(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-523645(P2016-523645A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(54)【発明の名称】美容乳房充填用または顔面充填および/または若返り用の生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を用いる脂肪充填
(51)【国際特許分類】
A61L 27/00 20060101AFI20160715BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20160715BHJP
【FI】
A61L27/00 V
A61L27/00 Z
A61K35/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-522505(P2016-522505)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年1月6日
(86)【国際出願番号】EP2014063581
(87)【国際公開番号】WO2014207135
(87)【国際公開日】20141231
(31)【優先権主張番号】61/839,578
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516003562
【氏名又は名称】ステムフォーム・アンパルトセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】STEMFORM ApS
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】スティー−フレゼリク・トロヤーン・ケル
【テーマコード(参考)】
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AB37
4C081AB38
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA01
4C081DC12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA66
4C087MA67
(57)【要約】
本発明は、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)または採取された脂肪組織と5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mL、たとえば、1.0x10
5-2.0x10
7 ASC/脂肪mLの比率で混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)を含む組成物、ならびに美容乳房充填および/または増大用材、または顔面充填/若返り用材としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)または採取された脂肪組織と5.0x104-2.0x108 ASC/脂肪mLの比率で混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)を含む組成物。
【請求項2】
乳房充填剤としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片の使用。
【請求項3】
顔面充填剤としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
【請求項4】
美容乳房充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
【請求項5】
美容顔面充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
【請求項6】
脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片が、5.0x104-2.0x108 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合され、ならびに、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該脂肪が、可変方向および平面で、乳輪の縁の周囲のいくつかの位置から、および乳房下部のヒダにおけるいくつかの位置において、長い針を挿入することによって、該長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入される、美容乳房充填法。
【請求項7】
増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x104-2.0x108 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、脂肪移植片が、標的領域の外側の構造を損傷するのを回避するために、長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入され、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該針が、可変方向および平面で、いくつかの位置から挿入される、美容顔面充填法。
【請求項8】
増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x104-2.0x108 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、溶解されたASCが薄い鋭い針によって真皮および皮下に注入され、標的領域において均質に分散され、切開および注入部位が縫合され、ドナー部位、およびいくつかの場合、レシピエント部位にも術後圧迫帯が適用される、美容顔面充填法。
【請求項9】
作用剤を皮膚に導入する美容方法であって、該作用剤が、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を含む方法。
【請求項10】
作用剤を皮膚に導入する美容方法であって、該作用剤が、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または5.0x104-2.0x108 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片を用いる軟組織充填に関する。これらは、美容乳房充填/増大用または顔面充填および/または若返り用に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の記載
整形手術において、体積欠陥の補正および既存体積の増大が頻繁に挑戦されている。体積欠陥を補正する場合、または既存組織を増大する場合、充填材料、いわゆる充填材または移植片を使用することが必要である場合が多い。自己脂肪移植(脂肪充填術)は、軟組織の修理および増大(たとえば、美容乳房増大)を可能にし、美容整形手術および再建手術の両方においてますます使用されている。自己脂肪組織は、生体適合性で、多用途であり、外観に自然であり、非免疫原性であり、安価で、ドナー部位の罹患率が低い状態で容易に入手可能であるので、軟組織の増大のための理想的な充填材であるとみなされている
1,2。しかしながら、移植された脂肪移植片は、予測不可能で、低いことが多い残存率を有し、これが、研究者が、その生存能力を増加させる新しい方法を模索してきた理由である。脂肪組織由来間葉幹細胞(ASC)富化異種脂肪移植を研究する1つの動物実験は、該技術が有効で再現性があり、ASCに富んでいないものと比較して、移植片の残存体積の増加をもたらすことを示している
3。近年のヒト実験は、残存体積の増加および移植された組織のより良い質のために脂肪移植片にASCを加えることの利点および顕著な効果を実証し、確認している
4。
【0003】
化粧品工業において、美容顔面充填/若返りのために入手可能な溶液は、主として人工的である(たとえば、ボツリヌス毒素A、ヒアルロン酸、コラーゲン、カルシウムヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレートマイクロスフェア)。したがって、汎用性と生体適合性が低いことにより、結果として不自然な外見に終わることが多い。人工充填材は、様々な病気の症状から美容欠陥にわたる有害な物理的な副作用の可能性があり、経時分解する。上述したように、自己脂肪組織は、理想的な充填溶液であるとみなされる。しかしながら、顔面充填/若返りのために自己脂肪で処置される(すなわち、幹細胞富化なしで)患者の結果は、移植片の予測不可能な生存率により、不均衡な結果に終わる可能性がある。
【0004】
何人かの外科医は、いわゆる間質血管画分(SVF)を移植片に加えることによって達成されうる、より良く、より予測可能な移植片獲得を提案する
5,6。SVFは、脂肪吸引によって組織が採取されるときに形成する細胞ペレットであり、脂肪細胞は、コラゲナーゼを用いて酵素的に切断される。SVFは、少量の脂肪組織由来幹細胞(ASC)を含むことが知られている。
【0005】
以下の用語を区別することが重要である:
1)従来の脂肪充填術:脂肪のみ
2)脂肪幹細胞加脂肪移植術(Cell-assisted lipotransfer):脂肪+SVF
3)幹細胞富化脂肪充填術:脂肪+生体外増殖ASC
4)幹細胞充填術:生体外増殖ASC
本願において、我々は、上記用語3)および4)のみに言及する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本特許出願における幹細胞の定義は、以下の通りである:
間質血管画分を播種し、培養するときに培養物表面に付着する細胞。
【0007】
自己細胞または同種異系細胞は、乳房適用および顔面適用の両方に対して用いることができる。
本発明は、美容顔面充填および若返りならびに美容乳房充填/増大に、特に適している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の詳細な記載
本発明は、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)または採取された脂肪組織と5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mL、たとえば、1.0x10
5-2.0x10
7 ASC/脂肪mLの比率で混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)を含む組成物、ならびに美容乳房充填および/または増大用材、または顔面充填/若返り用材としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ASCを採取するための外科手術
患者は、外来患者の小規模脂肪吸引を受ける。
脂肪吸引物は、標準的滅菌脂肪吸引技術によって採取される。切開によって、湿潤性溶液を皮下脂肪に浸透させる。標準的脂肪吸引デバイス(たとえば、Vibrasat(登録商標))を用いて脂肪吸引物を獲得し、滅菌容器に封入する。脂肪吸引物を臨床幹細胞研究室に移す。
【0010】
ASCの単離および培養
細胞医療施設において、適正製造基準(GMP)および臨床幹細胞増殖のために承認された研究室内で、承認されたプロトコルにしたがって、ASC単離およびエクスビボ増殖を行う。
脂肪吸引物をリン酸緩衝生理食塩水で(PBS)洗浄し、遠心分離する。間質血管画分(SVF)を単離し、上清をインキュベートし、コラゲナーゼ(GMPグレード)で酵素的に切断する。成長培地を用いて酵素活性を中和する。60-100 μmフィルターを用いて懸濁液をろ過し、遠心分離する。細胞ペレットを培養培地に再懸濁し、SVFを含むペレット中の細胞を計数する。SVF単離の別法では、GID SVF-1(商標)システムなどのクローズドシステムを用いる。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)またはアルファ最小必須培地(α-MEM)、1-5%ペニシリン-ストレプトマイシン、1-5 IU/mLの防腐剤無添加ヘパリンおよび2-20%プールヒト血小板溶解物(pHPL)またはその他の代替成長培地、たとえば、ウシ胎仔血清からなる培養培地にSVFを播種する。初代培養物(P0)をインキュベートする。非付着細胞を捨て、細胞培養物フラスコをPBSで注意深くすすぎ、培地を取り替える。培地を3-7日ごとに変える。培養中およびASC採取の日に、病原体汚染について、すべての培養フラスコ/スタックを試験する。
【0011】
pHPL生成
Schallmoserら
7による記載に一部変更を加えて、pHPLを製造することができる。要約すると、インフォームド・コンセント後、健康な血液ドナーから全血ユニットを集める。既存の法律を遵守して、感染性疾患マーカーについて、すべての血液提供物を試験する。赤血球細胞および血漿から軟膜を分離する。4つの軟膜ユニットを1ユニットの血漿とともに、多血小板血漿内にプールし、-20℃〜-80℃にて保管する。最小10ユニットのPRPを水浴で融解し、次いで、単一のRPRバッチ内にプールする。プールPRPバッチを、より小さい画分に分注し、-20℃〜-80℃にて凍結させる。次に、単一のプールPRPバッチからのすべての分注した袋を水浴で融解し、遠心分離して(たとえば、4000 gにて15分間)、血小板画分を沈降させる。最後に、pHPL含有上清を、新しい袋に移し、細胞培養培地の調製において後で使用するために-40℃〜-80℃にて保管する。
【0012】
ASC採取手順
P0-P4において、ASCを採取する。すべての細胞培養フラスコ/スタックをPBSで洗浄し、化学的(たとえば、Tryple Select)または物理的処理のいずれかを用いて細胞をプラスチックの表面から取り外す。ASCを含有する懸濁液を遠心分離して(たとえば、300 gにて5分間)、上清を除去し、PBSに再懸濁させた後に細胞ペレットを集める。ASC細胞ペレットをPBSで洗浄し、ASCを遠心分離し、それぞれ洗浄手順を行った後に上清を捨てる。細胞を3回計数し、平均数を算出する。1)病原体汚染の不在、2)90 %以上のASCの生存能力、3)ASCについて特徴的であると評価される形態学など、ASCを注意深くコントロールした後、臨床用途に放出する。ASCを承認された滅菌容器に移す。
【0013】
脂肪吸引、移植片調製および脂肪充填手順
局所または全身麻酔下で外科手術を行う。標準的滅菌脂肪吸引技術によって、脂肪吸引物を採取する。切開によって、太短い侵入器(blunt infiltrator)を用いて湿潤性溶液(たとえば、クライン溶液(Kleins solution))をドナー部位に浸透させる。採取カニューレは、直径2-5 mmで太短いチップを持ち、採取デバイス(たとえば、Vibrasat(登録商標))に接続される。必要ならば、生理食塩水を用いて脂肪吸引物を洗浄する。採取された脂肪吸引物は、放置して沈降させるか、または回転もしくは遠心分離に付す(たとえば、100 gにて5分間)。分離手順の後、油状層(上部)を傾デカントし、水性層(下部)もシリンジから排出させる。主として脂肪移植片からなる中層を、移植に用いる。
【0014】
本発明の適用:
美容乳房充填:採取された脂肪組織を、採取された生体外増殖ASCと、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率、好ましくは1.0x10
5-2.0x10
7 ASC/脂肪mLの比率で混合し、美容増大のためにアリコートとして乳房に注入する。
【0015】
注入技術の例:
乳房組織の外側の構造を損傷するのを回避するために、長い針を水平に(すなわち、身体と並行に)用いて、多脂肪移植片を乳房に注入する。乳輪の縁の周囲のいくつかの位置から、および可変方向および平面で、乳房下部のヒダにおけるいくつかの位置において、針を挿入し、自然な見かけの移植片の分布を達成する。
【0016】
顔面充填およびしわ取り用:採取された脂肪組織を、標準的充填のために、採取された生体外増殖ASCと、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率、好ましくは1.0x10
5-2.0x10
7 ASC/脂肪mLの比率で混合する。幹細胞の量は、必要とされる充填量に応じて増加され、必要な充填量が少ないほど、ASCの濃度はより高くなる。もし、所望の効果が純粋に組織品質の改善の問題であるならば、ASCが単独で用いられ、細胞を均等に分散させるためにPBSに溶解される。
【0017】
注入技術の例:
充填材として用いる場合標的領域の外側の構造を損傷するのを回避するために、長い針を水平に(すなわち、身体と並行に)用いて、多脂肪移植片をアリコートとして注入する。いくつかの位置から、および可変方向および平面で、針を挿入し、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成する。
純粋に組織品質の改善のために用いられる場合、薄い鋭い針によって、真皮および皮下に、溶解されたASCが注入され、標的領域において均質に分散される。切開および注入部位を縫合し、ドナー部位、およびいくつかの場合、レシピエント部位にも術後圧迫帯を適用する。
【0018】
本発明の臨床的利点および新規性
米国出願61/839,578の特許出願前に、多ASC(エクスビボ増殖)脂肪移植片またはASC単独が、乳房または顔における注入用にはこれまでに臨床的に使用されたことはなく、文献にも記載されたことはなく、本発明者が他人とこれらの臨床適用の発想を分かち合ったことはない。上述したように、本発明の臨床適用(すなわち、美容乳房充填および顔面充填)は、これまでに実証されていないが、脂肪移植片の生存および質を改善するための脂肪移植片を生体外増殖ASCで富化させるという発想は、マウスモデル
3およびヒトにおける概念研究の近年の論証に
4おいて実証されている。本発明(すなわち、顔面充填/若返りおよび美容乳房充填/増大ための生体外増殖ASCの適用)は、従来的ないわゆる「脂肪幹細胞加脂肪充填(cell assisted lipo-filling)」のための、非増殖ASCの小画分などの新たに単離されたSVFの使用とは有意に異なることが強調されるべきである。この方法は、従来の脂肪充填術よりも有意に良好ではないが、予測できない臨床的成果をもって、文献に記載され、ヒトに適用されている
8。顔面充填のために生体外増殖ASCを用いる理論的根拠は、幹細胞が、脂肪細胞とは対照的に、注入後に生存することが実証される上述の研究によってサポートされる。さらに、ASCは、低酸素症および物理的な曝露に対して非常に耐性がある
9-11。充填材として幹細胞単独を用いることによって、信頼できる残留体積/増大が達成されうる。
【0019】
生体適合性で、継続維持できる乳房および顔面充填材を作成することから、自然な外観、非免疫原性、人工素材による副作用の回避などの多くの臨床的利点が得られ、手順は自己移植的でありうる。ほとんどの患者は、腹部、大腿部、腕および臀部において、使用されうる天然脂肪を蓄えている。この方法において、患者は、好みに合わせた所望の身体を作り直すことができる。自己脂肪組織は、患者にとって不快感が非常に小さく、副作用のリスクも非常に小さい、単純な脂肪吸引およびそれに続く注入によって容易に移植することができる。
【実施例】
【0020】
研究結果−概念実証研究(たとえば、Kolle SF、Fischer-Nielsen A、Mathiasen AB、et al. Enrichment of autologous fat grafts with ex-vivo expanded adipose tissue-derived stem cells for graft survival:a randomised placebo-controlled trial. Lancet 2013;382:1113-20に記載の研究設計と類似):
研究の目的:
高用量の自己生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片を、非富化脂肪移植片(従来の脂肪移植)と比較する。
研究計画:
ASC富化または非富化の精製脂肪移植片を、各参加者用に調製する。脂肪移植片を皮下注入する。
濃度20x10
6 ASC/mLの富化脂肪移植片を選択する−生理的レベルの約2,000倍。
注入直後および121日後に、磁気共鳴画像法(MRI)によって注入された脂肪移植片の体積を測定し、基準MRIと比較する。
結果:
コントロール移植片と比較すると、ASC富化脂肪移植片の残留体積は、有意に大きい。重篤な副作用は観察されていない。
【0021】
態様:
上述にしたがって、本発明を、以下の態様によってさらに記載することができる。ここで、幹細胞は、特に断らない限り、自己および同種細胞の両方への言及として理解されるべきである。
1.乳房充填法における使用のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片。
2.顔面充填法における使用のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞。
3.生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)または採取された脂肪組織と5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)を含む組成物。
4.乳房充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片の使用。
5.顔面充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
6.乳房充填剤としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片の使用。
7.顔面充填剤としての生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
8.美容乳房充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
9.美容顔面充填のための生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
10.老化の徴候の治療用医薬の製造における体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用。
11.脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片が、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合され、ならびに、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該脂肪が、可変方向および平面で、乳輪の縁の周囲のいくつかの位置から、および乳房下部のヒダにおけるいくつかの位置において、長い針を挿入することによって、該長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入される、乳房充填法。
12.増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、脂肪移植片が、標的領域の外側の構造を損傷するのを回避するために、長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入され、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該針が、可変方向および平面で、いくつかの位置から挿入される、顔面充填法。
13.増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、溶解されたASCが薄い鋭い針によって真皮および皮下に注入され、標的領域において均質に分散され、切開および注入部位が縫合され、ドナー部位、およびいくつかの場合、レシピエント部位にも術後圧迫帯が適用される、顔面充填法。
14.脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片が、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合され、ならびに、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該脂肪が、可変方向および平面で、乳輪の縁の周囲のいくつかの位置から、および乳房下部のヒダにおけるいくつかの位置において、長い針を挿入することによって、該長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入される、美容乳房充填法。
15.増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、脂肪移植片が、標的領域の外側の構造を損傷するのを回避するために、長針で水平に(身体と並行に)、アリコートまたはストリングとして注入され、平らで自然な見かけの移植片の分布を達成するために、該針が、可変方向および平面で、いくつかの位置から挿入される、美容顔面充填法。
16.増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞(ASC)が、細胞を均等に分散させるために、5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合されるか、またはPBSに溶解され、ならびに、溶解されたASCが薄い鋭い針によって真皮および皮下に注入され、標的領域において均質に分散され、切開および注入部位が縫合され、ドナー部位、およびいくつかの場合、レシピエント部位にも術後圧迫帯が適用される、美容顔面充填法。
17.作用剤を皮膚に導入する美容方法であって、該作用剤が、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を含む方法。
18.作用剤を皮膚に導入する美容方法であって、該作用剤が、生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を含む方法。
19.生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または生体外増殖脂肪組織由来幹細胞の使用による皮膚への脂肪充填法。
20.生体外増殖脂肪組織由来幹細胞富化脂肪移植片または5.0x10
4-2.0x10
8 ASC/脂肪mLの比率で採取された脂肪組織と混合された生体外増殖脂肪組織由来幹細胞を含む組成物の使用による皮膚への脂肪充填法。
【0022】
参考文献
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2.Coleman SR. Structural fat grafts: the ideal filler? Clin Plast Surg 2001; 28: 111-9.
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【国際調査報告】