(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-528249(P2016-528249A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】植物の性能を向上させるための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
A01N 37/44 20060101AFI20160819BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20160819BHJP
A01N 43/34 20060101ALI20160819BHJP
A01N 43/62 20060101ALI20160819BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20160819BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
A01N37/44
A01N43/40 101Q
A01N43/34
A01N43/62
A01P21/00
A01G7/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-534620(P2016-534620)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2014050274
(87)【国際公開番号】WO2015023522
(87)【国際公開日】20150219
(31)【優先権主張番号】61/866,681
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516037464
【氏名又は名称】ロス アラモス ナショナル セキュリティー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LOS ALAMOS NATIONAL SECURITY, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】アンキーファー,パット,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
2B022EB06
4H011AB03
4H011BA01
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC03
4H011BC07
4H011DA14
4H011DD03
(57)【要約】
本発明は、ケトスクシナメート、その誘導体または塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することを含む、植物の成長特性の増進、植物の養分利用効率の向上、または植物のストレス克服能力の向上のための方法、およびそのための組成物を対象とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成長特性の増進、植物の養分利用効率の向上、または植物のストレス克服能力の向上のための方法であって、ケトスクシナメート、その誘導体または塩を含む組成物を、該植物または該植物の繁殖材料に適用することを含む方法。
【請求項2】
ケトスクシナメートまたはその誘導体が、植物の葉、根、葉面、茎葉、分げつ、花、植物細胞、植物組織、またはそれらの組合せである植物の一部に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物の繁殖材料が、種子、穀粒、果実、塊茎、根茎、胞子、挿穂、接穂、成長点組織、植物細胞、堅果または胚である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
適用が発芽前または発芽後である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
成長特性が、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、含油量、種子の数、総種子量、平均種子量、出葉速度、根量、総地下組織重量、収穫可能な果実または堅果の収率、植物タンパク質およびデンプン含量、バイオマス蓄積速度、分げつ出現率、分げつ成長速度、平均果実重量、発芽率、幼植物発芽率、またはこれらの組合せである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
成長特性が、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、種子の数、総種子量、出葉速度、分げつ出現率、幼植物発芽率、またはこれらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
向上した養分利用効率が、増加したタンパク質含量、増加したアミノ酸含量、またはこれらの組合せである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ストレスが、生物的ストレス、非生物的ストレス、化学的ストレス、または除草剤性ストレスである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
生物的ストレスが、昆虫、ウイルス、真菌、寄生生物、雑草または動物によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非生物的ストレスが、太陽、風、火、洪水または干ばつによるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
化学的ストレスが、駆除剤、殺真菌剤、除草剤、抗菌剤または抗ウイルス性組成物によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、水溶液、非水溶液、懸濁液、ゲル、発泡体、糊剤、散剤、粉剤、固形物または乳剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が水性製剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体の濃度が約0.1μM〜約10mMである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1mM〜約10mMである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約1μM〜約250μMである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、界面活性剤、保湿剤、補助剤、抗酸化剤、安定化剤、植物多量養素、植物微量養素、駆除剤、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、除草剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、植物成長刺激化合物をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
植物成長刺激化合物が、(R)−2−ヒドロキシ−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、(S)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、またはこれらの組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ケトスクシナメートまたはその誘導体の植物成長刺激化合物に対する比率が約99:1〜約1:99である、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
植物が単子葉植物または双子葉植物である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
植物が、穀物、マメ科植物、繊維産生植物、油産生植物、塊茎産生植物、デンプン産生植物、草類、蔓植物、果実、野菜、顕花植物または樹木である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
植物が、コムギ、カラスムギ、イネ、トウモロコシ、マメ、ダイズ、オオムギ、ワタ、アブラナ、アマ、マメ科植物、ブドウ、ベリー類、トマト、蔓植物、オレンジ、種実類、タバコ、アルファルファ、ジャガイモ、ピーナッツ、またはシロイヌナズナである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ケトスクシナメートの誘導体が、3−カルバモイル−2,4−ジヒドロキシ−6−オキソピペリジン−2,4−ジカルボキシレート、4−アミノ−2,4−ジオキソブタン酸、(S)−4−オキソアゼチジン−2−カルボン酸、4,8−ジオキソ−1,5−ジアゾカン−2,6−ジカルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、担体と、任意に植物成長刺激化合物とを含む、組成物。
【請求項26】
製剤が、水溶液、非水溶液、懸濁液、ゲル、発泡体、糊剤、散剤、粉剤、固形物または乳剤である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
植物成長刺激化合物の、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩に対する比率が、約99:1〜約1:99である、請求項25または請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1μM〜約10mMである、請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1mM〜約10mMである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約1μM〜約250μMである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
植物成長刺激化合物の濃度が約0.1μM〜約2000μMである、請求項25〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
植物成長刺激化合物が、(R)−2−ヒドロキシ−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、(S)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項25〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
ケトスクシナメートの誘導体が、3−カルバモイル−2,4−ジヒドロキシ−6−オキソピペリジン−2,4−ジカルボキシレート、4−アミノ−2,4−ジオキソブタン酸、(S)−4−オキソアゼチジン−2−カルボン酸、4,8−ジオキソ−1,5−ジアゾカン−2,6−ジカルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項25〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
界面活性剤、保湿剤、補助剤、抗酸化剤、安定化剤、植物多量養素、植物微量養素、駆除剤、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、除草剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項25〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
微生物をさらに含む、請求項25〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
微生物が窒素固定菌または菌根である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
植物繁殖材料をさらに含む、請求項25〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月16日に出願された米国仮出願第61/866,681号の利益を主張し、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は、契約第DE−AC52−06NA25396号の下に、米国エネルギー省により与えられた政府の援助によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、植物の成長特性の増進、植物の養分利用効率の向上、または植物のストレス克服能力の向上のための組成物および方法を対象とする。
【背景技術】
【0004】
人口が世界的に増加し、利用可能な農地が破壊ないし損なわれ続けているため、より有効かつ持続可能な農業システムに対する必要性が、人類にとって最大の関心事となっている。バイオマス生産、作物の収率、タンパク質含量、植物成長速度などの向上が、環境的および経済的課題により有効に応答することができる農業システムの発展における主要な目的を表している。
【0005】
窒素は、植物の成長および生産における重要な成長制限要素と考えられる。窒素は、葉緑素およびアミノ酸の基本的な成分であり、アデノシン三リン酸(ATP)および核酸中で見られる。植物は、窒素ガスの形態で大気から、および/または土壌(例えば、肥料および有機物の分解)から窒素を獲得するが、還元形態(例えば、NH
3)でしか、この元素を利用することができない。
大気中の窒素(N
2)のアンモニア(NH
3)への変換が「窒素固定」であり、植物との共生関係を有する原核生物の特殊な群による酵素「ニトロゲナーゼ」を介して行われる。植物はNH
3を容易に同化することができ、その分子を植物の成長および生産を促進する重要な生物学的成分(例えば、葉緑素およびアミノ酸)を生産するための主成分として利用することができる。
【0006】
残念ながら、窒素固定は植物にとってNH
3を獲得するための制限的な工程であり、結果として、現在の農業は工業的に生産された窒素肥料で補充している。この広く普及した肥料の使用は、主に河川および海への流出により、海洋生物に劇的な影響を与え、沿岸の死の領域の形成などの世界的な環境問題をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、植物の成長、バイオマス生産、穀物の収穫などを向上させるための、改善され、費用対効果の高い、生態学的に健全な組成物および方法に対する必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケトスクシナメート(ketosuccinamate)、その誘導体または塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することを含む、植物の成長特性の増進、植物の養分利用効率の向上、または植物のストレス克服能力の向上のための方法を目的とする。
本発明はまた、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、担体と、任意に植物成長刺激化合物とを含む組成物を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、当分野において理解されている、植物の窒素同化の代謝図を表す。窒素同化および一次代謝(実線)は、グルタメートおよびアンモニアのグルタミン合成酵素(GS)触媒結合によるグルタミンの形成で始まる。次いで、グルタミンからの1つの窒素が2−オキソグルタル酸に供与されて、グルタメートを形成する。アスパルテートおよびアスパラギンが、オキサロ酢酸の炭素主鎖とグルタメートからの1つの窒素およびグルタミンからの別の窒素とから形成される。2−オキソグルタラメートおよびケトスクシナメートが、グルタミンおよびアスパラギンからそれぞれ形成される(破線)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、利用可能な窒素を活用する植物の能力を最大化し、したがって必要とされる補給量を低減することによって、作物のための工業的な窒素補給の現在の生態学的および経費の不利益を除去ないし最小化する。
本発明は、ケトスクシナメートまたはその塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することによって、植物の性能のある特定の面を向上させる方法を目的とする。ケトスクシナメートの誘導体またはその塩も本発明の方法において使用することができる。
【0011】
2−オキソスクシナメート、L−オキソスクシナメート、α−ケトスクシナメート、3−カルバモイル−2−オキソプロパノエートおよび4−アミノ−2,4−ジオキソブタノエートとしても当分野で知られているケトスクシナメートは、次の構造を有する。
【0013】
ケトスクシナメートは二量体の形態でも存在することができ、これも本発明の範囲内である。Ralph A Stephani and Alton Meister 1971 “Structure of the dimeric a-ketoanalogue of asparagine” J. Biol Chem. 246: 7115-7118。
本明細書で使用する場合、「ケトスクシナメートの誘導体」は、化学的または物理的処理によってケトスクシナメートから誘導される化学物質を指す。該誘導体は、構造類似体および/または機能類似体であってもよい。ケトスクシナメートの誘導体としては、例えば、表1に示される化合物が挙げられる。
【0016】
ケトスクシナメートおよびその誘導体は、購入しもよく、あるいは本明細書に記載のように、または当業者に既知の手段により合成してもよい。例えば、Meister A., J. Biol. Chem., (1953) 200: 571-589; Weygand, Freidrich and Heinz-Jurgen Dietrich 1954 Synthese von 1.5-diaza-cyclooctan-dion-(4.8)-dicarbonsaure-(2.6) Chemische Berichte 87(4): 482-488を参照されたい。
【0017】
本発明の組成物は、例えば噴霧、灌注、コーティング、エマージョン(emersion)、注入、またはそれらの任意の組合せなどの、当分野において既知の方法のいずれかを用いて適用することができる。
【0018】
本発明の方法は、植物の成長特性を増進させることを含み、ケトスクシナメート、またはその誘導体もしくは塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することを含む。
「成長特性」としては、例えば、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、含油量、種子の数、総種子量、平均種子量、出葉速度、根量、総地下組織重量、収穫可能な果実または堅果の収量、植物タンパク質およびデンプン含量、バイオマス蓄積速度、分げつ出現率、分げつ成長速度、平均果実重量、発芽率、幼植物発芽率、またはそれらの任意の組合せが挙げられることを当業者は理解する。
本発明の例示的な実施形態において、本方法は、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、種子の数、総種子量、出葉速度、分げつ出現率、幼植物発芽率、またはそれらの任意の組合せにおける増加を、結果としてもたらすことになる。
本発明の組成物および方法を使用することによって、植物の成長特性は、本発明の組成物および方法の不存在下における植物の成長と比較して増加することになる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することを含む、植物の養分利用効率を向上させる方法を対象とする。
本明細書で使用する場合、「窒素利用効率(NUE)」は、窒素肥料の投入単位当たりの作物生産の尺度を指す。
大部分の農業システムにおいて、畑に適用された窒素の50%超から最大75%は植物によって利用されず、土壌への浸出または地表水への流出と消え去る。故に、NUEを向上させることは、効率性を向上させる。
【0020】
NUEは、当業者に既知の方法によって測定し得る。NUEに関する作物生産の1つの尺度は、肥料窒素利用効率である。NUEに関する作物生産の別の尺度は、総窒素利用効率である。NUEの他の尺度としては、収率の異なる尺度が挙げられる。例えば、NUEは、葉、穀粒または他の植物組織もしくは器官における増加したタンパク質の含量または濃度を指し得る。
NUEはまた、葉、穀粒または他の植物組織もしくは器官における増加したアミノ酸の含量または濃度を指し得る。葉、穀粒または他の植物組織もしくは器官における増加したタンパク質およびアミノ酸の含量または濃度の組合せもNUEの尺度である。
【0021】
本発明のさらなる他の実施形態は、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩を含む組成物を、植物または植物の繁殖材料に適用することを含む、植物のストレス克服能力を向上させる方法を対象とする。
本明細書で使用する場合、「ストレス」は、任意の望ましくない外部因子を指す。例えば、本発明の方法は、生物的ストレスを克服する植物の能力を増進させる。
「生物的ストレス」は、他の生物、例えば昆虫、ウイルス、真菌、寄生生物、雑草および動物によって植物になされたダメージの結果として発生するストレスである。
本発明の方法は、非生物的ストレスを克服する植物の能力も増進させる。「非生物的ストレス」は、非生物因子、例えば太陽、風、火、洪水および干ばつの結果として発生するストレスである。
本発明の方法は、駆除剤、殺真菌剤、除草剤、抗菌剤または抗ウイルス性組成物によるものなどの化学的ストレスを克服する植物の能力をも増進させる。
【0022】
本明細書に記載の方法から利益を得ることができる植物としては、単子葉植物および双子葉植物が挙げられる。これらは限定されるものではないが、穀物、マメ科植物、繊維産生植物、油産生植物、塊茎産生植物、デンプン産生植物、草類、蔓植物、果実、野菜、顕花植物および樹木を含む。
本発明の範囲内の植物の具体的な種類としては、例えば、コムギ、カラスムギ、イネ、トウモロコシ、マメ、ダイズ、オオムギ、ワタ、アブラナ、アマ、マメ科植物、ブドウ、ベリー類、トマト、蔓植物、オレンジ、種実類、タバコ、アルファルファ、ジャガイモ、ピーナッツおよびシロイヌナズナが挙げられる。
【0023】
本発明の組成物は、植物の発芽前(幼植物が発芽もしくは地上に現れる前)または発芽後(幼植物が発芽もしくは地上に現れた後)に適用できる。
本発明の組成物は、植物または植物の一部、例えば葉、根、葉面、茎葉、分げつ、花、植物細胞、植物組織もしくはそれらの組合せに、直接適用できる。本発明の組成物は成長培地に適用することもできる。
【0024】
本発明の組成物は、植物の繁殖材料に適用することもできる。例えば、本発明の組成物は、種子、穀粒、果実、塊茎、根茎、胞子、挿穂、接穂、成長点組織、植物細胞、堅果または胚に適用できる。
【0025】
本発明の組成物は、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、当分野で日常的に使用されるものなどの担体とを含む。
本組成物は、水溶液、非水溶液、懸濁液、ゲル、発泡体、糊剤、散剤、粉剤、固形物または乳剤であり得る。水性製剤が特に好ましい。
【0026】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度は、所望の結果を達成するために必要な濃度であり、この濃度は余計な実験なしに当業者によって解明可能である。
例えば、本発明の組成物は、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩を、約0.1μM〜約10mMの濃度で含むことができる。好ましい実施形態において、この濃度は約0.1mM〜約10mMである。他の実施形態において、この濃度は約0.1μM〜約2000μMである。さらなる他の実施形態において、この濃度は約1μM〜約250μMである。
【0027】
本発明の組成物は、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩に加えて、少なくとも1種の他の植物成長刺激化合物を任意に含むことができる。ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩は、他の植物成長刺激化合物と任意の比率で存在することができる。
例えば、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の、他の植物成長刺激化合物(複数可)に対する比率は、99:1〜1:99の範囲内であり得る。他の実施形態において、比率は90:10である。さらに他の実施形態において、比率は80:20である。さらなる他の実施形態において、比率は70:30である。さらなる実施形態において、比率は60:40である。さらに他の実施形態において、比率は50:50である。追加的な実施形態において、比率は40:60である。さらに他の実施形態において、比率は30:70である。他の実施形態において、比率は20:80である。さらなる他の実施形態において、比率は10:90である。
【0028】
そのような他の成長刺激化合物は、それ自体、当分野において既知である。本発明の組成物における使用のために特に好ましい植物成長刺激化合物としては、例えば、(R)−2−ヒドロキシ−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、(S)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、およびそれらの組合せが挙げられる。例えば、米国公開出願第2007/0105719号を参照されたい。
【0030】
本発明の組成物は、当分野において日常的に使用される追加的成分、例えば保湿剤、補助剤、抗酸化剤、安定化剤、植物多量養素、植物微量養素、駆除剤、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、除草剤、およびそれらの組合せをさらに含むこともできる。
【0031】
本発明の組成物は、微生物、例えば窒素固定菌または菌根をさらに含むこともできる。
【0032】
本発明の組成物は、植物繁殖材料、例えば種子、穀粒、胞子などをさらに含むこともできる。
【0033】
植物、その繁殖材料、および/または成長基質(substrate)の処理は、例えば、植物、その一部、その繁殖材料、および/またはその成長基質を、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、任意に別の植物成長刺激化合物とによって処理するなどの方法で達成することができる。
植物、その繁殖材料、および/またはその成長基質は、1回以上処理することができる。例えば、2回以上の処理を含む処理体制において、処理間の時間間隔は、所望の効果が起こり得るようなものでなければならない。時間間隔は、秒(複数可)、分(複数可)、時間(複数可)、日(複数可)、週(複数可)および月(複数可)であってもよい。
【0034】
代替的に、植物、その繁殖材料、および/またはその成長基質は、別の形態のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、別の植物成長刺激化合物とによって処理することができ、個別の活性化合物による処理を同時に、または連続して達成することが可能である。
連続的な処理の場合、処理間の時間間隔は、所望の効果が起こり得るようなものでなければならない。時間間隔は、秒(複数可)、分(複数可)、時間(複数可)、日(複数可)、週(複数可)および月(複数可)であってもよい。
【0035】
本明細書に記載の任意の処理シナリオについて、化合物を異なる対象(本文脈において、対象とは植物、繁殖材料および成長基質である)に適用することが可能である。すなわち、例えば、種子をケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩で処理し、かつ種子から発育する植物に植物成長刺激化合物を適用すること、および/または対象の成長基質をそれで処理することが可能である。
代替的に、種子を植物成長刺激化合物で処理し、かつ種子から発育する植物にケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩を適用すること、および/または対象の成長基質をそれで処理することが可能である。以上に記載される2つの手法の組合せを遂行してもよい。
【0036】
別の処理シナリオにおいて、微量養素、多量養素、他の植物成長特性促進化合物、駆除剤、および/または除草剤と組み合わされる、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩によって種子を処理してもよい。
【0037】
別の処理シナリオにおいて、播種の前、さもなくば種子が蒔かれる成長基質を介して、例えば畝内適用として、既知のものの形態で播種中に種子を処理してもよい。この適用形態において、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と他の植物成長刺激化合物とは、本質的に種子と同じ時間に畝内に置かれる。
【0038】
様々な範囲の処理比率も遂行され得る。例えば、ケトスクシナメート化合物の植物成長刺激化合物に対する比率は、99:1〜1:99の範囲(すなわち、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5、94:6、93:7、92:8、91:9、90:10、89:11、88:12、87:13、86:14、85:15、84:16、83:17、82:18、81:19、80:20、79:21、78:22、77:23、76:24、75:25、74:26、73:27、72:28、71:29、70:30、69:31、68:32、67:33、66:34、65:35、64:36、63:37、62:38、61:39、60:40、59:41、58:42、57:43、56:44、55:45、54:46、53:47、52:48、51:49、50:50、49:51、48:52、47:53、46:54、45:55、44:56、43:57、42:58、41:59、40:60、39:61、38:62、37:63、36:64、35:65、34:66、33:67、32:68、31:69、30:70、29:71、28:72、27:73、26:74、25:75、24:76、23:77、22:78、21:79、20:80、19:81、18:82、17:83、16:84、15:85、14:86、13:87、12:88、11:89、10:90、9:91、8:92、7:93、6:94、5:95、4:96、3:97、2:98、もしくは1:99)に亘る。この比率は、モル濃度比または重量比に適用され得る。
【0039】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物は、一体化または別々のいずれかで、使用準備済みの調製物として、懸濁化、乳化、または溶解形態で製剤化されていてもよい。使用形態は、意図される目的に完全に左右される。
【0040】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物は、それら自体で、それらの製剤の形態、またはそれらから調製された使用形態で、例えば直接噴霧可能な溶剤、発泡体、散剤、懸濁剤もしくは分散体の形態で、または高度に濃縮された水性、油性もしくは他の懸濁剤もしくは分散体、乳剤、油分散体、糊剤、粉剤、追跡用(tracking)散剤もしくは顆粒剤の形態で採用されてもよい。この適用は、通常、噴霧、霧化、霧吹き、撒布または注入によって達成される。使用形態および使用方法は、意図される目的に左右される。
【0041】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物の使用準備済みの調製物が存在する提示に応じて、調製物は1種以上の液体または固体担体、任意に表面活性物質、および任意に植物処理剤の製剤化のために従来使用されているさらなる補助剤を含む。そのような製剤のための組成物は、当業者に公知である。
【0042】
水性使用形態は、例えば乳剤濃縮物、懸濁剤、糊剤、水和剤または水分散性顆粒剤から出発して、水を添加することによって調製することができる。乳剤、糊剤または油分散体を調製するために、そのまま、または油もしくは溶媒中に溶解したケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物を、湿潤剤、接着剤、分散剤または乳化剤を用いて、水中で均質化することができる。
しかしながら、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物、湿潤剤、接着剤、分散剤あるいは乳化剤からなる濃縮物を調製することも可能であり、適切な場合、溶媒または油、およびそのような濃縮物は、水による希釈にとって好適である。
【0043】
使用準備済みの調製物中におけるケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物の濃度は、実質的な範囲内で変動し得る。概して、それらの濃度は0.0001〜10%であり、好ましくは0.01〜1%である(使用準備済みの調製物の総重量に基づく、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物の総含量の重量%)。
【0044】
適切であれば使用の直前にのみ、本発明に従って採用されるケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物以外の、様々なタイプの油類、湿潤剤、補助剤、除草剤、殺真菌剤および殺虫剤、殺線虫剤、殺菌剤などの他の駆除剤、肥料および/または成長抑制剤を、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物に添加することが可能である。
これらは、本発明に従って採用されるケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物に、99:1〜1:99の比率(すなわち、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5、94:6、93:7、92:8、91:9、90:10、89:11、88:12、87:13、86:14、85:15、84:16、83:17、82:18、81:19、80:20、79:21、78:22、77:23、76:24、75:25、74:26、73:27、72:28、71:29、70:30、69:31、68:32、67:33、66:34、65:35、64:36、63:37、62:38、61:39、60:40、59:41、58:42、57:43、56:44、55:45、54:46、53:47、52:48、51:49、50:50、49:51、48:52、47:53、46:54、45:55、44:56、43:57、42:58、41:59、40:60、39:61、38:62、37:63、36:64、35:65、34:66、33:67、32:68、31:69、30:70、29:71、28:72、27:73、26:74、25:75、24:76、23:77、22:78、21:79、20:80、19:81、18:82、17:83、16:84、15:85、14:86、13:87、12:88、11:89、10:90、9:91、8:92、7:93、6:94、5:95、4:96、3:97、2:98、もしくは1:99)で混和することができる。この比率は、モル濃度比または重量比に適用され得る。
【0045】
本発明に従って採用されるケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物以外の、様々なタイプの油類、湿潤剤、補助剤、除草剤、殺真菌剤および殺虫剤、殺線虫剤、殺菌剤などの他の駆除剤、肥料および/または成長抑制剤を、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物に添加することが可能である。
一態様において、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物は、植物または植物繁殖材料に適用する前に、殺線虫剤、殺菌剤などの他の駆除剤、肥料および/または成長抑制剤と組み合わせてもよい。
【0046】
そのような製剤は、既知の様式、例えばケトスクシナメートまたはその誘導体もしく塩、および/または植物成長刺激化合物を、所望される場合、表面活性物質、すなわち乳化剤および分散剤を用いて、溶媒および/または担体で増量することによって調製される。
好適な溶媒/助剤は、本質的に、水、芳香族溶媒(例えば、Solvesso製品、キシレン)、パラフィン類(例えば鉱物留分)、アルコール類(例えばメタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えばシクロヘキサノン、メチルヒドロキシブチルケトン、ジアセトンアルコール、メシチルオキシド、イソホロン)、ラクトン類(例えばγ−ブチロラクトン)、ピロリドン類(ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、n−オクチルピロリドン)、アセテート類(グリコールジアセテート)、グリコール類、グリセロール、脂肪酸ジメチルアミド類、脂肪酸類および脂肪酸エステル類である。原則として、溶媒混合物も使用してよい。
【0047】
土壌天然鉱物類(例えばカオリン、クレー類、タルク、チョーク)および土壌合成鉱物類(例えば高分散ケイ酸、ケイ酸塩類)の担体、非イオン性および陰イオン性乳化剤等の乳化剤類(例えばポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル類、アルキルスルホネート類、およびアリールスルホネート類)、ならびにリグニンサルファイト廃油類およびメチルセルロースなどの分散剤。
【0048】
好適な界面活性剤は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート類、SDS、アルキルサルフェート類、アルキルスルホネート類、脂肪族アルコールサルフェート類、脂肪酸類および硫酸化脂肪族アルコールグリコールエーテル類、さらにはホルムアルデヒドとスルホン化ナフタレンおよびナフタレン誘導体との縮合物、フェノールおよびホルムアルデヒドとナフタレンおよびナフタレンスルホン酸との縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル類、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール類、アルコールおよび脂肪族アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコール、ポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル類、リグニンサルファイト廃油類およびメチルセルロースである。
【0049】
直接噴霧可能な溶剤、乳剤、糊剤または油分散体の調製のために好適である物質は、ケロセンまたはディーゼル油などの中〜高程度の沸点の鉱物油留分、さらにはコールタール油および植物または動物由来の油、脂肪族、環状および芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン類、またはこれらの誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メシチルオキシド、イソホロン、高極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ブチロラクトンおよび水である。
【0050】
散剤、拡散のための物質および粉剤は、活性物質を固体担体と共に混合または同時に粉砕することによって調製することができる。
【0051】
顆粒剤、例えば被覆顆粒剤、含浸顆粒剤および均質性顆粒剤は、活性成分を固体担体に結合させることによって調製することができる。固体担体の例は、ケイ酸、ゲル、ケイ酸塩類、タルク、カオリン、アタクレー、石灰石、石灰、チョーク、膠灰粘土、黄土、クレー、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの鉱物土類、土壌合成物質、肥料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素類および穀類粗挽き粉、樹皮粗挽き粉、木材粗挽き粉、および堅果の殻の粗挽き粉等の植物由来の製品、セルロース粉末、ならびにその他の固体の担体である。
【0052】
種子の処理のための製剤は、結合剤および/またはゲル化剤、ならびに適切な場合、着色剤を追加的に含んでもよい。
【0053】
概して、本製剤は、活性物質の0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%、特に5〜50重量%を含む。活性物質は、90%〜100%、好ましくは95%〜100%の純度で採用される(NMRスペクトルによる)。
【0054】
種子の処理について、関連する製剤は、使用準備済みの調製物中において、0.001重量%〜80重量%の濃度(すなわち0.001重量%、0.005重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.)、好ましくは0.1〜40重量%のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩、および/または植物成長刺激化合物をもたらすことになる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「成長培地」とも呼ばれる「成長基質」は、植物が成長しているまたは成長することになる土壌(例えば鉢、畦畔もしくは畑の)、水、または人工培地等の任意の種類の基質、および成長に関連するか(例えば肥料)、あるいは植物の保護に関連する(例えば駆除剤)任意の追加的な補給物を指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、「NPKS多量養素」または「多量養素」は、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)および硫黄(S)の養分を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、微量養素は植物成長および/または繁殖にとって必要な任意の養分を指す。
【0058】
本明細書で使用する場合、「窒素固定細菌」は、大気からの窒素(N
2)を固定または還元してアンモニア(NH
3)を形成する能力を有する細菌を指す。
【0059】
本明細書で使用する場合、「窒素利用効率(NUE)」は、窒素肥料の投入単位当たりの作物生産の尺度を指す。NUEは、当業者によって複数の異なる方法で測定され得る。さらに、NUEは肥料窒素利用効率を指してもよく、総窒素利用効率を指してもよい。NUEは収率の異なる尺度を含んでもよい。例えば、NUEは、葉、穀粒または他の植物組織もしくは器官における増加したタンパク質の含量または濃度等、植物中の増加した窒素化合物を指すために使用してもよい。大部分の農業システムにおいて、畑に適用された窒素の50%超から最大75%は、植物によって利用されず、土壌への浸出または地表水への流出へと消え去る。
【0060】
本明細書で使用する場合、「根粒形成」は、根粒の重量、根粒の数および根粒の成長率を指す。
【0061】
本明細書で使用する場合、「植物成長刺激化合物」は、植物および/または植物繁殖材料が有効量の化合物で処理されるときに、植物の性能を向上させること、または植物の成長特性を増進させることが可能な化合物を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、「植物の性能」は、以下の特性、分げつの数、葉のバイオマス(重量)および種子頭部のうちの1つ以上の尺度を指す。
植物性能の向上は、植物について上の特性のうちのいずれかが増加する場合に結論付けられ得る。例えば、作物における分げつ数の増加が種子の収率を増加させるということは、当業者に広く認められている。さらに、葉のバイオマス量または割合の増加は、植物成長の大きさおよび割合の増加を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、「繁殖材料」は、完全な植物がそこから成長できる材料を指す。繁殖材料の非制限的な例としては、種子、穀粒、果実、塊茎、根茎、胞子、挿穂、接穂、成長点組織、個々の植物細胞、および完全な植物がそこから成長できる植物組織の任意の形態が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「塩」は、任意の好適な対イオンと組み合わされる本発明の化合物のいずれかのイオン性形態を指す。塩は、本発明の組成物において溶解可能または懸濁可能でなければならない。
例えば、本発明の化合物の塩は、アルカリ金属陽イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、およびルビジウム)、アルカリ土類金属陽イオン(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、ならびに重金属カチオン(銅、銀、水銀、亜鉛、カドミウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、錫、および鉛)などの金属陽イオンと、記載される化合物の陰イオンから形成することができる。
記載される化合物の塩は、オニウム陽イオン、例えばアンモニウム陽イオン、スルホニウム陽イオン、スルホキソニウム陽イオンおよびホスホニウム陽イオンから形成することもできる。
本発明の化合物の塩は、クロライド、ブロマイドなどの陰イオンと、記載される化合物の陽イオンから形成することもできる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「共生細菌」は、それらの特定の宿主植物(マメ科植物)と関係性を結ぶ窒素固定細菌を指す。非制限的な例として、ブラディリゾビウム・ジャポニクムとその宿主グリシン・マックス(ダイズ)との間の共生、およびシノリゾビウム・メリロッティとその宿主メディカゴ・サティバ(アルファルファ)との間の共生が挙げられる。
これらの関係において、共生の各メンバーは相手の存在から利益を得ており、つまり、植物は細菌から固定された窒素を受け取り、細菌の共生生物は植物から炭素骨格を受け取る。これらの共生は、その関係性が始まるときに形成が開始される根粒と呼ばれる特殊な根の構造において存在する。
【0066】
本明細書に提供される範囲は、範囲内の値の全てについての省略表現であることが理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50からなる群からの、任意の数、数の組合せまたはサブ範囲を含むことが理解される(特に文脈が明確に規定しない限りその分数も含む)。
任意の濃度の範囲、パーセンテージの範囲、比率の範囲または整数の範囲は、特に指示のない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、ならびに適切な場合はその分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むことを理解されたい。
また、ポリマーサブユニット、大きさまたは厚さなどの、任意の物理的特色に関する本明細書に列挙される任意の数の範囲は、特に指示のない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むことを理解されたい。
本明細書で使用する場合、特に指示のない限り、「約」または「から本質的になる」は、示された範囲、値または構造の±20%を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「含む(include)」および「含む(comprise)」は、非限定的であり、同義的に使用される。
本明細書で使用する場合、用語「a」および「an」は、列挙される構成要素の「1つ以上」を指すことを理解されたい。選択肢の使用(例えば、「または」)は、選択肢のうちのいずれか1つ、両方、またはその任意の組合せを意味することを理解されたい。
【0067】
本明細書に記載されるものに類似または同等な方法および物質を、本開示の実践または試験において使用することができるが、好適な方法および物質を以下に記載する。
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。抵触する場合には、本明細書が定義を含めて支配する。加えて、物質、方法および実施例は例証的であるに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。
【0068】
特に断りのない限り、本明細書を通じて使用される技術用語は、特に明言されない限り、従来の語法に従う。分子生物学における一般的な用語の定義は、Oxford University Pressにより出版されたBenjamin Lewin, Genes V, 1994 (ISBN 0-19-854287-9)、Blackwell Science Ltd.により出版されたKendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, 1994 (ISBN 0-632-02182-9)およびVCH Publishers, Inc.により出版されたRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見出し得る。
【実施例】
【0069】
実施例1:4−アミノ−2,4−ジオキソブタン酸の合成
例えば、Meister A., J. Biol. Chem., (1953) 200: 571-589を参照されたい。
【0070】
実施例2:コムギ植物の処理
本実施例は、ケトスクシナメート単独による、または別の植物成長刺激化合物との組合せによるコムギ植物の処理が、バイオマス、分げつの長さおよび種子頭部を増加させることを示し、これは概して植物性能の向上または植物の成長特性の増進と呼ばれる。
【0071】
対照群および処理群は、春コムギ品種のGlennを使用した。対照群および処理群のそれぞれは、15本の植物からなっていた。
【0072】
対照製剤は、pH7において界面活性剤(700mg/Lのドデシル硫酸ナトリウム、SDS)および保湿剤(2ml/Lのグリセロール)を有する基礎水溶液であった(以下「基礎溶液」)。
【0073】
処理製剤は、ケトスクシナメートを伴う基礎溶液(処理製剤#1)、L−ピログルタメートを伴う基礎溶液(処理製剤#2)、またはケトスクシナメートおよびL−ピログルタメート(処理製剤#3、60:40の比率のL−ピログルタメート:ケトスクシナメート)を含んだ。これらの製剤について次の表2にまとめる。
【0074】
【表2】
【0075】
春コムギを1日目に植え、自然な日長で温室内において成長させた。全ての植物に、窒素源としてNO
3とNH
4とを10:1の比率で提供する、市販の完全栄養混合物(Flora Gro Bloom; GenHydro)を与えた。各群を、葉面噴霧を介して10日目から毎日、群それぞれの製剤で処理した。
【0076】
定植からおよそ70日後、分げつ数を対照群および処理製剤#1群(ケトスクシナメート化合物単独)について数えた。分げつ数/群(15本の植物)が次の表3に示される。
【0077】
【表3】
【0078】
表3のデータは、ケトスクシナメート(処理製剤#1)で処理された植物が、対照群の分げつ数と比較して、増加した分げつ数を有していたことを示す。
【0079】
植物を91日目に収穫し、葉面組織重量(グラム)および1本の植物当たりの種子頭部の数を測定した。次の表4は、採取された測定値をまとめたものである。
【0080】
【表4】
【0081】
表4のデータは、ケトスクシナメート単独(処理製剤#1)、L−ピログルタメート単独(処理製剤#2)、および60:40の比率のL−ピログルタメート:ケトスクシナメート(処理製剤#3)で処理された植物が、対照群と比較して増加した葉面組織重量を有し、対照群と比較して増加した植物当たりの種子頭部の数を有していたことを示す。
【0082】
実施例3:ダイズ植物の処理
本実施例は、ケトスクシナメートによるダイズ植物の処理が、葉面および根粒バイオマスを増加させることを示し、これは概して植物の性能の向上と呼ばれる。
【0083】
対照群および処理群は、市販の種類のダイズを使用した。対照群および処理群は、それぞれ15本の植物からなった。対照製剤は、基礎溶液であった(実施例2を参照)。処理製剤は、ケトスクシナメートと共に基礎溶液を含んでいた(処理製剤#1)。これらの製剤について次の表5にまとめる。
【0084】
【表5】
【0085】
ダイズ植物を、自然な日長で温室内において成長させた。成長基質は、等容積のピートモス(湿性)、園芸バーミキュライト(湿性)および砂であった。土壌の湿分パーセントは、約20%〜約30%の飽和度に維持した。全ての植物に、窒素の代わりにKClと、その痕跡元素を提供するために添加されたCoCl
2とを伴う、市販の完全栄養混合物(Flora Gro)を毎週与えた。ダイズを植える前に、基質中にNDURE(登録商標)接種材料を混合した。各群を、葉面噴霧を介して定植/植菌後10日目から毎日、それぞれの群の製剤で処理した。
【0086】
植物を定植後91日目に収穫し、葉面組織重量(グラム)および1本の植物当たりの根粒重量(mg)を測定した。次の表6は、採取された測定値をまとめたものである。
【0087】
【表6】
【0088】
表6のデータは、ケトスクシナメート単独(処理製剤#1)で処理された植物が、対照群と比較して増加した葉面組織重量を有し、対照群と比較して増加した1本の植物当たりの根粒重量を有していたことを示す。
【0089】
実施例4:アルファルファ植物の処理
本実施例は、ケトスクシナメート単独、または別の植物成長刺激化合物(例えば、L−ピログルタメート)との組合せによるアルファルファ植物の処理が、バイオマスを増加させることを示し、これは概して植物性能の向上と呼ばれる。
【0090】
対照群および処理群は、Ladak品種のアルファルファを使用した。対照群および処理群は、それぞれは15本の植物からなっていた。対照製剤は、基礎溶液であった。実施例2を参照されたい。処理製剤は、ケトスクシナメートを伴う基礎溶液(処理製剤#1)、L−ピログルタメートを伴う基礎溶液(処理製剤#2)、またはケトスクシナメートおよびL−ピログルタメート(50:50の比率のL−ピログルタメート:ケトスクシナメート、処理製剤#3)を含んでいた。これらの製剤について次の表7にまとめる。
【0091】
【表7】
【0092】
アルファルファ植物を、自然な日長で温室内において成長させた。全ての植物に、窒素を含まない培地(窒素なしのColumbia)を与えた。成長基質は、等容積のピートモス(湿性)、園芸バーミキュライト(湿性)および砂であった。土壌の湿分パーセントは、約20%〜約30%の飽和度に維持した。アルファルファの種子を植える前に、基質中にNDURE接種材料を混合した。各群を、葉面噴霧を介して定植後10日目から毎日、それぞれの群の製剤で処理した。処理は隔日であった。
【0093】
植物を定植後85日目に収穫し、葉面組織重量(グラム)を測定した。次の表8は、採取された測定値をまとめたものである。
【0094】
【表8】
【0095】
表8のデータは、ケトスクシナメート単独(処理製剤#1)、L−ピログルタメート単独(処理製剤#2)、および50:50の比率のL−ピログルタメート:ケトスクシナメート(処理製剤#3)で処理された植物が、対照群と比較して増加した葉面組織重量を有していたことを示す。
【0096】
実施例5:植物タンパク質含量の測定
葉タンパク質は、植物における窒素利用効率、つまり植物の種子および果実の生産を十分に発達および最大化するために植物が有する潜在性の指標である。これはまた、植物組織の栄養価の尺度でもある。例えば、マメ科植物のアルファルファの葉面組織は、動物の餌のタンパク質組成物を富化するための飼料として使用される。葉タンパク質を、本発明に従って処理された植物において測定し、同じ条件下で成長し、同一の組成物および同じレベルの養分を提供された、同じ種の未処理の対照植物と比較することになる。
【0097】
葉の試料は、草冠(canopy)中の同じ位置の葉から採取し、発育の同じ段階にある。試料は、その種の最大の葉の少なくとも3分の1の大きさの十分に広がった葉である。実施される植物は、コムギ、イネまたはオオムギなどの少なくとも1つの単子葉植物、およびダイズ、アルファルファ、レタスまたはコショウなどの少なくとも1つの双子葉植物である。
タンパク質は、製造業者の説明書に従って、Bradford試薬を用いる標準Bradfordタンパク質アッセイを用いて測定する。この試薬は、形成されるブリリアントブルーG色素およびタンパク質色素の複合体が、595nmの光学密度に定量的に関連していることに基づく。
【0098】
ケトスクシナメートもしくはその誘導体、または別の養分もしくは植物成長刺激化合物との組合せによって処理される植物は、未処理の植物と比較して、増進した成長植物特性(例えば増加したタンパク質含量)を有することになる。
【0099】
実施例6:植物アミノ酸含量の測定
本発明に従って処理された植物の葉における遊離アミノ酸プールを、同じ成長条件下で成長し、同一の組成物および同じレベルの養分を提供された、同じ種の未処理の対照植物の遊離アミノ酸プールと比較することになる。アミノ酸プールは、植物における窒素代謝の全体的な状態を反映することになる。
【0100】
アミノ酸プールの大きさは、植物代謝の全体的な頑強性を反映し、ある特定の種類の除草剤を無害化するなどの重要な性質にとって重要なある特定のアミノ酸生合成経路を通じた流動への洞察を提供する。
特に、アミノ酸生合成を向上させる任意の薬剤が、アミノ酸生合成を標的とする除草剤の作用の無害化の尺度を提供する。無害化は、作物と競合する雑草を減らすために使用されている除草剤から保護されるべき作物にとって、非常に望ましい。
【0101】
アセト乳酸合成酵素を標的とする除草剤(Ospreyなど)の場合、イソロイシンおよびバリン生合成を増加させる任意の薬剤が、無害化を提供することになる。グリホサートなどの芳香族アミノ酸生合成を標的とする除草剤について同じことが当てはまり、芳香族アミノ酸生合成を増加させる任意の薬剤が、それらの除草剤に対する無害化を提供することが予期される。
【0102】
グルタミン合成を刺激する任意の薬剤が、グルホシネートを含有する除草剤、つまりグルタミン合成酵素を標的とする除草剤に対する無害化を提供することが予期される。これらは、BASTA、RELY、FINALEおよびその他の名前で販売されている。
【0103】
本発明およびアミノ酸生合成を標的とする除草剤の代表種に従って処理された植物の成長を、除草剤のみで処理された植物と比較する。
ケトスクシナメートは標準の有効量および手順を用いて試験し、除草剤はその完全な推奨される致死量未満からその致死量までの範囲に亘るレベルで使用される。試験量は、推奨される致死量の10%〜100%である。植物の成長は、(葉面領域または根もしくは植物全体のいずれかの)最終バイオマスを含む標準的方法を用いて、ならびに葉、分げつまたは花の出現を追跡して特徴付けられる。試験される植物種は、単子葉植物(コムギ、イネまたはオオムギ)および双子葉植物(ダイズ、ワタ、コショウ、レタスまたは他の野菜)を代表することとする。
【0104】
本発明に従って処理される植物、または処理される植物の種子、または処理される植物が成長する土壌が、未処理の植物、または未処理の種子、または未処理の土壌と比較して、増加した成長植物特性(例えば、増加および/または向上したアミノ酸生合成)を有するであろうことが予期される。
【0105】
実施例7:発芽および幼植物発育
種子処理のための方法
ケトスクシナメートの所望の処理濃度を0.01% Tween 80の水溶液に添加し、pHをKOHで中性に設定した。種子を溶液に浸して湿らせ、定植の前に空気乾燥させ、工程に要したのは15分未満であった。
【0106】
発芽
65〜75°Fの湿った紙タオル上における発芽の開始後3日目のアルファルファ(Ladak品種)において、以下の発芽パーセントを観察した。対照未処理種子:80%、0.1mMのケトスクシナメートで処理した種子:88%、および1mMのケトスクシナメートで処理した種子:93%。各組において、少なくとも30個の種子を使用した。
【0107】
75〜85°Fの湿った紙タオル上における、処理および発芽の開始後22時間のダイズ(Viking品種)において、以下の発芽を観察した。20個の対照のうち2個が果皮を突き破った一方で、20個のケトスクシナメート(10mM)で処理された種子のうち9個が果皮を突き破った。処理後24時間において、20個の対照のうち6個が果皮を突き破り、20個のケトスクシナメートで処理された種子のうち12個が果皮を突き破った。
【0108】
温室幼植物発芽
ダイズ(Viking品種)
種子を温室内のバーミキュライト、砂、ピートモス(1:1:1)に蒔き、幼植物の発芽を追跡した。発芽/成長基質の湿分は、15〜20%の飽和度に維持した。温室内の温度は72〜82°Fの範囲であった。ブラディリゾビウム・ジャポニクム(市販の種菌)を、定植前に基質に混合した。
【0109】
定植後3日目に、以下の幼植物発芽を観察した。対照20個のうち12個が土壌から発芽した。ケトスクシナメート(1mM)処理された20個のうち16個が発芽した。
【0110】
アルファルファ(Ladak品種)
種子を温室内のバーミキュライト、砂、ピートモス(1:1:2)に蒔き、幼植物の発芽を追跡した。温室内の温度は72〜82°Fの範囲であった。シノリゾビウム・メリロッティ種菌(市販の種菌)を、定植前に基質に混合した。
【0111】
定植後3日目に以下の幼植物発芽を観察した。対照58%、ケトスクシナメート(1mM)処理79%。
【手続補正書】
【提出日】2016年2月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成長特性の増進、植物の養分利用効率の向上、または植物のストレス克服能力の向上のための方法であって、ケトスクシナメート、その誘導体または塩を含む組成物を、該植物または該植物の繁殖材料に適用することを含む方法。
【請求項2】
ケトスクシナメートまたはその誘導体が、植物の葉、根、葉面、茎葉、分げつ、花、植物細胞、植物組織、またはそれらの組合せである植物の一部に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物の繁殖材料が、種子、穀粒、果実、塊茎、根茎、胞子、挿穂、接穂、成長点組織、植物細胞、堅果または胚である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
適用が発芽前または発芽後である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
成長特性が、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、含油量、種子の数、総種子量、平均種子量、出葉速度、根量、総地下組織重量、収穫可能な果実または堅果の収率、植物タンパク質およびデンプン含量、バイオマス蓄積速度、分げつ出現率、分げつ成長速度、平均果実重量、発芽率、幼植物発芽率、またはこれらの組合せである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
成長特性が、バイオマス、葉面組織重量、根粒形成数、根粒形成量、根粒形成活性、種子頭部の数、分げつの数、花の数、塊茎の数、塊茎量、球根量、種子の数、総種子量、出葉速度、分げつ出現率、幼植物発芽率、またはこれらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
向上した養分利用効率が、増加したタンパク質含量、増加したアミノ酸含量、またはこれらの組合せである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ストレスが、生物的ストレス、非生物的ストレス、化学的ストレス、または除草剤性ストレスである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
生物的ストレスが、昆虫、ウイルス、真菌、寄生生物、雑草または動物によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非生物的ストレスが、太陽、風、火、洪水または干ばつによるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
化学的ストレスが、駆除剤、殺真菌剤、除草剤、抗菌剤または抗ウイルス性組成物によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、水溶液、非水溶液、懸濁液、ゲル、発泡体、糊剤、散剤、粉剤、固形物または乳剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が水性製剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体の濃度が約0.1μM〜約10mMである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1mM〜約10mMである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成物中のケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約1μM〜約250μMである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、界面活性剤、保湿剤、補助剤、抗酸化剤、安定化剤、植物多量養素、植物微量養素、駆除剤、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、除草剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、植物成長刺激化合物をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
植物成長刺激化合物が、(R)−2−ヒドロキシ−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、(S)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、またはこれらの組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ケトスクシナメートまたはその誘導体の植物成長刺激化合物に対する比率が約99:1〜約1:99である、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
植物が単子葉植物または双子葉植物である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
植物が、穀物、マメ科植物、繊維産生植物、油産生植物、塊茎産生植物、デンプン産生植物、草類、蔓植物、果実、野菜、顕花植物または樹木である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
植物が、コムギ、カラスムギ、イネ、トウモロコシ、マメ、ダイズ、オオムギ、ワタ、アブラナ、アマ、マメ科植物、ブドウ、ベリー類、トマト、蔓植物、オレンジ、種実類、タバコ、アルファルファ、ジャガイモ、ピーナッツ、またはシロイヌナズナである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ケトスクシナメートの誘導体が、3−カルバモイル−2,4−ジヒドロキシ−6−オキソピペリジン−2,4−ジカルボキシレート、4−アミノ−2,4−ジオキソブタン酸、(S)−4−オキソアゼチジン−2−カルボン酸、4,8−ジオキソ−1,5−ジアゾカン−2,6−ジカルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩と、担体と、任意に植物成長刺激化合物とを含む、組成物。
【請求項26】
製剤が、水溶液、非水溶液、懸濁液、ゲル、発泡体、糊剤、散剤、粉剤、固形物または乳剤である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
植物成長刺激化合物の、ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩に対する比率が、約99:1〜約1:99である、請求項25または請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1μM〜約10mMである、請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約0.1mM〜約10mMである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ケトスクシナメートまたはその誘導体もしくは塩の濃度が約1μM〜約250μMである、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
植物成長刺激化合物の濃度が約0.1μM〜約2000μMである、請求項25〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
植物成長刺激化合物が、(R)−2−ヒドロキシ−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、(S)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項25〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
ケトスクシナメートの誘導体が、3−カルバモイル−2,4−ジヒドロキシ−6−オキソピペリジン−2,4−ジカルボキシレート、4−アミノ−2,4−ジオキソブタン酸、(S)−4−オキソアゼチジン−2−カルボン酸、4,8−ジオキソ−1,5−ジアゾカン−2,6−ジカルボン酸、またはそれらの組合せである、請求項25〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
界面活性剤、保湿剤、補助剤、抗酸化剤、安定化剤、植物多量養素、植物微量養素、駆除剤、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、除草剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項25〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
微生物をさらに含む、請求項25〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
微生物が窒素固定菌または菌根である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
植物繁殖材料をさらに含む、請求項25〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【国際調査報告】