(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-526466(P2016-526466A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】呼吸パラメータの決定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/087 20060101AFI20160808BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
A61B5/08 200
A61B10/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-525341(P2016-525341)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月4日
(86)【国際出願番号】US2014032186
(87)【国際公開番号】WO2015005958
(87)【国際公開日】20150115
(31)【優先権主張番号】61/844,182
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516010755
【氏名又は名称】パルムワン アドバンスト メディカル デバイスィズ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】アダム、 オーリ
(72)【発明者】
【氏名】ラプラード、 アダム
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、 アイノン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス、 ザヒ
(72)【発明者】
【氏名】フレッドバーグ、 ジェフリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ソルウェイ、 ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
4C038SU02
(57)【要約】
肺測定システムは、気流経路をもったマウスピースと、気流経路中に配置されたセンサーと、センサーに通信可能に結合されたコントローラを含んだ肺測定装置を含む。コントローラは、プロセッサとメモリー中に格納された命令を含み、センサーからの測定を同定することと、メモリー中に格納された特定の数式を同定することであって、特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた入力パラメータを含むことと、同定された測定と特定の数式に基づいて絶対肺気量の値を決定することと、を含んだ動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流経路を含むマウスピースと、
気流経路中に配置されたセンサーと、
センサーに通信可能に結合されたコントローラであって、コントローラはプロセッサとメモリー中に格納された命令を含み、コントローラは、
センサーからの測定を同定することと、
メモリー中に格納された特定の数式を同定することであって、特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた入力パラメータを含むことと、
同定された測定と特定の数式に基づいて絶対肺気量の値を決定することと、
を含んだ動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能であるものと、
を含んだ肺測定装置、
を含む肺測定システム。
【請求項2】
センサーは、気流センサーと圧力センサーの少なくとも1つを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項3】
コントローラは、
測定に基づいて特定の数式への入力パラメータを決定することと、
入力パラメータに基づいて絶対肺気量の値を計算することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項1の肺測定システム。
【請求項4】
入力パラメータは、呼吸機能、呼吸器、呼吸的健康度、または一般的健康度に関するパラメータを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項5】
入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項6】
肺測定装置は、
(a)肺気量測定器、
(b)強制振動デバイス、
(c)先進型フロー中断デバイス、
(d)フロー中断デバイス、
(e)肺気量測定器‐フロー中断デバイスの組み合わせ、
(f)(a)‐(e)の2つ以上の組み合わせデバイス、
の1つを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項7】
肺測定装置とコントローラを少なくとも部分的に取り囲むかそれらに結合された手持ち型ハウジングを更に含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項8】
特定の数式を同定することは、メモリー中に格納された複数の数式から特定の数式を同定することを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項9】
コントローラは、
メモリー中に格納された複数の数式から第二の特定の数式を同定することであって、第二の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第二の入力パラメータを含むことと、
同定された測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、肺弾性、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項8の肺測定システム。
【請求項10】
コントローラは、
メモリー中に格納された複数の数式から第二の特定の数式を同定することであって、第二の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第二の入力パラメータを含むことと、
同定された測定と第二の特定の数式に基づいて、少なくとも1つの呼吸的健康度の質的指標を決定することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項8の肺測定システム。
【請求項11】
少なくとも1つの呼吸的健康度の質的指標は、健康、閉塞性呼吸器疾患、拘束性呼吸器疾患、混合欠陥、肺血管障害、胸壁障害、神経筋障害、間質性肺疾患、肺炎、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、の診断を含む、請求項10の肺測定システム。
【請求項12】
特定の数式は、複数の健康な被験者を含むトレーニング人口から導出される、請求項1の肺測定システム。
【請求項13】
特定の数式は、複数の不健康な被験者を更に含むトレーニング人口から導出される、請求項12の肺測定システム。
【請求項14】
複数の不健康な被験者の各々は、1つ以上の呼吸器疾患を有する、請求項13の肺測定システム。
【請求項15】
特定の数式は、トレーニング人口上で行われた呼吸測定技術に基づいて計算された定数を含む、請求項12の肺測定システム。
【請求項16】
呼吸測定技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法の少なくとも1つを含む、請求項15の肺測定システム。
【請求項17】
トレーニング人口は、歴史的または公用データを含む、請求項12の肺測定システム。
【請求項18】
トレーニング人口は、第1の部分と第2の部分を含み、第1と第2の部分の各々は分類子によって規定されている、請求項12の肺測定システム。
【請求項19】
分類子は、擬人化または肺気量測定分類子を含み、コントローラは、
分類子に少なくとも一部は基づいて特定の数式を選択すること、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項18の肺測定システム。
【請求項20】
呼吸測定は、集中治療室、肺機能検査機関、医師のオフィス、地域社会/職場集団検診、自宅環境の1つで起こる、請求項1の肺測定システム。
【請求項21】
特定の数式は、線形方程式または非線形方程式を含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項22】
特定の数式は、回帰分析から導出される、請求項1の肺測定システム。
【請求項23】
コントローラは、
データ解析の持続時間または調節の少なくとも1つに基づいてメモリー中に格納された複数の数式の少なくとも1つを更新すること、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項1の肺測定システム。
【請求項24】
データ解析の調節は、複数の数式を導出するのに使われたトレーニング人口の被験者の数の増加を含む、請求項23の肺測定システム。
【請求項25】
絶対肺気量を決定するためのコンピューター実装された方法であって、
肺測定装置での患者の呼吸測定を同定することと、
データ解析を使って開発され入力パラメータを含む特定の数式を同定することであって、入力パラメータは同定された呼吸測定に基づいていることと、
患者の呼吸測定と特定の数式に基づいて、患者の絶対肺気量を決定することと、
を含むコンピューター実装された方法。
【請求項26】
特定の数式を同定することは、複数の数式から特定の数式を同定することを含む、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項27】
データ解析を使って開発され第二の入力パラメータを含む第二の特定の数式を複数の数式から同定することと、
患者の呼吸測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、
を更に含む、請求項26のコンピューター実装された方法。
【請求項28】
特定の数式は、臨床データを使ったトレーニング人口に基づいて決定される、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項29】
トレーニング人口は、健康な被験者と不健康な被験者を含む、請求項28のコンピューター実装された方法。
【請求項30】
不健康な被験者の各々は、1つ以上の呼吸器疾患を有する、請求項29のコンピューター実装された方法。
【請求項31】
呼吸測定技術を使ってトレーニング人口の各被験者の絶対肺気量を測定することによってデータ解析を生成すること、
を更に含む、請求項28のコンピューター実装された方法。
【請求項32】
肺測定装置で少なくとも1つの呼吸測定を得ることを更に含む、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項33】
肺測定装置は、
(a)肺気量測定器、
(b)強制振動デバイス、
(c)先進型フロー中断デバイス、
(d)フロー中断デバイス、
(e)肺気量測定器‐フロー中断デバイスの組み合わせ、
(f)(a)‐(e)の2つ以上の組み合わせデバイス、
の1つを含む、請求項32のコンピューター実装された方法。
【請求項34】
入力パラメータは、呼吸機能、呼吸器、呼吸的健康度、または一般的健康度に関するパラメータを含む、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項35】
入力パラメータは、入力パラメータと絶対肺気量の間の既知の相関に基づいて選択される、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項36】
入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項37】
呼吸測定技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法を含む、請求項31のコンピューター実装された方法。
【請求項38】
特定の数式は、線形方程式を含む、請求項25のコンピューター実装された方法。
【請求項39】
人被験者の呼吸パラメータを推定する方法であって、
複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことであって、複数の試験被験者は健康な被験者と不健康な被験者を含むことと、
複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、
呼吸パラメータの直接測定と1つ以上の入力パラメータの測定で、入力パラメータの少なくとも一部分を入力とし、呼吸パラメータを出力として含む数式を決定することと、
を含む方法。
【請求項40】
入力パラメータの各々は、呼吸パラメータと関連付けられている、請求項39の方法。
【請求項41】
複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことは、
全身プレチスモグラフィ技術、ヘリウム希釈技術、胸部コンピューター断層(CT)撮影法技術、窒素洗い出し、窒素回復、または胸部X線撮影、の少なくとも1つで行われる、請求項39の方法。
【請求項42】
複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことは、
肺測定装置、肺気量測定器、フロー中断デバイス、先進型フロー中断デバイス、強制振動またはインパルス振動測定法技術、または擬人化デバイス、の少なくとも1つで行われる、請求項39の方法。
【請求項43】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、相対的肺気量または肺気流量を含む、請求項39の方法。
【請求項44】
相対的肺気量は、1秒間の強制呼気量(FEV1)、1秒間の強制呼気量の努力肺活量との比(FEV1/FVC)、最大吸気量(IC)、または肺活量(VC)、の少なくとも1つを含む、請求項43の方法。
【請求項45】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む、請求項39の方法。
【請求項46】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、呼吸器系抵抗(Rrs)または呼吸器系エラスタンス(Ers)を含んだ呼吸器値を含む、請求項39の方法。
【請求項47】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、患者の性別、患者の身長、患者の体重、または患者の肥満度指数、の1つ以上を含んだ擬人化情報を含む、請求項39の方法。
【請求項48】
呼吸パラメータは、総肺気容量(TLC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、または機能残余容量(FRC)、の少なくとも1つを含む、請求項39の方法。
【請求項49】
肺測定装置で人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、
人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定と数式に基づいて、肺測定装置での人被験者の呼吸パラメータの値を推定することと、
を更に含む、請求項39の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]この出願は、2013年7月9日に出願された米国仮出願番号61/844,182への優先権を主張し、その内容全体がここで引用によって組み込まれる。
【0002】
この開示は、測定されたおよび/または既知の入力パラメータを使って、呼吸的健康度パラメータを推定する(例えば、計算する)方法、および/または肺機能パラメータを推定する(例えば、計算する)方法に関する。
【背景技術】
【0003】
絶対肺気量は、肺生理学および診断において鍵となるパラメータであるが、生きた個人において測定することが容易ではない。被験者の口から吐き出された空気の容量を測定することは比較的簡単なことであるが、肺および肋骨を含んだ胸壁の機械的性質は肺が完全に虚脱することを許容しないので、完全な呼気の終わりにおいては、相当な量の空気が肺に残っている。完全な呼気の終わりにおいて肺中に残っているガスは、残気量(RV)と称され、病気において顕著に増加または減少し得る。最大吸気の終わりにおける肺中のガスの総容量は、総肺気容量(TLC)と称される。TLCは、RVに加えて、肺活量(VC)と称される、吸ったり吐いたりできるガスの最大量を含む。しかしながら、通常の呼吸の間、被験者は、RVまで肺を空にしたりTLVまで肺を膨らませたりはしない。完全な呼気と区別して、通常の呼吸の終わりにおいて肺中に残っているガスの量は、それが測定されるやり方に依存して、機能残余容量(FRC)または胸腔内ガス量(TGV)と称される。この出願で記載される通り、簡単のために、この容量が不活性ガス希釈技術によって測定された時には、それはFRCと称され、それがガス圧縮を含んだ気圧技術によって測定された時には、それはTGVと称される。
【0004】
全てのガスを肺から完全に吐き出すことは不可能なので、TLC、FRC、TGVまたはRVにおける肺中のガスの総容量を決定するために、間接的な方法が使われても良い。人間における肺気量を測定するための受け入れ可能な技術には、例えば:(1)被験者がガス密チェンバー内の障害物に抗して呼吸努力をし、TGVを計算するために、障害物の患者側での圧力の変化が、ボイルの法則を通してチェンバー中の圧力の変化に関係付けられることができる、全身プレチスモグラフィ;(2)被験者の肺中のガスによる既知の濃度と容量のヘリウムの希釈を含んだ、マルチ呼吸ヘリウムガス希釈;(3)100%酸素での既知のガス容量の呼気に際して、通常の大気中の窒素濃度を回復するのに要する時間が、肺気量を推定するのに使われる、窒素洗い出し;(4)肺の3次元画像が肺気量を推定するのに使われる、コンピューター断層撮影法;(5)肺気量が胸部X線撮影画像から推定される、胸部X線撮影;が含まれる。但し、最も一般に使われる技術は、ガス希釈と全身プレチスモグラフィである。
【0005】
人間における肺気量を測定するための上述した技術は受け入れ可能と考えられているが、そのような技術は、望ましくない測定不正確さを作り出し得るか、複雑なおよび/または高価な設備を要求し得るか、または行うことが難しくあり得る。例えば、ガス希釈は、被験者の肺中のガスによる既知の濃度と容量の不活性ガスの希釈を含んでおり、マーカーガスと肺ガスの完全な混合に決定的に依存する。病気のために劣悪なガス混合をもった被験者においては、この技術は非常に不正確であり、一般的に真のFRCを過少評価する。全身プレチスモグラフィは、病気の被験者においてもTGVを正確に測定すると一般的に信じられているが、複雑で高価な設備を要求し、行うことが難しい。但し、いくつかの研究は、全身プレチスモグラフィが、重度の障害がある患者において肺気量を過大評価し得ることを示している。
【0006】
一旦、FRC(例えば、ガス希釈によって決定された)またはTGV(例えば、全身プレチスモグラフィによって決定された)が計算されると、通常の呼気の終わりから吐き出すことができるガスの余剰容量(予備呼気量、ERV)と、通常の呼気の終わりから吸い込むことができる余剰容量(最大吸気量、IC)の肺気量測定器による測定が、TLCとRVの計算を許容する。
【0007】
これら3つの重要な指標(TLC、RV、およびFRCまたはTGV)は、以下の式を通して互いに関係している:RV=FRC−ERV、TLC=FRC+IC、および TLC=RV+ERV+IC=RV+VC。
【0008】
もしFRCがガス希釈によって決定され、TGVが気圧法によって決定されていれば、TGVとFRCの間の差は、近似ではあるものの、肺中の劣悪に換気されたかまたは“閉じ込められたガス”の測定である。
【0009】
健康な被験者においては、閉じ込められたガスが殆どか全く無いので、TGVとFRCは近似的に等しく、よって、実際上、この開示では、TGVという用語はFRCの同義語として使われるだろう。要約すると、絶対肺気量(例えば、TLC、TGV、およびRV)の決定は、肺機能の評価にとって中心的であり得るが、既存の技術からは容易に決定されない。
【発明の概要】
【0010】
1つの一般的な実装では、肺測定システムは、気流経路をもったマウスピースと、気流経路中に配置されたセンサーと、センサーに通信可能に結合されたコントローラを含んだ肺測定装置を含む。コントローラは、プロセッサとメモリー中に格納された命令を含み、センサーからの測定を同定することと、メモリー中に格納された特定の数式を同定することであって、特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた入力パラメータを含むことと、同定された測定と特定の数式に基づいて絶対肺気量の値を決定することと、を含んだ動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0011】
一般的な実装と組み合わせ可能である第1の側面では、センサーは、気流センサーと圧力センサーの少なくとも1つを含む。
【0012】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第2の側面では、コントローラは、測定に基づいて特定の数式への入力パラメータを決定することと、入力パラメータに基づいて絶対肺気量の値を計算することと、を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0013】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第3の側面では、入力パラメータは、呼吸機能、呼吸器、呼吸的健康度、または一般的健康度に関するパラメータを含む。
【0014】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第4の側面では、入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む。
【0015】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第5の側面では、肺測定装置は、(a)肺気量測定器、(b)強制振動デバイス、(c)先進型フロー中断デバイス、(d)フロー中断デバイス、(e)肺気量測定器‐フロー中断デバイスの組み合わせ、(f)(a)‐(e)の2つ以上の組み合わせデバイス、の1つを含む。
【0016】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第6の側面は、肺測定装置とコントローラを少なくとも部分的に取り囲むかそれらに結合された手持ち型ハウジングを更に含む。
【0017】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第7の側面では、特定の数式を同定することは、メモリー中に格納された複数の数式から特定の数式を同定することを含む。
【0018】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第8の側面では、コントローラは、メモリー中に格納された複数の数式から第二の特定の数式を同定することであって、第二の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第二の入力パラメータを含むことと、同定された測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、肺弾性、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0019】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第9の側面では、コントローラは、メモリー中に格納された複数の数式から第三の特定の数式を同定することであって、第三の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第三の入力パラメータを含むことと、同定された測定と第三の特定の数式に基づいて、少なくとも1つの呼吸的健康度の質的指標を決定することと、を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0020】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第10の側面では、少なくとも1つの呼吸的健康度の質的指標は、健康、閉塞性呼吸器疾患、拘束性呼吸器疾患、混合欠陥、肺血管障害、胸壁障害、神経筋障害、間質性肺疾患、肺炎、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、の診断を含む。
【0021】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第11の側面では、特定の数式は、複数の健康な被験者を含むトレーニング人口から導出される。
【0022】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第12の側面では、特定の数式は、複数の不健康な被験者を更に含むトレーニング人口から導出される。
【0023】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第13の側面では、複数の不健康な被験者の各々は、1つ以上の呼吸器疾患を有する。
【0024】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第14の側面では、特定の数式は、トレーニング人口上で行われた呼吸測定技術に基づいて計算された定数を含む。
【0025】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第15の側面では、呼吸測定技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法の少なくとも1つを含む。
【0026】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第16の側面では、トレーニング人口は、歴史的または公用データを含む。
【0027】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第17の側面では、トレーニング人口は、第1の部分と第2の部分を含み、第1と第2の部分の各々は分類子によって規定されている。
【0028】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第18の側面では、分類子は、擬人化または肺気量測定分類子を含み、コントローラは、分類子に少なくとも一部は基づいて特定の数式を選択すること、を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0029】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第19の側面では、呼吸測定は、集中治療室、肺機能検査機関、医師のオフィス、地域社会/職場集団検診、自宅環境の1つで起こる。
【0030】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第20の側面では、特定の数式は、線形方程式または非線形方程式を含む。
【0031】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第21の側面では、特定の数式は、回帰分析から導出される。
【0032】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第22の側面では、コントローラは、データ解析の持続時間または調節の少なくとも1つに基づいてメモリー中に格納された複数の数式の少なくとも1つを更新すること、を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である。
【0033】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第23の側面では、データ解析の調節は、複数の数式を導出するのに使われたトレーニング人口の被験者の数の増加を含む。
【0034】
別の一般的な実装では、絶対肺気量を決定するためのコンピューター実装された方法は、データ解析を使って開発され入力パラメータを含む特定の数式を同定することと、肺測定装置での患者の呼吸測定を同定することと、入力パラメータは同定された呼吸測定に基づいていることと、患者の呼吸測定と特定の数式に基づいて、患者の絶対肺気量を決定することと、を含む。
【0035】
一般的な実装と組み合わせ可能である第1の側面では、特定の数式を同定することは、複数の数式から特定の数式を同定することを含む。
【0036】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第2の側面は、データ解析を使って開発され第二の入力パラメータを含む第二の特定の数式を複数の数式から同定することと、患者の呼吸測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、を更に含む。
【0037】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第3の側面では、特定の数式は、臨床データを使ったトレーニング人口に基づいて決定される。
【0038】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第4の側面では、トレーニング人口は、健康な被験者と不健康な被験者を含む。
【0039】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第5の側面では、不健康な被験者の各々は、1つ以上の呼吸器疾患を有する。
【0040】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第6の側面は、呼吸測定技術を使ってトレーニング人口の各被験者の絶対肺気量を測定することによってデータ解析を生成すること、を更に含む。
【0041】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第7の側面は、肺測定装置で少なくとも1つの呼吸測定を得ることを更に含む。
【0042】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第8の側面では、肺測定装置は、(a)肺気量測定器、(b)強制振動デバイス、(c)先進型フロー中断デバイス、(d)フロー中断デバイス、(e)肺気量測定器‐フロー中断デバイスの組み合わせ、(f)(a)‐(e)の2つ以上の組み合わせデバイス、の1つを含む。
【0043】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第9の側面では、入力パラメータは、呼吸機能、呼吸器、呼吸的健康度、または一般的健康度に関するパラメータを含む。
【0044】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第10の側面では、入力パラメータは、入力パラメータと絶対肺気量の間の既知の相関に基づいて選択される。
【0045】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第11の側面では、入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む。
【0046】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第12の側面では、呼吸試験技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法を含む。
【0047】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第13の側面では、特定の数式は、線形方程式を含む。
【0048】
別の一般的な実装では、人被験者の呼吸パラメータを推定する方法は、複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことであって、複数の試験被験者は健康な被験者と不健康な被験者を含むことと、複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、呼吸パラメータの直接測定と1つ以上の入力パラメータの測定で、入力パラメータの少なくとも一部分を入力とし、呼吸パラメータを出力として含む数式を決定することと、を含む。
【0049】
一般的な実装と組み合わせ可能である第1の側面では、入力パラメータの各々は、呼吸パラメータと関連付けられている。
【0050】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第2の側面では、複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことは、全身プレチスモグラフィ技術、ヘリウム希釈技術、胸部コンピューター断層(CT)撮影法技術、窒素洗い出し、窒素回復、または胸部X線撮影、の少なくとも1つで行われる。
【0051】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第3の側面では、複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことは、肺測定装置、肺気量測定器、フロー中断デバイス、先進型フロー中断デバイス、強制振動またはインパルス振動測定法技術、または擬人化デバイス、の少なくとも1つで行われる。
【0052】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第4の側面では、1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、相対的肺気量または肺気流量を含む。
【0053】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第5の側面では、相対的肺気量は、1秒間の強制呼気量(FEV
1)、1秒間の強制呼気量の努力肺活量との比(FEV
1/FVC)、最大吸気量(IC)、または肺活量(VC)、の少なくとも1つを含む。
【0054】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第6の側面では、1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む。
【0055】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第7の側面では、1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、呼吸器系抵抗(R
rs)または呼吸器系エラスタンス(E
rs)を含んだ呼吸器値を含む。
【0056】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第8の側面では、1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、患者の性別、患者の身長、患者の体重、または患者の肥満度指数、の1つ以上を含んだ擬人化情報を含む。
【0057】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第9の側面では、呼吸パラメータは、総肺気容量(TLC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、または機能残余容量(FRC)、の少なくとも1つを含む。
【0058】
前の側面のいずれとも組み合わせ可能である第10の側面は、肺測定装置で人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定と数式に基づいて、肺測定装置での人被験者の呼吸パラメータの値を推定することと、を更に含む。
【0059】
ここに開示された様々な実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含んでいても良い。例えば、様々な実施形態は、(例えば、ALVを直接測定すること無しの)口における呼吸器および肺機能の測定に基づいた臨床的に正確な絶対肺気量(ALVs)を取得するために、手持ち型またはデスクトップ型の肺測定装置を実装しても良い。更に、様々な実施形態は、生理学的または物理的考慮から演繹された数式に少なくとも一部は基づいた臨床的に正確なALV値を取得するために、手持ち型またはデスクトップ型の肺測定装置を実装しても良い。様々な実施形態はまた、データ解析アプローチを使って開発され、健康な患者と病気の患者のトレーニング人口に基づいた数式を使って、手持ち型またはデスクトップ型の肺測定装置を実装しても良い。様々な実施形態は、健康な患者と病気の患者の一般的人口についての臨床的に正確な絶対肺気量を取得しても良い。
【0060】
これらの一般的および特定の実施形態は、装置、システムまたは方法、または装置、システムまたは方法のあらゆる組み合わせを使って実装されても良い。1つ以上の実施形態の詳細が、付随する図面と以下の記載で説明される。その他の特徴、目的および利点は、記載と図面から、および請求項から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された例示的肺測定装置を描く。
【
図2】
図2は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された別の例示的肺測定装置を描く。
【
図3】
図3は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された別の例示的肺測定装置を描く。
【
図4】
図4は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された別の例示的肺測定装置を描く。
【
図5】
図5は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された別の例示的肺測定装置を描く。
【
図6】
図6は、所望のパラメータを推定する数式を実行する肺測定装置で、あらゆる健康または不健康な被験者上での所望の呼吸パラメータを計算するための例示的方法のフローチャートである。
【
図7】
図7は、所望の出力パラメータを推定する数式を生成するための例示的方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は、1つ以上の入力パラメータ、1つの出力パラメータ、および
図7の例示的方法を使って生成された数式の間の関係を示したブロック図である。
【
図9】
図9A−9Pは、
図3に示された肺測定装置上で数式(TLC
equation)を使って推定された総肺気容量(TLC)と体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
【
図10】
図10A−10Hは、
図2に示された肺測定装置上で数式(TLC
equation)を使って推定されたTLCと体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
【
図11】
図11A−11Hは、
図1に示された肺測定装置上で数式(TLC
equation)を使って推定されたTLCと体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
【発明を実施するための形態】
【0062】
この開示は、呼吸パラメータを測定する方法、特に、測定されたおよび/または既知の入力パラメータを使って、肺機能パラメータを推定する(例えば、計算する)方法に関する。
【0063】
絶対肺気量(ALV)は、肺機能パラメータの一例であり、TLC、FRC,TGV、およびRVを含んだ、個別の絶対肺気量分画を包括するのに使われる一般的な用語である。ALVは、肺生理学および診断において鍵となるパラメータであるが、生きた個人において測定することが容易ではない。人間における絶対肺気量を測定するための従来の技術は多くの場合受け入れ可能と考えられている一方、そのような技術は、望ましくない測定不正確さを作り出し得るか、複雑なおよび/または高価な設備を要求し得るか、または行うことが難しくあり得る。
【0064】
ALVを測定するデバイスは、特に肺疾患をもった被験者について、臨床的に受け入れ可能な正確さと精度を有していなければならない。臨床的に受け入れ可能なエラー限度は、米国胸部学会標準によってと、ALVを測定するデバイスについての臨床データを含んだ学術文献によって規定されている。例えば、或る種の工業規格は、ALVを測定する、体幹プレチスモグラフィやガス希釈技術のような、いかなる技術またはデバイスについても、3つのALV測定が5%以内で一致することを要求する。加えて、体幹プレチスモグラフィは、ALVを測定するゴールド標準デバイスとして産業界では広く見做されており、ALVを測定する代替的なデバイスは、体幹プレチスモグラフィ測定と一致する基本的レベルを有するALVsを作成すべきである。例えば、ヘリウム希釈とコンピューター断層(CT)撮影は、ALVを測定する2つの代替的な技術であり、体幹プレチスモグラフィとは異なる物理的原理に基づくものである。変動係数(CV)は、一致を記述する1つの計量であり、それは参照方法(体幹プレチスモグラフィ)と比較してテスト方法(例えば、ヘリウム希釈またはCT撮影)の正確さと精度の両方を包含する。学術文献内の比較研究からのデータの分析は、CT撮影で測定されたTLCのCVが、体幹プレチスモグラフィと比較して15.6%であり、ヘリウム希釈で測定されたTLCのCVが、体幹プレチスモグラフィと比較して18.9%であることを示している。
【0065】
多くの単純な手持ち型の従来の肺機能デバイスが、肺気量測定や呼吸器に関するもののようなパラメータを決定するのに使われることができる一方、そのようなデバイスは、通常の動作中にALVを決定することができない。いくつかの例では、手持ち型デバイス(例えば、手持ち型肺気量測定器)が、強制呼気中に被験者の口から吐き出されたガスの容量を測定するのに使われる。呼吸器系の機械的性質は肺が完全に虚脱することを許容しないので、完全な呼気の終わりにおいては、残気量(RV)のガスが肺に残っている。従って、肺気量測定器はTGVを測定できない。むしろ、肺気量測定器は、肺気量差(例えば、肺活量(VC))としても知られる、肺気量における相対的変化と、与えられた期間中に吸い込まれたか吐き出されたガスの容量(例えば、1秒間の強制呼気量(FEV
1))を測定する。
【0066】
いくつかの例では、デバイス(例えば、呼吸器デバイス)が、1つ以上の周波数における機械的インピーダンスを測定することによって呼吸器系の様々な機械的性質を決定するのに使われる。例えば、呼吸器は、インパルス振動測定法(IOS)、強制振動技術(FOT)、およびフロー中断(FI)のような、様々なデバイスと技術を使って測定されることができる。呼吸器デバイスは、胸部ガス順応性(C
g=ALV割る肺胞内圧)として機械的な用語で典型的には表されるALVを、正確に推定することができないことが示されている。代わりに、それらのデバイスは、呼吸器系抵抗(R
rs)(および/またはその逆数、呼吸器系エラスタンス(E
rs))、呼吸器系順応性(C
rs)、気道抵抗(R
aw)、肺組織順応性(C
tiss)、肺組織抵抗(R
tiss)、胸壁順応性(C
cw)、胸壁抵抗(R
cw)のような、機械的性質を正確に測定することができる。
【0067】
その他のデバイス(例えば、フロー中断デバイス)もまた、呼吸器および肺機能パラメータを測定するのに使われ得る。例えば、フロー中断デバイスは、中断中の気道抵抗(R
int)を測定するのに使われる。また、先進型フロー中断デバイスは、フロー中断イベント中にガスの閉じた容器からより快適に呼吸することを被験者に許容することができる。
【0068】
肺気量測定デバイスと呼吸器デバイスは直接ALVを測定し得ない一方、いくつかの場合には、そのようなデバイスを使って取得された肺機能パラメータのいくつかの測定が、健康な患者におけるALVと相関する。例えば、R
awは、ALVと逆数的に関係する。加えて、C
tissはALVと直接的に関係する。更には、FEV
1とVCは、健康な患者におけるALVに関係する。
【0069】
肺機能パラメータと健康な患者におけるTGVの測定の間に相関が存在するが、そのような相関だけでは、特に呼吸器疾患をもった被験者については、米国胸部学会標準によって規定されたALVの臨床的に受け入れ可能な計算は作成されていない。
【0070】
研究者は、肺気量測定、呼吸器、または呼吸力学を測定する手持ち型または卓上型デバイスからALVを決定するためのより複雑な方法も探究している。しかし、全てのアプローチは、ALVの臨床的に受け入れ可能な計算を作成することに失敗してきた。例えば、呼吸器測定から取得されたデータは、強制周波数の広いレンジにまで拡張された時でさえ、個別の被験者における絶対肺気量を示唆するには不十分であることが示されている。同様に、強制的呼気操作から取得されたデータは、不十分であることが示されている。この失敗は、人間の肺内のガス分布の力学が複雑であり、閉塞性肺疾患においては特にそうであるという事実に一部は起因し得る。複雑な性質は、肺および/または物理的原理の理想化された機械的モデルからのALVのための数式を開発することを困難かまたは不可能にする。加えて、この失敗はまた、データ解釈が、データに等しく良くフィットする幅広いレンジのモデルが存在するような呼吸インピーダンスデータの理想化された数学的モデルへのフィットにしばしば依存するという事実にも一部は起因し得る。別の場合には、この失敗は、過度に単純化されたおよび/または予め規定された物理的形態の数式にデータをフィットすることの結果であり得る。これが起きると、ALVの有用な推定は決定することができない。
【0071】
より重要なことには、ALVの測定が、呼吸器疾患を診断し、呼吸器疾患の進行を追跡し、治療法を開発するために臨床医によって使われ得るので、ALVを計算するあらゆる単独の方法は、健康な患者と病気の患者の両方の人口について有効な測定を作成すべきである。この点では、臨床的に正確であり、かつ健康な人口と病気の人口の両方に適用可能でもある、呼吸器、肺気量測定、および/またはその他の肺機能パラメータとALVの間の数学的関係を確立することは、自明なことではない。数々の例が、これらの関係の自明ではない性質を示している。例えば、閉塞的気道疾患(例えば、喘息)においては、気道抵抗は上昇させられ得る一方、ALVは一定のまま残るかまたは増加し得る。破壊性肺疾患(例えば、肺気腫)においては、健康な人の組織順応性と比較して組織順応性が上昇させられ得る一方、ALVは、健康な人のALVと比較してより低いかまたはより高くなり得る。これらの呼吸器および/または肺機能の測定されたパラメータにおける病気に関系した差異は、測定されたパラメータからALVを正確に推定するためには、考慮に入れられるべきである。
【0072】
いくつかの例では、1つ以上のデバイス(例えば、肺気量測定および呼吸器デバイス、またはその他の手持ち型、卓上型またはフロア据置型の呼吸機能デバイス)を使って測定された1つ以上の入力パラメータから特定の所望の出力パラメータ(例えば、ALV)を計算するための数式を生成するのに、アルゴリズムが使われ得る。数式は、物理的原理(例えば、ボイルの法則)から全体的に導出されていなくても良く、代わりに、データ解析(例えば、データマイニング)技術を使って一部または全体が決定されている。
【0073】
図1は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された例示的肺測定装置100を描く。いくつかの実装では、装置100は手持ち型肺気量測定器であっても良い。いくつかの実装では、装置100は、例えば、方法600の1つ以上のステップのような、本開示に記載された1つ以上の動作を行うために使われても良い。装置100で行われたそのような動作から結果として得られる例示的データが、例えば
図11A−11Bに示されている。
【0074】
描かれたように、装置100は、気流センサー(例えば、フローセンサー、圧力差センサー、および/またはその両方)を含んだ、呼吸チューブ102に結合されたバクテリアフィルター110を含む。装置100はまた、例えば、気流センサーからの測定を受け取り、そのような測定上でおよび/または測定と共に1つ以上の動作を行うように、呼吸チューブ102と通信可能に結合されたコントローラ140を含む。
【0075】
一般的に、例えば、装置100は、強制呼気容量、または1秒以内のような特定の持続時間内に患者がその肺から吐き出すことができる空気の量、を(例えば、気流センサーで)測定することによって、肺機能を計測する。装置100はまた、強制肺活量(FVC)、または患者がその肺から吐き出すことができる空気の総量、を気流センサーで測定することができる。これら2つの測定に少なくとも一部は基づいて、患者が一息で吐き出すことができる空気の総量が、コントローラ140によって決定されても良い。これらの測定を使って、医療専門家は、患者の肺気量測定器の読み取りが、例えば、正常な空気容量かまたは閉塞性の空気容量のどちらを指し示すか、を決定することができる。
【0076】
一般的に、動作中は、患者は、息を吸って、バクテリアフィルター110の周りでその唇を密封しなければならない。口が(例えば、マウスピースを含んだ)フィルター110の周りで密封されると、患者は、肺中に全く空気が残っていなくなるまで、可能な限り強く速く空気を吹き出す。呼吸チューブ102におけるかまたはその一部である気流センサーは、呼気中の気流を測定し、結果として得られる測定は、コントローラ140中に格納されても良い。患者は、平均測定を達成するために、この操作を複数回行っても良い。
【0077】
図2は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された別の例示的肺測定装置200を描く。いくつかの実装では、装置200はフロー中断デバイス(FID)の一例であっても良い。いくつかの実装では、装置200は、例えば、方法600の1つ以上のステップのような、本開示に記載された1つ以上の動作を行うために使われても良い。装置200で行われたそのような動作から結果として得られる例示的データが、例えば
図10A−10Bに示されている。
【0078】
装置200は、気道の制御された閉塞を許容する。いくつかの実施形態では、装置200は、絶対肺気量を測定しながらの空気の素早い注入または抽出を行っても良い。装置200は、描かれた実施形態では、容器204に結合され流通している呼吸アッセンブリー202を含み、それは一方でポンプ206に結合され流通している。描かれたように、呼吸アッセンブリー202は、マウスピース208と、フローセンサー210と、チェンバー212と、圧力センサー214と、シャッター216と、シャッター218を含む。
【0079】
いくつかの側面では、もしシャッター218がその閉じた状態にあれば、装置200は、適切な使用での、共通の中断デバイスとして動作し得る。例えば、いくつかの側面では、シャッター218は、被験者によるいかなる生体反射または望ましくない反応を作り出さず、それにより測定の不正確さを避けるように、静かに動作するように構成されていても良い。より重要なことに、シャッター218は、その閉鎖速度(例えば、シャッターが開いた状態から閉じた状態まで行くおよびその逆にかかる時間)においてと、その閉鎖持続時間(例えば、シャッターが閉じている期間)においての両方で、素早く動作するように構成されていても良い。閉鎖速度は、いくつかの実施形態では、10msより少なく、好ましくは5msより少なく、より好ましくは2msより少ない。閉鎖持続時間は、いくつかの実施形態では、2秒より少なく、好ましくは100msより少ない。この速いペースの閉鎖速度と閉鎖持続時間は、ALVのより正確で信頼できる測定を提供し得る。シャッター218の高速動作とデータ取得の高いレートは、呼吸している間の気道の突然の閉塞に対する肺の典型的な反応時間からの結果であっても良い。人間の肺の熱力学的および弾性的性質の反応時間は、数msから数百msのオーダーであり、そのような突然の閉塞に対する肺の反応の詳細の正確な読み取りは、肺の内部容量の正確な計算のために本質的である。
【0080】
描かれたように、圧力センサー220は、容器204の頂部上に搭載される。いくつかの実施形態では、装置200はまた、ユーザーインターフェースとコントロールモジュールを含んでいても良い。コントロールモジュール230は、一般的に、示されているように、フローセンサー210と圧力センサー214からの測定を受け取るように、通信可能に結合されたマイクロプロセッサベースのコントローラを含んでいても良い。コントロールモジュール230はまた、下記の通り、それらの開閉を動作的に制御するためにシャッター216/218に通信可能に結合されていても良い。
【0081】
描かれたように、マウスピース208は、被験者の気道(例えば、肺)とチェンバー212および/または容器204の間の流通を容易にする。例えば、いくつかの実施形態では、マウスピース208は、被験者の頬の動きを制限しても良く、それにより気道閉塞イベントに対するその反応性を低くする。
【0082】
描かれたように、シャッター216は、マウスピース208とは反対の呼吸アッセンブリー202の端部において構築されている。シャッター216とマウスピース208の間で、シャッター216とマウスピース208と流通しているのは、フローセンサー210とチェンバー212である。そのようなやり方で、シャッター216は、チェンバー212における空気流の通過を規制しても良い。
【0083】
圧力センサー214は、装置200の描かれた構成では、シャッター216とマウスピース208の間でチェンバー212内に配置される。圧力センサー220は、装置200の描かれた構成では、例えばチェンバー212と比較してシャッター218の反対側上の、容器204内の圧力を測定するように配置される。圧力センサー214と220は、絶対圧力の測定のためのマノメ―タまたはセンサーのような、あらゆる圧力測定コンポーネントであっても良い。圧力センサー214と220は、例えば呼吸気流抵抗手段と差圧マノメ―タから、または代替的にピート管と差圧マノメ―タから、作製されていても良い。
【0084】
大量呼吸気流センサーのようなフローセンサー210は、マウスピース208とチェンバー212の間に配置される。フローセンサー210は、ホットワイヤー大量呼吸気流センサーのような、あらゆるフローセンサーであっても良い。いくつかの実施形態では、呼吸気流センサー210と圧力センサー214は、単一のセンサーに組み合わされていても良い。
【0085】
容器204は、T管でもってチェンバー212に接続されており、シャッター218はT管と容器204の間に配置される。いくつかの側面では、容器204は剛性または弾性材料で作られていても良い。いくつかの側面では、容器204は断熱されている。いくつかの側面では、容器204は、高度に熱伝導性の材料、例えば銅ウールで容器204を充填することによるような、恒温容器である。
【0086】
描かれたように、T管は、シャッター218によって(例えば、自動的におよび/または手動的に)チェンバー212と容器204の間の流通に対して閉じられていても良い。いくつかの実施形態では、ポンプ206は、シャッター218が閉じている間に容器204から/に空気を抽出または注入し、それによりチェンバー212と容器204の間に正または負の圧力差を作り出す。
【0087】
ポンプ206は、チェンバー212から空気を追い出しても良く、それにより(例えば、マウスピース208と通して)被験者における呼気を誘発するかまたは吸気に抵抗する。オプションで、ポンプ206は、チェンバー212中に空気を追い込んでも良く、それにより被験者における吸気を誘発するかまたは呼気に抵抗する。オプションで、ポンプ206は、振動するやり方で空気をポンプするようにデザインされていても良く、それによりチェンバー212内外の空気の定期的な動きを作り出す。
【0088】
図3は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された例示的肺測定装置300を描く。いくつかの実装では、装置300は、手持ち型の肺気量測定器(例えば、装置100)とフロー中断デバイス(FID)(例えば、装置200)の組み合わせであっても良い。いくつかの実装では、装置300は、例えば、方法600の1つ以上のステップのような、本開示に記載された1つ以上の動作を行うために使われても良い。装置300で行われたそのような動作から結果として得られる例示的データが、例えば
図9A−9Dに示されている。
【0089】
肺測定装置300は、描かれた実施形態では、肺気量測定器305と、FID310と、コントローラ315を含む。いくつかの側面では、肺気量測定器305は、
図1で例示的装置100として示された肺気量測定器と実質的に同様(例えば、構造および/または機能において)であっても良い。FID310は、いくつかの側面では、
図2で例示的装置200として示されたFIDと実質的に同様であっても良い。その他の肺気量測定器および/またはFIDも、適宜、肺気量測定器305および/またはFID310として実装されても良い。
【0090】
コントローラ315は、一般的に、示されたように、肺気量測定器305とFID310からの測定を受け取るように、通信可能に結合されたマイクロプロセッサベースのコントローラを含んでいても良い。コントローラ315は、肺気量測定器305とFID310の一方または両方から受け取った測定に基づいて、例えばALVのような、患者の呼吸パラメータを決定するための(例えば、
図6−8に記載されたような)1つ以上の数式を実装していても良い。コントローラ315はまた、例えば、格納された命令および/または装置300のユーザーからのコマンドに基づいて、肺気量測定器305とFID310のコンポーネンツ(例えば、センサー、シャッター、ポンプ)を制御しても良い。
【0091】
図4は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された例示的肺測定装置400を描く。描かれた装置400は、いくつかの側面では、呼吸パラメータの測定のための容器無しFIDを表しても良い。FID400は、呼吸モジュール412と制御部414を含む。呼吸モジュール412は、典型的にはユーザーの口において配置可能な手持ち型装置であって、ユーザーの呼吸パラメータを測定する目的のための空気の吸気および/または呼気のために使われる。呼吸モジュール412は、第1の端部418と第2の端部420を有するハウジング416と、第1の端部418から第2の端部420まで延び、それを通して空洞424を規定しているハウジング本体422を含む。呼吸モジュール412は、それを通じた気流を許容または阻止するように開閉することができ、モーター434によって制御されるシャッターアッセンブリー432を含む。呼吸モジュールは、呼吸デバイスのためのATS(米国胸部学会)ガイドラインに従って、1,5cmH
2O/リットル/秒より少ない気流抵抗を導入するように設計されていても良い。
【0092】
ハウジング416は更に、少なくとも1つの圧力測定コンポーネント426と少なくとも1つの気流測定コンポーネント428を含んでいても良い。圧力測定コンポーネント426は、少なくとも500Hzのデータレート、好ましくは少なくとも1000Hzのデータレートでの絶対圧力の測定のためのあらゆる好適なマノメ―タまたはセンサーであっても良い。気流測定コンポーネント428は、例えば気流抵抗手段と差圧マノメ―タから、または代替的にピート管と差圧マノメ―タから、作製されていても良い。差圧マノメ―タは、少なくとも500Hzのデータレート、好ましくは少なくとも1000Hzのデータレートをもったあらゆる好適なセンサーであっても良い。制御部414は、圧力測定コンポーネント426、気流測定コンポーネント428およびモーター434と電気通信しており、シャッター機構の開閉のために使われる。
【0093】
制御部414は、圧力測定コンポーネント426および気流測定コンポーネント428から受け取ったアナログデータを、少なくとも2ミリ秒(ms)毎に一度のレート、好ましくは少なくとも1ms毎に一度のレートで、デジタルフォーマットに変換するコンバーターを含んでいても良い。コンバーターは、デジタル信号を、シャッターアッセンブリー432を開閉するためのモーター434へのコマンドに変換する。制御部414は更に、(a)各データチャネルのためのコンバーターレートと釣り合ったレートで、リアルタイム記録に従ってコンバーターから受け取った圧力とフローのデジタルデータを読み取って、このデジタルデータを適切な単位の圧力とフローに変換して格納する、
(b)シャッターに開閉するように命令するために、コンバーターを通してモーター434まで送られる信号を生成する、および(c)肺気量を計算し、特定にTGV、TLCおよびRVを計算するために、リアルタイム記録に従って上述したフローと圧力のデータを処理する、ようにプログラムされたマイクロプロセッサを含む。マイクロプロセッサはまた、オペレーターからの動作コマンドを受け付け、結果を表示する、マンマシンインターフェース(MMI)を管理する。制御部414は更に、結果として得られる値を表示するためのディスプレイ415を含んでいても良い。制御部414は更に、被験者の個人および医療情報を入力し、シャッター持続時間、タイミング、手動対自動動作、校正手順のような、所望の動作モードを選択するためのキーボードを含んでいても良い。
【0094】
呼吸モジュール412はまた、シャッターアッセンブリー432に取り付けられた、ユーザーの口の中への配置のためのマウスピースを含んでいても良い。シャッター432は、その開閉の間の空気変位を最小化するように特定に設計されていても良い。モーター434は、例えば標準のソレノイドのような、あらゆる好適なモーターであっても良い。代替的に、モーター434は、あらゆる電子的、空気圧的、油圧的またはそれ以外のやり方で動作させられたモーターであっても良い。最後に、フロー計チューブは、気流の測定が開閉したシャッターの下流で行われることができるように、シャッターアッセンブリー432に対して遠位にある呼吸モジュール412のセクションであっても良い。但し、フロー計チューブはまた、圧力測定コンポーネント426に隣接して配置されていても良い。
【0095】
制御部414はまた、圧力測定コンポーネント426および気流測定コンポーネント428の一方または両方から受け取った測定に基づいて、例えばALVのような、患者の呼吸パラメータを決定するための(例えば、
図6−8に記載されたような)1つ以上の数式を実装していても良い。
【0096】
図5は、本開示に従った1つ以上のプロセスと動作を行うように構成された例示的肺測定装置500を描く。
図5は、例示的フロー振動デバイス(FOT)500を描く。FOTデバイス500は、フロー経路を通してフィルター510に結合されたマウスピース505と、フローソース525と、測定モジュール515(例えば、フローおよび/または圧力センサー)と、コントローラ530を含んでいても良い。いくつかの実装では、フローソースは、好適な高速フロー変動(例えば、高周波数フロー振動)を作り出すあらゆるデバイスであっても良い。例えば、フローソース525は、フローアクチュエータであっても良い。いくつかの場合には、フローソース525は、単一または複数の周波数の、疑似ランダム信号、インパルス、およびインパルストレインを含んだ信号を生成するのに使われることができる。いくつかの実施形態では、描かれたフローソースは、例えば、ラウドスピーカー、通風機、またはその他のフローアクチュエータのような、フロー攪乱デバイスであっても良い。気流を攪乱する各区別されたフローソースは、例えば、2つの例として、定常状態における1つの周波数での純粋な正弦波または正弦波の重ね合せのような、それ自体の関連付けられた波形を有していても良い。更なる例には、インパルス、周波数スイープ、またはシャッターを作成するための正弦波の重ね合せが含まれても良い。
【0097】
装置500のコントローラ530は、測定モジュール515から受け取った測定に基づいて、例えばALVのような、患者の呼吸パラメータを決定するための(例えば、
図6−8に記載されたような)1つ以上の数式を実装していても良い。
【0098】
図6は、所望のパラメータを推定する数式を含んだ肺測定装置(装置100、200、300、400、500またはそれ以外)で、あらゆる健康または不健康な被験者上での所望の呼吸パラメータを計算するための例示的方法600のフローチャートである。装置上に格納されていても良く、所望の呼吸パラメータを計算するのに使われる数式は、いくつかの実施形態では、一例として、
図7に示された方法700によって開発されていても良い。
【0099】
方法600は、データ解析(例えば、トレーニング人口に基づいたデータマイニング)から開発された数式(例えば、単一の数式または複数の数式の内の1つの特定の数式)を同定することによって、ステップ605で始まり得る。数式は、例えば、肺測定装置(例えば、装置100、200、300、400、500または本開示に従ったその他の装置)と通信可能に結合されたかまたはその一部であるメモリー(例えば、揮発性または不揮発性)中の実行可能な命令内に、格納されても良い。いくつかの側面では、数式は、トレーニング人口から集められた(例えば、装置で推定されたか、または全身プレチスモグラフィのような他の技術によって直接測定されたか、またはそれ以外の)臨床データを使ってデータ解析アプローチに基づいて決定されても良い。いくつかの実装では、数式は、ステップ605の実装に対して時間的に早く(可能性として相当早く)に導出されている。数式は、線形または非線形方程式であっても良く、いくつかの例では、回帰分析から導出されていても良い。
【0100】
トレーニング人口は、全ての健康な被験者、全ての不健康な被験者および/または健康な被験者と不健康な被験者の混合を含んでいても良い。いくつかの側面では、健康な被験者は、呼吸器系拘束および/または閉塞を全くかまたは臨床的に取るに足らない(例えば、測定不能に)だけしか顕示していない人であっても良い。いくつかの側面では、不健康な被験者は、呼吸器系拘束および/または閉塞を臨床的に有意に(例えば、測定可能に)顕示している人であっても良い。いくつかの側面では、不健康な被験者は、臨床的に診断されたかまたは診断されていない呼吸器疾患を1つ以上有していても良い。いくつかの側面では、不健康な被験者は、閉塞性呼吸器疾患、拘束性呼吸器疾患、混合欠陥、肺血管障害、胸壁障害、神経筋障害、間質性肺疾患、肺炎、喘息、慢性気管支炎、および/または肺気腫の診断を含む、呼吸的健康度の質的指標を実証していても良い。
【0101】
ステップ610は、肺測定装置で患者の呼吸測定を同定する(例えば、以前のかリアルタイムの測定から)かまたは行うことによって実装され得る。呼吸測定は、ステップ610において装置で取られても良く、またはステップ610に先立って装置によって取られていても良い。いくつかの側面では、呼吸測定は、入力パラメータとして、呼吸機能、呼吸器、または呼吸的健康度に関連していても良い。例えば、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、は全て例示的な呼吸測定である。ここで使われたように、「気道開口」と「口」という用語は同義語である。いくつかの側面では、従って、装置は呼吸測定を直接測定しても良い一方、いくつかの側面では、呼吸測定は装置からの直接測定から導出されても良い。
【0102】
ステップ615は、呼吸測定とステップ605で同定された数式に基づいてあらゆる患者(例えば、健康なまたは不健康な)の絶対肺気量を決定することによって実装され得る。一例では、適切な数式は、入力パラメータが測定された時に、所望の出力呼吸パラメータが装置によって自動的且つ瞬間的に計算されることができるように、(ここに記載された例のような)肺測定装置におけるソフトウェア、ハードウェア、および/またはそれらの組み合わせで実装されていても良い。いくつかの実施形態では、肺測定装置は、計算された呼吸パラメータを表示すると共に値をメモリー中に格納しても良い。
【0103】
他の呼吸パラメータを決定することが、ステップ620において行われても良い。例えば、絶対肺気量の決定に基づいて、または呼吸測定と数式に基づいて、TLC、FRC、TGV、RV、一酸化炭素についての肺の拡散能力(D
LCO)、気道抵抗、または肺組織順応性の1つ以上が決定されても良い。一旦そのような呼吸パラメータ(絶対肺気量を含んだ)が決定されると、それらは肺測定装置を通して患者またはその他の被験者に提示されても良い。いくつかの側面では、初期に同定されたかまたは選択された特定の数式が、例えば、絶対肺気量のような、特定の呼吸パラメータを推定するかまたは決定するのに使われても良い。別の特定の、区別された数式が、上述したもの(例えば、TLC、FRC、TGV、RV、D
LCO、気道抵抗、または肺組織順応性)のような、1つ以上のその他の呼吸パラメータを決定するかまたは推定するために、ステップ620において、選択されるかまたは同定されても良い。いくつかの側面では、複数の数式の、各特定の、区別された数式が、特定の、区別された呼吸パラメータを決定するかまたは推定するために選択されても良い。
【0104】
更には、呼吸測定からステップ620において決定された呼吸パラメータは、診断または呼吸的健康度のあらゆる質的測度(例えば、健康、閉塞性呼吸器疾患、拘束性呼吸器疾患、混合欠陥、肺血管障害、胸壁障害、神経筋障害、間質性肺疾患、肺炎、喘息、慢性気管支炎、肺気腫)であっても良い。
【0105】
方法600は、1つ以上の追加のステップを含んでいても良い。例えば、いくつかの側面では、数式は、時々(例えば、定期的に、ランダムに、またはそれ以外で)更新されるか変更されても良い。例えば、(例えば、
図7−8によって)それから数式が導出され得る被験者のトレーニング人口は、新たな被験者が試験されるにつれて、経時的に増加されても良い。新たな被験者が試験されるにつれて、数式が、追加のデータを考慮に入れるために、更新、改善、またはそうでなければ変更されても良い。いくつかの側面では、機械学習、人工知能、および/またはデータマイニングから適応された技術が、トレーニング人口の被験者数が増加するにつれて、数式を更新するのに使われることができる。この更新は、設定された被験者の増加(例えば、各追加の10、50、100人の被験者がトレーニング人口に追加された後、またはその他の間隔)においてかまたは望まれた時に、設定された時間間隔(例えば、各週、各月、各年等)で、起こることができる。臨床的設定における動作では、肺測定装置は、患者を測定するのに日常的に使われることができ、この新たな患者データが数式を更に洗練する役目を果たすこともできる。数式はよって、各装置に固有であって、与えられた臨床センターおよびそれらの患者人口に対して仕立てられていても良い。遠隔の更新のための肺測定装置の有線または無線インターネット接続を介したものを含んだ、数式を更新するためのいくつかの受け入れ可能な方法がある、ということが認識されるべきである。
【0106】
方法600は、集中治療室、肺機能検査機関、呼吸器科医やプライマリケア医を含んだ医師のオフィス、地域社会/職場集団検診、および自宅環境を含んだ、あらゆる設定で行われても良い、ということが認識されるべきである。
【0107】
図7は、所望の出力パラメータ(例えば、呼吸パラメータ)を推定する(例えば、計算する)1つまたは複数の数式を生成するための例示的プロセス700のフローチャートである。数式は、患者の出力パラメータを計算するためのプロセス800中で使われることができる。そのような数式を使って推定され得る例示的出力パラメータは、TLC、TGV、FRC、RV、D
LCO、気道抵抗、および肺組織順応性を含む。例示的出力パラメータはまた、健康、閉塞性呼吸器疾患、拘束性呼吸器疾患、混合欠陥、肺血管障害、胸壁障害、神経筋障害、間質性肺疾患、肺炎、喘息、慢性気管支炎、および肺気腫の診断を含んだ、呼吸的健康度の質的指標であっても良い。呼吸器疾患の自動化された診断が、データ解析クラスター分析アプローチまたは同様のアプローチを通して達成されても良い。これらの方法はまた、測定装置の物理的原理から完全に導出されることができないあらゆるその他の呼吸パラメータを計算するのに使われても良い。
【0108】
その上で1つ以上の入力パラメータ(例えば、呼吸機能、呼吸器、全体的な呼吸的健康度、または身長、体重のような全体的な一般的健康度に関する入力パラメータ)と所望の出力パラメータを測定するための、被験者のトレーニング人口が選択される(705)。トレーニング人口の被験者の数と特性は、例えば、所望の出力パラメータの或る値と関連付けられた疾患に基づいて、選択されても良い。トレーニング人口は、健康な被験者、不健康な被験者(例えば、呼吸器疾患、呼吸器障害、呼吸器症候群、またはあらゆるその他の疾患を有すると医師によって診断された被験者)、または健康な被験者と不健康な被験者の両方、を含んでいても良い。トレーニング人口の被験者の数と特性はまた、性別、喫煙履歴、またはその他の特性のような特性に基づいて、選択されても良い。1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータが、数式を生成する際に使われても良い。
【0109】
被験者のトレーニング人口がそれから、1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータについて測定される(710)。1つ以上の入力パラメータが、1つ以上の装置と技術(例えば、肺気量測定装置、呼吸器デバイス、その他の手持ち型、卓上型、またはフロア据置型呼吸機能デバイス、擬人化デバイス、カプノグラフィ、オキシメトリ、または一般的健康度を評価するためのその他のデバイス)によって測定され、その他の人口における出力パラメータを推定する(例えば、計算する)ために後に使われる。1つ以上の入力パラメータは、1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータの間の既知の相関に基づいて選択されても良い。例示的入力パラメータは、FEV
1、IC、VC、および身長を含む。1つ以上の入力パラメータは、1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータの間の仮定された関係に基づいて選択されても良い。例示的入力パラメータは、FEV
1/FVC、気道開口圧力、気道開口流量、気道開口圧力と気道開口流量の微分、積分、またはあらゆるその他の数学的変換、機械的インピーダンス(例えば、同相および異相成分)、および圧力と流量の減衰および上昇の時間定数を含む。いくつかの例では、1つ以上の入力パラメータは、1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータの間の既知かまたは仮定された関係無しで選択されても良い。
【0110】
いくつかの例では、
図1−5に示された肺測定装置のいずれか1つが、圧力、流量、および時間定数のような呼吸入力パラメータを測定するのに使われても良い。更には、例えば、米国特許出願シリアル番号12/830,955、米国特許出願シリアル番号12/670,661、および米国特許出願シリアル番号13/808,868(その各々は、あたかもここで完全に説明されたかのように、その全体が引用によって組み込まれる)に記載されたもののような肺測定装置が、圧力、流量、および時間定数のような呼吸入力パラメータを測定するのに使われても良く、ここに開示された方法またはプロセスのいずれかの実装に際して使われても良い。いくつかの例では、フロー中断デバイス、強制振動デバイス、またはインパルス振動測定法技術が、呼吸器系抵抗のような呼吸入力パラメータを測定するのに使われても良い。他の例では、擬人化デバイスが、身長、体重、または肥満度指数(BMI)を測定するのに使われても良い。
【0111】
所望の出力パラメータは、好ましいデバイスまたは技術(例えば、所望の出力パラメータを測定するための臨床的に受け入れ可能であると考えられるデバイスまたは技術)を使って直接測定されても良い。例えば、ALVを測定するための好ましい技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、および胸部CT撮影法を含んでいても良い。
【0112】
入力パラメータのプールが、1つ以上の測定された入力パラメータから生成されることができる(715)。プールは、測定された入力パラメータ、測定された入力パラメータの数学的変換、または測定された入力パラメータの組み合わせからなっていても良い。いくつかの例では、プールは、コンピューターシステムの1つ以上のコンピュータープロセッサによって行われたアルゴリズムによって生成される。入力パラメータのプールは、所望の出力パラメータを推定する(例えば、計算する)ために使われることができる、入力パラメータ(またはそれらのサブセット)からなる数式を生成するために使われる(720)。数式は、1つ以上のプロセッサによって実行され得る1つ以上の自動化されたアルゴリズムを使うことによって生成されても良い。いくつかの場合には、アルゴリズムは、データ解析(例えば、データマイニング)の分野で使われる1つまたは多くの受け入れ可能なアルゴリズムであっても良い。加えて、生成された数式の正確さは、クロス検証のような、1つまたは多くの受け入れ可能な方法を使って検証されても良い。
【0113】
いくつかの場合には、方法700において記載された測定のいくつかまたは全ては、明示的には行われず、代わりにデータまたはその一部が、所望の出力パラメータと所望の入力パラメータを含む歴史的データの既存のデータベースまたはデータセットから入手されるかそうでなければ取得される。いくつかの場合には、トレーニング人口データを測定するためのステップ705と710は、ステップ715と720の実装に対して時間的に早く(可能性として相当早く)に行われる。例えば、トレーニング人口データセットは、以前に測定されていても良く、データが以前に測定された公衆データベースから入手されていても良く、またはデータが以前に測定されたプライベートソースから入手されていても良い。
【0114】
図8は、1つ以上の測定された入力パラメータ、直接測定された所望の出力パラメータ、および
図7の例示的方法を使って生成された数式(例えば、回帰方程式)の間の関係を示したブロック
図800である。いくつかの例では、数式は、線形方程式(1):
y=a+b*x1+c*x2+d*x3 (1)
の形をとっても良い。
【0115】
パラメータyは、所望の出力パラメータである。パラメータx1、x2、およびx3は、ステップ710においてのように、入力パラメータの測定である。パラメータx1、x2、およびx3は、ステップ715においてのように、所望の出力パラメータを推定する(例えば、計算する)ために使われる、所望の入力パラメータとしてアルゴリズムによって選択された。最後に、パラメータa、b、c、およびdは、スケーリングおよびシフティング定数である。x1、x2、およびx3のいずれか1つは、健康または疾患の表現である呼吸パラメータであっても良い。例えば、数式(1)において、x1とx2は、健康な被験者の測定を考慮に入れていても良く、x3は、呼吸器疾患(例えば、気道閉塞による正常値からの気道抵抗の増加)によるx1とx2のずれを正確に考慮に入れた測定を表していても良い。
【0116】
いくつかの例では、従来の肺測定装置または技術と好ましい装置または技術のどちらかまたは両方は、呼吸的健康度における変化を考慮に入れた測定を生成することが可能である。例えば、装置は、健康な被験者における気道抵抗と組織順応性に関する入力パラメータと、不健康な被験者における気道抵抗と組織順応性(例えば、正常な測定に対する)における変化を考慮に入れた入力パラメータを測定しても良い。1つ以上の入力パラメータと所望の出力パラメータのどちらかまたは両方は、測定を行うのに使われる装置のメモリー中に格納されても良く、または装置の外側の手段において記録されても良い。1つ以上の入力パラメータにおける変化は、所望の出力パラメータにおける変化を推定する(例えば、計算する)ための数式への入力として後に使われても良く、それは好ましい装置または技術が、所望の出力パラメータを直接測定するためには不正確であるかまたはそうでなければ不十分である(例えば、或る疾患状態の)場合に、特に有用であり得る。
【0117】
いくつかの例では、例示的プロセス700および/または800を使って生成された数式は、数式(1)のものとは異なる形をとっても良い。例えば、生成された数式は、数式(2):
y=a+b*(x1
c*x2)/x3+d*x4 (2)
のような、非線形方程式であっても良く、ここで、この例では、cは指数因子であり、x4は従来の呼吸機能デバイスおよび技術を使って取得された追加の測定である。いくつかの例では、例示的プロセス700および/または800を使って生成された数式は、数式(1)および(2)からは相当異なる形で、何らかの他の形、例えば、決定木、ベイジアンネットワーク、またはあらゆるその他の形でより容易に記載される形をとっても良い。いくつかの例では、人口が最初に測定可能な分類子(例えば、擬人化または肺気量測定)を使ってサブ人口に分割されて、後に別々の数式が各サブ人口について生成されても良い。
【0118】
同じ出力パラメータの測定は、測定を取得するのに使われた特定の好ましい装置または技術(例えば、体幹プレチスモグラフィ対ヘリウム希釈)に依存して異なり得るので、例示的プロセス700および/または800が、特定の好ましい装置または測定に対して区別された数式を生成するのに使われても良い。例えば、TGVを直接測定するのに使われた好ましい装置または技術が、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部CT撮影法であった時には、TGVを推定する(例えば、計算する)ために別々の数式が生成されても良い。
【0119】
一旦、例えば方法700から導出された特定の数式が、特定の肺測定システムまたは装置(またはその他の肺装置)に実装されれば、装置は、所望の肺出力パラメータ(例えば、TLC、TGV、肺組織順応性、およびその他のパラメータ)を決定するのに使われても良い。例えば、装置は、患者または被験者(例えば、健康なまたは不健康な)からの特定の入力パラメータを測定するのに使われても良い。入力パラメータは、例えば、測定x1、x2、およびx3とその他のものを含んでいても良い。一旦装置がそのような入力パラメータを測定すると、装置に実装された数式(例えば、数式(1)またはその他の好適な数式)が、出力パラメータyを決定するために例示的プロセス800において記載されたように実行されても良い。このプロセスは、例えば、肺測定装置上での選択に基づいて複数の所望の出力パラメータを決定するために、患者毎にかまたは同じ患者上で複数回繰り返されることができる。
【0120】
1つより多くの数式が、肺測定システムまたは装置内で実装されていても良い。各数式は、異なる出力パラメータを計算しても良い。代替的に、各数式は、同じ出力パラメータを計算しても良いが、数式は、患者の異なるグループまたはクラス(例えば、分類子モデル)について異なっていても良い。例えば、数式は、出力パラメータを計算するのにどの数式を利用するかを決定するために、各個別の患者についての擬人化情報を使っても良い。
【0121】
図9A−9Dは、
図3に示された肺測定装置上で決定された数式(TLC
equation)と参照装置の体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
図9A−9Bの描かれたチャートは、例えば、数式(例えば、
図7と8で記載されたような)を開発するのに使われたトレーニング患者のセット(例えば、およそ300人の被験者)上での肺試験の結果を示す。
図9A−9Bは、描かれたプロセス700の最終結果、つまり、被験者のトレーニング人口を介して作り出された生成された数式、を示す。
図9C−9Dの描かれたチャートは、例えば、数式が開発された(例えば、
図6で記載されたような)後に
図3で示された肺測定装置上で測定された臨床的設定における患者のセット(例えば、およそ135人の被験者)上での肺試験の結果を示す。
図9C−9Dは、描かれたプロセス600の最終結果、つまり、実際の患者からの絶対肺気量(例えば、TLC)の最終的な決定、を示す。
【0122】
例えば、
図9A−9Dは、
図3に示されたもののような装置によって測定された入力パラメータの数式によって生成されたTLC対プレチスモグラフィのTLC(TLC
pleth)のスキャッタープロットを描く。
図9A−9Dは、全ての被験者について(9A)と、健康な被験者のみについて(9B)と、閉塞性の被験者のみについて(9C)と、拘束性の被験者のみについて(9D)の、TLC
equationとTLC
plethの間の一致を描く。実線は1単位のラインを表す。TLC
equationとTLC
plethの間の一致は、データ点が1単位のラインの周りを中心としていると共に1単位のラインの周りに緊密に密集していることによって示されている。
【0123】
図9E−9Hは、それぞれ
図9A−9Dと関連付けられた、ブランドアルトマン(Bland-Altman)プロットを描く。ブランドアルトマンプロットは、全ての被験者について(9E)と、健康な被験者のみについて(9F)と、閉塞性の被験者のみについて(9G)と、拘束性の被験者のみについて(9H)、TLC
equationをプレチスモグラフィのTLC(TLC
PLETH)と比較する。実線は平均バイアスを表す一方、破線は上限と下限(±1.96*SD)を表す。変動係数(CV)が、各プロット内に表示されている。人口全体において、およびサブ人口(健康、閉塞性、および拘束性)の各々において、変動係数はそれぞれ9.91%、7.93%、11.30%、および13.70%であり、平均バイアスは小さく(それぞれ0.01L、−0.01L、0.11L、および0.20L)、また肺のサイズとの変動性またはバイアスの系統的な傾向は無かった。
【0124】
図9I−9Lは、
図9A−9Hに示された開発された数式を実装する
図3に示された肺測定装置上で決定された総肺気容量(TLC
equation)と体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
図9I−9Lにおける描かれたチャートは、例えば、
図8による、例えば、
図3の肺測定装置での被験者のセット上での肺試験の結果を示す。つまり、
図7と8において開発されたような数式が、
図6におけるような被験者の見込みのあるグループを測定するために実装される。
【0125】
例えば、
図9I−9Lは、全ての被験者について(9I)と、健康な被験者のみについて(9J)と、閉塞性の被験者のみについて(9K)と、拘束性の被験者のみについて(9L)の、
図3に示されたもののような装置によって測定されたTLC
equation対プレチスモグラフィのTLC(TLC
pleth)のスキャッタープロットを描く。実線は1単位のラインを表す。TLC
equationとTLC
plethの間の一致は、データ点が1単位のラインの周りを中心としていると共に1単位のラインの周りに緊密に密集していることによって示されている。
【0126】
図9M−9Pは、それぞれ
図9I−9Lと関連付けられた、ブランドアルトマンプロットを描く。ブランドアルトマンプロットは、全ての被験者について(9M)と、健康な被験者のみについて(9N)と、閉塞性の被験者のみについて(9O)と、拘束性の被験者のみについて(9P)、TLC
equationをプレチスモグラフィのTLC(TLC
PLETH)と比較する。実線は平均バイアスを表す一方、破線は上限と下限(±1.96*SD)を表す。変動係数(CV)が、各プロット内に表示されている。
【0127】
図10A−10Hは、
図2に示されたもののような装置によって測定された入力パラメータの数式によって生成されたTLC(TLC
equation)と体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
図10A−10Dは、全ての被験者について(10A)と、健康な被験者のみについて(10B)と、閉塞性の被験者のみについて(10C)と、拘束性の被験者のみについて(10D)の、TLC
equationとTLC
plethの間の一致を描く。実線は1単位のラインを表す。TLC
equationとTLC
plethの間の一致は、データ点が1単位のラインの周りを中心としていると共に1単位のラインの周りに緊密に密集していることによって示されている。
図10E−10Hは、それぞれ
図10A−10Dと関連付けられた、ブランドアルトマンプロットを描く。ブランドアルトマンプロットは、全ての被験者について(10E)と、健康な被験者のみについて(10F)と、閉塞性の被験者のみについて(10G)と、拘束性の被験者のみについて(10H)、TLC
equationをプレチスモグラフィのTLC(TLC
PLETH)と比較する。実線は平均バイアスを表す一方、破線は上限と下限(±1.96*SD)を表す。変動係数(CV)が、各プロット内に表示されている。
【0128】
図11A−11Hは、
図1に示されたもののような装置によって測定された入力パラメータの数式によって生成されたTLC(TLC
equation)と体幹プレチスモグラフィを使って測定されたTLC(TLC
PLETH)の間の関係を示す数々のチャートを描く。
図11A−11Dは、全ての被験者について(11A)と、健康な被験者のみについて(11B)と、閉塞性の被験者のみについて(11C)と、拘束性の被験者のみについて(11D)の、TLC
equationとTLC
plethの間の一致を描く。実線は1単位のラインを表す。TLC
equationとTLC
plethの間の一致は、データ点が1単位のラインの周りを中心としていると共に1単位のラインの周りに緊密に密集していることによって示されている。
図11E−11Hは、それぞれ
図11A−11Dと関連付けられた、ブランドアルトマンプロットを描く。ブランドアルトマンプロットは、全ての被験者について(11E)と、健康な被験者のみについて(11F)と、閉塞性の被験者のみについて(11G)と、拘束性の被験者のみについて(11H)、TLC
equationをプレチスモグラフィのTLC(TLC
PLETH)と比較する。実線は平均バイアスを表す一方、破線は上限と下限(±1.96*SD)を表す。変動係数(CV)が、各プロット内に表示されている。
【0129】
(下の)表1は、
図9A−9Dと
図9E−9Hに示されたデータを特徴付けている統計的パラメータを示す。特に、表1は、人口サイズ(N)と,平均TLC
PLETHと、平均TLC
equationと、自乗平均平方根誤差(RMSE)と、変動係数(CV)を提供している。
【0130】
【表1】
(例えば、方法600を通して)肺測定装置に実装された(例えば、方法700を通して開発された)特定の数式は、実体的に体現されたコンピューターソフトウェアまたはファームウェアで、コンピューターハードウェアで、またはそれらの1つ以上の組み合わせで、デジタル電子回路に実装されることができる。数式の実装は、1つ以上のコンピュータープログラム、例えば、データ処理装置による実行のための、またはその動作を制御するための、実体のある非一時的なプログラム上に符号化されたコンピュータープログラム命令の1つ以上のモジュール、として実装されることができる。代替的にかまたは追加的に、プログラム命令は、人工的に生成され伝播された信号、例えば、データ処理装置による実行のための好適な受信機装置への送信のために情報を符号化するために生成された、機械生成された電気的、光学的、または電磁気的信号上に符号化されることができる。コンピューター格納媒体は、機械読み取り可能な格納デバイス、機械読み取り可能な格納基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリーデバイス、またはそれらの1つ以上の組み合わせであることができる。
【0131】
肺測定装置に実装された数式は、例としてプログラム可能なプロセッサ、コンピューター、または複数のプロセッサまたはコンピューターを含んだ、「データ処理ハードウェア」によって実行されることができる。ハードウェアはまた、特定目的の論理回路、例えば、中央処理ユニット(CPU)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(アプリケーション特定集積回路)、であるかまたはそれを更に含むことができる。いくつかの実装では、データ処理装置および/または特定目的の論理回路は、ハードウェアベースおよび/またはソフトウェアベースのものであっても良い。例えば、データ処理ハードウェアは、コントローラ140(
図1に示された)、コントローラ230(
図2に示された)、制御モジュール315(
図3に示された)、制御部415(
図4に示された)、および/またはコントローラ530(
図5に示された)、を含んでいても良い。
【0132】
数式によって実装されたプロセスと論理フローは、入力データ上で動作して出力を生成することによって機能を行うための1つ以上のコンピュータープログラムを実行している1つ以上のプログラム可能なコンピューターによって行われることができる。プロセスと論理フローはまた、特定目的の論理回路、例えば、中央処理ユニット(CPU)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(アプリケーション特定集積回路)によって行われることができるか、または装置はまた、特定目的の論理回路、例えば、中央処理ユニット(CPU)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(アプリケーション特定集積回路)として実装されることができる。
【0133】
コンピュータープログラムの実行のために好適なコンピューターは、例として、汎用または特定目的のマイクロプロセッサまたはその両方、またはあらゆるその他の種類の中央処理ユニットに基づいていることができる。一般に、中央処理ユニットは、リードオンリーメモリーまたはランダムアクセスメモリーまたはその両方から命令とデータを受け取る。コンピューターの本質的な要素は、命令を行うか実行するための中央処理ユニットと、命令とデータを格納するための1つ以上のメモリーデバイスである。一般に、コンピューターはまた、1つ以上のデータを格納するための大量格納デバイス、例えば、磁気光学的ディスク、または光学的ディスクを含むか、またはそれらからデータを受け取りそれらにデータを送るようにそれらと動作的に結合されているか、その両方である。但し、コンピューターが、そのようなデバイスを有する必要は無い。
【0134】
肺測定装置に実装された数式と関連付けられた命令とデータのような、コンピュータープログラムの命令とデータを格納するのに好適なコンピューター読み取り可能な媒体(状況に応じて、一時的または非一時的)は、例として半導体メモリーデバイス、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリーデバイスと、磁気ディスク、例えば、内部ハードディスクまたはリムーバブルディスクと、磁気光学的ディスクと、CO−ROMおよびDVD−ROMディスクを含んだ、全ての形の不揮発性メモリー、メディアおよびメモリーデバイスを含む。メモリーは、キャッシュ、クラス、フレームワーク、アプリケーション、バックアップデータ、ジョブ、ウェブページ、ウェブページテンプレート、データベーステーブル、ビジネスおよび/またはダイナミック情報や、あらゆるパラメータ、変数、アルゴリズム、命令、ルール、制約、またはそれらへの参照を含んだあらゆるその他の適切な情報を格納したレポジトリーを含んだ、様々なオブジェクトまたはデータを格納しても良い。加えて、メモリーは、ログ、ポリシー、セキュリティまたはアクセスデータ、報告ファイル、およびその他のもののような、あらゆるその他の適切なデータを含んでいても良い。プロセッサとメモリーは、特定目的の論理回路によって補足されるかそれに組み込まれていることができる。
【0135】
ユーザーとの相互作用を提供するために、この明細書に記載された主題の実装は、ユーザーに情報を表示するための、ディスプレイデバイス、例えば、CRT(ブラウン管)、LCD(液晶ディスプレイ)、またはプラズマモニターと、それによってユーザーがコンピューターに入力を提供することができる、入力デバイス(例えば、キーパッド、ポインティングデバイス、またはそれ以外)を有するか、またはそれらに接続された、肺測定装置上に実装されることができる。その他の種類のデバイスが、ユーザーとの相互作用を提供するのに使われることができ、例えば、ユーザーに提供されたフィードバックは、あらゆる形の知覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックであることができ、ユーザーからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含んだ、あらゆる形で受け取られることができる。
【0136】
数々の実施形態が記載されてきた。それにも拘らず、様々な変形がなされても良いことが理解されるであろう。例えば、所望の呼吸パラメータを計算する方法の例示的実施形態は、複数のベースライン呼吸測定と関連付けられた1つ以上の入力パラメータからなる数式を決定することであって、そこでは入力呼吸パラメータのいくつかは被験者における所望の呼吸パラメータを計算するのに使われることと;呼吸デバイスで患者の少なくとも1つの呼吸測定を測定することと;数式への入力としての患者の測定された呼吸測定に基づいて、患者の所望の呼吸パラメータを決定することと、を含む。例示的実施形態と組み合わせ可能な例示的側面としては:所望の呼吸パラメータが、TLC、TGV、RV、D
LCO、気道抵抗、肺組織順応性、またはFRCの少なくとも1つからなること;数式が、臨床データを使ったアルゴリズム的アプローチに基づいて決定されること;呼吸デバイスが、数式において使われるべき1つ以上の呼吸パラメータの値を取得するように構成されていること;トレーニング人口が、健康な被験者からなること;トレーニング人口が、不健康な被験者からなること;不健康な被験者が、1つ以上の呼吸器疾患を有すること;被験者の健康状態が、健康と不健康の混合であること;1つ以上の入力パラメータが、呼吸機能、呼吸器、または全体的な呼吸的健康度に関するパラメータからなること;1つ以上の入力パラメータが、1つ以上の入力パラメータと所望の呼吸パラメータの間の既知の相関に基づいて選択されることができること;1つ以上の入力パラメータが、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、機械的インピーダンス、圧力減衰または上昇の時間定数、および流量減衰または上昇の時間定数、からなることができること;1つ以上の入力パラメータが、1つ以上の肺気量測定デバイスまたは呼吸器デバイスを使って測定されること;所望の呼吸的健康度パラメータが、直接測定されること;所望の呼吸パラメータが、好ましいデバイスまたは技術を使って測定されること;好ましいデバイスまたは技術が、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部CT撮影法からなること;数式が、線形方程式からなること;数式が、非線形方程式からなること;数式が、アルゴリズム的アプローチを使って生成されること;および/または数式が、1つ以上の入力パラメータからなること、が含まれる。
【0137】
呼吸パラメータを推定するための方法の別の例示的実施形態は、被験者の呼吸パラメータの少なくとも1つの測定を決定することと;呼吸パラメータの複数の歴史的測定に基づいて開発された数式に測定を入力することと;数式から呼吸パラメータを出力することであって、呼吸パラメータは、TLC、FRC、またはTGVの推定からなること、を含む。
【0138】
人被験者の呼吸パラメータを推定する方法の別の例示的実施形態は、(1)複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことと;(2)複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことであって、入力パラメータの各々は呼吸パラメータと関連付けられていることと;(3)所望の呼吸パラメータの測定と1つ以上の入力パラメータの測定で、入力パラメータの少なくとも一部分かまたはそれらのサブセットを入力とし、肺パラメータを出力としてなる数式を決定することと;(4)人被験者の1つ以上のパラメータの測定を行うことと;(5)人被験者の1つ以上のパラメータの測定と数式に基づいて、人被験者の呼吸パラメータの値を推定することと、を含む。例示的実施形態と組み合わせ可能な例示的側面としては:ステップ(1)が、全身プレチスモグラフィ技術、ヘリウム希釈技術、または胸部CT撮影法技術、窒素洗い出し、窒素回復、または胸部X線撮影、によって行われることと;ステップ(2)と(4)が、呼吸デバイス、強制振動またはインパルス振動測定法技術、または擬人化デバイス、で行われることと;呼吸デバイスが、米国特許出願シリアル番号12/830,955、米国特許出願シリアル番号12/670,661、または米国特許出願シリアル番号13/808,868の1つに記載されたようなデバイスからなることと;入力パラメータが、FEV
1、FEV
1/FVC、IC、またはVCのような、相対的肺気量または肺気流量からなることと;入力パラメータのいくつかが、呼吸圧力、呼吸流量、またはその他の呼吸力学からなることができることと;入力パラメータのいくつかが、R
rsまたはE
rsのような呼吸器値からなることができることと;入力パラメータのいくつかが、患者の性別、患者の身長、患者の体重、または患者の肥満度指数、の1つ以上を含んだ擬人化情報からなることができることと;および/または呼吸パラメータが、TLC、TGV、RV、またはFRCの少なくとも1つからなることと、が含まれる。
【0139】
所望の呼吸パラメータを推定する数式を生成する方法の別の例示的実施形態は、その上で1つ以上の入力パラメータと所望の呼吸パラメータを測定する、被験者のトレーニング人口を選択することと;1つ以上の入力パラメータと所望の呼吸パラメータについてトレーニング人口を測定することと;数学的変換によって1つ以上の入力パラメータから入力パラメータのプールを生成することと;入力パラメータのサブセットの測定と所望の呼吸パラメータを推定するために使われることができる測定を使って数式を生成することと、を含む。
【0140】
ここに記載されたコンポーネンツの様々な組み合わせが、同様の装置の実施形態のために提供されても良い。従って、その他の実施形態は、本開示の範囲内である。
【手続補正書】
【提出日】2016年3月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流経路を含むマウスピースと、
気流経路中に配置されたセンサーと、
センサーに通信可能に結合されたコントローラであって、コントローラはプロセッサとメモリー中に格納された命令を含み、コントローラは、
センサーからの測定を同定することと、
メモリー中に格納された特定の数式を同定することであって、特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた入力パラメータを含むことと、
同定された測定と特定の数式に基づいて絶対肺気量の値を決定することと、
を含んだ動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能であるものと、
を含んだ肺測定装置、
を含む肺測定システム。
【請求項2】
センサーは、気流センサーと圧力センサーの少なくとも1つを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項3】
コントローラは、
測定に基づいて特定の数式への入力パラメータを決定することと、
入力パラメータに基づいて絶対肺気量の値を計算することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項1の肺測定システム。
【請求項4】
入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項5】
特定の数式を同定することは、メモリー中に格納された複数の数式から特定の数式を同定することを含む、請求項1の肺測定システム。
【請求項6】
コントローラは、
メモリー中に格納された複数の数式から第二の特定の数式を同定することであって、第二の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第二の入力パラメータを含むことと、
同定された測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、肺弾性、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項5の肺測定システム。
【請求項7】
コントローラは、
メモリー中に格納された複数の数式から第二の特定の数式を同定することであって、第二の特定の数式はデータ解析を使って開発され、同定された測定に基づいた第二の入力パラメータを含むことと、
同定された測定と第二の特定の数式に基づいて、少なくとも1つの呼吸的健康度の質的指標を決定することと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項5の肺測定システム。
【請求項8】
特定の数式は、複数の健康な被験者を含むトレーニング人口から導出される、請求項1の肺測定システム。
【請求項9】
特定の数式は、複数の不健康な被験者を更に含むトレーニング人口から導出され、複数の不健康な被験者の各々は1つ以上の呼吸器疾患を有する、請求項8の肺測定システム。
【請求項10】
特定の数式は、トレーニング人口上で行われた呼吸測定技術に基づいて計算された定数を含み、呼吸測定技術は、体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法の少なくとも1つを含む、請求項8の肺測定システム。
【請求項11】
トレーニング人口は、第1の部分と第2の部分を含み、第1と第2の部分の各々は、擬人化または肺気量測定分類子を含む分類子によって規定されており、コントローラは、
分類子に少なくとも一部は基づいて特定の数式を選択すること、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項8の肺測定システム。
【請求項12】
特定の数式は、回帰分析から導出される、請求項1の肺測定システム。
【請求項13】
コントローラは、
データ解析の持続時間または調節の少なくとも1つに基づいてメモリー中に格納された複数の数式の少なくとも1つを更新することであって、データ解析の調節は、複数の数式を導出するのに使われたトレーニング人口の被験者の数の増加を含むこと、
を含んだ更なる動作を行うためにプロセッサで命令を実行するように動作可能である、請求項1の肺測定システム。
【請求項14】
絶対肺気量を決定するためのコンピューター実装された方法であって、
肺測定装置での患者の呼吸測定を同定することと、
データ解析を使って開発され入力パラメータを含む特定の数式を同定することであって、入力パラメータは同定された呼吸測定に基づいていることと、
患者の呼吸測定と特定の数式に基づいて、患者の絶対肺気量を決定することと、
を含むコンピューター実装された方法。
【請求項15】
特定の数式を同定することは、複数の数式から特定の数式を同定することを含む、請求項14のコンピューター実装された方法。
【請求項16】
データ解析を使って開発され第二の入力パラメータを含む第二の特定の数式を複数の数式から同定することと、
患者の呼吸測定と第二の特定の数式に基づいて、総肺気容量(TLC)、機能残余容量(FRC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、一酸化炭素についての肺の拡散能力(DLCO)、気道抵抗、または肺組織順応性の少なくとも1つを決定することと、
を更に含む、請求項15のコンピューター実装された方法。
【請求項17】
特定の数式は、臨床データを使ったトレーニング人口に基づいて決定され、トレーニング人口は、健康な被験者と不健康な被験者を含む、請求項14のコンピューター実装された方法。
【請求項18】
不健康な被験者の各々は、1つ以上の呼吸器疾患を有する、請求項17のコンピューター実装された方法。
【請求項19】
体幹プレチスモグラフィ、ヘリウム希釈、または胸部コンピューター断層(CT)撮影法を含む呼吸測定技術を使ってトレーニング人口の各被験者の絶対肺気量を測定することによってデータ解析を生成すること、
を更に含む、請求項17のコンピューター実装された方法。
【請求項20】
肺測定装置で少なくとも1つの呼吸測定を得ることを更に含む、請求項14のコンピューター実装された方法。
【請求項21】
入力パラメータは、入力パラメータと絶対肺気量の間の既知の相関に基づいて選択される、請求項14のコンピューター実装された方法。
【請求項22】
入力パラメータは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、または流量減衰または上昇の時間定数、の少なくとも1つを含む、請求項14のコンピューター実装された方法。
【請求項23】
人被験者の呼吸パラメータを推定する方法であって、
複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことであって、複数の試験被験者は健康な被験者と不健康な被験者を含むことと、
複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、
呼吸パラメータの直接測定と1つ以上の入力パラメータの測定で、入力パラメータの少なくとも一部分を入力とし、呼吸パラメータを出力として含む数式を決定することと、
を含む方法。
【請求項24】
入力パラメータの各々は、呼吸パラメータと関連付けられている、請求項23の方法。
【請求項25】
複数の試験被験者における呼吸パラメータの直接測定を行うことは、
全身プレチスモグラフィ技術、ヘリウム希釈技術、胸部コンピューター断層(CT)撮影法技術、窒素洗い出し、窒素回復、または胸部X線撮影、の少なくとも1つで行われる、請求項23の方法。
【請求項26】
複数の試験被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことは、
肺測定装置、肺気量測定器、フロー中断デバイス、先進型フロー中断デバイス、強制振動またはインパルス振動測定法技術、または擬人化デバイス、の少なくとも1つで行われる、請求項23の方法。
【請求項27】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、相対的肺気量または肺気流量を含み、相対的肺気量は、1秒間の強制呼気量(FEV1)、1秒間の強制呼気量の努力肺活量との比(FEV1/FVC)、最大吸気量(IC)、または肺活量(VC)、の少なくとも1つを含む、請求項23の方法。
【請求項28】
1つ以上の入力パラメータの少なくとも1つは、気道開口圧力、気道開口圧力の微分、気道開口圧力の積分、気道開口流量、気道開口流量の微分、気道開口流量の積分、強制肺気量測定から導出可能なパラメータ、低速肺気量測定から導出可能なパラメータ、機械的インピーダンス、強制振動から導出可能なパラメータ、インパルス振動測定法から導出可能なパラメータ、圧力減衰または上昇の時間定数、流量減衰または上昇の時間定数、呼吸器系抵抗(Rrs)または呼吸器系エラスタンス(Ers)を含んだ呼吸器値、または患者の性別、患者の身長、患者の体重、または患者の肥満度指数、の1つ以上を含んだ擬人化情報、の少なくとも1つを含む、請求項23の方法。
【請求項29】
呼吸パラメータは、総肺気容量(TLC)、胸腔内ガス量(TGV)、残気量(RV)、または機能残余容量(FRC)、の少なくとも1つを含む、請求項23の方法。
【請求項30】
肺測定装置で人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定を行うことと、
人被験者の1つ以上の入力パラメータの測定と数式に基づいて、肺測定装置での人被験者の呼吸パラメータの値を推定することと、
を更に含む、請求項23の方法。
【国際調査報告】