(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-528213(P2016-528213A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】抗ウイルス化合物、医薬組成物、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/36 20060101AFI20160819BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20160819BHJP
C07D 407/12 20060101ALI20160819BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20160819BHJP
A61K 31/4433 20060101ALI20160819BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20160819BHJP
A61K 31/453 20060101ALI20160819BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20160819BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20160819BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20160819BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
C07D311/36CSP
C07D405/04
C07D407/12
A61K31/352
A61K31/4433
A61K31/496
A61K31/453
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P31/12
A61K39/12
A61K31/5377
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2016-527067(P2016-527067)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月11日
(86)【国際出願番号】US2014046829
(87)【国際公開番号】WO2015009812
(87)【国際公開日】20150122
(31)【優先権主張番号】61/846,997
(32)【優先日】2013年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/991,417
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516017086
【氏名又は名称】キネタ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KINETA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ピー・アイアドナト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・エム・ビダード
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ダブリュー・ファウラー
【テーマコード(参考)】
4C062
4C063
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C062EE43
4C062EE44
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC79
4C063DD12
4C063DD78
4C063EE01
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA51
4C085FF12
4C085FF17
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA08
4C086GA02
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
RNAウイルス感染症を含む、ウイルス感染症の治療のための化合物、医薬組成物および方法、ならびに対象および/または細胞中のRIG−I経路を調節する方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造を有する化合物:
【化1】
[式中、
W
1はCH、CH
2、N、またはNHであり;
W
2はBr、Cl、F、フェニル、CF
3、低級アルキル、C(CH
3)
3、ヘテロアリール、シクロアルキル、OW
a、OCH
2W
a、OCH
2W
b、またはNHSO
2W
b、NW
cSO
2W
cであり;
W
aはBr、アリール、CF
3、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、CHF
2、C(CH
3)
3、またはNHSO
2W
bであり;
W
bはフェニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、または低級アルキルであり;
W
cは低級アルキルであり;
R
aはH、低級アルキルまたはOR
cであり、ここにR
cはHまたは低級アルキルであり;
R
bはフェニル、フェノール、OR
d、NR
d、OR
dR
e、またはNR
dR
eであり、
R
dは低級アルキル、アルキルスルホニル、SO
2CH
3、アルキルカルボニル、CF
2、C(=O)NHR
c、CH
2C(=O)R
f、CH
2C(=O)R
fR
g、CH
2R
h、CH
2CH
2R
f、CH
2CH
2R
fR
g、CH
2CH
2R
fR
iであり、
R
eはヒドロキシル、低級アルキル、アルキルスルホニル、またはNHR
cであり;
R
fはヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルであり、
R
gはアルキルカルボニル、アルキルスルホニル、または低級アルキルであり、
R
hはアルキニルであり、および
破線は二重結合の存在または不存在を表す]。
【請求項2】
W2がBr、CF3、OCF3、またはC(CH3)3であり、およびRbがORjであり、ここにRjがスルホニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
W2がC(CH3)3であり、およびRbがNCH3Rjであり、ここにRjがスルホニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
以下の構造を有する化合物:
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、CH
2CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5、またはSOmNR
4R
5から選択され;
R
3は、H、R
1、アルキルスルホニル、NR
4SO
2R
5、SOmNR
4R
5、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、アリールスルホニル、または複素環式アルキルアルキルであり;
R
4およびR
5は、各々独立して、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、またはイソキノリンから選択され;
AおよびA'は、各々独立して、O、S、またはNR'から選択され、ここにR'はH、低級アルキルまたはR
3であり、あるいはR'およびR
3またはR'およびWは一緒になって、非置換型または置換型の複素環またはヘテロアリール環を形成することができ;
Wは、アリール、置換型アリール、ヘテロアリール、置換型ヘテロアリール、アルキル、置換型アルキル、シクロアルキル、置換型シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換型ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換型ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、またはヘテロアリール アルキルであり;
Z
1、Z
2、およびZ
3は、各々独立して、C、O、NH、S、C=O、S=OまたはSO
2から選択され;
Y
1、Y
2、Y
3、およびY
4は、各々独立して、CまたはNから選択されるが、但し、Y
4がNである場合、R
3-(A)sは存在せず;
破線は二重結合の存在または不存在を表し;
mは1または2であり;
nは0、1、2または3であり;
oは0、1、2、または3であり;
sは0または1であり;および
rは0または1である]。
【請求項5】
化合物が構造:
【化3】
を有する請求項4の化合物。
【請求項6】
Y4がNである、請求項4の化合物。
【請求項7】
Wが以下のものから選択される構造を有する、請求項4の化合物:
【化4】
[式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6の各々は、独立して、C、O、NH、NR
6、S、C=O、S=O、またはSO
2から選択され;
各R
6は、独立して、H、低級アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、N-アルキル ピペラジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5、またはSOmNR
4R
5、あるいは2の近接するR
6基は一緒になって、縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成することができ;
各R
8は、独立して、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、CF
3、アルキルカルボニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、SO
2CH
3から選択され、あるいは2の近接するR
8基は一緒になって、縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環またはヘテロアリール環を形成することができ;
pおよびtは、各々独立して、0、1、2、3、4、または5であるが、但しp+t≦5であり;および
qは1、2、3、または4である]。
【請求項8】
R6がH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、Cl、Br、CF3、OCF3、または-NHSO2R7であり、ここにR7が低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R7がN-ピペリジル、N-モルホリノ、N-アルキル-N-ピペラジニル、またはフェニルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
rが0であり、およびWが1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R6-1-フェニルであり、およびR6がtert-ブチル、Br、OCF3、または-NHSO2R7であり、ここにR7がN-ピペリジルまたはフェニルであるか;あるいは
rが1であり、およびWがフェニルである、請求項7記載の化合物。
【請求項11】
rが0であり、およびWが4-(OR8)-1-フェニルであり、および(OR8)がトリフルオロメトキシ、ブタニルオキシ、シクロプロピルメトキシ、ジメチルプロポキシ、トリフルオロエトキシ、ジフルオロメトキシ、オキサニルメトキシ、オキサニルメトキシ、またはジメチルブトキシである、請求項7記載の化合物。
【請求項12】
sが1であり、AがOまたはNR'であり、ここにR'がHまたは低級アルキルであり、およびR3がH、3-プロピニル、SO2CH3、CF2H、CF3、CONHCH3、またはCH2CONR4R5であり;ここにR4およびR5は一緒になって、モルホリノ環、N-アセチル ピペラジニル環、N-メタンスルホニル ピペラジニル環、またはN-メチルピペラジニル環を形成し;あるいは
sが0であり、およびR3がSO2CH3、COR4、CONR4R5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドである、請求項4記載の化合物。
【請求項13】
化合物が以下のものから選択される構造を有する、請求項4の化合物:
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療に使用するための、請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
対象におけるウイルス感染症を治療または防ぐことに使用するための、請求項14記載の医薬組成物であり;所望により、ウイルス感染症が、以下の科:アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、コロナウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス、ヘルペスウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、メソニウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコビルナウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ロニウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科の1またはそれを超えるものからのウイルスによって引き起こされ;所望により、ウイルス感染症が、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス(DNV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERSコロナウイルス(MERS)、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ロシオウイルス、SARS−コロナウイルス(SARS)、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス(WNV)、および黄熱病ウイルスである、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
化合物が請求項13に示す構造を有する、請求項15記載の使用するための医薬組成物。
【請求項18】
医薬組成物が、予防または治療用ワクチンのアジュバントとして投与する、請求項15記載の使用するための医薬組成物であって;所望により、該使用がアルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、DNV、HBV、HCV、hCMV、HIV、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERS、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、RSV、ロシオウイルス、SARS、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスに対するワクチンをさらに投与することによって対象をワクチン接種することを含む、医薬組成物。
【請求項19】
真核生物細胞における生来の免疫応答を調節することに使用するための請求項1記載の化合物であって、使用が該化合物を真核生物細胞に投与することを含む化合物。
【請求項20】
化合物が請求項13に示す構造を有する、請求項19記載の使用するための化合物。
【請求項21】
治療有効量の請求項14記載の医薬組成物を対象に投与し、それによって対象におけるウイルス感染症を治療することを含む、対象におけるウイルス感染症を治療する方法。
【請求項22】
ウイルス感染症が以下の科:
アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、コロナウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス、ヘルペスウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、メソニウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコビルナウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ロニウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科、およびティモウイルス科のうちの1またはそれを超えるものからのウイルスによって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ウイルス感染症が以下のもの:インフルエンザウイルス、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス(DNV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERSコロナウイルス(MERS)、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ロシオウイルス、SARS−コロナウイルス(SARS)、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス(WNV)、および黄熱病ウイルスのうちの1またはそれを超えるものによって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物を予防または治療用ワクチン用のアジュバントとして投与する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
方法がアルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス(DNV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERSコロナウイルス(MERS)、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ロシオウイルス、SARS−コロナウイルス(SARS)、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス(WNV)、および黄熱病ウイルスに対するワクチンをさらに投与することによって対象をワクチン接種することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項4記載の化合物を真核生物細胞に投与することを含む、真核生物細胞における生来の免疫応答を調節する方法。
【請求項27】
細胞がイン・ビボ(in vivo)である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
細胞がイン・ビトロ(in vitro)である、請求項26記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月16日出願の米国特許仮出願第61/846,997号、および2014年5月9日出願の米国特許仮出願第61/991,417号の優先権を主張するものであり、両仮出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
政府の利益に関する声明
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所認可番号AI081335による政府の支援を得て行った。政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、特にウイルス感染を処置するための化合物、医薬組成物、および方法を提供する。この化合物は、レチノイン酸誘導遺伝子1(RIG−I)経路を調節する。
【背景技術】
【0004】
RNAウイルスなどのウイルスは、米国および世界中で公衆衛生上の大きな問題となっている。よく知られているRNAウイルスには、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む;フルー(flu)としても知られる)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ウエストナイルウイルス(WNV)、SARS−コロナウイルス(SARS)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)が挙げられる。
【0005】
一例として示すと、世界中で1億7,000万を超える人がHCVに感染し、そのうちの1億3,000万人が慢性肝疾患(肝硬変、癌腫および肝不全)発症のリスクのある慢性キャリアである。したがって、先進国ではHCVが全肝移植の原因の3分の2を占めている。最近の研究では、慢性感染患者の加齢によりHCV感染症による死亡率が上昇していることが明らかになっている。2つ目の例を示すと、毎年人口の5〜20%が季節性フルーに感染し、その結果、毎年200,000人が入院し、36,000人が死亡している。
【0006】
HCVやインフルエンザに比べると、WNVによる感染者数は最も少なく、2010年の米国では981人である。しかし、感染患者の20%が重症型の疾患を発症し、その結果、死亡率は4.5%となっている。HCVやインフルエンザとは異なり、WNV感染症の処置に承認された治療法は存在せず、また生物テロリストの薬剤になる可能性があることから、WNVは薬物開発の優先度の高い病原体となっている。
【0007】
上に挙げたウイルスのうち、インフルエンザウイルスにのみワクチンが存在する。したがって、これらのウイルスに関連する高い罹患率および死亡率を軽減するためには、薬物療法が不可欠である。残念ながら、抗ウイルス薬の数は限られており、その多くのものが効果に乏しい上、そのほとんどすべてが、ウイルスの耐性の進化が速く、作用の範囲が限られているという問題を抱えている。さらに、急性HCVおよびインフルエンザ感染症の治療法は中程度の効果しかない。HCV感染症の標準治療であるペグ化インターフェロンとリバビリンでは、患者の50%にしか効果が認められず、併用療法に関連する用量制限副作用が多数認められる。急性インフルエンザ抗ウイルス剤のアダマンタンおよびノイラミニダーゼ阻害剤は両種類とも、効果があるのは感染後最初の48時間以内に限られるため、処置の機会が得られる時間帯が限定されている。アダマンタンに対する高い耐性のために、既にその使用は制約されており、ノイラミニダーゼ阻害剤は、大量に備蓄されているために、やがては乱用やインフルエンザの耐性株の出現を招くことになるであろう。
【0008】
ウイルスに対する薬物開発の努力はほとんどの場合、ウイルスタンパク質を標的とするものである。このことは、現在用いられている薬物が、薬効範囲が狭くウイルスの耐性が出現しやすい理由の大きな部分を占めている。ほとんどのRNAウイルスのゲノムは小さく、多くのものが十数個より少ない程度のタンパク質しかコードしていないので、ウイルスの標的は限られている。上記のことから、RNAウイルス感染を含むウイルス感染に効果的な処置に対する極めて大きな、未充足のニーズがある。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示される化合物、医薬組成物、および方法は、ウイルス薬物開発の焦点を、ウイルスタンパク質を標的とすることから、宿主の先天性の抗ウイルス免疫応答を標的とし、その応答を増強することに転換するものである。このような化合物、医薬組成物、および方法は、より効果が高く、ウイルスの耐性がより出現しにくく、副作用がより少なく、様々な異なるウイルスに効果的である可能性がある。Tan,S. L.ら(2007) Systems biology and the host response to viral infection,Nat Biotechnol 25,1383-1389。
【0010】
レチノイン酸誘導遺伝子1(RIG−I)経路は、RNAウイルス感染を含むウイルス感染に対する先天性免疫応答の調節に深く関与している。特にC型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、およびウエストナイルウイルス(WNV)を含む多くのウイルスの処置にはRIG−Iアゴニストが有用であると予想される。したがって、本開示は、RNAウイルス感染を含むウイルス感染を処置するための化合物、その化合物を含む医薬組成物、および関連使用方法に関し、化合物はRIG−I経路を調節する。
【0011】
発明の詳細な説明においてより完全に記載されるように、化合物は次の一般的化学構造
【化1】
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A、1B、および1Cは、HCVに対する化合物KIN100およびKIN101の抗ウイルス活性を示す。(A)KIN100で24時間前処理し、0.5の感染多重度(MOI)でHCV2aに48時間感染させたHuh7細胞で行ったHCVフォーカス形成アッセイ。HCVタンパク質を、ウイルス特異的血清を使用した免疫蛍光染色により検出し、薬剤処理していない陰性対照細胞(1に等しい)に対し病巣を正規化した。(B)KIN101で18時間前処理し、1.0のMOIでHCV2aに72時間感染させたHuh7細胞で行ったリアルタイム定量的PCR(RT−qPCR)によるHCVウイルスRNAの定量化。ウイルスRNAを感染培養液の上清中で単離し、定量した。(C)同様に、1.0のMOIでHCV2aに4時間感染させ、その後KIN101で処理したHuh7細胞で行ったRT−qPCRによるHCVウイルスRNAの定量化。
【0013】
【
図2】
図2Aおよび2Bは、RSVに対する化合物KIN101の抗ウイルス活性を示す。(A)RSV A2で感染させ、KIN101で処理した後の細胞生存率。(B)KIN101処理により、KIN101で処理した細胞の感染後48時間のRSVウイルスRNAが減少した。
【0014】
【
図3】
図3A、3B、および3Cは、インフルエンザフォーカス形成アッセイの結果を示す。病巣の減少を、化合物によるウイルス感染のパーセント阻害としてグラフに示す。(A)KIN101は、293細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した。誘導体化合物KIN134、KIN263、KIN267、KIN269、KIN282、KIN291、KIN308、およびKIN306は、ウイルス力価の減少により示されるように、この抗ウイルス活性を改善した。(B)KIN328、KIN371、KIN372、KIN376、KIN385、KIN392、KIN269、KIN394、KIN395、およびKIN299は、293細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した。(C)インフルエンザ抗ウイルスアッセイにおける代表的誘導体化合物のIC50測定値。
【0015】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、デングウイルス(DNV)に対する選択化合物の抗ウイルス活性を示す。(A)DNVに感染させ、KIN101の量を増加させて処理した細胞中のウイルスタンパク質の用量依存的減少。(B)抗ウイルス活性に関するDNVフォーカス形成アッセイの結果。病巣の減少を、化合物によるウイルス感染のパーセント阻害としてグラフに示す。化合物KIN101(黒色点線)、KIN134、KIN269、KIN328、KIN372、KIN376、およびKIN385は、Huh7細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した。IC50値(M単位)を示す。
【0016】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する選択化合物の抗ウイルス活性を示す。(A)KIN385、KIN392、KIN394、およびKIN395で処理した試料中の病巣(FFU/mL)により測定したhCMVの用量依存的減少。(B)KIN269、KIN134、KIN372、KIN328、およびKIN376で処理した試料中の病巣(FFU/mL)により測定したhCMVの用量依存的減少。
【0017】
【
図6】
図6は、293細胞中の化合物KIN269により誘導されたインターフェロン制御因子3(IRF-3)応答性遺伝子発現を示す。インフルエンザ感染を遺伝子発現の誘導に対する陽性対照として使用した。
【0018】
【
図7】
図7A〜7Eは、KIN269のインビボ広域スペクトル抗ウイルス活性およびバイオアベイラビリティを示す。KIN269(10%HPBCD中の10mg/kg)による鼻腔内の処理により、肺中のインフルエンザ(A)、マウス肝炎ウイルス(MHV)(B)の複製および力価が減少する。(C)腹腔内注射または静脈内注射による10mg/kg用量投与時のKIN269の経時的血清中濃度。(D)KIN269は、腹腔内の10mg/kg/日の用量を投与した場合、血清中濃度で測定してDNVを阻害した。(E)KIN269(20mg/kg)は、PR8フルーの致死感染の24時間前(予防的投与)、または24時間後(治療的投与)に鼻腔内点滴注入した場合、肺中でのフルー複製を阻害した。肺組織を感染の72時間後採取し、フルーRNAをPCRで定量した。
【0019】
本開示は、ウイルス処置の焦点を、ウイルスタンパク質を標的とすることから、宿主(対象)の先天性の抗ウイルス免疫応答を標的とし、その応答を増強することに転換する化合物、医薬組成物、および方法を提供する。このような化合物、医薬組成物、および方法は、より効果が高く、ウイルスの耐性がより出現しにくく、副作用がより少なく、様々な異なるウイルスに効果的である可能性がある。Tan,S. L.ら(2007) Systems biology and the host response to viral infection,Nat Biotechnol 25,1383-1389。
【0020】
レチノイン酸誘導遺伝子1(RIG−I)経路は、RNAウイルス感染を含むウイルス感染に対する先天性免疫応答の調節に深く関与している。RIG−Iは広範囲のRNAウイルスに対する免疫を引き起こすのに不可欠な細胞質の病原体認識受容体である。Li,K.ら(2005) Distinct poly(I-C) and virus-activated signaling pathways leading to interferon-beta production in hepatocytes,J Biol Chem 280,16739-16747; Loo,Y. M.ら(2008) Distinct RIG-I and MDA5 signaling by RNA viruses in innate immunity,J Virol 82,335-345; Loo,Y. M.ら(2006) Viral and therapeutic control of IFN-beta promoter stimulator 1 during hepatitis C virus infection,Proc Natl Acad Sci U S A 103,6001-6006; Saito,T.ら(2007) Regulation of innate antiviral defenses through a shared repressor domain in RIG-I and LGP2,Proc Natl Acad Sci U S A 104,582-587。RIG−Iは、一続きのウリジンのホモポリマーまたはU/Aポリマーのモチーフを特徴とするRNAウイルスゲノム内にあるモチーフと結合する二本鎖RNAヘリカーゼである。Saito,T.ら(2008) Innate immunity induced by composition-dependent RIG-I recognition of hepatitis C virus RNA,Nature 454,523-527。RNAとの結合により、自己のリプレッサードメインによるRIG−Iシグナル伝達抑制を解除する構造変化が誘導され、RIG−Iがそのタンデム型カスパーゼ活性化および動員ドメイン(CARD)を介して下流にシグナルを伝達することが可能になる。Johnson,C. L.ら(2006) CARD games between virus and host get a new player,Trends Immunol 27,1-4。RIG−Iシグナル伝達はそのNTPアーゼ活性に依存するものであるが、ヘリカーゼドメインは必要としない。Sumpter,R.,Jr.ら(2005) Regulating intracellular antiviral defense and permissiveness to hepatitis C virus RNA replication through a cellular RNA helicase,RIG-I,J Virol 79,2689-2699; Yoneyama,M.ら(2004) The RNA helicase RIG-I has an essential function in double-stranded RNA-induced innate antiviral responses,Nat Immunol 5,730-737。RIG−Iシグナル伝達は休止細胞では作動せず、リプレッサードメインがウイルス感染に対する応答におけるシグナル伝達を支配するオン−オフスイッチとしての役割を果たす。Saito,Proc Natl Acad Sci U S A 104,582-587。
【0021】
理論や特定の作用機序に束縛されるものではないが、RIG−Iシグナル伝達は、ミトコンドリア外膜に存在する不可欠なアダプタータンパク質のIPS−1(Cardif、MAV、およびVISAとしても知られる)を介して行われる。Kawai,T.ら(2005) IPS-1,an adaptor triggering RIG-I- and Mda5-mediated type I interferon induction,Nat Immunol 6,981-988; Meylan,E.ら(2005) Cardif is an adaptor protein in the RIG-I antiviral pathway and is targeted by hepatitis C virus,Nature 437,1167-1172; Seth,R. B.ら(2005) Identification and characterization of MAVS,a mitochondrial antiviral signaling protein that activates NF-kappaB and IRF 3,Cell 122,669-682; Xu,L. G.ら(2005) VISA is an adapter protein required for virus-triggered IFN-beta signaling,Mol Cell 19,727-740。IPS-1は、感染を制御するI型インターフェロン(IFN)およびウイルス応答性遺伝子の発現を誘導する転写因子であるインターフェロン制御因子3(IRF−3)の下流での活性化を刺激する巨大分子シグナル伝達複合体を動員する。Venkataraman,T.ら(2007) Loss of DExD/H box RNA helicase LGP2 manifests disparate antiviral responses,J Immunol 178,6444-6455。直接的に、またはIRF−3を含むRIG−I経路成分の調節を介してRIG−Iシグナル伝達を引き起こす化合物は、抗ウイルス剤および免疫調節剤として魅力的な治療適用を可能にする。
【0022】
ハイスループットなスクリーニング手法を用いて、RIG−I経路を調節する化合物を特定した。特定の実施形態では、検証されたRIG−Iアゴニストリード化合物が、IRF−3を特異的に活性化することが実証された。さらなる実施形態では、上記化合物は、次の利点の内の1つまたは複数を有する:それらはインターフェロン誘導遺伝子(ISG)の発現を誘導する、それらは細胞ベースのアッセイにおいて細胞毒性が低い、それらは類似体開発およびQSAR研究に適している、それらは薬物様の生理化学的特性を有する、および/またはそれらはインフルエンザAウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)および/またはC型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗ウイルス活性を有する。特定の実施形態では、化合物は、これらの特徴のすべてを示す。
【0023】
開示化合物は新たな種類の抗ウイルス治療薬である。本開示は化合物の特定のインビボ作用機序に束縛されるものではないが、化合物はRIG−I経路の調節という観点から選択される。特定の実施形態では、調節はRIG−I経路の活性化である。本明細書で開示の化合物、医薬組成物、および方法は、対象を処置し、ウイルスタンパク質を減少させ、ウイルスRNAを減少させ、および/またはウイルス感染の研究室モデルにおける感染性ウイルスを減少させるように作用する。
I.化合物
【0024】
1の実施形態において、本明細書に記載する化合物は抗ウイルス化合物である。もう1の実施形態において、化合物は固有の免疫調節化合物である。もう1の実施形態において、化合物は固有の免疫活性化化合物である。もう1の実施形態において、化合物は固有の免疫アゴニストである。
【0025】
1の実施形態において、本明細書の化合物は以下の構造を有する:
【化2】
ある種の実施形態によれば、化合物は、基が本明細書に定義するものである置換基を有することができる。具体的な実施形態によれば、化合物は、式中、R
1およびR
2は各々独立して、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、ハロアルキル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、CH
2CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5またはSO
mNR
4R
5から選択することができる構造を有することができる。R
3はH、アルキルスルホニル、NR
4SO
2R
5、SO
mNR
4R
5、SO
2CH
3、CF
2H、CF
3、CONHCH
3、3-プロピニル、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、アリールスルホニル、複素環式アルキルアルキル、N-イミダゾリニル、N-マレイミド、またはR
1またはR
2について記載した基のいずれかになることができる。R
1、R
2、およびR
3の種々の実施形態について、基はR
4について以下の構造を有することができ、およびR
5は、各々独立して、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、またはイソキノリンから選択することができる。AおよびA'は、各々、コア二環式環構造と置換基R
3またはWとの間の任意のリンカー基である。すなわち、Aおよび/またはA'は、各々、およびrの値によって示される化合物の特定の実施形態に依存して存在または不存在になり得、すなわち、sまたはrが1である場合、それぞれの基AまたはA'は存在し、sまたはrが0である場合、それぞれの基AまたはA'は不存在である。ある種の実施形態において、AおよびA'は、各々独立して、O、S、またはNR'から選択することができ、ここにR'はH、低級アルキルまたはR
3について示した基のいずれかになることができる。他の実施形態によれば、R'とR
3またはR'とWは一緒になって、非置換型または置換型の複素環またはヘテロアリール環を形成することができる。Wは、本明細書に定義するアリール、置換型アリール、ヘテロアリール、置換型ヘテロアリール、アルキル、置換型アルキル、シクロアルキル、置換型シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換型ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換型ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルから選択される基になることができる。Z
1、Z
2、およびZ
3は、各々独立して、C、O、NH、S、C=O、S=OまたはSO
2から選択することができる。ある種の実施形態によれば、Z
1はOになることができ、Z
2はC(単結合または二重結合によって近接する炭素に連結した)になることができ、およびZ
3はC=Oになることができる。Y
1、Y
2、Y
3、およびY
4は、各々独立して、CまたはNから選択することができるが、但し、Y
4がNである場合はR
3-(A)
sは存在しない。例えば、ある種の実施形態において、Y
1、Y
2、Y
3、およびY
4は各々炭素となり、それによってフェニル環を形成することができる。他の実施形態において、1またはそれを超えるY
1、Y
2、Y
3、およびY
4はNになることができる。理解されるように、Y
4がNである場合、窒素の原子価は満たされ、基R
3-(A)
sは存在しない。種々の実施形態によれば、破線は二重結合の存在または不存在を表す。すなわち、実線と破線の組合せによって結合した2の原子は、単結合(シグマ結合)または二重結合(シグマ結合およびパイ結合の組合せから形成される)のいずれかによって連結していると理解される。これらの実施形態に表す種々の置換基について、構造は以下の整数の値を有することができ、式中: mは1または2になることができ;nは0、1、2、または3になることができ;oは0、1、2、または3になることができ;sは0または1になることができ;およびrは0または1になることができる。当業者に理解されるように、置換基の種々の組合せが可能であるが、化学的に矛盾しない組合せのみが本明細書の化合物の範囲内にある。
【0026】
1の実施形態において、1のR
1とR
3とは一緒なってアリール、シクロアルキル、メチレンジオキソ、エチレンジオキソ、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0027】
1の実施形態において、R
4とR
5とは一緒になって、モルホリノ環またはN-メチルピペラジニル環を形成することができる。
【0028】
もう1の実施形態において、化合物は以下の構造を有する:
【化3】
式中、環構造上の置換基は、基を含むことができ、sは1になることができ、AはOになることができR
3はH;3-プロピニル;SO
2CH
3;CF
2H;CF
3;CONHCH
3またはCH
2CONR
4R
5になることができ、ここにR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環またはN-メチルピペラジニル環を形成し;あるいは別法として、式中、sは0になることができ、R
3はSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニルまたはN-マレイミドになることができ;rは0になることができ、およびWは1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルになることができ、およびR
6はtert-ブチル、Br、OCF
3または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7はN-ピペリジルまたはフェニルであり;あるいは別法として、rは1になることができ、Wはフェニルになることができる。
【0029】
他の例示的な化合物は以下の構造を有する:
【化4】
【0030】
具体的な実施形態によれば、本明細書の化合物は以下の構造を有することができる:
【化5】
すなわち、これらの実施形態によれば、基Z
1はOであり、Z
2はC(単結合または二重結合のいずれかで近接する炭素に連結した)であり、およびZ
3はC=Oであり;Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は各々炭素であり、それによってZ原子を含む環に縮合したフェニル環を形成する。
【0031】
他の実施形態によれば、本明細書の本明細書の化合物は、Y
4がNである構造を有することができ、および化合物は以下の構造を有することができる:
【化6】
【0032】
ある種の実施形態によれば、式中、Y
4はNであり、化合物は以下の構造を有することができる:
【化7】
【0033】
具体的な実施形態において、W基は以下から選択される構造を有することができる:
【化8】
W基の種々の実施形態によれば、基は以下に示す構造を有することができ、式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6の各々は、独立してC、O、NH、NR
6、S、C=O、S=O、またはSO
2から選択することができる。したがって、W基は、典型的には、前記に示した構造特徴による置換型または非置換型の炭素環式、複素環式、アリール、またはヘテロアリール構造になることができる。ある種の実施形態によれば、Wの構造は、置換型または非置換型の6員の複素環、環状炭素環、フェニル環またはヘテロアリール環を含むことができる。他の実施形態によれば、Wの構造は、置換型または非置換型のナフチル環を含むことができる。他の縮合した芳香族および非-芳香族多環式環系もWの構造について可能であり、および本願明細書に記載の範囲内である。ある種の実施形態において、Wの構造は、所望により、環中に1またはそれを超える二重結合を有していてもよい、3〜6の環原子(すなわち、式中のqは1、2、3、または4になることができる)を有する置換型または非置換型の環状炭素環を含むことができ、あるいは別法としてWは、3〜7の環原子を有する置換型または非置換型の複素環を含むことができ、ここに1またはそれを超える環原子は独立してO、NH、NR
6、S、C=O、S=O、またはSO
2から選択することができる。幾つかの実施形態において、Wは、1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルになることができる。ある種の実施形態によれば、W基が置換される場合、W基は1またはそれを超えるR
6および/またはR
8基によって置換されていてもよく、その場合、W基上の1またはそれを超えるH原子はR
6またはR
8基によって置き換わる。W基は独立して選択される複数のR
6および/またはR
8基を有していてもよく、その場合、W基上の1または全てまでのH原子はR
6またはR
8 置換基で置き換わる。1またはそれを超えるR
6置換基を有するW基を含む実施形態によれば、各R
6は、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、低級アルキル、ハロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、-NHSO
2R
7、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、N-アルキル ピペラジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5、またはSO
mNR
4R
5から選択される。1の実施形態において、R
7はアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、フェニル、アリール、ヘテロアリール、N-ピペリジル、N-モルホリノ、N-アルキル-N-ピペラジニル、N-ピロリジル、N-ピロリジニル、またはフェニルである。ある種の実施形態において、W環原子が少なくとも2のオープンな原子価(すなわち、環原子に結合した2の置換基を有することができる)を有する場合、R
6基は、例えば=O、=NR
6、=Sなどのような不飽和基を含んでいてもよい。ある種の実施形態において、W基は多環式構造を含んでいてもよく、例えば2の近接するR
6基が一緒になって、縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成してもよい。2の近接するR
6基が一緒になって、縮合した5-または6-員の環を形成する実施形態において、縮合環は、W環構造の外側に形成した縮合環に位置する1またはそれを超えるさらなるR
6置換基を含んでいてもよい。本明細書に記載する置換型W基のある種の実施形態によれば、W基は0〜5のR
6置換基を有することができ、ここに各pは独立して0、1、2、3、4、または5;および、シクロアルキル環を含む実施形態において、qは1、2、3、または4になることができる。
【0034】
1またはそれを超えるR
8置換基を有するW基を含む実施形態によれば、各R
8は、独立して、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、CF
3、アルキルカルボニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、13ウイノロン(uinolone)、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、13ウイノロン(uinolone)、イソキノリン、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、SO
2CH
3から選択され、あるいは2の近接するR
8基は一緒なって縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環またはヘテロアリール環を形成する。本明細書に記載する置換型W基のある種の実施形態によれば、W基は、R
6およびR
8のいずれかから選択される0〜5の置換基を有することができ、ここに、pおよびtは、各々独立して、p+t≦5になるように0、1、2、3、4または5になることができ;シクロアルキル環を含む実施形態において、qは1、2、3または4になることできる。
【0035】
本明細書の化合物の具体的な実施形態によれば、化合物は、式中のrが0であり、およびWが1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリルまたは4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6がtert-ブチル、Br、OCF
3または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7がN-ピペリジルまたはフェニルである構造を有することができる。本明細書の化合物の他の実施形態によれば、化合物は、式中のrが0であり、およびWが4-(OR
8)-1-フェニルであり、および(OR
8)がトリフルオロメトキシ、ブタニルオキシ、シクロプロピルメトキシ、ジメチルプロポキシ、トリフルオロエトキシ、ジフルオロメトキシ、オキサニルメトキシ、オキサニルメトキシ、またはジメチルブトキシである構造を有することができる。本明細書の化合物の未だ他の実施形態によれば、化合物は、式中のrが1であり、およびWがフェニルである構造を有することができる。
【0036】
例示的な化合物には、式中のrが0であり、およびWが1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6がtert-ブチル、Br、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7がN-ピペリジルまたはフェニルであり;またはrが1であり、およびWがフェニルであるものが含まれる。
【0037】
他の例示的な化合物には、sが1であり、AがOであり、およびR
3がH、3-プロピニル、SO
2CH
3、CF
2H、CF
3、CONHCH
3、C
2H
4NR
4R
5、またはCH
2CONR
4R
5であり;ここにR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環またはN-置換型ピペラジニル環を形成し;またはsが0であり、およびR
3がSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドであるものが含まれる。また、時として、いずれか1の化合物については、rは0であり、およびWは1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6はtert-ブチル、Br、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7はN-ピペリジルまたはフェニルであり;またはrは1であり、およびWはフェニルであるものが含まれる。
【0038】
他の例示的な化合物には、式中のsが1であり、AがNR'であり、ここにR'がH、メチル、またはエチルであり;R
3がH、3-プロピニル、SO
2CH
3、CF
2H、CF
3、CONHCH
3、C
2H
4NR
4R
5、またはCH
2CONR
4R
5であり;ここにR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環、N-アセチルピペラジニル環、N-メタンスルホニルピペラジニル環、またはN-メチルピペラジニル環を形成し;あるいがsが0であり、およびR
3がSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドであるものが含まれる。また、時として、いずれか1の化合物については、rは0であり、およびWは1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6はtert-ブチル、Br、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7はN-ピペリジルまたはフェニルであり;またはrは1であり、およびWはフェニルであるものが含まれる。
【0039】
他の例示的な化合物には、rが0であり、およびWが4-(OR
8)-1-フェニルであり、および(OR
8)がトリフルオロメトキシ、ブタニルオキシ、シクロプロピルメトキシ、ジメチルプロポキシ、トリフルオロエトキシ、ジフルオロメトキシ、オキサニルメトキシ、オキサニルメトキシ、またはジメチルブトキシであるものが含まれる。
【0040】
本明細書に記載する化合物の未だ他の実施形態において、R
3基はH;3-プロピニル;SO
2CH
3;CF
2H;CF
3;CONHCH
3;COR
4;N-イミダゾリニル;N-マレイミド;またはCONR
4R
5またはCH
2CONR
4R
5であり、ここにR
4は前記したものと同じであり、あるいはR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環またはN-アルキルピペラジニル環を形成する、から選択される構造を有することができる。具体的な実施形態において、化合物は、式中のsが1であり、AがOであり、およびR
3がH;3-プロピニル;SO
2CH
3;CF
2H;CF
3;CONHCH
3またはCH
2CONR
4R
5であり、ここにR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環またはN-メチルピペラジニル環を形成する構造を有する化合物を含むことができる。他の実施形態によれば、化合物は、sが0であり、およびR
3がSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドである構造を有するものを含むことができる。
【0041】
具体的な実施形態において、本明細書に記載する化合物は、式中のsが1であり、AがOであり、およびR
3がH;3-プロピニル;SO
2CH
3;CF
2H;CF
3;CONHCH
3またはCH
2CONR
4R
5であり、ここにR
4およびR
5は一緒になってモルホリノ環またはN-メチルピペラジニル環を形成し;あるいは別法として、sが0であり、およびR
3がSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドであり;rが0であり、およびWが1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6がtert-ブチル、Br、OCF
3、または-NHSO
2R
7、ここにR
7はN-ピペリジルまたはフェニルであり;あるいは別法として、rが1であり、Wがフェニルである構造を有するものを含むことができる。
【0042】
例示的な化合物には、R
6がH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、Cl、Br、CF
3、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7は低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであるものが含まれる。多くの場合において、R
7はN-ピペリジル、N-モルホリノ、N-アルキル-N-ピペラジニル、またはフェニルである。
【0043】
詳細な実施形態において、明細書に記載する化合物は以下の構造を有することができる:
【化9】
1の実施形態において、W
1はCH、CH
2、N、またはNHになることができ、およびW
2はBr、Cl、F、フェニル、CF
3、低級アルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、OW
a、C(CH
3)
3、OCH
2W
a、またはOCH
2W
b、NHSO
2W
bまたはNW
cSO
2W
cになることができる。W
bはBr、アリール、CF
3、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、CHF
2、C(CH
3)
3、NHSO
2W
bになることができ;W
bはフェニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、または低級アルキルになることができ;および、W
cは低級アルキルになることができる。さらに、R
aはH、低級アルキルまたはOR
cになることができ、ここにR
cはHまたは低級アルキルであり、およびR
bはフェニル、フェノール、OR
d、NR
d、OR
dR
e、またはNR
dR
eになることができる。幾つかの実施形態において、R
dは低級アルキル、アルキルスルホニル、SO
2CH
3、アルキルカルボニル、CF
2、C(=O)NHR
c、CH
2C(=O)R
f、CH
2C(=O)R
fR
g、CH
2R
h、CH
2CH
2R
f、CH
2CH
2R
fR
g、CH
2CH
2R
fR
iであり、R
eはヒドロキシル、低級アルキル、アルキルスルホニル、またはNHR
cになることができる。1の実施形態において、Rfはヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルになることができ;R
gはアルキルカルボニル、アルキルスルホニル、または低級アルキルになることができ;およびR
hはアルキニルになることができる。
【0044】
以下の定義を化合物の記載に適用することができる:
【0045】
単独または組合せてのいずれかで、「アルキルオキシ」または「アルコキシ」とは、アルキルエーテル基を含む官能基をいう。アルコキシの例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。
【0046】
「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」とは、置換型および非置換型のアルキル、アルケニルおよびアルキニルをいう。
【0047】
単独または組合せてのいずれかで、「アルキル」なる語は、全く単結合のみによって連結し、環状構造を有さない、1〜20の炭素原子を含む直鎖型または分枝鎖型の炭化水素を含む官能基をいう。「低級アルキル」とは、1〜6の炭素原子を含む官能基をいう。アルキル基は、所望により、本明細書に記載するように置換されていてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルなどが含まれる。
【0048】
単独または組合せてのいずれかで、「アルケニル」なる語は、2〜20の炭素原子を含み、1またはそれを超える炭素-炭素二重結合を有し、環状構造を有さない直鎖型または分枝鎖型の炭化水素を含む官能基をいう。アルケニル基は、所望により、本明細書に記載するように置換されていてもよい。アルケニル基の例には、エテン、プロペン、2-メチルプロペン、1-ブテン、2-ブテン、ペンテン、1-ペンテン、2-ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンなどが含まれる。
【0049】
単独または組合せてのいずれかで、「アルキニル」とは、2〜20の炭素原子を含み、1またはそれを超える炭素-炭素三重結合を有し、環状構造を有さない直鎖型または分枝鎖型の炭化水素を含む官能基をいう。アルキニル基は、所望により、本明細書に記載するように置換されていてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチニル、ブチン-1-イル、ブチン-2-イル、3-メチルブチン-1-イル、ペンチニル、ペンチン-1-イル、ヘキシニル、ヘキシン-2-イル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、エイコシニルなどが含まれる。
【0050】
単独または組合せてのいずれかで、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、F、1-アミジン、2-アミジン、アルキルカルボニル、モルホリニル、ピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、SR、SOR、SO
2R、CO
2R、COR、CONR'R''、CSNR'R''、またはSO
nNR'R''を含む基からの1〜5の置換基で置換された置換型アルキル、アルケニル、およびアルキニルとは、アルキル、アルケニル、およびアルキニルをいい、ここにR'およびRは、独立して、例えば、R
4およびR
5になることができる。
【0051】
「アルキレン」とは、単独または組合せて、メチレン(-CH
2-)のような2またはそれを超える位置で結合した直鎖型または分枝鎖型の飽和炭化水素に由来する飽和脂肪族基をいう。別段示さない限り、「アルキル」なる用語には「アルキレン」基が含まれる。
【0052】
単独または組合せてのいずれかで、「アルキルカルボニル」または「アルカノイル」とは、カルボニル基を介して親分子基に結合したアルキル基を含む官能基をいう。アルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル、エチルカルボニルなどが含まれる。
【0053】
単独または組合せてのいずれかで、「アルキニレン」とは、エチニレン(-C:::C-、-C≡C-)のような、2の位置で結合した炭素-炭素三重結合をいう。別段指摘しない限り、「アルキニル」なる語には、「アルキニレン」基が含まれる。
【0054】
単独または組合せてのいずれかで、「アリール」、「ヒドロカルビルアリール」、または「アリール炭化水素」とは、3〜12の炭素原子の共役環状分子環構造を有する置換型または非置換型の芳香族炭化水素を含む官能基をいう。アリール基は、単環式、二環式、または多環式となることができ、および所望により、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、またはヘテロアリールのような1〜3のさらなる環構造を含んでいてもよい。「アリール」なる語には、フェニル (ベンゼニル)、チオフェニル、インドリル、ナフチル、トチル、キシリル、アントラセニル、フェナントリル、アズレニル、ビフェニル、ナフタレニル、1-メチルナフタレニル、アセナフテニル、アセナフチレニル、アントラセニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、ベンゾ[a]アントラセニル、ベンゾ[c]フェナントレニル、クリセニル、フルオランテニル、ピレニル、テトラセニル (ナフタセニル)、トリフェニレニル、アンタントレニル、ベンゾピレニル、ベンゾ[a]ピレニル、ベンゾ[e]フルオランテニル、ベンゾ[ghi]ペリレニル、ベンゾ[j]フルオランテニル、ベンゾ[k]フルオランテニル、コラニュレニル、コロネニル、ジコロニレニル、ヘリセニル、ヘプタセニル、ヘキサセニル、オバレニル、ペンタセニル、ピセニル、ペリレニル、およびテトラフェニレニルが含まれる。置換型アリールとは、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、SR、SOR、SO
2R、CO
2R、COR、CONRR、CSNRR、およびSOmNRR(ここに、各Rは独立して、例えば、R
4またはR
5から選択することができる)を含む基からの1〜5の置換基で置換されたアリールをいう。
【0055】
単独または組合せてのいずれかで、「カルボキシル」または「カルボキシ」とは、官能基-C(=O)OHまたは対応する「カルボキシレート」アニオンC(=O)O-をいう。例には、ギ酸、酢酸、シュウ酸および安息香酸が含まれる。「O-カルボキシル」基とは、一般式RCOOを有するカルボキシル基をいい、ここにRは有機部分または有機基である。「C-カルボキシル」基とは、一般式COORを有するカルボキシル基をいい、ここにRは有機部分または有機基である。
【0056】
単独または組合せてのいずれかで、「シクロアルキル」、「炭素環式アルキル」、および「炭素環式化合物アルキル」とは、炭素環構造中でもっぱら炭素-炭素単結合で3〜12の炭素原子の非−共役分子環構造を有する置換型または非置換型の非−芳香族炭化水素を含む官能基をいう。シクロアルキル基は、単環式、二環式、または多環式になることができ、例えば、アリール、ヘテロアリール、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルのような1〜3のさらなる環構造を含んでいてもよい。
【0057】
単独または組合せてのいずれかで、「低級シクロアルキル」とは、炭素環構造中でもっぱら炭素-炭素単結合で3〜6の炭素原子の非−共役分子環構造を有する置換型または非置換型の非−芳香族炭化水素を含む官能基をいう。低級シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれる。
【0058】
単独または組合せてのいずれかで、「ヘテロアルキル」とは、もっぱら単結合で結合した1〜20の原子を含む直鎖または分枝鎖型の炭化水素を含む官能基をいい、ここに鎖中の少なくとも1の原子は炭素であり、および鎖中の少なくとも1の原子はO、S、N、またはそれらのいずれかの組合せである。ヘテロアルキル基は完全に飽和していても、または1〜3程度の不飽和を含んでいてもよい。非-炭素原子はヘテロアルキル基のいずれの内部位置にも存在することができ、2までの非-炭素原子は例えば、-CH
2-NH-OCH
3のように連続していてもよい。また、非-炭素原子は所望により酸化されていてもよく、および窒素は所望により四級化されていてもよい。
【0059】
単独または組合せてのいずれかで、「ヘテロアリール」とは、3〜12の原子の共役環状分子環構造を有する置換型または非置換型の芳香族炭化水素を含む官能基をいい、ここに環構造中の少なくとも1の原子は炭素であり、および環構造中の少なくとも1の原子はO、S、N、またはそれらのいずれかの組合せである。ヘテロアリール基は単環式、二環式、または多環式となることができ、および所望により、例えば、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニルのような1〜3のさらなる環構造を含んでいてもよい。ヘテロアリール基の例には、アクリジニル、ベンズインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ベンゾジオキソリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾフリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾ[c]チオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、カルバゾリル、クロモニル、シンノリニル、ジヒドロシンノリニル、クマリニル、ジベンゾフラニル、フロピリジニル、フリル、インドリジニル、インドリル、ジヒドロインドリル、イミダゾリル、インダゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、イソインドリニル、ジヒドロイソインドリル、イソキノリル、ジヒドロイソキノリニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、フェナントロリニル、フェナントリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリニル、ピロリル、ピロロピリジニル、キノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チオフェニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエノピリジニル、チエニル、チオフェニル、トリアゾリル、キサンテニルなどが含まれる。
【0060】
単独または組合せてのいずれかで、「ヒドロキシ」とは官能基ヒドロキシル(-OH)をいう。
【0061】
単独または組合せてのいずれかで、「オキソ」とは官能基=Oをいう。
【0062】
「官能基」とは、異なる化合物に生じる場合であっても同様の化学特性を有する原子または原子の基をいい、かかる官能基は有機化合物のファミリーの特徴的な物理学的および化学的特性を決める。
【0063】
別段指摘しない限り、いずれかの化合物または、例えば、アルキル、アリールなどのような化学的構造特徴が「所望により置換されていたもよい」という場合は、化合物は置換基を有していなくてもよく(その場合は「非置換型」)、あるいはそれが1またはそれを超える置換基を含むこともできる(その場合は「置換型」)。「置換基」なる語は、当業者に知られている通常の意味を有する。幾つかの実施形態において、置換基は当該技術分野で知られている通常の有機基とすることができ、それは15 g/mol〜50 g/mol、15 g/mol〜100 g/mol、15 g/mol〜150 g/mol、15 g/mol〜200 g/mol、15 g/mol〜300 g/mol、または15 g/mol〜500 g/molの分子量(例えば、置換基の原子の原子質量の合計)を有することができる。幾つかの実施形態において、置換基には:0〜30、0〜20、0〜10、または0〜5のC原子;および/またはN、O、S、Si、F、Cl、Br、またはIを含む0〜30、0〜20、0〜10、または0〜5のヘテロ原子が含まれるが;但し、置換基には、置換型化合物中のC、N、O、S、Si、F、Cl、Br、またはIを含む少なくとも1の原子が含まれる。置換基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アルキルカルボキシレート、チオール、アルキルチオ、シアノ、ハロ、チオカルボニル、O-カルバミル、N カルバミル、O チオカルバミル、N チオカルバミル、Cアミド、Nアミド、S-スルホンアミド、N スルホンアミド、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシル、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、アミノなどが含まれる。
【0064】
簡便のため、化合物の部分または一部について「分子量」なる用語を用いて、完全な化合物になり得ない場合であっても、化合物の部分または一部中の原子の原子質量の合計を示す。
【0065】
本明細書に記載する化合物の具体的な実施形態は、表1に示す構造を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0066】
立体化学が明確に示されない限り、化合物の構造、式または名称はいずれも、その化合物の任意の立体異性体または立体異性体の任意の混合物を意味するものであってよい。
【0067】
化合物は、多形、溶媒和物、水和物などの別の固体形態;互変異性体;または本明細書に記載の通りに使用される条件下で本明細書に記載の化合物に迅速に変換し得る他の任意の化学種として提供することもできる。また、化合物は、その化合物の薬学的に許容可能な塩も含む。
【0068】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、およびアレルギー反応なしに対象の組織との接触下の使用に適し、また、合理的利益/リスク比に見合っている医薬塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。一実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、硫酸塩である。例えば、S. M. Bergeらは、J. Pharm. Sci.,1977,66:1-19中で薬学的に許容可能な塩について記載している。
【0069】
適切な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製することができる。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族酸、脂環式酸、芳香族酸、アリール脂肪族酸、ヘテロ環式酸、カルボン酸およびスルホン酸の部類の有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β−ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクティック酸、およびガラクツロン酸から選択することができる。また、薬学的に許容可能な酸性/アニオン性塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩及びトリエチオジド塩が挙げられる。
【0070】
適切な薬学的に許容可能な塩基付加塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から調製される金属塩、またはN,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン、アルギニンおよびプロカインから調製される有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。これらの塩はすべて、開示化合物として示される対応する化合物から従来の手段、例えば、開示化合物を適切な酸または塩基で処理することにより調製することができる。同様に、薬学的に許容可能な塩基性/カチオン性塩には、ジエタノールアミン、アンモニウム、エタノールアミン、ピペラジンおよびトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0071】
薬学的に許容可能な塩には、親化合物の活性を保持し、医薬品としての使用に許容可能な任意の塩が含まれる。また、薬学的に許容可能な塩は、酸、別の塩、または酸または塩に変換されるプロドラッグの投与の結果として、インビボで形成することができる任意の塩も意味する。
【0072】
本明細書で開示の化合物は、プロドラッグも含む。プロドラッグには、投与後に、例えば、エステル基または何らかのその他の生物学的に不安定な基の加水分解により、治療的に活性な化合物に変換される化合物が含まれる。
【0073】
II.医薬組成物
他の実施形態では、本開示は、本明細書で記載のいずれか1種の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0074】
医薬組成物は、本明細書で開示の化合物、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくはその塩と、薬物送達の既知の方法に従った対象への送達に適する薬学的に許容可能なキャリアとを組み合わせることにより形成することができる。したがって、「医薬組成物」は、本明細書で開示の少なくとも1種の化合物を、選択された投与様式の必要に応じて、1種または複数種の薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または希釈剤と一緒に含む。
【0075】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、処置される具体的な徴候に応じて種々の剤形に処方することができ、当業者には明らかであろう。1種または複数種の本開示の化合物を含む医薬組成物の処方には、直接的な医薬品化学プロセスを採用することができる。医薬組成物は、滅菌などの従来の製薬操作を行うことができ、および/または従来の補助剤、例えば、緩衝剤、防腐剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤などを含めることができる。
【0076】
緩衝剤は、pHを生理的条件に近い範囲に維持するのに役立つ。緩衝剤は通常、医薬組成物の2mM〜50mMの範囲の濃度で存在する。適切な緩衝剤は、有機、無機両方の酸およびその塩、例えば、クエン酸緩衝剤(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝剤(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝剤(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝剤(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝剤(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸緩衝剤(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝剤(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)および酢酸緩衝剤(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)などを含む。さらに、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、およびトリスなどのトリメチルアミン塩が適する可能性がある。
【0077】
微生物の増殖を遅らせるために防腐剤を添加することができ、通常、0.2%〜1%(w/v)の量で添加する。適する防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウムまたはヨウ化ベンザルコニウム)、塩化ヘキサメトニウム、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3−ペンタノールが挙げられる。
【0078】
医薬組成物に等張化剤を加えて、等張性を確保することができる。適切な等張化剤には、多価糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどが含まれる。多価アルコールは、他の成分の相対量を考慮に入れて、0.1重量%〜25重量%、通常は1重量%〜5重量%の量で存在してよい。
【0079】
安定剤は、機能上、増量剤から化合物を可溶化するまたは変性もしくは容器壁への付着を防ぐのに役立つ添加剤にまで及ぶ場合がある、広範な種類の賦形剤を意味する。典型的な安定剤は、多価糖アルコール、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸;イノシトールなどのシクリトールを含む、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールなどの有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、アルファ−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムなどの含硫還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち、10残基未満);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;キシロース、マンノース、果糖およびブドウ糖などの単糖類;ラクトース、マルトースおよびショ糖などの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;ならびにデキストランなどの多糖類であってよい。安定剤は通常、化合物の重量を基準として0.1〜10,000重量部の範囲で存在する。
【0080】
他の種々の賦形剤には、キレート化剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、およびビタミンE)および共溶媒を含めることができる。
【0081】
特定の実施形態では、エタノール(10%未満)、プロピレングリコール(40%未満)、ポリエチレングリコール(PEG)300または400(60%未満)、N−N−ジメチルアセトアミド(DMA、30%未満)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、20%未満)および/またはジメチルスルホキシド(DMSO、20%未満)の共溶媒あるいはシクロデキストリン(40%未満)の内の1種または複数種を含めることができ、また、3〜9のpHとすることができる。
【0082】
通常、医薬組成物は固形(粒剤、散剤、または坐剤を含む)または液体形態(例えば、溶液、懸濁剤、または乳剤)で作成することができる。化合物は通常の投与用として、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリジンおよび/またはポリビニルアルコールなどの補助剤と混合して錠剤化またはカプセル化することができる。あるいは、化合物を生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、油(例えばトウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油またはゴマ油など)、トラガントガムおよび/または各種緩衝液に溶解させてもよい。その他の補助剤および投与様式は医薬分野で周知である。キャリアまたは希釈剤には、単独の、もしくはロウを含むモノステアリン酸グリセリンもしくはジステアリン酸グリセリル、または当該技術分野で周知のその他の物質などの時間遅延物質を含めてもよい。
【0083】
医薬組成物の経口投与は、本開示が意図する1つの実施方法である。経口投与用としては、医薬組成物は固体または液体の形態、例えば、カプセル、錠剤、散剤、粒剤、懸濁剤、乳剤または溶液の形態であってよい。
【0084】
経口投与用の固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸薬、散剤、および粒剤を含めることができる。このような固形剤形では、化合物は少なくとも1種の不活性希釈剤、例えば、ショ糖、ラクトースまたはデンプンなどと混合することができる。このような剤形にはまた、通常の実施方法と同じく、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含めることができる。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、剤形には、緩衝剤を含めてもよい。錠剤および丸薬はさらに、腸溶性コーティングを用いて調製することができる。口腔投与のためには、医薬組成物は、既存の様式で処方される錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0085】
経口投与用の液体剤形には、当該技術分野において一般的に使用される、水などの不活性希釈剤を含む薬学的に許容可能な乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含めることができる。このような医薬組成物には、補助剤、例えば、湿潤剤、甘味料、香味料、および芳香剤を含めてもよい。
【0086】
医薬組成物は、注射、例えば、ボーラス注入、または点滴による非経口投与用に処方することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、ガラスアンプルに入れて、または複数回投与用容器、例えば、ガラスバイアルに入れて提供することができる。注射用の医薬組成物は、油中のまたは水性のビヒクル中の懸濁剤、溶液、または乳剤などの形態をとることができ、抗酸化剤、緩衝剤、非イオン性洗剤、分散剤(dispersant)、等張化剤、懸濁化剤、安定剤、防腐剤、分散剤(dispersing agent)、および/またはその他の種々添加剤などの製剤化剤を含めてもよい。インビボ投与に使用する非経口製剤は一般に無菌である。無菌化は、例えば、無菌濾過膜で濾過することによって、容易に達成される。
【0087】
液体形態で提供される医薬組成物は、多くの場合、即時使用するのに適しているが、このような非経口製剤は、凍結または凍結乾燥形態でも提供することができる。前者の場合、使用前に医薬組成物を解凍しなければならない。凍結乾燥調製物は一般に、その液体調製物よりも安定性が高いことが当業者によって認識されていることから、後者の形態は多くの場合、様々な保管条件下で医薬組成物中に含まれる化合物の安定性を増強するために用いられる。非経口剤は、必要に応じて、所望の純度を有する化合物と、当該技術分野で通常用いられる1種または複数種の薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(これらはすべて「賦形剤」と呼ばれる)、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、非イオン性洗剤、分散剤(dispersant)、等張化剤、懸濁化剤、安定剤、防腐剤、分散剤(dispersing agent)および/またはその他の種々の添加剤とを混合することにより、凍結乾燥製剤として貯蔵用に調製することができる。このような凍結乾燥調製物は、発熱性物質非含有無菌注射用水または無菌生理的食塩水などの適切な薬学的に許容可能な希釈剤を1種または複数種添加することによって、使用前に再構成される。
【0088】
吸入(例えば、鼻または肺の)による投与用としては、医薬組成物は、好都合には、加圧パックまたは噴霧器から、および/または適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切なガスまたはガスの混合物を使用して、エアロゾルスプレーの形態で送達することができる。
【0089】
上記の製剤に加えて、医薬組成物はデポー調製物としても処方することができる。このような長時間作用型製剤は、埋め込みまたは筋肉注射によって投与可能である。
【0090】
また、化合物は、例えば、コアセルベーション(coascervation)法もしくは界面重合によって調製したマイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチンまたはポリ−(メチルメタクリル酸(methylmethacylate))マイクロカプセル)に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)に、またはマクロエマルションに封入することができる。このような技術は、Lippincott Williams & Wilkins,A Wolters Kluwer Companyにより2005年に出版されたRemington,The Science and Practice of Pharmacy、第21版に開示されている。
【0091】
追加の適切な徐放性調製物の例としては、フィルムまたはマイクロカプセルなどの適切な形態を有し、化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、PROLEASE(登録商標)技術(Alkermes,Inc.,Cambridge,MA)またはLUPRON DEPOT(登録商標)(Tap Pharmaceuticals Products,Inc.; Lake Forest,IL;乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドとからなる注射可能マイクロスフィア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマーおよびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日間までまたはこれを超える長期間にわたる分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルは化合物の放出期間がこれよりも短い。
【0092】
III.使用方法
本明細書で開示の医薬組成物を使用して、次に挙げる科の内の1種のウイルスにより引き起こされる対象のウイルス感染を処置することができる:アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、コロナウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス、ヘルペスウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、メソニウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコビルナウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ロニウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科、およびティモウイルス科。
【0093】
より具体的な実施形態では、医薬組成物を使用して、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス(DNV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、HCV、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、HIV、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERSコロナウイルス(MERS)、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ロシオウイルス、SARS−コロナウイルス(SARS)、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスの内の1種または複数種により引き起こされるウイルス感染を処置することができる。
【0094】
多くのRNAウイルスが生化学経路、調節経路およびシグナル伝達経路を共有する。これらのウイルスとしては、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、DNV、RSV、WNV、HCV、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、チクングニアウイルス、SARS、MERS、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、黄熱病ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレーウイルス、ポワッサンウイルス、ロシオウイルス、跳躍病ウイルス、バンジウイルス、イルヘウスウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、アルファイウイルス、ウシ下痢ウイルス、およびキャサヌール森林病ウイルスが挙げられる。
【0095】
本明細書で開示される方法は、対象(ヒト、哺乳動物、放し飼いの群れ、獣医学的動物(イヌ、ネコ、爬虫類、トリなど)、家畜(farm animal)および家畜(livestock)(ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリなど)および研究動物(サル、ラット、マウス、魚など))を本明細書で開示の医薬組成物で処置することを含む。対象の処置は、治療有効量を送達することを含む。治療有効量は、効果のある量、予防的処置、および/または治療処置を提供する量を含む。
【0096】
「有効量」は、対象に所望の生理的な変化をもたらすのに必要な化合物の量である。有効量は、研究目的のために投与されることも多い。本明細書で開示の有効量は、ウイルス感染の存在または活性を減少させる、抑制する、または解消する、および/またはウイルス感染の望ましくない副作用を減少させる、抑制する、または解消する。例えば、有効量は、対象またはアッセイ中のウイルスタンパク質の減少、対象またはアッセイ中のウイルスRNAの減少、および/または細胞培養液中に存在するウイルスの減少をもたらすことができる。
【0097】
「予防的処置」は、ウイルス感染の徴候または症状を呈さない対象またはウイルス感染の初期徴候または症状のみを呈する対象に、ウイルス感染をさらに進展させる危険性を漸減させる、防止する、または減少させる目的で治療薬を投与するように、対象に投与される処置を含む。したがって、予防的処置は、ウイルス感染に対する予防処置として機能する。また、予防的処置には、本明細書の別のところで記載のように、ワクチン剤を含めてもよい。予防的処置により、対象中のウイルスタンパク質またはRNAの増加が生じない、および/またはウイルス感染の臨床的指標の増加が生じない。例えば、HCVの場合は、食欲不振、疲労、発熱、筋痛、悪心、および/または腹痛;WNVの場合は、発熱および/または頭痛;およびRSVの場合は、咳、鬱血、発熱、咽頭炎、および/または頭痛が悪化しない結果を得ることができる。予防的処置は、ウイルス感染の徴候が存在するかどうかに関わらず、任意の対象に行うことができる。いくつかの実施形態では、予防的処置は、旅行する前に行うことができる。
【0098】
「治療処置」は、ウイルス感染の症状または徴候を呈する対象に行う処置を含み、ウイルス感染の徴候または症状を漸減させるまたは取り除くために対象に対して行われる。治療処置により、ウイルスの存在または活性を減少させる、抑制する、または解消する、および/またはウイルスの副作用を減少させる、抑制する、または解消することができる。治療処置により、対象中のウイルスタンパク質またはRNAを減少させる、および/またはウイルス感染の臨床的指標を減少させる、例えば、HCVの場合は、食欲不振、疲労、発熱、筋痛、悪心、および/または腹痛;WNVの場合は、発熱および/または頭痛;およびRSVの場合は、咳、鬱血、発熱、チアノーゼ、咽頭炎、および/または頭痛を減少させる結果を得ることができる。
【0099】
投与に関しては、治療有効量(本明細書では、用量とも呼ばれる)は、最初はインビトロアッセイ、および/または動物モデル調査の結果に基づいて推定することができる。例えば、用量は、動物モデル中で、特定の標的に対して細胞培養で測定したIC50を含む循環濃度範囲に達するように処方することができる。このような情報を使用して、目的の対象における有用な用量をより正確に決定することができる。
【0100】
特定の対象に投与される実際の用量は、標的、体重、状態の重症度、ウイルス感染の型、以前のまたは同時に行う治療的介入、対象の特発性疾患、および投与経路を含む物理的および生理的な因子などのパラメータを考慮して医師、獣医師、または研究者により決定することができる。
【0101】
医薬組成物は、ウイルス感染の処置のために、1回または複数回の別々の組成物の投与を含む臨床的に安全で効果的な様式で対象の静脈内に投与することができる。例えば、1日当たり0.05mg/kg〜5.0mg/kgを1回または複数回の投与回数で対象に投与することができる(例えば、0.05mg/kgを毎日1回(QD)、0.10mg/kgをQD、0.50mg/kgをQD、1.0mg/kgをQD、1.5mg/kgをQD、2.0mg/kgをQD、2.5mg/kgをQD、3.0mg/kgをQD、0.75mg/kgを毎日2回(BID)、1.5mg/kgをBIDまたは2.0mg/kgをBIDの投与)。特定の抗ウイルス徴候に対し、化合物の合計1日投与量は、60分QD、BID、または1日3回(TID)静脈内注入投与により、表1の化合物の0.05〜3.0、0.1〜3.0、0.5〜3.0、1.0〜3.0、1.5〜3.0、2.0〜3.0、2.5〜3.0、および0.5〜3.0mg/kg/日の合計1日用量の投与を含む、1日1回〜3回対象に静脈内に投与する0.05mg/kg〜3.0mg/kgであってよい。1つの具体例では、抗ウイルス医薬組成物は、92〜98%wt/wtまでの表1の化合物を含む組成物を1.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kgの合計1日用量で対象の静脈内にQDまたはBID投与することができる。
【0102】
追加の有用な用量は、多くの場合、0.1〜5μg/kgまたは0.5〜1μg/kgの範囲であってよい。その他の例では、用量には、1μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、95μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、0.1〜5mg/kg、または0.5〜1mg/kgを含めることができる。その他の例では、投与量には、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、またはそれ以上を含めてもよい。
【0103】
治療有効量は、処置計画の間に単一または複数の用量を(例えば、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週、2週毎、3週毎、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、4ヵ月毎、5ヵ月毎、6ヵ月毎、7ヵ月毎、8ヵ月毎、9ヵ月毎、10ヵ月毎、11ヵ月毎、または毎年)投与することにより達成することができる。
【0104】
本開示の医薬組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、大脳内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、髄腔内、経膣、直腸内、眼内または他の任意の許容可能な様式を含む様々な方法で実施することができる。医薬組成物の連続投与は、ボーラス注入でも許容可能であるが、ポンプ(例えば、皮下浸透圧ポンプ)または埋め込みなどの当該技術分野で周知の技術を使用して、注入によって実施してもよい。いくつかの事例では、医薬組成物を溶液またはスプレーとして直接塗布することができる。
【0105】
本明細書で開示の医薬組成物は、現在開発中または使用中の他の治療法に対して加算的または相乗的であることができる。例えば、リバビリンとインターフェロン−αを併用すると、HCV感染症の効果的な処置が可能となる。それらの併用時の有効性を、一方の薬物製品を単独で使用した場合の有効性より高めることができる。本開示の医薬組成物は、単独で、あるいはインターフェロン、リバビリンおよび/またはウイルス標的(ウイルスプロテアーゼ、ウイルスポリメラーゼ、および/またはウイルス複製複合体の集合体)と宿主標的(ウイルスのプロセシングに必要な宿主プロテアーゼ、NS5Aなどのウイルス標的のリン酸化に必要な宿主キナーゼ、およびウイルスの配列内リボソーム進入部位、すなわちIRESを効率的に利用するのに必要な宿主因子の阻害物質)の両方に対して開発中の様々な小分子と組み合わせて、またはこれらと共に投与することができる。
【0106】
本明細書で開示される医薬組成物は、アダマンタン阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、αインターフェロン、非ヌクレオシドまたはヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、抗ヒスタミン剤、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、P7阻害剤、進入阻害剤、IRES阻害剤、免疫促進剤、HCV複製阻害剤、シクロフィリンA阻害剤、A3アデノシンアゴニストおよび/またはマイクロRNA抑制剤と組み合わせて、またはこれらと共に使用することが可能であろう。
【0107】
本明細書で開示の医薬組成物と組み合わせて、またはこれらと共に使用することが可能なサイトカインとしては、インターロイキン(IL)−2、IL−12、IL−23、IL−27、またはIFN−γが挙げられる。
【0108】
本明細書で開示の医薬組成物と組み合わせて、またはこれらと共に投与するのに用いることができる、または用いることができるようになると思われる新たなHCV薬としては、ACH-1625(Achillion);グリコシル化インターフェロン(Alios Biopharma);ANA598、ANA773(Anadys Pharm);ATI−0810(Arisyn Therapeutics);AVL−181(Avila Therapeutics);LOCTERON(登録商標)(Biolex);CTS−1027(Conatus);SD−101(Dynavax Technologies);クレミゾール(Eiger Biopharmaceuticals);GS−9190(Gilead Sciences);GI−5005(GlobalImmune BioPharma);レシキモド/R−848(Graceway Pharmaceuticals);アルブインターフェロンアルファ−2b(Human Genome Sciences);IDX−184、IDX−320、IDX−375(Idenix);IMO−2125(Idera Pharmaceuticals);INX−189(Inhibitex);ITCA−638(Intarcia Therapeutics);ITMN−191/RG7227(Intermune);ITX−5061、ITX−4520(iTherx Pharmaceuticals);MB11362(Metabasis Therapeutics);バビツキシマブ(Peregrine Pharmaceuticals);PSI−7977、RG7128、PSI−938(Pharmasset);PHX1766(Phenomix);ニタゾキサニド/ALINIA(登録商標)(Romark Laboratories);SP−30(Samaritan Pharmaceuticals);SCV−07(SciClone);SCY−635(Scynexis);TT−033(Tacere Therapeutics);ビラミジン/タリバビリン(Valeant Pharmaceuticals);テラプレビル、VCH−759、VCH−916、VCH−222、VX−500、VX−813(Vertex Pharmaceuticals);およびPEG−INFラムダ(Zymogenetics)が挙げられる。
【0109】
本明細書で開示の医薬組成物と組み合わせて、またはこれらと共に投与するのに用いることができる、または用いることができるようになると思われる新たなインフルエンザ薬およびWNV薬としては、ノイラミニダーゼ阻害剤(ペラミビル、ラニナミビル);ノイラミニダーゼ阻害剤、リバビリン、およびアマンタジン(ADS-8902)の3剤療法;ポリメラーゼ阻害剤(ファビピラビル);逆転写酵素阻害剤(ANX-201);吸入キトサン(ANX-211);進入/結合阻害剤(Binding Site Mimetic,Flucide);進入阻害剤、(Fludase);融合阻害剤(WNVに対するMGAWN1);宿主細胞阻害剤(lantibiotics);RNAゲノム切断(RNAi、RNアーゼL);免疫促進剤(インターフェロン、Alferon-LDO;ニューロキニン1アゴニスト、Homspera、WNVに対するインターフェロンAlferon N);およびTG21が挙げられる。
【0110】
医薬組成物と組み合わせて、またはこれらと共に投与するのに用いることができるインフルエンザおよび/または肝炎の他の処置用薬剤には、表2に示すものが含まれる。
【表2】
【0111】
ワクチン開発を可能にするために、化合物または医薬組成物は、他の化合物または医薬組成物と加算的または相乗的であることができる。抗ウイルス性および免疫増強性を有するために、化合物を用いて予防的または治療的ワクチン接種に影響を及ぼすことができる。化合物は、効果を得るのに他のワクチン成分と同時にまたはこれと組み合わせて投与する必要はない。化合物のワクチン適用は、ウイルス感染の処置に限定されず、化合物によって誘発される免疫応答の一般的性質により、あらゆる治療的および予防的ワクチン適用を包含することができる。
【0112】
「ワクチン」は、個体の免疫応答を誘導するために使われる免疫原性調製物である。ワクチンは2種以上の免疫原性成分を有することができる。ワクチンは予防のおよび/または治療の目的に使用することができる。ワクチンは必ずしもウイルス感染を防ぐ必要はない。理論に束縛されるものではいが、本開示のワクチンは、ワクチンが本明細書で記載のように投与される場合に、ウイルス感染がより少ない量で起こる(全く感染しない場合を含む)ように、またはウイルス感染の生物学的または生理的な影響が改善されるように、個体の免疫応答に影響を与えることができる。本明細書で使用する場合、ワクチンは、脊椎動物を含む対象のウイルス感染を処置するために、単独でまたは抗原と組み合わせて化合物を含有する医薬組成物を含む調製物を含む。
【0113】
本開示は、アジュバントとしての化合物および医薬組成物の使用を提供する。アジュバントは、別の投与される治療薬の有益な効果を、増強し、強力にし、および/または加速する。特定の実施形態では、「アジュバント」という用語は、免疫系に対するその他の薬剤の効果を変える化合物を意味する。また、この機能を有するアジュバントは、無機または有機化学薬品、巨大分子、または特定の死菌の全細胞であってよく、これらは抗原に対する免疫応答を増強する。アジュバントをワクチン中に組み込んで、供給された抗原に対するレシピエントの免疫応答を増強してもよい。
【0114】
当業者に理解されているように、ワクチンはウイルス、細菌感染、癌などに対するものであってよく、弱毒生ワクチン(LAIV)、不活化ワクチン(IIV;死滅ウイルスワクチン)、サブユニット(スプリットワクチン);サブビリオンワクチン;精製タンパク質ワクチン;またはDNAワクチンのうちの1種または複数種を含むことができる。適切なアジュバントとしては、水/油エマルション、非イオン性コポリマーアジュバント、例えば、CRL 1005(Optivax; Vaxcel Inc.,Norcross,Ga.)、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの水性懸濁液、細菌内毒素、ポリヌクレオチド、高分子電解質、親油性アジュバント、およびN−アセチル−ノル−ムラミル(muranyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチル−ムラミル−(6−O−ステアロイル)−L−アラニル−D−イソグルタミン、またはN−グリコール−ムラミル−LalphaAbu−D−イソグルタミン(Ciba-Geigy Ltd.)などの合成ムラミルジペプチド(ノルMDP)類似体の1種または複数種が挙げられる。
【0115】
本発明は、さらに、ウイルス感染症に対する療法およびワクチンを開発すること、真核生物における生来の免疫応答の調節の研究などを含む数多くの適用におけるイン・ビトロ(in vitro)の化合物および医薬組成物の使用および応用を含む。化合物および医薬組成物の開示は、動物モデルにおいても使用することができる。化合物および医薬組成物のかかるイン・ビトロ(in vitro)および動物のイン・ビボ(in vivo)の使用の結果は、例えば、それらのヒトにおけるイン・ビボ(in vivo)使用の情報を与え、またはそれらはヒトの療法または予防の使用から貴重な独立とすることができる。
例示的な実施形態
1.下記の構造を有する化合物:
【化10】
式中、
W
1はCH、CH
2、N、またはNHであり;
W
2はBr、Cl、F、フェニル、CF
3、低級アルキル、C(CH
3)
3、ヘテロアリール、シクロアルキル、OW
a、OCH
2W
a、OCH
2W
b、またはNHSO
2W
b、NW
cSO
2W
cであり;
W
aはBr、アリール、CF
3、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、CHF
2、C(CH
3)
3、またはNHSO
2W
bであり;
W
bはフェニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、または低級アルキルであり;
W
cは低級アルキルであり;
R
aはH、低級アルキルまたはOR
cであり、ここにR
cはHまたは低級アルキルであり;
R
bはフェニル、フェノール、OR
d、NR
d、OR
dR
e、またはNR
dR
eであり、
R
dは低級アルキル、アルキルスルホニル、SO
2CH
3、アルキルカルボニル、CF
2、C(=O)NHR
c、CH
2C(=O)R
f、CH
2C(=O)R
fR
g、CH
2R
h、CH
2CH
2R
f、CH
2CH
2R
fR
g、CH
2CH
2R
fR
iであり、
R
eはヒドロキシル、低級アルキル、アルキルスルホニル、またはNHR
cであり;
R
fはヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルであり、
R
gはアルキルカルボニル、アルキルスルホニル、または低級アルキルであり、
R
hはアルキニルであり、および
破線は二重結合の存在または不存在を表す。
2. W
1がNであり、W
2が低級アルキルであり、およびRbがORiであり、ここにRiがアルキルカルボニルである、実施形態1の化合物。
3. W
2がBr、CF
3、OCF
3、またはC(CH
3)
3であり、およびRbがORjであり、ここにRjがスルホニルである、実施形態1の化合物。
4. W
2がC(CH
3)
3であり、およびRbがNCH
3Rjであり、ここにRjがスルホニルである、実施形態1の化合物。
5. 以下の構造を有する化合物:
【化11】
式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、CH
2CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5、またはSOmNR
4R
5から選択され;
R
3は、H、R
1、アルキルスルホニル、NR
4SO
2R
5、SOmNR
4R
5、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、アリールスルホニル、または複素環式アルキルアルキルであり;
R
4およびR
5は、各々独立して、H、低級アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、N-アルキルピペリジニル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、またはイソキノリンから選択され;
AおよびA'は、各々独立して、O、S、またはNR'から選択され、ここにR'はH、低級アルキルまたはR
3であり、あるいはR'およびR
3またはR'およびWは一緒になって、非置換型または置換型の複素環またはヘテロアリール環を形成することができ;
Wは、アリール、置換型アリール、ヘテロアリール、置換型ヘテロアリール、アルキル、置換型アルキル、シクロアルキル、置換型シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換型ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換型ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、またはヘテロアリール アルキルであり;
Z
1、Z
2、およびZ
3は、各々独立して、C、O、NH、S、C=O、S=OまたはSO
2から選択され;
Y
1、Y
2、Y
3、およびY
4は、各々独立して、CまたはNから選択されるが、但し、Y
4がNである場合、R
3-(A)sは存在せず;
破線は二重結合の存在または不存在を表し;
mは1または2であり;
nは0、1、2または3であり;
oは0、1、2、または3であり;
sは0または1であり;および
rは0または1である。
6. 化合物が構造:
【化12】
を有する実施形態5の化合物。
7. Y
4がNである、実施形態5の化合物。
8. Wが以下のものから選択される構造を有する、実施形態5の化合物:
【化13】
式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6の各々は、独立して、C、O、NH、NR
6、S、C=O、S=O、またはSO
2から選択され;
各R
6は、独立して、H、低級アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアルキルアリール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、NH
2、OH、CN、NO
2、OCF
3、CF
3、Br、Cl、F、1-アミジノ、2-アミジノ、アルキルカルボニル、モルホリノ、ピペリジル、ジオキサニル、ピラニル、ヘテロアリール、フラニル、チオフェニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、N-アルキル ピペラジニル、キノリン、イソキノリン、SR
4、SOR
4、SO
2R
4、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、NR
4SO
2R
5、CSNR
4R
5、またはSOmNR
4R
5、あるいは2の近接するR
6基は一緒になって、縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成することができ;
各R
8は、独立して、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキルアリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、環状ヘテロアルキル、アシル、CF
3、アルキルカルボニル、テトラゾロ、チアゾール、イソチアゾロ、イミダゾロ、チアジアゾール、チアジアゾール S-オキシド、チアジアゾール S,S-ジオキシド、ピラゾロ、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジニル、ピリミジニル、キノリン、イソキノリン、CO
2R
4、COR
4、CONR
4R
5、SO
2CH
3から選択され、あるいは2の近接するR
8基は一緒になって、縮合した5-または6-員のシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、メチレン ジオキソ環、エチレン ジオキソ環、アリール環またはヘテロアリール環を形成することができ;
pおよびtは、各々独立して、0、1、2、3、4、または5であるが、但しp + t≦5であり;および
qは1、2、3、または4である。
9. R
6がH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、Cl、Br、CF
3、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7が低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである、実施形態8の化合物。
10. R
7がN-ピペリジル、N-モルホリノ、N-アルキル-N-ピペラジニル、またはフェニルである、実施形態9の化合物。
11. rが0であり、およびWが1-ナフチル、シクロペンチル、2-チアゾリル、2-ピラジニル、2-ベンゾオキサゾリル、または4-R
6-1-フェニルであり、およびR
6がtert-ブチル、Br、OCF
3、または-NHSO
2R
7であり、ここにR
7がN-ピペリジルまたはフェニルであるか;あるいはrが1であり、およびWがフェニルである、実施形態8の化合物。
12. rが0であり、およびWが4-(OR
8)-1-フェニルであり、および(OR
8)がトリフルオロメトキシ、ブタニルオキシ、シクロプロピルメトキシ、ジメチルプロポキシ、トリフルオロエトキシ、ジフルオロメトキシ、オキサニルメトキシ、オキサニルメトキシ、またはジメチルブトキシである、実施形態8の化合物。
13. sが1であり、AがOまたはNR'であり、ここにR'がHまたは低級アルキルであり、およびR
3がH、3-プロピニル、SO
2CH
3、CF
2H、CF
3、CONHCH
3、またはCH
2CONR
4R
5であり;ここにR
4およびR
5が一緒になって、モルホリノ環、N-アセチル ピペラジニル環、N-メタンスルホニル ピペラジニル環、またはN-メチルピペラジニル環を形成し;あるいはsが0であり、およびR
3がSO
2CH
3、COR
4、CONR
4R
5、N-イミダゾリニル、またはN-マレイミドである、実施形態5の化合物。
14. 化合物が:
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
から選択される構造を有する、実施形態5の化合物。
15. 実施形態1〜14のいずれか1の化合物を含む医薬組成物。
16. 治療に使用するための、実施形態15の医薬組成物。
17. 化合物が実施形態14に示す構造を有する、実施形態16に記載する使用のための医薬組成物。
18. 予防用または治療用ワクチンのアジュバントとして投与する、実施形態16または17に記載する使用のための医薬組成物。
19. 使用が、さらに、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、DNV、EMCV)、HBV、HCV、hCMV、HIV)、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERS、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、RSV、ロシオウイルス、SARS、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスに対するワクチンを投与することによって対象をワクチンをワクチン接種することを含む、実施形態18に記載する使用のための医薬組成物。
20. 対象におけるウイルス感染症を治療することに使用するための、実施形態15の医薬組成物。
21. ウイルス感染症が、以下:アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、コロナウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス、ヘルペスウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、メソニウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコビルナウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ロニウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科、およびティモウイルス科の1またはそれを超える科のウイルスによって引き起こされる、実施形態20に記載の使用のための医薬組成物。
22. ウイルス感染症が、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス(DNV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERSコロナウイルス(MERS)、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ロシオウイルス、SARS−コロナウイルス(SARS)、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスである、実施形態17または18に記載の使用のための医薬組成物。
23. ウイルス感染症がHCVによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
24. ウイルス感染症がEMCVによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
25. ウイルス感染症がRSVによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
26. ウイルス感染症がインフルエンザウイルスによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
27. ウイルス感染症がDNVによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
28. ウイルス感染症がhCMVによって引き起こされる、実施形態20〜22のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
29. 該医薬組成物を予防または治療ワクチンのアジュバントとして投与する、実施形態20に記載の使用のための医薬組成物。
30. さらに、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、DNV、HBV、HCV、hCMV、HIV、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERS、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、RSV、ロシオウイルス、SARS、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスに対するワクチンを投与することによって対象をワクチン接種することを含む、実施形態29に記載の使用のための医薬組成物。
31. 化合物が実施形態14に示す構造を有する、実施形態20〜30のいずれか1に記載の使用のための医薬組成物。
32. 治療有効量の実施形態15の医薬組成物を対象に投与し、それによって対象におけるウイルス感染症を治療することを含む、対象におけるウイルス感染症を治療する方法。
33. ウイルス感染症が、アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、コロナウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス、ヘルペスウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、メソニウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコビルナウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ロニウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科、およびティモウイルス科の1またはそれを超える科のウイルスによって引き起こされる、実施形態32の方法。
34. ウイルス感染症がインフルエンザウイルス、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、DNV、EMCV、HBV、HCV、hCMV、HIV、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERS、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、RSV、ロシオウイルス、SARS、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスの1またはそれを超えるものによって引き起こされる、実施形態32または33の方法。
35. ウイルス感染症がHCVによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
36. ウイルス感染症がEMCVによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
37. ウイルス感染症がRSVによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
38. ウイルス感染症がインフルエンザウイルスによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
39. ウイルス感染症がDNVによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
40. ウイルス感染症がhCMVによって引き起こされる、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
41. 医薬組成物を予防用または治療用ワクチンのアジュバントとして投与する、実施形態32〜34のいずれか1の方法。
42. さらに、アルファイウイルス、バンジウイルス、ウシ下痢ウイルス、チクングニアウイルス、DNV、HBV、HCV、hCMV、HIV、イルヘウスウイルス、インフルエンザウイルス(トリ分離株およびブタ分離株を含む)、日本脳炎ウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病ウイルス、麻疹ウイルス、MERS、メタニューモウイルス、いずれかのモザイクウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポワッサンウイルス、RSV、ロシオウイルス、SARS、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、WNV、および黄熱病ウイルスに対するワクチンを投与することによって対象をワクチン接種することを含む、実施形態41の方法。
43. 化合物が実施形態14に示す構造を有する、実施形態32〜42のいずれか1の方法。
44. 真核生物における生来の免疫応答を調節するのに使用するための実施形態1〜14のいずれか1に記載の化合物であって、ここに使用が化合物を真核生物細胞に投与することを含む化合物。
45. 細胞がイン・ビボ(in vivo)である、実施形態44に記載の使用のための化合物。
46. 細胞がイン・ビトロ(in vitro)である、実施形態44に記載の使用のための化合物。
47. 細胞がHuh7細胞である、実施形態44または46に記載の使用のための化合物。
48. 細胞がHeLa細胞である、実施形態44または46に記載の使用のための化合物。
49. 細胞が293細胞である、実施形態44または46に記載の使用のための化合物。
50. 実施形態1〜14のいずれか1の化合物を細胞に投与することを含む、真核生物細胞における生来の免疫応答を調節する方法。
51. 細胞がイン・ビボ(in vivo)である、実施形態50の方法。
52. 細胞がイン・ビトロ(in vitro)である、実施形態50の方法。
53. 細胞がHuh7細胞である、実施形態50または52の方法。
54. 細胞がHeLa細胞である、実施形態50または52の方法。
55. 細胞が293細胞である、実施形態50または52の方法。
【0116】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために記載されている。当業者は、本開示を踏まえて、本明細書で開示の特定の実施形態に対し多くの変更を行うことが可能であり、それでもなお本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく同様のまたは類似の結果を得ることが可能であることを認識すべきである。例えば、以下の実施例では、本開示の化合物のインビトロ試験方法が提供される。他のインビトロおよび/またはインビボウイルス感染モデルには、DNV、ウシ下痢ウイルス、WNVおよびGBV-Cウイルスなどのフラビウイルス、RSV、SARSなどのその他のRNAウイルス、およびHCVレプリコン系が含まれる。さらに、ウイルス複製に適格性のあるいずれかの適切な培養細胞を抗ウイルスアッセイに利用することができる。
【実施例】
【0118】
実施例1.本開示の化合物の合成
【0119】
一般的合成スキーム。本開示の化合物は、当業者によく知られた合成方法と併せて、以下に記載した方法により調製することができる。本明細書で使用する出発材料は、市販されているか、または当該技術分野において既知の常法により調製することができる(例えば、COMPENDIUM OF ORGANIC SYNTHETIC METHODS,Vol. I-VI(Wiley-Interscienceから出版)などの標準的参考図書で開示の方法など)。好ましい方法には以降に記載のものが含まれる。
【0120】
下記のいずれかの合成手順の間に、関与するいずれかの分子の感受性または反応性基を保護することが必要なおよび/または望ましい場合がある。これは通常の保護基、例えば、T. W. Greene,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1981;T. W. Greene and P. G. M. Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1991、およびT. W. Greene and P. G. M. Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1999に記載のものなどを使用して達成することができる。
【0121】
本開示の化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩は、以降で考察する反応スキームに従って調製することができる。これらの方法は、通常の技量の化学者に既知の手法を使用して、本開示の範囲内の追加の化合物の合成を行えるように変更するかまたは適応させることができる。実施例2〜4に記載のように、このような変更を行って本開示の化合物例を合成した。特に別途の指示がない限り、スキーム中の置換基は上記で定義されている通りである。生成物の単離と精製は、通常の技量の化学者に既知の標準的な手順により行われる。
【0122】
当業者であれば、スキーム、方法、および実施例中で使われる種々の記号、上付き文字、および下付き文字は、表現の便宜上および/またはそれらがスキーム中に導入される順序を反映するために使用されており、添付の請求項中の記号、上付き文字、または下付き文字に必ずしも対応することを意図していないことを理解するであろう。スキームは、本開示の化合物の合成に有用な方法の代表例である。それらは、いかなる意味においても本開示の範囲を限定するものではない。
【0123】
イソフラボンは、下記を含む出版物で概説されている種々の方法で調製することができる:T.A. Geissman The Chemistry of Flavonoid Compounds,MacMillan,New York,1962;The Flavonoids: Advances in Research,J.B. Harborne and T. J. Mabry,Eds. Chapman & Hall,New York,1982中のP.M. Dewick Isoflavonoids;The Flavonoids,J.B. Harborne,T.J. Mabry,and Helga Mabry,Eds.,Academic Press,New York San Francisco,1975中のE. Wong The Isoflavonoids;The Flavonoids: Advances in research since 1986,J.B. Harborne,Ed.,Chapman & Hall,London,1993中のPaul M. Dewick Isoflavonoids;Levai,A. (2004),Synthesis of isoflavones. J. Heterocyclic Chem.,41: 449-460;John A. Joule,Keith Mills,Heterocyclic Chemistry,Wiley & Sons,5th Ed,2009;およびMamoalosi A. Selepe and Fanie R. Van Heerden,Application of the Suzuki-Miyaura reaction in the synthesis of flavonoids,Molecules (2013),18,4739-4765。下記のスキーム1〜スキーム7は、イソフラボンを製造するために使用されるいくつかの一般的方法をまとめたものである。本開示の1−(2−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタノン中間体は、スキーム8に示されたものを含む種々の方法によって、適切に置換されたフェノールのアシル化により調製することができる。
【0124】
スキーム1:ベンカタラマン合成(オルトギ酸エチル法)
【化15】
【0125】
スキーム2:Baker-Ollis(塩化エトキサリル法)
【化16】
【0126】
スキーム3:ビルスマイヤー・ハック法
【化17】
【0127】
スキーム4:カルコンの環化
【化18】
【0128】
スキーム5:双極子付加環化および転位
【化19】
【0129】
スキーム6:分子内付加環化およびCO
2の脱離
【化20】
【0130】
スキーム7:鈴木−宮浦反応
【化21】
【0131】
スキーム8:1−(2−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタノン中間体の調製
【化22】
【0132】
実施例2.3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−7−イルメタンスルホネートの合成
【化23】
【0133】
工程1:中間体2−(4−tert−ブチルフェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)エタノンの合成。(4−tert−ブチルフェニル)アセトニトリル(10g、0.058mol)およびレゾルシノール(7.3g、0.066mol)を、40mLのBF3・Et2Oに加え、混合物中に乾燥HClガス流を一晩通過させた。その後、この溶液を300mLの冷水中に注ぎ込み、6時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで抽出し、溶媒を蒸発させて油を得て、これをクロマトグラフィーで精製して、クロマトグラフィー後に、0.68gの3−(4−tert−ブチルフェニル)−7−ヒドロキシ−4H−クロメン−4−オン(20%)を得た。
【0134】
工程2:3−(4−tert−ブチルフェニル)−7−ヒドロキシ−4H−クロメン−4−オンの合成。工程1の中間体(0.65g、2.3mmol)を1:1のオルトギ酸トリエチル:乾燥ピリジン混合物、およびピペリジンと混合し、120〜130℃で4時間保持した。混合物を放冷し、水に加えた。沈殿した固形物を濾過し、クロロホルムから再結晶させて、0.324gの生成物を得た(45%)。
【0135】
工程3:3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−7−イルメタンスルホネートの合成。塩化メタンスルホニル(0.079mL、1mmol)を、工程2の生成物(0.15g、0.5mmol)と0.2mLのトリエチルアミンの10mL中溶液に滴下した。この混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を蒸発乾固させ、残留物をメタノールで粉砕してメタンスルホネートエステル(0.16g、84%)を得た。
【0136】
実施例3.N−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−7−イル]−N−メチルメタンスルホンアミドの合成
【化24】
【0137】
工程1:N−(4−アセチル−3−ヒドロキシフェニル)メタンスルホンアミドの合成。0℃でピリジン(1.6mL、20mmol)を、市販の4’−アミノ−2’−ヒドロキシアセトフェノン(2g、13mmol)と塩化メタンスルホニル(1.6mL、16mmol)の40mLの無水ジクロロメタン中混合物に加えた。得られた混合物を0℃から室温まで一晩撹拌した後、ジクロロメタンで希釈し、1Mの塩酸水溶液で洗浄した。2つの層の間の界面に不溶性物質が認められた。水層をジクロロメタンで2回逆抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて0.11gのスルホンアミドを得た。2つの抽出層の間の界面の不溶性物質を濾過し、ジエチルエーテルで濯いで1.3gのスルホンアミドを得た(89%収率)。
【0138】
工程2:N−{4−[(2E)−3−(ジメチルアミノ)プロパ−2−エノイル]−3−ヒドロキシフェニル}メタンスルホンアミドの合成。2mLのジメチルホルムアミドジメチルアセタールを、工程1の生成物(0.5g、2mmol)の1mLのジメチルホルムアミド中溶液に加えた。得られた混合物を95℃で1時間攪拌し、次いで室温に冷却した。黄色沈殿物が形成されるまで水を滴下した。その沈殿物を濾過し、水で濯いで減圧下で乾燥して0.17gの生成物を得た(26%収率)。
【0139】
工程3:N−(3−ヨード−4−オキソ−4H−クロメン−7−イル)−N−メチルメタンスルホンアミドの合成。0℃で、ヨウ素(0.21g、0.83mmol)を、工程2の生成物(0.17g、0.57mmol)の5mLのクロロホルム中溶液に加えた。得られた混合物を0℃から室温まで一晩撹拌した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させた。水層をジクロロメタンで2回逆抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物を酢酸エチル中に採取し、不溶性物質を濾過し、酢酸エチルで濯ぎ、減圧下で乾燥して0.14gのヨードクロメンを得た(65%収率)。
【0140】
工程4:N−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−7−イル]−N−メチルメタンスルホンアミドの合成。工程3の生成物(0.07g、0.19mmol)、4−tert−ブチルフェニルボロン酸(0.043g、0.24mmol)、パラジウム/炭素(Pd 10%)(0.01g)、および炭酸ナトリウム(0.059g、0.56mmol)の1.5mLの1,2−ジメトキシエタンと水の1/1混合物中の混合物を、45〜50℃で2時間撹拌後、ジクロロメタンと水の間で分配した。水層をジクロロメタンで2回逆抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物をメタノール中に採取し、不溶性物質を濾過し、メタノールで濯ぎ、減圧下で乾燥して0.052gのイソフラボンを得た(73%収率)。
【0141】
実施例4.4−オキソ−3−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]−4H−クロメン−7−イルメタンスルホネートの合成
【化25】
【0142】
本明細書で記載の一般法により分子3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−7−イルメタンスルホネートを調製した。次に、この分子(1.0g、3.0mmol)を10mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ミネラルオイル中のわずかに過剰の水素化ナトリウムで処理した。水素の放出が終わった後、2,2,2−トリフルオロエチルメタンスルホネート(1.0g、5.6mmol)を滴下し、この混合物を室温に一晩放置した。液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS)により、所望のモノアルキル化生成物30%と、他の生成物との混合物が、メタンスルホネートエステルの喪失から生じたジアルキル化物質を含んでいたことが示された。所望の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより単離した。
【0143】
実施例5.KIN100およびKIN101のインビトロ抗ウイルス活性
【0144】
ライブラリヒット化合物KIN100およびKIN101のインビトロ抗ウイルス活性を試験した。HCVフォーカス形成アッセイでは、2〜5x10
3細胞/ウェルの密度でHuh7細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を16時間増殖させ、0.5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地中で5、10、20、または50uMに希釈した化合物を各ウェルに加えた。細胞を18〜24時間インキュベートし、その後、750pfuのHCV2a株に感染させた。希釈したウイルスをウェルに直接添加し、化合物を取り出さなかった。化合物処理後、感染細胞を24〜72時間増殖させ、その後固定した。細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、HCVタンパク質で染色した。HCVに対する1次血清を1:3000希釈で使用した。Alexa Fluor488色素(Invitrogen)およびHoescht Dye(核染色)に結合した2次ヤギ抗ヒト抗体を1:3000希釈で使用してHCVタンパク質および細胞核を検出した。二次抗体のインキュベーション後に、単層を洗浄し、蛍光顕微鏡法を使用した画像処理および定量化のために、100μLのPBS中に残した。
【0145】
図1A〜1Cは、KIN100およびKIN101のHCVに対する抗ウイルス活性を示す。
図1Aは、KIN100で24時間前処理し、0.5の感染多重度(MOI)でHCV2aに48時間感染させたHuh7細胞で行ったHCVフォーカス形成アッセイのグラフである。HCVタンパク質を、ウイルス特異的血清を使用した免疫蛍光染色により検出し、化合物処理していない陰性対照細胞(1に等しい)に対し病巣を正規化した。
図1Bは、KIN101で18時間前処理し、1.0のMOIでHCV2aに72時間感染させたHuh7細胞で行ったRT−qPCRによるHCVウイルスRNAの定量化を示す。ウイルスRNAを感染培養液の上清中で単離し、定量した。同様に、
図1Cは、1.0のMOIでHCV2aに4時間感染させ、その後KIN101で処理したHuh7細胞で行ったRT−qPCRによるHCVウイルスRNAの定量化を示す。
【0146】
インビトロ抗ウイルスアッセイにおける脳心筋炎ウイルス(EMCV)の場合は、Huh7細胞を通常の増殖条件下で増殖させて、0.5%のDMSO含有培地中で指示量のKIN101で処理した。化合物の存在下で5時間細胞を増殖させた後、ATCC#VR−129Bから得た250pfuのマウスEMCVに感染させた。感染細胞をさらに18時間増殖させた後、MTSアッセイを使用して細胞生存率を測定した。陰性対照細胞を0.5%のDMSOを含む緩衝液単独で処理した。インターフェロン処理をウイルス阻害の陽性対照として使用し、化合物処理と同様に、10 IU/mLインターフェロン−α:Intron A(Schering-Plough)の最終濃度で添加した。MTSアッセイ、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)(Promega #G3580)を使用して細胞生存率を測定した。KIN101は、EMCVに感染後の細胞生存を保護しようとした。アッセイ結果を下表に示す。
【表3】
【0147】
RSVに対するKIN101の抗ウイルス活性を、免疫蛍光ベースのフォーカス形成アッセイにより測定した。培養したヒトヒーラ細胞を6ウェル組織培養プレート中に4x10
5細胞/ウェルの濃度で播種し、24時間増殖させた。細胞を0.1のMOIで2時間、RSV A2 Long株(ATCC VR-26)に感染させた後、取り出した。化合物希釈液を0.5%DMSO中で調製し、0.001〜10μM/ウェルの範囲の化合物の最終濃度での細胞の処理に使用した。ビヒクル対照ウェルに0.5%のDMSOを入れ、化合物処理細胞と比較するために使用した。化合物処理後にRSV感染を48時間進行させた。その後、ウイルス上清を採取し、96ウェル組織培養プレート中に8x10
3細胞/ウェルの濃度で播種した新しい単層のヒーラ細胞に感染させるのに使用した。新しく感染させた細胞を一晩(18〜24時間)インキュベートし、元の上清中の感染性ウイルスの量を、ウイルスタンパク質の免疫蛍光染色により測定するのに使用した。細胞を氷冷の1:1のメタノール:アセトン溶液で固定し、RSV Fタンパク質用に染色した。1次マウス抗RSVモノクローナル抗体(EMDミリポア)を、1:2000希釈で使用した。Alexa Fluor488色素(Invitrogen)およびHoescht Dye(核染色)に結合した2次ヤギ抗マウス抗体を1:3000希釈で使用してRSVタンパク質および細胞核を検出した。二次抗体のインキュベーション後に、単層を洗浄し、Cellomics ArrayScan HCS測定器を使用した画像処理および定量化のために、100μLのPBS中に残した。
【0148】
図2Aは、RSV A2に感染させ、KIN101で処理した後の細胞生存率を示す。
図2Bは、KIN101処理により感染48時間後のRSVウイルスRNAが減少したことを示す。
【0149】
実施例6.KIN269およびその他の選択化合物のインビトロ抗ウイルス活性
【0150】
インフルエンザウイルスに対するKIN269およびその他の選択化合物のインビトロ抗ウイルス活性を測定した。培養したヒト293細胞を、フルーフォーカス形成アッセイ用として、6ウェル組織培養プレート中に3x10
5細胞/ウェルの濃度で播種し、24時間増殖させた。細胞を0.1のMOIで2時間、インフルエンザウイルスA/Udorn/72 H3N2株に感染させた後、取り出した。化合物希釈液を0.5%DMSO中で調製し、0.001〜10μM/ウェルの範囲の化合物の最終濃度での細胞の処理に使用した。ビヒクル対照ウェルに0.5%のDMSOを入れ、化合物処理細胞と比較するために使用した。その後、複製を24時間進行させた。その後、ウイルス上清を採取し、96ウェル組織培養プレート中に1.5x10
4細胞/ウェルの濃度で24時間前に播種した新しい単層のMDCK許容細胞に感染させるのに使用した。新しく感染させた細胞を一晩(18〜24時間)インキュベートし、元の上清中の感染性ウイルスの量を、ウイルスタンパク質の免疫蛍光染色により測定するのに使用した。細胞を氷冷の1:1のメタノール:アセトン溶液で固定し、インフルエンザ核タンパク質(NP)用に染色した。1次マウス抗NPモノクローナル抗体(Chemicon)を、1:3000希釈で使用した。Alexa Fluor488色素(Invitrogen)およびHoescht Dye(核染色)に結合した2次ヤギ抗マウス抗体を1:3000希釈で使用してRSVタンパク質および細胞核を検出した。二次抗体のインキュベーション後に、単層を洗浄し、Cellomics ArrayScan HCS測定器を使用した画像処理および定量化のために、100μLのPBS中に残した。
【0151】
図3A、3B、および3Cは、化合物によるウイルス感染のパーセント阻害としてグラフ化した病巣の減少を示す。KIN101は、293細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した。化合物KIN134、KIN263、KIN267、KIN269、KIN282、KIN291、KIN308、およびKIN306は、ウイルス力価の減少により示されるように、この抗ウイルス活性を改善した(
図3A)。KIN328、KIN371、KIN372、KIN376、KIN385、KIN392、KIN269、KIN394、KIN395、およびKIN299は、293細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した(
図3B)。
図3Cは、インフルエンザ抗ウイルスアッセイにおける選択化合物例のIC50値を示す。
【0152】
KIN269およびその他の選択化合物のDNVに対するインビトロ抗ウイルス活性を測定した。培養したヒトHuh7細胞を、DNVフォーカス形成アッセイ用として、6ウェル組織培養プレート中に4x10
5細胞/ウェルの濃度で播種し、24時間増殖させた。細胞を0.1のMOIで2時間、DNV−2型株に感染させた後、取り出した。化合物希釈液を0.5%DMSO中で調製し、0.001〜10μM/ウェルの範囲の化合物の最終濃度での細胞の処理に使用した。ビヒクル対照ウェルに0.5%のDMSOを入れ、化合物処理細胞と比較するために使用した。その後、複製を48時間進行させた。その後、ウイルス上清を採取し、96ウェル組織培養プレート中に8x10
3細胞/ウェルの濃度で24時間前に播種した新しい単層のベロ許容細胞に感染させるのに使用した。新しく感染させた細胞を24時間インキュベートし、元の上清中の感染性ウイルスの量を、ウイルスタンパク質の免疫蛍光染色により測定するのに使用した。細胞を氷冷の1:1のメタノール:アセトン溶液で固定し、DNV融合タンパク質用に染色した。DNV融合タンパク質に対する1次マウスモノクローナル抗体(ミリポア)を、1:2000希釈で使用した。Alexa Fluor488色素(Invitrogen)およびHoescht Dye(核染色)に結合した2次ヤギ抗マウス抗体を1:3000希釈で使用してDNVタンパク質および細胞核を検出した。二次抗体のインキュベーション後に、単層を洗浄し、Cellomics ArrayScan HCS測定器を使用した画像処理および定量化のために、100μLのPBS中に残した。
【0153】
図4Aは、DNVに感染させ、KIN101の量を増加させて処理した細胞中のウイルスタンパク質の用量依存的減少を示す。抗ウイルス活性に関するDNVフォーカス形成アッセイの結果を
図4Bに示す。病巣の減少を、化合物によるウイルス感染のパーセント阻害としてグラフに示す。化合物KIN101(黒色点線)、KIN134、KIN269、KIN328、KIN372、KIN376、およびKIN385は、Huh7細胞のウイルス感染の用量依存的減少を示した。IC50値(M単位)を示す。
【0154】
選択化合物のその他のウイルスの計算IC50値を表4に示す。
【表4】
【0155】
実施例7.KIN385およびその他の選択化合物のインビトロ抗ウイルス活性
【0156】
hCMVに対するインビトロ抗ウイルス活性を測定した。1次ヒト包皮線維芽細胞(HFF;ATCC)を24ウェル組織培養プレート中に1.5x10
5細胞/ウェルの濃度で播種し、24時間増殖させた。細胞を0.1のMOIで4時間、hCMV AD169株(ATCC)に感染させた後、取り出した。化合物希釈液を0.5%DMSO中で調製し、0.001〜10μM/ウェルの範囲の化合物の最終濃度での細胞の処理に使用した。ビヒクル対照ウェルに0.5%のDMSOを入れ、化合物処理細胞と比較するために使用した。その後、複製を48〜96時間進行させた。48、72、および96時間でウイルス上清を採取し、96ウェル組織培養プレート中に3x10
4細胞/ウェルの濃度で24時間前に播種した新しい単層のHFFに感染させるのに使用した。新しく感染させた細胞を24時間インキュベートし、元の上清中の感染性ウイルスの量を、ウイルスタンパク質の免疫蛍光染色により測定するのに使用した。細胞を氷冷の1:1のメタノール:アセトン溶液で固定し、その他のインビトロウイルス系に対し以前に記載した方法と同様にして、hCMV IE1タンパク質用に染色した。
【0157】
図5Aは、KIN385、KIN392、KIN394、およびKIN395で処理した試料中の病巣(FFU/mL)により測定したhCMVの用量依存的減少を示す。
図4Bは、KIN269、KIN134、KIN372、KIN328、およびKIN376で処理した試料中の病巣(FFU/mL)により測定したhCMVの用量依存的減少を示す。
【0158】
実施例8.KIN269によるインビトロIRF-3活性化
【0159】
IRF−3依存性シグナル伝達の活性化をアッセイすることにより、KIN269によるRIG−Iシグナル伝達経路の活性化を測定した。これは、化合物で処理した細胞中のIRF−3依存性遺伝子発現をRT−qPCRにより測定して行った。培養したヒト細胞を0.001〜10μMのKIN269またはDMSOビヒクル対照で処理し、24時間までインキュベートした。処理後4〜24時間の時点で細胞を採取した。よく知られた技術を使用して、RNA単離、逆転写、およびqPCRを行った。市販の、検証されたTaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems/Life Technologies)を使用して、製造業者の取扱説明書に従ってPCR反応を行った。相対的発現分析(ΔΔCt)を使用して、遺伝子発現レベルを測定した。
【0160】
図6は、293細胞中の化合物KIN269による遺伝子発現の誘導を示す。IRF−3依存性であるまたは抗ウイルス応答に関与すると分かっている遺伝子は、KIN269による処理後に誘導されることが知られている。
【0161】
実施例9.KIN269のインビトロバイオアベイラビリティおよび抗ウイルス活性
【0162】
KIN269の抗ウイルス活性を、マウスインフルエンザモデルを使用して測定した。ウイルス感染は、インフルエンザウイルス株A/Puerto Rico/8/1934(PR8)の非外科的点滴注入により達成された。10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中の10mg/kgのKIN269を、またはビヒクルのみの対照を、鼻腔内投与により感染の全過程にわたり毎日投与した。毎日の臨床的観察、死亡率、体重、および体温を含む動物の試験項目の評価を行った。肺組織のウイルス力価を測定した。
【0163】
KIN269の抗ウイルス活性を、マウスコロナウイルス(MHV)モデルを使用して測定した。ウイルス感染は、MHVの非外科的鼻腔内点滴注入を使用して達成された。10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)中の10mg/kgのKIN269を、またはビヒクルのみの対照を、鼻腔内投与により感染の全過程にわたり毎日投与した。毎日の臨床的観察、死亡率、体重、および体温を含む動物の試験項目の評価を行った。肺組織のウイルス力価を測定した。
【0164】
KIN269の抗ウイルス活性を、マウスDNVモデルを使用して測定した。ウイルス感染は、DNV−2型株の腹腔内注射を使用して達成される。10mg/kgのKIN269を、またはビヒクルのみの対照を、IP注射により感染の全過程にわたり毎日投与した。毎日の臨床的観察、死亡率、体重、および体温を含む動物の試験項目の評価を行った。血清中のウイルスRNAを測定した。
【0165】
予備的マウスPK試験では、静脈内および腹腔内投与経路の両方により、10mg/kgのKIN269を投与した。投薬の前および投薬後4時間までの時点で、後眼窩洞から血液試料を採取した。開発されたKIN269に特異的な生物学的分析法により化合物濃度を測定した。
【0166】
図7A〜7Eは、KIN269のインビボ広域スペクトル抗ウイルス活性およびバイオアベイラビリティを示す。KIN269(10%HPBCD中の10mg/kg)による鼻腔内の処置により、肺中のインフルエンザウイルス(
図7A)、およびマウス肝炎ウイルス(MHV)(
図7B)の複製および力価が減少する。
図7Cは、腹腔内注射または静脈内注射により10mg/kgを投与した場合の、KIN269血清レベルの経時変化を示す。
図7Dは、KIN269をIP 10mg/kg/日で投与した場合、血清で測定して、KIN269がDNVを阻害したことを示す。
図7Eは、KIN269(20mg/kg)をPR8フルーによる致死感染の−24時間前(予防的)または+24時間後(治療的)の鼻腔内点滴注入により投与した場合、KIN269が肺中でフルー複製を阻害したことを示す。肺組織を感染の72時間後採取し、フルーRNAをPCRで定量した。
【0167】
実施例10.定量的構造活性相関(QSAR)研究を使用した抗ウイルス活性および薬理学的特性
【0168】
この実施例は、本明細書で記載の化合物のQSAR手法を使用した抗ウイルス作用のための類似化合物設計について記載する。QSAR研究は、ピコモル濃度からナノモル濃度の効力を備えたリード化合物を提供できるように設計される。化合物の最適化により、構造の多様性を作りだし、核となる変形体および基の変更を評価することに重点が置かれる。本明細書で記載のウイルスアッセイモデルを含むいくつかのウイルスに対する類似体の抗ウイルス活性を試験する。さらに、1種または複数種の細胞株または末梢血単核細胞に対する類似体の細胞毒性を試験する。インビトロおよびインビボ毒性ならびに吸収、分布、代謝および排泄(ADME)のさらなる手段により、有効性の向上および低い細胞毒性を示す最適化された化合物をさらに特徴付ける。また、それらの作用機序および抗ウイルス活性の幅を調べる。
【0169】
QSAR研究における化学的設計。薬物様特性、代謝不安定性、および毒性の分析を行い、類似体化合物設計を進める。リピンスキーの法則(Lipinski,C. A.ら(2001) Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings,Adv Drug Deliv Rev 46,3-26)によって測定される薬物様特性および関連する物理化学的特性が、バイオアベイラビリティの主要な指標である。代謝不安定性および毒物学的不安定性を示唆する構造的特徴は、限られた安定性、短い半減期、反応性中間体または特異体質的毒性を示している場合があるため、これを除去する。5〜10個の化合物類似体セットを構築し、化学反応性の高いまたは代謝を受けやすい構造的特徴を除去または改変することによって、予備的なQSARを進める。
【0170】
本明細書で開示の化合物をイソフラボン化合物として説明する。イソフラボンは、マメ科(豆果)から単離される天然物として極めてよく知られており、通常、ポリヒドロキシル化され、植物性エストロゲンおよび抗酸化剤として薬理学的に活性である。このクラスの最もよく知られたメンバーは、ゲニステインであり、これは抗癌活性を有し、哺乳動物の胸腺および免疫変化を誘発することが報告されている(Banerjee,S.ら(2008) Multi-targeted therapy of cancer by genistein,Cancer Lett 269,226-242)。米国立癌研究所(Natural Cancer Institute)(NCI)の天然物ライブラリーの予備的選別でゲニステインがインターフェロン誘導遺伝子(ISG)誘導に対する検証されたヒットとして示されたということは、当面の問題と関連性がある。この相関は、生物活性を保持すると同時に、官能基の変更および類似体設計に広範な柔軟性を有する可能性を示す。
【0171】
それぞれの類似体に対して、(高速液体クロマトグラフィー)HPLCベースおよび/またはHPLC−質量分析ベース分析法を使用して、種々の試験系における化合物および代謝物濃度を評価する。各化合物に対しては特定の分析方法が最適化されるが、逆相クロマトグラフィーを単独でまたは四極子質量分析と組み合わせて用いて、いくつかのリード化合物の固有の特性および純度を特徴付けることができる。最初に、哺乳動物種(例えばマウス、カニクイザルおよびヒトなど)の血清、血漿および全血の濃度を漸増させて経時的な化合物安定性をHPLCによって評価し、半減期を決定することになる。場合によっては、主要な代謝産物の質量分析による特徴付けが行われる。
【0172】
実施例11.インビトロ生物活性
【0173】
表1に挙げた化合物を含む本明細書で記載の化合物の生物活性を試験する。この生物活性には、免疫応答経路を含む標的経路の活性化、種々のウイルスに対する抗ウイルス活性、低細胞毒性、および10を超える治療指数が含まれる。
【0174】
化合物によるRIG−Iシグナル伝達経路活性化。RIG−I経路活性化を測定するアッセイの一例は、化合物で処理した細胞のRT−qPCRによる下流遺伝子発現の測定である。転写因子IRF−3はRIG−Iシグナル伝達により活性化され、IRF−3依存性遺伝子の発現増加は、RIG−I経路の活性化を示す。宿主の先天性の抗ウイルス免疫応答に関連するその他の遺伝子も同様に、化合物活性の指標として測定される。
【0175】
培養したヒト細胞を0.001〜10μMの化合物またはDMSOビヒクル対照で処理し、24時間までインキュベートする。処理後4〜24時間の時点で細胞を採取する。よく知られた技術を使用して、RNA単離、逆転写、およびqPCRを行う。市販の、検証されたTaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems/Life Technologies)を使用して、製造業者の取扱説明書に従ってPCR反応を行う。相対的発現分析(ΔΔCt)を使用して、遺伝子発現レベルを測定する。
【0176】
初代血液単核細胞、ヒトマクロファージ、THP−1細胞、Huh7細胞、A549細胞、MRC5細胞、ラット脾細胞、ラット胸腺細胞、マウスマクロファージ、マウス脾細胞、およびマウス胸腺細胞を含む細胞型に対し、同様にして遺伝子発現をアッセイすることができる。興味の対象であるその他の遺伝子の発現も本明細書で記載のようにアッセイすることができる。加えて、遺伝子発現をウイルスの存在下でアッセイして、活動性ウイルス感染との関係において、化合物活性を測定することができる。
【0177】
化合物による先天性免疫応答の誘導。初代免疫細胞における化合物の活性をアッセイし、化合物処理が免疫応答経路を刺激するかどうかを判定することができる。一例は、樹状細胞などの培養したヒト初代血液細胞中のサイトカイン発現アッセイである。組織培養皿中に細胞を播種し、0.001〜10μMの範囲の化合物で処理する。サイトカイン産生のアッセイに対しては、処理ウェル由来の上清を化合物処理の24〜48時間後に単離し、サイトカインタンパク質のレベルを検査する。磁気ビーズに結合した特異的抗体と、ストレプトアビジン/フィコエリトリンと反応して蛍光シグナルを発生する二次抗体とを用いて、サイトカインを検出する。MAGPIX(登録商標)(Luminex Corp.)測定器を用いて、結合したビーズを検出し、定量したが、例えば、ELISAなどの当該技術分野において既知の同様の技術を用いて蛍光タンパク質産生量を測定してもよい。
【0178】
サイトカイン分泌を測定することができるその他の細胞としては、例えば、ヒト末梢血単核細胞、ヒトマクロファージ、マウスマクロファージ、マウス脾細胞、ラット胸腺細胞およびラット脾細胞が挙げられる。
【0179】
細胞毒性は、MTSアッセイおよびカスパーゼアッセイを含む標準的インビトロアッセイを使用して評価される。これらのアッセイを行うプロトコルは、当業者には既知であり、MTSのホルマザンへの変換を測定する比色分析ベースアッセイ(Cell Titer One、Promega)および活性化したカスパーゼ−3のレベルを測定するサンドイッチELISAベースアッセイ(PATHSCAN(登録商標)Cleaved Caspase-3 (Asp175) Sandwich ELISA Kit #7190、Cell Signaling Technology,Inc.,Danvers,MA)などのアッセイ計測値を測定するいくつかの市販のキットがある。培養したヒト細胞を、0から少なくとも50μMまで量を増加させた化合物または培地で希釈した当量のDMSOで処理して、細胞生存率に与えるそれらの影響を評価する。このアッセイで使用する培養したヒト細胞株には、Huh7、PH5CH8、A549、またはヒーラ細胞が含まれる。
【0180】
インビトロ薬理学および毒物学。この毒物学的アッセイの記載は例示的なものである。インビトロ試験を実施し、腸透過性、代謝安定性および毒性のうちの1種または複数種のアッセイにおいて最も有望な類似体の性能を測定する。これらの試験としては、血漿タンパク質結合;ヒトおよびモデル生物体の血清、血漿、および全血安定性;腸透過性;固有クリアランス;潜在的心臓毒性を試験するヒトEther-a-go-go(hERG)チャネル阻害;および、例えば、復帰突然変異(エームズ試験)および/または小核形成アッセイを使用した遺伝子毒性が挙げられる。平衡透析法を用いた分割分析によって、ヒト血漿タンパク質結合を評価する。腸透過性のモデル化では、Caco−2またはTC7などのヒト上皮細胞株で尖端から基底側への流動を評価する。ヒト肝ミクロソームでのインキュベーション時に親化合物が消失する速度を測定することによって、最も有望な類似体のサブセットの肝クリアランスが推定される。特定の代謝産物を分離し特徴付けることができる。
【0181】
実施例12.インビトロモデルを使用した抗ウイルス活性のアッセイ
【0182】
本明細書で開示の化合物は、いくつかのウイルスに対しインビトロで効率的な活性を有する。最適化した化合物の抗ウイルス活性の幅をさらに特徴付けるために、細胞培養感染モデルを用いて、異なるウイルスならびに異なる株の同じウイルス(表4)を分析する。これらのウイルスのいくつかに対する化合物の抗ウイルス活性を測定するアッセイを本明細書で記載する。
【0183】
この試験は、感染の2〜24時間前に細胞を化合物で処理すること、および/または感染の2〜8時間後に細胞を処理することを含む。0.001〜10μMの範囲の異なる濃度で化合物を投与する。使用する陽性対照処理には、インターフェロン、リバビリン、オセルタミビル、または特定のウイルスの感染を阻害するその他の既知の処理が含まれる。ウイルス産生および細胞内ISG発現を経時的に評価し、各化合物(表4)の抗ウイルス活性を分析する。フォーカス形成またはプラークアッセイによりウイルス産生を測定する。
【0184】
培養したヒトヒーラ細胞で免疫蛍光ベースのフォーカス形成アッセイを実施し、RSVに対する抗ウイルス活性を測定する。実験条件は実施例5で記載のものと類似または実質的に類似している。
【0185】
インフルエンザウイルスに対するインビトロ抗ウイルス活性を、免疫蛍光ベースのフォーカス形成アッセイにより測定する。このアッセイで使用されるインフルエンザAウイルス株には、A/Udorn/72 H3N2株およびA/California/04/09 H1N1株が含まれる。実験条件は実施例6で記載のものと類似または実質的に類似している。
【0186】
DNVに対するインビトロ抗ウイルス活性を、免疫蛍光ベースのフォーカス形成アッセイにより測定する。実験条件は実施例6で記載のものと類似または実質的に類似している。
【0187】
hCMVに対するインビトロ抗ウイルス活性を、免疫蛍光ベースのフォーカス形成アッセイにより測定する。実験条件は実施例7で記載のものと類似または実質的に類似している。
【0188】
並行実験では、qPCRおよび免疫ブロット分析によりウイルスRNAおよび細胞内ISG発現を測定する。これらの実験は、ウイルス感染時の化合物のシグナル伝達作用を検証し、ウイルス対策として、様々な株のウイルスに対して先天性免疫による抗ウイルスプログラムを指令する化合物の作用を評価するように設計されている。各ウイルス感染系において各化合物の詳細な用量反応分析を実施し、処理前および処理後両方の感染症モデルについて、ウイルス産生を対照細胞よりも50%(IC50)および90%(IC90)抑制する有効量を決定する。
【0189】
選択化合物の広域スペクトル抗ウイルス活性を、
図2Aおよび2B(RSV);
図3A、3B、および3C(フルー);
図4Aおよび4B(DNV);および
図5Aおよび5B(hCMV)に示す。
【0190】
インビトロでアッセイによりアッセイ可能な感染モデルには、WNV、HBV、EMCV、およびSARSが含まれる。
【表5】
【0191】
実施例13.前臨床動物モデルにおける最適化化合物のインビボ薬物動態学的および毒物学的プロファイル
【0192】
前臨床薬物動態(PK)および耐容性プロファイリング。ウイルス感染の動物モデルにおける抗ウイルス活性の特徴付けをさらに行うために、最適化化合物のインビボPKプロファイルおよび耐容性/毒性を評価する。マウスのいくつかの樹立されたウイルスモデルおよびラットのPK、毒物学および免疫学のモデルが存在することから、マウスおよびラットをこれらの研究用の試験種として選択する。
【0193】
逆相HPLC-MS/MS検出法を使用して、血漿および標的組織試料を含む生物試料中の各化合物の濃度の検出および定量化を行う。PKプロファイリングの前に、主として少数の貯蔵条件に対する水溶解度および安定性を最大限に高めることに焦点を絞り込んだ限定された医薬組成物の成分選別を使用して、各化合物の最初の経口および注射可能医薬組成物を開発する。医薬組成物の性能測定には当該技術分野で既知の既存の分析方法を用いる。3段階の戦略に従って各化合物の医薬組成物を開発する。段階1:pH(pH3〜9)、緩衝剤および浸透圧を調節する;段階2:エタノール(10%未満)、プロピレングリコール(40%未満)またはポリエチレングリコール(PEG)300もしくは400(60%未満)の共溶媒を添加して溶解度を増大させる;段階3:必要に応じて、N−N−ジメチルアセトアミド(DMA、30%未満)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、20%未満)および/またはジメチルスルホキシド(DMSO、20%未満)の共溶媒あるいはシクロデキストリン(40%未満)を添加し溶解度をさらに高める。
【0194】
予備的マウスPK試験では、経口およびi.v.を含む少なくとも2つの投与経路により化合物が投与された後、次の基準を評価する:経口バイオアベイラビリティ、Cmax、t1/2、Cl、Vd、AUC0−24、0−∞。経口経管栄養(10mg/kgまで)または静脈内ボーラス注入(5mg/kgまで)により各化合物を単回用量として、一晩絶食後の動物に投与する。各時点で3匹の動物の試料採取ができるよう、各投与群について複数の動物に投与する。投与前ならびに投与の5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後および24時間後に、後眼窩洞から血液試料を採取する。肺、肝臓、およびリンパ節を含む標的組織も最終採血の時点で同様に採取する。以前に開発されている生物分析方法に従って化合物濃度を測定する。WinNonlinソフトウェアを用いてPKパラメータを評価する。
【0195】
予備的なPK試験での性能に基づき、抗ウイルスモデルでの特徴付けの前に、マウスで予備的な耐容性および毒性について化合物をさらに評価する。耐容性試験を2段階で実施する。最初に用量漸増段階(それぞれ5日間の休薬期間を挟む最大5回の漸増用量)で最大耐用量を決定し(MTD、段階1);次いで、MTDを7日間連日投与して急性毒性を評価する(段階2)。耐容性調査では、すべての投与を経口経管栄養により実施する。このような実験では、雌雄それぞれ5匹を段階1の試験に供し、各投与群の雌雄それぞれ15匹の動物を段階2の試験に供する。試験エンドポイントには、MTDの決定、急性毒性の検査、身体検査、臨床観察、血液学、血清化学および動物の体重を含めた。死亡した場合、瀕死状態で安楽死させた場合、または予定していた実験終了時のいずれにおいても、全動物に対し肉眼診断を実施する。毒性試験は性質として本来予備的なものであり、初期の毒性エンドポイントを明確にし、抗ウイルス動物モデルに対するリード化合物の選択を進めることを目的とするものである。
【0196】
実施例14.前臨床の動物モデルにおける最適化化合物のインビボ抗ウイルス特性
【0197】
本実施例は、マウス感染モデルを用いた抗ウイルス特性および免疫防御の評価について記載する。前臨床的マウス感染モデルでさらに評価するため、化合物PK、抗ウイルス作用および先天性免疫作用に基づいて最適化化合物を選択する。化合物の先天性免疫作用を測定し、そのWNVおよびインフルエンザウイルス攻撃からマウスを保護する能力を評価する。WNV感染モデルでは、野生型C57Bl/6マウスにWNVの毒性系統1株(WNV−TX)による足蹠皮下感染を実施する(Suthar,M. S.ら(2010). IPS-1 is essential for the control of WNV infection and immunity,PLoS Pathog 6,e1000757)。インフルエンザウイルス株A/PR/8/34、A/WSN/33、およびA/Udorn/72に対しては、非外科的な気管内注入を実施する。
【0198】
これらの実験におけるインフルエンザウイルス株には少なくとも2つの異なるサブタイプ(例えば、H1N1およびH3N2)が含まれ、C57Bl/6マウスにおいて様々な病原特性および臨床症状を示す(Barnard,D. L. (2009) Animal models for the study of influenza pathogenesis and therapy,Antiviral Res 82,A110-122)。単独の、または感染前最大24時間もしくは感染後最大24時間から開始して、所定の血漿中半減期の化合物に毎日継続曝露する化合物処理と組み合わせた一連の攻撃量(例えば、10〜1,000pfuのウイルスなど)に対して、マウスの罹患率および死亡率をモニターする。化合物の用量反応分析および感染の経時試験を実施し、1)血清中ウイルス量の制限、2)標的器官でのウイルス複製および伝播の制限、ならびに3)ウイルス病原性に対する防御に対する化合物の有効性を評価する。
【0199】
WNVについては、血清に加えて、リンパ節、脾臓および脳のウイルス負荷を評価し、インフルエンザウイルスについては、心臓、肺、腎臓、肝臓および脳のウイルス負荷を評価する。これらの実験の設計には、100pfuのWNV−TXまたは1,000pfuのインフルエンザウイルスの標準的な攻撃後に各化合物によって血清中ウイルス負荷を50%および90%抑制するのに有効な量(ED50およびED90)を決定することが組み込まれる。化合物処理後、24時間置きに、ウイルスRNAのqPCRにより血清中ウイルス負荷を決定する。感染WNV神経侵襲モデルを用いて、脳神経系におけるWNV病原性の制限に対するED50およびED90での化合物の作用を試験する(Daffis,S.ら(2008) Toll-like receptor 3 has a protective role against West Nile virus infection,J Virol 82,10349-10358)。単独のまたは感染後24時間から開始する化合物処理と組み合わせた1pfuのWNV-MADによる標準的な頭蓋内攻撃を実施した後、マウスの罹患率および死亡率をモニターする。
【0200】
これらおよびその他のインビボウイルス感染モデルでは、化合物(または必要に応じて医薬組成物)を、経口、鼻腔内、粘膜、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内を含む経路を介して投与することができる。化合物の抗ウイルス活性の評価に使用可能なその他のインビボウイルス感染モデルには、SARS、DNV、MCMV、またはEMCVが含まれる。
【0201】
当業者には理解されるように、本明細書で開示のそれぞれの実施形態は、特定の示された要素、工程、成分または構成成分を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなることができる。したがって、「含む(include)」または「含む(including)」という用語は、「含む(comprise)、からなる(consist of)、または本質的になる(consist essentially of)」と述べているものと解釈されるべきである。移行用語の「含む(comprise)」または「含む(comprises)」は、記載のものを含むが、それらに限定されず、明記されていない要素、工程、成分または構成成分を、たとえ多量であっても含むことを許容する。移行句の「からなる(consisting of)」は、明記していないいずれの要素、工程、成分または構成成分をも除外する。「本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、実施形態の範囲を明記された要素、工程、成分または構成成分、およびその実施形態に重大な影響を与えない要素、工程、成分または構成成分に限定する。本明細書で使用する場合、重大な影響は、開示された化合物のまたは医薬組成物が対象のウイルス感染を処置する能力の統計的に有意な低下、対象またはアッセイのウイルスタンパク質の減少、対象またはアッセイのウイルスRNAの減少または細胞培養物中のウイルスの減少を引き起こすことになる。
【0202】
特に別途の指示がない限り、明細書および請求項において使用されるすべての数字は、すべての場合に「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。したがって、そうでない旨の指示がない限り、本明細書および添付請求項に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする望ましい特性に応じて変更可能な概算値である。請求の範囲への均等論の適用を制限することを試みるわけではないが、控えめに言っても、各数値パラメータは少なくとも、報告されている有効桁数を考慮し、通常の丸め法を適用することによって解釈されるべきである。さらなる明確さが必要な場合、「約」という用語は、示された数値または数値範囲と共に使用されるとき、当業者により次に示す合理的に解釈される意味を有する。すなわち、示された値または範囲よりも幾分大きいまたは幾分小さい値であり、示した値の±20%;示した値の±19%;示した値の±18%;示した値の±17%;示した値の±16%;示した値の±15%;示した値の±14%;示した値の±13%;示した値の±12%;示した値の±11%;示した値の±10%;示した値の±9%;示した値の±8%;示した値の±7%;示した値の±6%;示した値の±5%;示した値の±4%;示した値の±3%;示した値の±2%;または示した値の±1%の範囲内であることを意味する。
【0203】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体的実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値にも、各試験測定値に認められる標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差が本来的に含まれる。
【0204】
本発明を記載する文脈において(特に、次の請求項の文脈において)使用される用語の「a」、「an」、「the」およびこれに類する指示語は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾することがない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書において数値範囲を記載する場合、それは単にその範囲内に収まる個々の数値に個別に言及するのを簡略化した方法として機能するよう意図したものである。本明細書で別途明示されない限り、個々の数値は、それが個別に本明細書に列挙された場合と同様に本明細書に組み込まれる。本明細書で記載のすべての方法は、本明細書に別途明示されるか、文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるいずれかのおよびすべての例、または例示的表現(例えば、「など(such as)」)の使用は、本出願をより明らかにする意図によるものに過ぎず、これらがなければ請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書に記載されているいずれの用語も、本発明の実施に不可欠であるいずれかの非請求要素を表すものとして解釈されるべきではない。
【0205】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定であると解釈されるべきではない。各グループのメンバーが個別に言及および請求される場合もあり、グループ内の他のメンバーまたは本明細書に記載されている他の要素と任意に組み合わせて言及および請求される場合もある。グループの1つまたは複数のメンバーが、利便性および/または特許性の理由で、グループに含められるか、またはグループから削除される場合があることが予測される。このような何らかの包含または削除が生じた場合、明細書は、修正され、添付の請求項で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述要件を満たすグループを含むものと見なされる。
【0206】
本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されており、これには、本発明者らに既知の本発明を実施するための最良の形態が含まれる。当然のことながら、これまでの記載を読めば、ここに記載した実施形態に対する変更が当業者に明らかとなるであろう。本発明者は、当業者が必要に応じてこのような変更を採用することを予期しており、また、本発明者らは、本明細書で具体的に記載された方法とは別の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法で認められている本明細書に添付の請求項に記載の主題のすべての変更物および等価物を含む。さらに、本明細書で別途明記されるか、文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、上記要素のその可能なあらゆる変更形態でのいかなる組合せも本発明に包含される。
【0207】
さらに、本明細書全体を通して、出版物、特許および/または特許出願(まとめて「文献」)に対し多くの参照がなされている。それぞれの引用文献は、それらの特定の引用された教示について、参照により本明細書に個別に組み込まれる。
【0208】
本明細書で示された詳細事項は、一例として、単に本発明の好ましい実施形態の説明的な考察を目的とし、本発明の種々の実施形態の原理と概念的側面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられる内容を提供するために呈示されている。この事に関しては、本発明の基本的理解に必要である以上に詳細には本発明の構造的詳細を示す試みは行わないが、図面および/または実施例で行われた説明により、本発明のいくつかの形態を実際に実施することができる方法が当業者に明らかにされている。
【0209】
実施例において明確に一義的に変更されない限り、またはその意味の適用によりいずれかの構成を無意味にするまたは実質的に無意味にすることがない限り、本開示で使われた定義と説明は、いかなる将来の構成をも制御することを意味し、意図している。その用語の構成が、その用語を無意味または実質的に無意味にする場合には、定義はWebster's Dictionary,3rd Editionまたは当業者に既知の辞書、例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology (Ed. Anthony Smith,Oxford University Press,Oxford,2004)から採用すべきである。
【0210】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を説明するためのものであることを理解されたい。本開示の範囲には、採用可能な他の変更が含まれる。したがって、一例として、特に限定されないが、本明細書に記載されている教示に従って、本発明の代替構成を利用することができる。したがって、本発明は、示し、説明された通りの形態に正確に限定されるものではない。
【国際調査報告】