特表2016-527227(P2016-527227A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-527227ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-527227(P2016-527227A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20160815BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20160815BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
   C07D487/04 140
   A61K31/519
   A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-526739(P2016-526739)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月26日
(86)【国際出願番号】IB2014063123
(87)【国際公開番号】WO2015008221
(87)【国際公開日】20150122
(31)【優先権主張番号】3180/CHE/2013
(32)【優先日】2013年7月16日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512276315
【氏名又は名称】ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナドゴウド, ラメシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】バサム, スリダール
(72)【発明者】
【氏名】マキレディ, シバ レディ
(72)【発明者】
【氏名】ギラ, ゴバーダーン
(72)【発明者】
【氏名】クンヒモン, サイアム クマール ウンニアラン
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ, サチン
(72)【発明者】
【氏名】ドルナラ, クマラ スワミー
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形およびその調製方法を対象とする。本発明のある態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、a)ペメトレキセド二酸およびトロメタミンを有機溶媒中で合わせるステップと、b)ステップa)の反応混合物を、約0℃から還流温度近くの温度で撹拌するステップと、c)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと、d)生成物を乾燥させるステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩。
【請求項2】
図2に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩。
【請求項3】
約6.9±0.2、8.8±0.2、9.8±0.2、11.1±0.2、13.9±0.2、16.3±0.2、17.25±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、22.0±0.2、23.7±0.2、および29.4±0.2(2θ度)のピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項2に記載の結晶形。
【請求項4】
図3に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩。
【請求項5】
約9.1±0.2、10.2±0.2、11.1±0.2、12.9±0.2、14.5±0.2、16.2±0.2、16.9±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、19.6±0.2、19.9±0.2、20.4±0.2、21.3±0.2、23.1±0.2、23.5±0.2、および25.9±0.2(2θ度)のピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項4に記載の結晶形。
【請求項6】
図4に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩。
【請求項7】
約9.3±0.2、10.4±0.2、11.2±0.2、13.1±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.0±0.2、17.6±0.2、18.2±0.2、18.9±0.2、19.4±0.2、20.0±0.2、21.5±0.2、23.2±0.2、23.5±0.2、25.2±0.2、25.6±0.2、26.0±0.2、26.2±0.2、27.6±0.2、および31.1±0.2(2θ度)のピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項6に記載の結晶形。
【請求項8】
図5に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩。
【請求項9】
約4.9±0.2、10.7±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、15.8±0.2、16.3±0.2、16.8±0.2、17.3±0.2、19.0±0.2、21.5±0.2、22.5±0.2、22.7±0.2、23.9±0.2、24.5±0.2、25.8±0.2、27.4±0.2、28.5±0.2、28.9±0.2、29.9±0.2、および31.6±0.2(2θ度)のピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩。
【請求項11】
図6に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項10に記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩。
【請求項12】
約9.3±0.2、9.6±0.2、14.6±0.2、15.8±0.2、16.7±0.2、17.1±0.2、17.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、21.7±0.2、22.2±0.2、22.7±0.2、23.6±0.2、24.5±0.2、24.9±0.2、25.1±0.2、26.3±0.2、27.8±0.2、28.5±0.2、30.1±0.2、および32.5±0.2(2θ度)のピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項11に記載の結晶形。
【請求項13】
ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法であって、
a.ペメトレキセド二酸およびトロメタミンを有機溶媒中で合わせるステップと、
b.ステップa)の反応混合物を、約0℃から還流温度近くの温度で撹拌するステップと、
c.前記ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと、
d.生成物を乾燥させるステップと
を含む、方法。
【請求項14】
ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法であって、
a.C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得るステップと、
b.ステップa)の前記溶液をペメトレキセド二酸と合わせるステップと、
c.反応混合物を適切な時間維持するステップと、
d.前記ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法であって、
a.極性溶媒またはその混合物中のトロメタミンの溶液を調製するステップと、
b.ペメトレキセド二酸をステップa)の前記溶液に添加するステップと、
c.得られた溶液に反溶媒を添加するステップと、
d.反応混合物を適切な時間維持するステップと、
e.前記ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む、方法。
【請求項16】
ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法であって、
a.C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得るステップと、
b.ステップa)の前記溶液をペメトレキセド二酸と合わせるステップと、
c.前記ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
先行する請求項のいずれかに記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン塩を使用して調製される、医薬製剤。
【請求項18】
前記結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩が、図2に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩が、図3に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
前記結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩が、図4に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項17に記載の製剤。
【請求項21】
前記結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩が、図5に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項17に記載の製剤。
【請求項22】
前記結晶性ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩が、図6に示されているPXRDによって特徴付けられる、請求項17に記載の製剤。
【請求項23】
少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤をさらに含む、請求項17に記載の製剤。
【請求項24】
先行する請求項のいずれかに記載の結晶性ペメトレキセドトロメタミン塩を含む、医薬製剤。
【請求項25】
少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤をさらに含む、請求項24に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形およびその調製方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ペメトレキセド、すなわち次式を有するN−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1Hピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル]−L−グルタミン酸(ペメトレキセド二酸としても公知)
【化1】
は、葉酸を必要とするいくつかの酵素の強力な阻害剤であり、非小細胞肺がんおよび中皮腫の処置に有用である。ペメトレキセドは、商標ALIMTA(登録商標)で市販により利用可能であり、その活性成分は、L−グルタミン酸,N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル]−二ナトリウム塩七水和物(「ペメトレキセド二ナトリウム七水和物」)と化学的に記載される。市販により利用可能な製品であるALIMTA(登録商標)は、静脈内注入用の頓用バイアルで利用可能な無菌の凍結乾燥粉末として供給される。
【0003】
活性医薬品成分(API)は、化学的誘導体、溶媒和物、水和物、共結晶または塩などの様々な異なる形状で調製することができる。またAPIは、非晶質であってもよく、異なる結晶多形として、および/または異なる溶媒和状態もしくは水和状態で存在することができるという点で、異なる固形で調製することができる。APIの形状を変えることによって、APIの物理的特性を変えることが可能である。例えば、固形のAPIは、典型的に、異なる溶解度を有しており、したがって熱力学的に安定な固形の方が、熱力学的に安定でない固形よりも溶解度が低い。また固形は、有効期間、バイオアベイラビリティ、形態、蒸気圧、密度、色、および圧縮率などの特性が異なり得る。したがって、APIの固体状態を変動させることは、APIの物理的および薬理学的特性をモジュレートする多くの方法のうちの1つである。
【0004】
全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,344,932号(「US’932特許」)は、ペメトレキセド二酸または薬学的に許容されるその塩に言及している。
【0005】
国際出願公開第WO01/14379A2号(「WO’379公報」)は、「水和物形I」と指定されるペメトレキセド二ナトリウムの新規な結晶形を記載している。WO’379公報によれば、用語「水和物」は、保存条件の相対湿度に応じて可変量の水、約0.01〜約3当量の水を含有し得る、ペメトレキセド二ナトリウム塩の結晶格子を説明するものであり、好ましくは水和物形Iは、約2〜約3当量の水を含有し、最も好ましくは、2.4〜2.9当量の水である。したがって「水和物形I」は、吸湿性質、および相対湿度に対して可変量の水を保持することなどの不利益な特性に起因して遭遇する困難が原因となり、ペメトレキセド二ナトリウムの最終剤形を生成するには適していない場合がある。
【0006】
米国特許第7,138,521号(「US’521特許」)は、ペメトレキセド二ナトリウムが、既に公知の2.5水和物よりも安定な別の結晶形、すなわち七水和物形で存在することができ、七水和物結晶形の主な利点が、溶媒含量に関する安定性、および関係物質の成長に関する安定性であると記載している。しかしUS’521特許によれば、七水和物結晶形は、高温、低湿度および/または真空に晒されると、水の喪失によって2.5水和物結晶形に変換する。前記の制限を考慮すると、七水和物を調製する方法には、US’521特許の第3欄4〜30行に記載されている非常に重要な特別な条件が必要であり、その条件の1つは、高湿度窒素の下で乾燥させて、アセトン含量を除去し、所望の含水量を維持することである。前述のことを考慮すると、「七水和物結晶形」は、低湿度および/または真空条件における多形安定性、ならびに高温に曝露されると水の喪失によってより低い水和物に変換することなどの不利益な特性に起因して遭遇する困難が原因となり、ペメトレキセド二ナトリウムの最終剤形を生成するには十分に適していない場合がある。
【0007】
公知の形状のペメトレキセド二ナトリウムの吸湿性質および多形安定性に関連する困難を克服するために、より良好な物理的パラメータを有するペメトレキセド二ナトリウムの新しい結晶形を発見することに、一部の研究グループが焦点を絞った。
【0008】
国際出願公開第WO2011/064256A1号(「WO’256公報」)および中国特許第1778802号(「CN’802特許」)は、ペメトレキセド二ナトリウムの異なる結晶形を記載している。
【0009】
しかし、ペメトレキセド二ナトリウムの結晶形の多様性は、異なる製造バッチの均一性を維持するのに不利益となり、結果として最終剤形の均一性を保つのに不利益となるおそれがある。
【0010】
報告されているペメトレキセド二ナトリウムの多形体に関連する困難を克服するために、ペメトレキセド二酸の新しい結晶形およびペメトレキセドの他の塩形状の新規な多形を発見することに、一部の研究グループが焦点を絞った。
【0011】
国際出願公開第WO2008/021405A1号(「WO’405公報」)および第WO2010/031357A1号(「WO’357公報」)は、ペメトレキセド二酸の様々な結晶形およびそれらの調製方法を記載している。
【0012】
WO’379公報に提示されている説明によれば、ペメトレキセド二酸に関連するいくつかの不利益があり、例えばペメトレキセド二酸は毒性が高く、特別な取扱い対策および装置を必要とすること、また酸の単離には、時間がかかり高価な難しい操作が必要となることに注目することができる。
【0013】
中国特許出願第CN101033227号、第CN10691371号および第CN1,552,713号は、ペメトレキセドの異なる新しい塩およびそれらの調製方法を開示している。しかしこれらの塩の多形体は、溶解度がより低いなどの物理化学特性に起因して、有用でない場合がある。
【0014】
報告されているペメトレキセド二酸、ペメトレキセド二ナトリウムおよびペメトレキセドの他の塩の多形体に関連する不利益を克服するために、本願の発明者らは、改善された物理的特性を有しており、ペメトレキセド二酸、ペメトレキセド二ナトリウムおよびペメトレキセドの他の塩の公知の多形体に関連する不利益がない、ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形を提供する必要があると考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5344932号明細書
【特許文献2】国際公開第01/14379号
【特許文献3】米国特許第7138521号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/064256号
【特許文献5】中国特許第1778802号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/021405号
【特許文献7】国際公開第2010/031357号
【特許文献8】中国特許第1552713号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、医薬剤形の製造に有用であり、APIとして使用される場合に利点をもたらす1つまたは複数の特性を有する、ペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形に関する。また本発明は、このような新規な結晶形を調製する方法を提供する。
【0017】
発明の要旨
本発明のある態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、結晶性ペメトレキセドトロメタミン塩に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩の結晶形に関する。
【0020】
本発明のある態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)ペメトレキセド二酸およびトロメタミンを有機溶媒中で合わせるステップと、
b)ステップa)の反応混合物を、約0℃から還流温度近くの温度で撹拌するステップと、
c)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと、
d)生成物を乾燥させるステップと
を含む。
【0021】
本発明の別の態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得るステップと、
b)ステップa)の溶液をペメトレキセド二酸と合わせるステップと、
c)反応混合物を適切な時間維持するステップと、
d)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)極性溶媒またはその混合物中のトロメタミンの溶液を調製するステップと、
b)ペメトレキセド二酸をステップa)の溶液に添加するステップと、
c)得られた溶液にメチルエチルケトンを添加するステップと、
d)反応混合物を適切な時間維持するステップと、
e)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩のH−NMRスペクトルである。
図2図2は、実施例1から得られたペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形1のPXRDパターンを示す図である。
図3図3は、実施例4から得られたペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形2のPXRDパターンを示す図である。
図4図4は、実施例5から得られたペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形3のPXRDパターンを示す図である。
図5図5は、実施例6から得られたペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形4のPXRDパターンを示す図である。
図6図6は、実施例7から得られたペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩の結晶形5のPXRDパターンを示す図である。
図7図7は、ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明のある態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩に関する。
【0025】
諸実施形態では、本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩の固体状態の形状に関する。
【0026】
諸実施形態では、本発明は、結晶性ペメトレキセドトロメタミン塩に関する。
【0027】
諸実施形態では、本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩の結晶形に関する。
【0028】
諸実施形態では、本発明は、ペメトレキセドトロメタミン塩の形状1、形状2、形状3、形状4および形状5のうちの少なくとも1つを含むペメトレキセドトロメタミン塩の結晶形に関する。
【0029】
図2のPXRDによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形1。
【0030】
約6.9±0.2、8.8±0.2、9.8±0.2、11.1±0.2、13.9±0.2、16.3±0.2、17.25±0.2、18.4±0.2、19.2±0.2、22.0±0.2、23.7±0.2、および29.4±0.2(2θ度)のピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形1。
【0031】
図3のPXRDによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形2。
【0032】
約9.1±0.2、10.2±0.2、11.1±0.2、12.9±0.2、14.5±0.2、16.2±0.2、16.9±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、19.6±0.2、19.9±0.2、20.4±0.2、21.3±0.2、23.1±0.2、23.5±0.2、および25.9±0.2(2θ度)のピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形2。
【0033】
図4のPXRDによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形3。
【0034】
約9.3±0.2、10.4±0.2、11.2±0.2、13.1±0.2、14.6±0.2、16.3±0.2、17.0±0.2、17.6±0.2、18.2±0.2、18.9±0.2、19.4±0.2、20.0±0.2、21.5±0.2、23.2±0.2、23.5±0.2、25.2±0.2、25.6±0.2、26.0±0.2、26.2±0.2、27.6±0.2、および31.1±0.2(2θ度)のピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形3。
【0035】
図5のPXRDによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形4。
【0036】
約4.9±0.2、10.7±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、15.8±0.2、16.3±0.2、16.8±0.2、17.3±0.2、19.0±0.2、21.5±0.2、22.5±0.2、22.7±0.2、23.9±0.2、24.5±0.2、25.8±0.2、27.4±0.2、28.5±0.2、28.9±0.2、29.9±0.2、および31.6±0.2(2θ度)のピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の結晶形4。
【0037】
図6のPXRDによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩の結晶形5。
【0038】
約9.3±0.2、9.6±0.2、14.6±0.2、15.8±0.2、16.7±0.2、17.1±0.2、17.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、21.7±0.2、22.2±0.2、22.7±0.2、23.6±0.2、24.5±0.2、24.9±0.2、25.1±0.2、26.3±0.2、27.8±0.2、28.5±0.2、30.1±0.2、および32.5±0.2(2θ度)のピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられるような、ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩の結晶形5。
【0039】
また本願は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法を対象とする。
【0040】
本願のある態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)ペメトレキセド二酸およびトロメタミンを有機溶媒中で合わせるステップと、
b)ステップa)の反応混合物を、約0℃から還流温度近くの温度で撹拌するステップと、
c)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと、
d)生成物を乾燥させるステップと
を含む。
【0041】
ステップa)は、ペメトレキセド二酸およびトロメタミンを有機溶媒中で合わせて、反応混合物を得ることを包含する。
【0042】
ペメトレキセド二酸は、Charlesら、Organic Process Research & Development 1999年、3巻、184〜188頁またはEdwardら、J. Med. Chem. 1992年、35巻、4450〜4454頁または米国特許第US5,344,932号によって開示されている方法を含めた公知の方法によって得ることができる。ステップ(a)で使用される有機溶媒は、脂肪族アルコール、例えばメタノールもしくはエタノール;脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン;カルボン酸のエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル;エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ニトリル、例えばアセトニトリル、またはそれらの混合物を含む群から選択され得る。ある実施形態では、溶媒として、メタノール、エタノールまたはアセトンが使用される。
【0043】
使用できるトロメタミンの典型的な量は、調製されることになる化学量論的な塩、例えばペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩であるかペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩であるかに基づいて変わり得る。
【0044】
ある実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり1モル当量のトロメタミンが使用される。別の実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり2モル当量のトロメタミン(teromethamine)が使用される。
【0045】
有機溶媒中のペメトレキセド二酸およびトロメタミンの反応混合物は、トロメタミンを選択された有機溶媒に溶解し、得られた溶液をペメトレキセド二酸と合わせることによって得られる。ある実施形態では、反応混合物は、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの範囲の温度で得ることができる。
【0046】
ステップb)は、ステップa)の反応混合物を、約0℃から還流温度近くの温度で撹拌することを包含する。
【0047】
ステップa)で得られた有機溶媒中のペメトレキセド二酸およびトロメタミンの反応混合物を、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの温度で撹拌し、維持して、ペメトレキセドトロメタミン塩の形成を容易にする。
【0048】
ある実施形態では、ステップa)の反応混合物は、約10℃〜約45℃の温度で、好ましくは約25℃〜約35℃で維持される。反応混合物は、ペメトレキセドトロメタミン塩の完全な形成を確実にするのに十分な時間、所望の温度で維持される。
【0049】
ステップc)は、ペメトレキセドトロメタミン塩を単離することを包含する。ペメトレキセドトロメタミン塩は、使用される溶媒に応じて、それ自体公知の方式で単離され、それらの方式には、重力もしくは吸引による濾過、蒸留、遠心分離または緩慢な蒸発等が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
ステップd)は、生成物を乾燥させることを包含する。ステップc)で得られた生成物を、約50℃未満の温度で乾燥させると、ペメトレキセドトロメタミン塩を得ることができる。
【0051】
本願の別の態様は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得るステップと、
b)ステップa)の溶液をペメトレキセド二酸と合わせるステップと、
c)反応混合物を適切な時間維持するステップと、
d)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む。
【0052】
ステップa)は、C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得ることを包含する。
【0053】
ステップa)の溶液は、トロメタミンをC〜Cアルコール溶媒に溶解することによって得ることができる。ステップ(a)で使用されるC〜Cアルコール溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等からなる群から選択され得る。使用できるトロメタミンの典型的な量は、調製されることになる化学量論的な塩、例えばペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩であるかペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩であるかに基づいて変わり得る。
【0054】
ある実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり1モル当量のトロメタミンを使用して、ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩を調製する。別の実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり2モル当量のトロメタミンを使用して、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を調製する。
【0055】
トロメタミンの溶液は、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの温度で、好ましくは約40℃〜約50℃の温度で得ることができる。
【0056】
ステップb)は、ステップa)の溶液をペメトレキセド二酸と合わせることを包含する。
【0057】
ステップa)で使用されるペメトレキセド二酸は、Charlesら、Organic Process Research & Development 1999年、3巻、184〜188頁またはEdwardら、J. Med. Chem. 1992年、35巻、4450〜4454頁または米国特許第US5,344,932号によって開示されている方法を含めた公知の方法によって得ることができる。
【0058】
ステップa)で得られたC〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を、ペメトレキセド二酸と合わせて、ペメトレキセド二酸およびトロメタミンの反応混合物を得る。ステップa)の溶液は、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの温度、好ましくは約10℃〜約45℃の温度、より好ましくは約25℃〜約35℃の温度で、ペメトレキセド二酸と合わせることができる。
【0059】
ステップc)は、反応混合物を、適切な時間維持することを包含する。
【0060】
ステップb)で得られたペメトレキセド二酸およびトロメタミンの反応混合物は、撹拌され、適切な時間維持される。本願による適切な時間は、ペメトレキセドトロメタミン塩の形成を容易にするのに必要な時間であり得る。反応混合物を、約0℃から選択されたC〜Cアルコール溶媒の還流温度近くの温度で維持すると、ペメトレキセドトロメタミン塩を容易に形成することができる。ある実施形態では、ステップb)の反応混合物は、約10℃〜約45℃の温度で、好ましくは約25℃〜約35℃で維持される。ステップd)は、ペメトレキセドトロメタミン塩を単離することを包含する。ペメトレキセドトロメタミン塩は、使用される溶媒に応じて、それ自体公知の方式で単離され、それらの方式には、重力もしくは吸引による濾過、蒸留、遠心分離または緩慢な蒸発等が含まれるが、これらに限定されない。得られた生成物を、約50℃未満の温度で乾燥させると、ペメトレキセドトロメタミン塩が得られる。
【0061】
別の実施形態では、本願は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)極性溶媒またはその混合物中のトロメタミンの溶液を調製するステップと、
b)ペメトレキセド二酸をステップa)の溶液に添加するステップと、
c)得られた溶液に反溶媒を添加するステップと、
d)反応混合物を適切な時間維持するステップと、
e)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む。
【0062】
ペメトレキセド二酸は、Charlesら、Organic Process Research & Development 1999年、3巻、184〜188頁またはEdwardら、J. Med. Chem. 1992年、35巻、4450〜4454頁または米国特許第US5,344,932号によって開示されている方法を含めた公知の方法によって得ることができる。
【0063】
ステップa)極性溶媒またはその混合物中のトロメタミンの溶液を調製する。
【0064】
ステップ(a)で使用される極性溶媒は、水、脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール;脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン;カルボン酸のエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルTHF、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル;ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリルまたはそれらの混合物を含む群から選択され得る。ある実施形態では、溶媒として、メタノール、イソプロパノールまたは水が使用される。
【0065】
使用できるトロメタミンの典型的な量は、調製されることになる化学量論的な塩、例えばペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩であるかペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩であるか基づいて変わり得る。
【0066】
ある実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり1モル当量のトロメタミンが使用される。別の実施形態では、ペメトレキセド二酸1モル当量当たり2モル当量のトロメタミンが使用される。
【0067】
極性溶媒中のトロメタミンの反応混合物は、トロメタミンを選択された極性溶媒に溶解することによって得られる。ある実施形態では、反応混合物は、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの範囲の温度で、好ましくは約20℃〜約30℃の温度で得ることができる。
【0068】
ステップb)ペメトレキセド二酸を、ステップa)の溶液に添加する。
【0069】
ペメトレキセド二酸は、分割して反応混合物に添加され、または一度に充填される。ある実施形態では、ペメトレキセド二酸は、約0℃から還流温度近くの範囲の温度で、好ましくは約10℃〜約30℃の温度で添加され得る。ある実施形態では、反応混合物を、約0℃から選択された溶媒の還流温度近くの範囲の温度で、好ましくは約10℃〜約30℃の温度で維持すると、透明な溶液を得ることができる。
【0070】
ステップc)得られた溶液に反溶媒を添加する。
【0071】
ステップc)で使用される反溶媒は、脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルTHF、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル;炭化水素、例えばシクロヘキサ
ン、n−ヘキサン、n−ヘプタンから選択され得る。ある実施形態では、反溶媒として、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはそれらの混合物が使用される。ある実施形態では、反溶媒は、選択された反溶媒に基づいて、約−10℃〜約50℃の範囲の温度で、好ましくは約25℃〜約30℃で添加することができる。
【0072】
ステップd)反応混合物を適切な時間維持する;
ステップc)で得られたペメトレキセド二酸およびトロメタミンの反応混合物は、撹拌され、適切な時間維持される。本願による適切な時間は、ペメトレキセドトロメタミン塩の形成を容易にするのに必要な時間であり得る。反応混合物を、約0℃から選択された反溶媒の還流温度近くの温度で維持すると、ペメトレキセドトロメタミン塩の形成を容易にすることができる。ある実施形態では、ステップd)の反応混合物は、約−10℃〜約45℃の温度で、好ましくは約25℃〜約35℃で維持される。
【0073】
ステップe)は、ペメトレキセドトロメタミン塩を単離することを包含する。
【0074】
ペメトレキセドトロメタミン塩は、使用される溶媒に応じて、それ自体公知の方式で単離され、それらの方式には、重力もしくは吸引による濾過、蒸留、遠心分離または緩慢な蒸発等が含まれるが、これらに限定されない。得られた生成物を、約50℃未満の温度で乾燥させると、ペメトレキセドトロメタミン塩が得られる。
【0075】
ある実施形態では、本願は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、ペメトレキセド二酸をトロメタミンと合わせるステップを含む。
【0076】
別の実施形態では、本願は、ペメトレキセドトロメタミン塩を調製する方法に関し、前記方法は、
a)C〜Cアルコール溶媒中のトロメタミンの溶液を得るステップと、
b)ステップa)の溶液をペメトレキセド二酸と合わせるステップと、
c)ペメトレキセドトロメタミン塩を単離するステップと
を含む。
【0077】
ある実施形態では、本願は、ペメトレキセド二酸1分子およびトロメタミン1分子からなるペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩を提供する。
【0078】
別の実施形態では、本願は、ペメトレキセド二酸1分子およびトロメタミン2分子からなるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0079】
ある実施形態では、本願は、図1に実質的に表されているH−NMRスペクトルによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0080】
別の実施形態では、本願は、図2に実質的に表されているXRPDパターンによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0081】
ある実施形態では、本願は、図3に実質的に表されている粉末XRDパターンによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0082】
ある実施形態では、本願は、図4に実質的に表されている粉末XRDパターンによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0083】
ある実施形態では、本願は、図5に実質的に表されている粉末XRDパターンによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩を提供する。
【0084】
ある実施形態では、本願は、図5に実質的に表されている粉末XRDパターンによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩を提供する。
【0085】
ある実施形態では、本願は、図7に実質的に表されているH−NMRスペクトルによって特徴付けられるペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩を提供する。
【0086】
本発明のペメトレキセドトロメタミン塩およびその新規な結晶形は、化学的純度、安定性、例えば保存安定性、脱水に対する安定性、多形変換に対する安定性、流動性、溶解度、形態または晶癖、吸湿性が低いこと、および残留溶媒の含量が少ないことの少なくとも1つから選択される有利な特性を有する。
【0087】
本発明の結晶性ペメトレキセドトロメタミン塩は、医薬製剤、好ましくは静脈内、筋肉内、皮下経路、動脈内または髄腔内経路によって投与されることになる注射可能な製剤の調製に有用である。より好ましくは、本発明のペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形のいずれも、医薬製剤の調製に有用である。さらにより好ましくは、本発明のペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の新規な結晶形のいずれも、医薬製剤の調製に有用である。
【0088】
本明細書で使用される場合、医薬製剤には、凍結乾燥させた粉末製剤、凍結乾燥前の溶液、凍結乾燥させた調製物を再構成した後に注射または注入できる状態の液状が含まれるが、これらに限定されない。また医薬製剤には、注射できる状態の液体製剤、または注射もしくは注入する前にさらに希釈するための濃縮物が含まれる。
【0089】
一態様では、投入結晶形は、凍結乾燥後、最終製剤において保持される。別の態様では、投入結晶形は、凍結乾燥後、最終製剤において本発明のペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形のいずれかに変換される。別の態様では、投入結晶形は、凍結乾燥後、最終製剤において本発明のペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形または非晶質ペメトレキセドトロメタミン塩またはそれらの混合物のいずれかに変換される。
【0090】
本発明のペメトレキセドトロメタミンの新規な結晶形を使用して調製された医薬製剤は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤、例えば、溶媒、安定剤、増量剤、緩衝液、担体、浸透圧調整剤、賦形剤、ビヒクル、溶解剤、pH調整剤またはそれらの適切な混合物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0091】
薬学的に許容される添加剤には、例えば、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、デキストロース、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、アスコルビン酸および誘導体、システイン、アセチルシステイン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸、リポ酸、ジヒドロリポ酸、メチオニン、ブチル−ヒドロキシアニソール、ブチル−ヒドロキシトルエン、トコフェロールおよび誘導体、クエン酸および誘導体、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTAおよび誘導体、アセテート、グルタメート、ホスフェート、ベンゾエート、ラクテート、タルトレート(tartarate)、水酸化ナトリウム、トロメタミンならびに塩酸、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明のペメトレキセドトロメタミン塩の新規な結晶形を使用して調製された医薬製剤は、哺乳動物における様々なタイプのがんの処置に有用である。
【0093】
本願のある特定の特別な態様および実施形態を、以下の実施例を参照することによって、より詳細に説明するが、これらの態様および実施形態は、単に例示目的で提供され、いかなる方式でも本願の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0094】
定義
トロメタミンは、第一級アミンのトリス−(ヒドロキシ−メチル)−アミノメタンであり、2−アミノ−2−(ヒドロキシ−メチル)−1,3−プロパンジオールとも呼ばれ、Merck Index、第10版、1395頁に記載されている。
【0095】
用語「ペメトレキセド」は、ペメトレキセド二酸、ならびにその異性体、溶媒和物、プロドラッグ、複合体および水和物、無水形、ならびに任意の多形もしくは非晶質形、またはそれらの組合せを指す。
【0096】
用語「製剤」は、薬物、例えばペメトレキセドトロメタミンを、ヒトなどの患者への投与に適した形状に調製することを指す。したがって、「製剤」は、薬学的に許容される添加剤を含むことができる。
【0097】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書で使用される場合、薬理学的活性の許容されない喪失または許容されない有害な副作用を引き起こさない、物質または構成成分を説明する。薬学的に許容される成分の例は、United States Pharmacopeia (USP 29) and National Formulary (NF 24)、United States Pharmacopeial Convention, Inc、Rockville, Maryland、2005年(「USP/NF」)の研究書、またはさらなる最新号に記載されているもの、ならびに継続的に更新されているFDAの最新の不活性成分検索オンラインデータベースに列挙されている構成成分である。USP/NF等に記載されていない他の有用な構成成分を使用することもできる。
【実施例】
【0098】
本明細書に記載のX線粉末回折パターンは、Bruker AXS D8 Advance粉末X線回折計およびPanalytical Xpert proと、銅K−α放射線源(1.5418A°)を使用して作製した。一般に、粉末X線回折法の回折角(2θ)は、±0.2°の範囲の許容できる変動を有していてもよい。
【0099】
H−NMRスペクトルは、Bruker 400MHz機器で記録した。化学シフトは、百万分の1(ppm、δ単位)で表される。結合定数は、ヘルツ(Hz)単位である。分裂パターンは、見かけ上の多重度を記載している。H−NMRスペクトルは、ペメトレキセドトロメタミン塩のペメトレキセドとトロメタミンのモル比を定量化するために使用することができる。
【0100】
例えば、本願の方法によって得られたペメトレキセドトロメタミン塩の試料は、DO溶媒に溶解させることができ、H−NMRスペクトルはBruker 400MHzで記録することができる。1.プロトンHa(式IIにおいて指定されている)
【化2】
は、ペメトレキセドトロメタミン塩のプロトン数を推定するための標準とみなすことができる。例えば、プロトンHaの積分値と、トロメタミンのメチレンプロトンに関する積分値の比によって、ペメトレキセドトロメタミン塩のペメトレキセドとトロメタミンの比(例えば、n=1または2)が得られる。
【0101】
実施例1:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
トロメタミン(1.7g)およびメタノール(90mL)を、25〜30℃で丸底フラスコに充填し、40〜50℃の温度まで加熱し、10〜15分間撹拌して、透明な溶液を得る。反応混合物を25〜35℃の温度まで冷却し、ペメトレキセド二酸(3g)を添加し、同じ温度で1時間撹拌する。メタノール(30mL)を添加し、反応混合物を1時間撹拌する。得られた固体を濾過し、メタノール(30mL)で洗浄し、吸引乾燥させ、真空下で30℃において乾燥させて、標題化合物4.05gを得る。
HPLC純度:99.86%
H−NMRスペクトル:図1
XRPDパターン:図2
【0102】
実施例2:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
メタノール(75ml)およびイソプロピルアルコール(75ml)の溶媒混合物に、トロメタミン1.86gmを室温で添加し、温度を56℃まで上昇させ、透明な溶液が得られるまで撹拌した。透明な反応塊に、57℃でペメトレキセド二酸(3.0gm)を充填し、約24時間撹拌した。次に、反応塊を濾過し、メタノール(15ml)で洗浄し、吸引乾燥させ、真空下で30℃において乾燥させて、標題化合物4.9gmを得た。
HPLC純度:99.87%
XRPDパターン:図2
【0103】
実施例3:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
メタノール(250ml)およびトロメタミン(3.1gm)を、丸底フラスコに充填し、室温で10分間撹拌し、ペメトレキセド二酸(5gm)を充填した。反応塊を60分間撹拌し、次に真空下で完全に蒸留した。こうして得られた固体を、真空下で40℃において乾燥させて、標題化合物7.3gmを得た。
HPLC純度:99.66%
XRPDパターン:図2
【0104】
実施例4:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
トロメタミン(3.1gm)および水(10ml)を、丸底フラスコに室温で充填し、10分間撹拌した。ペメトレキセド二酸(5gm)を反応混合物に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。得られた透明な反応塊に、メチルエチルケトン(250ml)を添加し、2時間撹拌した。分離した固体を濾過し、真空下においてメチルエチルケトン(25ml)で洗浄した。湿潤固体を、ロータリーエバポレーター中で、真空下において38℃で3時間乾燥させて、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩6.35gmを得た。
HPLC純度:99.77%
XRPDパターン:図3
【0105】
実施例5:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
トロメタミン(3.1gm)および水(12.5ml)を、室温で丸底フラスコに充填し、10分間撹拌した。ペメトレキセド二酸(5gm)を、15〜20℃で反応混合物に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。得られた透明な反応塊に、メチルエチルケトン(175ml)およびアセトン(20ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。分離した固体を濾過し、真空下においてメチルエチルケトン(25ml)で洗浄した。湿潤固体を、ロータリーエバポレーター中で、真空下において40℃で3時間乾燥させて、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩6.34gmを得た。
HPLC純度:99.70%
XRPDパターン:図4
【0106】
実施例6:ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩の調製。(式II、n=2)
水酸化ナトリウム(3.82gm)および水(30ml)を、不活性雰囲気下で丸底フラスコに充填し、約10分間撹拌した。反応塊の温度を約0〜5℃まで冷却し、次にL−グルタミン酸,N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル]−,ジメチルエステル4−メチルベンゼンスルホン酸塩(10gm)を充填し、1時間撹拌した。反応塊のpHを、0〜5℃において濃HClで5.4に調整し、25〜30℃で30分間撹拌した。トロメタミン(7.71gm)を反応塊に充填し、30分間撹拌した。反応塊に、メチルエチルケトン(350ml)およびアセトン(50ml)を添加し、30〜35℃で2時間撹拌した。分離した固体を濾過し、真空下においてメチルエチルケトン(50ml)で洗浄した。湿潤固体を、真空下において35〜40℃で3時間乾燥させて、ペメトレキセドトロメタミン(1:2)塩9.1gmを得た。
HPLC純度:98.05%
XRPDパターン:図5
【0107】
実施例7:ペメトレキセドトロメタミン(1:1)塩の調製。(式II、n=1)
トロメタミン(0.85g)およびメタノール(90mL)を、25〜30℃で丸底フラスコに充填し、40〜50℃の温度まで加熱し、10〜15分間撹拌して、透明な溶液を得る。反応混合物を25〜35℃の温度まで冷却し、ペメトレキセド二酸(3g)を添加し、同じ温度で2時間撹拌する。得られた固体を濾過し、メタノール(30mL)で洗浄し、吸引乾燥させ、真空下において30℃で乾燥させて、標題化合物を得る。
HPLC純度:99.83%
XRPDパターン:図6
H−NMRスペクトル:図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】