特表2016-523306(P2016-523306A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-523306(P2016-523306A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】ナノ粒子に基づいたインク調合物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/03 20140101AFI20160711BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20160711BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20160711BHJP
【FI】
   C09D11/03
   C09D11/52
   H01B1/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-522510(P2016-522510)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月19日
(86)【国際出願番号】EP2014063592
(87)【国際公開番号】WO2015000796
(87)【国際公開日】20150108
(31)【優先権主張番号】1301570
(32)【優先日】2013年7月3日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515357185
【氏名又は名称】ジーンズインク エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ピエトリ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】エル カセミ ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン ルイ ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルシーニ コリン
(72)【発明者】
【氏名】ディダン ヤヒア
【テーマコード(参考)】
4J039
5G301
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AE04
4J039BA13
4J039BC07
4J039BC35
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE29
4J039CA05
4J039EA24
4J039EA28
5G301DA23
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
ナノ粒子に基づいたインク組成物。
本発明は、(半)導電性ナノ粒子に基づいたインク調合物に関する。特に、本発明は、さまざまな印刷方法に適した(半)導電性ナノ粒子に基づいたインク組成物に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ナノ粒子から成る化合物aと、
b.脂肪族一価アルコールまたはそれらの混合物から選択されるアルコール溶媒から成る化合物bと、
c.化合物bとは異なり、不飽和一価アルコールまたはそれらの混合物から選択されるアルコール共溶媒から成る化合物cと、
d.分散剤から成る化合物dと、
e.増粘剤または安定剤から成る任意の化合物eと、
を含むインク組成物。
【請求項2】
粘度が1〜500ミリパスカル秒であることを特徴とする、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
粘度が1〜50ミリパスカル秒、例えば8〜40ミリパスカル秒であることを特徴とする、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子が導電性および/または半導電性であり、金属酸化物から成り、好ましくは酸化亜鉛ナノ粒子から成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が化学合成によって合成される酸化亜鉛ナノ粒子であることを特徴とする、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
化合物aが5〜15重量%、好ましくは7〜14重量%、例えば8〜12重量%の酢酸リガンドを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
化合物bが、10個未満の炭素原子を有する第一級パラフィン脂肪族一価アルコール、好ましくはエタノール、イソプロパノール、および/またはブタノール、好ましくはn−ブタノールから選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
化合物cが、テルペン系アルコール、好ましくはテルピネオール、好ましくはα−テルピネオールから選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
化合物dが、アルコール−アミン族および多価アルコール族、好ましくはジメタノールアミン、ジエタノールアミン、および/またはエタノールアミン、および/またはそれらの混合物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、および/またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
化合物eが存在し、化合物eがアルキルセルロース、好ましくはエチルセルロース、変性尿素、好ましくはポリ尿素、および/またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
含有量が0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜8重量%、例えば0.5〜2重量%である化合物aと、
含有量が9〜99重量%、好ましくは9〜50重量%である化合物bと、
含有量が0.5〜90重量%、好ましくは50〜90重量%である化合物cと、
含有量が5重量%未満、好ましくは0.05〜2重量%である化合物dと、
含有量が4重量%未満、好ましくは0.5〜2重量%である任意の化合物eと、
を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項12】
含有量が15重量%未満、好ましくは0.5〜8重量%、例えば0.5〜2重量%である化合物aと、
含有量が9〜50重量%である化合物bと、
含有量が5重量%超、好ましくは15重量%超、好ましくは50〜90重量%である化合物cと、
含有量が5重量%未満、好ましくは0.05〜2重量%である化合物dと、
含有量が4重量%未満、好ましくは0.5〜2重量%である任意の化合物eと、
を含む、請求項10に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(半)導電性ナノ粒子に基づいたインク調合物に関する。特に、本発明は、さまざまな印刷方法に適した(半)導電性ナノ粒子に基づいたインク組成物に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、多くの印刷方法に適した(半)導電性ナノ粒子に基づいたインク分野に関する。非限定的な例として、次の印刷方法が挙げられる:インクジェット、スプレー、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、ドクターブレード、スピンコーティング、およびスロットダイコーティング。
【背景技術】
【0003】
本発明による(半)導電性ナノ粒子に基づいたインクは、全てのタイプの支持物上に印刷することができる。例えば、次の支持物が挙げられる:ポリマーおよびポリマー誘導体、複合材料、有機材料、無機材料。特に、印刷電子の分野で使用される支持物であり、例えば、PET、PEN、ポリイミド、ガラス、PET/ITO、ガラス/ITO、ポリカーボネート、PVC、および光電子デバイスで使用される全てのタイプの活性層である。
【0004】
本発明による(半)導電性ナノ粒子に基づいたインクは、多くの有利な点があり、その中で以下の非限定的な例を挙げる:
− 流通しているインクと比較して長期間安定性があり、例えば、周囲温度での保管時の安定性は6か月超である;
− 応用分野に関して多様性がある。好ましい例として、光電子工学、光起電力、およびセキュリティを挙げる;
− 溶媒およびナノ粒子の無毒性;
− ナノ粒子の本質的特性の維持、特に
− 電子特性の維持:
付着させた本発明による酸化亜鉛系インクは、仕事関数またはWFによって特徴づけられる。この仕事関数は、電子がフェルミ準位から真空準位に移動するのに必要なエネルギーである。
本発明によって得られた仕事関数は安定し、温度によっても、インクをどの支持物に付着させるかにも関係なく、一定している。平均測定値は、好ましくは、約3.9+/−0.5eVであり、これは、他の使用の中で、光電子装置および光起電装置の電子注入層使用に適合する値である。有機光電池における電子注入層としての使用は、CVDによって蒸着されたLiFの使用と比較して、実質的に収率の向上が可能となる。
− 蛍光特性の維持。
【0005】
本発明はまた、これらのインクの改良された調製方法に関し、最終的には、いわゆる「セキュリティ」分野、光起電力、センサ(例えばガスセンサ)、タッチパネル、バイオセンサ、および非接触型技術の分野でのこれらのインクの使用にも関する。
【0006】
最近の文献を見ると、半導電性コロイドナノ結晶が、今までにないそれらの光電子工学特性、光起電力特性、および触媒特性のために非常に注目を集めている。このために、半導電性コロイドナノ結晶は、ナノエレクトロニクス、太陽電池、センサの分野および生物医学分野での今後の応用に特に有利である。
【0007】
半導電性ナノ粒子の開発は、新たな実施形態の使用を可能にし、多くの新しい応用が予測できる。ナノ粒子は非常に高い表面積対体積比を有し、ナノ粒子の表面積を界面活性剤に置換することは、特定の特性、特に光学特性、およびナノ粒子を分散させる可能性を変えることにつながる。
【0008】
ナノ粒子の小さい寸法は、いくつかの例において、量子閉じ込め効果を生む。ナノ粒子は所定の形を有さない場合、玉(1〜100nm)、小さい棒(長さ<200〜300nm)、糸(数百ナノメートルまたは数ミクロン)、ディスク、星形、角錘、四足類、または結晶であってもよい。
【0009】
半導電性ナノ粒子を合成するために、いくつかのプロセスが開発された。それらの中で包括的でないリストで以下が挙げられる。
− 物理的なプロセス:
基質がその表面上で反応または分解する揮発された化学前駆体にさらされるときの化学蒸着(「CVD」という名称でも知られる)。このプロセスは、一般に、形態が、使用される条件に依存するナノ粒子の形成をもたらす;
熱蒸発;
ナノ粒子を形成する原子が、気体流の形で、高速で(それらが付着する)基質に衝突させられるときの分子線エピタキシー;
− 物理化学的プロセス
マイクロエマルション;
前駆体を含む溶液がレーザービームで照射されるときの溶液中のレーザーパルス。ナノ粒子が光線に沿って溶液中に形成される;
マイクロ波の照射による合成;
界面活性剤による指向性合成;
超音波下の合成;
電気化学合成;
有機金属合成;
アルコール媒体における合成
【0010】
これらの物理的合成は、一般に、高温を必要とし、産業規模の製造に転換するには適していない。さらに、これは、特定の基質、例えば可撓性基質に適していない。
【0011】
化学合成に関して、それらはナノ粒子の製造に大きな利点がある。半導電性ナノ粒子は溶媒中で分散され、ほとんどの場合、基質に付着しない。最終的に、それらは、ナノ粒子の形の調節を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、安定した汎用性のある改良されたインクを提供することによって、1つ以上の従来技術の欠点を解消し、ナノ粒子の本質的特性、特に蛍光特性および電子特性の維持を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、この目的は、インクの組成が少なくとも以下を含むことによって達成される:
a.ナノ粒子から成る化合物a、
b.アルコール溶媒から成る化合物b、
c.化合物bとは異なるアルコール共溶媒から成る化合物c、
d.分散剤から成る化合物d、および
e.増粘剤または安定剤から成る任意の化合物e。
【0014】
本発明によるインクの粘度は、好ましくは、1〜500ミリパスカル秒、本発明によるインクの粘度は、好ましくは、1〜50ミリパスカル秒、例えば8〜40ミリパスカル秒であり、これらの最後の2つの粘度の範囲は、化合物eが含まれないときに好ましい。この粘度は以下の方法を用いて有利に測定することができる。
装置:TA Instrument製のRheometer(レオメータ)AR−G2
調整時間:1分
検査タイプ:連続勾配
勾配:せん断率(1/s)
0.001〜40(1/s)
時間:10分
モード:線形
測定:10秒間隔
温度:20℃
曲線再処理法:ニュートン法
再処理領域:曲線全体
【0015】
上記のように本発明による化合物aは、ナノ粒子から成る。本発明の一実施形態の変形例によれば、化合物aが金属酸化物ナノ粒子、より詳細には酸化亜鉛ナノ粒子から成るとき、本発明の目的は特に満足に達成される。
【0016】
本発明の一実施形態の変形例によれば、ナノ粒子は1〜50nmの大きさ、好ましくは2〜20nmの大きさを有する。本発明の一実施形態の変形例によれば、ナノ粒子は回転楕円形および/または球形である。本発明および後述の請求項に関して、「回転楕円形」の語は球体の形に類似しているが、完全に円形(「準球形」)ではなく、例えば楕円形である。ナノ粒子の形は一般に、顕微鏡を用いて撮られた写真によって特定される。従って、本発明のこの実施形態の変形例によれば、ナノ粒子は1〜50nmの粒径、好ましくは2〜20nmの粒径を有する。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、金属酸化物ナノ粒子は、化学合成によって事前に合成されている。好ましくは本発明に即して、任意の化学合成が用いられてもよい。例えば、前駆体として酢酸亜鉛[Zn(CH3COO)2]を用いる化学合成が挙げられる。一般に前駆体はメタノールに溶解され、この溶液を加熱した後、水酸化カリウム(KOH)および/または水酸化ナトリウム(NaOH)の溶液をそれに加え、それによって所望のナノ粒子が得られる。一般に、その後、ナノ粒子は、ナノ粒子に化学的または物理的に結合していないものを除去できる洗浄を受ける。
【0018】
しかしながら、出願人は、酢酸亜鉛前駆体から合成されたナノ粒子を含むインク組成物が向上した特性を有することを不意に発見した。出願人はこの説明に限定されることを望まないが、出願人は、この向上が前駆体由来でナノ粒子に結合され続けている酢酸リガンドの存在から起こっていると考えた。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による化学合成によって合成されたナノ粒子は5〜15重量%の酢酸リガンド、好ましくは7〜14重量%、例えば8〜12重量%の酢酸リガンドを含む。ナノ粒子中のこのリガンドの含有量は、以下の方法に従って有利に測定することができる:
熱重量分析
装置:TA Instrument製のTGA Q50
坩堝:アルミナ
方法:勾配
測定範囲:周囲温度〜600℃
温度上昇:10℃/分
【0020】
本発明によるナノ粒子の合成の特定の実施例は、下記に実例として記載されている:容器中で、水酸化カリウムとメタノールとの混合物を、微細分散が得られるまで、磁気撹拌しながら調製する。別の容器中で、磁気撹拌しながら、周囲温度で、酢酸亜鉛をメタノールと水との混合物中で溶解する。次に、水酸化カリウム溶液を、不活性雰囲気中で、60℃で磁気撹拌しながら、酢酸亜鉛溶液に滴下し、(デカントおよび洗浄後)酸化亜鉛ナノ粒子が得られる。この合成によって、よくコントロールされた粒度分布を有する酸化亜鉛ナノ球体を得ることが可能になる。このようにして、合成工程の時間によって2〜10nmの範囲の粒径を有する球形ナノ粒子が得られる。
【0021】
上記のように本発明による化合物bは、アルコール溶媒から成る。アルコールは、好ましくは、脂肪族一価アルコールまたはそれらの混合物から選択され、好ましくは10個未満の炭素原子を有する第一級パラフィン脂肪族一価アルコールから選択される。例として、エタノール、イソプロパノール、および/またはブタノール、好ましくはn−ブタノールが挙げられる。
【0022】
上記のように本発明による化合物cは、化合物bとは異なるアルコール溶媒から成る。
【0023】
アルコールは、好ましくは、不飽和一価アルコールまたはそれらの混合物から選択される。例として、テルペン系アルコール、好ましくはテルピネオール、好ましくはα−テルピネオールが挙げられる。
【0024】
上記のように本発明による化合物dは、分散剤から成る。上述の化合物bおよびcの溶媒としての機能とは異なる、分散剤としての機能以外にも、化合物dは、その組成物で使用される化合物bおよびcと異なる。この分散剤は、アルコール−アミン族および多価アルコール族、またはそれらの混合物から有利に選択することができる。アルコールアミンの例として、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、および/またはエタノールアミン、およびそれらの混合物、好ましくはエタノールアミンが挙げられる。また多価アルコールの例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、および/またはそれらの混合物、好ましくはエチレングリコールが挙げられる。
【0025】
上記のように本発明による化合物eは、増粘剤または安定剤から成る。化合物dの分散剤機能および上述の化合物bおよびcの溶媒機能とは異なる、増粘剤または安定剤としての機能以外にも、化合物eは、その組成物で使用される化合物b、c、およびdとは異なる。例として、アルキルセルロース、好ましくはエチルセルロースおよび変性尿素、好ましくはポリ尿素、および/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、インクは、
含有量が0.1〜15重量%、好ましくは15重量%未満、好ましくは0.5〜8重量%、例えば0.5〜2重量%である化合物aと、
含有量が9〜99重量%、好ましくは9〜50重量%である化合物bと、
含有量が0.5〜90重量%、好ましくは5重量%超、好ましくは15重量%超、好ましくは50〜90重量%である化合物cと、
含有量が5重量%未満、好ましくは0.05〜2重量%である化合物dと、
含有量が4重量%未満、好ましくは0.5〜2重量%である任意の化合物eと、
を含む。
【0027】
本発明による一実施形態によれば、インクはまた、その組成において、他の化合物を含むことができ、その中で、例として、溶媒(例えば水、アルコール)、および/または界面活性剤、および/またはポリマーを挙げる。
【0028】
しかしながら、(上記の割合の範囲の)化合物a、b、c、およびd、ならびにeは、好ましくは、最終インクの少なくとも50重量%、好ましくは最終インクの少なくとも75重量%、例えば少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、またはさらに100重量%を構成する。
【0029】
本発明はまた、本発明によるインク調合物を調製する方法に関し、この方法は以下の工程を含む:
a)ナノ粒子(化合物a)と溶媒(化合物b)をかき混ぜながら混合する、
b)前の工程からのその混合物に、分散剤(化合物d)および化合物cを加え、かき混ぜる、
c)任意で、工程b)で得られた混合物と化合物eを混合し(この混合は、場合によっては、化合物eを工程bで得られた混合物に加えることによって行われるか、または工程bで得られた混合物を化合物eに加えることによって行われる)、かき混ぜる、
d)インクを得る。
【0030】
任意の化合物eが含まれる場合の本発明によるインク調合物を調製するこの方法の代替方法があり、好ましくは以下の工程を含む:
a)ナノ粒子(化合物a)と溶媒(化合物b)をかき混ぜながら混合する、
b)前の工程からのその混合物に、分散剤(化合物d)を加え、かき混ぜる、
c)化合物cと化合物eを混合する、
d)工程b)で得られた混合物と工程c)で得られた混合物を混合し(この混合は、場合によっては、工程c)で得られた混合物を工程bにおける混合物に加えることによって行われるか、または工程bで得られた混合物を工程cで得られた混合物に加えることによって行われる)、かき混ぜる、
e)インクを得る。
【0031】
このようにして得られたインクは、直接使用することができ、または所望の特性を得るために希釈することができる。
【0032】
本発明によるインクのさらなる利点は、その調製が、限定的でない圧力および/または温度条件で、例えば、通常または周囲条件に近いか、同じ圧力および/または温度条件で行えることである。通常または周囲圧力および/または温度条件の値の少なくとも40%の値に忠実であることが好ましい。例えば、出願人は、インクの調製の間、圧力および/または温度条件を、通常または周囲条件の値の前後で、多くて30%、好ましくは15%異なる値に維持することが好ましいことを観察した。これらの条件を満たすように、インクを調製する装置に、これらの圧力および/または温度条件の制御装置を有利に含むことができる。
【0033】
非限定的条件下でのインクの調製に関連するこの利点は、このインクの使用の促進に反映されていることもかなり明らかである。本発明の好ましい実施形態によれば、このインクは任意の印刷方法、特に次の印刷方法で有利に使用することができる:インクジェット、スプレー、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、ドクターブレード、スピンコーティング、およびスロットダイコーティング。
【0034】
上述のように本発明はまた、いわゆる「セキュリティ」分野、光起電力、センサ(例えばガスセンサ)、タッチパネル、バイオセンサ、および非接触型技術でのこのインクの使用にも関する。
【0035】
従って、請求された本発明の応用の分野と異ならなければ、多くの他の特定の形態の実施形態が可能であることが、当業者には明らかである。その結果、本実施形態が例示として見なされなければならず、これらの実施形態は、添付の請求項の範囲で規定された範囲内であれば、変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】粒度分布のグラフを示す。
図2】粒度分布のグラフを示す。
図3】蛍光特性測定の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
下記の表は本発明による2つのインクの組成を示している。化合物a、b、c、およびdの種類が表に示され、各組成の化合物の重量による濃度を示している。2つの組成で使用される酸化亜鉛ナノ粒子は同じもので、上記の特定の合成例を用いて得られた。この酸化亜鉛ナノ粒子は球状形態および残留酢酸リガンドの含有量が9.5重量%であることで特徴付けられる。本発明および下記の請求項に関して、化合物aの重量%は、ナノ粒子およびそれらのリガンドの重量に基づいて算出される。
【0038】
表の最後の行に、インクの粘度特性の値を示している。これらの値は、本明細書の上述の方法に従って測定したものである。
【0039】
粒度分布の研究もまた、インク組成物(ZnO5F24およびZnO5F33)のこれらの2つの組成に関して実施した。
【0040】
対応する曲線が図1および2に示されている。
【0041】
これらの測定は、以下の特性によるMalvern製のNanosizer S装置を用いて実施した:
− 流体力学直径:約10nm
− 測定方法:DLS
− キュベットタイプ:光学ガラス
− 材料:ZnO
― 温度:20℃
− 粘度:ZnO5F24インクは28cP、ZnO5F33インクは10.5cP(初期設定で、粘度は測定された実際の粘度に応じて調整されている)
− 屈折率:ZnO5F24インクは1.464、ZnO5F33インクは1.434。
【0042】
これらのインクのそれぞれのD50値は、ZnO5F24インクは5nmで、ZnO5F33インクは9nmである。本発明の実施形態の変形例によれば、これらのインクは20nm未満のD50を有し、および/または好ましくは3nm超のD50を有する。
【0043】
【表1】
【0044】
最後に、蛍光特性測定の比較を、酸化亜鉛ナノ粒子および表の第1のインク調合物(ZNO5F24)に対応するインク組成物に関してそれぞれ測定した。この測定は、下記の条件下で、Clarian製Cary Eclipse分光光度計を用いて実施した。
− 蛍光法
− 装置:Clarian製Cary Eclipse
− モード:発光
− 励起波長:330nm
− 開始:380nm
− 終了:880nm
− 励起スリット:5
− 発光スリット:5
− フィルター:自動
【0045】
対応する測定値を下記の図3に示している。その中で、本発明によるインクの蛍光特性の維持が確認でき、それによって、いわゆる「セキュリティ」分野で特に有利となっている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】