はドセタキセルピークで計算すると、2000よりも低くないものであるべきである。
【0031】
ドセタキセルのナノポリマーミセルの凍結乾燥製剤再溶解後の異なる時間における封入率の検出結果
【表1】
【0032】
表1に示されるように、実験群薬物は24hの場合、その封入率がまだ90%を超えており、コントロール群薬物は0.5hの場合、バースト放出を発生した。
【国際調査報告】