(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-524905(P2016-524905A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(54)【発明の名称】インビトロ診断法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/48 20060101AFI20160725BHJP
C12Q 1/26 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z
C12Q1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-526554(P2016-526554)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月18日
(86)【国際出願番号】EP2014064999
(87)【国際公開番号】WO2015007666
(87)【国際公開日】20150122
(31)【優先権主張番号】102013011995.2
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516017846
【氏名又は名称】ユニベルジテート ツー ケルン
【氏名又は名称原語表記】Universitaet zu Koeln
(71)【出願人】
【識別番号】516017857
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト フュール メディツィーニシェ フォルシュング エム ベー ハー
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch Gesellschaft fuer medizinische Forschung mbH
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】シュワブ マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】シェフラー エルケ
(72)【発明者】
【氏名】チャサール ユリカ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QR02
4B063QR06
4B063QS17
(57)【要約】
開示されているものは、体液中のウロチオン及び/又はジュカチオンの含量が決定されることを特徴とする、検査されるべき個体のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性の決定用インビトロ診断法である。
また、開示されているものは、モリブデン補因子(Moco)及び/又はMocoの分解段階が反応の基質として使用されそして形成されたジュカチオン及び/又はウロチオンの量が決定されることを特徴とする、任意の起源の検体の細胞抽出物におけるTPMT活性の決定用のインビトロ診断法である。
最後に、開示されているものは、体液及び/又は細胞抽出物中において決定されるウロチオン及び/又はジュカチオンが、1つ以上の特定の疾患に関する増加した感受性のためのバイオマーカーとしての役目を果たすインビトロ診断法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中のウロチオン及び/又はジュカチオンの含量が決定されることを特徴とする、検査されるべき個体のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性の決定用インビトロ診断法。
【請求項2】
尿、血清及び/又は血漿中において、ウロチオン及び/又はジュカチオンの含量が決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モリブデン補因子(Moco)及び/又はMocoの分解段階が反応用基質として使用され、そして形成されたジュカチオン及び/又はウロチオンの量が決定されることを特徴とする、任意の起源の検体の細胞抽出物におけるTPMT活性の決定用インビトロ診断法。
【請求項4】
前記細胞抽出物が、線維芽細胞、赤血球、及び/又は生検材料に由来することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記体液中のウロチオン及び/又はジュカチオンの含量が、患者中の最適なチオプリン用量決定のための役目を果たす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ジュカチオンが、体液及び/又は細胞抽出物中において決定され、そしてモリブデン含有酵素の活性における変化により特徴付けられる1つ以上の特定の疾患に関する増加した感受性のためのバイオマーカーとしての役目を果たすインビトロ診断法。
【請求項7】
前記モリブデン含有酵素が、亜硫酸オキシダーゼである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液中のチオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(Thiopurin-S- methyltransferase)の酵素活性を決定するためのインビトロ法に関する。特に、本発明は、血漿、血清及び/又は尿中のウロチオン(Urothion)含量及び/又はジュカチオン(Jukathion)含量をインビトロで決定してチオプリンS−メチルトランスフェラーゼの酵素活性を決定する方法に関する。さらに、本発明は、ウロチオン及び/又はジュカチオンをバイオマーカーとして用いたインビトロ診断法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(以下、主にTPMTと称する)は、白血病及び慢性炎症性疾患の様々な形態の治療の薬物代謝における重要な酵素である。TPMTは、細胞増殖抑制薬例えば6−メルカプトプリンを、その後腎排泄される、臨床的に不活性なメチル化形態(例えば6−メチルメルカプトプリン(6-Mercaptopurin))に変換する。以下に提示されるTPMTの薬理学的意義にもかかわらず、その生理学的基質とヒトの代謝におけるTPMTの機能は不明である。
【0003】
チオプリン、例えば6−チオグアニン(6−TG)、6−メルカプトプリン(6−MP)又はアザチオプリン(AZA)は、白血病、例えば、急性リンパ性白血病、自己免疫疾患(例えばクローン病、慢性関節リウマチ)の治療において、そして臓器移植のレシピエントにおいて、広く使用されているプリン代謝拮抗剤である。それらは、天然に存在する核酸塩基グアニンのアナログである。チオプリンの他の適応症は、例えば、非ホジキンリンパ腫、潰瘍性大腸炎、真性多血症、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病、他の形態の血管炎、自己免疫性肝炎、アトピー性皮膚炎、重症筋無力症、視神経脊髄炎(Devic病)、拘束性肺疾患を含む様々な自己免疫疾患である。
【0004】
TPMTは、チオプリン化合物をメチル化する酵素である。具体的には、TPMTはチオプリン剤(Thioprin-Wirkstoffe)のS−メチル化を触媒する。メチル供与体は、次に反応によってS−アデノシル−L−ホモシステインに変換されるS−アデノシル−L−メチオニンである。つまり、TPMTは、S−アデノシル−L−ホモシステインを副産物として形成する一方で、S−メチル供与体としてS−アデノシル−L−メチオニンを使用して、チオプリン剤を代謝する。
【0005】
TPMTの酵素活性に影響を与える遺伝的多型は、患者の治療におけるチオプリン薬(Thiopurinmedikamenten)の応答及び副作用と相関する。
【0006】
チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ(TPMT;EC2.1.1.67)は、チオプリン薬、例えば、アザチオプリン(AZA)及び6−メルカプトプリン(6−MP)のS−メチル化を触媒する細胞質内酵素である。酵素活性は、赤血球(RBC)中において、白人200人中約1人における完全な欠損症を有する一方で、11%が中間を示し、そして89%が通常のTPMTを示し、非常に可変であることが示されている(Schaeffeler et al. 2004)。また、白人の1〜2%は、この三峰性分布から逸脱し、そして非常に高いレベルのTPMT活性を示す(Schaeffeler et al. 2004)。チオプリン系免疫抑制剤は、比較的限られた治療範囲を与えることから、TPMT多型は、2種のメチル化代謝物、6−メチルメルカプトプリン(メチル化リボヌクレオチド)及びチオグアニンヌクレオチド(いわゆる6−TGN)間の比率に影響し、したがって、炎症性腸疾患、急性リンパ性小児白血病、及び他の疾患を有する患者において、チオプリン治療の有効性と毒性を決定する(summarized in Teml et al. 2007)。例えば、TPMT活性が減少した又は欠損した個体は、これらの事例では極端に高い6−TGNレベルが存在するので、アザチオプリン又は6−MPの基準用量を用いた治療の間に骨髄抑制の増加したリスクを有する。したがって、これらの患者は、チオプリン治療における個別適応用量を必要としている(Kaskas et al Gut 2002)。
【0007】
対照的に、チオプリン代謝物の集中的なメチル化がこれらのケースで発生し、そして活性な6−TGN代謝物がこの理由のために少量形成されるため、非常に高いレベルのTPMT活性を持つ個体は、治療への耐性を発達させるのに危険にさらされている(低すぎる6−TGNレベルのため)。また、肝臓の損傷が、高レベルの6−メチルメルカプトプリンリボヌクレアーゼによって引き起こされることがある(Dubinsky et al. 2000, Nygaard et al. CPT 2008)。急性リンパ性白血病及びTPMT活性の高いレベルを有する小児患者は、標準的な治療条件の下で再発リスクの増大にさらされている(Stanulla et al. 2005)。
【0008】
TPMT欠損症の分子的原理はよく理解されている。TPMTは、薬理遺伝現象が最適なチオプリン用量の調整のために一般的に認識されている診断ルーチン検査に翻訳されたいくつかの例の一つを構成している。これらの提言は、TPMTの内因性基質が今日でも知られていないにもかかわらず、近年更新された(Relling et al. 2013)。
【0009】
TPMT活性は、一般的に赤血球(RBC)において決定される。使用される測定方法に強く依存する、非常に低い、中間の、及び通常の活性に関するカットオフ値が定義された(例えば、放射化学測定(Weinshilboum et al. 1978)及びHPLCベースの方法(Kroplin et al. 1998))。
【0010】
1980年代には、TPMT欠損症の遺伝的原理が築かれた(Weinshilboum et al. 1980)。今日では、変化したTPMT活性に関連した27個の一塩基多型(SNP)が説明されている(Appell et al. 2013)。共同発明者のSchaeffeler博士及びSchwab博士は、有志の健康な被験者の大規模コホート(1222人)において、TPMT遺伝子型−表現型の相関を調査した。彼らは、TPMT表現型の三峰性分布を確認することができ、そして被験者の0.6%でTPMT欠損症が(1:180)、10.2%でTPMT活性の中間レベルが、そして89.2%で通常又は高レベルが発見された(Schaeffeler et al Pharmcogenetics 2004)。
【0011】
正しいTPMT表現型を予測するための遺伝子解析を使用した場合、陽性及び陰性予測に関する90%より高い感度及び特異性があり、TPMT遺伝子型と表現型との間の一致は98.4%である。それにもかかわらず、赤血球中の活性決定と臨床ルーチンにおけるTPMTの遺伝子検査とにおいて大幅な制限がある:(1)疾患関連貧血のために6〜8週間以内に輸血を受けた患者における正しいTPMT表現型の決定は、誤分類の危険性が高い(Cheung et al. 2003; Ford et al. 2004, Schwab et al. 2001)。したがって、さらなる遺伝的分析が、これらの場合の全てにおいて根底にある。(2)日常の業務において、TPMT遺伝子型の遺伝子解析は、配列決定技術を用いて行われ、従って、既に知られている頻繁な変異のみが検出される。したがって、めったに発生しない分析されていないアレルのための誤分類が発生する可能性がある。
【0012】
以上の理由から、TPMTによって排他的にメチル化された内因性基質の同定は、改善した臨床診断のために大きな意義及び大きな価値がある。このような直接的なバイオマーカーは、上記の制限をすべて削除し、血液中だけではなく尿中でも検出可能となり、臨床診断を大幅に簡素化することになるであろう。
【0013】
TPMT分析は、6−MPを用いて治療される急性リンパ性白血病を有する子供の日常的治療に必要であることから(Relling et al. 2013)、この患者群における簡単な尿分析が、確かに非常に有利であろう。さらに、個体の約1〜2%は、増加したTPMT活性を特徴としている;根底にある遺伝的原因は今も知られていない。TPMTの内因性の反応生成物の決定も、非常に高いレベルのTPMT活性を有する患者を特定するのに効果的であり(Schaeffeler et al. 2004)、したがって、低すぎる用量によるアザチオプリン又は6−MP療法の貧弱な応答のリスクを減少させる又は除去するであろう。
【0014】
また、TPMT欠損症は、シスプラチンの毒性に関連しているので、したがって、TPMTの遺伝子分析は、シスプラチン治療の前に推奨される(Ross et al. 2009)。これらの患者はまた、内因性TPMT生成物の簡単かつ迅速な決定の恩恵を受けるであろう。
【0015】
副作用のリスクのため、小児白血病患者は、治療前に、遺伝的及び酵素的分析により、TPMT活性に関して検査される。これらの試験は、多くの労力を伴い、そして現在では、主に特に危機に瀕した患者群、例えば、小児患者においてのみ日常的に行われている一方で、他の患者群、例えば慢性炎症性疾患を有する患者は、最も頻繁には、最初に準最適な用量で治療され、毒性を回避している。とりわけ、TPMT活性が減少しそして欠損症ではない患者において用量を増加させることにより、患者により許容される最大チオプリン用量に、実験的に徐々に近づくようにする。そのプロセスでは、一方で、過剰投与に起因する重度又は致命的な副作用の危険が常に存在し、他方で、治療の成功を危うくする過少投与の危険性が存在する。
【0016】
≪非特許文献≫
1. Appell ML, Berg J, Duley J, Evans WE, Kennedy MA, Lennard L, Marinaki T, McLeod HL, Relling MV, Schaeffeler E, Schwab M, Weinshilboum R, Yeoh AE, McDonagh EM, Hebert JM, Klein TE, Coulthard SA. Nomenclature for alleles of the thiopurine methyltransferase gene. Pharmacogenet Genomics. 2013 Apr;23(4):242-8. doi: 10.1097/FPC.0b013e32835f1cc0.
2. Stanulla M, Schaeffeler E, Moricke A, Coulthard SA, Cario G, Schrauder A, Kaatsch P, Dordelmann M, Welte K, Zimmermann M, Reiter A, Eichelbaum M, Riehm H, Schrappe M, Schwab M. Thiopurine methyltransferase genetics is not a major risk factor for secondary malignant neoplasms after treatment of childhood acute lymphoblastic leukemia on Berlin-Frankfurt-Munster protocols. Blood. 2009 Aug 13;114(7):1314-8. doi: 10.1182/blood-2008-12-193250. Epub 2009 Jun 17.
3. Teml A, Schaeffeler E, Schwab M. Pretreatment determination of TPMT--state of the art in clinical practice. Eur J Clin Pharmacol. 2009 Mar;65(3):219-21. doi: 10.1007/s00228-009-0618-7. Epub 2009 Feb 7.
4. Schaeffeler E, Zanger UM, Eichelbaum M, Asante-Poku S, Shin JG, Schwab M. Highly multiplexed genotyping of thiopurine s-methyltransferase variants using MALD-TOF mass spectrometry: reliable genotyping in different ethnic groups. Clin Chem. 2008 Oct;54(10):1637-47. doi: 10.1373/clinchem.2008.103457. Epub 2008 Aug 7.
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6. Dilger K, Schaeffeler E, Lukas M, Strauch U, Herfarth H, Muller R, Schwab M. Monitoring of thiopurine methyltransferase activity in postsurgical patients with Crohn's disease during 1 year of treatment with azathioprine or mesalazine. Ther Drug Monit. 2007 Feb;29(1):1-5.
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24. Goto, M., Sakurai, A., Ohta, K., and Yamakami, H. (1969). Die Struktur des Urothions. J. Biochem. 65:611-620.
【発明の開示】
【0017】
したがって、治療中に副作用を生じることなく有効なチオプリン用量を決定することができるようにするために、各々の患者におけるTPMT活性を決定するための、単純で、費用効果が高く、そして迅速な方法が求められている。
【0018】
この問題は、請求項1に定義される、TPMTの酵素活性を決定するための方法により解決される。好ましい実施態様は、従属請求項に提示されている。さらに、1つ以上の特定の疾患に関する増加した感受性のためのバイオマーカーとしてウロチオン及び/又はジュカチオンを使用したインビトロ診断法に関する保護が求められている。
【0019】
この発明は、TPMTがモリブデン補因子(Moco)の異化における必須の工程を触媒するという発明者の洞察に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1は、Moco(MPT)と腎臓抽出物(Kidney)、S−アデノシルメチオニン(SAM)と腎臓抽出物(Kidney)、Moco(MPT)とS−アデノシルメチオニン(SAM)、並びにMoco(MPT)及びS−アデノシルメチオニン(SAM)と腎臓抽出物(Kidney)のインキュベーション後のウロチオン分析のHPLCクロマトグラムである。
【0021】
図2は、アルカリホスファターゼの存在下(+AP)及び非存在下における、異なる量のMoco(MPT)と組み換えTPMTとのインキュベーション後の、ウロチオン分析のHPLCクロマトグラムである。
【0022】
図3は、3ng/μL精製TPMTと、基質としてのMoco(A)又は6−メルカプトプリン(B)との定常状態の動態を示している。(A)アルカリホスファターゼの存在下における、TPMTによるウロチオン合成の動態。(B)TPMTによる6−メチルメルカプトプリン合成の動態。(C)A及びBで示されている反応速度論の動態パラメータ。
【0023】
図4は、16μM 3,4,5−トリヨード安息香酸(阻害剤)の存在下及び非存在下における、500μM SAM、250μM DTT、及び5μM Mocoと肝臓抽出物(1.7μg/μL)500μgとのインキュベーション後の、ウロチオン分析のHPLCクロマトグラムである。
【0024】
図5は、2.5μM 3,4,5−トリヨード安息香酸(阻害剤)の存在下及び非存在下における、500μM SAM、250μM DTT、及び10μM Mocoと3ng/μL精製TPMTとのインキュベーション後の、ジュカチオン分析のHPLCクロマトグラムである。
【0025】
図6は、通常のTPMT活性を有する個体及びTPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者由来ヒト肝臓タンパク質抽出物におけるウロチオンのインビトロ合成を示す。
【0026】
図7は、通常のTPMT活性を有する個体(Wild Type)及びTPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者(heterozygous)、並びにTPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する5人(homozygous)のRBC由来タンパク質抽出物におけるウロチオンのインビトロ合成を示す。
【0027】
図8は、通常のTPMT活性を有する個体(Wild Type)及びTPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者(heterozygous)、並びにTPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する2人(homozygous)の尿におけるウロチオン含量の決定を示す。
【0028】
モリブデン補因子(Moco)の構造:
【化1】
【0029】
Mocoの異化最終生成物及び排出物は、以下の構造のウロチオンである(Goto and Sakurai, 1969):
【化2】
【0030】
ウロチオンは、IUPAC名2−アミノ−7−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−メチルスルファニル−1H−チエノ[3,2−g]プテリジン−4−オン、又は用語2−アミノ−7−(1,2−ジヒドロキシエチル)−6−メチルチオ−1H−チエノ[3,2−g]プテリジン−4−オンとしても知られている。それは、ヒトの尿から単離された硫黄含有プテリジン誘導体である。
【0031】
Mocoからウロチオンへの転換に関与する酵素は、未だ不明である。本発明者らは、TPMTがMocoのメチル化を触媒することを初めて実証した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0032】
ホスファターゼの存在下におけるS−アデノシルメチオニン依存性反応において、TPMTはMocoをウロチオンに変換することが可能である。TPMTの直接の反応生成物は、ウロチオンのリン酸化形態(ジュカチオン)であり、これは、以下の図に示すように、まだ知られていないホスファターゼにより、次に、ウロチオンに変換される。2−チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)の基質の形成をもたらす工程は不明である。S−アデノシルメチオニン依存性反応において、TPMTはジュカチオンを形成する。
【0033】
体液中、例えば尿中のウロチオンの含量は、TPMT活性と相関しており、したがって、TPMT活性を決定するための信頼できるバイオマーカーとして使用されることができる。したがって、ウロチオン含量の決定は、他のより正確でない方法、例えば他の基質や遺伝子検査による活性の決定を、置換することができる。
【0034】
説明される方法におけるウロチオンの使用が可能となる:
・あらゆる種類のチオプリン関連副作用(例えば、骨髄抑制、肝毒性、膵炎、インフルエンザ様症候群)の回避
・チオプリンの全ての適応症、例えば、白血病、慢性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、臓器移植、自己免疫疾患、肺線維症などに関する、チオプリン治療中の治療応答の予測
・シスプラチン関連TPMT媒介中毒性難聴の回避。
【0035】
したがって、ウロチオン及びジュカチオンは、血液中のチオプリン代謝物決定のための代替としての、チオプリン治療における治療モニタリング用の非常に信頼できるバイオマーカーである。
【化3】
【0036】
以下の生化学的分析は、TPMTがウロチオンの異化に関与していることを証明している。
【0037】
1.腎臓タンパク質抽出物中のウロチオンのインビトロ合成は、S−アデノシルメチオニンとMocoに依存している。これは、
図1に示されている。
図1は、Moco(MPT)と腎臓抽出物(Kidney)、S−アデノシルメチオニン(SAM)と腎臓抽出物(Kidney)、Moco(MPT)とS−アデノシルメチオニン(SAM)、並びにMoco(MPT)及びS−アデノシルメチオニン(SAM)と腎臓抽出物(Kidney)のインキュベーション後のウロチオン分析のHPLCクロマトグラムである。3種の全ての成分が一緒にインキュベートされた場合にのみ、ウロチオンの形成を観察することができる。使用量:1.7μg/μL腎臓抽出物、5μM Moco、500μM SAM、0.1Mトリス/塩酸(pH7.5)中250μM DTT。反応物を37℃で4時間インキュベートした後、60℃で1時間熱変性して停止させ、そして、QAEセファロースによって精製した。溶出液を乾燥させ、HPLC溶媒に溶解した。HPLC分析を、C4 Reprosil(登録商標)100 HPLCカラム上で、定組成溶出により、150×2mm、粒子サイズ5μm(Dr. Maisch GmbH)、20mM酢酸及び15%メタノールで行った。
【0038】
2.ウロチオンのS−アデノシルメチオニン依存性合成は、ホスファターゼの存在及びMocoの量に依存している。
図2から明らかであるように、インビトロにおいて、アルカリホスファターゼは、この反応を触媒することができ、
図2は、アルカリホスファターゼの存在下(+AP)及び非存在下における、異なる量のMoco(MPT)と精製されたTPMTとのインキュベーション後の、ウロチオン分析のHPLCクロマトグラムを示している。溶出時間24分時点におけるピークの増加は、ウロチオンの形成を示している。溶出時間31分時点でのピークの増加は、ジュカチオンの形成を示している。使用量:20ng/μL TPMT、2〜16μM Moco、500μM SAM、0.1Mトリス/塩酸(pH7.5)中250μM DTT。反応物を37℃で1時間インキュベートした後、60℃で1時間熱変性して停止させた。溶出液を乾燥させ、HPLC溶媒に溶解した。HPLC分析を、YMC C18 Hydrosphere(登録商標)カラム上で、メタノール勾配(0〜25%、20分、1mL/分)の溶出により、20mMギ酸を用いて、250×4mm、粒子サイズ5μmで行った。
【0039】
3.ウロチオンにおける精製されたTPMTによるMocoのインビトロでの変換:組み換え技術によって発現されそして精製されたTPMTによる比較分析によると、
図3に示されるように、基質としての変性Moco酵素(ヒト亜硫酸オキシダーゼ)由来のMocoを、ホスファターゼの存在下でウロチオンに変換することができることが示されている。この反応の動態パラメータは、K
M=2μMそしてk
cat=0.129s
―1である。基質としての6−メルカプトプリン(K
M=69μMそしてk
cat=0.047s
―1)と比較すると、生理学的基質から予想されるように、それらはより効果的な基質結合及び触媒反応を有意に示す。
図3は、3ng/μL精製TPMT及び基質としてのMoco(A)又は6−メルカプトプリン(B)による定常状態の動態を示している。(C)A及びBに示される動態の動態パラメーター。
【0040】
4.TPMT阻害剤の3,4,5−トリヨード安息香酸の存在下及び非存在下における、肝臓抽出物によるMocoのウロチオンへのインビトロにおける変換が、
図4に示される。図により、16μM 3,4,5−トリヨード安息香酸(阻害剤)の存在下及び非存在下における、500μM SAM、250μM DTT、及び5μM Mocoと肝臓抽出物(1.7μg/μL)500μgとのインキュベーション後の、ウロチオン分析のHPLCクロマトグラムが示される。
【0041】
5.TPMT阻害剤の3,4,5−トリヨード安息香酸の存在下及び非存在下における、精製されたTPMTによるMocoのジュカチオンへのインビトロにおける変換が、
図5に示される。2.5μM 3,4,5−トリヨード安息香酸(阻害剤)の存在下及び非存在下における、500μM SAM、250μM DTT、及び10μM Mocoと1ng/μL精製TPMTとのインキュベーション後の、ジュカチオン分析のHPLCクロマトグラムが示される。
【0042】
6.通常のTPMT活性を有する個体由来のヒト肝臓タンパク質抽出物におけるMocoのインビトロ合成を示す。TPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者と比較して、ウロチオン合成における約60%減少した活性が観察される。
【0043】
7.TPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者と比較した、通常のTPMT活性を有する個体のRBC由来タンパク質抽出物におけるMocoのインビトロにおける変換は、ウロチオン合成における約70%の活性の減少を示す。
図7から明らかなように、50%減少したウロチオン合成は、TPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する者の5人で検出された。示されているものは、通常のTPMT活性を有する個体(Wild Type)及びTPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者(heterozygous)、並びにTPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する1人(homozygous)のRBC由来タンパク質抽出物におけるウロチオンのインビトロ合成である。
【0044】
8.TPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者と比較した、通常のTPMT活性を有する個体の尿におけるウロチオン含量の決定は、ウロチオン含量の有意な違いを示さない一方で、TPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する2人においては、ウロチオンは全く検出することができなかった(
図8)。示されているものは、通常のTPMT活性を有する個体(Wild Type)及びTPMT遺伝子座におけるヘテロ接合変異を有する者(heterozygous)、並びにTPMT遺伝子座におけるホモ接合変異を有する2人(homozygous)におけるウロチオン含量の決定である。
【0045】
《実施例/材料及び方法》
ウロチオン検出:10μM Moco(ヒト亜硫酸オキシダーゼから単離された)を50mM Tris/HCL(pH7.2)、1mM SAM、250μMジチオトレイトール及び1.7μg/μL肝臓タンパク質抽出物又は3.4μg/μL RBC中で37℃で4時間インキュベートする。アルカリホスファターゼ33単位、20mM MgCl
2及び0.1M Tris/HCL(pH8.3)の添加後、インキュベーションを少なくとも4時間(37℃)実施し、インキュベーションを80℃、15分で停止させる。ウロチオンのHPLC分析を、メタノール勾配(0〜25%、20分、1mL/分)における溶出及び20mMギ酸におけるYMC C18 Hydrosphere(登録商標)(5μm粒子サイズ、250×4mmカラム)上で実施する。
【0046】
酵素の3ng/μLの最終濃度を精製されたTPMTによる反応動態のために使用した。3,4,5−トリヨード安息香酸で反応を停止させた。上記のように分析を行った。
【0047】
尿中のウロチオンを検出するために、Florisil(登録商標)二段階固相抽出(500mgマトリックス/mL尿、50%アセトンによる溶出)及びアミノプロピルマトリックス(500mgマトリックス/mL尿、20mM酢酸による溶出)を実施した。HPLC分析を、粒子サイズ5μmのC18 Reprosil(登録商標)100、250×3mmカラムDr. Maisch GmbH)を用いて、次のHPLC分析を実施した。20mMギ酸を溶出液として供給し、溶出をメタノール勾配(0〜25%、20分、1mL/分)で行った。クレアチニンをVasiliadesに従って決定した。
【0048】
本発明によれば、ウロチオンのレベルが、体液又は細胞抽出物中でインビトロにおいて決定され、TPMT活性と相関する。このようにして得られたデータを用いて、ウロチオンレベルのカットオフの値を、TPMT欠損個体、減少したTPMT活性を有する個体、通常のTPMT活性を有する個体、そして非常に高いレベルのTPMT活性を有する個体の層別化のために決定することができる。そして、これらのカットオフ値は、TPMT変異体においてのRBC又は遺伝子診断におけるTPMT活性の測定を使用している現在の手順との類似性において、チオプリンを用いた患者の用量調整治療のために役立つ。
【国際調査報告】