(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-525892(P2016-525892A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】医療用スリング
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20160805BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20160805BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20160805BHJP
【FI】
A61F2/04
A61N1/05
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-547268(P2015-547268)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】IL2013050973
(87)【国際公開番号】WO2014091476
(87)【国際公開日】20140619
(31)【優先権主張番号】61/729,825
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515157699
【氏名又は名称】イノヴェンションズ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤチャ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ポノマレンコ,ヴァレンティン
(72)【発明者】
【氏名】ネタネル,オータル
【テーマコード(参考)】
4C053
4C097
【Fターム(参考)】
4C053BB34
4C053BB36
4C053JJ24
4C097AA14
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD12
4C097FF12
4C097FF17
(57)【要約】
体内臓器を支持するための植え込み型スリングを提供する。スリングは、例えば、骨盤臓器脱の修復のための尿道スリング、恥骨直腸スリング又は外科用メッシュとして使用され得る。本発明のスリングは、第1スリング本体及び第1スリング本体から伸びる2本以上の細長い第1突起を有する第1スリング要素を有する。スリングはさらに、第2スリング本体及び第2スリング本体から伸びる2本以上の細長い第2突起を有する第2スリング要素、並びに第1スリング要素及び第2スリング要素を接続する1つ以上の切り離し可能な接続部を備え得る。いくつかの実施形態では、接続部は第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに断裂するよう構成される。
【選択図】
図7a、7b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1スリング要素であって、第1スリング本体及び該第1スリング本体から伸びる2本以上の細長い第1突起を備える第1スリング要素、
を備える植え込み型スリング。
【請求項2】
(a)第2スリング要素であって、第2スリング本体及び該第2スリング本体から伸びる2本以上の細長い第2突起を備える第2スリング要素;及び
(b)前記第1スリング要素及び前記第2スリング要素を接続する1つ以上の切り離し可能な接続部、
をさらに備える、請求項1に記載の尿道スリング。
【請求項3】
請求項2に記載のスリングであって、前記接続部は前記第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに断裂するよう構成される、スリング。
【請求項4】
請求項2に記載のスリングであって、前記接続部は前記第1及び第2のスリング要素を接続する少なくとも1本のフィラメントを備える、スリング。
【請求項5】
請求項2に記載のスリングであって、前記1つ以上の接続部は、前記第1スリング要素の第1伸長突起と前記第2スリング要素の第2伸長突起との間にある、スリング。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリングであって、前記第1スリング要素は膨張式である、スリング。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載のスリングであって、前記第2スリング要素は膨張式である、スリング。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のスリングであって、前記膨張式スリング要素は、膨張物質を該膨張式スリング要素内に導入するためのポートを有する、スリング。
【請求項9】
請求項8に記載のスリングであって、前記膨張式スリング要素のポートは前記スリング要素の自由端部に配置される、スリング。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のスリングであって、前記スリングは非弾性の可撓性材料から作製される、スリング。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のスリングであって、前記スリングは滑らかな外面を有する、スリング。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のスリングであって、前記スリングは生分解性又は生体吸収性のメッシュ材料の層の間に埋め込まれる、スリング。
【請求項13】
請求項12に記載のスリングであって、前記メッシュの層はスナップフィット取り付けによって互いに結合される、スリング。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のスリングであって、前記細い第1突起は第1ワイヤ又は第1フィラメントである、スリング。
【請求項15】
請求項2〜14のいずれか一項に記載のスリングであって、前記細い第2突起は第2ワイヤ又は第2フィラメントである、スリング。
【請求項16】
請求項15に記載のスリングであって、前記第1の細長い突起は前記第1ワイヤ又は第1フィラメントであり、該第1ワイヤ又は第1フィラメントは前記第2ワイヤ又は第2フィラメントで織られている、スリング。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のスリング及び筋肉刺激装置を備えるシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記筋肉刺激装置は、尿道周囲及び骨盤の筋肉の一方又は両方を刺激するように構成される、システム。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のシステムであって、前記筋肉刺激装置は、
(a)圧力センサ及び動きセンサから選択される種類の1つ以上のセンサであって、前記スリングへの圧力又は前記スリングの動きを監視するように構成された1つ以上のセンサ;
(b)尿道周囲及び骨盤の筋肉から選択される1つ以上に植え込まれるように構成された1つ以上の電極;及び
(c)プロセッサであって、
(i)前記センサからの信号を分析して、前記スリングへの圧力における急激な増加、及び前記スリングの動きにおける急激な増加の一方又は両方を検出し;及び
(ii)前記スリングへの圧力及び前記スリングの動きの一方又は両方における急激な増加が検出されると、前記電極が植え込まれた筋肉の収縮が生じるよう前記電極を作動させるように構成された、プロセッサ、
を備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、さらに、
(a)自然な身体の動きから電気エネルギーを発生させる工程;
(b)前記電気エネルギーを貯蓄する工程;及び
(c)前記蓄積されたエネルギーによって電極を作動させる工程、
のための手段を含む、システム。
【請求項21】
i)(a)膨張式第1スリング要素であって、第1スリング本体及び前記第1スリング本体から伸びる2本以上の細長い第1突起を備える第1スリング要素、
を備える尿道スリングを提供する工程;
ii)前記第1スリング要素を第1本体構造に取り付ける工程;及び
iii)前記第1スリング要素を膨張させる工程、
を含む体内臓器を支持する方法。
【請求項22】
i)(a)第1スリング要素;
(b)第2スリング要素;及び
(c)前記第1スリング要素及び前記第2スリング要素を接続する1つ以上の切り離し可能な接続部、
を備える尿道スリングを提供する工程;
ii)前記第1スリング要素を第1本体構造に取り付ける工程であって、該第1本体構造は体内臓器の第1側部に配置される、工程;及び
iii)前記第2スリング要素を第2本体構造に取り付ける工程であって、該第2本体構造は体内臓器の第2側部に配置され、前記スリングは前記第1本体構造から前記第2本体構造にわたって前記体内臓器の周りを通過する、工程、
を含む体内臓器を支持する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹圧性尿失禁、便失禁及び骨盤臓器脱などの様々な症状の治療に使用するための取り外し可能なスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の先行技術の刊行物は、本発明の背景の理解に関係すると考えられる。
【0003】
オルタンスタイン(Hortenstine)の特許文献1、ロンギーニ(Longhini)の特許文献2、 非特許文献1及び非特許文献2。
【0004】
腹圧性尿失禁(SUI)は、咳、笑い又はくしゃみの際に生じるような腹腔内圧の上昇の際の意図しない尿漏出である。SUIの1つの原因は、尿道の恥骨後隙の外への移動及び膣内での回転を可能とする尿道の不十分な身体構造上の支持にある。この状態は「尿道の過可動性」又は単に「過可動性」として知られている。SUIはまた、尿道が完全につぶれて密閉することを防ぐ尿道の不十分な閉鎖圧力から生じ得る。SUIは、前立腺手術の際に自発的な括約筋機構が部分的又は完全に損傷した結果として男性において発症し得る。
【0005】
女性が被る別の医学的状態は骨盤臓器脱(POP)であり、これは通常、骨盤内に位置する臓器(膀胱、腸及び子宮)の脱出を指す。通常、これらの臓器は「骨盤底」によって支持されている。骨盤底の弱化はこれらの臓器が膣に向かうヘルニア形成を許容する。
【0006】
他の医学的状態は便失禁であり、これは便通が制御不能なことであり、直腸からの便の予想外の漏出を引き起こす。これは老化に関連する弱化した肛門括約筋、又は出産時、直腸、膣及び肛門領域の外科的処置の際又はその後に発生し得る直腸及び肛門の損傷した神経及び筋肉に起因し得る。
【0007】
尿道スリングは、女性における過可動性及び男性における術後の失禁を治療するために使用されてきた。尿道スリングは典型的には尿道の下に植え込まれて尿道の下に支持を提供し、かつ膣に向かう尿道の望ましくない動き又は男性の尿道球の圧迫を防止する。尿道を支持するために尿道の下に植え込まれる種々の異なるスリングが開発されてきた。女性において、これらのスリングは一般的に、尿道を持ち上げるのではなく、過可動性に関連する望ましくない下方への尿道の動きを防止するために尿道への支持を提供することを意図したものである。過去には、シリコンストリップ製のスリングが使用されていた。この実施は、膣又は尿道の側部の組織びらん又はさらには尿道膣瘻形成などの合併症の割合が高いために中止された。過去に使用されており、かつ今もなお使用されている別のスリングは自己スリングである。このスリングは腹部の筋膜又は脚部からの大腿筋膜のストリップを切断することで摘出される。筋膜スリングは、身体の別の領域に手術を拡張することによってはスリングに関連した局所合併症を示さないが、それらは罹患率を増加させた。
【0008】
典型的な尿道スリングは経膣アプローチを用いて植え込まれるメッシュのストリップを備え、該アプローチではメッシュの反対側の端部は尿道の(側部又は上方に向かう)反対側に配置されるため、メッシュは尿道の下で輪になりスリングを形成する。メッシュは、典型的にはスリングのメッシュに取り付けられた針を用いて植え込まれ、それによりメッシュの端部は体内に挿入されて、所望の出口位置で体内を出ることができ、その後、恥骨又は腹部筋膜の組織に固定され、皮膚の下、又は尿道周囲若しくは膣周囲の空間に残り、組織増殖によって自己固定する。体外に伸びる過剰のメッシュは除去されて、メッシュの残りは皮膚の下に放置され得る。スリングの植え込み後の最初の日の間、非固定スリングは摩擦によって、その後はメッシュの隙間を通る組織の内部成長によって適所に保持される。
【0009】
POPは、骨盤底に縫合糸を適用して膣を再形成し、かつ脱出臓器をそれらの通常位置に戻すことによって、又はメッシュの層を配置して脱出臓器を支持することによって修復可能である。膣を介した、又は腹部を介した(開腹又は腹腔鏡下のいずれかの)手術はPOP修復の通常の方法である。
【0010】
便失禁は括約筋形成術によって治療される。このような手術に適していないか、又は括約筋形成術に失敗した患者には、恥骨直腸スリングが植え込まれ得る。
【0011】
メッシュスリングは一般的に失禁又はPOPの治療に成功しているが、時折失敗する。失敗原因の1つには、スリングの不適切な位置決め、植え込み時のスリングの不十分又は過度の伸長、及び植え込み後しばらくしてのスリングの配置転換がある。メッシュの植え込み後に発症し得る合併症のいくつかには、スリングによる失禁、術後の尿閉の防止における失敗、スリングによって引き起こされる膀胱過活動、性交痛、性的な機能障害及び/又は不快感、感染症、膣及び尿道の組織びらんがある。これらの合併症のいくつかにおいては、メッシュスリング除去の兆候であり得る。メッシュスリングは簡単な手術では後になって除去され得ない。メッシュ空間への組織の内部成長後、植え込まれたメッシュの完全な除去は非常に困難である。誤って置かれたメッシュスリングの調整は、手術中、又はメッシュスリング植え込みの直後若しくはその後の最初の日以内に、スリングの端部を引っ張ってスリングの張力を増加させることによって、又は膣切開によって張力を解放することによってのみ行われ得る。張力再調整の程度は、組織の内部成長のために数週間後であっても制限され、メッシュの適切な位置決めを許容しないであろう。
【0012】
現在入手可能なメッシュスリングの中には、それらの植え込み後数日間のみ再調整可能なものもある。オルタンスタイン(Hortenstine)の特許文献1は、植え込み時に尿道の下に配置される拡張チャンバを有する調整可能な尿道メッシュスリングを開示している。拡張チャンバと流体連通する導管により拡張チャンバの遠隔拡張が可能となる。拡張チャンバは尿道を圧迫し、ストレス時の尿道腔の閉鎖に寄与する。同様の圧迫チャンバがロンギーニ(Longhini)の特許文献2に記載されている。
【0013】
生体組織内に配置されたあらゆる異物は周囲組織において炎症反応を惹起し得る。通常、このプロセスの後に、異物周りの天然バリアとして繭状のコラーゲンシェル及び/又は線維組織の漸進的な発生が続く(カプセル化)。成熟した架橋コラーゲン及び他の細胞外マトリックスタンパク質は、徐々に低細胞性の緻密線維被膜の形成に寄与し、それは多くの化合物に対して不透過性又は低透過性となる。全ての軟部組織植え込みデバイスはこのような反応を引き起こす。非吸収性かつ生体適合性で、滑らかな表面の植込片は、カプセル化プロセスの間に周囲組織の生物学的活性に影響されないため、それらは組織に付着せず、かついつでも簡単に引き出すことができる。滑らかな表面のモノフィラメント手術用縫合糸は、滑らかな表面のカプセル内に残り、それらは組織によって侵入された相当するマルチフィラメント編組縫合糸よりもはるかに簡単にいつでも引き出すことができる。宿主応答に影響を与える他の因子としては、植込片の位置、大きさ、形状、微動、表面化学、表面粗さ及び多孔率が挙げられる。(非特許文献1)。カプセル形成のプロセス、並びに最終的なカプセルの構造は、動物モデル及びヒトにおいて類似している。(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080269547号
【特許文献2】米国特許出願公開第20090043356号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ケー・シー・ディー(Dee KC)、ディー・エー・パウロ(Puleo DA)、アール・ビジオス(Bizios R)著、「生体組織材料相互作用の入門(An introduction to tissue−biomaterial interactions)」、(米国)、2002年、p.127−147
【非特許文献2】ジェイ・エー・パーカー(Parker JA)、エックス・エフ・ウォルブーマース(Walboomers XF)、ジェイ・ダブリュー・フォン・デン・ホフ(Von den Hoff JW)、ジェイ・シー・マルタ(Maltha JC)、ジェイ・エー・ジャンセン(Jansen JA)著、「シリコンとポリL乳酸インプラントに対する、周期的あるいは偶発的表面微細パターンを伴う軟組織反応(Soft−tissue response to silicone and poly−L−lactic acid implants with a periodic or random surface micropattern)」、(米国)、2002年、p.91−98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、例えば、POP修復のための尿道スリング、恥骨直腸スリング又は外科用メッシュとして使用され得る医療用スリングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のスリングは、スリングの本体部分から伸びる1本以上の細長い指状突起を備える。突起は、生体安定性のポリマー又はシリコンなどの流体不浸透性の生体適合性材料、又はワイヤ若しくはフィラメントから作製され得る。突起の材料は、好ましくは非弾性で柔らかく、かつ可撓性である。本発明者は、流体不浸透性材料又はフィラメント又はワイヤから作製された細長い指状突起を有するスリングは、スリング材料中での組織の内部成長を低減又は防止する傾向があり、これは恐らく、少なくとも部分的には、スリング周りでの滑らかなカプセルの発生により植え込み後のスリング張力の調整及びスリングの除去を容易とすることを見出した。
【0018】
本発明のスリングは、不活性かつ滑らかな材料で作製された第1スリング要素及び第2スリング要素を備える。1本以上の指状突起の第1セットは第1スリング要素の端部から伸び、かつ1本以上の指状突起の第2セットは第2スリング要素の端部から伸びる。第1及び第2のスリング要素は、スリング要素の指状突起間の複数の接続部によって相互に一体になり、複数の接続部は、第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに、第1及び第2のスリング要素が互いに分離できるように構成される。スリング植え込み後に発生するカプセル化、及び互いに切り離され得る指状突起の相互接続セットによって、スリングは体内から除去され得る。スリングは、例えば、スリングによる失禁、術後の尿閉の防止における失敗、スリングによって引き起こされる膀胱過活動、性交痛、性的な機能障害、不快感、感染症、膣及び尿道の組織びらんの場合に除去され得る。
【0019】
本発明のスリングは、生分解性及び/又は生体吸収性のメッシュの2つの層の間に埋め込まれることで、スリングの早期固定が容易になり得る。生分解性メッシュは、その隙間を通る組織の内部成長を可能にし、かつその植え込み後の最初の数週間の間、スリングの生体安定性材料を固定する。その後、メッシュは分解して、組織はスリングの指に沿って長手方向の空間に入り得る。
【0020】
本発明のスリングは、非弾性で柔らかく、可撓性であり、かつ生体適合性である生体安定性又は生分解性のポリマー材料から作製され得る。スリング材料は、ポリマー中に埋め込まれるメッシュ又はフィラメントで補強され得る。スリングは、生体安定性の編物材料若しくは織物材料、又は滑らかな生体安定性ポリマー層に埋め込まれた糸から作製され得る。編物材料又は糸は、材料内での組織の内部成長を防止するために、生細胞の大きさを下回る多孔率できつく編まれるか又は織られ得る。
【0021】
本発明のスリングは膨張式であってもよく、この場合、一方又は両方の第1及び第2の指状スリング要素は、流体不浸透性の材料から作製され、かつ1つ又は2つのポートが設けられ、これを通して膨張物質はスリング要素の内部に導入される。膨張物質は、例えば、滅菌生理食塩水であり得る。
【0022】
本発明のスリングは、単一正中膣又は傍尿道の切開部を通って尿道の下に導入され得、その後、スリングの各端部はその同側閉鎖孔を通って誘導された後に、皮膚切開部を通って体内を出る。スリングの端部は自己固定用のメッシュ状部分を有し得る。経閉鎖孔アプローチが使用される場合、メッシュの端部は閉鎖筋膜上にあるべきである。腹部アプローチが使用される場合、メッシュの端部は腹直筋膜上にあるべきであり、スリングが除去されなければならない場合、メッシュの先端は容易に到達されて取り外し可能なスリングから切断され得る。
【0023】
膨張式スリングについて、スリングは挿入後に膨張し、スリングのポートは、閉鎖筋膜を横断した後に皮膚の下に残り、又は植え込み後に恥骨上のレベルで皮膚の下に残り得る。任意の時点で、膨張式要素の内部の膨張流体の量は、尿道が所望の様態で支持されていないと判断されるとき、スリングの張力を再調整するために変更され得る。
【0024】
本発明のスリングは、植え込まれたときに線維性瘢痕組織によってカプセル化され得る。本発明のスリングは、周囲組織の侵入を防止する傾向のある滑らかな外面を有し得る。スリング内の隣接する指状突起間の間隔によって、スリングを被覆する組織の脈管化が可能となる。カプセル化後、スリングは自己スリングとして機能し得るカプセル化組織を残して体内から除去され得る。
【0025】
植え込み後の任意の時点で、スリングは体内から除去され得る。単一要素の膨張式スリングでは、除去はスリングを収縮する前又は収縮した後に、膨張ポート端部を引っ張ることによって達成され得る。第1及び第2のスリング要素を有するスリングについて、第1及び第2のスリング要素は互いに切り離される。いくつかの実施形態では、これは、第1及び第2のスリング要素の端部を把持すると同時に、第1及び第2のスリング要素を引き離し、第1及び第2のスリング要素間の接続を切ることによって達成される。2つのスリング要素が引き離され続けると、スリング要素はそれらが体内から除去されるように分離する。他の実施形態では、一方のスリング要素の指はフィラメントによってもう一方のスリング要素に縫合される。これらの実施形態では、第1及び第2のスリング要素はフィラメントを除去することによって互いに切り離され、次いで2つのスリング要素は2つのスリング要素を引き離すことによって互いに分離し得る。
【0026】
したがって、その態様の1つにおいて、本発明は以下を含む植え込み型スリングを提供する。
(a)第1スリング要素であって、第1スリング本体及び第1スリング本体から伸びる2本以上の細長い第1突起を備える第1スリング要素。
【0027】
本発明のスリングは、さらに以下を含み得る。
【0028】
(a)第2スリング要素であって、第2スリング本体及び第2スリング本体から伸びる2本以上の細長い第2突起を備える第2スリング要素;及び
【0029】
(b)第1スリング要素及び第2スリング要素を接続する1つ以上の切り離し可能な接続部。
【0030】
接続部は第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに断裂するよう構成され得る。接続部は第1及び第2のスリング要素を接続する少なくとも1本のフィラメントを備え得る。1つ以上の接続部は、第1スリング要素の第1伸長突起と第2スリング要素の第2伸長突起との間にあり得る。
【0031】
本発明のスリングでは、第1スリング要素及び/又は第2スリング要素は膨張式であり得る。膨張式スリング要素は、膨張物質を膨張式スリング要素内に導入するためのポートを有し得る。膨張式スリング要素のポートは、スリング要素の自由端部に配置され得る。
【0032】
本発明のスリングは非弾性の可撓性材料から作製され得る。スリングは滑らかな外面を有し得る。スリングは生分解性又は生体吸収性のメッシュ材料の層の間に埋め込まれ得る。メッシュの層はスナップフィット取り付けによって互いに結合され得る。細長い第1突起及び/又は第2突起はワイヤ又はフィラメントであり得る。
【0033】
別のその態様において、本発明は、本発明のスリング及び筋肉刺激装置を備えるシステムを提供する。筋肉刺激装置は、尿道周囲及び骨盤の筋肉の一方又は両方を刺激するように構成され得る。筋刺激装置は以下を備え得る。
【0034】
(a)圧力センサ及び動きセンサから選択される種類の1つ以上のセンサであって、スリングへの圧力又はスリングの動きを監視するように構成された1つ以上のセンサ;
【0035】
(b)尿道周囲及び骨盤の筋肉から選択される1つ以上に植え込まれるように構成された1つ以上の電極;及び
【0036】
(c)プロセッサであって、
【0037】
(i)センサからの信号を分析して、スリングへの圧力における急激な増加、及びスリングの動きにおける急激な増加の一方又は両方を検出し;及び
【0038】
(ii)スリングへの圧力及びスリングの動きの一方又は両方における急激な増加が検出されると、電極が植え込まれた筋肉の収縮が生じるよう電極を作動させるように構成された、プロセッサ。
【0039】
本発明のシステムは、さらに以下のための手段を含み得る。
【0040】
(a)自然な身体の動きから電気エネルギーを発生させる工程;
【0041】
(b)電気エネルギーを貯蓄する工程;及び
【0042】
(c)蓄積されたエネルギーによって電極を作動させる工程。
【0043】
別のその態様において、本発明は、以下を含む体内臓器を支持する方法を提供する。
【0044】
i)(a)膨張式第1スリング要素であって、第1スリング本体及び第1スリング本体から伸びる2本以上の細長い第1突起を備える第1スリング要素、
を備える尿道スリングを提供する工程;及び
【0045】
ii)第1スリング要素を第1本体構造に取り付ける工程;
【0046】
iii)第1スリング要素を膨張させる工程。
【0047】
本発明はまた、以下を含む体内臓器を支持する方法を提供する。
【0048】
i)(a)第1スリング要素;
【0049】
(b)第2スリング要素;及び
【0050】
(c)第1スリング要素及び第2スリング要素を接続する1つ以上の切り離し可能な接続部、
【0051】
を備える尿道スリングを提供する工程;
【0052】
ii)第1スリング要素を第1本体構造に取り付ける工程であって、第1本体構造は体内臓器の第1側部に配置される、工程;及び
【0053】
iii)第2スリング要素を第2本体構造に取り付ける工程であって、第2本体構造は体内臓器の第2側部に配置され、スリングは第1本体構造から第2本体構造にわたって体内臓器の周りを通過する、工程。
【0054】
本発明を理解し、かつそれが実際にどのように実施され得るのかを確認するために、次に、実施形態を添付の図面を参照しながら非限定的な例のみを用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図1c】
図1cは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図1d】
図1dは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図1e】
図1eは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図1f】
図1fは、本発明の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図2】
図2は、
図1のスリングの膨張ポートの詳細を示している。
【
図4a】
図4aは、本発明の追加の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図4b】
図4bは、本発明の追加の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図4c】
図4cは、本発明の追加の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図4d】
図4dは、本発明の追加の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図4e】
図4eは、本発明の追加の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態による穿孔を有するスリングを示している。
【
図6a】
図6aは、本発明のさらに別の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図6b】
図6bは、本発明のさらに別の実施形態による尿道スリングを示している。
【
図7a】
図7aは、本発明の一実施形態による織物スリングを示している。
【
図7b】
図7bは、本発明の一実施形態による織物スリングを示している。
【
図8】
図8は、スリング部分とモノフィラメントワイヤとの取り付けを示している。
【
図9】
図9は、スリング部分とモノフィラメントワイヤとの取り付けを示している。
【
図10】
図10は、本発明の別の実施形態による一方向膨張式スリングを示している。
【
図11】
図11は、本発明のさらに別の実施形態による双方向スリングを示している。
【
図12】
図12は、生分解性及び/又は生体吸収性のメッシュの2つの層の間に配置された本発明のスリングを示している。
【
図15】
図15は、骨盤臓器脱(POP)において使用するための多層メッシュを示している。
【
図16a】
図16aは、経閉鎖孔アプローチを用いて体内に植え込まれた後の
図1aのスリングを示している。
【
図16b】
図16bは、経腹又は経膣アプローチのいずれかを用いて体内に植え込まれた後の
図1aの恥骨尿道スリングを示している(スリングはU字型になる)。
【
図17】
図17は、本発明のスリングにおいて使用する骨盤及び傍尿道の筋肉を刺激するためのシステムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図10は、本発明の一実施形態による膨張式スリング105を示している。スリング105は1本以上の細長い指状突起102を備えている。スリング105は3本の指状突起を有している。これはほんの一例であり、各要素は任意の用途で必要とされる通り任意の数の指状突起を有し得る。スリング105は、生体安定性のポリマー又はシリコンなどの流体不浸透性で生体適合性の材料から作製され得る。スリングの材料は、好ましくは非弾性で柔らかく、かつ可撓性である。スリング105にはポート108が設けられている。スリング105は、ポート108を介して膨張物質が1本以上のスリング指の内部に導入されることによって膨張する。ポート108には、
図2に示される切欠部に示される一方向バルブ100が設けられており、これによりスリング108は、膨張物質で満たされたシリンジの先端をバルブを介して挿入し、その後バルブからシリンジを引き抜くことによって充填され得る。膨張した指状突起102の切欠図を
図3に示す。スリングの膨張によって伸長部に剛性が提供され、尿道などの体内臓器に、尿道にさらなる圧迫をもたらすことなくより剛性の支持が提供される。このような剛性の増加はまた、指の先端を押すための可撓性のワイヤ又はリボンを用いて伸長部を伸ばすことによって機械的に得られる。
【0057】
図1a〜1fは、本発明の様々な追加の実施形態によるスリング2a〜2fそれぞれを示している。スリング2a〜2fは、第1スリング要素4a〜4fそれぞれ、及び第2スリング要素6a〜6fそれぞれを備えている。第1スリング要素4a〜4fには1本以上の細長い指状突起9a〜9fそれぞれが設けられている。第2スリング要素6a〜6fには1本以上の細長い指状突起19a〜19fそれぞれが設けられている。スリング2a〜2fは指状突起の数及び長さにおいて異なっている。したがって、例えば、スリング2aでは、3本の指状突起が各要素4a及び6aに示されている。これはほんの一例であり、各要素は任意の用途で必要とされる通り任意の数の指状突起を有し得る。2つの要素における突起数は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0058】
第1及び第2のスリング要素は複数の狭窄部12によって互いに一体となる。狭窄部12はスリングにおける弱い部分であり、以下に説明するように、第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに断裂するか又は切れるように構成される。
【0059】
本発明のスリングは単層材料又は二層材料で作製され得る。単層及び二層のスリングの両方は、ポリマー中に埋め込まれたメッシュ又はフィラメントで補強され得る。スリング2a〜2bは、生体安定性のポリマー又はシリコンなどの流体不浸透性で生体適合性の材料から作製される。スリングの材料は、好ましくは非弾性で柔らかく、かつ可撓性である。
【0060】
本発明のスリングは非膨張式又は膨張式のいずれであってもよい。膨張式の実施形態では、スリング2a〜2fに示されるように、第1スリング要素にはポート8a〜8fが設けられ、第2スリング要素にはポート18a〜18dがそれぞれ設けられている。スリングは、ポート8及び18の一方又は両方を介して膨張物質が1本以上のスリング指の内部に導入されることによって膨張する。各ポート8及び18には、
図2に示される切欠部に示される一方向バルブ100が設けられており、これにより各要素は、膨張物質で満たされたシリンジの先端をバルブを介して挿入し、その後バルブからシリンジを引き抜くことによって充填され得る。膨張した指状突起19の切欠図を
図3に示す。スリングの膨張によって伸長部に剛性が提供され、尿道にさらなる圧迫をもたらすことなく尿道により剛性の支持が提供される。このような剛性の増加はまた、指の先端を押すための可撓性のワイヤ又はリボンを用いて伸長部を伸ばすことによって機械的に得られる。
【0061】
図4a〜4eは、本発明の5つの追加の実施形態によるスリング20a〜20eそれぞれを示している。スリング20a〜20eは、第1スリング要素24a〜24eそれぞれ、及び第2スリング要素26a〜26eそれぞれを備えている。スリング20a〜20eは非膨張式又は膨張式のいずれかであり得る。膨張式の実施形態では、第1スリング要素にはポート28a〜28eが設けられ、第2スリング要素にはポート38a〜38eがそれぞれ設けられている。ポートは、
図1に示されるスリングに関連して上記で説明したように、
図2に示されるポート100であり得る。ポート28a〜28eから1本以上の指状突起29a〜29eが伸びる。ポート38a〜38eから1本以上の指状突起39a〜39eそれぞれが伸びる。スリング20a〜20eは指状突起の数及び長さにおいて異なる。したがって、例えば、スリング20aでは、3本の指状突起が各要素24a及び26aに示されている。これはほんの一例であり、各要素は任意の用途で必要とされる通り任意の数の指状突起及び指の長さを有し得る。2つの要素における突起数は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0062】
第1及び第2のスリング要素は複数の狭窄部32によって互いに一体となる。狭窄部32はスリングにおける弱い部分であり、以下に説明するように、第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに断裂するよう構成される。さらに、第1及び第2のスリング要素の突起は、
図4cでの挿入部においてより詳細に示される複数の弱い側方接続部35で共に結合される。側方接続部35は突起29及び39を互いに平行に維持する傾向がある。
【0063】
スリング20a〜20eは、生体安定性のポリマー又はシリコンなどの流体不浸透性で生体適合性の材料から作製される。スリングの材料は、好ましくは非弾性で柔らかく、かつ可撓性である。
【0064】
スリング20a〜20eは膨張式又は非膨張式のいずれかである。膨張式の実施形態では、スリングは、ポート28及び38の一方又は両方を介して膨張物質が1本以上のスリング指の内部に導入されることによって膨張する。各ポート28及び38には一方向バルブが設けられており、これにより各要素は、膨張物質で満たされたシリンジの先端をバルブを介して挿入し、その後バルブからシリンジを引き抜くことによって充填され得る。
【0065】
図5は、本発明のさらに別の実施形態によるスリング20fを示している。スリング20fは第1スリング要素24f、及び第2スリング要素26fを備えている。スリング20fは非膨張式又は膨張式のいずれかであり得る。膨張式の実施形態では、第1スリング要素にはポート28fが設けられ、第2スリング要素にはポート38fが設けられている。ポートは、
図1に示されるスリングに関連して上記で説明したように、
図2に示されるポート100であり得る。ポート28fから1本以上の指状突起29fが伸びる。ポート38fから1本以上の指状突起39fが伸びる。スリング20fには複数の弱い部分が設けられており、それは本実施形態では穿孔31である。穿孔32は、以下に説明するように、第1及び第2のスリング要素が引き離されるときに指状突起29f及び39fが断裂するよう構成される。さらに、第1及び第2のスリング要素の突起は、スリング20a〜20eに関連して上記で説明したように、複数の弱い側方接続部35で共に結合され、それは突起29及び39を互いに平行に維持する傾向がある。
【0066】
スリング20fは、生体安定性のポリマー又はシリコンなどの流体不浸透性で生体適合性の材料から作製され得る。スリングの材料は、好ましくは非弾性で柔らかく、かつ可撓性である。
【0067】
図6aは、本発明のさらに別の実施形態によるスリング40を示している。スリング40は第1端部48及び第2端部58を有している。第1及び第2の端部は、
図6bにおいてより詳細に示される複数の細いストランド又は繊維42によって結合される。各ストランドには、
図6bでの挿入部においてより詳細に示される1つ以上の狭窄部46がある。狭窄部46はスリングにおける弱い部分であり、以下に説明するように、スリングの第1及び第2の端部が引き離されるときに切り離されるよう構成される。スリング40は非膨張式である。
【0068】
図7aは、本発明のさらに別の実施形態によるスリング60を示している。スリング60は、第1端部68a及び第2端部68bを有する第1スリング要素63a、及び第1端部69a及び第2端部69bを有する第2スリング要素63bを備える。2つのスリング要素63a及び63bの各々は複数の繊維62を備える。要素の端部では、繊維は共に融合されている。第1及び第2のスリング要素は、
図7bにより詳細に示されるように織り合わされて、一体型ユニットが形成される。スリング60の除去について、端部68a及び69aは横切されて、端部68b及び69bは把持かつ引き離されることで、第1及び第2のスリング要素63a及び63bは互いに分離する。
【0069】
図8及び9は、本発明の別の実施形態によるスリング171及び173の端部170及び172をそれぞれ示している。指状伸長部174及び176はそれぞれ、モノフィラメントワイヤ178によって端部170及び172それぞれに取り付けられており、そのためスリング要素と接続する。
図8及び9は異なる接続方式を示している。スリングの端部に位置するワイヤ178の端部を引っ張ることでワイヤ178を除去し、端部170及び172から指174及び176をそれぞれはずすことで、スリング構成要素は除去され得る。あるいは、スリング要素は引き離されて、それにより分離の際にスリング要素の1つと共にワイヤが引っ張られ得る。
【0070】
図11は2つの膨張式ユニット108及び110を有する膨張式スリング106を示している。膨張式ユニット108及び110は膨張ポート109及び111をそれぞれ有する。膨張式ユニット108及び110は2つの指状突起112及び114をそれぞれ有する。膨張式ユニット108の突起112は膨張式ユニット110の突起114と互いに嵌合し、かつ2つのユニット108及び110が引き離されるときに断裂又は切れる弱い側方相互接続111によって共に保持される。
【0071】
図12は、スリングの早期固定のための生分解性及び/又は生体吸収性のメッシュ126の2つの層の間での本発明のスリング125の埋め込みを示している。生分解性材料は、その隙間を通る組織の内部成長を可能とし、かつその植え込み後の最初の数週間の間、スリングを固定する。その後、メッシュは分解し、組織はスリングの指に沿って長手方向の空間に入り得る。メッシュ126の2つの層は、スナップフィット取り付けによって互いに結合され得る。
図13に示される一実施形態では、スナップフィット取り付け127は、第2層133の穴にスナップフィットする1つの層131の突出部129によって達成される。
図14に示される別の実施形態では、スナップフィット取り付け139は、層131及び133それぞれから伸びる対を成す突出部141及び143によって形成される。第3又は第4の層を結合させるために類似の取り付けが使用され得る。
【0072】
図15は、POPの治療に使用するための、本発明の別の実施形態による多層メッシュスリング130を示している。メッシュスリング130は、上部スリング132及び底部スリング134を備えている。背側に配向した層の穿孔端部136及び140は、組織の内部成長によって固定されるように適用される。穿孔端部136及び140は接続点137で指135に接続される。除去について、各層134及び138の指部分の前側に配向された滑らかな端部は外側に引っ張られる。その引っ張りによって、層の永久的な部分から指が切断される。取り外し可能な部分は膨張式又は非膨張式のいずれかであり得る。上部スリング132は非膨張部分136及び膨張部分138を有する。同様に、底部スリング136は非膨張部分140及び膨張部分142を有する。スリングの層は、早期固定のために生分解性の層と共に留められ、及び/又はそれで被覆され得る。
【0073】
スリング130は(尿道下スリングより広く、かつより広い固定端部の)単層又は多層であり得る。スリング130はその前端部を引っ張ることによって除去され得る。取り付け部は後方固定組織に付着したまま残る細い後端部から切り離される。
【0074】
図1aに示されるスリング2aなどの本発明のスリングは、例えば、
図16aに示されるような経閉鎖孔アプローチ、
図7bに示されるような経腹又は経膣アプローチを用いて植え込まれるか、又は
図16cに示されるような恥骨直腸スリングとして植え込まれ得る。
図16aに示される経閉鎖孔アプローチを用いた植え込みについて、スリングは、尿道120の下で閉鎖孔及び正中膣切開の1つのレベルで切開部を通って体内に導入され、次いで、対側閉鎖孔を通り、その後、第2切開部を通って体内を出る。これらのスリングの用途では、非膨張式スリングを使用することが好ましい。
【0075】
スリングの端部は自己固定用のメッシュ状部分を有し得る。経閉鎖孔アプローチが使用される場合、メッシュの端部は閉鎖筋膜上にあるべきである。腹部アプローチが使用される場合、メッシュの端部は腹直筋膜上にあるべきであり、スリングが除去されなければならない場合、メッシュの先端は容易に到達されて取り外し可能なスリングから切断され得る。
【0076】
本発明のスリングには、
図17に模式的に示される筋肉刺激装置130が設けられ得、それは突然の腹圧上昇時にスリングの機械的効果を補強するように尿道周囲及び/又は骨盤の筋肉収縮を刺激する。刺激装置130は、スリングへの圧力及び/又はスリングの動きを監視する1つ以上の圧力センサ及び/又は動きセンサ132を備えている。センサからの信号はプロセッサ134に入力される。プロセッサ134はセンサ信号を分析して、スリングへの圧力の急激な上昇及び/又はスリングの動きの急激な増加を検出する。スリングへの圧力の急激な上昇及び/又はスリングの動きの急激な増加がプロセッサ134によって検出されると、プロセッサ134は、尿道周囲及び/又は骨盤の筋肉などの1つ以上の隣接した筋肉に植え込まれた1つ以上の電極136を作動させる。電極136が作動することで、電極が植え込まれた筋肉の収縮が引き起こされる。筋肉収縮はスリングの機械的効果を補強する。電極間の電圧は、自然な身体の動きから生成されて、例えば、コンデンサに貯蓄され得る。例えば、くしゃみ又は咳などの突然の動きを検出すると、コンデンサは電極間で放電され得る。本発明のスリングは植え込まれると、線維組織によってカプセル化され得る。しかしながら、本発明のスリング2aは、メッシュスリングとは異なり、周囲組織による侵入を防止する滑らかな表面を有している。スリングにおける隣接する指状突起間の間隔によって、スリングを被覆する組織の脈管化が可能となる。繊維組織によるカプセル化の後、スリングは自己スリングとして機能し得るカプセルを残して体内から除去され得る。
【0077】
植え込み後の任意の時点で、スリング2aは体内から除去され得る。除去について、各ポート8a及び18a又はスリング端部は、それぞれの皮膚切開によって到達かつ把握され、2つのポート又は端部は同時に体内から引き離される。2つのポートが引き離されると接続部12は切断され、そのため、要素4a及び6aはそれらが体内から除去されるにつれて分離する。スリングの直線引張の引張強度試験によって測定される切断点の線形破断強度は、その場での破断を防止するために、尿又は便の漏出を引き起こす突然上昇する腹腔内圧よりも高いであろう。カプセルの滑らかな内面及びスリングの滑らかな要素は、体内からの要素の除去を容易にする潤滑として機能する。
【国際調査報告】