特表2016-525530(P2016-525530A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-525530急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群の処置のためのボラセルチブと組み合わせたデシタビン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-525530(P2016-525530A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群の処置のためのボラセルチブと組み合わせたデシタビン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20160729BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20160729BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160729BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   A61K31/519
   A61K31/53
   A61P43/00 121
   A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-528534(P2016-528534)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(85)【翻訳文提出日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2014065937
(87)【国際公開番号】WO2015011234
(87)【国際公開日】20150129
(31)【優先権主張番号】61/858,802
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ドロシア
(72)【発明者】
【氏名】タウベ,ティルマン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086CB09
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)を患う患者の処置のための、ボラセルチブ又はその塩又はその水和物と、デシタビン又はその塩又はその水和物との合剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボラセルチブを、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与し、両方の活性成分は同時に、別々に、又は順次投与されることを特徴とする、AML及び/又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブ。
【請求項2】
デシタビンを、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブと組み合わせて投与し、両方の活性成分は同時に、別々に、又は順次投与されることを特徴とする、AML及び/又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビン。
【請求項3】
ボラセルチブを、
a)有効量のボラセルチブ又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物の、4週の処置サイクルの間に最小限で1日の投与、
b)有効量のデシタビンの、前記の4週の処置サイクルの少なくとも1日の投与
を含む又はからなる投与計画(I)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせてAML及び/又はMDSを患う患者に投与することを特徴とする、請求項1又は2記載のAML及び/又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブ。
【請求項4】
ボラセルチブを、
a)有効量のボラセルチブ又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物の、4週の処置サイクルの間に最小限で2日の投与、
b)有効量のデシタビンの、前記の4週の処置サイクルの少なくとも1日の投与
を含む又はからなる投与計画(I)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて、AML及び/又はMDSを患う患者に投与することを特徴とする、請求項1又は2記載のAML及び/又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブ。
【請求項5】
投与日あたり250〜500mgのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物が投与される、請求項1〜4の一項以上に記載の使用のためのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物。
【請求項6】
投与日1日あたり5〜50mg/m2BSAのデシタビンが投与される、請求項1〜5の一項以上に記載の使用のためのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物。
【請求項7】
デシタビンが、前記の4週の処置サイクルの5日において投与される、請求項1〜6の一項以上に記載の使用のためのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物。
【請求項8】
デシタビンが、前記の4週の処置サイクルの10日において投与される、請求項1〜6の一項以上に記載の使用のためのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物。
【請求項9】
AML及び/又はMDSを患う患者が60歳以上であることを特徴とする、請求項1〜8の一項以上に記載の使用のためのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物。
【請求項10】
有効量のボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物と、有効量のデシタビン又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物とを含む、医薬組成物。
【請求項11】
有効量のボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物を含む第1コンパートメントと、有効量のデシタビン又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物を含む第2コンパートメントとを含む医薬キット。
【請求項12】
AML及び/又はMDSの処置用の医薬品として同時、別々、又は順次使用するための請求項10又は11記載の医薬組成物又は医薬キット。
【請求項13】
AML及び/又はMDSの処置用の医薬品として活性成分を同時、別々又は順次使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブと、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンとを含むことを特徴とする、医薬の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)を患う患者の処置のための、ボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物と組み合わせた、デシタビン又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物の使用に関する。
【0002】
発明の背景
急性骨髄性白血病(AML)(acute myeloid leukemia)は急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)としても知られるが、これは骨髄に蓄積しかつ正常な血液細胞の産生に干渉する異常な白血球の急速な増殖によって特徴付けられる、骨髄系の血液細胞の癌である。急性白血病として、AMLは急速に進行し、典型的には処置せず放置すれば数週間又は数か月間以内に致命的である。AMLは成人急性白血病の中で特に高齢者の間で最も有病率の高い病型であり、女性よりも男性の方が僅かにより多く見られる。推定されるAMLの症例数は、米国では30,000及び欧州では47,000である。
【0003】
AMLの発症は年齢と共に増加し、診断時の年齢中位数は67歳である。2013年までのAMLの世界の年間平均発症増加率は1.4%である。高齢化集団は、全てのAML症例の10〜20%を現在占める癌克服者における処置関連AMLの上昇した発症率と共に、AMLの発症を活発にさせると予想される。さらに、AMLの発症率に幾分かの地理的なばらつきがある。成人では、最も高い比率が北米、欧州、及びオセアニアに見られ、一方、成人AMLはアジア及びラテンアメリカでは希である。
【0004】
AMLは全ての癌による死亡の約1.2%を占める。AMLの5年間生存率は低く、これは治療の失敗及び患者の再発によって引き起こされる。65歳未満の患者の5年間生存率は34.4%であり、65歳以上の患者では僅か5%である。
【0005】
骨髄性腫瘍及び急性白血球のWHO分類は、AML分類のための現行標準であり、遺伝子異常を診断アルゴリズムに組み込む。この分類は、光学顕微鏡下で悪性細胞の外見を検査することによって、並びに細胞遺伝学及び分子遺伝学を使用してあらゆる根底にある染色体異常又は遺伝子変化を特徴付けることによって行なわれる。サブタイプは、予後、療法に対する応答、及び処置の決定に対して影響を及ぼす。
【0006】
高齢のAML患者は、若年のAML患者とは生物学的かつ臨床的に異なる。AMLの予後は年齢の上昇と共に悪化するが、高齢患者は、一般的に60歳以上と判断される。彼らは早期に死亡しやすく、治療に対する抵抗性を示しがちである。加齢は、悪い全身状態又は様々な併存症などの早期の死亡を予測する因子、及び処置への抵抗性を予測する因子(例えば、有害な細胞遺伝学、続発性AML、又はMDR表現型)に関連している。近年の分析は、強力な化学療法を高齢の(70歳以上)AML患者に行うことができるが、それは大半の患者にとって有益ではない可能性があり、患者によっては有害でさえあり得ることを示唆した。実際に、この分析は、70歳以上の大半(72%)のAML患者の予後は、強力な化学療法を用いると悪く、8週間の死亡率は36%であり、生存期間中央値は6カ月未満であることを示した。それ故、かなりの数の高齢AML患者のために強力な処置は考慮されず;入手可能なデータは、65歳から74歳の患者の約70%、及び74歳以上の患者の30%未満が、AMLの初回診断時に強力な療法を受けることを示す。現行の処置ガイドラインに基づき、デシタビンは高齢AML患者のために確立された処置選択肢である。
【0007】
骨髄異形成症候群(MDS)は、無効造血、末梢血の血球減少、及び急性骨髄性白血病(AML)へと進行する傾向の増加によって特徴付けられる、クローン性造血幹細胞疾患である。MDSの年齢調整発症率は100,000人あたり3.3症例であり、この比率は増加しつつあるようである。MDSは主に高齢者の疾病であり、MDS患者の年齢中位数は約70歳である。この患者集団は他の併存容態に罹患していることが多く、これが処置の決定に影響を及ぼす場合が多い。MDSの処置は、生存率及びAMLへの進行を予測する予後因子に基づく。現在、MDS患者の処置は、国際予後判定システム(IPSS)によって指導されている。このシステムは、患者を、血球減少数、骨髄芽球の比率、及び核型に基づいて、4つの群(低リスク群、中間リスク群−1、中間リスク群−2、及び高リスク群)に層別化する。低リスク群及び中間リスク群−1は通常、低リスク疾病として一緒に分類され、一方、中間リスク群−2及び高リスク群は、高リスク疾病として一緒に分類される。高リスクMDS患者の生存期間は、低リスク疾病患者の生存期間とは有意に異なる。介入することがなければ、高リスク患者の生存期間中央値は、ほぼ12カ月間である。低リスク疾病患者の生存期間はより多様であり、数か月間から(悪い予後、低リスク疾病)から10年以上まで幅広い。それ故、療法の目的は、低リスク疾病と高リスク疾病では異なる。低リスクMDSでは、目標は症状を軽減し、血球減少を管理し、輸血[例えば、赤血球生成刺激剤(ESA)及び増殖因子(GF)]の必要性を最小限にすることであり、高リスクMDSでは、AMLへの進行を遅延させ、生存期間を改善することに向けられた疾病修飾療法が使用される。これらの疾病修飾療法としては、メチル化抑制剤(HMA、例えばデシタビン)、強力な化学療法、及び同種幹細胞移植(SCT)が挙げられ、SCTが現在唯一の公知の治癒法である。これらの処置の選択肢にも関わらず、高リスクMDS患者、特に療法に関連したMDS患者の予後は、標準的な化学療法に基づいた療法の期待外れの活性、HMAに対する応答の最終的な低下、及び若年患者への適切なドナーを用いての同種SCTの制限のために、依然として非常に悪い。
【0008】
高リスク患者の処置は、該患者らが強力な療法(例えば同種SCT又は強力な化学療法)の候補であると判断されるかどうかに依存する。この決定に関連した臨床的な特徴としては、患者の年齢、全身状態、併存症、患者の嗜好、並びに適切なドナー及び介護者を利用できるかが挙げられる。同種SCTの利用は、高齢、併存症、及び/又はドナーの利用可能性によりMDS患者の約8%に限られている。非常に強力な療法の候補ではない高リスク患者では、HMAの使用が標準的な治療法と考えられる。
【0009】
化学療法剤の効力は、他の化合物との併用療法を使用することによって、及び/又は投与計画を改善することによって改善させることができる。たとえいくつかの治療剤の併用又は改善された投与計画の概念がすでに示唆されていたとしても、標準的な治療法を上回る利点を示す、癌疾病の処置のための新規かつ効率的な治療概念が依然として必要とされている。
【0010】
ボラセルチブは、細胞周期進行の重要な調節因子であるセリントレオニンPolo様キナーゼ(Plk)の非常に強力かつ選択的な阻害剤である。ボラセルチブは、明確に異なる薬物動態(PK)特性を有する第2世代のジヒドロプテリジノン誘導体である。本発明の根底にある問題は、最大限の活性及び僅かな毒性を有する、AML又はMDSにおけるボラセルチブ及びデシタビンの併用療法のための併用処置及び改善された投与計画を開発することであった。
【0011】
ボラセルチブ(I)は、N−[トランス−4−[4−(シクロプロピルメチル)−1−ピペラジニル]シクロヘキシル]−4−[[(7R)−7−エチル−5,6,7,8−テトラヒドロ―5−メチル−8−(1−メチルエチル)−6−オキソ−2−プテリジンル]アミノ]−3−メトキシ−ベンズアミド
【化1】

で示される化合物として知られる。
【0012】
この化合物は国際公開公報第04/076454号に開示されている。さらに、その三塩酸塩形態及びその水和物が国際公開公報第07/090844号から公知である。それらは、それらの形態を医薬使用に特に適したものとさせる特性を有する。上記の特許出願は、過剰な又は異常な細胞増殖によって特徴付けられる疾病の処置を特に目的とした、医薬組成物の調製のためのこの化合物又はそのモノエタンスルホン酸塩の使用をさらに開示する。
【0013】
国際公開公報第2006/018182号の文書は、細胞増殖を含む疾病の処置のための他の組み合わせも開示する。
【0014】
デシタビンは、DNAメチルトランスフェラーゼを阻害するメチル化抑制剤であり、例えば商標名ダコジェン(Dacogen)によって知られている。デシタビンは、以前に処置されたことのある及び未処置の若年成人及び高齢のAML患者の処置、並びに、以前に処置されたことのある及び未処置の新規及び2回目のMDS、並びにIPSSの中間リスク群−1、中間リスク群−2、及び高リスク群を含む、MDS患者の処置において研究されてきた。
【0015】
発明の要約
動物実験において、ボラセルチブ及びデシタビンを用いての癌処置は、両方の化合物の単独療法と比較して、相乗作用効力のプロファイル(例えば減退した腫瘍増殖及び有益な副作用プロファイル)を含むことが判明した。
【0016】
したがって、本発明の第1の目的は、活性成分を同時、別々、又は順次使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブと、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンとを含む、医薬の組み合わせを指す。
【0017】
本発明の別の目的は、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブを含む1つの医薬組成物と、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンを含む別の医薬組成物とを含む、キットに関する。
【0018】
本発明の別の目的は、有効量のボラセルチブを含む第1コンパートメントと、デシタビンを含む第2コンパートメントとを、場合によりAML又はMDSを患う患者に両方の活性成分を投与するための説明書と一緒に含む医薬キットに関し、該説明書に従って、ボラセルチブ(1つの実施態様では250、300、350、400、450、又は500mg、別の実施態様では300又は350mg)及びデシタビン(1つの実施態様では5〜50mg/m2(BSA:体表面積)、別の実施態様では20mg/m2(体表面積))が下記の投与計画に従って投与されるべきである。
【0019】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、両方の活性成分は同時に、別々に、又は順次投与され得ることを特徴とする。
【0020】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンに関し、デシタビンは、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブと組み合わせて投与され、両方の活性成分は同時に、別々に、又は順次投与され得ることを特徴とする。
【0021】
本発明の別の目的は、ボラセルチブを、
a)有効量のボラセルチブ又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物の、4週の処置サイクルの間に最小限で1日、好ましくは2日の投与、
b)有効量のデシタビンの、前記の4週の処置サイクルの少なくとも1日の投与
を含む又はからなる投与計画(I)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせてAML又はMDSを患う患者に投与することを特徴とする、AML又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関する。
【0022】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(II))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、投与計画(I)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、ボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物は、4週の処置サイクルの間の1日目に、及び7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21日目の中の1日に投与されることを特徴とする。好ましくは、等用量のボラセルチブが両方の投与日に投与される。
【0023】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(III))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)又は(II))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、1つの実施態様では、投与日あたり、250〜500mg、別の実施態様では、250、300、350、400、450又は500mg、さらに別の実施態様では300又は350mgのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物が投与されることを特徴とする。
【0024】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(IV))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの5日(5 days)、好ましくは1〜5日目に投与されることを特徴とする。
【0025】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(V))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの6日、好ましくは1〜6日目に投与されることを特徴とする。
【0026】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(VI))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの7日、好ましくは1〜7日目に投与されることを特徴とする。
【0027】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(VII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの8日、好ましくは1〜8日目に投与されることを特徴とする。
【0028】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(VIII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの9日、好ましくは1〜9日目に投与されることを特徴とする。
【0029】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(IX))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)又は(III))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の4週の処置サイクルの10日、好ましくは1〜10日目に投与されることを特徴とする。
【0030】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(X))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、又は(IX))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、1つの実施態様では投与日あたり5〜50mg/m2(体表面積)、別の実施態様では20mg/m2(体表面積)のデシタビンが投与される。
【0031】
本発明の別の目的は、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブ、及び場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンを、投与計画(I)〜(X)の1つの従って投与することを特徴とする、AML又はMDSの処置法を指す。
【0032】
本発明の別の目的は、AML又はMDSを患う患者におけるAML又はMDSの処置用の医薬品の製造のための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブの使用を指し、該医薬品は投与計画(I)〜(X)の1つに従って投与されるために調製される。
【0033】
本発明の別の目的は、AML又はMDSを患う患者におけるAML又はMDSの処置用の医薬品の製造のための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンの使用を指し、該医薬品は投与計画(I)〜(X)の1つに従って投与されるために調製される。
【0034】
本発明の別の目的は、有効量のボラセルチブ及び有効量のデシタビンを、場合によりAML又はMDSを患う患者への両方の活性成分の投与のための説明書と一緒に含む、医薬組成物であり、該説明書に従ってボラセルチブを上記の投与計画(I)〜(X)に従って投与すべきである。
【0035】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブを、
a)有効量のボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物の、6週の処置サイクルの間に最小限で1日、好ましくは2日又は3日の投与、及び
b)有効量のデシタビンの、前記の6週の処置サイクルの少なくとも1日の投与
を含む又はからなる投与計画(XI)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせてAML又はMDSを患う患者に投与することを特徴とする。
【0036】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、投与計画(XI)に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、ボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物は、6週の処置サイクルの間の1日目に、及び5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28日目の1日に投与されることを特徴とする。好ましくは、等用量のボラセルチブが両方の投与日に投与される。
【0037】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XIII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)又は(XII))に従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、1つの実施態様では投与日あたり200〜500mg、別の実施態様では200、250、300、350、400、450、又は500mg、さらに別の実施態様では300又は350mgのボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物が投与されることを特徴とする。
【0038】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XIV))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの2日、好ましくは1〜2日目に投与されることを特徴とする。
【0039】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XV))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの3日、好ましくは1〜3日目に投与されることを特徴とする。
【0040】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XVI))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの4日、好ましくは1〜4日目に投与されることを特徴とする。
【0041】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XVII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの5日、好ましくは1〜5日目に投与されることを特徴とする。
【0042】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XVIII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの6日、好ましくは1〜6日目に投与されることを特徴とする。
【0043】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XIX))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの7日、好ましくは1〜7日目に投与されることを特徴とする。
【0044】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XX))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの8日、好ましくは1〜8日目に投与されることを特徴とする。
【0045】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XXI))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの9日、好ましくは1〜9日目に投与されることを特徴とする。
【0046】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XXII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)又は(XIII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、デシタビンは、前記の6週の処置サイクルの10日、好ましくは1〜10日目に投与されることを特徴とする。
【0047】
本発明の別の目的は、AML又はMDSの処置(投与計画(XXIII))に使用するための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブに関し、ボラセルチブは、上記の投与計画(投与計画(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)又は(XXII))の1つに従って、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンと組み合わせて投与され、1つの実施態様では投与日1日あたり5〜90mg/m2(体表面積)、別の実施態様では45mg/m2(体表面積)のデシタビンが投与されることを特徴とする。
【0048】
本発明の別の目的は、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブ、及び場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンを、投与計画(XI)から(XXIII)の1つに従って投与することを特徴とする、AML又はMDSの処置法を指す。
【0049】
本発明の別の目的は、AML又はMDSを患う患者におけるAML又はMDSの処置用の医薬品の製造のための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のボラセルチブの使用を指し、該医薬品は、投与計画(XI)から(XXIII)の1つに従って投与するために調製される。
【0050】
本発明の別の目的は、AML又はMDSを患う患者におけるAML又はMDSの処置用の医薬品の製造のための、場合により薬学的に許容されるその塩又はその水和物の形態のデシタビンの使用を指し、該医薬品は、投与計画(XI)から(XXIII)の1つに従って投与するために調製される。
【0051】
本発明の別の目的は、有効量のボラセルチブ及び有効量のデシタビンを、場合によりAML又はMDSを患う患者への両方の活性成分の投与のための説明書と一緒に含む、医薬組成物であり、該説明書に従ってボラセルチブを上記の投与計画(XI)から(XXIII)に従って投与すべきである。
【0052】
上記の合剤、医薬組成物、医薬キット、投与計画、及び他の実施態様を、全ての年齢の患者に、好ましくは60歳以上の患者に、より好ましくは65歳以上の患者に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖動態を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、10mg/kgのボラセルチブ(Bl 6727)を用いて1週に1回静脈内に、1.25mg/kgのデシタビンを用いて1週に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週かけて処置した。腫瘍体積の中央値を経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。この異種移植モデルからの効力の結果は、AML並びにMDSに対して有効と判断される。
図2図2は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける経時的な体重変化を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、10mg/kgのボラセルチブを用いて1週に1回静脈内に、1.25mg/kgのデシタビンを用いて1週に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週間かけて処置した。1日目と比較した体重変化の中央値を、経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。
図3図3は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖動態を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、10mg/kgのボラセルチブを用いて1週に1回静脈内に、2.5mg/kgのデシタビンを用いて1週間に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週間かけて処置した。腫瘍体積の中央値を経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。この異種移植モデルからの効力の結果は、AML並びにMDSに対して有効と判断される。
図4図4は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける経時的な体重変化を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、10mg/kgのボラセルチブを用いて1週に1回静脈内に、2.5mg/kgのデシタビンを用いて1週に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週かけて処置した。1日目と比較した体重変化の中央値を、経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。
図5図5は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖動態を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、20mg/kgのボラセルチブを用いて1週に1回静脈内に、1.25mg/kgのデシタビンを用いて1週に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週間かけて処置した。腫瘍体積の中央値を経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。この異種移植モデルからの効力の結果は、AML並びにMDSに対して有効と判断される。
図6図6は、ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデルにおける経時的な体重変化を示す。腫瘍を有するマウスを、ビヒクルを用いて、又は、20mg/kgのボラセルチブを用いて1週に1回静脈内に、1.25mg/kgのデシタビンを用いて1週に2回腹腔内に、又はボラセルチブとデシタビンの組み合わせを用いてのいずれかで3週かけて処置した。1日目と比較した体重変化の中央値を、経時的にプロットする。1日目は実験の初日であり、21日目は実験の最終日であった。
【0054】
発明の詳細な説明
ボラセルチブが4週の処置サイクルの間に最小限で2日投与される場合、ボラセルチブは4週の処置サイクルの間に非連続的な2日において投与される。
【0055】
前記の4週の処置サイクルの少なくとも1日においての有効量のデシタビンの投与とは、ボラセルチブが最小限で1回投与される4週の処置サイクルの間に、デシタビンも少なくとも1日投与されることを意味する。
【0056】
4週の処置サイクルの間の1日目及び15日目においてのボラセルチブの投与とは、4週の処置サイクルにおいて、1用量のボラセルチブ又は薬学的に許容されるその塩若しくはその水和物が1日目にAML又はMDSを患う患者に投与され、2回目の用量が15日目に投与されることを意味する。
【0057】
4週の処置サイクルの間の、それぞれ1日目から5日目、1日目から6日目、1日目から7日目、1日目から8日目、1日目から9日目、又は1日目から10日目のデシタビンの投与とは、1日量のデシタビン又は薬学的に許容されるその塩を、AML又はMDSを患う患者に、4週の処置サイクルにおいて、1日目から開始して、それぞれ5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、又は10日目の最後の投与量で終了するように投与することを意味する。
【0058】
したがって、上記の投与計画の1つによる完全な4週の処置サイクルは、以下の投与を含み得る:
1日目:1用量のボラセルチブ(例えば300又は350mg)及び1用量のデシタビン(例えば20mg/m2(体表面積));
2日目から5日目(2日目と5日目を含む):1日あたり1用量のデシタビン(例えば20mg/m2(体表面積));
6日目から14日目(6日目と14日目を含む):ボラセルチブ及びデシタビンを全く投与しない;
15日目;1用量のボラセルチブ(例えば300又は350mg);
16日目から28日目(16日目と28日目を含む):ボラセルチブ及びデシタビンを全く投与しない。
【0059】
6週の処置サイクルの場合には、上記の説明を状況に応じて適切に適用することができる。
【0060】
処置サイクルは、患者が反復サイクルに適格である限り、すなわち疾病が進行するまで、及び、患者も治験担当者も処置の中止を要求しない限り反復することができる。
【0061】
共投与の説明書は、医薬品に適した任意の形態、例えば、2番目の包装内の剤形に添加されたパンフレット、又は1番目若しくは2番目の包装上の印刷物の形態であり得る。
【0062】
投与量/ボラセルチブ:
静脈内処置ではボラセルチブは、ヒト患者に、4週の処置サイクルの間に1回の適用あたり250〜500mg、別の実施態様では1回の適用あたり250、300、350、400、450、又は500mg、さらに別の実施態様では1回の適用あたり300又は350mgの1日量で投与され得る。例えば、ボラセルチブは、数時間かけての、例えば約1、2、4、6、10、12又は24時間、好ましくは約1又は2時間かけての緩徐な静脈内注入として投与され得る。
【0063】
静脈内処置ではボラセルチブは、ヒト患者に、6週の処置サイクルの間に1回の適用あたり250〜500mg、別の実施態様では1回の適用あたり200、250、300、350、400、450、又は500mg、さらに別の実施態様では1回の適用あたり300又は350mgの1日量で投与され得る。例えば、ボラセルチブは、数時間かけての、例えば約1、2、4、6、10、12又は24時間、好ましくは約1又は2時間かけての緩徐な静脈内注入として投与され得る。
【0064】
投与量/デシタビン:
デシタビンは、4週の処置サイクルの間に1日あたりの総量が5〜60mg/m2(体表面積)で、例えば1日あたりの総量が5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50mg/m2(体表面積)で1日1回又は2回投与され得る。また、1日のうちに摂取されるべき1日あたりの総量を、2回又は3回の分割用量に分割してもよい。好ましくは、1日量は20mg/m2(体表面積)の1回量で投与される。
【0065】
デシタビンは、6週間の処置サイクルの間に、1日あたりの総量が5〜90mg/m2(体表面積)で、例えば1日あたりの総量が5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90mg/m2(体表面積)で投与され得る。また、1日のうちに摂取されるべき1日あたりの総量を、2回又は3回の分割用量に分割してもよい。好ましくは、45mg/m2(体表面積)の1日量が、3回の15mg/m2(体表面積)の投与量で投与される(8時間毎に投与)。
【0066】
しかし、体重、又は投与法、薬物療法に対する個々の応答、使用される製剤の性質、及びそれが投与される時間若しくは間隔に依存して、ボラセルチブ及びデシタビンについて明記された投与量から逸脱することが場合により必要であり得る。したがって、場合によっては、上記に明記された最小限の量よりも少ない量の使用で十分である場合もあり、他の場合では、明記された上限を超えなければならないこともあるだろう。多くの量が投与される場合、その多くの量を1日の間に多数の1回量へと分割することが賢明であり得る。
【0067】
剤形及び製剤の態様
ボラセルチブについての本発明の任意の態様に関して、薬学的に許容されるその塩又はその水和物、好ましくは国際公開公報第07/090844号に開示されているようなその三塩酸塩形及びその水和物が使用され得る。本発明の脈絡において提供される活性成分の投与量又は量は、いずれの場合においても、遊離塩基形のボラセルチブである遊離塩基等価体を指す。
【0068】
「治療有効量」という用語は、研究者又は臨床医によって探究されている組織系、動物又はヒトの生物学的応答又は医学的応答を誘発して、その結果、少なくとも統計学的に有意な割合の患者に対して、有益な効果、例えば、症状の改善、治癒、疾病負荷の低減、腫瘍量若しくは白血病細胞数の低減、末梢血細胞数の改善、寿命の延長、又は生活の質の改善をもたらす薬物又は医薬の量を意味する。
【0069】
4週の処置サイクルの1日目は、ボラセルチブの初回量が投与された日として定義される。
【0070】
高齢のAML患者は、若年のAML患者とは生物学的かつ臨床的に異なる。AMLの予後は年齢の上昇と共に悪化するが、高齢患者は、一般的に60歳以上と判断される。彼らは早期に死亡しやすく、治療に対する抵抗性を示しがちである。加齢は、悪い全身状態又は様々な併存症などの早期の死亡を予測する因子、及び処置への抵抗性を予測する因子(例えば、有害な細胞遺伝学、続発性AML、又はMDR表現型)に関連している。それ故、かなりの数の高齢AML患者に対して、強力な処置は考慮されない。
【0071】
強力な処置には不適格であると判断された患者は、一般的に認められているAML患者亜群をなすが、強力な処置に対する患者の適格性を判断するための有効な基準は全く定義されていない。強力な処置に対する適格性の評価は、専門医の臨床経験と、患者の年齢、AMLの細胞遺伝学/分子遺伝学、パフォーマンススコア、臓器機能障害及び併存症、並びに詳細な説明を受けた上での患者による決断などの因子の包括的な見直しに基づいて、患者1人1人について規則的に実施される。現在の慣行では、強力に処置するか否かの最終決断は、処置にあたる血液学者によって個別的になされる。このアプローチは、現在の診療ガイドライン(例えば、欧州白血病ネット(ELN)推奨、NCCNガイドライン(米国総合がん情報ネットワーク))において反映されている。
【0072】
本発明における「AML」という用語は、骨髄性腫瘍及び急性白血病の世界保健機関(WHO)分類の2008年改訂版に記載の全ての病型の急性骨髄性白血病及び関連腫瘍を包含すると理解されたい。これらは:
・反復性遺伝子異常を有する急性骨髄性白血病
〇 t(8;21)(q22;q22); RUNX1-RUNX1T1を有するAML
〇 inv(16)(p13.1q22)又はt(16;16)(p13.1;q22); CBFB-MYH11を有するAML
〇 t(9;11)(p22;q23); MLLT3-MLLを有するAML
〇 t(6;9)(p23;q34); DEK-NUP214を有するAML
〇 inv(3)(q21q26.2)又はt(3;3)(q21;q26.2); RPN1-EVI1を有するAML
〇 t(1;22)(p13;q13); RBM15-MKL1を有するAML(巨核芽球性)
〇 暫定分類:NPM1遺伝子変異を有するAML
〇 暫定分類:CEBPA遺伝子変異を有するAML
・骨髄異形成に関連した変化を有する急性骨髄性白血病
・治療関連骨髄性腫瘍
・分類不能の急性骨髄性白血病
〇 最未分化型AML
〇 未分化型AML
〇 分化型AML
〇 急性骨髄単球性白血病
〇 急性単芽球性白血病/急性単球性白血病
〇 急性赤白血病
・純粋赤白血病
・赤白血病、赤血球系/骨髄性
〇 急性巨核芽球白血病
〇 急性好塩基球性白血病
〇 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症
・骨髄肉腫
・ダウン症候群に関連した骨髄増殖症
〇 一過性異常骨髄増殖症
〇 ダウン症候群に伴う骨髄性白血病
・芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍
【0073】
本発明において「MDS」という用語は、骨髄性腫瘍及び急性白血病の世界保健機構(WHO)分類の2008年改訂版に記載の全ての病型の骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)及び骨髄異形成症候群を包含すると理解されたい。これらは:
・骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)
〇 慢性骨髄単球性白血病
〇 非定型的慢性骨髄性白血病、BCR−ABL1陰性
〇 若年性骨髄単球性白血病
〇 分類不能な骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
〇 暫定分類:環状鉄芽球及び血小板増加を伴う不応性貧血
・骨髄異形成症候群(MDS)
〇 単一血球系統異形成を伴う不応性血球減少症
〇 不応性貧血
〇 不応性好中球減少症
〇 不応性血小板減少症
〇 環状鉄芽球を伴う不応性貧血
〇 多血球系統異形成を伴う不応性血球減少症
〇 芽球増加を伴う不応性貧血
〇 染色体異常del(5q)を伴う骨髄異形成症候群
〇 分類不能な骨髄異形成症候群
〇 小児骨髄異形成症候群
〇 暫定分類:小児不応性血球減少症
【0074】
本発明によると、ボラセルチブは非経口(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、経皮、又は皮下注射)によって投与され得、それは単独で、又は、各々の投与経路に適した慣用的で無毒性な薬学的に許容される担体、補助剤、及びビヒクルを含有する適切な投与単位製剤において一緒に製剤化され得る。本発明に適した両方の活性成分の剤形及び製剤は当技術分野において公知である。例えば、このような剤形及び製剤としては、国際公開公報第2006/018221号に開示されたものが挙げられる。
【0075】
本発明によると、デシタビンは非経口(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、経皮、又は皮下注射、又は埋め込み)投与経路によって投与され得、それは単独で、又は、各々の投与経路に適した慣用的で無毒性な薬学的に許容される担体、補助剤、及びビヒクルを含有する適切な投与単位製剤において一緒に製剤化され得る。
【0076】
以下の実施例は本発明を制限することなく本発明を説明する役目を果たす。
【0077】
細胞
MV4;11(CRL−9591)細胞をATCCから入手した。英国のウェルカムトラストサンガー研究所の癌における体細胞突然変異カタログによると、この細胞株は、FLT3遺伝子に突然変異を有する。細胞を、37℃及び5%COでT175組織培養フラスコ中で培養した。使用された培地は、10%胎児ウシ血清、1%NEAA、1%ピルビン酸ナトリウム及び1%グルタミンの補充されたIMDMであった。
【0078】
マウス
マウスは、デンマークのTaconic社から購入した8〜9週令の無胸腺BomTac: NMRI-Foxn1nuであった。動物施設に到着した後、マウスを少なくとも3日間かけて周囲条件に適合させ、その後、それらを実験に使用した。それらを21.5±1.5℃の温度及び55±10%の湿度の標準的な条件下で5つのグループに分けてMacrolon(登録商標)II型ケージに収容した。標準的な食餌(PROVIMI KLIBA)及びオートクレーブにかけた水道水を自由に与えた。
【0079】
腫瘍の確立、無作為化
皮下腫瘍を確立するために、MV4;11細胞を収集し、5×10個の細胞/mlでPBS+5%FCS中に再懸濁した。その後、2.5×10個の細胞を含有する細胞懸濁液50μlを、マウスの右側腹部に皮下注射した(マウス1匹あたり1部位)。増殖因子を低減させたBD Matrigel(商標)マトリックス(BD Biosciences)を、注射前に、1:1の比で細胞懸濁液に加えた。腫瘍を十分に確立させ、腫瘍体積が約90mm3に達すると、マウスを、細胞を注射した12日後に処置群とビヒクル対照群とに無作為に分けた。
【0080】
試験化合物の投与
ボラセルチブ(Bl 6727)を塩酸(0.1N)に溶かし、0.9%NaClで希釈し、尾静脈に静脈内注射した。体重1kgあたり10mlの投与容量を使用した。溶液を注射日毎に新しく作製した。デシタビンを0.9%NaClに溶かし、腹腔内投与した。体重1kgあたり10mlの投与容量を使用した。適用溶液を4℃で数日間保存した。
【0081】
腫瘍増殖及び副作用のモニタリング
腫瘍の直径を、キャリパーを用いて1週に3回測定した。各腫瘍体積[mm3]を、式「腫瘍体積=(長径)×(短径)×π/6」に従って算出した。処置の副作用をモニタリングするために、マウスを異常について毎日検査し、体重を1週に3回決定した。動物を、試験の終了時に、すなわち対照腫瘍が平均して約1100mm3のサイズの達した時に殺屠した。さらに、2000mm3を超える腫瘍サイズを有する動物を、倫理的理由から試験中に早期に殺屠した。
【0082】
実施例1:ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデル
マウスの異種移植片を、1週に1回投与される単独のボラセルチブでの処置(10mg/kg、静脈内)、2日連続して1週に2回投与される単独のデシタビンでの処置(1.25mg/kg、腹腔内)、及びボラセルチブ/デシタビンの組合せでの処置(10mg/kg、静脈内/1.25mg/kg、腹腔内)を比較した実験の結果を、図1に示す。動物を21日間処置した。10mg/kgのボラセルチブを静脈内に1週に1回と、1.25mg/kgのデシタビンを腹腔内に連続した日に1週に2回の組合せ(T/C=40%;T/C:処置腫瘍対対照腫瘍の腫瘍体積の中央値の比)は、いずれかの単独の薬剤(ボラセルチブ:T/C=76%;デシタビン:T/C=59%)による処置と比較して減退した腫瘍の増殖を示した。組合せ群における体重増加は、図2に示されているように単剤のボラセルチブ又は単剤のデシタビンと同等であったので、有益な副作用プロファイルが実証された。
【0083】
実施例2:ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデル
マウスの異種移植片を、1週に1回投与される単独のボラセルチブでの処置(10mg/kg、静脈内)、2日間連続して1週に2回投与される単独のデシタビンでの処置(2.5mg/kg、腹腔内)、及びボラセルチブ/デシタビンの組合せでの処置(10mg/kg、静脈内/2.5mg/kg、腹腔内)を比較した実験の結果を、図3に示す。動物を21日処置した。10mg/kgのボラセルチブを静脈内に1週に1回と、2.5mg/kgのデシタビンを腹腔内に連続した日に1週に2回の組合せ(T/C=22%)は、いずれかの単独の薬剤(ボラセルチブ:T/C=76%;デシタビンブ:T/C=53%)による処置と比較して減退した腫瘍の増殖を示した。組合せ群における体重増加は、図4に示されているように単剤のデシタビン又は単剤のボラセルチブと同等であったので、有益な副作用プロファイルが実証された。
【0084】
実施例3:ヒトAML細胞株MV4;11に由来するヌードマウス異種移植モデル
マウスの異種移植片を、1週に1回投与される単独のボラセルチブでの処置(20mg/kg、静脈内)、2日間連続して1週に2回投与される単独のデシタビンでの処置(1.25mg/kg、腹腔内)、及びボラセルチブ/デシタビンの組合せでの処置(20mg/kg、静脈内/1.25mg/kg、腹腔内)を比較した実験の結果を、図5に示す。動物を21日処置した。20mg/kgのボラセルチブを静脈内に1週に1回と、1.25mg/kgのデシタビンを腹腔内に連続した日に1週に2回の組合せ(T/C=20%)は、いずれかの単独の薬剤(ボラセルチブ:T/C=38%;デシタビン:T/C=59%)による処置と比較して減退した腫瘍の増殖を示した。組合せ群における体重増加は、図6に示されているように単剤のボラセルチブ又は単剤のデシタビンと同等であったので、有益な副作用プロファイルが実証された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】