(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-524020(P2016-524020A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(54)【発明の名称】コーティング組成物における結合剤としての2−オクチルアクリレートポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
C09D 133/08 20060101AFI20160715BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20160715BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20160715BHJP
【FI】
C09D133/08
C09D201/00
C09D11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-522704(P2016-522704)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】FR2014051615
(87)【国際公開番号】WO2014207389
(87)【国際公開日】20141231
(31)【優先権主張番号】1356312
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リネマン,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ベートルミュー,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,ジャン−イブ
(72)【発明者】
【氏名】ブーン,アラン
【テーマコード(参考)】
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J038CC021
4J038CE021
4J038CF021
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4J038CG021
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4J039AD06
4J039AD08
4J039AD09
4J039AD10
4J039AD12
4J039AD13
(57)【要約】
本発明は、コーティング組成物におけるまたはその製造のための結合剤として、再生可能な原料の2−オクチルアクリレートおよび場合によって少なくとも他のモノマーの重合から生じるポリマーを使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物におけるまたはコーティング組成物の製造のための結合剤としての、再生可能な原料である2−オクチルアクリレートおよび場合により少なくとも1つの他のモノマーの重合から生ずるポリマーの使用であって、前記ポリマーは、Fox法によって算出して、−40℃から+40℃の間のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記他のモノマーが、スチレンなどの、芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリルなどの、エチレン性不飽和ニトリル;2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびイタコン酸エステルなどの、エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸エステル;酢酸ビニルなどの、モノカルボン酸とビニルアルコールもしくはアリルアルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸およびスチレンスルホン酸などの、エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸ならびにスルホン酸;アクリルアミドなどの、エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸アミド;N−ビニルピロリドンなどの、N−ビニルラクタム;N−ビニルアミド;N,N−ジアリルアミン;N、N−ジアリル−N−アルキルアミン;N−ビニルイミダゾール、ビニル−およびアリルピリジンなどの、アリルもしくはN−ビニル置換窒素含有複素環;およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記他のモノマーが、エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸エステル、特にメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、および芳香族ビニルモノマー、より具体的にはスチレン、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリマーが、Fox法によって算出して、−30℃から+30℃の範囲、より好ましくは−10℃と+10℃の間、さらに−10℃と0℃の間のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリマーが、コポリマーの総重量に対して、30重量%から75重量%、さらに好ましくは50重量%から70重量%の2−オクチルアクリレートを含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記コーティング組成物が、塗料、モルタル、コーティング、ワニスまたはインク組成物であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリマーが、組成物の総重量に対して、5重量%から50重量%、さらに好ましくは20重量%から40重量%の乾燥重量を表すことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング組成物におけるまたはコーティング組成物の製造のための結合剤としての、2−オクチルアクリレートおよび場合によって少なくとも1つの他のモノマーの重合から生じるポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に建築物の外観を装飾し、汚れ、特にほこりの堆積を防止するのみならず、雨水の侵入に対して建築物の外観を保護するために、表面にアクリル型の塗料を使用することは公知である。この目的を達成するために、コーティングはその表面に適切に接着しなければならず、亀裂の危険がなく容易に変形することができなければならず且つ粘着性を示さないことが必要である。
【0003】
上記性質の妥協を示す塗料組成物の例は、特許出願EP0599676に開示されている。この組成物には3つの異なるモノマー、特に(メタ)アクリル酸、n−ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、およびベンゾフェノン誘導体、ならびに場合によりスチレンである4番目のモノマーの混合物からなる、重合から生じるポリマーが含まれる。
【0004】
塗料組成物の他のタイプは、特許文献US2012/0121921に記載されている。その塗料組成物は、特に、n−ブチルアクリレートを含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、およびtert−ブチル(メタ)アクリレートのラジカル重合により得られる、ラテックス型のポリマー結合剤を含む、難燃性であって耐水性のポリマー組成物である。
【0005】
アクリル化合物は、場合によってスチレンと組み合せることにより、さらに光条件と気象条件に良好な耐性を付与する塗料配合を可能にすることができるという利点を示す。しかしながら、アクリル化合物は通常プロピレンから生産され、プロピレンは石油精製の副産物である。実際には、石油の埋蔵量は急速に枯渇している。これらの資源に関連する供給困難を予測するために、これらのアクリル化合物を、再生可能源の炭素源から得られる化合物と置き換えることができることが望ましい。
【0006】
このニーズを満たすために、特許出願WO2012/084974では、塗料の中の結合剤として、少なくとも10重量%の再生可能な原料、例えばn−ブチルアクリレートなどを含む、2種のビニルポリマーの分散物を使用する規定がなされている。この結合剤により、柔軟性があり、且つ低温度で乾燥する非粘着性塗料が得られることが示されている。
【0007】
しかしながら、本出願人にはn−ブチルアクリレートが再生可能な原料の十分な炭素を含まず、2−オクチルアクリレートなどの長鎖アクリレートよりも親水性を示すことは明白である。
【0008】
数多くの研究から、本出願人は、主に再生可能な原料のポリマーに基づき、その組成が同時に良好な機械的特性を示し、特に好適な柔軟性および好適な伸長ならびに良好な粘着性を示し、そして結合剤として、2−オクチルアクリレートに基づくホモ−またはコポリマーを使用して十分に疎水性も示す、フィルム形態でのコーティングの組成物を配合することが可能であることを論証した。
【0009】
該化合物は、衝撃改質剤の成分として特に、特許出願WO2012/038441に、および粘着剤の成分として特許文献WO2008/046000、WO2009/079582、WO2009/132098およびWO2009/129087にすでに記載されている。
【0010】
特許文献US4983454において、水性溶媒中で調製される2−オクチルアクリレートと他の(メタ)アクリルモノマーに基づくアクリル樹脂は、片方が電着によって得られる塗料の層で覆われている金属基板と、他方が塗料の上層との間に入る、障壁形成コーティングとして使用されている。該アクリル樹脂は−52℃のガラス転移温度と−20℃で610%の破断点伸びを示す。このコーティングは柔軟で、粘着性であり、特に衝撃に対して複合材料を保護するためにエネルギーを吸収することができ、この複合材料は車両塗料の性質には好都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0599676号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0121921号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/084974号
【特許文献4】国際公開第2012/038441号
【特許文献5】国際公開第2008/046000号
【特許文献6】国際公開第2009/079582号
【特許文献7】国際公開第2009/132098号
【特許文献8】国際公開第2009/129087号
【特許文献9】米国特許第4983454号明細書
【発明の概要】
【0012】
本出願人は、今般、コーティング組成物における結合剤を形成するのに適した特別の性質を示すコポリマーを調製するために、再生可能原料の2−オクチルアクリレートを使用することができ、このコーティングが石油化学工業から生じるモノマーで得られる性質と同様の性質を有することを見出した。
【0013】
本発明の主題は、したがって、コーティング組成物におけるまたはその製造のための結合剤として、再生可能原料の2−オクチルアクリレートおよび場合によって少なくとも他のモノマーの重合から生じるポリマーを使用することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、コーティング組成物における結合剤として、特定のポリマーを使用することが規定されている。
【0015】
「コーティング」という用語は、本発明の記述では、Fox法による−40℃から+40℃の間のTgを有する結合ポリマーから、一般的に50μmと数mmの間の厚さを有するフィルム形態において、基材に塗布された層を意味し、前記フィルムが基材の外観、特に基材の光学特性を変えるために、および/または特に引っかき、湿度、汚れまたは光に対して基材表面を保護するために十分な厚さで塗布されているものと理解される。
【0016】
したがって、「コーティング組成物」という用語には基材の接着性を改良しようとする接着組成物が含まれない。一方、コーティング組成物には、塗料、モルタル、コーティング、ワニスおよびインク組成物が含まれるが、この例に限定されない。
【0017】
加えて、本発明の記述では、「の間(of between)」という表現は引用された限界値およびすべての中間値をも含ものと理解され、「・・・から・・・の範囲(ranging from…to…)」という表現は、引用された限界値を除くものと理解される。
【0018】
本発明に従って使用されるポリマーには、再生可能原料である2−オクチルアクリレートが含まれる。
【0019】
このモノマーは主に、さらには完全に植物源から生じるので、再生可能原料の物質として見なすことができ、このことは、該モノマーの
14C含有量が(規格ASTM D6866に従って)大気中のCO
2のC
14含有量の少なくとも50%、好ましくは60%、例えば少なくとも70%、さらに少なくとも80%を示すという事実によって特徴付けられる。言い換えれば、2−オクチルアクリレートは規格ASTM6866−06にしたがって全炭素に対して少なくとも0.6×10
−10重量%の
14Cを含む。
14Cの含有量は液体シンチレーションによる計測法によって測定することができ、炭素の1g当たりの1分当たりの崩壊、dpm/gCで表すことができる。2−オクチルアクリレートのdpm/gC値は、通常少なくとも7.2±0.1 dpm/gCである。
【0020】
2−オクチルアクリレートは、特にメタンスルフォン酸などの硫黄を含む酸タイプのエステル化触媒および少なくとも1つの重合阻害剤の存在下、2−オクタノールとアクリル酸から調製することができる。あるいは、2−オクチルアクリレートは、エチルアクリレートなどの軽質アクリレートと2−オクタノールとの間のエステル交換反応によって調製することができる。2−オクタノールはそれ自体ヒマシ油に由来するリシノール酸を水酸化ナトリウムで処理し、次いで蒸留によってセバシン酸を除去して生じ得る。直接エステル化による2−オクチルアクリレートの調製方法は、具体的に特許出願WO2013/064775に記載されている。
【0021】
上述のモノマーはホモ重合することができ、この場合において本発明で使用されるポリマーは2−オクチルアクリレートホモポリマーである。代替形態では、モノマーは、本発明で使用されるポリマーが、コポリマーの総重量に対して、有利には1重量%から80重量%、好ましくは25重量%から75重量%、より好ましくは30重量%から75重量%、さらに50重量%から70重量%の2−オクチルアクリレートを含むコポリマーであるように、少なくとも1つの他のモノマーと共重合することができる。
【0022】
さらに、少なくとも部分的に植物および/または動物源のモノマーそれ自体を使用することによって2−オクチルアクリレートを含むコポリマーの生物的性質を補強することができる。
【0023】
この他のモノマーは、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンなど;エチレン性不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルなど;エチレン性不飽和モノ−、およびジカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびイタコン酸エステルなど;モノカルボン酸とビニルアルコールもしくはアリルアルコールとのエステル、例えば、酢酸ビニルなど;エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸とスルフォン酸、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸およびスチレンスルフォン酸;エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸のアミド、例えばアクリルアミドなど;N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルピロリドンなど;N−ビニルアミド;N,N−ジアリルアミン;N,N−ジアリル−N−アルキルアミン;アリル−もしくはビニル置換窒素含有複素環、例えばN−ビニルイミダゾールならびにビニル−およびアリルピリジン;およびこれらの混合物から具体的に選択することができる。好ましいコモノマーはエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸のエステル、特にメチルメタクリレートおよびn−ブチルアクリレート、ビニル芳香族モノマー、より具体的にはスチレン、およびこれらの混合物である。
【0024】
他の官能性または架橋モノマーは、コーティング組成物の様々な家庭用品に対する耐薬品性または耐水性を改良することを目的として、重合前に2−オクチルアクリレートに好都合にも添加することができる。これらのモノマーはコーティング組成物の付着物に対する遮断性もしくは耐性も改良することができ、またはポリマーの力学的性質、例えば耐伸長性も改良することができる。架橋モノマーのなかには、アジピン酸ビスヒドラジドと組み合せるジアセトンアクリルアミド、ポリイソシアネート、シロキサン含有(メタ)アクリレート、ポリ官能性(メタ)アクリレート、すなわち、いくつかの不飽和性を示す(メタ)アクリレートを組み合せるヒドロキシル化モノマーおよびこれらの混合物が挙げられるが、完全ではない。官能性モノマーのなかには、アセトキシエチル(メタ)アクリレートのモノマー、リンもしくはリン官能基を有するモノマー、ウレイド官能基を有するモノマー、アミン官能基を有するモノマーおよびこれらの混合物を挙げられるが、完全ではない。
【0025】
本発明に使用されるポリマーを構成するモノマーは、例えばラジカル乳化重合によって従来通り重合することができる。エマルジョンのpHは、重合工程中では4から7の間で維持すべく緩衝化できる。この種の反応において従来から使用されてきたラジカル開始剤として、特に無機開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムを、単独もしくは重合温度を下げるべく還元剤と組み合せるか、または有機開始剤、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドもしくはハイドロジェンヒドロペルオキシドなどから選択することができ、これらは還元剤によって活性化される。目標とする性質に応じて、所望の分子量分布を得るために一以上の連鎖移動剤を工程中に添加することができる。重合は0℃から150℃の温度、好ましくは30℃から100℃の温度、そして例えば50℃から90℃の温度で、例えば4時間から6時間行うことができる。重合は大気圧でおよび/または不活性ガスの存在下で行うことができる。この重合工程は20重量%から70重量%の間、好ましくは35重量%から60重量%の間の乾燥物含量を有するラテックスの中で有利に起こる。
【0026】
通常得られるポリマーは、Fox法によって算出して、−40℃から+40℃の間、好ましくは−30℃から+30℃の範囲、より好ましくは−10℃から+10℃の間、さらに−10℃から0℃の間のガラス転移点(Tg)を有する。
【0027】
ポリマーは、異なるTg範囲を示す粒子を得るために、一段階工程に従って、すなわち、単一のモノマー組成を有する連続投与か、または異なるモノマー組成を用いる多段階工程に従って得ることができる。この種の粒子を、コアシェル型粒子もしくは構造粒子と言う。この場合には、各段階の最後に得られたポリマーの平均Tgは−40℃から+40℃の間でもあり得、好ましくは−30℃から+30℃の範囲である。
【0028】
このポリマーに加えて、本発明に従って使用されるコーティング組成物は水を含む。コーティング組成物は、例えば、一つ以上の顔料;一つ以上の粉末フィラー;一つ以上のpH調整剤、特に2−オクチルアクリレートと共重合してもよい酸モノマーを中和することができる一つ以上の塩基、例えばアルカリ金属水酸化物(特に、水酸化ナトリウム)、アンモニア水もしくは水溶性アミン;一つ以上の分散剤および/もしくは湿潤剤、例えばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムもしくはポリリン酸アンモニウムおよびナフタレンスルホン酸塩;一つ以上の増粘剤、例えばキサンタンガムおよびセルロース誘導体など;一つ以上の消泡剤;一つ以上の被膜形成剤;一つ以上の不凍剤;一つ以上の難燃剤、特に有機リン化合物、水酸化マグネシウムもしくは水酸化アルミニウム;一つ以上の殺生物剤;およびこれらの混合物から選択される多種の添加物を含むことができる。
【0029】
顔料は、特に、白色もしくは着色の無機顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、三酸化アンチモン、酸化鉄、群青およびカーボンブラック;有機顔料、例えばアゾ染料、インジゴ染料およびアントラキノン染料;ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0030】
粉末フィラーは、特に炭酸カルシウムもしくは炭酸マグネシウム;シリカ;シリケート、例えばタルク、カオリンもしくはマイカ;硫酸カルシウム;アルミノシリケート;およびこれらの混合物から選択することができる。これらのフィラーは好ましくは微粉化した形態で用いる。
【0031】
加えて、コーティングの製造のために使用される場合には特に、本発明によるコーティング組成物は別の結合剤、特にシリコン樹脂またはシリケートを含むことができる。
【0032】
コーティング組成物の異なる成分は、当業者が通常の割合で従来のやり方で混合することができる。一般的には水性分散液(ラテックス)の形態でポリマーを顔料の分散物またはペーストに添加するのが好ましい。
【0033】
水性分散液の形態にあるポリマーは、一般的にはコーティング組成物の総重量に対して、5重量%から90重量%、好ましくは10重量%から75重量%を示す。該ポリマーは、乾燥重量で、コーティング組成物の総重量に対して5重量%から50重量%、好ましくは20重量%から40重量%を示す。
【0034】
該コーティング組成物は、液体または半固体で提供することができる。
【0035】
該コーティング組成物は、25重量%から75重量%の間、好ましくは35重量%から65重量%の間の固形分濃度を有する。
【0036】
本発明によるコーティング組成物は、特に木材、金属、ガラス、セメント、紙、繊維、革、プラスチックまたは煉瓦で作られたいかなる基材にも、特に微細ブラシを含むブラシ、ローラー、パッド、噴霧器もしくはエアゾールを使ういずれの手段によっても、場合により接着下塗りの基板に塗布した後でも、塗布することができる。
【0037】
この基材上に周辺温度(<30℃)でフィルムを形成することによって、基材上に所望の美観を付与し、特に湿気から基材を保護することが可能となる。
【0038】
本発明は、以下の非限定的な実施例に照らせばより理解が得られるであろう。実施例の目的は本発明を説明することであって、添付した特許請求の範囲によって規定される範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1]ポリマー分散物の調製
一般的な手順
1)出発原料
本発明によるポリマーの調製のための、使用する出発原料を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
ポリマーのTgはFox法に従って以下のように算出される。
1/Tg=x
1/Tg
1+x
2/Tg
2+...x
n/Tg
n
ここで、xは検討中のモノマーの重量分率を示し、Tgはそのホモポリマーのガラス転移温度を示す。次の試験において、以下の表2で言われた値を維持した。
【0042】
【表2】
【0043】
2)装置
ジャケットおよび効率のよい攪拌(ボルテックス)、3つの流れのある還流冷却器、原料温度の制御と調整を備えた、3L(内部容量)ガラス反応器の中で合成を行った。ガラス反応器は異なる成分を別々に導入するための必要な注入口の数およびまたアセンブリーを窒素で不活性にするために設けられた1つの注入口を含む。漏れ止めは各々合成する前に確認した。装置には成分の導入のための流速を調整することができるシステムが備わっていた。原料の温度およびまたジャケットの温度を記録し、調整した。合成は半連続的に行った。
【0044】
3)分散物を特徴付けるための方法
a)固形分(SC)
水性分散物の固形分をISO規格3251に従って測定した。
b)pH
水性分散物のpHをISO規格976に従って測定した。
c)粘度
水性分散物の粘度をISO規格2555に従って測定した。
d)粒子径
ベックマン・コールターからのN4+装置を使用して光子相関分光法(PCS)によって粒子径を測定した。0.22μmセルロースアセテートフィルターを通した脱イオン水を用い、ポリスチレン容器の中でサンプルを希釈した(50mlの水に3滴から5滴の乳化物)。25℃の温度で、633nmのレーザー波長で90°測定角の下で粒子径を測定した。
e)粒子の構造化または非構造化の関数として測定・予期される最低造膜温度(MFFT)
水性分散物のMFFTをISO規格2115に従って測定した。
【0045】
B.実行した合成
第一番目のポリマー分散物を、以後「分散物D1」と称し、以下のように調製した。
【0046】
乳化剤E30の40%溶液15.25gを、1165.85gの脱塩水に溶解した。容器ヒールのpHを便宜上3未満にした。容器ヒールの温度を80℃にした。
【0047】
別に、乳化剤E30(40%)44.38gとディスポニル(Disponil)FES77(30%)83.33gを脱塩水865.04gに良く攪拌しながら分散させてプレエマルジョンを調製した。以下:
MMA 1007.5g
2OctA 1462.5g
を良く攪拌しながらこれに順次添加した。
【0048】
こうして生成したプレエマルジョンは白色であり、少なくとも重合時間中は安定であった。プレエマルジョンを軽い攪拌下で保存した。
【0049】
最後に異なる触媒溶液を以下のように調製した。
S1:過硫酸アンモニウム1.25gを水11.25gに溶解した。
S2:過硫酸アンモニウム1.50gを水148.50gに溶解した。
S3:過硫酸アンモニウム1.25gを水123.75gに溶解した。
S4:メタ重亜硫酸ナトリウム2gを水198gに溶解した。
【0050】
以下のように重合を行った。
i)種入れ(Seeding)
種入れの目的のため、上述したプレエマルジョン270.1gを、80℃で安定な初期充填を含む容器ヒールに導入した。温度が80℃で安定になったら、12.5gの100%の溶液S1を添加した。発熱の最大値がこの段階の終りを示した。粒径はおよそ60nmであり、転化率は70%を超えた。
【0051】
ii)重合
プレエマルジョンの残余、ならびにアリルM5gおよびAA25gを、82℃の重合温度で210分間で導入した。溶液S2、すなわち150g、を並行して255分で流し込んだ。
【0052】
iii)残余モノマーの消費段階
温度を82℃で15分間維持した。熱硬化の終わりに、以下を82℃で別々に、そして並行して流し込んだ。
45分間、溶液S3、すなわち125g
75分間、溶液S4、すなわち200g
この酸化還元処理後82℃で20分間の硬化を行い、周囲温度に冷却した。
【0053】
iv)最終の添加
ラテックスを30℃から35℃で水酸化ナトリウム溶液を添加することによりpH8から9まで中和してから殺生物剤をそこに添加した。次いで該ラテックスを固形分で調整し、100μmの布を通して濾過した。最終固形分量は47.6%であった。
【0054】
MMA/2OctA/AA/アリルM(40.3/58.5/1/0.2の重量比)に基づき、Fox Tgが0℃を示すポリマーを含む分散物D1を得た。
【0055】
最終の粒径はおよそ130nmであり、粘度は1000mPa.s未満であり、測定したMFFTは5℃であった。
【0056】
同様の手順に基づいて調製した他の水性分散物の一覧表を、一つの試験から他の試験に変化する組成が示される以下の表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
この3種の試験において、メタクリル酸68.5gをプレエマルジョンに添加し、そしてアリルMを移動剤であるnDDMに0.025部の割合で置き換えた。
【0059】
C.分散物の物理化学的特徴付け
得られた分散物D2からD4の特徴付けを、以下の表4に並べる。
【0060】
【表4】
【0061】
[実施例2]物理的性質
実施例1で得られた各分散物を、フィルム形態でポリプロピレンプラークに塗布した後(800μm、湿潤)、50%の相対湿度下で7日間、23℃で乾燥させた。
【0062】
次いで、以下の試験を行った。
動的機械分析(DMA):−50℃から200℃の温度でスキャンして、せん断モードでメトラーDMA861e装置を使って行った。温度上昇勾配は3℃/分で周波数は1Hzであった。
【0063】
機械的試験:23℃の温度、50%の相対湿度、試験速度500mm/分で調整した、50Nセルおよび亜鈴型の試験片を有する、MTS引張試験装置を使って行った。
【0064】
得られた結果を次の表5に並べる。
【0065】
【表5】
【0066】
この表から、試験した分散物間の差異は極めて小さいことが明らかになり、そのため、フィルムの機械的特性および粘弾性特性は均等であると見なされる。より多くの量の2OctAを使用してもこれらの特性は変わらない。
【0067】
[実施例3]実用的評価
a)ワニスの配合物
以下の表6に特定した出発原料を使用してワニスを配合した。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例1で調製した分散物を、以下の組成を有するワニスの形態(体積固形分35%)で配合した。
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】
b)耐水性の評価
上記ワニスV1からV3をガラスプレートに塗布し(200μm、湿潤)、23℃、50%RHで7日間乾燥した。
【0074】
7日間の終りに、水滴をワニスフィルムの表面上に堆積し、そして15分間、30分間、1時間、2時間、8時間および24時間、ワニスフィルムの表面上と接触させて置く。次いで水と接触するフィルムの漂白を以下の評価尺度に従って評価した:0は漂白なし、1は僅かな漂白、2は中程度の漂白、3は強い漂白である。
【0075】
【表10】
【0076】
表から判るように、ワニスV3(生物系モノマー2OctAを含む分散物D4から配合される)は、生物系モノマーを含まない分散物D2で配合されるワニスV1と同等の耐水性を示す。
【0077】
[実施例4]
実施例1で示した同一手順に従って、3つの他の水性分散物を調製した。組成および特徴を以下の表7に並べる。
【0078】
【表11】
【0079】
実施例2に記載したような機械的試験をこれらの3種の分散物に適用し、そしてまた5mm/分での引張試験を−20℃で行った。その結果を以下の表8に並べる。
【0080】
これらの試験は分散物D5およびD6が、−56℃のTgを有する分散物D7と比較して、−20℃での破断点伸びが極めて低いことを表していることを示すものである。
【0081】
【表12】
【手続補正書】
【提出日】2016年2月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物におけるまたはコーティング組成物の製造のための結合剤としての、再生可能な原料である2−オクチルアクリレートおよび場合により少なくとも1つの他のモノマーの重合から生ずるポリマーの使用であって、前記ポリマーは、Fox法によって算出して、−40℃から+40℃の間のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記他のモノマーが、芳香族ビニルモノマー;エチレン性不飽和ニトリル;エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸エステル;モノカルボン酸とビニルアルコールもしくはアリルアルコールとのエステル;エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸ならびにスルホン酸;エチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸アミド;N−ビニルラクタム;N−ビニルアミド;N,N−ジアリルアミン;N、N−ジアリル−N−アルキルアミン;アリルもしくはN−ビニル置換窒素含有複素環;およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記他のモノマーが、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびスチレン、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリマーが、Fox法によって算出して、−30℃から+30℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリマーが、Fox法によって算出して、−10℃から+10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ポリマーが、Fox法によって算出して、−10℃から0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリマーが、コポリマーの総重量に対して、30重量%から75重量%の2−オクチルアクリレートを含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリマーが、コポリマーの総重量に対して、50重量%から70重量%の2−オクチルアクリレートを含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、塗料、モルタル、コーティング、ワニスまたはインク組成物であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリマーが、組成物の総重量に対して、5重量%から50重量%の乾燥重量を表すことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリマーが、組成物の総重量に対して、20重量%から40重量%の乾燥重量を表すことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【国際調査報告】