特表2016-527306(P2016-527306A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-527306胆汁酸−脂肪酸抱合体を含む抗老化組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-527306(P2016-527306A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】胆汁酸−脂肪酸抱合体を含む抗老化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20160815BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20160815BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160815BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160815BHJP
   A61K 9/113 20060101ALI20160815BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160815BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160815BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20160815BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
   A61K8/63
   A61K31/575
   A61K9/06
   A61K9/107
   A61K9/113
   A61K9/08
   A61P17/00
   A61P17/16
   A61Q1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-532791(P2016-532791)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月29日
(86)【国際出願番号】IL2014050717
(87)【国際公開番号】WO2015019358
(87)【国際公開日】20150212
(31)【優先権主張番号】227890
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】IL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516032883
【氏名又は名称】ガルデルム セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダヤン,ナバ
(72)【発明者】
【氏名】バハラフ,アレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA18
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC18
4C076FF43
4C083AD491
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD27
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD34
4C083DD35
4C083DD41
4C083EE10
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)を含む局所用組成物を提供する。本発明は、皮膚の老化およびそれに関連する症状を予防、減弱または治療するために開示の組成物を使用する方法をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化に関連する皮膚状態の予防または治療に使用するための局所用組成物であって、有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含み、前記FABACが式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する組成物。
【請求項2】
前記FABACが、各出現においてWが独立して6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xが独立してヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーである2個の脂肪酸ラジカルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結合メンバーがNH、P、S、O、または直接C−CもしくはC=C結合からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記結合メンバーがNHである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1個または2個の脂肪酸ラジカルが独立してステアリン酸、ベヘン酸、アラキジル酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、オレイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1個または2個の脂肪酸がステアリン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記胆汁酸がコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記胆汁酸がコール酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記FABACが、
3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、および
それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記FABACが3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記老化に関連する皮膚状態が加齢による老化、光老化、皮膚萎縮またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに関連している、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記皮膚状態が小じわ、しわ、変色、不均一な色素沈着、たるみ、毛穴の拡張、肌荒れ、乾燥肌およびストレッチマーク、不均一なトーン、シミ、皮膚の肥厚または菲薄化ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記皮膚状態がしわである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記皮膚状態が小じわである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
老化に関連する皮膚状態を予防または治療する方法であって、有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および皮膚科学的に許容される希釈剤または担体を含む局所用組成物をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、前記FABACが式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する方法。
【請求項16】
前記FABACが、各出現においてWが独立して6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xが独立してヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーである2個の脂肪酸ラジカルを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結合メンバーがNH、P、S、O、または直接C−CもしくはC=C結合からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記結合メンバーがNHである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1個または2個の脂肪酸ラジカルが独立してステアリン酸、ベヘン酸、アラキジル酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、オレイン酸からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記1個または2個の脂肪酸がステアリン酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記胆汁酸がコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記胆汁酸がコール酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記FABACが、
3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、および
それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記FABACが3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記老化に関連する皮膚状態が、加齢による老化、光老化、皮膚萎縮またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに関連している、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記皮膚状態が小じわ、しわ、変色、不均一な色素沈着、たるみ、毛穴の拡張、肌荒れ、乾燥肌およびストレッチマーク、不均一なトーン、シミ、皮膚の肥厚または菲薄化ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記皮膚状態がしわである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記皮膚状態が小じわである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物がそれを必要とする対象に局所投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む局所用組成物であって、前記FABACが式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する組成物。
【請求項31】
前記FABACが、各出現においてWが独立して6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xが独立してヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーである2個の脂肪酸ラジカルを含む、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項32】
前記結合メンバーがNH、P、S、O、または直接C−CもしくはC=C結合からなる群から選択される、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項33】
前記結合メンバーがNHである、請求項32に記載の局所用組成物。
【請求項34】
前記1個または2個の脂肪酸ラジカルが独立してステアリン酸、ベヘン酸、アラキジル酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびオレイン酸からなる群から選択される、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項35】
前記胆汁酸がコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項36】
前記FABACが3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸である、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項37】
水溶液、クリーム、ローション、油中水型または水中油型エマルジョン、複合エマルジョン、シリコーンエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、泡、ゲルおよび共溶媒との水溶液からなる群から選択される形態で製剤化される、請求項30に記載の局所用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸−脂肪酸抱合体を含む局所用組成物、および老化に関連する皮膚状態の治療または予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚および老化
皮膚は、体の最大器官であり、主に日和見病原微生物類、化学物質類、UV照射などの外部/環境要因から身体を保護し、かつ温度調節を支援する働きをする。
【0003】
皮膚は、上記の環境要因だけでなく、固有の要因によって絶えず傷つけられている。皮膚に影響を与える環境要因には、太陽、喫煙および大気汚染への暴露が含まれ、固有の要因にはストレスおよび加齢による老化が含まれる。加齢による老化は、正常な細胞の酸化ストレスに関連する亜慢性炎症によって引き起こされ得る。
【0004】
外因性または内因性に関わらず、皮膚が直面する困難な問題は、小じわ、しわ、不均一な質感および散乱色素沈着などの目に見える兆候をもたらす。これらの兆候の予防、除去または減少は、店頭販売の局所クリームおよび保湿剤から様々な美容成形手術の技術に及ぶ治療により数十億ドル規模の事業となっている。通常の加齢による老化は、皮膚菲薄化、弾力性の喪失および皮膚の一般的な萎縮をもたらす。加齢による老化は、UV照射への曝露に起因する皮膚の早期老化である光老化によって加速され得る。酸化も、アクセス中にかつ/または慢性的に産生される場合に蓄積して皮膚細胞を損傷し得るフリーラジカルとして知られている不安定な分子を生成することにより、皮膚老化の過程の一因となり得る。
【0005】
西洋社会は、高齢に見える個人を魅力的とは判断しない。これは、若々しい外観を維持するための手段を用いて高齢化集団を支援している非常に重要な産業を育成している。皮膚の早期老化は、自尊心に多大な影響を及ぼし得るしわと関係がある。
【0006】
レチノイン酸(トレチノインとしても知られている)は、現在、老化防止およびしわを減少させる効能を示す唯一の局所用処方薬である。老化防止評価に対するレチノイン酸の効果は顕著で、特に光老化に関連するしわおよび損傷を元に戻すが、その使用には催奇形性、一次刺激および光感度を含むいくつかの主な副作用が伴う。したがって、レチノイン酸は医師の監督下で使用する必要がある。一般的な老化防止治療のために使用されるレチノイドは、0.6〜3×10Mの範囲内で線維芽細胞および上皮細胞に細胞傷害性であること(Varaniら、Journal of Investigative Dermatology(1993)101、839〜842)、および上皮細胞死を増加させること(Dingら、Invest Ophthalmol Vis Sci.2013 Jun 26;54(6):4341−50)が示されている。
【0007】
脂肪酸胆汁酸抱合体または胆汁酸塩抱合体(FABAC)は、胆汁酸脂肪酸抱合体(BAFAC)とも呼ばれており、胆汁酸またはコレステロール代謝に関連する病状を改善するために使用できる合成分子のファミリーである。FABACは、血中コレステロール濃度を低下させ、肝臓の脂肪レベルを低減し、胆石を溶解すると考えられている(Gilatら、Hepatology 2003;38:436−442;およびGilatら、Hepatology 2002;35:597−600)。
【0008】
米国特許第6,384,024号、同第6,395,722号、同第6,589,946号は、胆汁中のコレステロール胆石の溶解および脈硬化症の治療における特定のFABACの使用について開示している。脂肪肝の治療、血中コレステロールレベルの低下、ならびに高血糖症、糖尿病、インスリン抵抗性および肥満の治療における使用のためのこれらのおよび追加のFABACは、米国特許第7,501,403号および同第8,110,564号ならびに米国出願公開第2012/0214872号で開示されている。より最近では、米国出願第2012/0157419号は、アミロイド斑沈着によって特徴付けられる脳疾患(例えば、アルツハイマー病)を治療するのに有用であるとしてFABACを開示した。
【0009】
カナダ特許出願第2,166,427号は、アトピー性皮膚炎の治療のための薬剤調製のための胆汁酸、ケノデオキシコール酸および/またはウルソデオキシコール酸の使用について開示している。WO02/083147は、ファルネソイドX受容体(FXR)媒介性の疾患もしくは病状の予防または治療のためのFXRリガンドとしての特定の胆汁酸誘導体について開示している。FABACが局所投与、特に皮膚の老化に関連する障害の予防、治療または減弱に有用であり得ることを開示または示唆しているものは当技術分野には存在しない。
【0010】
しわの形成を含むが、これに限定されない皮膚の老化に関連する症状を治療するのに有用な組成物および方法に対する必要性は未だ満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、スキンケア、特に、脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)を含む化粧品組成物、ならびに皮膚の老化およびそれに関連する症状を予防、減弱または治療するためのその組成物の使用法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、FABACが、本明細書の以下に例示するように、皮膚線維芽細胞においてケラチン10およびケラチン1の遺伝子発現レベルを減少させることができるという予想外の発見に部分的に基づいている。いくつかの実施形態によると、ケラチン1およびケラチン10の発現が減少すると、ケラチノサイト分化が低下する。
【0013】
本発明はさらに、FABACの投与が、レチノイドの投与とは対照的に、表皮細胞の生存率に対して著しい影響を及ぼさないという驚くべき発見に基づいている。
【0014】
さらに、本明細書の以下に例示するように、FABACを投与すると、皮膚線維芽細胞へのコレステロールの流出が高まる。したがって、いかなる理論または機序に縛られるものではないが、FABACは、催奇形性、皮膚刺激および日焼けによる損傷に対する高感受性などのレチノイン酸治療と関係する重篤な副作用を伴わずに、レチノイン酸の機序と同様の機序で皮膚細胞中の脂質ラフトに作用して、ケラチノサイト分化を減弱させることができる。
【発明の効果】
【0015】
第一の態様によると、本発明は、有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む局所用組成物を提供し、このFABACは、式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバー(bonding member)を表す)を有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、本組成物は、局所投与用に製剤化される。本明細書で使用する用語「局所投与」は、体表面を介した、好ましくは、皮膚を介した投与を指す。別の実施形態によると、本組成物は、水溶液、クリーム、ローション、油中水型または水中油型エマルジョン、複合エマルジョン、シリコーンエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ゲル、泡および共溶媒との水溶液からなる群から選択される形態で製剤化される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、この局所用組成物は、局所投与のために製剤化された化粧品組成物である。
【0016】
いくつかの実施形態によると、用語「皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤」は、皮膚への適用に適していることが当技術分野で知られている任意の希釈剤、担体または賦形剤を指す。いくつかの実施形態によると、少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤は、化粧品に適している。特定の実施形態によると、少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤は、薬学的に許容される。特定の実施形態によると、局所用組成物は、局所投与に適した、好ましくは、皮膚への適用に適した少なくとも1種類の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0017】
別の実施形態によると、結合メンバーは、NH、P、S、O、および直接C−CまたはC=C結合からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。例示的な実施形態によると、上記結合メンバーはNHである。
【0018】
いくつかの実施形態によると、このFABACは、各出現においてWは独立して6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xは独立してヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーである、2個の脂肪酸ラジカルを含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0019】
別の実施形態によると、上記1個または2個の脂肪酸ラジカルは、独立して、ステアリン酸、ベヘン酸、アラキジル酸(arachidylic acid)、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、オレイン酸からなる群から選択される脂肪酸のラジカルから選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。さらに別の実施形態によると、上記1個または2個の脂肪酸ラジカルは、ステアリン酸のラジカルである。
【0020】
別の実施形態によると、上記胆汁酸は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。さらに別の実施形態によると、上記胆汁酸はコール酸である。
【0021】
いくつかの実施形態によると、本明細書で使用する用語「胆汁酸塩ラジカル」は、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される胆汁酸の胆汁酸塩ラジカルを指す。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、胆汁酸塩ラジカルは、コール酸の胆汁酸塩ラジカルである。
【0022】
いくつかの実施形態によると、上記FABACは、
3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸、
およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0023】
例示的な実施形態によると、上記FABACは、3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸(本明細書では「ステアムコール(Steamchol)」とも呼ばれる)である。
【0024】
いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分として少なくとも1種類のFABAC、好ましくはステアムコールを含む化粧品組成物であって、局所投与用に製剤化され、さらに、局所投与に適する少なくとも1種類の化粧品として許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む化粧品組成物を提供する。
【0025】
別の実施形態によると、本発明の組成物は、老化に関連する皮膚状態を予防または治療するのに有用である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。別の実施形態によると、本発明の組成物は、老化に関連する皮膚状態を治療するのに有用である。
【0026】
別の態様によると、局所用組成物をそれを必要とする対象に投与する工程を含む老化に関連する皮膚状態を予防または治療する方法が提供され、この組成物は有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含み、このFABACは式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有し、それによって老化に関連する皮膚状態を予防または治療する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0027】
いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態の予防または治療に使用するための局所用組成物であって、有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含み、このFABACが式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する組成物が提供される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0028】
いくつかの実施形態によると、本発明は、皮脂レベルの変化と関連する皮膚状態を治療するための局所用組成物の調製に使用するための少なくとも1種類の脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)を提供し、このFABACは式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有し、それによって上記対象の皮脂レベルの変化と関連する皮膚状態を治療する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、この局所用組成物は少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態によると、この局所用組成物は化粧品組成物である。
【0029】
別の実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は加齢による老化、光老化、皮膚萎縮またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに関連している。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0030】
いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は、小じわ、しわ、変色、不均一な色素沈着、たるみ、毛穴の拡張、肌荒れ、乾燥肌およびストレッチマーク、不均一なトーン、シミ、皮膚の肥厚または菲薄化ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は、加齢による老化および/または環境老化のいずれかと関連する任意の他の老化関連皮膚外観であり得る。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0031】
別の実施形態によると、老化に関連する皮膚状態はしわである。さらに別の実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は小じわである。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は、皮膚のしわ、皮膚萎縮、光老化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0032】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】いくつかの実施形態による、3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸(本明細書では「ステアムコール」とも呼ばれるステアリルアミドコラノイン酸(cholanoic acid))を生成するためのプロセスを示す。
図2】未処理(陰性対照)であるか、1%トリトンX−100(陽性対照)で処理するか、DMSO単独で処理するか、または0.01%、0.1%、1%もしくは2%のステアムコールのいずれかを含有するDMSOで処理した表皮細胞培養物の生存率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、抗老化剤として有用な脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)を含む局所用組成物に関する。本明細書で使用する用語「抗老化剤」は、老化に関連する少なくとも1つの皮膚状態を治療または予防できる薬剤に関する。本発明は、開示される組成物の局所投与を介して、皮膚のしわを含むがこれに限定されない老化に関連する皮膚状態およびそれらの症状を予防、減弱または治療する方法にさらに関する。
【0035】
コレステロールは角質層中の重量で2番目に最も豊富な脂質であり(セラミドに次ぐ)、異なる脂質種の混合を促進しその熱力学的「相挙動」を調節することが知られている。ケラチノサイトは、強力なバリアを維持し、皮膚透過性を制御するために豊富な量のコレステロールを必要とし、したがって、皮膚におけるコレステロールホメオスタシスの調節が非常に重要である。ATP−結合カセットトランスポーター(ABCA1)は、細胞コレステロールレベルの調節において重要な役割を果たすコレステロール流出のための膜輸送体である。細胞膜に存在する脂質ラフトは、一般的に、周囲の二分子層に見られるコレステロールの3〜5倍量を含んでいる。
【0036】
本明細書で以下に例示するように、FABAC化合物の投与により、コレステロール流出の上昇と並行して、皮膚細胞中のABCA−1コレステロールトランスポーターのレベルが上昇した。さらに、FABACの投与により、皮膚細胞内でのケラチノサイト分化マーカーであるケラチン1およびケラチン10のmRNAレベルが有意に下方制御されることが示された。
【0037】
いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、FABACは、線維芽細胞内のABCA1トランスポーターを増強し、ケラチノサイト分化マーカーであるケラチン1およびケラチン10のmRNAレベルを下方制御することによって有利な抗老化効果を示す。したがって、FABACは、レチノイン酸の機序と同様の機序で表皮層における細胞分化に影響を与え得る。以下でさらに説明するように、ABCA−1のmRNAレベルは、FABAC投与の結果として上昇しなかった。したがって、理論または機序に縛られるものではないが、FABACは、核内レチノイン酸受容体に直接作用することなく、表皮層での分化に影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの実施形態によると、FABACは、催奇形性、皮膚刺激および日焼けによる損傷に対する高感受性などのレチノイン酸治療に関連する重篤な副作用を引き起こすことはない。
【0038】
本明細書で以下に例示するように、ステアムコールは、線維芽細胞およびケラチノサイトを含む細胞培養を用いた細胞毒性アッセイにおいて非常に低い細胞毒性を示した。いくつかの実施形態によると、限定されないがステアムコールなどのFABCAは、最大10重量%/体積、場合により最大5重量%/体積、最も典型的には最大2重量%/体積の濃度で組成物を局所投与した場合に、細胞死を全くまたはほとんど誘導しない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0039】
一態様によると、本発明は、有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む局所用組成物を提供し、このFABACは式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0040】
本明細書で使用する用語「FABAC」(同義語BAFAC)は、式W−X−G(式I)(式中、Gは胆汁酸またはその胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカル(複数可)を表し、Xは前記胆汁酸と脂肪酸ラジカル(複数可)の間の結合メンバーを表す)の抱合体を指す。いくつかの実施形態によると、結合メンバーXは、NH、P、S、Oまたは直接C=CもしくはC−C結合を含むが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。FABACは、当技術分野で公知であり、例えば、それらの内容が参照により本明細書に援用される米国特許第6,384,024号、同第6,395,722号、および同第6,589,946号に記載されている。いくつかの実施形態によると、脂肪酸ラジカル(複数可)は、特定の8〜22個の炭素原子、14〜22個の炭素原子または18〜22個の炭素原子を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「FABAC」、「BAFAC」、「そのFABAC」および「本発明のFABAC」は互換的に使用される。いくつかの実施形態によると、本発明の局所用組成物は、少なくとも1種類のFABACを含む。
【0041】
FABACの限定されない一般的な構造を以下に記載する。限定されない例によると、胆汁酸は、任意の鎖長の1〜2種類の脂肪酸と共役する(例えば3位で、例えばアミド結合を用いて)。
【0042】
例示的な実施形態によると、本発明のFABACは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸(アラキジルアミドコラノイン酸;アラキジン酸とコール酸のアミド抱合体;「アラムコール(Aramchol)」もしくは「C20 FABAC」としても知られている)または3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸(ステアリルアミドコラノイン酸;ステアリン酸とコール酸のアミド抱合体;「ステアムコール」もしくは「C18 FABAC」としても知られている)である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、このFABACはステアムコールである。
【0043】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のFABACは、式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸の1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、Gは胆汁酸のラジカルを表す。いくつかの実施形態によると、Xはヘテロ原子、直接C−C結合およびC=C結合からなる群から選択される結合メンバーを表す。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0044】
いくつかの実施形態によると、本発明の方法および組成物のFABACは、式II:(W−X−)nG(II)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表し、nは整数の1または2である)を有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、ヘテロ原子は、NH、P、SおよびOからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一般に、用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含み、その好適な例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。
【0045】
一実施形態によると、nは1である。別の実施形態によると、nは2であり、各出現においてWは独立して6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸ラジカルであり、Xは独立してヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーである。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0046】
別の実施形態では、FABACの結合メンバーは、NH、P、S、O、または直接C−CもしくはC=C結合からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、用語「直接結合」は、C−C(単)結合を指す。別の実施形態では、用語「直接結合」は、C=C(二重)結合を指す。別の実施形態では、2つ以上の直接結合が、本発明のFABACにおいて利用される。別の実施形態では、胆汁酸と脂肪酸ラジカル(複数可)の間の結合は、β配置にある。別の実施形態では、胆汁酸と脂肪酸ラジカル(複数可)の間の結合は、α配置にある。別の実施形態では、結合メンバーは、エステル結合以外のものである。
【0047】
いくつかの実施形態によると、FABACの胆汁酸または胆汁酸ラジカルは、コール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される。胆汁酸またはそのラジカルのそれぞれの種類は、本発明の別々の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「ラジカル」は、1つ以上の不対電子を含む化学部分を意味する。いくつかの実施形態によると、FABACの胆汁酸または胆汁酸ラジカルはコール酸である。
【0048】
別の実施形態では、FABACは単一脂肪酸ラジカルを含む。胆汁酸と脂肪酸ラジカルの共役は、胆汁酸の様々な位置で行うことができる。特定の実施形態では、胆汁酸と脂肪酸ラジカルの共役は、3位、6位、7位、12位および24位から選択される胆汁酸核の位置で行われる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一実施形態では、上記共役は、胆汁酸核の3位で行われる。
【0049】
別の実施形態では、FABACは2個の脂肪酸ラジカルを含む。いくつかの実施形態によると、胆汁酸核への各脂肪酸ラジカルの共役は、胆汁酸核の3位、7位、12位および24位から選択される2つの位置にある。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態によると、共役は胆汁酸核の3位および7位にある。
【0050】
別の実施形態では、脂肪酸は飽和している。別の実施形態では、脂肪酸は不飽和である。別の実施形態では、脂肪酸はモノ不飽和である。別の実施形態では、脂肪酸はポリ不飽和である。
【0051】
別の実施形態では、FABACの脂肪酸(複数可)または脂肪酸ラジカル(複数可)は、独立してベヘン酸、アラキジル酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0052】
本発明によるFABACの例示的な実施形態は、本明細書の以下の式IIIに示されている。いくつかの実施形態によると、式IIIにおいて、n=20またはn=18である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0053】
【化1】
【0054】
いくつかの実施形態によると、本発明のFABACの1個もしくは2個の脂肪酸または脂肪酸ラジカルは、不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸ラジカルである。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。別の実施形態では、FABACの不飽和脂肪酸(複数可)または不飽和脂肪酸ラジカル(複数可)は、独立して、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸およびエライジン酸からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。不飽和脂肪酸を含むFABACの非限定的な例としては、本明細書の以下の式IVに示されるような3β−オレイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸が挙げられる。
【0055】
【化2】
【0056】
別の実施形態では、リノール酸が利用される。別の実施形態では、共役リノール酸が利用される。別の実施形態では、共役リノール酸異性体が利用される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。「CFA」としても知られている用語「共役脂肪酸」は、二重結合の少なくとも一対がただ1つの単結合によって分離されている多価不飽和脂肪酸を指す。
【0057】
別の実施形態では、脂肪酸は短鎖脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸鎖長は6〜8個の炭素である。別の実施形態では、脂肪酸は中鎖脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸鎖長は8〜14個の炭素である。別の実施形態では、脂肪酸鎖長は14〜22個の炭素である。別の実施形態では、脂肪酸鎖長は16〜22個の炭素である。別の実施形態では、当技術分野で公知の任意の他の脂肪酸鎖長が利用される。脂肪酸または脂肪酸ラジカルのそれぞれの種類は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0058】
いくつかの実施形態によると、本発明の方法および組成物のFABACは、3β−ベヘニルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;3β−パルミチルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;3β−ミリスチルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;N−(カルボキシメチル)−3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−アミドからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0059】
いくつかの実施形態によると、本発明の方法および組成物のFABACは、以下からなる群から選択される:
3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;
3β−アラキドニルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸;およびそれらの組み合わせ。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0060】
例示的な実施形態では、本発明の方法および組成物のFABACは、3β−ステアロイルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸(「ステアムコール」)である。3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸を生成する例示的な実施形態は、本明細書の図1に示されている。いくつかの実施形態によると、本発明は、図1に記載のプロセスを含むがこれに限定されない、3β−ステアリルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−オイック酸を生成するための方法を提供する。
【0061】
本明細書に記載のFABACは、薬学的に許容される塩、誘導体およびプロドラッグを含んでよい。FABACならびにFABACの塩、誘導体およびプロドラッグを調製するための方法は、当技術分野でよく知られており、さらに米国特許第6,384,024号、同第6,395,722号および同第6,589,946号ならびにWO2002/083147に記載されており、これらの内容はその全体が記載されているものとして本明細書に援用される。本明細書で使用する用語「胆汁酸誘導体」は、それらの薬学的に許容される塩基または酸との胆汁酸塩ならびにそれらのジアステレオマー型および鏡像異性体型を含む。
【0062】
いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分として本発明のFABACの少なくとも1種類および皮膚への局所投与に適する少なくとも1種類の希釈剤、担体または賦形剤を含む局所用組成物を提供する。いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分として本発明のFABACの少なくとも1種類および皮膚への局所投与に適する少なくとも1種類の希釈剤、担体または賦形剤を含む、皮膚への局所投与のために製剤化された化粧品組成物を提供する。いくつかの実施形態によると、局所投与に適する少なくとも1種類の希釈剤、担体または賦形剤は、化粧品として許容される。いくつかの実施形態によると、局所投与に適する少なくとも1種類の希釈剤、担体または賦形剤は、薬学的に許容される。
【0063】
いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分としてステアムコールおよび皮膚への局所投与に適する少なくとも1種類の希釈剤、担体または賦形剤を含む局所用組成物を提供する。いくつかの実施形態によると、開示される組成物は、好ましくは化粧品用組成物として皮膚への局所投与のために製剤化される。
【0064】
いくつかの実施形態によると、本発明は、老化に関連する皮膚状態を予防または治療するために開示される局所用組成物を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。別の実施形態によると、本発明の組成物は、老化に関連する皮膚状態を治療するのに有用である。
【0065】
皮膚の再生は、健康な恒常性を維持するために必須であり、表皮細胞の増殖、分化およびアポトーシスのバランスを制御することによって維持される。ケラチノサイトにおける表皮分化のプログラムは、原形質膜中のコレステロールに富むドメインの破壊時に変更されると考えられている。このコレステロール枯渇作用のメカニズムは、ケラチノサイト分化に変化をもたらすことが示された。ケラチノサイト分化の減弱と臨床的に若く見える皮膚との間の直接的な相関関係は完全には解明されていないが、そのような活性を示した既知の化合物であるレチノイン酸は、老化損傷を緩和し、さらには元に戻すことが示されている。この機序は、加速化された接着斑の分解およびより速い皮膚の再生を引き起こす下流の補償効果に関連し得、ならびに真皮における細胞外マトリックスに影響を与える。
【0066】
本発明は、脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)が、線維芽細胞でのABCA1輸送を強化し、ケラチノサイト分化マーカーであるケラチン1およびケラチン10のmRNAレベルを下方制御するという予想外の発見に部分的に基づいている。いかなる理論または機序に縛られるものではないが、FABACのこれらの2つの重要な効果はそれらの老化防止効果の基礎を提供する。
【0067】
別の態様によると、本発明は、皮膚科学的に許容される量の局所用組成物をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、老化に関連する皮膚状態を予防または治療する方法を提供し、この組成物は有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む皮膚科学的に許容される量の局所用組成物を含み、このFABACは式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有し、それによって老化に関連する皮膚状態を予防または治療する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0068】
いくつかの実施形態によると、本発明は、老化に関連する皮膚状態を治療または予防するのに使用するための局所用組成物を提供し、この組成物は有効成分として脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)および少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含み、このFABACは式I:W−X−G(I)(式中、Gは胆汁酸または胆汁酸塩ラジカルを表し、Wは6〜22個の炭素原子を有する1個または2個の脂肪酸ラジカルを表し、Xはヘテロ原子または直接C−CもしくはC=C結合を含む結合メンバーを表す)を有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、このFABACはステアムコールである。
【0069】
いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分として少なくとも1種類のFABACを含む、老化に関連する皮膚状態の治療または予防に使用するための局所用組成物、好ましくは化粧品用の局所用組成物を提供する。いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分としてステアムコールを含む、老化に関連する皮膚状態の治療または予防に使用するための局所用の化粧品組成物を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分として少なくとも1種類のFABACを含む、皮膚のしわの治療または予防に使用するための局所用組成物を、好ましくは化粧品用の局所用組成物を提供する。いくつかの実施形態によると、本発明は、有効成分としてステアムコールを含む、皮膚のしわの治療または予防に使用するための局所用の化粧品組成物を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態によると、本発明は、老化に関連する皮膚状態の治療または予防のための局所用組成物の調製のための本発明の少なくとも1種類のFABACの使用を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、この局所用組成物は、少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を、好ましくは化粧品として許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む。
【0072】
本明細書で使用する用語「化粧品として許容される/適切な」および「皮膚科学的に許容される/適切な」は、毒性、不耐性、不安定性、およびアレルギー反応などのリスクをもたらすことなく皮膚またはヒトの皮膚の付属器と接触するのに適する要素に関連する。いくつかの実施形態によると、担体、希釈剤および賦形剤などの、化粧品としてまたは皮膚科学的に許容される成分は、化粧品としてまたは皮膚科学的に許容される成分および有効成分が皮膚の老化に関連する状態を治療するための有効成分の有効性を実質的に低下させるような方法で相互作用しないように、限定されないが本発明のFABACなどの老化防止(例えば、しわ防止)の有効成分と混合できるものである。
【0073】
本明細書で使用する用語「有効量」および「皮膚科学的に有効な量」は、老化に関連する皮膚状態の症状の少なくとも一部を抑制、軽減、減弱もしくは治療できる化合物または組成物の量に関する。いくつかの実施形態によると、組成物の皮膚科学的有効量は、それを必要とする対象の皮膚に本組成物を局所投与する際、老化に関連する皮膚状態の症状の少なくとも一部を抑制、軽減、減弱または治療するのに十分な量に関連する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0074】
本発明に従って投与される化合物の具体的な用量は、もちろん、例えば、投与される化合物、投与経路、対象の生理学的状態、および治療されている病状の重症度を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。典型的な実施形態によると、開示される組成物は、限定されないが、老化に関連する皮膚状態の症状の減弱または治療などの十分な応答が達成されるまでの長期間にわたって、いくつかの用量で投与される。
【0075】
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、好ましくは対象の皮膚への直接適用によって、対象に局所投与されるように構成される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0076】
ヒトの皮膚は、主要な保護バリアとして、温度および湿度の変化、紫外線ならびに汚染物質などの外部損傷から身体の重要臓器を保護し、体温調節などの生物学的恒常性の調節に重要な役割を果たしている。しかし、皮膚は年を経ると、弾力性の低下、角化、皮膚のしわの形成および皮膚の収縮などの皮膚の老化の兆候を示す。この皮膚の老化の原因は、細胞の遺伝子形質転換および細胞組織の変化などの内的要因、ならびに紫外線(UV)および湿度などの外的要因に分類できる。UVによる皮膚の老化作用は「光老化」と呼ばれる。光老化では、酸素フリーラジカルが、UV光によって細胞内で生成される。次にこの酸素フリーラジカルは、皮膚の基盤の弾力制御繊維を形成するコラーゲンまたはエラスチンなどのタンパク質を異化する酵素である繊維分解プロテアーゼ(MMP−1、MMP−3、MMP−9など)の合成を促進する。シグナル伝達系を介して、フリーラジカルの作用が炎症反応を誘導し、それによって皮層の弾力性を減少させ、皮膚のしわを生成し得る。
【0077】
本明細書で使用する「皮膚の老化」または「老化に関連する皮膚状態」は、老化した皮膚に関連する皮膚状態を指す。いくつかの実施形態によると、対象における老化した皮膚に関連する状態は、対象の皮膚におけるケラチノサイト分化の低下によって治療または減弱できる状態である。老化した皮膚に関連する状態の非限定的な例としては、しわ、日焼けによる損傷、皮膚のくすみの外観、皮膚のたるみ、顎のたるみ、角化症、肝斑、および不均一な色素沈着過剰が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、皮膚の老化を治療するための方法は、上で定義したFABAC化合物を含む有効量の局所用組成物で皮膚を治療することを含む。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は皮膚のしわである。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は皮膚萎縮である。
【0078】
いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は、ケラチノサイト分化の低下によって治療および/または減弱および/または防止できる皮膚状態である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、ケラチン1および/またはケラチン10の発現を減少させることによって、ABCA1活性を増強することによってまたはそれらの組合せによってケラチノサイト分化の低下を誘導する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0079】
いくつかの実施形態によると、本発明は、対象における皮膚のしわを治療、減弱および予防する方法であって、有効成分として本発明の少なくとも1種類のFABACおよび少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む局所用組成物を対象の皮膚に局所投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態によると、本発明は、対象における皮膚のしわを治療、減弱および予防する方法であって、有効成分としてステアムコールおよび少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む局所用組成物を対象の皮膚に局所投与することを含む方法を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、老化防止剤を含むがこれに限定されない、本発明のFABAC以外の少なくとも1種類の追加の有効成分をさらに含む。本発明の組成物に添加できるさらなる有効成分の非限定的な例としては、レチノイン酸およびその誘導体、αおよびβヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸)、ペプチド、酸化防止剤、および皮膚を明るくする化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0081】
いくつかの実施形態によると、皮膚のしわに悩む対象に投与される局所用組成物の量および治療頻度は、対象に既に存在するしわのレベル、さらなるしわの形成速度、および所望の制御レベルに応じて大幅に変化する。
【0082】
本発明は、いくつかの実施形態では、哺乳動物の皮膚における萎縮を予防、遅延、阻止、または回復するための方法であって、本発明の局所用組成物を皮膚に局所適用する工程を含む方法を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、本発明は、それを必要とする対象における皮膚萎縮を治療、予防、遅延、阻止、または回復するための局所用組成物であって、有効成分として本発明のFABACの少なくとも1種類を含み、少なくとも1種類の皮膚科学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む組成物を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0083】
本明細書で使用する皮膚の「萎縮」は、老化における細胞の有糸分裂およびアクセスの減少に起因するコラーゲンおよび/またはエラスチンの減少ならびに線維芽細胞の数および大きさの減少によって特徴づけられる場合が多い真皮の菲薄化および/または一般的な劣化を意味する。皮膚萎縮は、更年期障害、加齢による老化および光老化の自然な結果であり、コルチコステロイド治療から生じる望ましくない副作用である場合が多い。更年期は、生理的閉経または手術もしくは治療によって誘発される閉経であり得る。
【0084】
本発明はさらに、いくつかの実施形態によると、光老化またはその症状の少なくとも一部を治療、予防、減弱または改善するための方法であって、光老化を患っている対象の皮膚に本発明の組成物を局所投与する工程を含む方法を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態は光老化である。いくつかの実施形態によると、本発明は、光老化またはその症状の少なくとも一部を治療、予防、減弱または改善するための本発明の局所用組成物を提供する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「光老化」は、限定されないが、太陽または他の紫外線エネルギー源への曝露に関連する皮膚の老化を含む。光老化の症状は、例えば、日光黒子(老人斑)、日光性角化症、皮膚日射病およびそれらの組み合わせを含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。光老化を治療する方法は、いくつかの実施形態によると、上で定義したFABAC化合物を含む組成物を、それを必要とする個体に局所投与することを含む。
【0085】
本明細書において、用語「治療する」は、進行を抑止する、実質的に抑制する、遅らせるか元に戻すこと、実質的に臨床症状を改善すること、または限定されないが、皮膚のしわ、光老化および皮膚萎縮などの老化に関連する皮膚状態と関連する症状の出現を実質的に防止することを含む。いくつかの実施形態によると、用語「治療する」は、皮膚の外観および質感の改善、皮膚の水和の改善、皮膚の治癒、平滑化またはそれらの任意の組み合わせを含むことをさらに意味する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、用語「治療する」は、既存のしわの少なくとも部分的な平滑化および/または既存のしわの深化の減速および/または新たなしわの形成の防止を指す。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、用語「治療する」は、皮膚菲薄化および/もしくは皮膚の劣化の寛解、阻止または防止を指す。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、用語「治療する」は、光老化またはその症状の少なくとも一部の寛解、阻止または予防を指す。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0086】
老化に関連する皮膚状態の症状は、小じわ、しわ、年齢によるしみおよび皮膚の他の変色、皮膚のたるみ、増殖、乾燥肌、肌荒れ、くすみ、座瘡、脱毛症、ストレッチマークおよびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0087】
いくつかの実施形態によると、表皮細胞の皮膚萎縮または光老化などの老化に関連する皮膚状態の治療は、表皮細胞の老化に関して本明細書で上述した症状の少なくとも一部の治療を含む。この治療は、これらの症状の少なくとも一部の予防、特にそれらが発生する前の老化の徴候をさらに含み得る。本明細書で使用する用語「予防する」は、老化に関連する皮膚状態またはその症状の少なくとも一部の出現を抑制することに関連し得る。あるいは、用語「予防する」は、限定されないが、既存の皮膚のしわの悪化などの、老化に関連する既存の皮膚状態の悪化を抑制することに関連し得る。
【0088】
いくつかの実施形態によると、本発明の局所用組成物は、それを必要とする対象の皮膚への適用のために製剤化される。非限定的な例によると、しわなどの老化に関連する皮膚状態の症状に悩む対象の皮膚を治療する1つの方法は、安全な量の本発明の局所用組成物の局所適用による。いくつかの実施形態によると、老化に関連する皮膚状態の症状は、しわ、皮膚の滑らかさの低下、不均一な肌のトーンおよび皮膚の顔色の損傷などを含むが、これらに限定されない。皮膚への局所適用の頻度は、個人のニーズに応じてかなり変化し得るが、非限定的な例として、本発明の組成物の局所適用は週に約1回〜1日に約10回、好ましくは週に約2回〜1日に約4回、より好ましくは週に約3回〜1日に約2回、最も好ましくは1日に約1回の範囲であることが提案されている。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、局所適用は、好ましくは、約1ヶ月〜数年の期間にわたる。
【0089】
本明細書で使用する「皮膚」は、老化しやすい全ての表皮面を指し、限定されないが、顔および首、手、肘、上腕領域、膝、大腿、脚、足、胸部、胸、腹、臀部、ならびに背中の領域の表面も含み得る。好ましくは、用語「皮膚」は、顔および首の表面を指す。
【0090】
いくつかの実施形態によると、本発明は、限定されないが、しわおよび皮膚萎縮などの老化の皮膚の徴候を治療するための、かつ/または紫外線(UV)照射によって引き起こされる有害な影響から皮膚を保護するためのスキンケア治療法であって、本発明の局所用組成物を治療される皮膚または皮膚付属器に局所適用することを含む方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、ヒトの皮膚の老化プロセスを遅らせるか、ヒトの皮膚の老化の兆候を減らすか、またはその両方のための方法であって、本発明の局所用組成物を皮膚の老化に悩む対象の皮膚に適用することを含む方法が提供される。ヒトの皮膚の老化プロセスの遅延およびヒトの皮膚の老化の兆候の減少は、皮膚のトーン、弾性または収縮の改善、しわの減少、小じわの除去、皮膚のしわ形成への対抗、皮膚の堅さの促進、皮膚の感受性および易刺激性の低下またはそれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0092】
さらなる実施形態では、対象の皮膚状態を保護および/もしくは改善するための、かつ/またはそれを必要とする対象の皮膚の欠点を治療するための方法であって、対象の皮膚に本発明の組成物を局所投与することを含む方法が提供される。さらなる実施形態では、老化に関連する皮膚状態から対象の皮膚を保護するための方法であって、対象の皮膚に本発明の局所用組成物を投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの実施形態によると、対象の皮膚の保護は、老化に関連する既存の皮膚状態のさらなる悪化の防止、かつ/または老化に関連する既存の皮膚状態もしくはその症状の阻止または減速に関連する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0093】
製剤
いくつかの実施形態によると、本発明の局所用組成物は、活性剤として少なくとも1種類のFABACを含む化粧品組成物として製剤化される。いくつかの実施形態によると、局所用組成物は、対象の皮膚に、好ましくは、限定されないが、皮膚のしわまたは光老化による影響を受けた皮膚などの老化に関連する皮膚状態によって影響を受けた皮膚領域に局所投与するために製剤化される。本明細書で使用する用語「局所用組成物」は、皮膚への局所投与用に製剤化された組成物を指す。
【0094】
本発明の組成物は、当技術分野で公知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、ドラッガ製造、研和、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥のプロセスによって製造できる。
【0095】
本発明に従って使用するための組成物はしたがって、薬学的に使用できる製剤への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1種類または複数種類の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方法で製剤化されてもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0096】
いくつかの実施形態によると、本発明の局所用組成物は、組成物が皮膚に適用される際その分布を容易にするために、少なくとも1種類のFABAC用の希釈剤、分散剤またはビヒクルとして作用する治療的に、皮膚科学的にまたは化粧品として許容される担体を含む。水以外のビヒクルまたは水に加えて、ビヒクルは、液体または固体の皮膚軟化剤、溶媒、保湿剤、増粘剤および散剤を含んでよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0097】
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、水性または非水性溶液、ローション、クリーム、ゲル、軟膏、泡、ムース、スプレー、エマルジョン、マイクロエマルジョン、接着パッチ、粉末などの形態で局所投与用に製剤化されてよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。製剤は、例えば、白色ワセリンおよび/または鉱油を含む油性ベースの閉塞性組成物(occlusive composition)であってよい。いくつかの実施形態では、本組成物は、非グリース状または実質的に非グリース状であり、水ベースの製剤であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態によると、本発明のFABACまたは化粧品として許容される、皮膚科学的に許容されるもしくは薬学的に許容されるその塩およびエステルのうちの少なくとも1種類、ならびに化粧品として許容されるもしくは皮膚科学的に許容される希釈剤、担体もしくは賦形剤を含むスキンケア用、化粧品用または皮膚薬剤用の組成物が提供される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0099】
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、少なくとも1種類のFABACを含む。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物中のFABACは、老化に関連する皮膚状態またはその症状の少なくとも一部を治療、改善、減速または予防するのに十分な有効量で存在する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、有効量は、皮膚細胞中で細胞毒性を誘発しないまたは有意な細胞毒性を誘発しない量である。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物中のFABACは、皮膚のしわおよび/または皮膚の萎縮および/または光老化を治療する、減弱させる、進行を遅らせる、または防止するのに十分な有効量で存在する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「有効量」および「有効濃度」は互換的に使用される。
【0100】
いくつかの実施形態によると、本組成物中のFABACの有効濃度は、約0.01〜10重量%/体積、おそらく0.01〜5重量%/体積、あるいは0.05〜2重量%/体積である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。典型的な実施形態によると、本組成物の有効性は、ビヒクル(すなわち、担体)および角質層とのその相互作用にも依存する。
【0101】
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物におけるFABACの重量/体積の濃度は、0.01%〜2%、おそらく0.1%〜2%、あるいは1%〜2%である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物中のFABACの重量/体積の濃度は、少なくとも0.01%である。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物中のFABACはアラムコールである。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物中のFABACはステアムコールである。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本発明のFABAC以外の少なくとも1種類の追加の有効成分をさらに含む。そのような有効成分の非限定的な例としては、以下のクラスの成分が挙げられるが、これらに限定されない:植物抽出物、油性成分、美白剤、酸化防止剤、着色剤、治癒剤、抗老化剤、しわ防止剤、無痛化剤、抗ラジカル剤、抗UV剤(またはUV吸収剤)、皮膚巨大分子の合成または皮膚のエネルギー代謝を刺激する薬剤(例えば、皮膚栄養剤)、水和剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔薬、皮膚の分化、色素沈着または脱色素を調節する薬剤、爪または髪の成長を刺激する薬剤、およびそれらの組合せなど。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0103】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1種類の追加の有効成分は、金属イオン封鎖剤、薬剤、ホワイトニング剤、糖およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0104】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1種類の追加の有効成分は、以下からなる群から選択される:エデト酸2ナトリウム、エデト酸3ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムおよびグルコン酸を含むがこれらの限定されない金属イオン封鎖剤;カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、グラブリジン、様々な漢方薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸ならびにそれらの誘導体および塩を含むがこれらに限定されない薬剤;ビタミンC、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチンおよびコウジ酸を含むがこれらに限定されないホワイトニング剤;グルコース、フルクトース、マンノース、スクロースおよびトレハロースを含むがこれらに限定されない糖類。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0105】
本発明の組成物は、水性溶液またはヒドロアルコール溶液、可溶化系、エマルジョン、散剤、油類、水性ゲルまたは無水ゲル、血清、泡、軟膏剤、エアロゾル剤、水−油二相系、水−油−粉末三相系などの形態で存在してよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本組成物は、洗顔料、スプレー、軟膏(salve)、軟膏(ointment)、ローション、エマルジョン、クリーム、ゲル、エッセンス(美容ローション)、パック、パッチおよびマスクからなる群から選択される形態で適用される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0106】
他の実施形態では、メイクアップ化粧品の場合などにおいて、本組成物は、ファンデーションなどの広範囲の種類の化粧品と共に使用されてよい。さらなる実施形態では、本組成物は、トイレタリー製品、例えば、ボディーソープ、および洗顔石鹸などの形態で適用される。いくつかの実施形態によると、本組成物は、医薬部外品として製剤化されてよい。さらに、医薬部外品の場合において、本組成物は、様々な軟膏などの幅広い用途用に製剤化されてよい。本発明の老化防止剤の種類または形態は、これらの形態および種類に限定されない。
【0107】
本発明の組成物の種類または形態は、これらの形態および種類に限定されない。いずれの場合においても、当業者は、これらの添加剤、それらの量および選択される製剤が本発明による組成物の所望の有利な特性に有害ではないように選択されることを保証する。
【0108】
別の実施形態によると、本組成物は、水溶液、クリーム、ローション、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョン、多重エマルジョン、シリコーンエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ゲル、泡および共溶媒との水溶液からなる群から選択される形態で局所製剤として製剤化される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0109】
開示される組成物の適切な局所製剤の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。
【0110】
ローション類およびクリーム類
いくつかの実施形態によると、本発明の局所用組成物はローションとして製剤化される。ローション類は、本明細書に記載されるように有効濃度の1種類または複数種類のFABAC化合物を含有する。本発明の組成物はまた、滑剤および増粘剤のいずれかもしくはそれらの両方として機能できる少なくとも1種類または複数種類の皮膚軟化剤を含んでもよい。皮膚軟化剤は合計で、本組成物の約0.1重量%〜約50重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%を占めてよい。ヒトの皮膚への適用に適するものとして当業者に公知の任意の皮膚軟化剤を使用してよい。それらは、鉱油、ワセリン、パラフィン、セレシン、オゾケライト、微結晶ワックス、ポリエチレン、およびペルヒドロスクアレンを含む炭化水素の油類およびワックス類;シリコーン油類;植物源、動物源および海洋源由来のものを含むトリグリセリドの脂肪類および油類;ホホバオイルおよびシアバターを含む;アセチル化モノグリセリドなどのアセトグリセリドエステル類;エトキシル化グリセリルモノステアレートなどのエトキシル化グリセリド;脂肪酸類、脂肪アルコール類およびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。他の適切な皮膚軟化剤は、ラノリンおよびラノリン誘導体;多価アルコール類およびポリエーテル誘導体類;多価アルコールエステル類;ワックスエステル類;植物ワックス類;レシチンおよび誘導体などのリン脂質;コレステロールおよびコレステロール脂肪酸エステル類を含むがこれらに限定されないステロール類;脂肪酸アミド類、エトキシル化脂肪酸アミド類、および固体脂肪酸アルカノールアミド類などのアミド類を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0111】
ローション類は、さらに乳化剤を約1%〜約10%、より好ましくは2%〜5%含有してもよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性またはそれらの混合物であってよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な乳化剤は、当業者に知られている。このようなローション類およびクリーム類の他の従来の成分が含まれてよい。1つのこのような添加剤は、組成物の1%〜10%のレベルの増粘剤である。適切な増粘剤の例としては、架橋されたカルボキシポリメチレンポリマー、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、トラガカントゴム、カラヤゴム、キサンタンガム、ベントナイトおよび他の粘土、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0112】
いくつかの実施形態によると、ローション類およびクリーム類は、単に全ての成分を一緒に混合することによって製剤化される。いくつかの実施形態によると、FABACは、混合物中に溶解されるか、懸濁されるか、または他の方法で均一に分散されている。
【0113】
溶液類および懸濁液類
いくつかの実施形態によると、本組成物は溶液として製剤化される。いくつかの実施形態によると、本組成物は懸濁液として製剤化される。いくつかの実施形態によると、水性または非水性であり得る溶液は、本明細書に開示されるような有効濃度の1種類または複数種類のFABAC化合物を含有するように製剤化される。
【0114】
溶液中の溶媒または溶媒系の一部として有用であり得る適切な有機物質は、以下の通りである:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールエステル類、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、酒石酸ジエチル、ブタンジオール、およびこれらの混合物。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。このような溶媒系は水も含み得る。
【0115】
いくつかの実施形態によると、本組成物は、エマルジョンとして製剤化される。本発明の組成物がエマルジョンとして製剤化される場合、脂肪相の割合は、本組成物の総重量に対して約5重量%〜約80重量%、好ましくは約5重量%〜約50重量%の範囲であり得る。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。エマルジョン形態で組成物に組み込まれる油類、乳化剤類および共乳化剤類は、化粧品または皮膚科学の分野の当業者に公知のものの中から選択される。
【0116】
溶液類または懸濁液類として製剤化される組成物は、皮膚に直接適用されるか、または、エアロゾルとして製剤化され、スプレー、泡もしくはムースとして皮膚に適用されてもよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。エアロゾル組成物は、適切な噴霧剤をさらに約20%〜80%、好ましくは30%〜50%含有してよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。このような噴霧剤の例としては、クロロ化、フルオロ化およびクロロフルオロ化された低分子量の炭化水素が挙げられるが、これらに限定されない。亜酸化窒素、二酸化炭素、ブタン、およびプロパンも、噴霧ガスとして使用され得る。これらの噴霧剤は、容器の内容物を放出するのに適する量および圧力下で、当技術分野で知られているように使用される。加圧エアロゾルの場合には、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。
【0117】
ゲル類および固体類
いくつかの実施形態によると、本組成物はゲルとして製剤化される。ゲル組成物は、前述の溶液または懸濁液組成物に適切な増粘剤を単に混合することによって製剤化され得る。適切な増粘剤の例については、ローションに関連して先に説明した。いくつかの実施形態によると、ゲル化組成物は、有効濃度の少なくとも1種類のFABABC化合物を含有する。いくつかの実施形態によると、本組成物は、前述のような有機溶媒をさらに約5%〜約75%、増粘剤を約0.5%〜約20%含み、残部は水または他の水性担体である。
【0118】
他の実施形態では、本発明の溶液類、懸濁液類、ローション類およびゲル類として製剤化される組成物は、皮膚適用のための泡またはムースとして製剤化される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。泡またはムースとしての製剤に関連する担体は、例えば、国際特許出願公開第2004/037225号および米国特許第6,730,288号に教示されている。
【0119】
いくつかの実施形態によると、本組成物は固体形態として製剤化される。固体形態の組成物は、唇または身体の他の部分への適用のために意図されたスティック型の組成物として製剤化され得る。固体はまた、前述の皮膚軟化剤を約50%〜約98%含有してもよい。この組成物は、適切な増粘剤を約1%〜約20%含有し、所望であればまたは必要に応じて、乳化剤類および水または緩衝液類を含有してよい。ローション類に関して前述した増粘剤は、固体形態の組成物に適切に使用される。メチルパラベンもしくはエチルパラベン、香料、または色素などを含む防腐剤などの他の成分は、皮膚への適用のための組成物に望ましい安定性、香りもしくは色、または他の望ましい特性を提供することが当技術分野で公知である。
【0120】
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、皮膚の弾力性の低下、しわの生成、皮膚変色、正常な老化および光老化ならびにそれらの組み合わせによって引き起こされる老化による皮膚のたるみを含むが、これらに限定されない老化に関連する皮膚障害を予防および/または治療するのに有効である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0121】
添加物類
いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、希釈剤、防腐剤、研磨剤、固化防止剤、帯電防止剤、結合剤、緩衝剤、分散剤、皮膚軟化剤、乳化剤、共乳化剤、湿潤剤または皮膚軟化剤、繊維状物質、皮膜形成剤、固定剤、発泡剤、泡安定剤、発泡ブースター、ゲル化剤、潤滑剤、防湿剤、可塑剤、防腐剤、噴霧剤、安定剤、界面活性剤、懸濁化剤、増粘剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、コンディショニング剤、湿潤剤、液化剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤をさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0122】
本発明の範囲内で使用される任意の薬剤、薬剤の組み合わせおよび組成物では、皮膚科学的に有効な量すなわち用量は、最初に細胞培養アッセイから推定できる。例えば、用量は、細胞培養において決定されるようなIC50(例えば、表皮細胞の増殖の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環濃度範囲を動物モデルにおいて達成するように処方され得る。このような情報を用いて、より正確にヒトにおける有用な用量を決定できる。
【0123】
添加剤の他の例として、日焼け止め剤および日焼け剤を含み得る。日焼け止め剤は、一般的に紫外線を遮断するために使用されるそのような物質を含んでよい。代表的な化合物は、PABA、桂皮酸塩およびサリチル酸塩の誘導体である。例えば、メトキシ桂皮酸オクチルおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾンとしても知られている)を使用できる。メトキシ桂皮酸オクチルおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンは、それぞれparsol MCXおよびベンゾフェノン−3としても知られている。本組成物に使用される日焼け止め剤の量は、所望のUV照射保護の程度に応じて変わり得る。本組成物に添加される日焼け止め剤は、活性化合物と適合しなければならないが、一般に、本組成物は日焼け止め剤を約1%〜約20%含んでよい。正確な量は、選択された日焼け止め剤および所望の太陽光線保護指数(SPF)に依存して変化する。
【0124】
本発明の組成物は、酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーをさらに含んでよい。酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーを含むと、本組成物の利点を増大させることができる。酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーは、本組成物の総重量の約0.1%〜約10%の濃度範囲で本発明の組成物に添加されてよい。酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーは、アスコルビン酸(ビタミンC)およびその塩、ならびにトコフェロール(ビタミンE)を含むが、これらに限定されない。
【0125】
特定のビタミンA代謝産物、ならびにビタミンAのアゴニスト、誘導体およびプロドラッグが、本発明の組成物に組み込まれてよい。本発明の文脈で有用なビタミンA剤の例としては、限定されないが、公知の様々なレチノール、レチノイン酸およびレチノイン酸受容体(RAR)アゴニストが挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。RARアゴニストは、限定されないが、クロマン類、チオクロマン類、テトラヒドロキノリン類、置換テトラヒドロナフタレン類、置換ジヒドロナフタレン類、三置換フェニル、芳香族四環性化合物、置換シクロヘキサン類、置換シクロヘキセン類、置換シクロヘキサンジエン酸類(Cyclohexanedienoic acids)、置換アダメンタン類(adamentanes)、置換ジアリール、ヘテロアリール化合物、それらの組み合わせおよびさらに多くのものを含み得る。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0126】
ビタミンC、またはアスコルビン酸は、非常に強力な抗酸化物質であり、さらにはUVAおよびUVB光線に対して保護的であり得る。ビタミンEは、特にαトコフェロール(ビタミンEの一形態)の局所用クリームが皮膚の粗さ、顔の小じわの長さ、およびしわの深さを減少させたことを、複数の研究が示唆している。マウスの研究でも、それを使用することでUVによる皮膚癌が減少することが報告されている。ビタミンKも、毛細血管の損傷を治療するのに有用であり得る。いくつかの実施形態によると、本組成物は、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKおよびそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つをさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0127】
緑茶および紅茶ならびにそれらの抽出物は添加剤として適している。本組成物への添加剤として使用できる他の植物由来の薬剤は、ザクロおよび大豆の抽出物、アロエ、生姜、ブドウ種子抽出物、ならびにサンゴ抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0128】
色補正剤およびファンデーションは、適切な添加剤であり、シミが顕著である場合または皮膚のより均一なトーンが所望される場合に所望され得る。例えば、緑色の中和剤は赤色病変をマスクでき、黄色はクマおよびあざをカモフラージュでき、白は見かけのしわを最小限に抑えるのに役立ち得る。液体およびプレスパウダーファンデーションも含まれてよい。他の可能な添加剤は、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを含む。
【0129】
生産物のパッケージ化およびキット
使用時には、少量の、例えば、約0.1ml〜約100mlの本組成物が、適当な容器または塗布器から皮膚の露出領域に適用され、次いで、必要であれば、手、指もしくは適当なデバイスを使用して皮膚の上に広げられるか、かつ/または皮膚の中に擦り込まれる。生産物は、手または顔の治療として使用するために特別に製剤化され得る。
【0130】
製剤化する場合、本組成物は、その粘性および消費者の使用目的に適合する適切な容器にパッケージ化できる。例えば、ローションまたはクリームは、ボトル、もしくは噴霧剤駆動エアロゾルデバイスまたは指操作に適したポンプを備えた容器にパッケージ化できる。本組成物がクリームである場合は、チューブまたは蓋付きジャーなどの非変形ボトルまたはスクイーズ容器に単に保存できる。したがって、本発明はまた、いくつかの実施形態によると、本明細書で定義されるような皮膚科学的に許容されるまたは化粧品として許容される組成物を含有する密閉容器を提供する。容器の形状は本発明では限定されず、チューブ、ポンプディスペンサー、圧縮ディスペンサー、ボトル、スプレー、またはサシェなどであり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物または組成物は、投与の準備ができた形態でパック内に提供される。他の実施形態では、本化合物または本組成物は、任意で投与のための最終溶液(複数可)を作製するために必要な希釈剤と共に、パック内に濃縮形態で提供される。さらに他の実施形態では、生産物は、本発明に有用な化合物を固体形態で含み、必要に応じて、本発明に有用な化合物に適する溶媒または担体を有する別の容器を含む。
【0132】
いくつかの実施形態によると、本発明は、第1の適切な容器内に本発明の組成物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態によると、本発明は、第1の適切な容器内に本発明の少なくとも1種類のFABACを含むキットを提供する。いくつかの実施形態によると、キットは、第一の容器以外の少なくとも1つの容器をさらに含む。いくつかの実施形態によると、上記少なくとも1つの他の容器は、少なくとも1種類の希釈剤、賦形剤、担体、溶媒または添加剤を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によると、本発明の組成物は、少なくとも1種類のFABACを含む第一の容器の内容物と上記少なくとも1つの他の容器の内容物を組み合わせることによって形成される。いくつかの実施形態によると、このキットは、本発明の組成物の使用および/または調製のための説明書をさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0133】
さらに他の実施形態では、上記のパック/キットは、他の構成要素、例えば、生成物の希釈、混合および/または投与のための説明書、他の容器、シリンジ、針などを含む。それぞれの可能性は本発明の別々の実施形態を表す。他のこのようなパック/キットの構成要素は、当業者には容易に明らかであろう。
【0134】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提示される。しかし、それらは、決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0135】
実施例
実施例1.細胞毒性アッセイ
研究の概要
全層表皮培養物(EFT−400、MatTek社)を用いて、試験物質(ステアムコール)の局所適用に応答する毒性を決定した。以前の生存率アッセイは、40.0、13.3、4.4、1.5μg/mLの濃度およびビヒクル単独(DMSO)で行った。毒性は観察されなかった。
【0136】
実験手順
試験物質を粉末として提供した。試験溶液を、1mLのDMSOに適切な量の粉末物質を添加することにより調製した。より低い濃度は、100%のDMSOで連続希釈することにより作製した。最終的な試験物質濃度および処理を以下にまとめる:
・2%のステアムコール(20,000μg/mL)
・1%のステアムコール(10,000μg/mL)
・0.1%のステアムコール(1000μg/mL)
・0.01%のステアムコール(100μg/mL)
・ビヒクル対照(100%のDMSO)
・未処理の対照
【0137】
生存能力を確実にするために必要とされる通りに全層皮膚培養物(EFT−400)を維持し、この培養物を、試験物質の適用前に24時間、37℃、5%COで平衡化した。試験物質を、無菌技術を使用して各培養物の表面に適用した(10μLが各培養物に適用された)。2つの培養物を各処理群に割り当てた。2つのEFT培養物が未処理の対照として供され(図2では陰性対照とも呼ばれる)、他の2つのEFT培養物が陽性対照として供された(100μLの1%トリトンX−100)。
【0138】
試験物質との24時間のインキュベーション期間後に、培養物をMTT[(3,4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]アッセイ(試薬はMatTek社から購入)を用いて細胞毒性分析のために処理した。生存組織はMTTを、光の特定の波長の吸光度(A570)を測定することによって検出される青色ホルマザン塩へと変換した。生存率は、以下の式:[処理A570/未処理A570]×100を用いて、試験培養物のA570測定値を未処理の対照培養物のA570測定値と比較することによって計算した。
【0139】
結果
試験した濃度はいずれも細胞生存率に有意な影響をもたらさなかった(図2、表1)。試験したステアムコールの全ての希釈物について細胞生存率は、未処理対照と比較して100%に近かった。これらの結果は、0.6〜3×10Mの範囲で線維芽細胞および上皮細胞に細胞傷害性であり(Varaniら、Journal of Investigative Dermatology(1993)101、839〜842)、上皮細胞死を増加させる(Dingら、Invest Ophthalmol Vis Sci.2013 Jun 26:54(6):4341−50)ことが示されているレチノイドを上回る、FABACの有利な効果を示す。
【0140】
【表1】
【0141】
実施例2.コレステロール流出ならびにABCA1のmRNAレベルおよびタンパク質レベルに対するステアムコールまたはアラムコールの効果
ステアムコールを、[H]コレステロールの存在下でコレステロール負荷を測定するために、ヒト皮膚線維芽細胞とともに20時間インキュベートした。一連の洗浄およびコレステロールアクセプターを含む流出物の添加後に、培地を収集し、遠心分離し、細胞結合型コレステロールを、類似のFABACの存在下および非存在下で流出したコレステロールと比較した。この研究プロジェクトは、ABCA1のmRNAの定量化およびABCA1の直接測定も含んだ。結果は、線維芽細胞におけるコレステロール流出が著しく増強されたこと、かつ流出がFABACの存在下で起こった場合に、ABCA1タンパク質濃度が未処理細胞と比較して約2倍増加したことを実証した。
【0142】
同様に、細胞を[H]コレステロールとプレインキュベートし、4回洗浄し、次いでアラムコールを含むまたは含まないインキュベーション培地中に20時間置いた。インキュベーション後、培地中および細胞内の放射能を別々に測定した。培地中の放射能を全放射能(細胞+培地)で割ることによってコレステロール流出率を算出した。結果は、線維芽細胞におけるコレステロール流出が著しく増強されたこと、かつ流出がアラムコールの存在下で起こった場合に、ABCA1タンパク質濃度が未処理細胞と比較して約2倍増加したことを実証した。
【0143】
実施例3.皮膚培養での遺伝子発現に対するステアムコールの効果
全層インビトロ皮膚培養モデルであるEpiderm FT(MatTek社、MA)をステアムコールで処理した。DMSO中のステアムコール(0.5%、5000μg/mL)を各試験培養物の表面に適用し、適用後24時間の時点で細胞を収集した。対照細胞は、ステアムコールを含まないDMSOで同様に処理した。
【0144】
遺伝子発現分析のために組織をRNAlaterに収集した。遺伝子発現を、Taqman低密度アレイ(TLDA)形式の検証されたTaqman遺伝子発現アッセイを用いて分析した。皮膚において様々な既知の機能を調節する、ABCA1およびSCD1遺伝子を含む94個の遺伝子を分析した。検証されたTaqman遺伝子発現アッセイを用いて、実験のセットアップを96ウェルフォーマットで行った。それぞれの遺伝子を2重にアッセイした。ステアムコール群をDMSO対照群と比較するために、StatMinerソフトウェアv4.2を用いて統計を行った(対応のないt検定、p≦0.05、N=4)。
【0145】
Epiderm FT培養物中の遺伝子発現に対するステアムコールの効果は、パネル中の94個の選択された遺伝子のうち、2つの遺伝子KRT 1(ケラチン1)およびKRT 10(ケラチン10)が、DMSOで処理した細胞と比較した場合に、2倍を超える統計学的に有意な偏差を示したことを明らかにした(以下の表2参照)。ABCA1のmRNAレベルには有意な変化は観察されなかった。表2に示される通り、ステアムコールは、ケラチノサイト分化の既知マーカーであるケラチン1およびケラチン10の発現を著しく阻害する。
【0146】
【表2】
【0147】
ケラチノサイトは、その有糸分裂が活発な表皮の基底層において、ケラチン5および14を発現する。細胞が基底を超えると(suprabasal)、ケラチン1およびケラチン10が発現し、一方でケラチン5およびケラチン14はシャットダウンされる。細胞は顆粒層へと外側に移動し続けるので、細胞は様々な分化タンパク質、ロリシン(Loricin)、プロフィラグリン、インボルクリンを含有する顆粒で満たされるようになる。不浸透性の細胞外被へとケラチンおよび他のタンパク質を架橋する酵素であるトランスグルタミナーゼも、この層で合成される。最終的に、ケラチノサイトは死滅し、それらの死滅し、平坦化した扁平上皮形態が角質層を構成する。
【0148】
ケラチノサイト分化に対する影響は可逆的であると考えられ、コレステロール枯渇からの回復は、刺激が取り除かれた場合に起こると考えられる。いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、FABACは、ABCA1タンパク質の輸送活性を増強し、脂質ラフトにおけるコレステロールレベルの減少を引き起こし、それによってケラチン1およびケラチン10の発現を低下させる。
【0149】
脂肪酸胆汁酸抱合体の活性は、レチノイン酸によって誘導されることが知られている効果と同様であることが、初めて本明細書で実証された。両化合物は、棘状の表皮(spinous epidermal)レベルおよび真皮細胞外マトリックスレベルで分化マーカーに影響を与える。レチノイン酸は核内受容体の活性化を介して作用するが、脂肪酸胆汁酸抱合体は、レチノイン酸と同様のカスケードにつながる細胞膜レベルでの組織変化を誘導すると推定される。2つの異なる無関係の研究において、脂肪酸胆汁酸抱合体がヒト表皮モデルにおいてABCA1細胞輸送を活性化し、ケラチン1およびケラチン10の発現を下方制御すると実証された。これらの2つの活性がケラチノサイト分化の減少を支援し、表皮および真皮のレベルで補償メカニズムを誘発し、組織の若返り、および臨床症状のより若い皮膚外観をもたらす可能性のあるおそらくより強力な細胞外マトリックス基盤へと最終的につながる。
【0150】
表皮層における細胞分化への影響は、抗老化活性の発症機序であることが実証されている。しかし、レチノイン酸の場合などの多くの場合において、この活性は、催奇形性、皮膚刺激および日焼けによる損傷に対する高感受性などの重篤な副作用の「代償」を伴う。これは、影響が核内受容体レベルで始まり、したがって深遠で回復が遅いためであり得る。本発明のFABACの提案される作用機序は、コレステロール減少の結果として脂質ラフト中の脂質の組織に影響を与える、穏やかではあるが有望な生化学的経路を提供する。
【0151】
実施例4.ケラチノサイト分化に対するFABACの効果
ケラチノサイト分化に対する本発明のFABACの効果を調べるために、高度に分化した全層インビトロ皮膚培養モデルEpiderm FT(MatTek社、MA)を使用する。二重の皮膚培養物を、DMSO中の3つの異なる濃度のステアムコールおよびDMSO中の3つの異なる濃度のアラムコールで処理する。試験濃度のうちの1つは、KRT1およびKRT10の遺伝子発現を低減するのに有効であった0.5%(5000μg/mL)である。2つの未処理の皮膚培養物およびビヒクル単独(DMSO)で処理した2つの培養物を陰性対照として使用する。レチノイン酸で処理した2つの皮膚培養物を、陽性対照として使用する。
【0152】
各試験培養物の表面への本組成物の適用後24時間の時点で細胞を収集する。タンパク質を、細胞の一部から抽出し、ケラチン1、ケラチン10、SCD1およびABCA−1に特異的な1次抗体を用いるウエスタンブロット分析ならびにELISA分析に供する。細胞の別の一部を固定し、ケラチン1、ケラチン10、SCD1およびABCA−1に特異的な一次抗体を用いる免疫組織化学的染色に供する。
【0153】
ケラチン1および/またはケラチン10の発現の下方制御は、ケラチノサイト分化の低下を示す。
【0154】
実施例5.ケラチノサイト増殖および細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の発現に対するFABACの効果
ケラチノサイトの増殖およびECMタンパク質の発現に対する本発明のFABACの効果を調べるために、高度に分化した全層インビトロ皮膚培養モデルEpiderm FT(MatTek社、MA)を使用する。
【0155】
二重の皮膚培養物を、DMSO中の3つの異なる濃度のステアムコールおよび3つの異なる濃度のアラムコールで処理する。試験濃度のうちの1つは、KRT1およびKRT10の遺伝子発現を低減するのに有効であった0.5%(5000μg/mL)である。2つの未処理の皮膚培養物およびビヒクル単独(DMSO)で処理した2つの培養物を陰性対照として使用する。レチノイン酸で処理した2つの皮膚培養物を、陽性対照として使用する。
【0156】
各試験培養物の表面への本組成物の適用後24時間の時点で細胞を収集する。細胞の一部を、本明細書の上記の実施例1で用いたMTTアッセイを使用する細胞増殖アッセイのために使用する。タンパク質を、細胞の一部から抽出し、エラスチン、プロコラーゲンおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP−1)に特異的な一次抗体を用いるELISA分析に供する。細胞の別の一部を固定し、エラスチン、プロコラーゲンおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ1(MMP−1)に特異的な一次抗体を用いる免疫組織化学的染色に供する。
【0157】
具体的な実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするので、他の人は現在の知識を適用することにより、過度の実験を行うことなく、かつ一般的な概念から逸脱することなくそのような特定の実施形態を様々な用途のために容易に変更および/または適合することができ、したがって、そのような適合および変更は、開示される実施形態の均等物の意味および範囲内で理解されるべきであり、理解されることが意図される。本明細書で用いられる表現または用語は、説明のためのものであり、限定するものではないことを理解されたい。開示される様々な機能を実行するための手段、物質、および工程は、本発明から逸脱することなく様々な代替形態をとってよい。
図1
図2
【国際調査報告】